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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107108
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20230726BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20230726BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008225
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】深浦 和実
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA25
3D054CC04
3D054CC06
3D054CC11
3D054CC15
3D054CC26
3D054CC32
3D054CC34
3D054CC42
3D054CC43
3D054EE30
3D054EE36
(57)【要約】
【課題】乗員の頭部を迅速に拘束可能で、かつ、上半身をソフトに受け止めることが可能な乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】シート1に着座した乗員MPを保護するための乗員保護装置Sであって、エアバッグ25と、折り畳まれたエアバッグを保持してシートに着座した乗員の腰部MWの前方に配置される保持体10と、エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーター17と、を備える。エアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させて保持体から突出して、乗員の前方を覆うように膨張する構成とされるとともに、膨張完了時に乗員側に配置されて乗員の上半身MUを拘束可能とされる上半身拘束部50を、備える。上半身拘束部が、膨張完了時に胸部MBを拘束可能な胸部拘束面50aと、頭部MHを拘束可能な頭部拘束面50bと、を有するとともに、頭部拘束面を、胸部拘束面よりも乗員側に位置させるように、構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
可撓性を有したシート体から形成される袋状として、折り畳まれて収納されるエアバッグと、
折り畳まれた前記エアバッグを収納させて保持するとともに、前記シートに着座した乗員の腰部の前方に配置される保持体と、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーターと、
を備える構成とされて、
前記エアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させて前記保持体から突出して、前記乗員の前方を覆うように膨張する構成とされるとともに、膨張完了時に前記乗員側に配置されて前記乗員の上半身を拘束可能とされる上半身拘束部を、備える構成とされ、
該上半身拘束部が、膨張完了時に前記乗員の少なくとも胸部を拘束可能な胸部拘束面と、前記乗員の頭部を拘束可能な頭部拘束面と、を有するとともに、該頭部拘束面を、前記胸部拘束面よりも乗員側に位置させるように、構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、
本体膨張部と、
膨張完了時に前記本体膨張部の上端付近において後方に突出するように配置されるとともに、前記本体膨張部と連通されて前記本体膨張部を経て内部に膨張用ガスを流入させて膨張する頭部保護部と、
を備える構成とされて、
該頭部保護部における膨張完了時の後面が、前記頭部拘束面を構成し、
前記本体膨張部において、膨張完了時における前記頭部保護部の下側の後面が、前記胸部拘束面を構成していることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、前記保持体側から連続的に膨張するバッグ構成体から、構成されて、該バッグ構成体の上端側の部位を重ね領域として、他方の被重ね領域の後側に重ねるように折り返して、配置させる構成とされて、
前記重ね領域が、前記頭部保護部を構成し、
前記被重ね領域が、前記本体膨張部を構成していることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記頭部保護部が、膨張完了時の左縁側と右縁側とを、前記本体膨張部側に連結させていることを特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記頭部保護部が、膨張完了時の前面側を、前記本体膨張部における後面側に連結させていることを特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記エアバッグが、膨張完了時の下面側に、前記上半身拘束部により前記乗員の上半身を受け止めた際に前記乗員の大腿部と当接して前記大腿部に支持される被支持面を、備える構成とされるとともに、単体で膨張させた状態において、前記胸部拘束面と前記被支持面との交差角度を、90°~150°の範囲内に設定されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乗員保護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートに着座した乗員の腰部の前方に、保持体に保持させるようにして、折り畳まれたエアバッグを配置させ、このエアバッグを、内部に膨張用ガスを流入させて、保持体から突出させ、乗員の前方を覆うように膨張させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来の乗員保護装置では、膨張完了時のエアバッグにおいて、乗員の腹部から頭部にかけての前方を覆うように上下方向に略沿って配置される後面側の領域によって、乗員を保護する構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/299899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、膨張完了時のエアバッグにおいて乗員を拘束する後面は、上下方向に略沿って配置されることから、乗員の頭部は、この後面に対して、胸部と比較して離隔して配置されることとなり、頭部を膨張を完了させたエアバッグによって迅速に保護する点に改善の余地があった。