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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107561
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】不正確認システム及び不正確認方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230727BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008818
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀 祐介
(72)【発明者】
【氏名】神林 琢也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 伸一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リサイクル材含有材に対する不正を適切に確認できる不正確認システム及び不正確認方法を提供する。
【解決手段】リサイクル材含有材に対する不正を適切に確認できるエコシステム1において、記憶資源33は、生成対象となるリサイクル材を含むリサイクル材含有材のスペクトルデータである仕様スペクトルデータに基づく仕様データと、リサイクル材含有材を生成する原料サプライヤから出荷されるリサイクル材含有材のスペクトルデータである出荷スペクトルデータに基づく出荷データ又はリサイクル材含有材を用いて製造又は加工を行う製造メーカにおいて、原料サプライヤから受け取ったリサイクル材含有材のスペクトルデータである受取スペクトルデータに基づく受取データと、を格納する。プロセッサ32は、仕様データと、出荷データ又は受取データとに基づいて、製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロセッサと、記憶資源とを有するプロセッサシステムを有する不正確認システムであって、
前記記憶資源は、
生成対象となるリサイクル材を含むリサイクル材含有材のスペクトルデータである仕様スペクトルデータに基づく仕様データと、
リサイクル材含有材を生成する原料サプライヤから出荷されるリサイクル材含有材のスペクトルデータである出荷スペクトルデータに基づく出荷データ、又はリサイクル材含有材を用いて製造又は加工を行う製造メーカにおいて、前記原料サプライヤから受け取ったリサイクル材含有材のスペクトルデータである受取スペクトルデータに基づく受取データと、を格納し、
前記プロセッサは、
前記仕様データと、前記出荷データ又は前記受取データとに基づいて、前記製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する
不正確認システム。
【請求項2】
請求項1に記載の不正確認システムにおいて、
前記原料サプライヤに設けられる原料サプライヤシステムをさらに含み、
前記原料サプライヤシステムは、
出荷される前記リサイクル材含有材の前記出荷スペクトルデータを取得し、前記プロセッサシステムに送信する
不正確認システム。
【請求項3】
請求項2に記載の不正確認システムにおいて、
前記原料サプライヤシステムは、
前記出荷スペクトルデータの特徴量を抽出可能にする解析処理の所定の解析条件を前記プロセッサシステムに送信し、
前記プロセッサシステムは、
前記仕様データに対して前記所定の解析条件の解析処理を実行した仕様データ解析データと、前記出荷スペクトルデータ又は前記受取スペクトルデータに対して前記所定の解析条件の解析処理を実行した解析データとに基づいて、前記製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する
不正確認システム。
【請求項4】
請求項3に記載の不正確認システムにおいて、
前記解析条件は、スペクトルデータのノイズ成分を除去するためのノイズ除去条件、スペクトルデータのベースラインを補正するためのベースライン補正条件、スペクトルデータのピークを分離及び先鋭化するためのピーク分離・先鋭化条件との少なくとも一つを含む
不正確認システム。
【請求項5】
請求項1に記載の不正確認システムにおいて、
前記製造メーカに設けられる製造メーカシステムをさらに含み、
前記製造メーカシステムは、
前記原料サプライヤから受け取った前記リサイクル材含有材の前記受取スペクトルデータを、前記プロセッサシステムに送信する
不正確認システム。
【請求項6】
請求項1に記載の不正確認システムにおいて、
前記プロセッサシステムは、
前記製造メーカに設けられる製造メーカシステムである
不正確認システム。
【請求項7】
請求項6に記載の不正確認システムにおいて、
前記原料サプライヤに設けられる原料サプライヤシステムをさらに含み、
前記原料サプライヤシステムは、
前記製造メーカシステムから、生成すべきリサイクル材含有材の仕様となるスペクトルデータである仕様スペクトルデータを受信し、
出荷される前記リサイクル材含有材の前記出荷スペクトルデータを取得し、前記出荷スペクトルデータに対して特徴量を抽出可能にする所定の解析条件の解析処理を実行して出荷データ解析データを生成し、
前記仕様スペクトルデータに対して前記所定の解析条件の解析処理を実行して仕様データ解析データを生成し、
前記仕様データ解析データと、前記出荷データ解析データとに基づいて、前記リサイクル材含有材の前記原料サプライヤから前記製造メーカへの出荷可否を判定する
不正確認システム。
【請求項8】
請求項7に記載の不正確認システムにおいて、
前記原料サプライヤシステムは、
前記所定の解析条件を、前記製造メーカシステムに送信し、
前記製造メーカシステムは、
前記仕様データに対して前記所定の解析条件の解析処理を実行した仕様データ解析データと、前記出荷スペクトルデータ又は前記受取スペクトルデータに対して前記所定の解析条件の解析処理を実行した解析データとに基づいて、前記製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する
