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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001071
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】水素化分解法
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/00 20060101AFI20221222BHJP
   C10G 7/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C10G47/00
C10G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022096224
(22)【出願日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】2106409
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】504143038
【氏名又は名称】アクセンス
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ボナルド
(72)【発明者】
【氏名】ユーグ デュロ
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス パイエ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ピグリエ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ プパ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA24
4H129CA29
4H129DA21
4H129EA01
4H129EA02
4H129EA06
4H129KA12
4H129NA19
4H129NA45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多環式芳香族化合物の形成を低減させ、かつ/または除去することが可能な水素化分解法を提供する。
【解決手段】石油供給原料(1)を水素化分解するための方法であって、供給原料を水素化分解する工程;流出物の分離を行って、ガス流出物(5)および液体流出物(9)を得る工程;前記液体流出物(9)を圧力P1で分画し、第1の蒸留液(13、14)および第1の残渣(15)を得る工程;前記第1の残渣(15)の第1の部分を、水素化分解工程の少なくとも1つにリサイクルする工程;第1の残渣(15)の第2の部分(20)を、圧力P1以下である圧力P2で精留し、二次的蒸留液(23)、二次的残渣(16)および蒸気流れ(22)を得る工程;二次的残渣(16)の少なくとも一部をパージする工程;前記二次的蒸留液(23)の全部または一部を、水素化分解工程の少なくとも1つにリサイクルする工程を含む、方法とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最低10容積%の、340℃超で沸騰する化合物を含んでいる石油供給原料(1)を水素化分解するための方法であって、
- (a)供給原料を水素化分解して、水素化分解済み流出物を得る少なくとも1回の工程;
- (b)水素化分解済み流出物の液体/気体の分離を行って、ガス流出物(5)および液体流出物(9)を得る工程;
- (c)前記液体流出物(9)を分画する工程であって、少なくとも1個の塔(12)において、塔の底部における圧力P1、特に、0.2~0.4MPaで行い、第1の蒸留液(13、14)および第1の残渣(15)を少なくとも生じさせる、工程;
- (d)前記第1の残渣(15)の第1の部分(18)を、水素化分解工程および/または水素化分解工程の少なくとも1つにリサイクルする工程;
- (e)分画工程において得られた第1の残渣(15)の第2の部分(20)を精留する工程であって、少なくとも1個の塔(21)において、頂部における圧力P2:圧力P1より少なくとも0.05MPaだけ低い圧力で行い、二次的蒸留液(23)、二次的残渣(16)および蒸気流れ(22)を少なくとも得る工程;
- (f)二次的残渣(16)の少なくとも一部または全部をパージする工程;
- (g)前記二次的蒸留液(23)の全部または一部、特に全部を、場合によるガス分離工程の後に、水素化分解工程または水素化分解工程の少なくとも1つにリサイクルする工程
を含む、方法。
【請求項2】
分画工程(c)に、精留工程(e)に由来する、二次的蒸留液(23)の全部または一部および/または二次的残渣(16)の全部または一部および/または塔頂の蒸気流れ(22)の全部または一部をリサイクルする工程を行わないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
精留工程の塔(21)の頂部のところにおける圧力P2は、分画工程(c)の塔の底部における圧力P1より最低0.06MPaだけ、特に最低0.08MPaだけかつ好ましくは最高0.4MPaだけ低いことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
精留工程(e)の塔(21)の頂部のところにおける圧力P2は、大気圧より低い、特に133Pa~1.101MPa、好ましくは1333Pa~0.08MPaより低いことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
精留工程(e)は、蒸留塔(21)を具え、該蒸留塔(21)は、給送トレイ(1個または複数個)、場合によるパッキングおよび抜き取りトレイ(1個または複数個)を備えており、
- 分画工程(c)からの第1の残渣(15)は、場合によっては少なくとも部分的に蒸発させられて、前記塔(21)に少なくとも1つの給送トレイのところで給送する、
- 二次的蒸留液(23)を、前記塔(21)から抜き出しトレイのところで抜き取る、
- 二次的残渣(16)を、前記塔の底部のところで抜き取る、
- 塔頂蒸気流れ(22)を、特に、循環環流または凝縮システムによって冷却する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
精留工程(e)は、蒸留塔(21)を具え、該蒸留塔(21)は、給送トレイ(1個または複数個)、場合によるパッキングおよび抜き取りトレイ(1個または複数個)を備えており、前記工程を、ストリッピングガス、特に、水蒸気または水素の形態にあるものにより行い、好ましくは、塔の給送トレイまたは給送トレイの少なくとも1つより下に注入することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
精留工程(e)において、第1の残渣(15)を給送する際の温度は、250℃~400℃であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
精留工程(e)において処理される第1の残渣(15)の第2の部分(20)は、分画工程(c)において得られた第1の残渣の最高50重量%、特に最高20重量%、好ましくは約10重量%に対応することを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
パージ工程(f)において、二次的残渣(16)の最低20重量%、特に最低40重量%、かつ、好ましくは二次的残渣(16)の最低60重量%をパージすることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
分画工程および/または精留工程を、ストリッピングガス、特に水蒸気の形態にあるものにより行うことを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