また、逆に、胸部は、膨張を完了させたエアバッグの後面側によって、直ちに受け止められることから、胸部に対する押圧を抑制して、上半身をソフトに保護する点にも、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、乗員の頭部を迅速に拘束可能で、かつ、上半身をソフトに受け止めることが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
可撓性を有したシート体から形成される袋状として、折り畳まれて収納されるエアバッグと、
折り畳まれたエアバッグを収納させて保持するとともに、シートに着座した乗員の腰部の前方に配置される保持体と、
エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーターと、
を備える構成とされて、
エアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させて保持体から突出して、乗員の前方を覆うように膨張する構成とされるとともに、膨張完了時に乗員側に配置されて乗員の上半身を拘束可能とされる上半身拘束部を、備える構成とされ、
上半身拘束部が、膨張完了時に乗員の少なくとも胸部を拘束可能な胸部拘束面と、乗員の頭部を拘束可能な頭部拘束面と、を有するとともに、頭部拘束面を、胸部拘束面よりも乗員側に位置させるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、エアバッグにおける上半身拘束部が、膨張完了時に乗員の少なくとも胸部を拘束可能な胸部拘束面と、乗員の頭部を拘束可能な頭部拘束面と、を有する構成とされて、エアバッグの膨張完了時に、頭部拘束面が、胸部拘束面よりも乗員側に、配置されることとなる。そのため、膨張を完了させたエアバッグによって乗員を受け止める際に、まず、頭部拘束面によって乗員の頭部を受け止めることができて、膨張したエアバッグを、直ちに、胸部と接触させることを抑制することができる。その結果、本発明の乗員保護装置では、膨張したエアバッグにより胸部を押圧することを抑制でき、かつ、頭部を、近接して配置される頭部拘束面によって迅速に拘束することができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、乗員の頭部を迅速に拘束可能で、かつ、上半身をソフトに受け止めることができる。
【0009】
また、本発明の乗員保護装置において、エアバッグを、
本体膨張部と、
膨張完了時に本体膨張部の上端付近において後方に突出するように配置されるとともに、本体膨張部と連通されて本体膨張部を経て内部に膨張用ガスを流入させて膨張する頭部保護部と、
を備える構成として、
頭部保護部における膨張完了時の後面により、頭部拘束面を構成し、
本体膨張部において、膨張完了時における頭部保護部の下側の後面により、胸部拘束面を構成することが、好ましい。
【0010】
乗員保護装置をこのような構成とすれば、本体膨張部の上端側の後面側に、後方に突出するような頭部保護部を配設させることにより、頭部保護部の膨張完了時の後面から構成される頭部拘束面を、本体膨張部の膨張完了時の後面から構成される胸部拘束面に対して、安定して後方に配置させることができる。そのため、頭部拘束面による乗員の頭部の受止時に、胸部拘束面が胸部を必要以上に押圧することを、的確に抑制することができる。
【0011】
また、上記構成の乗員保護装置において、エアバッグを、保持体側から連続的に膨張するバッグ構成体から、構成して、バッグ構成体の上端側の部位を重ね領域として、他方の被重ね領域の後側に重ねるように折り返して、配置させる構成として、
重ね領域により、頭部保護部を構成し、
被重ね領域により、本体膨張部を構成することが、好ましい。
【0012】
乗員保護装置をこのような構成とすれば、頭部保護部(重ね領域)と本体膨張部(被重ね領域)とを一体的なバッグ構成体から構成することにより、頭部保護部(重ね領域)を、本体膨張部(被重ね領域)に対して折り曲げて重ねるように配置させればよいことから、頭部保護部を別体として構成する場合と比較して、簡便な構成とすることができ、製造も容易である。また、上記構成の乗員保護装置では、頭部保護部を、膨張完了形状を略板状とすることができ、膨張完了時の後面、すなわち、頭部拘束面を、乗員の頭部の前方において、部分的な突出を抑制して、上下左右に広く配置させることができることから、頭部の位置が多少左右にずれた場合にも、乗員の頭部を、頭部拘束面によって、的確に拘束することができる。
【0013】
具体的には、頭部保護部は、膨張完了時の左縁側と右縁側とを、本体膨張部側に連結させる構成としてもよく、また、膨張完了時の前面側を、頭部保護部における後面側に連結させるように構成してもよい。
【0014】
