(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107204
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】車両用プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
B62D 21/14 20060101AFI20230726BHJP
B60B 35/10 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B62D21/14
B60B35/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199300
(22)【出願日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022007984
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】土屋 彰範
(72)【発明者】
【氏名】藤田 慧祐
(72)【発明者】
【氏名】原 啓太
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA09
3D203AA22
3D203AA31
3D203BA06
3D203CB38
3D203DA11
3D203DA15
3D203DB07
(57)【要約】
【課題】車輪の駆動源を備えながら車輪のトレッドの可変量を十分に確保することができる車両用プラットフォームを提供する。
【解決手段】車両用プラットフォーム100は、2つの第1車輪112が第1車輪支持部材110に取り付けられているとともに、2つの第2車輪122が第2車輪支持部材120に取り付けられている。第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、第1車輪アーム117および第2車輪アーム127を介して第1センター部材115および第2センター部材125に連結されているとともに、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121が設けられている。第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、車幅方向に直交する車両の全長方向および車両の上下方向のうちの少なくとも一方における互いに異なる位置に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を構成する車両用プラットフォームであって、
車幅方向の一方に配置された第1車輪と、
前記車幅方向の他方に配置された第2車輪と、
前記第1車輪を駆動させる第1車輪駆動用原動機と、
前記第2車輪を駆動させる第2車輪駆動用原動機と、
前記車幅方向において、前記第1車輪と前記第2車輪との間隔を変化させる可変機構と、を備え、
前記可変機構は、
前記第1車輪および前記第1車輪駆動用原動機を支持する第1車輪支持部材と、
前記第2車輪および前記第2車輪駆動用原動機を支持する第2車輪支持部材と、を備え、前記車幅方向において、前記第1車輪支持部材および前記第2車輪支持部材のうちの少なくとも一方を他方に対して接近または離隔させることで前記第1車輪と前記第2車輪との間隔を変化させるように構成され、
前記第1車輪駆動用原動機および前記第2車輪駆動用原動機は、前記第1車輪と前記第2車輪とが前記車幅方向に最も離れた状態において、前記車両の前後方向および前記車両の上下方向のうちの少なくとも一方において互いに異なる位置に設けられ、
前記可変機構は、前記車両の前方から見たときに、前記第1車輪駆動用原動機と前記第2車輪駆動用原動機の少なくとも一部とが前記車幅方向に関して同じ位置となるように前記第1車輪支持部材と前記第2車輪支持部材とを互いに接近させることを特徴とする車両用プラットフォーム。
【請求項2】
前記第1車輪と前記第2車輪とが前記車幅方向に最も離れた状態において、前記車両の前方から見たときに、前記第1車輪駆動用原動機と前記第2車輪駆動用原動機とが前記車幅方向に関して異なる位置に配置されている、請求項1に記載の車両用プラットフォーム。
【請求項3】
前記第1車輪と前記第2車輪とが前記車幅方向に最も離れた状態において、前記第1車輪駆動用原動機は、前記車幅方向において、前後方向に延びる前記車両の中心線と前記第1車輪との間に配置されるとともに、
前記第2車輪駆動用原動機は、前記車幅方向において、前後方向に延びる前記車両の前記中心線と前記第2車輪との間に配置されている、請求項2に記載の車両用プラットフォーム。
【請求項4】
前記第1車輪駆動用原動機および前記第2車輪駆動用原動機は、前記車両の上下方向において同じ高さに設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の車両用プラットフォーム。
【請求項5】
前記第1車輪駆動用原動機および前記第2車輪駆動用原動機は、前記車幅方向において互いに最も接近した位置において、平面視で前記中心線と重なることを特徴とする、請求項3に記載の車両用プラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の輸送または人の移動を行うことができる自走式車両を構成する車両用プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自走式車両を構成する車両用プラットフォームにおいては左右の車輪の間隔であるトレッドを拡大または縮小(以降、これらを「拡縮」ということがある)できるものがある。例えば、下記特許文献1には、車両の車幅方向に突出した主回動軸部上を車輪側の環状部材が摺動することでトレッドが拡縮可能に構成された車両のフレーム装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたフレーム装置においては、車輪を駆動する駆動源をどのように配置するかについては記載も示唆もされておらず、トレッドの拡縮を実現しつつ車輪の駆動源をどのように配置すればよいかが不明であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、車輪の駆動源を備えながら車輪のトレッドの可変量を十分に確保することができる車両用プラットフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両を構成する車両用プラットフォームであって、車幅方向の一方に配置された第1車輪と、前記車幅方向の他方に配置された第2車輪と、前記第1車輪を駆動させる第1車輪駆動用原動機と、前記第2車輪を駆動させる第2車輪駆動用原動機と、前記車幅方向において、前記第1車輪と前記第2車輪との間隔を変化させる可変機構と、を備え、前記可変機構は、前記第1車輪および前記第1車輪駆動用原動機を支持する第1車輪支持部材と、前記第2車輪および前記第2車輪駆動用原動機を支持する第2車輪支持部材とを備え、前記車幅方向において、前記第1車輪支持部材および前記第2車輪支持部材のうちの少なくとも一方を他方に対して接近または離隔させることで前記第1車輪と前記第2車輪との間隔を変化させるように構成され、前記第1車輪駆動用原動機および前記第2車輪駆動用原動機は、前記第1車輪と前記第2車輪とが前記車幅方向に最も離れた状態において、前記車両の前後方向および前記車両の上下方向のうちの少なくとも一方において互いに異なる位置に設けられ、前記可変機構は、前記車両の前方から見たときに、前記第1車輪駆動用原動機と前記第2車輪駆動用原動機の少なくとも一部とが前記車幅方向に関して同じ位置となるように前記第1車輪支持部材と前記第2車輪支持部材とを互いに接近させることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、第1車輪駆動用原動機および第2車輪駆動用原動機は、第1車輪と第2車輪とが車幅方向に最も離れた状態において、車両の前後方向および車両の上下方向のうちの少なくとも一方において互いに異なる位置に設けられており、第1車輪と前記第2車輪との間隔を変化させる可変機構は、車両の前方から見たときに、第1車輪駆動用原動機と第2車輪駆動用原動機の少なくとも一部とが車幅方向に関して同じ位置となるように第1車輪支持部材と第2車輪支持部材とを互いに接近させるため、第1車輪駆動用原動機と第2車輪駆動用原動機とが互いに干渉することなく、第1車輪と第2車輪との間隔の可変量を十分に確保することができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用プラットフォームにおいて、前記第1車輪と前記第2車輪とが前記車幅方向に最も離れた状態において、前記車両の前方から見たときに、前記第1車輪駆動用原動機と前記第2車輪駆動用原動機とが前記車幅方向に関して異なる位置に配置されていることを特徴とする。
