(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107140
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ネジ節鉄筋吊り具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/66 20060101AFI20230726BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230726BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B66C1/66 P
E04G21/12 105A
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008278
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】520374944
【氏名又は名称】佐山鉄筋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】佐山 哲也
【テーマコード(参考)】
2E174
3F004
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA03
2E174CA38
3F004EA04
(57)【要約】
【課題】ネジ節鉄筋を安定的に固定でき、かつ長期間の繰り返しの使用にも耐え得るネジ節鉄筋吊り具を提供する。
【解決手段】吊り具本体2、アイボルト3、留め具6、針金部材7で構成される。アイボルト3は、掛け具として、吊り具本体2の上端に固定されている。アイボルト3は、吊り具本体2の長手方向を軸中心に回動できる。また、±90°の範囲でU字形の掛け部を上下に回動できるが、かかる構造のアイボルトに限られず、幅広い掛け具を利用可能である。金属製の吊り具本体2の下部には開口部が設けられ、雌螺子部4が形成されている。また、吊り具本体2の上部には貫通孔5が形成されている。金属製の留め具6は、先端部6aを貫通孔5に挿し込んで、ネジ節鉄筋の回動を防止する。留め具6は、針金部材7を用いて吊り具本体2に連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六角ナット状の上端に掛け具と貫通孔が設けられ下端から内部に雌螺子部が設けられた吊り具本体と、前記貫通孔に挿入する留め具を備え、
前記貫通孔は、前記吊り具本体の上端から雌螺子部の軸方向と略平行に前記雌螺子部の螺子山の一部を切欠き、
前記留め具を上端から前記貫通孔に挿入することにより、前記雌螺子部に螺合されるネジ節鉄筋の回転を抑止することを特徴とするネジ節鉄筋吊り具。
【請求項2】
前記留め具を、前記貫通孔に嵌合または螺合することを特徴とする請求項1に記載のネジ節鉄筋吊り具。
【請求項3】
前記留め具は、変形性または形状記憶性を備える針金部の一端に連結され、前記針金部の他端が前記吊り具本体と連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載のネジ節鉄筋吊り具。
【請求項4】
前記貫通孔の径は、前記螺子山の高さと略同等であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のネジ節鉄筋吊り具。
【請求項5】
請求項1~4の何れかのネジ節鉄筋吊り具が、複数個、所定間隔で並んで水平棒に取り付けられることを特徴とするネジ節鉄筋吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ節鉄筋の配筋工事において、ネジ節鉄筋を縦に配筋する際に用いる吊り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋の配筋工事においては、長尺の鉄筋を縦に配筋する場合がある。寝かせられた状態の鉄筋を垂直に立てた状態とするためには、クレーン等を利用して鉄筋の一端を持ち上げる必要がある。鉄筋を持ち上げた際に、クレーン等から鉄筋が脱落すると大きな事故となりかねないため、鉄筋を持ち上げるための掛け具を備えた金具が求められる。
【0003】
そこで、鉄筋の一部に取り付けて使用するねじ鉄筋用掛け金具が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1のねじ鉄筋用掛け金具は、U字形に形成された本体の側方からフックボルトを螺通して、ネジ節鉄筋の脱落を防止するものである。しかしながら、特許文献1のねじ鉄筋用掛け金具は、ネジ節鉄筋の側方からフックボルトを螺通し、フックボルトの先端を鉄筋の平坦部に接触させて固定するものであるため、鉄筋に応力がかかり、長期間繰り返し使用するとフックボルトが破損しやすいといった問題がある。また、ネジ節鉄筋をフックボルトの先端、すなわち点で固定するため、安定的に固定できないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況に鑑みて、本発明は、ネジ節鉄筋を安定的に固定でき、かつ長期間の繰り返しの使用にも耐え得るネジ節鉄筋吊り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明のネジ節鉄筋吊り具は、六角ナット状の上端に掛け具と貫通孔が設けられ下端から内部に雌螺子部が設けられた吊り具本体と、貫通孔に挿入する留め具を備え、貫通孔は、吊り具本体の上端から雌螺子部の軸方向と略平行に雌螺子部の螺子山の一部を切欠き、留め具を上端から貫通孔に挿入することにより、雌螺子部に螺合されるネジ節鉄筋の回転を抑止することを特徴とする。
かかる構成によれば、吊り具本体からネジ節鉄筋の脱落を防止することができる。
