(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107327
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】光線照射装置
(51)【国際特許分類】
B60H 3/00 20060101AFI20230727BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230727BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B60H3/00 Z
A61L9/20
B01J19/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008464
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394001087
【氏名又は名称】株式会社京都プラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
(72)【発明者】
【氏名】村尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】倉本 興一
【テーマコード(参考)】
3L211
4C180
4G075
【Fターム(参考)】
3L211BA10
3L211DA71
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH19
4C180MM07
4G075BB10
4G075CA03
4G075CA33
4G075EA06
4G075EB32
4G075FB02
4G075FB12
4G075FC20
(57)【要約】
【課題】薄型かつ軽量であり、放熱性に優れる光線照射装置を提供する。
【解決手段】照射素子88が実装面80Lに実装された基板80と、前記照射素子88から発せられる光を外部に透過させる透光部52を有して前記基板80を内部に収容するハウジング11と、を備え、前記ハウジング11に、金属材料により構成されて当該ハウジング11の内外に露出する放熱部50が設けられており、前記基板80は、前記放熱部50のうち前記ハウジング11の内側に位置する部分に対して接触する形で取り付けられている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射素子が実装面に実装された基板と、
前記照射素子から発せられる光を外部に透過させる透光部を有して前記基板を内部に収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングに、金属材料により構成されて当該ハウジングの内外に露出する放熱部が設けられており、
前記基板は、前記放熱部のうち前記ハウジングの内側に位置する部分に対して接触する形で取り付けられている光線照射装置。
【請求項2】
前記基板は前記放熱部に対して締結部材により締結されている請求項1に記載の光線照射装置。
【請求項3】
前記基板は前記実装面が前記放熱部と対向する形で前記ハウジング内に収容されており、
前記放熱部は、前記基板に向けて立ち上がって締結部材が締結される被締結部と、前記基板に向けて立ち上がるとともに前記実装面に沿って延びる接触面を有する立壁とを有し、
前記基板が前記被締結部に対して前記締結部材により締結された状態において、前記実装面は前記接触面と接触している請求項2に記載の光線照射装置。
【請求項4】
前記基板を冷却するための冷却ファンが前記基板の板面に沿う方向に横並びとなる状態で前記ハウジング内に収容されており、
前記基板は、前記冷却ファンの送風口から前記ハウジングに設けられた排気口までの排気路に位置している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項5】
前記基板は、第1および第2の前記照射素子を実装するとともに、前記第1の照射素子を実装する第1部分および前記第2の照射素子を実装する第2部分を備え、
前記第1部分および前記第2部分は互いに交差する方向に延在している請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項6】
前記基板の周縁部に、前記ハウジングの内部において前記放熱部の外側に延び出す延出部が設けられている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項7】
前記放熱部はアルミ製である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項8】
