(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107415
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】テンション計測装置及びテンション計測方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/10 20200101AFI20230727BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20230727BHJP
G01L 5/102 20200101ALI20230727BHJP
G03F 1/62 20120101ALI20230727BHJP
【FI】
G01L5/10 C
B21C51/00 C
B21C51/00 J
B21C51/00 R
G01L5/102
G03F1/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008610
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 良
【テーマコード(参考)】
2F051
2H195
【Fターム(参考)】
2F051AA21
2F051AB04
2H195BC32
2H195BD08
(57)【要約】
【課題】気体の噴射以外の要因でペリクル膜が揺れてしまう場合であっても、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を正確に計測することができるテンション計測装置及びテンション計測方法を提供すること。
【解決手段】ペリクル膜に圧縮空気を噴射するエアノズルと、噴射された圧縮空気による直交方向へのペリクル膜の変位を計測する第1の超音波センサ232、233、234、235と、ペリクル膜上において、噴射された圧縮空気による変位が生じる領域外における直交方向へのペリクル膜の変位を計測する第2の超音波センサ332、333、334、335と、第1の超音波センサ232、233、234、235で計測されたペリクル膜の変位と、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位との差分に基づいてペリクル膜にかかっているテンションを計測する制御部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の張力のかかったペリクル膜に気体を噴射するノズルと、
前記ノズルを中心として同心円上に前記ペリクル膜が前記張力を受けている方向である張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に少なくとも1つ設けられ、前記ノズルから噴射された前記気体による、前記張力方向に直交する直交方向への前記ペリクル膜の変位を計測する第1の超音波センサと、
前記ペリクル膜上において、前記ノズルから噴射された前記気体による変位が生じる領域外における前記直交方向への前記ペリクル膜の変位を計測する複数の第2の超音波センサと、
前記第1の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、の差分に基づいて前記ペリクル膜にかかっている前記張力を計測する制御部と、を備えるテンション計測装置。
【請求項2】
前記第1の超音波センサは、前記ノズルを中心として同心円上に前記張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に前記ノズルを挟んで2つ設けられる請求項1に記載のテンション計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、所定の微小圧の前記気体を、パルス状に前記ペリクル膜に噴射する請求項1または請求項2に記載のテンション計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記気体を噴射した後の前記ペリクル膜が最大に変位した時から最大変化量の半分まで戻る時間を半戻り時間として計測し、前記半戻り時間に基づいて前記ペリクル膜にかかっている前記張力を計測する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のテンション計測装置。
【請求項5】
前記ペリクル膜は、複数の方向に前記張力を受けており、前記複数の方向それぞれに、前記張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に少なくとも1つ前記第1の超音波センサが設けられ、
前記制御部は、前記気体を噴射した後の前記ペリクル膜が最大に変位した時の最大変化量を計測し、前記最大変化量に基づいて前記ペリクル膜にかかっている複数の前記張力の異方性を計測する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のテンション計測装置。
【請求項6】
前記ノズルの近傍において超音波を反射する反射部を、さらに備え、
前記第1の超音波センサは、前記ノズルに対して前記反射部よりも離隔した位置に配置されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のテンション計測装置。
【請求項7】
前記直線上であって前記第1の超音波センサと前記ノズルの中心との間に、前記ノズルから噴射される前記気体の噴射方向に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部材を、さらに備え、
前記反射部は、前記傾斜面によって構成されており、
前記第1の超音波センサは、前記傾斜面で反射した超音波を受信可能なように受信面を前記傾斜面に向けて設置されている請求項6に記載のテンション計測装置。
【請求項8】
前記第1の超音波センサを支持する支持部材を、さらに備え、
前記支持部材は、前記第1の超音波センサの前記反射部に対する角度を調整可能に構成されている請求項6又は請求項7に記載のテンション計測装置。
【請求項9】
前記傾斜部材は、前記ノズルを収容する中空部を有する請求項7に記載のテンション計測装置。
【請求項10】
前記第1の超音波センサの超音波の伝搬路の長さと、前記第2の超音波センサの超音波の伝搬路の長さと、が同一となるよう、前記第1の超音波センサと前記第2の超音波センサとが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のテンション計測装置。
【請求項11】
前記第1の超音波センサは、前記ノズルを中心として同心円上に4つ設けられ、
前記第2の超音波センサは、前記ノズルを中心として前記第1の超音波センサとは異なる同心円上に4つ設けられ、
前記第1の超音波センサと前記第2の超音波センサとは、前記ノズルを中心とした円周方向に交互に配置され、
前記制御部は、一の第1の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、の差分を求めるにあたり、前記4つの第2の超音波センサにより計測された前記ペリクル膜の変位のそれぞれに対し、前記一の第1の超音波センサとの距離に応じた重み付けをし、当該重み付けされた前記ペリクル膜の変位の加重平均を求め、当該加重平均を、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位とみなすことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のテンション計測装置。
【請求項12】
所定の張力のかかったペリクル膜に気体をノズルから噴射するステップと、
前記ノズルから噴射された前記気体による、前記ペリクル膜が前記張力を受けている方向である張力方向に直交する直交方向への前記ペリクル膜の変位を、前記ノズルを中心として同心円上に前記張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に少なくとも1つ設けられる第1の超音波センサにより計測するステップと、
前記ペリクル膜上において、前記ノズルから噴射された前記気体による変位が生じる領域外における前記直交方向への前記ペリクル膜の変位を複数の第2の超音波センサにより計測するステップと、
前記第1の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、の差分に基づいて前記ペリクル膜にかかっている前記張力を計測するステップと、を備えるテンション計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル膜などの張設された膜のテンションを計測するテンション計測装置及びテンション計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子などのデバイスを製造するためのフォトグラフィ工程では、マスクに形成された回路パターンの像を、露光装置の光学系を介して感光基板上のレジスト層に転写する。
【0003】
マスクには、一般に、パターン領域への塵埃などの異物の付着を防止するために、パターン領域を囲んで配設されるペリクルフレームに、パターン領域を覆うようにペリクル膜を張設している。
