(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107480
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/30 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
G01B7/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008709
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 利彦
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA36
2F063BA08
2F063BB03
2F063BC06
2F063DA05
2F063DB07
2F063DC08
2F063DD03
2F063GA52
(57)【要約】
【課題】組み立て作業の効率を向上させることができるセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置10は、回転軸11に対して一体回転可能に設けられる主動歯車15、ならびに主動歯車15と噛み合う第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bを有している。センサ装置10は、第1の従動歯車30Aの回転に応じた電気信号を生成する第1のセンサと、第2の従動歯車30Bの回転に応じた電気信号を生成する第2のセンサと、を有している。センサ装置10は、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bを、回転可能かつ主動歯車15の径方向に移動可能に支持するホルダを有している。ホルダには、第1の従動歯車30Aを主動歯車15へ向けて付勢する第1のばね部26、および第2の従動歯車30Bを主動歯車15へ向けて付勢する第2のばね部27が一体的に設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられる主動歯車と、
前記主動歯車と噛み合うように構成される少なくとも1つの従動歯車と、
前記従動歯車の回転に応じた電気信号を生成するように構成される少なくとも1つのセンサと、
前記従動歯車を、回転可能かつ前記主動歯車の径方向に移動可能に支持するように構成されるホルダと、を有し、
前記ホルダには、前記従動歯車を前記主動歯車へ向けて付勢するばね部が一体的に設けられているセンサ装置。
【請求項2】
前記ホルダは、樹脂成形品である請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記主動歯車の径方向に延びる支持孔を有し、
前記従動歯車は、前記主動歯車に噛合する歯車部と、前記ホルダの前記支持孔に挿入された状態で案内される軸部と、を有し、
前記ばね部は、前記支持孔に対して前記主動歯車とは反対側に位置するU字状の板ばねであって、
前記ばね部は、第1の腕部と、第2の腕部と、連結部とを有し、前記第1の腕部の第1の端部と前記第2の腕部の第1の端部とが、前記連結部を介して連結されることによりU字状に構成されており、
前記第1の腕部の第2の端部は、前記ホルダに連結されており、
前記第2の腕部の第2の端部は、自由端であって、前記軸部を前記主動歯車の径方向内側へ向けて押圧した状態に維持されている請求項1または請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
複数の前記従動歯車、前記従動歯車と同数の前記センサ、および前記従動歯車と同数の前記ばね部を有している請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記回転軸は、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトである請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のセンサ装置は、ステアリングホイールの操舵角を検出する。センサ装置は、操舵軸と一体的に回転する主動歯車と、主動歯車と噛み合う第1の従動歯車と、第1の従動歯車と噛み合う第2の従動歯車とを有している。センサ装置は、第1の従動歯車と第2の従動歯車との回転角に基づき、操舵軸の回転角を検出する。
【0003】