分画工程のストリッピングガスを、圧力0.2~0.4MPaで注入することおよび/または精留工程のストリッピングガスを圧力0.001~0.35MPaで注入することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1回または2回の水素化分解工程を具えており、前記工程の少なくとも1回は、水素化処理工程(h)によって先行されることを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
最低10容積%の、340℃超で沸騰する化合物を含んでいる石油供給原料を水素化分解するためのプラントであって、連続して以下を含んでいるプラント:
- (a)供給原料(1)を水素化分解して水素化分解済み流出物を得るための少なくとも1個のセクション(2)、
- (b)水素化分解済み流出物の液体/気体の分離を行って、ガス流出物(5)および液体流出物(9)を得るための少なくとも1個のセクション(4)、
- (c)前記液体流出物を分画するためのセクション;少なくとも1個の塔(12)を含んでおり、塔の底部のところにおける圧力P1は、特に0.2~0.4MPaであり、第1の蒸留液(13、14)および第1の残渣(15)を少なくとも生じさせる、
- (d)前記第1の残渣(15)の第1の部分(18)を、水素化分解セクション(2)または水素化分解セクション(2)の一つにリサイクルするためのライン、
- (e)分画ゾーンにおいて得られた第1の残渣(15)の第2の部分(20)を精留するためのセクション;少なくとも1個の塔(21)を含んでおり、頂部のところにおける圧力P2は、圧力P1より少なくとも0.05MPa低く、二次的蒸留液(23)、二次的残渣(16)および蒸気流れ(22)を少なくとも得る、
- (f)二次的残渣(16)の少なくとも一部、または全部をパージするためのセクション、
- (g)前記二次的蒸留液(23)の全部または一部、特に全部を、場合によるガス分離セクションの後に、水素化分解セクション(2)または水素化分解セクションの少なくとも1つにリサイクルするためのライン。
【請求項14】
精留ゾーン(e)に由来する二次的蒸留液(23)の全部または一部および/または二次的残渣(16)の全部または一部を分画化ゾーン(c)にリサイクルするためのラインがないことを特徴とする請求項13に記載の水素化分解プラント。
【請求項15】
精留ゾーン(e)は、圧力コントロールデバイスを備え、該圧力コントロールデバイスは、圧力P2が大気圧より高いならば調圧器タイプ、または圧力P2が大気圧より低いならば真空デバイスタイプのいずれかのものであり、特に、液体リングポンプまたは排出器のシステムであることを特徴とする請求項13または14に記載の水素化分解プラント。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1つに記載の水素化分解プラントであって、以下を含むことを特徴とする水素化分解プラント:
- 1個または2個の水素化分解セクション(2);供給原料入口ライン(1)および水素入口ライン(8)を備えている、
- 分画化セクション(12);少なくとも1個の蒸留塔を含み、該蒸留塔は、トレイを備えており、該塔は、第1の蒸留液および第1の残渣(15)を生じさせる、
- 第1の残渣(15)の第2の部分(20)を精留するためのセクション;少なくとも1個の蒸留塔(21)を含み、該蒸留塔(21)は、トレイおよび/またはパッキングを備えており、該塔は、以下を含んでいる:- 少なくとも1個の給送トレイのところにおける、第1の、少なくとも部分的に蒸発させられた残渣の第2の部分のための少なくとも1個の入口ライン(20)、- 調圧または真空システムに接続された少なくとも1個のライン(22)、- 抜き取りトレイのところおける、二次的蒸留液を少なくとも抜き取るための少なくとも1個のライン(23)、- 塔の底部のところにおける、前記二次的残渣を抜き取るための少なくとも1個のライン(16)、
- ストリッピングガスを注入するための少なくとも1個の場合によるライン(26);注入点は、流れ(20)の給送トレイより下に置かれる、
- 分画化セクションに由来する前記二次的残渣の部分を水素化分解セクションまたは水素化分解セクションの一つに直接的にリサイクルするための場合によるライン(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油供給原料を水素化分解するための方法に関する。重質石油留分の水素化分解(用語水素化転化の下にも表示される)は、余剰のかつわずかにアップグレード可能な重質供給原料から、より軽質のフラクション、例えば、ガソリン、ジェット燃料および軽質ガスオイルを生じさせることを可能にする精製において鍵となる方法であることが思い出され、精製業者は、それらの製造を需要に適合させることを望んでいる。所定の水素化分解法により、オイルのための優れたベースを構成してよいより高度に精製された残渣を得ることも可能となる。
【背景技術】
【0002】
水素化分解法は、一般に、精油所において、炭化水素混合物を容易にアップグレード可能な生成物に変換するために用いられている。しかしながら、それらは、習慣的に、より重質な供給原料(例えば、重質な合成のまたは石油の留分、例えば、真空蒸留に由来するガスオイルまたはフィッシャー・トロプシュユニットからの流出物)をガソリンまたはナフサ、ケロセン、ガスオイルに転化するためにより用いられている。この方法は、オイルを生じさせるためまたは軽質留分、例えば、ガソリンをより軽質のLPG(liquid petroleum gas:液化石油ガス)留分に転換させるためにも用いられる。
【0003】
水素化分解ユニットにおいて処理される供給原料の転化率を高めるために、未転化供給原料の部分は、例えば、すでに通過したことのある反応セクションまたは独立の反応セクションにリサイクルされ得る。これは、リサイクルループにおける、分解反応の間に反応セクションにおいて形成された、多環式の芳香族化合物の所望でない蓄積につながる。これらの化合物は、水素化分解触媒を毒し、このことは、問題の触媒の触媒活性、またユニットの製造サイクルタイムを低減させる。これらの化合物は、ユニットの冷温部分において沈殿するかまたは堆積させられ、それ故に、故障が起こることがある。
【0004】
これらの多環式または多核式の芳香族化合物は、したがって、複数個の縮合ベンゼン環を含む。それらは、習慣的に、HPNAと称され、これは、用語「Heavy Polynuclear Aromatics」に相当する頭字語である。
【0005】
典型的には、HPNAは、少なくとも4個、さらには、少なくとも6個のベンゼン環を各分子中に含む。6個未満の環を含有している化合物(例えばピレンの誘導体)は、より容易に水素化され得、したがって、触媒を毒する可能性はより低い。結論として、本発明は、より特定的には、6個以上の芳香環を含有しているファミリーの最も代表的である化合物、例えば、コロネン(24個の炭素を含有している化合物)、ジベンゾ(e,ghi)ペリレン(26炭素)、ナフト[8,2,1-abc]コロネン(30炭素)およびオバレン(32炭素)に興味があり、これらは、例えばクロマトグラフィーによって最も容易に確認可能かつ定量化可能な化合物である。
【0006】
特許(特許文献1)には、水素化分解法を用いる、HPNAを処理するための第1の解決方法であって、未転化フラクション中にHPNAを濃縮して、それらを除去しかつパージされる残渣の量を低減させて転化率を向上させることによる、方法が提案され、水素化分解法において、流れは、塔の給送トレイと底部との間で分画塔から側流として抜き取られる。前記流れの少なくとも一部は、リサイクル流れを構成する。この流れは、場合によっては、ストリッピング塔においてストリッピングされてよい。ストリッピングの後に得られた軽質フラクションは、分画塔に送り戻され、ストリッピングに由来する重質フラクションは、水素化分解工程にリサイクルされる。
【0007】