前記基板はアルミ製である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、光線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光を照射する照射装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものは、照明孔を有する底蓋と、上部殻体と、を備えるハウジングと、照明孔に対向するLEDが搭載されるとともに、ハウジング内にロックされた基板と、を備えている。ハウジング内にはヒートシンクパッド(冷却手段)が配されており、このヒートシンクパッドに基板の裏面が接続されることで、LEDから発せられた熱が放散可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源として短波長の紫外線を使用する場合には、従来の可視光照射装置や長波長の紫外線照射装置と比較して高出力とされるため、従来以上に放熱性を高めることが要望されている。しかし、上述した特許文献1の構成のように、冷却手段がハウジング内に設置される構成では、ハウジングの厚み寸法が大きくなる。また、冷却手段を設けることにより、重量が増加する。このような問題を解決するべく冷却手段の厚みを薄くすると、十分な放熱性が得られない。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであって、薄型かつ軽量であり、放熱性に優れる光線照射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本明細書に開示の技術は、照射素子が実装面に実装された基板と、前記照射素子から発せられる光を外部に透過させる透光部を有して前記基板を内部に収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングに、金属材料により構成されて当該ハウジングの内外に露出する放熱部が設けられており、前記基板は、前記放熱部のうち前記ハウジングの内側に位置する部分に対して接触する形で取り付けられている光線照射装置である。
【0007】
上記構成によれば、照射素子の発熱により昇温した基板の熱がハウジングの放熱部に速やかに伝わり易く、かつ、外部に放散され易いから、放熱性に優れた光線照射装置とすることができる。また、放熱部をハウジングの内外に露出する構成とすることにより、放熱部をハウジングの内部に設ける従来の構成と比較して光線照射装置を薄型化かつ軽量化することができる。
【0008】
前記基板は前記放熱部に対して締結部材により締結されていてもよい。基板と放熱部とが単に重ね合わされたり、粘着剤により一体とされる構成では、基板と放熱部との間に空隙が発生する虞があり、空隙が発生した場合には冷却効率が低下する。上記構成によれば、基板を放熱部に対して確実に接触させることができるから、放熱性が向上する。
【0009】
前記基板は前記実装面が前記放熱部と対向する形で前記ハウジング内に収容されており、前記放熱部は、前記基板に向けて立ち上がって締結部材が締結される被締結部と、前記基板に向けて立ち上がるとともに前記実装面に沿って延びる接触面を有する立壁とを有し、前記基板が前記被締結部に対して前記締結部材により締結された状態において、前記実装面は前記接触面と接触していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、ハウジングのうち照射素子から発せられる光が当たる部分に金属材料からなる放熱部が配置されるから、ハウジングの劣化を防止することができる。また、基板と、放熱部のうち基板と対向する面との間に隙間が形成される場合でも、基板と放熱部とは、締結部分だけでなく、基板の実装面と立壁の接触面とが接触する構成とされているから、両者の接触面積を確保することができ、もって、放熱性を向上させることができる。
【0011】
前記基板を冷却するための冷却ファンが前記基板の板面に沿う方向に横並びとなる状態で前記ハウジング内に収容されており、前記基板は、前記冷却ファンの送風口から前記ハウジングに設けられた排気口までの排気路に位置していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、基板と冷却ファンとが横並びとされているから、基板と冷却ファンとが重畳した配置とされた構成と比較して、光線照射装置を薄型化することができる。また、基板を放熱部により放熱させるだけでなく、冷却ファンの風により効率的に冷却することができる。
【0013】
