(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107276
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】金属光沢を有する紙
(51)【国際特許分類】
B32B 15/12 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
B32B15/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008363
(22)【出願日】2022-01-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】397028979
【氏名又は名称】五條製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100201101
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 祐子
(72)【発明者】
【氏名】川口 五十一
(72)【発明者】
【氏名】川口 幸一郎
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10D
4F100AJ07C
4F100AK01C
4F100AK22B
4F100AK25B
4F100AK25E
4F100AK51E
4F100AL01B
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00B
4F100DG10A
4F100EH66D
4F100EJ65E
4F100GB15
4F100JA13A
4F100JB05B
4F100JB05E
4F100JB09B
4F100JB09E
4F100JC00C
4F100JL11B
4F100JM01B
4F100JN24
(57)【要約】
【課題】原料が植物由来の生分解性フィルムにアルミニウムを蒸着し、基紙と貼り合わせた高級化粧箱の用紙を効率良く製造すること。
【解決手段】 基紙、
水溶性接着剤及び/又は水分散性接着剤から形成された、固形分塗布量が3.0~5.0g/m
2の水系接着剤層、
アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルム、
及びプライマー層、
を順に積層してなるアルミニウム蒸着フィルム貼合紙及びその製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙、
水溶性接着剤及び/又は水分散性接着剤から形成された、固形分塗布量が3.0~5.0g/m2の水系接着剤層、
アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルム、
及びプライマー層、
を順に積層してなる、
アルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
【請求項2】
前記基紙は、米坪が250~400g/m2、及び厚みが250~500μmの、非塗工紙、コート紙、又はキャストコート紙である請求項1に記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
【請求項3】
前記植物由来の生分解性フィルムがデンプンを含有する請求項1又は2に記載の植物由来の生分解性フィルムを有するアルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
【請求項4】
前記プライマー層が水溶性及び/又は水分散性の樹脂層である、請求項1~3のいずれかに記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
【請求項5】
アルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法であって、
植物由来の生分解性フィルムの一方の面にアルミニウム層を形成する工程、
アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルムに60~90N/mの張力をかけながら、アルミニウム層が形成されていない側の面に、水溶性及び/又は水分散性の接着剤を固形分で、3.0~5.0g/m2となるように設けて水系接着剤層を形成する工程、
植物由来の生分解性フィルムに形成した該水系接着剤層と、基紙とを密着させて貼り合わせる工程、
アルミニウム層側にプライマー層を設ける工程、
80℃以下の温度で該水系接着剤層及び該プライマー層を乾燥する工程、
を有する方法。
【請求項6】
前記基紙は、米坪が250~400g/m2、及び厚みが250μm~500μmの、非塗工紙、コート紙、又はキャストコート紙である請求項5に記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法。
