(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107268
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】空洞設備用足場の支持機構
(51)【国際特許分類】
E04G 3/24 20060101AFI20230727BHJP
F16M 13/02 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
E04G3/24 301Z
F16M13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008352
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 颯太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】上層の足場ブロックによる過大な荷重がかかるときでも、足場ブロックの水平状態を安定的に維持することのできる空洞設備用足場の支持機構を提供する。
【解決手段】空洞設備用足場の支持機構は、内部に空洞を有する空洞設備において、斜面が形成された底部Bに対し複数の足場ブロックを積み上げて設置することにより構築されるものであって、各足場ブロックは、現場作業者が作業を行う作業床を支持する平面視矩形状のフレーム3と、フレーム3の両端部から高さ方向に延びる一対の門型支柱7とを備え、最下層に配置される第1足場ブロックのフレーム3の4隅には、高さ方向に延びるジャッキボルト13と、ジャッキボルト13の下端に回動自在に連結され底部Bの斜面に沿って配されるベースプレート14とがそれぞれ設けられており、フレーム3の下部とベースプレート14との間には、斜め方向に延びたサポート部材16が連結されてそれぞれ設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を有する空洞設備において、斜面が形成された底部に対し複数の足場ブロックを積み上げて設置することにより構築される空洞設備用足場の支持機構であって、
前記各足場ブロックは、
少なくとも現場作業者が作業を行う作業床部を支持する平面視矩形状のフレーム部と、
前記フレーム部の両端部から高さ方向に延びる一対の支柱部と、を備え、
最下層に配置される前記足場ブロックの前記フレーム部の4隅には、
高さ方向に延びる棒状支持部材と、
前記棒状支持部材の下端に回動自在に連結され前記底部の斜面に沿って配される平板状設置部材と、がそれぞれ設けられており、
前記フレーム部の下部と前記平板状設置部材との間には、斜め方向に延びたサポート部材が連結されてそれぞれ設けられることを特徴とする、空洞設備用足場の支持機構。
【請求項2】
前記サポート部材は、
前記フレーム部の下部及び前記平板状設置部材にそれぞれ回動自在に連結されている、請求項1に記載の空洞設備用足場の支持機構。
【請求項3】
前記サポート部材には、
それを伸縮自在にかつ所定の長さに固定するジャッキボルト部が形成されている、請求項1または2に記載の空洞設備用足場の支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所のボイラ炉といった空洞設備においてその内部に設けられる空洞設備用足場の支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば火力発電所のボイラ炉といった空洞設備は、内部に空洞を有する略中空四角柱状に形成され、その底部は下方に向かうほど先細りとなったホッパー構造とされている(例えば特許文献1参照)。この底部Bには、
図4に示すような空洞設備用足場1が組み立てられて設けられ、空洞設備用足場1は、例えばボイラ炉内部の補修等のメンテナンス時において用いられる。空洞設備用足場1は、所定の間隔を隔ててボイラ炉の底部Bの長手方向に複数設けられる。
【0003】
空洞設備用足場1は、
図5に示すように、複数の足場ブロック2(以下、足場ブロックを総称する場合、符号2を用いる)がそれぞれ例えばクレーン等で吊り上げられて移動され所望位置に設置されてなる。空洞設備用足場1では、底部Bの最下部に第1足場ブロック21が設置され、その上層に第2足場ブロック22及び第3足場ブロック23が側面方向から見て左右略対称に設置され、さらにその上層に左右方向に広がるように3つの足場ブロックが設置される。
【0004】
ここで、例えば第1足場ブロック21は、一対の側面壁部を有する枠状のフレーム3、フレーム3上に配置されて設けられた作業床(図略)、フレーム3の両端部から高さ方向に延びた一対の門型支柱7、フレーム3の両端部から斜め方向に延び略山状に形成された一対の斜材9、及び一対の門型支柱7の間に設けられた一対の手摺り11等によって概略構成される。
【0005】
特に、最下層の第1足場ブロック21では、
図6に示すように、フレーム3の両端部に、高さ方向に延びるジャッキボルト13が設けられ、ジャッキボルト13の下端には略平板状のベースプレート14が設けられている。ベースプレート14は、ボイラ炉底部Bの斜面に沿って第1足場ブロック21を支持するように配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、空洞設備用足場1は、上述したように、複数の足場ブロック2が積み重ねられて構成されるため、各足場ブロック2には相応の荷重がかかる。特に最下層の第1足場ブロック21のジャッキボルト13及びベースプレート14には、上層の足場ブロック2による過大な荷重がかかる(