前記基板は、第1および第2の前記照射素子を実装するとともに、前記第1の照射素子を実装する第1部分および前記第2の照射素子を実装する第2部分を備え、前記第1部分および前記第2部分は互いに交差する方向に延在していてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1部分および第2部分を平坦に配置する構成と比較して基板の面積を大きくすることができるから、冷却効率を高めることができる。また、第1部分および第2部分が交差する方向に延在することにより、第1の照射素子と第2の照射素子とは異なる方向を向くように配される。つまり上記構成によれば、2つの照射素子が一方向だけを向いている構成と比較して、高さ方向に対する照射範囲が広げることができる。
【0015】
前記基板の周縁部に、前記ハウジングの内部において前記放熱部の外側に延び出す延出部が設けられていてもよい。このような構成によれば、延出部が放熱フィンとなって、基板の熱を放熱することができる。
【0016】
前記放熱部はアルミ製であってもよい。また、前記基板はアルミ製であってもよい。アルミは熱伝導性が高いため、このような構成により冷却効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示される技術によれば、薄型かつ軽量であり、放熱性に優れる光線照射装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態の深紫外線照射装置の上面側の斜視図
【
図8】深紫外線照射装置の一部拡大縦断面図(
図1のI-I断面図)
【
図9】深紫外線照射装置の一部拡大縦断面図(
図1のII-II断面図)
【
図10】深紫外線照射装置の横断面図(
図1のIII-III断面図)
【
図11】深紫外線照射装置の横断面図(
図1のIV-IV断面図)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示の光線照射装置を、車両室内を除菌可能な深紫外線照射装置10に適用した一実施形態を
図1から
図14によって説明する。各図面には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。以下、X軸方向を右方向または幅方向、Y軸方向を前方、Z軸方向を上方として説明するが、方向については本実施形態に限定されるものではない。また、複数の同一部材については、一の部材に符号を付して他の部材の符号は省略することがある。
【0020】
深紫外線照射装置10は、LED(照射素子の一例)88が実装されたLED基板(基板の一例)80と、全体として扁平な箱状をなしてLED基板80を内部に収容するハウジング11と、を備えて構成されている。
【0021】
ハウジング11は樹脂製であって、
図3に示すように、略矩形の保持部材30の板面を表裏(上下)の両側から覆う2つのカバー12,22から構成されている。詳細には、保持部材30は、略矩形の板状の保持板部31と、保持板部31の周縁部から上下方向に向けて立ち上がる枠状の枠状部32と、を備えており、ハウジング11は、保持板部31の上面を覆うとともに枠状部32の内側に嵌め入れられる全体として浅皿状の上側カバー12と、保持板部31の下面を覆うとともに枠状部32の内側に嵌め入れられる板状の下側カバー22との2つのカバーから構成されている。
【0022】
ハウジング11の上側カバー12うち保持板部31の上面と対向して配される天井壁13は、
図8および
図9に示すように、その前端から後方かつ上方に向けて傾く傾斜状とされて保持板部31の前方部分約1/3を覆う前天井壁14と、前天井壁14から連なって水平方向に延在し、保持板部31の後方部分約2/3を保持板部31に対して平行な状態で覆う後天井壁15とから構成されている。前天井壁14の傾斜角度は、保持板部31に対して約15度傾いた角度に設定されている。
【0023】
上側カバー12の天井壁13の周縁部には、
図10および
図11に示すように、下方かつ外側に向けて立ち上がるカバー側周壁16が設けられている。このカバー側周壁16の立ち上がり方向における先端(下端)の外周寸法は、上述した保持部材30の枠状部32の内側に嵌め入れられる寸法に設定されている。
【0024】
カバー側周壁16のうち、前天井壁14の前端に連なって延びる前壁17には、上下に延びる複数のスリット状の排気口18が前天井壁14に跨って設けられている(
図1参照)。また、カバー側周壁16のうち、後天井壁15の後端に連なって延びる後壁には、上下に延びる複数のスリット状の吸気口が設けられている(図示せず)。
【0025】
上側カバー12は、保持部材30の保持板部31から立ち上がる後述する複数の円柱状の上側カバー被締結部36に対してボルトBを締結することにより、保持部材30に対して固定されている。上側カバー12が保持部材30に対して固定された状態において、上側カバー12と保持板部31との間には空間が形成されている。以下、このハウジング11の内部空間のうち、前天井壁14の下方の空間を前方空間R1とし、後天井壁15の下方の空間を後方空間R2とする。
【0026】
