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  • 特開-排気再循環装置 図1
  • 特開-排気再循環装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107316
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】排気再循環装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20230727BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20230727BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20230727BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20230727BHJP
【FI】
F02M26/35 D
F02B29/04 N
F02M35/10 301W
F02M26/50 321
F02M35/10 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008447
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】石井 森
(72)【発明者】
【氏名】今泉 純一
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062ED04
3G062ED08
3G062ED10
(57)【要約】
【課題】凝縮水を捕集する効率を向上できる排気再循環装置を提供する。
【解決手段】排気再循環装置1は、内燃機関2の排気経路6から内燃機関2の吸気経路5へと内燃機関2の排気Eを戻す再循環経路7と、吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位で凝縮水を捕集する凝縮水捕集部13とを備える。内燃機関2の排気経路6から内燃機関2の吸気経路5へと内燃機関2の排気Eを戻す再循環経路7を備えた排気再循環装置1において、凝縮水捕集部13により、凝縮水が溜まりやすい吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位で凝縮水が捕集される。そのため、凝縮水を捕集する効率を向上できる。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気経路から前記内燃機関の吸気経路へと前記内燃機関の排気を戻す再循環経路と、
前記吸気経路と前記再循環経路とが合流する部位で凝縮水を捕集する凝縮水捕集部と、
を備えた排気再循環装置。
【請求項2】
前記凝縮水捕集部により捕集された前記凝縮水を前記内燃機関の熱交換器に供給する凝縮水供給部をさらに備えた、請求項1に記載の排気再循環装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、前記内燃機関と電動機とを走行の動力源とする自動車に搭載されており、
前記凝縮水捕集部で捕集された前記凝縮水を貯留する貯槽と、
前記貯槽に貯留された前記凝縮水の排水を制御する凝縮水バルブと、
をさらに備え、
前記凝縮水バルブは、前記自動車が前記電動機を動力源として走行しているときに、前記貯槽に貯留された前記凝縮水を排水する、請求項1又は2に記載の排気再循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気再循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気経路から内燃機関の吸気経路へと内燃機関の排気を戻す排気再循環装置が提案されている。排気再循環装置において、排気を冷却する際に排気に含まれる水分が露点に到る。この時に生成される水を凝縮水と呼び、吸気経路に流入し堆積することで吸気経路の部材に腐食を招く問題がある。例えば、特許文献1には、インタークーラに設置されたタンクにより凝縮水を捕集し、タンクにより捕集した水を中和し、中和した水を熱交換器に噴射することにより、熱交換器の熱交換効率を向上させた排気再循環装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012‐189022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、インタークーラで凝縮水を捕集するため、捕集しきれなかった凝縮水が吸気経路に溜まり、吸気経路の部材に腐食を招く可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、凝縮水を捕集する効率を向上できる排気再循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関の排気経路から内燃機関の吸気経路へと内燃機関の排気を戻す再循環経路と、吸気経路と再循環経路とが合流する部位で凝縮水を捕集する凝縮水捕集部とを備えた排気再循環装置である。
【0007】
この構成によれば、内燃機関の排気経路から内燃機関の吸気経路へと内燃機関の排気を戻す再循環経路を備えた排気再循環装置において、凝縮水捕集部により、凝縮水が溜まりやすい吸気経路と再循環経路とが合流する部位で凝縮水が捕集されるため、凝縮水を捕集する効率を向上できる。
【0008】
この場合、凝縮水捕集部により捕集された凝縮水を内燃機関の熱交換器に供給する凝縮水供給部をさらに備えることが好適である。
【0009】
この構成によれば、凝縮水供給部により、凝縮水捕集部により捕集された凝縮水が内燃機関の熱交換器に供給されるため、熱交換器の熱交換効率を向上でき、凝縮水の有効利用を図ることができる。
