(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107065
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電力デマンド制御装置、電力デマンド制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20230726BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230726BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230726BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008161
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 直也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 早紀
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064BA07
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA05
5G066AA02
5G066AA05
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G066KA04
5G066KA12
5G066KB01
5G066KB07
(57)【要約】
【課題】蓄電池を効率的に利用することで、負荷抑制による利用者の負担の軽減を図り、かつ、効率的に目標電力の超過の抑制を図る。
【解決手段】負荷抑制有り電力予測値と、負荷抑制無し電力予測値とに分けて、それぞれ1日のデマンド超過量と、蓄電容量との差分に基づいて、電力供給モードを選択する構成は従来にはなく、負荷抑制をする必要があるか否かを明確に判断することができ、かつ、蓄電池32の蓄電量の温存も可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷設備で消費する電力の供給源として、少なくとも系統から供給される系統電力及び蓄電池から放電される蓄電池電力を備えた電力デマンド制御装置であって、
予め設定した制御単位の期間において、前記負荷設備の電力消費を予め定めた量又は比率で抑制した場合の抑制有り電力予測値、及び、前記負荷設備の電力消費を抑制しない場合の抑制無し電力予測値、の各々を予測する予測部と、
前記予測部で予測した、前記抑制有り電力予測値及び前記抑制無し電力予測値と、前記系統電力から受ける電力として設定された前記制御単位の期間での目標電力との差分に基づいて、前記蓄電池の放電を優先する放電優先モード、及び前記負荷設備の電力消費の抑制を優先する負荷抑制優先モードを含む複数の電力供給モードを選択する選択部と、
を有する電力デマンド制御装置。
【請求項2】
負荷設備で消費する電力の供給源として、少なくとも系統から供給される系統電力及び蓄電池から放電される蓄電池電力を備えた電力デマンド制御装置であって、
予め設定した制御単位の期間を複数の時間帯に区画し、区画した前記時間帯毎に、前記負荷設備の電力消費を予め定めた量又は比率で抑制した場合の抑制有り電力予測値、及び、前記負荷設備の電力消費を抑制しない場合の抑制無し電力予測値、の各々を予測する予測部と、
前記予測部で予測した、前記抑制有り電力予測値及び前記抑制無し電力予測値の各々から前記系統電力から受ける電力として設定された前記制御単位の期間での目標電力を差し引いた差分を前記制御単位の期間で合計した合計値と、前記蓄電池の蓄電容量と、の比較結果に基づいて、前記蓄電池の放電を優先する放電優先モード、及び前記負荷設備の電力消費の抑制を優先する負荷抑制優先モードを含む複数の電力供給モードを選択する選択部と、
を有する電力デマンド制御装置。
【請求項3】
前記差分が、マイナスの場合は0に置き換える、請求項2記載の電力デマンド制御装置。
【請求項4】
前記負荷設備で消費する電力の供給源として、再生可能エネルギー発電による発電電力をさらに備え、前記予測部で予測した前記抑制有り電力予測値及び前記抑制無し電力予測値から、前記発電電力で発電した電力分を差し引いて、前記制御単位の期間での目標電力との差分を得る、請求項1~請求項3の何れか1項記載の電力デマンド制御装置。
【請求項5】
前記選択部の選択条件として、
前記目標電力に対する前記抑制無し電力予測値の超過分が、前記蓄電池の蓄電容量の上位しきい値未満か否かの第1条件、
前記目標電力に対する前記抑制有り電力予測値の超過分が、前記蓄電池の蓄電容量の前記上位しきい値よりも低い下位しきい値未満か否かの第2条件、及び、
前記目標電力に対する前記抑制有り電力予測値の超過分が、前記蓄電池の蓄電容量の前記上位しきい値未満か否かの第3条件を設定し、
前記第1条件が成立の場合は、前記電力供給モードとしての放電優先モードを選択し、
前記第1条件が不成立、かつ前記第2条件が成立の場合は、制御単位の期間で負荷抑制分を配分し、かつ、前記電力供給モードとしての放電優先モードを選択し、
前記第1条件が不成立、かつ、前記第2条件が不成立、かつ前記第3条件が成立の場合は、前記電力供給モードとしての負荷抑制優先モードを選択し、
前記第1条件が不成立、かつ、前記第2条件が不成立、かつ前記第3条件が不成立の場合は、前記電力供給モードとしての負荷抑制優先モードを選択し、かつ、前記目標電力を再設定する、
請求項1から請求項4の何れか1項記載の電力デマンド制御装置。
【請求項6】