【請求項7】
前記植物由来の生分解性フィルムがデンプンを含有する請求項5又は6に記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法。
【請求項8】
前記プライマー層が水溶性及び/又は水分散性の樹脂層である、請求項5~7のいずれかに記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属光沢を有する紙に関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有する紙は、高級化粧箱等の材料とされる。具体的にはキャストコート紙等の基紙にアルミニウム蒸着PETフィルムを貼り合わせ美粧性を持たせることにより、高級感を出していた。
ところが、PETフィルムは石油由来でサステナブルな材料ではなく、またこのような紙を廃棄する際は、PETフィルムは生分解性ではなく、かつ焼却時に発生する燃焼カロリーが紙よりも高いので、焼却炉への負担も大きかった。
そのため、外観はアルミニウム蒸着PETフィルムを使用したときと同じであり、同時にサステナブルな材料で、かつ廃棄時の環境負荷や焼却炉への負荷が低い材料を得ることが望まれていた。
【0003】
そのような中、特許文献1、2に記載のように、基材フィルム(セロファン)の片面又は両面に、防湿コート層を設け金属を蒸着したフィルムと基材とを水系接着剤で貼合しプライマー層を設けたセロハン蒸着紙が提案されている。当該文献では、植物由来のセルロースフィルムの両面又は、片面に防湿コート層を設けた防湿セロファンを用い金属を蒸着したフィルムと基材とを貼り合わせている。セロファンは、植物由来で生分解性ではあるが、特許文献1、2に記載された蒸着フィルムの重要な層構成である防湿コート層は、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の樹脂で石油由来原料で、生分解性はない。
また、アルミニウム蒸着紙については、特許文献3に記載のように、基材フィルム(ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリビニルアルコール等の延伸フィルム等)の一方の面に、剥離層兼印刷用プライマー層(塩化ビニル- 酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、可塑化したニトロセルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等)を形成する工程と、少なくとも前記剥離層兼印刷用プライマー層面に金属蒸着層を形成する工程と、少なくとも前記金属蒸着層面にエマルジョン型接着剤を塗布すると共に前記エマルジョン型接着剤塗布面に坪量が30~100g/m2の第1紙基材層を被着して後に乾燥する工程と、前記基材フィルムを剥離する工程とからなる金属蒸着紙の製造方法は公知である。
更に、特許文献4に記載のように、原紙の片面にクレーコート層とアンカーコート層を順に設け、アンカーコート層上に金属を蒸着して金属蒸着層を形成し、さらにトップコート層を順次設けて、ラベル用金属蒸着紙を得ることは公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-167089号公報
【特許文献2】特開2021-167090号公報
【特許文献3】特開2006-27244号公報
【特許文献4】特開平3-136842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリエステルやポリプロピレン等の石油由来のフィルムに比べ、耐水性や耐熱性、更に強度に難のある植物由来で生分解性のあるフィルムを使用し、外観は従来の金属光沢を有する貼合紙と同様の金属光沢を有し、廃棄時の環境や、焼却炉への負担が軽減されると共に、有機材料として天然の資源をより多く使用した金属光沢を有した紙、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は以下の通りである。
1.基紙、
水溶性接着剤及び/又は水分散性接着剤から形成された、固形分塗布量が3.0~5.0g/m2の水系接着剤層、
アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルム、
及びプライマー層、
を順に積層してなる、
アルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
2.前記基紙は、米坪が250~400g/m2、及び厚みが250μm~500μmの、非塗工紙、コート紙、又はキャストコート紙である1に記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
3.前記植物由来の生分解性フィルムがデンプンを含有する1又は2に記載の植物由来の生分解性フィルムを有するアルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