【0004】
ペリクル膜は、ペリクルフレームに所定のテンションで張設されている必要があり、また、縦横のテンションは同等であることが望ましい。
【0005】
ペリクル膜は、長方形のペリクルフレームに架設される。架設する際に、ペリクルフレームの長辺と短辺のそれぞれに平行な方向(縦方向及び横方向)にペリクルを引っ張りながらペリクルフレームに接着する。
【0006】
このとき、縦方向と横方向のテンションが同等であることが望ましく、縦方向のテンションと横方向のテンションの違いである異方性を計測することが求められる。
【0007】
また、ペリクル膜は、ミクロンオーダーの非常に薄い膜なので、接触してテンションを計測することは不可能であり、非接触でテンションを計測することが求められる。
【0008】
従来、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を計測する装置として、特許文献1に記載のテンション計測装置が知られている。このテンション計測装置では、ペリクル膜に圧縮空気を噴射して、そのときのペリクル膜の変化を4つの超音波センサによって検出することで、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に記載のテンション計測装置にあっては、ペリクル膜のテンションやテンションの異方性の計測時に、圧縮空気以外の要因でペリクル膜が揺れてしまうと、ペリクル膜のテンションやテンションの異方性の計測が正確に行えないおそれがあった。
【0011】
例えば、ペリクル膜のテンション計測装置が設けられるクリーンルームにおいては、空調・気流方式として主としてダウンフロー方式が採用されているため、ダウンフローによってペリクル膜が揺れてしまうことがある。ダウンフローの影響によりペリクル膜が揺れてしまうと、ペリクル膜のテンションやテンションの異方性の計測が正確に行えない。
【0012】
ここで、ダウンフローにより生じるペリクル膜の揺れよりも、テンション計測装置からの圧縮空気の噴射により生じるペリクル膜の揺れの振幅が十分大きければ、上記のような問題は生じない。しかしながら、ペリクル膜に対して上記問題が生じないような強い圧縮空気の噴射を行うと、ペリクル膜に塑性変形や破壊が生じてしまう。このため、現実的には、ダウンフローにより生じるペリクル膜の揺れの振幅が、テンション計測装置からの圧縮空気の噴射により生じるペリクル膜の揺れの振幅と、同程度か、又は大きくなるような条件での計測しか行えない。このような制約の下、ペリクル膜のテンションを計測可能な計測装置や計測方法が必要である。
【0013】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、気体の噴射以外の要因でペリクル膜が揺れてしまう場合であっても、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を正確に計測することができるテンション計測装置及びテンション計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のテンション計測装置は、所定の張力のかかったペリクル膜に気体を噴射するノズルと、前記ノズルを中心として同心円上に前記ペリクル膜が前記張力を受けている方向である張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に少なくとも1つ設けられ、前記ノズルから噴射された前記気体による、前記張力方向に直交する直交方向への前記ペリクル膜の変位を計測する第1の超音波センサと、前記ペリクル膜上において、前記ノズルから噴射された前記気体による変位が生じる領域外における前記直交方向への前記ペリクル膜の変位を計測する複数の第2の超音波センサと、前記第1の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、の差分に基づいて前記ペリクル膜にかかっている前記張力を計測する制御部と、を備える。
【0015】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、ノズルから噴射された気体によるペリクル膜の張力方向に直交する直交方向への変位が第1の超音波センサにより計測され、ペリクル膜にかかっている張力が計測される。このため、非接触でペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0016】
また、本発明のテンション計測装置は、ペリクル膜上において、ノズルから噴射された気体による変位が生じる領域外における直交方向へのペリクル膜の変位を計測する複数の第2の超音波センサを設け、第1の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位と、第2の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位と、の差分に基づいてペリクル膜にかかっている張力を計測するよう構成されている。
【0017】
これにより、本発明のテンション計測装置は、例えばクリーンルーム内のダウンフロー等の気体の噴射以外の要因でペリクル膜が揺れてしまう場合であっても、気体の噴射以外の要因によって生じたペリクル膜の変位の影響を排除でき、気体の噴射によるペリクル膜の変位を正確に測定することができる。この結果、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を正確に計測することができる。
【0018】
また、本発明のテンション計測装置において、前記第1の超音波センサは、前記ノズルを中心として同心円上に前記張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に前記ノズルを挟んで2つ設けられる構成を有する。
【0019】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、ペリクル膜がテンションを受けている張力方向の、気体が噴射される位置の両側でペリクル膜の変化を計測することができ、精度良くペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0020】
また、本発明のテンション計測装置において、前記制御部は、所定の微小圧の前記気体を、パルス状に前記ペリクル膜に噴射する構成を有する。
【0021】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、ペリクル膜にダメージを与えずに、音波に対する影響を抑えて、精度良くペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0022】
また、本発明のテンション計測装置において、前記制御部は、前記気体を噴射した後の前記ペリクル膜が最大に変位した時から最大変化量の半分まで戻る時間を半戻り時間として計測し、前記半戻り時間に基づいて前記ペリクル膜にかかっている前記張力を計測する構成を有する。
【0023】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、気体の噴射圧の変動の影響を抑え、精度良くペリクル膜のテンションを計測することができる。
【0024】
また、本発明のテンション計測装置において、前記ペリクル膜は、複数の方向に前記張力を受けており、前記複数の方向それぞれに、前記張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に少なくとも1つ前記第1の超音波センサが設けられ、前記制御部は、前記気体を噴射した後の前記ペリクル膜が最大に変位した時の最大変化量を計測し、前記最大変化量に基づいて前記ペリクル膜にかかっている複数の前記張力の異方性を計測する構成を有する。
【0025】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、テンションのかかっている方向の相互の影響を抑え、精度良くペリクル膜の複数のテンションの異方性を計測することができる。
【0026】
また、本発明のテンション計測装置は、前記ノズルの近傍において超音波を反射する反射部を、さらに備え、前記第1の超音波センサは、前記ノズルに対して前記反射部よりも離隔した位置に配置されている構成を有する。
【0027】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、ノズルの中心と、第1の超音波センサの中心を通り第1の超音波センサの送受信面に直交する中心線と、の距離を小さくすることができる。このため、ノズルの中心に対向する位置に近く、かつテンションの異方性を正確に計測可能なペリクル膜の変形を第1の超音波センサによって計測できる。これにより、ペリクル膜のテンションの異方性を正確に計測できる程度の変形量を計測することができる。
【0028】