特許文献1のセンサ装置は、主動歯車を第1の従動歯車側に向けて付勢する付勢部材を有している。付勢部材は、コイルばね、あるいは板ばねである。主動歯車が第1の従動歯車側に向けて付勢されることにより、主動歯車と第1の従動歯車との間のバックラッシが抑制される。これにより、操舵軸の回転角の検出誤差が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のセンサ装置を組み立てる際、付勢部材をハウジングに組み込む作業が必要である。この組み込み作業は、手間である。センサ装置の組み立て作業の効率を向上させることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得るセンサ装置は、検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられる主動歯車と、前記主動歯車と噛み合うように構成される少なくとも1つの従動歯車と、前記従動歯車の回転に応じた電気信号を生成するように構成される少なくとも1つのセンサと、前記従動歯車を、回転可能かつ前記主動歯車の径方向に移動可能に支持するように構成されるホルダと、を有している。前記ホルダには、前記従動歯車を前記主動歯車へ向けて付勢するばね部が一体的に設けられている。
【0007】
この構成によれば、たとえば、ホルダとは別部材である金属製のばねを使用する場合と異なり、ばねをホルダに装着する作業が不要である。このため、センサ装置の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0008】
上記のセンサ装置において、前記ホルダは、樹脂成形品であってもよい。
この構成によれば、樹脂による一体形成によって、ばね部を有するホルダを簡単に製造することができる。
【0009】
上記のセンサ装置において、前記ホルダは、前記主動歯車の径方向に延びる支持孔を有していてもよい。前記従動歯車は、前記主動歯車に噛合する歯車部と、前記ホルダの前記支持孔に挿入された状態で案内される軸部と、を有していてもよい。前記ばね部は、前記支持孔に対して前記主動歯車とは反対側に位置するU字状の板ばねであってもよい。前記ばね部は、第1の腕部と、第2の腕部と、連結部とを有し、前記第1の腕部の第1の端部と前記第2の腕部の第1の端部とが、前記連結部を介して連結されることによりU字状に構成されていてもよい。前記第1の腕部の第2の端部は、前記ホルダに連結されていてもよい。前記第2の腕部の第2の端部は、自由端であって、前記軸部を前記主動歯車の径方向内側へ向けて押圧した状態に維持されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、第2の腕部の第2の端部に、第1の腕部に向かう方向の荷重が作用するとき、U字状のばね部は、全体的に収縮することにより、弾性エネルギーを蓄えることができる。この弾性エネルギーを利用して、従動歯車の軸部を主動歯車の径方向内側へ向けて押圧することができる。また、ばね部の各部の寸法、あるいは各部の形状を調節することにより、ばね部のばね定数を調節することができる。
【0011】
上記のセンサ装置において、複数の前記従動歯車、前記従動歯車と同数の前記センサ、および前記従動歯車と同数の前記ばね部を有していてもよい。
この構成においても、ばねをホルダに装着する作業が不要であるため、センサ装置の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0012】
上記のセンサ装置において、前記回転軸は、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトであってもよい。
上記のセンサ装置は、車両用途に好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセンサ装置によれば、組み立て作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】センサ装置の一実施の形態を軸方向に切断した断面図である。
【
図3】
図1の部分組立品を構成するホルダの平面図である。
【
図4】(a),(b)は、
図1の部分組立品の斜視図である。
【
図6】
図1のVI-VI線に沿って切断した断面図である。
【
図7】センサ装置の変形例におけるホルダの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、センサ装置の一実施の形態を説明する。
<センサ装置の全体構成>
図1に示すように、センサ装置10は、検出対象である回転軸11に設けられる。回転軸11は、たとえばピニオンシャフトである。ピニオンシャフトは、車両の操舵装置を構成するラックアンドピニオン機構の構成部品である。ピニオンシャフトは、ステアリングシャフトを介して、ステアリングホイールに連結される。
【0016】