一方、ハウジング11の下側カバー22は略矩形の板状をなしており、中央部分が下方に向けて僅かに膨出するように全体的にやや湾曲している。下側カバー22の外周寸法は、上述した保持部材30の枠状部32の内側に嵌め入れられる寸法に設定されている(
図10および
図11参照)。
【0027】
図3に示すように、下側カバー22の4つの辺(端縁部)の各中央部のやや内側には、外側に向けて係止部23が突出している。下側カバー22は、これら係止部23が上述した保持部材30の保持板部31に設けられた係止孔41内の段差部に係止することにより、保持部材30に対して固定されている。
【0028】
下側カバー22のうち、上述した上側カバー12の前天井壁14に対応する部分の一部(前方空間R1に対応する部分の一部)には、幅方向(左右方向)に長い長方形状とされて板面を貫通するハウジング側開口25が設けられている。このハウジング側開口25は、後述する放熱部材50により塞がれた状態とされている。
【0029】
保持部材30は、上述したように、矩形の板状の保持板部31と、保持板部31の周縁部から上下方向に向けて立ち上がる枠状の枠状部32と、を備えている。保持板部31のうち、下側カバー22が組み付けられた状態において、ハウジング側開口25に対向する位置には、保持部材側開口35が板面を貫通して設けられている(
図9および
図11参照)。保持部材側開口35は、平面視においてハウジング側開口25より一回り大きい寸法に形成されている。すなわち、保持部材30に下側カバー22が組み付けられた状態において、保持部材側開口35の内側には、ハウジング側開口25の開口縁部が露出している。
【0030】
保持部材側開口35の後方側の開口縁部には、上方に向けて立ち上がって左右方向に延びる隔壁33が設けられている。隔壁33は、上側カバー12が組み付けられた状態において上述した前方空間R1と後方空間R2との境界部に位置している。隔壁33は、保持板部31の幅方向における中央部に設けられており、その幅寸法(左右方向の寸法)は、保持部材側開口35の幅寸法よりやや小さい寸法とされている。隔壁33の側方の空間は前後方向に開放されている。隔壁33の上端中央部には、下方に向けて扁平な矩形に切り欠かれた切欠部34が形成されており、この切欠部34内に後述する冷却ファン90の送風口92が嵌め入れられるようになっている。
【0031】
保持部材側開口35の側方(左右両側)には、保持部材側開口35をはさんで、保持板部31から上方に向けて立ち上がる2つの柱状の上側カバー被締結部36と、保持板部31から上方に向けて立ち上がって互いに対向する板面を有する2つの板状の位置決め壁部37とが、前後方向に並んで設けられている。
【0032】
また、保持部材側開口35の前方側の開口縁部の中央には、上方に向けて立ち上がる円柱状の中央位置決め第1突部38が設けられている。さらに、保持部材側開口35の後方側の開口縁部の中央には、保持部材側開口35の内側に突出するとともに上方に向けて立ち上がる四角柱状の中央位置決め第2突部39が設けられている。中央位置決め第2突部39は、その背面が隔壁33と一体とされている。
【0033】
下側カバー22および保持部材30が組み付けられた状態において、ハウジング側開口25および保持部材側開口35は、上下方向に連通した状態とされている。これらの開口25,35には、放熱部材(放熱部の一例)50の一部が嵌め入れられている。放熱部材50は、下面がハウジング11の外部に露出しており、上面がハウジング11の内部(前方空間R1内)に露出している。
【0034】
放熱部材50はアルミニウム製またはアルミ合金製とされ、
図12および
図13に示すように、平面視矩形をなす本体部51と、平面視において本体部51の4つの各辺から外側に向けて延び出した後述する4つの位置決め片71,71,73,75とを備えている。放熱部材50は、左右対称とされている。
【0035】
本体部51には、後述するようにハウジング11の内部に配置される2つのLED88から発光される光をハウジング11の外部に透過させるための2つの円形の透光孔(透光部の一例)52が、左右方向に並んで設けられている。放熱部材50の下面側、すなわち、ハウジング11の外面側において、各透光孔52の周囲は、斜め下方に向けて傾斜状に広がる拡径部53とされている。換言すると、本体部51は、下面側から視て上方に向けて窄む2つの略すり鉢状とされた部分を有している(
図2、
図9、および
図11参照)。LED88から発光されて透光孔52を透過した光は、拡径部53の下面に沿って拡散可能とされている。
【0036】
左右方向に並んで設けられた2つの拡径部53は互いに接しており、これらが連なった状態の2つの拡径部53の周囲は、平面視略矩形の周壁54により囲まれている。周壁54は、二段形状とされている。具体的には、
