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  • 特開-フォトレジスト剥離組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107076
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】フォトレジスト剥離組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20230726BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20230726BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20230726BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20230726BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20230726BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G03F7/42
C11D7/32
C11D7/26
C11D7/50
C11D7/34
H05K3/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008175
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 遼
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿和
【テーマコード(参考)】
2H196
4H003
5E339
【Fターム(参考)】
2H196AA26
2H196LA03
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA09
4H003DB03
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB06
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB19
4H003EB20
4H003EB21
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA15
5E339AB06
5E339BC02
5E339BC03
5E339CC02
5E339CE12
5E339CF16
5E339CF17
5E339EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、硬化したレジストに対しても高い剥離性を示し、少量の水を含有する組成であっても、水蒸発時の剥離性の低下が少なく、CuやAlおよびSiなどの接液する基板構成金属の腐食を抑制することのできるフォトレジスト剥離組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】フォトレジスト剥離組成物であって、組成物が、(A)四級アンモニウムヒドロキシド、(B)糖アルコール、(C)アミン、(D)水、(E)DMSO、および(F)エチレングリコールを含み、(D)水の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%である組成物により上記課題が達成された。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト剥離組成物であって、
組成物が、(A)四級アンモニウムヒドロキシド、(B)糖アルコール、(C)アミン、(D)水、(E)DMSO、および(F)エチレングリコールを含み、
(D)水の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%である組成物。
【請求項2】
(A)の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、(B)の含有量が、組成物の全質量に対して0.1~20質量%であり、(C)の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~20質量%であり、(D)の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、(E)の含有量が、組成物の全質量に対して20~90質量%であり、および(F)の含有量が、組成物の全質量に対して1~10質量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(C)アミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルアミノエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、ジイソプロパノールアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(C)アミンが、2-(2-アミノエトキシ)エタノールまたは2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールである請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1atmにおける沸点が70℃以下である化合物を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(A)四級アンモニウムヒドロキシドが、下記一般式で表される化合物またはそれらの混合物であり、その含有量が1~5%である請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。)
【化1】
【請求項7】
