(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010746
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】酵素集合体を使用する染色織布を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D06L 4/40 20170101AFI20230113BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20230113BHJP
D03D 15/54 20210101ALI20230113BHJP
D06M 16/00 20060101ALI20230113BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20230113BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230113BHJP
【FI】
D06L4/40
D03D15/47
D03D15/54
D06M16/00
A41H43/00 A
A41D31/00 502B
A41D31/00 503B
A41D31/00 503E
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175917
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2017078512の分割
【原出願日】2017-04-11
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/058155
(32)【優先日】2016-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】イトカ イルマズ
(72)【発明者】
【氏名】オナー ユッケレン
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】エステラ シュバイツァー デイ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック ディスコ
(72)【発明者】
【氏名】パーゾン アレクサンデル
(57)【要約】
【課題】商業的に望ましく、認知され、かつ他の製品とは容易に区別される着古した外観
を有する織布を製造する方法の提供。
【解決手段】本発明は、酵素集合体を利用する染色織布を製造する方法に関する。本発明
の方法は、織布であって、基材層及び織布の少なくとも一方の側に配置された追加の層を
含み、追加の層のヤーンは、少なくとも部分的に染色されている織布を供給する工程、及
び織布を、酵素集合体好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)と接触させて、前記追加
の層の少なくともヤーンから染料の少なくとも一部を除去する工程を含んでいる。本発明
は、更に、前記方法で得られた織布及び前記織布を含む衣料品にも関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.縦糸ヤーン(2)、横糸ヤーン(3)、(4)、及び前面(5)並びに背面(6)を有する織布(1)を供給する工程と、
ii.工程iにおける前記織布(1)を、架橋酵素集合体(CLEAs)に接触させる工程とを含み、
前記工程iにおいて、前記縦糸ヤーン(2)及び/又は前記横糸ヤーン(3)、(4)は、天然繊維及び合成繊維の混合繊維を備え、少なくとも前記天然繊維は、染色されており、
前記工程iiにおいて、前記染料は、前記天然繊維のみから除去され、前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、セルラーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、ペリオキシダーゼ、カタラーゼ、プロテアーゼ、又はそれらの混合物から選択された少なくとも一つの酵素を含む、織布(1)又は衣料品を仕上げる方法。
【請求項2】
前記織布(1)の前記ヤーンは、少なくとも部分的にインディゴ染色された繊維を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記織布(1)の前記ヤーンは、少なくとも部分的にリング-染色された繊維を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~100μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~50μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~30μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、3.5~9.5の範囲のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、4.0~8.0の範囲のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、4.5~7.0の範囲のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、25℃~70℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、35℃~55℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、45℃~55℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、0.5U/mL~100U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、2U/mL~50U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、5U/mL~20U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、前記織布(1)を、前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む組成物であって、前記組成物中の前記架橋酵素集合体(CLEAs)の濃度が、1mg/g~100mg/gの範囲である前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む前記組成物と接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、前記織布(1)を、前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む組成物であって、前記組成物中の前記架橋酵素集合体(CLEAs)の濃度が、10mg/g~70mg/gの範囲である前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む前記組成物と接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、前記織布(1)を、前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む組成物であって、前記組成物中の前記架橋酵素集合体(CLEAs)の濃度が、15mg/g~50mg/gの範囲である前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む前記組成物と接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、10分~90分の範囲の時間接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、15分~50分の範囲の時間接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、20分~30分の範囲の時間接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、磁気ナノ粒子と結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、一つ以上の添加剤に結合されており、前記添加剤は、炭化水素、プロテイン、ポリオール、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、少なくとも1個以上の磁気ナノ粒子、及び少なくとも一つの添加剤と結合されている、請求項4乃至9のいずれか1項に記載した方法。
【請求項25】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~100μmの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法における架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項26】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~50μmの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法における架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項27】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~30μmの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法における架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項28】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、0.5U/mL~100U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項25~27のいずれか1項に記載の架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項29】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、2U/mL~50U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項25~27のいずれか1項に記載の架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項30】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、5U/mL~20U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項25~27のいずれか1項に記載の架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項31】
請求項1に記載の方法によって得られる織布(1)。
【請求項32】
請求項31に記載の織布(1)を含む衣料品。
【請求項33】
織布(1)の仕上げ方法であって、
一緒に織られる縦糸(2)および横糸(3、4)を含み、前記糸の少なくとも一部が染色されている、織布(1)を提供する工程と、
前記織布(1)を架橋酵素集合体と接触させて、前記織布の糸の少なくとも一部から染料を少なくとも部分的に除去する工程を含む、織布の仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着古した外観を有している織布を製造する方法、その方法で製造された織布、及びその織布を含む衣料品に関する。特に、本発明は、「使用済み」又は「着古した」外観を有している織布、及びその織布を含む衣料品に関する。本発明の方法では、酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)を使用する。
【背景技術】
【0002】
着古した生地、特にデニムは、ファッション業界で人気がある。その理由は、生地に適用される仕上げ処理によって、多種多様な外観を作りだし、その結果、生地の前面、即ち、その生地で製造された物品を着用した場合の目に見える面に、様々な視認効果を付与するからである。実際、デニム産業で成功するか否かは、生地に特有の外観と模様や柄を付与する多様な生地処理による独創性に依存している。
【0003】
生地の外観及びその生地で製造された衣料品の外観は、多種多様な仕上げ技術を適用することによって、変更させることができる。
【0004】
生地の「使用済み」又は「ヴィンテージ」、或いは「着古し」ルックは、通常、衣料品又は織布に対して実施される仕上げ方法で生地を処理することによって、発揮させることができる。従来の仕上げ方法では、例えばストーンウォッシュ、酸ウォッシュ、レーザ処理、サンドブラスト等の特定の化学薬品又は機械的摩耗を用いている。例えば、ストーンウォッシュの場合、生地を、軽石が入っている洗濯漕の中で洗濯する。洗濯漕が回転している間、生地は石と接触し、繊維に存在している染料を含んでいるヤーン繊維部分が除去される。
【0005】
この場合、生地及び特にインディゴで染色された織布を使用し、かつインディゴ染料が、染色されていないヤーンのコアーから離れた表面に有る時、ストーンウォッシュ(又はサンドブラスト)仕上げ法は、インディゴヤーンの染色されていないコアーの量を変化させ、眼に見えるようにすることができる。
【0006】
特許文献1は、織物の処理、例えば、織物をストーンウォッシュし、着古して、褪色した感じを出すのに使用される変性セルラーゼタンパクを開示している。
【0007】
特に、特許文献1は、(a)巨大化され、即ち、質量(分子量)、表面積、又は空間容積を大きくした点で、セルラーゼ前駆物質と異なるセルラーゼ組成物を含む水溶液を形成すること、及び(b)織布を処理するのに適した条件下で、前記水溶液を、セルロースを含む織布と1時間接触させることからなる、セルロースを含む織布を処理する方法を開示している。
【0008】
特許文献2は、i.適当な溶媒に溶解するか、又は溶解しない酵素分子に、アルデヒド基を生成すること、ii.適当な沈殿剤を使用して、酵素分子を沈殿させること、iii.アミン組成物を使用し、アルデヒド基を有している沈殿した酵素分子を架橋して、改良された性質、特に改良された活量及びコロイド挙動を有する架橋酵素を生産することを含む架橋酵素集合体を製造する方法を開示している。
【0009】
上述した全ての仕上げ処理は、異なった視認効果、特に着古した外観を付与し、衣料品及び織物産業における織布をファッショナブルなものにする。
【0010】
然しながら、従来の仕上げ処理によって付与される視認効果及び外観は、限定されている。例えば、処理された織布の場合、視認されるインディゴヤーンの染色されていないコアーの量によって、着古した外観が発揮される。従って、着古した外観を有する製品と、そうでない製品との相違は、製品全体に「色むら」があること、即ち、着古した外観を有する製品が、他の製品に対して、どの程度「褪色」しているかにある。
【0011】
従って、異なる製造業者によって製造された衣料品が同じになることがある。そのため、製品の商品の信頼性、及び別の製品との差別化は低下する。
【0012】
別の問題は、従来の仕上げ法の場合、仕上げ処理の間に、織布から除去する繊維の量を調整することが難しいという事実である。摩耗を基礎にした従来の処理方法は、常に織布の機械的完全性を、著しく低減させ、その結果、処理された織布、及び衣料品の引張り強さは低下させられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第98/28411号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0296231号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0038042号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0048140号明細書
【特許文献5】国際公開第97/01629号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Publication Podrepsek et al(2012),Chemical Engineering ransactions:27,235-240.
