IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フマキラー株式会社の特許一覧

特開2023-107207植物の病気の予防方法及びうどんこ病胞子の洗い流し方法
<>
  • 特開-植物の病気の予防方法及びうどんこ病胞子の洗い流し方法 図1
  • 特開-植物の病気の予防方法及びうどんこ病胞子の洗い流し方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107207
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】植物の病気の予防方法及びうどんこ病胞子の洗い流し方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/00 20060101AFI20230726BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20230726BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230726BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A01G13/00 A
A01N25/00 102
A01P3/00
A01M7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200556
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2022007602の分割
【原出願日】2022-01-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月13日に自社ウェブサイトに掲載 令和3年10月13日に2022年度フマキラー園芸用品政策共有会で発表 令和3年10月13日に第15回国際ガーデンEXPOで発表 令和3年10月13日に重工記者クラブ加盟社に電子メールを送信
(71)【出願人】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉丸 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】大方 葉月
(72)【発明者】
【氏名】友井 隆司
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA20
2B121CB02
2B121CB22
4H011AA03
4H011DE15
(57)【要約】
【課題】確実にかつ手軽に植物の病気の発生を予防し得る植物の病気の予防方法を提供する。
【解決手段】植物の病気の発病予防方法は、植物の葉に対して、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように水を含む液体を噴射する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の葉に対して、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように水を含む液体を噴射することを特徴とする、植物の病気の発病予防方法。
【請求項2】
請求項1に記載の植物の病気の発病予防方法において、
うどんこ病を発症する植物の葉に対して前記液体を噴射することを特徴とする、植物の病気の発病予防方法。
【請求項3】
植物の葉に対して、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように水を含む液体を噴射することを特徴とする、うどんこ病胞子の洗い流し方法。
【請求項4】
請求項3に記載のうどんこ病胞子の洗い流し方法において、
うどんこ病胞子が植物の葉に付着してから24時間以上経過した後に、前記液体を噴射することを特徴とする、うどんこ病胞子の洗い流し方法。
【請求項5】
請求項4に記載のうどんこ病胞子の洗い流し方法において、
6日以下の期間内に1回または複数回前記液体を植物の葉に対して噴射することを繰り返し行う、うどんこ病胞子の洗い流し方法。
【請求項6】
請求項5に記載のうどんこ病胞子の洗い流し方法において、
