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特開2023-1075車両のGNSSに基づく位置特定のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001075
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】車両のGNSSに基づく位置特定のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/45 20100101AFI20221222BHJP
   G01S 19/22 20100101ALI20221222BHJP
【FI】
G01S19/45
G01S19/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097062
(22)【出願日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10 2021 206 178.8
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン スクーピン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン レン
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD24
5J062FF01
5J062FF02
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両(1)のGNSSに基づく位置特定のための方法に関する
【解決手段】当該方法は、少なくとも、a)GNSS衛星(3)からのGNSS衛星信号(2)を受信して、車両(1)と、該当するGNSS衛星信号(2)を送信してきたGNSS衛星(3)との間の距離(4)に関する少なくとも1つの距離情報を特定するステップと、b)車両(1)の周囲の環境の少なくとも一部の画像を種々の視点から検出し得る車両(1)の少なくとも1つの環境センサ(5)を使用して特定された画像情報を使用して、車両(1)の周囲の環境に関する少なくとも1つの環境情報を特定するステップと、c)少なくとも1つの環境情報を使用して、少なくとも1つの補正情報を決定するステップと、d)少なくとも1つの補正情報を用いて、少なくとも1つの距離情報を補正するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のGNSSに基づく位置特定のための方法であって、
少なくとも、
a)GNSS衛星(3)からのGNSS衛星信号(2)を受信して、前記車両(1)と、該当する前記GNSS衛星信号(2)を送信してきた前記GNSS衛星(3)との間の距離(4)に関する少なくとも1つの距離情報を特定するステップと、
b)前記車両(1)の周囲の環境の少なくとも一部の画像を種々の視点から検出し得る前記車両(1)の少なくとも1つの環境センサ(5)を使用して特定された画像情報を使用して、前記車両(1)の周囲の環境に関する少なくとも1つの環境情報を特定するステップと、
c)前記少なくとも1つの環境情報を使用して、少なくとも1つの補正情報を決定するステップと、
d)前記少なくとも1つの補正情報を用いて、前記少なくとも1つの距離情報を補正するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記GNSS衛星信号(2)のうちの1つ又は複数が、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星(3)からの反射されたGNSS衛星信号(2)であるかどうかをチェックすることがさらに実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの環境センサ(5)は、少なくとも1つのカメラを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの環境情報は、Structure from Motion法を使用して特定される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの環境情報は、前記車両(1)の周囲のオブジェクト(7)までの少なくとも1つの空間距離(6)を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補正情報は、前記距離情報のうちの、該当する前記GNSS衛星信号(2)の少なくとも1つの反射に起因する成分に対する尺度を表す、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のコンピュータプログラムが格納されている機械可読記憶媒体。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、車両(1)のための位置特定装置(8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のGNSSに基づく位置特定のための方法に関する。さらに、本方法を実施するためのコンピュータプログラム、機械可読記憶媒体、及び、車両のための位置特定装置が提示される。本方法は、特に、少なくとも部分自律運転又は部分自動運転に関連して使用可能である。