請求項2の発明によれば、第1車輪と第2車輪との間隔を変えた場合でも、第1車輪と第1車輪駆動用原動機との車幅方向の位置関係および、第2車輪と第2車輪駆動用原動機との車幅方向の位置関係が大きく変化することを避けることができ、第1車輪駆動用原動機による第1車輪の駆動機構および第2車輪駆動用原動機による第2車輪の駆動機構を簡略化することができる。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両用プラットフォームにおいて、前記第1車輪と前記第2車輪とが前記車幅方向に最も離れた状態において、前記第1車輪駆動用原動機は、前記車幅方向において、前後方向に延びる前記車両の中心線と前記第1車輪との間に配置されるとともに、前記第2車輪駆動用原動機は、前記車幅方向において、前後方向に延びる前記車両の前記中心線と前記第2車輪との間に配置されていることを特徴とする。
請求項3の発明によれば、第1車輪と第2車輪との間隔を変えた場合でも、第1車輪と第1車輪駆動用原動機との車幅方向の位置関係および、第2車輪と第2車輪駆動用原動機との車幅方向の位置関係が大きく変化することを避けることができ、第1車輪駆動用原動機による第1車輪の駆動機構および第2車輪駆動用原動機による第2車輪の駆動機構を簡略化することができる。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の車両用プラットフォームにおいて、前記第1車輪駆動用原動機および前記第2車輪駆動用原動機は、前記車両の上下方向において同じ高さに設けられていることを特徴とする。
請求項4の発明によれば、第1車輪駆動用原動機および第2車輪駆動用原動機が車両の上下方向において同じ高さに設けられているため、車両用プラットフォームの走行安定性を向上させることができる。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の車両用プラットフォームにおいて、前記第1車輪駆動用原動機および前記第2車輪駆動用原動機は、前記車幅方向において互いに最も接近した位置において、平面視で前記中心線と重なることを特徴とする。
請求項5の発明によれば、第1車輪駆動用原動機および第2車輪駆動用原動機が、車幅方向において互いに最も接近した位置において、平面視で、前後方向に延びる車両の中心線と重なるため、車両用プラットフォームの重心を前後方向に延びる車両の中心線上またはその周辺に位置させ易くなり、車両用プラットフォームの走行安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両用プラットフォームの全体構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す車両用プラットフォームの外観構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1に示す車両用プラットフォームの外観構成の概略を模式的に示す底面図である。
【
図4】
図1に示す車両用プラットフォームの制御システムの概略を示すブロック図である。
【
図5】
図2に示す車両用プラットフォームのトレッドが縮小した状態の外観構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図3に示す車両用プラットフォームのトレッドが縮小した状態の外観構成の概略を模式的に示す底面図である。
【
図7】(A),(B)は、
図1に示した車両用プラットフォームにおける第1車輪支持部材、第1車輪駆動用原動機、第1車輪、第1駆動力伝達機構(減速機構,ベルト伝達機構)、第2車輪支持部材、第2車輪駆動用原動機、第2車輪および第2駆動力伝達機構(減速機構,ベルト伝達機構)のみを用いて車両用プラットフォームの正面図を模式的に示しており、(A)はトレッドが拡大した状態を模式的に示した正面図であり、(B)はトレッドが縮小した状態を模式的に示した正面図である。
【
図8】
図5に示した車両用プラットフォームについて上側第1回動用アクチュエータ、下側第1回動用アクチュエータ、内側第1センター部材、中間部材、内側第1車輪アーム、上側第2回動用アクチュエータ、下側第2回動用アクチュエータ、内側第2センター部材および内側第2車輪アームの図示をそれぞれ省略した平面図である。
【
図9】本発明の変形例に係る車両用プラットフォームの外観構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図10】(A),(B)は、本発明の他の変形例に係る車両用プラットフォームであって、
図1に示した車両用プラットフォームにおける第1車輪支持部材、第1車輪駆動用原動機、第1車輪、第1駆動力伝達機構(減速機構,ベルト伝達機構)、第2車輪支持部材、第2車輪駆動用原動機、第2車輪および第2駆動力伝達機構(減速機構,ベルト伝達機構)のみを用いて車両用プラットフォームの正面図を模式的に示しており、(A)はトレッドが拡大した状態を模式的に示した正面図であり、(B)はトレッドが縮小した状態を模式的に示した正面図である。
【
図11】本発明の他の変形例に係る車両用プラットフォームの外観構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図12】本実施形態における他の変形例に係る車両用プラットフォームの外観構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図13】本実施形態における他の変形例に係る車両用プラットフォームの外観構成の概略を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用プラットフォームの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る車両用プラットフォーム100の全体構成の概略を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示す車両用プラットフォーム100の外観構成の概略を模式的に示す平面図である。また、
図3は、
図1に示す車両用プラットフォーム100の外観構成の概略を模式的に示す底面図である。
図4は、
図1に示す車両用プラットフォーム100の制御システムの概略を示すブロック図である。また、
図5は、
図2に示す車両用プラットフォーム100のトレッドが縮小した状態の外観構成の概略を模式的に示す平面図である。また、
図6は、
図3に示す車両用プラットフォーム100のトレッドが縮小した状態の外観構成の概略を模式的に示す底面図である。なお、本実施形態において、車両用プラットフォームの進行方向(後退方向を含む)をX軸方向とし、このX軸方向に直交する車幅方向をY軸方向とし、これらのX軸方向およびY軸方向にそれぞれ直交する高さ方向をZ軸方向とする。
【0013】
この車両用プラットフォーム100は、農場または農園などの不整地上を作業者による遠隔操作によって走行して荷物の運搬などに用いる自走式作業車(図示せず)の主要部を構成している。
【0014】
(車両用プラットフォーム100の構成)
