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特開2023-107257リナグリプチン含有医薬組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107257
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】リナグリプチン含有医薬組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/522 20060101AFI20230727BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61K31/522
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/12
A61K9/20
A61K9/28
A61K47/38
A61P3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008332
(22)【出願日】2022-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207252
【氏名又は名称】ダイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】三浦 宏明
(72)【発明者】
【氏名】矢野 ステファニー愛美
(72)【発明者】
【氏名】江藤 れい子
(72)【発明者】
【氏名】家城 昭博
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 勝
(72)【発明者】
【氏名】辻井 賢
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD38
4C076DD41C
4C076EE16B
4C076EE32H
4C076EE38B
4C076EE48
4C076EE50
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF36
4C076GG12
4C076GG13
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】 より簡便な手段により、経時的に生じる崩壊遅延,溶出遅延及び類縁物質の増加を抑制することができるリナグリプチン含有医薬組成物、特にリナグリプチン含有フィルムコート錠、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 有効成分としてリナグリプチン、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含み、結合剤としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用し、湿式造粒法である流動層造粒乾燥法により素錠を調製し、フィルムコーティング剤としてヒプロメロースを使用し、フィルムコート層にポリエチレングリコールを含まないリナグリプチン含有フィルムコート錠とすること。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてリナグリプチン、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含み、結合剤としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用することを特徴とするリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項2】
前記賦形剤が、マンニトールである請求項1に記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項3】
前記崩壊剤が、トウモロコシデンプン又はクロスポビドンである請求項1に記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項4】
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである請求項1に記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項5】
錠剤の形態にある請求項1~4のいずれかに記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項6】
フィルムコート錠である請求項5に記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項7】
フィルムコーティング剤としてヒプロメロースを使用し、フィルムコート層にポリエチレングリコールを含まない請求項6に記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【請求項8】
有効成分としてリナグリプチン、賦形剤としてマンニトール、崩壊剤としてトウモロコシデンプン又はクロスポビドン、及び結合剤としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用して湿式造粒法にて造粒し、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを加えて、打錠して得た素錠を、フィルムコーティング剤としてヒプロメロースを使用し、ポリエチレングリコールを含まないフィルムコーティング層とすることを特徴とするリナグリプチン含有フィルムコート錠の製造方法。
【請求項9】
湿式造粒法が、流動層造粒乾燥法である請求項8に記載のリナグリプチン含有フィルムコート錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性が改善されたリナグリプチン含有医薬組成物、特にリナグリプチン含有フィルムコート錠、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次式I:
