(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107230
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】カラーイメージングを含む視覚スクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
A61B3/10
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006890
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/301,667
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】598106809
【氏名又は名称】ウェルチ・アリン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴィアン ルーミス ハンター
(72)【発明者】
【氏名】デビッド エル. ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ブレンダン カッポン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エー. レーン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA08
4C316AA09
4C316AA13
4C316AA19
4C316AB06
4C316FB11
4C316FB12
4C316FB24
4C316FY02
4C316FY10
4C316FZ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者に視覚スクリーニング検査を実施して患者の眼における疾患および/または異常の有無を決定するための視覚スクリーニング装置を提供する。
【解決手段】視覚スクリーニング装置は、視覚スクリーニング検査の動作を実行するように構成された、付随する方法およびシステムを含むものであってもよい。装置には、近赤外(NIR)線を発生させるように構成された放射線源と、患者の眼で反射した放射線を表すグレースケール画像を取り込むように構成されたセンサーと、白色光源と、患者の眼のカラー画像を取り込むように構成されたカメラと、が含まれていてもよい。また、装置は、グレースケール画像および/またはカラー画像に基づいて、合成画像を生成し、眼に関連する値と期待値との間の差異を判断し、この差異に基づいて、眼に関連した状態を示す出力を生成するように構成されていてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の放射線を放射するように構成された放射線源と、
患者の眼で反射した放射線を取り込むように構成されたセンサーと、
白色光源と、
前記患者の前記眼のカラー画像を取り込むように構成されたカメラと、
前記放射線源、前記センサー、前記白色光源、および前記カメラに動作可能に接続されたプロセッサと、
メモリであって、
前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに対して、
前記放射線源に、第1の期間に前記第1の波長の放射線を放射させ、
前記センサーに、前記第1の期間に前記患者の前記眼で反射した前記放射線の一部を取り込ませ、
前記白色光源に、前記第1の期間の後の第2の期間に、前記患者の前記眼に光を当てさせ、
前記カメラに、前記第2の期間に前記患者の前記眼のカラー画像を取り込ませ、
前記放射線の前記取り込まれた一部を示すグレースケール画像と、前記カラー画像とに、少なくとも部分的に基づいて、前記眼の合成画像を生成させ、
前記合成画像に基づいて、前記眼に関連する値と期待値との間の差異を判断させ、
前記差異に少なくとも部分的に基づいて、前記眼に関連する状態を示す出力を生成させる、命令を、
格納している前記メモリと、を備え、
前記合成画像は、前記グレースケール画像を表す第1の複数の画素と、前記カラー画像を表す第2の複数の画素と、を含む、視覚スクリーニング装置。
【請求項2】
前記第1の波長は、電磁スペクトルの近赤外線(NIR)帯域にある、請求項1に記載の視覚スクリーニング装置。
【請求項3】
前記放射線源は、複数のNIR LEDが共通の軸を有するように配置されたNIR発光ダイオード(LED)のアレイを含む、請求項2に記載の視覚スクリーニング装置。
【請求項4】
前記視覚スクリーニング装置の第1の側に配置され、前記出力を前記視覚スクリーニング装置のオペレーターに対して表示するように構成された表示ユニットをさらに含み、
前記放射線源、前記センサー、前記白色光源、および前記カメラは、前記視覚スクリーニング装置の、前記第1の側と対向する第2の側に、配置されている、請求項1に記載の視覚スクリーニング装置。
【請求項5】
前記白色光源は、前記患者の前記眼に関連する光軸に対して、第1の角度と、前記第1の角度とは異なる第2の角度とから、前記患者の前記眼に光を当てるように構成された発光ダイオード(LED)のアレイを含む、請求項4に記載の視覚スクリーニング装置。
【請求項6】
前記命令は、前記プロセッサに対して、さらに、
前記第2の期間の第1の部分の間に、前記白色光源に、前記第1の角度から前記患者の前記眼に光を当てさせ、
前記第2の期間の前記第1の部分の間に、前記カメラに、前記患者の前記眼の第1のカラー画像を取り込ませ、
前記第2の期間の第2の部分の間に、前記白色光源に、前記第2の角度から前記患者の前記眼に光を当てさせ、
前記第2の期間の前記第2の部分の間に、前記カメラに、前記患者の前記眼の第2のカラー画像を取り込ませ、
前記第1のカラー画像および前記第2のカラー画像に基づいて、前記眼の一連のアニメーション画像を生成させ、
前記表示ユニット上に、前記一連のアニメーション画像を表示させる、請求項5に記載の視覚スクリーニング装置。
【請求項7】
前記命令は、前記プロセッサに対して、さらに、
前記カメラに、前記患者の第1の視線方向に対応する前記患者の前記眼の第1のカラー画像を取り込ませ、
前記カメラに、前記患者の第2の視線方向に対応する前記患者の前記眼の第2のカラー画像を取り込ませ、
前記第1のカラー画像および前記第2のカラー画像に基づいて、前記眼の網膜の画像を生成させる、請求項5に記載の視覚スクリーニング装置。
【請求項8】
第1の期間に患者の眼に光を当て、
前記第1の期間に前記眼のグレースケール画像を取り込み、
前記第1の期間とは別の第2の期間に、前記眼に光を当て、
前記第2の期間に前記眼のカラー画像を取り込み、
前記グレースケール画像および前記カラー画像に少なくとも部分的に基づいて、前記グレースケール画像から第1の複数の画素値を導出するとともに前記カラー画像から第2の複数の画素値を導出する前記眼の前記合成画像、を生成し、
前記カラー画像または前記合成画像のうちの少なくとも1つに基づいて、前記眼に関連する色値と期待色値との間の差異を判断し、
前記差異に少なくとも部分的に基づいて、前記患者に関連する出力を生成することを含む、方法。
【請求項9】
前記第1の期間に光を当てることは、電磁スペクトルの近赤外線(NIR)帯域の放射線を前記眼に当てることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記眼の瞳孔に対応する前記グレースケール画像の第1の領域を決定し、
前記眼の前記瞳孔に対応する前記カラー画像の第2の領域を決定することをさらに含み、
前記差異は、前記第1の領域または前記第2の領域に少なくとも部分的に基づいている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記色値は第1の色値であり、
前記方法は、
前記患者に関連する患者データを取得し、
前記期待色値として、前記第2の色値を決定することをさらに含み、
前記患者データは、前記眼に関連する第2の色値を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記眼は前記患者の第1の眼であり、前記期待色値は、前記患者の第2の眼に関連する第2の色値、または、人間の眼に関連する標準データから得られる第3の色値のうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記グレースケール画像または前記カラー画像を、入力として、訓練された機械学習モデルに提供し、
前記訓練された機械学習モデルから、前記出力を受信することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記差異が閾値以上であると判断することをさらに含み、
前記出力は、前記差異が前記閾値以上であるという判断に、少なくとも部分的に基づくものである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記合成画像の、前記差異が前記閾値以上である部分を判断し、
前記合成画像の前記部分を示すグラフィックを生成することをさらに含み、前記出力は、前記グラフィックを有する前記合成画像を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して、前記グラフィックを有する前記合成画像を提供することをさらに含み、
前記GUIによって、ユーザは、前記グラフィックをオンまたはオフにすることができる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記出力は、正常な眼のスクリーニング、必要な追加のスクリーニング、または、前記眼に関連する疾患のうちの、少なくとも1つを示す、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
メモリと、
プロセッサと、
前記メモリに格納された、前記プロセッサによって実行可能な、コンピューターで実行可能な命令であって、
放射線源に、第1の期間に近赤外(NIR)線を放射させ、
センサーに、前記第1の期間に患者の眼で反射した前記NIR放射線の一部を取り込ませ、
白色光源に、前記第1の期間とは別の第2の期間に、前記眼に光を当てさせ、
カメラに、前記第2の期間に前記眼のカラー画像を取り込ませ、
前記カラー画像および前記NIR放射線の前記一部に基づいて、前記眼に関連する値と期待値との間の差異を判断し、
前記差異が閾値以上であると判断し、
前記差異が前記閾値以上であると判断したことに少なくとも部分的に基づいて、前記眼の状態を示す出力を生成すること、を含む動作を実行する前記命令と、を備える、システム。
【請求項19】
前記動作は、
前記NIR放射線の前記取り込まれた一部を示すグレースケール画像を生成し、
前記グレースケール画像および前記カラー画像に基づいて、合成画像を生成することをさらに含み、
前記合成画像は、前記グレースケール画像からの第1の複数の画素値と、前記カラー画像からの第2の複数の画素値とを含む、請求項18に記載のシステム
【請求項20】
前記動作は、
前記白色光源に、前記第2の期間に複数の角度から前記患者の前記眼に光を当てさせ、
前記カメラに、前記患者の前記眼の複数のカラー画像であって、各カラー画像が前記複数の角度のうちのある角度に対応する前記複数のカラー画像を取り込ませ、
前記複数のカラー画像に基づいて、映像の各フレームが前記複数のカラー画像のうちのあるカラー画像に対応する前記映像を生成し、
前記映像を表示画面上に表示することをさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療機器に関する。特に、本出願は、眼の疾患や障害を検出し、評価するための、視覚スクリーニング装置ならびに付随するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚スクリーニングには、一般に、眼疾患のスクリーニングが含まれる。このようなスクリーニングには、例えば、ブルックナー赤色反射検査(red reflex test)などの透過照明テストが含まれる場合もある。赤色反射検査では、臨床医が検眼鏡を用いて患者の眼に可視光を照射し、眼の脈絡膜および網膜表面で反射する光の色や他の特性を検査する。この検査を用いると、角膜や中膜の混濁、白内障、腫瘍や網膜芽細胞腫をはじめとする網膜の異常など、眼の様々な疾患や異常を検出することができる。疾患用の視覚スクリーニングは、すべての年齢層で推奨されている。例えば、新生児には先天性眼疾患に対するスクリーニング、高齢者には白内障や網膜疾患など加齢に伴う変性疾患の発症に対するスクリーニングを行うことがある。また、可視光下での視覚スクリーニングを用いて、眼内の異物の存在を検出することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、視覚スクリーニングには、一般に、患者の眼に関連する様々な欠乏を判断するための1つ以上の検査も含む。そのような視覚検査としては、例えば、屈折異常検査、調節検査、視力検査、色覚スクリーニングなどがあげられる。視覚スクリーニング検査の中には、赤外線または近赤外線での撮像を使う必要があるものもあれば、検査によっては、可視光下での撮像および/または患者に内容を示すための表示画面が必要な場合もある。しかしながら、フォロプター、オートレフラクター、フォトレフラクターなどの眼科用検査装置には、限られた範囲の検査を実行する機能しかない場合がある。統合された1台の装置を用いて視覚異常と疾患の大半をスクリーニングすることができれば、好都合であろう。
【0004】
本開示の様々な例は、上述した問題のうちの1つ以上を解消することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一例では、視覚スクリーニング装置は、(例えば、近赤外線帯域の)第1の波長の放射線を放射するように構成された放射線源と、患者の眼で反射した放射線を取り込むように構成されたセンサーと、白色光源と、患者の眼のカラー画像を取り込むように構成されたカメラと、を含む。また、視覚スクリーニング装置は、放射線源、センサー、白色光源、およびカメラに動作可能に接続されたプロセッサと、プロセッサによって実行可能な命令を格納しているメモリと、も含む。この命令は、実行されると、プロセッサに対して、放射線源に、第1の期間に第1の波長の放射線を放射させ、センサーに、第1の期間に患者の眼で反射した放射線の一部を取り込ませ、白色光源に、第1の期間の後の第2の期間に、患者の眼に光を当てさせ、カメラに、第2の期間に患者の眼のカラー画像を取り込ませる。また、この命令は、実行されると、プロセッサに対して、放射線の取り込まれた部分を示すグレースケール画像を表す第1の複数の画素とカラー画像を表す第2の複数の画素とを含む眼の合成画像を生成させ、合成画像に基づいて、眼に関連する値と期待値との間の差異を判断させ、この差異に少なくとも部分的に基づいて、眼に関連する状態を示す出力を生成させる。
【0006】
本開示の別の例では、方法は、放射線源に、第1の期間に患者の眼に光を当てさせ、センサーに、第1の期間に眼のグレースケール画像を取り込ませ、白色光源に、第1の期間とは別の第2の期間に、眼に光を当てさせ、カメラに、第2の期間に眼のカラー画像を取り込ませることを含む。また、この方法は、グレースケール画像から第1の複数の画素値を導出するとともにカラー画像から第2の複数の画素値を導出する眼の合成画像を、生成し、カラー画像または合成画像のうちの少なくとも1つに基づいて、この分析に少なくとも部分的に、独立して、基づいて、NIRおよび可視光によって明らかになった眼の特性、患者に関連する出力を決定することも含む。
【0007】
本開示のさらに別の例では、システムは、メモリと、プロセッサと、メモリに格納された、プロセッサによって実行可能な、コンピューターで実行可能な命令。この命令は、実行されると、プロセッサに対して、放射線源に、第1の期間に近赤外(NIR)線を放射させ、センサーに、第1の期間に患者の眼で反射したNIR放射線の一部を取り込ませ、白色光源に、第1の期間とは別の第2の期間に、眼に光を当てさせ、カメラに、第2の期間に眼のカラー画像を取り込ませる動作を実行させる。また、この命令は、実行されると、プロセッサに対して、カラー画像およびNIR放射線の一部に基づいて、眼に関連する値と期待値との差異を判断させ、差異が閾値以上であると判断させ、差異が閾値以上であると判断したことに少なくとも部分的に基づいて、前記眼の状態を示す出力を生成させる。
【0008】
本開示の特徴、その性質および様々な利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると、より明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な視覚スクリーニング装置および視覚スクリーニングシステムを示す。いくつかの実施形態では、