前記上位しきい値及び前記下位しきい値は、前記蓄電池の満充電時の容量に対して各々、前記予測部の予測精度に依存した所定の安全率を設定した値である、請求項5記載の電力デマンド制御装置。
【請求項7】
前記負荷抑制優先モードの負荷抑制の制御量が、所定の幅を持って指令を受けており、指令を受けた制御量が予め定めた最大制御量ではない場合、かつ、所定条件が成立した場合、前記最大制御量を限度として、指令に対して負荷抑制の制御量を増加し、増加に応じた電力余剰分を前記蓄電池へ充電する、請求項1~請求項6の何れか1項記載の電力デマンド制御装置。
【請求項8】
コンピュータを、
請求項1から請求項7の何れか1項記載の電力デマンド制御装置として動作させる、
電力デマンド制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷設備で消費する電力の供給源として、少なくとも系統からの系統電力及び蓄電池からの蓄電池電力を備え、前記電力の供給源を選択する電力デマンド制御装置、電力デマンド制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、負荷設備で消費する電力供給源として、系統電力から受電する電力と蓄電池からの放電による電力とを併用する電力システムが適用されている。なお、電力システムとしては、太陽光発電(再生可能エネルギーの代表例)による電力を電力供給源に加える場合もある。
【0003】
ところで、契約電力又は目標電力と称して、系統電力から供給を受ける電力を制限することがある(以下、目標電力という)。
【0004】
目標電力を超過しないように制御するデマンド制御において、超過分の抑制動作として、負荷抑制又は蓄電池放電を実行する必要がある。
【0005】
特許文献1には、蓄電池を備えたデマンド制御に関する技術として、外部から切り替えることができる複数のモードを設け、モード毎に充放電電力を求める演算式を定義し、モードによって演算式を切り替えて充放電電力を算出し、この値を蓄電池設備に通知することが記載されている。
【0006】
なお、特許文献1には、モード例として、1のモード(充放電電力=調整電力値)、2のモード(充放電電力=調整電力値+投入可能な負荷電力容量)、及び、3のモード(充放電電力=調整電力値-遮断可能な負荷電力容量)が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、蓄電池を備えたデマンド制御に関する技術として、ピークが予測されるときは、予め蓄電池を充電しておくこと、及び、蓄電池が満充電でもピークに対応できない場合は、蓄電池がピーク対応中に容量枯渇しないように、予め目標電力(契約電力)を変更(嵩上げ)することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-205454号公報
【特許文献2】特開2009-284586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1等の従来技術では、抑制動作(蓄電池放電及び負荷抑制)の優先順位が予め決められている、又は、予め択一的に決められており、超過の推移によっては、適切な抑制動作として機能しない場合があり、蓄電池を効率的に利用できず、また、負荷抑制により利用者に負担を強いることになる。
【0010】
また、特許文献2等の従来技術では、負荷抑制等の他の抑制動作と組み合わせた対策になっていないので、蓄電池を最大限活用できる運用にならない。すなわち、ピーク予測がずれたときの対策が不十分であり、想定以上の負荷があった場合にはピーク対応中に蓄電池が枯渇する、又は、想定よりも負荷が少なかった場合には蓄電池が必要以上に温存されたまま目標電力の嵩上げ更新が実行されることになり、効率的に目標電力の超過の抑制を図ることができない。
【0011】
本発明は、蓄電池を効率的に利用することで、負荷抑制による利用者の負担の軽減を図り、かつ、効率的に目標電力の超過の抑制を図ることができる電力デマンド制御装置、電力デマンド制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明に係る電力デマンド制御装置は、負荷設備で消費する電力の供給源として、少なくとも系統から供給される系統電力及び蓄電池から放電される蓄電池電力を備えた電力デマンド制御装置であって、予め設定した制御単位の期間において、前記負荷設備の電力消費を予め定めた量又は比率で抑制した場合の抑制有り電力予測値、及び、前記負荷設備の電力消費を抑制しない場合の抑制無し電力予測値、の各々を予測する予測部と、前記予測部で予測した、前記抑制有り電力予測値及び前記抑制無し電力予測値と、前記系統電力から受ける電力として設定された前記制御単位の期間での目標電力との差分に基づいて、前記蓄電池の放電を優先する放電優先モード、及び前記負荷設備の電力消費の抑制を優先する負荷抑制優先モードを含む複数の電力供給モードを選択する選択部と、を有している。
【0013】
第2の発明に係る電力デマンド制御装置は、負荷設備で消費する電力の供給源として、少なくとも系統から供給される系統電力及び蓄電池から放電される蓄電池電力を備えた電力デマンド制御装置であって、予め設定した制御単位の期間を複数の時間帯に区画し、区画した前記時間帯毎に、前記負荷設備の電力消費を予め定めた量又は比率で抑制した場合の抑制有り電力予測値、及び、前記負荷設備の電力消費を抑制しない場合の抑制無し電力予測値、の各々を予測する予測部と、前記予測部で予測した、前記抑制有り電力予測値及び前記抑制無し電力予測値の各々から前記系統電力から受ける電力として設定された前記制御単位の期間での目標電力を差し引いた差分を前記制御単位の期間で合計した合計値と、前記蓄電池の蓄電容量と、の比較結果に基づいて、前記蓄電池の放電を優先する放電優先モード、及び前記負荷設備の電力消費の抑制を優先する負荷抑制優先モードを含む複数の電力供給モードを選択する選択部と、を有している。
