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特開2023-107404通信装置、通信方法、通信システム及び通信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107404
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、通信システム及び通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 11/00 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
H04B11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008590
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中津 尚大
(72)【発明者】
【氏名】福井 潔
(57)【要約】
【課題】水中通信で送信権の付与を示す情報を受信しない子局で存在するときでも、信号衝突を回避しながら送信順序に従った送信処理を行えるようにする。
【解決手段】本発明は、複数の子局と水中通信を行なう通信装置において、複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、複数の子局のそれぞれの水中伝搬時間に基づいて、複数の子局に対して割り当てる送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、複数の子局の間の送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、送信順序情報を、複数の子局のそれぞれに送信する通信手段とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の子局と水中通信を行なう通信装置において、
前記複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、前記複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、
前記複数の子局のそれぞれの前記水中伝搬時間に基づいて、前記複数の子局に対して割り当てる送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、
前記複数の子局の間の送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、
前記送信順序情報を、前記複数の子局のそれぞれに送信する通信手段と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信順序導出手段が、
前記複数の子局のそれぞれの前記水中伝搬時間が短い順に前記送信順序を決定し、
第1番目に前記送信権を得る時刻について、前記送信順序情報の送信後、第1番目の子局の前記水中伝搬時間の往復時間とデータ長に応じた時間とを用いて導出し、
第n+1番目に前記送信権を得る時刻について、第n番目の前記送信権を得る時刻に、第n番目の子局の前記水中伝搬時間とデータ長に応じた時間とを用いて導出する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
複数の子局の間で送信順序が割り当てられ、前記送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると、送信処理を行なう通信装置において、
親局から、前記複数の子局の間で割り当てられた前記送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信する通信手段と、
前記送信許可情報を受信していない場合に、受信した前記送信順序情報に含まれている、自局の前記送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して前記通信手段に送信処理を要求する制御手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記制御手段が、自局が第1番目に送信権を得る子局でなく、かつ、前記送信順序で自局の1つ前の子局の識別情報が、受信した前記送信許可情報に含まれていない場合、自局の前記送信権を得る時刻に達するとき、送信すべきデータの有無を判断して前記通信手段に送信処理を要求することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記送信すべきデータがあるときには、前記通信手段にデータ送信を要求し、その後、前記送信順序に従った前記送信許可情報を前記通信手段に要求し、前記送信すべきデータがないときには、前記送信順序に従った前記送信許可情報を前記通信手段に要求することを特徴とする請求項3又は4に記載の通信装置。
【請求項6】
親局が複数の子局の間で送信順序を割り当て、前記複数の子局のそれぞれが、前記送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると送信処理を行なう通信方法において、
前記親局は、
伝搬時間導出手段が、前記複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、前記複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出し、