【0010】
また、内燃機関は、内燃機関と電動機とを走行の動力源とする自動車に搭載されており、凝縮水捕集部で捕集された凝縮水を貯留する貯槽と、貯槽に貯留された凝縮水の排水を制御する凝縮水バルブとをさらに備え、凝縮水バルブは、自動車が電動機を動力源として走行しているときに、貯槽に貯留された凝縮水を排水することが好適である。
【0011】
この構成によれば、内燃機関は内燃機関と電動機とを走行の動力源とする自動車に搭載されており、凝縮水捕集部で捕集された凝縮水を貯留する貯槽と、貯槽に貯留された凝縮水の排水を制御する凝縮水バルブとをさらに備えた排気再循環装置において、凝縮水バルブは、自動車が電動機を動力源として走行しており、内燃機関が作動していないときに、貯槽に貯留された凝縮水を排水するため、内燃機関が作動しているときに凝縮水を排水することに伴う吸気の減圧による内燃機関の性能への影響を発生させずに貯槽から凝縮水を排水できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排気再循環装置によれば、凝縮水を捕集する効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る排気再循環装置を示すブロック図である。
図2図1の凝縮水捕集部の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る排気再循環装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1に示されるように、本実施形態の排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置1は、内燃機関2を備える。内燃機関2は、内燃機関2と電動機3とを走行の動力源とする自動車100に搭載されている。内燃機関2及び電動機3の出力軸は変速機4に連結されている。排気再循環装置1は、内燃機関2に吸気を導入する吸気経路5と、内燃機関2からの排気を導出する排気経路6とを備える。排気再循環装置1は、内燃機関2の排気経路6から内燃機関2の吸気経路5へと内燃機関2の排気を戻す再循環経路7を備える。
【0015】
吸気経路5は、エアクリーナ8を介して吸気を導入する。排気再循環装置1は、コンプレッサ10とタービン11とを有するターボチャージャ9を備える。エアクリーナ8を介して導入された吸気は、コンプレッサ10で圧縮される。コンプレッサ10で圧縮された吸気は、インタークーラである空冷式の熱交換器12で冷却される。熱交換器12で冷却された吸気は、内燃機関2に供給される。排気再循環装置1は、熱交換器12で冷却された吸気を内燃機関2に導入する吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位で凝縮水を捕集する凝縮水捕集部13を備える。凝縮水捕集部13については、後に詳述する。
【0016】
排気経路6は、ターボチャージャ9のタービン11に内燃機関2からの排気を供給する。排気経路6から分岐した再循環経路7により導出された排気は、EGRクーラである熱交換器14により冷却される。熱交換器14により冷却された排気は、EGRバルブ15を介して凝縮水捕集部13に導入される。
【0017】
図2に示されるように、吸気Iを導入する吸気経路5と排気Eを導入する再循環経路7とが合流する部位は、吸気経路5の内径が減少する絞部27を含むベンチュリ構造を有する。絞部27において、再循環経路7は、吸気経路5を流通する吸気Iに排気Eを導入する。凝縮水捕集部13は、絞部27の下部に、絞部27で発生した凝縮水を受けることによって凝縮水を捕集する凝縮水受部28を有する。
【0018】
図1及び図2に示されるように、排気再循環装置1は、凝縮水捕集部13の凝縮水受部28で捕集された凝縮水を貯留する貯槽16を備える。貯槽16は、凝縮水受部28に直接に連通している。排気再循環装置1は、貯槽16に貯留された凝縮水の吸気Iの排水を制御する凝縮水バルブ17を備える。貯槽16は吸気経路5に連通している凝縮水受部28に直接に連通しているため、内燃機関2が作動しているときに、凝縮水バルブ17が開放され、貯槽16に貯留された凝縮水が排水されるときは、吸気経路5の吸気Iの減圧を伴う。
【0019】
凝縮水バルブ17を介して貯槽16から排水された凝縮水は、イオン交換樹脂フィルタ18により中和される。イオン交換樹脂フィルタ18により中和された凝縮水は、貯槽19に貯留される。排気再循環装置1は、凝縮水捕集部13により捕集された凝縮水を内燃機関2の熱交換器12に供給する凝縮水供給部21を備える。本実施形態では、凝縮水供給部21は、インタクーラである空冷式の熱交換器12に凝縮水を供給する。凝縮水供給部21は、ポンプ20により、貯槽19に貯留されていた凝縮水を供給される。凝縮水供給部21は、熱交換器12の吸気Iが流通する経路を区画する部材の外面に凝縮水を噴霧するノズルである。
【0020】
なお、内燃機関2が作動しているときに、ポンプ20が作動し、凝縮水供給部21により凝縮水が熱交換器12に供給されているときでも、凝縮水バルブ17が閉鎖されているときは、吸気経路5の吸気Iの減圧は生じない。
【0021】
図1に示されるように、排気再循環装置1は、ECU(ElectronicControl Unit)22を備える。ECU22は、排気再循環装置1の動作を制御する電子計算機である。排気再循環装置1は、エアクリーナ8とターボチャージャ9のコンプレッサ10との間の吸気経路5に、吸気Iの温度を測定する温度センサ23を備える。排気再循環装置1は、インタークーラである熱交換器12と凝縮水捕集部13との間の吸気経路5に、吸気Iの温度を測定する温度センサ24を備える。温度センサ23,24からの測定値を示す信号は、ECU22に伝達される。また、ECU22は、内燃機関2の作動状態を示す信号を伝達される。
