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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107420
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ネジ穴品質保証装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230727BHJP
   G01B 3/48 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
G01B5/00 L
G01B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008615
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】522032877
【氏名又は名称】日本総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】大高 誠一郎
【テーマコード(参考)】
2F061
2F062
【Fターム(参考)】
2F061AA25
2F061CC17
2F061FF41
2F061GG01
2F061SS12
2F061VV08
2F062AA34
2F062BC61
2F062CC22
2F062EE01
2F062FF03
2F062FF04
2F062GG17
2F062HH46
(57)【要約】
【課題】、検査用やリタップ用の品質保証用ツールの着脱が容易で、ネジ穴の偏角にも対応することができ、品質保証用ツールの上下動やセンタリングにも効果的な構造を持ったネジ穴品質保証装置を提供する。
【解決手段】物品に形成されたネジ穴に品質保証用ツール1を挿入して検査するネジ穴品質保証装置であって、品質保証用ツール1に嵌合して回転させる回転伝達シャフト19と、品質保証用ツール1の周縁部に当接する第1の鋼球14と、品質保証用ツール1に設けられた溝部1aに嵌合する第1の鋼球14より大きな第2の鋼球15と、第1の鋼球14及び第2の鋼球15を保持する保持器13と、第1の鋼球14に当接し下方に向かって拡径する第1のテーパー部12a及び第2の鋼球15に当接し下方に向かって拡径する第2のテーパー部12bが設けられた上下動可能な鋼球押さえ12と、鋼球押さえ12を下方に付勢する付勢手段とを備えたツール接続部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に形成されたネジ穴に品質保証用ツールを挿入するネジ穴品質保証装置であって、
前記品質保証用ツールに嵌合して回転させる回転伝達シャフトと、前記品質保証用ツールの周縁部に当接する第1の鋼球と、前記品質保証用ツールに設けられた溝部に嵌合する第1の鋼球より大きな第2の鋼球と、前記第1の鋼球及び前記第2の鋼球を保持する保持器と、前記第1の鋼球に当接し下方に向かって拡径する第1のテーパー部及び前記第2の鋼球に当接し下方に向かって拡径する第2のテーパー部が設けられた上下動可能な鋼球押さえと、該鋼球押さえを下方に付勢する付勢手段とを備えたツール接続部を有することを特徴とするネジ穴品質保証装置。
【請求項2】
固定テーブルと、外部応力によって可動する可動フレームと、前記固定テーブルに設けられた固定磁石と、前記可動フレームに設けられた可動磁石と、該可動磁石を移動させる磁石移動用シリンダーとを備えたフローティング部を有することを特徴とする請求項1に記載のネジ穴品質保証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に形成されたネジ穴に品質保証用ツールを挿入するネジ穴品質保証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用部品などの産業部品には数多くのネジ穴が形成されており、ネジ穴のネジ径やネジ深さの良否を検査するためのネジ穴検査装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、適正なネジ径に対応する適正螺合トルク値の上限と下限を予め設定し、適正なネジ深さに対応する適正ネジ深さ位置の上限と下限を予め設定するとともに、適正なトルクアップ値を予め設定しておき、これらの値と検出したトルクの値を比較してネジ径及びネジ深さの良否を検査するようにしたネジ穴検査装置に関する発明が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、力検出部が設けられたロボットアームにより、ねじゲージを移動させてねじ穴と接触させた後、力検出部によりねじゲージに加わる力を検出してねじゲージを移動させることにより、ねじゲージをねじ穴に容易かつ的確に締結することができるようにした制御装置に関する発明が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、ネジゲージの完全ネジ山の始点の位置が検査対象のネジ穴のねじ込み開始位置に対して常に一定の位相差となるように位置決め状態で装着されるようにしたネジ穴検査装置に関する発明が記載されている。