送信順序導出手段が、前記複数の子局のそれぞれの前記水中伝搬時間に基づいて、前記複数の子局に対して割り当てる送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出し、
送信順序情報作成手段が、前記複数の子局の間の送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成し、
親局通信手段が、前記送信順序情報を、前記複数の子局のそれぞれに送信し、
前記複数の子局のそれぞれは、
子局通信手段が、前記親局から、前記複数の子局の間で割り当てられた前記送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信し、
制御手段が、前記送信許可情報を受信していない場合に、受信した前記送信順序情報に含まれている、自局の前記送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して前記子局通信手段に送信処理を要求する
ことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
親局が複数の子局の間で送信順序を割り当て、前記複数の子局のそれぞれが、前記送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると送信処理を行なう通信システムにおいて、
前記親局は、
前記複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、前記複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、
前記複数の子局のそれぞれの前記水中伝搬時間に基づいて、前記複数の子局に対して割り当てる送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、
前記複数の子局の間の送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、
前記送信順序情報を、前記複数の子局のそれぞれに送信する親局通信手段と
を備え、
前記複数の子局のそれぞれは、
前記親局から、前記複数の子局の間で割り当てられた前記送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信する子局通信手段と、
前記送信許可情報を受信していない場合に、受信した前記送信順序情報に含まれている、自局の前記送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して前記子局通信手段に送信処理を要求する制御手段と
を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項8】
複数の子局と水中通信を行なう通信プログラムにおいて、
コンピュータを、
前記複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、前記複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、
前記複数の子局のそれぞれの前記水中伝搬時間に基づいて、前記複数の子局に対して割り当てる送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、
前記複数の子局の間の送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、
前記送信順序情報を、前記複数の子局のそれぞれに送信する通信手段と
して機能させることを特徴とする通信プログラム。
【請求項9】
複数の子局の間で送信順序が割り当てられ、前記送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると、送信処理を行なう通信プログラムにおいて、
コンピュータを、
親局から、前記複数の子局の間で割り当てられた前記送信順序と、前記複数の子局のそれぞれの前記送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信する通信手段と、
前記送信許可情報を受信していない場合に、受信した前記送信順序情報に含まれている、自局の前記送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して前記通信手段に送信処理を要求する制御手段と
して機能させることを特徴とする通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法、通信システム及び通信プログラムに関し、例えば、信号の伝搬遅延が大きい水中通信環境における通信装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海中、海底、海底下などを対象とした調査・観測のために、地震計等の計測器、無人潜水機、ロボット等を用いてデータを収集する技術が進んでいる。例えば、水中に存在している複数のノードがネットワークを形成し、各ノードが送信可能なデータ(画像データも含む)を洋上又は陸上の機器に送信したり、洋上又は陸上の機器が各ノードの動作を操作したりするため、水中通信技術の開発が求められている。
【0003】
例えば、通常の無線通信(空気中の電波通信)の伝搬遅延(例えば(伝搬遅延時間)/(伝搬距離))と、水中音響通信のそれとを比較すると、無線通信が3.33ns/mに対して、水中音響通信が0.67ms/mとなっている。水中音響通信のアクセス制御方式を検討する際は、この伝搬遅延量を考慮する必要がある。
【0004】