【0022】
ECU22は、温度センサ23,24の測定値及び内燃機関2の作動状態を参照しつつ、EGRバルブ15及び凝縮水バルブ17に指令信号を送出し、EGRバルブ15及び凝縮水バルブ17の動作を制御する。ECU22からの指令信号により、凝縮水バルブ17は、自動車100が電動機3を動力源として走行しており、内燃機関2が作動していないときに、貯槽16に貯留された凝縮水を排水する。貯槽16から排水された凝縮水は、イオン交換樹脂フィルタ18により中和され、貯槽19に貯留される。
【0023】
一方、ECU22からの指令信号により、凝縮水バルブ17は、自動車100が内燃機関2を動力源として走行しており、内燃機関2が作動しているときには、吸気Iの減圧が生じないように凝縮水バルブ17を閉鎖する。自動車100が内燃機関2を動力源として走行しているときに、ECU22からの指令信号によりポンプ20は作動し、貯槽19に貯留された凝縮水が凝縮水供給部21により熱交換器12に供給される。
【0024】
電動機3は、自動車100が電動機3を動力源として走行しているときに、インバータ25を介してバッテリ26から電力を供給される。また、電動機3は、回生時にインバータ25を介してバッテリ26に電力を供給し、バッテリ26を充電する。
【0025】
本実施形態によれば、内燃機関2の排気経路6から内燃機関2の吸気経路5へと内燃機関2の排気Eを戻す再循環経路7を備えた排気再循環装置1において、凝縮水捕集部13により、凝縮水が溜まりやすい吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位で凝縮水が捕集されるため、凝縮水を捕集する効率を向上できる。つまり、本実施形態では、凝縮水が溜まりやすい吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位に凝縮水捕集部13を配置することにより、上記特許文献1のような技術においてインタークーラで捕集できなかった凝縮水も捕集できる。
【0026】
ところで、吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位は、排気Eを吸気Iに効率良く取り入れるための本実施形態のようにベンチュリ構造を搭載することがあり、凝縮水が溜まり易い構造になっており、凝縮水による腐食を発生させ易い。凝縮水が溜まることを防ぐため、吸気経路5と再循環経路7とが合流する部位の構造を変えると、ベンチュリ効果が期待できなくなる。一方、本実施形態では、吸気経路5の凝縮水が溜まり易いベンチュリ構造の絞部27の下方の凝縮水受部28で凝縮水を捕集するため、凝縮水を効率良く捕集しつつ、ベンチュリ効果により排気Eを吸気Iに効率良く取り入れることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、凝縮水供給部21により、凝縮水捕集部13により捕集された凝縮水が内燃機関2の熱交換器12に供給されるため、熱交換器12の熱交換効率を向上でき、凝縮水の有効利用を図ることができる。
【0028】
また、上記特許文献1のような技術では、貯槽に捕集された凝縮水が満水等の任意の量になると凝縮水を中和する装置に凝縮水を導く凝縮水バルブが開くが、その際に内燃機関が作動していると吸気Iが減圧されるため、内燃機関の性能に影響がある。
【0029】
一方、本実施形態によれば、内燃機関2は内燃機関2と電動機3とを走行の動力源とする自動車100に搭載されており、凝縮水捕集部13で捕集された凝縮水を貯留する貯槽16と、貯槽16に貯留された凝縮水の排水を制御する凝縮水バルブ17とをさらに備えた排気再循環装置1において、凝縮水バルブ17は、自動車100が電動機3を動力源として走行しており、内燃機関2が作動していないときに、貯槽16に貯留された凝縮水を排水するため、内燃機関2が作動しているときに凝縮水を排水することに伴う吸気の減圧による内燃機関2の性能への影響を発生させずに貯槽16から凝縮水を排水できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、貯槽16は省略されてもよい。この場合は、凝縮水受部28が貯槽16として機能する。また、上記実施形態では、内燃機関2の排気経路6から直接に再循環経路7に排気Eを分岐させる高圧式排気再循環装置が開示されていたが、例えば、ターボチャージャ9のタービン11を通過した排気Eを図1で図示された再循環経路7とは別個に配置された再循環経路を介してターボチャージャ9のコンプレッサ10の上流で吸気経路5に導入する低圧式排気再循環装置にも本実施形態の排気再循環装置1は適用できる。
【0031】
また、ターボチャージャ9は省略されてもよい。また、凝縮水供給部21が凝縮水を供給する熱交換器は、インタークーラである熱交換器12のみならず、例えば、EGRクーラである熱交換器14でもよい。また、凝縮水の再利用を考慮しなければ、凝縮水供給部21は省略されてもよい。また、内燃機関2の性能への影響を考慮しなければ、内燃機関2は内燃機関2のみを走行の動力源とする自動車100に搭載されており、内燃機関2の作動中に貯槽16に貯留された凝縮水を排水してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…排気再循環装置、2…内燃機関、3…電動機、4…変速機、5…吸気経路、6…排気経路、7…再循環経路、8…エアクリーナ、9…ターボチャージャ、10…コンプレッサ、11…タービン、12…熱交換器、13…凝縮水捕集部、14…熱交換器、15…EGRバルブ、16…貯槽、17…凝縮水バルブ、18…イオン交換樹脂フィルタ、19…貯槽、20…ポンプ、21…凝縮水供給部、22…ECU、23,24…温度センサ、25…インバータ、26…バッテリ、27…絞部、28…凝縮水受部、100…自動車、I…吸気、E…排気。
図1
図2