車両用プラットフォーム100は、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ備えている。第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、車両用プラットフォーム100における左右の側壁を構成するとともに、車両用プラットフォーム100を構成する主要部品がそれぞれ取り付けられる部品である。
【0015】
具体的には、第1車輪支持部材110は、主として、第1車輪駆動用原動機111、第1車輪112および第1駆動力伝達機構113がそれぞれ取り付けられている。また、第1車輪支持部材110には、第1車輪アーム117を介して第1センター部材115および第2センター部材125がそれぞれ連結されている。一方、第2車輪支持部材120は、主として、第2車輪駆動用原動機121、第2車輪122および第2駆動力伝達機構123がそれぞれ取り付けられている。また、第2車輪支持部材120には、第2車輪アーム127を介して第1センター部材115および第2センター部材125がそれぞれ連結されている。
【0016】
これらの第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、金属材料または樹脂材料を車両用プラットフォーム100の進行方向に沿って延びて起立する板状に形成して構成されている。この場合、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、図示X軸方向の長さが、図示X軸方向に一直線上に配置される後述する第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124がそれぞれ縮んだ際の図示X軸方向の長さよりも短い長さに形成されている。これらの第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、車幅方向(図示Y軸方向)に空間を介して互いに対向配置されている。
【0017】
なお、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120には、車両用プラットフォーム100が自走式作業車として機能するための荷台、機械、器具または装置などの搭載物が取り付けられるが、本発明に直接関らないため、その説明は省略する。
【0018】
第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、車両用プラットフォーム100における第1車輪112および第2車輪122をそれぞれ回転駆動させるための駆動源である。これらの第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、後述する制御装置130によって作動がそれぞれ制御される同期モータで構成されている。なお、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、直流モータで構成してもよいことは当然である。
【0019】
これらの第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120における互いに対向し合う内側面に取り付けられている。すなわち、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120にそれぞれ取り付けられた第1車輪112および第2車輪122の各反対側となる第2車輪122側および第1車輪112側にそれぞれ取り付けられている。
【0020】
この場合、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、互いに対向し合わないように車幅方向に直交する車両用プラットフォーム100の全長方向において互いに異なる位置にずれて設けられている。本実施形態においては、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、互いに車幅方向に接近した位置において車両用プラットフォーム100の全長方向の中央部で隣り合うように配置されている。換言すれば、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、車両用プラットフォーム100の平面視において、車両用プラットフォーム100の全長方向および幅方向の中心部に対して点対称に配置されている。
【0021】
また、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、
図7(A),(B)にそれぞれ示すように、高さ方向(図示Z軸方向)において互いに同じ高さ位置に設けられている。この場合、第1車輪駆動用原動機111は、上側第1回動用アクチュエータ114aと下側第1回動用アクチュエータ114bとの間に配置されている。また、第2車輪駆動用原動機121は、上側第2回動用アクチュエータ124aと下側第2回動用アクチュエータ124bとの間に配置されている。
【0022】
なお、
図7(A),(B)においては、第1車輪駆動用原動機111と第2車輪駆動用原動機121との位置関係を明確にするため、第1車輪支持部材110、第1車輪駆動用原動機111、第1車輪112、第1駆動力伝達機構113(減速機構113a,ベルト伝達機構113b)、第2車輪支持部材120、第2車輪駆動用原動機121、第2車輪122および第2駆動力伝達機構123(減速機構123a,ベルト伝達機構123b)のみを示している。
【0023】
また、
図2、
図3、
図5および
図6においては、車両用プラットフォーム100の車幅方向における中心位置と、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各回転軸心(以下、単に「軸心」という)とを互いに異なるピッチの一点鎖線で示している(
図8、
図9および
図11~
図13も同様)。また、
図7(A),(B)、
図10(A),(B)、においては、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各軸心を通る水平線および鉛直線をそれぞれ一点鎖線で示しており、これら水平線と鉛直線との交点が第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各軸心となる。また、
図7(A),(B)、
図10(A),(B)、においては、車両用プラットフォーム100の車幅方向における中心位置を第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各軸心を通る水平線および鉛直線とは異なるピッチの一点鎖線で示している。
【0024】
第1車輪112および第2車輪122は、車両用プラットフォーム100を前方または後方に移動させるために路面上を転動する左右一対の部品であり、金属製のホイールの外側にゴム製のタイヤが取り付けられて構成されている。これらの第1車輪112および第2車輪122は、それぞれ車両用プラットフォーム100の進行方向(図示X軸方向)に縦列に並んで配置された2つの車輪によって構成されている。
【0025】
すなわち、それぞれ2つずつの第1車輪112および第2車輪122は、車両用プラットフォーム100の進行方向によって2つの車輪のうちの一方が前輪となるとともに他方が後輪として機能する。これらの各2つずつの車輪からなる第1車輪112および第2車輪122は、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120の各外側面に第1駆動力伝達機構113および第2駆動力伝達機構123をそれぞれ介して取り付けられている。
【0026】
第1駆動力伝達機構113および第2駆動力伝達機構123は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121がそれぞれ発生させた駆動力を第1車輪112および第2車輪122にそれぞれ伝達するための機械装置である。具体的には、第1駆動力伝達機構113および第2駆動力伝達機構123は、減速機構113a,123aおよびベルト伝達機構113b,123bをそれぞれ備えて構成されている。