図1に示す例示的なシステムのコンポーネントを使用して、視覚スクリーニングおよび/または眼の疾患または異常の検出に関連する1つ以上のスクリーニング検査を実施することができる。
【
図2】
図2は、本開示の例示的な視覚スクリーニング装置を示す。
【
図3A】
図3Aは、本開示の別の例示的な視覚スクリーニング装置を示す。
【
図3B】
図3Bは、本開示の例示的な視覚スクリーニング装置の放射線源の配置を示す。
【
図3C】
図3Cは、本開示の例示的な視覚スクリーニングシステムの概略図である。
【
図3D】
図3Dは、本開示の例示的な視覚スクリーニング装置の別の概略図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の例による、視覚スクリーニング装置により使用されて眼の画像から眼の疾患と異常を判断することができる例示的な特徴を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の例による、視覚スクリーニング装置により使用されて眼の画像から眼の疾患と異常を判断することができる例示的な特徴を示す。
【
図4C】
図4Cは、本開示の例による、視覚スクリーニング装置により使用されて眼の画像から眼の疾患と異常を判断することができる例示的な特徴を示す。
【
図4D】
図4Dは、本開示の例による、視覚スクリーニング装置により使用されて眼の画像から眼の疾患と異常を判断することができる例示的な特徴を示す。
【
図5A】
図5Aは、本開示の視覚スクリーニング装置によって生成される例示的な可視化像を示す。
【
図5B】
図5Bは、本開示の視覚スクリーニング装置によって生成される例示的な可視化像を示す。
【
図6】
図6は、本開示の例示的な方法を示す第1の流れ図である。
【
図7】
図7は、本開示の例示的な方法を示す第2の流れ図である。
【
図8】
図8は、本開示の例示的な方法を示す第3の流れ図である。
【0010】
図中、参照符号の最上位桁は、その参照符号が最初に現れる図面番号を示す。同一の参照符号を異なる図面で使用する場合、同様または同一の要素または特徴を示す。図面は縮尺どおりではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、ひとつには、視覚スクリーニング装置と、対応する方法とに関する。このような例示的な視覚スクリーニング装置は、患者に対して1つ以上の視覚スクリーニング検査を実施し、視覚スクリーニング検査の結果を、臨床医または医師の助手などの装置のオペレーターに出力するように構成されていてもよい。具体的には、本開示は、眼の疾患および異常をスクリーニングするための装置および方法に関する。例えば、この視覚スクリーニング装置は、電磁スペクトル(例えば、赤外線、近赤外線および可視光)の異なる波長域の放射線が照射された眼の1つ以上の画像を取り込むことができる。この装置は、取り込まれた画像の分析に基づいて、患者の片眼または両眼に関連する、白内障、腫瘍、屈折異常、眼内異物、角膜擦過傷、網膜剥離または病変、先天性疾患などの1つ以上の眼の疾患および/または異常を決定することができる。
【0012】
取り込まれた画像の分析に少なくとも部分的に基づいて、装置は、患者に関する推奨または診断のうちの少なくとも1つを含む出力を生成することができる。そのような出力(例えば、推奨および/または診断)は、検出された疾患または異常、患者に追加のスクリーニングが必要である旨またはスクリーニングが正常であった(例えば、何ら疾患または異常が示されなかった)旨を示すものであってもよい。例えば、装置は、患者の左眼の画像と右眼の画像との差異を判断し、この差異を、正常な眼に対応する標準検査データと比較して、推奨および/または診断を提供することができる。特に、標準検査データは、1つ以上の閾値または値の範囲を提供してもよく、装置によって生成される出力は、差異が閾値未満であるか値の範囲内にあることに基づくものであってもよい。また、装置は、臨床医または視覚スクリーニング装置のオペレーターに対して表示するために取り込まれた画像の可視化像を生成し、臨床医またはオペレーターが診断を決定する一助とすることができる。このように、本明細書で説明する方法は、視覚スクリーニング装置によって取り込まれた画像の分析に基づいて、自動化された診断を提供することができる。また、本明細書で説明する方法は、そのような診断に基づくおよび/またはそのような診断を示す自動化された推奨を提供することもできる。
【0013】
少なくとも
図1を参照して説明するように、眼の疾患および異常のスクリーニングに関連する例示的な視覚スクリーニング装置は、近赤外線下ならびに可視光線下で患者の眼の画像を取り込むためのコンポーネントを含むものであってもよい。この装置は、スクリーニングの間、近赤外線および可視光線の放射と、これに対応する眼から反射される放射線の取り込みとを、制御するためのコンポーネントを含むものであってもよい。複数の例において、スクリーニングの間に患者の眼の瞳孔が可視光に応答して収縮しないように、すなわち調整がなされないように、可視光画像の取り込みを開始する前に近赤外線画像を取り込んでもよく、眼を拡大させる必要のないままスクリーニングを終えてもよい。さらに、この装置には、取り込まれた画像を分析して患者の眼の疾患状態および/または異常を判断するためのコンポーネントと、スクリーニング中に検出された疾患状態および/または異常を示す出力を判断して報告するためのコンポーネントとが含まれていてもよい。
【0014】
上述した装置および技術に関する追加の詳細事項を、
図1~
図7を参照して以下に述べる。これらの図は、特許請求の範囲に記載した方法を利用することができる装置およびシステムを説明しているが、本明細書で説明する方法、プロセス、機能、動作および/または技術は、他の装置、システムなどにも同様に適用し得ることが理解される。
【0015】
図1に、いくつかの実施形態による、視覚スクリーニング検査、特に、眼の疾患および/または異常を検出するためのスクリーニング検査を実施するための例示的な環境100を示す。
図1に示すように、いくつかの例では、オペレーター102は、患者106の眼の健康を判断するために、視覚スクリーニング装置104によって、患者106に視覚スクリーニング検査を実施することができる。本明細書で説明するように、視覚スクリーニング装置104は、眼に可視光が照射されたときの眼の疾患および/または異常のスクリーニングを含む、1つ以上の視覚スクリーニング検査を実行することができる。また、視覚スクリーニング装置104は、患者106の視覚の健康を評価および/または診断するように構成された、視力検査、屈折異常検査、調節検査、動的視標追跡検査、色覚スクリーニング検査および/または他の何らかの視覚スクリーニング検査など、他の視覚スクリーニング検査も実行するように構成されていてもよい。複数の例において、視覚スクリーニング装置104は、1つ以上の視覚スクリーニング検査を実施するように構成された携帯型の装置を含むものであってもよい。視覚スクリーニング装置104は、携帯可能であることから、学校や診療所などの従来のスクリーニング環境から、医師のオフィス、病院、眼科施設および/または他の遠隔地および/または移動可能な場所に至るまで、どこでも視覚スクリーニング検査を実施することができる。また、新生児や幼児、老人患者を含むあらゆる年齢層に対して視覚スクリーニング検査を実施するのに視覚スクリーニング装置104を使用することができると想定される。
【0016】
本明細書で説明するように、視覚スクリーニング装置104は、患者106に対して1つ以上の視覚スクリーニング検査を行うように構成されていてもよい。複数の例において、1つ以上の視覚スクリーニング検査には、患者106の眼に赤外線または近赤外(NIR)線を照射すること、患者106の眼から反射される放射線を取り込むことが含まれていてもよい。例えば、開示内容全体を本明細書に援用する米国特許第9,237,846号には、近赤外(NIR)線源によって生成される異なる照明パターン下で取り込まれた瞳孔画像を利用して、フォトリフラクションに基づいて屈折異常を判断するためのシステムおよび方法が記載されている。他の例では、赤色反射検査などの視覚スクリーニング検査に、患者106の眼に可視光を照射し可視光照明下で眼のカラー画像を取り込むことが、含まれている場合もある。視覚スクリーニング装置104は、可視光照明下の眼のカラー画像および/または映像データを含むデータを取得し、患者106の眼球の瞳孔、網膜および/または水晶体を検出することができる。このデータを使用して、左右の眼の違いを判断したり、取り込んだ画像を標準画像と比較したり、オペレーター102または臨床医が患者の眼の疾患や異常を診断するのを助けるための可視化像を生成したりしてもよい。視覚スクリーニング装置104は、患者106に関連する出力112を決定するための分析用に、ネットワーク108を介して、視覚スクリーニングシステム110にデータを送信してもよい。上記に代えてまたは上記に加えて、視覚スクリーニング装置104は、分析の一部または全部をローカルで実施して、出力112を決定してもよい。実際、本明細書に記載したいずれの例においても、開示された方法のうちの一部または全部は、視覚スクリーニング装置104が独立して(例えば、視覚スクリーニングシステム110またはそのコンポーネントなしで)、視覚スクリーニングシステム110により独立して(例えば、視覚スクリーニング装置104またはそのコンポーネントなしで)、全体的にまたは部分的に実施してもよい。例えば、いくつかの例では、視覚スクリーニング装置104は、ネットワーク108を介して視覚スクリーニングシステム110に接続されることなく、そうでなければ視覚スクリーニングシステム110と通信することなく、本明細書に記載の視覚スクリーニング検査および/または他の方法のどれを実行するように構成されていてもよい。他の例では、視覚スクリーニングシステム110には、視覚スクリーニング装置104に含まれるものと同様および/または同一の1つ以上のコンポーネントが含まれていてもよく、したがって、視覚スクリーニングシステム110は、視覚スクリーニング装置104に接続されることなく、そうでなければ視覚スクリーニング装置104と通信することなく、本明細書に記載の視覚スクリーニング検査および/または他の方法のどれを実施するように構成されていてもよい。
【0017】
図1に概略的に示すように、視覚スクリーニング装置104には、1つ以上の視覚スクリーニング検査の実施に関連する機能を実行するように構成された1つ以上の放射線源114が含まれていてもよい。放射線源114は、発光ダイオード(LED)などの個々の放射線エミッターを含むものであってもよく、これらがパターン状に配置されてLEDアレイを形成していてもよい。複数の例において、放射線源114には、フォトリフラクション法を使用して患者106の眼の屈折異常を測定するために、NIR LEDなどの近赤外(NIR)線エミッターが含まれていてもよい。放射線源114のNIR放射線エミッターは、患者106の眼の凝視角または視線方向の測定用として使用してもよい。さらに、放射線源114には、色覚スクリーニング検査時に患者106に表示するための色刺激を生成するためのカラーLEDも含むことができる。
【0018】
視覚スクリーニング装置104には、視覚スクリーニング検査時に患者の眼から反射される放射線を取り込むように構成された、赤外線カメラなどの1つ以上の放射線センサー116が含まれていてもよい。例えば、視覚スクリーニング装置104は、放射線源114を介して、1以上の放射光線を放射することができ、そのような光線を患者106の眼に向けるように構成されていてもよい。その後、視覚スクリーニング装置104は、放射線センサー116を介して、(例えば、眼の瞳孔から)反射して戻ってくる対応する放射線を取り込むことができる。複数の例において、放射線センサー116には、NIR放射線源114によって患者106の眼に光を当てている間に反射したNIR放射線を取り込むNIR放射線センサーが含まれていてもよい。NIR放射センサー116によって取り込まれたデータは、患者106の眼の屈折異常および/または凝視角の測定に使用することができるものである。このデータには、患者106の眼の瞳孔、網膜および/または水晶体の画像および/または映像が含まれていてもよい。いくつかの例では、画像および/または映像は、(例えば、0~128の間または0~256の間の値の)グレースケールであってもよい。データは、視覚スクリーニング検査の特定の期間中あるいは検査の全期間中に、断続的に取り込まれたものであってもよい。また、視覚スクリーニング装置104は、画像および/または映像データを処理し、患者106の眼の屈折異常および/または凝視角の変化を判断することができる。NIR照明下で取り込まれた眼のグレースケール画像を、屈折異常症、斜視、閉塞などの眼の疾患や異常のスクリーニングに使用することもできる。
【0019】
複数の例において、視覚スクリーニング装置104は、可視白色光源118と、白色光源118による照明下で眼のカラー画像および/または映像を取り込むように構成されたカメラ120と、をさらに含むものであってもよい。白色光源118は、白色光を生成するように構成されたLEDのアレイなどの発光ダイオード(LED)、例えば、青色光を白色光に変換する蛍光体コーティングを有する青色LED、あるいは、赤色、青色および緑色の個々のLEDを作動させる強度を変化させて白色光を生成するように構成された、赤色、青色、緑色のLEDの組み合わせを含むものであってもよい。LEDのアレイの個々のLEDは、個々に動作して視覚スクリーニング検査時に異なる角度から光を当てることが可能なように構成されたパターンで配置されていてもよい。また、白色光源118は、強度レベルが異なる白色光を生成するように構成されていてもよい。カメラ120は、患者の眼から反射する白色光を取り込んで、デジタルカラー画像および/または映像を生成するように構成されていてもよい。カメラ120は、
図2を参照してさらに詳細に説明するように、臨床用途で眼を撮像するためのカスタム光学系を有する高解像度のオートフォーカスデジタルカメラを含むものであってもよい。カメラ120によって取り込まれたカラー画像および/または映像は、JPEG、BITMAP、TIFFなど(画像用)およびMP4、MOV、WMV、AVIなど(映像用)の様々なフォーマットで保存されていてもよい。いくつかの例では、カラー画像および/または映像の画素値は、RGB(赤、緑、青)色空間のものであってもよい。白色光照明下で取り込んだ眼のカラー画像および/または映像を、白内障、房水および硝子体液での眼内液の混濁、腫瘍、網膜癌および網膜剥離などの眼の疾患および異常のスクリーニングに用いることができる。また、カラー画像および/または映像を、NIR照明下で取り込まれたグレースケール画像と組み合わせて使用して、可視化像を生成して、広範囲にわたる眼の疾患状態の検出の手助けをすることもできる。
【0020】
視覚スクリーニング装置104は、表示画面122および表示画面124などの1つ以上の表示画面を含むものであってもよく、これらはカラーLCD(液晶ディスプレイ)またはOLED(有機発光ダイオード)表示画面であってもよい。表示画面122は、視覚スクリーニング検査に関連する情報をオペレーター102に提供するように構成された、オペレーター102の方向を向いたオペレーター表示画面であってもよい。本明細書に記載したいずれの例においても、オペレーター102に面する表示画面122は、視覚スクリーニング装置104によって生成されるおよび/または視覚スクリーニングシステム110によって生成される出力112を、表示および/または提供するように構成されていてもよい。出力112には、検査パラメータ、スクリーニング検査の現在の状態と進捗状況、検査中に決定された測定値、スクリーニング検査時に取り込みまたは生成された画像、1つ以上の検査に基づいて判断された診断および/または診断に関連する推奨が含まれていてもよい。オペレーター102に面する表示画面122に、患者に関連するまたは患者に固有の情報および患者の病歴を表示してもよい。
【0021】
いくつかの例では、視覚スクリーニング装置104は、患者106に対してコンテンツを表示するように構成された、患者106の方向を向いた表示画面124を含むものであってもよい。コンテンツには、患者の注意を引きつけて、視覚スクリーニング装置104のほうに患者の視線を保つために、注意を引きつける画像および/または映像が含まれていてもよい。様々な視覚スクリーニング検査に対応するコンテンツも、表示画面124上で患者106に提示することができる。例えば、表示画面124は、色覚スクリーニング検査時に患者106に色刺激を表示したり、視覚スクリーニング検査時にスネレン視標を表示したりすることができる。表示画面122、124は、視覚スクリーニング装置104と一体化されていてもよいし、装置の外にあり、装置104のコンピュータプログラムの制御下にあってもよい。
【0022】