センサ装置10は、回転軸11の回転角を検出する。センサ装置10は、センサハウジング12およびカバー13を有している。
センサハウジング12は、樹脂成形品である。センサハウジング12は、挿通孔12A、第1の収容室12B、および第2の収容室12Cを有している。挿通孔12A、第1の収容室12B、および第2の収容室12Cは、互いに連通している。挿通孔12Aの内径は、回転軸11の外径よりも若干大きい。挿通孔12Aと第1の収容室12Bとは、同一の軸線O上に位置している。回転軸11は、挿通孔12Aおよび第1の収容室12Bを回転可能に貫通する。第2の収容室12Cは、第1の収容室12Bに対して、回転軸11の径方向外側に位置している。第2の収容室12Cは、回転軸11の径方向外側に開口する開口部12Dを有している。開口部12Dは、カバー13によって塞がれる。カバー13は、合成樹脂製である。
【0017】
なお、センサハウジング12は、車両のギヤハウジング14の嵌合孔14Aに取り付けられる。ギヤハウジング14は、ラックアンドピニオン機構を構成する転舵シャフトを収容する。転舵シャフトは、車両の転舵輪を転舵させるためのものである。
【0018】
センサ装置10は、主動歯車15を有している。主動歯車15は、第1の収容室12Bに収容されている。回転軸11は、主動歯車15を軸方向に貫通している。主動歯車15は、回転軸11に対して一体回転可能に取り付けられている。主動歯車15は、樹脂成形品であってもよい。
【0019】
センサ装置10は、基板16を有している。基板16は、第2の収容室12Cに収容されている。基板16は、2つのセンサ17を有している。ただし、
図1では1つのセンサ17のみが示されている。センサ17は、たとえば磁気抵抗効果素子(MR素子)を使用した磁気センサである。センサ17は、第2の収容室12Cの内端面とは反対側の基板16の面に設けられている。基板16は、配線を介して、外部機器に電気的に接続される。外部機器は、たとえば操舵装置の制御装置である。
【0020】
センサ装置10は、部分組立品18を有している。部分組立品18は、回転軸11の回転角を検出するために必要とされる部品の一部を、後述するホルダ20に取り付けることにより、一体に扱えるようにしたものである。部分組立品18は、第2の収容室12Cに収容されている。部分組立品18は、基板16に重なるように設けられている。
【0021】
<部分組立品>
つぎに、部分組立品18の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、部分組立品18は、ホルダ20、第1の従動歯車30A、第2の従動歯車30B、およびギヤストッパ40を有している。
【0022】
ホルダ20は、樹脂成形品である。すなわち、ホルダ20は、合成樹脂材料により一体成形されている。ホルダ20は、全体として、矩形の板状である。ホルダ20は、第1の支持孔21および第2の支持孔22を有している。第1の支持孔21および第2の支持孔22は、ホルダ20の長辺方向に並んでいる。第1の支持孔21および第2の支持孔22は、いわゆる長孔であって、ホルダ20の厚み方向に貫通している。第1の支持孔21および第2の支持孔22は、センサ装置10が組み立てられた状態において、主動歯車15の径方向に延びるように、かつ主動歯車15から離れるにつれて互いに離隔するように設けられている。
【0023】
ホルダ20は、位置決め突部23を有している。位置決め突部23は、たとえば円柱状である。ホルダ20は、その厚み方向において、互いに反対側に位置する第1の面および第2の面を有している。位置決め突部23は、ホルダ20の第1の面(
図2中の上面)に設けられている。位置決め突部23は、ホルダ20の長辺方向において、第1の支持孔21と第2の支持孔22との間に位置している。
【0024】
図3に示すように、ホルダ20は、第1の逃げ孔24および第2の逃げ孔25を有している。第1の逃げ孔24および第2の逃げ孔25は、ホルダ20の長辺方向に並んでいる。第1の逃げ孔24および第2の逃げ孔25は、ホルダ20の厚み方向に貫通している。第1の逃げ孔24は、第1の支持孔21に対応している。第1の逃げ孔24は、第1の支持孔21に対して、主動歯車15とは反対側に位置している。第1の逃げ孔24は、第1の支持孔21につながっている。第2の逃げ孔25は、第2の支持孔22に対応している。第2の逃げ孔25は、第2の支持孔22に対して、主動歯車15とは反対側に位置している。第2の逃げ孔25は、第2の支持孔22につながっている。
【0025】