また、本発明のテンション計測装置は、前記直線上であって前記第1の超音波センサと前記ノズルの中心との間に、前記ノズルから噴射される前記気体の噴射方向に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部材を、さらに備え、前記反射部は、前記傾斜面によって構成されており、前記第1の超音波センサは、前記傾斜面で反射した超音波を受信可能なように受信面を前記傾斜面に向けて設置されている構成を有する。
【0029】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、傾斜部材の傾斜面によって超音波を反射させることで、第1の超音波センサをノズルから離した位置に配置しても、ノズルの中心に対向する位置に近く、かつテンションの異方性を正確に計測可能なペリクル膜の変形を第1の超音波センサによって計測することができる。
【0030】
また、本発明のテンション計測装置は、前記第1の超音波センサを支持する支持部材を、さらに備え、前記支持部材は、前記第1の超音波センサの前記反射部に対する角度を調整可能に構成されている。
【0031】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、超音波が当たるペリクル膜の位置を調整することができる。これにより、第1の超音波センサがペリクル膜の変形を計測する位置を調整することができる。
【0032】
また、本発明のテンション計測装置において、前記傾斜部材は、前記ノズルを収容する中空部を有する。
【0033】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、ノズルから噴射される気体と超音波とが干渉することを防止できる。これにより、第1の超音波センサで受信される超音波が、ノズルから噴射される気体の影響を受けてしまうことを防止することができる。
【0034】
また、本発明のテンション計測装置は、前記第1の超音波センサの超音波の伝搬路の長さと、前記第2の超音波センサの超音波の伝搬路の長さと、が同一となるよう、前記第1の超音波センサと前記第2の超音波センサとが配置されている構成を有する。
【0035】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、第1の超音波センサの超音波の伝搬路の長さと第2の超音波センサの超音波の伝搬路の長さとの違いによる補正等を加える必要がないため、制御部による処理を簡素化することができる。
【0036】
また、本発明のテンション計測装置において、前記第1の超音波センサは、前記ノズルを中心として同心円上に4つ設けられ、前記第2の超音波センサは、前記ノズルを中心として前記第1の超音波センサとは異なる同心円上に4つ設けられ、前記第1の超音波センサと前記第2の超音波センサとは、前記ノズルを中心とした円周方向に交互に配置され、前記制御部は、一の第1の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、の差分を求めるにあたり、前記4つの第2の超音波センサにより計測された前記ペリクル膜の変位のそれぞれに対し、前記一の第1の超音波センサとの距離に応じた重み付けをし、当該重み付けされた前記ペリクル膜の変位の加重平均を求め、当該加重平均を、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位とみなす構成を有する。
【0037】
この構成により、本発明のテンション計測装置は、第1の超音波センサの配置に応じて異なるおそれのある、例えばダウンフローによって生じるペリクル膜の変位をより正確に計測することができる。このため、第1の超音波センサのそれぞれにおいて、ノズルから噴射された気体によるペリクル膜の変位をより正確に測定することができる。
【0038】
また、本発明のテンション計測方法は、所定の張力のかかったペリクル膜に気体をノズルから噴射するステップと、前記ノズルから噴射された前記気体による、前記ペリクル膜が前記張力を受けている方向である張力方向に直交する直交方向への前記ペリクル膜の変位を、前記ノズルを中心として同心円上に前記張力方向と平行で前記ノズルの中心を通る直線上に少なくとも1つ設けられる第1の超音波センサにより計測するステップと、前記ペリクル膜上において、前記ノズルから噴射された前記気体による変位が生じる領域外における前記直交方向への前記ペリクル膜の変位を複数の第2の超音波センサにより計測するステップと、前記第1の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、前記第2の超音波センサで計測された前記ペリクル膜の変位と、の差分に基づいて前記ペリクル膜にかかっている前記張力を計測するステップと、を備える。
【0039】
本発明のテンション計測方法によれば、ノズルから噴射された気体によるペリクル膜の張力方向に直交する直交方向への変位が第1の超音波センサにより計測され、ペリクル膜にかかっている張力が計測される。このため、非接触でペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0040】
また、第1の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位と、ペリクル膜上において、ノズルから噴射された気体による変位が生じる領域外における直交方向へのペリクル膜の変位を計測する複数の第2の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位と、の差分に基づいてペリクル膜にかかっている張力を計測する。これにより、例えばクリーンルーム内のダウンフロー等の気体の噴射以外の要因でペリクル膜が揺れてしまう場合であっても、気体の噴射以外の要因によって生じたペリクル膜の変位の影響を排除でき、気体の噴射によるペリクル膜の変位を正確に測定することができる。この結果、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、気体の噴射以外の要因でペリクル膜が揺れてしまう場合であっても、非接触でペリクル膜のテンションやテンションの異方性を正確に計測することができるテンション計測装置及びテンション計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るペリクル検査装置の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るペリクル検査装置の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置によるペリクル膜の変化の例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置によるペリクル膜の変形例を示す図であり、
図5(a)は、上下左右のテンションが等しい場合の例を示す図、
図5(b)は、左右のテンションが大きい場合の例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置の側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置のエアノズルの中心に沿って切断した側面断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置における、エアノズルの中心と各超音波センサの中心との距離を示す側面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るテンション計測装置によるテンション計測時のペリクル膜の変形量の時間的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るペリクル検査装置ついて詳細に説明する。
【0044】
図1において、紙面に直交する方向をX方向とし、紙面の上下方向をY方向、X方向及びY方向と直交する方向をZ方向とする。なお、
図2においては、一部の構成について図示を省略している。
【0045】
[ペリクル検査装置]
図1において、本発明の一実施形態に係るペリクル検査装置1は、例えば、略鉛直方向に被検査対象のペリクル膜が張設された長方形のペリクルフレームPを支持し、カメラ等を鉛直方向に移動させてペリクルフレームPに張設されたペリクル膜の検査をする検査装置である。
【0046】
図1及び
図2において、ペリクル検査装置1は、定盤10と、検査部20と、ペリクル支持部30と、除振台50と、を含んで構成される。
【0047】
定盤10は、ステージとして構成されており、設置面F上の複数箇所(6箇所)に設置されている除振台50の上に支持される。
【0048】
定盤10は、下面10aと、下面10aと平行な上面10eと、を有し、下面10aと上面10eとの距離は、上面10eの短辺より短い。
【0049】
定盤10の下面10aには、略立方体形状の凹部10b、10cが形成される。凹部10bは、下面10aの4つの隅のそれぞれに一箇所ずつ形成される。凹部10cは、下面10aの長辺に沿ってそれぞれ一箇所ずつ、合計2箇所形成される。このように、凹部10b、凹部10cは、合計6箇所に形成される。凹部10bに加えて凹部10cを設けることで、定盤10の歪みを少なくすることができる。
【0050】
凹部10b、凹部10cの内部には、設置面F上に載置された除振台50が設けられる。凹部10b、凹部10cの底面は、除振台50により支持される支持面10dである。