【0027】
減速機構113a,123aは、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121がそれぞれ発生させた駆動力を減速する歯車列(図示せず)で構成されている。また、ベルト伝達機構113b,123bは、減速機構113a,123aによって減速した駆動力を第1車輪112および第2車輪122を構成する各2つずつの車輪にそれぞれ伝達するためのVベルト(図示せず)およびプーリ(図示せず)をそれぞれ備えて構成されている。
【0028】
なお、第1駆動力伝達機構113および第2駆動力伝達機構123は、ベルト伝達機構113b,123bに代えてチェーンによる駆動力の伝達機構または歯車による駆動力の伝達機構で構成されていてもよいことは当然である。また、減速機構113a,123aおよびベルト伝達機構113b,123bは、公知の構成であるため、
図1~
図3においては減速機構113a,123aおよびベルト伝達機構113b,123bをそれぞれ収容する外側ケースのみ示している。
【0029】
これらの第1駆動力伝達機構113および第2駆動力伝達機構123は、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120における図示X軸方向の中央部に設けられている。この場合、第1駆動力伝達機構113および第2駆動力伝達機構123は、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ貫通した状態で設けられている。具体的には、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、減速機構113a,123aが第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120の内側面において第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各出力軸(図示せず)にそれぞれ動力伝達可能に繋がった状態で第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ貫通して設けられている。すなわち、第1駆動力伝達機構113は第1車輪駆動用原動機111と第1車輪112との間に設けられており、第2駆動力伝達機構123は第2車輪駆動用原動機121と第2車輪122との間に設けられている。
【0030】
また、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、ベルト伝達機構113b,123bが第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120の各外側面にそれぞれ設けられている。この場合、ベルト伝達機構113b,123bは、駆動力の入力側が前記減速機構113a,123aにそれぞれ動力伝達可能に繋がるとともに、駆動力の出力側が第1車輪112および第2車輪122を構成するそれぞれ2つずつの車輪にそれぞれ動力伝達可能に繋がって設けられている。
【0031】
第1車輪支持部材110と第2車輪支持部材120との間には、第1回動用アクチュエータ114、第2回動用アクチュエータ124、第1センター部材115、第2センター部材125、中間部材116、第1車輪アーム117および第2車輪アーム127がそれぞれ設けられている。
【0032】
第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、第1車輪112および第2車輪122を互いに離隔する方向および接近する方向に変位させるための駆動力を発生させるための駆動源である。これらの第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、電動機を駆動源としてシリンダ内を直動するピストンロッドで構成された電動直動シリンダによって構成されている。本実施形態においては、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、それぞれ4つずつの電動直動シリンダによって構成されている。
【0033】
この場合、第1回動用アクチュエータ114を構成する4つの電動直動シリンダのうちの2つの電動直動シリンダが車両用プラットフォーム100内において上側に配置される上側第1回動用アクチュエータ114aであり、残余の2つの電動直動シリンダが上側第1回動用アクチュエータ114aの下方に配置される下側第1回動用アクチュエータ114bである。また、第2回動用アクチュエータ124を構成する4つの電動直動シリンダのうちの2つの電動直動シリンダが車両用プラットフォーム100内において上側に配置される上側第2回動用アクチュエータ124aであり、残余の2つの電動直動シリンダが上側第2回動用アクチュエータ124aの下方に配置される下側第2回動用アクチュエータ124bである。これらの第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、制御装置130によってそれぞれ作動が制御される。
【0034】
第1センター部材115および第2センター部材125は、第1車輪112と第2車輪122との間に配置されて第1車輪支持部材110、第2車輪支持部材120、第1車輪アーム117および第2車輪アーム127をそれぞれ介して第1車輪112および第2車輪122に支持されている部品である。この場合、第1センター部材115は、上側第1回動用アクチュエータ114aおよび下側第1回動用アクチュエータ114bをそれぞれ支持する部品でもある。また、第2センター部材125は、上側第2回動用アクチュエータ124aおよび下側第2回動用アクチュエータ124bをそれぞれ支持する部品でもある。
【0035】
これらの第1センター部材115および第2センター部材125は、金属材料または樹脂材料を図示Z軸方向に延びるブロック状に形成して構成されている。この場合、第1センター部材115と第2センター部材125とは、図示X軸方向において対称(
図2および
図3において左右対称)に形成されているため、主として第1センター部材115について説明する。第1センター部材115は、1つの外側第1センター部材115aと2つの内側第1センター部材115bとで構成されている。
【0036】
外側第1センター部材115aは、2つの上側第1回動用アクチュエータ114aおよび2つの下側第1回動用アクチュエータ114bの各後端部をそれぞれ支持する部品であり、断面形状が平面視で略コ字状に形成された板状体で構成されている。この外側第1センター部材115aは、車両用プラットフォーム100の進行方向の前面側および後面側にそれぞれ配置されている。
【0037】
2つの内側第1センター部材115bは、一方の内側第1センター部材115bが2つの上側第1回動用アクチュエータ114aの各前端部を支持するとともに、他方の内側第1センター部材115bが2つの下側第1回動用アクチュエータ114bの各前端部を支持する部品であり、上側第1回動用アクチュエータ114aおよび下側第1回動用アクチュエータ114bがそれぞれ貫通するブロック状に形成されている。すなわち、2つの内側第1センター部材115bは、一方の内側第1センター部材115bが車両用プラットフォーム100内において上側に配置されるとともに、他方の内側第1センター部材115bが車両用プラットフォーム100内において下側に配置されている。
【0038】
また、第2センター部材125は、第1センター部材115と同様に、1つの外側第2センター部材125aと2つの内側第2センター部材125bとで構成されている。外側第2センター部材125aは、前記した外側第1センター部材115aと同様の構成によって2つの上側第2回動用アクチュエータ124aおよび2つの下側第2回動用アクチュエータ124bの各後端部を支持する部品であるため詳細な説明は省略する。また、2つの内側第2センター部材125bについても、前記した2つの内側第2センター部材125bと同様の構成によって上側第2回動用アクチュエータ124aおよび下側第2回動用アクチュエータ124bの各前端部を支持する部品であるため詳細な説明は省略する。