さらに、上記構成の乗員保護装置において、エアバッグを、膨張完了時の下面側に、上半身拘束部により乗員の上半身を受け止めた際に乗員の大腿部と当接して大腿部に支持される被支持面を、備える構成とするとともに、単体で膨張させた状態において、胸部拘束面と被支持面との交差角度を、90°~150°の範囲内に設定される構成とすることが、好ましい。エアバッグをこのような構成とすれば、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、頭部拘束面を、乗員の頭部に近接させるように、エアバッグを迅速に膨張させることができる。そのため、乗員の頭部を、頭部拘束面によって一層迅速に拘束することができる。また、胸部拘束面も、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、乗員に近接させることができることから、頭部拘束面によって頭部を拘束された状態の乗員の胸部を、胸部拘束面によって、必要以上に押圧することを抑制しつつ、迅速に保護することができる。さらに、上記構成のエアバッグでは、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、上半身拘束部(胸部拘束面)と被支持面との実質的な距離を大きくすることができることから、エアバッグが、被支持面を大腿部に支持された状態で上半身拘束部が乗員の上半身を受け止める際において、乗員の上半身が、上半身拘束部を被支持面側に向かって押圧しつつエアバッグを圧縮させる際に、大腿部から受ける反力を増大させることができて、乗員の拘束性能を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの側面図である。
図3図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図4】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図5図4のエアバッグの概略縦断面図である。
図6図4のエアバッグの背面図である。
図7図4のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図9】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
図10】実施形態の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。
図11】本発明の他の実施形態であるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図12図11のエアバッグの概略縦断面図である。
図13図11のエアバッグの背面図である。
図14図11のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
図15図11のエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、シート1の前後・上下・左右の方向と一致するものである。実施形態の乗員保護装置Sは、図1~3に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、エアバッグ25を保持する保持体を構成するシートベルト7と、エアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター17と、を備える構成とされている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0017】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを拘束するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端3b左方に配置されるアンカ部材14(図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、図1,2に示すように、エアバッグ25を保持させている保持体としてのラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部MW)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩部MSから胸部MBにかけて)を拘束する構成とされている(図3参照)。そして、実施形態の場合、乗員着座時に、シート1に着座した乗員MPの腰部MWの前方に配置されるラップベルト10と、後述するカバー22と、が、折り畳まれたエアバッグ25を収納させて保持する保持体を、構成している。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0018】
インフレーター17は、シート1に搭載されるもので、詳細には、実施形態の場合、シート1における座面3aよりも下方となる位置に、配設されている。実施形態の場合、インフレーター17は、図1に示すように、外形形状を略円柱状としたインフレーター本体18(詳細な図示を省略)と、インフレーター本体18から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給するパイプ部19と、を備えている。パイプ部19は、インフレーター本体18から延びて、先端を、シート1の左方において、座部3と背もたれ部2との境界部位付近に位置させるように、配設されるもので、この先端を、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部55と接続させる構成とされている(図9参照)。実施形態の場合、インフレーター17は、エアバッグ25の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。具体的には、インフレーター17は、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動から5ms後に作動するように、設定されている。
【0019】