【0051】
図1に示すとおり、凹部10b、凹部10cの深さより、除振台50の高さが高い。したがって、除振台50が支持面10dを支持することで、定盤10が除振台50を介して設置面F上に載置される。
【0052】
定盤10の上面10eには、溝10fが形成される。溝10fは、平面視(
図2参照)において、凹部10b、凹部10cと重ならない位置に、定盤10の長手方向(X方向)に沿って形成される。
【0053】
溝10fの深さは、定盤10の厚さに比べて十分に小さい。したがって、溝10fを形成したとしても、定盤10の剛性を十分に高い状態とすることができる。
【0054】
溝10fは、ペリクル支持部30をX方向に移動自在に支持する。溝10fを、ペリクル支持部30を移動させる時のガイドとすることで、検査部20やペリクル支持部30の高さを低くし、これにより重心を低くすることができる。
【0055】
溝10fの深さは、テンション計測装置23が定盤10の上面10eに当接した時のカメラ22の光軸が、ペリクル支持部30に支持されたペリクルフレームPの下端と一致するように設定される。すなわち、カメラ22及びテンション計測装置23は、ペリクル支持部30に支持されたペリクルフレームPの全面を検査することができる。
【0056】
検査部20は、定盤10から上方に突出して設けられた柱21と、柱21に設けられたカメラ22及びテンション計測装置23と、検査位置においてペリクル支持部30を支持する支持部24と、を含んで構成される。
【0057】
柱21は、定盤10の上面10eから上方(+Y方向)に突出するように、上面10eに取り付けられる。柱21は、セラミック等により形成される。重心位置を低くするため、柱21は中空とすることが好ましい。
【0058】
カメラ22は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)カメラや、特殊なCCDカメラであるTDI(Time Delay Integration)カメラで構成される。
【0059】
テンション計測装置23は、ペリクルフレームPに張設されたペリクル膜のテンションを計測する。
【0060】
カメラ22とテンション計測装置23との間には、エアパッドを含む図示しない移動部が設けられる。カメラ22は、その光軸がZ軸と平行となるように、移動部に設けられる。
【0061】
移動部が上下方向(Y方向)に移動することにより、カメラ22及びテンション計測装置23が上下方向に移動する。移動部は、カメラ22及びテンション計測装置23を、テンション計測装置23が定盤10の上面10eに当接する初期位置と、カメラ22が柱21の上端近傍に位置する上端位置(
図1の二点鎖線で示した位置)との間を、柱21に沿って移動させる。
【0062】
支持部24は、ペリクル支持部30が検査位置に移動されたときに、ペリクル支持部30が水平方向に傾かないようにペリクル支持部30を支持する。
【0063】
ペリクル支持部30は、ペリクルフレームPを支持する。ペリクル支持部30は、フレーム31と、調整機構32と、ガイド部材33と、を含んで構成される。
【0064】
フレーム31は、鉛直に支持されるペリクルフレームPの外周を囲むよう、枠状に形成される。フレーム31は、ペリクルフレームPのペリクル膜がXY平面と平行となるようにペリクルフレームPを支持する。
【0065】
フレーム31の下方には、調整機構32が設けられる。調整機構32は、ペリクルフレームPの下辺の高さ方向(Y方向)の位置を変更する。ガイド部材33は、溝10fの内部を移動する部材である。
【0066】
[テンション計測装置の主要構成]
次に、テンション計測装置23について説明する。
図3に示すように、テンション計測装置23は、主要な構成として、ノズルとしてのエアノズル231と、第1の超音波センサ232と、第1の超音波センサ233と、第1の超音波センサ234と、第1の超音波センサ235と、第2の超音波センサ332と、第2の超音波センサ333と、第2の超音波センサ334と、第2の超音波センサ335と、圧縮空気噴射部236と、制御部237と、を含んで構成される。
【0067】
(エアノズル)
エアノズル231は、圧縮空気噴射部236で圧縮された空気(気体)をペリクル膜に噴射する。テンション計測装置23は、エアノズル231から噴射された空気がペリクル膜に略垂直に当たるように移動部に設けられる。
【0068】
(第1の超音波センサ)
第1の超音波センサ232、233、234、235は、超音波を発信し、対象物から反射してくる超音波を受信して対象物との距離を測定する。
【0069】
図6に示すように、第1の超音波センサ232は、エアノズル231(
図8参照)の上側に設けられる。第1の超音波センサ233は、エアノズル231(
図8参照)の下側に設けられる。第1の超音波センサ234は、エアノズル231(
図8参照)の右側に設けられる。第1の超音波センサ235は、エアノズル231(
図8参照)の左側に設けられる。
【0070】
第1の超音波センサ232、233、234、235は、ペリクル膜と平行な平面上に、エアノズル231を中心として同心円上に上下左右方向に設けられる。
【0071】
第1の超音波センサ232及び第1の超音波センサ233は、上下方向(Y方向)の同一直線上にその中心が位置するように設けられる。第1の超音波センサ234及び第1の超音波センサ235は、左右方向(X方向)の同一直線上にその中心が位置するように設けられる。
【0072】
第1の超音波センサ232、233、234、235の設置位置は、ペリクルフレームPに張設されたペリクル膜がテンション(張力)を受けている方向(以下、「張力方向」という)にエアノズル231を挟んで設けるとよい。本実施形態においては、ペリクルフレームPは長方形であるため、ペリクル膜は、上下方向と左右方向の2つの方向にテンションを受けている。このため、第1の超音波センサ232、233、234、235の設置位置は、上下左右の4方向となる。
【0073】
第1の超音波センサ232、233、234、235は、エアノズル231から噴射された空気による、上述の張力方向に直交する方向(以下、「直交方向」という)へのペリクル膜の変位を計測するようになっている。
【0074】
(第2の超音波センサ)
第2の超音波センサ332、333、334、335は、第1の超音波センサと同様、超音波を発信し、対象物から反射してくる超音波を受信して対象物との距離を測定する。
【0075】
図6に示すように、第2の超音波センサ332は、第1の超音波センサ232の右側かつ第1の超音波センサ234の上側に設けられる。第2の超音波センサ333は、第1の超音波センサ232の左側かつ第1の超音波センサ235の上側に設けられる。第2の超音波センサ334は、第1の超音波センサ233の左側かつ第1の超音波センサ235の下側に設けられる。第2の超音波センサ335は、第1の超音波センサ233の右側かつ第1の超音波センサ234の下側に設けられる。
【0076】
第2の超音波センサ332、333、334、335は、エアノズル231を中心として、第1の超音波センサ232、233、234、235とは異なる同心円上に設けられている。
【0077】
第1の超音波センサ232、233、234、235と第2の超音波センサ332、333、334、335とは、エアノズル231を中心とした円周方向に交互に配置されている。
【0078】
第2の超音波センサ332、333、334、335は、ペリクル膜上において、エアノズル231から噴射された空気による変位が生じる領域(
図9中、Rで示す領域)外における上述の直交方向へのペリクル膜の変位を計測するようになっている。第2の超音波センサ332、333、334、335は、例えば、クリーンルーム内のダウンフローによるペリクル膜の変位を計測する。
【0079】
第2の超音波センサ332、333、334、335は、エアノズル231から噴射された空気による変位が生じる領域(
図9中、Rで示す領域)外を計測可能であって、より好ましくは、エアノズル231から噴射された空気による変位が生じる領域Rに近い位置におけるペリクル膜の変位を計測するようになっている。
【0080】
(圧縮空気噴射部)
図3に示すように、圧縮空気噴射部236は、コンプレッサ、ソレノイドバルブ等から構成され、空気を圧縮し、所定の圧力でエアノズル231を通してペリクルフレームPに張設されたペリクル膜に噴射する。
【0081】
(制御部)
制御部237は、第1の超音波センサ232、233、234、235及び第2の超音波センサ332、333、334、335と、圧縮空気噴射部236と、の制御を行う。
【0082】
制御部237は、圧縮空気噴射部236によりエアノズル231からペリクルフレームPに張設されたペリクル膜にエアを所定の圧力で所定の時間噴射させ、その空気を受けたペリクル膜の凹み量を第1の超音波センサ232、233、234、235により計測する。
【0083】
制御部237は、所定の微小圧の圧縮空気を、パルス状にペリクル膜に噴射させる。制御部237は、例えば、ペリクル膜にダメージを与えない微小圧の圧縮空気を、パルス状にペリクル膜に噴射させる。ペリクル膜にダメージを与えないとは、ペリクル膜に塑性変形を生じさせないということである。例えば、ペリクル膜が受けているテンションが弱まってしまったりすることがないということである。