【0039】
これらにより、4つの第1回動用アクチュエータ114と4つの第2回動用アクチュエータ124とは、互いのピストンロッドの先端部が図示X軸方向上で互いに対向し合った状態で第1センター部材115および第2センター部材125によって保持されている。そして、第1センター部材115と第2センター部材125との間には、中間部材116が配置されている。
【0040】
中間部材116は、互いに対向配置された4つの第1回動用アクチュエータ114および4つの第2回動用アクチュエータ124の各ピストンロッドの先端部を受け止める部品であり、金属材料または樹脂材料をブロック状に形成して構成されている。つまり、4つの第1回動用アクチュエータ114と4つの第2回動用アクチュエータ124とは、中間部材116を介して互いに押し合うように配置されている。この中間部材116は、車両用プラットフォーム100の進行方向の長さの中央部分の位置に4つの第1回動用アクチュエータ114および4つの第2回動用アクチュエータ124によって支持されている。
【0041】
第1車輪アーム117および第2車輪アーム127は、第1センター部材115および第2センター部材125に対して第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ可動的に連結するための部品であり、金属材料または樹脂材料によって構成されている。これらの第1車輪アーム117と第2車輪アーム127とは、図示Y軸方向において対称(
図2および
図3において上下対称)に形成されているため、主として第1車輪アーム117について説明する。第1車輪アーム117は、2つの外側第1車輪アーム117aと3組の内側第1車輪アーム117bとで構成されている。
【0042】
2つの外側第1車輪アーム117aは、外側第1センター部材115aおよび外側第2センター部材125aに対して第1車輪支持部材110を可動的に連結するための部品であり、図示Z軸方向に延びる板状体で構成されている。これらの2つの外側第1車輪アーム117aは、車両用プラットフォーム100の進行方向の前面側および後面側にそれぞれ配置されている。この場合、2つの各外側第1車輪アーム117aは、一方の端部が鉛直方向に延びる丸棒体で構成された第1支持軸118aを介して外側第1センター部材115aおよび外側第2センター部材125aに対して回動自在に連結されるとともに、他方の端部が第1支持軸118aと同様の丸棒体で構成されたピン119aを介して第1車輪支持部材110に対して回動自在に連結されている。つまり、2つの各外側第1車輪アーム117aは、外側第1センター部材115a、外側第2センター部材125aおよび第1車輪支持部材110に対してそれぞれ蝶番構造を介して連結されている。
【0043】
3組の内側第1車輪アーム117bは、内側第1センター部材115bおよび内側第2センター部材125bに対して第1車輪支持部材110を可動的に連結するための部品であり、図示XY軸平面上に延びる棒状体で構成されている。この場合、各組の内側第1車輪アーム117bは、それぞれ2つずつの棒状体で構成されている。
【0044】
3組の内側第1車輪アーム117bのうちの1組の内側第1車輪アーム117bは、一方の端部が鉛直方向に延びる丸棒体で構成された第1支持軸118bを介して上側の内側第1センター部材115bに対して回動自在に連結されるとともに、他方の端部がピン119aと同様の丸棒体で構成されたピン119bを介して第1車輪支持部材110に対して回動自在に連結されている。また、3組の内側第1車輪アーム117bのうちの他の1組(2組目)の内側第1車輪アーム117bは、一方の端部が第1支持軸118bと同様の丸棒体で構成された第1支持軸118cを介して下側の内側第1センター部材115bに対して回動自在に連結されるとともに、他方の端部がピン119aと同様の丸棒体で構成されたピン119cを介して第1車輪支持部材110に対して回動自在に連結されている。
【0045】
また、3組の内側第1車輪アーム117bのうちの残余の1組(3組目)の内側第1車輪アーム117bは、一方の端部が第1支持軸118bと同様の丸棒体で構成された第1支持軸118dを介して上側の内側第2センター部材125bに対して回動自在に連結されるとともに、他方の端部がピン119aと同様の丸棒体で構成されたピン119dを介して第1車輪支持部材110に対して回動自在に連結されている。これらの3組の内側第1車輪アーム117bは、平面視で車両用プラットフォーム100の図示X軸方向における中央部側に傾斜した向きで設けられている。つまり、3組の内側第1車輪アーム117bは、内側第1センター部材115b、内側第2センター部材125bおよび第1車輪支持部材110に対してそれぞれ蝶番構造を介して連結されている。
【0046】
なお、内側第1車輪アーム117bは、下側第2回動用アクチュエータ124bを支持する下側の内側第2センター部材125bと第1車輪支持部材110との間には設けられていない。これは、第2車輪駆動用原動機121に対して物理的干渉を避けるためであり、この物理的干渉を避けることができれば内側第2センター部材125bと第1車輪支持部材110との間に内側第1車輪アーム117bを設けてもよいことは当然である。
【0047】
第2車輪アーム127は、前記した第1車輪アーム117と同様に、2つの外側第2車輪アーム127aと3組の内側第2車輪アーム127bとで構成されている。これらの外側第2車輪アーム127aおよび3組の内側第2車輪アーム127bは、前記した2つの外側第1車輪アーム117aおよび3組の内側第1車輪アーム117bと同様に構成されている。すなわち、2つの各外側第2車輪アーム127aは、一方の端部が第1支持軸118aと同様に構成された第2支持軸128aを介して外側第1センター部材115aおよび外側第2センター部材125aに対して回動自在に連結されるとともに、他方の端部がピン119aと同様に構成されたピン129aを介して第2車輪支持部材120に対して回動自在に連結されている。
【0048】
また、3組の内側第2車輪アーム127bは、一方の端部が第1支持軸118b,118c,118dと同様に構成された第2支持軸128b,128c,128dを介して上側または下側の内側第2センター部材125bに対して回動自在に連結されるとともに、他方の端部がピン119b,119c,119dと同様に構成されたピン129b,129c,129dを介して第2車輪支持部材120に対して回動自在に連結されている。
【0049】
これらにより、第1車輪支持部材110、第2車輪支持部材120、第1回動用アクチュエータ114、第2回動用アクチュエータ124、第1センター部材115、第2センター部材125、中間部材116、第1車輪アーム117、第2車輪アーム127、第1支持軸118a~118d、ピン119a~119d、第2支持軸128a~128dおよびピン129a~129dは、第1センター部材115、第1回動用アクチュエータ114、第2回動用アクチュエータ124、第2センター部材125および中間部材116に対して第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120を図示Y軸方向に接近または離隔させるパンタグラフ機構を構成する。
【0050】
制御装置130は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、車両用プラットフォーム100、さらには、自走式作業車全体の作動を総合的に制御する。具体的には、制御装置130は、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって操作子131からの指示に基づいて、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各作動を制御して車両用プラットフォーム100の走行、停止および旋回の制御を行う。