図6の矢印P参照)。この場合、ベースプレート14はボイラ炉の底部Bに沿って斜め方向に配されているため、ジャッキボルト13には、ボイラ炉の底部Bの内側に向かう力(同図の矢印Q参照)が加わり、ジャッキボルト13が矢印Q方向に変形することがあった。ジャッキボルト13が変形すると、その分、第1足場ブロック21の作業床の水平状態が保たれなくなってしまう。
【0008】
また、最下層の第1足場ブロック21に、上層の足場ブロック2による過大な荷重Pがかかると、ベースプレート14が底部Bの斜面上に静止できなくなり、底部Bの斜面上を滑り変位してしまうことがあった(同図の矢印R参照)。この場合も、作業床の水平状態が保たれなくなる要因になっていた。
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、上層の足場ブロックによる過大な荷重がかかるときでも、足場ブロックの水平状態を安定的に維持することのできる空洞設備用足場の支持機構を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって提供される空洞設備用足場の支持機構は、内部に空洞を有する空洞設備において、斜面が形成された底部に対し複数の足場ブロックを積み上げて設置することにより構築される空洞設備用足場の支持機構であって、前記各足場ブロックは、少なくとも現場作業者が作業を行う作業床部を支持する平面視矩形状のフレーム部と、前記フレーム部の両端部から高さ方向に延びる一対の支柱部と、を備え、最下層に配置される前記足場ブロックの前記フレーム部の4隅には、高さ方向に延びる棒状支持部材と、前記棒状支持部材の下端に回動自在に連結され前記底部の斜面に沿って配される平板状設置部材と、がそれぞれ設けられており、前記フレーム部の下部と前記平板状設置部材との間には、斜め方向に延びたサポート部材が連結されてそれぞれ設けられることを特徴としている。
【0011】
本発明の空洞設備用足場の支持機構において、前記サポート部材は、前記フレーム部の下部及び前記平板状設置部材にそれぞれ回動自在に連結されているとよい。
【0012】
本発明の空洞設備用足場の支持機構において、前記サポート部材には、それを伸縮自在にかつ所定の長さに固定するジャッキボルト部が形成されているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最下層に配置される足場ブロックにおいて、フレーム部の下部と平板状設置部材との間に斜め方向に延びたサポート部材が設けられるので、フレーム部、棒状支持部材、平板状設置部材及びサポート部材で三角形状の構造体を形成でき、足場ブロックを強固に支持することができる。また、サポート部材は、平板状設置部材を介して底部の斜面に対して押圧力を与えることができる。そのため、上層の足場ブロックによる過大な荷重がかかるときでも、足場ブロックの水平状態を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の空洞設備用足場の支持機構が適用される足場ブロックの構成を示す概略斜視図である。
【
図2】サポート部材の周辺構造を第1足場ブロックの主要部分と切り離して示す斜視図である。
【
図3】サポート部材の作用を説明するための図である。
【
図5】
図4に示す空洞設備に設置される空洞設備用足場の概略側面図である。
【
図6】従来の足場ブロックの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
なお、以下の説明においては、[背景技術]の欄で参照した図を再び参照する。また、[背景技術]の欄で説明した部材と同じものについては同符号で示す。
【0017】
本実施形態に係る空洞設備用足場1の支持機構は、例えば火力発電所のボイラ炉といった空洞設備に適用される。火力発電所のボイラ炉は、その全体構造が内部に空洞を有する略中空四角柱状に形成されており、その底部Bは、
図4に示したように、下方に向かうほど先細りとなったホッパー構造とされている。
【0018】
空洞設備用足場1は、
図5に示したように、複数の足場ブロック2が積み重ねられてなる。空洞設備用足場1は、ボイラ炉の最下部に設置される第1足場ブロック21と、その上層に側面方向から見て左右略対称に設置される第2足場ブロック22及び第3足場ブロック23と、さらにその上層に左右方向に広がるように設置される3つの足場ブロック2とから構成される。
【0019】
図1は、本発明の空洞設備用足場1の支持機構が適用される第1足場ブロック21の構成を示す概略斜視図である。第1足場ブロック21では、枠状(図略)のフレーム3の上部に略平板状の作業床4が支持されて設けられている。フレーム3は、平面視で略矩形状の本体部(図略)と、作業床4の長手方向に沿って本体部の左右端部から立設された一対の側面壁部5とからなる。作業床4は、この上面において現場作業者が作業を行うためのものである。
【0020】
