(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107407
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】防音システム
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20230727BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230727BHJP
E04H 17/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
E01F8/00
E04G21/32 B
E04H17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008594
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長田 篤佳
(72)【発明者】
【氏名】浅井 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】増田 潔
【テーマコード(参考)】
2D001
2E142
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CD02
2E142HH00
2E142JJ01
2E142NN01
(57)【要約】
【課題】簡便な構造で、容易に移動設置が可能な防音システムを提供する。
【解決手段】騒音源に沿って配置される少なくとも1つ以上の第1の防音ユニット3を備える防音システムであって、前記第1の防音ユニット3は、前記騒音源に沿う方向に対向して配置される一対の主フレーム3aと、前記一対の主フレーム3aを設置面に対して自立状態に剛に結合する杆体3bと、前記一対の主フレーム3a及び前記杆体3bからなる構造体3cをその頂部を折り返し部として前記騒音源側に対向する正面側、及びその反対側の背面側を覆う第1の防音シート3dとを備え、前記第1の防音シート3dは、前記正面側が前記折り返し部を中心として折り返し、前記騒音源に取り付け自在とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源に沿って配置される少なくとも1つ以上の第1の防音ユニットを備える防音システムであって、
前記第1の防音ユニットは、
前記騒音源に沿う方向に対向して配置される一対の主フレームと、
前記一対の主フレームを設置面に対して自立状態に剛に結合する杆体と、
前記一対の主フレーム及び前記杆体からなる構造体をその頂部を折り返し部として前記騒音源側に対向する正面側、及びその反対側の背面側を覆う第1の防音シートとを備え、前記第1の防音シートは、前記正面側が前記折り返し部を中心として折り返し、前記騒音源に取り付け自在とされている、防音システム。
【請求項2】
前記第1の防音ユニットの前記主フレームはA字状に形成されたフレームであり、前記杆体は、パイプである、請求項1に記載の防音システム。
【請求項3】
前記第1の防音ユニットの前記主フレームの脚部に、ストッパ付きのキャスターを備える、請求項1または2に記載の防音システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の第1の防音ユニットと、騒音源に沿って配置される少なくとも1つ以上の第2の防音ユニットと、を備えた防音システムであって、
前記第2の防音ユニットは、設置面からの高さHと、騒音源に対して前後方向の幅Wと、設置面に沿って延びる長さLと、が規定されたユニットであり、
前記長さL方向に対向して位置する左右の側面、前記幅W方向の前記騒音源と反対側の背面、前記左右の側面および背面の上端間を覆う上面にそれぞれ配置された第2の防音シートと、
前記第2の防音シートを内部空間が形成されるように支持する支持フレームと、
前記支持フレームに吊り下げられた吊下吸音材と、を備える、防音システム。
【請求項5】
前記第2の防音ユニットの前記吊下吸音材は、前記幅W方向の前記騒音源と反対側の背面との間に空間を形成する位置に配置される、請求項4に記載の防音システム。
【請求項6】
前記第2の防音ユニットの前記支持レームの脚部に、ストッパ付きのキャスターを備える、請求項4または5に記載の防音システム。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の第1の防音ユニットと、請求項4から6のいずれか1項に記載の第2の防音ユニットと、騒音源の上面を覆う被覆防音シートと、を備えた防音システムであって、
前記被覆防音シートは、
前記騒音源の上面を覆う被覆防音シート本体と、
前記被覆防音シート本体に取り付けられる少なくとも1つ以上の吸音材と、を備える防音システム。
【請求項8】
前記被覆防音シートの前記吸音材は、前記被覆防音シート本体に設けられたメッシュ状のポケットに取り付けられる、請求項7に記載の防音システム。
【請求項9】