【背景技術】
【0002】
従来技術
高度自動運転を実現するために、特に、GNSSシステムによる精確かつ確実な位置測定の提供が寄与している。しかしながら、都市環境、特に、狭いストリートキャニオンにおいては、GNSS受信が阻害される場合がある。そこでは、衛星信号が建物の壁により反射され、これによって、時間的に変移させられて受信機に到達する可能性がある。このことにより、基本的に、該当する疑似距離が過大評価され、ひいては誤った位置が計算される結果となる。このようないわゆるマルチパス効果の場合には、特に、2つの異なるケースが区別される。第1のケースにおいては、受信機は、衛星への見通し線を引き続き有しており(LOS)、直接的な衛星信号と反射された信号との両方を受信する。第2のケースにおいては、受信機は、例えば、建物によって遮蔽されるという理由により、衛星への見通し線を有しておらず(NLOS)、反射された信号のみを受信する。反射された信号は、通常、減衰された振幅及び/又は遅延された伝搬時間を有するので、LOSの場合には、直接的に受信した衛星信号と区別可能であり、受信機における適当な相関によって、誤差を(ある程度)補償することができる。これに対して、NLOSの場合に引き起こされるマルチパス効果は、通常、検出がより困難であり、従って、格段により大きい測位誤差をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような背景を踏まえて、特にNLOSの場合におけるマルチパス効果の補償又は補正を改善するための努力が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本明細書において、請求項1によれば、車両のGNSSに基づく位置特定のための方法であって、少なくとも、
a)GNSS衛星からのGNSS衛星信号を受信して、車両と、この該当するGNSS衛星信号を送信してきたGNSS衛星との間の距離に関する少なくとも1つの距離情報を特定するステップと、
b)車両の周囲の環境の少なくとも一部の画像を種々の視点から検出し得る車両の少なくとも1つの環境センサを使用して特定された画像情報を使用して、車両の周囲の環境に関する少なくとも1つの環境情報を特定するステップと、
c)少なくとも1つの環境情報を使用して、少なくとも1つの補正情報を決定するステップと、
d)少なくとも1つの補正情報を用いて、少なくとも1つの距離情報を補正するステップと
を含む、方法が提案される。
【0005】
この関連におけるGNSSは、例えば、GPS(Global Positioning System)又はガリレオのような全地球航法衛星システムの略である。ステップa)、b)、c)及びd)の記載された順序は、例示的なものであり、従って、本方法の通常の動作手順により実行可能であり、又は、少なくとも1回、記載された順序により進行可能である。さらに、少なくともステップa)とステップb)とを、少なくとも部分的に並行して又は同時に実施することもできる。本方法は、例えば、(本明細書においても説明される)車両のための位置特定装置を用いて実施可能である。
【0006】
本明細書において説明される方法によれば、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星(NLOS衛星)からの反射されたGNSS衛星信号の誤った疑似距離を、有利には、1つ又は複数のカメラを用いて決定される追加的な値によって補正することができる。この関連において、検出された画像情報を評価するためのいわゆるStructure from Motion法を使用することが特に有利である。車両は、例えば、自動車のような乗物であるものとしてよい。さらに、車両は、少なくとも部分自動運転及び/又は部分自律運転のために構成可能である。
【0007】
