(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107109
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/201 20110101AFI20230726BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20230726BHJP
【FI】
B60R21/201
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008226
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】深浦 和実
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA25
3D054CC04
3D054CC06
3D054CC11
3D054CC15
3D054CC26
3D054CC32
3D054CC34
3D054CC42
3D054CC43
3D054EE30
3D054EE36
(57)【要約】
【課題】膨張完了時のエアバッグによって、乗員を的確に受け止め可能な乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】シート1に着座した乗員MPを保護するための乗員保護装置S。エアバッグ25と、折り畳まれたエアバッグを収納させて保持するとともにシートに着座した乗員の腰部の前方に配置される保持体10と、エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーター17と、を備える。エアバッグが、膨張完了時に乗員の前方を覆う本体膨張部27と、本体膨張部を経て内部に膨張用ガスを流入させるとともに本体膨張部から後方に突出するように配置される後側突出部40と、を備える。後側突出部が、本体膨張部の外周縁から連なるように形成されるとともに、本体膨張部に対して折り返されるようにして、本体膨張部の後側に配置されて、折り返し部位43で、前記本体膨張部に連通されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
可撓性を有したシート体から形成される袋状として、折り畳まれて収納されるエアバッグと、
折り畳まれた前記エアバッグを収納させて保持するとともに、前記シートに着座した乗員の腰部の前方に配置される保持体と、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーターと、
を備える構成とされて、
前記エアバッグが、膨張完了時に前記乗員の前方を覆う本体膨張部と、該本体膨張部を経て内部に膨張用ガスを流入させるとともに前記本体膨張部から後方に突出するように配置される後側突出部と、を備える構成とされて、
該後側突出部が、前記本体膨張部の外周縁から連なるように形成されるとともに、前記本体膨張部に対して折り返されるようにして、前記本体膨張部の後側に配置されて、折り返し部位で、前記本体膨張部に連通されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記後側突出部が、前記本体膨張部の上縁側から連なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記後側突出部が、前記本体膨張部の左縁側及び/又は右縁側から連なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記後側突出部が、前記エアバッグの膨張完了時に、前記乗員の頭部の前方となる位置に配置されて、該頭部を拘束可能な頭部保護部を構成していることを特徴とする請求項2または3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記後側突出部が、前記エアバッグの膨張完了時に、前記乗員の左右の肩部の前方となる位置に配置されて、該肩部を拘束可能な肩拘束部を構成していることを特徴とする請求項2または3に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記後側突出部が、前記折り返し部位から延びる周壁を、前記本体膨張部側の前壁部と、後側に配置される後壁部と、の外周縁相互を結合させて、形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートに着座した乗員の腰部の前方に、保持体に保持させるようにして、折り畳まれたエアバッグを配置させ、このエアバッグを、内部に膨張用ガスを流入させて、保持体から突出させ、乗員の前方を覆うように膨張させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来の乗員保護装置では、エアバッグが、膨張完了時における上端側に、部分的に後方(乗員側)に突出する突出部を、有する構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、突出部が、膨張完了時のエアバッグにおいて、単に、部分的に突出するように配設される構成であることから、突出部により乗員を受け止めた際に、エアバッグ全体の内圧が上昇することとなって、突出部によって効率よく乗員を受け止める点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了時のエアバッグによって、乗員を的確に受け止め可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
