(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107324
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】洗濯物の消毒方法及び消毒手段を備えた業務用洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 35/00 20060101AFI20230727BHJP
D06F 31/00 20060101ALI20230727BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20230727BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
D06F35/00 Z
D06F31/00
A61L2/18
A61L101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008461
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】517260700
【氏名又は名称】アイナックス稲本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】米加田 勇
(72)【発明者】
【氏名】関 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】東出 暁博
(72)【発明者】
【氏名】宮田 名菜子
【テーマコード(参考)】
3B168
4C058
【Fターム(参考)】
3B168AB42
3B168AC22
3B168AE04
3B168AE05
3B168AE07
3B168BA45
3B168BA78
3B168FA02
3B168FA12
3B168FA18
4C058AA02
4C058BB07
4C058CC01
4C058CC02
4C058CC06
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD07
4C058EE26
4C058JJ07
4C058JJ28
(57)【要約】
【課題】洗濯脱水機及び連続式洗濯機の槽内の洗濯物を微酸性塩素含有水で消毒する方法及び装置に関し、処理速度の速い連続式洗濯機においても洗濯槽内の洗濯物をより安全かつ適切に消毒することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】炭酸ガス供給装置7から供給される炭酸ガスで消毒を行おうとする槽内に供給される塩素含有水を微酸性化する。炭酸ガスと塩素含有水とは、洗濯物の消毒を行おうとする消毒槽18、19または消毒槽に新水や回収水や循環水を供給する流入管31aに同時かつ個別に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽内の洗濯物を微酸性塩素含有水で消毒する業務用洗濯機における洗濯物の消毒方法において、
前記微酸性塩素含有水が、前記洗濯槽ないし当該洗濯槽への流入管に個別に供給された塩素含有水と炭酸ガスとを当該槽内ないし管内で混和して得られた微酸性塩素含有水であることを特徴とする、洗濯機内の洗濯物の消毒方法。
【請求項2】
前記塩素含有水と炭酸ガスとが前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽に新水を供給するために設けられた前記流入管に同時かつ個別に供給される、請求項1記載の洗濯物の消毒方法。
【請求項3】
前記炭酸ガスが前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽に新水を供給する前記流入管に供給され、前記塩素含有水が、当該すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽に供給される、請求項1記載の洗濯物の消毒方法。
【請求項4】
前記塩素含有水が前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽に新水を供給する前記流入管に供給され、前記炭酸ガスが、当該すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽に供給される、請求項1記載の洗濯物の消毒方法。
【請求項5】