食品成分由来の殺虫または殺菌成分を含む前記液体を植物の葉に対して噴射することを特徴とする、うどんこ病胞子の洗い流し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種植物の病気を予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸の分野においては、植物に発生する病気が問題になるので、例えば殺菌剤を散布することによる植物病害の防除が広く行われている。散布する殺菌剤としては様々な合成殺菌剤があり、これら合成殺菌剤の中には浸透移行性を有し残効性を発揮するものもあるので、このような殺菌剤を予め散布しておけば植物病害の防除効果を得ることができる。しかし、特に家庭園芸においては、なるべく合成殺菌剤を使いたくないというニーズも存在する。
【0003】
そこで、殺菌剤を用いることなく植物の病気を予防する努力も行われている。一例としては、うどんこ病の予防のために、適度に水やりを行うことで湿度を保つというものが知られている。
【0004】
また、特許文献1に開示されているように、ナノバブル水を散布することでうどんこ病を防除する技術も知られている。特許文献1には、土壌への散水にナノバブル水を用いることにより、うどんこ病の発症が抑えられたことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表2019/230789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、うどんこ病の予防のために、適度に水やりを行うことで湿度を保つという方法の場合、植物の病害予防が確実とは言い難く、湿度を上げすぎると他の病気を誘発してしまうという問題もある。
【0007】
また、特許文献1のナノバブル水を散布する方法は、合成殺菌剤などを用いなくても植物の病害防除ができる点で優れたものであるが、ナノバブル水を生成するためには専用の装置が必要であるため、家庭園芸において手軽に実施できるとは言い難い。
【0008】
そこで本願発明者らは、より確実にかつ手軽に植物の病気の発生を予防できる方法を検討した。様々な検討を重ねたところ、植物の葉に対して、液体を特定の力で当てることにより、うどんこ病の発病を予防できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の目的とするところは、確実にかつ手軽に植物の病気の発生を予防し得る植物の病気の予防方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示に係る植物の病気の発病予防方法は、植物の葉に対して、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように水を含む液体を噴射するものである。
【0011】
この構成によれば、例えば葉面に付着している菌の胞子を液体によって洗い流すことが可能になるので、植物の病気の発生を予防できる。そしてこの方法は、例えば菌の胞子が葉に付着してから1日経過した後でも病気の発生予防効果が発揮される。またこの方法は、毎日の水やりとともに行うことができる手軽な予防方法であり、また必要であれば殺虫・殺菌成分の散布を兼ねて行うことも可能であり、特に家庭園芸において極めて有効なものである。
【0012】
予防対象の病気がうどんこ病であってもよく、この場合、うどんこ病を発症する可能性のある植物の葉に対して前記液体を噴射することができる。これにより、うどんこ病胞子を洗い流すことができる。すなわち、うどんこ病の胞子は葉に付着してから数時間のうちに宿主細胞へ侵入を開始し、20時間後には吸器が成熟すると言われているので、接種1日経過後でも液体を上記力で当てるだけで発病を予防できるのは全く予想外の効果である。
【0013】
うどんこ病胞子が植物の葉に付着してから24時間以上経過した後に、所定の力で液体を噴射することで、吸器が成熟した後のうどんこ病胞子も洗い流すことができる。
【0014】
前記液体の噴射頻度としては、例えば6日以下の期間内に1回または複数回の頻度とすることができる。すなわち、うどんこ病は、胞子が葉に付着してから6日ほどすると分生子が発生するとされているので、これよりも短い間隔で繰り返し洗い流しを行うことにより、分生子が発生する前に洗い流すことができ、うどんこ病の発症予防効果が高まる。
【0015】
前記液体には、食品成分由来の殺虫または殺菌成分が含まれていてもよい。これにより、本発明によるうどんこ病の発病予防を行いつつ、殺虫または殺菌成分の散布を行うことができる。なお、合成の農薬成分は植物に対する散布回数に制限があるため、6日以下の期間内で繰り返し散布することは不適当である。これに対し、食品成分由来の殺虫・殺菌成分は一般的にこのような制限が無いので、本発明に適用するのに好適である。
【0016】
手で操作可能なポンプを有するスプレー装置によって前記液体を噴射することも可能である。すなわち、本発明に係る方法はハンドスプレーによっても実施できるので、特に家庭園芸において最適な手軽な方法である。
【0017】