そして、回転軸部の軸ずれを許容する軸ずれ許容部を設けることにより、ネジゲージの中心軸とネジ穴の中心軸とが多少位置ずれしていても、ネジゲージが水平方向に移動してこの位置ずれを吸収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-280854号公報
【特許文献2】特開2018-202602号公報
【特許文献3】特開2018-77060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ネジ穴検査におけるネジ穴は、同じ部品内であっても部位によって様々なネジ径がある。また、1つのネジ穴に対して使用する検査用ツール(ネジゲージ)は、ネジ山のないもの(タップなし)、きちんと螺合して挿入可能なもの(GO)、挿入不可能なもの(NG)といった複数のものを組み合わせる場合もある。従って、ネジ穴検査装置に用いられる検査用ツールは頻繁な取り替えが必要となるため、着脱が容易な接続構造が求められる。
【0008】
また、ネジ穴には製造誤差により、同じ型の部品であっても微妙にネジ穴が設計角度に対して傾いている場合(偏角)がある。極端な傾きは別として許容範囲内の偏角であれば良判定とすべきであるが、ネジ穴が偏角していると検査用ツールへの回転力の伝達がうまくいかず、トルク測定にも狂いが生じてしまう。
【0009】
また、検査用ツールのセンタリングのためのフローティング機構にも改善の余地がある。
【0010】
さらに、ネジ穴の検査だけではなく、ネジ穴に付着した溶接ゴミ等を取り除くための作業(リタップ)においても同様の問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、検査用やリタップ用の品質保証用ツールの着脱が容易で、ネジ穴の偏角にも対応することができ、品質保証用ツールの上下動やセンタリングにも効果的な構造を持ったネジ穴品質保証装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のネジ穴品質保証装置は、物品に形成されたネジ穴に品質保証用ツールを挿入するネジ穴品質保証装置であって、前記品質保証用ツールに嵌合して回転させる回転伝達シャフトと、前記品質保証用ツールの周縁部に当接する第1の鋼球と、前記品質保証用ツールに設けられた溝部に嵌合する第1の鋼球より大きな第2の鋼球と、前記第1の鋼球及び前記第2の鋼球を保持する保持器と、前記第1の鋼球に当接し下方に向かって拡径する第1のテーパー部及び前記第2の鋼球に当接し下方に向かって拡径する第2のテーパー部が設けられた上下動可能な鋼球押さえと、該鋼球押さえを下方に付勢する付勢手段とを備えたツール接続部を有することを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、固定テーブルと、外部応力によって可動する可動フレームと、前記固定テーブルに設けられた固定磁石と、前記可動フレームに設けられた可動磁石と、該可動磁石を移動させる磁石移動用シリンダーとを備えたフローティング部を有することを特徴とする。
【0014】
なお、上記において品質保証には、ネジ穴のネジ径やネジ深さ等の良否判定を行うネジ穴検査及びネジ穴に付着した溶接ゴミ等を取り除くための作業(リタップ)が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のネジ穴品質保証装置は、物品に形成されたネジ穴に品質保証用ツールを挿入するネジ穴品質保証装置である。そして、品質保証用ツールに嵌合して回転させる回転伝達シャフトと、品質保証用ツールの周縁部に当接する第1の鋼球と、品質保証用ツールに設けられた溝部に嵌合する第1の鋼球より大きな第2の鋼球と、第1の鋼球及び第2の鋼球を保持する保持器と、第1の鋼球に当接し下方に向かって拡径する第1のテーパー部及び第2の鋼球に当接し下方に向かって拡径する第2のテーパー部が設けられた上下動可能な鋼球押さえと、鋼球押さえを下方に付勢する付勢手段とを備えたツール接続部を有している。