ステップa)においては、GNSS衛星からのGNSS衛星信号を受信して、車両と、この該当するGNSS衛星信号を送信してきたGNSS衛星との間の距離に関する少なくとも1つの距離情報を特定することが実施される。受信は、車両の少なくとも1つのGNSSアンテナを介して実施可能であり、このGNSSアンテナは、受信した信号を生(ロー:独roh;英raw)で又は前処理された状態で車両の位置特定装置に送信することができる。少なくとも1つの距離情報は、信号の伝搬時間を測定することによって特定可能である。距離情報は、車両とGNSS衛星との間の実際の距離に加えて、場合によっては、この該当するGNSS衛星信号の少なくとも1つの反射に起因する成分も含む可能性がある。換言すれば、距離情報は、場合によっては長すぎる及び/又は未だ補正されていない疑似距離に相当し、又は、そのような疑似距離を表す可能性がある。
【0008】
ステップb)においては、車両の周囲の環境の少なくとも一部の画像を種々の視点から検出し得る車両の少なくとも1つの環境センサを使用して特定された画像情報を使用して、車両の周囲の環境に関する少なくとも1つの環境情報を特定することが実施される。少なくとも1つの環境センサは、例えば、少なくとも1つの光学センサ及び/又は少なくとも1つの音響センサを含み得る。例えば、少なくとも1つの環境センサは、少なくとも1つのカメラ、レーダセンサ、ライダセンサ又は超音波センサなどを含み得る。好ましくは、少なくとも1つの環境センサは、少なくとも1つのカメラを含む。環境の少なくとも一部を種々の視点から検出し得るようにするために、少なくとも1つの環境センサを、例えば、(制御下において)移動可能となるように車両に配置することができる。好ましくは、環境の少なくとも一部を周囲に対する車両の動きに基づいて種々の視点から検出し得るように、少なくとも1つの環境センサを車両に(場合によっては堅固にも)取り付けることができる。さらに、少なくとも2つの環境センサを設けることができ、環境の少なくとも一部を種々の視点から全体として検出し得るように、これらの少なくとも2つの環境センサを車両に配置することができ、及び/又は、相互に位置合わせすることができる。
【0009】
ステップc)においては、少なくとも1つの環境情報を使用して、少なくとも1つの補正情報を決定することが実施される。環境情報は、例えば、車両の周囲の建物又は建物の壁のようなオブジェクトまでの空間距離を表すことができる。この関連において、補正情報を決定するために、例えば、車両の周囲の(相互に対向する)建物又は建物の壁のような2つのオブジェクトまでの複数の空間距離、例えば、少なくとも2つの空間距離を使用することもできる。補正情報は、例えば、スケーリング係数又は補正値の形態において提供可能である。補正値は、好ましくは、過大評価された距離を表すことができる。
【0010】
ステップd)においては、少なくとも1つの補正情報を用いて、少なくとも1つの距離情報を補正することが実施される。例えば、車両と、この該当するGNSS衛星信号を送信してきたGNSS衛星との間の実際の距離を取得するために、距離情報を、補正情報を用いてスケーリングすることができ、又は、補正値の分だけ低減することができる。
【0011】
有利な実施形態によれば、GNSS衛星信号のうちの1つ又は複数が、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星(NLOS衛星)からの反射されたGNSS衛星信号であるかどうかをチェックすることをさらに実施することが提案される。この関連において、例えば、反射された衛星信号は、低い搬送波対雑音比(Carrier to Noise Ratio:C/N0)及び/又は有意な疑似距離残差によって識別可能である。特に移動中の車両の場合には、これらの値を経時的に観察することもできる。従って、C/N0及び/又は残差における急激な変化(例えば、C/N0の減少、残差の増加)により、反射された信号を逆推論することができる。代替的又は追加的に、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星を、車両の少なくとも1つのカメラを用いて識別することができる。このために、カメラ画像内において、例えばセマンティックセグメンテーションのような画像処理法によって周囲の建物を検出することができる。対応する衛星への直接的な見通し線が利用可能であるかどうかを検出するために、例えば、衛星の既知の方位角及び仰角の下で、一種のレイトレーシング法を実施することができる。レイトレーシング法は、有利には、反射の計算を実施するために使用可能である。ここでは、特に有利には、特に、反射の計算を実施することなく、直接的な経路が存在するかどうかについてのチェックだけで十分である場合がある。このことは、有利には、非常にわずかな計算コストで実現可能である。
【0012】
