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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107525
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】壁面緑化装置及び壁面緑化構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230727BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20230727BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20230727BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20230727BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
A01G9/00 C
A01G9/02 103T
A01G20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008768
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 龍平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 万貴
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
2E110
【Fターム(参考)】
2B022AB04
2B022AB07
2B327NE12
2B327QA04
2B327TA04
2B327TA07
2B327TA13
2B327TA24
2B327TA27
2B327TC05
2B327TC11
2B327UA03
2B327UA08
2B327UA12
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB22
2E110GB62W
(57)【要約】
【課題】メンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置を提供する。
【解決手段】
構造物の壁面に設けられる壁面緑化装置であって、壁面緑化用植物を設けるパネルと、該パネルの、前記壁面に対向していない表面を前記壁面と対向するよう移動させる移動設備と、該移動設備を介して移動する前記パネルの移動領域を備える足場板と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面に設けられる壁面緑化装置であって、
壁面緑化用植物を設けるパネルと、
該パネルの、前記壁面に対向していない表面を前記壁面と対向するよう移動させる移動設備と、
該移動設備を介して移動する前記パネルの移動領域を備える足場板と、
を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面緑化装置において、
前記足場板に備えた前記移動領域と前記壁面との間に、作業領域が設けられていることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の壁面緑化装置において、
前記移動設備が、
前記パネルを支持しつつ走行する走行体と、
該走行体の前記移動領域内における該走行体の走行方向を案内するガイド部材と、
を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の壁面緑化装置において、
前記移動領域内における前記パネルの位置を固定する固定構造を備えることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の壁面緑化装置において、
前記移動設備と前記パネルの組み合わせが、複数並列配置されていることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の壁面緑化装置が、高さ方向及び/又は横方向に複数配置されていることを特徴とする壁面緑化構造。
【請求項7】
請求項6に記載の壁面緑化構造において、
前記壁面緑化装置が、高さ方向に直列配置されており、
下側に位置する壁面緑化装置に備える前記移動設備が、上方に位置する壁面緑化装置の下面に設けられていることを特徴とする壁面緑化構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の壁面を緑化する壁面緑化装置及び壁面緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素の削減、外壁の修景等を目的に、建物の壁面緑化が進められている。壁面緑化構造には様々な種類があるが、壁面に設置したネットやワイヤーなどの補助資材につる性植物を這わせる登はん型が、広く知られている。