(B)糖アルコールが、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、グリセリンから選ばれる少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物である請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
フォトレジストの剥離方法であって、金属配線を有する基板上に塗布されたフォトレジストまたはフォトレジスト残渣を含有する半導体基板と、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物とを接触させて、フォトレジストを除去することを含む、前記フォトレジストの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト剥離組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、シリコン基板やガラス基板に、Cuなどの金属配線パターンを形成するフォト卜リソグラフィにより製造される。フォトリソグラフィは、(1)半導体基板や金属膜上へのフォトレジストの塗布、(2)露光、現像による配線パターンの転写、(3)エッチングやめっきなどによる配線形成、加工、(4)フォトレジストの剥離の工程などにより行われる。
フォトレジストは有機膜であるため、レジスト溶解性の観点から、水含量の少ない、または非水系である剥離剤が望ましい。しかし、水含量の少ない剥離剤の場合、加熱処理時に水が蒸発し、剥離液組成物のバランスが崩れることでフォトレジストの剥離性が低下するという問題が生じ、また水を少量でも含む剥離液は、シリコンなどに対するダメージが生じ得る。したがって、水蒸発時における剥離性の低下が少なく、金属配線、Siなどの基板へのダメージの小さい剥離液が求められている。
また、レジストを効率よく剥離するためにはポリマー鎖を断片化し、液中への溶解性、分散性を向上させる必要がある。断片化はポリマー中のエステル結合が加水分解されることで達成されるため、剥離液にはアミンやアンモニウム塩水酸化物などの強塩基が含まれることが望ましいが、含水組成において強塩基を含む剥離液では、SiやAlにダメージが生じ得る。したがって、強塩基性でありながらSiやAlなどに対するダメージの小さい、水含量の少ない、または非水系である剥離剤が求められている。
また剥離剤は、エッチングやめっきプロセス後に、不要となったフォトレジスト皮膜を除去するために使用されるが、エッチングやめっきプロセスにおいてフォトレジストは硬化し、しばしば剥離が困難となる。したがって、硬化レジストを除去可能な剥離剤が求められている。
【0003】
特許文献1には、THAH、EG、DMSOを混合した組成物、および、THAH、PG、DMSOを混合した水を含まない組成物が開示されている。
特許文献2には、THAH、EG、DMSOを混合した組成物などの、イオン注入工程の後にフォトレジストを剥離するのに有用な実質的に水分を含まないフォトレジスト剥離用組成物が記載されている。
【0004】
特許文献3には、DMSO、TMAH、アルカノールアミン、腐食抑制剤、水を含むフォトレジストストリッパー溶液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-317714
【特許文献2】特開2013-500503
【特許文献3】特開2019-113848
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のフォトレジスト剥離剤では、過度に硬化したフォトレジストに対して剥離性が不十分であること、金属配線、Siなどの基板へのダメージがあること、水を含むと蒸発時に剥離性が低下すること、原料および製造コストが高いことなどが問題であった。
本発明の課題は、上記従来の問題に鑑み、硬化したレジストに対しても高い剥離性を有し、少量の水を含有する組成であっても、水蒸発時の剥離性の低下が少なく、金属配線、Siなどの基板へのダメージの小さい剥離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のとおり、高いレジスト溶解性のためには非水系である剥離剤が好ましいが、剥離剤において頻繁に使用される第四級アンモニウム塩は、通常、水溶液として製造、販売されているため、非水系剥離液のためには、水を取り除く必要がある。そのための手段として、第四級アンモニウム塩の有機溶媒溶液を用いることが挙げられるが、第四級アンモニウム塩の有機溶媒溶液は水溶液に比べて価格が高いというデメリットがあり、一方、第四級アンモニウム塩の水溶液から水を蒸発させるのには製造に手間とコストがかかる。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行う中で、フォトレジスト剥離組成物であって、組成物が、(A)四級アンモニウムヒドロキシド、(B)糖アルコール、(C)アミン、(D)水、(E)DMSO、および(F)エチレングリコールを含み、(D)水の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%である組成物が、少量の水を含有する組成であっても、水蒸発時の剥離性の低下が少なく、金属配線、Siなどの基板へのダメージの小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]フォトレジスト剥離組成物であって、組成物が、(A)四級アンモニウムヒドロキシド、(B)糖アルコール、(C)アミン、(D)水、(E)DMSO、および(F)エチレングリコールを含み、(D)水の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%である組成物。