不正確認システム。
【請求項9】
請求項1に記載の不正確認システムにおいて、
前記仕様スペクトルデータと、前記出荷スペクトルデータと、前記受取スペクトルデータとは、800nm以上2500nm以下の波長範囲の少なくとも一部の範囲の分光スペクトルデータである
不正確認システム。
【請求項10】
1以上のプロセッサを含むプロセッサシステムを有する不正確認システムによる不正確認方法であって、
前記プロセッサシステムは、
リサイクル材を含むリサイクル材含有材を使用して製造又は加工を行う製造メーカの製造メーカシステムから、生成すべきリサイクル材含有材の仕様を示す仕様データを含む生成要求を受信し、
前記生成要求に基づいて原料サプライヤで生成されたリサイクル材含有材のスペクトルデータである出荷スペクトルデータを取得し、
前記仕様データと、前記出荷スペクトルデータとに基づいて判定される、前記リサイクル材含有材の前記製造メーカへの出荷可否の判定結果を出力する
不正確認方法。
【請求項11】
請求項10に記載の不正確認方法において、
前記不正確認システムは、
判定システムをさらに有し、
前記判定システムは、
前記仕様データと、前記出荷スペクトルデータとに基づいて、前記リサイクル材含有材の前記原料サプライヤから前記製造メーカへの出荷可否を判定し、判定結果を前記プロセッサシステムに送信する
不正確認方法。
【請求項12】
請求項10に記載の不正確認方法において、
前記プロセッサシステムは、
前記仕様データと、前記出荷スペクトルデータとに基づいて、前記リサイクル材含有材の前記原料サプライヤから前記製造メーカへの出荷可否を判定する
不正確認方法。
【請求項13】
1以上のプロセッサと、記憶資源とを有するプロセッサシステムを有する不正確認システムであって、
前記記憶資源は、
リサイクル材含有材を用いて製造又は加工を行う製造メーカにおいて、リサイクル材含有材を生成する原料サプライヤから受け取ったリサイクル材含有材のスペクトルデータである受取スペクトルデータ又は受取スペクトルデータに特徴量を抽出可能にする所定の解析条件に従う解析処理を行った受取データ解析データを格納し、
前記プロセッサは、
前記原料サプライヤから出荷されるリサイクル材含有材のスペクトルデータである出荷スペクトルデータを取得し、
前記出荷スペクトルデータと、前記受取スペクトルデータ又は前記受取データ解析データとに基づいて、前記製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する
不正確認システム。
【請求項14】
請求項13に記載の不正確認システムにおいて、
前記プロセッサは、前記製造メーカのプロセッサシステムから、前記受取スペクトルデータを取得し、前記記憶資源に格納する
不正確認システム。
【請求項15】
請求項13に記載の不正確認システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記受取データ解析データと、前記出荷スペクトルデータに対して前記所定の解析条件の解析処理を実行した受取データ解析データと、に基づいて、前記製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する
不正確認システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル材を含む原材料(リサイクル材含有材)の不正を確認する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サプライチェーンにおける不正行為を防止する技術として、特許文献1に開示の技術がある。特許文献1の要約には、「ラベルの画像情報を読み取ることにより真贋判定が可能であり、且つ、ラベルの画像情報と、出荷関連情報と、が真正に紐付けられていることを証明可能な物流管理技術を提供する。機械読取り可能な情報担体と出荷関連情報が印字されたラベルを使用した物流管理方法であって、ラベル上の情報担体と出荷関連情報を撮像するステップと、取得した画像情報から、特徴点データと、出荷関連情報データを抽出するステップと、抽出した出荷関連情報データを、特徴点データをファイルネームとして紐付けてクラウドサーバに保存するステップと、専用アプリを備えた情報端末を用いて前記ラベル上の情報担体を撮像し、取得した画像情報から特徴点データを抽出し、クラウドサーバに保存されている特徴点データと照合することにより真贋判定を行い、且つ出荷関連情報データを確認可能とするステップと、を備えていることを特徴とする物流管理方法。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-177445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、サーキュラーエコノミーを推進するために、リサイクル材含有材の利用が促進されており、リサイクル材含有材を偽装する等の不正を防ぐことが要請される。しかしながら、特許文献1に開示の技術は、リサイクル材含有材の不正に対して解決することができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は、リサイクル材含有材に対する不正を適切に確認することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、一観点に係る不正確認システムは、1以上のプロセッサと、記憶資源とを有するプロセッサシステムを有する不正確認システムであって、前記記憶資源は、生成対象となるリサイクル材を含むリサイクル材含有材のスペクトルデータである仕様スペクトルデータに基づく仕様データと、リサイクル材含有材を生成する原料サプライヤから出荷されるリサイクル材含有材のスペクトルデータである出荷スペクトルデータに基づく出荷データ、又はリサイクル材含有材を用いて製造又は加工を行う製造メーカにおいて、前記原料サプライヤから受け取ったリサイクル材含有材のスペクトルデータである受取スペクトルデータに基づく受取データと、を格納し、前記プロセッサは、前記仕様データと、前記出荷データ又は前記受取データとに基づいて、前記製造メーカに受け取られたリサイクル材含有材についての不正を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リサイクル材含有材に対する不正を適切に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るエコシステムの概要を説明する図である。