【0014】
第2の発明において、前記差分が、マイナスの場合は0に置き換える、ことを特徴としている。
【0015】
第1の発明又は第2の発明において、前記負荷設備で消費する電力の供給源として、再生可能エネルギー発電による発電電力をさらに備え、前記予測部で予測した前記抑制有り電力予測値及び前記抑制無し電力予測値から、前記発電電力で発電した電力分を差し引いて、前記制御単位の期間での目標電力との差分を得る、ことを特徴としている。
【0016】
第1の発明又は第2の発明において、前記選択部の選択条件として、前記目標電力に対する前記抑制無し電力予測値の超過分が、前記蓄電池の蓄電容量の上位しきい値未満か否かの第1条件、前記目標電力に対する前記抑制有り電力予測値の超過分が、前記蓄電池の蓄電容量の前記上位しきい値よりも低い下位しきい値未満か否かの第2条件、及び、前記目標電力に対する前記抑制有り電力予測値の超過分が、前記蓄電池の蓄電容量の前記上位しきい値未満か否かの第3条件を設定し、前記第1条件が成立の場合は、前記電力供給モードとしての放電優先モードを選択し、前記第1条件が不成立、かつ前記第2条件が成立の場合は、制御単位の期間で負荷抑制分を配分し、かつ、前記電力供給モードとしての放電優先モードを選択し、前記第1条件が不成立、かつ、前記第2条件が不成立、かつ前記第3条件が成立の場合は、前記電力供給モードとしての負荷抑制優先モードを選択し、前記第1条件が不成立、かつ、前記第2条件が不成立、かつ前記第3条件が不成立の場合は、前記電力供給モードとしての負荷抑制優先モードを選択し、かつ、前記目標電力を再設定する、ことを特徴としている。
【0017】
第1の発明又は第2の発明において、前記上位しきい値及び前記下位しきい値は、前記蓄電池の満充電時の容量に対して各々、前記予測部の予測精度に依存した所定の安全率を設定した値である、ことを特徴としている。
【0018】
第1の発明又は第2の発明において、前記負荷抑制優先モードの負荷抑制の制御量が、所定の幅を持って指令を受けており、指令を受けた制御量が予め定めた最大制御量ではない場合、かつ、所定条件が成立した場合、前記最大制御量を限度として、指令に対して負荷抑制の制御量を増加し、増加に応じた電力余剰分を前記蓄電池へ充電する、ことを特徴としている。
【0019】
本発明に係る電力デマンド制御プログラムは、コンピュータを、第1の発明又は第2の発明に係る電力デマンド制御装置として動作させる、ことを特徴としている。
【0020】
第1の発明によれば、予測部では、予め設定した制御単位の期間において、負荷設備の電力消費を予測する場合に、負荷設備の電力消費を予め定めた量又は比率で抑制した場合の抑制有り電力予測値、及び、負荷設備の電力消費を抑制しない場合の抑制無し電力予測値、の各々を予測する。
【0021】
選択部では、予測部で予測した、抑制有り電力予測値及び抑制無し電力予測値と、系統電力から受ける電力として設定された制御単位の期間での目標電力との差分に基づいて、蓄電池の放電を優先する放電優先モード、及び負荷設備の電力消費の抑制を優先する負荷抑制優先モードを含む複数の電力供給モードを選択する。
【0022】
第2の発明では、予測において、予め設定した制御単位の期間を複数の時間帯に区画し、区画した前記時間帯毎に、負荷設備で消費される電力を予測する場合に、負荷設備の電力消費を予め定めた量又は比率で抑制した場合の抑制有り電力予測値、及び、負荷設備の電力消費を抑制しない場合の抑制無し電力予測値、の各々を予測し、区画した時間帯毎の予測値(抑制有り電力予測値及び抑制無し電力予測値)の各々から系統電力から受ける電力として設定された制御単位の期間での目標電力を差し引いた差分を制御単位の期間で合計した合計値と、蓄電池の蓄電容量と、の比較結果に基づいて、蓄電池の放電を優先する放電優先モード、及び負荷設備の電力消費の抑制を優先する負荷抑制優先モードを含む複数の電力供給モードを選択する。なお、差分が、マイナスの場合は0に置き換えることが好ましい。
【0023】
なお、発電電力をさらに備えている場合は、予測部で予測した抑制有り電力予測値及び抑制無し電力予測値から、発電電力で発電した電力分を差し引いて、制御単位の期間での目標電力との差分を得る。
【0024】
選択部での選択の条件の一例(選択条件1~4)を示す。
【0025】
(選択条件1) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の上位しきい値未満の場合は、電力供給モードとしての放電優先モードを選択する。
【0026】
(選択条件2) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の上位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の下位しきい値未満の場合は、制御単位の期間で負荷抑制分を配分し、かつ、電力供給モードとしての放電優先モードを選択する。
【0027】
(選択条件3) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の上位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の下位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の上位しきい値未満の場合は、電力供給モードとしての負荷抑制優先モードを選択し、蓄電池を温存する。
【0028】