[2](A)の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、(B)の含有量が、組成物の全質量に対して0.1~20質量%であり、(C)の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~20質量%であり、(D)の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、(E)の含有量が、組成物の全質量に対して20~90質量%であり、および(F)の含有量が、組成物の全質量に対して1~10質量%である[1]に記載の組成物。
[3](C)アミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルアミノエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、ジイソプロパノールアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4](C)アミンが、2-(2-アミノエトキシ)エタノールまたは2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールである[1]~[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]1atmにおける沸点が70℃以下である化合物を含まない、[1]~[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6](A)四級アンモニウムヒドロキシドが、下記一般式で表される化合物またはそれらの混合物であり、その含有量が1~5%である[1]~[5]のいずれか1つに記載の組成物。
(R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。)
【化1】
[7](B)糖アルコールが、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、グリセリンから選ばれる少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物である[1]~[6]のいずれか1つに記載の組成物。
[8]フォトレジストの剥離方法であって、金属配線を有する基板上に塗布されたフォトレジストまたはフォトレジスト残渣を含有する半導体基板と、[1]~[7]のいずれか1つに記載の組成物とを接触させて、フォトレジストを除去することを含む、前記フォトレジストの剥離方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成では、強塩基性の含水組成でありながら、金属配線、Siなどの基板へのダメージを与えることなく高い剥離性を実現可能なため、金属との選択性を要する難度の高い工程に適用可能である。またSi、Al、Cuなどを同時に防食しつつ高い剥離性を実現できるため、より難度の高い工程にも適用できる。さらに水の蒸発による剥離性の低下がないため、長時間の使用が可能であり、液交換回数を減らすことができる。また従来の非水系で強塩基を含む剥離液と比較し、製造コストが安価である。よってコスト低減、環境負荷低減が可能である。
特に、DMSOに加えて添加剤としてEGを適用する場合、添加剤として1,3-PGなどを適用する場合などと比較して剥離性が大きく向上した。さらに、添加剤としてEGを適用する場合、添加剤として1,3-PGなどを適用する場合などと比較して、Si防食性が大きく向上した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、TMAH1%,HO3~50%,溶媒(残部)を含む組成物の、25℃におけるモル電気伝導度を評価した結果を示す。モル電気伝導度は、TMAHの電離度と正の相関がある。TMAHの電離度が高いほど、溶液の塩基性が高いため、モル電気伝導度から塩基性の強さについて傾向を得ることができる。
図2図2は、TMAH1%,HO3~50%,DMSO/共溶媒(1:1mol)残部を含む組成物の、25℃におけるモル電気伝導度を評価した結果を示す。モル電気伝導度は、TMAHの電離度と正の相関がある。TMAHの電離度が高いほど、溶液の塩基性が高いため、モル電気伝導度から塩基性の強さについて傾向を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
本発明のフォトレジスト剥離組成物は、フォトレジスト剥離組成物であって、組成物が、(A)四級アンモニウムヒドロキシド、(B)糖アルコール、(C)アミン、(D)水、(E)DMSO、および(F)エチレングリコールを含み、(D)水の含有量が、組成物の全質量に対して1.0~10質量%である組成物である。水含量が少なく、水蒸発時の剥離性の低下が少なく、金属配線、およびSiのダメージが小さい。
本明細書において、数値範囲「a~b」は「a以上b以下」を意味する。
【0012】
以下、本発明の組成物に含まれる各成分について説明する。
(A)
四級アンモニウムヒドロキシドは、下記一般式で表される化合物またはそれらの混合物である。
【化2】
(R、R、R、Rは、それぞれ独立してアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。)
【0013】
四級アンモニウムヒドロキシドは、下記一般式で表される化合物またはそれらの混合物である。
【化3】
(R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。)
【0014】
四級アンモニウムヒドロキシドは、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化コリン、水酸化ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化モノメチルトリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、などがあげられる。好ましくは、溶解性、コストなどの観点から、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)または水酸化テトラエチルアンモニウムまたは水酸化コリンおよび水酸化エチルトリメチルアンモニウムからなる群から選択される1種以上である。より好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウムである。