さらなる有利な実施形態によれば、環境センサが、少なくとも1つのカメラを含むことが提案される。例えば、環境センサは、2つ以上のカメラを含み得る。環境の少なくとも一部を種々の視点から全体として検出し得るように、これらの2つ以上のカメラを車両に配置することができ、及び/又は、相互に位置合わせすることができる。特に好ましくは、環境センサは、全方位の可視性を備えたカメラシステムを含む。
【0013】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも1つの環境情報を、Structure from Motion法を使用して特定することが提案される。Structure from Motion(SfM)は、通常、時間的に変移させられた複数の画像を重ね合わせることによって3次元情報を取得するための手法を指し、この場合には、特に、いわゆる視差が利用される。Structure from Motion法の特別な利点は、従来の写真測量法とは異なり、3次元位置が既知である目標オブジェクトを事前に指定しなくてよいことにあると見ることができる。換言すれば、Structure from Motionは、種々の視点からの2次元画像情報を用いて3次元表面を計算する手法を表す。例えば、ピクセル及び/又はオブジェクトを、カメラによって時間的に変移させて種々の角度から観察することによって、ピクセル及び/又はオブジェクトまでの距離を特定することができる。これによって、有利には、1つ又は複数のカメラが搭載されている車両は、特に建物のような周囲のオブジェクトまでの距離を特定することが可能である。このようにして、全方位の可視性を備えたカメラシステムを用いて、それどころか有利には、環境の3次元モデルを作成することもできる。このモデルは、特に有利には、少なくとも1つの環境情報を特定するために及び/又は少なくとも1つの補正情報を決定するために寄与することができる。
【0014】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも1つの環境情報が、車両の周囲のオブジェクトまでの少なくとも1つの空間距離を含むことが提案される。空間距離は、例えば、水平距離に相当し得る。オブジェクトは、例えば、建物又は建物の壁であるものとしてよい。
【0015】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも1つの補正情報が、距離情報のうちの、この該当するGNSS衛星信号の少なくとも1つの反射に起因する成分に対する尺度を表すことが提案される。これは、換言すれば、特に、いわゆる過大評価された距離と称することもできる。
【0016】
特に有利な実施形態によれば、本方法においては、Structure from Motion法を使用することによってGNSS疑似距離補正が実施される。これにより、本方法は、都市環境におけるGNSSに基づく位置特定の精度を有利に高めるために、高度自動運転のための特に有利なアプローチを提供することができる。この関連において、受信機から衛星まで測定された、反射された衛星信号の疑似距離を、カメラと、3次元再構成法であるStructure from Motionとを用いて決定される追加的な値によって補正することができる。
【0017】
さらなる態様によれば、本明細書において説明される方法を実施するためのコンピュータプログラムも提案される。これは、換言すれば、特に、コンピュータによって実行されたときに、本明細書において説明される方法をコンピュータに実施させるための命令を含むコンピュータプログラム(製品)に相当する。
【0018】
さらなる態様によれば、コンピュータプログラムが格納されている機械可読記憶媒体も提案される。基本的に、機械可読記憶媒体は、コンピュータ可読データ担体である。
【0019】
さらなる態様によれば、本明細書において説明される方法を実施するように構成されている、車両のための位置特定装置が提示される。これは、換言すれば、本明細書において説明される方法を実施するように構成されている、車両のための位置特定装置に相当する。例えば、前述の記憶媒体は、位置特定装置の構成部分であるものとしてよく、又は、位置特定装置に接続されているものとしてよい。好ましくは、位置特定装置は、(自動)車内若しくは(自動)車上に配置されており、又は、そのような(自動)車内若しくは(自動)車上に取り付けるために企図及び構成されている。好ましくは、位置特定装置は、GNSSセンサを構成し、又は、少なくとも1つのGNSSセンサを含む。さらに好ましくは、位置特定装置を、車両の自律運転のために企図及び構成することができる。さらに、位置特定装置は、動きセンサと位置センサとを組み合わせたものであってよい。このような位置特定装置は、自律車両にとって特に有利である。位置特定装置又は位置特定装置のコンピューティングユニット(プロセッサ)は、例えば、本明細書において説明される方法を実施するために、本明細書において説明されるコンピュータプログラムにアクセスすることができる。
