(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107113
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】発電モジュール管理装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20230726BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230726BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230726BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H02J3/46
G06Q50/06
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008232
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】熊野 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064DA07
5G066HA15
5G066HB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力需要家の電力需給状況に合わせ、再エネ由来燃料を用いた発電電力を適正量、低コストにて供給する。
【解決手段】発電モジュール管理装置は、電力需要家が利用し、少なくとも1台の発電モジュールを含む発電源の構成を、電力需要家が要求する電力量に応じて管理する発電モジュール管理装置であって、発電モジュールは、燃料の燃焼により動力を生成するエンジンを有し、発電モジュール管理装置は、電力需要家が要求する電力量に関する電力需要情報及び調達可能な発電モジュールが記録された調達可能発電モジュールリストが記録された記憶部を有し、電力需要情報、及び電力需要家が利用可能な燃料の種類に基づいて、調達可能発電モジュールリストから、電力需要家が要求する電力量を出力可能な発電モジュールを選定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要家が利用し、少なくとも1台の発電モジュールを含む発電源の構成を、前記電力需要家が要求する電力量に応じて管理する発電モジュール管理装置であって、
前記電力需要家が要求する電力量に関する電力需要情報及び調達可能な発電モジュールが記録された調達可能発電モジュールリストが記録された記憶部を有し、
前記電力需要情報、及び前記電力需要家が利用可能な燃料の種類に基づいて、前記調達可能発電モジュールリストから、前記電力需要家が要求する前記電力量を出力可能な前記発電モジュールを選定する、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記電力需要情報は、所定の時期毎に変動する情報であり、
前記発電モジュール管理装置は、前記発電モジュールを、前記所定の時期毎に変動する前記電力需要情報に連動させて選定する、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記発電モジュールを選定する際に、該発電モジュールの導入により発生する、前記電力需要家に課されるコスト、及び前記発電モジュールの継続運用により削減される二酸化炭素排出量を算出する、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記記憶部には、前記発電モジュールの運用に関する運用情報がさらに記録され、
前記発電モジュール管理装置は、発生中の前記コストまたは削減された二酸化炭素排出量の少なくともいずれかが、前記算出された前記コストまたは前記二酸化炭素排出量と所定の値だけ解離した場合に、該解離が、前記運用情報の変更に基づくものか否か判断する、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記解離が前記運用情報の変更に基づくものであった場合には、該変更に応じて前記発電モジュールを再度選定し、
前記解離が前記運用情報の変更に基づくものでなかった場合には、該解離が前記発電モジュールの性能の変化に基づくものと判断し、該変化に基づいて前記調達可能発電モジュールリストを更新する、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記発電モジュールの性能の変化は、該発電モジュールの健全性、定格出力、及び発電効率のうちいずれかの変化である、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記健全性は、前記発電モジュールの発電出力、または前記発電モジュールが有するエンジンに供給される供給燃料の種類、前記エンジンのEGR率もしくは空気過剰率のいずれか一つ以上を基準にした際の燃焼タイミング及び燃焼安定性のいずれかを用いて演算される、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の発電モジュール管理装置であって、
前記発電源は複数の前記発電モジュールを有し、該複数の発電モジュールは発電した電力を直流または交流のいずれかで合流して供給可能であり、
前記複数の発電モジュールが有するエンジンの各々には、再生可能エネルギー由来燃料及び化石燃料のいずれも供給可能である、