ある態様において、四級アンモニウムヒドロキシドは、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む。ある態様において、四級アンモニウムヒドロキシドは、水酸化テトラメチルアンモニウムを、四級アンモニウムヒドロキシド全体に対して、1質量%以上含む。
(A)四級アンモニウムヒドロキシドの含有量は、特に限定されないが、好ましくは組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、より好ましくは、金属ダメージ抑制、水含量抑制の観点から、1.0%~5.0%、より好ましくは1.0%~3.0%である。
【0015】
(B)糖アルコールは、Alの腐食抑制剤として寄与する成分である。糖アルコールは、例えばソルビトール、グリセリンなどである。好ましくは、糖アルコールは、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトールおよびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物である。糖アルコールは、d体、l体、またはラセミ体でもよい。
(B)糖アルコールの含有量は、特に限定されないが、好ましくは組成物の全質量に対して0.1~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0016】
(C)アミンを混合した場合、アンモニウム塩のヒドロキシイオン(OH)とアミノ基(-NH)の2種の活性種でレジストを分解できるためより高い剥離性が得られる。
(C)アミンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは組成物の全質量に対して1.0~20質量%であり、より好ましくは1.0~15質量%である。
【0017】
アミンは、好ましくはアミノアルコールである、より好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルアミノエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、ジイソプロパノールアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物またはそれらの混合物である。剥離性が高く、また特にCuに対するダメージが小さいという観点から、アミンは、より好ましくは、2-(2-アミノエトキシ)エタノールまたは2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールである。
【0018】
(D)水の含有量は、組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、レジスト溶解性などの観点から、好ましくは1.0~6.0質量%である。
【0019】
(E)ジメチルスルホキシド(DMSO)は、溶媒として寄与する成分である。(E)DMSOの含有量は、特に限定されないが、好ましくは組成物の全質量に対して20~90質量%であり、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは60~85質量%である。
本発明者らは、DMSOが、アルキルアンモニウム水酸化物と混合した場合に、一般的に用いられるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)などの他の溶媒と比較して、塩基性が高い溶液となり、低濃度の水で高い塩基性を実現できることを見出した。
図1は、各溶媒の水濃度に対する、TMAHのモル電気伝導度を示す図である。モル電気伝導度は、TMAHの電離度と正の相関がある。TMAHの電離度が高いほど、溶液の塩基性が高いため、モル電気伝導度から塩基性の強さについて傾向を得ることができる。TMAHは、他の溶媒と比較して、DMSO中において、低い水濃度で高いモル電気伝導度を示している。即ち、TMAHはDMSO中において、低い水濃度で高い塩基性を有していると考えられ、少量の水と組み合わせるのに好適であると考えられる。なお、アセトンも良好な結果を示しているが、引火点と沸点が低いため剥離液には適していない。
【0020】
本発明の組成物は、溶媒としてDMSOを含むが、DMSOと他の溶媒を組み合わせて用いることもできる。好ましい溶媒としては、剥離性が維持されるまたは向上するという観点から、グリコールエーテル系溶媒およびアミド系溶媒が挙げられる。
図1で示した通り、グリコールエーテル系溶媒やアミド系溶媒を単一で用いた場合にはTMAH溶液のモル電気伝導度が低く、剥離性が悪い。図2は、図1中で示した溶媒とDMSOとを混合した場合の、水濃度に対するTMAH溶液のモル電気伝導度を示す図である。DMSOとの混合により、グリコールエーテル系溶媒およびアミド系溶媒単一の場合(図1)と比較して、水のモル分率が0.5以下の範囲において、モル電気伝導度の値が大きくなっている。すなわち、低水濃度においてTMAH溶液の塩基性が増強されていると考えられる。従って、グリコールエーテル系やアミド系溶媒は、DMSOと混合することで剥離液として有効な溶媒になると考えられる。
グリコールエーテル系溶媒としては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。
アミド系溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンなどが挙げられる。好ましくはN-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどである。
【0021】
本発明の組成物は、(F)エチレングリコールを含む。(F)エチレングリコールの含有量は限定されないが、好ましくは組成物の全質量に対して1.0~10質量%であり、より好ましくは5.0~10質量%である。