無線ネットワークのアクセス制御方式の1つとしてポーリング方式がある。ポーリング方式では、通信信号の衝突を回避するため、親局がネットワーク内の各子局に対して順番に定期的に送信権を付与し、送信権が付与されたときのみ子局は送信処理を行なう通信方式である。
【0005】
水中音響通信においても、アクセス制御方式としてポーリング方式を採用したプロトコルが検討されている。非特許文献1では、”Adaptive Token Polling Algorythm”という方式が提案されている。
【0006】
この方式での1つの送信サイクルは、ポーリングフェーズと送信フェーズの2つの段階からなる。ここでは、データ送信の権限の付与については、子局自身に送信権が許可されていることを示す情報である送信許可トークン(以下、単にトークンとも呼ぶ。)を用いる。
【0007】
ポーリングフェーズでは、親局が、ネットワーク内の子局のそれぞれに、ポーリングメッセージをブロードキャスト送信する。ポーリングメッセージには、各子局に対して親局が許可した送信順番リストが記載されている。送信順番リストの最下位に位置している子局が最初に送信権を得る。
【0008】
送信フェーズでは、送信権を得た子局に送信待ちデータがある場合、当該子局は送信データとトークンを送信する。他方、当該子局に送信待ちデータがない場合、当該子局はトークンのみを送信する。つまり、送信待ちデータがない場合でも、送信権を得た子局はトークンのみを送信する。
【0009】
こうすることで、当該子局は、次に送信が許可されている子局に対してトークンを渡すことができる。よって、送信順番リストの順番に従って、各子局はデータ送信を行なうことができ、次の子局に対してトークンを付与することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Gunilla E. Burrowes,“Adaptive Token Polling MAC Protocol for Wireless Underwater Networks”,2009年2月11日~13日開催、2009 4th Intenational Symposium on Wireless Pervasive Computing.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した非特許文献1に記載の方法は、通信距離が近~中距離を想定しており、すなわちネットワーク内のすべての子局同士が直接通信可能な距離にあることを想定している。したがって、通信距離が長く、ネットワーク内に隠れ端末の関係にある子局が存在する場合、次に送信許可がされている子局に対してトークンを渡すことができないので、そのまま適用することができない。その結果、データ信号の衝突が生じ得る。
【0012】
そのため、水中通信環境において、送信権の付与を示す情報(例えばトークン)を受信しない子局で存在するときでも、信号衝突を回避しながら、送信順序に従った送信処理を行なう通信装置、通信方法、通信システム及び通信プログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、複数の子局と水中通信を行なう通信装置において、(1)複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、(2)複数の子局のそれぞれの水中伝搬時間に基づいて、複数の子局に対して割り当てる送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、(3)複数の子局の間の送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、(4)送信順序情報を、複数の子局のそれぞれに送信する通信手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明は、複数の子局の間で送信順序が割り当てられ、送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると、送信処理を行なう通信装置において、(1)親局から、複数の子局の間で割り当てられた送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信する通信手段と、(2)送信許可情報を受信していない場合に、受信した送信順序情報に含まれている、自局の送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して通信手段に送信処理を要求する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第3の本発明は、親局が複数の子局の間で送信順序を割り当て、複数の子局のそれぞれが、送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると送信処理を行なう通信方法において、(A)親局は、(1)伝搬時間導出手段が、複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出し、(2)送信順序導出手段が、複数の子局のそれぞれの水中伝搬時間に基づいて、複数の子局に対して割り当てる送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出し、(3)送信順序情報作成手段が、複数の子局の間の送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成し、(4)親局通信手段が、送信順序情報を、複数の子局のそれぞれに送信し、(B)複数の子局のそれぞれは、(1)子局通信手段が、親局から、複数の子局の間で割り当てられた送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信し、(2)制御手段が、送信許可情報を受信していない場合に、受信した送信順序情報に含まれている、自局の送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して子局通信手段に送信処理を要求することを特徴とする。