4.前記プライマー層が水溶性及び/又は水分散性の樹脂層である、1~3のいずれかに記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙。
5.アルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法であって、
植物由来の生分解性フィルムの一方の面にアルミニウム層を形成する工程、
アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルムに60~90N/mの張力をかけながら、アルミニウム層が形成されていない側の面に、水溶性及び/又は水分散性の接着剤を固形分で、3.0~5.0g/m2となるように設けて水系接着剤層を形成する工程、
植物由来の生分解性フィルムに形成した該水系接着剤層と、基紙とを密着させて貼り合わせる工程、
アルミニウム層側にプライマー層を設ける工程、
80℃以下の温度で該水系接着剤層及び該プライマー層を乾燥する工程、
を有する方法。
6.前記基紙は、米坪が250~400g/m2、及び厚みが250~500μmの、非塗工紙、コート紙、又はキャストコート紙である5に記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法。
7.前記植物由来の生分解性フィルムがデンプンを含有する5又は6に記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法。
8.前記プライマー層が水溶性及び/又は水分散性の樹脂層である、5~7のいずれかに記載のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観は従来の金属光沢を有する貼合紙と同様の金属光沢を有し、シワを有することがなく、製函性及び美粧性に優れる貼合紙を得ることができる。さらに、廃棄時の環境や、焼却炉への負担を軽減し、有機材料として天然の資源をより多く使用して、環境への負荷を低減し、より再生可能な材料を使用でき、地球環境に優しくサステナブルな素材にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙の例の模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、植物由来の生分解性フィルムの一方の面にアルミニウム層を形成し、これと基紙とを貼り合わせた用紙及びその製造方法である。
具体的には、
図1に示すように、基紙、水系接着剤層、植物由来の生分解性フィルム、アルミニウム蒸着層及びプライマー層を順に積層してなるアルミニウム蒸着フィルム貼合紙と、その製造方法である。
【0010】
各層の具体的な構成を以下に示す。
<基紙>
本発明に使用できる基紙としては、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは平滑な原紙が好ましい。
基紙を構成するパルプとしては木材や非木材(ケナフ・バガス・バンブー)の化学パルプを主な原料としたものが好ましい。
中でも、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)等の化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)等の機械パルプ等の天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いる。この基紙には一般に製紙で用いられている内添サイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合されてもよい。
さらに、表面サイズ剤、表面紙力増強剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が片面又は両面に塗布されていてもよい。これらの剤が塗布された紙の中でもコート紙やキャストコート紙を使用することが好ましい。
また、基紙の厚みに関して特に制限はないが、紙を抄造中又は抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等して表面平滑性が良好なものが好ましい。
中でも、米坪250~400g/m2、及び厚み250~500μmであることが好ましい。このような基紙を採用することにより、用途にもよるが、化粧箱用にする場合には、箱に十分な剛度と厚みを持たせることができる。
このような基紙としては、非塗工紙及びコート紙のいずれも好ましい。コート紙の中でもキャストコート紙は平滑で美粧性に優れた効果が得られるので好ましい。また片面コート紙を使用する際には、その非塗工層側を植物由来の生分解性フィルム側にして積層させることが好ましい。
【0011】
<水溶性接着剤及び/又は水分散性接着剤>