可撓性を有したシート体から形成される袋状として、折り畳まれて収納されるエアバッグと、
折り畳まれたエアバッグを収納させて保持するとともに、シートに着座した乗員の腰部の前方に配置される保持体と、
エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーターと、
を備える構成とされて、
エアバッグが、膨張完了時に乗員の前方を覆う本体膨張部と、本体膨張部を経て内部に膨張用ガスを流入させるとともに本体膨張部から後方に突出するように配置される後側突出部と、を備える構成とされて、
後側突出部が、本体膨張部の外周縁から連なるように形成されるとともに、本体膨張部に対して折り返されるようにして、本体膨張部の後側に配置されて、折り返し部位で、本体膨張部に連通されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、膨張完了時のエアバッグにおいて、本体膨張部から後方に突出するように配置される後側突出部が、本体膨張部に対して折り返されるようにして、本体膨張部の後側に配置される構成であり、また、この後側突出部は、折り返し部位で、本体膨張部に連通される構成である。そのため、後側突出部によって乗員を受け止める際に、後側突出部内に流入している膨張用ガスが、本体膨張部側への流出をある程度抑制されるような態様となる。また、この後側突出部は、乗員を受け止めた際に、折り返し部位に沿う方向側での幅寸法を広げるような変形も抑制されることとなる。そのため、本発明の乗員保護装置では、高い内圧を維持し、かつ、大きな変形を抑制された状態の後側突出部によって、乗員を的確に拘束することができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、膨張完了時のエアバッグによって、乗員を的確に受け止めることができる。
【0009】
具体的には、後側突出部は、本体膨張部の上縁側から連なるように形成してもうよく、このような構成とする場合、後側突出部によって、乗員の頭部を拘束可能な頭部保護部や、乗員の左右の肩部を拘束可能な肩部拘束部を、構成することができる。また、後側突出部は、本体膨張部の左縁側及び/又は右縁側から連なるように形成してもよく、このような構成とする場合、後側突出部によって、乗員の頭部を拘束可能な頭部保護部や、乗員の左右の肩部を拘束可能な肩部拘束部を、構成することができる。
【0010】
また、本発明の乗員保護装置において、後側突出部において、折り返し部位から延びる周壁を、本体膨張部側の前壁部と、後側に配置される後壁部と、の外周縁相互を結合させて、形成する構成とすれば、折り返し部位が略直線状となり、後側突出部による乗員受止時に、後側突出部内に流入している膨張用ガスの本体膨張部側への流出を、一層抑制することが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
【
図3】
図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
【
図4】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【
図7】
図4のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
【
図8】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
【
図9】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【
図10】実施形態の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態であるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【
図12】
図11のエアバッグにおいて、肩拘束部の領域での概略縦断面図である。
【
図13】
図11のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
【
図14】
図11のエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの平面図である。
【
図15】
図11のエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
【
図16】本発明のさらに他の実施形態であるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、シート1の前後・上下・左右の方向と一致するものである。実施形態の乗員保護装置Sは、
図1~3に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、エアバッグ25を保持する保持体を構成するシートベルト7と、エアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター17と、を備える構成とされている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0013】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを拘束するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止させ、他端側を、シート1における座部3の後端3b左方に配置されるアンカ部材14(