【0003】
登はん型の壁面緑化装置として、たとえば特許文献1には、つる性植物を定着させる縦柵や格子等のような緑化基板と、緑化基板を建築物の壁面に保持する複数の棒状支持具とを備える壁面緑化体が開示されている。棒状支持具は、建築物の壁面に固定され、緑化基板の外縁を着脱自在、かつ回転自在に保持可能に構成されている。
【0004】
これにより、緑化基板は、複数設けられた棒状支持具のうち、いずれかを支点にして建築物から離れる方向に水平回転もしくは鉛直回転できるため、壁面に壁面緑化装置を設けても、建物への入射光の調整が自在となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-092157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、壁面緑化装置は、緑化基板の外側に這わせたつる性植物の手入れなどメンテナンスが必要となる。メンテナンス作業は、外壁と緑化基板の間に管理用通路がある場合、そこから作業者が外側に身を乗り出して枝葉の状態を確認し、剪定作業を実施する。また、剪定作業時は、植物の繁茂状態や緑化基板の大きさによって、さらに身を乗り出す必要が生じるなど、作業性だけでなく作業員の安全確保に課題が生じる。現状では安全帯をかける設備がない場合も多く、剪定作業を担当する作業員に加え、剪定作業員を支えるための作業員を配備するなどして、安全性を確保しており必ずしも効率的とはいえない。
【0007】
また、外壁と緑化基板との間にある管理用通路の足場板にグレーチング等が用いられていることにより隙間がある場合に、建物側から緑化基板の空き空間を利用して枝葉の剪定作業を実施すると、剪定道具や剪定した枝葉などが落下する危険がある。このため、重大な事故を生じることのないよう養生するとともに、細心の注意を払って慎重に作業を行わなければならず、作業が繁雑となる。
【0008】
さらに、外壁と対向する仮足場板を組む、或いは、高所作業車を使用するなどして、建物の外側からメンテナンス作業をすることも考えられるが、大がかりな作業となるだけでなく高所作業となるため、作業者への負担が大きいとともにメンテナンス費用に課題がある。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、メンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置及び壁面緑化構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため本発明の壁面緑化装置は、構造物の壁面に設けられる壁面緑化装置であって、壁面緑化用植物を設けるパネルと、該パネルの、前記壁面に対向していない表面を前記壁面と対向するよう移動させる移動設備と、該移動設備を介して移動する前記パネルの移動領域を備える足場板と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の壁面緑化装置は、前記足場板に備えた前記移動領域と前記壁面との間に、作業領域が設けられていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の壁面緑化装置は、前記移動設備が、前記パネルを支持しつつ走行する走行体と、前記移動領域内における前記走行体の走行方向を案内するガイド部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の壁面緑化装置によれば、壁面緑化用植物を設けたパネルが、足場板上の移動領域内で移動設備を介して、前記壁面と対向する面が反転するよう移動する。したがって、壁面緑化用植物を這わせたパネル表面の向きを、外方に向けられていた状態から構造物の壁面に対向する状態に転換することができる。
【0014】
これにより、移動領域と壁面との間に設けられた作業領域を利用して、作業員は、建物から身を乗り出すことなく、パネル表面に這わせた壁面緑化用植物の枝葉状態の確認や剪定作業の計画、及び剪定作業といったメンテナンス作業を実施することが可能となる。また、壁面緑化装置が、高層ビルなどの壁面に設けられている場合にも、建物の外側に仮足場を組む、或いは、高所作業車を使用するなど、大がかりな作業を行うことなく、安全に作業することが可能となる。このようにメンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置を提供することが可能となる。
【0015】