ホルダ20は、第1のばね部26および第2のばね部27を有している。第1のばね部26および第2のばね部27は、ホルダ20の第1の面に直交する方向からみて、U字状の板ばねである。第1のばね部26は、第1の逃げ孔24の内部に位置している。第2のばね部27は、第2の逃げ孔25の内部に位置している。第1のばね部26のU字形の開口部と、第2のばね部27のU字形の開口部とは、ホルダ20の長辺方向に互いに反対側を向いている。
【0026】
第1のばね部26は、第1の腕部26A、第2の腕部26B、および連結部26Cを有している。第1の腕部26Aの第1の端部と、第2の腕部26Bの第1の端部とは、連結部26Cを介して連結されている。第1の腕部26Aは、ホルダ20の第1の短辺から第2の短辺へ向かうにつれて第1の支持孔21に近づくように傾斜している。第1の腕部26Aの第2の端部は、第1の支持孔21とは反対側の第1の逃げ孔24の内周面の一部に連結されている。連結部26Cは、ホルダ20の短辺方向に延びている。第2の腕部26Bは、ホルダ20の長辺方向に延びている。第2の腕部26Bの第2の端部は、自由端であって、第1の支持孔21に面している。第1の腕部26Aの外面と第1の逃げ孔24の内面との間には、隙間が形成されている。ただし、第1の腕部26Aとホルダ20との連結部分を除く。第1のばね部26は、ホルダ20の短辺方向に撓むことにより、弾性エネルギーを蓄えることが可能である。
【0027】
第2のばね部27は、第1のばね部26と同様の構成を有している。第2のばね部27は、第1の腕部27A、第2の腕部27B、および連結部27Cを有している。第1の腕部27Aの第1の端部と、第2の腕部27Bの第1の端部とは、連結部27Cを介して連結されている。第1の腕部27Aは、ホルダ20の第2の短辺から第1の短辺へ向かうにつれて第2の支持孔22に近づくように傾斜している。第1の腕部27Aの第2の端部は、第2の支持孔22とは反対側の第2の逃げ孔25の内周面の一部に連結されている。連結部27Cは、ホルダ20の短辺方向に延びている。第2の腕部27Bは、ホルダ20の長辺方向に延びている。第2の腕部27Bの第2の端部は、自由端であって、第2の支持孔22に面している。第1の腕部27Aの外面と第2の逃げ孔25の内面との間には、隙間が形成されている。ただし、第1の腕部27Aとホルダ20との連結部分を除く。第2のばね部27は、ホルダ20の短辺方向に撓むことにより、弾性エネルギーを蓄えることが可能である。
【0028】
図2に示すように、第1の従動歯車30Aは、歯車部31A、軸部32A、および永久磁石33Aを有している。歯車部31Aは、円板状である。軸部32Aは、円柱状である。歯車部31Aおよび軸部32Aは、合成樹脂材料により一体成形される。軸部32Aの外径は、歯車部31Aの外径よりも小さい。歯車部31Aと軸部32Aとは、同一の軸線上に位置している。軸部32Aは、歯車部31Bに連結された第1の端部と、第1の端部と反対側の第2の端部と、を有している。永久磁石33Aは、円板状である。永久磁石33Aは、軸部32Aの第2の端部に埋め込まれている。軸部32Aの第2の端部は、ホルダ20の第1の支持孔21に挿入される。歯車部31Aは、軸部32Bが第1の支持孔21に挿入された状態において、ホルダ20の第1の面(
図2中の上面)に対して摺動回転可能に支持される。
【0029】
第2の従動歯車30Bは、基本的には、第1の従動歯車30Aと同様の構成を有している。第2の従動歯車30Bは、歯車部31B、軸部32B、および永久磁石33Bを有している。ただし、歯車部31Bの歯数は、第1の従動歯車30Aの歯車部31Aの歯数と異なる。軸部32Bの第2の端部は、ホルダ20の第2の支持孔22に挿入される。歯車部31Bは、軸部32Bが第2の支持孔22に挿入された状態において、ホルダ20の第1の面(
図4中の上面)に対して摺動回転可能に支持される。
【0030】
ギヤストッパ40は、ホルダ20に装着される。ギヤストッパ40は、合成樹脂製である。ギヤストッパ40は、押さえ部41、および4つの係合爪42,43,44,45を有している。
【0031】
押さえ部41は、矩形の板状である。押さえ部41は、ホルダ20に装着された第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bを覆う部分である。押さえ部41は、位置決め孔41Aを有している。位置決め孔41Aは、押さえ部41の中央付近に位置している。位置決め孔41Aは、ホルダ20の位置決め突部23に対応する。位置決め孔41Aは、押さえ部41を厚み方向に貫通している。
【0032】
各係合爪42~45は、押さえ部41の四隅に設けられている。各係合爪42~45は、押さえ部41に対して直交する方向に延びている。各係合爪42~45は、係合突部42A,43A,44A,45Aを有している。各係合突部42A,43A,44A,45Aは、各係合爪42~45の先端に設けられている。先端は、押さえ部41に対して反対側の係合爪42~45の端部である。各係合突部42A~45Aは、ホルダ20の第2の面(