図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、
図1,2に示すように、エアバッグ25を保持させている保持体としてのラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出されるように、構成されている。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、
図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部MW)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩部MSから胸部MBにかけて)を拘束する構成とされている(
図3参照)。そして、実施形態の場合、乗員着座時に、シート1に着座した乗員MPの腰部MWの前方に配置されるラップベルト10と、後述するカバー22と、が、折り畳まれたエアバッグ25を収納させて保持する保持体を、構成している。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0014】
インフレーター17は、シート1に搭載されるもので、詳細には、実施形態の場合、シート1における座面3aよりも下方となる位置に、配設されている。実施形態の場合、インフレーター17は、
図1に示すように、外形形状を略円柱状としたインフレーター本体18(詳細な図示を省略)と、インフレーター本体18から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給するパイプ部19と、を備えている。パイプ部19は、インフレーター本体18から延びて、先端を、シート1の左方において、座部3と背もたれ部2との境界部位付近に位置させるように、配設されるもので、この先端を、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部55と接続させる構成とされている(
図9参照)。実施形態の場合、インフレーター17は、エアバッグ25の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。具体的には、インフレーター17は、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動から5ms後に作動するように、設定されている。
【0015】
エアバッグ25は、シートベルト7のラップベルト10を保持体として、ラップベルト10に保持されつつ、長尺状に折り畳まれて、周囲をカバー22に覆われるもので、具体的には、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、周囲をカバー22に覆われて、ラップベルト10の領域に配置されている(
図3参照)。換言すれば、エアバッグ25は、ラップベルト10とカバー22との間の隙間に、折り畳まれて収納される構成である。また、
図1に示すような非装着状態においては、エアバッグ25は、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。カバー22は、可撓性を有したシート体から構成されて、エアバッグ25の展開膨張時に所定箇所を破断されて、エアバッグ25における後述するバッグ本体26を突出可能に、構成されている。
【0016】
エアバッグ25は、可撓性を有したシート体から形成される袋状とされるもので、
図4~6に示すように、バッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26内に膨張用ガスを流入させる導管部55と、バッグ本体26をラップベルト10に連結させるための取付部57と、を備えている。
【0017】
バッグ本体26は、実施形態の場合、本体膨張部27と、本体膨張部27から後方に突出するように配置される後側突出部としての頭部保護部40と、を備えている。
【0018】
本体膨張部27は、膨張完了時の外形形状を、
図4,5に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるとともに下端側にかけて前後で幅広とした略三角柱形状とされるもので、膨張完了時に乗員MP側に配置される乗員側壁部35と、乗員側壁部35と前後方向側で対向して配置される前壁部29と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部30と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部31,右壁部32と、を有する構成とされている。左壁部31と右壁部32とには、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール37が、形成されている。本体膨張部27は、
図5に示すように、単体で膨張させた状態において、下壁部30と乗員側壁部35との交差角度αを、90°~150°の範囲内に設定されるように、構成されている。具体的には、単体で膨張させた状態の前後方向に略沿った断面における下壁部30と乗員側壁部35との交差角度α(詳細には、下壁部30と乗員側壁部35との接線相互の交差角度α、
図5参照)は、120°程度に、設定されている。
【0019】