【0020】
従って、方法に関連して説明される詳細、特徴及び有利な実施形態は、本明細書において提示されるコンピュータプログラム及び/又は記憶媒体及び/又は位置特定装置の場合にも当てはまり得るものであり、その逆もまた同様である。この限りにおいて、特徴の性質についてのより詳細な説明については、そこでの記載が全範囲にわたって参照される。
【0021】
本明細書において提示される解決策及びその技術環境について、図面に基づき、以下において、より詳細に説明する。本発明は、図示されている実施例によって限定されるべきものではないことを指摘しておく。特に、別段の明記がない限り、図面において説明されている事実内容の部分的な態様を抽出することも可能であり、それらを他の図面及び/又は本明細書からの他の構成要素及び/又は知見と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本明細書において説明される方法のフローチャートを例示的かつ概略的に示す図である。
図2】ストリートキャニオン方向に見たときの、前述の方法の適用可能性を例示的かつ概略的に示す図である。
図3】ストリートキャニオンを上から見たときの、図2からの適用可能性を例示的かつ概略的に示す図である。
図4】多重反射の場合における前述の方法の適用可能性を例示的かつ概略的に示す図である。
図5】本明細書において説明される位置特定装置を有する車両を例示的かつ概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本明細書において説明される方法のフローチャートを例示的かつ概略的に示している。本方法は、車両1のGNSSに基づく位置特定のために使用される(図2を参照)。ブロック110、120及び130によって示されているステップa)、b)及びc)の順序は、例示的なものであり、従って、通常の動作手順により実行可能である。
【0024】
ブロック110においては、ステップa)によれば、GNSS衛星3からのGNSS衛星信号2を受信して、車両1と、この該当するGNSS衛星信号2を送信してきたGNSS衛星3との間の距離4に関する少なくとも1つの距離情報を特定することが実施される。ブロック120においては、ステップb)によれば、車両1の周囲の環境の少なくとも一部の画像を種々の視点から検出し得る車両1の少なくとも1つの環境センサ5を使用して特定された画像情報を使用して、車両1の周囲の環境に関する少なくとも1つの環境情報を特定することが実施される。ブロック130においては、ステップc)によれば、少なくとも1つの環境情報を使用して、少なくとも1つの補正情報を決定することが実施される。ブロック140においては、ステップd)によれば、少なくとも1つの補正情報を用いて、少なくとも1つの距離情報を補正することが実施される。
【0025】
全地球航法衛星システム又はGNSSは、測位及び航法のためのシステムである。これは、NAVSTAR、GPS、GLONASS、ガリレオ及び北斗が属する種々の衛星システムの総称である。測位のために、衛星は、各自の精確な位置(高度及び方位角)並びに時刻を、無線コードを介して伝達する。受信機においては、疑似距離、即ち、クロック誤差を含む、衛星と受信機との間の信号伝搬時間から決定される衛星と受信機との間の距離が特定される。4つ以上の衛星が同時に受信される場合には、クロック誤差を補償することができ、受信機の現在の位置を特定することができる。
【0026】
少なくとも1つの環境センサ5は、少なくとも1つのカメラを含み得る。さらに、少なくとも1つの環境情報は、いわゆるStructure from Motion法を使用して特定可能である。これにより、都市環境におけるGNSSに基づく位置特定の精度を高めるために、好ましくは高度自動運転のための特に有利なアプローチを提供することができる。受信機から衛星まで測定された、反射された衛星信号の疑似距離を、有利には、少なくとも1つのカメラと、3次元再構成法であるStructure from Motionとを用いて決定される追加的な値によって補正することができる。
【0027】
図2は、ストリートキャニオン方向に見たときの、前述の方法の適用可能性を例示的かつ概略的に示している。ストリートキャニオンは、ここでは、例示的に、建物又は高層ビルの形態の2つのオブジェクト7によって図示されている。
【0028】