図2中の下面)の四隅に係合可能である。
【0033】
<部分組立品の組立手順>
つぎに、部分組立品18の組み立て手順を説明する。
部分組立品18を組み立てる際には、まず、第1の従動歯車30Aの軸部32Aをホルダ20の第1の支持孔21に挿入する。また、第2の従動歯車30Bの軸部32Bをホルダ20の第2の支持孔22に挿入する。これにより、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bは、ホルダ20に対して回転可能に支持される。この後、ホルダ20に対してギヤストッパ40をホルダ20の第1の面側(
図2中の上側)から取り付ける。
【0034】
図4(a),(b)に示すように、ギヤストッパ40の押さえ部41が第1の従動歯車30Aの歯車部31Aおよび第2の従動歯車30Bの歯車部31Bに接触するタイミングで、各係合爪42~45の各係合突部42A,43A,44A,45Aがホルダ20の第2の面の四隅に係合する。これにより、ホルダ20から外れる方向へ向けたギヤストッパ40の移動が制限される。第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bは、ホルダ20によって、回転可能に保持される。
【0035】
以上で、部分組立品18の組立作業が完了となる。
<部分組立品の組立状態>
図4(a),(b)に示すように、部分組立品18が組み立てられた状態において、第1の従動歯車30Aの歯車部31Aおよび第2の従動歯車30Bの歯車部31Bの大部分は、押さえ部41によって覆われた状態に維持される。歯車部31A,31Bの一部分は、ホルダ20および押さえ部41の側縁部から若干はみ出している。側縁部は、ホルダ20および押さえ部41の短辺方向に対して交わる方向に延びる側縁部である。第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bのホルダ20から離脱する方向(
図3中の上方)への移動は、歯車部31A,31Bがギヤストッパ40の押さえ部41に当接することにより規制される。歯車部31A,31Bは、ホルダ20および押さえ部41に対して摺動回転可能である。
【0036】
ホルダ20の位置決め突部23は、押さえ部41の位置決め孔41Aに挿入された状態に維持される。これにより、ギヤストッパ40は、ホルダ20に対して、位置決めされる。
【0037】
図5に示すように、部分組立品18が組み立てられた状態において、第1の従動歯車30Aは、第1の支持孔21に沿って移動可能である。すなわち、第1の従動歯車30Aの軸部32Aは、第1の支持孔21に案内される。第1の従動歯車30Aは、第1の支持孔21の第1の端部と第2の端部との間を移動する。第1の端部は、第1の支持孔21の主動歯車15に近い側の端部である。第2の端部は、第1の支持孔21の主動歯車15から遠い側の端部である。
【0038】
部分組立品18が組み立てられた状態において、第2の従動歯車30Bは、第2の支持孔22に沿って移動可能である。すなわち、第2の従動歯車30Bの軸部32Bは、第2の支持孔22に案内される。第2の従動歯車30Bは、第2の支持孔22の第1の端部と第2の端部との間を移動する。第1の端部は、第2の支持孔22の主動歯車15に近い側の端部である。第2の端部は、第2の支持孔22の主動歯車15から遠い側の端部である。
【0039】
部分組立品18が組み立てられた状態において、第1のばね部26の第2の腕部26Bは、主動歯車15とは反対側の軸部32Aの部位に係合している。第1の従動歯車30Aは、第1のばね部26の弾性力によって、第1の支持孔21の第1の端部に向けて常に付勢される。第1の従動歯車30Aの第1の支持孔21の第1の端部に向けた移動は、軸部32Aが第1の支持孔21の第1の端部に係合することにより規制される。
【0040】
部分組立品18が組み立てられた状態において、第2のばね部27の第2の腕部27Bは、主動歯車15とは反対側の軸部32Bの部位に係合している。第2の従動歯車30Bは、第2のばね部27の弾性力によって、第2の支持孔22の第1の端部に向けて常に付勢される。第2の従動歯車30Bの第2の支持孔22の第1の端部に向けた移動は、軸部32Bが第2の支持孔22の第1の端部に係合することにより規制される。
【0041】
<センサ装置の組み立て手順>
つぎに、センサ装置10の組み立て手順を説明する。部分組立品18は、予め組み立てられている。また、回転軸11には主動歯車15が取り付けられている。また、カバー13は、センサハウジング12に装着されていない。