【0084】
圧縮空気を噴射した瞬間は、断熱膨張した空気がエアノズル231先端に広がるので、気温が変化し音速に影響を与えるが、パルス状に噴射することで、膨張した空気がそのままペリクル膜や超音波経路に達するわけではなく、いままでそこにあった空気を押すだけなので、冷たい空気が計測を乱すことはない。
【0085】
一方、圧縮空気の噴射方向のペリクル膜の後方にも空気が存在するため、ペリクル膜のテンションに関係なく、パルス状の噴射では変形し難さもあるので、計測に適した噴射の圧力を設定する。
【0086】
図4は、圧縮空気を噴射開始(ブロー開始)してからのペリクル膜の変形量の例を示したグラフである。
【0087】
図4に示す最大ペリクル変形量や、変形戻り速度は、圧縮空気の噴射圧の変動の影響を受ける可能性が高く、圧縮空気噴射部236のソレノイドバルブの安定度まで考慮する必要がある。それに対して、例えば、半分まで戻る時間(図中「半戻り時間」)なら圧縮空気の噴射圧による変化が少ないと考えられる。
【0088】
このため、本実施形態の制御部237は、圧縮空気を噴射した後のペリクル膜が最大に変化した時から最大変化量の半分まで戻る時間を半戻り時間として計測し、この半戻り時間に基づいてペリクル膜のテンションを計測する。
【0089】
ピンポイントの圧縮空気の噴射で変形するペリクル膜の範囲は、直径50mm程度に限られる。それを、例えば、一つ10mm直径の第1の超音波センサ232、233、234、235で計測する。
【0090】
制御部237は、例えば、直径10mm内での半戻り時間を第1の超音波センサ232、233、234、235でそれぞれ計測し、計測した半戻り時間の平均値を算出し、算出した平均値によりペリクル膜のテンションを算出する。
【0091】
半戻り時間は、テンションがかかっている方向に並んでいる超音波センサ(第1の超音波センサ232と第1の超音波センサ233、第1の超音波センサ234と第1の超音波センサ235)の計測値を平均してもよい。
【0092】
また、圧縮空気噴射時のペリクル膜の半戻り時間ではなく、ペリクル膜の最大変化量や、戻り速度を用いてテンションの強さを判定してもよい。
【0093】
一方、テンションの異方性を計るため、例えば、縦横のテンションの比を計ろうとすると、縦方向のテンションが横方向へ、また横方向のテンションが縦方向に影響を与えてしまい、半戻り時間で計測するのは不適当となる。
【0094】
このため、制御部237は、圧縮空気を噴射した後のペリクル膜が最大に変化した時の変化の大きさに基づいてテンションの異方性を計測する。
【0095】
図5は、圧縮空気を噴射した後のペリクル膜が最大に変化した時(圧縮空気が噴射されたエアノズル231に対応する部分が最も押し込まれた時)の変化量の等しい点を結んだ線を示す図である。
【0096】
図5(a)に示すように、変化量が同一となる点を結んだ図形が円に近ければ、すなわち、第1の超音波センサ232、233、234、235でそれぞれ計測された変化量がほぼ等しければ、上下左右のテンションは均一である。
【0097】
図5(b)に示すように、変化量が同一となる点を結んだ図形が楕円形になってしまうと、上下左右のテンションは均一でない。
【0098】
制御部237は、例えば、第1の超音波センサ232、233、234、235でそれぞれ計測された最大ペリクル変形量の、テンションがかかっている方向に並んでいる超音波センサ(第1の超音波センサ232と第1の超音波センサ233、第1の超音波センサ234と第1の超音波センサ235)の計測値を平均する。制御部237は、例えば、テンションがかかっている方向ごとの最大ペリクル変形量の平均値の差が所定の範囲内であれば、テンションがかかっている方向それぞれのテンションは、ほぼ均一であると判定する。
【0099】
制御部237は、例えば、パルス状に圧縮空気の噴射を行い、1回の噴射で第1の超音波センサ232、233、234、235のいずれか1つで計測を行い、4回の計測で上下左右の計測を行う。
【0100】
なお、ペリクル膜と第1の超音波センサ232、233、234、235との距離、すなわち、第1の超音波センサ232、233、234、235の超音波の伝搬路の長さの1/2は、例えば、50mm程度が良いが、本実施形態では、計測時に移動部によりペリクル膜との距離を調整する。ここで、超音波の伝搬路とは、例えば、超音波センサのセンサ振動面から発信された超音波がペリクル膜で反射されて再度、超音波センサに受信されるまでの経路のことである。
【0101】
制御部237は、例えばクリーンルーム内のダウンフローによって生じたペリクル膜の変形量を第2の超音波センサ332、333、334、335により計測する。ペリクル膜は、エアノズル231から噴射された空気による変位が生じる領域外においては、ダウンフロー等の影響により直交方向の一方(例えば、テンション計測装置23から離隔する方向)又は他方(例えば、テンション計測装置23に近接する方向)に変位する可能性がある。
【0102】
制御部237は、例えば、直交方向の一方へのペリクル膜の変位を正の値として計測し、直交方向の他方へのペリクル膜の変位を負の値として計測する。
【0103】
制御部237は、第1の超音波センサ232、233、234、235で計測されたペリクル膜の変位と、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位と、の差分に基づいてペリクル膜にかかっているテンションを計測するようになっている。
【0104】
具体的には、制御部237は、第1の超音波センサ232、233、234、235で計測されたペリクル膜の変位から第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位を差し引くことで、例えばクリーンルーム内のダウンフローによって生じたペリクル膜の変位の影響を排除して、エアノズル231から噴射された空気によるペリクル膜の変位のみを計測することが可能となる。
【0105】
[テンション計測装置の具体的構成]
次に、
図6から
図9を参照して、テンション計測装置23の具体的な構成について説明する。
【0106】
図6から
図8に示すように、テンション計測装置23は、支持台240と、支柱241と、装置本体242と、を備えている。支持台240は、柱21(
図1参照)に設けられた図示しない移動部に取り付けられている。支柱241は、下端が支持台240の上面に固定されている。支柱241の上端には、装置本体242が固定されている。
図6から
図8においては、テンション計測装置23のペリクル膜に対向する面を正面、当該正面と反対側の面を背面と、それぞれ定義する。
【0107】
テンション計測装置23は、支持台240が柱21(
図1参照)に設けられた図示しない移動部に取り付けられることにより、柱21に沿って上下方向に移動可能に構成される。
【0108】
なお、テンション計測装置23は、支持台240及び支柱241を備えない構成であってもよい。この場合、テンション計測装置23は、装置本体242が柱21(
図1参照)に設けられた図示しない移動部に取り付けられる。
【0109】
図6及び
図7に示すように、装置本体242には、第1の超音波センサ232、233、234、235をそれぞれ支持する支持部材245が設けられている。
【0110】
(支持部材)
第1の超音波センサ232、233、234、235のそれぞれは、各支持部材245によって支持されることで、エアノズル231(
図8参照)に対して後述する装置本体242の傾斜面242aよりも離隔した位置に配置される。
【0111】
各支持部材245は、第1の超音波センサ232、233、234、235をそれぞれ保持するセンサ筐体245aと、センサ筐体245aを回転可能に支持するブラケット245bと、を含んで構成される。
【0112】
図8に示すように、第1の超音波センサ232、233、234、235のそれぞれは、2本のOリング250によってセンサ筐体245a内に保持されている。2本のOリング250は、第1の超音波センサ232、233、234、235それぞれの送受信面Sに直交する方向に互いに離隔して、第1の超音波センサ232、233、234、235それぞれの外周に巻き付けられている。これにより、第1の超音波センサ232、233、234、235からセンサ筐体245aに伝わる振動が他の部材(例えば、金属部品)に伝達されてしまうことを回避することができる。
【0113】
センサ筐体245aは、ブラケット245bに対して図中、矢印Pで示す方向(以下、「ピッチ方向」という)に軸部材245cを支点に回転可能に、すなわち超音波センサの送受信面Sと後述する傾斜面242aとのなす角度を調整可能に、ブラケット245bに支持されている。
【0114】
軸部材245cは、センサ筐体245aの回転軸としての機能と、センサ筐体245aを調整した角度で回転不能に固定する固定部材としての機能と、を兼ねる。
【0115】
また、