本方法においては、GNSS衛星信号2のうちの1つ又は複数が、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星3からの反射されたGNSS衛星信号2であるかどうかをチェックすることを(まず始めに)実施することができる。このことは、換言すれば、特に、いずれの疑似距離に対して補正を適用するのかを(まず始めに)決定することであるとも表現することができる。特に、受信した衛星信号のうちのいずれの衛星信号が、実際に、直接的な見通し線が存在しない衛星からの反射された信号であるかがチェックされる。このために、基本的に、種々のアプローチを使用することができる。例えば、反射された衛星信号は、低い搬送波対雑音比(C/N0)及び/又は有意な疑似距離残差によって識別可能である。特に移動中の車両の場合には、これらの値を経時的に観察することもできる。従って、C/N0及び/又は残差における急激な変化(例えば、C/N0の減少、残差の増加)も、新たに反射された信号を示唆することができる。
【0029】
代替的又は追加的に、(車両の)カメラを用いて、NLOS衛星(即ち、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星)を(直接的に)識別することもできる。このために、カメラ画像内において、例えばセマンティックセグメンテーションの画像処理法によって周囲の建物を検出することができる。対応する衛星への直接的な見通し線が利用可能であるかどうかを検出するために、例えば、衛星の既知の方位角及び仰角の下で、レイトレーシング法を実施することができる。
【0030】
特に、疑似距離が補正されるべきNLOS衛星が判明すると、有利には次のステップにおいて、(反射によって)過大評価された距離を補正値として計算することができる。このために、図2は、ストリートキャニオン方向に対して垂直な断面を例示的に示している。ここで、車両1は、仰角θにあるNLOS衛星3からの反射された信号2を受信する。この反射に基づいて、車両1の位置は、図2の左側に示されている建物7の左側にあると誤って仮定される。
【0031】
εは、疑似距離の過大評価された距離である。この値を、直角三角形に基づいてε=2d*cos(θ)として計算することができ、ここで、dは、建物の壁までの未知の距離である。車両1に、例えば、建物の壁を検出する環境センサ5としてカメラが設置されている場合には、この距離を、特に有利には、3次元再構成法であるStructure from Motionによって特定することができる。このために、移動中の車両1から、ピクセル及び/又はオブジェクトが時間的に変移させられて種々の角度から観察される。その後、オブジェクト7までの、この場合には建物の壁までの距離dを、三角測量を用いて特定することができる。
【0032】
この関連における距離dは、少なくとも1つの環境情報が、車両1の周囲のオブジェクト7までの少なくとも1つの空間距離6を含み得ることについての例と、場合によってはその方法とを表す。さらに、疑似距離の過大評価された距離εは、少なくとも1つの補正情報(ここでは、例えばε)が、距離情報(ここでは、疑似距離)のうちの、該当する(NLOS)GNSS衛星信号2の少なくとも1つの反射に起因する成分に対する尺度を表すことについての例と、場合によってはその方法とを表す。
【0033】
図3は、ストリートキャニオンを上から見たときの、図2からの適用可能性を例示的かつ概略的に示している。図2に関連して説明した、特に2次元の場合に関して決定された補正値εを、3次元の場合に関して欠落している成分の分だけどのようにして補足することができるかを、図3による図示に基づいて例示的に説明する。このために、図3においては、図2の左上の矢印9によって示されている視点からの状況が考察される(衛星信号2を通過する、仰角θで傾斜している平面を上から見た平面図)。ここでも、(新しい)補正値εを、直角三角形によって計算することができ、今回は、既に決定されている値εを斜辺として使用して計算することができる。3次元の場合に関して、最終的な補正値は、ε=ε*|sin(β)|=2d*cos(θ)*|sin(β)|として得られる。ここで、角度βは、衛星3の方位角とストリートキャニオン方向との間の差である。対応して決定されるεの補正値は、検出された環境情報d(空間距離6)によって決定される、本明細書において説明される方法の意味における特に好ましい補正情報である。
【0034】
最後に、新しい疑似距離(車両1とGNSS衛星3との間の実際の距離4)を取得するために、ここでは、当初に測定された疑似距離(ステップa)からの距離情報)から補正値εが差し引かれる。このことは、少なくとも1つの補正情報を用いて、少なくとも1つの距離情報を補正することについての例を表している。
【0035】
図4は、多重反射の場合における前述の方法の適用可能性を例示的かつ概略的に示している。換言すれば、図4においては、前述の方法を、有利には多重反射を補正するためにも使用することができることについての例と、場合によってはその方法とが示される。従って、二重反射の場合には、例えば、第2の反射が発生する建物7(ここでは、右側に図示された建物7)までの距離dに基づく誤差を追加的に考慮することができる。