ことを特徴とする発電モジュール管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを有する発電モジュールを管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年提唱されている、企業が自らの事業の使用電力の100%を再生可能エネルギー(以下「再エネ」)で賄うことを目指す国際的なイニシアティブであるRE(Renewable Energy)100達成に向け、変動する再生可能エネルギーの大規模導入には、水素などの再エネ由来の燃料(以下、RE燃料)を用いた調整可能な発電システムが必要である。大規模なガス火力発電は1つの選択肢となるが、設備投資回収期間が長期間になってしまう。
【0003】
また、既存の大規模火力発電設備を用いた発電出力変動への対応幅は、設備の定格運転時の出力を100%とした場合、30~100%の運転幅であり、変動する再生可能エネルギーへの対応力が低い。また、設備設置場所が固定されるため、電力線増強とセットでの検討が必要となり、追加アセットのコストがかかる。更に、大規模火力発電は利用する燃料範囲が限定されるので、既存燃料や地域で入手可能なRE燃料にフレキシブルに対応することが困難である。したがって、設備投資回収期間短縮のためには、既存アセットの小改良によって、変動するRE燃料に対応可能な発電システムが求められる。
【0004】
換言すると、既存の自動車用エンジンや産業用エンジンといった量産エンジンを再エネ由来燃料に対応させ、それらを複数組み合わせた低コスト・変動対応可能なエンジン発電機を用いて、地域のRE燃料を活用したフレキシブルな発電を実現するアセットサービスを提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用や産業用エンジンをRE燃料に対応した定置式発電システムとして利用する際には、エンジンの利用方法(運転点や運転時間)やRE燃料への対応方法が異なるため、故障時の対応やメンテナンス周期の短期化による運用コストの増加が課題となる。そのため、適切なエンジン種の組み合わせでの運転や故障時の交換方法の構築が重要となる。
【0007】
特許文献1には、車両用エンジンを定置式エンジン発電機用に転用し、それを複数台組み合わせた発電システムに関する発明が記載されている。具体的には、エンジン式発電装置が複数の車両用エンジン発電機、燃料供給部、運転制御部、各エンジンの運転状態データを計測する状態計測器を備え、管理システムが、エンジン式発電装置のユーザ及び設置場所に関する装置情報、運転状態データ及び車両用エンジンの仕様または型式を含むエンジン情報を格納するデータベース部と、データ通信回線を介し、エンジン式発電装置から運転状態データを受取り、データベース部に格納するデータ受信部、運転状態データに基づいて、エンジン式発電装置の中に故障状態等の車両用エンジンが含まれていることを検出し特定する要交換エンジン検出部を備える、という発明が記載されている。
【0008】
特許文献1ではエンジン式発電装置を導入後の故障診断について記載されているが、導入時の発電装置の種類等の検討に関しては記載されていない。また、RE燃料への対応など利用する燃料種に関する記載がない。そのため、RE燃料に対応した定置式発電の導入後の故障リスクや保守、メンテナンスのリードタイムの短縮化に対しての対応が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る発電モジュール管理装置は、電力需要家が利用し、少なくとも1台の発電モジュールを含む発電源の構成を、電力需要家が要求する電力量に応じて管理する発電モジュール管理装置であって、電力需要家が要求する電力量に関する電力需要情報及び調達可能な発電モジュールが記録された調達可能発電モジュールリストが記録された記憶部を有し、電力需要情報、及び電力需要家が利用可能な燃料の種類に基づいて、調達可能発電モジュールリストから、電力需要家が要求する電力量を出力可能な発電モジュールを選定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、電力需要家のエネルギー需要状況や、利用できるRE燃料の種類に対して、提供できるエンジン発電機の選定、エンジン発電機の健全性状態に応じた選定を行うことで、故障リスクの低減や保守、メンテナンスの容易性向上、リードタイム短縮が可能となる。また電力需要家のエネルギー消費や利用可能な燃料種に応じて最適な機器台数や機器種類を選定できるため、電力需要家に最適な電力を供給でき、エネルギー資源の有効利用やCO2削減を低コストにて実施できる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例に係る発電モジュール管理装置と電力需要家との関係を示すブロック図。
【
図2】ディーゼルエンジンをベースにRE対応装置が搭載されたシステム構成の一例を示す図。
【
図3】火花点火エンジンをベースにRE対応装置が搭載されたシステム構成の一例を示す図。
【
図4】RE対応装置の燃料供給装置の構成の一例を示す図。
【
図6】健全性評価部により行われる処理を説明するためのグラフの一例。
【
図7】健全性評価部により行われる処理を説明するためのグラフの他の例。
【
図8】発電モジュール管理装置を活用した顧客への発電モジュール導入計画時に行う処理を示すフローチャート。
【
図9】調達可能発電モジュールリストの一例を示す図表。
【