図7に示すように、ブラケット245bは、装置本体242に対して図中、矢印Yで示す方向(以下、「ヨー方向」という)に軸部材245dを支点に回転可能に、すなわち装置本体242へのブラケット245bの設置平面上での回転角度を調整可能に、装置本体242に支持されている。これにより、センサ筐体245aのヨー方向の回転角度を調整することができる。
【0116】
ブラケット245bは、2つの固定部材245eによって、調整した回転角度で装置本体242に対して回転不能に固定される。
【0117】
なお、支持部材245は、センサ筐体245aのピッチ方向及びヨー方向の回転角度を調整可能であれば、上述した構成に限らない。また、支持部材245は、センサ筐体245aのピッチ方向又はヨー方向のいずれかの回転角度を調整可能な構成であってもよい。
【0118】
(傾斜面)
図8に示すように、装置本体242は、正面側(
図8中、左側)に傾斜面242aが形成されている。傾斜面242aは、第1の超音波センサ232、233、234、235に合わせて上下左右にそれぞれ形成されている。本実施形態に係る装置本体242は、傾斜部材を構成する。
【0119】
各傾斜面242aは、装置本体242の背面側から正面側先端に向かうに従い、徐々にエアノズル231の中心(
図8中、一点鎖線で示す)Onに近づくように傾斜している。このため、装置本体242の正面側の形状は、装置本体242の正面側先端を上面とする四角錐台形状、又は、装置本体242の正面側先端を頂点とする四角錐形状をなしている。
【0120】
各傾斜面242aは、エアノズル231を中心として同心円上にペリクル膜がテンション(張力)を受けている張力方向と平行でエアノズル231の中心Onを通る直線上であって、第1の超音波センサ232、233、234、235のそれぞれとエアノズル231の中心Onとの間に設けられている。
【0121】
各傾斜面242aは、エアノズル231の近傍において、第1の超音波センサ232、233、234、235から出力された超音波(送信波)、及び、ペリクル膜で反射された超音波(反射波)を反射する反射部として機能する。
【0122】
なお、本実施形態では、装置本体242に傾斜面242aを形成した構成について説明したが、装置本体242と別体の部材に傾斜面242aを形成してもよい。
【0123】
第1の超音波センサ232、233、234、235のそれぞれは、各傾斜面242aで反射した超音波を受信可能なように送受信面Sをそれぞれの傾斜面242aに向けて設置されている。
【0124】
(中空部)
図8に示すように、装置本体242は、エアノズル231を収容する中空状の中空部242bを有している。
【0125】
中空部242bは、装置本体242の正面側先端から背面側に貫通するように形成された筒状の中空空間であり、エアノズル231を取り囲むように形成されている。中空部242bの形状は、円筒状に限らず、多角形の筒状であってもよい。
【0126】
中空部242bの正面側の開口端(
図8中、左端)は、エアノズル231の正面側先端よりも正面側に位置しているのが好ましい。
【0127】
(フレーム部材)
図6に示すように、テンション計測装置23は、装置本体242を取り囲むように設けられたフレーム部材300を有している。フレーム部材300は、柱21(
図1参照)に設けられた図示しない移動部に取り付けられている。
【0128】
フレーム部材300の四隅の内側には、第2の超音波センサ332、333、334、335をそれぞれ保持するセンサ筐体340が取り付けられている。ここで、第2の超音波センサ332、333、334、335が領域R(
図9参照)外であって、より好ましくは、エアノズル231から噴射された空気による変位が生じる領域Rに近い位置におけるペリクル膜の変位を計測可能な配置となるよう、フレーム部材300の4辺の長さ等が設定されている。
【0129】
第2の超音波センサ332、333、334、335のそれぞれは、第1の超音波センサ232、233、234、235と同様、図示しない2本のOリングを介して各センサ筐体340に保持されているのが望ましい。
【0130】
第2の超音波センサ333、334のセンサ筐体340は、その表面340aが
図7中、左側に向かうに従い背面側に傾斜している。第2の超音波センサ332、335のセンサ筐体340は、その表面340aが
図7中、右側に向かうに従い背面側に傾斜している。
【0131】
これにより、第2の超音波センサ332、333、334、335のそれぞれから出力されペリクル膜で反射した超音波のうち、第2の超音波センサ332、333、334、335に戻ってくる超音波以外の超音波が、センサ筐体340の傾斜した表面340aでフレーム部材300の外側(本実施例では、左右外方)に向けて反射される。このため、ペリクル膜で反射した超音波のうち、第2の超音波センサ332、333、334、335に戻ってくる超音波以外の超音波がセンサ筐体とペリクル面の間での多重反射により第2の超音波センサ332、333、334、335や第1の超音波センサ232、233、234、235に戻ってくる超音波と干渉することがなく、それら超音波センサの計測への影響を抑制することができる。
【0132】
また、
図9に示すように、第1の超音波センサ232、233、234、235の超音波の伝搬路Path_1の長さと、第2の超音波センサ332、333、334、335の超音波の伝搬路Path_2とが同一となるよう、第1の超音波センサ232、233、234、235と第2の超音波センサ332、333、334、335とが配置されている。つまり、第1の超音波センサ232、233、234、235と第2の超音波センサ332、333、334、335とが上記のような配置となるよう、支持台240とフレーム部材300とが位置決めされている。
【0133】
[ペリクル検査装置の動作]
以上のように構成された本実施形態に係るペリクル検査装置1の動作について説明する。まず、フレーム31にペリクルフレームPを取り付けて、調整機構32によりペリクルフレームPの下辺の高さ方向(Y方向)の位置を調整する。このときは、ペリクル支持部30は、定盤10の+X方向の端近傍の取付位置に位置する。
【0134】
次に、ガイド部材33を溝10fに沿って-X方向に移動させて、ペリクルフレームPを取付位置から検査位置に移動させる。
【0135】
ペリクルフレームPが検査位置に移動したら、検査部20によりペリクル膜の検査を行う。本実施形態では、カメラ22で撮像された画像によりペリクル膜に付着している塵埃などの異物を検出する。また、テンション計測装置23により、ペリクル膜にかかっているテンションが計測される。
【0136】
なお、ペリクル膜に塵埃などの異物が付着していることが検出された場合、図示しないノズルにより異物に空気などの気体を吹き付けて除去する。このノズルは、テンション計測装置23のエアノズル231と共用してもよい。
【0137】
この検査を、まず、カメラ22が柱21の上端近傍に位置する上端位置で行う。検査部20は、ガイド部材33、すなわちペリクルフレームPを所定距離だけ-X方向に移動させる。このようにしてペリクル支持部30に支持されたペリクルフレームPに張設されたペリクル膜を順次検査していく。
【0138】
このように、-X方向の端から+X方向の端へとカメラ22及びテンション計測装置23を移動させつつ検査をしたら、検査部20は、カメラ22及びテンション計測装置23を柱21に沿って下方(-Y方向)に移動させる。そして、検査部20は、同様に、ガイド部材33、すなわちペリクルフレームPを+X方向に移動させつつ検査を行う。
【0139】
このような動作を繰り返し行うことにより、ペリクルフレームPに張設されたペリクル膜の全面を検査することができる。
【0140】
なお、異物検査の場合、検査を行うクリーンルームの中はダウンフローなため、ブローされ除去された異物が下側に再付着する可能性が高い。このため、異物検査を行う場合は、検査は上から下に行う。ペリクル膜にかかっているテンションの計測のみを行う場合は、下から上に検査を行なってもよい。
【0141】
[テンション計測装置の動作]
次に、テンション計測装置23の動作について説明する。
【0142】
テンション計測装置23は、テンションのかかったペリクル膜に対してエアノズル231から圧縮空気を噴射する。テンション計測装置23は、エアノズル231から噴射された圧縮空気による直交方向へのペリクル膜の変位を第1の超音波センサ232、233、234、235によって計測する。
【0143】
また、テンション計測装置23は、ペリクル膜上において、エアノズル231から噴射された圧縮空気による変位が生じる領域外における直交方向へのペリクル膜の変位を第2の超音波センサ332、333、334、335により計測する。
【0144】
テンション計測装置23は、第1の超音波センサ232、233、234、235で計測されたペリクル膜の変位から第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位を差し引くことで、例えばクリーンルーム内のダウンフローによって生じたペリクル膜の変位の影響を排除して、エアノズル231から噴射された圧縮空気によるペリクル膜の変位のみを計測する。
【0145】
