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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107469
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】物品保管システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20230727BHJP
   B65G 1/14 20060101ALI20230727BHJP
   A47B 46/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B65G1/137 G
B65G1/14 K
A47B46/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008688
(22)【出願日】2022-01-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591225291
【氏名又は名称】双福鋼器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 博文
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆之
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
【Fターム(参考)】
3F022FF23
3F522BB33
3F522GG47
3F522KK02
3F522LL47
(57)【要約】
【課題】移動自在なラックを格納スペースに格納した状態で、簡単に施錠及び解錠ができる物品保管システムを提供する。
【解決手段】移動自在なラック(3)に物品(P)を積載した状態でラック格納スペース(SP)に格納して物品を保管する物品保管システム(1)であり、ラック(3)がラック格納スペース(SP)に格納されているときにラック(3)に設けられた金属板(18)を電磁吸着してラック(3)の移動を阻止するロック状態を形成する電磁ロック手段(21)と、電磁ロック手段(21)を制御する制御手段(30)とを備え、制御手段(30)は、予め定められた認証情報が入力されることに伴い、電磁ロック手段(21)に対する通電を遮断してラック(3)のロック状態を解除し、ラック(3)の移動を許容する構成とされている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を積載するラックをラック格納スペースに格納して物品を保管する物品保管システムであって、
前記ラックは、下面にキャスターを備え、前記ラック格納スペースから前記ラック格納スペースの外部へ移動させることが可能であり、
前記ラックが前記ラック格納スペースに格納されているときに前記ラックに設けられた金属板を電磁吸着して前記ラックの移動を阻止したロック状態とする電磁ロック手段と、
前記電磁ロック手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め定められた認証情報が入力されることに伴い、前記電磁ロック手段に対する通電を遮断して前記ラックのロック状態を解除し、前記ラックの移動を許容することを特徴とする物品保管システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ラックのロック状態を解除した後、所定時間経過後に前記電磁ロック手段に対する通電を再開することを特徴とする請求項1に記載の物品保管システム。
【請求項3】
前記ラック格納スペースには、複数のラックを並列状態に格納可能であり、
前記電磁ロック手段は、前記複数のラックのそれぞれに個別に設けられ、
前記制御手段は、前記複数のラックのロック状態を一括解除可能とするように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の物品保管システム。
【請求項4】
前記ラック格納スペースには、複数のラックを並列状態に格納可能であり、
前記電磁ロック手段は、前記複数のラックのそれぞれに個別に設けられ、