前記騒音源は、コンクリートポンプ車である、請求項1から8のいずれか1項に記載の防音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事等で使用される作業車両、作業機械において、作業現場に設置して使用され、一日の作業時間が長く発生騒音の大きいものがある。例えば、コンクリートポンプ車等は、コンクリート打設作業の間、設置位置において稼働し続け、比較的発生騒音の大きい車両である。このような騒音を抑制するための技術が考察されている。騒音を抑制するためには、騒音源に対して防音シートや、防音壁を敷設し、外部への騒音を防音材等で吸収することが行われる。
【0003】
特許文献1には、建設・土木工事等に伴う多種多様の騒音を低減する騒音対策において、比較的簡易な防音塀で広範囲の防音に柔軟に対応でき、低周波域を含めた多種多様の騒音を確実に低減できる移動式防音塀において、防音パネルの遮音性能を比較的簡単な構成で効率よく高めたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明では、支持フレームの外側に防音パネルを吊り下げた機構の塀であり、工事現場において、工事車両や作業機械が移動する必要がある場合は、この塀を解体し再度組み立てる作業が繁雑で、移動に時間がかかる恐れがある。また、移動作業のためにある程度の作業人員の確保が必須であり、高さや設置する長さ等によっては、重機の手配が必要となる可能性もある。また、車両を囲う場合、4面のうち少なくとも1面については、車両の出入りのため囲いを開放しておく必要があり、安定性を保つことが難しく、簡便な移動や再度の組み立てのためには課題が残る。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡便な構造で、容易に移動設置が可能な防音システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の防音システムは、騒音源に沿って配置される少なくとも1つ以上の第1の防音ユニットを備える防音システムであって、前記第1の防音ユニットは、前記騒音源に沿う方向に対向して配置される一対の主フレームと、前記一対の主フレームを設置面に対して自立状態に剛に結合する杆体と、前記一対の主フレーム及び前記杆体からなる構造体をその頂部を折り返し部として前記騒音源側に対向する正面側、及びその反対側の背面側を覆う第1の防音シートとを備え、前記第1の防音シートは、前記正面側が前記折り返し部を中心として折り返し、前記騒音源に取り付け自在とされている。
【0008】
本発明では、騒音源に沿って配置される第1の防音ユニットの第1の防音シートが、正面側折り返し部を中心として折り返し、騒音源に取り付け自在とされているので、第1の防音ユニットの配置場所に対応して、第1の防音シートを適切な形態に設定できる。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1の防音ユニットの前記主フレームはA字状に形成されたフレームであり、前記杆体は、パイプである。
この一態様では、第1の防音ユニットの主フレームがA字状に形成されたフレームであるので、防音ユニットとして簡便な構造を選択し、騒音源から発生した騒音は、防音シートを騒音源に取り付けることによって、主フレームと杆体とからなる構造体の内部に効果的に誘導される。
【0010】
本発明の一態様では、前記第1の防音ユニットの前記主フレームの脚部に、ストッパ付きのキャスターを備える。
この一態様では、主フレームの脚部に、ストッパ付きのキャスターを備えるので、防音ユニットの移動が容易となる。
【0011】
本発明の一態様では、上述の第1の防音ユニットと、騒音源に沿って配置される少なくとも1つ以上の第2の防音ユニットと、を備えた防音システムであって、前記第2の防音ユニットは、設置面からの高さHと、騒音源に対して前後方向の幅Wと、設置面に沿って延びる長さLと、が規定されたユニットであり、前記長さL方向に対向して位置する左右の側面、前記幅W方向の前記騒音源と反対側の背面、前記左右の側面および背面の上端間を覆う上面にそれぞれ配置された第2の防音シートと、前記第2の防音シートを内部空間が形成されるように支持する支持フレームと、前記支持フレームに吊り下げられた吊下吸音材と、を備える。
【0012】
この一態様では、第1の防音ユニットに加え、騒音源に沿って配置される少なくとも1つ以上の第2の防音ユニットを備えるので、騒音源の状況に対応して、適切な場所に適切な防音ユニットを設置することができる。
【0013】
本発明の一態様では、前記第2の防音ユニットの前記吊下吸音材は、前記幅W方向の前記騒音源と反対側の背面との間に空間を形成する位置に配置される。
この一態様では、吊下吸音材が、第2の防音ユニットの幅W方向の騒音源と反対側の背面との間に空間を形成する位置に配置されるので、騒音源の主となる騒音の周波数に対応した空間を形成できる。
【0014】
本発明の一態様では、前記第2の防音ユニットの前記支持フレームの脚部に、ストッパ付きのキャスターを備える。
この一態様では、支持フレームの脚部に、ストッパ付きのキャスターを備えるので、防音ユニットの移動が容易となる。
【0015】
本発明の一態様では、前述の第1の防音ユニットと、前述の第2の防音ユニットと、騒音源の上面を覆う被覆防音シートと、を備えた防音システムであって、前記被覆防音シートは、前記騒音源の上面を覆う被覆防音シート本体と、前記被覆防音シート本体に取り付けられる少なくとも1つ以上の吸音材と、を備える。