【非特許文献2】Pure & Appl. Chem. Vol. 59, No.2, pp. 257~268, 1987, “Measurement of cellulase activities”, section “VII: ADDITIONAL ASSAY PROCEDURE FOR ENDOGLUCANSE (HEC Assay) (ref.9)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、前述した問題を解消して、改良された着古した外観、特に従来の方法では得られなかった特有の着古した外観を有する織布を製造する方法を提供することである。
【0016】
本発明が解決しようとする別の課題は、商業的に望ましく、認知され、かつ他の製品とは容易に区別され得る着古した外観を有する織布を製造する方法を提供することである。
【0017】
これら及びそれ以外の課題は、請求項1に記載した方法によって解決され、これにより、請求項17に記載の織布、及び請求項19に記載の衣料品の製造が可能になる。以下の記載においては、織布に対して実施される方法に関して言及するが、織布の定義は、物品、特に衣料又は衣料品に存在する織布も包含する。換言すれば、方法に関する請求項は、織布の形状は無関係に、織布に対して実施される方法に関する。物品、例えば、前記織布を含むか、又は前記織布で製造された衣料品は、本発明の各請求項の保護範囲に含まれる。従って、請求項1は、織布の形状とは無関係に、特定の付加的な層を有する織布をバイオ・ストーンウォッシュする方法、予め物品に成形された織布の処理、並びに製織工程で得た織布の処理も保護する。
【0018】
特に本発明は、以下の工程を含む織布を仕上げる方法に関する。
a. 一緒に織られる縦糸ヤーン及び横糸ヤーンを含む織布を供給して、前記織布の基材層を形成する。ここにおいて、複数本の縦糸ヤ-ン及び/又は複数本の横糸ヤーンは、前記織布の少なくとも一つの追加の層を形成するヤーンの張出し部分を形成し、前記追加の層は、織布の少なくとも一方の側に配置されていて、前記追加の層のヤーンは、少なくとも部分的に染色された繊維を含んでいる、
b. 前記織布を酵素集合体と接触させて、前記追加の層の少なくともヤーンから、少なくとも部分的に染料を除去する。
【0019】
実際、驚くべきことに、工程aに従って織布を供給すること、及び織布を酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)で処理(即ち接触)することによって、改良された審美効果を有する織布が製造できることを発見した。製造された織布は、従来の仕上げ工程では得ることが出来なかった「立体的」ストーンウォッシュ調効果、即ち「立体的」な着古し外観を呈している。
【0020】
本発明の態様において、織布の複数本の横糸ヤーンは、少なくとも部分的に染色されている。従って、織布の少なくとも一方の側に、順番に少なくとも部分的に染色された追加の層が供給される。
【0021】
本発明による方法は、下地の基材層には実質的な影響を与えることなく、主として、織布の前面にある追加の層から染料を除去するという効果がある。工程aで供給された織布を、酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)で処理することによって、織布の追加の層から染料を調整しながら、かつ局所的に、特定の箇所から除去することができる。この場合、本発明の方法によって、織布の基材層、即ち、引張り強さのように、織布の機械的性質を与える織布の層の構造には損傷を与えずに、織布の追加の層の外観を変えて、織布に着古した感じを発揮させることができる。
【0022】
例えば、本発明の態様によって、工程aで供給される織布は、追加の層及び染色された基材層、即ちインディゴ染め、好ましくはリング・インディゴ染めされた基材層の両方を有している。この場合、織布と架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させることによって、染料を追加の層から除去することができ、この際の基材層に対する影響は限定されたものとなる。従って、染料は、主として、追加の層から除去され、基材層に視覚コントラストを付与し、新規な着古し効果が発揮される。
【0023】
さらに、本発明の方法は、織布を破壊させずに、又は損傷させずに、染料の少なくとも一部を、織布の追加の層から除去することを可能にする。実際、遊離酵素又は伝統的なストンウオシュではなく、酵素集合体、好ましくはCLEAsを使用することにより、工程aで供給された織布を、織布に損傷を与えずに、効果的かつ調整しながら処理して、織布の着古し感を付与することができ、その結果、本発明の方法によると、染料を、基材層から調整しながら除去することができることが観察された。
【0024】
特定の科学的説明に拘束されることなく、遊離酵素より大きな酵素の「集合体」、好ましくは架橋集合体を生成し、工程aで供給された織布と、遊離酵素ではなく、前記「集合体」と接触させると、織布内に浸透する集合体の深さを調整することができることが観察された。従って、本発明の一態様によると、酵素集合体、好ましくはCLEAsを使用することによって、織布を損傷させずに、実質的に、織布の追加の層の特定の箇所に、集中したストーンウォッシュ調の外観を付与することができる。
【0025】
例えば、本発明の方法によって仕上げるのに適した織布構造は、特許文献3に記載されている(特に以下の段落を参照:[0013]、[0019]~[0027]、[0030]、[0031]、[0033]、[0049]~[0051]、[0054]、[0055]、[0060]、[0066]、[0068]~[0071]、[0075]、[0076]、[0078]~[0083]、[0086]、[0089]~[0117])、及び特許文献4(特に以下の段落を参照:[0007]、[0010]、[0013]~[0018]、[0041]~[0046]、[0048]~[0050]、[0054]~[0059]、及び実施例1,3~8及び10)。これらの記載事項は、本明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の一部を構成するものとして、引用として組み込まれている。
【0026】
本発明の別の課題は、下記の工程を含む請求項20に記載の織布(又は衣料品)を仕上げする方法である。
i.縦糸ヤーン及び横糸ヤーン、並びに前面及び背面を含む織布を供給する工程。ここにおいて、前記縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは、天然繊維及び合成繊維の混合物を含み、少なくとも前記天然繊維は染色されている、
ii.工程iの前記織布を、酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)と接触させる工程。
【0027】
上記の方法に適した酵素は、請求項1の方法に関して前述したもの、即ち、いわゆる繊維のバイオ・ストーンウォッシュ処理に適した酵素である。好ましい天然繊維は、コットン繊維である。
【0028】
本発明によって、前記定義した織布を、同じく前記定義した酵素、好ましくは酵素集合体、より好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)と接触し、天然繊維だけから染料を除去し、織布に「部分」脱色、即ち、織布に含まれている天然繊維だけから染料を除去する。換言すれば、本発明の工程iで供給された織布の縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは「混合」ヤ-ン、即ち同じヤーンに、天然及び合成繊維の両者を含むヤーンである。
【0029】
酵素と前記織布を接触させることによって、織布の縦糸及び/又は横糸ヤーンに含まれている天然繊維、例えばコットンだけから染料を除去することができ、従来方法では得ることが出来なかった改良された着古し外観、及び明確な陰影効果を有する織布が供給される。酵素は遊離酵素であり、好ましくは酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)である。
【0030】
本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、混合繊維を含む織布に実施される本発明の方法に関して説明する。この方法は、物品、特に衣料品又は被服品の中の織布を含む。換言すれば、本発明の方法に関する請求項は、織布の形状とは関係なく、織布に対して実施される方法に関する。物品、例えば、前記織布を含む又は前記織布で製造された物品は、本発明の全ての請求項の保護範囲に含まれる。
【0031】
本発明の更なる課題は、前述した本発明の方法によって得られる織布を提供することである。本発明の方法によって得られる織布は、「部分的に」脱色された織布である。前記織布は、染色された第1繊維、好ましくはコットン繊維、及び染色された第2繊維を含んでおり、かつ染料は、前記第1繊維から部分的に除去されており、前記第2繊維に存在している。
【0032】
本発明の更なる課題は、前述した織布を含む衣料物品を提供することである。
【0033】
従って、本発明の更なる課題は、請求項21による織布、及び請求項22による衣料物品を提供することである。
【0034】
更に、本発明の課題は、以下の工程を含む請求項23による織布を仕上げる方法を提供することである。即ち、一緒に織られる縦糸ヤーン及び横糸ヤーンを含み、前記ヤーンの少なくとも一部は染色されている織布を供給すること;及び前記織布を酵素集合体と接触し、前記織布のヤーンの少なくとも一部から、少なくとも部分的に染料を除去することである。
【0035】
好ましくは、前記織布の前記ヤーンは、少なくとも部分的にインディゴ染色、好ましくはリング染色された繊維を含んでいる。
【0036】
好ましくは、前記酵素集合体は、架橋酵素集合体(CLEAs)である。
【0037】
