(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107496
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】フルオレン骨格を有するビス縮合多環式アリール化合物の造粒体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 43/23 20060101AFI20230727BHJP
C07C 41/40 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C07C43/23 D
C07C41/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008731
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】渡部 沙葵梨
(72)【発明者】
【氏名】鞍谷 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】川口 絵理
(72)【発明者】
【氏名】東谷 明彦
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB48
4H006AD10
4H006GP03
4H006GP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】滑り性が高く、見かけ密度が大きく、かつ生産性も高い造粒体を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物を含み、見かけ密度が0.6g/cm
3以上、平均粒径が2mm以上の造粒体を調製する。
(環Z
1a及び環Z
1bは、互いに同一で又は異なって、縮合多環式アレーン環;A
1a及びA
1bは、互いに同一で又は異なって、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基;m1及びm2は、互いに同一で又は異なって、0以上の整数;R
1a及びR
1bは、互いに同一で又は異なって、置換基;n1及びn2は、互いに同一で又は異なって、0以上の整数;R
2は置換基;kは0~8の整数を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含み、かつ見かけ密度が0.6g/cm
3以上であり、かつ平均粒径が2mm以上である造粒体。
【化1】
(式中、
環Z
1aおよび環Z
1bは、互いに同一でまたは異なって、縮合多環式アレーン環を示し、
A
1aおよびA
1bは、互いに同一でまたは異なって、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、m1およびm2は、互いに同一でまたは異なって、0以上の整数を示し、
R
1aはおよびR
1bは、互いに同一でまたは異なって、置換基を示し、n1およびn2は、互いに同一でまたは異なって、0以上の整数を示し、
R
2は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
【請求項2】
前記式(1)において、環Z1aおよび環Z1bがナフタレン環であり、A1aおよびA1bが直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基であり、かつm1およびm2が1である請求項1記載の造粒体。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンである請求項1または2記載の造粒体。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物で形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の造粒体。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物の粉末を圧縮成形して造粒する請求項1~4のいずれか一項に記載の造粒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有する化合物の造粒体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)などの9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有する化合物は、高屈折率、高耐熱性などの優れた特性を有しているため、樹脂原料や添加剤などに利用されている。樹脂原料や添加剤として利用される場合、前記化合物は、通常、原料投入口を介して反応器などに導入されるが、生産性を向上させるためには、原料投入口から詰まることなく、連続的に反応器に供給される必要がある。
【0003】
特開2018-104353号公報(特許文献1)には、安息角、スパチュラ角、圧縮度および均一度の角物性値より求められる指数の総和で表される総合流動性指数が40以上100以下である9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの顆粒状粉末が開示されている。この文献では、前記顆粒状粉末は、圧縮機でフレーク化した後、破砕して得られた粉末を整粒機によってスクリーンを通して製粉している。
【0004】
特開2019-127469号公報(特許文献2)には、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類または9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類の結晶を圧縮成形して圧縮片を得る工程と、前記工程で得られた圧縮片を粉砕して粉末状のフルオレン類を得る工程とを有する粉末状フルオレン類の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-104353号公報