エアバッグ25は、シートベルト7のラップベルト10を保持体として、ラップベルト10に保持されつつ、長尺状に折り畳まれて、周囲をカバー22に覆われるもので、具体的には、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、周囲をカバー22に覆われて、ラップベルト10の領域に配置されている(図3参照)。換言すれば、エアバッグ25は、ラップベルト10とカバー22との間の隙間に、折り畳まれて収納される構成である。また、図1に示すような非装着状態においては、エアバッグ25は、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。カバー22は、可撓性を有したシート体から構成されて、エアバッグ25の展開膨張時に所定箇所を破断されて、エアバッグ25における後述するバッグ本体26を突出可能に、構成されている。
【0020】
エアバッグ25は、可撓性を有したシート体から形成される袋状とされるもので、図4~6に示すように、バッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26内に膨張用ガスを流入させる導管部55と、バッグ本体26をラップベルト10に連結させるための取付部57と、を備えている。
【0021】
バッグ本体26は、実施形態の場合、本体膨張部27と、膨張完了時の本体膨張部27の上端27a側に配設される頭部保護部40と、を備えている。
【0022】
本体膨張部27は、膨張完了時の外形形状を、図4,5に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるとともに下端側にかけて前後で幅広とした略三角柱形状とされるもので、膨張完了時に乗員MP側に配置される乗員側壁部35と、乗員側壁部35と前後方向側で対向して配置される前壁部29と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部30と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部31,右壁部32と、を有する構成とされている。左壁部31と右壁部32とには、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール37,37が、形成されている。本体膨張部27は、図5に示すように、単体で膨張させた状態において、下壁部30(被支持面52)と乗員側壁部35(胸部拘束面50a)との交差角度αを、90°~150°の範囲内に設定されるように、構成されている。具体的には、単体で膨張させた状態の前後方向に略沿った断面における下壁部30と乗員側壁部35との交差角度α(詳細には、下壁部30と乗員側壁部35との接線相互の交差角度α、図5参照)は、120°程度に、設定されている。交差角度αが90°未満であれば、膨張完了時における頭部拘束面50bと頭部MHとの離隔距離が大きく、頭部MHを迅速に拘束できず、逆に、交差角度αが150°を超えれば、シート1に着座している乗員MPの頭部MHを、頭部拘束面50bによって過度に拘束してしまう虞れが生じるためである。
【0023】
本体膨張部27は、膨張完了時の下端側の前後方向側の幅寸法を、下壁部30の前端(本体膨張部27における前下端27b)を乗員MPの膝Kよりもわずかに前方に位置させるような寸法に設定され、膨張完了時の後端側の上下方向側の幅寸法を、上端27a(乗員側壁部35の上端)を、乗員MPの頭部MHの前方(詳細には、シート1における背もたれ部2の上側に配置されるヘッドレスト4の上端と略同等)に位置させるような寸法に、設定されている(図9参照)。また、本体膨張部27は、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、シート1の背もたれ部2より小さく、かつ、乗員MPの上半身MUを安定して保護可能に、上半身MUと略同等として、構成されている(図8参照)。
【0024】
頭部保護部40は、膨張完了時に本体膨張部27の上端27a付近において後方に突出するように配置されるもので、本体膨張部27と別体の袋状とされている。頭部保護部40は、左右に幅広の略長方形状の前壁部41と後壁部42とを有して、膨張完了形状を略長方形板状として構成されるもので、前壁部41側に形成される連通孔45を介して、本体膨張部27と連通されている。連通孔45は、頭部保護部40の前壁部41に形成される開口41aと、本体膨張部27における乗員側壁部35の上端側に対応して形成される開口35bと、から構成されるもので、略円形状として、左右方向側で2個並設されている。そして、頭部保護部40は、連通孔45を構成する開口41aの周縁を、本体膨張部27の乗員側壁部35に形成される開口35bの周縁に、全周にわたって結合させることにより、本体膨張部27と連結されている。連通孔45は、頭部保護部40の上下の中央より下方となる位置に、配設されている。そして、頭部保護部40は、膨張完了時に、上側半分程度の領域を、本体膨張部27の上端27aよりも上方に突出させるようにして、シート1に着座している乗員MPの頭部MHの前方となる位置に配置されるもので、具体的には、膨張完了時の上下方向側の幅寸法を、上端40aを、本体膨張部27の上端27aよりも上方に位置させつつ、ヘッドレスト4の上端よりも上方となる位置に配置させるような寸法に、設定されている。また、頭部保護部40は、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、本体膨張部27における上端27a側の領域の左右方向側の幅寸法と略同等として、構成されている(図6参照)。
【0025】