本発明の更なる課題は、請求項36に記載したCLEAsの使用を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明で使用する用語「生地」及び「織布」は、好ましくは本発明の方法によって仕上げるのに適する特定の構造的特徴を有する生地を意味する。即ち、これらの用語は、前述した本発明の方法の態様の工程a又は工程iで記載した織布である。然しながら、本発明の酵素集合体は、如何なる生地、好ましくは織布にも使用することができる。
【0039】
本発明の方法の更なる利点は、酵素集合体、好ましくはCLEAsを使用することによって、生地の引張り強さが、酵素集合体による処理の前後で、実質的に同じである点である。特定の科学的説明に拘束されるのを好むものではないが、集合体(好ましくはCLEAs)のサイズが、遊離酵素と比べて大きいので、生地に深く浸透するのが防止され、引張り強さのような生地の性質を維持しているものと考えることができる。
【0040】
本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、用語「集合体」、「架橋酵素集合体(CLEAs)」及び「CLEAs」は、通常の方法で固定化及び/又は一緒に保持された複数の酵素を意味する。好ましくは、酵素集合体は、「架橋酵素集合体」、即ち「CLEAs」、即ち、架橋手段によって一緒に保持され、不溶解性のクラスター(即ち「集合体」)を形成している集合体を意味する。CLEAsを含む酵素集合体は、当業界で周知であって、一種以上の触媒活性を有する一種以上の酵素によって形成される。以下の記載では、CLEAsに関する言及は、簡略にするために、単に、「架橋酵素」とするが、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0041】
本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、用語「酵素」は、テキスタイル産業において使用に適する如何なるタイプの酵素、例えば、生地又は衣料品に対する仕上げ処理を達成するのに適する酵素の綱(クラス)を例示すると、加水分解酵素及び酸化還元酵素である。酵素集合体、好ましくは、CLEAsは、当業界に周知の方法で製造することができる。例えば、CLEAsは、酵素を一種以上の架橋剤、例えばグルタールアルデヒドで架橋することで製造することができる。酵素集合体を製造する方法の例は、特許文献5及び非特許文献1に記載されている。
【0042】
代表的な第1繊維は、コットン及び他の天然繊維である。本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、用語「天然繊維」は、天然に見いだされるあらゆる種類の繊維、即ち合成ではない繊維であり、コットン、ウール、シルク等を意味する。コットンが好ましい。本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、用語「天然ヤーン」は、天然繊維から製造されたヤーンを意味する。
【0043】
代表的な第2繊維は合成繊維である。本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において用語「合成繊維」は、「半合成繊維」を含む人工繊維の意味である。本発明による合成繊維の例は、ナイロン、アクリル、ポリエステル、lycra[ライクラ(E.I.du Pont de Nemours & Co.)の登録商標]等がある。本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、用語「合成ヤーン」は、合成繊維で製造されたヤーンである。
【0044】
本発明の態様において、適当な酵素集合体、好ましくは、CLEAsは、複数の異なる酵素、例えば、複数の異なる綱(クラス)の酵素及び/又は異なる触媒活性を有している酵素を含んでいる。
【0045】
本発明の好ましい態様において、酵素集合体、架橋酵素集合体(CLEAs)は、セルラーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、ペリオキシダーゼ、カタラーゼ、プロテアーゼ、及びそれらの混合物から選択される少なくとも一つを含んでいる。酵素集合体は、少なくとも一つのセルラーゼを含んでいるのが好ましい。例えば、適当なセルラーゼは、中性セルラーゼ、酸性セルラーゼ及びこれらの混合物である。
【0046】
有利なことに、織布、好ましくは上述した方法の工程aで記載した追加の層を有する織布を、酵素集合体、好ましくはセルラーゼ、及び/又はラッカーゼ、及び/又はグルコースオキシダーゼ、及び/又はペクチナーゼ、及び/又はキシラナーゼ、及び/又はペリオキシダーゼ、及び/又はプロテアーゼ、及び/又はカタラーゼを含むCLEAsと接触(即ち、処理)させると、織布の追加の層から染料を調整しながら除去することができ、生地の追加の層に、主として局在化された、即ち、特定の箇所に付与された「ストンウオシュ」効果、即ち、「着用した」又は「使用済み」或いは「着古した」効果を発揮する。
【0047】
他の態様において、本発明の方法は、上述した本発明の工程iで供給された第1及び第2繊維の混合繊維のヤーンを有している織布を、酵素集合体、好ましくはセルラーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、ペリオキシダーゼ、カタラーゼ、プロテアーゼ、及びそれらの混合物から選択された少なくとも一つの酵素を含んでいるCLEAsと接触させ、織布の縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンを構成している天然繊維から、染料を局所的、即ち、特定の箇所から除去して、織布に「ストーンウォッシュ」調外観を付与する「バイオストーンニング」法である。
【0048】
本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書において、用語「バイオストーンニング」は、酵素を使用した繊維又は織布の仕上げ処理方法で、仕上げ処理されたテキスタイル製品にストーンウォッシュ調外観を与える仕上げ処理方法である。同じく用語「ストーンウォッシュ調模様」、「ストーンウォッシュ調外観」及び「ストーンウォッシュ調効果」は、織布を軽石と一緒に洗濯して得られる外観、即ち使用済み又は着古した外観と同じか、又は似た外観を有する織布であり、織布の少なくとも一部が、その本来の色の少なくとも一部を失っていて、古びて、かつ色あせた状態になっている。
【0049】
本発明の特徴により、織布の追加の層に使用されるヤーンは、下地層のヤーンとは別々に染色される。即ち、追加の層のヤーンが染色されると、下地層の染色されたヤーンに対して、異なった色調又は色を呈する。例えば、追加の層のヤーンの色調は、下地層のヤーンの色調より、暗みを帯びている。従って、本発明の特徴である方法は、追加の層に、下地層の色又は色合い(色むら)とは異なった色又は色合い(色むら)を付与することができる。
【0050】
このような方法で、基材層は、CLEAsと接触する前の特徴、即ち非ストーンウォッシュ調と実質的に同じ又は似た特徴を維持しながら、追加の層に、主として、「ストーンウォッシュ調外観」を得た、又は殆ど得た織布を得ることが可能である。
【0051】
好ましい態様により、酵素集合体は、セルラーゼ集位体、ラッカーゼ集合体、グルコースオキシダーゼ集合体、ペクチナーゼ集合体、キシラナーゼ集合体、ペリオキシダーゼ集合体、カタラーゼ集合体、プロテアーゼ集合体、及びそれらの混合物から選択される。
【0052】
酵素集合体はセルラーゼ集合体が好ましい。
【0053】
好ましい態様により、CLEAsは、セルラーゼCLEAs、ラッカーゼCLEAs、グルコースオキシダーゼCLEAs、ペクチナーゼCLEAs、キシラナーゼCLEAs、ペリオキシダーゼCLEAs、カタラーゼCLEAs、プロテアーゼCLEAs、及びそれらの混合物から選択される。
【0054】
換言すれば、本発明の方法で使用するに適する酵素集合体、好ましくは、CLEAsは、例えば、セルラーゼ(「セルラーゼ集合体」又は「セルラーゼCLEAs」)、ラッカーゼ(「ラッカーゼ集合体」又は「ラッカーゼCLEAs」)又はグルコースオキシダーゼ(「グルコースオキシダーゼ集合体」又は「グルコースオキシダーゼCLEAs」)から製造することができる。前記集合体、好ましくは、CLEAsは、本発明の方法において、互換的、又はあらゆる比率の混合物として使用することができる。
【0055】
本発明の好ましい態様において、酵素集合体は、多種多様なタイプの酵素を含む。換言すれば、単一集合体は、種々の酵素を含むことができる。好ましくは、酵素集合体は、セルラーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、ペリオキシダーゼ、カタラーゼ、プロテアーゼから選択された、あらゆる比率の少なくとも2つの酵素を含む。例えば、本発明による酵素集合体は、セルラーゼ及びラッカーゼの混合物を含むことができ、又はセルラーゼ、ラッカーゼ及びペクチナーゼからなる混合物を含むことができる。
【0056】
酵素集合体、好ましくはCLEAsは、「特化された酵素クラスター」であり、酵素にとって望ましい効果を得るために、特にその特徴に合わせたものである。
【0057】
この事実は、従来技術による酵素のランダムな架橋クラスターに幾つかの利点を付与する。
【0058】
例えば、酵素集合体は、所定の酵素組成、質量(即ち、分子量)及び活性度をもたせるように設計される。酵素集合体は、集合体で処理する織布の種類及び織布の望ましい最終効果の観点から、予め決めることが出来る所定の構造及び機能的特徴をもたせるように設計すると有利である。
【0059】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される酵素集合体(好ましくはCLEAs)のサイズは、1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは1μm~30μmの範囲である。
【0060】