【特許文献2】特開2019-127469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1には、9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有する化合物は記載されていない。さらに、特許文献2でも、具体的に調製されている顆粒状粉末は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)]フルオレン(BPEF)のみである。特に、BNEFなどの9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有する化合物は、滑り性が低く、取り扱い性が低い上に、見かけ密度(または嵩密度)も小さく、保存や運搬にも不利であった。さらに、特許文献1および2のいずれにおいても、破砕(粉砕)するため、微粒子が混入し易く、流動性が低下する上に、破砕および整粒工程が必要であり、工程が複雑である上に、収率も低下し、生産性が低い。
【0007】
従って、本発明の目的は、滑り性(流動性)が高く、見かけ密度が大きく、かつ生産性も高い9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有する化合物を含む造粒体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有する化合物を圧縮成形して所定の粒径に造粒することによって、滑り性(粉体流動性)が高く、見かけ密度が大きい造粒体を高い生産性で得ることに成功し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の造粒体は、下記式(1)で表される化合物を含み、かつ見かけ密度が0.6g/cm3以上であり、かつ平均粒径が2mm以上である。
【0010】
【0011】
(式中、
環Z1aおよび環Z1bは、互いに同一でまたは異なって、縮合多環式アレーン環を示し、
A1aおよびA1bは、互いに同一でまたは異なって、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、m1およびm2は、互いに同一でまたは異なって、0以上の整数を示し、
R1aはおよびR1bは、互いに同一でまたは異なって、置換基を示し、n1およびn2は、互いに同一でまたは異なって、0以上の整数を示し、
R2は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
【0012】
前記式(1)において、環Z1aおよび環Z1bはナフタレン環であってもよい。A1aおよびA1bは直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基であってもよい。m1およびm2は1であってもよい。前記式(1)で表される化合物は、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンであってもよい。前記造粒体は、前記式(1)で表される化合物で形成されていてもよい。
【0013】
本発明には、前記式(1)で表される化合物の粉末を圧縮成形して造粒する前記造粒体の製造方法も含まれる。
【0014】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC1、C6、C10などで示すことがある。例えば、「C1アルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有していても、滑り性(流動性)が高く、見かけ密度が大きい造粒体が高い生産性で得られる。この造粒体は、見かけ密度が大きく、保存や運搬に有利である上に、見かけ密度が大きく、かつ所定のサイズであることによって滑り性(粉体流動性)に優れるため、樹脂の製造原料などとして、移送が容易であり、そのまま連続的な生産工程に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた造粒体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の造粒体(造粒品または顆粒)は、前記式(1)で表される化合物を含む。前記式(1)において、環Z1aおよび環Z1bで表される縮合多環式アレーン環としては、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。環Z1aと環Z1bとは、異なる環であってもよいが、通常、同一の環である。これらの縮合多環式アレーン環のうち、縮合二環式C10-16アレーン環が好ましく、本発明の効果が発現し易い点から、ナフタレン環が特に好ましい。
【0018】
前記式(1)において、アルキレン基A1aおよびA1bとしては、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレン基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0019】
オキシアルキレン基(OA1a)およびオキシアルキレン基(OA1b)の繰り返し数(付加モル数)m1およびm2は、それぞれ0または1以上の整数であればよく、例えば0~15の整数、好ましくは0~8の整数、さらに好ましくは0~4の整数である。さらに、m1およびm2は、1以上の整数がより好ましく、例えば1~10の整数、好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~2の整数、最も好ましくは1である。また、m1とm2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。さらに、m1またはm2が2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA1a)またはオキシアルキレン基(OA1b)は、それぞれ同一または異なっていてもよい。また、オキシアルキレン基(OA1a)とオキシアルキレン基(OA1b)とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様である。
【0021】