実施形態のバッグ本体26では、本体膨張部27における乗員側壁部35と、頭部保護部40と、が、膨張完了時に乗員MPの上半身MUを拘束可能とされる上半身拘束部50を、構成している。上半身拘束部50は、膨張完了時に乗員MPの少なくとも胸部MBを拘束可能な胸部拘束面50aと、乗員MPの頭部MHを拘束可能な頭部拘束面50bと、を備えている。実施形態では、頭部保護部40における後壁部42の後面42aが、頭部拘束面50bを構成し、本体膨張部27の乗員側壁部35において、頭部保護部40の下側の領域の後面35aが、胸部拘束面50aを構成している。すなわち、実施形態のバッグ本体26では、エアバッグ25の膨張完了時に、頭部拘束面50bが、胸部拘束面50aよりも後方となる位置(すなわち、乗員MP側となる位置)に、配置されることとなる(図9参照)。胸部拘束面50aは、実施形態の場合、乗員MPの腹部MAから胸部MBにかけてを拘束することとなる。
【0026】
また、実施形態のバッグ本体26では、本体膨張部27の下壁部30の下面30aが、膨張完了時のバッグ本体26により乗員MPの上半身MUを受け止めた際に乗員MPの大腿部MTと当接して大腿部MTに支持される被支持面52を、構成している。詳細には、被支持面52は、下壁部30において、導管部55よりも前側の領域の下面30a側から、構成されている。下壁部30は、バッグ本体26の膨張完了時における乗員MP受止前の状態では、前下がりに僅かに傾斜して配置されることとなる(図9参照)。バッグ本体26は、膨張完了時における後下端側の部位(本体膨張部27における後下端27c側の部位であって、下壁部30の後端側の部位)で、連通孔(図符号省略)を介して、導管部55と連通されている(図5参照)。
【0027】
導管部55は、バッグ本体26から左方に延びるように構成されるもので、先端55a側を開口させた略筒形状として、インフレーター17のパイプ部19と接続されている。導管部55は、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成である(図9参照)。この導管部55は、先端55a側を、上述したごとく、クランプ20を用いて、インフレーター17のパイプ部19に接続される構成である。バッグ本体26をラップベルト10に取り付ける取付部57は、図4,5に示すように、導管部55の下面側に縫着されている。取付部57は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。そして、この取付部57にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ25は、ラップベルト10に連結されて、ラップベルト10に保持される構成である。
【0028】
実施形態のエアバッグ25は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、実施形態の場合、図7に示すように、本体膨張部27を構成する本体用パネル60と、頭部保護部40を構成する頭部保護部用パネル68と、導管部55を構成する導管部用パネル72,73と、取付部57を構成する取付部用パネル75と、から、構成されている。これらの本体用パネル60,頭部保護部用パネル68,導管部用パネル72,73,取付部用パネル75は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0029】
本体用パネル60は、乗員側パネル61と前側パネル65とを備えている。乗員側パネル61は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて、主に乗員側壁部35から下壁部30にかけての部位を、構成している。具体的には、乗員側パネル61は、主に乗員側壁部35を構成する上側部位62と、主に下壁部30を構成する下側部位63と、を備えており、上側部位62と下側部位63とを本体膨張部27の後下端27c側を構成する部位で連結させたような外形形状とされている。上側部位62は、乗員側壁部35と、左壁部31,右壁部32における後側の領域と、を構成している。下側部位63は、下壁部30と、左壁部31,右壁部32における下側の領域と、を構成している。前側パネル65は、本体膨張部27において、主に前壁部29の部位(具体的には、前壁部29と、左壁部31,右壁部32における前側の領域)を構成するもので、平らに展開した状態の外形形状を、乗員側パネル61において上側部位62と下側部位63とを連結させている連結部位61aの左右に配置される下左縁62a,後左縁63a相互、下右縁62b,後右縁63b相互を、それぞれ結合させた残りの縁部(上縁62c,前縁63c)相互を離隔させるように開いた状態の下側部位63及び上側部位62と、略一致させるように、構成されている。前側パネル65と乗員側パネル61とは、それぞれ、左右対称形とされている。そして、本体膨張部27は、前側パネル65の外周縁65aと、上述したごとく下左縁62a,後左縁63a相互,下右縁62b,後右縁63b相互をそれぞれ結合させた状態の乗員側パネル61における上縁62c,前縁63cと、を結合させることにより、袋状とされている。
【0030】
頭部保護部用パネル68は、前側パネル69と後側パネル70とを備えている。前側パネル69と後側パネル70とは、外形形状を同一として、略長方形状とされている。前側パネル69は、頭部保護部40の前壁部41を構成し、後側パネル70は、頭部保護部40の後壁部42を構成している。頭部保護部40は、前側パネル69と後側パネル70との外周縁69a,70a相互を結合させることにより、袋状とされている。
【0031】
2枚の導管部用パネル72,73は、外形形状を同一とされるもので、導管部55における上側の領域と下側の領域とを、それぞれ構成している。取付部用パネル75は、外形形状を略長方形状として、二つ折りされて短手方向側の縁部相互を結合させることにより、取付部57を形成することとなる。