特許出願(特許文献2)には、水素化分解法を用いる別の解決方法が提案されており、水素化分解法において、分画塔の底部からの流れの部分(残渣)は、ストリッピング塔においてストリッピングされる。ストリッピングの後に得られた軽質フラクションは、分画塔に送り戻され、ストリッピングに由来する重質フラクションは、少なくとも部分的にパージされ、このフラクションの他の部分は、ストリッピング塔にリサイクルされることが可能である。
【0008】
これらの方法は、HPNAを低減させる見地から改善を引き起こしたが、しばしば、収率(および/または設備または製造のコスト)の損害を引き起こした。
【0009】
本発明の目的は、水素化分解法を改善して、多環式芳香族化合物の形成を低減させ、かつ/またはこれらの化合物を除去することにある。本発明はさらに、アップグレード可能な生成物への水素化分解の収率を、同一または類似のレベルに維持し、かつ/または水素化分解ユニットの設備または製造のコストを大幅には増大させないことを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3237577号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/052042号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、第1に、最低10容積%の、340℃超で沸騰する化合物を含んでいる石油供給原料を水素化分解するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
- (a) 供給原料を水素化分解して、水素化分解済み流出物を得る少なくとも1回の工程;
- (b) 水素化分解済み流出物の液体/気体分離を行って、ガス流出物および液体流出物を得る工程;
- (c) 前記液体流出物を分画する工程であって、少なくとも1個の塔において、塔の底部のところの圧力P1、特に0.2~0.4MPaで行い、第1の蒸留液および第1の残渣を少なくとも生じさせる、工程;
- (d) 前記第1の残渣の第1の部分を水素化分解工程および/または水素化分解工程の少なくとも1つにリサイクルする工程;
- (e) 分画工程において得られた第1の残渣の第2の部分を精留する工程であって、少なくとも1つの塔において、頂部のところの圧力P2で行い、圧力P2は、圧力P1より少なくとも0.05MPa低く、二次的な蒸留液、二次的残渣および蒸気流れを少なくとも得る、工程;
- (f) 二次的残渣の少なくとも一部または全部をパージする工程;
- (g) 前記二次的蒸留液の全部または一部、特に全部を、場合によるガス分離工程の後に、水素化分解工程または水素化分解工程の少なくとも1つにリサイクルする工程。
【0012】
本発明による方法は、したがって、第1に、精留工程を起源とする流れを分画工程に直接的にリサイクルしないが、水素化分解工程、すなわち、流れが変換されることになる反応セクションにリサイクルするように選ぶ。第2に、本発明による方法は、分画工程の圧力に相対して精留工程における圧力を制限する/低くするように選ぶ。このようにして精留圧力を低下させることは、行われた分離の効率を非常に大幅に改善したこと、および実際に多環式芳香族炭化水素を二次的残渣(未転化フラクション)中に濃縮したことが分かった。2つの高度に有利な結論は以下に由来する:第1に、HPNAにおいてより濃縮されているこの二次的残渣は、少なくとも部分的に、あるいはもっと完全にパージされて、除去され得、これと同時に、従来の水素化分解法におけるより大きな割合のHPNAが除去される。第2に、精留において得られた蒸留液を水素化分解に直接的に送り戻すことが可能である。それは、水素化分解触媒の効率を落とすことが可能なHPNAを少ししか/全く含有していないからである。このことにより、供給原料の転化率を増大させること、したがって、従前の水素化分解法と比べてアップグレード可能な生成物の水素化分解収率を改善することおよび/または触媒のサイクルライフを増大させることが可能となる。
【0013】
本発明は、アップグレード可能なフラクションを二次的蒸留液中に回収するために操作条件を改変すること(例えば、冷却システムを加えること)、したがって、塔頂蒸気をリサイクルしないこと(それはもはやアップグレード可能な生成物を含有していないので)が可能であったことを発見した。精留において圧力が低下させられ得るのは、この理由のためであり、上記の最重要視される有益な効果を有している。
【0014】
精留の間の圧力を低下させることが可能であったのは、とりわけ精留工程から分画工程へのリサイクリングが放棄される(水素化分解工程へのリサイクリングに有利である)ためであることがそれ故に留意され得る。2つの特徴は、したがって、HPNA上に所望の効果を達成するために連結され、組み合わされる。
【0015】
本発明の別の有利な結論も指摘されるべきである:精留に由来する二次的蒸留液および/または二次的残渣の全部または一部の分画へのリサイクリングがもはや存在しないので、プラントのサイズを低減させることが、とりわけ、分画塔のサイジングを低減させることおよび精留塔から分画塔へのリサイクリングに必要であった設備の部品を取り除くことによって可能である。
【0016】
少なくとも6個の芳香環を具体的に有している水素化分解中に存在するHPNAは、水素化分解の間に用いられる反応に最も抵抗性であるが、本発明は、このようなHPNAの量を低減させるのに特に有効であったことが証明された。本発明は、従前の方法と比較して触媒のサイクルライフにおける増大に非常に特定的に有利となる。
【0017】
上記に見られるように、有利には、本発明による方法は、分画工程(c)に、精留工程(e)に由来する二次的蒸留液の全部または一部および/または二次的残渣の全部または一部、および/または精留工程(e)に由来する塔頂蒸気流れの全部または一部をリサイクルする工程を免れてよい。
【0018】
好ましくは、精留工程の塔の頂部のところの圧力P2は、分画工程(c)の塔の底部における圧力P1より、最低0.06MPaだけ、特に最低0.08MPaだけ、かつ好ましくは最高400kPaだけまたは最高0.4MPaだけ低い。P1-P2圧力差が大きくなるほど、分離がより効果的になりかつ二次的残渣中のHPNAの含有率がより高くなることが分かる。当然、差は、水素化分解ユニットの工業的スケールで得るように精留工程における圧力P2の低下があまりに複雑/高価でなく合理的に存続しなければならない。
【0019】
本発明の状況の範囲内で2種の変形例が可能である:圧力P2が、大気圧以上にとどまる値にあるように選ばれるか、または、それが、大気圧より低いように選ばれるかのいずれかである。この圧力P2は、塔の頂部のところで測定され/選ばれる。両方のシナリオにおいて、133Pa(1mmHg)~1.101MPa、好ましくは1333Pa(10mmHg)~0.08MPa(600mmHg)の圧力P2が好ましくは選ばれる。
【0020】
好ましくは、精留工程(e)は、蒸留塔を具えており、この蒸留塔は、給送トレイ(1個または複数個)、場合によるパッキングおよび抜き取りトレイ(1個または複数個)を備えており、
- 分画工程(c)からの第1の残渣は、場合によっては、少なくとも部分的に気化しており、前記塔に、少なくとも1つの給送トレイにおいて給送する、
- 二次的蒸留液は、前記塔から、抜き取りトレイにおいて抜き取られる、
- 二次的残渣は、前記塔の底部のところで抜き取られる、
- 塔頂蒸気流れは、冷却され、これは、特に循環環流または凝縮システムによって行われる。
【0021】
好ましくは、精留工程は、ストリッピングガス、例えば、水蒸気または水素をベースとするものを用いて行われ、塔中の注入点のところに注入され、この注入点は、有利には、塔の給送トレイより下に置かれる。
【0022】
本発明による方法により、精留工程において得られた二次的蒸留液が有しているHPNA濃度は、500重量ppm以下、優先的には350重量ppm以下、大いに優先的には200重量ppm以下である。二次的蒸留液は、したがって、HPNAを大きく欠いており、これは、本発明の目標である。