【0051】
制御装置130は、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって操作子131からの指示に基づいて、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124の各作動を制御して第1車輪112と第2車輪122とのトレッドの拡大または縮小の制御を行う。また、制御装置130は、車両用プラットフォーム100に搭載される搭載物が電動の機械、器具または装置である場合にはこれらの搭載物の作動制御も行う。
【0052】
操作子131は、自走式作業車を操作する作業者からの指示を制御装置130に入力するための入力装置であり、作業者が手操作するジョイスティック、トグルスイッチ、押下ボタンおよびダイヤルなどを備えて構成されている。この操作子131は、車両用プラットフォーム100を含む自走式作業車に直接または自走式作業車から物理的に離れて独立した遠隔操作箱として設けられる。これらの場合、制御装置130と操作子131とは有線または無線で接続される。なお、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111、第2車輪駆動用原動機121、第1回動用アクチュエータ114、第2回動用アクチュエータ124および制御装置130にそれぞれ供給される電力を蓄えるバッテリーなどを備えることが、本発明に直接関らないためそれらの説明は省略する。
【0053】
(車両用プラットフォーム100の作動)
次に、上記のように構成した車両用プラットフォーム100の作動について説明する。この車両用プラットフォーム100は、前記したように、農場または農園などにおいて農作物を運搬する自走式作業車を構成する。したがって、この車両用プラットフォーム100上に取り付けられる搭載物としては、本実施形態においては農作物を出し入れ自在に収容するカゴを想定している。また、車両用プラットフォーム100は、初期状態として第1車輪112と第2車輪122とのトレッドが最大幅に拡大した状態とする。
【0054】
まず、作業者は、操作子131を操作して制御装置130の電源をONにして自走式作業車を起動させる。次に、作業者は、操作子131を操作して制御装置130に対して車両用プラットフォーム100の走行を指示する。この指示に応答して、制御装置130は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121をそれぞれ駆動させることで車両用プラットフォーム100の走行を開始させることができる。この場合、制御装置130は、作業者による操作子131の操作に従って第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各回転駆動方向または駆動量を適宜調整することで直進または後退のほか、右折または左折を行うことができる。
【0055】
次に、作業者は、車両用プラットフォーム100が道幅が狭い場所に差し掛かった場合などには、第1車輪112と第2車輪122とのトレッドを縮小することができる。具体的には、作業者は、操作子131を操作して制御装置130に対して第1車輪112と第2車輪122とのトレッドの縮小を指示する。この指示に応答して、制御装置130は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124をそれぞれ駆動させる。具体的には、制御装置130は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124の各ピストンロッドをそれぞれ伸長させる。
【0056】
これにより、第1センター部材115と第2センター部材125とは、中間部材116を境として互いに離隔する方向に変位する。この場合、第1センター部材115および第2センター部材125には、第1車輪アーム117および第2車輪アーム127がそれぞれ回動自在な状態で連結されているとともに、これらの第1車輪アーム117および第2車輪アーム127が第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120にそれぞれ回動自在な状態で連結されている。このため、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124の各伸長に従って第1センター部材115側および第2センター部材125側にそれぞれ同時に変位する。
【0057】
この場合、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120の各内側面にそれぞれ設けられた第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は、
図Y軸方向において互いに対向し合わないように図示X軸方向において互いに異なる位置にずれて設けられているため、第1車輪支持部材110と第2車輪支持部材120とが互いに接近した場合であっても互いに接触し合うことはない。
【0058】
したがって、制御装置130は、車両用プラットフォーム100を全長方向(図示X軸方向)から見て第1車輪駆動用原動機111と第2車輪駆動用原動機121とにおける少なくとも一部同士が互いに重なる位置まで第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ変位させることができる。本実施形態においては、制御装置130は、
図8に示すように、第1車輪駆動用原動機111が第2車輪支持部材120の内側面に僅かな隙間S1を介して隣接する位置まで第1車輪支持部材110を変位させるとともに、第2車輪駆動用原動機121が第1車輪支持部材110の内側面に僅かな隙間S2を介して隣接する位置まで第2車輪支持部材120を変位させる。これにより、第1車輪112と第2車輪122とは、車幅方向の中心側にそれぞれ接近し合うことでトレッドが縮小する。
【0059】
この場合、第1車輪112を構成する2つの車輪および第2車輪122を構成する2つの車輪は、第1センター部材115および第2センター部材125が車両用プラットフォーム100の進行方向に平行な向きを保って変位するため、各車輪についても向きを保った状態で変位する。
【0060】
すなわち、第1車輪支持部材110、第1回動用アクチュエータ114、第2回動用アクチュエータ124、第1センター部材115、第2センター部材125、中間部材116および第1車輪アーム117は、第1車輪112を変位させることで第1車輪112と第2車輪122とのトレッドを変化させる本発明に係るトレッド可変機構に相当する。
【0061】
また、第2車輪支持部材120、第1回動用アクチュエータ114、第2回動用アクチュエータ124、第1センター部材115、第2センター部材125、中間部材116および第2車輪アーム127は、第2車輪122を変位させることで第1車輪112と第2車輪122とのトレッドを変化させる本発明に係るトレッド可変機構に相当する。
【0062】
また、本実施形態においては、作業者は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各軸心が車両用プラットフォーム100の車幅方向の中心位置を超える位置まで第1車輪112と第2車輪122とが互いに接近するように制御装置130に指示した(
図5、
図6および
図8参照)。しかし、作業者は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各軸心が車両用プラットフォーム100の車幅方向の中心位置に一致する位置または同中心位置に達しない位置まで第1車輪112と第2車輪122とが互いに接近するように制御装置130に指示することもできる。
【0063】