スプレー装置の噴射口と葉との距離を20cm以下としてから前記液体を噴射することもできる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、植物の葉に対して所定の力で水を含む液体を噴射することにより、確実にかつ手軽に植物の病気の発生を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る植物の病気の予防方法に使用されるハンドスプレーの側面図である。
図2】ハンドスプレーを使用して液体を葉に噴射している様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る植物の病気の予防方法に使用されるハンドスプレー1の側面図である。ハンドスプレー1は、植物の病気の予防方法に使用される液体が収容される容器2と、スプレー装置3とを備えており、例えばハンドスプレー製品、植物の病気の発病予防製品等と呼ぶこともできる。容器2の上部には図示しない開口が形成されている。スプレー装置3は、容器2の上部に取り付けられており、手で操作可能なポンプ4を有している。ポンプ4の吸引口には、上下方向に延びるチューブ5の上端部が接続されている。チューブ5は、容器2の内部に差し込まれており、容器2に収容されている液体を吸い込むことが可能に構成されている。
【0022】
ポンプ4の吐出口には、吐出管7の上流端が接続されている。吐出管7の下流端は、ハンドスプレー1の前側に向かって開口する噴射口7aとされている。噴射口7aは、液体を霧状に噴射する噴霧口であってもよいし、シャワー状に噴射するノズル等であってもよい。噴射口7aの数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0023】
スプレー装置3は、使用者が操作する操作部としてのトリガ6を備えている。トリガ6は上下方向に延びており、その上端部がスプレー装置3の本体部分に対して水平軸周りに回動可能に支軸6aにより支持されている。トリガ6は図示しない操作ロッドを介してポンプ4に連結されており、使用者の指をトリガ6に掛けて引く操作を行うことでポンプ4を作動させることができるようになっている。ポンプ4が作動すると、容器2に収容されている液体をチューブ5の下端部から吸い上げて吐出管7の噴射口7aから噴射させることができる。トリガ6を1回引く動作によって噴射口7aから噴射される液体の量(トリガ操作1回あたりの噴射量)は、例えば0.3ml以上、または0.6ml以上、または0.9ml以上、または1.2ml以上に設定することができる。トリガ操作1回あたりの噴射量は、例えば噴射口7aの開口面積を調整することや、ポンプ4の吐出量や噴射量を調整することで任意の量に設定できる。トリガ操作1回あたりの噴射量の上限は、例えば0.4ml以下、または0.7ml以下、または1.0ml以下、または1.3ml以下に設定することができる。
【0024】
スプレー装置3は、例えば電動モータを備えた電動式のものであってもよい。この場合、電動モータに電力を供給するための電池を設けるとともに、使用者が手で操作するON/OFF切替スイッチを設けておけばよい。
【0025】
容器2に収容される液体は、少なくとも水を含んでいる。水は、精製水であってもよいし、一般の上水道から供給される水道水であってもよい。液体は、水のみで構成されていてもよいし、水以外の成分を含んでいてもよい。水以外の成分としては、例えば食品成分由来の殺虫または殺菌成分等を挙げることができ、具体的にはソルビタン脂肪酸エステル等である。液体に含まれるソルビタン脂肪酸エステルの量は特に限定されるものではないが、例えば0.01質量%以上1.0質量%以下であり、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。上記液体が水以外の成分を含んでいる場合、濃縮液として市場に流通させることもできる。使用者は、濃縮液を購入した後、水で希釈して上記液体を得ることができる。また、上記液体は、植物の病気の発病を予防するための液体であることから、発病予防剤と呼ぶこともできる。また、上記液体は、病気の原因となる菌や胞子を葉から洗い流すことも可能なので、洗い流し剤と呼ぶこともできる。
【0026】
(植物の病気の発病予防方法)