前記塩素含有水と炭酸ガスとが前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽に同時かつ個別に供給される、請求項1記載の洗濯物の消毒方法。
【請求項6】
前記炭酸ガスが、前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽内の洗濯水を循環させるために設けられた前記流入管に供給される、請求項1記載の洗濯物の消毒方法。
【請求項7】
連続式洗濯機における請求項1、2、3、4、5又は6記載の洗濯物の消毒方法において、前記すすぎ領域の槽に前記塩素含有水及び炭酸ガスを供給する前に又はその前槽に洗濯水のpHを調整する中和剤を供給する、洗濯物の消毒方法。
【請求項8】
前記塩素含有水、炭酸ガス及び中和剤の供給量を制御する制御器と、洗濯物の排出口近傍に設置された脱水機とを備えた連続式洗濯機における請求項7記載の洗濯物の消毒方法において、
前記脱水機の排水の塩素濃度とpH値を検出し、その検出値に基づいて前記塩素含有水、炭酸ガス又は中和剤の供給量を修正する、洗濯物の消毒方法。
【請求項9】
前記塩素含有水と炭酸ガスとを供給した後の洗濯水の塩素濃度及びpH値を検出し、
検出された塩素濃度値が予め制御器に設定した下限値より低いときは前記塩素剤を追加供給し、検出された塩素濃度値が予め制御器に設定した上限値より高いときは当該検出値と上限値との差に応じた量の洗濯水を排水するとともに当該量の新水を供給し、
検出されたpH値が予め制御器に設定した下限値より低いときは当該下限値と検出値との差に応じた量の洗濯水を排水するとともに当該量の新水を供給し、検出されたpH値が予め制御器に設定した上限値より高いときは中和剤を追加供給する、請求項1から8のいずれか1に記載の洗濯物の消毒方法。
【請求項10】
すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽内の洗濯物を炭酸ガスで微酸性化した次亜塩素酸を含む微酸性塩素含有水で消毒する業務用洗濯機において、
当該洗濯機の本洗領域ないし本洗工程の排水を貯留する高温水タンクと、
前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の洗濯槽への流入管に接続された炭酸ガス供給装置と、前記高温水タンクの温水を熱源とする熱交換器と、
前記すすぎ領域ないしすすぎ工程の槽内への流入管の流入水を前記熱交換器を経由する管路と経由しない管路とに切り替える電磁弁とを備え、
前記電磁弁が前記炭酸ガス供給装置の接続位置より上流側で流入管の管路を切り替える、業務用洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯脱水機及び連続式洗濯機における洗濯物の消毒方法及び当該消毒方法を実施するのに好適な業務用洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用の洗濯機としては、洗濯ドラム内で経時的に本洗工程、すすぎ工程及び脱水工程を行う洗濯脱水機と、複数の洗濯槽を備えた洗濯ドラム内で本洗領域の槽からすすぎ領域の槽へと洗濯物を移送しながら洗濯する連続式洗濯機が主に用いられている。一方、各種の物品の消毒方法として、微酸性塩素含有水を使用した消毒方法が知られており、連続式洗濯機のすすぎ領域の後段のすすぎ最終槽、仕上槽、消毒槽、加工槽などと称される槽に微酸性塩素含有水を供給して洗濯物を消毒する方法ないし装置も提案されている。
【0003】
塩素含有水の殺菌力は、水溶液のpHの影響を大きく受け、次亜塩素酸の含有割合が高くなるpH5前後の微酸性ないし弱酸性と称される領域で殺菌力が最も強く、次亜塩素酸の安定性も強酸性側に比較して高い。そのため、殺菌成分として次亜塩素酸を使用する塩素含有水では、水溶液を微酸性に調整するために、例えば酢酸や炭酸などを添加している。
【0004】
特許文献1は、連続式洗濯機のすすぎ領域の洗濯水には、本洗で使用した洗剤や薬剤のアルカリ成分が残っており、酢酸や炭酸などを添加して好ましいとされるpHに調整して得られた次亜塩素酸含有水を供給しても、残留しているアルカリ分のためにpHが上昇し、殺菌効果が十分に発揮されないという問題を指摘し、この問題を解決する手段として、酸水溶液で微酸性化した次亜塩素酸含有水を供給する消毒槽に、次亜塩素酸含有水の供給前に酸水溶液を一括で供給することで、消毒槽内のpH値を短時間で低下させる技術を提案している。残留しているアルカリ分を中和する酸として、次亜塩素酸含有水を微酸性化する酸と同じクエン酸や酢酸等の酸水溶液を用いている。
【0005】