(選択条件4) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の上位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の下位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池の蓄電容量の上位しきい値以上の場合は、前記電力供給モードとしての負荷抑制優先モードを選択し、かつ、目標電力を再設定する。
【0029】
これにより、蓄電池を効率的に利用することで、蓄電池が必要以上に温存されてしまったり、デマンド制御中に枯渇することを避けて、かつ、負荷抑制による利用者への負担の軽減を図りながら、効率的に目標電力の超過の抑制を図ることができる。
【0030】
なお、負荷抑制優先モードが選択されているとき、当該負荷抑制優先モードにおいて、指令を受けた制御量が予め定めた最大制御量ではない場合、かつ、所定条件が成立した場合、最大制御量を限度として、指令に対して負荷抑制の制御量を増加し、増加に応じた電力余剰分を蓄電池へ充電するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した如く本発明では、蓄電池を効率的に利用することで、負荷抑制による利用者の負担の軽減を図り、かつ、効率的に目標電力の超過の抑制を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施の形態に係る電力デマンド制御が実行される需要家の設備を示す電力配線系統図である。
【
図2】本実施の形態に係る電力デマンド制御装置の制御ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る電力デマンド制御装置による制御を機能別に分類した機能ブロック図である。
【
図4】(A)は本実施の形態に適用される蓄電池の蓄電容量インジケータを示す概念図、(B)は電力デマンド制御稼働中に実行される蓄電池充電制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係る電力デマンド制御の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図5のフローチャートの流れに沿った処理を、視覚的に、入力値、設定値、演算、指示に分類して説明した詳細フロー図である。
【
図7】(A)及び(B)は、本実施の形態の実施例に係り、デマンド制御として、放電優先モードを選択するとき電力量特性図である。
【
図8】(A)及び(B)は、本実施の形態の実施例に係り、デマンド制御として、負荷抑制優先モードを選択するとき電力量特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、系統電力10から受電する需要側12が備える負荷設備14へ電力を供給するための電力配線系統図の一例を示している。なお、需要側12としては、例えば、大中小の工場、住宅、ビルディング等が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0034】
需要側12は、主電力計16を備えており、当該主電力計16の入力側には、系統電力10から電力が供給されるように配線されている。
【0035】
主電力計16の出力側は、受電設備18に接続されている。受電設備18は、例えば、ブレーカーや漏電遮断機等を含み、負荷設備14に電力を分配する役目を有する。
【0036】
本実施の形態における負荷設備14は、住宅を例にとると、空調設備及び照明設備等がある。
【0037】
負荷設備14には、受電設備18から、負荷設備14用の電力計20及び変圧器22を介して、電力が供給されるようになっている。
【0038】
また、本実施の形態の需要側12は、再生可能エネルギー発電として太陽光発電(以下、必要に応じてPV発電という場合がある)システムを有している。本実施の形態では、前記系統電力10から電力、及び、後述する蓄電池32から放電される電力に加え、PV発電を電力供給源の1つとして採用する。
【0039】
太陽光発電システムは、太陽光発電デバイス24を備えている。太陽光発電デバイス24は、太陽光の光を受けて充電する役目を有する。
【0040】
太陽光発電デバイス24は、パワーコンディショナー26、変圧器28、及びPV発電用の電力計30を介して、受電設備18に接続されている。
【0041】
さらに、本実施の形態において、需要側12は、蓄電池32を備えている。蓄電池32は、充電及び放電(以下、総称する場合、「充放電」という)が可能である。
【0042】
蓄電池32は、充電の際、蓄電池用の電力計34、変圧器36、及びパワーコンディショナー38を介して、電力が供給されるようになっている。また、蓄電池32は、放電の際、負荷設備14へ電力を供給する。
【0043】
蓄電池32の充放電は、蓄電池制御装置40からの指示で実行されるようになっている。
【0044】
主電力計16、電力計20、電力計30、電力計34、受電設備18、及び蓄電池制御装置40は、電力デマンド制御装置42に接続されている。電力デマンド制御装置42は、負荷設備14、並びに、蓄電池32を対象とした充放電制御を実行すると共に、受電設備18を介して、太陽光発電システムによる発電状態を監視する。
【0045】
この発電状態の監視のため、電力デマンド制御装置42では、目標電力を超過しないように制御するデマンド制御において、目標電力の超過分の抑制動作として実行し得る複数の電力供給モード(蓄電池放電を優先するか、及び負荷抑制を優先するか)を設定しておき、制御単位の期間(例えば、1日=24時間)での負荷抑制有り、及び負荷抑制無しの電力予測値と蓄電池の蓄電容量との比較に基づいて、当該特定期間での電力供給モードを適宜選択する。