酵素集合体、好ましくはCLEAsのサイズは、処理しようとする織布の構造の観点から選択及び調整することができる。例えば、集合体のサイズは、複数本の横糸ヤーンで形成される織布全体の密度及び/又は厚さの観点、及び/又は得られる最終効果、例えば、追加の層から染料を部分的に又は完全に除去するような効果の観点から、選択することができる。
【0061】
本発明の好ましい態様において、前記工程b(又はii)は、酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)を含有する溶液で洗濯することによって実施される。
【0062】
本発明の方法の好ましい態様において、前記工程b(又はii)は、pH範囲3.5~9.5の範囲のpH、好ましくは4.0~8.0の範囲のpH、より好ましくは4.5~7.0の範囲のpHで実施される。さらに、より好ましくは、本発明の方法の前記工程b(又はii)は、4.8~5.0の範囲のpHで実施される。pHは、集合体で使用される酵素の性質に応じて選択及び調整することが好ましい。
【0063】
本発明の方法の好ましい態様において、前記工程b(又はii)は、25℃~70℃の範囲の温度、好ましくは35℃~55℃の範囲の温度、より好ましくは45℃~55℃の範囲の温度で実施される。さらに、より好ましくは、本発明の方法の前記工程b(又はii)は、温度50℃で実施される。
【0064】
本発明の方法の好ましい態様において、酵素集合体(好ましくはCLEAs)の酵素活性度は0.5U/mL~100U/mL、好ましくは2U/mL~50U/mL、より好ましくは5U/mL~20U/mLである。1U/mL(集合体を含有する溶液の酵素単位/mL)は、1分間当たり1μmolの基質を転換する集合体を含有する溶液の1mL中の酵素の量(即ち、集合体、好ましくはCLEAsの量)である。
【0065】
本発明によって、酵素集合体(好ましくは、CLEAs)を製造するのに使用することができる酵素は、活性度を検知するための多様な方法/アプローチを必要とする。これらの多様な方法/アプローチは、当業界に周知である。例えば、集合体が1個以上のセルラーゼを含んでいる場合は、セルラーゼ活性度を検知する一般的な方法は、DNS検定に基づいている。このDNS検定は、当業界において周知である。
【0066】
好ましくは、集合体が、少なくとも1個のセルラーゼを含んでいる場合は、酵素活性度(U/mL)は、非特許文献2に記載された方法に従って測定される。
【0067】
本発明の好ましい態様によって、酵素集合体(好ましくは、CLEAs)は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%の遊離酵素活性度を保持している。例えば、本発明によるセルラーゼCLEAsは、少なくとも10%の遊離酵素活性度、好ましくは少なくとも40%の遊離酵素活性度、より好ましくは少なくとも70%の遊離酵素活性度を保持している。
【0068】
本発明の方法の好ましい態様において、工程b(又は工程ii)は、工程a(又は工程i)に従って、織布と、架橋酵素集合体(好ましくは、CLEAs)を含む組成物を接触させることによって実施される。但し、前記組成物中の集合体の濃度は、1mg/g~100mg/g、好ましくは10mg/g~70mg/g、より好ましくは15mg/g~50mg/gの範囲である。但し、測定単位「mg/g」は、「織布基材1gに対する集合体(好ましくは、CLEAs)のmg」を意味する。
【0069】
集合体(好ましくは、CLEAs)の濃度、即ち使用濃度を、例えば、集合体の触媒活性、即ち酵素活性度及び/又は集合体のサイズ等パラメータの観点から選択して、望ましい「立体」着古し効果のような最終結果を織布に付与することができるので有利である。
【0070】
本発明の方法の好ましい態様において、工程b(又は工程ii)は、10分~90分、好ましくは15分~50分、より好ましくは20分~30分の範囲の接触時間で実施される。
【0071】
例示的態様において、本発明の方法の工程b(又は工程ii)、即ち工程a(又は工程i)の織布と酵素集合体(好ましくは、架橋酵素集合体(CLEAs))との接触は、いくつかの異なる方法で実施することができる。
【0072】
例えば、本発明の織布は、集合体(好ましくは、CLEAs)を含有する溶液に浸漬することができる。又は、集合体を織布に散布してもよい。
【0073】
本発明の方法の好ましい態様において、酵素集合体(好ましくは、CLEAs)は、当業界に周知の方法によって、磁気ナノ粒子に結合される。本発明の方法において、磁気ナノ粒子に結合された酵素集合体を使用すると、特に有利である。その理由は、仕上げ工程が終了した後で、磁気ナノ粒子に結合された酵素集合体は、簡単かつ迅速に回収することができるからである。この様にして、酵素集合体(好ましくは、CLEAs)は、再利用される。従って、仕上げ工程のコストを更に低減し、かつ工程の廃棄物の量を低減する等環境上の効果を上げる。
【0074】
集合体と磁気ナノ粒子を結合すると、酵素集合体を磁気作用によって調整できるので有利である。
【0075】
換言すれば、磁気ナノ粒子と結合した酵素集合体は、磁場を与えることで、例えば、「直接的に」又は「移動しながら」管理することができる。たとえば、磁気ナノ粒子と結合した酵素集合体は、織布を集合体で処理している間、織布を磁場によって特定の箇所に移動させて、実質的に、集合体が移動した織布の特定の箇所にだけストーンウォッシュ効果を発揮させることができる。
【0076】
幾つかの態様において、酵素集合体(好ましくはCLEAs)は、1種以上の添加剤と結合される。
【0077】
幾つかの態様において、酵素集合体は、炭化水素、タンパク、ポリオール、及びそれらの混合物から成る1種以上の添加剤と結合される。
【0078】
例えば、酵素集合体(好ましくはCLEAs)は、1種以上の炭化水素(デキストラン及びグルコース等)、タンパク(例:BSA、即ち、ウシ血清アルブミン)、及びポリオール(例:PEG,即ちポリエチレングリコール)、及びそれらの混合物から成る1種以上の添加剤と結合される。
【0079】
集合体と上述した1種以上の添加剤を結合することにより、集合体のζ電位(ゼータ電位)を調整して、集合体と織布の相互作用、及び、例えば、集合体で織布を処理している間に磁場を与えることにより織布からの染料の除去を調整することができる。
【0080】
本発明の態様において、酵素集合体(好ましくはCLEAs)は、少なくとも一つの磁気ナノ粒子及び少なくとも一つの添加剤に結合される。本発明の好ましい態様において、工程aの織布は、縦糸ヤーン、第1横糸ヤーン及び第2横糸ヤーンを有し、前記縦糸ヤーン及び前記第1横糸ヤーンは、前記織布の基材層を形成しており、前記第2横糸ヤーンは延びて、側面、例えば織布の前面に沿って張出し部分を形成している。
【0081】
本発明の好ましい態様において、本発明の方法の工程aの織布は、第2横糸ヤーンを有しており、前記第2横糸ヤーンは延長されて、少なくとも3本の縦糸ヤーンを超えて浮き糸とすることにより、好ましくは、少なくとも5本の縦糸ヤーンを超えて浮き糸とすることにより、より好ましくは、少なくとも7本の縦糸ヤーンを超えて浮き糸とすることにより、側面、例えば織布の前面に沿って、張出し部分を形成している。
【0082】
好ましくは、第2横糸ヤーンによって形成される張出し部分の長さは、通過する縦糸ヤーンの数に依存して、及び/又は基材層にほぼ堅く織ることが出来る張出し部分を形成するように選択される。換言すれば、例示的な態様において、張出し部分の長さは、基材層に堅く結合する追加の層を得るように選択される。他の例示的な態様において、張出し部分の長さは、基材層に緩く掛かって垂れ下がり、その結果、基材層と堅く結合していない追加の層を得るように、又は得るために選択される。本発明の例示的な態様において、工程aにおいて供給される織布は、緩い張出し部分を形成する少なくとも複数本の第2横糸ヤーン、及び/又は基材層に堅く織られた張出し部分を形成する、少なくとも複数本の第2横糸ヤーンを含んでいる。
【0083】
本発明の好ましい態様において、本発明の方法の工程aにおいて供給される織布は、第2横糸ヤーンを有している。前記第2横糸ヤーンは、延長されて、20本の縦糸ヤーンの上を通過し、好ましくは15本の縦糸ヤーンの上を通過し、より好ましくは、12本の縦糸ヤーンの上を通過することによって、織布の前面に沿って張出し部分を形成する。
【0084】
本発明の好ましい態様において、本発明の方法の工程aにおいて供給される前記織布は、第1横糸ヤーンを有している。前記第1横糸ヤーンは、延長されて、2本以上の縦糸ヤーンの下、好ましくは5本未満の縦糸ヤーンの下を通過することにより、織布の背面に沿って谷形部分を形成する。
【0085】
本発明の好ましい態様において、工程aにおいて供給される織布は、2つの複数の第2横糸ヤーンを有している。
【0086】
本発明の好ましい態様において、工程aにおいて供給される織布は、1:1~2:1の範囲の平均比率 [第2横糸ヤーン:第1横糸ヤーン]を有している。換言すれば、織布のそれぞれの第1横糸ヤーンの場合、第2横糸ヤーンの平均数は、1~2の範囲である。
【0087】
本発明の好ましい態様において、織布は、デニム織布、好ましくは弾性デニム織布である。例示的な態様において、織布は、「極軽量」デニム織布(質量:5オンス/yd2未満)、「中軽量」デニム織布(質量:5オンス/yd2~8オンス/yd2~の範囲)、「標準」デニム織布(質量:5オンス/yd2~12.5オンス/yd2~の範囲)、及び「重」デニム織布(質量:12.5オンス/yd2超)から選択される。
【0088】
本発明の好ましい態様において、織布は、自然色、即ち無染色で供給され、酵素集合体で処理する前に周知の方法で染色される。更に、例示的な態様において、縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは、織布に製織される前に染色される。
【0089】
