(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107524
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】壁面緑化装置及び壁面緑化構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230727BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20230727BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20230727BHJP
A01G 20/00 20180101ALI20230727BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
A01G9/02 103T
A01G9/00 C
A01G20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008767
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 龍平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 万貴
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
2E110
【Fターム(参考)】
2B022AB04
2B022AB08
2B327ND01
2B327NE11
2B327TA04
2B327TA07
2B327TA13
2B327TA21
2B327TA27
2B327TC04
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB22
2E110GB62W
(57)【要約】
【課題】壁面緑化あるいは植物のメンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置及び壁面緑化構造を提供する。
【解決手段】
構造物の壁面に設けられる壁面緑化装置であって、前記壁面に基端が固定される支持梁と、前記壁面との間に間隔を設けて配置され、前記支持梁に水平回転自在に設けられた支柱と、前記支柱に平行な姿勢で固定され、壁面緑化用植物を設けたパネルと、前記パネルと前記壁面との間に設けられた足場板と、備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面に設けられる壁面緑化装置であって、
前記壁面に基端が固定される支持梁と、
前記壁面との間に間隔を設けて配置され、前記支持梁に水平回転自在に設けられた支柱と、
前記支柱に平行な姿勢で固定され、壁面緑化用植物を設けたパネルと、
前記パネルと前記壁面との間に設けられた足場板と、
を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面緑化装置であって、
前記支柱に、前記壁面緑化用植物が植栽されるプランターを支持するプランター支持部を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の壁面緑化装置であって、
前記支柱と前記パネルには、前記パネルの位置を固定する固定構造を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の壁面緑化装置であって、
前記支持梁と前記支柱の組合わせが、間隔を設けて複数並列配置されているとともに、
前記支柱各々に前記パネルが設けられていることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の壁面緑化装置であって、
並列配置された前記支柱を、連動して水平回転させる連動駆動機構を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の壁面緑化装置が、高さ方向及び/又は横方向に複数配置されることを特徴とする壁面緑化構造。
【請求項7】
請求項6に記載の壁面緑化構造であって、
前記高さ方向に隣り合う前記壁面緑化装置の前記支柱が、互いに連結されていることを特徴とする壁面緑化構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の壁面を緑化する壁面緑化装置及び壁面緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素の削減、外壁の修景等を目的に、建物の壁面緑化が進められている。壁面緑化構造には様々な種類があるが、壁面に設置したネットやワイヤーなどの補助資材につる性植物を這わせる登はん型が、広く知られている。
【0003】
登はん型の壁面緑化装置として、たとえば特許文献1には、つる性植物を定着させる縦柵や格子等のような緑化基板と、緑化基板を建築物の壁面に保持する複数の棒状支持具とを備える壁面緑化体が開示されている。棒状支持具は、建築物の壁面に固定され、緑化基板の外縁を着脱自在、かつ回転自在に保持可能に構成されている。