また特許文献2には、被洗物を濯ぐことが可能な殺菌・消毒槽内に被洗物を投入する被洗物投入工程と、当該槽内に微酸性次亜塩素酸混和水からなる薬剤を投入するとともに殺菌・消毒槽内で被洗物を薬剤と共に濯ぐ薬剤濯ぎ工程とからなる被洗物の殺菌方法が提案されている。次亜塩素酸混和水を微酸性とする酸として、希塩酸又は炭酸を用いることが示されている。
【0006】
また特許文献3には、連続式洗濯機のすすぎ槽と仕上げ槽の間又は仕上げ槽の後段、すなわち仕上げ槽と脱水機の間に消毒槽を設けてこれらの消毒槽に新水と次亜塩素酸を注入することが提案されている。
【0007】
一方、特許文献4には、厨房器具、食品、医療器具等の殺菌処理等に利用されている弱酸性の塩素系殺菌水の製造方法として、次亜塩素酸ソーダ水溶液に炭酸ガスを、ガス状またはドライアイスの状態で供給することによりpH調整して、pH5前後の微酸性の塩素系殺菌水を製造する技術を提案しており、炭酸ガスは入手が自由でかつその取扱いにもさほどの注意を要しない、とされている。
【0008】
これに対して特許文献5は、特許文献4記載のタンク内の噴出管から炭酸ガスをバブリングする方法では、pH調整に時間がかかり、一部のガスが排出して炭酸ガスの溶解効率が悪いという問題があるとして、水の流路内で水と炭酸ガスを混合する手段(スタティックミキサー)を有する炭酸ガス溶解器に水と炭酸ガスを供給して炭酸水を製造し、該炭酸水に殺菌剤供給手段から殺菌剤を供給することを特徴とする微酸性殺菌剤の製造方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-112469号公報
【特許文献2】特開2016-209242号公報
【特許文献3】特開2009-119089号公報
【特許文献4】特開平10-24294号公報
【特許文献5】特開2004-305472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
業務用洗濯機では、洗濯時間を短縮して作業効率を向上させることが強く要望される。多種の洗濯物を効率よく洗濯することができる連続式洗濯機では、本洗領域の槽の数やすすぎ領域の槽の数を増やすことでより効率よく洗濯を行うことができるようになるが、それぞれの槽における洗濯物の滞留時間(サイクルタイム)が短くなり、洗濯物の消毒に使用できる時間も短くなる。
【0011】
本願の発明者等は、多数の槽を備えたサイクルタイムの短い連続式洗濯機について、特許文献1で提案されている消毒方法を検討し、微酸性塩素水溶液の供給装置として、特許文献4や特許文献5で提案されている方法を検討したが、満足のゆく消毒効果を得ることは困難であった。
【0012】
すなわち、業務用の洗濯機では、投入された洗濯物の種類や汚れの種類に応じて本洗時に洗剤、助剤、漂白剤などの各種の薬剤が用いられるが、洗濯物に付着していた有機物汚れや、洗剤や助剤に含まれるアルカリ成分や、漂白剤に含まれる過酸化水素が消毒を行おうとする処理槽内の洗濯水に残っており、これらの薬剤の種類や量は、つぎつぎと投入される洗濯物の種類や投入量に応じて変化するため、残留薬剤の種類や量に応じて微酸性塩素水溶液に混和する炭酸ガスの量及び処理槽に供給する微酸性塩素含有水の量を短時間で調整することが困難であった。
【0013】
また、洗濯物を消毒するためには、処理槽内の洗濯水を適切なpH値と塩素濃度に調整するだけでは不充分で、洗濯物の繊維内に含まれている洗濯水のpH値と塩素濃度が適切な値になるのには更に時間がかかり、かつ両者を同時にそれぞれの適切な値にすることは困難で、洗濯物自体の消毒を短い時間で適切に行うことができないという問題もあった。
【0014】
更に特許文献1では、すすぎ水の新水に消毒用薬剤として次亜塩素酸ナトリウム等の塩素水系溶液を濃度を低く(例えば塩素濃度が30mg/L程度)して混合し、酸水溶液を加えて微酸性次亜塩素酸水として用いることで、充分な消毒効果が得られるとしている。しかし、槽数の多い連続式洗濯機では、サイクルタイムが短いため、このような低い塩素濃度では洗濯物の消毒を充分に行うことができなかった。そして、クエン酸や酢酸等の酸水溶液で次亜塩素酸含有水のpHを調整する方法では、塩素ガスが発生する恐れがあり、安全にpH調整を行なうことが困難という問題がある。
【0015】
この発明の発明者等が行った試験では、洗濯物内部に含まれる洗濯水中に残留している過酸化水素や洗剤の残留濃度は、消毒槽内の洗濯水の残留濃度とは相違しており、この相違のために、塩素含有水と炭酸ガスとを供給直後の槽内の洗濯水のpHと塩素濃度の測定のみでは、正しく調整が行われたかどうかを判断することが困難で、消毒が不適当になることがあるという問題があった。