次に、植物の病気の発病予防方法について具体的に説明する。まず、上記液体が容器2に収容されたハンドスプレー1を準備する。これが準備工程である。その後、図2に示すように、植物の葉に対して、葉面1cmが受ける力が所定の力以上となるように上記液体を噴射する。所定の力とは、例えば0.002N、または0.003Nである。所定の力の上限は、例えば0.02N、または0.01Nとすることができる。これが噴射工程である。噴射工程では、病気の発病を予防したい植物に対して上記液体を噴射すればよく、例えばうどんこ病を発症する植物の葉に対して上記液体を噴射することができる。うどんこ病を発症する植物としては、例えば野菜類、いも類、豆類、観葉植物等を挙げることができる。また、これら以外の植物に対しても上記液体を噴射することができる。また、うどんこ病を発症しないが、他の病気を発症する可能性がある植物に対しても上記液体を噴射することができる。具体的には、葉に付着した菌やカビ類を原因として発病する可能性のある植物に上記液体を噴射するのが好適である。また、発病する可能性の高い時期や地域において上記液体を噴射するのも効果的である。
【0027】
トリガ操作1回あたりの噴射量、噴射口7aの形状や開口面積等を変更することにより、葉面1cmが受ける力を調整できる。噴射口7aからの単位時間あたりの噴射量が増加するように、トリガ操作1回あたりの噴射量、噴射口7aの形状や開口面積等を変更することで、葉面1cmが受ける力が大きくなる。一方、噴射口7aからの単位時間あたりの噴射量が減少するように、トリガ操作1回あたりの噴射量、噴射口7aの形状や開口面積等を変更することで、葉面1cmが受ける力が小さくなる。トリガ6の操作力によっても、葉面1cmが受ける力が多少変化するが、本実施形態では一般の成人女性が容易に操作可能な操作力を想定している。
【0028】
また、噴射工程では、ハンドスプレー1の噴射口7aと葉との距離Lを予め所定距離以下としておいた後、上記液体を噴射する。所定距離とは、例えば20cm、または15cmである。所定距離が長くなればなるほど、葉面1cmが受ける力が小さくなり、一方、所定距離が短くなればなるほど、葉面1cmが受ける力が大きくなる。従って、噴射口7aからの単位時間あたりの噴射量と、所定距離とを調整することによっても、上記所定の力を変更することができる。上記液体の噴射時には、葉面の1cmよりも広い範囲に上記液体が噴射されることもあるし、葉面の1cmよりも狭い範囲に上記液体が噴射されることもある。葉の全体にまんべんなく上記液体が所定の力で噴射されるように、同一の葉に対して複数回、トリガ6を操作する。トリガ6を1回操作するだけで葉の全体に上記液体が所定の力で噴射される場合には、トリガ6の操作回数は1枚の葉に対して1回のみでよい。
【0029】
葉面1cmが受ける力を測定する際には、例えばデジタルフォースゲージ等を使用することもできる。デジタルフォースゲージにはロードセルが内蔵されており、このロードセルに接続された入力部に所定面積の硬質樹脂板を固定した後、硬質樹脂板に対して上記液体を噴射することで葉面1cmが受ける力を間接的に測定できる。上記所定距離を変えたり、トリガ操作1回あたりの噴射量を変えることで、葉面1cmが受ける力がどのように変化するかを測定できる。この測定結果に基づいて、葉面1cmが受ける力が所定の力以上となるように、上記所定距離及びトリガ操作1回あたりの噴射量を決定できる。尚、葉面1cmが受ける力の測定方法はデジタルフォースゲージを用いた測定方法に限られるものではなく、他の測定方法を用いてもよい。
【0030】
植物の葉にうどんこ病の胞子が付着していた場合、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように上記液体を葉に噴射することで、葉に付着している胞子を洗い流すことができる。この場合、上記液体及びハンドスプレー1を使用することで、うどんこ病胞子の洗い流し方法を行うことができる。上記液体が食品成分由来の殺虫または殺菌成分を含んでいる場合、食品成分由来の殺虫または殺菌成分を葉に付着させることができる。
【0031】
うどんこ病胞子の洗い流し方法は、任意のタイミングで行うことができる。例えば、うどんこ病が発症し易い時期になり、うどんこ病胞子が植物の葉に付着したと推定される時から所定時間以上経過してから、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように上記液体を葉に噴射することにより、うどんこ病胞子を洗い流すことができる。なお、うどんこ病の胞子は葉に付着してから数時間のうちに宿主細胞へ侵入を開始し、20時間後には吸器が成熟すると言われているので、付着1日経過後すると胞子が葉から離れにくくなると考えられるが、意外にも、付着から24時間経過後であっても、上記液体を上記所定の力で葉に当てるだけでうどんこ病胞子を葉から離脱させることが可能になることが判明している。このように、吸器が成熟した後であっても胞子を葉から離脱させることができるという本発明の顕著な効果が得られるという点で、うどんこ病胞子が植物の葉に付着してから所定時間以上経過した後に、上記所定の力で噴射することが好適である。所定時間とは、例えば24時間、または30時間である。もっとも、うどんこ病胞子が葉に付着してから上記所定時間が経過する前に本発明のうどんこ病胞子の洗い流し方法を行ったとしても、胞子を葉から離脱させる効果の点では何ら問題ない。