【0023】
この二次的蒸留液は、本発明の方法により、通常、最低70重量%の割合の未転化炭化水素、優先的には最低80重量%の割合の未転化炭化水素、大いに優先的には最低90重量%の割合の未転化炭化水素を有する。
【0024】
好ましくは、精留工程(e)は、蒸留塔を具え、この蒸留塔は、給送トレイ(1個または複数個)、場合によるパッキングおよび抜き取りトレイ(1個または複数個)を備えており、前記工程は、ストリッピングガス、特に、水蒸気または水素の形態にあるものにより行われ、好ましくは、塔の給送トレイまたは給送トレイの少なくとも1つより下に注入される。
【0025】
好ましくは、精留工程(e)において、第1の残渣が給送される際の温度は、250℃~400℃である。
【0026】
精留工程(e)において処理される第1の残渣の第2の部分は、好ましくは、分画工程(c)において得られた第1の残渣の最高50重量%、特に最高20重量%、好ましくは約10重量%に対応する。それ故に、処理される残渣の量を調節することにより、二次的残渣を生じさせることが可能となり、その量は、ユニットのパージを保証するのに十分であり、水素化分解セクションにその一部をリサイクルすることは必要ではない。
【0027】
好ましくは、第1の残渣は、第1の部分および第2の部分の2つの部分に分割されるにすぎず、第1の部分は、水素化分解工程にリサイクルされ、第2の部分は、精留工程において処理されることが留意されるべきである。精留において処理されるこの残渣の最高50重量%は、したがって、バランスまでの100%、したがって、残渣の最低50%は、水素化分解にリサイクルされることを意味する。したがって、本発明による好適な実施形態は、主に、この残渣をリサイクルすることからなることが理解される。
【0028】
第1の残渣の第1の部分を水素化分解にリサイクルする時に、直接的に、または場合によるガス分離工程の後にリサイクリングを行うことが可能である。
【0029】
パージング工程(f)において、好ましくは、二次的残渣の最低20重量%、特に最低40重量%、好ましくは最低60重量%または最低80重量%がパージされる。1種の実施形態によると、パージされるのは二次的残渣の全て(100%)である。パージされない二次的残渣の量は、好ましくは、二次的蒸留液と混合され、水素化分解工程に送られる。
【0030】
具体的には、本発明による方法により得られた二次的残渣が有しているHPNA濃度は、一般的には1000重量ppm超、優先的には1500重量ppm超、さらには2000重量ppm超であることが証明された:HPNAがこの残渣中に適切に濃縮され、それらを本方法から、とりわけ、この残渣を部分的または全体的にパージすることにより、より容易に除去され得ることが実証される。
【0031】
本発明によると、ストリッピングガス、特に水蒸気の形態にあるものにより分画工程および/または精留工程を行うことが好適である。
【0032】
分画工程のストリッピングガスが注入される際の圧力は、好ましくは0.2~0.4MPaである。
【0033】
精留工程のストリッピングガスが注入される際の圧力は、好ましくは0.001~0.35MPaである。精留について、ストリッピングガスは、水蒸気よりむしろ水素であってもよい。
【0034】
本発明による方法は、水素化分解法から知られているような、1回または2回の水素化分解工程(a)を具えている。好ましくは、水素化分解工程または複数回、特に2回ある場合の前記工程の少なくとも1回は、水素化処理工程(h)によって先行される。知られているように、「水素化処理(hydrotreating)」は、炭化水素供給原料中に含有される種々の不純物が水素の作用を通じて取り除かれることを可能にする精製法の全てを意味する。水素化処理法により、水素の作用を通じて、供給原料中に存在する不純物を取り除くことが可能となり、不純物は、例えば、窒素(水素化脱窒と称する)、硫黄(水素化脱硫と称する)、酸素(水素化脱酸素と称する)、および触媒を毒しかつ下流で操作上の課題を起こし得る金属含有化合物(水素化脱金属と称する)である。それ故に、水素化処理方法は、実際に、水素化転化/水素化分解のタイプの方法によって、供給原料を処理する先の工程であることが一般的である。
【0035】
本発明による方法が2工程水素化分解である場合、これらの2工程のそれぞれの操作条件は、一般的には以下の通りである:
- 温度:200℃超、しばしば250℃~480℃、有利には320℃~450℃、好ましくは330℃~435℃、
- 圧力:1MPa超、しばしば2~25MPa、好ましくは3~20MPa、
- 空間速度:0.1~20h-1、好ましくは0.1~6h-1、より好ましくは0.2~3h-1
- 導入される水素の量:水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)の容積比が、80~5000NL/L、通常100~3000NL/Lになるようにされる。
【0036】
本発明は、本発明による方法を行うあらゆる水素化分解プラントにも関する。
【0037】
本発明は、340℃超で沸騰する化合物を最低10容積%含んでいる石油供給原料を水素化分解するためのプラントにも関し、以下を連続的に含んでいる:
- (a) 供給原料を水素化分解して水素化分解済み流出物を得るための少なくとも1個のセクション;
- (b) 水素化分解済み流出物を液体/気体分離して、ガス流出物および液体流出物を得るための少なくとも1個のセクション;
- (c) 前記液体流出物を分画するためのセクション;少なくとも1個の塔を含み、塔の底部のところの圧力P1は、特に、0.2~0.4MPaであり、第1の蒸留液および第1の残渣を少なくとも生じさせる;
- (d) 前記第1の残渣の第1の部分を水素化分解セクションまたは水素化分解セクションの1個にリサイクルするためのライン;
- (e) 分画ゾーンにおいて得られた第1の残渣の第2の部分を精留するためのセクション;少なくとも1個の塔を含み、頂部のところの圧力P2は、圧力P1より少なくとも0.05MPa低く、二次的蒸留液、二次的残渣および蒸気流れを少なくとも得る;
- (f) 二次的残渣の少なくとも一部または全部をパージするためのセクション;
- (g) 場合によるガス分離セクションの後に、前記二次的蒸留液の全部または一部、特には全部を水素化分解セクションまたは水素化分解セクションの少なくとも1個にリサイクルするためのライン。
【0038】
本発明による水素化分解プラントは、好ましくは、精留ゾーン(e)に由来する二次的蒸留液の全部または一部および/または二次的残渣の全部または一部を分画ゾーン(c)にリサイクルするためのラインを含んでいない。
【0039】
好ましくは、精留ゾーン(e)は、圧力コントロールデバイスを備えている。これは、圧力P2が大気圧より高いならば調圧器タイプのもの、または、圧力P2が大気圧より低いならば真空デバイスタイプのもののいずれかであり、特には、液体リングポンプまたは排出器のシステムである。
【0040】
1種の実施形態によると、この水素化分解プラントは、以下のものを含んでよい:
- 1個または2個の水素化分解セクション;供給原料入口ライン(1)および水素入口ラインを備えている、
- 分画セクション;トレイを備えている少なくとも1個の蒸留塔を含んでおり、前記塔は、第1の蒸留液および第1の残渣を生じさせる、
- 第1の残渣の第2の部分を精留するためのセクション;少なくとも1個の蒸留塔を含み、この蒸留塔は、トレイおよび/またはパッキングを備え、前記塔は、以下を含んでいる:- 少なくとも1個の給送トレイのところの、第1の、少なくとも部分的に気化された残渣の第2の部分のための少なくとも1個の入口ライン、- 調圧または真空システムに接続された少なくとも1個のライン、- 抜き取りトレイのところの二次的蒸留液を少なくとも抜き取るための少なくとも1個のライン、- 塔の底部のところの、前記二次的残渣を抜き取るための少なくとも1個のライン、