【0004】
これにより、緑化基板は、複数設けられた棒状支持具のうち、いずれかを支点にして建築物から離れる方向に水平回転もしくは鉛直回転できるため、壁面に壁面緑化装置を設けても、建物への入射光の調整が自在となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、壁面緑化装置は、緑化基板の外側に這わせたつる性植物の手入れなどメンテナンスが必要となる。メンテナンス作業は、外壁と緑化基板の間に管理用通路がある場合、そこから作業者が外側に身を乗り出して枝葉の状態を確認し、剪定作業を実施する。また、剪定作業時は、植物の繁茂状態や緑化基板の大きさによって、さらに身を乗り出す必要が生じるなど、作業性だけでなく作業員の安全確保に課題が生じる。現状では安全帯をかける設備がない場合も多く、剪定作業を担当する作業員に加え、剪定作業員を支えるための作業員を配備するなどして、安全性を確保しており必ずしも効率的とはいえない。
【0007】
また、外壁と緑化基板との間にある管理用通路の足場板にグレーチング等が用いられていることにより隙間がある場合に、建物側から緑化基板の空き空間を利用して枝葉の剪定作業を実施すると、剪定道具や剪定した枝葉などが落下する危険がある。このため、重大な事故を生じることのないよう養生するとともに、細心の注意を払って慎重に作業を行わなければならず、作業が繁雑となる。
【0008】
さらに、外壁と対向する仮足場板を組む、或いは、高所作業車を使用するなどして、建物の外側からメンテナンス作業をすることも考えられるが、大がかりな作業となるだけでなく高所作業となるため、作業者への負担が大きいとともにメンテナンス費用に課題がある。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、壁面緑化あるいは植物のメンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置及び壁面緑化構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため本発明の壁面緑化装置は、構造物の壁面に設けられる壁面緑化装置であって、前記壁面に基端が固定される支持梁と、前記壁面との間に間隔を設けて配置され、前記支持梁に水平回転自在に設けられた支柱と、前記支柱に平行な姿勢で固定され、壁面緑化用植物を設けたパネルと、前記パネルと前記壁面との間に設けられた足場板と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の壁面緑化装置によれば、表面に壁面緑化用植物を設けたパネルが、水平回転自在に設けられた支柱に平行な姿勢で固定されているとともに、足場板が、支柱と壁面との間に設けられる。これにより、パネルを支柱とともに水平回転させることで、表面の一部または全部を、足場板側に対向させることができる。したがって、作業員は、ビルなどの建物から身を乗り出すことなく、パネル表面に設けた壁面緑化用植物の枝葉状態の確認や剪定作業の計画、及び剪定作業といったメンテナンス作業を、足場板上にて実施することが可能となる。また、ビルなどの壁面に設けられている場合にも、仮足場板を組む、或いは、高所作業車を使用するなど、大がかりな作業を行うことなく、安全に作業することが可能となる。このようにメンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置を提供することが可能となる。
【0012】
本発明の壁面緑化装置は、前記支柱に、前記壁面緑化用植物が植栽されるプランターを支持するプランター支持部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の壁面緑化装置によれば、支柱に備えたプランター支持部にプランターを配置すれば、パネルとプランターを支柱とともに水平回転させることができる。したがって、パネルを180°回転させて壁面緑化用植物を設けた表面全面を足場板側に対向させることが可能となる。これにより、作業者は、壁面緑化用植物を設けたパネル表面と対面可能となり、植物の剪定や壁面緑化装置の保守などのメンテナンス作業をより容易に且つ安全に行うことが可能となる。
【0014】
本発明の壁面緑化装置は、前記支柱とともに水平回転する前記パネルを固定する固定構造を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の壁面緑化装置によれば、支柱とともに水平回転するパネルの表面を、平常時には外方に向けた状態で、天候の影響を受けることなく安定して固定することができる。また、壁面緑化用植物のメンテナンス時にはパネルを支柱とともに水平回転させて、作業に好適な位置で固定でき、作業性を向上することが可能となる。さらには、パネルを水平回転させ建物内への入射光調整をしたのち、この位置で固定することもでき、建物内におけるアメニティ空間の創出に寄与することも可能となる。