図10】発電モジュール導入初期の発電モジュール構成を示す図表。
【
図11】発電モジュール導入中期の発電モジュール構成を示す図表。
【
図12】発電モジュール導入後期の発電モジュール構成を示す図表。
【
図13】発電モジュール導入時に算出されるコストの一例を示すグラフ。
【
図14】発電モジュール導入時に算出されるCO
2排出量の一例を示すグラフ。
【
図15】発電モジュール導入後に発電モジュール管理装置が行う運用方法を示すフローチャート。
【
図16】運用中に発電モジュール構成を変更した状況を示す図表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に沿って実施例を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例に係る発電モジュール管理装置1と電力需要家との関係を説明するためのブロック図である。
【0014】
発電モジュール管理装置1は、記憶部100を有しており、例えば工場等の電力需要家が必要とする電力量等に関する電力需要情報103及び運用情報102に基づいて、必要な発電モジュールの構成を決め、調達可能発電モジュールリスト101を参照して選択する。
【0015】
発電モジュール管理装置1は、電力供給情報評価部16、エンジン性能情報算出部15、エンジン選定部14、発電モジュール選定部13、コスト・CO2排出量算出部12、及び通信部11を有する。発電モジュール管理装置1はさらに記憶部100を有している。記憶部100は、電力需要家の電力需要情報103、運用情報102、及び調達可能発電モジュールリスト101を記憶している。発電モジュール管理装置1は、電力需要情報103に基づいて電力需要家へ提供する発電モジュールの構成を調達可能発電モジュールリスト101から選択して決定する。発電モジュールの構成とは、発電モジュールの定格出力、利用可能な燃料種、発電モジュールの必要台数などである。導入時に決定したモジュール構成から運用情報102に基づいて、モジュール構成は変更することが可能である。本発電モジュールは小型モジュールであることから、容易に交換することができるため、電力需要家の電力需要実績に基づいて、最適な発電モジュール構成を提供することができる。それにより、電力需要家は低コストでCO2削減が可能となる。なお、本実施例におけるエネルギー需要の一例として電力需要と記載しているが、熱需要を含めたエネルギー需要についても含む。また、運用情報とは、顧客がどのような装置やエネルギー源を用いて運用しているのか、またエネルギーの利用用途などの情報である。
【0016】
なお、発電モジュール管理装置は、例えばCPU及びメモリを備えたPC等のハードウェアでもよいし、ソフトウェアとしてクラウド上に実装されている構成でもよい。
【0017】
以下に発電モジュール管理装置1が有する各機能部を説明する。電力供給情報評価部16は、電力需要家から受信した電力需要情報を取得し、該電力需要を満たすために必要な電力の供給能力に関する情報を生成する。必要な電力供給情報は、日々の天候や顧客の運用状況によって変化するため、電力需要情報には、短期的、長期的な変化幅、変化時間や最大供給電力、最小供給電力等に関する情報が含まれる。短期とは秒単位の変化であり、長期とは月単位の変化である。
【0018】
エンジン性能情報算出部15は、電力供給情報から、必要なエンジンの性能情報であるエンジン要求性能情報を算出し、発電モジュールを構成するために必要なエンジンの要求性能と台数を算出する。
【0019】
エンジン選定部14は、流通するエンジンの性能情報を収集し、エンジン要求性能情報に基づいてエンジンを選定する。エンジンを選定する基準は、例えばエンジンの型式や健全性(E-SOH(Engine―State Of Health))である。ここで、E-SOH(以下Es)とは、発電モジュールの健全性を表す指標であり、発電モジュールに組み込まれたエンジンの健全度や劣化状態に基づいて算出される。具体的には、燃焼重心のタイミングと燃焼の安定性指標のいずれか1つ以上を用いて健全性を評価することができる。エンジン調達時のEsは、発電モジュールとして組み込む際の回転数やトルクといった運転条件で評価して取得する。また、発電モジュールに搭載されるエンジンとしては排気量や燃焼タイプの異なる複数種類のエンジンを組み合わせて選定してもよい。
【0020】
発電モジュール選定部13は、エンジン選定部14が選定したエンジンを搭載する発電モジュールを、調達可能発電モジュールリスト101の中から選定する。リストに該当する発電モジュールが存在しない場合には、新たにそのような発電モジュールを製作してもよいし、エンジン選定部14により再度エンジンの選定を行ってもよい。
【0021】
コスト・CO2排出量算出部12は、選定した発電モジュールを電力需要家に提供した際に電力需要家に課されるコスト、及び発電モジュールの運用によるCO2排出量の推移予測を算出する。発電モジュールに組み込むエンジンは中古車両や中古の産業用のエンジン、流通している新品の自動車用や新品の産業用エンジンを活用することが可能であり、性能や価格等は既知である。コストを算出する際は、E-SOHをもとに、エンジンの現在価格を算出し、発電モジュールの価格を決める。複数の発電モジュールを組み合わせる際は、発電モジュールの合計価格を算出する。また運用時の燃料コスト、メンテナンスコストを算出する。これらにより、電力需要家へ導入する発電モジュールの導入期間中のOPEX(Operating Expense:事業を運営するためのランニングコスト)、CAPEX(Capital Expenditure:投資コストや設備投資等)を演算し、顧客へ導入費用(販売価格・リース価格)を提示することが可能である。