視覚スクリーニング装置104は、視覚スクリーニング装置104のネットワークインタフェース126を使用して、ネットワーク108経由で、放射線センサー116およびカメラ120によって取り込まれたデータを送信することができる。同様に、視覚スクリーニング装置104は、実施している視覚スクリーニング検査に関連する他の検査データ(例えば、検査の種類、検査時間、患者の識別情報など)を送信することもできる。視覚スクリーニング装置104のネットワークインタフェース126は、視覚スクリーニング装置104の1つ以上のプロセッサ128に動作可能に接続されていてもよく、視覚スクリーニング装置104と視覚スクリーニングシステム110の1つ以上のコンポーネントとの間、ならびに、1つ以上の他の遠隔システムおよび/またはネットワークで接続された他の装置との、有線通信および/または無線通信を可能にすることができる。例えば、ネットワークインタフェース126には、1つ以上の短距離無線通信チャネルを介した通信を可能にするパーソナルエリアネットワークコンポーネントおよび/または広域ネットワークを介した通信を可能にする広域ネットワークコンポーネントを含むことができる。本明細書に記載したいずれの例においても、ネットワークインタフェース126は、ネットワーク108を介して、例えば、視覚スクリーニング装置104のプロセッサ128と、視覚スクリーニングシステム110との間の通信を、可能にすることができる。
図1に示すネットワーク108は、当該技術分野で公知のどのようなタイプの無線ネットワークまたは他の通信ネットワークであってもよい。ネットワーク108の例としては、インターネット、イントラネット、広域ネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、セルラーネットワーク接続、802.11a、b、g、nおよび/またはacなどのプロトコルを使用して行われる接続があげられる。
【0023】
視覚スクリーニングシステム110は、視覚スクリーニング装置104から、ネットワーク108を介して、視覚スクリーニング検査の実施時に収集されたデータを受信するように構成されていてもよい。いくつかの例では、データの処理に少なくとも部分的に基づいて、視覚スクリーニングシステム110は、患者106に関連する出力112を判断することができる。例えば、出力112には、患者106の眼に関連する疾患および/または異常を示すカラー画像データおよび/またはNIR画像データの分析結果に基づいて、患者106の眼の健康に関連する推奨および/または診断を含むことができる。視覚スクリーニングシステム110は、ネットワーク108を介して、視覚スクリーニング装置104のプロセッサ128に出力112を伝達することができる。上述したように、本明細書に記載したいずれの例においても、1つ以上のそのような推奨、診断または他の出力を、上記に代えてまたは上記に加えて、視覚スクリーニング装置104によって生成してもよい。
【0024】
本明細書で説明するように、プロセッサ128などのプロセッサは、単一の処理装置とすることも、多数の処理装置とすることも可能であり、プロセッサには、単一または複数の演算ユニットまたは複数の処理コアを含むことが可能である。プロセッサ128は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、ステートマシン、論理回路、および/または動作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして、実装することが可能なものである。例えば、プロセッサ128は、本明細書に記載のアルゴリズムおよびプロセスを実行するように具体的にプログラムまたは構成された、任意の適切なタイプの1つ以上のハードウェアプロセッサおよび/または論理回路であってもよい。
図1の概略的に示すように、視覚スクリーニング装置104には、プロセッサ128に動作可能に接続されたコンピューター読み取り可能な媒体130も含むことができる。プロセッサ128は、コンピューター読み取り可能な媒体130に格納されたコンピューター読み取り可能な命令をフェッチして実行するように構成することが可能なものであり、これにより、プロセッサ128をプログラムして本明細書に記載される機能を実行することが可能である。
【0025】
コンピューター読み取り可能な媒体130は、コンピューター読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなど、情報を格納するための任意のタイプの技術で実装された揮発性メモリおよび不揮発性メモリおよび/またはリムーバブル媒体および取り外しができない媒体を含むものであってもよい。そのようなコンピューター読み取り可能な媒体130は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、光学ストレージ、固体ストレージ、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、RAIDストレージシステム、ストレージアレイ、ネットワーク接続ストレージ、ストレージエリアネットワーク、クラウドストレージあるいは、所望の情報を格納するのに使用することが可能であって演算装置によるアクセスも可能な他の任意の媒体を含むが、これらに限定されるものではない。コンピューター読み取り可能な媒体130は、コンピューター読み取り可能な記憶媒体の一種であってもよい、および/または、言及される場合には非一過性のコンピューター読み取り可能な媒体がエネルギー、キャリア信号、電磁波および信号それ自体などの媒体を除外する範囲において、有形の非一過性の媒体であってもよい。
【0026】
コンピューター読み取り可能な媒体130は、プロセッサ128によって実行可能な任意の数の機能的コンポーネントを格納するのに使用可能なものである。複数の例において、これらの機能的コンポーネントは、プロセッサ128によって実行可能であって、実行されると、眼の疾患および異常の検出および診断に用いられる視覚スクリーニング検査のうちの1つ以上に関連する動作を実行するために1つ以上のプロセッサ128を具体的に構成する、命令またはプログラムを含む。例えば、コンピューター読み取り可能な媒体130には、
図1に示すように、患者スクリーニングコンポーネント132、画像取り込み制御コンポーネント134、データ分析および可視化コンポーネント136および/または出力生成コンポーネント138など、視覚スクリーニング検査を実施するための1つ以上の機能的コンポーネントを格納することができる。視覚スクリーニング装置104の機能的コンポーネントのうちの少なくともいくつかを、以下に詳細に説明する。
【0027】
複数の例において、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106に関連する患者データ140を格納および/またはこれにアクセスするように構成されていてもよい。例えば、患者データ140には、氏名、年齢、民族性などの人口統計学的情報を含むことができる。視覚スクリーニング装置104および/または視覚スクリーニングシステム110が視覚スクリーニング検査を開始する際、患者の人口統計学的情報、医療情報、嗜好などに関する患者データ140を患者106が提供してもよいし、オペレーター102が患者106または患者106の保護者にこれらの情報を要求してもよい。このような例では、オペレーター102は、スクリーニングを行っている間またはスクリーニングの開始前に、データを要求することができる。いくつかの例では、所定の年齢範囲(例えば、新生児から6ヶ月、6ヶ月から12ヶ月、1歳から5歳)などの患者106に関連する所定の区分がオペレーター102に提供されてもよいし、患者106に関連する適切な区分を選択するために、オペレーター102が患者データ140を要求してもよい。他の例では、オペレーター102に、患者データ140に関連する自由形式の入力が提供されてもよい。さらに別の例では、入力要素が患者106に直接提供されてもよい。
【0028】
上記に代えてまたは上記に加えて、視覚スクリーニング装置104および/または視覚スクリーニングシステム110は、視覚スクリーニング検査時に患者データ140を決定および/または検出することができる。例えば、視覚スクリーニング装置104は、患者106の画像および/または映像データを収集するように構成された1つ以上のデジタルカメラ、モーションセンサー、近接センサーまたは他の画像取り込み装置を含むことができ、視覚スクリーニング装置104の1つ以上のプロセッサは、これらのデータを分析して、患者106の年齢区分またはスクリーニング装置からの患者106の距離などの患者データ140を決定することができる。例えば、視覚スクリーニング装置104には、超音波距離計、赤外線距離計および/またはスクリーニング装置からの患者106の距離を決定することができる任意の他の近接センサーなどのレンジファインダーが備えられていてもよい。
【0029】
上記に代えてまたは上記に加えて、視覚スクリーニング装置104は、患者データ140を決定するための分析用に、ネットワーク108を介して、画像/映像データを視覚スクリーニングシステム110に送信するように構成されていてもよい。さらに、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106および/または追加の患者に関連する、患者データ140を受信し、これにアクセスするおよび/またはこれを保存するように構成されていてもよい。例えば、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106および/または他の患者に関連する以前の患者情報を格納することができる。例えば、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106の眼のカラー画像、NIR画像および/または映像などの以前のスクリーニングで得られたデータを含む、患者106の以前のスクリーニング履歴を格納することができる。患者スクリーニングコンポーネント132は、患者データ140を受信することができるおよび/またはネットワーク108を介してそのような情報にアクセスすることができる。例えば、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106および/または他の患者に関連するデータを格納している、スクリーニングデータベース144などの外部データベースにアクセスすることができる。スクリーニングデータベース14は、患者データ140を患者IDと紐づけて格納するように構成されていてもよい。オペレーター102および/または患者106が患者IDを入力すると、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106の患者IDと紐づけて格納されている患者データ140にアクセスするか、それを受信することができる。
【0030】
複数の例において、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者106に対して実施する視覚スクリーニング検査を、患者データ140に少なくとも部分的に基づいて判断するように構成されていてもよい。例えば、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者データ140を利用して、患者106が属する検査区分(例えば、年齢、病歴などに基づく検査区分)を決定することができる。患者スクリーニングコンポーネント132は、検査区分に基づいて、実施する視覚スクリーニング検査を判断することができる。例えば、患者が新生児であることが患者データ140によって示された場合、選択された視覚スクリーニング検査には、先天性白内障、網膜芽細胞腫、角膜の混濁、斜視などの眼の先天性状態のスクリーニングが含まれていてもよい。また、眼の異常は、マルファン症候群やテイ・サックス病などの全身性の遺伝性疾患と関連する場合がある。例えば、眼に特徴的な赤い点がある場合のスクリーニング検査は、テイ・サックス病を示す場合がある。別例として、患者が50歳を超えていることが患者データ140によって示された場合、患者スクリーニングコンポーネント132は、白内障、黄斑変性症および他の加齢に伴う眼疾患の発症に対するスクリーニングを視覚スクリーニング検査に含めると決定することができる。
【0031】
また、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者の病歴に基づいて視覚スクリーニング検査を判断することもできる。例えば、スクリーニングデータベース144は、患者データ140に、検査結果、眼の画像、測定値、推奨内容などを含む、患者106の以前の視覚スクリーニング検査に関連する病歴を、格納することができる。患者スクリーニングコンポーネント132は、スクリーニングデータベース144から病歴を含む患者データ140にアクセスし、以前に検出された視覚の健康問題の状態と変化とを監視するために実施する視覚スクリーニング検査を判断することができる。例えば、白内障や黄斑変性症の発症などの進行性の眼疾患が以前のスクリーニングで検出された場合、疾患の発症を追跡するためにさらにスクリーニングを実施する場合がある。別例として、患者106が眼の腫瘍を除去するための手術を受けた場合、視覚スクリーニング検査には、眼の別の腫瘍または傷跡のスクリーニングを含むことができる。患者スクリーニングコンポーネント132は、視覚スクリーニングセッション時に患者106に対して実施されることになる視覚スクリーニング検査のリストを決定し、視覚スクリーニングセッション時にすでに実施された視覚スクリーニング検査ならびに、実施対象の視覚スクリーニング検査のリスト上の残りの視覚スクリーニング検査をトラッキングすることができる。
【0032】
いくつかの例では、コンピューター読み取り可能な媒体130には、さらに、画像取り込み制御コンポーネント134も格納することができる。画像取り込み制御コンポーネント134は、特定の視覚スクリーニング検査各々に必要な特定の照明条件下で眼の画像が取り込まれるように、視覚スクリーニング装置104の放射線源114、放射線センサー116、白色光源118およびカメラ120を操作するように構成されていてもよい。上述したように、放射線源114には、患者106の眼の屈折異常および/または凝視角を測定するためのグレースケール画像の取り込み時に眼に光を当てるためのNIR LEDが含まれていてもよく、白色光源118には、カメラ120による眼のカラー画像の取り込み時に眼に光を当てるための白色光LEDが含まれていてもよい。複数の例において、画像取り込み制御コンポーネント134は、白色光源118のLEDならびにNIR LEDのLEDなどの個々の放射線源を動作させて制御するためのコマンドを生成することができる。LEDの制御パラメータには、強度、持続時間、パターンおよびサイクル時間が含まれていてもよい。例えば、このコマンドによって、放射線源114および白色光源118の個々のLEDを選択的に作動させたり作動させなかったりして、患者スクリーニングコンポーネント132によって示された視覚スクリーニング検査で必要とされるような異なる角度からの照明を生成することができる。画像取り込み制御コンポーネント134は、視覚スクリーニング検査の実施時に、放射線センサー116による眼の画像の取り込みと同期して、患者106の眼の屈折異常および/または凝視角の測定に用いられる放射線源114のNIR LEDを作動させることができる。同様に、画像取り込み制御コンポーネント134は、カメラ120による眼のカラー画像の取り込みと同期して、白色光源118のLEDを作動させることができる。
【0033】
放射線源114または白色光源118のLEDなどの個々の放射線源は、コンピューター読み取り可能な媒体130に格納された制御パラメータに従って、画像取り込み制御コンポーネント134によって制御されてもよい。例えば、制御パラメータには、放射線源114のNIR LEDおよび/または白色光源118の白色光を生成するLEDの強度、持続時間、パターン、サイクル時間などが含まれていてもよい。例えば、画像取り込み制御コンポーネント134は、制御パラメータを使用して、放射線源114、118の個々のLEDが放射線を放射する持続時間(例えば、50ミリ秒、100ミリ秒、200ミリ秒など)を決定することができる。また、画像取り込み制御134は、眼のフォトリフラクションおよび/または凝視角に基づく眼の屈折異常の判断用に、制御パラメータを利用して、放射線源114のNIR LEDの強度および表示パターンを変更することができる。強度に関して、画像取り込み制御コンポーネント134は、パラメータを制御し、カメラ120を使用して眼のカラー画像を取り込むのに十分な明るさの強度で白色光源118のLEDに光を放射させる一方で、瞳孔の収縮または調節を回避または低減するために明るさを制限することもできる。また、画像取り込み制御コンポーネント134は、照明の強度の増加に対する患者の眼の瞳孔の応答を記録するために、カメラ120を作動させて眼の画像および/または映像を取り込みながら、一定の割合で強度を徐々に増加させるように白色光源118の強度を制御することもできる。