- ストリッピングガス注入するための少なくとも1個の場合によるライン;注入点は、流れの給送トレイより下に置かれる、
- 分画セクションに由来する前記二次的残渣の一部を直接的に水素化分解セクションまたは水素化分解セクションの1つにリサイクルするための場合によるライン。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(図面のリスト)
図1は、従来技術による水素化分解法のブロック図を表す。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施形態による水素化分解法のブロック図を表す。
【0043】
図3は、本発明の第2の実施形態による水素化分解法のブロック図を表す。
【0044】
これらの図面の全ては、高度に概要的であり、表される種々のデバイスのスケールおよび空間の配分が必ずしも尊重されているわけではない。一つの図面から次の図面にかけて同一である参照符号は、同一の化合物/ライン/デバイスに対応する。
【0045】
(実施形態の説明)
本発明の明細書において、精留は、蒸留に由来するフラクションの1つ中に望ましくない化合物を濃縮することによって生成物を精製することを目的とする蒸留によって定義される。
【0046】
本発明の明細書において、供給原料は、下記に説明されるようにそれらの沸点T5によって定義される。供給原料の転化率は、第一残渣のカットポイントに相対して定義される。未転化フラクションは、第一残渣を参照する。転化フラクションは、精製する者によって望まれるフラクションを含む。
【0047】
パージ部分は、本方法を出る部分を参照する。
【0048】
(供給原料)
大いに多彩な供給原料が、水素化分解法によって処理され得る。一般的に、それらは、最低10容積%、一般的に最低20容積%、しばしば最低80容積%の、340℃超で沸騰する化合物を含有する。
【0049】
供給原料は、例えば、LCO(Light Cycle Oil:ライトサイクルオイル;接触分解ユニットに由来する軽質ガスオイルである)、常圧蒸留液、真空蒸留液、例えば、原油の直接蒸留または転化ユニット、例えば、FCC(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解)ユニット、コーキングユニット(コーカー)またはビスブレーキングユニットに由来するガスオイル、およびまた芳香族化合物の抽出のためのユニットを起源とする供給原料、潤滑油ベースまたは潤滑油ベースの溶媒脱ろうに由来するもの、あるいはほかに、固定床または沸騰床の脱硫またはAR(atmospheric residue:常圧残渣)および/またはVR(vacuum residue:真空残渣)および/または脱アスファルト油の水素化転化のための方法を起源とする蒸留液であってよい。供給原料は、脱アスファルト油、フィシャー・トロプシュユニットからの流出物、あるいはほかに、上記の供給原料のあらゆる混合物であってもよい。上記のリストは、限定的なものではない。
【0050】
一般に、供給原料は、150℃超の沸点T5を有している(すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%が150℃超の沸点を有している)。ディーゼルの場合、沸点T5は、一般的に約150℃である。VGO(vacuum gas oil:真空ガスオイル)の場合、沸点T5は、一般的に340℃超、さらには370℃超である。用いられ得る供給原料は、したがって、幅広い範囲の沸点にわたる。この範囲は、一般的に、ディーゼルからVGOにまで拡張し、他の供給原料、例えばLCOとの全ての考えられる混合物を通過する。
【0051】
水素化分解法において処理される供給原料の窒素含有率は、通常500重量ppm超、一般的に500~10000重量ppm、より一般的には700~4500重量ppm、よりなおさら一般的には800~4500重量ppmである。
【0052】
水素化分解法において処理される供給原料の硫黄含有率は、通常0.01重量%~5重量%、一般的に0.2重量%~4重量%、よりなおさら一般的には0.5重量%~3重量%である。供給原料は、場合によっては、金属を含有してよい。水素化分解法において処理される供給原料の組み合わされるニッケルおよびバナジウムの含有率は、好ましくは10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、よりなおさら好ましくは2重量ppm未満である。アスファルテン含有率は、一般的に3000重量ppm未満、好ましくは1000重量ppm未満、一層より好ましくは300重量ppm未満である。
【0053】
(操作条件)
操作条件、例えば、温度、圧力、水素リサイクル比または毎時空間速度は、供給原料の性質、望まれる生成物の質および精製する者に利用可能なプラントに応じて可変である。水素化分解/水素化転化または水素化処理の触媒は、一般的に、水素の存在中で、上記の供給原料と接触させられる:
- 温度:200℃超、しばしば250℃~480℃、有利には320℃~450℃、好ましくは330℃~435℃、
- 圧力:1MPa超、しばしば2~25MPa、好ましくは3~20MPa、
- 空間速度:0.1~20h-1、好ましくは0.1~6h-1、より好ましくは0.2~3h-1
- 導入される水素の量:水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)/の容積比が、80~5000NL/L、通常100~3000NL/Lになるようにされる。
【0054】
水素化分解法において用いられるこれらの操作条件により、一般的に、転化生成物(すなわち、残渣のカットポイントより低い沸点を有するもの)への、通過当たりの転化率:15%超、よりなおさら好ましくは20%~95%を達成することが可能となる。
【0055】
(水素化分解ユニット)
(実施形態)
本発明による触媒を用いる水素化分解/水素化転化の方法は、マイルド水素化分解から高圧水素化分解に広がる圧力範囲および転化範囲にわたる。
【0056】
マイルド水素化分解は、適度な転化率:一般的には40%未満をもたらしかつ低圧、好ましくは2MPa~9MPaで操作する水素化分解を意味すると理解される。
【0057】
水素化分解触媒は、単独で、1個または複数個の固定床触媒床において、1個または複数個の反応器において、「1工程」水素化分解スキームにおいて、未転化フラクションの液体リサイクリングを伴ってまたは伴わずに、場合によっては、水素化分解触媒の上流に置かれた水素化精製触媒との組み合わせで用いられてよい。
【0058】
水素化分解は、高圧で行われてよい(少なくとも10MPa)。
【0059】
水素化分解は、第1の変形例によると、「2工程」水素化分解スキームにより行われてよく、2個の反応ゾーンの間で中間分離を伴い、所与の工程において、水素化分解触媒が、一方または両方の反応器において用いられてよく、場合によっては、水素化分解触媒の上流に置かれる水素化精製触媒と組み合わされる。
【0060】
水素化分解は、「1工程」水素化分解と称される、第2の変形例により行われてよい。この変形例は、一般的に、第1に、徹底的な水素化精製を含み、これの目的は、供給原料が実際上の水素化分解触媒上に送られる前に、供給原料の徹底的な水素化脱窒および脱硫を実行し、これは、特には、前記触媒がゼオライトを含む場合である。供給原料のこの徹底的な水素化精製は、この供給原料のより軽質なフラクションへの制限された転化のみをもたらす。不十分にとどまる転化は、より活性な水素化分解触媒上で完結される。
【0061】
水素化分解セクションは、1個または複数個の同一または異なる触媒床を含有してよい。好適な生成物が中間留分である場合、無定形の塩基性固体、例えば、アルミナまたはシリカ-アルミナまたは塩基性ゼオライトの使用がなされ、場合によっては、少なくとも1種の第VIII族水素化金属を補足され、好ましくは、少なくとも1種の第VIB族金属も補足される。これらの塩基性ゼオライトは、シリカ、アルミナ、および1種または複数種の交換可能なカチオン、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムまたは希土類元素からなる。