【0046】
(電力デマンド制御装置42のハード構成)
図2に示される如く、電力デマンド制御装置42は、マイクロコンピュータ50を備えている。マイクロコンピュータ50は、CPU50A、RAM50B、ROM50C、入出力ポート(I/O)50D及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス50Eを含んで構成されている。ROM50Cには、本実施の形態に係る電力供給制御プログラムが記憶されており、CPU50Aが当該電力デマンド制御プログラムに従って動作することで、需要側12を対象として電力デマンド制御が実行される。なお、電力デマンド制御プログラムは、蓄電池制御装置40を制御するための蓄電制御プログラムを含む。
【0047】
なお、I/O50Dには、大規模記憶装置(例えば、ハードディスク)52が接続されている。電力供給プログラムは大規模記憶装置52に記憶してもよいし、図示しないUSBメモリやSDカード等の記憶媒体に記憶するようにしてもよい。
【0048】
また、I/O50Dには、インターフェイス(I/F)54を介して蓄電池制御装置40、I/F56を介して受電設備18がそれぞれ接続されている。さらに、I/O50Dには、主電力計16、負荷設備14用の電力計20、太陽光発電用の電力計30、蓄電池用の電力計34が接続されている。
【0049】
ところで、電力デマンド制御を実現するためには、蓄電池32に蓄電した電力を最大限に活用し、系統電力10からの買電力を低減するために、目標電力を設定し、受電電力の上限値を超えそうなときのための蓄電量を管理することが重要である。
【0050】
そこで、本実施の形態の電力デマンド制御装置42では、事前に(例えば、前日に)、将来の(例えば、明日の)負荷設備14の消費量や太陽光発電システムでの発電量の推移を予測し、蓄電池32の残量を制御して、電力デマンド制御として、放電優先モード又は負荷抑制優先モードの何れかの電力供給モードを実行するようにした。
【0051】
特に、本実施の形態では、負荷設備14における負荷を抑制しない場合の電力の予測(負荷抑制無し電力予測値)、負荷を抑制した場合の電力の予測(負荷抑制有り電力予測値)、及び、太陽光発電システムでの発電量の予測(PV発電量予測値)を行うようにしている。
【0052】
予測に関しては、例えば、前日に明日(制御当日)の負荷抑制無し電力予測値、負荷抑制有り電力予測値、及びPV発電量予測を実行する場合に、24時間単位で行うよりも細かい時間帯とした。本実施の形態では、予測の制御単位の期間を、制御当日を起算日とした24時間とし、制御単位の期間の推移を予測するようにしている。制御単位の期間は、例えば、30分毎に区画し(30分×48=24時間)、48区画毎に予測して、その合算値を利用する。
【0053】
ここで、予測精度が高いことが好ましいが、例えば、過去の蓄積データが少ない場合の予測精度の低下、或いは、急な天候変動による一時的な予測精度の低下等、様々な要因で予測精度が低下する場合がある。
【0054】
そこで、特に、PV発電量の予測精度を監視し、この予測精度に合わせて、蓄電池32の蓄電量に余裕を持たせるためのしきい値を設定することが好ましい。このしきい値の設定には、安全率(
図4(A)に示す安全率a及び安全率b、a>b)が利用される。
【0055】
図4(A)に示される如く、安全率a及び安全率bは、満充電時の蓄電量をそれぞれ一律減算する係数であり、満充電量×aが上位しきい値であり、満充電量×bが下位しきい値となる。
【0056】
なお、安全率a及び安全率bは、予測精度に応じて変動させ、予測精度が高ければ高いほど、安全率a及び安全率bは、「1」に近い数値となる。
【0057】
本実施の形態では、予測結果(負荷抑制無し電力予測値、負荷抑制有り電力予測値、及びPV発電量予測値)に基づき、電力供給モードを以下の場合分け(1)~(4)により選択する。
【0058】
(1) 目標電力に対する抑制無し電力予測値における電力の超過分が、蓄電池32に設定した上位しきい値未満の場合は、電力供給モードとして放電優先モードを選択する。
【0059】
選択理由は、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を十分賄えるためであり、抑制有り電力予測値と比較することなく、放電優先モードを選択する。なお、予測が外れ、予測以上に受電電力が高くなったときは、負荷抑制を行うようにしてもよい。
【0060】
(2) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池32に設定した上位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池に設定した下位しきい値未満の場合は、制御単位の期間で配分し、かつ、電力供給モードとして放電優先モードを選択する。
【0061】
選択理由は、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を賄えない可能性があるためであり、放電優先モードとするか、負荷抑制優先モードとするかを、抑制有り電力予測値と比較することで選択する。なお、蓄電池放電を優先することで、負荷抑制を軽減し、利用者への負担を減らすようにしてもよい。
【0062】
(3) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池32に設定した上位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池32に設定した下位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池に設定した上位しきい値未満の場合は、電力供給モードとして負荷抑制優先モードを選択する。