【0032】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載されたシート1にシートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部55を経てバッグ本体26内に流入することとなり、バッグ本体26が、カバー22を破断させるようにして、保持体としてのラップベルト10から前上方に突出しつつ、図3の二点鎖線及び図8,9に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0033】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25における上半身拘束部50が、膨張完了時に乗員MPの少なくとも胸部MBを拘束可能な胸部拘束面50aと、乗員MPの頭部MHを拘束可能な頭部拘束面50bと、を有する構成とされて、エアバッグ25の膨張完了時に、頭部拘束面50bが、胸部拘束面50aよりも乗員MP側(後側)に、配置されることとなる。そのため、膨張を完了させたエアバッグ25によって乗員MPを受け止める際に、まず、頭部拘束面50bによって乗員MPの頭部MHを受け止めることができて(図10参照)、膨張したエアバッグ25を、直ちに、胸部MBと接触させることを抑制することができる。その結果、実施形態の乗員保護装置Sでは、膨張したエアバッグ25により胸部MBを押圧することを抑制でき、かつ、頭部MHを、近接して配置される頭部拘束面50bによって迅速に拘束することができる。
【0034】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、乗員MPの頭部MHを迅速に拘束可能で、かつ、上半身MUをソフトに受け止めることができる。
【0035】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25におけるバッグ本体26が、本体膨張部27と、膨張完了時に本体膨張部27の上端27a付近において後方に突出する頭部保護部40と、を備える構成とされており、頭部保護部40における膨張完了時の後面42aが、頭部拘束面50bを構成し、本体膨張部27において、膨張完了時における頭部保護部40の下側の後面35aが、胸部拘束面50aを構成している。すなわち、実施形態の乗員保護装置Sでは、本体膨張部27の上端27a側の後面側に、後方に突出するような頭部保護部40を配設させることにより、頭部保護部40の膨張完了時の後面42aから構成される頭部拘束面50bを、本体膨張部27の膨張完了時の後面35aから構成される胸部拘束面50aに対して、安定して後方に配置させることができる。そのため、頭部拘束面50bによる乗員MPの頭部MHの受止時に、胸部拘束面50aが胸部MBを必要以上に押圧することを、的確に抑制することができる。
【0036】
さらに、実施形態の乗員保護装置Sでは、本体膨張部27が、単体で膨張させた状態において、胸部拘束面50a(乗員側壁部35)と被支持面52(下壁部30)との交差角度αを、90°~150°の範囲内(実施形態の場合、120°程度)に設定されている。そのため、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、頭部拘束面50bを、乗員MPの頭部MHに近接させるように、エアバッグ25を迅速に膨張させることができて、乗員MPの頭部MHを、頭部拘束面50bによって一層迅速に拘束することができる。また、実施形態のエアバッグ25では、胸部拘束面50aも、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、乗員MPに近接させることができることから、頭部拘束面50bによって頭部MHを拘束された状態の乗員MPの胸部MBを、胸部拘束面50aによって、必要以上に押圧することを抑制しつつ、迅速に保護することができる。さらに、実施形態のエアバッグ25では、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、上半身拘束部50(胸部拘束面50a)と被支持面52との実質的な距離を大きくすることができることから、エアバッグ25が、被支持面52を大腿部MTに支持された状態で上半身拘束部50によって乗員MPの上半身MUを受け止める際において、乗員MPの上半身MUが、上半身拘束部50を被支持面52側に向かって押圧しつつエアバッグ25を圧縮させる際に、大腿部MTから受ける反力を増大させることができて、乗員MPの拘束性能を増大させることができる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態であるエアバッグ80について、説明をする。エアバッグ80は、図11~13に示すように、バッグ本体81と、インフレーター17と接続されてバッグ本体81内に膨張用ガスを流入させる導管部55Aと、バッグ本体81をラップベルト10に連結させるための取付部57Aと、を備えている。エアバッグ80において、バッグ本体81以外(すなわち、導管部55Aと取付部57A)は、前述のエアバッグ25における導管部55及び取付部57と同一であることから、同一の符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0038】
バッグ本体81は、実施形態の場合、本体膨張部27Aと、膨張完了時の本体膨張部27Aの上端27a側に配設される頭部保護部85と、を備えている。このエアバッグ80では、バッグ本体81は、保持体としてのラップベルト10側、すなわち、下端側から連続的に膨張するバッグ構成体83から構成されて(図12,15参照)、このバッグ構成体83の上端側の部位を重ね領域83aとして、他方の被重ね領域83bの後側に重ねるように折り返して、配置させるようにして、形成されている。実施形態のバッグ本体では、バッグ構成体83における重ね領域83aが、頭部保護部85を構成し、被重ね領域83bが、本体膨張部27Aを構成している。
【0039】