【0022】
発電モジュール管理装置1の通信部11は、電力需要家3の通信部33とネットワーク2を介して接続されており、電力需要情報103及び運用情報102等の情報の送受信を行う。
【0023】
電力需要家3が有する発電モジュール30は、エンジン31、発電機/変換機32、及び発電モジュール管理装置1との間で通信を行うための通信部33を有する。エンジン31は、中古または新品の車両用エンジン、中古または新品の産業用エンジンを用いる。エンジンはRE燃料が利用できるよう発電モジュール30にはRE対応装置300が組み込まれている。エンジン31は再エネ以外の燃料の活用も可能である。またこれらの燃料を複数同時に供給することが可能である。
【0024】
エンジン31としてはディーゼルエンジン、火花点火エンジン、HCCIエンジン(HCCI:Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)が選択可能であり、利用可能なRE燃料の種類に応じて選定する。また各エンジンはRE対応装置を通じて発電モジュールの健全性(Es)を評価でき、エンジンの耐久性、メンテナンスリードタイムなどを評価することが可能である。発電機の健全性を評価に含んでもよい。Esに関しては後述する。前記発電モジュール30は複数組み合わせることが可能であり、発電機で発電した電力を直流もしくは交流で合流し、電力需要家へ供給する。
【0025】
発電モジュール30に搭載されたRE対応装置300は、RE燃料を用い発電モジュールで発電するための装置である。RE対応装置300は、RE燃料タンク301、RE燃料供給装置302、RE燃料供給制御コントローラ303、記憶部304を有する。RE対応装置300はエンジン31と配管で接続されており、RE燃料がエンジン31へ供給される。またRE対応装置300とエンジン31の間でデータが双方向に送信される。またRE対応装置300は、通信部33と信号線で接続されており、データは双方向に送信できる。
【0026】
図2はディーゼルエンジンをベースにRE対応装置が搭載されたシステム4の構成である。RE燃料とは、例えば、水素、バイオガス、エタノール、メタノール、アンモニアなどである。本実施例においては、エンジン燃焼室42の吸気管44にRE燃料供給装置302とRE燃料タンク301が接続されている。そして、RE燃料タンク301及びRE燃料供給装置302には、RE燃料供給制御コントローラ303が接続されており、RE燃料供給制御コントローラ303からRE燃料タンク301及びRE燃料供給装置302へ制御信号が出力され、エンジンに供給されるRE燃料の供給量、供給タイミングが制御される。エンジンの燃焼状態やエンジンの運転条件(回転数、トルク)に基づいてRE燃料のエンジンへの供給量が制御される。また空気流量センサ50、酸素濃度センサ51によって空燃比を監視されながらRE燃料のエンジンへの供給量を制御してもよい。空気とRE燃料が吸気管44で混合され、エンジン燃焼室42へ供給される。供給された空気とRE燃料はピストン41の圧縮により高温、高圧化する。その後、エンジン燃焼室42には、燃料タンク47からインジェクタ46により、ディーゼル燃料が供給され、ディーゼル燃料の着火により燃焼が開始され、RE燃料が燃焼する。
【0027】
クランク軸48の回転センサ49の回転信号をRE燃料供給制御コントローラ303で取り込み、健全性Esを算出する。また、カムシャフトの回転センサ53の信号をRE燃料供給制御コントローラ303へ取り込み、エンジンの気筒判別を行うことで、発電モジュール内の各エンジン気筒のEsを分離して演算できる。またEsをもとに、RE燃料供給装置302へ出力する信号を制御し、エンジン燃焼室42へ供給するRE燃料の供給量を制御することで、高効率な燃焼を実施することができる。
【0028】
また健全性Esをもとにディーゼル燃料の噴射量、噴射タイミングをインジェクタ46によって制御してもよい。またEGR率、ターボ圧、エンジンの回転数、トルクを制御してもよい。ディーゼル燃料には、軽油、重油、バイオディーゼル燃料、合成燃料などを用いることができる。合成燃料とは、CO2と水素より合成した炭化水素系燃料であり、例えば、ポリオキシメチレンジメチルエーテル(Polyoxymethylene Dimethyl Ethers)がその一つである。
【0029】
本実施例においてRE対応装置に相当する構成はRE燃料供給制御コントローラ303、RE燃料タンク301、RE燃料供給装置302、及び記憶部304である、また、符号52、54はそれぞれ吸気バルブ及び排気バルブであり、符号56は車両に搭載された各種のECUであり、記憶部304はRE燃料供給制御コントローラ303が算出した値を保存する機能を持つ。
【0030】
図3は火花点火エンジンをベースにRE対応装置が搭載されたシステム4’の構成を示す図である。
図2と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0031】