本発明においては水溶性接着剤及び/又は水分散性接着剤を使用する。これらを合わせて「接着剤」というときがある。そして、これらの接着剤からなる層を「水系接着剤層」というときがある。
接着剤は、アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルムのうちの、植物由来の生分解性フィルム側の面と基紙を接着させるために使用する。そのため、このような接着を確実に行なうために適した組成であることが必要である。
これらの接着剤として、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン等の天然高分子系水溶性接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリビニルアクリルアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、レゾール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂等を使用した合成高分子系水溶性接着剤が挙げられる。
中でも、水溶性アクリル樹脂系接着剤、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂接着剤が好ましい。
また、水分散性接着剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、アクリル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、スチレンブタジエン共重合体樹脂、スチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリルブタジエン共重合体樹脂、スチレンイソプレン共重合体樹脂等のジエン系共重合体樹脂、ポリウレタン、シリル化ウレタン等のウレタン樹脂、アクリル-シリコン複合体、アクリル-シリコン-ウレタン複合体、アイオノマー型ウレタン系樹脂ラテックス、コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体等を使用したラテックス系接着剤、エマルジョン型接着剤を挙げることができる。
これらの中で、アクリル酢酸ビニル共重合樹脂のエマルジョン接着剤やエチレン酢酸ビニル共重合樹脂のエマルジョン接着剤が優れた接着性を発揮する点で好ましい。
【0012】
<水溶性接着剤及び/又は水分散性接着剤の塗布方法>
本発明における接着剤の塗布方法としては、公知の任意の手段を採用できる。そのため、ウェットラミネーターやグラビアコーター等の、接着剤を塗布する際に使用できる通常の装置を使用して、通常の条件で塗布できる。
その際の接着剤の塗布量は固形分で3.0~5.0g/m2が好ましい。3.0g/m2未満であると、十分な接着力を発揮できず、5.0g/m2を超えると、金属層を有する植物由来の生分解性フィルムを貼り合わせる際に、過剰な水分が植物由来の生分解性フィルム層に吸湿される。その結果として、加熱条件下で植物由来の生分解性フィルムに吸湿シワが発生しやすくなる。
【0013】
<アルミニウム層が形成された植物由来の生分解性フィルム>
(植物由来の生分解性フィルム)
植物由来の生分解性フィルムとして、ポリブチレンサクシネートを主成分とする三菱ケミカル社のBio-PBS(ポリブチレンサクシネート)、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸を共重合させたカネカ社のPHBH、ポリ乳酸を主成分としたユニチカ社のテラマック、デンプンを主成分としたノバモント社のMater-Biやクラレ社のプランティックHP、フタムラ化学やレンゴーのセロファン等を使用できる。このようなフィルムの厚みは、10~50μmが望ましい。10μmより薄いと貼合時により破断しやすくなる可能性があり、50μmを超えると製函を行なう場合には不具合を生じる可能性がある。
【0014】
<アルミニウム層>
アルミニウム蒸着層については、公知の条件や公知の手段により、植物由来の生分解性フィルムの一方の面に蒸着されて形成されたものであり、その厚さは0.02~0.1μmであることが好ましい。このため、使用するアルミニウムの量を大幅に削減でき、かつ本発明の紙が海洋投棄や土中投棄された場合でも、アルミニウム蒸着層は薄膜であるため特に全体が酸化されやすく酸化アルミニウムとなるので金属感が無くなり、原形を留めない。
また、このアルミニウム蒸着層は、金属箔(厚さ7~10μm程度)よりも格段に薄いので、金属光沢を十分に有しつつ、シワ等を発生させずに円滑に折り曲げ加工できる。
本発明においては、生分解性が早く、アルミニウムを蒸着したときの金属光沢が優れた適度の厚みの蒸着フィルムが好ましい。よって、フィルムとアルミニウムとの蒸着密着性が高く、薄く蒸着輝度が良い平滑で透明性が高いフィルムを選定する必要がある。