【0016】
鋼球押さえが上下すると、第1のテーパー部と第1の鋼球との当接位置が変化するとともに、第2のテーパー部と第2の鋼球との当接位置が変化し、第1の鋼球及び第2の鋼球は回転軸に直交する水平方向(内外方向)に移動する。第2の鋼球が内側に移動すると、品質保証用ツールに設けられた溝部と第2の鋼球とが嵌合して接続状態(装着状態)となる。第2の鋼球が外側に移動すると、品質保証用ツールに設けられた溝部と第2の鋼球との嵌合が外れて非接続状態(取り外し状態)となる。鋼球押さえは下方に付勢されているので、品質保証用ツールの装着後は装着状態が維持される。
【0017】
また、ネジ穴が偏角した状態で品質保証用ツールに水平方向に外部応力が働くと、品質保証用ツールから第1の鋼球及び第2の鋼球を外側に押し出す力が働き、これに合わせて鋼球押さえを上方に押し上げる力が働く。これにより、ネジ穴の偏角による品質保証用ツールへの外部応力を吸収しながら、品質保証用ツールを回転し続けることができる。鋼球押さえは下方に付勢されているので、外部応力がなくなると品質保証用ツールは垂直状態に戻る。
【0018】
また、固定テーブルと、外部応力によって可動する可動フレームと、固定テーブルに設けられた固定磁石と、可動フレームに設けられた可動磁石と、可動磁石を移動させる磁石移動用シリンダーとを備えたフローティング部を有する場合には、広いストローク量でも反発力を増大させることなく、品質保証用ツールをセンタリングすることができる。
【0019】
このように、本発明のネジ穴品質保証装置は、検査用やリタップ用の品質保証用ツールの着脱が容易で、ネジ穴の偏角にも対応することができ、品質保証用ツールの上下動やセンタリングにも効果的な構造を持ったものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るネジ穴品質保証装置を示す正面図である。
図2】品質保証用ツール装着状態のツール接続部を示す(A)横断面図、(B)縦断面図である。
図3】品質保証用ツール取り外し状態のツール接続部を示す(A)横断面図、(B)縦断面図である。
図4】作動時のツール接続部を示す(A)横断面図、(B)縦断面図(通常)、(C)縦断面図(偏角)である。
図5】回転伝達シャフトを示す(A)正面図、(B)先端部の横断面図である。
図6】中空シリンダー部を示す(A)平面図、(B)縦断面図(上昇)、(C)縦断面図(下降)である。
図7】フローティング部(X方向)を示す平面図である。
図8】フローティング部(Y方向)を示す平面図である。
図9】フローティング部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図1乃至図9を参照して、本発明の実施形態に係るネジ穴品質保証装置について説明する。本実施形態に係るネジ穴品質保証装置100は、自動車用部品などの産業部品(物品)に形成されたネジ穴に品質保証用ツールを挿入するものである。なお、品質保証には、ネジ穴のネジ径やネジ深さ等の良否判定を行うネジ穴検査及びネジ穴に付着した溶接ゴミ等を取り除くための作業(リタップ)が含まれる。
【0022】
図1は、ネジ穴品質保証装置100を示す正面図である。ネジ穴品質保証装置100は、ロボット取付部5を介して産業用ロボットのロボットアーム(図示しない)に取り付けられる。産業用ロボットは、物品に形成されたネジ穴の情報(ネジ径、ネジ深さ、位置等)を保有しており、挿入するネジ穴と使用する品質保証用ツールを選択し、ロボットアームを制御しながら品質保証用ツールの着脱、ネジ穴への挿入、良否判定やリタップ等を自動的に行うようになっている。良否判定については公知の方法(基準)に基づいて行うことができる。
【0023】
ネジ穴品質保証装置100は、先端に測定ゲージ2(又はリタップ部)が取り付けられた品質保証用ツール1、品質保証用ツール1を接続するためのツール接続部10、品質保証用ツール1を上下動させるための中空シリンダー部20、品質保証用ツール1を回転させるための回転用モーター3、ネジ穴のネジ深さを測定する深さ測定部4及びネジ穴品質保証装置100の水平移動に対応するフローティング部30を備えている。以下、ツール接続部10、中空シリンダー部20及びフローティング部30について詳細に説明する。
【0024】
図2は、品質保証用ツール装着状態のツール接続部10を示す(A)横断面図、(B)縦断面図である。図3は、品質保証用ツール取り外し状態のツール接続部10を示す(A)横断面図、(B)縦断面図である。
【0025】