図3は複数の燃料をそれぞれ別系統によってエンジン燃焼室42に供給する場合の構成である。エンジン燃焼室42の吸気管44にRE燃料供給装置302及びRE燃料タンク301が接続されており、スロットル57によって空気とRE燃料の混合ガスの流量が制御される。また火花点火用燃料はインジェクタ46により供給される。火花点火用燃料とは、ガソリン、LPG、天然ガス、エタノール混合ガソリン、エタノールなどである。RE燃料および火花点火燃料が1種類、もしくは混合燃料の場合、インジェクタ46もしくはRE燃料供給装置302のいずれか一つの構成でよい。供給された燃料と空気の混合気がエンジン燃焼室42に供給され、その後、ピストン圧縮後、点火装置58の点火により燃焼が開始される。
【0032】
図4は、RE燃料供給装置302の構成の一例である。
図4に示すように、RE燃料供給装置302は、複数の燃料の供給量を調整し、混合することが可能である。たとえば、燃料1、2はそれぞれインジェクタで噴射量を制御し、噴射した2つの燃料が混合され、エンジンの吸気管へ供給される。燃料1、2の代わりに、燃料を1種類、不活性媒体を1種類供給しても良い。不活性媒体とは、例えば、EGRガス、水、水蒸気などである。不活性媒体をRE燃料と共に混合してエンジンに供給することで燃焼タイミングや燃焼の安定性を制御することが可能であり、RE燃料の供給幅拡大につながる。また、RE燃料供給装置302は、1つのインジェクタのみを使い、1種類の燃料の供給量制御に用いてもよい。
【0033】
図5は、RE燃料供給制御コントローラ303の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、各種センサからの入力値をセンサ入力部3031から取得する。ここでいうセンサは、クランク軸の回転センサやカムシャフトの回転センサ、空気流量センサ50、酸素濃度センサ51、発電機/変換機32の電流センサ、エンジンの筒内圧センサ等を含む。センサ入力部3031で取得した入力値は健全性評価部3032へと送信され、後述する数式によって健全性E
sが算出される。算出されたE
sはさらに制御部3033へと送信され、該健全性E
sに基づいてRE燃料供給装置302、インジェクタ46、点火装置58、スロットル57及びEGRバルブ(
図2,3では省略)、発電機/変換機が制御される。発電機/変換機においては、発電の運転点(電力、電圧、電流)が制御される。健全性評価部3032は記憶部304とデータを通信する。
【0034】
RE燃料供給制御コントローラ303に搭載されたエンジンの健全性評価部3032が行う処理について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、燃焼タイミング(MFB:Mass Fraction Burnt)について説明するためのグラフであり、エンジンの回転タイミングに対する燃焼の割合を示している。健全性E
sは、この燃焼タイミング及び燃焼の安定性によって評価することが可能である。ここで、燃焼の割合とは、供給した燃料の熱量に対して、燃焼により発熱した割合であり、この割合が50%となるタイミングを燃焼重心タイミング(MFB50T)と定義する。たとえば、エンジンの燃焼室内に不純物が堆積した場合やエンジンオイルが混入しやすい場合は、燃焼が早いタイミングで行われる(
図6中、左側の異常燃焼)。一方、着火性が悪い、また、着火した後の引火や火炎伝播が遅いと燃焼が遅いタイミングで行われる(
図6中、右側の異常燃焼)。燃焼の安定性は図示平均有効圧の変動率(COV of IMEP)で表し、変動率が低いほど、燃焼安定性が高い。なお、COVは各サイクルのIMEP(1サイクル当たりの仕事量をエンジンが持つ行程容積で割った値)の標準偏差を平均のIMEPで割ったものである。なお、MFB50TおよびCOV of IMEPは、エンジンの10サイクル以上のデータをもとに算出する。
【0035】
図7は、燃料種(H
2混合割合)及び空気過剰率・EGR率と燃焼タイミング及び燃焼変動率との関係性を示すグラフである。
図7に示すように、エンジンに供給する燃料種や条件(エンジンの回転数、トルク、空気過剰率、EGR率など)によってCOV of IMEP及びMFB50Tが異なることから、運転の基準点を決め、定期的に基準条件でのCOV of IMEPおよびMFB50Tを演算し、健全性E
sを演算する。ここで、EGR率とは、排気ガスの再循環の度合を示す指標であり、(吸気CO
2濃度―大気CO
2濃度)/(排気CO
2濃度―大気CO
2濃度)×100で表される。
健全性E
sは燃焼重心のタイミング(MFB50T)の健全性E
s1と燃焼変動率(COV of IMEP)の健全性E
s2を用いて算出する。E
s1、E
s2は数式1を用いて算出する。
【0036】
【0037】
上記数式1に関して、MFB50Tの健全性Es1は各エンジンのMFB50T(Mi)とMFB50Tの基準値(Mt)の差の絶対値と、対象とする全エンジンのMFB50Tの標準偏差(σ1)から算出する。また、COV of IMEPの健全性Es2は各エンジンのCOV of IMEP(Ci)と対象とする全エンジンのCOV of IMEPの平均値(Ca)との差、および対象とする全エンジンのCOV of IMEPの標準偏差(σ2)から算出する。上記の指標により、MFB50Tの健全性Es1は基準タイミングに近い値ほど大きくなり、燃焼タイミングの正常度を相対的に表現することができる。またCOV of IMEPの健全性Es2は燃焼安定度を相対的に表現できる。Es1およびEs2は、それぞれ影響力係数a1、a2によって影響度を調整でき、運用面への影響等に応じて、上記影響度は設定される。
【0038】