【0034】
さらに、画像取り込み制御コンポーネント134は、白色光源118のLEDが作動する前に、NIR LEDが作動してNIR放射線下の眼の画像が取り込まれるように、放射線源114、白色光源118からの放射線の放射を命令することができる。いくつかの例では、この命令によって、眼に当たる白色光に応答して眼の瞳孔が収縮するのを防ぐことができる、および/または、患者106の瞳孔を拡張する必要なく眼の内部構造の画像を取り込むことができる。いくつかの例では、画像取り込み制御コンポーネント134は、さらに、放射線源114、118を制御して、円形パターン、交互光パターン、点滅パターンなどのパターン、円または長方形などの形状のパターンなどを生成して患者106の注意を引きつけることができる、および/または、放射線源114、118のカラーLEDを制御して、視覚スクリーニング時に患者106に対してカラードットパターンなどの色刺激を表示することができる。
【0035】
画像取り込み制御コンポーネント134は、放射線センサー116およびカメラ120を制御して、視覚スクリーニング検査の実施時に患者106の眼の画像および/または映像を取り込むこともできる。例えば、放射線センサー116は、放射線源114のうちの1つ以上が動作している間に、患者106の眼から反射する放射線を示すデータを取り込むことができる。このデータには、眼のグレースケール画像データおよび/または映像データが含まれていてもよい。画像取り込み制御コンポーネント134は、カラー画像および/または映像データの取り込み時に眼に白色光放射線が照射されるように、眼のカラー画像および/または映像データを取り込むためのカメラ120と、白色光源118の作動とを、同期させることができる。いくつかの例では、特定の眼の光軸に対する照明の相対的な角度が左眼と右眼で同一になるように、左眼と右眼の画像を異なる照明条件下で(例えば、異なる個々の光源から)取り込んでもよい。他の例では、両眼の画像を、同一の照明下で同時に取り込んでもよい。本明細書で説明するように、視覚スクリーニング装置104の画像取り込み制御コンポーネント134は、NIR放射線下で照明がなされた眼のグレースケール画像と、白色光下で照明がなされた眼のカラー画像とを生成してもよい。グレースケール画像とカラー画像の両方を取り込むことで、より広範囲にわたる眼の疾患や異常の検出を可能にすることができる。
【0036】
いくつかの例では、コンピューター読み取り可能な媒体130に、データ分析および可視化コンポーネント136が格納されていてもよい。データ分析および可視化コンポーネント136は、1つ以上の視覚スクリーニング検査時に視覚スクリーニング装置104のコンポーネント(例えば、放射線センサー116およびカメラ120)によって収集、検出、および/または取り込まれた画像および/または映像データを分析するように構成されていてもよい。例えば、データ分析および可視化コンポーネント136は、データを分析して、画像内の眼の瞳孔の位置を決定し、瞳孔に対応する画像の一部(例えば、瞳孔画像)を識別することができる。データ分析および可視化コンポーネント136は、瞳孔画像を分析して、瞳孔画像における瞳孔の見た目の特徴を決定することができる。例えば、カメラ120によって取り込まれたカラー画像の場合、特徴には、平均色、色の分散、均一性の尺度、封入体の存在などに対応する値が含まれていてもよい。放射線センサー116によって取り込まれた赤外線画像の場合、特徴には、均一性の尺度および封入体の存在に加えて、色の代わりに、平均グレースケール値およびグレースケール値の分散が含まれていてもよい。データ分析および可視化コンポーネント136は、さらに、左瞳孔画像と右瞳孔画像とを比較して、左の瞳孔と右の瞳孔との間の見た目の差異を判断してもよい。例えば、この差異は、左瞳孔画像と右瞳孔画像との間における、平均カラー値、平均グレースケール値、または均一性の差、に対応していてもよい。正常な眼では、一方の瞳孔画像に関連する特性(例えば、平均色値、グレースケール値、均一性の尺度など)の期待値が、他方の瞳孔画像における特性の値とほぼ同一になる場合もある。データ分析および可視化コンポーネント132は、瞳孔画像を、標準瞳孔画像および/または以前の視覚スクリーニング時に取り込まれた患者106の瞳孔画像と比較して、平均色値またはグレースケール値の差、均一性の尺度の差異、検出された封入体の差異などの見た目の差異を判断してもよい。このような例では、瞳孔画像の特性の期待値が、標準瞳孔画像または以前に取り込まれた患者106の瞳孔画像における特性の値に対応していてもよい。上記の例のいずれにおいても、すべての取り込まれた画像あるいは、取り込まれたグレースケール画像および/またはカラー画像のサブセットを、差異を判断するのに使用することができる。いくつかの例では、グレースケール画像を使用しなくてもよく、カラー画像に基づいて差異を判断してもよい。グレースケール画像の画素も色値を有すると考えられる場合があり、この場合の色値は、3つのカラーチャネル(例えば、RGB)の各々に同一のグレースケール値を使用して決定されることに注意されたい。例えば、グレースケール値128の画素は、RGB色空間において(128、128、128)の色値を持つと決定することができる。データ分析および可視化コンポーネント136が、疾患状態の検出を改善し得る追加の画像処理工程を、グレースケール画像および/またはカラー画像に適用してもよい。例えば、画像を鮮明にしてもよく、特定の色を強調するか減衰させてもよく、画像の色または明るさのバランスをとったりしてもよいなどである。差異を判断するための上述したデータ分析に関するさらなる詳細については、
図4を参照して後述する。
【0037】
さらに、データ分析および可視化コンポーネント136は、視覚スクリーニングに関する標準データを受信、そのようなデータにアクセスおよび/またはそのようなデータを分析するように構成されていてもよい。例えば、データ分析および可視化コンポーネント136は、検査データ、測定値、および/または、測定値が含まれるべき様々な範囲または閾値を示す値を、格納している1つ以上の追加のデータベース(例えば、スクリーニングデータベース144、第三者データベースなど)に、アクセスまたは当該データベースからデータを受信するように構成されていてもよい。そのような閾値または範囲は、視覚の健康状態が正常な患者に関し標準的な検査から知るか判断することができる。データ分析コンポーネントおよび可視化コンポーネント136は、上述したような視覚スクリーニング検査時に決定された平均値および差異との比較用に、標準データを利用することができる。例えば、標準データは、左右の瞳孔画像の色値間の差異に対する閾値または範囲を示すことができ、閾値より大きいか範囲外の差異は、患者の眼における異常に相当する。上記に代えてまたは上記に加えて、データ分析および可視化コンポーネント136は、患者106の以前の視覚スクリーニングにアクセスし、値および差異を以前のスクリーニングで得られた対応するデータと比較することができる。例えば、瞳孔の平均色値を、以前のスクリーニングで得られた平均色値と比較して、差異を判断することができる。上述したように、この差異を標準的な閾値や範囲と比較することで、異常の有無を判断することができる。疾患や異常の種類ごとに、標準的なデータに別々の閾値および/または範囲が示される場合がある。また、視覚スクリーニング検査に関連する閾値および/または範囲は、患者106の検査区分(例えば、患者106の年齢層または病歴)に基づくものであってもよく、検査区分が異なると閾値および/または範囲も異なる場合がある。データ分析および可視化コンポーネント136は、データを経時的に比較して視覚の健康状態と視覚の健康の変化とを監視するために、患者データ140の一部として、視覚スクリーニング検査時に取り込みまたは生成された画像および/または映像、視覚スクリーニング検査に関連する測定値、検査結果、および他のデータを、データベース(例えば、スクリーニングデータベース144)に格納してもよい。いくつかの例では、格納された画像には、患者106の顔または部分的な顔(例えば、両目と鼻の一部)の画像が含まれていてもよい。
【0038】
上述した閾値および/または範囲との比較に基づいて、データ分析および可視化コンポーネント136は、患者106のそれぞれの眼について、正常/異常または合格/参照の判定を生成することができる。例えば、測定されたすべての値と差異が、標準データの対応する閾値以下であるか、標準データの対応する範囲におさまる場合、データ分析および可視化コンポーネント136によって「正常」または「合格」の判定がなされてもよく、そうでなければ、「異常」または「紹介」の判定をしてさらなるスクリーニングに対する紹介を示すようにしてもよい。上記に代えてまたは上記に加えて、データ分析および可視化コンポーネント136は、視覚スクリーニングセッション時にスクリーニングされた疾患および/または異常の各々について、正常/異常の判定を生成してもよい。
【0039】
複数の例において、データ分析および可視化コンポーネント136は、1つ以上の機械学習技術を利用して、特定の疾患および/または異常の種類の診断を生成することができる。例えば、眼の正常な画像、ならびに、様々な疾患状態および異常を示すものとして分類された眼の画像、を用いて、機械学習(ML)モデルを訓練してもよい。訓練されたMLモデルは、その後、患者106の視覚スクリーニング時に取り込まれた眼の画像が、入力として与えられると、疾患または異常の診断を示す出力を生成することができる。そのような例では、データ分析および可視化コンポーネント136は、瞳孔画像間の差異を計算したり、閾値および/または範囲との比較を適用したりすることなく、訓練されたMLモデルに対する入力として眼の画像を提供することによって、出力を直接生成することができる。いくつかの例では、複数の訓練されたMLモデルを使用してもよく、各MLモデルは、特定の疾患または異常を検出するように訓練されている。そのような例では、各MLモデルは、入力画像が、MLモデルが検出するように訓練された疾患または異常を呈しているか否か、を示す二値の有無表示を出力する。データ分析および可視化コンポーネント136は、複数の疾患および異常のうちの1つ以上を検出するための複数の訓練されたMLモデルの各MLモデルへの入力として、眼の画像を提供してもよい。複数の例において、MLモデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)をはじめとするニューラルネットワークであってもよい。他の例では、MLモデルは、回帰アルゴリズム、決定木アルゴリズム、ベイズ分類アルゴリズム、クラスタリングアルゴリズム、サポートベクターマシン(SVM)なども含むことが可能である。
【0040】
データ分析および可視化コンポーネント136は、放射線センサー116および/またはカメラ120によって取り込まれた画像および/または映像データを用いて眼の可視化像を生成することもできる。例えば、第1の可視化像には、NIR照明下で放射線センサー116によって取り込まれたグレースケール画像のグレースケール情報とカラー画像の色情報の両方が組み込まれた眼の合成画像が含まれていてもよい。第1の可視化像の生成には、瞳孔および/または水晶体などの眼の構造の検出および識別と、これに続いて、グレースケール画像とカラー画像で瞳孔が同じ位置にくるように、これらのタイプの画像を位置合わせすることが含まれていてもよい。その上で、グレースケール画像のグレースケール画素値を合成画像の一部に使用し、カラー画像のカラー画素値を合成画像の他の部分に使用して、合成画像を生成してもよい。グレースケール画素値を用いた合成画像の一部と、カラー画素値を用いた部分は、眼の異なる構造(例えば、中心窩、網膜、角膜など)を示す領域に対応していてもよい。合成画像を用いると、眼の疾患および/または異常の検出と評価を改善すべく、眼の構造を一層明確に描き出すことができる。
【0041】
もうひとつの例では、第2の可視化像に、一連の静止画あるいは、一連の静止画を含むアニメーション映像が含まれていてもよい。いくつかの例では、光軸に対して約0°の角度を含む、光軸に対して異なる軸に沿った異なる角度で進めて、放射線源114または白色光源118によって眼に光を当てながら、放射線センサー116またはカメラ120によって一連の画像を取り込んでもよい。例えば、いくつかの例では、放射線源114または白色光源118によって放射される放射線は、光軸に対して実質的に平行および/または実質的に光軸に沿って放射されてもよい。そのような例では、放射された放射線は、光軸と同軸または同軸に近い場合がある。いくつかの例では、可視化像には、異常であるとしてフラグが立てられた眼の画像の領域を示す図および/または色識別が含まれていてもよい。第1の可視化像および第2の可視化像に関するさらに詳細な内容を含む可視化像の別の例については、
図5Aおよび
図5Bを参照して後述する。本明細書で説明するように、視覚スクリーニング装置104のデータ分析および可視化コンポーネント136は、視覚スクリーニング検査の実施時に取り込まれた眼のグレースケール画像およびカラー画像を処理し、患者の眼に関連する疾患および/または異常を判断することができる。また、データ分析および可視化コンポーネント136は、グレースケール画像およびカラー画像に基づいて、臨床医または視覚スクリーニング装置104のオペレーターが、眼の疾患および/または異常を特定する一助となる眼の可視化像を生成することができる。
【0042】
コンピューター読み取り可能な媒体130には、さらに、出力生成コンポーネント138を格納することができる。出力生成コンポーネント138は、データ分析および可視化コンポーネント136から得られるデータを受信し、これにアクセスするおよび/またはこれを分析して、出力112を生成するように構成されていてもよい。例えば、出力生成コンポーネント138は、データ分析および可視化コンポーネント136の正常/異常の判断を利用して、出力112における推奨を生成してもよい。推奨により、患者106のスクリーニング結果が正常な眼の健康を示しているか、「異常」と判断された1つ以上のスクリーニング検査に基づいてさらなるスクリーニングが必要であるか、を示すことができる。また、出力生成コンポーネント138は、データ分析および可視化コンポーネント136によって生成されたすべての可視化像または可視化像のサブセットを、眼の状態の診断を助けるために、出力112に組み込むことができる。放射線センサー116またはカメラ120によって取り込まれた画像および/または映像の一部も、出力112に含まれていてもよい。さらに、異常だと判断された場合、出力生成コンポーネント138は、データ分析および可視化コンポーネント136による分析結果に基づいて、適した診断を出力112に組み込むことができる。出力112は、装置のインタフェースを介して(例えば、視覚スクリーニング装置104の表示画面122上で)装置のオペレーターに提示されてもよい。複数の例において、オペレーター表示画面は、患者に見えないものであってもよく、例えば、オペレーター表示画面が患者と反対方向に面していてもよい。出力生成コンポーネント138は、臨床医による評価用に、あるいは、患者106に対する以降の視覚スクリーニング時にアクセスできるように、推奨、診断、測定値、取り込まれた画像/映像、および/または、生成された可視化像を含み得る出力112を、スクリーニングデータベース144などのデータベースに格納してもよい。スクリーニングデータベース144は、権限のある医療専門家にアクセスを提供し、患者106のスクリーニングに関連するレポートを印刷したり、データをさらに評価したりすることが可能なようにすることができる。
【0043】
図1には、例示的なプロセッサ128と、患者スクリーニングコンポーネント132、画像取り込み制御コンポーネント134、データ分析および可視化コンポーネント136、出力生成コンポーネント138および/または他のコンポーネントおよび/または視覚スクリーニング装置104のコンポーネントとしての他のアイテムを格納しているコンピューター読み取り可能な媒体130とを示したが、本明細書に記載したいずれの例においても、視覚スクリーニングシステム110には、同様のコンポーネントおよび/または同一のコンポーネントが含まれていてもよい。そのような例では、視覚スクリーニングシステム110には、視覚スクリーニング装置104のコンピューター読み取り可能なメモリ130のコンポーネントのうちのいくつかまたはすべての機能を実行するように構成されたプロセッサ146およびコンピューター読み取り可能なメモリ148が含まれていてもよい。例えば、コンピューター読み取り可能なメモリ130のコンポーネントのうちの1つ以上が、コンピューター読み取り可能なメモリ148の分析コンポーネント150に含まれていてもよく、プロセッサ146によって実行可能であってもよい。そのような例では、視覚スクリーニングシステム110は、ネットワークインタフェース152を使用し、かつ、ネットワーク108を介して、視覚スクリーニング装置104と通信して、視覚スクリーニング装置104からデータを受信し、結果(例えば、出力112)を視覚スクリーニング装置104に返送してもよい。視覚スクリーニングシステム110は、視覚スクリーニング装置104に近接したコンピューター上で実装されてもよく、あるいは、遠隔地にあってもよい。例えば、視覚スクリーニングシステム110は、遠隔地のクラウドサーバ上でクラウドサービスとして実装されてもよい。