【0016】
この発明は、特許文献1記載の消毒方法を検証する実機を用いた種々の試験により見いだされた上記のような問題を解決するために為されたもので、短い時間で洗濯物の消毒を行おうとする洗濯槽内の洗濯水、更には洗濯物の繊維内の洗濯水の塩素濃度及びpH値を短時間で適切な値に調整することができ、従って、処理速度の速い連続式洗濯機においても洗濯槽内の洗濯物をより安全かつ適切に消毒することができる方法及び当該方法を用いるのに適切な業務用洗濯機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の洗濯物の消毒方法は、連続式洗濯機のすすぎ領域の洗濯槽18、19ないし洗濯脱水機のすすぎ工程の洗濯槽1b内の洗濯物を微酸性塩素含有水、すなわち、次亜塩素酸ナトリウム12%水溶液その他の塩素剤を溶解した塩素含有水を微酸性化して得られる薬剤で消毒する方法を改良して、洗濯物の消毒を行おうとする消毒槽18、19、1b内の洗濯物を、塩素ガスを発生させることなく短時間でより安全かつ確実に消毒できるようにしたものである。
【0018】
この発明の洗濯物の消毒方法では、炭酸ガス供給装置7から供給される炭酸ガスで塩素含有水を微酸性化する。炭酸ガスと塩素含有水とは、洗濯物の消毒を行おうとする消毒槽18、19、1bまたは消毒槽に新水や回収水や循環水を供給する流入管31(31a、31b、31c)に同時かつ個別に供給される。
【0019】
槽数の多い連続式洗濯機では、サイクルタイムが短いため、十分な消毒効果を得るためには、高い塩素濃度(好ましくは100ppm以上)の次亜塩素酸水を短時間(実用的には2分前後)で多量(例えば100L/分以上)に生成させるのに必要な炭酸ガスと塩素含有水とを供給するのが望ましい。
【0020】
消毒槽は、連続式洗濯機のすすぎ最終槽18、加工槽19またはこれらとは別に設けた消毒専用槽やすすぎ工程終期の洗濯脱水機の洗濯槽1bなどである。供給された塩素含有水と炭酸ガスとは、消毒槽の揺動や回転または流入管31を流れる水の流動により混和されて微酸性塩素含有水となる。
【0021】
炭酸ガスと塩素含有水は、その両方を消毒槽に個別に供給することも、その両方を消毒槽への流入管31に個別に供給することも、そのいずれか一方を消毒槽に供給し、他方を当該槽への流入管31に供給することもできる。
【0022】
本洗とすすぎとの間で洗濯物の脱水を行わない連続式洗濯機では、特許文献1で指摘のように、消毒槽内のすすぎ水に本洗で使用した洗剤その他の薬剤のアルカリ成分の残留により、微酸性塩素含有水のpHを上昇させて、消毒を阻害するおそれがある。この問題は、消毒槽に塩素含有水及び炭酸ガスを供給する前に、又はその前槽または前工程の洗濯槽(以下、「消毒前槽」と言う。)に洗濯水のpHを調整する中和剤を供給する。
【0023】
また、洗濯物の排出口近傍に設置された脱水機を備えた連続式洗濯機では、脱水機タンク21にpH計42と塩素濃度計44とを設け、脱水機排水の、好ましくは脱水後期の脱水排水の塩素濃度とpH値を検出し、この検出値を表示して人手により、またはこの検出値に基づいて制御器が、塩素含有水、炭酸ガス及び中和剤の供給量を修正することで、消毒槽内の洗濯水と洗濯物の繊維内部の洗濯水との水質の相違を修正することができ、より確実な洗濯物の消毒が可能になる。
【0024】
制御器を備えた洗濯機では、当該制御器に好ましいpH値範囲と塩素濃度範囲を登録し、消毒槽または消毒槽の次の槽(連続式洗濯機の最終槽19を消毒槽としたときは脱水機タンク21。以下、「消毒次槽」と言う。)に、pH計41と塩素濃度計43とを設置して、消毒槽に塩素含有水と炭酸ガスとを供給した後の洗濯水の塩素濃度及びpH値を検出し、この検出値に基づいて洗濯水の排水、新水の供給、中和剤の供給などを行うことで、より安全かつ適切な洗濯物の消毒を行うことができる。
【0025】