図2図2は、第1実施形態に係るエコシステムの全体構成図である。
図3図3は、第1実施形態に係るエコシステムにおける不正確認処理を説明するフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態に係るエコシステムの概要を説明する図である。
図5図5は、第2実施形態に係るエコシステムにおける不正確認処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係るエコシステムの概要を説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るエコシステムの概要を説明する図である。
【0012】
エコシステムは、サーキュラーエコノミーを実現する構成の一部であり、エコシステムには、リサイクル材を使用してリサイクル材含有材(以下、含有材といもいう)を生成する原料サプライヤと、クラウドサービスを提供するクラウドプロバイダと、含有材を利用して製品を製造(加工)する製造(加工)メーカ(以下、製造メーカという)とが関わる。原料サプライヤは、リサイクル材からリサイクル材含有材を生成する設備と、原料サプライヤシステム10とを有する。製造メーカは、リサイクル材含有材から製品を製造する設備と、製造メーカシステム50とを有する。
【0013】
製造メーカの製造メーカシステム50は、クラウドプロバイダのクラウドサーバ30に対して、原料サプライヤに生成を依頼する生成対象の含有材の基準となる含有材の仕様を示すスペクトルデータ(仕様データ)を格納する(図1(1))。本実施形態では、仕様データは、例えば、予め用意した基準となる含有材から測定される分光スペクトルデータである。
【0014】
次いで、原料サプライヤの原料サプライヤシステム10は、クラウドサーバ30から製造メーカから依頼された生成対象の含有材を生成し、生成した出荷対象となる含有材のスペクトルデータ(出荷データ)を測定する(図1(2))。次いで、原料サプライヤシステム10は、出荷データをクラウドサーバ30に送信し、出荷データに対して特徴量を抽出可能にする解析処理の解析条件の指示を送信する。
【0015】
次いで、クラウドサーバ30は、仕様データに対して解析処理を行った後のデータと、出荷データに対して解析処理を行った後のデータとを比較して、出荷対象の含有材が仕様を満たすか否かを判定することにより、この含有材を出荷できるか否かを判定し(図1(4))、判定結果(出荷可否結果)を原料サプライヤシステム10に送信する(図1(5))。
【0016】
次いで、原料サプライヤシステム10は、出荷可否結果を表示する。原料サプライヤでは、出荷可である場合には、作成した含有材を製造メーカに対して出荷することとなる。
【0017】
製造メーカでは、原料サプライヤから出荷された含有材を受け取ると、製造メーカシステム50は、受け取った含有材についてのスペクトルデータ(受取データ)を測定する(図1(6))。次いで、製造メーカシステム50は、受取データをクラウドサーバ30に送信する(図1(7))。
【0018】
次いで、クラウドサーバ30は、受け取った含有材を製造のために受け入れてよいか否か(受入可否)を判定し(図1(8))、判定結果(受入可否結果)を製造メーカシステム50に送信する(図1(9))。ここで、受入可否の判定としては、仕様データに対して解析処理を行った後の解析データと、受取データに対して解析処理を行った後の解析データとを比較して、受け取った含有材に不正がないか否かを判定してもよく、仕様データに対して解析処理を行った後の解析データと、出荷データに対して解析処理を行った後の解析データとを比較して、受け取った含有材に不正がないか否かを判定してもよく、出荷データに対して解析処理を行った後の解析データと、受取データに対して解析処理を行った後の解析データとを比較して、受け取った含有材に不正がないか否かを判定してもよい。
【0019】
次いで、製造メーカシステム50は、受入可否結果を表示する。製造メーカでは、受入可である場合には、受け取った含有材を用いて製造設備により製品を製造等することとなる。
【0020】
<システム構成>
図2は、第1実施形態に係るエコシステムの全体構成図である。
【0021】
エコシステム1は、不正確認システムの一例であり、原料サプライヤシステム10と、製造メーカシステム50と、クラウドサーバ30とを備える。原料サプライヤシステム10と、製造メーカシステム50と、クラウドサーバ30とは、図示しないネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0022】
<原料サプライヤシステム10>
原料サプライヤシステム10は、プロセッサシステムの一例であり、処理装置11と、スペクトル計測装置16と、入出力装置19とを備える。
【0023】
入出力装置19は、例えば、マウス、キーボード等の入力装置と、ディスプレイ等の表示装置を含み、ユーザによる情報の入力を受け付け、各種情報を含むユーザインターフェースを表示出力する。
【0024】
処理装置11は、例えば、PC(Personal Computer)等の計算機であり、通信モジュール12と、プロセッサ13と、記憶資源14と、入出力モジュール15とを備える。
【0025】
通信モジュール12は、例えば、有線LANカードや無線LANカードなどであり、ネットワークを介して他の装置(例えば、製造メーカシステム50、クラウドサーバ30等)と通信する。