本発明の好ましい態様において、織布の縦糸ヤーンは、118.2 tex(5/1 Ne)~5.91 tex(100/1 Ne)の範囲、好ましくは19.7tex(30/1 Ne)~8.44 tex(70/1 Ne)の範囲、より好ましくは13.13tex(45/1 Ne)~10.754 tex(55/1 Ne)、更により好ましくは11.82tex(50/1 Ne)の線密度を有している。「tex」は、テキスタイル業界で使用されている番手単位で、テキスタイルヤーン及びスレッドの単位長当たりの質量(1tex=10-6kg.m-1)である。「Ne」は、英国綿番手(English cotton number)で、テキスタイル業界で使用されており、周知の番手単位である。
【0090】
本発明の好ましい態様において、縦糸ヤーンは、コットンヤーン、例えば、インディゴ染色ヤーン、好ましくはリング染めコットンヤ-ンである。
【0091】
例示的態様において、織布の第1縦糸ヤーンは、118.2 tex(5/1 Ne)~5.91 tex(100/1 Ne)の範囲、好ましくは、19.7tex(30/1 Ne)~8.44 tex(70/1 Ne)の範囲、より好ましくは、13.13tex(45/1 Ne)~10.754 tex(55/1 Ne)、更に好ましくは、11.82tex(50/1 Ne)の線密度を有している。
【0092】
好ましい態様において、織布の第1横糸ヤーンの線密度は、24.625 tex(24/1 Ne)~11.82 tex(50/1 Ne)の範囲、又は49.25tex(12/1 Ne)~14.775 tex(40/1 Ne)の範囲、又は73.875tex(8/1 Ne)~19.7 tex(30/1 Ne)の範囲、又は118.2tex(5/1 Ne)~24.625 tex(24/1 Ne)の範囲である。
【0093】
例示的態様において、第2横糸ヤーンの番手又は線密度は、118.2 tex(5/1 Ne)~5.91 tex(100/1 Ne)の範囲、好ましくは19.7tex(30/1 Ne)~8.44 tex(70/1 Ne)の範囲、より好ましくは13.13tex(45/1 Ne)~10.754tex(55/1 Ne)の範囲である。さらに、より好ましくは、第2横糸ヤーンの線密度は11.82tex(50/1 Ne)である。好ましい態様において、第2横糸ヤーンの番手は、24.625tex(24/1 Ne)~11.82tex(50/1 Ne)以上、又は49.25tex(12/1 Ne)~14.775tex(40/1 Ne)の範囲、又は73.875tex(8/1 Ne)~19.7tex(30/1 Ne)の範囲,又は118.2tex(5/1 Ne)~24.625tex(24/1 Ne)の範囲である。ヤーンの追加の層を有している織布のヤーン、及び第1及び第2繊維の混合ヤーンを有する織布のヤーンに対しても、同じ範囲が適用される。
【0094】
本発明の態様において、工程aで供給される織布の第1横糸ヤーン及び第2横糸ヤーンは、両方共天然繊維、即ち例えばコットン繊維のような天然繊維で製造されたヤーンである。本発明の他の態様においては、工程aで供給される織布の第1横糸ヤーンは、合成繊維、好ましくは熱可塑性ヤーン、より好ましくは熱可塑性エラストマーヤーンであり、第2横糸ヤーンは、天然繊維である。更に、別の態様においては、第1横糸ヤーンは天然繊維であり、第2横糸ヤーンは、合成繊維、好ましくは熱可塑性ヤーン、より好ましくは熱可塑性エラストマーヤーンである。天然の横糸ヤーンはコットンヤーン、より好ましくはインディゴ染色コットンヤーンである。
【0095】
本発明の一態様として、本発明の方法は、更に、工程b(又は工程ii)を実施する前に、工程a(又は工程i)の織布から物品を製造する工程を含んでいる。
【0096】
好ましくは、前記物品は、内側及び外側を有する衣料品であり、前記追加の層は、前記衣料品の外側に配置されている。本発明の態様において、本発明の方法は、更に非染色ヤーンを製織して、織布を供給し、前記織布を染色し、かつ工程bに従って、染色した織布を処理する工程を含んでいる。
【0097】
本発明の態様において、本発明の方法の工程aで供給される織布の縦糸ヤーン、及び/又は第1横糸ヤーン、及び/又は第2横糸ヤーンは、天然繊維及び合成繊維を含んでいる。上述したように、本発明は、請求項20による方法、請求項21による織布、及び請求項22による衣料物品に関するものである。
【0098】
本発明の好ましい態様において、本発明の方法の工程iで供給される織布は、方法の工程aで供給される織布と同じ構造を有している。即ち、工程iで供給される織布は、縦糸ヤーン及び横糸ヤーンを含んでいる織布であり、前記横糸ヤーンは、複数の第1横糸ヤーン及び少なくとも複数の第2横糸ヤーンを含んでおり、前記縦糸ヤーン及び前記複数の第1横糸ヤーンは、前記織布の基材層を形成し、前記少なくとも複数の第2横糸ヤーンは、張出し状の追加の層を形成し、この追加の層は、織布の前面に配置されており、かつこの追加の層は、少なくとも部分的に染色されている。好ましくは、少なくとも前記第2横糸ヤーンは、天然繊維及び合成繊維を含んでおり、かつ少なくとも前記天然繊維は、染色されている。
【0099】
酵素集合体、特にCLEAsは、一般に織布を処理するのに使用される。本発明の別の課題は、請求項23に記載の方法を提供することである。本発明の態様において、織布と酵素集合体を接触させる工程は、3.5~9.5の範囲、好ましくは4.0~8.0の範囲、より好ましくは4.5~7.0の範囲のpHで実施される。pHは、集合体に使用されるべき酵素の性質に応じて選択し、かつ調整することが好ましい。
【0100】
本発明の態様によると、織布と酵素集合体の接触工程は、25℃~70℃の範囲、好ましくは35℃~55℃、より好ましくは45℃~55℃の範囲の温度で実施される。
【0101】
本発明における、織布と酵素集合体の接触工程は、前記織布と、酵素集合体を含む組成物を接触することにより実施される。この場合、前記組成物中の前記酵素集合体の濃度は、1mg/g~100mg/g、好ましくは10mg/g~70mg/g、より好ましくは15mg/g~50mg/gの範囲である。
【0102】
本発明において、織布と酵素集合体の接触工程は、10分~90分、好ましくは15分~50分、より好ましくは20分~30分の範囲の接触時間で実施される。
【0103】
上述したように、本発明の態様によると、酵素集合体(好ましくはCLEAs)は、磁気ナノ粒子又は添加剤(炭化水素、プロテイン、ポリオール又はそれらの混合物)、或いは少なくとも一つの磁気ナノ粒子、及び少なくとも一つの添加剤に結合される。
【0104】
好ましくは、天然繊維はコットン繊維であり、より好ましくは、インディゴ染色コットン繊維である。
【0105】
本発明の態様において、天然繊維及びヤーンは、「硬質繊維及びヤーン」であり、織機から取り外した後には、合成繊維及びヤーンに比べて、収縮率が小さい。
【0106】
本発明の態様において、合成繊維及びヤーンは、「弾性」繊維及びヤーンであり、織機から取り外した後で、天然繊維及びヤーンに比べて、大きな収縮率を有している繊維及びヤーンである。適当な弾性ヤーンは、エラストマー繊維を含んでいる。「エラストマー繊維」は、連続フィラメント、又は収縮や襞があるなしに拘わらず、破断時の伸び率が、少なくとも100%の複数のフィラメントから製造された繊維である。破断伸びは、例えばASTM D2256/D2256M-10(2015)に従って測定することができる。「エラストマー繊維」は、その本来の長さを2倍に伸ばし、その伸ばした長さを1分間維持した後、解放後1分間以内に、その本来の長さの1.5倍未満に収縮する繊維である。
【0107】
本発明の好ましい態様によると、本発明の方法は、工程a(又は工程i)で供給された織布を含む衣料物品(即ち、衣服)に対して実施される。即ち、工程a(又は工程i)で供給された織布を含む衣料物品を酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)と接触させる。
【0108】
更に、本発明は、本発明の方法で得られる織布にも関する。
【0109】
本発明の方法で得られる織布は、織布の基材層に関する追加の層に対して、本発明の仕上げ工程による多種多様な効果が発揮され、例えば、「改良されたストーンウォッシュ調外観」、或いは「立体ストーンウォッシュ調外観」を示す。実際、本発明の方法は、基材層の機械的性質に、実質的に影響を与えずに、少なくとも織布の前面の追加の層から染料を除去することができる。
【0110】
また本発明は、本発明の方法によって得られる織布を含む衣料物品にも関する。本発明の特徴により、織布の前記前面は、衣料物品(即ち、衣服)を着用した場合、外から見える側(即ち、外側)で、前記背面は、衣料物品(即ち、衣服)を着用した場合、内側の見えない側(即ち、内側)である。
【0111】
本発明の態様において、織布の前面は、物品を着用した場合、内側の見えない側、織布の背面は、物品を着用した場合、外側から見える側である。
【発明の効果】
【0112】
本発明は、縦糸ヤーン及び横糸ヤーンを含む織布から成る基材層、及び複数本の縦糸ヤ-ン及び/又は複数本の横糸ヤーンから構成され、前記基材層の少なくとも一方の側に配置され、少なくとも部分的に染色された繊維を含んでいる追加の層から成る積層構成体を、酵素集合体と接触させ、前記追加の層のヤーンから、少なくとも部分的に染料を除去することによって、改良された審美効果を有する織布を製造することができ、製造された織布は、従来の仕上げ方法では得ることが出来なかった「立体的」ストーンウォッシュ調効果、即ち「立体的」着古し外観を有しており、しかも、織布の基材層の引張り強さのように、織布の機械的性質を与える織布の層の構造には損傷を与えることなく、織布の追加の層の外観を変えて、織布に着古した感じを与えることができる。従って、異なる製造業者によって製造された衣料品が、同じようになることはなく、そのため、製品の商品の信頼性、及び別の製品との差別化が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】本発明による仕上げ処理前の織布の態様の一部の断面図。
【
図2】本発明による仕上げ処理後の