【0063】
選択理由は、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を賄えないためであり、蓄電池出力を温存し、負荷抑制優先モードを選択する。
【0064】
(4) 目標電力に対する抑制無し電力予測値の超過分が、蓄電池32に設定した上位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池32に設定した下位しきい値以上、かつ、目標電力に対する抑制有り電力予測値の超過分が、蓄電池32に設定した上位しきい値以上の場合は、電力供給モードとして負荷抑制優先モードを選択した上で、実装対策として、目標電力を再設定する。
【0065】
選択理由は、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を賄えないためであり、蓄電池出力を温存し、負荷抑制優先モードを選択すると共に、このままでは、蓄電池が枯渇してしまう可能性があるため、負荷抑制優先モードを選択した上で、蓄電池が枯渇せずに達成できる目標電力を設定する。
【0066】
図3は、電力デマンド制御装置42における、予測、及び予測結果に基づくモード選択のための制御の流れを示す機能ブロック図である。なお、
図3の各ブロックは機能別に分類したものであり、ハード構成を限定するものではない。例えば、一部又は全部が制御プログラムに基づき所謂ソフト的に動作するものであってもよい。
【0067】
外部情報受付部60は、電力予測をするための外部情報を受け付ける。外部情報としては、例えば、温度、湿度、日射量を含む気象データが挙げられる。
【0068】
外部情報受付部60で受け付けた外部情報は、電力予測部62へ送出され、電力予測が実行される。
【0069】
電力予測部62では、例えば、前記気象データを説明変数とし、予測結果を目的変数とする回帰分析を実行し、回帰モデル(演算式等)を作成する。この回帰モデルに基づき、予測値として、PV発電量予測値PVfiを取得すると共に、需要側12の負荷設備14における負荷を、負荷抑制無し、及び負荷抑制有りに条件設定し、負荷抑制無しの場合の電力予測値(負荷抑制無し電力予測値Lfi)と、負荷抑制有りの場合の電力予測値(負荷抑制有り電力予測値L’fi)を取得する。
【0070】
なお、PV発電量予測値PVfi、負荷抑制無し電力予測値Lfi、及び負荷抑制有り電力予測値L’fiは、外部情報として、直接受け付けるようにしてもよい。
【0071】
ここで、変数iは、前述した制御単位(24時間)を分割した各区画を示すものであり、本実施の形態では、各区画が30分なので、iは1~48の変数を取り得ることになる。演算では、変数iを1から48まで順次インクリメントして(i←i+1)、それぞれ48区画分のデータを取得する(以下、変数iについては同様である)。但し、制御単位及び区画数等は、上記数値に限定されるものではない。
【0072】
電力予測部62は、PV発電量減算部64に接続されている。電力予測部62は、取得したPV発電量予測値PVfi、負荷抑制無し電力予測値Lfi、及び負荷抑制有り電力予測値L’fiをPV発電量減算部64へ送出する。
【0073】
PV発電量減算部64では、負荷設備14に対する系統電力分を求めるため、負荷抑制無し電力予測値Lfi、及び負荷抑制有り電力予測値L’fiから、それぞれPV発電量予測値PVfiを差し引き、負荷抑制無し系統電力予測値Fiと、負荷抑制有り系統電力予測値F’iを得る((1)式、及び(2)式参照)。
【0074】
Fi=Lfi-PVfi・・・(1)
F’i=L’fi-PVfi・・・(2)
【0075】
PV発電量減算部64は、デマンド超過量演算部66に接続されている。PV発電量減算部64は、負荷抑制無し系統電力予測値Fi、及び負荷抑制有り系統電力予測値F’iをデマンド超過量演算部66に送出する。
【0076】
デマンド超過量演算部66には、目標電力記憶部68が接続されている。デマンド超過量演算部66では、PV発電量減算部64から負荷抑制無し系統電力予測値Fi、及び負荷抑制有り系統電力予測値F’iが入力されると、目標電力記憶部68から目標電力Pを読み出し、それぞれの差分、すなわち、負荷抑制無し系統電力予測値Fi、及び負荷抑制有り系統電力予測値F’iのそれぞれから目標電力Pを差し引いたデマンド超過量(負荷抑制無しデマンド超過量Oi及び負荷抑制有りデマンド超過量O’i)を演算する((3)式、及び(4)参照)。
【0077】
Oi=Fi-P・・・(3)
O’i=F’i-P・・・(4)
【0078】
なお、(3)式及び(4)の結果がマイナス(すなわち、Fi<P又はF’i<P)となった場合は、当該マイナスの値を0として扱う。言い換えれば、マイナス値は、超過量ではないので、超過量=0ということになる。
【0079】
デマンド超過量演算部66は、合算部70に接続されている。デマンド超過量演算部66は、変数iの1~48までの各区画の演算結果を合算部70に送出する。
【0080】
合算部70では、変数iの1~48までの各区画の演算結果を合算し、負荷抑制無しデマンド超過量合算値Oi total、負荷抑制有りデマンド超過量合算値O’i totalを演算する((5)式、及び(6)式参照)。
【0081】
Oi total=ΣOi(i=1~48)・・・(5)
O’i total=ΣO’i(i=1~48)・・・(6)
【0082】
合算部70は比較部72に接続されている。合算部70は、負荷抑制無しデマンド超過量合算値Oi total、負荷抑制有りデマンド超過量合算値O’i totalを比較部72へ送出する。