図14に示すように、周壁54のうち下方側(ハウジング11の外面側)に位置する部分の外径は、ハウジング側開口25の内径と同等寸法とされた、ハウジング挿通部55とされている。一方、周壁54のうち上方側(ハウジング11の内面側)に位置する部分の外径は、ハウジング挿通部55の外形より径大とされ、かつ、保持部材側開口35の内径よりやや小さい寸法とされた、保持部材挿通部57とされている。ハウジング挿通部55と保持部材挿通部57とは、ハウジング挿通部55から外側に向けて張り出す段差部56を介して連なっている。このような構成により、放熱部材50は、ハウジング挿通部55がハウジング側開口25内に挿通され、段差部56がハウジング側開口25の上面側の周縁部に載置された状態で、保持部材挿通部57が保持部材側開口35内に挿通されるようになっている(
図8、
図9、および
図11参照)。
【0037】
拡径部53の上面のうち、2つの透光孔52の左右側方、かつ、周壁54の内側には、上方に向けて立ち上がる2つの円柱状の基板被締結部61が設けられている。2つの基板被締結部61は、
図11に示すように、先端側が互いに近づく方向に向かうやや傾斜した状態とされている。基板被締結部61は、基部側に位置する径大部62と、先端側に位置して径大部62より径小とされた径小部63とを備えて構成されている。径小部63の軸方向の長さ寸法は、後述するLED基板80の厚さ寸法と同等に設定されている。
【0038】
また、周壁54のうち、左右方向に延びる前後2つの横壁58には、上方に向けて立ち上がる立壁64が延設されている。立壁64の上端は、横壁58の左右方向における中央部からそれぞれ外側(左右方向)かつ上方に向けて傾斜している。つまり立壁64は、全体として2つの扁平な直角三角形状が左右方向に並ぶ形で横壁58から立ち上がっており、上端が正面視扁平なV字形状をなしている。立壁64の上端の傾斜角度は、基板被締結部61の軸の延び方向と直交する角度に設定されている。また立壁64の上端と基板被締結部61の径大部62の上端とは、仮想的な同一平面上に配されている。
【0039】
本体部51の左右方向における中央部、すなわち、2つの拡径部53が互いに接触する部分(2つの拡径部53の境界部)には、上方に向けて突出するとともに前後方向に延びる縦補強壁66が設けられている。また、本体部51の左右方向における中央部であって、本体部51の前端および後端には、本体部51の周壁54の上端から上方に突出して左右方向に延びる横補強壁67がそれぞれ設けられている。縦補強壁66と2つの横補強壁67とは互いに連なっており、補強壁全体として、平面視H形状をなしている。
【0040】
本体部51には、前方に配置される立壁64(前方立壁64Fとする)から連なる形で左右方向の外側に向けて延びる側方位置決め片71が設けられている。側方位置決め片71の先端には上下方向に貫通する位置決め孔72が設けられており、この位置決め孔72は上述した保持部材30の上側カバー被締結部36に外嵌されるようになっている(
図4から
図6参照)。
【0041】
また、本体部51の2つの横補強壁67のうち、前方に配される前方横補強壁67Fには、前方に向けて延びる前方位置決め片73が延出されている。前方位置決め片73には、上述した保持部材30の中央位置決め第1突部38を嵌め入れる位置決め孔74が設けられている。
【0042】
さらに、本体部51の2つの横補強壁67のうち、後方に配される後方横補強壁67Rには、後方に向けて延びる後方位置決め片75が延出されている。後方位置決め片75には、その後端から前方に向けて切り欠かれた凹部76が形成されており、その内側に上述した保持部材30の中央位置決め第2突部39が嵌め入れられるようになっている。
【0043】
放熱部材50は、側方位置決め片71の位置決め孔72を保持部材30の上側カバー被締結部36に外嵌させるとともに、前方位置決め片73の位置決め孔74内に中央位置決め第1突部38を嵌め入れ、さらに、後方位置決め片75の凹部76内に中央位置決め第2突部39を嵌め入れることで、保持部材30に対して位置決めされる。この位置決め状態において、上述したように、放熱部材50の周壁54のハウジング挿通部55が下側カバー22のハウジング側開口25内に挿通され、段差部56がハウジング側開口25の周縁部に載置され、保持部材挿通部57が保持部材30の保持部材側開口35内に挿通されるようになっている。
【0044】
保持部材30に対して位置決めされた放熱部材50には、2枚のLED基板(基板、第1部分および第2部分の一例)80が取り付けられている。2枚のLED基板80は、
図10および
図11に示すように、正面視扁平なV字形状となるように互いに交差した状態で、左右方向に並んで放熱部材50に取り付けられている。2枚のLED基板80は、互いに対称形とされている。
【0045】
LED基板80について詳細に説明する。LED基板80はアルミニウム製またはアルミ合金製とされ、