基[-O-(A1aO)m1-H]および基[-O-(A1bO)m2-H](OH含有基)の置換位置は特に制限されず、環Z1aおよび環Z1bの適当な位置に置換できる。例えば、環Z1aおよび環Z1bがナフタレン環である場合には、OH含有基の置換位置は、フルオレン環の9位に対して1位または2位で結合するナフタレン環の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位の関係で置換しているのが好ましく、2,6位の関係で置換しているのが特に好ましい。
【0022】
前記式(1)において、R1aおよびR1bで表される置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
【0023】
これらの置換基のうち、代表的には、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。好ましいR1aおよびR1bとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基などのC6-14アリール基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基などが挙げられる。特に、アルキル基として、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基が挙げられる。置換基R1aと置換基R1bとは、異なる置換基であってもよいが、通常、同一の置換基である。
【0024】
R1aおよびR1bの置換数n1およびn2は、0以上の整数であればよく、環Z1aおよび環Z1bの種類に応じて適宜選択でき、それぞれ、例えば0~8の整数であってもよく、好ましい置換数n1およびn2は、以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、0が最も好ましい。置換数n1とn2とは、異なる置換数であってもよいが、通常、同一の置換数である。また、置換数n1およびn2が2以上である場合、2以上のR1aまたはR1bの種類は、同一または異なっていてもよい。特に、n1およびn2が1である場合、環Z1aおよび環Z1bがナフタレン環、R1aおよびR1bがメチル基であるのが好ましい。
【0025】
前記式(1)において、R2で表される置換基としては、アルキル基やアリール基などの炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。これらの置換基のうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基が特に好ましい。さらに、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基の中でも、直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-2アルキル基が特に好ましい。
【0026】
R2の置換数kは、0~8の整数であり、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~2の整数であり、0が最も好ましい。なお、kが2以上の場合、それぞれのR2の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、kが2以上である場合、同一のまたは異なる縮合多環式アリール環に置換する2以上のR2の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、R2の置換位置は特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位のいずれであってもよく、通常、2位、3位および7位のいずれかである。
【0027】
代表的な前記式(1)で表される化合物としては、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン;9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシナフチル)フルオレン;9,9-ビス[6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシC2-4アルコキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。これらのうち、9,9-ビス(ヒドロキシC2-3アルコキシナフチル)フルオレンが好ましく、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンが最も好ましい。
【0028】
前記式(1)で表される化合物の割合は、造粒体中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%が最も好ましい。
【0029】
このような化合物で形成された造粒体(造粒品または顆粒)の形状は、特に限定されず、球状;楕円体(楕円球)状;多角錘状、正方体状や直方体状などの多角体状;扁平状、鱗片状、薄片状などの板状;ロッド状または棒状;繊維状または針状;樹針状;不定形状などが挙げられる。造粒体の形状は、生産性や流動性などの点から、円柱状、楕円柱状、角柱状(三角柱状、四角柱状、八角柱状などの多角柱状)などの棒状であってもよい。
【0030】
前記造粒体の平均粒径は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できるが、取り扱い性の点から、2mm以上であってもよく、例えば2~100mm、好ましくは3~80mm、さらに好ましくは5~60mm、より好ましくは10~50mm、最も好ましくは15~40mmである。平均粒径が小さすぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
【0031】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、平均粒径は、造粒体の集合体を撮影した写真から任意に選択した10個の造粒体の粒径を測定し、平均値を算出することで求められ、造粒体の形状が異方形状である場合は、長径と短径との平均値を各造粒体の粒径と仮定する。例えば、棒状の場合、断面径と長さとの平均値を粒径と仮定する。