【0044】
ネットワークインタフェース152は、システム100に示されるコンポーネントおよび/または装置の間および/または1つ以上の他のリモートシステム、ならびに他のネットワーク接続デバイスとの間の有線通信および/または無線通信を可能にすることができる。例えば、ネットワークインタフェース152のうちの少なくともいくつかに、パーソナルエリアネットワークコンポーネントを含むようにして、1つ以上の短距離無線通信チャネルを介した通信を可能にすることができる。さらに、ネットワークインタフェース152のうちの少なくともいくつかに、広域ネットワークコンポーネントを含むようにして、広域ネットワーク上での通信を可能にすることができる。そのようなネットワークインタフェース152は、例えば、ネットワーク108を介して、視覚スクリーニングシステム110と視覚スクリーニング装置104および/またはシステム100の他のコンポーネントとの間の通信を可能にすることができる。例えば、ネットワークインタフェース152は、無線接続を使用してスクリーニングデータを受信し、これにアクセスするおよび/またはこれを送信するために、外部データベース(例えば、スクリーニングデータベース144)に接続するように構成されていてもよい。無線接続は、セルラーネットワーク接続ならびに、802.11a、b、gおよび/またはacなどのプロトコルを使用して行われる接続を含む。他の例では、無線接続は、Bluetooth、Wi-Fi Direct、無線周波数識別(RFID)、赤外線信号および/またはZigbeeなどの1つ以上の無線プロトコルを使用して、視覚スクリーニング装置104と外部システムとの間で直接達成することが可能である。他の構成も可能である。外部データベースへにデータを通信することで、患者の視覚検査データのレポートを印刷したり、さらに評価したりすることが可能になる。例えば、収集されたデータと対応する検査結果とを、無線で送信して、権限のある医療専門家がアクセス可能な遠隔データベースに格納してもよい。
【0045】
図1には、システム100を単一の視覚スクリーニングシステム110を含むものとして示したが、追加の例において、視覚スクリーニングシステム110と実質的に類似し、独立しておよび/または組み合わせで動作するように構成され、かつ、ネットワーク108を介して通信するように構成された、ローカル視覚スクリーニングシステムまたはリモート視覚スクリーニングシステムが、システム100にいくつ含まれていてもよいことを理解されたい。
【0046】
本明細書で説明するように、
図1は、患者に視覚スクリーニング検査を実施するためのコンポーネントを含む例示的な視覚スクリーニング装置104を示す。いくつかの例では、1つ以上のコンポーネントを、ネットワーク108を介して視覚スクリーニング装置104と通信するリモート視覚スクリーニングシステム110に実装することができる。視覚スクリーニング装置104およびそのコンポーネントについて、残りの図面を参照して詳細に説明する。
【0047】
図2に、いくつかの実装例による視覚スクリーニング装置200の一実施形態を示す。例示的な視覚スクリーニング装置200には、システム100の視覚スクリーニング装置104に含まれるものと同一のコンポーネントを1つ以上含むことができる。いくつかの追加の例では、視覚スクリーニング装置200には、視覚スクリーニング装置104と同様の機能を提供する異なるコンポーネントを含むことが可能である。
【0048】
視覚スクリーニング装置200は、タブレット状の装置であってもよく、筐体202内に、1つ以上のプロセッサ、コンピューター読み取り可能な媒体、それに付随するネットワークインタフェース(図示せず)を含むものであってもよい。筐体202には、視覚スクリーニング装置200の使用時に患者(患者106など)に面するように構成された前面204と、前面204の反対側にあり、視覚スクリーニング装置200の使用時に視覚スクリーニング装置200のオペレーター(オペレーター102など)に面するように構成された背面206とが含まれていてもよい。前面204には、表示画面124と実質的に類似していても同一であってもよい表示画面208、放射線源114と実質的に類似していても同一であってもよい放射線源210、放射線センサー116と実質的に類似していても同一であってもよい放射線センサー212、白色光源118と実質的に類似していても同一であってもよい白色光源214、および/またはカメラ120と実質的に類似していても同一であってもよいカメラ216が含まれていてもよい。
【0049】
放射線源210は、赤外線帯域および/または近赤外(NIR)帯域の放射線を放射するように構成されていてもよい。例えば、放射線源210には、患者の1つ以上の眼に関連する屈折異常を判断するように構成されたNIR LEDを配置したものが含まれていてもよい。放射線源210のNIR LEDは、放射線センサー212が実質的に視覚スクリーニング装置200の中心軸211に沿って配置された状態で、この中心軸211のまわりに放射状に配置されていてもよい。中心軸211を眼の光軸に合わせることによって、(例えば、フォトリフラクション技術によって屈折異常を測定するために)視覚スクリーニング検査時に、NIR LEDを使用して患者の眼の偏心照明を提供することができる。NIR LEDの配置については、
図3Bを参照してさらに詳細に説明する。
【0050】
視覚スクリーニング装置200には、白色光源214と、患者の眼のカラー画像および/または映像を取り込むように構成された可視光カメラ216も含まれていてもよい。いくつかの例では、白色光源214およびカメラ216は、画像取り込みモジュール218に含まれていてもよい。画像取り込みモジュール218のカメラ216には、視覚スクリーニング設定において眼を撮像するのに適した視野の狭い高解像度レンズが含まれていてもよい。そのようなレンズには、高さを抑えつつ望遠ズームを可能にする折りたたみプリズムスリムレンズ技術を取り入れることができる。折りたたみプリズムレンズで使用される光学系は、光を、光学プリズムの内部であちこちに反射させつつ曲げて集束させることで、レンズの厚さを減らし、実質的に高さの低いフォームファクタを可能にしている。
図1を参照して上述したように、いくつかの視覚スクリーニング検査では、疾患および/または異常の有無を判断するために、患者の眼の瞳孔および/または水晶体のカラー画像が必要な場合がある。いくつかの例では、カメラ216には、患者の眼のクローズアップ画像の取り込みを可能にする高解像度ズーム機能が備えられていてもよく、そこから眼の瞳孔および/または水晶体を局在化することができる。他の例では、カメラ216には、合焦画像とするために眼の配置が調整された短焦点レンズを使用してもよい。より一般的にはフラッシュと呼ばれる白色光源214には、強度が調整可能な1つ以上の可視光LEDが含まれていてもよい。白色光源214の強度レベルを、視覚スクリーニング装置200の1つ以上のプロセッサによって制御してもよい。視覚スクリーニング装置200の1つ以上のプロセッサは、白色光源214を作動させるタイミングを、カメラ216による画像の取り込みに同期させることもできる。
【0051】
視覚スクリーニング装置200には、視覚スクリーニング装置200の動作時に、オペレーター(例えば、オペレーター102)に実質的に面する筐体202の背面206上に配置された表示画面220が含まれていてもよい。表示画面220は、オペレーターからの入力を受けるためにタッチセンサー式であってもよく、視覚スクリーニング検査時に、オペレーターに対して情報を表示するおよび/またはオペレーターから入力を受けるように構成されたグラフィカルユーザインタフェースを表示してもよい。例えば、オペレーターが表示画面220を使用して、患者または実施されている視覚スクリーニング検査に関する情報を入力することができる。さらに、表示画面220は、実施されている視覚スクリーニング検査に関する情報(例えば、パラメータ設定、スクリーニングの進行状況、視覚スクリーニング装置200からデータを送信するためのオプション、1つ以上の測定値および/または視覚スクリーニング時に生成された画像または可視化像など)をオペレーターに表示するように構成されていてもよい。表示画面208、220は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)またはアクティブマトリックス有機発光ディスプレイ(AMOLED)を含むものであってもよい。
【0052】
いくつかの例では、視覚スクリーニング装置200には、視覚スクリーニング検査時に視覚スクリーニング装置200を安定して保持するためのハンドグリップ222aおよび222bが含まれていてもよい。本明細書で説明するように、
図2は、1つ以上の視覚スクリーニング検査を患者に対して実施するためのコンポーネントを含む例示的な視覚スクリーニング装置200を示す。視覚スクリーニング装置200は、患者の眼の複数の疾患、異常、および状態のスクリーニングを含む複数の異なる視覚スクリーニング検査を含むことができる視覚スクリーニング全体を実行することを意図している。図示のように、視覚スクリーニング装置200は、一例としてオペレーターの右手および左手用のハンドグリップ222aおよび222bをそれぞれ使用することによって、手で持つことができるほど軽量であるという追加の特徴を有し、新生児のように若い患者における使いやすさと携帯性を可能にする。視覚スクリーニング装置200は、NIR撮像に必要な放射線源および画像取り込みセンサーならびに、1つ以上の視覚スクリーニング検査に必要な白色光照明下のカラー撮像を、コンパクトかつ実質的に平面的な配置で提供し、視覚スクリーニング装置200の軽量かつ携帯可能なフォームファクタを可能にする。
【0053】
図3Aに、いくつかの実施形態による視覚スクリーニング装置300の別の実施形態を示す。例示的な視覚スクリーニング装置300には、視覚スクリーニング装置104、200に含まれる同一のコンポーネントのうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの追加の例では、視覚スクリーニング装置300には、視覚スクリーニング装置104、200と同様の機能を提供する異なるコンポーネントを含むことが可能である。
【0054】
図示の例では、視覚スクリーニング装置300は、視覚スクリーニング装置300の第1の端306に面している、透明な有機発光ディスプレイ(OLED)などの透明な表示画面304を備えた筐体302を含み、第1の端306は患者(例えば、患者106)に面している。表示画面304は、放射線源114と実質的に類似していても同一であってもよい放射線源として作用するLEDのアレイ308、放射線センサー116と実質的に類似していても同一であってもよい放射線センサー310、白色光源118およびカメラ120と実質的に類似していても同一であってもよい白色光源312aおよびデジタルカメラ312bを含む画像取り込みモジュール312などの、視覚スクリーニング装置300の光学コンポーネントを覆っていてもよい。白色光源312aはデジタルカメラ312bに近接して示されているが、いくつかの例では、白色光源312aおよび/または追加の白色光源は、筐体302上の他の場所に配置されてもよい(例えば、白色光源312aおよび/または追加の白色光源は、筐体302の1つ以上の角315に、筐体302の1つ以上の側面または縁に沿うか近接しておよび/または任意の他の場所に配置されていてもよい)。表示画面304は透明であるため、放射線源308からの放射線および/または画像取り込みモジュール312の白色光源312aからの白色光は、患者の眼に達することができ、患者の眼からの反射放射線は、減衰や方向転換することなく表示画面304を通過することによって画像取り込みモジュール312の放射線センサー310および/またはカメラ312bによって受信されることができる。アレイ308は、図示のように、放射線センサー310の周囲にパターンで分散された個々のNIR LED(例えば、NIR LED308a、308b、308c、308d)で構成されていてもよい。同じく図示したように、NIR LED 308a~308dは、
図3Bを参照してさらに詳細に説明する軸A-A’、B-B’、C-C’など、異なる軸に沿って配置されていてもよい。放射線センサー310は、視覚スクリーニング装置200の中心軸211と同様、視覚スクリーニング装置300の中心軸314に実質的に沿って配置されている。ここでは、アレイ308の個々のNIR LEDを、中心に位置する放射線センサー310から外側に向かって放射状に図示したが、個々のNIR LEDがこれよりも多いか少ないアレイ308のNIR LEDの他の配置パターンも想定される。
図2を参照して説明したように、本明細書に記載されたアレイ308のNIR LEDの配置にすることで、フォトリフラクション技術を使用して屈折異常を測定するのに必要な偏心照明を提供することができる。
【0055】
図3Bは、NIR LEDのアレイ308の拡大図を示す。複数の例において、アレイ308には、例示したものよりも多いか少ない個々のLEDを含むことができる。
図3Bに示すアレイ308の個々のNIR LEDの例示的な配置は、
図3Aの軸A-A’に対応していてもよいアレイ308の第1の軸M1に沿ってアレイ308にわたって概ね同軸に延びるNIR LEDの列316を含む。また、アレイ308には、図示のように、列316に対してθの角度で、
図3Aの軸B-B’に対応していてもよい第2の軸M2に沿った列318と、列318に対してαの角度で、軸C-C’に対応していてもよい第3の軸M3に沿った列320と、が含まれていてもよい。角度θおよびαは、任意の鋭角(例えば、60°)であってもよい。複数の例において、軸M1は、アレイ308の第1の経線、軸M2は、アレイ308の第2の経線、軸M3は、アレイ308の第3の経線とも呼ぶことができ、3本の軸M1、M2、M3を、視覚スクリーニング装置300の中心軸314で交差させることができる。いくつかの例では、追加のLEDが、アレイ308から間隔をおいて配置された1本以上の軸M1、M2、M3に沿って配置されてもよい。
【0056】
図3Cを参照してさらに詳細に説明するように、(例えば、画像取り込み制御コンポーネント134によって)アレイ308の個々のLEDを順番に作動させ、異なる角度または偏心で照明光を発生させるようにしてもよい。例えば、LED322が最初に作動され、次にLED322に隣接したLED324、そして、LED326まで、軸M2に沿って進行する順序で作動させることができる。作動シーケンスは、第1の軸M1、それに続く第2の軸M2、第3の軸M3に沿って、個々のLEDを移動してもよい。また、LED322および324は、ディフューザー(図示せず)を用いて組み合わせた放射線の光源位置をシミュレートするために、実質的に同時に作動されることもある。そのような例では、組み合わせた放射線の所望のシミュレートされた光源位置を達成し、アレイ308を機械的に動かす必要なく追加の角度または偏心で照明光を発生させることができるようにするために、(例えば、画像取り込み制御コンポーネント134によって)LED322およびLED324に印加される電流の量をさらに制御してもよい。
【0057】
図3Cは、本開示の複数の例にしたがって、オペレーター102によって患者106に視覚スクリーニング検査を実施するために視覚スクリーニング装置300を使用する例示的な視覚スクリーニングシステム301の概略図である。複数の例において、視覚スクリーニング装置300の中心軸314は、図示のように、患者の眼の光軸328と実質的に整列配置されているか同一線上にあってもよい。
図1を参照して上述したように、視覚スクリーニング装置の画像取り込み制御コンポーネント134は、アレイ308のLED308a~308dまたは322、324などの個々の放射線源を制御して放射線を放射させることができる。個々のLEDによって放射される放射線は、光軸328に対して異なる角度で患者106の眼に当たることがある。例えば、LED308bによって放射される放射線ビーム330Aは、光軸328に対して角度332Aをなしていてもよく、LED308cによって放射される放射線ビーム330Bは、角度332Aとは異なる角度332Bをなしていてもよい。したがって、アレイ308のLEDの作動を、個々にあるいはまとめて利用して、異なる角度で患者106の眼に当たる放射線を発生させることができる。いくつかの例では、角度332A、332Bは、例えば光軸328に対して、ほぼ0度であってもよい(例えば、照明が中心軸314と同軸またはほぼ同軸であってもよい)。照明の各角度について、光軸328に沿って進む患者106の眼から反射した放射線を、光軸328と整列配置された中心軸314に沿って位置する放射線センサー310によって取り込んで、光軸328に対する各角度から照明下で眼の画像を生成することができる。本明細書ではNIR LEDのアレイ308を参照して説明したが、光軸328に対して異なる角度からの照明は、