【0016】
本発明の壁面緑化装置は、前記支持梁と前記支柱の組合わせが、間隔を設けて複数並列配置されているとともに、前記支柱各々に前記パネルが設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の壁面緑化装置によれば、壁面の広範囲を並列配置した複数のパネルで緑化できるため、パネルのコンパクト化を図りメンテナンスの容易性を向上することが可能となる。
【0018】
また、本発明の壁面緑化装置は、並列配置された前記支柱を、連動して水平回転させる連動駆動機構を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の壁面緑化装置によれば、並列配置した複数の支柱を連動駆動機構を介して水平回転させることに伴い、支柱各々に固定したパネルを効率よく同一の角度に水平回転できる。また、パネルを水平回転させた状態であっても構造物の壁面に優れた美観を維持することが可能となる。
【0020】
本発明の壁面緑化構造は、本発明の壁面緑化装置が、高さ方向及び/又は横方向に複数配置されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の壁面緑化構造は、前記高さ方向に隣り合う前記壁面緑化装置の前記支柱が、互いに連結されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の壁面緑化構造によれば、構造物の壁面におけるより広い範囲を緑化することが可能となる。また、高さ方向に隣り合う壁面緑化装置の支柱を互いに連結すれば、1本の支柱を回転することにより、高さ方向に隣り合う壁面緑化装置のパネルを同時に回転させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、メンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置及び壁面緑化構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態における本実施の形態における壁面緑化構造を備えたビルを示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態における壁面緑化構造の縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態における
図1におけるA部の拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態における壁面緑化装置の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態における壁面緑化装置の他の事例を示す図である(その1)。
【
図6】本発明の実施形態における壁面緑化装置の他の事例を示す図である(その2)。
【
図7】本発明の実施形態における壁面緑化装置の他の事例を示す図である(その3)。
【
図8】本発明の実施形態におけるパネルを固定する固定構造を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態における壁面緑化装置で採光を取る様子を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態における壁面緑化装置の他の事例を示す図である(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、構造物の壁面に設ける壁面緑化装置及び壁面緑化構造であって、表面に壁面緑化用植物を設けたパネルの裏面側に足場板を設け、パネルを水平回転させることにより表面を足場板側に対向可能とすることで、壁面緑化用植物などをメンテナンスする際の作業性を向上しようとするものである。以下に、壁面緑化装置及び壁面緑化構造の一実施形態を、
図1~
図10を参照しつつ説明する。
【0026】
本実施の形態では、各階ごとに窓を有する建物の外壁に、壁面緑化装置及び壁面緑化構造を設ける場合を事例に挙げるが、これに限定するものではない。建物や構造物などいずれにも採用することが可能であり、また、ビルの外壁や大空間建物の内壁、建物の外壁から屋上まで延長させて屋上フェンスを兼用させるなど、いずれの位置にも適用することが可能である。
【0027】
さらに、本実施の形態では壁面緑化のなかでも、つる性植物を這わせる登はん型を事例に挙げるが、植物をはめ込むユニット型、コケを繁殖させる繁殖型など、いずれの種類にも採用可能である。
【0028】
≪≪≪壁面緑化構造≫≫≫
壁面緑化構造100は、
図1で示すように、建物200の一面をなす外壁201に設けられており、
図2で示すように、建物200の各階の窓202の高さに対応させて配置した複数の壁面緑化装置10により構成されている。
【0029】