この一態様では、第1の防音ユニットと第2の防音ユニットに加え、騒音源の上面を覆う被覆防音シートを備えるので、騒音源の状況に対応して、適切な場所、適切の部分に適切な防音ユニット、防音シートを設置することができる。
【0016】
本発明の一態様では、前記被覆防音シートの前記吸音材は、前記被覆防音シート本体に設けられたメッシュ状のポケットに取り付けられる。
この一態様では、被覆防音シート本体にメッシュ状のポケットが設けられるので、吸音材をその効果を減ずることなく被覆防音シートに取り付けることができる。
【0017】
本発明の一態様では、前記騒音源は、コンクリートポンプ車である。
この一態様では、本発明の防音システムを適用するに際して、効果的に防音を実施できる一例としての騒音源が選択される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡便な構造で、容易に移動設置が可能な防音システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る防音システムの第1の防音ユニットの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る防音システムの第1の防音ユニットの主フレームの正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る防音システムの第1の防音ユニットを説明する概念図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る防音システムの第2の防音ユニットの側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防音システムの第2の防音ユニットの平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る防音システムの第2の防音ユニットの斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る防音システムの被覆防音シートの平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る防音システムの平面概略図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る防音システムの側面概略図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る防音システムの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
最初に、本発明を実施するに際して行った調査とその結果について説明する。
(音源探査について)
本発明を実施するに当たり、騒音源としては、コンクリートポンプ車を対象とし、音源探査を行い、コンクリートポンプ車の車体における騒音の発生箇所を特定した。
【0021】
(音源探査結果から判明したコンクリートポンプ車からの発生騒音と対策すべき箇所)
コンクリートポンプ車において発生騒音が特に大きい箇所として、車体前方及び運転席(キャブ)後方下部と生コン投入口付近のスイングバルブ部がある。この他に車体から外部へ音が漏れ出る主な箇所としては、車体全周下部、車体上部後方(スイングバルブ上部)である。
これらの音源探査の結果を踏まえ、音源対策として特に対策を施す箇所は、(1)車体前方、(2)車体側方下部、(3)車体後方下部、(4)車体上部とした。
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明による防音システムを実施するための形態について説明する。
(実施形態)
図8は、本発明の実施形態に係る防音システム1の平面概略図である。
図9は、その側面概略図である。本実施形態に係る防音システム1は、騒音源Gとして、コンクリートポンプ車を対象としている。
図8、
図9に示すとおり、防音システム1は、騒音源Gに沿って配置される少なくとも1つ以上の第1の防音ユニット3と、少なくとも1つ以上の第2の防音ユニット5と、騒音源Gを上方から覆う少なくとも1つ以上の被覆防音シート7と、を備えている。本実施形態では、第1の防音ユニット3は、コンクリートポンプ車Gの車体側方下部と車体後方下部とに配置され、第2の防音ユニット5は、車体前方に配置されている。被覆防音シート7は、コンクリートポンプ車Gの車体上部を覆っている。コンクリートポンプ車Gは、車体中央から4方に延びるアウトリガーRによって作業場所の地面に固定されている。第1の防音ユニット3は、その高さをこのアウトリガーRの高さよりも低く設定されている。
【0023】
図1は、本実施形態に係る防音システム1の第1の防音ユニット3の斜視図である。第1の防音ユニット3は、騒音源Gに沿う方向に対向して配置される一対の主フレーム3aと、一対の主フレーム3aを設置面に対して自立状態に剛に結合する杆体3bと、一対の主フレーム3a及び杆体3bからなる構造体3cをその頂部を折り返し部として騒音源G側に対向する正面側、及びその反対側の背面側を覆う第1の防音シート3dとを備え、第1の防音シート3dは、正面側が折り返し部を中心として折り返し、騒音源Gに取り付け自在とされている。第1の防音シート3dは、対向する主フレーム3aも外側から覆っている。