【0026】
プロセッサ13は、記憶資源14に格納されているプログラムに従って各種処理を実行する。
【0027】
記憶資源14は、プロセッサ13で実行対象となるプログラムや、このプログラムで使用する各種情報等を格納する。記憶資源14としては、例えば、半導体メモリ、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等であってよく、揮発タイプのメモリでも、不揮発タイプのメモリでもよい。
【0028】
入出力モジュール15は、スペクトル計測装置16や入出力装置19との間でデータの入出力を行う。
【0029】
スペクトル計測装置16は、測定対象(本実施形態では、出荷対象の含有材100)に対して光を照射し、反射光や透過光等のスペクトルを測定する装置である。測定対象のスペクトルを測定することにより、測定対象の組成の情報又は組成に起因する情報を得ることができる。測定に使用する波長は、例えば、近赤外線の波長範囲(800~2500nm)の少なくとも一部の範囲の波長であってもよい。スペクトル計測装置16は、例えば、ハンディー型の装置であってもよい。
【0030】
スペクトル計測装置16は、光源18と、検出部17とを有する。光源18は測定対象に照射するための所定の波長範囲の光を発生する。検出部17は、測定対象に光を照射して得られる光を検出する。
【0031】
ここで、出荷対象の含有材100又はその含有材100を梱包する梱包材に対して、その含有材100を識別可能なID(製品ID、又は配送ID)を示すバーコード情報(例えば、QRコード(登録商標))が付加されて管理されることがあるが、この場合には、スペクトル計測装置16は、含有材100に対応するバーコード情報と、その含有材100のスペクトルデータとを1操作で測定できるような構成としてもよい。このような構成とすると、IDと、そのIDに対応する含有材100のスペクトルデータとを適切に取得することができ、スペクトルデータの誤取得や、偽装等を防止することができる。
【0032】
<製造メーカシステム50>
製造メーカシステム50は、プロセッサシステムの一例であり、処理装置51と、スペクトル計測装置56と、入出力装置59とを備える。
【0033】
入出力装置59は、例えば、マウス、キーボード等の入力装置と、ディスプレイ等の表示装置を含み、ユーザによる情報の入力を受け付け、各種情報を含むユーザインターフェースを表示出力する。
【0034】
処理装置51は、例えば、PC等の計算機であり、通信モジュール52と、プロセッサ53と、記憶資源54と、入出力モジュール55とを備える。
【0035】
通信モジュール52は、例えば、有線LANカードや無線LANカードなどであり、ネットワークを介して他の装置(例えば、原料サプライヤシステム10、クラウドサーバ30等)と通信する。
【0036】
プロセッサ53は、記憶資源54に格納されているプログラムに従って各種処理を実行する。
【0037】
記憶資源54は、プロセッサ53で実行対象となるプログラムや、このプログラムで使用する各種情報等を格納する。記憶資源54としては、例えば、半導体メモリ、フラッシュメモリ、HDD、SSD等であってよく、揮発タイプのメモリでも、不揮発タイプのメモリでもよい。
【0038】
入出力モジュール55は、スペクトル計測装置56や入出力装置59との間でデータの入出力を行う。
【0039】
スペクトル計測装置56は、測定対象(本実施形態では、受け取った含有材110であり、出荷時や配送中において不正等がない場合には、出荷された含有材100と同一物である)に対して光を照射し、反射光や透過光等のスペクトルを測定する装置である。測定に使用する波長は、例えば、近赤外線の波長範囲(800~2500nm)の少なくとも一部の範囲の波長であってもよい。スペクトル計測装置56は、例えば、ハンディー型の装置であってもよい。スペクトル計測装置56は、スペクトル計測装置16と同機種であってもよく、同規格の機種であってもよい。
【0040】
スペクトル計測装置56は、光源58と、検出部57とを有する。光源58は測定対象に照射するための所定の波長範囲の光を発生する。検出部57は、測定対象に光を照射して得られる光を検出する。
【0041】
スペクトル計測装置56は、含有材110に対応するバーコード情報と、その含有材110のスペクトルとを1操作で測定できるような構成としてもよい。このような構成とすると、含有材110のIDと、そのIDに対応する含有材110のスペクトルデータとを適切に取得することができ、スペクトルデータの誤取得を防止することができる。
【0042】
<クラウドサーバ30>
クラウドサーバ30は、プロセッサシステムの一例及び判定システムの一例であり、例えば、PCや、汎用サーバ等の計算機であり、通信モジュール31と、プロセッサ32と、記憶資源33とを備える。
【0043】
通信モジュール31は、例えば、有線LANカードや無線LANカードなどであり、ネットワークを介して他の装置(例えば、原料サプライヤシステム10、製造メーカシステム50等)と通信する。
【0044】
プロセッサ32は、記憶資源33に格納されているプログラムに従って各種処理を実行する。
【0045】
記憶資源33は、プロセッサ32で実行対象となるプログラムや、このプログラムで使用する各種情報等を格納する。記憶資源33としては、例えば、半導体メモリ、フラッシュメモリ、HDD、SSD等であってよく、揮発タイプのメモリでも、不揮発タイプのメモリでもよい。
【0046】
次に、第1実施形態に係るエコシステムにおける不正確認処理を説明する。
【0047】
図3は、第1実施形態に係るエコシステムにおける不正確認処理を説明するフローチャートである。
【0048】