本体膨張部27は、膨張完了時の下端側の前後方向側の幅寸法を、下壁部30の前端(本体膨張部27における前下端)を乗員MPの膝Kよりもわずかに前方に位置させるような寸法に設定され、膨張完了時の後端側の上下方向側の幅寸法を、上端27a(乗員側壁部の上端)を、乗員MPの頭部MHの前方(詳細には、シート1における背もたれ部2の上側に配置されるヘッドレスト4の上端と略同等)に位置させるような寸法に、設定されている(
図9参照)。また、本体膨張部27は、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、シート1の背もたれ部2より小さく、かつ、乗員MPの上半身MUを安定して保護可能に、上半身MUと略同等として、構成されている(
図8参照)。
【0020】
後側突出部としての頭部保護部40は、エアバッグ25の膨張完了時に、本体膨張部27の上端27a付近において、本体膨張部27から後方に突出するように配置されるもので、本体膨張部27の上縁側から連なるように形成されるとともに、本体膨張部27に対して折り返されるようにして、本体膨張部27の後側に配置されている。頭部保護部40は、エアバッグ25の膨張完了時に、乗員MPの頭部MHの前方となる位置に配置されて、頭部MHを拘束可能に構成されている。この頭部保護部40は、上端40a側の折り返し部位43で、本体膨張部27に連通されている。頭部保護部40は、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、本体膨張部27における上端側の領域の左右方向側の幅寸法と略同等として、膨張完了形状を、下端40b側にかけて僅かに左右に幅広とされる略台形状とされている(
図6参照)。そして、頭部保護部40は、上端40a側を、左右の全域にわたって、本体膨張部27の上端27a側と連通されている。また、頭部保護部40は、折り返し部位43から延びる周壁を、本体膨張部27側の前壁部41と、後側に配置されて前壁部41と外形形状を略同一とされる後壁部42と、の外周縁相互を結合させて、形成されている。
【0021】
この頭部保護部40は、前壁部41を本体膨張部27の乗員側壁部35に結合させるように形成されるシーム部45によって、膨張完了時の前面側を、本体膨張部27における後面側に連結されるとともに、膨張完了時の左縁40c側と右縁40d側とを、テザー47L,47Rによって、本体膨張部27側に連結されている。すなわち、頭部保護部40は、シーム部45とテザー47L,47Rとを折返状態維持手段とし、シーム部45とテザー47L,47Rとによって、本体膨張部27に対する折り返し状態を維持されている。シーム部45は、
図5に示すように、前壁部41と乗員側壁部35とを直接結合(縫着)させて構成されるもので、左右方向側を幅広とした略長円状として、頭部保護部40の上下の中央より下方となる位置に、形成されている(
図6参照)。テザー47L,47Rは、バッグ本体26と別体とされて可撓性を有したシート体からなる帯状とされるもので、エアバッグ25の膨張完了時に、前後方向に略沿って配置されるようにして、頭部保護部40の左縁40c側と右縁40d側とにおける下端付近を、本体膨張部27における左縁27d側と右縁27e側とに、連結させている(
図5,6参照)。なお、実施形態では、シーム部45とテザー47L,47Rとは、
図5,6に示すように、上下方向側での位置を、略一致させて、配設されている。
【0022】
実施形態のバッグ本体26では、頭部保護部40における後壁部42の後面42aが、乗員MPの頭部MHを拘束可能な頭部拘束面51を構成している。また、本体膨張部27の乗員側壁部35において、頭部保護部40の下側の領域の後面35aが、膨張完了時に乗員MPの胸部MBを拘束可能な胸部拘束面50を構成している。バッグ本体26の膨張完了時における乗員受止前の状態では、頭部保護部40の後壁部42(頭部拘束面51)と、本体膨張部27における乗員側壁部35(胸部拘束面50)と、は、上下方向に略沿うように配置されることとなる(
図9参照)。胸部拘束面50は、実施形態の場合、乗員MPの腹部MAから胸部MBにかけて拘束することとなる。また、実施形態のバッグ本体26では、本体膨張部27の下壁部30の下面30aが、膨張完了時のバッグ本体26により乗員MPの上半身MUを受け止めた際に乗員MPの大腿部MTと当接して大腿部MTに支持される被支持面53を、構成している。詳細には、被支持面53は、下壁部30において、導管部55よりも前側の領域から、構成されている。下壁部30は、バッグ本体26の膨張完了時における乗員受止前の状態では、前下がりに僅かに傾斜して配置されることとなる(
図9参照)。バッグ本体26は、膨張完了時における後下端側の部位(本体膨張部27における後下端27c側の部位であって、下壁部30の後端側の部位)で、連通孔(図符号省略)を介して、導管部55と連通されている(
図4,5参照)。
【0023】
導管部55は、バッグ本体26から左方に延びるように構成されるもので、先端55a側を開口させた略筒形状として、インフレーター17のパイプ部19と接続されている。導管部55は、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成である(
図4,8,9参照)。この導管部55は、先端55a側を、上述したごとく、クランプ20を用いて、インフレーター17のパイプ部19に接続される構成である。バッグ本体26をラップベルト10に取り付ける取付部57は、