ポリブチレンサクシネートフィルムの場合には、アルミニウム蒸着層の輝度、ポリブチレンサクシネートフィルムとの密着性がそれほど高くなく、目視にて曇りが発生する場合がある。その他にデンプンフィルム及びセロファンは、アルミニウムを蒸着させた際の密着性に優れる。さらに、セロファンよりもデンプンフィルムやポリ乳酸(PLA)のほうが、その上に形成したアルミニウム蒸着層によるフィルム貼合紙の輝度に優れる場合がある。またセロファンよりもデンプンフィルムやポリ乳酸を使用するほうが、その一方の面にアルミニウム蒸着層を設けて、アルミニウム蒸着フィルム貼合紙にしたときに、アルミニウム蒸着層に筋等が生じにくい傾向がある。
【0015】
<水系接着剤層とアルミニウム層を有する植物由来生分解性フィルムの貼合方法>
アルミニウム層を有する植物由来生分解性フィルムに60~90N/mの張力をかけながら、アルミニウム層が形成されていない植物由来生分解性フィルム側の面に上記接着剤を塗布して水系接着剤層を形成する。このときの水系接着剤層の固形分塗布量は3.0~5.0g/m2となるようにする。接着剤を塗布後必要に応じて80℃以下で乾燥しても良い。
その後、ラミネーターを使用して、例えば、繰り出した基紙表面と、繰り出したアルミニウム蒸着層を有する植物由来生分解性フィルムのフィルム側に設けた上記水系接着剤層を、必要に応じて基紙とアルミニウムが蒸着された植物由来生分解性フィルムのそれぞれに流れ方向に張力をかけながら、水系接着剤層を介して圧着し、加熱する。このときに植物由来生分解性フィルムにかかる張力は60~90N/mが好ましく、なかでも65N/m以上がより好ましく、80N/m以下がより好ましい。60N/m未満のときにはデンプンフィルムにシワが入りやすくなる可能性があり、90N/mを超えるとデンプンフィルムが切れやすくなる可能性がある。
上記の圧着後の加熱温度としては、60~80℃が好ましい。80℃を超えると白化や虹化しやすくなり、60℃未満では、乾燥時間が長くなり生産性も悪く、接着剤の水分が植物由来生分解性フィルムに吸湿されシワになりやすい。
本発明のアルミニウム蒸着フィルム貼合紙は、外観上、アルミニウム蒸着層が平滑面を形成していることが必要である。植物由来の生分解性フィルムの一方の面にアルミニウムを蒸着した状態において、アルミニウム蒸着層が均一かつ平滑であって、シワ等が発生していないことが必要である。さらにその後の工程を経て、アルミニウム蒸着フィルム貼合紙を得た後においても、均一であり、かつ植物由来の生分解性フィルムにシワ等が入ることがなく、結果的にアルミニウム蒸着層にもシワ等が存在せず、形成された直後の状態のアルミニウム蒸着層の表面の均一さ、及び反射光からみて表面の平滑さが維持されていることが必要である。
【0016】
<プライマー層>
本発明におけるプライマー層は、アルミニウム蒸着層表面に形成され、アルミニウム蒸着フィルム貼合紙に印刷インキにより印刷する際に、該インキを表面に保持することができる層である。プライマー層を形成する樹脂は水溶性及び/又は水分散性であり、プライマー層形成用組成物は水性である。
プライマー層は、アルミニウム蒸着層が形成された植物由来の生分解性フィルムのうちの、アルミニウム蒸着側の面に印刷等を行なう際に、優れた印刷性を発揮させるために形成される。そのため、印刷性を発揮するために適した組成であることが必要である。
このようなプライマー層を形成させるための樹脂としては、水性ウレタンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂等を用いることができる。中でも水性ウレタンアクリル樹脂や水性ポリエステル樹脂が優れている。
乾燥プライマー層の塗布量は0.5~3.0g/m2が好ましい。この範囲の厚さであるとプライマー層の上に各種の手段により印刷をしても、印刷インキを確実に密着したり担持させたりすることができ、印刷が意図する美粧性を発揮できる。また、0.5g/m2未満で平滑表面のプライマー層を形成することは困難であり、3.0g/m2を超えるプライマー層を形成しても、3.0g/m2の塗布量のとき以上の効果を発揮できない。
なお、プライマー層中に、スベリ剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、蛍光染料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等の1種以上を含有させてもよい。
【実施例0017】
(実施例1)
デンプンフィルム(Novamont社/Mater-Bi)の一方の面にアルミニウムを真空蒸着したフィルム(サエスコーテッドフィルム社/BM 25μm)に、65N/mの張力をかけた状態で、アクリル酢酸ビニル共重合樹脂水性エマルジョン(GP102、濃度48重量%、粘度4500mPa・s、サイデン化学)を接着剤として、固形分塗布量が3.0g/m
2となるように、ウェットラミネーターでデンプンフィルム側の面に塗布して水系接着剤層を形成した。
また、基紙として、巾800mm、坪量315g/m
2のキャストコート紙(五條製紙/グロリアコート)を準備した。