なお、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121の各軸心が車両用プラットフォーム100の車幅方向の中心位置を超える位置または同中心位置に達しない位置にそれぞれ位置決めされる場合においては、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121は平面視において車両用プラットフォーム100の車幅方向の中心位置に重なる位置のほか、同中心位置に重ならない位置に位置決めすることもできる。
【0064】
また、
図8においては、第1車輪駆動用原動機111と第2車輪駆動用原動機121との位置関係を明確にするために、上側第1回動用アクチュエータ114a、下側第1回動用アクチュエータ114b、内側第1センター部材115b、中間部材116、内側第1車輪アーム117b、第1支持軸118b、118d、ピン119b、119d、上側第2回動用アクチュエータ124a、下側第2回動用アクチュエータ124b、内側第2センター部材125b、内側第2車輪アーム127b、第2支持軸128b、128dおよびピン129b、129dの図示をそれぞれ省略している(
図9も同様)。
【0065】
次に、作業者は、道幅が拡大した場合などには操作子131を操作して制御装置130に対して第1車輪112と第2車輪122とのトレッドの拡大を指示することができる。この場合、制御装置130は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124をそれぞれ駆動させてピストンロッドをそれぞれ短縮させる。
【0066】
これにより、第1センター部材115と第2センター部材125とは、中間部材116を境として互いに接近する方向に変位する。このため、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124の各短縮に従って第1センター部材115および第2センター部材125から離れる方向にそれぞれ同時に変位する。
【0067】
この結果、第1車輪112および第2車輪122は、車幅方向の外側方向にそれぞれ離隔することでトレッドが拡大する。この場合、第1車輪112を構成する2つの車輪および第2車輪122を構成する2つの車輪は、第1センター部材115および第2センター部材125が車両用プラットフォーム100の進行方向に平行な向きを保って変位するため、各車輪についても向きを保った状態で変位する。
【0068】
これらの第1車輪112および第2車輪122のトレッドの拡大または縮小の作動においては、制御装置130は、作業者が操作子131を操作している間のみ第1車輪112および第2車輪122のトレッドの拡大または縮小を実行するようにしてもよいし、作業者が操作子131を1回操作するごとに所定量だけ第1車輪112および第2車輪122のトレッドの拡大または縮小を実行するようにしてもよい。さらに、作業者は、車両用プラットフォーム100が走行中だけでなく停止中において操作子131を操作して第1車輪112および第2車輪122のトレッドの拡大または縮小を実行することもできる。
【0069】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121が第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120に対して車両の全長方向(進行方向)における互いに異なる位置にそれぞれ配置されて車両用プラットフォーム100を全長方向から見て両者が互いに重なる位置まで第1車輪支持部材110と第2車輪支持部材120とが互いに接近するように構成されている。これにより、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111と第2車輪駆動用原動機121とが互い違いに配置されているため、第1車輪支持部材110と第2車輪支持部材120とが互いに接近した場合においても両原動機が接触することがなく第1車輪112と第2車輪122とのトレッドの可変量を十分に確保することができる。
【0070】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態における車両用プラットフォーム100と同様の構成部分には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0071】
例えば、上記実施形態においては、制御装置130は、第1車輪駆動用原動機111が第2車輪支持部材120の内側面に僅かな隙間S1を介して隣接する位置まで第1車輪支持部材110を変位させるとともに、第2車輪駆動用原動機121が第1車輪支持部材110の内側面に僅かな隙間S2を介して隣接する位置まで第2車輪支持部材120を変位させるようにした。この場合、隙間S1と隙間S2とは、互いに同一の値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。しかし、制御装置130は、車両用プラットフォーム100を全長方向から見て第1車輪駆動用原動機111と第2車輪駆動用原動機121とにおける少なくとも一部同士が互いに重なる位置まで第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ変位させればよい。
【0072】
したがって、制御装置130は、第1車輪駆動用原動機111が第2車輪支持部材120の内側面に接触する位置まで第1車輪支持部材110を変位させるとともに、第2車輪駆動用原動機121が第1車輪支持部材110の内側面に接触する位置まで第2車輪支持部材120を変位させることもできる。また、制御装置130は、
図9に示すように、第1車輪駆動用原動機111における第2車輪支持部材120側の端部と第2車輪駆動用原動機121における第1車輪支持部材110側の端部とが車両用プラットフォーム100の全長方向から見て僅かに重なり合う程度まで第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ変位させることもできる。
【0073】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121を互いに同じ高さ位置に設けた。これにより、車両用プラットフォーム100は、走行安定性を向上させることができる。しかし、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121を互いに異なる高さ位置に設けることもできる。
【0074】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121を車両の全長方向における互いに異なる位置に配置した。これにより、車両用プラットフォーム100は、車両用プラットフォーム100の高さが高くなることを抑えて走行安定性を向上させることができる。しかし、車両用プラットフォーム100は、車両用プラットフォーム100の全長方向および車両用プラットフォーム100の上下方向のうちの少なくとも一方における互いに異なる位置に設けられていればよい。
【0075】
したがって、車両用プラットフォーム100は、例えば、
図10(A),(B)にそれぞれ示すように、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121を車両の上下方向における互いに異なる位置に配置することもできる。なお、
図10(A),(B)においては、第1車輪駆動用原動機111と第2車輪駆動用原動機121との位置関係を明確にするため、第1車輪支持部材110、第1車輪駆動用原動機111、第1車輪112、第1駆動力伝達機構113(減速機構113a,ベルト伝達機構113b)、第2車輪支持部材120、第2車輪駆動用原動機121、第2車輪122および第2駆動力伝達機構123(減速機構123a,ベルト伝達機構123b)のみを示している。