本発明の壁面緑化装置は、前記移動領域内における前記パネルの位置を固定する固定構造を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の壁面緑化装置によれば、移動設備を介して移動可能なパネルの表面を、平常時には外方に向けた状態で、天候の影響を受けることなく安定して固定することができる。また、壁面緑化用植物のメンテナンス時には移動設備を介してパネルを移動させたのち、作業に好適な位置で固定でき、作業性を向上することが可能となる。さらには、パネルを移動させて居室内への入射光調整をしたのち、この位置で固定することもでき、居室内におけるアメニティ空間の創出に寄与することも可能となる。
【0017】
本発明の壁面緑化装置は、前記移動設備と前記パネルの組み合わせが、複数並列配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の壁面緑化装置によれば、壁面の広範囲を並列配置した複数のパネルで緑化できるため、パネルのコンパクト化を図りメンテナンスの容易性を向上することが可能となる。
【0019】
本発明の壁面緑化構造は、本発明の壁面緑化装置が、高さ方向及び/又は横方向に複数配置されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の壁面緑化構造は、前記壁面緑化装置が、高さ方向に直列配置されており、下側に位置する壁面緑化装置に備える前記移動設備が、上方に位置する壁面緑化装置の下面に設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の壁面緑化構造によれば、構造物の壁面におけるより広い範囲を緑化することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、壁面緑化用植物を設けたパネル表面を、足場板上の移動領域内で移動設備を介して、外方に向けられた状態から構造物の壁面に対向する状態に転換でき、メンテナンス時における作業性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態における壁面緑化装置の縦断面図である。
図2】本実施の形態における壁面緑化装置の平面図である。
図3】本実施の形態における壁面緑化装置の正面図及び移動設備の詳細を示す図である。
図4】本実施の形態における壁面緑化装置の平面図(他の事例)である。
図5】本実施の形態における壁面緑化装置の固定構造の詳細を示す図である。
図6】本実施の形態における壁面緑化構造の正面図である。
図7】本実施の形態における壁面緑化構造の他の事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、構造物の壁面に設ける壁面緑化装置及び壁面緑化構造であって、足場板上に配置されたパネルを、移動設備を介して移動させ、外方に向けられていた壁面緑化用植物の這う表面を構造物の壁面に対向させることにより、壁面緑化用植物のメンテナンスに係る作業性を向上しようとするものである。以下に、壁面緑化装置及び壁面緑化構造の一実施形態を、図1図7を参照しつつ説明する。
【0025】
≪≪壁面緑化装置≫≫
壁面緑化装置10は、図1の平面図で示すように、建物200の一面をなす外壁201に設けられるものであり、足場板11と、足場板11上に設けられた移動設備12と、移動設備12を介して足場板11上を移動するパネル13及びプランター14と、を備えている。
【0026】
≪≪パネル及びプランター≫≫
パネル13は、図2及び図3で示すように、壁面緑化用植物Pを這わせた表面133側が円弧状凸部となり、裏面134側が円弧状凹部となるよう形成したいわゆる緑化パネルであり、並列に配置された4枚のパネル本体13aを連結することにより構成されている。これらの連結部は、連結角度を固定した構造としてもよいし、ヒンジ部材などを利用して可変自在な構造としてもよい。
【0027】
パネル本体13aは、図3(a)で示すように、枠体131と枠体131の内側に設けられる植栽保持部132とを備え、枠体131は、正面視矩形形状に形成されている。この枠体131を介して、隣り合うパネル本体13aは相互に連結されている。
【0028】
植栽保持部132は、壁面緑化用植物Pを這わせる部材であり、図3(a)では、ワイヤーメッシュを採用しているが、その構成はこれに限定されるものではない。登はん型の緑化補助資材として一般に使用されている材料であれば、例えば梯子型ワイヤーや立体金網などを採用することができる。そして、植栽保持部132に這わせる壁面緑化用植物Pは、植栽基盤に植栽されるものであり、植栽基盤をパネル13に設ける構成としてもよい。しかし、本実施の形態では、プランター14に植栽する場合を事例に挙げている。
【0029】
プランター14は、図2(a)で示すように、壁面緑化用植物Pを植栽する土壌を収容した容器であり、パネル13の裏面134側に設けられている。図2ではその平面視形状を、長手方向がパネル本体13aの幅方向に対応する大きさの矩形形状に形成し、1枚のパネル本体13aに対してプランター14を1台設けている。
【0030】