COV of IMEP及びMFB50Tの測定にはエンジンに搭載した燃焼圧力センサを用いる。また、圧力センサが装着されていないエンジンでは、エンジンのクランク回転軸に接続された回転センサ、クランク回転軸に接続された発電機の発電電流などを用いて推定することができる。
【0039】
図8は、発電モジュール管理装置1を活用した顧客へのシステム導入計画時のフローを示す。なお、以下では、各ステップが発電モジュール管理装置1のいずれかの機能部によって実行される例を説明するが、各ステップは他の機能部によって実行してもよい。ステップS801にて、電力需要家の有する通信部33から、発電モジュール管理装置1の通信部11を介して発電モジュールを導入検討している電力需要家の情報を入手する。電力需要家の情報とは、需要家が所有、もしくは管理しているアセットの種類、出力等である。また電力需要の短期的(秒単位)及び長期的(月単位)の変化量、自家発電設備の発電変化量に関する情報も含む。
【0040】
上記アセットとは、太陽光発電システムや風力発電システム、モノジェネ、コジェネといった自家発電設備システムである。ステップS802にて、電力供給情報評価部16は、RE燃料を活用した発電モジュールの必要性を判断する。例えば、バッテリなどのエネルギー貯蔵設備を導入することで、顧客が目標とするCO2削減や導入コストが満たされる場合は、RE燃料を活用した発電モジュールの必要がないと判断する。具体的には秒から数日単位の電力変動への対応であれば、バッテリシステムで対応可能なケースが多い。発電モジュールの必要有と判断された場合、ステップS803にて、エンジン性能情報算出部15は、電力需要家3が需要する電力に関する必要出力規模の算出を行う。この算出においても、秒単位から月単位の出力規模を算出する。
【0041】
ステップS804にて、エンジン選定部14は利用可能なエンジンを選定する。この選定方法の一例としては、流通しているエンジンをRE燃料エンジンとそうでないエンジンとに分け、ステップS801で取得した、電力需要家が時期毎に利用可能な再エネに関する情報から、RE燃料に対応したエンジンによる出力とそうでないエンジンによる出力の比率を算出し、それぞれの出力を満たすエンジンの組み合わせとして選定する。この組み合わせは複数あってもよい。
【0042】
ステップS805にて、発電モジュール選定部13は、上記ステップS804にて選定したエンジンを搭載した発電モジュールの利用台数及び種類を、調達可能発電モジュールリスト101を参照して決定する。
【0043】
ここで、調達可能発電モジュールリストの一例を
図9の図表に示す。発電モジュールは一つずつ特性がリスト化されている。特性項目は、発電可能な燃料の種類(対応燃料種)であり、たとえば、上記ディーゼル燃料、上記火花点火燃料、RE燃料である。対応燃料種は複数種類の対応が望ましいが、単一種類でも問題ない。その他、定格出力および定格時の発電効率、出力変化幅(発電効率は所定以上)、発電モジュールの健全性(E
s)、エンジンの型式、製造年、経年変化情報などである。経年変化情報とは、例えば、運転時間毎のE-SOHの変化に関する情報である。運転時間毎の発電効率や出力の変化を含んでも良い。
【0044】
ステップS805ではこれらの発電モジュールのリストから複数台を選定し、組み合わせて提供することを検討する。本実施例においては発電モジュールとして様々な種類の燃料に対応可能であるものを選定している。そのため、顧客のRE燃料導入計画に合わせて、モジュールを更新することが可能である。また太陽光発電や風力発電は、秒単位から月単位で大きく変動する。そのため、秒単位などの短周期変動はモジュールの運転制御で対応し、日単位から月単位など長周期変動はモジュールの組み合わせや台数を変更することで対応する。
【0045】
上記した発電モジュール構成の更新について、
図10~12を用いて説明する。
図10~12は、導入初期から後期にかけてのモジュール利用計画例、また月毎の変動への対応例を示す。具体的には、
図10は導入初期、
図11は導入中期、
図12は導入後期の構成例である。例えば、導入初期は再エネの導入が少なく、利用できるRE燃料の量が少ないケースが多いため、天然ガスの利用を主体に運用を実施する。また、
図10中の5~8月は、他の月と比べて利用可能燃料に占める水素の割合が高くなっている。これは、電力の需給バランスで風車や太陽光発電などの再エネの供給が過剰になり、余剰電力を活用した水素供給の調達が活発になるためである。
【0046】
また農作物の廃棄物や木材などの植物から生成可能なバイオ燃料の生成量は季節変動が大きい。農作物や植物が春から夏場に収穫もしくは成長する場合はその後、秋時期にバイオ燃料として利用が可能となる。(
図10中の9~11月)。また、導入初期では、電力需給バランスでRE電力が不足する時期が発生するが、その場合は天然ガスのみで運転することが可能である(
図10中の1~2月、12月)。
【0047】
また顧客の電力需要は年間を通じて変化する。そのため、月毎にモジュールの台数を調整する。(
図10では15~30台の変動幅の例が示されている)。これにより発電モジュールの稼働率の向上が可能となる。また利用しない発電モジュールは別の電力需要家や同電力需要家の別の場所へ展開できるため、発電モジュールアセットの効率的な運用が可能となる。
【0048】
その後、導入中期から後期にかけて、RE燃料の調達量が拡大するため、利用可能な燃料の種類、量が変化する。
図11は導入中期(導入後5~10年)の発電モジュール利用台数および種類の例である。