図5に示すように、矩形の基板本体部81を備えている。基板本体部81の中央部には、上述した放熱部材50の基板被締結部61が貫通される締結孔82が板面を貫通して形成されている。締結孔82は、基板被締結部61の径大部62より小さく、径小部63と同等あるいは僅かに大きい内径を有している。LED基板80は、締結孔82に基板被締結部61の径小部63を貫通させた状態でボルトBを締結することにより、放熱部材50に対して取り付けられるようになっている。
【0046】
基板本体部81の前後方向の寸法は、放熱部材50の周壁54の前後方向の寸法よりやや大きい寸法とされている。LED基板80が放熱部材50に取り付けられた状態において、基板本体部81の前端は、放熱部材50の前方立壁64Fより前方に延び出して前方立壁64Fの上面(接触面の一例)65Fに接触し、下方から支持されている(
図9および
図10参照)。また、基板本体部81の後端は、後方立壁64Rよりやや後方に延び出して後方立壁64Rの上面(接触面の一例)65Rに接触し、下方から支持されている(
図9参照)。
【0047】
図5および
図6に示すように、LED基板80は、放熱部材50に取り付けられた状態において、基板本体部81から放熱部材50の左右方向における中央部に向けて延出された内側延出部83と、基板本体部81から内側延出部83の反対側(放熱部材50の外側))に向けて延出された外側延出部(延出部の一例)85と、を備えている。内側延出部83は、基板本体部81の前後方向の寸法よりやや小さい寸法とされて、基板本体部81の前後方向の中心からやや後方に偏った位置に延出されている。外側延出部85は、基板本体部81の前後方向の寸法の半分程度の寸法とされて、基板本体部81の前後方向における後端寄りに延出されている。
【0048】
LED基板80が放熱部材50に取り付けられた状態において、内側延出部83は、放熱部材50の前方横補強壁67Fおよび後方横補強壁67Rの間に嵌め入れられている。内側延出部83の延出方向の先端部中央には、溝状に切り欠かれた位置決め溝84が形成されており、放熱部材50の縦補強部の前後方向における中央部から左右方向に突出する位置決めリブ77が位置決め溝84に嵌め入れられることにより、放熱部材50に対して前後方向の位置決めがなされている。
【0049】
また、LED基板80が放熱部材50に取り付けられた状態において、外側延出部85は、放熱部材50の本体部51の端部から左右方向(外側)かつ斜め上方に向けて延びている。すなわち、外側延出部85は、本体部51から当該本体部51の板面に沿う形で離れる方向に延び出している。LED基板80は、ハウジング11内に収容された状態において、外側延出部85の先端部が、保持部材30の2つの位置決め壁部37に当接あるいは近接した状態とされている。
【0050】
LED基板80が放熱部材50に取り付けられた状態において、基板本体部81の下面(実装面の一例)80Lのうち上述した放熱部材50の透光孔52に対向する位置には、LED88が実装されている(
図11参照)。上述したように、2枚のLED基板80は、正面視扁平なV字形状となるように互いに交差した状態で配されているため、各LED88は、頂面が下方からやや外側(左右方向)を向いた状態とされている。
【0051】
本実施形態のLED88は、紫外線の中でも波長が短い深紫外線(100~280nm)を照射する深紫外線LED88である。これらのLED88が照射する深紫外線の波長は、200~280nmの範囲内であることが好ましい。なお、LED基板80には、深紫外線LED88と併せて、可視光を発光する可視光LEDを搭載してもよい。
【0052】
本実施形態のLED88は、LED基板80に実装した際に、LED基板80と反対側の端面(頂面)から照射を行う頂面照射型LED88を採用している。これらLED88の指向角は、頂面に対して垂直な軸を中心とした120度の範囲内とされている。
【0053】
ハウジング11の後方空間R2には、冷却ファン90が収容されている。冷却ファン90は、LED基板80に対して天井壁13に沿う方向に横並びとされた状態で、保持部材30に対してボルトBにより締結されている。なお、横並びとは、深紫外線照射装置10を平面視した際に、LED基板80の板面と冷却ファン90とが重畳しない配置とされていることを指しており、上下方向の高さがずれている場合を含むこととする。本実施形態では、冷却ファン90は、LED基板80よりやや上方に配されている。
【0054】
冷却ファン90は全体として扁平な略円柱型のファン本体部91を備えている。当該ファン本体部91は、一対の底面が上下方向を向くようにハウジング11の後方空間R2内に配され、上方の底面(上面)が図示しない緩衝材を介して後天井壁15に当接する形で収容されている(
図9および