しかし、これに限定されるものではなく、例えば、隣り合うパネル本体13aが相互に角度固定で連結されている場合には、プランター14の数量を4枚のパネル本体13aに対して1つとしてもよい。これらプランター14と前述のパネル13はともに、図2(b)で示すように、移動設備12を介して足場板11上に形成された移動領域S1内を移動可能となっている。
【0031】
≪≪移動設備≫≫
移動設備12は、図2及び図3で示すように、パネル13及びプランター14を支持する走行体121と、足場板11に設置されて走行体121の移動方向を案内するガイド部材122とを備えている。
【0032】
ガイド部材122は、図2(a)で示すように、長尺部材を平面視で円環の一部を切り欠いた円弧状に加工し足場板11の上面に設置したものである。長尺部材としてはC形鋼を採用しており、断面を見ると図3(b)で示すように、上方に溝部が向くよう配置され、この溝部を利用して走行体121の走行方向を案内する。
【0033】
走行体121は、ガイド部材122に沿ってパネル13及びプランター14を移動させることの可能な構成を有していれば、いずれの構造を採用してもよい。図3(a)(b)では、パネル13及びプランター14を支持する支持架台1211と、支持架台1211を支持する複数の走行体本体1212と、走行体本体1212に設けられガイド部材122の溝部内を走行するローラ1213とを備える構造を有している。
【0034】
これにより、図2(a)(b)で示すように、移動領域S1内でパネル13及びプランター14を、走行体121を介して平面視で円弧をなすガイド部材122の、中心点周りに移動させることができる。つまり、外方に向けられていたパネル13の表面133を、外壁201に対向させることができる。
【0035】
なお、ガイド部材122は、必ずしもC形鋼を採用しなくてもよく、走行体121を案内できればいずれの長尺部材を採用してもよい。また、ガイド部材122の平面視形状も、パネル13の表面133の向きを、外方に向けられていた状態から外壁201に対向する状態に転換可能な構成を有していれば、必ずしも円弧状に限定されるものではない。
【0036】
例えば、ガイド部材122をU字に形成するなどしてもよい。この場合には、隣り合うパネル本体13aをヒンジ部材などにより可変可能に連結するとともに、パネル本体13aごとに走行体121を設ければよい。
【0037】
≪≪足場板及び支持構造≫≫
足場板11は、図1及び図2(a)で示すように、外壁201に設置された支持構造15を介して、外壁201から張り出す張出し床のごとく構成されている。その張出し量は、図2(a)で示すように、移動領域S1と作業領域S2とを確保できる大きさを有し、グレーチング材や孔あき鋼板、メッシュ板など、排水性を有する板材により構成されている。
【0038】
支持構造15は、図1で示すように、支持梁151と横材152とを備え、支持梁151は、窓202の下側に設けられている。その構造は、基端側があと施工アンカーなどの固定手段(不図示)により外壁201に固定され、先端側が片持ち状態に張り出している。
【0039】
横材152は、隣り合う支持梁151に架け渡される長尺鋼材であり、支持梁151の基端側と先端側に対をなして配置されている。これら一対の横材152と隣り合う支持梁151とにより形成された領域に、足場板11が設けられることとなる。なお、外壁201より張り出す支持構造15は、上記の構造に限定されるものではない。また、支持梁151及び横材152としてH形鋼を採用する場合を例示しているが、その材料は何ら限定されるものではない。
【0040】
≪≪≪壁面緑化装置のメンテナンス作業≫≫≫
上記の構成を有する壁面緑化装置10は、図2(a)で示すように、平常時においてパネル13の裏面134側を建物200の外壁201に対向させ、壁面緑化用植物Pが這う表面133を外方に向けて配置している。
【0041】
そして、壁面緑化用植物Pの剪定など、壁面緑化装置10のメンテナンス作業を実施する際には、例えば足場板11上の作業員が、パネル13を建物200の外壁201側に向けて引き込む。すると、パネル13は走行体121を介してガイド部材122を走行し、足場板11上の移動領域S1内で、外壁201と対向する面の表裏を反転するよう移動する。
【0042】
つまり、図2(b)で示すように、パネル13の壁面緑化用植物Pが這う表面133を、外壁201に対向させる。これにより作業員は、移動領域S1と外壁との間に確保された作業領域S2内で、パネル13の表面133に這わせた壁面緑化用植物Pの枝葉状態の確認や剪定作業の計画、及び剪定作業といったメンテナンス作業を、身を乗り出すことなく安全かつ効率よく、かつ一人で実施することが可能となる。
【0043】
また、壁面緑化装置10が、高層ビルなどの壁面に設けられている場合にも、仮足場板を組む、或いは、高所作業車を使用するなど、大がかりな作業を行うことなく、安全に作業することが可能となる。このようにメンテナンス時における作業性に優れた壁面緑化装置10を提供することが可能となる。
【0044】