製造メーカシステム50において、記憶資源54に原料サプライヤにより生成されるべき生成対象の含有材110の仕様を示す分光スペクトルデータ(仕様分光スペクトルデータ:仕様スペクトルデータ、仕様データの一例)を用意する(ステップS1)。ここで、仕様分光スペクトルデータは、例えば、原料サプライヤで生成されるべき含有材の試作品を生成して、スペクトル計測装置56によりその試作品から測定された分光スペクトルデータとしてもよく、プロセッサ53が原料サプライヤにより生成されるべき含有材110の仕様に対応する分光スペクトルデータを模擬的に作成した分光スペクトルデータとしてもよく、予め用意された複数の含有材の分光スペクトルデータから選択されたものとしてもよい。
【0049】
次いで、プロセッサ53は、用意した仕様分光スペクトルデータを、通信モジュール52を介してクラウドサーバ30に送信し、クラウドサーバ30に保存させる(ステップS2)。なお、プロセッサ53は、仕様分光スペクトルデータを、原料サプライヤに対する含有材の生成要求に含めてクラウドサーバ53に送信してもよく、この場合には、クラウドサーバ53は、これらの生成要求を原料サプライヤシステム10に転送してもよい。
【0050】
次いで、原料サプライヤにおいては、製造メーカから生成を要求された含有材をリサイクル材やバージン材を用いて生成する。なお、製造メーカからの含有材の生成要求は、例えば、製造メーカシステム50からクラウドサーバ30を介して、原料サプライヤシステム10が受信して、入出力装置19に表示するようにしてもよく、他の手段により通知してもよい。
【0051】
次いで、原料サプライヤにおいては、スペクトル計測装置16により生成されて出荷対象となる含有材の分光スペクトルデータ(出荷分光スペクトルデータ:出荷スペクトルデータ、出荷データの一例)が測定される。処理装置11のプロセッサ13は、スペクトル計測装置16により測定された出荷分光スペクトルデータを取得する(ステップS3)。
【0052】
次いで、プロセッサ13は、取得した出荷分光スペクトルデータを、通信モジュール12を介してクラウドサーバ30に送信し、クラウドサーバ30に保存させる(ステップS4)。
【0053】
次いで、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、出荷分光スペクトルデータに対して所定の特徴量を抽出可能にするための解析処理を実施し、解析データ(第2解析データ:出荷データ解析データ)を得る(ステップS5)。ここで、解析データとしては、解析処理が施されたスペクトルデータとしてもよく、スペクトルデータから抽出された特徴量(例えば、ピークの位置や、ピークの物理量等)としてもよい。また、解析処理は、予め設定された解析条件に従った解析処理であってもよく、出荷分光スペクトルデータに対する解析結果を原料サプライヤシステム10に逐次提供し、原料サプライヤシステム10から解析条件の変更を逐次受け付けることにより調整された解析条件に従った解析処理であってもよい。ここで、解析条件は、スペクトルデータのノイズ成分を除去するための条件(ノイズ除去条件)、スペクトルデータのベースラインを補正するための条件(ベースライン補正条件)、スペクトルデータのピークを分離及び先鋭化するための条件(ピーク分離・先鋭化条件)との少なくとも一つを含んでもよい。ノイズ除去条件としては、例えば、平滑化サビツキ-ゴレイを実行することとしてもよく、ベースライン補正条件としては、SNV(Standard Normal Variate)、MSC(Multiplicative Scatter Correction)、オフセット補正、線形補正のいずれかを実行することとしてもよく、ピーク分離・先鋭化条件としては、微分処理、MCR(Multivariate Curve Resolution)のいずれかを実行することとしてもよい。
【0054】
次いで、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、出荷分光スペクトルデータと、第2解析データと、解析処理の解析条件とを記憶資源33に保存する(ステップS6)。本実施形態では、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、例えば、出荷分光スペクトルデータと、第2解析データと、解析処理の解析条件と、を出荷対象の含有材を識別するID、例えば、含有材の個体又は種別を示すID又は含有材の配送における配送ID等に対応付けて記憶資源33に保存する。
【0055】
次いで、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、仕様分光スペクトルデータに対して、仕様に対応して生成された含有材に対応する、ステップS6で保存された解析条件に基づいて解析処理を実施し、解析データ(第1解析データ:仕様データ解析データ)を得る(ステップS7)。
【0056】
次いで、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、第1解析データと、第2解析データとを比較し、生成された含有材を出荷してもよいか(具体的には、生成された含有材が仕様を満たしているか否か)の出荷可否を判定し、出荷可否結果を原料サプライヤシステム10に送信する(ステップS8)。ここで、本実施形態では、第1解析データと、第2解析データとが同一又は差が所定の範囲内である場合に、生成された含有材が仕様を満たしている(出荷可)と判定する。
【0057】
原料サプライヤシステム10の処理装置11のプロセッサ13は、出荷可否結果を受信すると、出荷可否の結果を入出力装置19に表示する(ステップS9)。この処理により、出荷される含有材には、生成時における不正がないことが確認できる。
【0058】
この結果、出荷可である場合には、原料サプライヤは、例えば、配送会社に対して、生成した含有材を製造メーカに配送するように指示し、指示を受けた配送会社が含有材を製造メーカに配送する(ステップS10)。ここで、含有材を配送する際には、含有材又は含有材を梱包する梱包材に対して、配送する含有材を識別するID(含有材の個体又は種別を識別するID又は配送を示すID(配送ID))が、例えば、バーコード(例えば、QRコード(登録商標))等により付加される。この後、製造メーカは、配送会社から含有材を受け取ることとなる。