また、本願発明者等が行った試験では、流入管31を流れる水に炭酸ガスを供給するときは、エジェクタ45を設けて負圧を発生させ、その負圧で炭酸ガスを吸引してエジェクタ45を流れる水流と混合させるのが好ましい。要すれば更にエジェクタ45の下流に混合器49を設けることもできる。塩素含有水も同一の配管内に供給する場合には、エジェクタ45の上流側で塩素含有水を供給する。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、洗濯槽内で洗濯物を短時間で確実に消毒することができ、特にサイクルタイムの短い連続式洗濯機に設定した消毒槽内での洗濯物の消毒をより確実に行うことができると共に、微酸性塩素含有水を含んだすすぎ水が流れる配管や回収タンク3、4の消毒もできる。また、炭酸ガスは、pHを弱酸性(pH5~6.5)の範囲で安定化させる作用があり、過剰に投入してもpH4以下になることが無いため、塩素ガス発生の危険もない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】連続式洗濯機における第1実施例を示すブロック図
【
図2】
図1の洗濯機における制御手順を示すフローチャート
【
図4】連続式洗濯機における第2実施例の要部を示すブロック図
【
図5】連続式洗濯機における第3実施例の要部を示すブロック図
【
図6】連続式洗濯機における第4実施例の要部を示すブロック図
【
図7】連続式洗濯機における第5実施例の要部を示すブロック図
【
図8】洗濯脱水機における第6実施例の要部を示すブロック図
【
図9】洗濯脱水機における第7実施例の要部を示すブロック図
【
図10】洗濯脱水機における第8実施例の要部を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。
図1は、9槽からなる洗濯ドラム1aを備えた単胴式連続式洗濯機における実施例で、第1槽が予洗槽11、第2槽12~第5槽15が本洗槽(本洗領域の槽)、第6槽16~第9槽19がすすぎ領域の槽で、第6槽16がすすぎ先頭槽、第8槽18がすすぎ最終槽、第9槽19が加工槽と呼ばれる槽である。洗濯ドラム1aで洗濯されて多量の洗濯水を含んだ洗濯物は、脱水機2で脱水される。図では、脱水機2が洗濯ドラム1aから離れた位置に図示されているが、実際には、加工槽19からの洗濯物の排出シュータ26に隣接して配置されている。
【0029】
9個の槽のうち第2槽12~第3槽13、第6槽16、第8槽18及び第9槽19が外胴10を備えた二重構造となっている。外胴10が設けられている部分の回転胴(内胴)の周壁はパンチ孔(図の破線)が設けられており、これらの槽の外胴10に接続した配管から蒸気や水の給排水や洗剤、漂白剤、殺菌剤その他の薬剤の供給が行われるようになっている。
【0030】
図1の実施例は、すすぎ最終槽18を消毒槽としている。すすぎ最終槽18と消毒次槽である加工槽19には、それぞれ新水流入管31aと新水配管32が接続され、加工槽19及び脱水機タンク21からの回収水がそれぞれの回収管34、35により冷水回収タンク3に回収され、その回収水が給水ポンプ53aにより冷水流入管31bを経てすすぎ最終槽18に供給されるようになっている。また、冷水回収タンク3の回収水は、給水ポンプ53bにより回収水配管36を経て洗濯物投入口25から予洗槽11に供給することもできる。
【0031】
新水流入管31a及び冷水流入管31bですすぎ最終槽18に供給されたすすぎ水は、洗濯物の移送方向と逆方向にカウンターフローで流れ、すすぎ先頭槽16の外胴10に接続されたオーバーフロー管56から配管37を通って温水回収タンク4に排出される。すすぎ槽16~18間の隔壁には、すすぎ水を流通させるパンチ孔(図の破線)が設けられている。
【0032】
温水回収タンク4に貯留された温水は、給水ポンプ54a及び温水配管38を通って適宜電磁弁65、66の開閉により選択された本洗槽12、13に供給されて本洗水として利用される。温水回収タンク4の回収水は、また、給水ポンプ54bで温水配管39を経て洗濯物投入口25に供給して予洗水としても利用される。
【0033】
外胴10を設けた本洗槽12、13は、排水弁(電磁弁)を備えたそれぞれの排水管で集水管51に接続されている。集水管51の一端には排水口52が設けられ、他端が高温水タンク5に接続されており、図示しない蒸気管から供給される蒸気によって例えば60℃程度に加熱された本洗排水が高温水タンク5に貯留される。
【0034】
消毒槽としたすすぎ最終槽18に接続された新水流入管31aには、次亜塩素酸ナトリウム容器6が薬剤供給ポンプ46を介して接続され、その下流に炭酸ガスボンベ7が電磁弁72を介して接続されている。電磁弁69、71を閉じた状態で電磁弁67、68を開くと、新水が消毒槽18に供給される。その状態で、薬剤供給ポンプ46を運転して電磁弁72を開くと、消毒槽18に供給される新水に次亜塩素酸ナトリウムが供給されると共に、圧力設定弁74で設定された圧力の炭酸ガスがエジェクタ45を通過する新水の負圧で引かれ更に混合器49で混合されて消毒槽18に供給され、槽内の洗濯水と混和されて槽内水を微酸性にする。