ツール接続部10は、外輪11、鋼球押さえ12、保持器13、第1の鋼球14、第2の鋼球15、ラジアル軸受16、スラスト軸受17,18、回転伝達シャフト19及び付勢手段(図示しない)を備えている。
【0026】
外輪11は、装置に取り付けられた上下駆動用シリンダーにより上下動するようになっており、外輪11により、ラジアル軸受16、スラスト軸受17,18及び鋼球押さえ12が保持されている。外輪11の上下動に合わせて、ラジアル軸受16、スラスト軸受17,18及び鋼球押さえ12も上下動する。
【0027】
鋼球押さえ12は、内壁面に第1のテーパー部12a及び第2のテーパー部12bを有する筒状体である。第1のテーパー部12aは、第2のテーパー部12bよりも上方に位置し、下方に向かって拡径するとともに、第1の鋼球14に当接している。第2のテーパー部12bは、第1のテーパー部12aよりも下方に位置し、下方に向かって拡径するとともに、第2の鋼球15に当接している。鋼球押さえ12の内壁面は、上部平坦部、第1のテーパー部12a、中部平坦部、第2のテーパー部12b、下部平坦部の順に徐々に内径が広がっている。
【0028】
第1の鋼球14及び第2の鋼球15は、各鋼球に合わせた開口部を有する円筒状の保持器13により保持されている。保持器13は、外輪11には保持されておらず、外輪11の上下動に合わせて上下動することはない。第2の鋼球15は、第1の鋼球14よりも大きい。なお、本実施形態では、第1の鋼球14及び第2の鋼球15の数を各々6つとしたが、これに限定されるものではなく、品質保証用ツールを装着できる範囲であれば、これよりも少なくても多くてもよい。
【0029】
第1の鋼球14は、図2に示す品質保証ツール1の装着状態において、品質保証用ツール1の上部周縁部に当接している。また、第2の鋼球15は、図2に示す品質保証ツール1の装着状態において、品質保証用ツール1の周縁部に設けられた溝部1aに嵌合している。
【0030】
ツール接続部10の付勢手段(図示しない)は外輪11を下方に付勢するものであり、外輪11に保持された鋼球押さえ12は常時下方に付勢された状態になっている。
【0031】
図2に示す品質保証用ツール1の装着状態においては、外輪11(鋼球押さえ12)は下方に移動し、第2のテーパー部12bにより第2の鋼球15が内側に押される。そして、第2の鋼球15が品質保証用ツール1の溝部1aに嵌合して、品質保証用ツール1を装着状態に維持することができる。
【0032】
このとき、品質保証用ツール1の上面に設けられた嵌合穴1bに回転伝達シャフト19が挿入される。そして、回転伝達シャフト19の回転に伴って、品質保証用ツール1が回転する。
【0033】
一方、図3に示す品質保証用ツール1の取り外し状態においては、外輪11(鋼球押さえ12)は上方に移動し、第2のテーパー部12bによる第2の鋼球15を内側へ押す距離が減少するため、第2の鋼球15は装着状態よりも外側に移動する。そして、第2の鋼球15が品質保証用ツール1の溝部1aから外れて、品質保証用ツール1を取り外すことができる。
【0034】
図4は、作動時のツール接続部を示す(A)横断面図、(B)縦断面図(通常)、(C)縦断面図(偏角)である。図4(A)、(B)に示すように、ネジ穴が設計通りに形成されている場合(通常)には、品質保証用ツール1は、ツール接続部10に垂直に装着された状態で、回転伝達シャフト19の回転に合わせて回転し、鋼球押さえ12、第1の鋼球14及び第2の鋼球15も、図示の方向に回転する。
【0035】
一方、図4(C)に示すように、ネジ穴が設計通りに形成されておらず傾いているような場合(偏角)には、品質保証用ツール1がネジ穴に挿入されていくと、横方向に外部応力が働く。そうすると、第1の鋼球14及び第2の鋼球15には、外側に押し出す方向に力が働くが、鋼球押さえ12が上昇することによりこの力を吸収することができる。品質保証用ツール1が垂直に戻り外部応力がなくなれば、常時下方に付勢された鋼球押さえ12は通常位置まで下方に移動する。なお、鋼球押さえ12の鋼球押さえ角度(テーパー角度)は、外部応力があったときに、第1の鋼球14及び第2の鋼球15が外側に移動するように設定されている。
【0036】
図5は、回転伝達シャフト19を示す(A)正面図、(B)先端部の横断面図である。回転伝達シャフト19の先端部19aは、側面視は略球体状であるが横断面は六角形状になっている。横断面を六角形状とすることにより、品質保証用ツール1に回転力を確実に伝達するとともに、側面視を略球体状とすることにより、品質保証用ツール1が傾いた場合でも回転力を伝達して回転を維持することができるようになっている。品質保証用ツール1の嵌合穴1bも六角形である。
【0037】