【0003】
【化1】
【0004】
で示される化学名:1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを有するリナグリプチン(Linagliptin)(JAN,INN)は、胆汁排泄型選択的DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)阻害作用を有し、2型糖尿病薬として臨床的に使用されている薬剤である(販売名:トラゼンタ(登録商標)錠)。
【0005】
リナグリプチン含有医薬組成物にあっては、保存条件の影響などにより経時的に崩壊遅延、溶出遅延及び類縁物質の増加等が認められており、例えば、製剤の調製に一般的に使用される多くの添加剤、例えば、微結晶セルロース、ナトリウムデンプングリコレート、クロスカルメロースナトリウム、酒石酸、クエン酸、グルコース、フルクトース、サッカロース、ラクトース及びマルトデキストリンについては、リナグリプチンとの配合不適合性、分解の問題、又は抽出の問題が示されていた(例えば、後記する特許文献1、2)。
したがって、かかる点を解決するべく、これまでにリナグリプチンを含有する製剤、特に製剤調製に際して配合する添加剤に関する数多くの特許出願がなされている(特許文献1~8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5478244号
【特許文献2】特許第6100998号
【特許文献3】特許第6564720号
【特許文献4】特許第6839708号
【特許文献5】特許第6215940号
【特許文献6】特開2020-158435号公報
【特許文献7】特開2021-134202号公報
【特許文献8】特開2021-167288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状を鑑み、より簡便な手段により、経時的に生じる崩壊遅延、溶出遅延及び類縁物質の増加を抑制することができるリナグリプチン含有医薬組成物、特にフィルムコート錠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するべく本発明者らは鋭意検討した結果、リナグリプチン含有医薬組成物、特に錠剤の調製に際して配合する結合剤として、特異的なポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、あるいはポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用して流動層造粒法にて作製した製剤においては崩壊遅延、溶出遅延を認めないことを見出した。
【0009】
更に、フィルムコーティング中にポリエチレングリコールを含まない処方にて作製したフィルムコート錠については、光苛酷条件における類縁物質の生成が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
したがって、本発明は具体的には、以下の態様からなるものである。
(1)有効成分としてリナグリプチン、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含み、結合剤としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用することを特徴とするリナグリプチン含有医薬組成物;
(2)前記賦形剤が、マンニトールである上記(1)に記載のリナグリプチン含有医薬組成物;
(3)前記崩壊剤が、トウモロコシデンプン又はクロスポビドンである上記(1)に記載のリナグリプチン含有医薬組成物;
(4)前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである上記(1)に記載のリナグリプチン含有医薬組成物;
(5)錠剤の形態にある上記(1)~(4)のいずれかに記載のリナグリプチン含有医薬組成物;
(6)フィルムコート錠である上記(5)に記載のリナグリプチン含有医薬組成物;
(7)フィルムコーティング剤としてヒプロメロースを使用し、フィルムコート層にポリエチレングリコールを含まない上記(6)に記載のリナグリプチン含有医薬組成物。
【0011】
更に本発明は、別の態様としてリナグリプチン含有医薬組成物、特にフィルムコート錠の製造方法であり、具体的には、
(8)有効成分としてリナグリプチン、賦形剤としてマンニトール、崩壊剤としてトウモロコシデンプン又はクロスポビドン、及び結合剤としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用して湿式造粒法にて造粒し、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを加えて、打錠して得た素錠を、フィルムコーティング剤としてヒプロメロースを使用し、ポリエチレングリコールを含まないフィルムコーティング層とすることを特徴とするリナグリプチン含有フィルムコート錠の製造方法;
(9)湿式造粒法が、流動層造粒乾燥法である(8)に記載のリナグリプチン含有フィルムコート錠の製造方法;
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、崩壊遅延及び溶出遅延を防止し、かつ類縁物質の増加が抑制されたリナグリプチン含有医薬組成物、特にリナグリプチン含有フィルム錠、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明が提供するリナグリプチン含有医薬組成物中に有効成分として含有されるリナグリプチンの使用量は、既に臨床的に使用されている1製剤中5mg含有させるのが良い。
【0014】
上記したとおり、本発明は、有効成分としてリナグリプチン、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含み、結合剤としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用することを特徴とするリナグリプチン含有医薬組成物である。