【0036】
従って、補正値は、有利には、ε=ε+ε=2d*cos(θ)*|sin(β)|+2d*cos(θ)*|sin(β)|=2(d+d)*cos(θ)*|sin(β)|として得られる。ここで、εは、第1の反射に属する補正値を表し、εは、第2の反射に属する補正値を表し、dは、第1の反射に属する建物の壁までの距離を表し、dは、第2の反射に属する建物の壁までの距離を表す。対応して決定されるεの補正値は、検出された環境情報d及びd(空間距離6)によって決定される、本明細書において説明される方法の意味における特に好ましい補正情報である。
【0037】
二重反射の存在を識別するために、有利には、Structure from Motionによって周囲の建物の高さを(も同様に)特定することができる。特に、第1の反射に属する建物の壁が、hmin,1=(d+2d)*tan(θ)/sin(β)よりも高くて、かつ、(それと同時に)第2の反射に属する建物の壁の高さhが、hmin,2=d*tan(θ)/|sin(β)|の最小高さと、hmax,2=(2d+3d)*tan(θ)/|sin(β)|の最大高さとを有する(又はhmin,2<h<hmax,2である)場合には、二重反射が識別される。
【0038】
しかしながら、二重反射又は多重反射を、必ずしもこのように(即ち、補正値εを用いて)補正しなくてもよい。というのは、これらの場合、本明細書において全般的に説明される単一反射を補正するための手法を用いるだけでも、疑似距離の改善、ひいては位置精度の改善をも既に達成することができるからである。
【0039】
図5は、本明細書において説明される位置特定装置8を有する車両1を例示的かつ概略的に示している。位置特定装置8は、本明細書において説明される方法を実施するように構成されている。位置特定装置8は、車両1の環境センサ5からデータを受信することができる。
【0040】
前述の方法により、有利には、特にNLOSの場合におけるマルチパス効果の補償又は補正を改善することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のGNSSに基づく位置特定のための方法であって、
少なくとも、
a)GNSS衛星(3)からのGNSS衛星信号(2)を受信して、前記車両(1)と、該当する前記GNSS衛星信号(2)を送信してきた前記GNSS衛星(3)との間の距離(4)に関する少なくとも1つの距離情報を特定するステップと、
b)前記車両(1)の周囲の環境の少なくとも一部の画像を種々の視点から検出し得る前記車両(1)の少なくとも1つの環境センサ(5)を使用して特定された画像情報を使用して、前記車両(1)の周囲の環境に関する少なくとも1つの環境情報を特定するステップと、
c)前記少なくとも1つの環境情報を使用して、少なくとも1つの補正情報を決定するステップと、
d)前記少なくとも1つの補正情報を用いて、前記少なくとも1つの距離情報を補正するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記GNSS衛星信号(2)のうちの1つ又は複数が、直接的な見通し線が存在しないGNSS衛星(3)からの反射されたGNSS衛星信号(2)であるかどうかをチェックすることがさらに実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの環境センサ(5)は、少なくとも1つのカメラを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの環境情報は、Structure from Motion法を使用して特定される、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの環境情報は、前記車両(1)の周囲のオブジェクト(7)までの少なくとも1つの空間距離(6)を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補正情報は、前記距離情報のうちの、該当する前記GNSS衛星信号(2)の少なくとも1つの反射に起因する成分に対する尺度を表す、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに請求項に記載の方法を実施させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のコンピュータプログラムが格納されている機械可読記憶媒体。
【請求項9】
請求項に記載の機械可読記憶媒体備えている、車両(1)のための位置特定装置(8)。
【外国語明細書】