【0062】
ガソリンが主に望まれる生成物である場合、触媒は、一般的に、結晶ゼオライトからなり、これの上に、少量の第VIII族金属、およびまたより好ましくは第VIB族金属が沈着させられる。
【0063】
用いられ得るゼオライトは、天然のまたは合成のものであり、例えば、X、YまたはLのゼオライト、フォージャサイト、モルデナイト、エリオナイトまたはチャバサイトから選ばれてよい。
【0064】
水素化分解は、単一個または複数個の沸騰床反応器において行われてよく、未転化フラクションの液体リサイクリングを伴っても伴わなくてもよく、場合によっては、水素化分解触媒の上流の固定床または沸騰床の反応器中に置かれた水素化精製触媒と組み合わされる。沸騰床は、安定な触媒活性を保持するために使用済み触媒の除去およびフレッシュな触媒の毎日の添加により操作する。
【0065】
(保護床)
供給原料が樹脂および/またはアスファルテンのタイプの化合物を含有する場合、水素化分解または水素化処理の触媒とは異なる触媒または吸着剤の床上に事前に供給原料を通すことが有利である。用いられる触媒または保護床は、球体(ビーズ)または押出物の形状を有している。任意の他の形状が用いられてよい。考えられる粒子形状の中で、非限定的に、言及がなされてよいのは、中空シリンダ、中空リング、ラシヒリング、のこぎり歯中空シリンダ、銃眼付き胸壁状の中空シリンダ、ペンタリングとして知られている車輪、マルチホールシリンダ等である。
【0066】
これらの触媒は、場合によっては、活性相によって含浸させられたものであってよい。好ましくは、触媒は、水素化-脱水素化相によって含浸させられる。好ましくは、CoMoまたはNiMo相が用いられる。これらの触媒は、マクロ多孔度を呈してよい。
【0067】
(液体/気体分離)
分離器は、水素化分解ユニットを出る流出物中に存在する液体および気体の分離を行う。この分離を可能にするあらゆるタイプの分離器が用いられてよく、例えば、フラッシュ容器、ストリッパ、さらには、簡単な蒸留塔である。
【0068】
好ましくは、一連の分離容器が、種々の圧力および温度のレベルで、当業者に知られている方法で用いられる。
【0069】
有利には、2回の水素化分解工程を有する本発明の変形例において、分離セクションの一部または全部は、2個の水素化分解セクションと共通であってよい。
【0070】
(分画)
分画セクションは、一般的に、複数個の内部のトレイおよび/またはパッキングを含んでいる1個または複数個の塔からなる。これらの塔は、習慣的に、水蒸気によりストリッピングされ、場合によっては、蒸発を促進するために1個または複数個のリボイラを含む。
【0071】
分画化セクションにより、硫化水素(HS)および流出物の軽質成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン、その他)、およびまたガソリン、ケロセンおよびガスオイルの範囲内の沸点を有している炭化水素留分と、残渣と称される塔の底部のところで回収された重質フラクションとを分離することが可能となる。
【0072】
場合によっては、分画化セクションは、分離セクションに由来する流れの全部または一部上で用いられるストリッピング塔を含む。
【0073】
分画化セクションは、底部のところにおいて圧力P1で操作される少なくとも1個の塔を含む。好ましくは、この圧力P1は、0.2~0.4MPaである。
【0074】
(精留)
精留セクションは、一般的に、1個または複数個の塔、好ましくは、1個の塔を含み、複数個の内部のトレイおよび/またはパッキングを含んでいる。
【0075】
これらの塔は、好ましくは、水蒸気によりストリッピングされ、場合によっては、蒸発を促進するために少なくとも1個のリボイラを含む。それにより、分画化セクションに由来する残渣の全部または一部を、ガスオイルおよび真空蒸留液の範囲内の沸点を有している異なる炭化水素留分と、塔の底部のところで回収される重質フラクションとに分離することが可能となり、その全部または一部は、ユニットからパージされる。
【0076】
精留セクションは、頂部のところにおいて圧力P2により操作される少なくとも1個の塔を含む。圧力P2は、少なくとも0.05MPaマイナスで圧力P1以下である。
【0077】
好ましくは、前記精留工程は、少なくとも5個の理論段を含んでいるトレイおよび/またはパッキングを備えた塔によって形成される。好ましくは、前記少なくとも部分的に蒸発させられた残渣は、少なくとも1個の給送トレイのところで塔に給送する。好ましくは、前記二次的蒸留液は、抜き取りトレイのところで抜き取られる。この抜き取りトレイは、好ましくは、残渣の注入点より上の少なくとも2個の理論段に置かれる。好ましくは、前記二次的残渣は、塔の底部のところで抜き取られ、これは、好ましくは、残渣の注入点より下の少なくとも2個の理論段に置かれる。
【0078】
好ましくは、塔は、内部環流を確実にすることを可能にする冷却システムを備えている。当業者に知られているあらゆる手段(特に、凝縮器、循環環流(circulating reflux))が想定されてよい。
【0079】
好ましくは、塔頂蒸気フラクションは、調圧システムまたは真空システムによって排出される。当業者に知られているあらゆる手段(特に、排出器のシステム、液体リングポンプ)が真空システムの場合に用いられてよい。このフラクションは、分画化セクションに送られない。
【0080】
好ましくは、精留セクションの圧力P2は、分画化セクションの圧力P1より少なくとも0.06MPa、より優先的には少なくとも0.08MPa、低い。より低い圧力により、残渣中のHPNAの分離を最大にしおよびHPNAを濃縮することが可能となる。
【0081】
精留セクションの圧力P2は、大気圧以上であるように選ばれてよく、例えば、調圧デバイスを用いてコントロールされる。精留セクションの圧力P2は、あるいは、大気圧より低くなるように選ばれてよく、例えば、真空デバイスを用いて得る。好ましくは、P2は、1mmHg(133Pa)以上、大いに好ましくは、P2は、10mmHg(1333Pa)以上、かつ、特に最高0.08MPa(600mmHg)である。
【0082】
好ましくは、精留工程は、ストリッピングガスを用いて行われる。このストリッピングガスは、例えば、水蒸気または水素からなり、給送トレイより下に置かれた注入点のところで注入される。
【0083】
(図面の説明)
図1は、従来技術による水素化分解法のダイアグラムを表す。ライン(1)を通じて供給される供給原料は、とりわけ、炭化水素からなり、リサイクルライン(5)および/または追加水素ライン(6)を通じて供給される水素と、コンプレッサ(7)およびライン(8)を介して混合される。このようにして生じさせられた供給原料/水素の混合物は、水素化分解セクション(2)に送られる。水素化分解セクションは、水素化処理セクション(示されない)によって先行される。この水素化処理セクションは、一般的に、1個または複数個の水素化処理触媒床を含んでいる(これらの床はまた、水素化分解セクションに含まれることが可能である)。
【0084】
この水素化分解セクション(2)は、1個または複数個の固定床または沸騰床の反応器を含む。
【0085】
水素化分解セクション(2)が1個または複数個の固定床反応器を含む場合、各反応器は、供給原料の炭化水素の水素化分解を行ってより軽質の炭化水素を与える1個または複数個の触媒床を含んでよい。
【0086】
水素化分解セクション(2)が1個または複数個の沸騰床反応器を含む場合、流れは、液体、固体および気体を含んでおり、この流れは、触媒床を含有している反応器中を垂直に流通する。床中の触媒は,液体中にランダムに移動しているように維持される。液体中に分散させられる触媒の全般的な容積は、したがって、停止している触媒の容積より大きい。この技術は、文献中に記載されている。
【0087】