【0076】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121が互いに車幅方向に接近した位置において車両の全長方向の中央部で隣り合うように配置されている、これにより、車両用プラットフォーム100は、車両用プラットフォーム100の重心を車両用プラットフォーム100の全長方向および幅方向の中心部またはその周辺に位置させ易くなり、車両用プラットフォーム100の走行安定性を向上させることができる。しかし、車両用プラットフォーム100は、第1車輪駆動用原動機111および第2車輪駆動用原動機121が車両の全長方向または上下方向において離隔した位置に配置することもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、第1車輪支持部材110には、2つの第1車輪112が取り付けられている。しかし、第1車輪支持部材110には、少なくとも1つの第1車輪112が取り付けられていればよい。なお、第2車輪支持部材120についても、第1車輪支持部材110と同様に、少なくとも1つの第2車輪122が取り付けられていればよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、2つの第1車輪112および2つの第2車輪122からなる4つの車輪を有する4輪車で構成した。しかし、車両用プラットフォーム100は、少なくとも左右一対の第1車輪112および第2車輪122を有して構成されていればよい。したがって、車両用プラットフォーム100は、例えば、
図11に示すように、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120にそれぞれ1つの第1車輪112および第2車輪122を設けるとともに、外側第1センター部材115aの下端部に1つの車輪140を配置した3輪車で構成することもできる。
【0079】
また、上記実施形態においては、第1駆動力伝達機構113は、2つの第1車輪112を駆動するように構成した。しかし、第1駆動力伝達機構113は、少なくとも1つの第1車輪112を駆動すればよい。したがって、第1駆動力伝達機構113は、2つの第1車輪112のうちの一方にのみ駆動力を伝達することでこの一方の第1車輪112のみ駆動させることができる。なお、第2駆動力伝達機構123についても、第1駆動力伝達機構113と同様に、2つの第2車輪122のうちの一方にのみ駆動力を伝達することでこの一方の第2車輪122のみ駆動させることができる。
【0080】
また、上記実施形態においては、第1センター部材115は、外側第1センター部材115aと内側第1センター部材115bとで構成した。しかし、第1センター部材115は、第1車輪112と第2車輪122との間に配置されて第1車輪112および第2車輪122によって支持されるように構成されていればよい。したがって、第1センター部材115は、外側第1センター部材115aおよび内側第1センター部材115bのうちの一方のみで構成することもできる。また、内側第1センター部材115bは、車両用プラットフォーム100の上下の各配置される必要はなく、上側および下側のうちの一方にのみ配置されていてもよい。なお、第2センター部材125についても、第1センター部材115と同様に、外側第2センター部材125aおよび内側第2センター部材125bのうちの一方のみで構成することもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、第1車輪112および第2車輪122がそれぞれ車幅方向に往復変位するように構成した。しかし、車両用プラットフォーム100は、第1車輪112および第2車輪122のうちの一方のみが車幅方向に往復変位するように構成することもできる。例えば、車両用プラットフォーム100は、
図12に示すように、中間部材116と第1車輪支持部材110とを一体的に構成するとともに第1車輪アーム117を排する。これによれば、車両用プラットフォーム100は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124を伸縮させた場合には、第2車輪支持部材120のみを車幅方向に往復変位させることができ、第2車輪122のみを車幅方向に往復変位させることができる。この場合、第1回動用アクチュエータ114は、第2車輪アーム127を回動させるためのアクチュエータであり実質的に第2回動用アクチュエータ124として機能するが、説明の便宜上「第1回動用アクチュエータ114」と表示する。
【0082】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124を用いて第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ車幅方向に往復変位するように構成した。しかし、車両用プラットフォーム100は、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124のうちの一方のみを用いて第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ車幅方向に往復変位するように構成することもできる。例えば、車両用プラットフォーム100は、
図13に示すように、第2回動用アクチュエータ124に代えてピストンシリンダ150を備えている。ピストンシリンダ150は、棒状のピストンロッドが円筒状のシリンダ内に自由に摺動自在に嵌合している。これによれば、これによれば、車両用プラットフォーム100は、第1回動用アクチュエータ114を伸縮させた場合には、第1車輪支持部材110および第2車輪支持部材120をそれぞれ車幅方向に往復変位させることができ、第1車輪112および第2車輪122を車幅方向に往復変位させることができる。
【0083】
また、上記実施形態においては、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、それぞれ4つずつの電動直動シリンダで構成した。しかし、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、少なくとも1つずつの電動直動シリンダで構成すればよい。また、第1回動用アクチュエータ114および第2回動用アクチュエータ124は、電動直動シリンダ以外のアクチュエータ、例えば、油圧シリンダ、空圧シリンダまたは送りネジ機構などの各種アクチュエータで構成することができる。
【0084】
また、上記実施形態においては、車両用プラットフォーム100は、農業用の自走式作業車で構成した。しかし、本発明に係る車両用プラットフォームは、土木用、防災用、救命用、工業用または医療用などの各種作業車で構成できるとともに人が乗車する車両であってもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0085】
S1…第1車輪駆動用原動機と第2車輪支持部材との間の隙間、
S…第2車輪駆動用原動機と第1車輪支持部材との間の隙間、
100…車両用プラットフォーム、
110…第1車輪支持部材、111…第1車輪駆動用原動機、112…第1車輪、113…第1駆動力伝達機構、113a…減速機構、113b…ベルト伝達機構、114…第1回動用アクチュエータ、114a…上側第1回動用アクチュエータ、114b…下側第1回動用アクチュエータ、115…第1センター部材、115a…外側第1センター部材、115b…内側第1センター部材、116…中間部材、117…第1車輪アーム、117a…外側第1車輪アーム、117b…内側第1車輪アーム、118a~118d…第1支持軸、119a~119d…ピン、
120…第2車輪支持部材、121…第2車輪駆動用原動機、122…第2車輪、123…第2駆動力伝達機構、123a…減速機構、123b…ベルト伝達機構、124…第2回動用アクチュエータ、124a…上側第2回動用アクチュエータ、124b…下側第2回動用アクチュエータ、125…第2センター部材、125a…外側第2センター部材、125b…内側第2センター部材、127…第2車輪アーム、127a…外側第2車輪アーム、127b…内側第2車輪アーム、128a~128d…第2支持軸、129a~129d…ピン、
130…制御装置、131…操作子、
140…車輪、
150…ピストンシリンダ。