図4,5に示すように、導管部55の下面側に縫着されている。取付部57は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。そして、この取付部57にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ25は、ラップベルト10に連結されて、ラップベルト10に保持される構成である。
【0024】
実施形態のエアバッグ25は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、実施形態の場合、
図7に示すように、バッグ本体26を構成するバッグ本体用パネル60と、導管部55を構成する導管部用パネル75,76と、取付部57を構成する取付部用パネル78と、から、構成されている。これらのバッグ本体用パネル60,導管部用パネル75,76,取付部用パネル78は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0025】
バッグ本体用パネル60は、乗員側パネル61と前側パネル70とを備えている。乗員側パネル61は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて、本体膨張部27における主に乗員側壁部35から下壁部30にかけての部位を構成する本体構成部62と、頭部保護部40(後側突出部)における前壁部41を構成する突出部構成部66と、を、備えている。本体構成部62は、具体的には、主に乗員側壁部35を構成する上側部位63と、主に下壁部30を構成する下側部位64と、を備えており、上側部位63と下側部位64とを本体膨張部27の後下端27c側を構成する部位で連結させたような外形形状とされている。上側部位63は、乗員側壁部35と、左壁部31,右壁部32における後側の領域と、を構成している。下側部位64は、下壁部30と、左壁部31,右壁部32における下側の領域と、を構成している。突出部構成部66は、上側部位63の上縁側から上方に延びるように形成されるもので、外形形状を、上側部位63から離隔した縁部側を幅広とした略台形状とされている。前側パネル70は、本体膨張部27において主に前壁部29の領域を構成する本体構成部71と、頭部保護部40(後側突出部)における後壁部42を構成する突出部構成部73と、を備えている。前側パネル70における本体構成部71は、具体的には、前壁部29と、左壁部31,右壁部32における前側の領域と、を構成するもので、平らに展開した状態の外形形状を、乗員側パネル61の本体構成部62において上側部位63と下側部位64とを連結させている連結部位62aの左右に配置される下左縁63a,後左縁64a相互、下右縁63b,後右縁64b相互を、それぞれ結合させた残りの縁部(突出部構成部66側,前縁64c)相互を離隔させるように開いた状態の下側部位64及び上側部位63と、略一致させるように、構成されている。突出部構成部73は、本体構成部71の上縁側から上方に延びるように形成されるもので、外形形状を、乗員側パネル61における突出部構成部66と略同一の略台形状とされている。乗員側パネル61と前側パネル70とは、それぞれ、左右対称形とされている。そして、バッグ本体26は、前側パネル70における本体構成部71の外周縁71aと、上述したごとく下左縁63a,後左縁64a相互、下右縁63b,後右縁64b相互をそれぞれ結合させた状態の乗員側パネル61の本体構成部62における左縁63c,右縁63d,前縁64cと、を結合させ、乗員側パネル61の突出部構成部66と前側パネル70の突出部構成部73との外周縁66a,73a相互を結合させることにより、本体膨張部27から頭部保護部40(後側突出部)を連ならせるような袋状とされることとなる。
【0026】
2枚の導管部用パネル75,76は、外形形状を同一とされるもので、導管部55における上側の領域と下側の領域とを、それぞれ構成している。取付部用パネル78は、外形形状を略長方形状として、二つ折りされて短手方向側の縁部相互を結合させることにより、取付部57を形成することとなる。
【0027】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載されたシート1にシートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部55を経てバッグ本体26内に流入することとなり、バッグ本体26が、カバー22を破断させるようにして、保持体としてのラップベルト10から前上方に突出しつつ、
図3の二点鎖線及び
図8,9に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0028】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、膨張完了時のエアバッグ25において、本体膨張部27から後方に突出するように配置される後側突出部としての頭部保護部40が、本体膨張部27に対して折り返されるようにして、本体膨張部27の後側に配置される構成であり、また、この頭部保護部40は、折り返し部位43で、本体膨張部27に連通される構成である。そのため、頭部保護部40によって乗員MPの頭部MHを受け止める際に、頭部保護部40内に流入している膨張用ガスが、本体膨張部27側への流出をある程度抑制されるような態様となる。また、この頭部保護部40は、乗員MPの頭部MHを受け止めた際に、折り返し部位43に沿う方向側(左右方向側)での幅寸法を広げるような変形も抑制されることとなる。そのため、実施形態の乗員保護装置Sでは、高い内圧を維持し、かつ、大きな変形を抑制された状態の頭部保護部40によって、乗員MPの頭部MHを的確に拘束することができる。