【0042】
図1に示すように、センサ装置10を組み立てる際には、まず、センサハウジング12の開口部12Dを介して、基板16を第2の収容室12Cの内部に取り付ける。2つのセンサ17は、第2の収容室12Cの内端面と反対側(
図2中の上側)を向いている。基板16は、第2の収容室12Cの内部に設けられる位置決め構造によって、定められた取り付け位置に固定された状態に維持される。
【0043】
つぎに、部分組立品18を、センサハウジング12の開口部12Dを介して、第2の収容室12Cの内部に装着する。歯車部31A,31Bが露出する部分組立品18の部分は、センサハウジング12の第1の収容室12Bへ向いている。部分組立品18は、基板16に重ねられるかたちで第2の収容室12Cの内部に取り付けられる。部分組立品18は、第2の収容室12Cの内部に設けられる位置決め構造によって、定められた取り付け位置に固定された状態に維持される。
【0044】
つぎに、センサハウジング12の開口部12Dをカバー13によって閉塞する。カバー13は、たとえばレーザ溶着などにより、センサハウジング12に固定される。
この後、センサハウジング12を回転軸11に取り付ける。回転軸11は、センサハウジング12の第1の収容室12Bを介して、挿通孔12Aに挿入される。これに伴い、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bは、回転軸11の軸線Oに沿った方向において、主動歯車15に徐々に近接する。
【0045】
やがて、センサハウジング12の端部がギヤハウジング14の嵌合孔14Aに嵌合するとともに、挿通孔12Aと反対側のセンサハウジング12の端部の周縁に設けられた段差部14Bがギヤハウジング14の嵌合孔14Aの周縁部分に当接する。このタイミングで、第1の従動歯車30Aの歯と主動歯車15の歯とが互いに噛み合うとともに、第2の従動歯車30Bの歯と主動歯車15の歯とが互いに噛み合う。
【0046】
なお、主動歯車15または従動歯車(30A,30B)の回転位置によっては、従動歯車(30A,30B)の歯が、回転軸11の軸方向において、主動歯車15の歯に干渉するおそれがある。この場合には、主動歯車15または従動歯車(30A,30B)の回転位置を調節すればよい。
【0047】
2つの従動歯車(30A,30B)の歯と主動歯車15の歯とが互いに噛み合った状態で、センサハウジング12の締付部にボルトを挿入し、そのボルトをギヤハウジング14に締め付ける。これにより、センサハウジング12がギヤハウジング14に固定される。
【0048】
以上で、センサ装置10の組み立て作業が完了となる。
<センサ装置の組立状態>
図6に示すように、センサ装置10が組み立てられた状態において、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bは、主動歯車15に噛合している。このため、主動歯車15の回転に連動して、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bは回転する。第1の従動歯車30Aの歯数と第2の従動歯車30Bの歯数とは互いに異なっている。したがって、主動歯車15の回転角に対する第1の従動歯車30Aの回転角と、主動歯車15の回転角に対する第2の従動歯車30Bの回転角とは、互いに異なる。
【0049】
センサ装置10が組み立てられた状態において、第1のばね部26の第2の腕部26Bの先端である第2の端部は、第1の従動歯車30Aの軸部32Aに当接するとともに、軸部32Aを主動歯車15の径方向内側へ向けて押圧している。これにより、第1の従動歯車30Aの歯車部31Aは、第1のばね部26の弾性力によって、主動歯車15に径方向内側に押し付けられた状態に維持される。このため、第1の従動歯車30Aの歯と主動歯車15の歯との間の隙間であるバックラッシは、より小さくなる。ただし、バックラッシは、第1の従動歯車30Aの歯車部31Aと主動歯車15との組付性が確保される程度に設定される。
【0050】
また、センサ装置10が組み立てられた状態において、第2のばね部27の第2の腕部27Bの先端である第2の端部は、第2の従動歯車30Bの軸部32Bに当接するとともに、軸部32Bを主動歯車15の径方向内側へ向けて押圧している。これにより、第2の従動歯車30Bの歯車部31Bは、第2のばね部27の弾性力によって、主動歯車15に径方向内側に押し付けられた状態に維持される。このため、第2の従動歯車30Bの歯と主動歯車15の歯との間の隙間であるバックラッシは、より小さくなる。ただし、バックラッシは、第2の従動歯車30Bの歯車部31Bと主動歯車15との組付性が確保される程度に設定される。