次いで、アルミニウム蒸着デンプンフィルムのデンプンフィルム側の面と、キャストコート紙のキャストコート面とを、該水系接着剤層を介して貼合して
図1に示す層構造を有するアルミニウム蒸着フィルム貼合紙を得た。
更にアルミニウム蒸着面の上に、印刷適性を向上させる目的で、水系ポリウレタンアクリルプライマー剤(東京インキ/水性AFUL)を固形分0.8g/m
2となるように、グラビアコーターにより塗布し、80℃で乾燥して、美麗なアルミニウム蒸着フィルム貼合紙を得た。この工程のライン速度は、80m/分であった。
【0018】
(実施例2)
デンプンフィルム(Novamont社/Mater-Bi)の一方の面に、水溶性のポリビニルアルコールからなるバリヤー層を形成し、その上にアルミニウムを真空蒸着したフィルム(サエスコーテッドフィルム社/BXM 25μm)に、80N/mの張力をかけた状態で、酢酸ビニルアクリル共重合・エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性エマルジョン(PZ-827、濃度52重量%、粘度3000mPa・s、サイデン化学)を接着剤として、塗布量が固形分5.0g/m2となるようにウェットラミネーターでデンプンフィルム側の面に塗布して水系接着剤層を形成した。
また、基紙として、巾800mm、坪量310g/m2の非塗工紙(五條製紙/GSシャイン原紙)を準備した。
次いで、アルミニウム蒸着デンプンフィルムのデンプンフィルム面と、非塗工紙とを、該水系接着剤層を介して貼合した。
更に実施例1と同様にアルミニウム蒸着層の表面上に、印刷適性を向上させる目的で、水系ポリエステルプライマー剤(高松油脂/ペスレジン)を固形分1.0g/m2で実施例1と同様条件にて塗布し、70℃で乾燥して、美麗なアルミニウム蒸着フィルム貼合紙を得た。この工程のライン速度は90m/分であった。
【0019】
(比較例1)
アクリル酢酸ビニル共重合樹脂(GP102、濃度48重量%、粘度4500mPa・s、サイデン化学)の塗布量を固形分6.0g/m2にし、水系ポリウレタンアクリルプライマー剤(東京インキ/水性AFUL)の乾燥温度を100℃にした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム蒸着フィルム貼合紙を得た。
しかし、接着剤の塗布量が多く、さらに加熱温度が高温であった結果、ドライヤー内でシワが入り、且つフィルムの耐熱性が弱かったためか表面が虹化した。その工程のライン速度は100m/分であった。
【0020】
(比較例2)
基紙として、巾800mm、坪量315g/m2のキャストコート紙(五條製紙/グロリアコート)を準備した。
デンプンフィルム(Novamont社/Mater-Bi)の一方の面にアルミニウムを真空蒸着したフィルム(サエスコーテッドフィルム社/BM 25μm)に、100N/mの張力をかけた状態で、実施例1のアクリル酢酸ビニル共重合樹脂を接着剤として、塗布量が固形分3.0g/m2となるように塗布しながら、デンプンフィルムのフィルム面と該キャストコート紙のキャストコート面とを貼合しようとした。このとき、デンプンフィルムの張力が強すぎたので、貼合工程でデンプンフィルムが裂けてしまい貼合出来なかった。
【0021】
(比較例3)
基紙として、巾800mm、坪量315g/m2のキャストコート紙(五條製紙/グロリアコート)を準備した。
実施例1のアルミニウムを真空蒸着したデンプンフィルムに50N/mの張力をかけた状態で、実施例1のアクリル酢酸ビニル共重合樹脂を接着剤として、塗布量が固形分4.0g/m2となるようにウェットラミネーターで塗布しながら、アルミニウム蒸着デンプンフィルムのデンプン面と該キャストコート紙のキャストコート面とを貼合した。
更にアルミニウム蒸着面の上に、印刷適性を向上させる目的で、実施例1と同様にプライマー剤をグラビアコーターにより塗布し、70℃で乾燥した。張力が弱かったので、貼合工程でデンプンフィルムにシワが入り、アルミニウム蒸着層にもシワが発生して、きれいな面感が出来なかった。この工程のライン速度は100m/分であった。
【0022】
(比較例4)
基紙として、巾800mm、坪量310g/m2の非塗工紙(五條製紙/GSシャイン原紙)を準備した。
実施例2のアルミニウムを真空蒸着したデンプンフィルムに80N/mの張力をかけた状態で、実施例2の酢酸ビニルアクリル共重合・エチレン酢酸ビニル共重合樹脂を接着剤として、塗布量が固形分2.0g/m2となるようにウェットラミネーターで塗布しながら、アルミニウム蒸着デンプンフィルムのデンプン面と該コート紙非塗工面とを貼合した。更にデンプンフィルム面の上に、印刷適性を向上させる目的で、実施例2と同様にプライマー剤をグラビアコーターにより塗布し、70℃で乾燥した。接着剤の塗布量が少なかったため、紙表面のへこんだ部分で、接着が不十分な箇所が発生し美麗な面感とならなかった。この工程のライン速度は100m/分であった。