図1の織布の断面図。
【
図3】本発明による仕上げ処理前の織布の態様の一部の斜視図。
【
図4】本発明による仕上げ処理後の
図3の織布の一部の斜視図。
【
図5】本発明による仕上げ処理前の織布の態様の前面の斜視図。
【
図6】本発明による仕上げ処理後の
図5の織布の前面の斜視図。
【
図7】本発明による仕上げ処理の前後の
図5及び
図6の織布の背面の斜視図。
【
図8】種々の方法で処理された本発明による織布の例の写真。供試体1及び供試体4は、軽石で洗濯されたもの。供試体2及び供試体5は、遊離酵素で洗濯されたもの。供試体3及び供試体6は、架橋酵素集合体(CLEAs)で洗濯されたものである。
【
図9】それぞれ、供試体4~6及び供試体1~3に使用した織布の製織パターンを示す。
【
図10】それぞれ、供試体4~6及び供試体1~3に使用した織布の製織パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0114】
図1は、本発明による仕上げ工程を実施する前の、本発明の方法の工程aで供給される織布の態様の一部の断面図である。
【0115】
特に、
図1は、縦糸ヤーン2、第1横糸ヤーン3、及び第2横糸ヤーン4が、或るパターンで一緒に織られて形成された織布1を示しており、前記織布1は、前面5及び背面6を有している。
【0116】
織布1の横糸ヤーン3、4は、縦糸ヤーン2の上、下に延びて、縦糸ヤーン2に対して、対応する張出し部分7、7’及び谷形部分8、8’を形成している。
図1に示すように、第1横糸ヤーン3は、縦糸ヤーン2の上を通過する時、織布1の前面5に張出し部分7を形成し、縦糸ヤーン2の下を通過する時、織布1の背面6に谷形部分8を形成している。
【0117】
第2横糸ヤーン4は、縦糸ヤーン2の上を通過する時、織布1の前面5に張出し部分7’を形成し、縦糸ヤーン2の下を通過する時、織布1の背面6に谷形部分8’を形成している。
【0118】
本発明において、織布1の前面5は、衣料物品が織られた時、織布1を含む衣料物品の外側の視認可能な表面に対応する。
【0119】
図1に示した態様において、第1横糸ヤーン3は、1本の縦糸ヤーン2の上を通過することにより、張出し部分7を形成し、かつ3本の縦糸ヤーン2の下を通過することにより、谷形部分8を形成している。
【0120】
同じ態様において、第2横糸ヤーン4は、7本の縦糸ヤーン2の上を通過することにより、張出し部分7’を形成し、かつ1本の縦糸ヤーン2の下を通過することにより、谷形部分8’を形成している。
【0121】
本発明において、織布1の横糸ヤーンは、複数本の第1横糸ヤーン3を有しており、縦糸ヤーン2と一緒に織られて織布1の基材層1aを形成している。さらに、織布1の横糸ヤーンは、少なくとも複数本の第2横糸ヤーン4を含んでおり、織布1の追加の層1bを形成している。
【0122】
図1に示した例示的態様において、本発明の仕上げ工程を実施する前に、縦糸ヤーン2と第2横糸ヤーン4は、インディゴ染色される。従って、追加の層1bもインディゴ染色され、同じく基材層1aも、実質的にインディゴ染色される。
【0123】
図2は、本発明によって仕上げ処理された後の、
図1と同じ織布を示している。
【0124】
図2は、織布1と酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)との接触工程を含む本発明の方法が、追加の層1b、即ち第2横糸ヤーン4によって織布の前面に形成された張出し部分7’の実質的に特定の箇所から、染料、例えばインディゴ染料を除去していることを示している。
【0125】
有利なことに、本発明の方法は、追加の層を破壊又は損傷させずに、基材層1aに、実質的に影響を与えずに、即ち、基材層1aから、例えば、縦糸ヤーン2(及び/又は第1横糸ヤーンから)―これらのヤーンが染色されている場合―から望ましくない染料の除去を排除して、追加の層1bから、染料、例えばインディゴ染料を除去することができる。
【0126】
図2の例示的な態様は、追加の層1bから染料が除去され、一方基材層1aは、仕上げ工程、即ち酵素集合体による処理によって影響を受けていないことを示している。特に、
図2は、本発明の方法で処理した後も、縦糸ヤーン2及び第2横糸ヤーン4によって形成された谷形部分8’が、依然として染色、(インディゴ染色)されていることを示している。
【0127】
本発明の方法により、織布1と酵素集合体(好ましくはCLEAs)との接触によって、追加の層1bから染料を除去し、追加の層1bを破壊又は損傷を与えることなく、かつ基材層1aに実質的に影響を与えることなく、追加の層1bに、着古した状態、即ちストーンウォッシュ調効果を発揮させる織布1を得ることができる。
【0128】
図1及び
図2に示した織布1の少なくとも第2横糸ヤーン4は、天然繊維及び合成繊維の両方を含んでいる。
【0129】
図3は、本発明による仕上げ工程を受ける前の例示的な織布1の一部の斜視図である。
図3は、複数本の縦糸ヤーン2,複数本の第1横糸ヤーン3、及び複数本の第2横糸ヤーン4を含む織布1の一部を示している。第2横糸ヤーン4は、織布の前面5に複数の張出し部分7’を形成し、かつ織布の背面6に複数の谷形部分8’を形成している。
【0130】
張出し部分7’は、織布1の前面に追加の層1bを形成している(
図3には示していない)。
図3に示すように、本発明により処理される前、織布1における縦糸ヤーン2及び第2横糸ヤーン4は、染色、特にインディゴ染色されている。
【0131】
図4は、本発明による仕上げ工程が完了した後の
図3の織布1の一部の斜視図である。
図4を見ると、上述した本発明の目的、即ち、織布1と酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させ、追加の層には損傷を与えず、かつ基材層1aに実質的に影響を与えず、即ち、基材層1aからは実質的に染料を除去せず、例えば、縦糸ヤーン2及び/又は第1横糸ヤーン3(それらのヤーンが染色されている場合は)から、染料例えばインディゴ染料を、追加の層1b(
図4には図示せず)を形成する張出し部分7’から除去することとなる。
【0132】
図4の例示的な態様は、複数の張出し部分7’によって形成された追加の層1b(
図4には図示せず)から染料が除去されたこと、及びこの際、仕上げ工程で、縦糸ヤーン2及び第1横糸ヤーン3で形成された基材層1a(
図4に図示せず)には、影響を与えていないことを示している。
図3及び
図4に示す織布1の少なくとも第2横糸ヤーン4は、天然繊維及び合成繊維の両方を含んでいる。
【0133】
図5は、本発明の仕上げ工程を受ける前、即ち、酵素集合体と接触させる前の本発明の方法の工程aで供給される織布1の例示的な態様の前面5を示している。
【0134】
図5に示す織布1の例示的態様は、縦糸ヤーン2、第1横糸ヤーン3、及び第2横糸ヤーン4を含んでいる。第2横糸ヤーン4は、所定数の縦糸ヤーン2を超えて通過することにより、張出し部分7’を形成する。
図5に示す例示的態様においては、二つの複数の第2横糸ヤーン4が存在する。他の例示的態様(図示せず)においては、
図5(及び
図6)と同じ織布が、複数の第2横糸ヤーンを有することができる。
【0135】
図5において、第2横糸ヤーン4は、11本の縦糸ヤーン2を超えて通過することによって、張出し部分7’を形成している。更に、
図5に示した例示的態様の第2横糸ヤーン4は、堅く織られていない。その結果、前記張出し部分7’は、緩く、かつ垂れ下がっており、基材層1aに堅く結合していない追加の層1bを形成している。
【0136】
本発明において、織布1の前面5は、衣料物品を着用した時、織布1を含む衣料物品(即ち、衣服)の外側から目に見える表面に対応している。
【0137】
図5に示す例示的な態様において、第2横糸ヤーン4及び縦糸ヤーン2は、染色、例えばインディゴ染色されている。
【0138】
図6は、本発明の仕上げ工程が完了した後の
図5と同じ織布を示している。
図6から分かるように、織布1と酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)との接触工程を含む本発明による仕上げ工程によって、染料は、主として張出し部分7’から除去されている。逆に、縦糸ヤーン2は、仕上げ工程によって、実質的な影響を受けないままである。
【0139】
有利なことに、上述した本発明の方法によると、追加の層1bに損傷を与えず、基材層1aに実質的に影響を与えず、即ち、基材層1a例えば縦糸ヤーン2からは、実質的に染料を除去せずに、張出し部分7’で形成された追加の層1bから、インディゴ染料を除去することができる。その結果、織布1の追加の層1bに、ストーンウォッシュ調効果(即ち、着古るした効果)を付与することができる。従って、染料は、主として追加の層1bから除去され、基材層1aとの視感コントラストが発生し、この視感コントラストは、本発明の仕上げ工程によって実質的に影響を受けず、かつ追加の層1b全体に視ることができ、従って、「立体」の着古し効果を発揮する。
【0140】
図5及び
図6で示した織布1の少なくとも第2横糸ヤーン4は、天然繊維及び合成繊維の両方を含んでいることに留意するべきである。
【0141】
図7は、
図5の織布1の背面6を示している。
図7に示した態様において、第1横糸ヤーン3は、1本の縦糸ヤーン2の下を通過することによって、谷形部分8を形成している。また、第2横糸ヤーン4は、1本の縦糸ヤーン2の下を通過することにより、谷形部分8’を形成している。
図7から分かるように、谷形部分8’を形成する縦糸ヤーン2及び第2横糸ヤーン4は染色され、一方谷形部分8を形成する第1横糸ヤーン3は、染色されていない。
【0142】
図7は、
図5及び6の織布1の背面6を示している。即ち、本発明の方法を実施する前後、即ち、織布1と酵素集合体を接触する工程の前後を表している。上述したように、織布1と酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体(CLEAs)を接触する工程を含む本発明の仕上げ工程は、織布1の前面5の追加の層1bから染料を除去させるが、一方基材層1a及び、特に、背面6は、前記方法によって、殆ど、又は全く影響を受けていない。換言すれば、染料は、基材層1a及び、特に、織布1の背面6からは、実質的に除去されない。このために、仕上げ工程後、実質的に外観を変化させない。