【0016】
第4の本発明は、親局が複数の子局の間で送信順序を割り当て、複数の子局のそれぞれが、送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると送信処理を行なう通信システムにおいて、(A)親局は、(1)複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、(2)複数の子局のそれぞれの水中伝搬時間に基づいて、複数の子局に対して割り当てる送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、(3)複数の子局の間の送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、(4)送信順序情報を、複数の子局のそれぞれに送信する親局通信手段とを備え、(B)複数の子局のそれぞれは、(1)親局から、複数の子局の間で割り当てられた送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信する子局通信手段と、(2)送信許可情報を受信していない場合に、受信した送信順序情報に含まれている、自局の送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して子局通信手段に送信処理を要求する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
第5の本発明は、複数の子局と水中通信を行なう通信プログラムにおいて、コンピュータを、(1)複数の子局のそれぞれの位置情報に基づいて、複数の子局のそれぞれとの間の水中伝搬時間を導出する伝搬時間導出手段と、(2)複数の子局のそれぞれの水中伝搬時間に基づいて、複数の子局に対して割り当てる送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを導出する送信順序導出手段と、(3)複数の子局の間の送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を作成する送信順序情報作成手段と、(4)送信順序情報を、複数の子局のそれぞれに送信する通信手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
第6の本発明は、複数の子局の間で送信順序が割り当てられ、送信順序に従って他の子局から、送信権の付与を示す送信許可情報を受信すると、送信処理を行なう通信プログラムにおいて、コンピュータを、(1)親局から、複数の子局の間で割り当てられた送信順序と、複数の子局のそれぞれの送信権を得る時刻とを含む送信順序情報を受信する通信手段と、(2)送信許可情報を受信していない場合に、受信した送信順序情報に含まれている、自局の送信権を得る時刻に基づいて、送信すべきデータの有無を判断して通信手段に送信処理を要求する制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水中通信環境において、送信権の付与を示す情報(例えばトークン)を受信しない子局で存在するときでも、信号衝突を回避しながら、送信順序に従った送信処理を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る親局の内部構成を示す内部構成図である。
図2】実施形態に係る水中通信システムのネットワーク構成の全体構成を示す全体構成図である。
図3】実施形態に係る子局の内部構成を示す内部構成図である。
図4】実施形態に係るポーリングメッセージ及びトークンの構成を示す構成図である。
図5】実施形態のポーリングメッセージの作成及び送信処理を示すフローチャートである。
図6】実施形態の子局におけるデータ送信処理を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る送信権を得る時刻の導出方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る水中通信装置、水中通信方法及び水中通信プログラムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図2は、実施形態に係る水中通信システムのネットワーク構成の全体構成を示す全体構成図である。
【0023】
図2において水中通信システム10は、親局1と、複数台(例えばM台;Mは正の整数)の子局2-1~2-Mとを有する。子局2-1~2-Mの共通構成及び共通処理を説明するときには「子局2」と表記して説明する。
【0024】
水中における通信技術としては、音波又は超音波を使用する水中音響通信が一般的であり、この実施形態の水中通信技術は、水中音響通信を用いることができる。さらに、この実施形態の水中通信技術は、一般的な水中音響通信に限らず、可視光、電波を使用する通信技術も適用可能である。つまり、実施形態の水中通信技術は、音波(又は超音波)だけでなく、光又は電波を含む電磁波を用いてデータを伝搬する。使用する周波数帯域は、水中通信システム10の運用に応じて適宜決めることができ、この実施形態では特に限定しない。
【0025】