図6は、中空シリンダー部20を示す(A)平面図、(B)縦断面図(上昇)、(C)縦断面図(下降)である。中空シリンダー部20は、シリンダーチューブ21、ピストン22及びスプリング23を備えている。シリンダーチューブ21は、センター軸方向に貫通する中空部6を有する筒状体である。ピストン22は、筒状のシリンダーチューブ21の壁面内を上下する筒状体である。シリンダーチューブ21とピストン22とは、ピストン22を上方に付勢するスプリング23により連結されており、エアー等の圧力によりピストン22が下方に移動し、圧力がなくなると上方に戻るようになっている。このように、筒状のシリンダーチューブ21と筒状のピストン22とを組み合わせることにより、中空部6が得られ、ネジ穴品質保証装置100の回転軸等の通り道としての中空部6を有効に活用することができる。なお、付勢手段はスプリングに限定されるものではない。
【0038】
図7乃至図9を参照して、フローティング部30について説明する。フローティング部30は、X方向のフローティング部40及びY方向のフローティング部50から構成されている。図7はフローティング部40(X方向)を示す平面図、図8はフローティング部50(Y方向)を示す平面図、図9はフローティング部30を示す側面図である。なお、図7及び図8における左右方向をX方向、上下方向をY方向とする。
【0039】
フローティング部40は、固定テーブル41、品質保証用ツール1のX方向の移動に合わせて移動可能な可動フレーム42、固定テーブル41に設けられた固定磁石47,47,47,48,48,48、可動フレーム42に設けられた可動磁石45,45,45,46,46,46、可動磁石45,45,45を移動させる磁石移動用シリンダー43a,43b、可動磁石46,46,46を移動させる磁石移動用シリンダー44a,44bを備えている。3つの可動磁石45は磁石保持部43cに保持されており、磁石移動用シリンダー43a,43bが磁石保持部43cに接続されている。同様に、3つの可動磁石46は磁石保持部44cに保持されており、磁石移動用シリンダー44a,44bが磁石保持部44cに接続されている。
【0040】
可動磁石45と固定磁石47とは反発している。同様に、可動磁石46と固定磁石48とは反発している。そして、磁石移動用シリンダー43a,43b及び磁石移動用シリンダー44a,44bを伸縮させることにより、可動磁石と固定磁石との反発力を調整することができるようになっている。例えば、図7の状態では、可動磁石45と固定磁石47との反発力よりも、可動磁石46と固定磁石48との反発力の方が大きい。可動フレーム42が移動した場合に、可動磁石45,46の位置を変化させることにより、左右の反発力が近づくように制御することができる。
【0041】
フローティング部50は、フローティング部40を90度回転させて、Y方向の移動に対応するようにしたものである。各部の構成はフローティング部40と同様であるため説明を省略する。フローティング部30は、図9に示すように、X方向のフローティング部40及びY方向のフローティング部50を積層して構成されており、X-Y平面上の移動に対応できるようになっている。
【0042】
ネジ穴の偏角により外部応力が生じた場合に、上述したツール接続部10による対応に加えて、フローティング部30によっても対応することができる。一般的なフローティング機構の場合、変位量に応じて反発力(又は引力)が増大するため、フローティングスライド量が非常に微小で使用範囲が限定される。これに対して本実施形態に係るフローティング部30は、可動フレーム42,52が移動した場合に、可動磁石45,46,55,56の位置を変化させることにより、前後左右の反発力が近づくように制御して安定させることにより、ストローク量を大きくすることができる。
【0043】
なお、図7において、磁石移動用シリンダー43a,43bと磁石保持部43cとの間、磁石移動用シリンダー44a,44bと磁石保持部44cとの間には、それぞれスプリング49が取り付けられている。スプリング49は、ネジ穴品質保証装置100を水平方向に傾けて使用する場合(品質保証用ツールを水平方向に挿入する場合)のためのものである。ネジ穴品質保証装置100を水平方向に傾けると、フローティング部40には重力が働く。スプリング49は、このときの重力による影響を打ち消す方向に付勢するようになっている。図8に示すフローティング部50も同様である。
【0044】