貫通孔が設けられることにより、公知のネジ節鉄筋に設けられた平坦部により生じる間隙を、留め具を用いて埋めることができ、ネジ節鉄筋又は吊り具本体が不意に回動することを防止できる。また、貫通孔が、雌螺子部の軸方向と略平行に雌螺子部の螺子山の一部を切欠き、かかる貫通孔に留め具が取り付けられることにより、ネジ節鉄筋に設けられた平坦部を、点ではなく線で支持でき、より安定的に固定できる。
吊り下げるネジ節鉄筋の径としては、公知のサイズに幅広く適用でき、例えば、D29、D32、D35、D38、D41、D51などの径に合わせた設計とすればよい。
【0007】
本発明のネジ節鉄筋吊り具は、留め具を、貫通孔に嵌合または螺合することが好ましい。留め具を、貫通孔に嵌合する構成とすることにより、留め具の脱着が容易となる。また、留め具を、貫通孔に螺合する構成とすることにより、他の部材を用いることなく留め具を安定的に固定できる。
【0008】
本発明のネジ節鉄筋吊り具において、留め具は、変形性または形状記憶性を備える針金部の一端に連結され、針金部の他端が吊り具本体と連結されることが好ましい。針金部により連結されることにより、貫通孔に留め具を挿し込んだ際に、針金部を任意の形状に変形させておくことで、貫通孔から留め具が脱落することを容易に防止できる。
【0009】
本発明のネジ節鉄筋吊り具において、貫通孔の径は、螺子山の高さと略同等であることが好ましい。貫通孔の径と、螺子山の高さが略同等とされることにより、貫通孔に留め具を挿し込んだ際に、留め具がネジ節鉄筋の平坦部と干渉し難くなる。これにより、留め具の脱着が容易となり、また、留め具を固定した場合でも、ネジ節鉄筋への応力がかからず、ネジ節鉄筋や留め具の破損を防止できる。
【0010】
本発明のネジ節鉄筋吊り具は、上記の何れかのネジ節鉄筋吊り具が、複数個、所定間隔で並んで水平棒に取り付けられることでもよい。これにより、比較的簡易な構造で、多数のネジ節鉄筋を安定的に固定した上で、クレーン等により吊り下げることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネジ節鉄筋吊り具によれば、ネジ節鉄筋を安定的に固定でき、かつ長期間の繰り返しの使用にも耐え得るといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】実施例1のネジ節鉄筋吊り具の取付イメージ図(1)
【
図6】実施例1のネジ節鉄筋吊り具の取付イメージ図(2)
【
図7】実施例1のネジ節鉄筋吊り具の使用イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0014】
図1は、実施例1のネジ節鉄筋吊り具の外観斜視図を示している。
図1に示すように、ネジ節鉄筋吊り具1は、吊り具本体2、アイボルト3、留め具6、針金部材7で構成される。
アイボルト3は、掛け具として、吊り具本体2の上端に固定されている。アイボルト3は、吊り具本体2の長手方向を軸中心に回動できる。また、±90°の範囲でU字形の掛け部を上下に回動できるが、かかる構造のアイボルトに限られず、幅広い掛け具を利用可能である。金属製の吊り具本体2の下部には開口部が設けられ、雌螺子部4が形成されている。雌螺子部4の径としては、公知のサイズを幅広く適用でき、例えば、D29、D32、D35、D38、D41、D51などの径に合わせた設計とされる。また、吊り具本体2の上部には貫通孔5が形成されている。金属製の留め具6は、先端部6aを貫通孔5に挿し込んで、ネジ節鉄筋の回動を防止する。留め具6は、針金部材7を用いて吊り具本体2に連結されている。
【0015】
ここで、ネジ節鉄筋吊り具1のネジ節鉄筋への取付手順について説明する。
図2は、実施例1のネジ節鉄筋吊り具の取付フロー図を示している。また、
図3は、実施例1のネジ節鉄筋吊り具の取付イメージ図を示している。
図3に示すように、まず、吊り具本体2に設けられた雌螺子部4と、ネジ節鉄筋8に設けられた雄螺子部8aを用いて、吊り具本体2とネジ節鉄筋8を螺合する(ステップS01)。
【0016】
図4は、留め具とネジ節鉄筋の係合イメージ図を示している。また、
図5は、実施例1のネジ節鉄筋吊り具の外観平面図を示している。
図4に示すように、ネジ節鉄筋8は、周囲に雄螺子部8aが形成され、また雄螺子部8aの一部は平坦部8bとなっている。
図5に示すように、
図4に示す平坦部8bの裏側も平坦部8bとなっている。貫通孔5の径φと螺子山4aの高さHは略同等となっており、平坦部8bにより形成された間隙8cの厚みDよりも小さくなっている。かかる間隙8cに、留め具6を挿し込むことで、ネジ節鉄筋8の回動を防ぐ構造である。したがって、貫通孔5に留め具6を挿し込んだ場合でも、留め具6からネジ節鉄筋8への応力がかからず、ネジ節鉄筋8や留め具6の破損を防止できる。
ネジ節鉄筋吊り具1のネジ節鉄筋8への取付けに当たっては、吊り具本体2とネジ節鉄筋8を螺合した上で、平坦部8bにより形成された間隙8cと貫通孔5の位置が重なり合うように調整する(ステップS02)。調整は、吊り具本体2の上端と下端を見比べて行ってもよいし、実際に留め具6の先端部を挿し込みながら、調整してもよい。
【0017】
図6は、実施例1のネジ節鉄筋吊り具の取付イメージ図を示している。
図5に示す間隙8cと貫通孔5の位置が重なり合うように配置した状態で、
図6に示すように、留め具6を挿し込み、ネジ節鉄筋吊り具1とネジ節鉄筋8を固定する(ステップS03)。貫通孔5が、雌螺子部4の軸方向と略平行に設けられ、かかる貫通孔5に留め具6が取り付けられることにより、ネジ節鉄筋8を、点ではなく線で支持でき、より安定的に固定できる。
さらに、針金部材7を変形させ、吊り具本体2に巻き付けるように固定し、留め具6の固定状態を補強する(ステップS04)。針金部材7としては、変形性及び形状記憶性を備える金属線材を用いている。
【0018】
図7は、実施例1のネジ節鉄筋吊り具の使用イメージ図を示している。ネジ節鉄筋吊り具1が取り付けられたネジ節鉄筋8は、仮に
図7に示すように傾けられたとしても、針金部材7により留め具6の固定状態が補強されているため、留め具6が吊り具本体2から容易に脱落することのない構造である。