【0029】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、膨張完了時のエアバッグ25によって、乗員MPを的確に受け止めることができる。
【0030】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、頭部保護部40が、折り返し部位43から延びる周壁を、本体膨張部27側の前壁部41と、後側に配置される後壁部42と、の外周縁相互を結合させて、形成されていることから、折り返し部位43が略直線状(実施形態の場合、左右方向に略沿った略直線状)となり、頭部保護部40による乗員受止時に、頭部保護部40内に流入している膨張用ガスの本体膨張部27側への流出を、一層抑制することができる。
【0031】
実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25が、後側突出部として、本体膨張部27の上端27a側において、乗員MPの頭部MHの前方となる位置に配置されて頭部MHを拘束可能な頭部保護部40を、備える構成とされている。そして、実施形態のエアバッグ25では、頭部保護部40における後壁部42の後面42aを、頭部MHを拘束可能な頭部拘束面51とし、本体膨張部27の乗員側壁部35において、頭部保護部40の下側の領域の後面を、乗員MPの胸部MB(具体的には胸部MBから腹部MAにかけて)を拘束可能な胸部拘束面50としている。すなわち、実施形態のエアバッグ25では、膨張完了状態において、頭部MHを受け止める頭部拘束面51が、胸部MBを受け止める胸部拘束面50よりも後側(乗員MP側)に配置される構成である。そのため、膨張を完了させたエアバッグ25によって乗員MPを受け止める際に、
図9,10に示すように、まず、頭部拘束面51によって乗員MPの頭部MHを受け止めることができ、膨張したエアバッグ25を、直ちに、胸部MBと接触させることを抑制することができる。その結果、膨張したエアバッグ25により胸部MBを押圧することを抑制できて、かつ、頭部MHを、近接して配置される頭部拘束面51によって迅速に拘束することができる。
【0032】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25における本体膨張部27が、膨張完了時の下面側に、下壁部30の下面30aから構成される被支持面53を、有する構成とされており、この被支持面53は、膨張完了時のバッグ本体26により乗員MPの上半身MUを受け止めた際に、乗員MPの大腿部MTと当接して大腿部MTに支持される部位である。そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、本体膨張部27が、単体で膨張させた状態において、乗員側壁部35(胸部拘束面50)と下壁部30(被支持面53)との交差角度αを、90°~150°の範囲内(実施形態の場合、120°程度)に設定されている。そのため、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、頭部拘束面51を、乗員MPの頭部MHに近接させるように、エアバッグ25を迅速に膨張させることができて、乗員MPの頭部MHを、頭部拘束面51によって一層迅速に拘束することができる。また、実施形態のエアバッグ25では、胸部拘束面50も、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、乗員MPに近接させることができることから、頭部拘束面51によって頭部MHを拘束された状態の乗員MPの胸部MBを、胸部拘束面50によって、必要以上に押圧することを抑制しつつ、迅速に保護することができる。さらに、実施形態のエアバッグ25では、胸部拘束面と被支持面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、乗員側壁部35と被支持面53(下壁部30)との実質的な距離を大きくすることができることから、エアバッグ25が、被支持面53を大腿部MTに支持された状態で乗員側壁部35によって乗員MPの上半身MUを受け止める際において、乗員MPの上半身MUが、乗員側壁部35を被支持面53(下壁部30)側に向かって押圧しつつ本体膨張部27を圧縮させる際に、大腿部MTから受ける反力を増大させることができて、乗員MPの拘束性能を増大させることができる。
【0033】
なお、実施形態のエアバッグ25では、後側突出部としての頭部保護部40は、本体膨張部27の上縁側から連なるように形成されているが、頭部保護部を本体膨張部の上端側において左右の全域にわたって配設させる構成とする場合、頭部保護部は、本体膨張部の左縁側あるいは右縁側から連ならせるようにして、形成してもよい。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態であるエアバッグ85について、説明をする。エアバッグ85は、
図11,12に示すように、バッグ本体86と、インフレーターと接続されてバッグ本体86内に膨張用ガスを流入させる導管部55Aと、バッグ本体81をラップベルト10に連結させるための取付部57Aと、を備えている。エアバッグ85において、バッグ本体86以外(すなわち、導管部55Aと取付部57A)は、前述のエアバッグ25における導管部55及び取付部57と同一であることから、同一の符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0035】