図10参照)。冷却ファン90は、下方から吸い上げた空気を前方に向けて送風する構成とされており、前方に向けて扁平な角筒状に突出する送風口92を備えている。送風口92は、その上面がファン本体部91の上面と面一になるように、ファン本体部91の上方部分から前方に向けて突出している。つまり、送風口92の上面も、図示しない緩衝材を介して後天井壁15に当接している。
【0055】
送風口92は、その幅寸法が上述した隔壁33の切欠部34の幅寸法と同等とされるとともに、高さ寸法が切欠部34の高さ寸法と同等とされて、先端部分が切欠部34内に嵌め入れられている。また送風口92は、
図8および
図9に示すように、2枚のLED基板80の上面(反対面の一例)80Uから上方に離隔した位置に配されている。このような構成により、各LED基板80の上面80Uと、ハウジング11の天井面13Lとの間が、冷却ファン90の送風口92からハウジング11の排気口18までの排気路45とされている。
【0056】
なお、上述した前天井壁14のうち後方寄りには、後方から前方に向けて当該前天井壁14の傾斜角度よりも大きい傾斜角度で下方に窪む窪み部19が幅方向に延びており、冷却ファン90の送風口92から吹き出された空気を案内してLED基板80の上面80Uに向けて吹き付けるようになっている。本実施形態では、窪み部19の傾斜角度は、保持板部31に対して約35度 傾いた角度に設定されている。
【0057】
吸気口からハウジング11の後方空間R2に吸い込まれた空気の一部は、冷却ファン90に吸い込まれる。そして、冷却ファン90を通過するとともに当該冷却ファン90の送風口92から前方に向けて放出され、前方側が下方に向けて傾斜する窪み部19の下面に沿って、2枚のLED基板80の上面80Uに吹き付けられる。そして、空気はLED基板80の上面80U(排気路45)を通過して、排気口18からハウジング11の外部に排気される。
【0058】
また、吸気口からハウジング11の後方空間R2に吸い込まれた空気の一部は、ハウジング11の内壁(カバー側周壁16)に沿って前方に向けて進んで前方空間R1に流れ込み、排気口18からハウジング11の外部に排気される。なお、上述したLED基板80の外側延出部85は、隔壁33の左右方向の両端部よりも外側まで延び出しており、後方空間R2からハウジング11の内壁に沿って前方空間R1に流れ込む空気により冷却される。
【0059】
上述した本実施形態の深紫外線照射装置10は、例えば、タクシー等の車両の客室(室内の一例)の除菌を目的として使用することができる。本実施形態の深紫外線照射装置10をタクシー等の車両の客室(後部座席)の天井に取り付けた場合には、2つのLED88は互いに水平方向から外側に向けて15度の傾斜角度で傾いた状態とされるから、車室側面の高い位置まで照射して除菌を行うことができる。このような深紫外線の照射は、例えば、運航後に格納庫で行ったり、前部座席と後部座席の間に深紫外線カットフィルム付きセパレータ等が設けられている場合であれば、運行中、客待ち時間や回送時間に行うことができる。
【0060】
次に、作用効果について説明する。本実形態の深紫外線照射装置10は、LED88が下面80Lに実装されたLED基板80と、LED88から発せられる光を外部に透過させる透光孔52を有してLED基板80を内部に収容するハウジング11と、を備え、ハウジング11に、アルミニウム(金属材料)により構成されて当該ハウジング11の内側および外側に露出する放熱部材50が設けられており、LED基板80は、放熱部材50のうちハウジング11の内側に位置する部分に対して接触する形で取り付けられている。
【0061】
上記構成によれば、LED88の発熱により昇温したLED基板80の熱がハウジング11の放熱部材50に速やかに伝わり易く、かつ、外部に放散され易いから、放熱性に優れた深紫外線照射装置10とすることができる。また、放熱部材50をハウジング11の内外に露出する構成とすることにより、放熱部材をハウジングの内部に設ける従来の構成と比較して、深紫外線照射装置10を薄型化かつ軽量化することができる。
【0062】
LED基板80は放熱部材50に対してボルトB(締結部材)により締結されている。このような構成によれば、LED基板80を放熱部材50に対して確実に直接接触させることができるから、放熱性が向上する。
【0063】
LED基板80は下面80Lが放熱部材50と対向する形でハウジング11内に収容されており、放熱部材50は、LED基板80に向けて立ち上がってボルトBが締結される基板被締結部61と、LED基板80に向けて立ち上がるとともにLED基板80の下面80Lに沿って延びる接触面65を有する立壁64とを有し、LED基板80が基板被締結部61に対してボルトBにより締結された状態において、LED基板80の下面80Lは接触面65と接触している。
【0064】