前記制御手段は、前記複数のラックのそれぞれに予め個別に設定された認証情報が入力されることに伴い、前記複数のラックのうちからロック解除対象となるラックを特定し、該特定したラックのロック状態を解除することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の物品保管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック格納スペースにキャスター付きラックを格納して物品を保管する物品保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などにおける物品の保管形態として、キャスター付きのラックに物品を積載した状態で保管することが行われている。物品を積載したラックは、例えばラック格納スペースに格納される。複数のラックが存在する場合、ラック格納スペースには、それら複数のラックが並べられた状態で格納される。物品を取り出すときには、ラック格納スペースからラックが引き出され、必要な物品が取り出される。その後、ラックは、再びラック格納スペースに格納される。
【0003】
近年、上記のような物品保管システムにおいて、物品の保管に際し、セキュリティーを向上させることが求められている。これを実現するため、ラック収納スペースに格納されたラックを施錠しておき、物品を取り出す際に解錠してラック収納スペースからラックを引き出せる構成とすることが考えられる。
【0004】
ところが、この場合、外部に鍵穴が配置されているので、不正者が鍵穴に針金等を挿入することにより解錠を試みるという問題がある。そこで、引き出しを備えた収納家具に関して、施錠用のロック機構を外部から見えないように家具本体に内装し、外部から磁石を近づけることにより解錠を可能としたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-165657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の引き出し用ロック機構は、磁石を近づけることによりロック片を移動可能とするため、構造の強度が脆弱であるから、大型で大重量のキャスター付きラックに実施することは不適切であり、しかも、磁石を所持していなければ施錠と解錠を行うことができず、利便性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、物品を積載したキャスター付きのラックを所定のラック格納スペースに格納した状態で、簡単に施錠及び解錠ができる物品保管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明が解決手段として採用したところは、物品(P)を積載するラック(3)をラック格納スペース(SP)に格納して物品を保管する物品保管システム(1)であって、前記ラック(3)は、下面にキャスター(11)を備え、前記ラック格納スペース(SP)から前記ラック格納スペース(SP)の外部へ移動させることが可能であり、前記ラック(3)が前記ラック格納スペース(SP)に格納されているときに前記ラック(3)に設けられた金属板(18)を電磁吸着して前記ラック(3)の移動を阻止したロック状態とする電磁ロック手段(21)と、前記電磁ロック手段(21)を制御する制御手段(30)と、を備え、前記制御手段(30)は、予め定められた認証情報が入力されることに伴い、前記電磁ロック手段(21)に対する通電を遮断して前記ラック(3)のロック状態を解除し、前記ラック(3)の移動を許容するように構成した点にある。
【0009】
好ましい実施形態では、前記制御手段(30)は、前記ラック(3)のロック状態を解除した後、所定時間経過後に前記電磁ロック手段(21)に対する通電を再開する構成とすることである。
【0010】
更に好ましい実施形態では、前記ラック格納スペース(SP)には、複数のラック(3)を並列状態に格納可能であり、前記電磁ロック手段(21)は、前記複数のラック(3)のそれぞれに個別に設けられ、前記制御手段(30)は、前記複数のラック(3)のロック状態を一括解除可能に構成している。
【0011】
また、別の好ましい実施形態では、前記ラック格納スペース(SP)には、複数のラック(3)を並列状態に格納可能であり、前記電磁ロック手段(21)は、前記複数のラック(3)のそれぞれに個別に設けられ、前記制御手段(30)は、前記複数のラック(3)のそれぞれに予め個別に設定された認証情報が入力されることに伴い、前記複数のラック(3)のうちからロック解除対象となるラック(3)を特定し、該特定したラック(3)のロック状態を解除する構成としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め定められた認証情報が入力されることに伴い、電磁ロック手段(21)に対する通電によりラック(3)を所定の格納スペースにロック状態で施錠し、通電を遮断することによりラック(3)のロック状態を解除し、ラック(3)の移動を許容する構成であるため、物品を積載したキャスター付きのラックを所定のラック格納スペースに格納した状態で、簡単に施錠及び解錠を行うことができる物品保管システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】物品保管システムを前方側斜め上方から視た斜視図である。