図10の導入初期に対して、天然ガス主体からRE燃料である水素、バイオ燃料主体の運用となる。再エネが不足する時期(1~3月、12月)は天然ガスを利用する。
【0049】
図12は導入後期(導入後10年以降)の発電モジュール利用台数および種類の例である。この場合は、RE燃料のみの運用となる。本説明ではRE燃料は水素とバイオ燃料と記載したが、アンモニアや合成燃料であるeFuelを用いてもよい。このようにRE燃料の導入可能状況に合わせ発電モジュールを段階的に変更しながら運用することで、カーボンニュートラルへシームレスに移行することが可能になり、RE100の実現を無理なく達成できる。
【0050】
再び
図8のフローチャートに戻る。ステップS805で発電モジュールの利用台数、種類を決定した後、ステップS806にてコスト・CO
2排出量算出部12は、コストおよびCO
2排出量の算出を行う。
図13及び
図14にコストおよびCO
2算出の結果の例を示す。コストは
図13に示すように、CAPEX、OPEX、及び発電モジュール提供者の利益からなる。顧客側はこのコストが許容コスト内に収まるかどうかという観点から発電モジュールの提供を受けるか否か判断可能である。
【0051】
また、
図14は契約年数の経過に伴って予測されるCO
2排出量を示す。例えば、電力需要家が5年後にCO
2を50%削減、10年後に100%削減を目標にし、その際の許容コスト(電力需要家が支払うコスト)をクリアするかどうかをステップS807で検討する。クリアしない場合は、ステップS805で再度、発電モジュールの利用台数および種類を選定する。許容コストおよび目標CO
2排出量をクリアできた場合、その発電モジュールを電力需要家へ導入する。電力需要家毎にステップS801の情報が異なるため、電力需要家毎に
図8のフローを実施する。
【0052】
このように、
図8で示した発電モジュール導入計画の策定は、ステップS805において発電モジュール構成を決定した後、コスト及びCO
2排出量を算出し、それらを電力需要家に提示することで、電力需要家が該発電モジュールを導入するか否かを決定する、というフローをたどる。すなわち、換言すると、ステップS805においては、S804において選定した複数のエンジンの組み合わせから、電力需要家の許容コスト及び目標CO
2排出量を満たすエンジンの組み合わせを選定していることになる。
【0053】
以上のような機能を有する発電モジュール管理装置を活用することで下記のような効果が得られる。
レジリエンスに電力需要家への電力供給が可能となる。すなわち、電力需要家が再エネ電力の調達が難しい時期や、RE燃料の供給が難しい時期においても、状況に応じて化石燃料の利用を含めた発電を行うことができるため、再エネの変動状況に依存せず電力供給が可能になる。発電モジュールは複数台のモジュールを組み合わせて電力を供給するため、電力を供給しながら、容易にモジュール交換が可能である。また状況に応じた変更が即座に可能である。
【0054】
また、電力需要家にとってはコストを最小限に抑えながらCO2排出量の削減を実現することが可能になる。すなわち、再エネの変動状況は秒単位から月単位で変更する。そのため、電力需要家で所有する再エネ発電量が変化したり、調達可能なRE燃料の種類は変化する。それに応じて、コスト最小、CO2削減が最大となる発電モジュールを選定し、組み替えることができる。発電モジュールの構成部品であるエンジン、発電機および変換機は自動車用等で活用可能な量産部品であることから、低コスト部品である。そして、エンジンはRE対応装置を装着しているため、RE燃料、化石燃料、それらを複数活用した燃料に対応できる仕組みであることから、調達可能な安いRE燃料、化石燃料を使い、低コスト発電モジュールで発電することが可能である。
【0055】
図15は、電力需要家へ発電モジュールを導入した後の運用方法を示すフローチャートである。発電モジュールを導入した後、ステップS1501にて、通信部11を介して、電力需要家の発電量データ、燃料消費量データ、導入した発電モジュールの健全性(E
s)を取得する。ステップS1502にて、電力供給情報評価部16は、当該データの値と、計画時に予測された値との相違点分析を実施する。具体的には、
図13及び
図14にて示したコストまたはCO
2排出量に関して所定の値以上に変化する場合は、運用の修正が必要と判断する(ステップS1503)。
【0056】
運用の修正が必要とされた場合、ステップS1504にて修正箇所の明確化を行い、ステップS1505にて電力需要家の再エネ発電量、電力需要量、燃料種類のいずれかに修正が必要な場合は、調達可能発電モジュールリスト101を参照し、ステップS1506にて発電モジュールの台数、種類の変更を行う。つまり、
図8に示す処理を再び行う。上記した運用途中の発電モジュール構成の更新としては例えば
図16に示すようなケースが考えられる。
【0057】
例えば、RE燃料である水素の調達が計画よりも不足する場合、水素混合割合の最大値が60%から30%へ低下する(5月)。それに伴い、選定モジュールのタイプを水素の供給割合が低いタイプへ変更する。また、例えば、電力需要家が所有もしくは管理している再エネ発電量が計画よりも高くなることで、発電モジュールの最大出力、最低出力が計画よりも小さくなるケールが考えられる(7月)。その場合はモジュールの台数を変更することで対応可能となる。
【0058】