さらに、剪定作業時には従来のように枝葉を掴みながら剪定作業を行う必要がない。壁面緑化装置10毎に、剪定した枝葉を足場板11上に落下させ、剪定終了後に落下した枝葉を一斉回収する作業を繰り返せばよく、作業性を大幅に向上することが可能となる。このとき、足場板11上に土木シートを敷くなどして養生を行えば、剪定した枝葉や剪定道具の階下への落下を防止することも可能となる。
【0045】
≪≪≪壁面緑化装置の他の事例≫≫≫
図1図3では、4枚のパネル本体13aを連結してパネル13を構成する場合を事例に挙げた。しかし、パネル本体13aの数量はこれに限定するものではなく、例えば、1枚のみでもよい。
【0046】
1枚のみの場合には、図4で示すように、パネル13の平面視形状を円弧状に形成し、この円弧形状に対応するようにして、移動設備12の走行体121及びガイド部材122を形成してもよい。さらに、移動設備12のガイド部材122は、必ずしも平面視で円環の一部を切り欠いた円弧状をなしていなくてもよく、図4で示すように半リング状に形成してもよい。
【0047】
≪≪パネルの固定構造≫≫
また、上記の壁面緑化装置10は、図2(a)(b)で示すように、移動領域S1を移動するパネル13を所定の位置で固定するための固定構造17を備えている。固定構造17は、パネル13を足場板11上の所定の位置で固定できる構造を有していればいずれを採用してもよい。
【0048】
例えば、図5で示すように、足場板11側に設けられたロックプレート171と、パネル13側に設けられた回動プレート173を備える固定構造17を採用できる。回動プレート173は、パネル13の下端部近傍における枠体131から側方に突出するように設けられ、枠体131に対してピン174を介して鉛直方向の回転自在に固定されている。一方、ロックプレート171は、回動プレート173に対して直交する姿勢で足場板11上に立設されており、上端に、回動プレート173が鉛直方向に回動した際に挿入する切欠き溝172が設けられている。
【0049】
これにより、パネル13を、移動設備12を介して移動させたのち、ロックプレート171が設置されている位置近傍で固定したい場合には、パネル13の枠体131に設けた回動プレート173を鉛直下方向に回動する。そして、枠体131から側方に張り出した略水平姿勢で、ロックプレート171の上端に形成した切欠き溝172に挿入する。
【0050】
一方、固定を解除しパネル13を移動させたい場合には、パネル13の枠体131に設けた回動プレート173を鉛直上方向に回転して略鉛直姿勢とし、ロックプレート171の上端に形成した切欠き溝172から抜き取る。
【0051】
これにより、移動領域S1内を移動可能なパネル13の壁面緑化用植物Pが這う表面133を、図2(a)で示すように、平常時には外方(屋外側)に向けた状態で、天候の影響を受けることなく安定して固定することができる。また、メンテナンス作業時には、図2(b)で示すように、パネル13を、移動設備12を介して移動させたのち、作業に好適な位置で固定することができ、作業性を向上することが可能となる。
【0052】
したがって、ロックプレート171は少なくとも、図2(a)(b)で示すように、足場板11上のガイド部材122沿いであって、表面133を外方に向けた状態(平常時)及び外壁201に対向させた状態(メンテナンス時)で、パネル13を固定したい位置に設ければよい。しかし、これらに追加してガイド部材122の外周に沿って所定の間隔で、ロックプレート171を複数設けてもよい。
【0053】
こうすると、パネル13を適宜移動させて居室203内への入射光の調整をしたのち、この位置でパネル13を固定することができる。したがって、壁面緑化装置10に対して、居室203内におけるアメニティ空間の創出に寄与する機能を付加することも可能となる。
【0054】
≪≪給水設備≫≫
また、上記の壁面緑化装置10は、図1及び図2(a)で示すように、足場板11上に給水設備16が設けられている。給水設備16は、足場板11上に設けた給水槽161と、給水槽161に一端が接続された供給管162を備える。また、供給管162の他端が接続されるスイベルジョイント163と、スイベルジョイント163を介して分岐する4本の分岐管164とを備える。
【0055】
供給管162は、図2(a)で示すように、ガイド部材122の外側に設けられた給水槽161から円弧をなすガイド部材122の分断箇所を通過するようにして、その内側に延在している。また、スイベルジョイント163は、円弧をなすガイド部材122の中心点に配置されている。そして、このスイベルジョイント163を介して分岐した4本の分岐管164は各々、4つのプランター14に接続されている。これにより、移動設備12を介してパネル13とともに円弧状のガイド部材122に沿ってプランター14が移動しても、4つのプランター14各々に給水することが可能となっている。
【0056】