図2】物品保管システムを後方側斜め上方から視た斜視図である。
図3】ラックの構成例を示す図である。
図4】制御ボックスの内部構成を示すブロック図である。
図5】ラック情報の一例を示す図である。
図6】制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】ラック格納スペースから中央のラックが引き出された状態を示す図である。
図8】自走式の移動手段を備えたラックによって構成される物品保管システムを例示する斜視図である。
図9】自走式の移動手段を備えたラックを前方側から視た図である。
図10】自走式の移動手段を備えたラックを後方側から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0015】
図1及び図2は、本発明の一実施形態である物品保管システム1を示す斜視図であり、図1は物品保管システム1を前方側斜め上方から視た図を、図2は物品保管システム1を後方側斜め上方から視た図を示している。この物品保管システム1は、ラック格納庫2と、そのラック格納庫2に格納される複数のラック3とを備えている。ラック格納庫2は、左右の壁部2a,2bと上部の天井部2cとによって囲まれた領域の内側に複数のラック3を格納するためのラック格納スペースSPを形成している。図1及び図2では、天井部2cの下方に棚2dが設けられており、その棚2dの下方空間がラック格納スペースSPとして利用される場合を例示しているが、棚2dが省略された構成であっても構わない。
【0016】
ラック格納庫2は、ラック格納スペースSPに複数のラック3を並列させた状態で格納する。すなわち、ラック格納スペースSPの左右方向の寸法は、複数のラック3を並列させた状態で格納可能な寸法に形成される。図1及び図2では、ラック格納スペースSPに、ラック3a,3b,3c,3d,3eの5つのラック3を格納可能なラック格納庫2を例示している。そのため、ラック格納スペースSPの左右方向の寸法は、5つのラック3を格納可能な寸法に形成される。尚、ラック格納スペースSPに格納されるラック3の数は5つに限られるものではなく、1つであっても良いし、2以上の任意の数であっても良い。尚、以下においては、複数のラック3a,3b,3c,3d,3eを区別しないときにはそれらを総称して「ラック3」と称す。
【0017】
図3は、ラック3の構成例を示す図である。図3では、ラック3の後方側斜め上方から視た図を示している。ラック3は、平面視矩形状のベース10と、ベース10の下面の四隅に設けられるキャスター11と、ベース10の上面の四隅から立設する4本の支柱12と、4本の支柱12によって所定高さ位置に支持される複数の荷受け棚13と、ラック3の前面、後面、上面及び左右側面の一方の側面を覆うパネル部材14とを備えている。ベース10は、ラック3を支持する基台である。キャスター11は、ベース10の下面に取り付けられ、ラック3を少なくとも前後方向に移動可能としている。ラック3には、それぞれ異なる高さ位置に複数の荷受け棚13が設けられており、それら荷受け棚13とベース10の上に物品Pを積載して保管することができる。また、ラック3は、ベース10の後方側の端面10aに、強磁性体の金属板18が設けられる。更にラック3は、前面側のパネル部材14に、ラック3の引き込み操作及び押し込み操作を行う際に作業者が握るハンドル部15を備えている。
【0018】
このようなラック3は、例えば右側面が開放されており、他の側面(前面、後面及び左側面)がパネル部材14によって閉塞されている。そのため、ラック3に積載された物品Pを取り出したり、或いは、ラック3に物品Pを積載したりする際には、ラック3の右側面から物品Pの取り出しや積載を行うことになる。ただし、ラック3は、これに限られず、左側面のみが開放された構成であっても良いし、左右両側面が開放された構成であっても構わない。
【0019】
図1及び図2に示すように、複数のラック3は、ラック格納庫2のラック格納スペースSPにおいて左右方向に近接させた状態に並べて格納される。つまり、複数のラック3がラック格納スペースSPに格納された状態のときには、互いに隣り合うラック3,3の左右方向の間隔が狭くなる。そのため、ラック3がラック格納スペースSPに格納された状態では、隣のラック3に遮られているので、そのままではラック3に積載されている物品Pを取り出したり、或いは、ラック3に物品Pを積載したりすることができない。したがって、複数のラック3のそれぞれに積載されている物品Pの取り出しなどを行う際には、ラック3をラック格納スペースSPから前方に引き出してラック格納スペースSPの外部へ移動させることが必要となる。