ステップS1507で修正箇所が電力需要家所有の再エネ発電量、電力需要量、燃料種類のいずれでもないと判断された場合は、導入した発電モジュールの性能が変化したことが原因であるため、ステップS1507にて発電モジュールのデータベースのアップデート箇所を明確にする。たとえば、E-SOHの低下が顕著になった場合は、メンテナンス時期や耐久性悪化による発電モジュール交換時期が変化するため、
図9のE-SOHの値を更新する。また定格出力や発電効率が変化した場合についても同様に
図9の値を更新する。そして、更新したモジュール番号と同機種の発電モジュールについての経年変化情報を更新する。なお、上記の処理については、ステップS1506以外の処理については例えば電力供給情報評価部16によって実行される。
【0059】
以上で説明した本発明の実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本発明に係る発電モジュール管理装置は、電力需要家が利用し、少なくとも1台の発電モジュールを含む発電源の構成を、電力需要家が要求する電力量に応じて管理する発電モジュール管理装置であって、電力需要家が要求する電力量に関する電力需要情報及び調達可能な発電モジュールが記録された調達可能発電モジュールリストが記録された記憶部を有し、電力需要情報、及び電力需要家が利用可能な燃料の種類に基づいて、調達可能発電モジュールリストから、電力需要家が要求する電力量を出力可能な発電モジュールを選定する。
【0060】
上記構成により、電力需要家のエネルギー需要状況や、利用できるRE燃料の種類に対して、提供できるエンジン発電機の選定、エンジン発電機(発電モジュール)の健全性状態に応じた選定を行うことで、故障リスクの低減や保守、メンテナンスの容易性向上、リードタイム短縮が可能となる。また電力需要家のエネルギー消費や利用可能な燃料の種類に応じて最適な機器台数や機器種類を選定できるため、電力需要家に最適な電力を供給でき、エネルギー資源の有効利用やCO2削減を低コストにて実施できる。
【0061】
(2)電力需要情報は、所定の時期毎に変動する情報であり、発電モジュール管理装置は、発電モジュールを、所定の時期毎に変動する電力需要情報に連動させて選定する。これにより、季節ごとに変動する燃料需給状況に対応した発電モジュール構成にすることが可能になり、発電モジュールを有効活用できる。
【0062】
(3)発電モジュールを選定する際に、該発電モジュールの導入により発生する、電力需要家に課されるコスト、及び発電モジュールの継続運用により削減される二酸化炭素排出量を算出する。これにより、需要家が所望する二酸化炭素排出量の削減を実現するために必要なコストを電力需要家に提示することが可能になり、電力需要家にとってそのコストが許容コスト内に収まるか否かによって発電モジュール導入の可否を決定することが可能になる。
【0063】
(4)記憶部には、発電モジュールの運用に関する運用情報がさらに記録され、発電モジュール管理装置は、発生中のコストまたは削減された二酸化炭素排出量の少なくともいずれかが、算出されたコストまたは二酸化炭素排出量と所定の値だけ解離した場合に、該解離が、運用情報の変更に基づくものか否か判断する。これにより、発電モジュールを導入した後も、発電モジュール構成を更新することが可能になり、運用による発電モジュールの劣化等に適切に対応することが可能になる。
【0064】
(5)解離が運用情報の変更に基づくものであった場合には、該変更に応じて発電モジュールを再度選定し、解離が運用情報の変更に基づくものでなかった場合には、該解離が発電モジュールの性能の変化に基づくものと判断し、該変化に基づいて発電モジュールリストを更新する。これにより、運用途中に発電モジュール構成を更新するのか、またはリスト更新のみで対応できるのか判断することが可能になる。
【0065】
(6)発電モジュールの性能の変化は、該発電モジュールの健全性、定格出力、及び発電効率のうちいずれかの変化である。これにより、発電モジュールに関する種々の情報をリスト上に蓄積しておくことで、発電モジュールを効率的に管理することが可能になる。
【0066】
(7)健全性は、発電モジュールの発電出力、または発電モジュールが有するエンジンに供給される供給燃料の種類、エンジンのEGR率もしくは空気過剰率のいずれか一つ以上を基準にした際の燃焼タイミング及び燃焼安定性のいずれかを用いて演算される。これにより、センサ等を用いて容易に取得可能なデータを用いてエンジンの状態を適切に判断することが可能になる。
【0067】
(8)発電源は複数の発電モジュールを有し、該複数の発電モジュールは発電した電力を直流または交流のいずれかで合流して供給可能であり、複数の発電モジュールが有するエンジンの各々には、再生可能エネルギー由来燃料及び化石燃料のいずれも供給可能である。これにより、種々の発電モジュール及びエンジンを使用可能となるため、発電モジュール構成に多様な選択肢を持たせることが可能になる。
【0068】
本発明は、技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されるものではなく、本発明の主要な特徴から逸脱することなく、様々な変形例が含まれる。そのため、前述の実施例は単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能であって、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0069】
1、発電モジュール管理装置 3、電力需要家 30、発電モジュール 100、記憶部 101、調達可能発電モジュールリスト 102、運用情報 103、電力需要情報