このような構成によれば、ハウジング11のうちLED88から発せられる光が当たる部分に金属材料からなる放熱部材50が配置されるから、ハウジング11の劣化を防止することができる。また、LED基板80と、放熱部材50のうちLED基板80と対向する面との間に隙間が形成される場合でも、LED基板80と放熱部材50とは、締結部分だけでなく、LED基板80の下面80Lと立壁64の接触面65とが接触する構成とされているから、両者の接触面積を確保することができ、もって、放熱性を向上させることができる。
【0065】
LED基板80を冷却するための冷却ファン90がLED基板80の板面に沿う方向に横並びとなる状態でハウジング11内に収容されており、LED基板80の上面80Uが、冷却ファン90の送風口92からハウジング11に設けられた排気口18までの排気路45に位置している。
【0066】
このような構成によれば、LED基板80と冷却ファン90とが横並びとされているから、LED基板80と冷却ファン90とが重畳した配置とされた構成と比較して、深紫外線照射装置10を薄型化することができる。また、LED基板80を下面80L側から放熱部材50により放熱させるだけでなく、上面80U側からも冷却ファン90の風により効率的に冷却することができる。
【0067】
LED88を実装する2枚のLED基板80を備え、これら2枚のLED基板80は互いに交差する方向に延在している。このような構成によれば、LED基板80を平坦に配置する構成と比較してLED基板80の面積を大きくすることができるから、冷却効率を高めることができる。また、2つのLED88は異なる方向を向くように配置することができる。つまり上記構成によれば、2つのLED88が一方向だけを向いている構成と比較して、高さ方向に対する照射範囲を広げることができる。
【0068】
LED基板80の周縁部に、ハウジング11の内部において放熱部材50の径方向の外側に延び出す外側延出部85が設けられている。このような構成によれば、外側延出部85が放熱フィンとなって、LED基板80の熱を放熱することができる。
【0069】
放熱部材50およびLED基板80はアルミニウム製である。アルミニウムは熱伝導性が高いため、このような構成により冷却効率が向上する。
【0070】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0071】
(1)上記実施形態では、樹脂製のハウジング11にアルミ製の放熱部材50を組み付けることにより放熱部を設ける形態を示したが、ハウジング全体を金属で形成したり、金属製の放熱部をインサート成形でハウジングに一体に設ける構成としてもよい。
【0072】
(2)上記実施形態では、LED基板80を放熱部材50に対してボルトBを締結することにより取り付ける形態を示したが、基板は、放熱部に対して接着剤により接着したり、板バネ等の弾性部材により押圧して取り付ける構成としてもよい。
【0073】
(3)上記実施形態では、LED基板80の実装面(下面80L)が放熱部材50と対向する方向に配置される形態を示したが、基板の反対面が放熱部と対向する形態も技術範囲に含まれる。
【0074】
(4)上記実施形態では、冷却ファン90がLED基板80の板面に沿う方向に横並びとなる状態でハウジング11内に収容される構成を示したが、冷却ファンが基板と重畳した形態とすることもできる。
【0075】
(5)上記実施形態では、2枚のLED基板80を互いに交差するように並べて配置する構成を示したが、基板は、1枚の平坦な基板を使用したり、1枚の基板を屈曲させる構成としてもよい。
【0076】
(6)上記実施形態では、光線照射装置の一例として深紫外線照射装置10を示したが、深紫外線以外の例えば可視光等の光線を照射する装置に対しても本明細書に開示される技術を適用することができる。
【0077】
(7)光線照射装置は、乗物の天井に限らず、例えば側壁や床上、建物の室内等、任意の位置に設置することができる。
【0078】
(8)上記実施形態では、LED基板80および放熱部材50をアルミニウム製としたが、基板および放熱部は、アルミニウム以外の金属製としてもよい。また、基板は金属以外の材料で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10:深紫外線照射装置(光線照射装置)、11:ハウジング、12:上側カバー(ハウジング)、18:排気口、22:下側カバー(ハウジング)、30:保持部材、45:排気路、50:放熱部材(放熱部)、52:透光孔(透光部)、61:基板被締結部(被締結部)、64:立壁、65:上面(接触面)、80:LED基板(基板)、80L:下面(実装面)、80U:上面(反対面)、82:締結孔、85:外側延出部(延出部)、88:深紫外線LED、90:冷却ファン、92:送風口