【0051】
図1に示すように、2つのセンサ17を第1のセンサ17Aおよび第2のセンサ17Bとして区別するとき、第1の従動歯車30Aの永久磁石33Aは、第1のセンサ17Aに回転軸11の軸方向に対向している。第2の従動歯車30Bの永久磁石33Bは、第2のセンサ17Bに回転軸11の軸方向に対向している。第1のセンサ17Aは、第1の従動歯車30Aの回転に伴う磁界の変化に応じた電気信号を生成する。第2のセンサ17Bは、第2の従動歯車30Bの回転に伴う磁界の変化に応じた電気信号を生成する。
【0052】
主動歯車15の回転角に対する第1の従動歯車30Aの回転角と、主動歯車15の回転角に対する第2の従動歯車30Bの回転角とが互いに異なる。このため、第1のセンサ17Aが生成する電気信号の位相と、第2のセンサ17Bが生成する電気信号の位相とは互いに異なる。したがって、基板16に設けられる演算回路、あるいは外部機器は、第1のセンサ17Aが生成する電気信号と、第2のセンサ17Bが生成する電気信号とに基づき、回転軸11の360°を超える多回転の回転角を絶対値で演算することができる。外部機器は、たとえば、操舵装置の制御装置である。
【0053】
<実施の形態の効果>
本実施の形態は、以下の効果を奏する。
(1)回転軸11の回転角は、主動歯車15に噛み合う第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bの回転角に基づき検出される。このため、主動歯車15が回転を開始するとき、または主動歯車15の回転方向が反転するとき、主動歯車15と第1の従動歯車30Aとの間のバックラッシ、および主動歯車15と第2の従動歯車30Bとの間のバックラッシに起因して、がたつきが生じるおそれがある。がたつきは、回転軸11の回転角の検出精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0054】
この点、本実施の形態によれば、第1の従動歯車30Aの歯車部31Aは、第1のばね部26の弾性力によって、主動歯車15に径方向内側に押し付けられた状態に維持される。また、第2の従動歯車30Bの歯車部31Bは、第2のばね部27の弾性力によって、主動歯車15に径方向内側に押し付けられた状態に維持される。このため、第1の従動歯車30Aの歯と主動歯車15の歯との間のバックラッシを、より小さくすることが可能である。また、第2の従動歯車30Bの歯と主動歯車15の歯との間のバックラッシを、より小さくすることが可能である。したがって、バックラッシに起因するがたつきを抑制することができる。がたつきが抑制される分だけ、回転軸11の回転角の検出精度を向上させることができる。また、バックラッシに起因する異音の発生を抑えることができる。
【0055】
(2)第1のばね部26および第2のばね部27は、合成樹脂材料によってホルダ20と一体的に形成される。このため、第1のばね部26および第2のばね部27を有するホルダ20を簡単に製造することができる。金属製のばねを使用する場合と異なり、ばねをホルダ20に装着する作業が不要である。部分組立品18の組み立て工数が削減されることにより、部分組立品18の組み立て作業の効率が向上する。ひいては、センサ装置10の組み立て作業の効率を向上させることができる。また、たとえば第1のばね部26および第2のばね部27に代えて、ホルダ20とは別部材である金属製のばねを使用する場合に比べ、部分組立品18の部品点数を削減することができる。このため、センサ装置10の製品コストを低減することができる。さらに、金属製のばねと異なり、第1のばね部26および第2のばね部27は、錆びることもない。
【0056】
(3)第1のばね部26は、U字状の板ばねである。第1のばね部26は、第1の腕部26A、第2の腕部26B、および連結部26Cを有している。連結部26Cは、第1の腕部26Aの第1の端部と、第2の腕部26Bの第1の端部とを連結している。第2の腕部26Bの第2の端部は、自由端である。第2の腕部26Bの第2の端部に、ホルダ20の短辺方向、かつ第1の腕部26Aに向かう方向の荷重が作用するとき、第2の腕部26Bは、第1の端部を支点として、第1の腕部26Aに近接する方向へ撓む。第2の腕部26Bに作用する荷重は、連結部26Cおよび第2の腕部26Bに分散される。このため、第1のばね部26は、全体的に収縮することにより、弾性エネルギーを蓄えることができる。また、第1のばね部26の各部の寸法、あるいは各部の形状を調節することにより、第1のばね部26のばね定数を調節することができる。第2のばね部27は、第1のばね部26と同様の作用を奏する。