バッグ構成体83における被重ね領域83bから構成される本体膨張部27Aは、上端27a側を左右の略全域にわたって頭部保護部85の上端85a側と連通させている以外は、前述のエアバッグ25における本体膨張部27と略同一の構成であることから、同一の符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0040】
頭部保護部85は、膨張完了時に本体膨張部27Aの上端27a付近において後方に突出するように配置されるもので、上述したごとく、バッグ構成体83における重ね領域83aから構成されている。すなわち、頭部保護部85は、バッグ構成体83の上端側の領域を折り返すことにより、上端85a側を、左右の全域にわたって、本体膨張部27Aの上端27a側と連通されている。そして、頭部保護部85は、上端85aを、本体膨張部27Aの上端27aと略同等として、ヘッドレスト4の上端と略同等の位置に、配置させるように、構成されている(図15参照)。また、頭部保護部85は、下端側にかけて僅かに左右に幅広とされる略台形状の前壁部86と後壁部87とを有して、膨張完了形状を略台形状として構成されており(図13参照)、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、本体膨張部27Aにおける上端27a側の領域の左右方向側の幅寸法と略同等として、構成されている。この頭部保護部85は、前壁部86を本体膨張部27Aの乗員側壁部35Aに結合させるように形成されるシーム部90によって、膨張完了時の前面側を、本体膨張部27Aにおける後面側に連結されるとともに、膨張完了時の左縁85b側と右縁85c側とを、テザー92L,92Rによって、本体膨張部27A側に連結されている。シーム部90は、図12に示すように、前壁部86と乗員側壁部35Aとを直接結合(縫着)させて構成されるもので、左右方向側を幅広とした長円状として、頭部保護部85の上下の中央より下方となる位置に、形成されている(図13参照)。テザー92L,92Rは、バッグ本体81と別体とされて、可撓性を有したシート体からなる帯状とされるとともに、エアバッグ80の膨張完了時に、前後方向に略沿って配置されるようにして、頭部保護部85の左縁85b側と右縁85c側とにおける下端付近を、本体膨張部27Aにおける左縁27d側と右縁27e側とに、連結させている。なお、実施形態では、シーム部90とテザー92L,92Rとは、上下方向側での位置を、略一致させて、配設されている(図13参照)。
【0041】
このバッグ本体81においても、本体膨張部27Aにおける乗員側壁部35Aと、頭部保護部85と、が、膨張完了時に乗員MPの上半身MUを拘束可能とされる上半身拘束部95を、構成している。上半身拘束部95は、膨張完了時に乗員MPの少なくとも胸部MBを拘束可能な胸部拘束面95aと、乗員MPの頭部MHを拘束可能な頭部拘束面95bと、を備えている。このバッグ本体81においても、頭部保護部85における後壁部87の後面87aが、頭部拘束面95bを構成し、本体膨張部27Aの乗員側壁部35Aにおいて、頭部保護部85の下側の領域の後面35aが、胸部拘束面95aを構成している。すなわち、バッグ本体81においても、エアバッグ80の膨張完了時に、頭部拘束面95bが、胸部拘束面95aよりも後方となる位置(すなわち、乗員MP側となる位置)に、配置されることとなる(図15参照)。胸部拘束面95aは、乗員MPの腹部MAから胸部MBにかけてを拘束することとなる。さらに、バッグ本体81においても、本体膨張部27Aの下壁部30Aの下面30aが、膨張完了時のバッグ本体81により乗員MPの上半身MUを受け止めた際に乗員MPの大腿部MTと当接して大腿部MTに支持される被支持面52Aを、構成している。
【0042】
このエアバッグ80も、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、実施形態の場合、図14に示すように、バッグ本体81(バッグ構成体83)を構成する構成体用パネル100と、導管部55Aを構成する導管部用パネル72A,73Aと、取付部57Aを構成する取付部用パネル75Aと、テザー92L,92Rと、から、構成されている。
【0043】
構成体用パネル100は、乗員側パネル101と前側パネル65とを備えている。乗員側パネル101は、膨張完了時に乗員MP側に配置されるもので、本体膨張部27Aにおける主に乗員側壁部35Aから下壁部30Aにかけての部位と、頭部保護部85における前壁部86と、を、構成している。具体的には、乗員側パネル101は、本体膨張部27Aにおいて、主に乗員側壁部35Aを構成する上側部位102と、主に下壁部30Aを構成する下側部位103と、に、頭部保護部85の前壁部86を構成する頭部保護用部位104を、連ならせる構成とされており、上側部位102と下側部位103とは、前述のエアバッグ25における乗員側パネル61の上側部位62及び下側部位63と略同一形状とされている。前側パネル106は、本体膨張部27Aにおいて、主に前壁部29Aの部位(具体的には、前壁部29Aと、左壁部31A,右壁部32Aにおける前側の領域)を構成する前壁構成部107と、頭部保護部85における後壁部87を構成する頭部保護用部位108と、を連ならせるように構成されるもので、前壁構成部107は、前述のエアバッグ25における前側パネル69と略同一形状とされている。バッグ構成体83は、前側パネル106における前壁構成部107及び頭部保護用部位108の外周縁107a,108aと、下左縁102a,後左縁103a相互,下右縁102b,後右縁103b相互をそれぞれ結合させた状態の乗員側パネル101における上縁102c,前縁103cから頭部保護用部位104の外周縁104aにかけてと、を結合させることにより、袋状とされることとなる。
【0044】