図1では、4枚のパネル13を備える壁面緑化装置10を、高さ方向に6体配置して壁面緑化構造100を構成する場合を事例に挙げている。しかし、建物200が大規模な場合には、高さ方向だけでなく横方向にも壁面緑化装置10を複数並列配置し、壁面緑化構造100を構成してもよい。また、例えば地上階にエントランスや駐車場の出入り口などが存在する外壁201に壁面緑化構造100を設ける場合には、例えば地上階より上方に設置し、後述する連動駆動機構18を屋上側に配置して壁面緑化構造100を構成するなど、適宜変更するとよい。
【0030】
≪≪壁面緑化装置≫≫
壁面緑化構造100を構成する各壁面緑化装置10は、
図2で示すように、外壁201に基端が固定された支持梁11と、支持梁11に支持され軸まわりに水平回転自在な支柱12と、支柱12とともに水平回転するパネル13及びプランタ―14とを備える。また、支柱12と外壁201との間であってパネル13の裏面13b側に、作業空間Sを設けるための足場板15と、足場板15を支持する横材16とを備えている。
【0031】
≪≪支持梁11≫≫
支持梁11は、
図2及び
図3に示すように、窓202を挟んだ上側及び下側にそれぞれ設けられ、基端側があと施工アンカーなどの固定手段(不図示)により外壁201に固定され、先端側が片持ち状態に張り出している。窓202を挟んだ上側に位置する上支持梁11a及び下側に位置する下支持梁11bはいずれも、支持梁本体111と、ベアリング114が保持された中空の軸受け筒体113と、ベースプレート112と、を備えている。
【0032】
支持梁本体111は、
図3で示すように、平行に配置された2本の溝形鋼よりなり、開口を横方向に向けた状態で間隔を設けて背合わせされている。また、
図2で示すように、その基端側となる一端には、ベースプレート112が端板のごとく固着され、上支持梁11a及び下支持梁11bはいずれも、このベースプレート112を介して外壁201に設置される。一方、先端側となる他端には、支持梁本体111を構成する2本の溝形鋼に挟持されるようにして、軸受け筒体113が配置されている。
【0033】
軸受け筒体113は、
図3及び
図4に示すように、上下方向に開口しこの開口に挿通される支柱12を軸まわりに水平回転自在に支持する部材であり、ベアリング114を内装した鋼管により構成されている。その形状は、これに限定されるものではなく、上支持梁11a及び下支持梁11bに対して支柱12を軸まわりに水平回転自在に支持可能な構成を有していれば、いずれの構造を採用してもよい。
【0034】
≪≪支柱12≫≫
支柱12は、
図2で示すように、上端近傍及び下端近傍がそれぞれ、上支持梁11a及び下支持梁11b各々に設けられた軸受け筒体113に支持されて、軸まわりに水平回転する長尺鋼材により構成されている。支柱12の外周面には、パネル13を支持する複数のパネル固定部12aと、プランタ―14を支持するプランター支持部12bが設けられている。
図2では、パネル13とプランタ―14を、支柱12を挟んで対向する位置に設けるべく、複数のパネル固定部12aとプランター支持部12bを、支柱12の軸線を挟んで対向する外周面にそれぞれ設けている。
【0035】
パネル固定部12aは、パネル13を支柱12の外周面に設置するための取付部であり、その構成はパネル13を取付け支持できればいずれでもよい。
図2では、支柱12の外周面より突出する棒状部材を採用し、高さ方向に間隔を設けて2か所に配置している。
【0036】
プランター支持部12bは、パネル13の下方位置もしくはパネル13より下方に配置されるプランタ―14を支持する部材であり、その形状は容器状や板状などプランタ―14を載置もしくは収納できればいずれでもよい。
図2では、プランタ―14を載置可能な板状部材を採用する場合を例示している。
【0037】
≪≪パネル及びプランター≫≫
パネル13は、
図3で示すように、壁面緑化用植物Pを這わせる、いわゆる緑化パネルであり、枠体131と枠体131の内側に設けられる植栽保持部132とを備える。枠体131は、正面視矩形形状をなし、外壁201と対向する裏面13b側であって高さ方向に延びる中心線上に、
図2で示すような支柱12のパネル固定部12aが設置されている。
【0038】
これによりパネル13は、
図4で示すように、枠体131の両側部いずれか一方を押し引きすることで、支柱12とともに回転扉のごとく水平回転する。なお、枠体131の平面視形状は正面視矩形形状に限定されるものではなく、三角形状や楕円形状など、いずれに形成されるものでもよい。また、その断面形状も、例えば円弧タイプなどを採用することができる
【0039】
植栽保持部132は、壁面緑化用植物Pを這わせる部材であり、
図3で示すように、ワイヤーメッシュを採用しているが、登はん型の緑化補助資材として一般に使用されている材料であれば、例えば梯子型ワイヤーや立体金網などを採用することができる。そして、植栽保持部132に這わせる壁面緑化用植物Pは、植栽基盤に植栽されるものであり、植栽基盤をパネル13に設ける構成としてもよい。しかし、本実施の形態では、プランタ―14に植栽する場合を事例に挙げている。