親局1と子局2は、水中で無線通信を行なう水中通信装置を有する。親局1及び子局2を有するネットワークのトポロジーは、例えばスター型トポロジ―を適用できる。親局1は、子局2の動作を制御する側のノード(すなわちマスタノード)として機能する。他方、子局2は、親局1により制御される側のノード(すなわちスレーブノード)として機能する。
【0026】
親局1及び子局2は、例えば、水中、水底等に設置される計測器や、水中、水底等を移動可能な水中移動体に搭載することができる。つまり、親局1及び子局2は、固定的に設置されるもの、又は移動可能なものに搭載することができる。なお、水中移動体は、水中又は水底を移動可能であれば特に限定されず、例えば、無人潜水機、ロボット等を適用できる。
【0027】
子局2を搭載する機器は、後述する構成に加えて、センサ、カメラ等を備えている。子局2は、センサ、カメラ等で獲得したセンサデータ、画像データ等を水中通信で親局1に送信する。
【0028】
親局1は、子局2からデータ(センサデータ、画像データなど)を受信し、受信したデータを保持する。親局1は、必要に応じて、子局2から受信したデータを別の装置に送信して保存するようにしてもよい。なお、親局1を搭載する機器が、センサ、カメラ等を備えてもよい。その場合、親局1を搭載している機器は、センサ、カメラ等が獲得したセンサデータ、画像データ等を保持したり、別の装置に送信したりしてもよい。また、親局1は、例えば洋上などの水上に存在していてもよい。
【0029】
親局1及び子局2は、非特許文献1に記載の”Adaptive Token Polling Algorythm”を採用する。つまり、親局1は、複数の子局2のそれぞれに対してデータ送信の順番を示す送信順番リストを作成する。親局1は、送信順番リストを含むポーリングメッセージを、ネットワーク内の子局2にブロードキャストする。これにより、ネットワーク内の各子局2は、ポーリングメッセージを保持できる。
【0030】
(A-1-2)親局1の内部構成
図1は、実施形態に係る親局1の内部構成を示す内部構成図である。図1において、実施形態の親局1は、制御部11、位置情報管理部12、伝搬時間導出部13、通信部14を有する。
【0031】
親局1のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、通信装置等を有する。そして、CPUが、ROMに格納される処理プログラム(例えば、水中通信プログラム等)を読み出して実行することにより、親局1の各種機能が実現される。
【0032】
[制御部11]
制御部11は、親局1の各種機能を司るものである。制御部11は、ネットワーク内の各子局2と同期した時刻を保持している。
【0033】
制御部11は、ネットワーク内の全ての子局2の送信開始時刻(送信権を得る時刻)を導出する送信時刻導出部111と、ポーリングメッセージを生成するポーリングメッセージ作成部112とを有する。
【0034】
ポーリングメッセージを生成する際、送信時刻導出部111は、位置情報管理部12から各子局2の位置情報を取得する。そして、各子局2の伝搬時間を求めるため、送信時刻導出部111は、位置情報管理部12から取得した各子局2の位置情報を伝搬時間導出部13に与える。送信時刻導出部111は、伝搬時間導出部13により求められた各子局2の伝搬時間を取得すると、送信時刻導出部111は各子局2の送信権を得る時刻を子局2毎に計算する。
【0035】
そして、ポーリングメッセージ作成部112は、各子局2の送信権を得る時刻に基づいて、各子局2がデータ送信を行なう順番を決めて、その順番に従って各子局2の識別情報(例えば、アドレス情報等)と、各子局2の送信権を得る時刻とを含むポーリングメッセージを作成する。
【0036】
ネットワーク内の全ての子局2にポーリングメッセージを送信するため、ポーリングメッセージ作成部112はポーリングメッセージを通信部14に与えて、ポーリングメッセージ作成部112は通信部14に送信要求をする。
【0037】
図4(A)は、実施形態に係るポーリングメッセージの構成を示す構成図である。図4(A)において、ポーリングメッセージは、少なくとも、ネットワーク内の子局2の識別情報(例えば、アドレス情報等)と、各子局2がトークンを受信しなかったときに送信権を得る時刻と、各子局2が送信権を得る順番とを含むメッセージである。
【0038】
図4(A)において、ポーリングメッセージは、子局2の識別情報としての「子局アドレス」と、子局2の送信権を得る時刻としての「送信開始時刻」とが関連付けられ、データ送信順に並べられている。
【0039】
図4(A)はポーリングメッセージを最も簡単に説明する図であり、この例では、ポーリングメッセージの長さ(全長)は、1回の送信サイクルの単位時間長を示している。親局1は、1サイクルの単位時間長の中で、各子局2に送信権を付与してデータ送信を許可する時間を割り当てている。
【0040】
ここでは、説明を簡単にするため、各子局2に割り当てる時間長は、子局2間で同じ時間長とする。しかし、これに限らず、子局2が送信するデータのデータ量に応じて、割り当て時間長を可変してもよい。例えば、画像データを送信する子局2には長い時間長を割り当て、データ量が少ないセンシングデータを送信する子局2には短い時間長を割り当てるようにしてもよい。
【0041】
[位置情報管理部12]
位置情報管理部12は、親局1の位置情報と、ネットワーク内の各子局2の位置情報とを保持する。位置情報管理部12は、親局1又は子局2の識別情報(例えばアドレス情報等)と、当該親局1又は当該子局2の位置情報とを対応付けて位置情報を管理する。
【0042】
ここで、位置情報は、例えば、経度、緯度、深度を示す3次元座標とする。また、位置情報は、事前に、緯度、経度、深度の位置情報がわかっている基準局の位置に対して、各子局2の相対的な位置情報としてもよい。