フレーム3の両端部には、高さ方向に延びた一対の門型支柱7が連接部材6を介してそれぞれ設けられている。一対の門型支柱7は、フレーム3の両端部において対向して設けられている。これら門型支柱7は、この第1足場ブロック21の上部に設置される第2足場ブロック22または第3足場ブロック23を支持するためのものである。各門型支柱7は、それぞれの上端に第2及び第3足場ブロック22,23と連結するための側面視で略H字状の連結部材8がそれぞれ設けられている。
【0021】
一対の門型支柱7同士の間には、フレーム3の両側面壁部5に沿って門型支柱7の下部から互いに接近するように斜め方向にそれぞれ延びて先端部で接続され、略山状に形成された一対の斜材9が設けられている。一対の斜材9は、この第1足場ブロック21の上部に設置される第2足場ブロック22または第3足場ブロック23を支持するためのものである。一対の斜材9のそれぞれの先端接続部には、それらと連結するための側面視で略H字状の連結部材10がそれぞれ設けられている。
【0022】
また、一対の門型支柱7同士の間には、フレーム3の両側面壁部5に沿って左右方向に延びる一対の手摺部11が設けられている。一対の手摺部11のそれぞれは、左右方向に延びる上さん、中さん、下さん、及びそれらを接続するように上下方向に延びる3本の接続部材によって構成される。一対の手摺部11は、作業床4上で作業する現場作業者の墜落を防止するためのものである。
【0023】
フレーム3の両端部には、斜め方向に広がるように延びる一対の梯子部材12がそれぞれ設けられている。各梯子部材12は、第1足場ブロック21の上部に設置される第2足場ブロック22及び第3足場ブロック23のそれぞれのベースプレート14(後述)を支持するためのものである。
【0024】
フレーム3の四方端には、高さ方向に延びるジャッキボルト13がそれぞれ設けられ、ジャッキボルト13の下端には、略平板状のベースプレート14がそれぞれ設けられている。ベースプレート14は、斜面を有する底部Bに沿うように第1足場ブロック21を支持するために斜め方向に傾けられて配置されている。
【0025】
本実施形態では、フレーム3の四方端近傍において、フレーム3の下部とベースプレート14とを連結する棒状のサポート部材16がそれぞれ設けられている。
図2は、サポート部材16の周辺構造を第1足場ブロック21の主要部分と切り離して示す斜視図である。この図のように、サポート部材16は、第1足場ブロック21のフレーム3の両端部近傍のそれぞれにおいて、2本同士が接続されている。
【0026】
すなわち、一対のサポート部材16は、それらの一端に側面視略H字状の連結部材17がそれぞれ回動自在に連結されている。連結部材17は、
図1に示すように、フレーム3の下部に連結される。一対のサポート部材16は、それらの他端にベースプレート14がそれぞれ回動自在に連結されている。そして、一対のサポート部材16同士は、2本の接続部材18によって連結されている。
【0027】
各サポート部材16には、その連結部材17側にジャッキボルト部19が形成されている。サポート部材16は、このジャッキボルト部19によって伸縮自在とされかつ所定の長さに固定することができる。また、サポート部材16は、このジャッキボルト部19が伸縮されることによりベースプレート14の傾斜角度を調整することができる。そのため、ベースプレート14は、ボイラ炉の底部Bの傾斜角度に応じてその傾き角度を変化させることができる。
【0028】
上記の構成によれば、最下層の第1足場ブロック21の左右下部近傍に複数のサポート部材16がそれぞれ設けられることにより、第1足場ブロック21に上層の足場ブロック2による過大な荷重(
図3の矢印P参照)がかかるときでも、第1足場ブロック21の水平状態を強固に維持することができる。
【0029】
すなわち、サポート部材16が設けられると、
図3に示すように、フレーム3、ジャッキボルト13、ベースプレート14、及びサポート部材16によって略三角形状の構造体Tが形成されることになり、構造物として安定させることができる。
【0030】
また、サポート部材16は、
図3の矢印Uで示すように、ボイラ炉の底部Bに対してほぼ直交方向に押圧力Uを与えることができる。この押圧力Uは、ジャッキボルト部19による伸縮によって調整することが可能である。そのため、ベースプレート14とボイラ炉の底部Bとの間には、大きな摩擦力を生じさせることができ、ベースプレート14が底部Bの斜面上を滑り変位することを防止することができる。そのため、第1足場ブロック21の水平状態を安定的に維持することができる。
【0031】
また、ジャッキボルト部19は、ジャッキボルト13とともに作用し、それらを伸縮させることにより、第1足場ブロック21の高さを調整することができ、第1足場ブロック21、ひいては空洞設備用足場1の水平状態を維持することができる。
【0032】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記足場ブロック2及びサポート部材16等は、上記した実施形態の形状、大きさ、数量及び位置関係等に限るものではない。
【符号の説明】
【0033】
1 空洞設備用足場
2 足場ブロック
3 フレーム
4 作業床
7 門型支柱
13 ジャッキボルト
14 ベースプレート
16 サポート部材
17 連結部材
19 ジャッキボルト部
21 第1足場ブロック
B 底部(ボイラ炉の)