図3Dを参照して以下でさらに説明するように、上述したアレイ308のNIR LEDと同様に、二次元アレイまたは線形パターンで配列された個々の白色光LEDのアレイまたは組を使用して、白色光源118、214、312aによって生成することもできる。
【0058】
視覚スクリーニング装置300には、前側306とは反対側の側面336上の視覚スクリーニング装置300の筐体302上に配置された追加の表示画面334が含まれていてもよい。
図1を参照して説明した表示画面122と同様に、表示画面334がオペレーター102に面し、視覚スクリーニング検査に関する情報をオペレーター102に提供するように構成されていてもよい。いくつかの例では、表示画面334は、視覚スクリーニング装置300とは別個(例えば、筐体302に取り付けられていない)ではあるが、視覚スクリーニング装置300と動作可能に接続されて、その制御下におかれていてもよい。
【0059】
図3Dに、本開示の複数の例による視覚スクリーニングシステム301のコンポーネントを含む例示的なシステム303を示す。例示的なシステム303は、カメラ338と、白色光源118を含む白色光LEDアレイ340と、ディフューザー342と、部分反射器344とを示している。わかりやすくするために、例示的なシステム303では視覚スクリーニングシステム301の他のコンポーネントを省略したが、例えば視覚スクリーニング装置300のコンポーネントまたは上述した視覚スクリーニングシステム301のコンポーネントのいずれも、
図3Dに示す例示的なシステム303に含まれていてもよいことが理解される。
【0060】
複数の例において、LEDアレイ340の1つ以上のLEDによって放射された放射線346(例えば、光)は、ディフューザー342を通過して部分反射器344に当たる。複数の例において、部分反射器344は、ビームスプリッタ、ミラーの配列、プリズム、あるいは、当たる放射線の第1の部分を反射しつつ当該放射線の第2の部分を透過するように構成された他の何らかの光学コンポーネント、であってもよい。いくつかの例では、部分反射器344は、
図3Cを参照して説明したように、患者106の眼の光軸と実質的に整列配置されているか同軸であってもよい視覚スクリーニングシステム301、303の中心軸314に対して、約45度の角度で配置される。また、図示のように、中心軸314も、カメラ338のレンズと実質的に整列配置されているか同軸であってもよい。ディフューザー342は、LEDアレイ340のLEDによって放射される放射線346用のぼかし平滑化フィルターとして機能し得る。いくつかの例では、レンズ348は、LEDアレイ340によって放射された放射線346を集束させて部分反射器344に当てるように構成されていてもよい。しかしながら、部分反射体344に到達する放射線346を修正するために、1つ以上の追加の光学部品が含まれていてもよい。
図3Dに示す例では、放射線346の少なくとも一部350を部分反射器344で反射させ、患者106の片眼または両眼に向けることができる。放射線346の一部350が患者106の眼に向けられている間、カメラ338は、患者106の眼の1つ以上の画像および/または映像を取り込むことができる。複数の例において、画像および/または映像は、患者106の眼の瞳孔で反射する放射線を示すものであってもよい。
【0061】
様々な例において、
図2および
図3A~
図3Dを参照して本明細書で説明するように、視覚スクリーニング装置200、300には、患者の眼のNIR画像を取り込むためのNIR放射線源およびセンサーならびに、患者の眼のカラー画像を取り込むための白色光源およびカラーカメラが含まれていてもよい。視覚スクリーニング装置200、300は、眼の光軸に対して異なる角度で放射線源からの照明下にある間に、眼の画像を取り込むこともできる。放射線源114、210、308を、赤外線または近赤外(NIR)線源を含むものとして説明してきたが、追加の例において、放射線源114、210、308には、異なる波長で放射線を放射するLEDが含まれていてもよく、放射線センサー116、212、310は、異なる波長および/または異なる波長帯域(例えば、赤外線、NIR、可視光、紫外線など)の放射線で照明がなされたまま、眼の画像を取り込むことができる。可視スペクトルにおける放射線の異なる波長に、特定の色に対応する波長が含まれていてもよい。そのような例では、視覚スクリーニング装置104、200、300は、特定の波長の照明下で取り込まれた画像で一層明らかになり得る眼の疾患および/または異常を検出することができる場合がある。また、色のついた光および白色光も電磁放射線の形態であるため、本明細書で使用する「放射線源」という用語は、可視光エミッターと、電磁スペクトルの赤外線/NIRおよび紫外線域の放射線エミッターの両方をいう場合がある。
【0062】
図4A~
図4Dに、視覚スクリーニング装置104、200、300の放射線センサー116、212、310またはカメラ120、216、312bによって取り込まれた眼の画像を示す。視覚スクリーニング装置104、200または300によって取り込まれる画像データの分析を利用して検出し得る眼の様々な異常および/または疾患について、ここでは
図4A~
図4Dを参照して説明する。
図4Aは、眼の健康が正常であり、検出可能な疾患状態または異常がない患者の眼の画像402を示す。画像402は、患者の右眼404aおよび左眼404bを含む。図示のように、右眼404aの虹彩406aおよび瞳孔408aは、正常な眼の健康を示す患者の左眼404bの対応する虹彩406bおよび瞳孔408bと実質的に同様に見える。
図1を参照して説明したように、データ分析および可視化コンポーネント136は、取り込まれた画像を処理して眼の瞳孔の位置を決定し、瞳孔の画像(例えば、瞳孔画像)を生成することができる。瞳孔によって、放射線が眼の中に入り、反射した放射線が眼の異なる層と相互作用してから眼の外に戻ることができるため、瞳孔画像は、眼に当たる放射線によって照明される角膜、水晶体、房水および硝子体液、網膜などの眼の層の外観を捉える。開示内容全体を本明細書に援用する、2021年6月14日出願の米国特許出願第17/347,079号には、フォトリフラクションに基づいて屈折異常を判断するために近赤外(NIR)線源によって生成される異なる照明パターン下で取り込まれた瞳孔画像を検出するための例示的なシステムおよび方法が記載されている。
【0063】
図4Bに、一方の眼414aの瞳孔画像412aと他方の眼414bの瞳孔画像412bとを比較することによって検出され得る疾患状態の例示的な画像410を示す。画像410は、NIR照明下で放射線センサー116、212、310によって取り込まれたグレースケール画像であってもよく、白内障の発症に典型的な眼内液の濁りまたは水晶体の曇りの結果として、左眼と右眼の画像におけるグレースケールの差異の一例を示している。
図1を参照して説明したように、データ分析および可視化コンポーネント136は、左眼と右眼の瞳孔画像を比較して、両方の眼のグレースケール値の差を判断することができる。例えば、画像410のグレースケール値を0~128とすることができ、一方の眼の画像の瞳孔部分の平均グレースケール値は24である場合があるのに対し、他方の眼では80になる場合がある。計算で得られた差を、正常な眼に対応する標準的な検査データにおける閾値および/または範囲と比較して、異常があるか否かを判断することができる。しかしながら、画像410などのグレースケール画像では、カラー画像であれば容易に識別可能ないくつかの疾患や異常に対応する両眼間の差異を捉えることができない場合がある。例えば、眼の網膜または角膜の腫瘍は、NIR照明下で取り込まれたグレースケール画像では正常な網膜と見た目が似ている均一な灰色の領域として現れる場合がある。
【0064】
図4Cに、視覚スクリーニング装置104、200、300のカメラ120、216、312bによって、(例えば、白色光源118、214、312aからの)白色光照明下で取り込まれたカラー画像416を示す。画像416の瞳孔画像420a、420bは、眼の網膜から反射されて角膜を通った白色光から生成されるため、網膜や角膜の疾患や異常は、このような画像で視認することができる。例えば、網膜は血管が多いため、健康な眼では反射光が橙赤色に見えるが、網膜や角膜の腫瘍がある眼では白色や黄色に見える場合がある。異なる民族の患者の間で網膜の着色具合が異なるため、瞳孔画像420a、420bの色の見え方にもばらつきがあるかもしれないが、疾患または異常が2つの眼のうちの一方だけに存在する場合、同一患者の2枚の瞳孔画像420a、420bを比較すれば、色値の差を確実に発生させることができる。
図1を参照して説明したように、データ分析および可視化コンポーネント136は、左右の眼の瞳孔画像を比較して、色値の差を判断することができる。また、データ分析および可視化コンポーネント136は、各瞳孔画像の色値を、健康な眼の瞳孔の標準画像と比較することもできる。カメラ120、216、312bによって取り込まれるような画像416は、各画素が3つのカラーチャネルのそれぞれについて0~256の範囲のRGB(赤、緑、青)値を示す典型的なデジタルカラー画像であってもよい。当技術分野において公知のように、RGB色空間は、照明の変動に敏感であり、RGB色空間における色と色との距離と、色と色との知覚差異との間の相関が低いため、複数の色の違いを判断する必要がある用途には不向きであることが多い。複数の例において、カラー画像416を、色と色との間の差異の判断に一層適した色空間(例えば、CIE L*a*b*、CIE L*u*v*、CIE 1931モデル、HSI(色相、彩度、輝度)など)に変換することができる。瞳孔画像420aの平均色値と瞳孔画像420bの平均色値との間の差異を、変換後の色空間で判断することができる。いくつかの例では、眼の屈折異常の測定値を利用して、患者の眼の間の色値の差をさらに調整し、瞳孔の見た目の違いも引き起こす場合がある眼の屈折異常による影響を排除するようにしてもよい。閾値より大きい、および/または、正常で健康な眼に対応する標準的なデータの範囲外の、差異値には、検出された異常としてフラグを立てることができる。例えば、画像416に示された色差は、一方の眼における網膜芽細胞腫などの腫瘍の結果として生じた可能性がある。
【0065】
図4Dに、瞳孔画像426a、426bを含む、眼424a、424bの画像422をさらに示す。画像422は、NIR照明下で放射線センサー116、212、310によって取り込まれたグレースケール画像であってもよいし、白色光照明下でカメラ120、216、312bによって取り込まれたカラー画像であってもよい。図示のように、瞳孔426aおよび426bの画像で平均グレースケール値または平均色値が類似している場合であっても、それらの間に、例えば不均一性、封入体または他の構造などの他のタイプの差異が存在する場合があり、これらが疾患状態および/または異常を示す場合がある。例えば、小さな不均一性または封入体は、白内障形成の初期段階、眼内液中の異物の存在、角膜または水晶体の傷などを示す場合がある。データ分析および可視化コンポーネント136は、様々な方法によって、瞳孔画像426aと瞳孔画像426bとの間のこれらのタイプの差異を決定することができる。例えば、画素画像426aと426bとをアライメントした後、対応する位置における画素の画素値を差し引くと、主に差異が存在する領域を示す差分画像が得られるであろう。差分画像の画素値の合計を閾値と比較して、差異が閾値より大きい(例えば、異常事例)か否かを判断することができる。データ分析および可視化コンポーネント136は、瞳孔画像426b内のグレースケール値または色値の分散を計算する方法でも、差異を判断することができる。分散が閾値を超える場合、あるいは、健康な眼において予想される範囲から外れる場合、異常な状態が判断される場合がある。
【0066】
いくつかの例では、データ分析および可視化コンポーネント136は、個別に撮影された各瞳孔画像を、瞳孔画像内の特性の均一性について評価することによって、眼のいくつかの状態を判断することができる。これらの特性には、色、明るさ、テクスチャなどが含まれていてもよい。例えば、データ分析および可視化コンポーネント136は、瞳孔画像内の特性の標準偏差(または分散)を決定してもよく、標準偏差が閾値を超える場合、あるいは、健康な眼において予想される範囲から外れる場合、異常な状態が判断される場合がある。
【0067】
図4A~
図4Dは、本明細書で説明した技術によって判断し得る眼のいくつかの状態の例を示すが、追加の状態を判断することもできることを理解されたい。また、データ分析および可視化コンポーネント136は、白色光照明下のカラー画像、NIR照明下のグレースケール画像および/または(
図1を参照して説明したような)合成画像を分析して、眼の状態を判断することができる。例えば、眼における白内障の有無は合成画像に基づいて判断することができるのに対し、芽細胞腫の有無については、カラー画像に基づいて主に判断することができる。いくつかの例では、カラー画像および/またはグレースケール画像を、例えば、映像の1つ以上のフレームなどの、眼のカラー映像および/またはグレースケール映像から抽出してもよい。
【0068】
本明細書で説明するように、
図4A~
図4Dは、患者の眼の疾患状態および/または異常を示す瞳孔画像間の差異を判断するために、視覚スクリーニング装置104のデータ分析および可視化コンポーネント136によって実行することができる、放射線センサー116、212、310および/またはカメラ120、216、312bで取り込まれた画像の処理を示す。特定の疾患状態および異常を検出するために調整された処理の他の例も想定される。例えば、波長の異なる放射線下で取り込まれた画像を使用して、特定の疾患状態を示す画像のグレースケール値もしくは色値または構造の特徴的な差異を検出することができる。
【0069】
図5Aおよび
図5Bに、視覚スクリーニング装置104、200または300によって生成することができる瞳孔画像の例示的な可視化像を示す。
図1を参照して説明したように、データ分析および可視化コンポーネント136は、取り込まれた瞳孔画像を処理して、臨床医または視覚スクリーニング装置のオペレーターが患者(例えば、患者106)の眼の異常または疾患を診断するのを助け得る1つ以上の可視化像を生成することができる。上述したように、第1の可視化像は、NIR照明下で放射線センサー116、212、310によって取り込まれたグレースケール画像から得られる情報と、白色光照明下でカメラ120、216、312bによって取り込まれたカラー画像から得られる情報を取り込んだ合成画像502を生成し得る。データ分析および可視化コンポーネント136は、例えば画像位置合わせ工程を実行するなど、画像内の眼の瞳孔504が互いに重なるように、グレースケール画像とカラー画像とを整列させてもよい。そのようにすれば、データ分析および可視化コンポーネント136は、例えば、眼の特徴が互いに重なる際など、グレースケール画像とカラー画像とが正確に位置合わせされるように、視神経乳頭506および/または中心窩508などの眼の特定の特徴に基づいて、より高精度の画像位置合わせ工程を実行することができる。いくつかの例では、患者のわずかな動きや患者の眼球運動が画像間の位置ずれを生じる可能性があるため、複数回の画像取り込み時に視覚スクリーニング装置が移動していないときであっても、位置合わせ工程を実施してもよい。
【0070】
複数の例において、瞳孔領域504の一部510におけるグレースケール画像からの画素値と残りの部分におけるカラー画像からの画素値とが含まれるように、例えばデータ分析および可視化コンポーネント136によって、整列されたグレースケール画像とカラー画像から、合成画像502を生成することができる。合成画像502の異なる部分に取り込む画像の選択は、その部分の特徴がNIR照明下で識別しやすいか、白色光照明下で識別しやすいかに基づいてなされてもよい。例えば、眼の一部510は、NIR照明下のほうがよく識別される特徴または状態を含む場合があるのに対し、瞳孔画像504の残りの部分の血管構造は、白色光照明下で取り込まれたカラー画像のほうが、より鮮明な場合がある。このような例では、データ分析および可視化コンポーネント136は、合成画像502の領域510におけるグレースケール画像から得られるグレースケール値と、瞳孔画像504の残りの部分におけるカラー画像から得られる色値とを使用して、合成画像502を生成することができる。複数のグレースケール画像とカラー画像とを取り込む例では、データ分析および可視化コンポーネント136は、グレースケール画像の各々の画素位置での平均グレースケール値と、カラー画像の各々の画素位置での平均色値とを使用して、合成グレースケール画像および合成カラー画像を生成することができる。他の例では、画像の品質(例えば、鮮明さ、照明の角度、または眼の特定の特徴の視認性)などの要因に基づいて、合成画像502で使用するために複数の画像から単一の画像が選択される場合がある。上述したように、合成画像は、NIR照明下で取り込まれたグレースケール画像から第1の複数の画素値を導出し、白色光照明下で取り込まれたカラー画像から第2の複数の画素値を導出する。したがって、合成画像は、NIRと可視光照明によって別々に明らかにされる眼の特性を含む。