このとき、テンション計測装置23の制御部237は、一の第1の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位と、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位と、の差分を求めるにあたり、第2の超音波センサ332、333、334、335により計測されたペリクル膜の変位のそれぞれに対し、当該一の第1の超音波センサとの距離に応じた重み付けを行う。距離に加えて計測順に応じた重み付けを加えてもよい。
【0146】
制御部237は、上記のように重み付けされたペリクル膜の変位の加重平均を求め、当該加重平均を、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位とみなす。これにより、制御部237は、当該一の第1の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位から、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位として上記のように加重平均で求められたペリクル膜の変位を差し引くことで、当該一の第1の超音波センサで計測される、エアノズル231から噴射された空気によるペリクル膜の変位のみを計測することができる。
【0147】
[テンション計測装置の作用効果]
以上のように、本実施形態に係るテンション計測装置は、ペリクル膜に圧縮空気を噴射するエアノズル231を中心として同心円上にペリクル膜がテンション(張力)を受けている張力方向と平行でエアノズル231の中心を通る直線上に少なくとも1つの第1の超音波センサ(本実施形態では4つ)を設ける。
【0148】
これにより、ペリクル膜に圧縮空気を噴射したときのペリクル膜の変化を計測することにより、非接触でペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0149】
また、第1の超音波センサは、エアノズル231を中心として同心円上にペリクル膜がテンションを受けている張力方向と平行でエアノズル231の中心を通る直線上にエアノズル231を挟んで2つ設けるとよい。
【0150】
これにより、ペリクル膜が張力方向の、圧縮空気が噴射される位置の両側でペリクル膜の変化を計測することができ、精度良くペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0151】
制御部237は、ペリクル膜にダメージを与えない微小圧の圧縮空気を、パルス状にペリクル膜に噴射させる。
【0152】
これにより、ペリクル膜にダメージを与えずに、音波に対する影響を抑えて、精度良くペリクル膜のテンション及びテンションの異方性を計測することができる。
【0153】
また、制御部237は、圧縮空気を噴射した後のペリクル膜が最大に変化した時から最大変化量の半分まで戻る時間を半戻り時間として計測し、この半戻り時間によりペリクル膜のテンションを計測する。
【0154】
これにより、圧縮空気の噴射圧の変動の影響を抑え、精度良くペリクル膜のテンションを計測することができる。
【0155】
また、制御部237は、圧縮空気を噴射した後のペリクル膜が最大に変化した時の変化量を計測し、この変化量によりペリクル膜のテンションの異方性を計測する。
【0156】
これにより、テンションのかかっている方向の相互の影響を抑え、精度良くペリクル膜のテンションの異方性を計測することができる。
【0157】
ここで、
図9に示すように、エアノズル231から噴射された圧縮空気によるペリクル膜Pfの変形量は、圧縮空気が当たる箇所、すなわち、エアノズル231の中心Onに対向する位置に近いほど、大きくなる。したがって、ペリクル膜Pfは、エアノズル231の中心Onに対向する位置から遠ざかるほど、変形が小さくなったり、変形が生じなくなったりする。
【0158】
ペリクル膜Pfの変形が生じていない箇所、又は、変形が生じていてもその変形が微小である箇所において、その変形量を超音波センサで計測しようとしても、ペリクル膜Pfのテンションの異方性を正確に計測できる程度の変形量を計測することはできない。
【0159】
図9において、ペリクル膜Pfのテンションの異方性を正確に計測できる程度の変形量を計測するのに好適な変形領域を点線Dfで囲んだ領域とすると、ペリクル膜Pfのテンションの異方性を正確に計測できる程度の変形量を計測するには、エアノズル231の中心と第1の超音波センサ232、233、234、235の中心との距離D1は小さい方が望ましく、より好ましくは、ペリクル膜Pfの好適な変形領域Dfと超音波の当たる領域との重なりが大きいほうがよい。
【0160】
本実施形態に係るテンション計測装置は、エアノズル231の近傍において、第1の超音波センサ232、233、234、235から出力された超音波(送信波)、及び、ペリクル膜Pf(
図9参照)で反射された超音波(反射波)を反射する傾斜面242aを備えている。
【0161】
ここで、
図9に示すように、第1の超音波センサ232、233、234、235の中心を通り超音波センサの送受信面Sに直交する線を中心線Osとする。中心線Osは、第1の超音波センサ232、233、234、235から出力された超音波(送信波)、及び、ペリクル膜Pfで反射された超音波(反射波)の中心軸と一致しており、超音波と同様、傾斜面242aで反射するように描いている。
【0162】
本実施形態に係るテンション計測装置は、上述の通り、第1の超音波センサ232、233、234、235から出力された超音波を傾斜面242aで反射させる構成であるため、エアノズル231の中心Onと上述の中心線Osとの距離D1を小さくすることができる。
【0163】
このため、本実施形態に係るテンション計測装置は、超音波の当たる領域をエアノズル231の中心Onに対向する位置に近づけることができ、ペリクル膜Pfの好適な変形領域Dfと超音波の当たる領域との重なりを大きくすることができる。
【0164】
これにより、テンションの異方性を正確に計測可能なペリクル膜Pfの変形を第1の超音波センサ232、233、234、235によって計測できる。つまり、ペリクル膜Pfのテンションの異方性を正確に計測可能な変形が確実に生じている箇所において、その変形を計測することができる。これにより、ペリクル膜Pfのテンションの異方性を正確に計測できる程度の変形量を計測することができる。
【0165】
また、本実施形態に係るテンション計測装置において、各傾斜面242aは、エアノズル231を中心として同心円上にペリクル膜Pfがテンション(張力)を受けている張力方向と平行でエアノズル231の中心Onを通る直線上であって、第1の超音波センサ232、233、234、235のそれぞれとエアノズル231の中心Onとの間に設けられている。さらに、第1の超音波センサ232、233、234、235が、各傾斜面242aで反射した超音波を受信可能なように送受信面Sを各傾斜面242aに向けて設置されている。
【0166】
これにより、本実施形態に係るテンション計測装置は、傾斜面242aによって超音波を反射させることで、第1の超音波センサ232、233、234、235をエアノズル231から離した位置に配置しても、第1の超音波センサ232、233、234、235がエアノズル231の中心Onに対向する位置に近く、かつテンションの異方性を正確に計測可能なペリクル膜Pfの変形を計測することができる。
【0167】
ここで、第1の超音波センサ232、233、234、235は、例えば残響波等の影響を抑制してその測定精度を維持するために防振を十分に行う必要がある。このため、超音波センサ周辺には、防振のための付加的な構造を設ける必要があり、超音波センサを含む超音波センサ周辺の構造が大型化する傾向にある。防振のための付加的な構造としては、例えば、第1の超音波センサ232、233、234、235に鉛板を巻いたり、センサ筐体245a等の支持部材245を大きくしたりする構造が挙げられる。
【0168】
本実施形態に係るテンション計測装置は、上述の通り第1の超音波センサ232、233、234、235をエアノズル231から離した位置に配置して傾斜面242aによって超音波を反射させる構成であるため、超音波センサを含む超音波センサ周辺の構造が大型化しても、その影響を回避することができる。
【0169】
つまり、超音波センサを含む超音波センサ周辺の構造の大型化しても、エアノズル231と第1の超音波センサ232、233、234、235との距離が大きくなることがない。このため、超音波センサを含む超音波センサ周辺の構造の大型化によって超音波の当たる領域がエアノズル231の中心Onに対向する位置から遠ざかってしまうといった影響を回避できる。
【0170】
また、本実施形態に係るテンション計測装置は、第1の超音波センサ232、233、234、235をそれぞれ支持する支持部材245を有しており、当該支持部材245が、第1の超音波センサ232、233、234、235の傾斜面242aに対する角度、具体的にはピッチ方向の回転角度及びヨー方向の回転角度を調整可能に構成されている。
【0171】