[実施例1-織布Aの製造]
【0143】
図9の製織報告に従って、下記の特徴の織布を製造した。
縦糸:73.875tex(Ne 8/1)リング・スラブ・コットン
横糸1:84.43tex(Ne 7/1)リング・コットン
横糸2:11.82tex(Ne 50/1)コーマ・コットン
縦糸密度:29.5スレド/cm
横糸密度:42.0本/cm
実施例1の織布の三つの供試体を使用して、それぞれ実施例2,3及び4による3つの異なる処理を実施した。
[比較例2-軽石による処理]
【0144】
実施例1の織布の供試体(30cm×20cm)を、以下の条件でストーンウォッシュした。液比:1:10;1kgの織布当たり軽石150g;30℃で15分間。
得た結果を、
図8の供試体4に示す。
[比較例3-遊離酵素による処理]
【0145】
実施例1の織布の供試体(30cm×20cm)を、以下の条件で、遊離酵素即ち遊離セルラーゼで処理した。織布1kg当たり、遊離酵素の2mg/mL溶液;pH=4.8;50℃で30分間。
得た結果を、
図8の供試体5に示す。
[実施例4-CLEAsによる処理]
【0146】
実施例1の織布の供試体(30cm×20cm)を、以下の条件で、セルラーゼ架橋酵素集合体、即ちセルラーゼCLEAsで処理した。織布1kg当たり、CLEAsの20mg/mL溶液;pH=4.8;50℃で30分間。得た結果を、
図8の供試体6に示す。
[実施例5-織布Bの製造]
【0147】
図10の製織報告に従って、下記の特徴を有する織布を製造した。
縦糸1:29.55tex(Ne 20/1)リング・コットン
縦糸2:29.55tex(Ne 20/1)リング・スラブ・コットン
横糸1:7.78tex(70DN)Peslyc 40 lyc
横糸2:11.82tex(Ne 50/1)コーマ・コットン
縦糸密度:33.1スレド/cm
横糸密度:54本/cm
実施例5の織布の三つの供試体を使用して、それぞれ実施例6、7、及び8による3つの異なる処理を実施した。
[比較例6-軽石による処理]
【0148】
実施例5の織布の供試体(30cm×20cm)を、以下の条件でストーンウォッシュした。液比:1:10;1kgの織布当たり、軽石150g;30℃で15分間。
得た結果を、
図8の供試体1に示す。
[比較例7-遊離酵素による処理]
【0149】
実施例5の織布の供試体(30cm×20cm)を、以下の条件で遊離酵素、即ち遊離セルラーゼで処理した。織布1kg当たり、遊離酵素の2mg/mL溶液;pH=4.8;50℃で30分間。得た結果を、
図8の供試体2に示す。
[実施例8-CLEAsによる処理]
【0150】
実施例5の織布の供試体(30cm×20cm)を、以下の条件で、CLEAsで処理した。織布1kg当たり、CLEAsの20mg/mL溶液;pH=4.8;50℃で30分間。得た結果を、
図8の供試体3に示す。
【0151】
図8は、実施例2~4及び6~8における目視結果を示している。本発明の仕上げ方法は、供試体3及び6に示した。遊離セルラーゼでの処理による仕上げは、供試体2及び5に示した。軽石での洗濯による処理を、供試体1及び4に示す。
【0152】
供試体1~3は、実施例5の織布の軽石(供試体1)、及び遊離セルラーゼ(供試体2)による処理によって、織布1の張出し部分7’の追加の層が破壊されていることを示している。即ち、基材層が損傷を受け、染料が基材層から除去されている。逆に、供試体3は、同じ織布1に対して実施した本発明の方法が、供試体1及び2では発生した損傷を与えること無く、追加の層1b、即ち張出し部分7’から染料を除去したこと、及び基材層1aは、酵素集合体によって極部分的に脱色されたこと(この場合、セルラーゼの架橋酵素集合体)を示している。
【0153】
同じ結果が、実施例1の織布の試験によっても得られた。目視結果を、
図8の供試体4~6に示す。供試体4及び供試体5は、軽石による処理(供試体4)及び遊離セルラーゼ(供試体5)による処理で、追加の層1bに損傷を与え、織布1の張出し部分7’を破壊している。供試体6は、同じ織布のセルラーゼCLEAsによる洗濯で、追加の層1bを破壊又は損傷を与えずに、追加の層1b、即ち張出し部分7’から染料を除去している。
[実施例9-破壊強度-グラブ法-引張り強さ-ASTM D5034-改訂]
【0154】
上述した各実施例に従って、それぞれの処理の前後における実施例1及び実施例5
の織布の引張り強さを評価した。
1.範囲
使用した織布の有効強度、即ち隣接するヤーンに起因する付加的な強度と一緒に、特定の幅のヤーンの有効強度を評価するために、標準ASTM D5034(改訂)に従って、下記にように測定した。
2.装置
2.1-引張り試験装置(CRE又はCRT)
2.1.1.-CREインストロン・テーブル・モデル・4411[クロスヘッド速度:12±0.5in./min.(305±10mm/min);マイクロ・プロセッサ-基本コントロールコンソール(又は類似)
2.1.2.-CRT Scott Model J[クロスヘッド速度:12±0.5in./min.(305±10mm/min);マイクロ・プロセッサ-基本コントロールコンソール(又は類似)
2.1.3.A-420空気圧クランプ(1”×3”(25.4×76.2mm)後部金属面アンビル及び(1”×1”(25.4×25.4mm)前面ゴム面アンビルの両方を装備したテスター。供試体の最小滑り/ジョー破壊を可能にする25.4mm(1インチ)の幅のアンビルの組み合わせを使用することもできる。
3.供試体の調整
3.1 各縦糸及び横方向毎に3個の供試体を調整した。各供試体を、破壊荷重が負荷される方向と平行な長手方向に、100±1mm(4±0.05インチ)の幅、及び少なくとも150mm(6インチ)の長さにカットした。
3.1.1.各方向に3個の単一供試体をカットする代りに、各方向に、300mm(12インチ)×最小150mm(6インチ)の連続供試体にカットしてもよい。
3.1.2.衣料品試験:適当なスペースがある衣料品パネルから供試体を取り出さなければならない。衣料品がサンドブラスト仕上げされている場合は、試験用として、サンドブラスト仕上げされている部分及びサンドブラスト仕上げされていない部分から、供試体を取り出さなければならない。
3.2.供試体の縁から、使用する試験の方向に平行に、クランプの供試体の中心まで、37±1mm(1.5±0.02インチ)の線を引く。縦糸と平行にカットされた2個の供試体は、縦糸の端部の同じセットを含むべきではない。横糸に平行な2個の供試体は、横糸の同じセットを含むべきではない。
3.3 供試体は、織布の幅の1/10より織端に近づけてはならない。
4.手順
4.1.供試体の繊維含量に応じて、全ての供試体を、適当な時間、標準大気中において調整する。
4.2.装置の調整―各シリーズの試験を行なう前に、スケールのゼロ点をチェックする。76±1mm(3±0.05インチ)でセットされた試験の開始時点で、クランプ間の距離をチェックする。インストロン4411又は類似の装置の場合、マニュアルの指示に従う。
4.3.試験装置の荷重範囲を選択して、フルスケール(最大測定可能荷重)の10%~90%の間で破断が発生するように設定する。
4.4.供試体をクランプに挿入して、試験の方向に平行に供試体に引かれた線を、ジョーの上方及び下方側に隣接させる。
4.5.装置を操作して、破壊荷重を読み取る。供試体が、ジョーの中でスリップした場合、ジョーの中で破壊した場合、又は結果が、いくつかセットの供試体の平均より明らかに下回っている場合には、その結果を無視し、別の供試体を採用する。
4.5.1.ジョー破壊の基準は、ジョーの5mm(0.25インチ)の範囲で発生した破壊のうち、他の全ての破壊の平均値の50%未満の値を示したものとする。
5.報告
5.1 織布試験―各方向における3個の供試体の平均は0.5kg(1Ib)に近い。
5.2 衣料品試験―縦糸及び横糸におけるサンドブラスト処理した部分、及びサンドブラスト処理していない部分の供試体の平均は、0.5kg(1Ib)に近い。
【0155】
【0156】
表1において、実施例1及び5両者の織布に関し、軽石又は遊離セルラーゼによる織布の処理は、織布の引張り強さを低下させていることが理解される。換言すれば、織布は、軽石又は遊離セルラーゼで処理した後、弱くなっていることが分かる。
一方、表1の結果は、実施例1及び5の織布の処理は、実質的に、織布の引張り強さに影響を与えていない(即ち、実質的に低下させていない)で、CLEAsによる処理の前(「非処理」)及び後で、実質的に同じままであることを示している。
【0157】
【0158】
表1の結果と同じように、表2の結果も、実施例1及び5両者の織布の引張り強さ(この場合、横糸方向に沿った引張り強さ)は、軽石又は遊離セルラーゼによる処理で低下していることを示している。
逆に、実施例1及び5の両者の織布の引張り強さは、CLEAsによる処理では、実質的な影響を受けていない。換言すれば、織布の引張り強さは、CLEAsによる処理の前(「非処理」)及び後で、実質的に同じままであることを示している。
表1及び表2から、実施した全ての試験において、CLEAsによる処理は、織布の引張り強さは、軽石及び遊離セルラーゼによる処理に比べて、極めて高く維持されていることが理解される。