【0059】
製造メーカシステム50においては、受け取った含有材の分光スペクトルデータ(受取分光スペクトルデータ)がスペクトル計測装置56により測定される。処理装置51のプロセッサ53は、スペクトル計測装置56によって測定された受取分光スペクトルデータを取得する(ステップS11)。なお、本実施形態では、プロセッサ53は、配送された含有材を識別するIDについても取得する。このIDは、バーコード等をスキャンして取得されてもよいし、ユーザ等による入力によって取得されてもよい。
【0060】
次いで、プロセッサ53は、取得した受取分光スペクトルデータを、通信モジュール52を介してクラウドサーバ30に送信し、クラウドサーバ30に保存させる(ステップS12)。
【0061】
次いで、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、受取分光スペクトルデータに対して、受け付けた含有材に対応する、ステップS6で保存された解析条件に基づいて解析処理を実施し、解析データ(第3解析データ:受取データ解析データ)を得る(ステップS13)。ここで、スペクトルデータに対して同一の解析条件による解析処理を行うので、解析データによる比較を適切に行うことができる。
【0062】
次いで、クラウドサーバ30のプロセッサ32は、受け取った含有材に対して不正が行われたか否かの不正確認を行って受入可否を判定し(不正がなければ、受入可と判定し、不正があれば、受入不可と判定し)、受入可否結果を製造メーカシステム50に送信する(ステップS14)。
【0063】
ここで、不正確認において、プロセッサ32は、第3解析データと、仕様分光スペクトルに基づく第1解析データとに基づいて、受け取った含有材が仕様に該当するか否か(仕様に一致するか又は仕様の許容範囲内にあるか否か)により不正が行われたかを確認してもよい。この確認方法によると、原料サプライヤによる含有材の生成における不正や、配送時における含有材のすり替え等の不正があったことを適切に把握することができる。
【0064】
また、プロセッサ32は、第3解析データと、出荷分光スペクトルに基づく第2解析データとに基づいて、受け取った含有材110が出荷された含有材100と同じであるか否かにより不正が行われたかを確認してもよい。この確認方法によると、配送時における含有材のすり替え等の不正があったことを適切に把握することができる。
【0065】
また、プロセッサ32は、仕様分光スペクトルに基づく第1解析データと、出荷分光スペクトルに基づく第2解析データとに基づいて、出荷された含有材が仕様に該当するか否かにより不正が行われたかを確認してもよい。この確認方法によると、原料サプライヤによる含有材の生成における不正があったことを適切に把握することができる。
【0066】
製造メーカシステム50の処理装置51のプロセッサ53は、受入可否結果を受信すると、受入可否結果を入出力装置59に表示する(ステップS15)。これにより、製造メーカのユーザは、受け取った含有材110を受け入れてもよいか否かを適切に把握することができる。なお、製造メーカにおいては、含有材を受け入れた後にこの含有材を用いて製品の製造や加工を行うこととなる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るエコシステムについて説明する。
【0068】
まず、第2実施形態に係るエコシステムの概要を説明する。
【0069】
図4は、第2実施形態に係るエコシステムの概要を説明する図である。
【0070】
第2実施形態に係るエコシステムは、第1実施形態に係るエコシステムと同様に、原料サプライヤと、クラウドプロバイダと、製造メーカとが関わる。
【0071】
製造メーカの製造メーカシステム50Aは、クラウドプロバイダのクラウドサーバ30Aに対して、原料サプライヤに生成を依頼する含有材の基準となる含有材の仕様を示すスペクトルデータ(仕様データ)を格納する(図4(1))。
【0072】
次いで、原料サプライヤの原料サプライヤシステム10Aは、クラウドサーバ30Aから製造メーカから指定された含有材の生成要求として仕様データを受け取る(図4(2))。
【0073】
原料サプライヤは、要求された含有材を生成設備により生成する。次いで、原料サプライヤシステム10Aは、生成した出荷対象の含有材のスペクトルデータ(出荷データ)を測定し、出荷データに対する解析処理を実行する(図4(3))。次いで、原料サプライヤシステム10Aは、出荷データに対して解析処理を行った後の解析データと、仕様データに対して同様の解析条件の解析処理を行った後の解析データとを比較して、出荷対象の含有材が仕様を満たすか否かを判定することにより、この含有材を出荷できるか否かを判定し、出荷可否結果を出力する(図4(4))。この後、原料サプライヤでは、出荷可否結果が出荷可である場合には、生成した含有材を製造メーカに対して出荷することとなる。
【0074】
次いで、原料サプライヤシステム10Aは、出荷データと、解析処理の解析条件とをクラウドサーバ30Aに送信する(図4(5))。なお、本実施形態では、原料サプライヤシステム10Aは、出荷データと、解析処理の解析条件とを、対応する含有材を特定可能なIDと対応付けて送信する。
【0075】
製造メーカでは、原料サプライヤから出荷された含有材を受け取ると、製造メーカシステム50Aは、受け取った含有材に対応する、出荷データと、解析条件とをクラウドサーバ30Aから取得する(図4(6))。
【0076】
次いで、製造メーカシステム50Aは、受け取った含有材についてのスペクトルデータ(受取データ)を測定し、受取データに対して、受け取った解析条件に基づいて解析処理を実行する(図4(7))。
【0077】