【0057】
(4)ホルダ20の第1の支持孔21および第2の支持孔22は、主動歯車15の径方向に延びる長孔である。このため、たとえばセンサ装置10を組み立てる際、第1の従動歯車30Aに対して第1の支持孔21の延設方向の外力が主動歯車15から離れる方向へ向けて作用したとき、第1の従動歯車30Aは、第1のばね部26の弾性力に抗して、主動歯車15から離れる方向へ移動することができる。また、第2の従動歯車30Bに対して第2の支持孔22の延設方向の外力が主動歯車15から離れる方向へ向けて作用したとき、第2の従動歯車30Bは、第2のばね部27の弾性力に抗して、主動歯車15から離れる方向へ移動することができる。したがって、ホルダ20に支持される第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bを保護することができる。
【0058】
(5)基板16および部分組立品18は、回転軸11の軸方向において、互いに重ねられた状態で第2の収容室12Cの内部に設けられる。このため、たとえば基板16および部分組立品18を同一の平面上に並べて設ける場合に比べて、回転軸11の軸線Oに直交する方向におけるセンサハウジング12の大型化を抑えることができる。
【0059】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1のばね部26および第2のばね部27の構造は、製品仕様などに応じて、適宜変更してもよい。たとえば、
図7に示すように、第1のばね部26は、第2の腕部26Bのみを有している。第2の腕部26Bは、ホルダ20の長辺方向に延びている。第2の腕部26Bの基端である第1の端部は、第1の逃げ孔24の内面に連結されている。第2の腕部26Bの先端である第2の端部は、自由端であって、第1の支持孔21に面している。また、第2のばね部27は、第2の腕部27Bのみを有している。第2の腕部27Bは、ホルダ20の長辺方向に延びている。第2の腕部27Bの基端である第1の端部は、第2の逃げ孔25の内面に連結されている。第2の腕部27Bの先端である第2の端部は、自由端であって、第2の支持孔22に面している。このようにしても、第1の従動歯車30Aの歯車部31Aが、第1のばね部26の弾性力によって、主動歯車15に径方向内側に押し付けられた状態を維持することができる。また、第2の従動歯車30Bの歯車部31Bが、第2のばね部27の弾性力によって、主動歯車15に径方向内側に押し付けられた状態を維持することができる。
【0060】
・ホルダ20に相当する構成をセンサハウジング12と一体形成するようにしてもよい。すなわち、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bを回転可能に支持する部分、ならびに、第1のばね部26および第2のばね部27に相当する構成を、第2の収容室12Cの内部に設ける。この場合、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bは、部分組立品18としてではなく、個別にセンサハウジング12に組み付ける。
【0061】
・第1の従動歯車30Aは主動歯車15と噛み合う一方、第2の従動歯車30Bは第1の従動歯車30Aと噛み合うようにしてもよい。この場合、第2のばね部27は、第2の従動歯車30Bを第1の従動歯車30Aの径方向内側へ向けて常に付勢するように設けられる。第2の支持孔22および第2のばね部27の位置は、適宜変更される。このようにしても、回転軸11の360°を超える回転角を検出することができる。
【0062】
・センサ装置10は、3つあるいはそれ以上の従動歯車を有していてもよい。このようにしても、回転軸11の360°を超える回転角を検出することができる。
・センサ装置10は、第1の従動歯車30Aおよび第2の従動歯車30Bのうち、いずれか一方のみを有していてもよい。このようにしても、回転軸11の360°以内の回転角を検出することができる。
【0063】
・センサ装置10は、車両の操舵装置以外の車載装置が有する回転軸の回転角を検出するために使用してもよい。また、センサ装置10は、車載用途に限らない。
【符号の説明】
【0064】
10…センサ装置
11…回転軸(ピニオンシャフト)
15…主動歯車
17…センサ
17A…第1のセンサ
17b…第2のセンサ
20…ホルダ
21…第1の支持孔
22…第2の支持孔
26…第1のばね部
26A…第1の腕部
26B…第2の腕部
26C…連結部
27…第2のばね部
27A…第1の腕部
27B…第2の腕部
27C…連結部
30A…第1の従動歯車
31A…歯車部
32A…軸部
30B…第2の従動歯車
31B…歯車部
32B…軸部