【0040】
プランタ―14は、壁面緑化用植物Pを植栽する土壌を収容した容器であり、
図4で示すように、平面視で長手方向がパネル13の幅方向に対応する大きさの矩形形状の容器を採用している。
図4では、1台のパネル13に対してプランタ―14を1台設けているが、1台のパネル13に対して複数のプランタ―14を用意し、これらをプランター支持部12bに支持させてもよい。
【0041】
上記のパネル13及びプランタ―14を支持しつつ水平回転する支柱12と、上支持梁11a及び下支持梁11bを備える支持梁11の組合わせは、壁面緑化装置10に対して1組のみ設けてもよいし、複数組を並列配置して設けてもよい。本実施の形態では、これらの組合わせを横方向に4組採用する場合を事例に挙ており、パネル13どうしが接触しない程度の間隔を設けて並列配置されている。
【0042】
こうすると、外壁201の広範囲を並列配置した複数のパネル13で緑化できるため、パネル13のコンパクト化を図りメンテナンスの容易性を向上することが可能となる。こうして並列配置された支柱12と建物200の外壁201との間に、足場板15が設けられている。
【0043】
足場板15は、
図2及び
図4で示すように、支柱12と建物200との間に作業員がメンテナンス作業を実施するための作業空間Sを形成するべく設けるものである。このため、足場板15の高さ位置は、パネル13及びプランタ―14の水平回転時に接触することのないよう、これらより下方側の低位置に配置されている。足場板15は、グレーチング材や孔あき鋼板、メッシュ板など、排水性を有する板材を採用できる。これら足場板15の支持構造はいずれでもよいが、
図2~
図4では、横材16を採用する場合を例示している。
【0044】
横材16は、隣り合う下支持梁11b架け渡される長尺鋼材であり、
図2では、H形鋼を採用する場合を例示している。これら横材16の上フランジを下支持梁11bの下面に当接させて接合し、横材16と隣り合う下支持梁11bとにより形成された領域に、足場板15を設けている。
【0045】
≪≪≪壁面緑化装置のメンテナンス作業≫≫≫
上記の構成を有する壁面緑化装置10は、
図4の最左で示すパネル13のように、平常時において、支柱12に固定されている裏面13b側を建物200の外壁201に対向させ、壁面緑化用植物Pが這う表面13aを外方に向けて配置している。したがって、壁面緑化用植物Pの剪定など、壁面緑化装置10のメンテナンス作業を実施する際には、足場板15上の作業空間Sで作業員が、パネル13の両側のうちいずれか一方を押出もしくは引き込む。すると、支柱12が軸まわりに水平回転するため、これに伴ってパネル13とプランタ―14が支柱12とともに水平回転する。
【0046】
これにより、
図4の最右で示すパネル13のように、パネル13を180度回転させれば、壁面緑化用植物Pが這う表面13aを足場板15上の作業空間Sに対向させることができる。これにより作業員は、パネル13の表面13aに這わせた壁面緑化用植物Pの枝葉状態の確認や剪定作業の計画、及び剪定作業といったメンテナンス作業を、身を乗り出すことなく一人で実施することが可能となる。
【0047】
また、壁面緑化装置10が、ビルなどの壁面に設けられている場合にも、仮足場板を組む、或いは、高所作業車を使用するなど、大がかりな作業を行うことなく、安全に作業することが可能となる。このようにメンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置10を提供することが可能となる。
【0048】
さらに、剪定作業時には従来のように枝葉を掴みながら選定作業を行う必要がない。壁面緑化装置10毎に、剪定した枝葉を足場板15上に落下させ、剪定終了後に落下した枝葉を一斉回収する作業を繰り返せばよく、作業性を大幅に向上することが可能となる。このとき、足場板15上に土木シートを敷くなどして養生を行えば、剪定した枝葉や剪定道具の階下への落下を防止することも可能となる。
【0049】
なお、
図4で示すように、パネル13を水平回転させると、足場板15から屋外側に向かって開口を生じる。このため、例えば安全帯のフックを引掛けるフック掛け204や丸環を建物200の外壁201に設置しておくとよい。こうすると、作業空間Sで作業する作業員は、これらフック掛け204や丸環にフックを引掛けた安全帯を装着して安全にメンテナンス作業を実施することができる。もしくは、パネル13を構成する枠体131にアイボルト134を取付けてもよい。このアイボルト134を利用して、隣り合うパネル13間にワイヤーやネットを張るなどして落下防止策を講じてもよい。
【0050】
≪≪≪壁面緑化装置の他の事例≫≫≫
上記実施の形態では、正面視矩形形状をなすパネル13の枠体131であって、高さ方向に延びる中心線上に支柱12のパネル固定部12aを設置し、パネル13を支柱12とともに回転扉のごとく水平回転させた。しかし、パネル13に対する支柱12の設置位置は、必ずしもこれに限定するものではない。