【0035】
図1の実施例では、すすぎ最終槽18への新水流入管31aに電磁弁69を介して熱交換器9が接続されている。高温水ポンプ55を運転して電磁弁68を閉じて電磁弁69を開くと、熱交換器9で加温された新水が消毒槽18に供給される。この状態で薬剤供給ポンプ46を運転して電磁弁72を開くと、加温されかつ次亜塩素酸ナトリウムと炭酸ガスが混和された新水が消毒槽18に供給される。高温水タンク5に貯留された本洗排水は、洗濯物の消毒時に高温水ポンプ55で熱交換器9に送られて、消毒槽18に供給する新水を加温する際の熱源として用いられる。
【0036】
消毒次槽である加工槽19には、薬剤供給ポンプ47を介して次亜塩素酸ナトリウム容器6が接続されている。薬剤供給ポンプ47を運転することにより、加工槽19に次亜塩素酸ナトリウムが供給される。
【0037】
すすぎ最終槽18と加工槽19には、中和剤容器8が薬剤供給ポンプ48及びそれぞれの電磁弁63、64を介して接続されている。薬剤供給ポンプ48を運転して電磁弁63を開くことにより、中和剤がすすぎ最終槽18に供給され、薬剤供給ポンプ48を運転して電磁弁64を開くことにより、中和剤が加工槽19に供給される。
【0038】
中和剤は、すすぎ領域の洗濯水(すすぎ水)に本洗に使用された洗剤や助剤のアルカリ成分が残っていることを考慮して次亜塩素酸水を供給する前にすすぎ水のpHを中和するためにすすぎ最終槽18に供給される(特許文献1参照)。従って、中和剤容器8は、消毒槽となっている槽の前槽(
図1の例では第7槽)に接続する態様や、消毒槽となる槽とその前槽の両方に電磁弁で切り替え可能に接続して必要に応じて中和剤を供給する槽を切り替える態様も可能である。
【0039】
中和剤は、本洗で使用された洗剤や助剤のアルカリ成分を中和する酸水溶液で、洗濯では一般的にクエン酸、リンゴ酸、酢酸、ギ酸などの有機酸水溶液が使用されている。酸の投入量は、すすぎ後の脱水機排水のpH値を5.0~7.0、好ましくは、5.5~6.5となるように調整される。
【0040】
加工槽19には、pH計41と塩素濃度計43が取り付けられている。また、次亜塩素酸ナトリウム容器6及び中和剤容器8は、電磁弁62、64を介して加工槽19にも接続されている。電磁弁62、64は、加工槽19内のすすぎ水のpH値や塩素濃度値を調整する際に操作される。
図1の装置では、脱水機タンク21にもpH計42と塩素濃度計44が取り付けられて、脱水機排水のpH値と塩素濃度とを計測している。
【0041】
なお、
図1に示した各配管には、メンテナンス時に使用する手動弁が必要に応じて設けられるが、
図1ではこれらの弁は省略されており、電磁弁、流量計、流量調整弁などの運転制御に関る機器のみを図示している。
【0042】
次に、洗濯物の消毒を含む
図1の装置の洗濯動作について説明する。投入口25に投入された洗濯物は、洗濯ドラム1aの所定時間(サイクルタイム。例えば3分)の揺動動作により各槽で洗濯され、サイクルタイム毎に行われる1回転の動作により、次槽に送られる。洗濯物がすすぎ領域に入り、すすぎ槽16、17を経てすすぎ最終槽(消毒槽)18に移送された直後に電磁弁63が開いて薬剤供給ポンプ48で所定量の中和剤が供給される。次いで電磁弁67が開いて薬剤供給ポンプ46が運転されて所定量の次亜塩素酸ナトリウムが供給されると共に、電磁弁72が開いて圧力設定弁74と電磁弁72とで計量された炭酸ガスがエジェクタ45で新水流入管31aに供給され、混合器49を経て次亜塩素酸ナトリウムと炭酸ガスを含んだ新水がすすぎ最終槽18に供給される。すすぎ最終槽18に流入した次亜塩素酸ナトリウムと炭酸ガスを含んだ新水は、洗濯ドラム1aの揺動により混和されて微酸性次亜塩素酸水となり、洗濯物を消毒する。
【0043】
そして次の洗濯ドラム1aの1回転により、すすぎ最終槽18の洗濯物は、微酸性次亜塩素酸水を含んだ洗濯水と共に加工槽19に送られる。加工槽19では、槽内のすすぎ水のpH値と塩素濃度値が計測され、
図2に示す手順でpH値と塩素濃度値を調整している。
【0044】
すなわち、洗濯ドラム1aが1回転してすすぎ最終槽18から移送された洗濯物に対する加工槽19でのサイクルタイムが開始101され、水質測定を開始する待機時間がタイムアップ102した時点で、塩素濃度の検出値が設定された下限値と上限値との間にあるかどうかが判断され103、塩素濃度検出値が下限値より低いときはすすぎ水を微酸性にするのに必要な塩素剤供給量を演算して加工槽19に次亜塩素酸ナトリウムを供給し、塩素濃度検出値が設定された上限値より高いときはすすぎ水を微酸性にするのに必要な新水の供給量を演算して当該量のすすぎ水を排水した後、当該量の新水を加工槽19に供給し104、すすぎ水の塩素濃度が均一になる時間を待機した後105、ステップ103に戻って塩素濃度が所定範囲にあるかどうかを調べる。