【0020】
このように本実施形態の物品保管システム1は、物品Pを積載したラック3をラック格納スペースSPに格納することで物品Pを保管しておくシステムであり、ラック格納スペースSPに格納されたラック3を前方に引き出してラック格納スペースSPの外部へ移動させることにより、物品Pをラック3に積載したり、ラック3に積載されている物品Pを取り出したりすることが可能な構成である。
【0021】
そこで、図2に示すようにラック格納庫2の後方側には、電磁ロック手段21が設けられている。電磁ロック手段21は、例えば鉄芯に導電ワイヤーを多数回巻き付けた電磁石を備えており、導電ワイヤーに電流が流れることにより周囲に強力な磁場を形成する。ラック格納庫2の後方側には、複数の電磁ロック手段21が左右方向に等間隔で設置される。これら複数の電磁ロック手段21は、ラック格納スペースSPに格納される複数のラック3のそれぞれの格納位置に対応する位置に設けられる。電磁ロック手段21は、例えば床面に固定される支持部材22によって各ラック3のベース10と同じ高さ位置に保持される。そして、電磁ロック手段21は、ラック格納スペースSPに格納されたラック3のベース10の後方側の端面10aに設けられた金属板18を電磁吸着し、ラック3がラック格納スペースSPの前方に移動することを阻止する。すなわち、電磁ロック手段21は、ラック格納スペースSPに格納されたラック3を電磁ロックによってラック格納スペースSPから引き出されることを防止する。
【0022】
上記のような電磁ロック手段21は、導電ワイヤーに対する通電が行われると電磁ロック機能がオンとなり、導電ワイヤーに対する通電が遮断されると電磁ロック機能がオフとなる。そのため、ラック格納スペースSPにラック3が格納されているときに電磁ロック手段21の電磁ロック機能をオフにすることにより、ラック3をラック格納スペースSPの外部へ引き出すことが可能となる。そこで、本実施形態の物品保管システム1は、電磁ロック手段21による電磁ロック機能のオンオフ切り替えを行うために、操作入力部4と、制御ボックス5とを備えている。
【0023】
操作入力部4は、例えばラック格納庫2の壁部2aの前面に設けられる。この操作入力部4は、制御ボックス5と有線又は無線による通信が可能であり、作業者によって入力される情報を制御ボックス5へ送信することができる。
【0024】
制御ボックス5は、例えばラック格納庫2の壁部2aの側面に設けられる。制御ボックス5には、ラック格納庫2の後方側に設けられた複数の電磁ロック手段21に繋がるケーブル9が接続される。制御ボックス5は、そのケーブル9を介して複数の電磁ロック手段21のそれぞれに電流を流すことで電磁ロック機能をオンにし、ラック3の移動を阻止したロック状態とすることができる。また、制御ボックス5は、操作入力部4から入力する情報に基づき、電磁ロック手段21の電磁ロック機能をオフにし、ラック3のロック状態を解除することもできる。
【0025】
図4は、制御ボックス5の内部構成を示すブロック図である。制御ボックス5は、制御部30と、通信部31と、記憶部32とを備えている。
【0026】
制御部30は、複数の電磁ロック手段21の電磁ロック機能をオンオフ制御し、ラック格納スペースSPに格納されたラック3をロック状態としたり、ロック状態を解除したりする。つまり、制御部30は、ラック格納スペースSPに格納されたラック3を電気的に施錠又は解錠する制御を行う。例えば、制御部30は、複数のラック3がラック格納スペースSPに格納されている状態のときに、全ての電磁ロック手段21の電磁ロック機能をオンにしており、複数のラック3のそれぞれをロック状態としている。その後、操作入力部4から所定の入力情報が入力された場合に、制御部30は、ラック格納スペースSPに格納されているラック3のロック状態を解除し、ラック格納スペースSPの外部にラック3が移動することを許容する。このような制御部30は、例えばその内部に所定のプログラムに基づいて演算処理を実行するハードウェアプロセッサーが搭載されており、後述する処理手順に基づいた処理を実行する。
【0027】
通信部31は、操作入力部4と通信を行うためのものである。通信部31は、操作入力部4と有線通信又は無線通信を行うことにより、操作入力部4に入力された情報を取得する。例えば、操作入力部4は、テンキーなどのように0~9の数字を入力可能な複数の入力キー4aを備えている。この場合、操作入力部4は、作業者によって順次入力される数字をその入力順に配列した入力情報を通信部31へ送信する。そして通信部31は、操作入力部4から受信する入力情報を制御部30へ出力する。これにより、制御部30は、操作入力部4から得られる入力情報に基づいてラック3のロック状態を解除することができる。