炭化水素液体および水素の混合物は、触媒粒子の床中に通され、その際のスピードは、粒子がランダムに動いているように設定されるように、したがって、液体中に懸濁しているようになされる。液相中の触媒床の膨張は、リサイクル液の流量によってコントロールされ、平衡状態において、触媒の大半が反応器中の所与のレベルを超えないようになされる。触媒は、押出物またはビーズの形態にあり、好ましくは、0.8mm~6.5mmの径を有している。
【0088】
沸騰床法において、大量の水素ガスおよび軽質炭化水素蒸気は、反応ゾーン中を上昇し、次いで、触媒フリーゾーンに入る。触媒ゾーンを起源とする液体は、一部、ガスフラクションの分離の後に反応器の底部にリサイクルされ、一部、生成物として反応器から、通常、反応器の上部において取り除かれる。
【0089】
沸騰床法において用いられる反応器は、一般的に、中央の垂直リサイクルダクトを有するように設計され、このダクトは、沸騰床触媒の上方に置かれた触媒フリーゾーンからの、リサイクルポンプを介した液体のリサイクリングのための流管として作用し、リサイクルポンプにより、液体を触媒ゾーンにリサイクルすることが可能となる。液体のリサイクリングにより、反応器中の温度均一性を維持することおよび触媒床を懸濁状にキープすることの両方が可能となる。
【0090】
水素化分解セクション(2)からの流出物は、ライン(3)を介して分離ゾーン(4)に送られ、これにより、一方ではガスフラクション(5)を、他方で液体フラクション(9)を回収することが可能となる。ガスフラクション(5)は、水素化分解反応セクション(2)において反応しなかった過剰の水素を含有する。それは、一般的に、ライン(6)を通じて達するフレッシュな水素と結合され、上記に指摘されたようにリサイクルされる。
【0091】
液体フラクション(9)は、任意の手段(10)、例えば、炉および/または交換器(示されない)によって加熱され、少なくとも部分的に蒸発させられ、その後に、ライン(11)を介して分画化セクション(12)に給送する。
【0092】
分画化セクション(12)は、1個または複数個の蒸留塔を含み、ライン(13)および(14)によって抜き取られた種々のアップグレード可能な留分(蒸留液)を分離することを可能にするトレイおよび内そう物にプラスして、場合によっては、他の側部流れを備えている。これらの留分は、例えば、ガソリン、ケロセンおよびガスオイルの範囲に置かれた沸点範囲を有する。塔の底部において、未転化のより重質のフラクション(残渣)(15)は、回収される。
【0093】
ライン(19)を介したストリッピングガスの注入のための供給がなされてよい。このラインは、ライン(11)を介して水素化分解済み流出物を給送するためのトレイと、ライン(15)を介して残渣を排出するためのポイントとの間に置かれる。
【0094】
図1によると、残渣(15)の一部は、ライン(18)を介して水素化分解セクション(2)にリサイクルされ、別の部分は、炉または熱交換器(17)において加熱され、次いで、精留塔(21)に送られ、精留塔(21)により、一方ではライン(29)を介して気化蒸留物を、他方では、ライン(16)を介して液体残渣を回収することが可能となる。気化蒸留物は、ライン(29)を介して、分画塔(12)にリサイクルされる。残渣は、ユニットからライン(16)を介して排出され、パージを構成する。このパージ(16)により、HPNA化合物を少なくとも部分的に除去することが特に可能となり、これは、このパージなしで、リサイクルループ中に蓄積することができるだろう。点線として表されるラインは、任意である:精留塔(21)を離れる残渣の一部のみを逆送するために供給がなされてよく、残り(または、このラインの非存在中の残渣全体)は、パージされる。
【0095】
図2は、本発明による方法の第1の実施形態を表す。図1と共有されているすでに記載された要素は、繰り返されず、図1からのスキームとの相違を記載するように努力されることになる。
【0096】
分画化セクション(12)に由来する残渣(15)の一部は、ライン(20)を介して精留セクション(21)に給送する。好ましくは、精留セクション(21)に給送する残渣(20)は、任意の手段、例えば、炉および/または交換器(示されない)によって加熱される。
【0097】
精留セクション(21)は、蒸留塔を含み、種々の留分を分離するためにトレイおよび/またはパッキングおよびまた内そう物を備えている:二次的蒸留液は、側流としてライン(23)によって抜き取られ、場合によっては、他の側流があってよい。
【0098】
塔の頂部のところにおいて、蒸気フラクションは、ライン(22)を介して調圧システムまたは真空システム(示されない)に送られる。塔の底部のところにおいて回収されるのは、分画化セクション(12)に由来する残渣(15)に相対してHPNAに豊富なより重質のフラクション(二次的残渣)である。
【0099】
第1の変形例において、精留塔(21)の圧力は、当業者に知られている調圧デバイスによって大気圧より上に維持される。
【0100】
第2の好適な変形例において、精留塔(21)の圧力は、真空デバイスを用いて大気圧より下に維持される。当業者に知られているあらゆる真空デバイスが用いられてよい。これは、特に、水蒸気噴出器、液体リングポンプ、および/または油圧噴出器からなるデバイスであってよい。水蒸気噴出器および/または液体リングポンプの使用が優先的になされ、大いに優先的には、液体リングポンプの使用がなされる。
【0101】
ライン(26)を介したストリッピングガスの注入のための供給がなされてよい。有利には、ストリッピングガスは、水蒸気、好ましくは、低圧水蒸気であり、特に、0.2~1.5MPaの圧力にある。注入ラインは、残渣給送トレイと、二次的残渣を排出するためのポイントとの間に置かれ、残渣給送トレイにライン(20)は開いており、該ポイントは、ライン(16)に開いている。それは、好ましくは、塔の底部における二次的残渣を排出するためのポイントに接している。
【0102】
側流は、ライン(23)に開になっており、これは、給送ゾーンの上方に配置され(ライン(20))、その結果、抜き取られる流れは、低濃度のHPNAを有し、500重量ppm未満、優先的には350重量ppm未満、大いに優先的200重量ppm未満であり、通常、水素化分解セクションにおいて転化されなかった高割合のフラクションは、残渣の重量で最低70重量%、優先的には最低80重量%、大いに優先的には最低90重量%である。
【0103】
側流として(ライン(23)を介して)抜き取られた前記流れの全部または一部は、水素化分解セクション(2)に直接的にリサイクルされる。本発明によると、二次的残渣(16)は、精留セクション(21)または分画化セクション(12)にリサイクルされない。好ましくは、それは、完全にパージされる。
【0104】
図3は、本発明による方法の第2の実施形態を表し、2工程水素化分解に関する(図2に表されるような1工程水素化分解ではない):この実施形態は、ライン(18)の炭化水素は、水素化分解セクション(2)にリサイクルされないという事実によって先のものとは異なっている。実際に、ライン(18)は、別の(第2の)水素化分解セクション(32)にリサイクルされる。この第2の水素化分解セクション(32)は、ライン(38)を介して水素を給送される。
【0105】
第2の水素化分解セクション(32)は、(第1の)水素化分解セクション(2)について先に記載された特徴に類似する特徴を有する。第2の水素化分解セクション(32)からの流出物は、ライン(33)を介して分離セクションに送られる。好ましくは、この分離セクションは、分離セクション(4)であり、これは、第1の水素化分解セクション(2)からの流出物(3)も受け取る。
【0106】
(実施例)
(実施例1:比較)
この実施例は、図1からの構成をベースとする。特性を、下記の表1に報告する。構成を考慮して、流れ(15)および(18)は、全く同一の特性を有することが留意されるべきである。
【0107】