このような構成のエアバッグ80を使用した乗員保護装置においても、エアバッグ80における上半身拘束部95が、膨張完了時に乗員MPの少なくとも胸部MBを拘束可能な胸部拘束面95aと、乗員MPの頭部MHを拘束可能な頭部拘束面95bと、を有する構成とされて、エアバッグ80の膨張完了時に、頭部拘束面95bが、胸部拘束面95aよりも乗員MP側に、配置されることとなる。そのため、膨張を完了させたエアバッグ80によって乗員MPを受け止める際に、まず、頭部拘束面95bによって乗員MPの頭部MHを受け止めることができて、膨張したエアバッグ80を、直ちに、胸部MBと接触させることを抑制することができる。その結果、上記構成のエアバッグ80を使用した乗員保護装置においても、膨張したエアバッグ80により胸部MBを押圧することを抑制でき、かつ、頭部MHを、近接して配置される頭部拘束面95bによって迅速に拘束することができる。
【0045】
また、上記構成のエアバッグ80においても、バッグ本体26が、本体膨張部27Aと、膨張完了時に本体膨張部27Aの上端27a付近において後方に突出する頭部保護部85と、を備える構成とされており、頭部保護部85における膨張完了時の後面87aが、頭部拘束面95bを構成し、本体膨張部27Aにおいて、膨張完了時における頭部保護部85の下側の後面35aが、胸部拘束面95aを構成していることから、頭部拘束面95bを、胸部拘束面95aに対して、安定して後方に配置させることができる。そのため、頭部拘束面95bによる乗員MPの頭部MHの受止時に、胸部拘束面95aが胸部MBを必要以上に押圧することを、的確に抑制することができる。
【0046】
また、上記構成のエアバッグ80では、バッグ本体81を、頭部保護部85(重ね領域83a)と本体膨張部27A(被重ね領域83b)とを一体的なバッグ構成体83から構成していることから、頭部保護部85を、本体膨張部27Aに対して折り曲げて重ねるように配置させればよく、前述したエアバッグ25のごとく、頭部保護部40を本体膨張部27と別体として構成する場合と比較して、簡便な構成とすることができ、製造も容易である。また、上記構成のエアバッグ80では、頭部保護部85を、膨張完了形状を略板状とすることができ、膨張完了時の後面87a、すなわち、頭部拘束面95bを、乗員MPの頭部MHの前方において、部分的な突出を抑制して、上下左右に広く配置させることができることから、頭部MHの位置が多少左右にずれた場合にも、乗員MPの頭部MHを、頭部拘束面95bによって、的確に拘束することができる。ちなみに、前述のエアバッグ25では、頭部保護部40は、前壁部41と本体膨張部27における乗員側壁部35とを連通孔45周縁で結合させることにより、本体膨張部27に連結されている構成であることから、厚く膨張しやすく、乗員MPの頭部MHを保護できるものの、膨張完了時に、後壁部42が中央を後方に位置させるように、大きく湾曲して配置されることとなる。
【0047】
上記構成のエアバッグ80では、頭部保護部85は、膨張完了時の左縁85b側と右縁85c側とを、テザー92L,92Rによって、本体膨張部27A側に連結させ、また、シーム部90により、膨張完了時の前面側を、本体膨張部27Aにおける後面側に連結させて、本体膨張部27Aに対する折返状態を維持されている。このような折返状態を維持する手段としては、シーム部やテザーは一例であり、他の手段(例えば、接着剤等による接着)を用いてもよい。また、シーム部とテザーに関しても、どちらか一方のみを、配設させる構成としてもよい。なお、膨張完了時における後壁部87の大きな湾曲を抑制する観点からは、頭部保護部の左右両縁側を、本体膨張部側に連結させることが、好ましい。
【0048】
実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25,80を保持させる保持体として、シートベルト7のラップベルト10を利用しているが、エアバッグを保持させる保持体は、ラップベルトに限定されるものではなく、例えば、シートベルトとは別体の保持体を、シートに着座した乗員の腰部の前方に配置させ、この保持体に、エアバッグを保持させる構成としてもよい。また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7のラップベルト10にエアバッグ25,80を保持させる構成であるものの、インフレーター17が、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動よりも遅れて(5ms程度)作動することから、シートベルト7により乗員MPのシート1に対する着座状態を安定して維持させた状態で、エアバッグ25を膨張させることができ、エアバッグ25とシートベルト7とにより、乗員MPを安定して保護することができる。
【0049】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7とインフレーター17とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグ25によって的確に保護することができる。もちろん、本発明の乗員保護装置は、このような構成のシートに限定されるものではなく、リトラクタを車体側に設けたシートベルトにより乗員を拘束するタイプのシートに搭載することもできる。また、インフレーターも、車両のボディ側に取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…シート、7…シートベルト、10…ラップベルト(保持体)、17…インフレーター、25,80…エアバッグ、27,27A…本体膨張部、30,30A…下壁部、30a…下面、35,35A…乗員側壁部、35a…後面、40,85…頭部保護部、42,87…後壁部、42a,87a…後面、50,95…上半身拘束部、50a,95a…胸部拘束面、50b,95b…頭部拘束面、52,52A…被支持面、83…バッグ構成体、83a…重ね領域、83b…被重ね領域、MP…乗員、MU…上半身、MH…頭部、MB…胸部、MT…大腿部、S…乗員保護装置。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15