【0028】
記憶部32は、例えば不揮発性の半導体メモリーなどで構成される。記憶部32には、ラック情報33が予め記憶されている。ラック情報33は、ラック格納スペースSPに格納された複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのそれぞれのロック状態を解除するための認証情報が登録された情報である。
【0029】
図5は、ラック情報33の一例を示す図である。図5(a)に示すラック情報33と、図5(b)に示すラック情報33とはそれぞれ異なる情報を示しており、いずれのラック情報33を採用しても構わない。
【0030】
図5(a)に示すラック情報33は、複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのそれぞれに対して個別に認証情報が登録された例を示している。例えば、ラックNo「1」はラック3aに、ラックNo「2」はラック3bに、ラックNo「3」はラック3cに、ラックNo「4」はラック3dに、ラックNo「5」はラック3eに、それぞれ対応している。このように複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのそれぞれに対して個別に認証情報が登録されている場合、作業者は、操作入力部4に対してロック状態を解除したいラック3のラックNoと、そのラック3に予め登録されている認証情報とを続けて入力することにより、指定したラック3のロック状態を解除することができる。
【0031】
また、図5(b)に示すラック情報33は、複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのそれぞれに対して共通した1つの認証情報が登録された例を示している。このように複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのそれぞれに対して共通した1つの認証情報が登録されている場合、作業者は、操作入力部4に対して複数のラック3に共通する認証情報を入力することにより、全てのラック3のロック状態を一括解除することができる。ただし、この場合でも、作業者は、操作入力部4に対してロック状態を解除したいラック3のラックNoを入力することにより、指定したラック3のロック状態だけを解除することが可能である。
【0032】
上述したように、制御部30は、全てのラック3がラック格納スペースSPに格納されている状態において全ての電磁ロック手段21の電磁ロック機能をオンにしており、ラック格納スペースSPからラック3が外部へ引き出されることを防止している。その状態で、作業者によって操作入力部4に入力された入力情報を取得すると、制御部30は、記憶部32に記憶されているラック情報33を読み出し、入力情報に含まれる数値情報がラック情報33に登録されている認証情報に一致するか否かを照合する。その結果、数値情報が認証情報に一致した場合、制御部30は、ラック情報33において定められたラック3のロック状態を解除する。制御部30によってロック状態が解除されたラック3は、作業者がラック格納スペースSPから前方に引き出すことが可能であり、物品Pの取り出しや積載を行うことができるようになる。
【0033】
図6は、制御部30による処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、全ての電磁ロック手段21の電磁ロック機能がオンになっている状態のときに制御部30によって繰り返し実行される処理である。
【0034】
まず制御部30は、操作入力部4に入力された入力情報を取得したか否かを判断する(ステップS1)。入力情報を取得していない場合(ステップS1でNO)、制御部30による処理が終了する。入力情報を取得している場合(ステップS1でYES)、制御部30は、ラック情報33を読み出し(ステップS2)、入力情報に含まれる数値情報がラック情報33に登録されている認証情報に一致するか否かを照合する(ステップS3)。例えば、記憶部32に図5(a)に示すラック情報33が記憶されている場合、制御部30は、入力情報に含まれるラックNoを特定し、そのラックNoに登録されている認証情報と数値情報とを照合する。これに対し、記憶部32に図5(b)に示すラック情報33が記憶されている場合、制御部30は、入力情報に含まれる数値情報が複数のラック3に共通する認証情報に一致するか否かを照合するだけで良い。照合を行った結果、数値情報と認証情報とが一致しなかった場合(ステップS4でNO)、制御部30による処理は終了する。この場合、ラック3のロック状態は解除されず、ラック3をラック格納スペースSPの外部へ引き出すことができない。