【0022】
ある態様において、本発明の組成物は、1atmにおける沸点が70℃以下である化合物を含まない。1atmにおける沸点が70℃以下である化合物は、例えば、アセトン、メタノールなどがあげられる。
【0023】
本発明の組成物は任意成分として、例えば界面活性剤、Cu防食剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベタインなどが使用され得る。
界面活性剤は、組成物の全質量に対して、例えば、0.01~3.0質量%含んでもよい。
Cu防食剤は、例えばイミダゾール、ベンゾトリアゾール、アデニンなどが使用され得る。
Cu防食剤は、組成物の全質量に対して、例えば、0.01~3.0質量%含んでもよい。
【0024】
本発明の組成物は、1.0~10質量%の水を含んでいても、水が蒸発した後も良好な剥離性が維持される。その理由は必ずしも明らかではないが、水の役割の一つと考えられるレジストを膨潤させる効果を、エチレングリコールが有していると考えられる。エチレングリコールは水と比較して高沸点であり蒸発しにくい。そのため、水が蒸発した後でもエチレングリコールが残存していれば良好な剥離性が維持されると考えられる。エチレングリコールの添加量が多すぎると、水蒸発前の剥離性が低下してしまい、エチレングリコールの添加量が少なすぎると、水蒸発後の剥離性が低下してしまう。そのため、エチレングリコールを水濃度と同程度の質量%で添加することが望ましい。またエチレングリコールは、剥離性の維持に寄与するだけではなく、剥離性を向上し、さらには、金属配線、およびSiのダメージを減らすことにも寄与していると考えられる。
【0025】
本発明の組成物は、金属配線を有する基板上に塗布されたフォトレジストを除去するための組成物である。
Cuバンプ形成プロセスでは、基板にフォトレジストを塗布後、露光、現像によるレジストパターニングが行われ、レジスト開口部をCuめっきで埋めて、レジストを剥離することによりCuバンプを形成する。本発明のフォトレジスト剥離組成物は当該プロセスにおいて、ウェットプロセスでフォトレジストを剥離する際に用いることができる。
また、エッチングによるCu配線形成プロセスでは、基板にCu膜を製膜後、フォトレジストを塗布し、露光、現像によるレジストパターニングが行われ、Cuエッチングが行われた後、Cu配線に積層されて残ったフォトレジストをウェットプロセスで剥離する際に用いることができる。
【0026】
本発明は、ある態様において、フォトレジストまたはフォトレジスト残渣を含有する半導体基板を、本発明の組成物と接触させて、フォトレジストまたはフォトレジスト残渣を除去することを含むフォトレジストの剥離方法にも関する。
フォトレジストを含有する基板とは、例えば、上記Cuバンプ形成プロセスまたは配線形成プロセスにおいて形成された、CuおよびAlなどの金属配線を有する基板上に塗布されたフォトレジスト等を指す。
フォトレジスト残渣とは、本発明の組成物と接触させる前に、フォトレジスト除去処理をおこなった後に残留するフォトレジストである。よって、フォトレジスト残渣を含有する基板としては、例えば、酸素プラズマでレジストをおおまかに除去(アッシング)した後にレジストが残留している基板等が挙げられる。
【0027】
いくつかの態様において、フォトレジスト剥離方法は:(A)フォトレジストコーティングを有する半導体基板を提供するステップと;(B)上記フォトレジストコーティングを有する半導体基板を、本発明の剥離組成物に曝露させ、フォトレジストを除去するステップと;(C)フォトレジストを除去した半導体基板を超純水、または2-プロパノールと超純水で洗浄し、剥離液組成物を基板上から除去するステップと;(D)乾燥するステップとを含む。
半導体基板は、特に限定されないが、通常、シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭化物、チタン酸化物、アルミニウム酸化物、酸化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウムなどから構成される。
基板を構成する配線材料や接点材料および電極材料などにおける金属および金属合金は、限定されないが、銅、アルミニウム、銅によって合金化されたアルミニウム、ケイ素によって合金化されたアルミニウム、チタン、コバルト、タングステン、ルテニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、パラジウム、金、銀、酸化インジウムスズ、IGZOなどが挙げられる。
【0028】
いくつかの態様において、剥離組成物は、約25~約90℃で使用され得る。いくつかの態様において、剥離組成物は、約40℃~約80℃の温度範囲で用いられ得る。いくつかの態様において、剥離組成物は、約50℃~約70℃の温度範囲で用いられ得る。
剥離時間は、レジスト種、熱履歴などに応じて変動し得る。バッチ処理において剥離されるとき、好適な時間範囲は、通常、約5~30分である。
【実施例0029】
本発明を以下の実施例と比較例とともに示し、発明の内容をさらに詳細に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
溶媒、試薬などは以下のものを使用した。
DMSO(ジメチルスルホキシド);関東化学株式会社製
MEA(モノエタノールアミン);関東化学株式会社製
TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド);関東化学株式会社製
D-Sor(D-ソルビトール);関東化学株式会社製
EG(エチレングリコール);関東化学株式会社製
EDG(ジエチレングリコールモノエチルエーテル);関東化学株式会社製
DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン);関東化学株式会社製
NMP(N-メチル-2-ピロリドン);関東化学株式会社製
DEA(ジエタノールアミン);関東化学株式会社製