【0032】
うどんこ病胞子の洗い流し方法の場合、例えば6日以下の期間内に1回または複数回上記液体を葉に噴射することを繰り返し行う。すなわち、うどんこ病は、胞子が葉に付着してから6日ほどすると分生子が発生するとされているので、これよりも短い間隔で繰り返し洗い流しを行うことにより、分生子が発生する前に洗い流すことができ、うどんこ病の発症予防効果が高まる。6日以下の期間内に1回だけ上記液体を葉に噴射してもよいし、6日以下の期間内に2回以上、上記液体を葉に噴射してもよい。また、5日以下の期間内に1回だけ上記液体を葉に噴射してもよいし、5日以下の期間内に2回以上、上記液体を葉に噴射してもよい。また、1日1回だけ、上記液体を葉に噴射してもよい。
【0033】
(試験例)
次に、植物の病気の予防試験の例について説明する。供試植物はキュウリであり、うどんこ病胞子を筆できゅうりの葉に付着させて試験の準備を行った。うどんこ病胞子を葉に付着させてから24時間経過後、上記液体をハンドスプレー1で葉に噴射した。噴射後、7日間経過した時の葉の状態を観察した。上記液体は水であるが、ソルビタン脂肪酸エステル等の他の成分を含有していても同様な試験結果となる。また、キュウリ以外の植物に対しても同様な試験結果となる。
【0034】
各実施例は、ハンドスプレー1の葉面に対する距離および噴射量の条件を調整したうえで噴射を行った。各条件で、1cmが受ける力を予めデジタルフォースゲージによって測定している。なお、デジタルフォースゲージの入力部には直径約4cmの円形の樹脂板(面積約12.5cm)を接続して測定した。
【0035】
実施例1として、デジタルフォースゲージの測定値が0.03N(1cmが受ける力が0.0024N)となる条件、実施例2として、デジタルフォースゲージの測定値が0.04N(1cmが受ける力が0.0032N)となる条件、実施例3として、デジタルフォースゲージの測定値が0.06N(1cmが受ける力が0.0048N)となる条件、実施例4として、デジタルフォースゲージの測定値が0.10N(1cmが受ける力が0.0079N)となる条件、実施例5として、デジタルフォースゲージの測定値が0.15N(1cmが受ける力が0.012N)となる条件でそれぞれ噴射した。
【0036】
比較例1として、無処理(何も噴射しない)の例、比較例2として、デジタルフォースゲージの測定値が0.010N(1cmが受ける力が0.0008N)となる条件、比較例3として、デジタルフォースゲージの測定値が0.015N(1cmが受ける力が0.0012N)となる条件、比較例4として、デジタルフォースゲージの測定値が0.021N(1cmが受ける力が0.0017N)となる条件で噴射した。
【0037】
実施例1~5では、発病面積が葉の5%未満であったのに対し、比較例1では発病面積が葉の50%以上、比較例2~4では発病面積が葉の25~50%未満であった。つまり、葉面1cmが受ける力が0.002N以上の場合には、それ未満の場合に比べて発病面積が有意に小さくなる。発病面積が小さくなるということは、葉に付着していたうどんこ病胞子が上記液体によって洗い流されたということであり、高い発病予防効果が得られることが分かる。
【0038】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、植物の葉に対して、葉面1cmが受ける力が0.002N以上となるように上記液体をハンドスプレー1で噴射することで、葉に付着している菌や胞子を洗い流すことができる。特に、葉に付着してから24時間経過していて吸器が成熟した後のうどんこ病胞子も水を主成分とした上記液体で大部分を洗い流すことができるのであり、この効果は極めて顕著な効果である。
【0039】
またこの方法では、合成殺菌剤を使用しないので、毎日の水やりとともに、回数制限なく、何度でも行うことができる手軽な予防方法であり、また必要であれば殺虫・殺菌成分の散布を兼ねて行うことも可能であり、特に家庭園芸において極めて有効なものである。
【0040】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本方法は、例えば各種野菜や観葉植物の葉等に対して使用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 ハンドスプレー
2 容器
3 スプレー装置
7a 噴射口
図1
図2