【0045】
塩素濃度が所定の範囲内であれば、次に同様な手順(ステップ106~108)で加工槽19内のすすぎ水のpH値が設定した範囲内にあるかを確認(ステップ106)及び必要な調整(ステップ107~108)を行って、加工槽19のすすぎ水に対しても高い殺菌力が発揮されるpH値と塩素濃度値とに維持し、消毒槽としたすすぎ最終槽18とその次槽である加工槽19とで充分に洗濯物の消毒が行われるようにしている。
【0046】
すすぎ領域の4槽の最終槽19を加工槽とし、その前槽であるすすぎ最終槽18を消毒槽として、すすぎ水をカウンターフローで流す
図1のような連続式洗濯機を用いて本願発明者らが行った試験では、1バッチあたりの洗濯物処理量が60Kgの場合、塩素濃度100ppm以上の微酸性塩素含有水を1バッチあたり200L以上投入している。
【0047】
このようにして洗濯及び消毒された洗濯物は、排出シュータ26を滑って脱水機2の搬送ベルト22上に置かれたバスケット23内に投入される。脱水機2では、バスケット23内の洗濯物を押圧具24で押圧して洗濯物の繊維内に含まれているすすぎ水を絞り、バスケット23を上昇させて搬送ベルト22を駆動することにより、次工程の乾燥機へ洗濯物を送る。
【0048】
繊維内に含まれる洗濯水の量が多いタオルや少ないシーツなど、洗濯物を種類毎に分別して投入する連続式洗濯機では、脱水機タンク21にもpH計42と塩素濃度計44を設け、同一のロットについての加工槽19に設けたpH計41及び塩素濃度計43の検出値と、脱水機タンク21に設けたpH計42及び塩素濃度計44の特に脱水終期における検出値との差を洗濯物の種類毎に制御器に登録すれば、洗濯物の繊維に含浸されているすすぎ水と槽内のすすぎ水との水質の差を推測でき、すすぎ最終槽18に供給する中和剤、炭酸ガス及び塩素含有水の供給量をより適切に制御することが可能になる。
【0049】
図3は、
図1の実施例における薬剤供給構造の要部を示した図である。すなわち、
図1の構造では、塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム)と炭酸ガスとを共に新水に混合して消毒槽としたすすぎ最終槽18に供給している。なお、加工槽19を消毒槽とすることもでき、その場合は塩素剤と炭酸ガスとを共に新水に混合して加工槽19に供給する。また、同一の配管に塩素剤と炭酸ガスとを供給するときは、当該配管を流れる水の上流側で塩素剤を供給し、その下流側に設けたエジェクタを介して炭酸ガスを供給するのが好ましい。
【0050】
図4~7は、この発明の消毒方法を実施する連続式洗濯機の要部、すなわち消毒槽としたすすぎ最終槽18と消毒次槽である加工槽19への中和剤、塩素剤及び炭酸ガスの供給手段の他の例を示した図である。なお、配管に炭酸ガスを供給するときは、エジェクタ45を流れる水の負圧で炭酸ガスを吸引する構造としており、中和剤は、対象とする槽に直接、すなわち新水などに混和することなく、供給している。
【0051】
図4の例では、消毒槽としたすすぎ最終槽18に新水、塩素剤及び炭酸ガスを直接かつ個別に供給する構造である。
図4では、電磁弁61、72と62、73の開閉によって加工槽19を消毒槽とすることや、すすぎ最終槽と加工槽の2槽を消毒槽とすることも可能な構造になっている。加工槽19を消毒槽としたときは、中和剤は加工槽19又は消毒前槽であるすすぎ最終槽18に供給される。
【0052】
図5の例では、塩素剤である次亜塩素酸ナトリウムが薬剤供給ポンプ46の運転及び電磁弁61、62の開閉により、消毒槽であるすすぎ最終槽18又は消毒次槽である加工槽19に直接、すなわち新水や炭酸ガスと混和されることなく供給され、炭酸ガスは、新水に混合されてすすぎ最終槽18に供給されている。
【0053】
図6の例では、加工槽19を消毒槽として消毒槽19内のすすぎ水を循環させる循環配管31cを設け、次亜塩素酸ナトリウム容器6と炭酸ガスボンベ7とを循環配管に接続して、循環配管31c内及び加工槽19内で塩素剤と炭酸ガスとを混合して消毒槽19に供給している。
【0054】