【0083】
また、比較部72は、蓄電池容量記憶部76及び安全率記憶部78にそれぞれ接続されており、合算部70からの入力に応じて、蓄電池容量記憶部76から蓄電池容量Mが読み出され、かつ、安全率記憶部78から安全率a及び安全率bが読み出される。
【0084】
図4(A)に示される如く、安全率aは、上位しきい値を設定する係数であり、安全率bは下位しきい値を設定する係数である。安全率記憶部78に記憶される安全率a及び安全率bは、別途実行される予測精度監視機能等によって、適宜更新することが好ましい。
【0085】
比較部72では、(5)式、及び(6)式で演算した、負荷抑制無しデマンド超過量合算値Oi total、負荷抑制有りデマンド超過量合算値O’i totalと、安全率を加味した蓄電容量とが、適宜比較され、比較結果は、電力供給モード選択部80へ送出される。
【0086】
比較部72及び電力供給モード選択部80での、比較及び選択の一例を、表1に示す。
【0087】
【0088】
電力供給モード選択部80は、電力供給実行指示部82に接続されている。電力供給モード選択部80は、選択結果(表1の(1)~(4)の何れか)を電力供給実行指示部82へ送出する。
【0089】
電力供給実行指示部82では、選択結果に基づいて、受電設備18及び/又は蓄電池制御装置40を制御して、選択された電力供給モードの実行を指示する。
【0090】
なお、選択結果が、(4)の場合、目標電力を変更する必要がある。そこで、電力供給実行指示部82では、目標電力変更部84に対して、目標電力の変更を指示する。目標電力変更部84では、電力供給実行指示部82の指示に基づき、目標電力記憶部68に記憶されている目標電力Pを変更する。
【0091】
以下に、本実施の形態の作用を、
図5のフローチャートに従い説明する。
【0092】
ステップ100では、外部情報(例えば、温度、湿度、日射量を含む気象データ)を受け付け、次いでステップ102へ移行して、電力予測が実行される。この電力予測では、PV発電量予測値PVfi、負荷抑制無し電力予測値Lfi、負荷抑制有り電力予測値L’fiを予測する。
【0093】
次のステップ104では、発電分を減算し、負荷抑制無し系統電力予測値Fi、及び負荷抑制有り系統電力予測値F’iを得て、ステップ106へ移行する。ステップ106では、目標電力Pを読み出し、ステップ108へ移行する。
【0094】
ステップ108では、目標電力Pに対するデマンド超過量(負荷抑制無しデマンド超過量Oi及び負荷抑制有りデマンド超過量O’i)を演算し、ステップ110へ移行する。
【0095】
ステップ110では、デマンド超過量の変数iの1~48までの各区画の演算結果を合算し、負荷抑制無しデマンド超過量合算値Oi total、負荷抑制有りデマンド超過量合算値O’i totalを得て、ステップ114へ移行する。
【0096】
ステップ114では、蓄電池容量Mを読み出し、次いで、ステップ116へ移行して、安全率a及び安全率bを読み出し、ステップ118へ移行する。
【0097】
ステップ118では、負荷抑制無しデマンド超過量合算値Oi total、負荷抑制有りデマンド超過量合算値O’i totalと、安全率を加味した蓄電容量とが、適宜比較され、ステップ120へ移行する。
【0098】
ステップ120では、比較結果に基づき、電力供給モードを選択する(表1参照)。
【0099】
次のステップ122では、受電設備18及び/又は蓄電池制御装置40を制御して、選択された電力供給モードの実行を指示し、ステップ124へ移行する。
【0100】
ステップ124では、ステップ120での選択結果が、表1の(4)か否か、すなわち、目標電力の変更が必要か否かを判断する。
【0101】
このステップ124の判定が肯定判定の場合は、目標電力の変更が必要と判断し、ステップ126へ移行して、目標電力の変更を指示し、このルーチンは終了する。また、ステップ124の判定が否定判定の場合は、目標電力の変更が必要ないと判断し、このルーチンは終了する。
【0102】
なお、本実施の形態では、蓄電池32の充電について言及しなかったが、一例として、
図4(B)に示される如く、電力デマンド制御の稼働中に、蓄電池32の充電を実行することが可能である。
【0103】
例えば、負荷抑制優先モードにおいて、負荷抑制の制御量が、所定の幅を持って指令を受けることが可能となっており、最大レベルよりも低いレベルで負荷抑制している場合(一部の機器の負荷を抑制している場合等)、最大レベル(全ての機器の負荷を抑制したときのレベル)を上限として、負荷抑制を増加し、その増加によって得た電力を蓄電池32の充電に用いる。これにより、蓄電池32の蓄電量を確保することができる。
【0104】
すなわち、
図4(B)に示される如く、電力デマンド制御の稼働中の蓄電池充電制御ルーチンでは、蓄電池32の蓄電残量SOCと、上限しきい値(=満充電量M×a)との比較において、SOC<(M×a)であり(ステップ130で肯定判定)、かつ、負荷抑制のレベルが予め定めた最大レベルではない(負荷抑制レベル<最大レベル)場合(ステップ132で肯定判定)、目標電力Pを超えないように、系統電力10から蓄電池32に充電する(ステップ134)ようにしてもよい。なお、ステップ130又はステップ132で否定判定された場合は、充電は待機する(ステップ136)。
【0105】
より具体的な実施例としては、1日の内、朝と夕方に電力ピークが予測される場合が考えられる。
【0106】