【0043】
例えば、子局2が固定的に配置されている場合、位置情報管理部12は、当該子局2について固定座標で保持してもよい。又例えば、無線潜水機、ロボット等の移動体に子局2が搭載されて、移動体が事前に決められている移動経路を移動する場合、現在時刻に経路上に移動体が位置している情報を計算して得た位置としてもよい。なお、位置情報の取得方法は、この実施形態では特に限定されず、様々な方法を広く適用できる。図1では、「識別情報:1111」が親局1のアドレス情報であり、親局1の最新の位置情報として「位置情報:xx,yy,zz」が親局1のアドレス情報に対応付けられている。同様に、ある子局2のアドレス情報である「識別情報:2221」と、当該子局2の最新の位置情報として「位置情報:xx,yy,zz」が対応付けられている。
【0044】
各子局2の位置情報が変化する場合、位置情報管理部12は各子局2の最新の位置情報を管理する。例えば、子局2の最新の位置情報を位置情報管理部12が取得するたびに、位置情報管理部12は当該子局2の位置情報を更新する。なお、各子局2の位置情報の変化を管理する場合には、必要に応じて、位置情報管理部12は各子局2の過去の位置情報を保持するようにしてもよい。
【0045】
位置情報管理部12は、制御部11から要求されると、各子局2の位置情報を制御部11に与える。
【0046】
[伝搬時間導出部13]
伝搬時間導出部13は、制御部11から子局2の位置情報を受け取ると、親局1の位置情報と子局2の位置情報とに基づいて、親局1と子局2との間の水中における情報の伝搬時間(「水中伝搬時間」とも呼ぶ。)を求める。また、伝搬時間導出部13は、求めた子局2の伝搬時間を制御部11に与える。子局2の伝搬時間の導出方法は動作の項で詳細に説明する。
【0047】
なお、親局1と子局2との間の伝搬時間は、例えば子局2が親局1に向けてデータを送信したときに要する時間をいう。
【0048】
[通信部14]
通信部14は、同一ネットワーク内の子局2とデータの授受を行なう通信インタフェース部である。通信部14は、制御部11からポーリングメッセージの送信を要求されると、ネットワーク内の全ての子局2のそれぞれに対してポーリングメッセージを送信する。例えば、通信部14は、ネットワーク内の子局2に対して、ポーリングメッセージをブロードキャスト送信する。
【0049】
(A-1-3)子局2の内部構成
図3は、実施形態に係る子局2の内部構成を示す内部構成図である。図3において、実施形態の子局2は、制御部21、通信部22を有する。
【0050】
子局2のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、通信装置等を有する。そして、CPUが、ROMに格納される処理プログラム(例えば、水中通信プログラム等)を読み出して実行することにより、子局2の各種機能が実現される。
【0051】
[制御部21]
制御部21は、子局2の各種機能を司るものである。制御部21は、通信部22を介して、ポーリングメッセージを取得する。そして、制御部21は、ポーリングメッセージに基づいて、送信すべきデータの送信制御を行なう。
【0052】
ここで、ポーリングメッセージを取得した際、制御部21は送信待機状態になる。制御部21が送信待機状態である場合、以下の条件1~条件3のいずれかを満たしているとき、制御部21は通信部22にデータ送信を要求する。なお、当該子局2において送信すべきデータが存在しない場合、制御部21はデータ送信をしない。
条件1:自局が最初に送信権を得る子局である。
条件2:送信順で、自局の1つ前の子局アドレスが記載されたトークンを受信した旨を、通信部22から通知される。
条件3:条件1、条件2を満たさないまま、ポーリングメッセージに記載された自局が送信権を得る時刻に達する。
【0053】
データ送信後(送信すべきデータがないときには、その後)、制御部21は、図4(B)に例示するトークンの送信を、通信部22に要求する。図4(B)は、実施形態に係るトークンの構成を示す構成図である。図4(B)に示すように、トークンは、次に送信権を得る子局アドレスを含む情報である。
【0054】
制御部21は、通信部22に対して、データ送信を要求した後、送信待機状態を解除する。
【0055】
[通信部22]
通信部22は、同一ネットワーク内の親局1、他の子局2とデータの授受を行なう通信インタフェース部である。
【0056】
通信部22は、ポーリングメッセージを受信すると、ポーリングメッセージを制御部21に与える。
【0057】
通信部22は、他の子局2が送信したトークンを受信すると、受信したトークンに記載のアドレスが自局のアドレスであるか否かを判断する。そして、自局のアドレスであるときには、自局が次の送信権を得たことを、通信部22は制御部21に通知する。自局のアドレスでないとき、通信部22は、その旨を制御部21に通知する。その際、送信順で自局の1つ前の子局アドレスが記載されているときには、その旨を、通信部22は制御部21に通知する。
【0058】
通信部22は、制御部21からデータ送信の要求を受けると、制御部21から取得したデータを送信する。
【0059】
(A-2)実施形態の動作
次に、実施形態に係る水中通信システム10におけるアクセス制御処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
実施形態で提案するアクセス制御方式は、ポーリングフェーズと、送信処理フェーズの2つのステップを有する。ポーリングフェースでは、親局1がポーリングメッセージを作成して、親局1がネットワーク内の全ての子局2に対してポーリングメッセージを送信する処理である。送信処理フェーズでは、ポーリングメッセージを受信した子局2が送信権を得て、子局2がデータ及びトークンを送信する処理である。