【0071】
いくつかの例では、合成画像には、眼に加えて患者の顔の一部(例えば、鼻、額)または顔全体さえも含むことができる。いくつかの例では、上記に加えてまたは上記に代えて、データ分析および可視化コンポーネント136は、合成画像502にグラフィック512(例えば、疑似色)を追加して、合成画像502のうち、左右の瞳孔画像間または取り込まれた画像と標準画像との間で差異が検出された部分または領域を、強調することもできる。いくつかの例では、強調表示(例えば、グラフィック512内)で使用する色は、寒色寄りの色または青い色相が、より小さな差異を示し、暖色寄りまたは赤い色相が、より大きな差異を示すことができるヒートマップ可視化スキームに基づくものであってもよい。合成画像502の、差異が標準的な閾値を超えるか標準的な範囲から外れる部分には、ヒートマップの最高端から疑似色を割り当てることができる。眼の他の特徴も、異なるグラフィックまたは異なる色の凡例を用いて強調することもできる。そのような例では、臨床医またはオペレーターは、眼の状態の診断を助けるために、強調表示および/またはグラフィックスをオンまたはオフにする、あるいは両者の間で切り替えるオプションを有することができる。合成画像502は、患者データ140の一部としてデータベース(例えば、スクリーニングデータベース144)に格納されてもよい。
【0072】
図5Bに、静止画のシーケンスまたは静止画のシーケンスを含むアニメーション映像を含む可視化像514を示す。この可視化像は、
図1のデータ分析および可視化コンポーネント136を参照して説明したような第2の可視化像に対応するものであってもよい。放射線源516(1~7)は、例えば、
図3Bの軸または経線または320に沿ったNIR LEDに対応するものであってもよい。上記に代えてまたは上記に加えて、放射線源516(1~7)は、白色光源118、214、312aの白色光LEDのアレイを含むものであってもよい。瞳孔画像518(1~7)は、対応する放射線源516(1~7)からの照明下で、放射線センサー116、212、310によって、あるいはカメラ120、216、312bによって取り込まれた画像を示す。例えば、画像518(1)は放射線源516(1)が作動しているときに取り込まれてもよく、画像518(3)は放射線源516(3)が作動しているときに取り込まれてもよいといった具合である。シーケンス514には、各放射線源(例えば、516(2、4、6))に対応する画像が含まれていなくてもよい点に留意されたい。複数の例において、可視化像514を生成するにあたり、放射線源516(1~7)に対応する画像を何枚使用してもよい。また、上記より多いか少ない数の放射線源516も想定される。
【0073】
図5Aを参照して上述したように、個々の放射線源(例えば、516(1、3、5、7))からの照明下で取り込まれた画像は、各々の画像において画像全体に対して瞳孔が同じ位置にくるように、整列配置される。この整列工程すなわち位置合わせによって、画像が順に(例えば、表示画面122、220上で)提示されるときにジッタが防止される。可視化像514には、画像518(1~7)を表示画面122、220上で左から右へ(例えば、一連の画像518(1)、518(3)、518(5)、518(7)として)、および/または右から左へ(例えば、一連の画像画像518(7)、518(5)、518(3)、518(1)として)順に提示することが含まれていてもよい。また、データ分析および可視化コンポーネント136は、映像の各フレームがシーケンス内の単一の画像を含むアニメーション映像を生成することができる。アニメーション映像は、左から右へのシーケンスに続いて右から左へのシーケンスを繰り返し表示し、照明源が端から端まで往復移動しているような見た目を作り出すことを含んでもよい。視覚スクリーニング装置は、臨床医または視覚スクリーニング装置のオペレーターが任意のフレームで映像を一時停止するおよび/またはズームインまたはズームアウトすることができるようにする、グラフィカルユーザインタフェースを(例えば、表示画面122、220上で)提示してもよい。また、可視化像514は、各画像518(1、3、5、7)として、NIR照明下で取り込まれたグレースケール画像、白色光照明下で取り込まれたカラー画像または
図5Aを参照して上述した合成画像を使用することができる。グラフィカルユーザインタフェースは、グレースケール画像、カラー画像または合成画像を表示するオプションを提供することができる。
【0074】
様々な例において、
図5Aおよび
図5Bを参照して本明細書で説明するように、視覚スクリーニング装置300は、患者の眼の疾患および/または異常の診断を助けるための可視化像を、視覚スクリーニング装置300のオペレーターに、提供してもよい。さらに、これらの可視化像は、検討用として、あるいは、同一患者の将来の視覚スクリーニング検査時に比較するために、臨床医が可視化像にアクセスすることができるように、患者データ140の一部として(例えば、スクリーニングデータベース144に)格納されてもよい。
【0075】
図6~
図8に、本明細書で説明するような視覚スクリーニングのための例示的な方法を示す流れ図を示す。
図6~
図8に示す方法は、ハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの組み合わせで実装可能な一連の動作を表すロジカルフローグラフにおけるブロックの集合として示されている。ソフトウェアという観点では、これらのブロックは、プロセッサによって実行されると、言及された動作を実行する、1つ以上のコンピューター読み取り可能な記憶媒体に格納された、コンピューターで実行可能な命令を表す。一般に、コンピューターで実行可能な命令は、特定の機能を実行するか、特定の抽象的なデータタイプを実現する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。動作を説明する順序については、限定として解釈されることを意図しておらず、説明されたブロックを、いくつでも、任意の順序で組み合わせるおよび/または並行して組み合わせて、
図6~
図8に示す方法を実施することができる。いくつかの実施形態では、
図6~
図8に示す方法の1つ以上のブロックを、完全に省略することも可能である。
【0076】
図6~
図8に示す方法に関して後述する動作は、本明細書で説明した装置またはシステム104、200、および300のいずれか、および/またはそのさまざまなコンポーネントによって、実行することが可能なものである。別途明記しないかぎり、説明を容易にするために、以下、
図1に示すシステム100と、
図1~
図3に示す視覚スクリーニング装置104、200、300とを参照して、
図6~
図8に示す方法について説明する。特に、
図6~
図8に示す方法に関して説明する動作はいずれも、視覚スクリーニング装置104のプロセッサ128によって実行される画像取り込み制御コンポーネント134、データ分析および可視化コンポーネント136および/または出力生成コンポーネント138によっておよび/または視覚スクリーニングシステム110のプロセッサ146によって実行される分析コンポーネント150によって、単独または組み合わせて、実行することができるものである。
【0077】
図6に示す例示的な方法600を参照すると、動作602では、画像取り込み制御コンポーネント134および/またはこれに付随する1つ以上のプロセッサによって、放射線源に、放射線(例えば、近赤外(NIR)線)を放射させることができる。例えば、放射線源は、患者スクリーニングコンポーネント132によって患者に適応された視覚スクリーニング検査の実施に少なくとも一部が対応する期間に、NIR放射線を放射するように構成された視覚スクリーニング装置104の放射線源114のNIR LEDを含んでもよい。いくつかの例では、画像取り込み制御コンポーネント134は、例えば、第1の放射線源は、第1の波長の放射線を放射することができ、第2の放射線源は、第2の波長の放射線を放射することができるなど、異なる波長の放射線を放射させることができる。
図3Bを参照して説明したように、画像取り込み制御コンポーネント134は、放射線源114のLEDを個々にまたはグループで作動させ、眼の光軸に対して異なる角度で眼に当たる放射線を発生させることができる。例えば、画像取り込み制御コンポーネント134は、
図3Bを参照して上述したように、軸316、318および320に沿ったNIR LEDの作動パターンを設定することができる。また、画像取り込み制御コンポーネント134は、眼に対する異なる入射角との組み合わせで、異なる波長の放射線を作動させることもできる。いくつかの例では、NIR LEDの作動パターンをアレンジすることで、患者106の眼に異なる照明パターンを提示することが可能になり、選択した照明パターンのもとで取り込まれた画像に基づいて、眼の屈折異常を正確に測定することができる。屈折異常を判断するための検査プロトコルで使用される照明パターンに関する追加の詳細は、本明細書に援用する、上述した米国特許出願第9,237,846号に見出すことができる。
【0078】
動作604では、画像取り込み制御コンポーネント134は、視覚スクリーニング装置のセンサー(例えば、視覚スクリーニング装置104の放射線センサー116)に、放射線源114による照明下で患者の眼で反射した放射線を取り込ませることができる。画像取り込み制御コンポーネント134は、放射線センサー116によって取り込まれた放射線を示すデータを受信することができる。このデータには、動作602で上述したような異なる角度からの放射線によって照明された眼のグレースケール画像および/または映像が含まれていてもよい。例えば、画像取り込み制御コンポーネント134は、センサーに、第1の組のNIR LEDからの照明下で第1の画像を、第2の組のNIR LEDからの照明下で第2の画像を、取り込ませることができる。いくつかの例では、近赤外線は、第1の放射線源によって放射される第1の波長帯域であってもよく、画像取り込み制御コンポーネント134は、さらに、第2の波長帯域で放射線を放射する第2の放射線源を作動させ、センサーに、第2の放射線源からの照明下で、第3の画像を取り込ませることができる。また、画像取り込み制御コンポーネント134は、センサーに、両眼の画像を同時に取り込ませることができ、片眼ずつ画像を取り込ませることもできる。例えば、画像取り込み制御コンポーネント134は、左右両方の眼が、画像取り込み時に眼に対して同一の角度から照明されるように、左眼の画像を取り込んだ後で、右眼の画像を取り込む前に、照明源の作動を変更する(例えば、放射線源114、118の異なるLEDを作動させる)ことができる。いくつかの例では、例えば患者106の視線方向が視覚スクリーニング装置104の光軸に対して左、右、上、および/または下になっているなど、患者106が様々な方向を見るように指示されている間に、画像取り込み制御コンポーネント134は、センサーに、眼の複数の画像を取り込ませることができる。
【0079】
動作606では、画像取り込み制御コンポーネント134および/またはこれに付随する1つ以上のプロセッサは、白色光源(例えば、視覚スクリーニング装置104の白色光源118)に白色光を放射させ、動作602および604が完了した後の期間、かつ、視覚スクリーニング検査の実施の少なくとも一部の間に、患者に光を当てることができる。動作602で説明した放射線源と同様に、白色光源118の個々の白色光源も、光軸に対して異なる角度から眼に光を当てるように作動させることもできる。いくつかの例では、白色光源118からの照明は、例えば、角度が実質的に0°であってもよいなど、光軸と同軸またはほぼ同軸であってもよい。いくつかの例では、例えば、患者の第1の視線方向に対応して眼の第1のカラー画像を取り込むことができ、患者の第2の視線方向に対応して眼の第2のカラー画像を取り込むことができるなど、上述したように患者106の異なる視線方向に対応して眼の複数の画像を取り込むことができる。画像取り込み制御コンポーネント134は、取り込み時刻および照明角度および/または画像取り込み時の患者の視線方向を、画像に関連したメタデータとして格納することができる。
【0080】
動作608では、画像取り込み制御コンポーネント134は、カメラ(例えば、視覚スクリーニング装置104のカメラ120)に、白色光照明下にある間、患者の眼のカラー画像を取り込ませることができる。いくつかの例では、画像取り込み制御コンポーネント134は、カメラに、映像データを取り込ませることもできる。例えば、映像データは、白色光照明の開始前の第1の期間に取り込まれ、白色光照明の開始後の第2の期間に継続されてもよい。例えば、映像データは、患者の瞳孔の反応(例えば、瞳孔の大きさ)および/または様々なレベルの照明に対する瞳孔の調整および/または照明の急激な変化(例えば、白色光照明の開始によって生じる)を判断するのに有用な場合がある。画像取り込み制御コンポーネント134は、臨床医による検討用に、カラー画像および/または映像をデータベースに格納してもよい。また、画像取り込み制御コンポーネント134は、カメラに、患者の顔のカラー画像を取り込ませ、この画像を患者の写真識別子として患者データ140に格納することができる。データ分析および可視化コンポーネント136は、カラー画像を利用して、後述するように、動作610および612で合成カラー画像を生成し、差異を判断することができる。いくつかの例では、眼の網膜を示すために、患者の異なる視線方向で取り込まれたカラー画像を組み合わせて、合成カラー画像を生成してもよい。
【0081】
動作610では、データ分析および可視化コンポーネント136は、動作604で取り込まれたグレースケール画像からの情報と、動作608で取り込まれたカラー画像からの情報とを組み合わせることによって、眼の合成画像を生成することができる。
図5Aを参照して上述したように、データ分析および可視化コンポーネント136は、グレースケール画像およびカラー画像で眼の瞳孔に対応する瞳孔画像を検出し、眼の構造が重なるようにグレースケールとカラーの瞳孔画像を整列配置することができる。データ分析および可視化コンポーネント136は、さらに、グレースケール画像からのグレースケール値を合成画像の一部に取り入れ、カラー画像からの色値を合成画像の残りに取り入れた合成画像を生成することができる。データ分析および可視化コンポーネント136は、例えば、着目領域を示すために、合成画像のいくつかの部分に(例えば、グラフィックスおよび/または疑似色値を使用して)注釈を付けることもできる。
【0082】
動作612では、データ分析および可視化コンポーネント136または出力生成コンポーネント138は、グレースケール画像、カラー画像、および/または合成画像における画素値と期待画素値との間の1つ以上の差異を判断することができる。例えば、データ分析および可視化コンポーネント136または出力生成コンポーネント138は、第1の差異を、患者の左右の瞳孔画像の対応する画素位置における画素値間の平均差異として計算することができる。別例として、データ分析および可視化コンポーネント136または出力生成コンポーネント138は、瞳孔画像の第1の領域と同一の瞳孔画像の第2の領域における平均画素値間の第2の差を計算することができる。さらに他の例では、データ分析および可視化コンポーネント136または出力生成コンポーネント138は、瞳孔画像の平均画素値と、データベース(例えば、スクリーニングデータベース144)に格納されていてもよい正常かつ健康な眼で得られた標準値との間の第3の差異を、計算することができる。さらに、データ分析および可視化コンポーネント136または出力生成コンポーネント138は、視覚スクリーニング検査時に取り込まれた瞳孔画像における画素値と、同一の患者で以前に実施した視覚スクリーニング検査時の瞳孔画像における画素値との間の第4の差異を計算することができる。
【0083】