【0024】
図2は、本実施形態における第1の防音ユニット3の主フレーム3aの正面図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態では、主フレーム3aは、A字状に形成されたフレームであり、杆体3bは、パイプである。主フレーム3aには、杆体3bと一対の主フレーム3aを剛に結合するためのクランプ等の連結部材3gが設けられている。本実施形態では、連結部材3gは、主フレームに溶接されている。この連結部材3gによって、主フレーム3aと杆体3bとは、主フレーム3aと杆体3bとによる構造体3cが自立するように結合されている。
図1に示すように、構造体3cの内部には、第1の防音シート3dに設けられたメッシュ状のポケット3eにより、吸音材3kが取り付けられている。主フレーム3aの脚部には、ストッパ付きのキャスター3fを備えている。
【0025】
図3は、使用する際の第1の防音ユニット3を説明する概念図である。第1の防音シート3dは、前述したように、騒音源G側に対向する正面側が折り返し部を中心として折り返し、騒音源Gに取り付け自在とされている。本実施形態では、第1の防音シート3dの正面側の端部にマグネット3hが取り付けられており、第1の防音シート3dは、磁力によってコンクリートポンプ車Gに取り付けられる。また、コンクリートポンプ車Gに取り付ける場合の他、第1の防音シート3dの正面側の防音シートは、円弧の矢印Mで示すごとく移動可能であって、設置場所の状態に対応して、正面側を覆う位置Fと、正面を開放する位置Bに設定可能とされている。コンクリートポンプ車Gに取り付けられ他状態においては、車体側方からの音漏れ・上空への拡散(矢印U)や、地盤反射音の上空への拡散(矢印D)を内部の吸音材3kによって吸音する。また、斜めになっていることにより、地盤面及び車体側面と防音シート面が平行にならないため、車体からの騒音による定在波を抑制することができ、低減効果を得やすい。第1の防音ユニット3が、コンクリートポンプ車Gの排気管がある位置に配置される場合は、防音シートが位置Bの位置に設定され、第1の防音ユニット3の内部が開放状態となり、排気が滞留せず充分な排気が可能となる。第1の防音ユニット3の実際の寸法としては、例えば、高さは900mm程度として良い。
【0026】
図4は、本実施形態の防音システム1に係る第2の防音ユニット5の側面図である。
図5は、第2の防音ユニット5の平面図である。
図6は、第2の防音ユニット5の斜視図である。
図4、
図5に示すように、第2の防音ユニット5は、設置面からの高さHと、騒音源Gに対して前後方向の幅Wと、設置面に沿って延びる長さLと、が規定されたユニットであり、長さL方向に対向して位置する左右の側面5a、幅W方向の騒音源Gと反対側の背面5b、左右の側面5aおよび背面5bの上端間を覆う上面5cにそれぞれ配置された第2の防音シート5dと、第2の防音シート5dを内部空間が形成されるように支持する支持フレーム5eと、支持フレーム5eに吊り下げられた吊下吸音材5fと、を備えている。
【0027】
第2の防音ユニット5の吊下吸音材5fは、幅W方向の騒音源Gと反対側の背面5bとの間に空間Sを形成する位置に配置されている。吊下吸音材5fの騒音源G側は、開放されており、開放された空間の側面5a、及び上面5cには、吸音材5gが設けられている。第2の防音ユニット5の支持レーム5eの脚部には、ストッパ付きのキャスター5hを備えている。吊下吸音材5fと背面5bとの間の空間Sの幅Tは、防音対策を施したい騒音波長の4分の1の長さに設定するのが良い。例えば、周波数250Hz付近の騒音に対応するためには、幅Tは、350mm程度とすれば良い。
【0028】
図5に示すように、並んで設置される第2の防音ユニット7の第2の防音シート5d端部には、重ね代5hが設けられており、着脱自在なテープ等で隣り合う第2の防音ユニット7同士を連結する。
図6は、第2の防音ユニット7の斜視図である。
図6に示されるように、重ね代5hによって連結された第2の防音ユニット7は、つなぎ目なく設置されて、騒音源Gからの騒音の漏洩を防ぐ。第2の防音ユニットの実際の寸法としては、例えば、高さは1800mm程度、幅は900mm程度、長さは1500mm程度として良い。
【0029】
図7は、本実施形態の防音システム1に係る被覆防音シート7の平面図である。被覆防音シート7は、騒音源Gを上面から覆う被覆防音シート本体7aと、被覆防音シート本体7aに取り付けられる少なくとも1つ以上の吸音材7bと、を備えている。吸音材7bは、被覆防音シート本体7aに設けられたメッシュ状のポケット7cに取り付けられる。被覆防音シート本体7aの端部には、被覆防音シート7を騒音源Gの上方から覆うように固定するための、マグネット7dが設けられている。
【0030】
本実施形態に係る防音システム1は、上述した第1の防音ユニット3、第2の防音ユニット5、被覆防音シート7を
図8、