朝の電力ピークにおける負荷抑制優先モードの負荷抑制の制御量の指令レベル(負荷抑制のレベル)が、予め定めた最大レベルではない場合、かつ所定条件として夕方の電力ピークがしきい値以上の場合に、最大レベルを限度として朝の負荷抑制の制御量を増加する。この増加分を、蓄電池32に充電することで、夕方の電力ピークに備えることができる。
【0107】
所定条件は、単純なしきい値等の数値ではなく、例えば、気象予測サイトからの荒天による停電予測といった気象情報や、工事による停電といった事前告知情報等、蓄電池32による電力需要が増加する可能性のある需要増加情報を所定条件とし、需要増加情報を受けた場合を、所定条件の成立としてもよい。
【実施例0108】
以下に、上記実施の形態で説明した電力デマンド制御装置42を用いた処理の流れの詳細と(
図6参照)、その実施例(
図7及び
図8参照)を説明する。
【0109】
図6は、
図5のフローチャートの流れに沿った処理を、視覚的に、入力値、設定値、演算、指示に分類して説明したものである。凡例として、入力値は点線枠、設定値は実線枠、演算は太線実線枠、指示(指令)は二重枠としている。
【0110】
所定の流れ自体は、
図5のフローチャートと同一であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0111】
この
図6からわかるように、負荷抑制有り電力予測値と、負荷抑制無し電力予測値とに分けて、それぞれのデマンド超過量と、蓄電容量との差分に基づいて、電力供給モードを選択する構成は従来にはなく、負荷抑制をする必要があるか否かを明確に判断することができ、かつ、蓄電池32の蓄電量の温存も可能となる。
【0112】
図7(A)は、表1における(1)の電力供給モードが選択される状況を示す電力量特性図である。表1の(1)は、放電優先モード(1)であり、Oitotal<蓄電容量(安全率:上位基準レベルa)が肯定されることで実行される。
【0113】
すなわち、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を十分賄えるため、抑制有り電力予測値と比較することなく、放電優先モードを選択する。
【0114】
この
図7(A)では、目標電力Pを超過する電力は、蓄電池32の蓄電量に余裕を持って放電で賄うことができるため、負荷抑制有りにおける電力予測値を得ることなく、デマンド制御として、放電優先モードを実行する。また、この場合、負荷抑制は不要又は軽減される。なお、予測が外れて予定外に負荷が大きくなった時に、負荷抑制が発動するようにしてもよい。
【0115】
図7(B)は、表1における(2)の電力供給モードが選択される状況を示す電力量特性図である。表1の(2)は、放電優先モード(2)であり、Oitotal<蓄電容量(安全率:上位基準レベルa)が否定され、かつ、O’itotal<蓄電容量(安全率:下位基準レベルb)が肯定されることで実行される。
【0116】
すなわち、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を賄えない可能性があり、放電優先モードとするか、負荷抑制優先モードとするかを、抑制有り電力予測値と比較することで選択する。
【0117】
この
図7(B)では、目標電力Pを超過する電力は、表1の(1)に比べて蓄電池32の蓄電量に余裕はないが、放電で賄うことができるか否かの判断が難しい。その判断のため、負荷抑制無しにおける電力予測に加え、負荷抑制有りにおける電力予測値を得て電力供給モードを選択する。デマンド制御としては、放電優先モードを実行することで、負荷抑制は軽減される。
【0118】
図8(A)は、表1における(3)の電力供給モードが選択される状況を示す電力量特性図である。表1の(3)は、負荷抑制優先モード(3)であり、Oitotal<蓄電容量(安全率:上位基準レベルa)が否定され、かつ、O’itotal<蓄電容量(安全率:下位基準レベルb)が否定され、かつ、O’itotal<蓄電容量(安全率:上位基準レベルa)が肯定されることで実行される。
【0119】
すなわち、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を賄えないため、蓄電池出力を温存し、負荷抑制優先モードを選択する。
【0120】
この
図8(A)では、目標電力Pを超過する電力は、デマンド制御として、負荷抑制優先モードを実行する。この負荷抑制により、蓄電池32の蓄電量を温存することができる。
図8(A)の場合、超過電力を蓄電池放電だけでまかなうことはできないが、負荷抑制と併せて行うと、目標電力を変更しなくても賄えることができる。そのため、蓄電池を温存し、負荷抑制を優先するモードを選択する。
【0121】
図8(B)は、表1における(4)の電力供給モードが選択される状況を示す電力量特性図である。表1の(4)は、負荷抑制優先モード(4)であり、Oitotal<蓄電容量(安全率:上位基準レベルa)が否定され、かつ、O’itotal<蓄電容量(安全率:下位基準レベルb)が否定され、かつ、O’itotal<蓄電容量(安全率:上位基準レベルa)が否定されることで実行される。
【0122】
すなわち、蓄電池32の蓄電容量で、超過分を賄えないため、蓄電池出力を温存し、負荷抑制優先モードを選択すると共に、このままでは、負荷抑制を優先的に行った上で蓄電池から放電させても、目標電力を超過してしまうため、負荷抑制を優先的に行った上で蓄電池が枯渇しないような目標電力を再設定する。
【0123】
この
図8(B)では、超過電力を蓄電池でまかなうことができないため、蓄電池32の蓄電量が枯渇する可能性があるため、デマンド制御として、負荷抑制優先モードを実行する。
【0124】
さらに、負荷抑制を優先的に行った上で蓄電池を放電しても、蓄電池が枯渇することがないような目標電力の変更(主として、嵩上げ)が必要と判断する。