バッグ本体86は、実施形態の場合、本体膨張部27Aと、本体膨張部27Aから後方に突出するように配置される後側突出部としての肩拘束部88L,88Rと、を備えている。本体膨張部27Aは、前述の本体膨張部27よりも上下方向側の幅寸法を若干小さく設定されるとともに、上縁側における左右両端付近から、肩拘束部88L,88Rを連ならせるように構成されている以外は、前述のエアバッグ25における本体膨張部27と略同一の構成であることから、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0036】
後側突出部としての肩拘束部88L,88Rは、外形形状を同一として、エアバッグ85の膨張完了時に、本体膨張部27Aの上端27a付近において、本体膨張部27Aから後方に突出するように配置されるもので、それぞれ、本体膨張部27Aの上縁側から連なるように形成されるとともに、本体膨張部27Aに対して折り返されるようにして、本体膨張部27Aの後側に配置されている。この肩拘束部88L,88Rは、上端88a側の折り返し部位91L,91Rで、それぞれ、本体膨張部27Aに連通されている。また、肩拘束部88L,88Rは、下端88b側を、結合部位93の部位で、本体膨張部27Aにおける乗員側壁部35Aに、結合(縫着)させることにより、本体膨張部27Aに対する折り返し状態(本体膨張部27Aからの後方への突出状態)を維持されている(
図12参照)。すなわち、肩拘束部88L,88Rは、結合部位93を折返状態維持手段とし、結合部位93によって、本体膨張部27Aに対する折り返し状態を維持されている。各肩拘束部88L,88Rは、エアバッグ85の膨張完了時に、乗員MPの左右の肩部MSの前方となる位置に配置されて左右の肩部MSを拘束可能とされるもので、膨張完了時の上下方向側の幅寸法を、本体膨張部27Aにおける後端側の領域の上下方向側の幅寸法の1/2程度として、膨張完了形状を、上下に幅広の略長方形状とされている(
図14,15参照)。また、各肩拘束部88L,88Rは、上端88a側を、左右の全域にわたって、本体膨張部27Aの上端27a側と連通されている。実施形態の場合、各肩拘束部88L,88Rは、それぞれ、折り返し部位91L,91Rから延びる周壁を、本体膨張部27A側の前壁部89L,89Rと、後側に配置されて前壁部89L,89Rと外形形状を略同一とされる後壁部90L,90Rと、の外周縁相互を結合させて、形成されている。
【0037】
このバッグ本体86では、各肩拘束部88L,88Rにおける後壁部90L,90Rの後面90aが、乗員MPの左右の肩部MSを拘束する肩部拘束面92L,92Rを構成している。また、本体膨張部27Aの乗員側壁部35Aにおいて、肩拘束部88L,88R間の領域から、肩拘束部88L,88Rの下方にかけての領域が、胸部拘束面50Aを、構成している。さらに、このバッグ本体86においても、本体膨張部27Aの下壁部30Aの下面30aが、膨張完了時のバッグ本体86により乗員MPの上半身MUを受け止めた際に乗員MPの大腿部MTと当接して大腿部MTに支持される被支持面53Aを、構成している(
図11,12参照)。
【0038】
このエアバッグ85も、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、実施形態の場合、
図13に示すように、バッグ本体86を構成するバッグ本体用パネル95と、導管部55Aを構成する導管部用パネル75A,76Aと、取付部57Aを構成する取付部用パネル78Aと、から、構成されている。
【0039】
バッグ本体用パネル95は、乗員側パネル96と前側パネル100とを備えている。乗員側パネル96は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて、本体膨張部27Aにおける主に乗員側壁部35Aから下壁部30Aにかけての部位を構成する本体構成部62Aと、肩拘束部88L,88R(後側突出部)における前壁部89L,89Rを構成する突出部構成部97L,97Rと、を、備えている。本体構成部62Aは、前述のエアバッグ25を構成する本体構成部62と略同一形状とされており、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。突出部構成部97L,97Rは、上側部位63Aの上縁63e側から上方に延びるように形成されるもので、外形形状を、上下に幅広の略長方形状とされている。前側パネル100は、本体膨張部27Aにおいて主に前壁部29Aの領域を構成する本体構成部71Aと、肩拘束部88L,88R(後側突出部)における後壁部90L,90Rを構成する突出部構成部101L,101Rと、を備えている。本体構成部71Aは、前述のエアバッグ25を構成する本体構成部71と略同一形状とされている。突出部構成部101L,101Rは、本体構成部71Aの上縁71aa側から上方に延びるように形成されるもので、外形形状を、乗員側パネル96における突出部構成部97L,97Rと略同一の略長方形状とされている。乗員側パネル96と前側パネル100とは、それぞれ、左右対称形とされている。そして、バッグ本体86は、前側パネル100における本体構成部71Aの外周縁71aと、下左縁63a,後左縁64a相互、下右縁63b,後右縁64b相互をそれぞれ結合させた状態の乗員側パネル96の本体構成部62Aにおける左縁63c,右縁63d,上縁63e,前縁64cと、を結合させ、乗員側パネル96の突出部構成部97L,97Rと前側パネル100の突出部構成部101L,101Rとの外周縁97a,101a相互を結合させることにより、本体膨張部27Aから肩拘束部88L,88R(後側突出部)を連ならせるような袋状とされることとなる。