【0051】
例えば、枠体131の両側部のうちいずれか一方に支柱12のパネル固定部12aを設置し、
図5で示すように、パネル13を支柱12とともに片扉のごとく水平回転させる構成としてもよい。このとき、パネル13は、
図5で示すように作業空間S側に引き込んで回転させる構造としてもよいが、
図6で示すように屋外側に押し出して回転させる構造としてもよい。こうすると、建物200の外壁201から張り出す支持梁11及び足場板15の張出し量を短小化し、コンパクト化を図ることができる。
【0052】
また、上記実施の形態において、プランター支持部12bを支柱12に固定し、パネル13とプランタ―14が一体となって水平回転する事例を説明した。しかし、支柱12には必ずしもプランター支持部12bを設けなくてもよく、
図7で示すように、プランタ―14を足場板15上に載置し、パネル13のみを支柱12とともに水平回転可能な構成としてもよい。
【0053】
≪≪パネル13の固定機構≫≫
ところで、上記の壁面緑化装置10は、水平回転するパネル13を所定の位置で固定するための固定機構17を備えている。支柱12とともに水平回転したパネル13を所定の位置で固定できる構造を有していればいずれを採用してもよく、
図8では、上支持梁11a側に設けられた円形プレート171と、パネル13側に設けられたロッド173を備えるロッド式の固定機構17を例示している。
【0054】
円形プレート171は、ドーナツ状の円形板部材により構成され、支柱12が貫通された状態で上支持梁11aを構成する軸受け筒体113の下端に固定されている。円形プレート171は支柱12に対して絶縁され、支柱12とともに回転することはない。また、円形プレート171の板面には、周方向に適宜間隔を空けて複数の貫通孔172が設けられ、この貫通孔172にロッド173が抜き差しされる。
【0055】
ロッド173は、パネル13の枠体131を上下方向に貫通するとともに支柱12の軸線方向に延在する長孔133内に挿通されている。また、ロッド173には、円形プレート171の貫通孔172を貫通する高さまで押し上げられた状態で、パネル13の枠体131の上面に載置される固定凸部173bと、円形プレート171の貫通孔172から抜け出す高さまで引き下げられた状態で、パネル13の枠体131に上面に載置される解放凸部173aとを備える。
【0056】
これら解放凸部173aと固定凸部173bは互いに、ロッド173から放射方向であって交差して突出するよう設けられている。したがって、ロッド173を水平回転し、固定凸部173bを支柱12の軸線に向けると、ロッド173は長孔133内で解放凸部173aを下限にして、上下方向に自在に移動させることができる。
【0057】
これにより、パネル13を所定の角度だけ回転させたのち、その位置で固定したい場合には、固定凸部173bを長孔133内に位置させた状態でロッド173を押し上げ、先端を円形プレート171の貫通孔172に挿入させる。こののち、ロッド173を水平回転し、パネル13の枠体131上面に固定凸部173bを載置する。
【0058】
一方、パネル13を回転させたい場合には、ロッド173を水平回転し固定凸部173bを長孔133内に位置させた状態で、解放凸部173aがパネル13の枠体131上面に当接するまで、ロッド173を引き下げる。
【0059】
これにより、支柱12まわりに水平回転するパネル13の壁面緑化用植物Pが這う表面13aを、平常時には屋外側に向けた状態で、天候の影響を受けることなく安定して固定することができる。また、メンテナンス作業時には、パネル13を支柱12とともに水平回転させて、作業に好適な位置で固定することができ、作業性を向上することが可能となる。
【0060】
したがって、円形プレート171には少なくとも、表面13aを外方に向けた状態(平常時)及び作業空間s側に対向させた状態(メンテナンス時)で、パネル13を固定できる位置に貫通孔172を設ければよい。しかし、
図8で示すように、これらに追加して貫通孔172を周方向に間隔を設けて複数形成してもよい。
【0061】
こうすると、
図9で示すように、パネル13を適宜水平回転させて建物200内居室203への入射光の調整をしたのち、この位置でパネル13を固定することができる。したがって、壁面緑化装置10に対して、建物200内居室203におけるアメニティ空間の創出に寄与する機能を付加することも可能となる。
【0062】
≪≪≪パネル13の連動駆動機構≫≫≫
上記の壁面緑化装置10は、作業員が手動でパネル13を個別に水平回転させてもよいが、
図1及び
図2で示すような連動駆動機構18を介して、並列する4本の支柱12を連動回転可能とし、並列配置された4枚のパネル13を同時に水平回転させる構成としてもよい。
【0063】
上記の連動駆動機構18は、壁面緑化装置10ごとに設けることもできるが、
図1及び