【0035】
また、照合を行った結果、数値情報と認証情報とが一致した場合(ステップS4でYES)、制御部30は、ロックの解除対象となるラック3を特定する(ステップS5)。例えば、記憶部32に図5(a)に示すラック情報33が記憶されている場合、制御部30は、入力情報に含まれるラックNoに基づいて解除対象となるラック3を特定する。これに対し、記憶部32に図5(b)に示すラック情報33が記憶されている場合、制御部30は、全てのラック3を解除対象として特定する。そして、制御部30は、解除対象として特定したラック3の金属板18を電磁吸着している電磁ロック手段21に対する通電を遮断し、ラック3のロック状態を解除する(ステップS6)。これにより、作業者は、ロックが解除されたラック3をラック格納スペースSPから前方に引き出すことが可能となる。
【0036】
制御部30は、ラック3のロック状態を解除することに伴い、時間のカウント動作を開始する(ステップS7)。そして制御部30は、カウント開始後に所定時間が経過するまで待機する(ステップS8でNO)。この所定時間は、例えば数秒から数十秒程度の時間として予め設定される。所定時間が経過すると、制御部30は、ロック状態を解除した電磁ロック手段21に対する通電を再開することにより、電磁ロック手段21を再びロック状態に戻す(ステップS9)。このとき、制御部30は、複数の電磁ロック手段21を一括してロック状態に戻す処理を行うようにしても良い。以上で、制御部30による処理が終了する。
【0037】
このように制御部30は、物品Pが積載されたラック3がラック格納スペースSPに格納されている状態において、予め定められた認証情報が作業者によって入力されることに伴い、電磁ロック手段21に対する通電を遮断してラック3のロック状態を解除し、ラック3の移動を許容する。言い換えると、制御部30は、予め定められた認証情報が入力されない限り、ラック3のロック状態を解除することはない。それ故、認証情報を知らない人物によってラック3がラック格納スペースSPから引き出されてしまうことを未然に防止することが可能であり、セキュリティーの高い物品保管システム1を実現することができる。
【0038】
また、作業者は、ロックを解除するための認証情報を記憶しておけば、操作入力部4にその認証情報を入力することでラック3のロック状態を解除することができる。そのため、通常の錠手段において施錠及び解錠のために必要とされる鍵等を持ち運ぶ必要がなく、簡単にラック3のロック状態を解除できるという点で利便性が高くなっている。
【0039】
図7は、ラック3cのロック状態が解除され、ラック格納スペースSPから引き出された状態を示す図である。ラック3cのロック状態が解除されると、ラック3cのベース10に設けられた金属板18が電磁ロック手段21に電磁吸着されていない状態となる。そのため、図7に示すように、ラック3cは、ラック格納スペースSPの前方(矢印Fで示す方向)に引き出すことが可能である。これにより、作業者は、ラック3cに積載された物品Pを取り出すことが可能であり、またラック3cに物品Pを積載することも可能である。
【0040】
また、制御部30は、電磁ロック手段21によるロック状態を解除した後、所定時間が経過すると、再び電磁ロック手段21をロック状態へと戻す。これにより、電磁石の導電ワイヤーに電流が流れ電磁ロック手段21の周囲に強力な磁場が形成されるが、ラック3の移動により金属板18が遠く離れているので、物品Pの積み込み作業及び積み降ろし作業に支障を生じることはない。
そして、作業者は、ラック3に対する作業を終えた後、ラック3を元の格納位置へ戻すと、ベース10の後方側の端面10aに設けられた金属板18が電磁ロック手段21によって既に形成されている強力な磁場によって電磁ロック手段21に電磁吸着される。これにより、ラック3は、所定の格納スペースSPに向けて移動するだけで、電磁ロック手段21により自動的にロック状態とされるので、通常の錠手段における鍵の掛け忘れ等を生じるおそれはない。
【0041】
更に、制御部30は、上述したように、ラック格納スペースSPに格納される複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのロック状態を個別に解除するように構成しても良いし、また複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのロック状態を一括解除するように構成しても良い。複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのロック状態を個別に解除する構成の場合、より一層高いレベルのセキュリティーを実現することができるという利点がある。また、複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのロック状態を一括解除する構成の場合には、1つの共通した認証情報で複数のラック3a,3b,3c,3d,3eのロック状態を一括解除できるという点で利便性がより一層高くなる。