【0032】
本発明は、前記造粒体の見かけ密度が高いことを特徴としている。具体的に、前記造粒体の見かけ密度は、0.1g/cm3以上(特に、0.6g/cm3以上)であってもよく、例えば0.1~2.0g/cm3、好ましくは0.4~1.8g/cm3、さらに好ましくは0.6~1.7g/cm3、より好ましくは0.8~1.6g/cm3、最も好ましくは1.0~1.5g/cm3である。見かけ密度が小さすぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
【0033】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、見かけ密度は、500mlメスシリンダーに200mlの水を入れ、造粒体を加え確認された体積増加と、加えた造粒体の重量から算出して測定できる。
【0034】
前記造粒体は滑り性が高いことも特徴としており、連続供給性にも優れる上に、打錠などの成形において、金型(杵および臼)に対する付着も抑制でき、生産性を向上できる。具体的に、前記造粒体の滑り性は、後述する実施例に記載の測定方法において、4回以下であり、好ましくは3回以下、さらに好ましくは2回以下、最も好ましくは1回以下である。
【0035】
本発明の造粒体は、慣用の造粒方法、例えば、転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒、解砕造粒、圧縮造粒、押出造粒、溶解造粒などの造粒方法を用いて造粒できる。これらの造粒方法のうち、造粒体の滑り性を向上でき、かつ見かけ密度を大きくできるとともに、ロールや金型に対する付着も抑制でき、生産性が向上する点から、圧縮造粒法、押出造粒法が好ましく、圧縮成形で造粒する圧縮造粒法が特に好ましい。圧縮成形で造粒することにより、バインダーを用いることなく、造粒できる上に、見かけ密度を向上できる。
【0036】
圧縮造粒法では、前記式(1)で表される化合物の粉末(原料粉末)を圧縮して成形することにより造粒してもよい。原料粉末のメジアン径としては、例えば1~1000μm、好ましくは2~500μm、さらに好ましくは5~300μm、より好ましくは10~100μm、最も好ましくは20~40μmである。
【0037】
圧縮方法は、特に限定されず、例えば、圧縮ロールを用いて圧縮する方法であってもよい。圧縮造粒において、造粒温度は、特に限定されず、圧縮処理中の温度上昇により粉末の性状が変化しないよう必要に応じて冷却しながら造粒してもよい。ロール型圧縮造粒機を用いる場合、ロールの回転速度は、例えば5~100Hz、好ましくは10~50Hz、さらに好ましくは20~45Hzである。
【0038】
圧縮造粒法では、水および/または揮発性溶媒で湿潤させて造粒してもよい。揮発性溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコールなどが挙げられる。
【実施例0039】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、用いた原料の略号および詳細ならびに得られた造粒体の評価方法を以下に示す。
【0040】
[原料]
BNEF:9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
【0041】
[見かけ密度]
得られた造粒体の見かけ密度は、500mlメスシリンダーに200mlの水を入れ、造粒体を加え確認された体積増加と、加えた造粒体の重量から算出して測定した。
【0042】
[滑り性]
得られた造粒体の滑り性は、出口径3.5cmの漏斗に100gの試料を投入し、漏斗出口の仕切りを外し全量落下までの時間を測定し評価した。20秒で落下が完了しない場合は、漏斗の辺縁部をタップし、投入した造粒体が漏斗を通過するまでに必要なタップ回数を計測することで滑り性を測定した。
【0043】
実施例1
ロール型圧縮造粒機(ホソカワミクロン社製「ファーマパクタL200/50P」)を用いて、BNEFのブリケット化を行った。詳しくは、スクリュー回転速度33Hz、3.4A、0.3kWにて原料を供給し、凹面ミゾのロールを用いて、回転速度40Hz、11.5A、0.6kWの条件でブリケット化を行い、造粒体を得た。造粒体の形状は約5mm×40mmの棒状(断面形状:長径平均6.4mmおよび短径平均4.3mmの略楕円形状、長さ平均31.5mmの棒状)であり、見かけ密度は、1.16g/cm
3であった。造粒体の外観(写真)を
図1に示す。
【0044】
造粒体の滑り性を評価したところ、20秒経過後1回のタップで全量が漏斗を通過した。なお、造粒前のBNEFの粉体について、同様に滑り性評価を行ったところ、全量が漏斗を通過するのに、20秒経過後5回のタップを必要とした。
本発明の造粒体は、工業製品、有機合成、樹脂合成の原料などとして好適に使用できる。また、本発明の造粒体は、ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を有するため、種々の特性、例えば、光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性に優れている。そのため、本発明の造粒体は、樹脂原料や樹脂硬化剤などとして好適に用いることができる。特に、本発明の造粒体を、エポキシ樹脂やアクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂に適用すると、高耐熱性、高架橋性、高屈折率、高透明性、低線膨張率などの優れた特性を効率よく付与できる。前記エポキシ樹脂は、上記のような特性が要求される用途、例えば、半導体封止剤、電装基板などとして好適である。また、前記アクリル系樹脂は、光学材料用途、例えば、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに有用である。また、前記熱可塑性樹脂は、光学部材、耐熱部材などでの成形材料などとして利用できる。