TEA(トリエタノールアミン);関東化学株式会社製
MeMEA(N-メチルモノエタノールアミン);関東化学株式会社製
AEE(2-(2-アミノエトキシ)エタノール);東京化成工業株式会社製
DIPA(ジイソプロパノールアミン);東京化成工業株式会社製
THFA(テトラヒドロフルフリルアルコール);関東化学株式会社製
TEAH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド);東京化成工業株式会社製
TBAH(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド);東京化成工業株式会社製
1,2-PG(1,2-プロパンジオール);関東化学株式会社製
1,3-PG(1,3-プロパンジオール);東京化成工業株式会社製
ジメチルAEE(2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール);東京化成工業株式会社製
【0030】
剥離組成物の調製およびその評価を下記のとおり行った。
【0031】
[剥離組成物の調製]
下表に示す濃度で各成分を配合させ、剥離組成物を調製した。
【0032】
[剥離性評価]
剥離性の評価は銅スパッタ膜上にアルカリ現像ネガレジストを塗布、パターニングしたあと、銅めっきにより銅バンプを形成したSi基板を用いた。剥離処理は60℃で10分間剥離液に浸漬することで行った。剥離液浸漬終了後、水のオーバーフローリンスを1分間行い窒素ブローにより基板を乾燥させた。乾燥した基板を光学顕微鏡で観察することで剥離性を評価した。
【0033】
剥離性の評価は3段階であり、〇、△、×は以下の意味を表す。
○:剥離性良好(レジスト残渣無し)
△:概ね剥離性良好(僅かにレジスト残渣あり)
×:剥離性不十分(レジスト残渣あり)
【0034】
[AlCuダメージ評価]
AlCuダメージの評価は100nmのAlCuスパッタ膜を成膜したSi基板を用いた。60℃で10分間基板を剥離液に浸漬したあと、水のオーバーフローリンスを1分間行い窒素ブローにより基板を乾燥させた。乾燥した基板のAlCu膜厚を波長分散型蛍光X線装置を用いて分析し、エッチング速度(nm/min)を算出した。
【0035】
AlCuダメージ評価は、2段階であり、〇、×は以下の意味を表す。
〇:AlCuエッチング速度≦0.5nm/min
×:AlCuエッチング速度>0.5nm/min
【0036】
【表1】
添加剤であるEGの添加により、剥離性は向上した(実施例1、比較例1)。
EDGは、単独で溶媒として用いた場合は剥離性が不良であるが(比較例2)、DMSOと混合することで良好な剥離性を示した(実施例2)。その他、DMSOと混合して良好な剥離性を示した溶媒は、DMI、NMPのアミド系溶媒であった(実施例2,3,4)。
アミンは、MEA、DEA、TEA、MeMEA、AEE、DIPAが比較的良好な剥離性を示した。なかでもAEEはMEAとほぼ同等の優れた剥離性であった(実施例1,5,6,7,8,9)。
アンモニウム塩としてはTMAH以外にTEAH、TBAH、コリンも良好な剥離性を示した(実施例10,11,12)。
D-ソルビトール以外のAl防食剤としてはキシリトール、D-マンニトール、meso-エリスリトール、グリセリンなどが有効であった(実施例13,14,15,16)。
添加剤としてEGを適用する場合(実施例1)、1,3-PGを適用する場合(比較例3)と比較して剥離性が大きく向上した。
【0037】
[Cuダメージの評価]
Cuダメージの評価は100nmのCuスパッタ膜を成膜したSi基板を用いた。60℃で10分間基板を剥離液に浸漬したあと、水のオーバーフローリンスを1分間行い窒素ブローにより基板を乾燥させた。乾燥した基板の銅膜厚を波長分散型蛍光X線装置を用いて分析し、エッチング速度(nm/min)を算出した。
(評価)
〇:Cuエッチング速度≦0.5nm/min
△:0.5nm/min<Cuエッチング速度≦3.0nm/min
×:Cuエッチング速度>3.0nm/min
【0038】
【表2】
【0039】
AEEまたはジメチルAEEを使用すると、剥離性を維持しつつCuダメージを抑制可能であった(実施例17,18)。MEAを使用した場合は、剥離性は良好であり、Cuダメージ抑制も概ね良好であった(実施例19)。AEEとジメチルAEE以外では、DEAやTEA添加組成でもCuダメージが抑制可能であり、剥離性も概ね良好であった(実施例20,21)。一方でアミン不添加の組成は、Cuダメージは小さかったが剥離性が不足していた(比較例4)。
【0040】
[Siダメージの評価]
Siダメージの評価にはSi基板を用いた。室温下で2分間基板を0.5%HF水溶液に浸漬した後、水のオーバーフローリンスを1分間行い窒素ブローにより基板を乾燥させた。乾燥した基板の質量を精密天秤で測定し、処理前の質量とした。その後60℃で1時間基板を剥離液に浸漬した後、水のオーバーフローリンスを1分間行い窒素ブローにより基板を乾燥させた。乾燥した基板の質量を精密天秤で測定し、処理後の質量とした。処理前後の質量変化からエッチング速度(nm/min)を算出した。
【0041】
(評価)
〇:Siエッチング速度≦1.0nm/min
△:1.0nm/min<Siエッチング速度≦3nm/min
×:Siエッチング速度>3.0nm/min
【0042】
【表3】
【0043】
EGの添加により、高いSiの防食性が得られた(実施例22,23、比較例6)。EGは1,3-PGと比較し、優れたSiの防食が可能であることがわかった(実施例22、比較例7)。
【0044】
[水が蒸発した場合の剥離性評価]
調製した剥離液を90℃で30分から1時間開放放置し、水を3~4%蒸発させた剥離液を使用して、同様に剥離性を評価した。
【0045】
【表4】
【0046】
EGを添加した組成物(実施例24)は、EGを添加しない組成物に比べて(比較例8)、水の蒸発後の剥離性の低下が抑制できることが確認された。また、EGを添加すると、1,3-PGを添加した場合に比べて(比較例9)、剥離性に優れることがわかった。
図1
図2