本実施形態に係るネジ穴品質保証装置100は、物品に形成されたネジ穴に品質保証用ツール1を挿入するネジ穴品質保証装置である。そして、品質保証用ツール1に嵌合して回転させる回転伝達シャフト19と、品質保証用ツール1の周縁部に当接する第1の鋼球14と、品質保証用ツール1に設けられた溝部1aに嵌合する第1の鋼球14より大きな第2の鋼球15と、第1の鋼球14及び第2の鋼球15を保持する保持器13と、第1の鋼球14に当接し下方に向かって拡径する第1のテーパー部12a及び第2の鋼球15に当接し下方に向かって拡径する第2のテーパー部12bが設けられた上下動可能な鋼球押さえ12と、鋼球押さえ12を下方に付勢する付勢手段とを備えたツール接続部10を有している。
【0045】
鋼球押さえ12が上下すると、第1のテーパー部12aと第1の鋼球14との当接位置が変化するとともに、第2のテーパー部12bと第2の鋼球15との当接位置が変化し、第1の鋼球14及び第2の鋼球15は回転軸に直交する水平方向(内外方向)に移動する。第2の鋼球15が内側に移動すると、品質保証用ツール1に設けられた溝部1aと第2の鋼球15とが嵌合して接続状態(装着状態)となる。第2の鋼球15が外側に移動すると、品質保証用ツール1に設けられた溝部1aと第2の鋼球15との嵌合が外れて非接続状態(取り外し状態)となる。鋼球押さえ12は下方に付勢されているので、品質保証用ツール1の装着後は装着状態が維持される。
【0046】
また、ネジ穴が偏角した状態で品質保証用ツール1に水平方向に外部応力が働くと、品質保証用ツール1から第1の鋼球14及び第2の鋼球15を外側に押し出す力が働き、これに合わせて鋼球押さえ12を上方に押し上げる力が働く。これにより、ネジ穴の偏角による品質保証用ツール1への外部応力を吸収しながら、品質保証用ツール1を回転し続けることができる。鋼球押さえ12は下方に付勢されているので、外部応力がなくなると品質保証用ツール1は垂直状態に戻る。
【0047】
また、固定テーブル31と、外部応力によって可動する可動フレーム32と、固定テーブル31に設けられた固定磁石33と、可動フレーム32に設けられた可動磁石34と、可動磁石34を移動させる磁石移動用シリンダー35とを備えたフローティング部30を有するので、広いストローク量でも反発力を増大させることなく、品質保証用ツール1をセンタリングすることができる。
【0048】
このように、本実施形態に係るネジ穴品質保証装置100は、検査用やリタップ用の品質保証用ツール1の着脱が容易で、ネジ穴の偏角にも対応することができ、品質保証用ツール1の上下動やセンタリングにも効果的な構造を持ったものである。
【0049】
以上、本発明の実施形態に係るネジ穴品質保証装置について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、ネジ穴品質保証装置100を産業用ロボットのロボットアームに取り付ける構成としたが、搬送機器、固定された機器、壁面等、取り付ける場所は特に限定されない。
【0051】
また、上記実施形態では、フローティング部30を、X方向のフローティング部40とY方向のフローティング部50とに分けて構成したが、X方向とY方向とを一体的に構成してもよい。また、円形の固定テーブルの周りにリング状の可動フレームを設けて、磁石を対向させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 品質保証用ツール
2 測定ゲージ
3 回転用モーター
4 深さ測定部
5 ロボット取付部
6 中空部
10 ツール接続部
11 外輪
12 鋼球押さえ
13 保持器
14 第1の鋼球
15 第2の鋼球
16 ラジアル軸受
17 スラスト軸受
18 スラスト軸受
19 回転伝達シャフト
20 中空シリンダー部
21 シリンダーチューブ
22 ピストン
23 スプリング
30 フローティング部
40 フローティング部(X方向)
41 固定テーブル
42 可動フレーム
43a 磁石移動用シリンダー
43b 磁石移動用シリンダー
43c 磁石保持部
44a 磁石移動用シリンダー
44a 磁石移動用シリンダー
44b 磁石移動用シリンダー
44c 磁石保持部
45 可動磁石
46 可動磁石
47 固定磁石
48 固定磁石
49 スプリング
50 フローティング部(Y方向)
51 固定テーブル
52 可動フレーム
53a 磁石移動用シリンダー
53b 磁石移動用シリンダー
53c 磁石保持部
54a 磁石移動用シリンダー
54a 磁石移動用シリンダー
54b 磁石移動用シリンダー
54c 磁石保持部
55 可動磁石
56 可動磁石
57 固定磁石
58 固定磁石
59 スプリング
100 ネジ穴品質保証装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9