これにより、本実施形態に係るテンション計測装置は、超音波が当たるペリクル膜Pfの位置、及び、ペリクル膜Pfに超音波が当たる角度を調整することができる。これにより、第1の超音波センサ232、233、234、235がペリクル膜Pfの変形を計測する位置及び角度を調整することができる。このように、ペリクル膜Pfに対する超音波の位置や角度を調整できれば、超音波(反射波)の振幅が最大になる位置関係を探すことができる。
【0172】
なお、本実施形態では、上述のように第1の超音波センサ232、233、234、235のピッチ方向及びヨー方向の回転角度を調整可能に構成したが、これに加えて、センサ筐体245aの回転軸に直交し、かつ中心軸Osと交差する方向に、センサ筐体245a又はブラケット245bを移動可能に構成してもよい。例えば、超音波センサの送受信面S(
図8参照)に平行な方向や、ブラケット245bの回転軸と平行な方向に、センサ筐体245a又はブラケット245bが移動可能に構成される。
【0173】
これにより、第1の超音波センサ232、233、234、235のピッチ方向及びヨー方向の回転角度の調整と、ペリクル膜Pfに超音波の中心軸Osが当たる位置の調整と、を独立して行うことができる。
【0174】
また、センサ筐体245a又はブラケット245bは、センサ筐体245aの回転軸に直交し、かつ中心軸Osと交差する方向にのみ移動可能な構成であってもよい。この場合、簡易な構成でペリクル膜Pfに超音波の中心軸Osが当たる位置のみを調整可能である。
【0175】
また、本実施形態に係るテンション計測装置において、装置本体242は、エアノズル231を収容する中空部242bを有する。
【0176】
これにより、本実施形態に係るテンション計測装置は、エアノズル231から噴射される圧縮空気と超音波とが干渉することを防止できる。これにより、第1の超音波センサ232、233、234、235で受信される超音波が、エアノズル231から噴射される圧縮空気の影響を受けてしまうことを防止することができる。
【0177】
次に、本実施形態に係るテンション計測装置において、第2の超音波センサ332、333、334、335を設けたことによる作用効果を説明する。
【0178】
図10は、第1の超音波センサ232、233、234、235のみにより、時間t1において圧縮空気を噴射した際のペリクル膜の変位を計測した場合におけるペリクル膜の変位の時間的な変化の一例を示すグラフである。なお、
図10のグラフは、第1の超音波センサ232、233、234、235のうちの1つにおける計測結果を示すものである。
【0179】
図10に示すように、圧縮空気を噴射した直後の時間t0から時間t1までの期間Tにおけるペリクル膜の変位が圧縮空気による変位である。しかしながら、圧縮空気の噴射が終わった時間t1以降においても、ペリクル膜に変位が継続的に生じている。
【0180】
この時間t1以降におけるペリクル膜の変位は、例えばクリーンルーム内のダウンフローによって生じる変位である。このように、圧縮空気による変位以外に、無視できないほどの変位がペリクル膜に生じてしまっている。このため、上述の期間Tにおけるペリクル膜の変位にも、ダウンフローによって生じる変位が加わっているものと考えられる。したがって、圧縮空気によるペリクル膜の変位を正確に測定するには、前述のダウンフローによって生じる変位を排除することが好ましい。
【0181】
そこで、本実施形態に係るテンション計測装置では、ペリクル膜上において、エアノズル231から噴射された圧縮空気による変位が生じる領域R(
図9参照)外におけるペリクル膜の変位を計測する第2の超音波センサ332、333、334、335を設けた。このため、第2の超音波センサ332、333、334、335によって、例えばクリーンルーム内のダウンフローによるペリクル膜の変位を計測することができる。
【0182】
さらに、本実施形態に係るテンション計測装置では、第1の超音波センサ232、233、234、235で計測されたペリクル膜の変位から第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位を差し引くことにより、エアノズル231から噴射された空気によるペリクル膜の変位のみを計測するようにした。これにより、例えばクリーンルーム内のダウンフローによって生じたペリクル膜の変位の影響を排除でき、圧縮空気によるペリクル膜の変位を正確に測定することができる。
【0183】
また、本実施形態に係るテンション計測装置において、第1の超音波センサ232、233、234、235の超音波の伝搬路Path_1の長さと、第2の超音波センサ332、333、334、335の超音波の伝搬路Path_2とが同一となるよう、第1の超音波センサ232、233、234、235と第2の超音波センサ332、333、334、335とを配置した。
【0184】
これにより、本実施形態に係るテンション計測装置は、伝搬路Path_1の長さと伝搬路Path_2の長さとの違いによる補正等を加える必要がないため、制御部237による処理を簡素化することができる。
【0185】
また、本実施形態に係るテンション計測装置において、一の第1の超音波センサで計測されたペリクル膜の変位と、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位と、の差分を求めるにあたり、第2の超音波センサ332、333、334、335により計測されたペリクル膜の変位のそれぞれに対し、当該一の第1の超音波センサとの距離に応じた重み付けをし、当該重み付けされたペリクル膜の変位の加重平均を求め、当該加重平均を、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位とみなすようにした。
【0186】
これにより、本実施形態に係るテンション計測装置は、第1の超音波センサ232、233、234、235の配置に応じて異なるおそれのある、例えばダウンフローによって生じるペリクル膜の変位をより正確に計測することができる。このため、第1の超音波センサ232、233、234、235のそれぞれにおいて、圧縮空気によるペリクル膜の変位をより正確に測定することができる。
【0187】
なお、第2の超音波センサ332、333、334、335で計測されたペリクル膜の変位の平均値を、例えばダウンフローによって生じるペリクル膜の変位として計測してもよい。
【0188】
また、本実施形態においては、超音波センサによりペリクル膜の変化を計測したが、光学式変位センサなどによりペリクル膜の変化を計測してもよい。
【0189】
また、本実施形態においては、空気をペリクル膜に噴射したが、空気以外の窒素やアルゴンなどを噴射するようにしてもよい。
【0190】
また、本実施形態においては、第2の超音波センサを4つ配置したが、第2の超音波センサを3つとし、これら3つの第2の超音波センサを結ぶ線が正三角形となるように3つの第2の超音波センサを配置してもよい。
【0191】
また、本実施形態においては、圧縮空気によるペリクル膜の変位の計測を複数回行って、これら計測の平均値を、圧縮空気によるペリクル膜の変位として計測してもよい。この場合、圧縮空気によるペリクル膜の変位をより正確に求めることができる。
【0192】
また、本実施形態においては、第1の超音波センサ232、233、234、235及び第2の超音波センサ332、333、334、335の各超音波センサでの計測を所定時間の間に所定の順序で行う構成としたが、これに限らず、例えば第1の超音波センサ232、233、234、235と、第2の超音波センサ332、333、334、335とが互いに独立して計測可能な構成としてもよい。この場合、第1の超音波センサ232、233、234、235と、第2の超音波センサ332、333、334、335との計測タイミングを合わせることができる。
【0193】
上述の所定の順序としては、例えば、第1の超音波センサ232、第1の超音波センサ233、第1の超音波センサ234、第1の超音波センサ235、第2の超音波センサ332、第2の超音波センサ333、第2の超音波センサ334、第2の超音波センサ335などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、実験等により任意の順序に設定可能である。なお、例えば線形補間やバイキュービック補間などの補間方法によって各超音波センサ間における時間的なずれを補間することによって、各超音波センサ間の時間的なずれを解消することも可能である。
【0194】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0195】
1 ペリクル検査装置
23 テンション計測装置
231 エアノズル(ノズル)
232、233、234、235 第1の超音波センサ
332、333、334、335 第2の超音波センサ
236 圧縮空気噴射部
237 制御部
240 支持台
241 支柱
242 装置本体(傾斜部材)
242a 傾斜面(反射部)
242b 中空部
245 支持部材
245a センサ筐体
245b ブラケット
245c 軸部材
245d 軸部材
245e 固定部材
300 フレーム部材
340 センサ筐体
340a 表面
S 送受信面(受信面)
Path_1 第1の超音波センサの超音波の伝搬路
Path_2 第2の超音波センサの超音波の伝搬路
R 噴射された圧縮空気による変位が生じる領域