【0061】
(A-2-1)ポーリングフェーズ
図5は、実施形態のポーリングメッセージの作成及び送信処理を示すフローチャートである。
【0062】
[ステップS101]
親局1において、位置情報管理部12は、親局1及び全ての子局2の位置情報を保持する。ポーリングメッセージを作成する際、制御部11の送信時刻導出部111は、位置情報管理部12から各子局2の位置情報を取得する(S101)。
【0063】
[ステップS102]
送信時刻導出部111は、位置情報管理部12から取得した各子局2の位置情報を、伝搬時間導出部13に与えて、親局1と各子局2との間の伝搬時間(伝搬遅延時間)の導出を要求する。
【0064】
伝搬時間導出部13は、親局1の位置情報と、各子局2の位置情報とを用いて、親局1と各子局2との間の伝搬時間を導出する(S102)。
【0065】
例えば、伝搬時間の導出方法は、事前に伝搬遅延時間(例えば、「伝搬遅延時間/伝搬距離」)を設定しておき、親局1の位置情報と、ある子局2の位置情報とを用いて親局1と子局2との距離を求めることで、親局1と子局2との伝搬時間を導出することができる。より具体的に、例えば水中音響通信の伝搬遅延時間として0.67[ms/m]を設定しておく。そして、親局1と子局2との距離が「A[m]」であれば、「0.67×A」が親局1と子局2との伝搬時間となる。
【0066】
上述した事前設定の伝搬遅延時間は一例である。事前設定の伝搬遅延時間は、水中の深度、圧力、温度、塩分濃度、濁り、海流等の条件に応じて異なる。したがって、水中通信システム10の設置環境に応じた値(伝搬遅延時間の値)を設定することができる。また、上述した水中の深度、圧力、温度、塩分濃度、濁り、海流等の条件に応じて、伝搬遅延時間の値を複数設定してもよい。例えば、親局1及び子局2が存在している深度等の環境に応じて、適切な設定値を伝搬時間導出部13が選択して、遅延時間を導出するようにしてもよい。
【0067】
なお、伝搬時間導出部13が導出する伝搬時間の導出方法は、上述した方法に限定されない。例えば、水中の深度、圧力、温度、塩分濃度、濁り、海流等を評価する値をパラメータとして、親局1と子局2との間の伝搬時間を導出する関係式を用いてもよい。また、上述した例は、超音波を用いた水中音響通信例であるが、可視光又は電波を用いた水中通信に適した関係式を用いてもよい。例えば水中では電波の減衰が非常に大きい。したがって、海中における電波の比誘電率や導電率[s/m]等の電気的特性を示す値をパラメータとした関係式を用いてもよい。
【0068】
[ステップS103]
送信時刻導出部111は、伝搬時間導出部13から各子局2の伝搬時間を取得する。制御部11は、各子局2の伝搬時間に基づいて、送信権を得る時刻を子局2毎に導出する(S103)。
【0069】
ここでは、親局1と子局2との間の伝搬時間が小さい順に送信権を付与するものとする。勿論、親局1と子局2との距離が近い順に送信権を付与するようにしてもよい。
【0070】
送信権を得る時刻は、ポーリングメッセージの作成の際に、親局1が各子局2に対して、データ送信を許可した時刻情報である。例えば、隠れ端末の関係にある子局2がトークンを受信できない場合でも、ポーリングメッセージに送信権を得る時刻が記載されているので、トークンを受信できなかった子局2もデータ送信が可能となる。また、子局2毎の送信権を得る時刻は、事前に親局1が導出したものであるため、データ信号の衝突も回避できる。
【0071】
送信権を得る時刻の導出方法の一例を説明する。例えば、第n番目に送信権を得る子局2の伝搬時間をDn(nは正の整数;1≦n≦M)とし、第n番目に送信権を得る子局2の送信権を得る時刻をTnとする。子局2が送信するデータのデータ長をLとする。説明便宜上、データ長Lは固定値とする。勿論、データ長Lは可変であってもよい。
【0072】
親局1がポーリングメッセージを送信開始する時刻をT0とする。
【0073】
第1番目に送信権を得る子局2は、送信権を得ると待機せず即座に送信を行うため、以下の時刻に送信を行う。
T1=T0+D1 …(0)
【0074】
第2番目に送信権を得る子局2の送信権を得る時刻T2は、以下のように表すことができる。
T2=T1+D1+L …(1)
【0075】
第2番目以降の第n+1番目に、送信権を得る子局2の送信権を得る時刻Tn+1は、以下のように表すことができる。
Tn+1=Tn+Dn+L …(2)
【0076】
式(2)に示すように、互いに前後する、第n番目の子局2と第n+1番目の子局2とが送信したデータの衝突を回避するため、第n番目の子局2の送信権を得る時刻Tnに、第n番目の子局2の伝搬時間Dnとデータ長Lとを加算して得た時刻を、第n+1番目の子局2の送信権を得る時刻Tn+1とする。
【0077】
なお、上述した送信権を得る時刻の導出方法は、一例であり、これに限定されない。例えば、互いに送信順が前後する子局2が送信したデータ衝突を回避するため、所定時間長(マージン)等を加算して、送信権を与える間隔を広くしてもよい。
【0078】
また、関係式は式(1)及び式(2)に限定されず、水中の深度、圧力、温度、塩分濃度、濁り、海流等を評価した値をパラメータとする関係式を用いてもよい。
【0079】
[ステップS104]
制御部11のポーリングメッセージ作成部112は、各子局2のアドレス情報と、各子局2が送信権を得る時刻と、各子局2が送信権を得る順番とを含むポーリングメッセージを作成する(S104)。各子局が送信権を得る順番は、例えば、伝搬時間が短い方が早く送信権を得るように決める。