次いで、製造メーカシステム50Aは、受け取った含有材を製造のために受け入れてよいか否か(受入可否)を判定し、判定結果(受入可否結果)を出力する(図4(8))。ここで、受入可否の判定としては、仕様データに対して解析処理を行った後の解析データと、受取データに対して解析処理を行った後の解析データとを比較して、受け取った含有材に不正がないか否かを判定してもよく、仕様データに対して解析処理を行った後の解析データと、出荷データに対して解析処理を行った後の解析データとを比較して、受け取った含有材に不正がないか否かを判定してもよく、出荷データに対して解析処理を行った後の解析データと、受取データに対して解析処理を行った後の解析データとを比較して、受け取った含有材に不正がないか否かを判定してもよい。この後、製造メーカでは、受入可である場合には、受け取った含有材を用いて製造設備により製品を製造等することとなる。
【0078】
<システム構成>
第2実施形態に係るエコシステムの原料サプライヤシステム10Aと、製造メーカシステム50Aと、クラウドサーバ30Aのハードウェア構成は、図2に示す第1実施形態に係る原料サプライヤシステム10と、製造メーカシステム50と、クラウドサーバ30と同様である。なお、本実施形態では、原料サプライヤシステム10Aと、製造メーカシステム50Aと、クラウドサーバ30Aの内部構成については、便宜的に図2の参照符号を用いる。
【0079】
次に、第2実施形態に係るエコシステムにおける不正確認処理を説明する。
【0080】
図5は、第2実施形態に係るエコシステムにおける不正確認処理を説明するフローチャートである。
【0081】
製造メーカシステム50Aにおいて、記憶資源54に原料サプライヤにより生成されるべき含有材110の仕様を示す分光スペクトルデータ(仕様分光スペクトルデータ:仕様スペクトルデータ、仕様データの一例)を用意する(ステップS21)。ここで、仕様分光スペクトルデータは、例えば、原料サプライヤで生成されるべき含有材の試作品を作成して、スペクトル計測装置56によりその試作品から測定された分光スペクトルデータとしてもよく、プロセッサ53が原料サプライヤにより生成されるべき含有材110の仕様に対応する分光スペクトルデータを模擬的に作成した分光スペクトルデータとしてもよく、予め用意された複数の含有材の分光スペクトルデータから選択されたものとしてもよい。
【0082】
次いで、プロセッサ53は、用意した仕様分光スペクトルデータを、通信モジュール52を介してクラウドサーバ30に送信し、クラウドサーバ30に保存させる(ステップS22)。
【0083】
次いで、原料サプライヤにおいては、製造メーカから生成を要求された含有材をリサイクル材やバージン材を用いて生成する。なお、製造メーカからの含有材の生成要求は、例えば、製造メーカシステム50Aからクラウドサーバ30Aを介して、原料サプライヤシステム10Aが受信して、入出力装置19に表示するようにしてもよく、他の手段により通知してもよい。
【0084】
次いで、原料サプライヤにおいては、生成されて出荷対象となる含有材の分光スペクトルデータ(出荷分光スペクトルデータ:出荷スペクトルデータ、出荷データの一例)がスペクトル計測装置16により測定される。処理装置11のプロセッサ13は、スペクトル計測装置16により測定された出荷分光スペクトルデータを取得する(ステップS23)。
【0085】
次いで、プロセッサ13は、出荷分光スペクトルデータに対して所定の特徴量を抽出可能にするための解析処理を実施し、解析データ(第2解析データ:出荷データ解析データ)を得る(ステップS24)。ここで、解析データとしては、解析処理が施されたスペクトルデータとしてもよく、スペクトルデータから抽出された特徴量(例えば、ピークの位置や、ピークの物理量等)としてもよい。また、解析処理は、予め設定された解析条件に従った解析処理であってもよく、出荷分光スペクトルデータに対する解析結果を出力し、解析条件の変更を逐次受け付けることにより設定された解析条件に従う解析処理であってもよい。ここで、解析条件は、スペクトルデータのノイズ成分を除去するための条件(ノイズ除去条件)、スペクトルデータのベースラインを補正するための条件(ベースライン補正条件)、スペクトルデータのピークを分離及び先鋭化するための条件(ピーク分離・先鋭化条件)との少なくとも一つを含んでもよい。ノイズ除去条件としては、例えば、平滑化サビツキ-ゴレイを実行することとしてもよく、ベースライン補正条件としては、SNV、MSC、オフセット補正、線形補正のいずれかを実行することとしてもよく、ピーク分離・先鋭化条件としては、微分処理、MCRのいずれかを実行することとしてもよい。
【0086】
次いで、プロセッサ13は、出荷する含有材に対応する仕様の仕様分光スペクトルをクラウドサーバ30Aからダウンロードする(ステップS25)。次いで、プロセッサ13は、仕様分光スペクトルに対してステップS24と同じ解析条件に基づいて解析処理を実施し、解析データ(第1解析データ:仕様データ解析データ)を得る(ステップS26)。
【0087】
次いで、プロセッサ13は、第1解析データと、第2解析データとを比較し、生成された含有材を出荷してもよいか(具体的には、生成された含有材が仕様を満たしているか否か)の出荷可否を判定し、出荷可否結果を入出力装置19に出力する(ステップS27)。この処理により、出荷される含有材には、生成時における不正がないことが確認できる。
【0088】
次いで、プロセッサ13は、出荷分光スペクトルデータと、第2解析データと、解析処理の解析条件とをクラウドサーバ30Aに保存する(ステップS28)。本実施形態では、プロセッサ13は、例えば、出荷分光スペクトルデータと、第2解析データと、解析処理の解析条件と、を出荷対象の含有材を識別するID、例えば、含有材のID又は含有材の配送ID等に対応付けてクラウドサーバ30Aに保存する。
【0089】
この後、出荷可否結果が出荷可である場合には、原料サプライヤは、例えば、配送会社に対して、生成した含有材を製造メーカに配送するように指示し、指示を受けた配送会社が含有材を製造メーカに配送する(ステップS29)。この後、製造メーカは、配送会社から含有材を受け取ることとなる。
【0090】