【0015】
なお、本発明が提供するリナグリプチン含有医薬組成物にあっては、有効成分としてリナグリプチンを含有するものであるが、リナグリプチンに加えて他の1種以上の有効成分を配合してもよく、そのような他の有効成分としては選択的SGLT2阻害剤であるエンパグリフロジンを挙げることができる。
【0016】
使用する賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤としては、医薬品の製剤化において一般的に使用される各種の賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を挙げることができるが、本発明にあっては、崩壊遅延、溶出遅延を防止する観点から、賦形剤としてマンニトールを用い、崩壊剤としてはトウモロコシデンプン又はクロスポビドンを用い、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウムを用いるのが良い。
【0017】
本発明が提供する医薬組成物である錠剤については、特に結合剤を用いることなく直打法にて打錠して素錠を調製することも可能である。
しかしながら、直打法にて調製した場合には、経時的な崩壊遅延、及び製剤からのリナグリプチンの溶出遅延を認めた(後記する試験例を参照)。
【0018】
しかしながら、結合剤として特異的な、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用して、湿式造粒法である流動層造粒法を用いて調製した製剤においては崩壊遅延、溶出遅延が認められないものであり、さらに、熱苛酷条件による保存において類縁物質の生成が抑制されており、製剤の保存安定性も良好なものであった。
【0019】
したがって、本発明にあっては、結合剤として特に、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用することに特異的な特徴点を有するものである。
【0020】
また、本発明は上記で調製された素錠をフィルムコーティングして得たリナグリプチン含有フィルムコート錠を提供するものであるが、コーティング剤としてヒプロメロースを使用し、特にポリエチレングリコール(マクロゴール)をフィルム層として使用しないことが肝要である。
このポリエチレングリコール(マクロゴール)をフィルム層中に含まないことにより、光苛酷条件による保存において類縁物質の生成が抑制されており、製剤の保存安定性に優れたものとなる点で、本発明のまた別な特異的な特徴点であるといえる。
【0021】
なお、素錠のフィルムコーティングに際してはコーティング剤としてのヒプロメロースに加えて各種着色剤を添加することができ、そのような着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、酸化チタン、タルク等を挙げることができる。
【実施例0022】
以下に、本発明を、実施例、比較例並びに試験例等によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0023】
本発明において検討した医薬組成物としての配合処方を下記表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例1:リナグリプチン含有フィルムコート錠の調製
<第一工程:造粒乾燥工程>
リナグリプチン、マンニトールおよびトウモロコシデンプンを流動層造粒乾燥機(フロイント産業株式会社製、型式:FLO-1)に入れ、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を精製水に溶解した結合液を噴霧して造粒した後、乾燥した。
【0026】
<第二工程:整粒工程>
第一工程で製造した造粒末を、24メッシュ丸篩にて篩過した。
【0027】
<第三工程:混合工程>
得られた整粒末に対してステアリン酸マグネシウムを加え、混合した。
【0028】
<第四工程:打錠工程>
第三工程で製造した混合末を、ロータリー打錠機(株式会社畑鐵工所製、型式:HT-EX6SS-II)を用い、錠剤質量180mg、錠厚3.5mmとなるように打錠した。
【0029】
<第五工程:フィルムコーティング工程>
フィルムコーティング機(パウレック株式会社製、型式:PRC-GTXmini)を用い、第四工程で得られた素錠1錠につき、コーティング基材を水に溶解・分散した液を用いて5mgのフィルムコーティングを施し、実施例1のリナグリプチン含有フィルムコート錠を得た。
【0030】
実施例2:リナグリプチン含有フィルムコート錠の調製
<第一工程:造粒乾燥工程>
リナグリプチン、マンニトールおよびトウモロコシデンプンを流動層造粒乾燥機(フロイント産業株式会社製、型式:FLO-1)に入れ、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを精製水に溶解した結合液を噴霧して造粒した後、乾燥した。
【0031】
<第二工程:整粒工程>
第一工程で製造した造粒末を、24メッシュ丸篩にて篩過した。
【0032】
<第三工程:混合工程>
得られた整粒末に対してステアリン酸マグネシウムを加え、混合した。
【0033】
<第四工程:打錠工程>
第三工程で製造した混合末を、ロータリー打錠機(株式会社畑鐵工所製、型式:HT-EX6SS-II)を用い、錠剤質量180mg、錠厚3.5mmとなるように打錠した。
【0034】
<第五工程:フィルムコーティング工程>
フィルムコーティング機(パウレック株式会社製、型式:PRC-GTXmini)を用い、第四工程で得られた素錠1錠につき、コーティング基材を水に溶解・分散した液を用いて5mgのフィルムコーティングを施し、実施例2のリナグリプチン含有フィルムコート錠を得た。
【0035】