【0042】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0043】
例えば、全てのラック3a~3eのロック状態を一斉に解除する手段は、全てのラック3a~3eの電磁ロック手段21に対する電流の供給を一斉に停止させるON/OFF式のスイッチを制御ボックス5に設けることにより構成しても良い。
【0044】
ところで、上記実施形態では、作業者が手動操作でラック3をラック格納スペースSPから引き出す例を説明した。しかし、ラック3は、作業者による手動操作で移動するものに限られない。例えば、ラック3は、電動モーターを備えた自走式の移動手段を備えたものであっても構わない。以下、これについて説明する。
【0045】
図8は、自走式の移動手段を備えたラック3によって構成される物品保管システム1を例示する斜視図である。図9は、自走式の移動手段50を備えたラック3を前方側から視た図である。図10は、そのラック3を後方側から視た斜視図である。この物品保管システム1は、ラック3が格納される床面上に設置されるレール45を備えている。レール45は、ラック3のベース10の下面に取り付けられた左右のキャスター11,11の間の中央位置に設けられ、床面から垂直に立設している。このレール45は、ベース10の下方を前後方向に沿って延設され、ラック3の移動方向を規定する。一方、ラック3のベース10には、図9に示すように、レール45に沿って移動する自走式の移動手段50が設けられている。
【0046】
移動手段50は、ベース10に取り付けられた電動モーター51と、電動モーター51の駆動によって回転する回転軸52と、回転軸52の先端に取り付けられレール45の一方の側面に接合する駆動ローラー53と、ベース10の下面に取り付けられた保持部材55と、保持部材55によって軸支されレール45の他方の側面に接合する従動ローラー54とを備えている。駆動ローラー53と従動ローラー54とは所定の押圧力でレール45の左右両側面を挟み込んだ状態に設置される。
【0047】
また、ラック3の前面側には、操作部40が設けられている。操作部40は、ラック3をラック格納スペースSPの前方に移動させるための前方移動ボタン41と、ラック3をラック格納スペースSPの格納位置へ移動させるための後方移動ボタン42とを備えている。前方移動ボタン41及び後方移動ボタン42は、図示を省略する駆動回路に接続されており、その駆動回路を介して電動モーター51を正逆いずれかの方向に回転駆動するように構成されている。
【0048】
したがって、作業者は、ラック3のロック状態を解除した後、前方移動ボタン41を操作すると、電動モーター51が駆動し、駆動ローラー53がレール45に接合した状態で所定方向に回転する。これにより、ラック3は、ラック格納スペースSPの格納位置からレール45に沿って前方に自走する。また、作業者は、ラック3に対する作業を終えた後、後方移動ボタン42を操作すると、電動モーター51が駆動し、駆動ローラー53がレール45に接合した状態で逆方向に回転する。これにより、ラック3は、レール45に沿って後方に自走し、ラック格納スペースSPの格納位置へと戻る。このように物品保管システム1に設置されるラック3は、自走式の移動手段50を備えたものであっても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 物品保管システム
2 ラック格納庫
2a 壁部
2b 壁部
2c 天井部
2d 棚
3(3a,3b,3c,3d,3e) ラック
4 操作入力部
4a 入力キー
5 制御ボックス
9 ケーブル
10 ベース
10a 端面
11 キャスター
12 支柱
13 荷受け棚
14 パネル部材
15 ハンドル部
18 金属板
21 電磁ロック手段
22 支持部材
30 制御部(制御手段)
31 通信部
32 記憶部
33 ラック情報
40 操作部
41 前方移動ボタン
42 後方移動ボタン
45 レール
50 移動手段
51 電動モーター
52 回転軸
53 駆動ローラー
54 従動ローラー
55 保持部材
P 物品
SP ラック格納スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10