図9に示すように、コンクリートポンプ車Gに対して設置する。第1の防音ユニット3は、コンクリートポンプ車Gの左右の車体側方下部にそれぞれ7基ずつ程度設置され、車体後方下部に2基程度設置される。第2の防音ユニット5は、車体前方に3基設置されている。被覆防音シートは、コンクリートポンプ車Gの車体上部を覆っている。
【0031】
以上述べたように、本実施形態に係る防音システム1は、第1の防音ユニット3と、第2の防音ユニット5と、被覆防音シート7と、を備え、騒音源Gの各部の状況に対応して、効果的な防音ユニット、シートを設置することができ、効果的に防音対策を施すことができる。
【0032】
第1の防音ユニット3は、第1の防音シート3dが、正面側が折り返し部を中心として折り返し、
図3に示す第1の防音ユニット3の内部を閉塞するFの位置、第1の防音ユニット3の内部を開放するBの位置、及び、マグネット3hによって騒音源Gに固定する位置、のそれぞれに設定可能であるので、第1の防音ユニットの設置場所によって適切な形態を選択できる。例えば、通常の場合は、騒音源Gにマグネット3hによって第1の防音シート3dを固定する。騒音源Gの排気管がある位置では、第1の防音シート3dを開放位置Bに設定し、充分な排気を促進するようにすることができる。第1の防音ユニット3の主フレーム3aは、A字状に形成されており、騒音源Gと反対の背面側の斜めの内面に取り付けられた吸音材3kによって、騒音を効率よく吸音することができる。主フレーム3aの脚部には、ストッパ付きのキャスター3fを備えているので、移動も容易である。第1の防音ユニット3の高さは、アウトリガーより低く設定されるので、アウトリガーに干渉することなく防音対策を実施することができる。
【0033】
第2の防音ユニット5は、吊下吸音材5fと背面5bとの間に空間Sが形成されているので、この空間Sの幅Tを変更することで、対策したい所望の騒音の周波数に対応した吸音効果を設定することができる。支持フレーム5eの脚部には、ストッパ付きのキャスター5hを備えているので、移動も容易である。
【0034】
被覆防音シート7は、複数の吸音材7bが離間した位置に、被覆防音シート本体7aに取り付けられているので、凹凸を持つ騒音源Gの上面を確実に被覆することができる。また、吸音材7bが離間した状態でメッシュ状のポケットに取り付けられているので、吸音材の効果を損ねることなく、離間することによって吸音効果を向上することができる。この被覆防音シート7によって騒音源Gを上方から覆うので、上方への騒音の拡散を防ぐことができる。
【0035】
本実施形態における、防音システム1は、これまで屋根をかけるなど大掛かりなため、移動・再組立が困難で、建設現場でも扱いにくかったコンクリートポンプ車の防音囲いを、吸音性を有する移動可能な防音ユニットの組み合わせによりコンパクトで効果的かつ扱いやすいものとすることができる。囲い高さを抑えることで、近隣への圧迫感が低減し、組立解体時の安全性も向上させることができる。また、本防音システム1は、コンパクトなため、都市部における狭隘な敷地の建設現場では、特に有効な防音囲いである。
【0036】
上述した第1の防音ユニット3、第2の防音ユニット5、被覆防音シート7の組み合わせにより、コンクリートポンプ車の防音囲いを車体の大きさに併せて構成し、配置することで、騒音源Gに対して効果的な遮音・吸音対策を行うことが出来る。このため、コンクリートポンプ車の囲いが小さくても、有効な防音対策を実施することができる。
また、これらの囲いは一人でも扱えるコンパクトなユニットから構成されており、事前組み立てや、コンクリートポンプ車移動に伴う囲いの移動も容易であるため、建設現場において極めて有効な騒音対策となり得る。
【0037】
かくして、簡便な構造で、容易に移動設置が可能な防音システム1を提供することができる。なお、本実施形態では、コンクリートポンプ車を騒音源Gとして例示したが、これに限定されず、騒音を発するいかなる機器に対しても、その騒音の状態に対応して、本発明の防音システム1として、第1の防音ユニット3、第2の防音ユニット5、被覆防音シート7、を適切に選択し設置することができる。
【実施例0038】
次に、従来例と本願発明の実施例について説明する。
図10は、従来例における防音システムとして、コンクリートポンプ車の周りに設置された防音囲いを示す画像である。
図11は、本願の防音システムを示す画像である。以下、比較結果を、従来型防音囲いとの防音性比較を表1に、従来型防音囲いとの規模比較を表2に、従来型防音囲いとの組立・移動時間比較を表3に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
(従来型防音囲いとの組立・移動時間比較)
【表3】
【0042】
上記の表より以下のことがわかる。
(1)騒音測定の結果、今回開発した防音システムの防音囲いは、未対策に比べて正面で約10dB、側面で約5dBの防音性能を有するとともに、上空への騒音も1~2dB程度低減することが出来る。
(2)従来型の防音囲いに比べて、本願の防音システムの囲いは概ね性能として上回っている。
(3)側面の防音性は、従来型の防音囲いに比べて約2.3dB下回っているが、囲いの高さが4の1と低くなっており、安全性や組立てやすさや移動などの総合的な面で本願の防音システムの囲いに優位性がある。