【0080】
[ステップS105、S106]
制御部11は、ネットワーク内の全ての子局2に対してポーリングメッセージを送信するため、通信部14に送信要求をする(S105)。親局1は、子局2からのデータ受信待機状態となる。
【0081】
(A-2-2)送信処理フェーズ
図6は、実施形態の子局2におけるデータ送信処理を示すフローチャートである。
【0082】
[ステップS201、S202]
子局2において、通信部22がポーリングメッセージを受信すると(S201)、制御部21は送信待機状態になる(S202)。なお、子局2における受信処理は継続して動作している。したがって、他の子局2が送信したトークンを、子局2は受信可能である。
【0083】
[ステップS203~S205]
制御部21は、以下のいずれかの条件を満たしているか否かを判定する(S203~S205)。
【0084】
制御部21は、自局の子局アドレス情報に基づいて、ポーリングメッセージに記載されている送信権を得る順番を確認する。
【0085】
S203において、制御部21は、自局が最初に送信権を得る子局であるか否かを判定し(S203)、自局が最初に送信権を得る子局である場合(S203/YES)、制御部21はS206に移行する。他方、自局が最初に送信権を得る子局でない場合(S203/NO)、S204に移行する。
【0086】
S204は、子局2の通信部22がトークンを受信したときの処理である。したがって、他の子局2が送信したトークンを受信していないときには、S205に移行する。S204では、受信したトークンに、送信順で、自局よりも1つ前の子局のアドレス情報が記載されているか否かを、制御部21が判定する。
【0087】
そして、送信順で1つ前の子局アドレス情報がトークンに記載されている場合(S204/YES)、S206に移行して、制御部21はデータ送信の準備を行なう。他方送信順で1つ前の子局アドレス情報がトークンに記載されていない場合(S204/NO)、S205に移行する。
【0088】
S205において、条件1及び条件2を満たしていない場合に、制御部21は、ポーリングメッセージに基づいて、自局の送信権を得る時刻に達したか否かを判定する(S205)。そして、自局の送信権を得る時刻に達したとき(S205/YES)、S206に移行する。なお、自局の送信権を得る時刻に達していないときにはS203に戻り、制御部21は、条件1~条件3を満たしているか否かを継続して判断する。
【0089】
S205において、子局2の制御部21が条件3を満たしているか否かを判定することにより、隠れ端末の関係によって、子局2が、他の子局2からトークンを取得できない状態にある場合でも、ポーリングメッセージに定義されている送信権を得る時刻に基づいて、データ衝突を回避しながら、当該子局2がデータを送信できる。
【0090】
[ステップS206、S207、S208]
制御部21は、送信すべきデータがあるか否かを確認する(S206)。送信すべきデータある場合(S206/YES)、制御部21は通信部22にデータ送信を要求し(S207)、その後、制御部21は、トークンに記載する情報を更新して、通信部22にトークンの送信要求を行なう(S208)。
【0091】
他方、送信すべきデータがない場合(S206/NO)、制御部21は、トークンに記載する情報を更新して、通信部22にトークンの送信要求を行なう(S208)。なお、送信すべきデータがなくても、子局2はトークンのみを送信する。
【0092】
[ステップS209]
制御部21は、通信部22に送信要求後、送信待機状態を解除する(S209)。
【0093】
[ステップS210]
送信待機状態が解除されると、通信部22は、データ、トークンを送信する(S210)。
【0094】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、実施形態によれば、親局が、各子局の送信権を得る時刻を子局毎に導出し、各子局の送信権を得る時刻を記載したポーリングメッセージを送信する。そのため、ネットワーク内の各子局同士が隠れ端末の位置関係にある場合でも、子局は送信権を得る時刻を認識でき、データ衝突を回避しながら、子局は送信処理が可能となる。
【0095】
また、実施形態によれば、伝搬遅延量を推定して各子局の送信可能時刻(送信権を得る時刻)を導出できる。これにより、ネットワーク内の最大伝搬遅延量を考慮して一定間隔で送信権を与える場合より効率よく通信が可能となる。
【0096】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0097】
(B-1)親局が伝搬時間を導出する方法として、固定座標の位置情報や、移動経路と経過時間から計算した位置情報を用いて伝搬時間を求める手法を説明した。しかし、その他の手法として、例えば、過去の通信データの伝搬時間を利用する方法が考えられる。例えば、子局が、送信するデータに、送信時刻を示すタイムスタンプを付与して親局に送信する。親局は、データの受信時刻を記録する。そして、親局は、送信時刻を示すタイムスタンプと受信時刻との差から伝搬時間を求め、その伝搬時間を次回のポーリングに用いてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10…水中通信システム、1…親局、2(2-1~2-M)…子局、11…制御部、111…送信時刻導出部、112…ポーリングメッセージ作成部、12…位置情報管理部、13…伝搬時間導出部、14…通信部、21…制御部、22…通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7