なお、スイベルジョイント163は、必ずしも円弧をなすガイド部材122の中心点に配置しなくてもよく、ガイド部材122の内側に配置すればよい。この場合には、分岐管164に伸縮自在なフレキシブル管を採用すれば、4つのプランター14が移動しても各々に給水できる。また、給水槽161を、ガイド部材122の内側に配置し、給水管162やスイベルジョイント163を使用せずに、直接、フレキシブル管で給水槽161とプランター14と連結してもよい。さらに、例えば分岐管164に電磁バルブ等を設けると、プランター14ごとで適宜、給水量を調整することも可能となる。
【0057】
上記の壁面緑化装置10は、複数のパネル本体13aからなるパネル13、移動設備12、給水設備16、及び固定構造17の組み合わせを1組のみ設けてもよいし、複数組を並列配置して設けてもよい。例えば図6では、これらの組合わせを横方向に4組採用する場合を事例に挙げており、パネル13どうしが接触しない程度の間隔を設けて並列配置されている。
【0058】
≪≪≪壁面緑化構造≫≫≫
また、上記の壁面緑化装置10は、例えば図6で示すように、高さ方向に複数配置して壁面緑化構造100を構成してもよい。建物200が大規模な場合には、高さ方向だけでなく横方向にも壁面緑化装置10を複数並列配置し、壁面緑化構造100を構成してもよい。また、例えば地上階にエントランスや駐車場の出入り口などが存在する外壁201に壁面緑化構造100を設ける場合には、例えば地上階より上方に設置するなど、適宜変更するとよい。
【0059】
このような壁面緑化構造100において、高さ方向に壁面緑化装置10を直列配置する場合など、壁面緑化装置10の上方に他の足場板や支持構造15が存在する場合には、前述した固定構造17のうち、ロックプレート171をパネル13を構成する枠体131の上端側に立設姿勢で設置する一方で、鉛直回転する回動プレート173を、上方に位置する壁面緑化装置10の、足場板11や支持構造15の下面側に設けると良い。例えば、ロックプレート171を支持構造15のウェブ151と平行な立設姿勢、あるいは直交する立設姿勢とする。そして、回動プレート173を鉛直下方向に回転させた際、回動プレート173の平面と、ロックプレート171の側面が対向するように、両者を配置する。こうすると、パネル13の上部に固定構造17が設けられることから、悪天候時にもより安定してパネルを保持することが可能となる。
【0060】
さらに、高さ方向に壁面緑化装置10を直列配置する場合など、壁面緑化装置10の上方に他の足場板11や支持構造15が存在する場合には、図7で示すように、移動設備12のうち、走行体121をパネル13の上端に設けるとともに、ガイド部材122を上方に位置する壁面緑化装置10を構成する足場板11の下面側に設けてもよい。こうすると、パネル13をカーテン状に吊り下げる態様とすることができる。
【0061】
本発明の壁面緑化装置10によれば、壁面緑化用植物を設けたパネル13が、足場板11上の移動領域S1内で移動設備12を介して、外壁201と対向する面が反転するよう移動する。したがって、壁面緑化用植物を這わせたパネル13の表面133を、外方に向けられていた状態から建物200の外壁201に対向する状態に転換することができる。
【0062】
本発明の壁面緑化装置10は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、本実施の形態では、各階ごとに窓202を有する建物200の外壁201に、壁面緑化装置10を設ける場合を事例に挙げたが、これに限定するものではない。壁面緑化装置10は、いずれの構造物にも採用することが可能であり、また、ビルの外壁や大空間建物の内壁、パネル13を屋上まで延長させて屋上フェンスを兼用させるなど、建物200のいずれの位置にも適用することが可能である。
【0064】
さらに、本実施の形態では壁面緑化のなかでも、つる性植物を這わせる登はん型を事例に挙げるが、植物をはめ込むユニット型、コケを繁殖させる繁殖型など、いずれの種類にも採用可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 壁面緑化構造
10 壁面緑化装置
11 足場板
12 移動設備
121 走行体
1211 支持架台
1212 走行体本体
1213 ローラ
122 ガイド部材
13 パネル
13a パネル本体
131 枠体
132 植栽保持部
133 表面
134 裏面
14 プランター
15 支持構造
151 支持梁
152 横材
16 給水設備
161 給水槽
162 供給管
163 スイベルジョイント
164 分岐管
17 固定構造
171 ロックプレート
172 切欠き溝
173 回動プレート
174 ピン
200 建物(構造物)
201 外壁(壁面)
202 窓
203 居室
S1 移動領域
S2 作業領域
P 壁面緑化用植物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7