特に、縦糸(表1)及び横糸(表2)の両者に関する結果を考慮すると、軽石及び遊離酵素による処理は、CLEAsによる処理に比べて、織布に対して、より多くの破壊的効果を与えていることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、縦糸ヤーン及び横糸ヤーンを含む織布から成る基材層、及び複数本の縦糸ヤ-ン及び/又は複数本の横糸ヤーンから構成され、前記基材層の少なくとも一方の側に配置され、少なくとも部分的に染色された繊維を含んでいる追加の層から成る構成体を、酵素集合体、好ましくは架橋酵素集合体と接触させて、前記追加の層の少なくともヤーンから、少なくとも部分的に染料を除去することによって、改良された審美効果を有する織布が製造され、製造された織布は、従来のストーンウォッシュ等による仕上げ工程では得ることが出来なかった「立体的」ストーンウォッシュ調効果、即ち「立体的」着古し外観を有しており、この際、織布の基材層の引張り強さのように、織布の機械的性質を与える織布の層の構造には損傷を与えずに、織布の追加の層の外観を変えて、織布に着古した感じを与えることができる。従って、異なる製造業者によって製造された衣料品が同じになることはなく、その結果、製品の商品の信頼性及び別の製品との差別化が向上するので、紡織及び染色産業、特にデニム紡織及び染色産業、並びにファッション産業に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0160】
1:織布
1a:基材層
1b:追加の層
2:縦糸ヤーン
3:第1横糸ヤーン
4:第2横糸ヤーン
5:前面
6:背面
7、7’:張出し部分
8、8’:谷形部分
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.縦糸ヤーン(2)、横糸ヤーン(3)、(4)、及び前面(5)並びに背面(6)を有する織布(1)を供給する工程と、
ii.工程iにおける前記織布(1)を、架橋酵素集合体(CLEAs)に接触させる工程とを含み、
前記工程iにおいて、前記縦糸ヤーン(2)及び/又は前記横糸ヤーン(3)、(4)は、天然繊維及び合成繊維の混合繊維を備え、少なくとも前記天然繊維は、染色されており、前記天然繊維はコットン繊維であり、
前記工程iiにおいて、前記染料は、前記天然繊維のみから除去され、前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、セルラーゼ架橋酵素凝集体(CLEAs)である、織布(1)又は衣料品を仕上げる方法。
【請求項2】
前記織布(1)の前記ヤーンは、少なくとも部分的にインディゴ染色された繊維を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記織布(1)の前記ヤーンは、少なくとも部分的にリング-染色された繊維を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~100μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~50μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~30μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、3.5~9.5の範囲のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、4.0~8.0の範囲のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、4.5~7.0の範囲のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、25℃~70℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、35℃~55℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、45℃~55℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、0.5U/mL~100U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、2U/mL~50U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、5U/mL~20U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、前記織布(1)を、前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む組成物であって、前記組成物中の前記架橋酵素集合体(CLEAs)の濃度が、1mg/g~100mg/gの範囲である前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む前記組成物と接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、前記織布(1)を、前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む組成物であって、前記組成物中の前記架橋酵素集合体(CLEAs)の濃度が、10mg/g~70mg/gの範囲である前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む前記組成物と接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、前記織布(1)を、前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む組成物であって、前記組成物中の前記架橋酵素集合体(CLEAs)の濃度が、15mg/g~50mg/gの範囲である前記架橋酵素集合体(CLEAs)を含む前記組成物と接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、10分~90分の範囲の時間接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、15分~50分の範囲の時間接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記織布(1)と前記架橋酵素集合体(CLEAs)を接触させる前記工程iiは、20分~30分の範囲の時間接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、磁気ナノ粒子と結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、一つ以上の添加剤に結合されており、前記添加剤は、炭化水素、プロテイン、ポリオール、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、少なくとも1個以上の磁気ナノ粒子、及び少なくとも一つの添加剤と結合されている、請求項4乃至9のいずれか1項に記載した方法。
【請求項25】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~100μmの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法におけるセルラーゼ架橋酵素凝集体(CLEAs)の使用。
【請求項26】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~50μmの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法におけるセルラーゼ架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項27】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)のサイズは、1μm~30μmの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法におけるセルラーゼ架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項28】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、0.5U/mL~100U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項25~27のいずれか1項に記載のセルラーゼ架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項29】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、2U/mL~50U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項25~27のいずれか1項に記載のセルラーゼ架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項30】
前記架橋酵素集合体(CLEAs)は、5U/mL~20U/mLの範囲の酵素活性を有している、請求項25~27のいずれか1項に記載のセルラーゼ架橋酵素集合体(CLEAs)の使用。
【請求項31】
縦糸ヤーン(2)、横糸ヤーン(3)、(4)、及び前面(5)並びに背面(6)を有する織布(1)であって、
前記縦糸ヤーン(2)、前記横糸ヤーン(3)、(4)は、天然繊維と合成繊維の混合繊維を含み、少なくとも前記天然繊維は、染色されており、前記天然繊維はコットン繊維であり、
前記織布は、セルラーゼ架橋酵素凝集体(CLEAs)を使用して部分的に脱色され、前記染料が前記天然繊維のみから除去されている織布。
【請求項32】
請求項31に記載の織布(1)を含む衣料品。
【請求項33】
織布(1)の仕上げ方法であって、
一緒に織られる縦糸(2)および横糸(3、4)を含み、前記糸の少なくとも一部が染色されている、織布(1)を提供する工程と、
前記織布(1)を架橋酵素集合体と接触させて、前記織布の糸の少なくとも一部から染料を少なくとも部分的に除去する工程を含み、
前記縦糸および/または前記横糸は、コットン繊維であり、
前記架橋酵素凝集体は、1μm~100μmの範囲内のサイズを有するセルラーゼ架橋酵素凝集体(CLEAs)である、織布の仕上げ方法。