比較例1:コーティング基材としてポリエチレングリコールの使用によるリナグリプチン含有フィルムコート錠の調製
フィルムコーティング機(パウレック株式会社製、型式:PRC-GTXmini)を用い、実施例2で製造した素錠1錠につき、ポリエチレングリコールを含むコーティング基材を水に溶解・分散した液を用いて5mgのフィルムコーティングを施し、比較例1のリナグリプチン含有フィルムコート錠を得た。
【0036】
比較例2:結合剤を配合せず直打法により素錠の調製後、コーティング基材としてポリエチレングリコールの使用によるリナグリプチン含有フィルムコート錠の調製
<第一工程:混合工程>
リナグリプチン、マンニトール、クロスポビドン及び軽質無水ケイ酸を混合した後、ステアリン酸マグネシウムを加え、混合した。
【0037】
<第二工程:直接打錠工程>
第一工程で製造した混合末を、ロータリー打錠機(株式会社畑鐵工所製、型式:HT-EX6SS-II)を用い、錠剤質量180mg、錠厚3.5mmとなるように打錠した。
【0038】
<第三工程:フィルムコーティング工程>
フィルムコーティング機(パウレック株式会社製、型式:PRC-GTXmini)を用い、第二工程で得られた素錠1錠につき,ポリエチレングリコールを含むコーティング基材を水に溶解・分散した液を用いて5mgのフィルムコーティングを施し、比較例2のリナグリプチン含有フィルムコート錠を得た。
【0039】
以上で調製した実施例1及び2、並びに比較例1及び2の各フィルムコート錠について、以下の保存条件のもとで保存し、その崩壊試験、溶出試験並びに純度試験を検討した。
【0040】
保存条件A:
錠剤にPTP包装(ポリプロピレンフィルム及びアルミニウム箔)を施し、アルミピロー包装(アルミニウム/ポリエチレンラミネートフィルム)し、保存用検体とした。
60℃、湿度なりゆきの温湿度条件下で保存し、保存開始前、2週間及び4週間保存後の崩壊性、溶出性及び純度を評価した。
【0041】
保存条件B:
錠剤をガラスシャーレに入れ、開封して保存用検体とした。
標準光源D65ランプを用いて曝光し、「新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドラインについて 平成9年5月28日 薬審第422号 各都道府県衛生主管部(局)長あて 厚生省薬務局審査課長通知)」に準じ、総照度として120万lux/hr後の純度を評価した。
【0042】
試験1:崩壊試験
<方法>
試験検体錠剤6錠をとり、崩壊試験機(富山産業株式会社製、型式:NT-20H)にて崩壊時間を測定した。
<結果>
その結果を後記する表2に示した。
【0043】
試験2:溶出試験
<方法>
試験検体としての錠剤1個をとり、試験液に水900mLを用い、パドル法により毎分50回転で試験を行った。
【0044】
<結果>
その結果を後記する表3に示した。
【0045】
試験3:純度試験
<方法>
試験検体としての錠剤1個をとり、液体クロマトグラフィーにて測定した。
【0046】
<結果>
その結果を後記する表4に示した。
【0047】
以上の各試験の結果を、下記の各表中に示した。
表2は崩壊試験の結果であり、表3は溶出試験の結果であり、表4は純度試験の結果である。
【0048】
表2:崩壊試験(試験1)の結果
【0049】
【表2】
【0050】
表3:溶出試験(試験2)の結果
【0051】
【表3】
【0052】
表4:純度試験(試験3)の結果
【0053】
【表4】
【0054】
<考察>
表2及び表3の結果から、結合剤として特異的なポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用して、流動層造粒法にて製造した実施例1、実施例2及び比較例1のフィルムコート錠は崩壊性及び溶出性の遅延を認めず、直打法にて製造した比較例2よりも安定性に優れていることが示された。
【0055】
また、表4の純度試験の結果から、直打法にて製造した比較例2のフィルムコート錠よりも、流動層造粒法にて製造した実施例1及び実施例2のフィルムコート錠は、熱苛酷条件における類縁物質の生成が抑制されており、かつフィルム層にポリエチレングリコールを含まない実施例2のフィルムコート錠では比較例1のフィルムコート錠と比較して光苛酷条件における類縁物質の生成が抑制されているものであった。
このことから、流動層造粒法にて素錠を調製し、フィルムコーティング錠とする場合において、ポリエチレングリコールをフィルム層から除いた処方とすることが製剤の安定化に有効であることが示された。
【0056】
以上より、本発明は、結合剤として特異的な、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用して、湿式造粒法である流動層造粒法を用いて調製した製剤においては崩壊遅延、溶出遅延が認められないものであり、さらに、熱苛酷条件による保存において類縁物質の生成が抑制されており、製剤の保存安定性も良好なものであり、本発明の特異性がよく理解される。
【0057】
なお、表4の純度試験における実施例1及び実施例2の結果を比較すると、実施例1で類縁物質の増加が抑制されていることからみて、結合剤としてはポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を用いるのがより望ましいものと言える。
【0058】
また、本発明のリナグリプチン含有フィルムコート錠の調製に際しては、コーティング剤としてヒプロメロースを使用し、特にポリエチレングリコール(マクロゴール)をフィルム層として使用しないことにより、光苛酷条件による保存において類縁物質の生成が抑制されており、製剤の保存安定性に優れたものとなる点で、本発明の別の特異性が理解されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、崩壊遅延及び溶出遅延を防止し、かつ類縁物質の増加が抑制されたリナグリプチン含有医薬組成物、特にリナグリプチン含有フィルム錠、及びその製造方法が提供される点で、その産業上の利用性は多大なものである。