製造メーカシステム50Aにおいては、受け取った含有材の分光スペクトルデータ(受取分光スペクトルデータ:受取スペクトルデータ、受取データの一例)がスペクトル計測装置56により測定される。処理装置51のプロセッサ53は、スペクトル計測装置56により測定された受取分光スペクトルデータを取得する(ステップS30)。
【0091】
次いで、プロセッサ53は、クラウドサーバ30Aから、受け付けた含有材に対応する解析条件を取得し、受取分光スペクトルデータに対して取得した解析条件に基づいて解析処理を実施し、解析データ(第3解析データ:受取データ解析データ)を得る(ステップS31)。
【0092】
次いで、プロセッサ53は、受け取った含有材に対して不正が行われたか否かの不正確認を行って受入可否を判定し(不正がなければ、受入可と判定し、不正があれば、受入不可と判定)、受入可否結果を入出力装置59に出力する(ステップS32)。これにより、製造メーカのユーザは、受け取った含有材110を受け入れてもよいか否かを適切に把握することができる。なお、製造メーカにおいては、含有材を受け入れた後にこの含有材を用いて製品の製造や加工を行うこととなる。
【0093】
ここで、不正確認において、プロセッサ53は、第3解析データと、仕様分光スペクトルに対して同様な解析条件により解析された第1解析データとに基づいて、受け取った含有材が仕様に該当するか否か(仕様に一致又は仕様の許容範囲内にあるか否か)により不正が行われたかを確認してもよい。ここで、仕様分光スペクトルデータは、記憶資源54又はクラウドサーバ30Aから取得するようにすればよい。この確認方法によると、原料サプライヤによる含有材の生成における不正や、配送時における含有材のすり替え等の不正があったことを適切に把握することができる。
【0094】
また、プロセッサ53は、第3解析データと、出荷分光スペクトルデータに基づく第2解析データとに基づいて、受け取った含有材が出荷された含有材と同じであるか否かにより不正が行われたかを確認してもよい。この確認方法によると、配送時における含有材のすり替え等の不正があったことを適切に把握することができる。
【0095】
また、プロセッサ53は、仕様分光スペクトルに基づく第1解析データと、出荷分光スペクトルに基づく第2解析データとに基づいて、出荷された含有材が仕様に該当するか否かにより不正が行われたかを確認してもよい。この確認方法によると、原料サプライヤによる含有材の生成における不正があったことを適切に把握することができる。
【0096】
<バリエーション>
なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。また、下記で説明した処理は組み合わせて用いてもよい。
【0097】
例えば、上記実施形態では、スペクトル計測装置として、分光分析装置を用いた例を示していたが、本発明はこれに限られず、含有材の組成に関係するスペクトルが計測できる装置であればよく、例えば、含有材のマススペクトルを検出することのできる質量分析装置であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では出荷分光スペクトルデータを原料サプライヤシステム10(10A)が有するスペクトル計測装置16を使用するようにしていたが、リサイクル材含有材を配送する配送業者がスペクトル計測装置16と同様な機能を有するスペクトル計測装置を所有し、配送業者が原料サプライヤからリサイクル材含有材を配送のために受領した際に配送業者のスペクトル計測装置により出荷分光スペクトルデータを計測するようにしてもよい。このようにすると、原料サプライヤによる配送するリサイクル材含有材の出荷分光スペクトルデータに対する改変等の不正を防止することができる。また、原料サプライヤシステム10(10A)において、スペクトル計測装置16を備えなくてもよくなる。また、この場合には、製造メーカによってリサイクル材含有材が受け取られる際に、配送業者が配送業者のスペクトル計測装置によりリサイクル材含有材の受取分光スペクトルデータを計測して、製造メーカシステム50(50A)に送信するようにしてもよい。このようにすると、製造メーカシステムにおいて、スペクトル計測装置56を備えなくてもよくなる。
【0099】
また、上記実施形態においては、仕様データ、出荷データ、及び受取データとして、スペクトルデータを用いた例を主に示していたが、本発明はこれに限られず、仕様データ、出荷データ、及び受取データとして、スペクトルデータから得られるスペクトルデータに含まれる所定の特徴量のデータとしてもよい。
【0100】
また、上記第1実施形態において、クラウドサーバ30を、製造メーカに備えるようにしてもよく、クラウドサーバ30の機能を製造メーカシステム50に備えるようにしてもよく、この場合には、クラウドサーバ30と製造メーカシステムの処理装置51とを1つの計算機で構成するようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態において、プロセッサが行っていた処理の一部又は全部を、ハードウェア回路で行うようにしてもよい。また、上記実施形態におけるプログラムは、プログラムソースからインストールされてよい。プログラムソースは、プログラム配布サーバ又は記憶メディア(例えば可搬型の記憶メディア)であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
10,10A…原料サプライヤシステム、11…処理装置、12…通信モジュール、13…プロセッサ、14…記憶資源、15…入出力モジュール、16…スペクトル計測装置、17…検出部、18…光源、19…入出力モジュール、30,30A…クラウドサーバ、31…通信モジュール、32…プロセッサ、33…記憶資源、50,50A…製造メーカシステム、51…処理装置、52…通信モジュール、53…プロセッサ、54…記憶資源、55…入出力モジュール、56…スペクトル計測装置、57…検出部、58…光源、59…入出力装置



図1
図2
図3
図4
図5