動作614では、出力生成コンポーネント138は、動作612で得られた画素値の差異と、閾値および/または範囲とを比較して、診断または推奨が含まれていてもよい眼に関連する状態を示す出力を、決定することができる。例えば、差異が閾値未満であったら(動作614-Yes)、出力生成コンポーネント138は、動作616で患者に関連する第1の出力を生成することができ、差異が閾値以上であったら(動作614-No)、出力生成コンポーネント138は、動作618で第2の出力を生成することができる。閾値および/または範囲は、あらかじめ定めていてもよく、スクリーニングデータベース144またはコンピューター読み取り可能な媒体130、148に格納されていてもよい標準データの一部として利用することができる。標準データには、グレースケール値および色値用の別々の閾値および範囲を含む、上述した差異のタイプごとに異なる閾値および範囲が含まれていてもよい。また、閾値および範囲は、患者の検査区分(例えば、患者の年齢層または病歴)に基づいて、異なるものであってもよい。
【0084】
動作616では、出力生成コンポーネント138は、上述したような第1の出力を生成することができる(動作614-Yes)。第1の出力は、疾患または異常が検出されたことの表示、追加のスクリーニングの推奨および/または検出された疾患または異常の診断に対応するものであってもよい。第1の出力には、取り込まれたグレースケール画像およびカラー画像および/または生成された可視化像を含む、格納された画像へのリンクが含まれていてもよい。動作618では、出力生成コンポーネント138は、(動作614-Noの場合)第2の出力を生成することができる。第2の出力は、患者が視覚スクリーニングに合格したこと、あるいは、患者の眼が正常かつ健康に見えることの表示に対応するものであってもよい。
【0085】
上述したように、例示的な方法600は、装置104のプロセッサ128によって実行される視覚スクリーニング装置104のコンポーネントによって実施することができるものである。例示的な方法600は、異なる波長の照明下で取り込まれた眼の画像に基づいて患者の眼に関連する疾患および/または異常を判断するために患者(例えば、患者106)に対して実施される視覚スクリーニング検査の少なくとも一部の間に実行される動作を示す。別の例では、方法600の動作の一部または全部は、ネットワーク108を介して視覚スクリーニング装置104に接続されている視覚スクリーニングシステム110のプロセッサ146によって実行することができる。
【0086】
図7に、本開示のいくつかの実施形態による視覚スクリーニング用の例示的な方法700を示す。上述したように、プロセス700の動作は、これらの動作が代替的にまたは追加的にリモート視覚スクリーニングシステム110のプロセッサ146によって実行し得るものであるとしても、視覚スクリーニング装置104のプロセッサ128によって実行されるものとして説明される。
【0087】
動作702では、データ分析および可視化コンポーネント136は、取り込まれた画像から瞳孔画像を決定することができる。上述したように、取り込まれた画像には、NIR照明下で放射線センサー116、212、310によって取り込まれたグレースケール画像または白色光照明下でカメラ120、216、312bによって取り込まれたカラー画像が含まれていてもよい。また、本明細書に援用する、上述した米国特許第9,237,846号に記載の技術を利用して、NIR放射線照明下で取り込まれた画像から瞳孔画像を決定してもよい。データ分析および可視化コンポーネント136は、例えば、画像処理技術を用いてエッジを検出した後、アークフィッティングして、検出されたエッジアークと眼の画像のモデルエッジマップとを比較することによってなどの、様々な技術を利用して、カラー画像から瞳孔画像を決定することもできる。また、瞳孔の色を用いてカラー画像から瞳孔画像を決定し、眼の画像の瞳孔領域をセグメント化してもよい。エッジと色に基づくセグメント化との組み合わせを用いることもできる。
【0088】
動作704では、データ分析および可視化コンポーネント136は、患者の左右の瞳孔画像間の差異を判断することができる。これらの差異は、グレースケール画像のグレースケール値および/またはカラー画像の色値を用いて判断することができるものである。
図6の動作612を参照して上述したように、この差異については、患者の左右の瞳孔画像の対応する画素位置または患者の左右の瞳孔画像における対応する部分における画素値間の平均差異として計算することができる。他の例では、データ分析および可視化コンポーネント136は、左の瞳孔画像を右の画素画像から差し引くか、その逆で得られた画素値の合計によって、差異を決定することができる。
【0089】
動作706では、データ分析および可視化コンポーネント136は、動作704で得られた差異を第1の閾値と比較して、差異が第1の閾値未満であるか否かを判断することができる。例えば、第1の閾値は、スクリーニングデータベース144に格納されていてもよい標準データの一部として利用可能な、あらかじめ定められたものであってもよく、患者が正常で健康な眼を呈するときに同一患者の2枚の瞳孔画像間で予想される最大差異を示してもよい。差異が第1の閾値以上である(動作706-Yes)場合、詳細については後述するように、出力生成コンポーネント138は、動作716で、異常を報告する出力を生成することができる。
【0090】
動作708(動作706-No)では、データ分析および可視化コンポーネント136は、患者の左または右の瞳孔画像と正常で健康な眼の標準画像との間の差異を判断することができる。左右の瞳孔画像は、同時に取り込まれたものであってもよいし、視覚スクリーニング検査の間の異なる時点に取り込まれたものであってもよい。標準画像は、スクリーニングデータベース144またはコンピューター読み取り可能な媒体 130、148に格納されていてもよい標準データの一部として利用可能な場合がある。
【0091】
動作710では、データ分析および可視化コンポーネント136は、動作708で得られた差異と第2の閾値とを比較して、差異が第2の閾値未満であると判断することができる。例えば、第2の閾値も、スクリーニングデータベース144に格納されている標準データの一部として利用可能な、あらかじめ定められたものであってもよく、瞳孔画像と正常で健康な眼の標準画像との間で予想される最大差異を示してもよい。差異が第2の閾値以上である(動作710-Yes)場合、詳細については後述するように、出力生成コンポーネント138は、動作716で、異常を報告する出力を生成することができる。
【0092】
動作712(動作710-No)では、データ分析および可視化コンポーネント136は、患者の瞳孔画像と、以前の視覚スクリーニング検査で取り込まれた同一の眼の瞳孔画像との間の差異を判断することができる。以前の視覚スクリーニング検査(例えば、過年度の年次スクリーニング検査)で取り込まれた患者の瞳孔画像は、患者データ140の一部としてデータベース(例えば、スクリーニングデータベース144)に格納されていてもよい。データ分析および可視化コンポーネント136は、データベースから以前のスクリーニング検査で得られた瞳孔画像にアクセスしてもよい、および/または、現在の視覚スクリーニング検査の開始前にコンピューター読み取り可能な媒体130に画像をロードしてもよい。
【0093】
動作714(動作712-No)では、データ分析および可視化コンポーネント136は、動作712で得られた差異と第3の閾値とを比較して、差異が第3の閾値未満であると判断することができる。例えば、第3の閾値も、スクリーニングデータベース144に格納されていてもよい標準データの一部として利用可能な、あらかじめ定められたものであってもよく、ある期間の経過後に取り込まれた同一の眼の瞳孔画像間で予想される最大差異を示してもよい。差異が第3の閾値以上である(動作714-Yes)場合、出力生成コンポーネント138は、動作716で、異常を報告する出力を生成することができる。例えば、出力は、白内障や黄斑変性症などの進行性の眼疾患が原因の場合もある患者の眼の変化や、以前のスクリーニング検査では存在しなかった新たな疾患状態などを示す場合がある。
【0094】
動作716では、出力生成コンポーネント138は、異常を報告する出力を生成することができる。上述したように、動作704、708、712で判断された差異のいずれかがそれぞれの閾値以上である場合、データ分析および可視化コンポーネント136または出力生成コンポーネント138は、眼に異常および/または疾患状態が存在する可能性があると判断することができる。出力には、異常の報告のきっかけとなった差異に基づく診断が含まれていてもよい。
図4を参照して説明したように、特定の疾患は、瞳孔画像の外観に特徴的な差異を呈することがあり、網膜芽細胞腫、白内障、角膜の傷など、疾患によっては、視覚スクリーニング検査の間に検出された差異から判断することができる。出力生成コンポーネント138は、出力を、患者データ140の一部として、スクリーニングデータベース144などのデータベースに格納してもよい。また、出力生成コンポーネント138は、表示画面(例えば、表示画面122、220、334)上でオペレーター(例えば、オペレーター102)に出力を表示してもよい。
【0095】
それぞれの閾値を満たすか超える差異がない場合、動作718で、出力生成コンポーネント138は、例えば、視覚スクリーニング検査で患者の眼が正常であると判断されたなどの、正常なスクリーニングを報告する出力を、生成することができる。出力生成コンポーネント138は、出力を、患者データ140の一部として、スクリーニングデータベース144などのデータベースに格納してもよい、および/または、表示画面122、220、334上で視覚スクリーニング装置のオペレーター(例えば、オペレーター102)に出力を表示してもよい。
【0096】
図8に、本開示のいくつかの実施形態による視覚スクリーニング用の例示的な方法800を示し、この場合の視覚スクリーニングには、例えば、眼の異なる状態についてのスクリーニングなどの、1つ以上の別個の視覚スクリーニング検査が含まれる。方法800の様々な動作は、
図6および
図7を参照して説明した方法と実質的に類似または同一であり得る。上述したように、プロセス800の動作は、これらの動作が代替的にまたは追加的にリモート視覚スクリーニングシステム110のプロセッサ146によって実行し得るものであるとしても、視覚スクリーニング装置104のプロセッサ128によって実行されるものとして説明される。
【0097】
動作802では、患者スクリーニングコンポーネント132は、視覚スクリーニングセッションに参加している患者に実施する視覚スクリーニング検査を選択することができる。
図1を参照して説明したように、患者スクリーニングコンポーネント132は、患者データ140に格納された患者の検査区分に少なくとも部分的に基づいて(例えば、患者の年齢層または病歴)に基づいて、患者に対して実施する視覚スクリーニング検査のリストを決定することができる。動作802で選択される視覚スクリーニング検査は、患者に実施される視覚スクリーニング検査のリストにおける、次の未完了の視覚スクリーニング検査であってもよい。いくつかの例では、802において、患者スクリーニングコンポーネント132は、スクリーニング検査を実施する臨床医またはオペレーターから受信した入力に基づいて、視覚スクリーニング検査を選択することができる。
【0098】
動作804では、データ分析および可視化コンポーネント136は、画像取り込み制御コンポーネント134から、視覚スクリーニングを受けている患者の眼の画像を受信することができる。例えば、これらの画像には、NIR放射線照明下で取り込まれたグレースケール画像、白色光照明下で取り込まれたカラー画像、カラーまたはグレースケール映像、および/または合成画像のうちの1つ以上が含まれていてもよい。画像については、
図6に示す例示的な方法600を参照して説明したように取り込めばよい。いくつかの例では、画像は、例えば、以前に選択された視覚スクリーニング検査を実施している間などの、以前に取り込まれたものであってもよく、新たな画像が取り込まれなくてもよい。
【0099】
動作806では、データ分析および可視化コンポーネント136は、例えば、
図7を参照して説明した方法700を使用するなどして、選択された視覚スクリーニング検査を実施することができる。各々の視覚スクリーニング検査には、スクリーニング対象となる状態を検出するのに最も適した画像を示す、当該検査に関連するあらかじめ定められた一組の画像要件があってもよい。例えば、画像要件には、画像のタイプ(カラー、グレースケール、合成、映像など)、照明の角度または視線方向、照明のタイプ/レベルなどを含めることができる。データ分析および可視化コンポーネント136は、例えば、取り込まれた画像に関連するメタデータに画像要件をマッチングすることなどによって、画像要件に基づいて、分析する画像を特定し、特定された画像の分析に基づいて、選択された視覚スクリーニング検査を実施することができる。例えば、眼の白内障の有無に関するスクリーニング検査では、合成画像が必要な場合があるが、芽細胞腫の有無に関するスクリーニング検査では、入力としてカラー画像が必要な場合がある。いくつかの例では、例えば、必要な照明角度または視線方向に関連するフレームを識別することなどによって、異なる照明角度または視線方向で取り込まれた画像を映像から抽出することができる。
【0100】
動作808では、患者スクリーニングコンポーネント132は、例えば、動作806で実施した視覚スクリーニング検査が、患者スクリーニングコンポーネント132によって決定された視覚スクリーニング検査のリスト上で最後であったか否かなどの、視覚スクリーニングセッションが完了したか否かを、判断することができる。808において、患者スクリーニングコンポーネント132が、視覚スクリーニングセッションは完了していないと判断した場合(動作808-No)、患者スクリーニングコンポーネント132は、動作802に進み、次に実施する視覚スクリーニング検査を選択することができる。一方、808において、患者スクリーニングコンポーネント132が、視覚スクリーニングセッションが完了したと判断した場合(動作808-Yes)、出力生成コンポーネント138は、動作810で、視覚スクリーニングセッションの間に実施した視覚スクリーニング検査の結果を含むレポートを生成することができる。例えば、このレポートには、視覚スクリーニングセッションの間に実施した各々の視覚スクリーニング検査について、方法700の動作716、718で生成された出力が含まれていてもよい。
【0101】
少なくとも本明細書の説明に基づいて、本開示の視覚スクリーニング装置および付随するシステムおよび方法を使用して、患者の眼の疾患および/または異常をスクリーニングするための検査を含む1つ以上の視覚スクリーニング検査を実施する一助となり得ることが理解される。本明細書に記載の視覚スクリーニング装置のコンポーネントは、白色光に加えて異なる波長の放射線を生成し、視覚スクリーニングを受けている患者の眼を照らし、異なる照明条件下で眼の画像を取り込み、疾患状態の診断を助ける可視化像を生成し、瞳孔画像間の差異を判断し、診断、推奨、またはスクリーニング検査の結果を示す出力を決定するように構成されていてもよい。例示的な視覚スクリーニング装置は、異なる波長の放射線を発生させるための放射線源と、患者の眼から反射した放射線を取り込むためのセンサーと、白色光源と、白色光照明下で患者の眼のカラー画像を取り込むように構成されたカメラと、視覚スクリーニング装置のオペレーターに出力を表示するための表示画面と、を含み得る。本明細書に記載の装置は、患者からの情報提供またはフィードバックを必要とせず、眼を拡大する必要なく、患者の眼疾患および眼の異常をスクリーニングするのに使用することができるため、この装置は、非常に幼い患者、非常に高齢の患者、行為能力のない患者、または非協力的な患者のスクリーニングに使用することが可能である。
【0102】
上記は、本開示の原理を単に例示するものであり、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な改変をほどこすことが可能である。上述した例は、説明の目的で提示されたものであり、限定を目的とするものではない。また、本開示は、本明細書で明示的に説明した以外の多くの形態をとることができる。したがって、本開示は、明示的に開示した方法、システム、および装置に限定されず、以下の特許請求の範囲の意図の範囲内にある変形例および改変例を包含することが意図されていることが強調される。
【0103】
さらに別の例として、本明細書に図示し、説明したように、提供される構造、装置、および方法をさらに最適化するために、装置またはプロセスの制限(例えば、寸法、構成、構成要素、プロセスの工程の順序など)を変えることも可能である。いずれにせよ、本明細書に記載した構造および装置ならびに関連する方法には、多くの用途がある。したがって、開示された主題は、本明細書に記載されたいずれか1つの例に限定されるべきではなくむしろ、その広さと範囲は、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるべきである。
【外国語明細書】