【0040】
このような構成のエアバッグ85を使用した乗員保護装置においても、膨張完了時のエアバッグ85において、本体膨張部27Aから後方に突出するように配置される後側突出部としての肩拘束部88L,88Rが、本体膨張部27Aに対して折り返されるようにして、本体膨張部27Aの後側に配置される構成であり、また、この肩拘束部88L,88Rは、折り返し部位91L,91Rで、本体膨張部27Aに連通される構成である。そのため、肩拘束部88L,88Rによって乗員MPの肩部MSを受け止める際に、肩拘束部88L,88R内に流入している膨張用ガスが、本体膨張部27A側への流出をある程度抑制されるような態様となる。また、この肩拘束部88L,88Rは、乗員MPの肩部MSを受け止めた際に、折り返し部位91L,91Rに沿う方向側(左右方向側)での幅寸法を広げるような変形も抑制されることとなる。そのため、エアバッグ85を使用した乗員保護装置においても、高い内圧を維持し、かつ、大きな変形を抑制された状態の肩拘束部88L,88Rによって、乗員MPの肩部MSを的確に拘束することができる。
【0041】
また、上記構成のエアバッグ85においても、肩拘束部88L,88Rが、折り返し部位91L,91Rから延びる周壁を、本体膨張部27A側の前壁部89L,89Rと、後側に配置される後壁部90L,90Rと、の外周縁相互を結合させて、形成されていることから、折り返し部位91L,91Rが略直線状(実施形態の場合、左右方向に略沿った略直線状)となり、肩拘束部88L,88Rによる乗員受止時に、肩拘束部88L,88R内に流入している膨張用ガスの本体膨張部27A側への流出を、一層抑制することができる。
【0042】
また、上記構成のエアバッグ85は、頭部保護部を備える構成ではないものの、本体膨張部27Aから後方に突出して、乗員MPの左右の肩部MSを保護する肩拘束部88L,88Rを備える構成である。そのため、膨張を完了させたエアバッグ25によって乗員MPを受け止める際に、まず、肩拘束部88L,88Rにおける後壁部90L,90Rの後面90aから構成される肩部拘束面92L,92Rが、乗員MPの左右の肩部MSを受け止めることとなり、膨張したエアバッグ85を、直ちに、胸部MBと接触させることを抑制することができ、膨張したエアバッグ85により胸部MBを押圧することを抑制できる。
【0043】
なお、エアバッグ85では、肩拘束部88L,88Rを、本体膨張部27Aの上縁側から連ならせるように、配設させているが、後側突出部として肩拘束部を配設させる場合、
図16に示すエアバッグ85Bのように、肩拘束部88BL,88BRを、本体膨張部27Bの左縁側及び右縁側から、それぞれ連ならせるように、形成して、本体膨張部27Bに対して折り返して配置させるような構成としてもよい。このような構成とする場合、折り返し部位91BL,91BRは、各肩拘束部88BL,88BRにおける左右方向の外縁側において、上下方向に略沿うように配置されることとなる。
【0044】
実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグを保持させる保持体として、シートベルト7のラップベルト10を利用しているが、エアバッグを保持させる保持体は、ラップベルトに限定されるものではなく、例えば、シートベルトとは別体の保持体を、シートに着座した乗員の腰部の前方に配置させ、この保持体に、エアバッグを保持させる構成としてもよい。また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7のラップベルト10にエアバッグを保持させる構成であるものの、インフレーター17が、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動よりも遅れて(5ms程度)作動することから、シートベルト7により乗員MPのシート1に対する着座状体を安定して維持させた状態で、エアバッグを膨張させることができ、エアバッグとシートベルトとにより、乗員MPを安定して保護することができる。
【0045】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7とインフレーター17とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグによって的確に保護することができる。勿論、本発明の乗員保護装置は、このような構成のシートに限定されるものではなく、リトラクタを車体側に設けたシートベルトにより乗員を拘束するタイプのシートに搭載することもできる。また、インフレーターも、車両のボディ側に取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…シート、7…シートベルト、10…ラップベルト(保持体)、17…インフレーター、25,85,85B…エアバッグ、27,27A,27B,27C…本体膨張部、40…頭部保護部(後側突出部)、88L,88R,88BL,88BR…肩拘束部(後側突出部)、43,91L,91R,91Bl,91BR…折り返し部位、MP…乗員、MH…頭部、MB…胸部、S…乗員保護装置。