図2では、壁面緑化装置10を高さ方向に6体配置して構成した壁面緑化構造100に対して、1台だけ設ける場合を事例に挙げている。連動駆動機構18を1台だけ設ける場合には、壁面緑化装置10を高さ方向に連続して設置したことで直列配置された支柱12どうしを接続させておき、その下端に連動駆動機構18を設置する。
【0064】
連動駆動機構18は、各支柱12の下端部に対して上下方向に設けた一対のスプロケット181と、複数の無端チェーン182と、モータ183を備えている。スプロケット181は、並列配置された4本の支柱12各々の下端部近傍に設けられ、4本の支柱12のうち、紙面上で最右端に位置する支柱12の近傍に、モータ183が配置されている。また、モータ183には、モータ軸184が支柱12と並列に配置されている。
【0065】
そして、このモータ軸184と紙面上で最右端に位置する支柱12の上側のスプロケット181とに無端チェーン182が掛け回されている。また、同様の無端チェーン182が、隣り合う支柱12各々の上下いずれかのスプロケット181に掛け回されている。
【0066】
これにより、モータ183を回転させると、全ての支柱12が同一方向、かつほぼ同一の角度で回転する。これにより、壁面緑化構造100に設けた複数のパネル13を、支柱12とともに連動して水平回転させ同一の角度で傾けることが可能となり、効率が良いだけでなく、パネル13を回転させた状態であっても優れた美観を維持することが可能となる。
【0067】
なお、連動駆動機構18は、スプロケット181と無端チェーン182に限定されるものではなく、プーリとベルトを用いる、或いは、ギアを用いるなど、モータ183の動力を支柱12に伝達可能であれば、いずれを採用してもよい。また、連動駆動機構18の配置位置は、壁面緑化構造100の中間部や最上部に設けてもよい。さらに、連動駆動機構18は、並列配置された4本の支柱12のうち、いずれか数本を選択して連動させてもよい。
【0068】
≪≪≪プランタ―14への給水設備≫≫≫
さらに、上記の壁面緑化装置10は、足場板15に給水槽(図示せず)などを設けるとともに、この給水槽とプランタ―14を接続して給水を行うことも可能であるが、
図1及び
図2では、壁面緑化装置10を高さ方向に6体配置して構成した壁面緑化構造100に対して、給水設備19を設ける場合を事例に挙げている。
【0069】
この場合も連動駆動機構18を設ける場合と同様に、壁面緑化装置10を高さ方向に連続して設置したことで直列配置された支柱12どうしを接続させておき、この接続された支柱12を利用して、給水設備19を設置する。
【0070】
給水設備19は、
図1で示すように、屋上に設けた給水槽191と、給水槽191に一端が接続された供給管192と、供給管192から分岐する支管193を備える。供給管192は、
図2で示すように直列配置された支柱12の中空部に収納され、他端が最下に位置する壁面緑化装置10の支柱12に配置されている。
【0071】
支管193は、
図2で示すように、壁面緑化装置10の支柱12各々で支柱12を貫通するように配置され、その先端が、プランタ―14に接続されている。これにより、プランター14には、給水槽191から供給管192及び支管193を介して給水することが可能となる。このとき、例えば支管193に電磁バルブ等を設けると、プランタ―14ごとで適宜、給水量を調整することも可能となる。
【0072】
本発明の壁面緑化構造100および壁面緑化装置10は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、本実施の形態では、隣り合うパネル13をいずれも同一方向に水平回転可能な構成を例示した。しかし、これに限定するものではなく、各々が正逆いずれの方向の水平回転を可能に構成してもよい。例えば、
図10で示すように、隣り合うパネル13ごとに、枠体131の両側部のうち一方及び他方側に交互に支柱12のパネル固定部12aを設置し、パネル13を観音開きのごとく水平回転させてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 壁面緑化構造
10 壁面緑化装置
11 支持梁
11a 上支持梁
11b 下支持梁
111 支持梁本体
112 ベースプレート
113 軸受け筒体
114 ベアリング
12 支柱
12a パネル固定部
12b プランター支持部
13 パネル
13a 表面
13b 裏面
131 枠体
132 植栽保持部
133 長孔
134 アイボルト
14 プランター
15 足場板
16 横材
17 固定機構
171 円形プレート
172 貫通孔
173 ロッド
173a 解放凸部
173b 固定凸部
18 連動駆動機構
181 スプロケット
182 無端チェーン
183 モータ
184 モータ軸
19 給水設備
191 給水槽
192 供給管
193 支管
200 建物(構造物)
201 外壁(壁面)
202 窓
203 居室
204 フック掛け
S 作業空間
P 壁面緑化用植物