図7の例は、管内の水に次亜塩素酸ナトリウムと炭酸ガスを供給する装置をユニット化した消毒水生成ユニット57を新水流入管31aに取り付けた例である。図の例では、新水流入管31aから分岐して消毒槽18に新水を直接供給するバイパス管33を設け、消毒水生成ユニット57を通る水とバイパス管33を通る水の割合を調整する流量調整弁75と開閉弁76とを設けている。
【0055】
洗濯物の消毒を行わないときは、開閉弁76を閉じてバイパス管33から新水を供給する。消毒を行うときは、開閉弁76を開いて消毒水生成ユニット57を通過した新水を供給するが、このとき、流量調整弁75を適宜絞って新水の一部がバイパス管33からも供給されるようにして、消毒水生成ユニット57を流れる新水の量を消毒水生成ユニット57の容量に応じた量に調整できるようにしている。
【0056】
図7の構造は、消毒水生成ユニット57を洗濯機とは別に製造することができ、流量調整弁75の開度により消毒水生成ユニット57を流れる水の量を調整できるから、容量の異なる洗濯機に同じ仕様の消毒水生成ユニット57を流用することができる。このような構造は、
図6の構造の場合でも採用することができる。
【0057】
この発明の洗濯物の消毒方法は、連続式洗濯機のみでなく、1個の洗濯槽1b内で本洗、すすぎ及び脱水を連続して行う洗濯脱水機にも適用可能である。
図8ないし
図10は、洗濯脱水機における実施例で、
図8の例は、消毒工程の洗濯槽1bに新水と次塩素酸ナトリウムと炭酸ガスとをそれぞれ直接かつ個別に供給する、連続式洗濯機における
図4と同様な構造である。
【0058】
図9は、すすぎ工程の洗濯槽1bに接続した新水流入管31aに次亜塩素酸ナトリウムと炭酸ガスとを供給するもので、連続式洗濯機における
図3と同様な構造である。
【0059】
図10の例は、
図8の構造に電磁弁77、78を切り替えることにより炭酸ガスを洗濯槽1bに直接供給する配管を付加した構造で、炭酸ガスを洗濯槽1bに直接供給したときには、新水に次亜塩素酸ナトリウムのみが供給され、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と炭酸ガスが洗濯槽1b内で混和されて微酸性にすることができる。また、
図10の例では、薬剤供給ポンプ46を停止して電磁弁77を閉じた状態で電磁弁78を開くことにより、炭酸ガスだけを槽内に供給して洗濯槽1bのすすぎ水のpH調整のみを行うことができるので、中和剤タンクを設けずに、中和剤の代わりに炭酸ガスのみを槽内に吹き込んで、洗濯物に残留する洗剤や助剤のアルカリ成分の中和を行なうことができる。
【0060】
また、
図10の例では、洗濯槽の底部にpH計41と塩素濃度計43とを設けており、
図2と同様な手順で洗濯槽1b内のすすぎ水のpH値と塩素濃度の確認と調整ができる。洗濯脱水機の場合は、各工程の時間を個別に設定できるので、検出されたpH値と塩素濃度に基づいて消毒工程の時間を制御することで洗濯物の消毒をより適切に行うこともできる。
【0061】
なお、
図8~
図10には、中和剤を洗濯槽1bに供給できるようになっており、連続式洗濯機の場合と同様に、中和剤は次亜塩素酸ナトリウム水溶液と炭酸ガスの供給前に洗濯槽1bに供給されるが、洗濯脱水機では、本洗やすすぎの各工程の後で、排水や脱水が行われるのが普通であり、すすぎ工程の後に脱水された洗濯物の消毒を行う場合には、洗濯物に含まれる洗剤や助剤の量は微量であると考えられ、これが微酸性塩素含有水のpH値を大きく変化させるおそれはないから、中和剤を供給しないで洗濯物の消毒を行っても良い。
【0062】
この発明の洗濯物の消毒方法は、
図3~
図10に例示した実施形態を参照した種々の変形が可能であり、連続式洗濯機について例示した実施形態を洗濯脱水機に採用することも、また逆に洗濯脱水機について例示した実施形態を連続式洗濯機に採用することも可能であり、また、
図6や
図10に例示したように、電磁弁やこれに代わる手動弁の切り替えによって複数の実施形態を切り替えて実施する形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1(1a、1b) 洗濯ドラム
2 脱水機
5 高温水タンク
6 塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム)容器
7 炭酸ガスボンベ(炭酸ガス供給装置)
8 中和剤容器
9 熱交換器
10 外胴
16~19 すすぎ領域の槽
18 すすぎ最終槽
19 加工槽
21 脱水機タンク
31a 新水流入管
31b 冷水流入管
31c 循環配管
33 バイパス管
41、42 pH計
43、44 塩素濃度計
45 エジェクタ
49 混合器