塔(12)における流れ(11)の分画のシミュレートを、Aveva社によって販売されているPRO/IIバージョン10.2ソフトウェアを介したプログラミングによって行った。これは、塔(21)における流れ(20)の精留と同様であった。生じた流れの物理的および分析的な特性をシミュレートし、実際のサンプルの物理的および分析的な特性と比較した。
【0108】
シミュレーションのために用いられる塔の操作条件を、下記の表2に報告する。
【0109】
分画化塔の入口流れ(11)の特性(表1参照)から、PRO/IIシミュレーションは、流れ(15)、(18)および(16)の特性を確立することができ、およびまたHPNAの分配をモデル化することができた。
【0110】
これらの結果に基づいて、本発明の構成をシミュレートした。結果を下記の表1に開示し、これは、図1からのダイアグラムによる流れの特性/組成を指し示している。
【0111】
【表1】
【0112】
(1):相対密度(「比重」)Sp Gr=20℃におけるρサンプル/4℃におけるρHOであり、ここで、ρは、g/cmで表される密度であり、規格ASTM D4052に従う(全ての実施例について同一の測定方法)
(2):収率=流れの流量/ユニットの供給原料の流量(全ての実施例についての収率の同一の計算)
下記表2は、分画化塔の操作条件を明示する。
【0113】
【表2】
【0114】
下記表3は、底部ストリッパの操作条件を明示する。
【0115】
【表3】
【0116】
実施例2および以下の実施例は、図2の方法による発明を例証し、1つの水素化分解セクションを有している。
【0117】
(実施例2:本発明)
下記表4は、PRO/IIシミュレーションに由来する図2からの本発明の構成による流れ(11)、(16)および(18)の特徴を与える。シミュレーションのために用いられる塔の操作条件を表5および6に報告する。
【0118】
【表4】
【0119】
下記表5は、分画化塔の操作条件を明示する。
【0120】
【表5】
【0121】
表6は、精留塔の操作条件を明示する。
【0122】
【表6】
【0123】
比較例1の構成と比べて、この構成により、ユニットのパージ中にHPNAをより良好に濃縮することが可能となる:比較例1による1795重量ppmと比べて、実施例2において4514重量ppmである。すなわち、2倍半より高い濃度。これにより、水素化分解工程にリサイクルされる流れ中のHPNAの同一の含有率において、ユニットのパージ流量を低減させること、したがって、99.0%から99.6%にユニットの転化率を増大させることが可能となる(転化率は、ユニットの供給原料に比べた、より軽質の生成物に転化された供給原料の割合(%)によって定義される)。
【0124】
従来技術からの構成(実施例1)において、精留セクションからの蒸気(流れ(29))は、67重量%まで炭化水素に豊富である(残りは、蒸気形態にある水である)。反対に、本発明による構成(実施例2)において、精留セクションからの蒸気(流れ(22))は、冷却システムによる処理の後に、0.14重量%までの炭化水素の痕跡のみを含有している。
【0125】
本発明による構成(実施例2)において、したがって、従来技術からの構成(実施例1)とは異なり、アップグレード可能な生成物の喪失を防止するために、精留ゾーンから分画ゾーンに塔頂蒸気をリサイクルすることは必要ではない。水蒸気は、とりわけ、精留塔の真空システムにおいて回収され得る。
【0126】
(実施例3(本発明))
下記の表7は、PRO/IIシミュレーションに由来する図2からの本発明の別の構成による流れ(11)、(16)および(18)の特徴を与える。シミュレーションのために用いられる塔の操作条件を、下記の表8および9に報告する。
【0127】
【表7】
【0128】
表8は、分画化塔の操作条件を明示する。
【0129】
【表8】
【0130】
表9は、精留塔の操作条件を明示する。
【0131】
【表9】
【0132】
従来技術からの構成(実施例1)と比べて、この構成(実施例3)により、水素化分解工程にリサイクルされた流れ中のHPNAの濃度を低減させることが可能となる:1074重量ppm(実施例1)と比較して424重量ppm(実施例3)、すなわち、少なくとも2.5倍による低減。これにより、同一の転化率で、水素化分解工程に戻るHPNAの量を低減させること、したがって、HPNAによる触媒の被毒を低減させることが可能となる、それ故に、触媒のサイクルライフを増大させる。
【0133】
従来技術からの構成(実施例1)において、精留セクションからの蒸気(流れ(29))は、67重量%まで炭化水素に豊富である。反対に、本発明による構成(実施例2および3)において、精留セクションからの蒸気(流れ(22))は、0.13重量%までの炭化水素の痕跡のみを含有する。本発明による構成において、したがって、従来技術からの構成におけるのとは異なり、アップグレード可能な生成物の喪失を防止するために、精留ゾーンから分画化ゾーンに塔頂蒸気をリサイクルすることは必要ではない。
【0134】
(実施例4:本発明)
下記表10は、PRO/IIシミュレーションに由来する図2からの本発明の別の構成による流れ(11)、(16)および(18)の特徴を与える。シミュレーションのために用いられる塔の操作条件を、表11および12に報告する。
【0135】
【表10】
【0136】
表11は、分画化塔の操作条件を明示する。
【0137】
【表11】
【0138】
表12は、精留塔の操作条件を明示する。
【0139】
【表12】
【0140】
従来技術からの構成と比べて、この構成により、水素化分解工程にリサイクルされた流れ中のHPNAの濃度を低下させることが可能となる:実施例1からの1074重量ppmと比較して実施例4による996重量ppm、すなわち、約8%の低下。これにより、同一の転化率で、水素化分解工程に戻すHPNAの量を低減させること、したがって、HPNAによる触媒の被毒を低減させることが可能となり、それ故に、触媒のサイクルライフを増大させる。
【0141】
実施例4は有利な結果を与えることも理解されるが、しかしながら、それらは、実施例2および3において得られたものより低く、これは、分画圧力P1とのより小さい差を有している精留圧力P2の選択に起因する。
【0142】
従来技術からの構成(実施例1)において、精留セクションからの蒸気(流れ(29))は、67重量%まで炭化水素に豊富である。反対に、本発明による構成(実施例4)において、精留セクションからの蒸気(流れ(22))は、0.04重量%までの炭化水素の痕跡のみを含有する。本発明による構成において、したがって、従来技術からの構成(実施例1)におけるのと異なり、アップグレード可能な生成物の喪失を防止するために精留ゾーンから分画ゾーンに塔頂蒸気をリサイクルすることは必要ではない。
【0143】
実施例2~4は、図2に表されるような、一つの水素化分解セクションを用いるユニットによる本発明の実施形態に関する。本発明は、図3に表されるような2個の連続する水素化分解セクションを有する水素化分解ユニットに適用される場合に、HPNAに対して、同一の利点、または類似する利点を提供する。
【0144】
両方の場合において、本発明は、それの実施において非常にフレキシブルである。それ故に、それは、いくつかの可能である選択肢を、特に、パージされるHPNAを含有している残渣の量に応じて提示することができる:
- HPNAの同一の量で扱うが、しかし、HPNAを含有している残渣のより少量をパージすることによって、収率における増大に有利である、または
- HPNAを含有している残渣のより多く(またはさらには全て)をパージすることによって、同一の収率で水素化分解触媒の耐用期間に有利である、または
- 2つの先行する選択肢の間の中間のあらゆる選択肢。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1】従来技術による水素化分解法のブロック図を表す。
図2】本発明の第1の実施形態による水素化分解法のブロック図を表す。
図3】本発明の第2の実施形態による水素化分解法のブロック図を表す。
図1
図2
図3
【外国語明細書】