(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107566
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】積層体及び熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/00 20060101AFI20230727BHJP
F28F 9/00 20060101ALI20230727BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20230727BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20230727BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20230727BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
F28F3/00 311
F28F9/00 331
F28F3/08 311
F28D9/02
B23K20/00 310L
B23K1/00 330H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008825
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】佐川 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 駿
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
4E167
【Fターム(参考)】
3L065BA15
3L103AA01
3L103DD15
3L103DD55
3L103DD58
4E167AA03
4E167DB01
(57)【要約】
【課題】母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、良好なロウ付けが可能な積層体、及び、その積層体を備えた熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る積層体は、保護板と、流路が形成された熱交換領域を含む伝熱板と、を備え、上記保護板と上記伝熱板が拡散接合によって接合された積層体である。上記保護板は、上記保護板と上記伝熱板とが積層された積層方向において、少なくとも、上記熱交換領域を覆う本体板部と、上記本体板部とはスリット部を隔てて設けられた環状部と、上記環状部と上記本体板部とを繋ぐリブ部とを有し、上記環状部は孔部を有し、上記孔部は上記流路と連通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護板と、
流路が形成された熱交換領域を含む伝熱板と、
を備え、前記保護板と前記伝熱板が拡散接合によって接合された積層体であって、
前記保護板は、
前記保護板と前記伝熱板とが積層された積層方向において、少なくとも、前記熱交換領域を覆う本体板部と、
前記本体板部とはスリット部を隔てて設けられた環状部と、
前記環状部と前記本体板部とを繋ぐリブ部と
を有し、
前記環状部は孔部を有し、前記孔部は前記流路と連通する
積層体。
【請求項2】
請求項1に記載された積層体であって、
前記保護板は、前記伝熱板に接合された第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とに連なる側面とを有し、
前記保護板には、前記側面において前記スリット部と前記積層体の外部とを連通させる開放孔が設けられている
積層体。
【請求項3】
請求項1または2に記載された積層体であって、
前記保護板は、
前記積層方向において、前記伝熱板に積層された第1保護板部と、
前記積層方向において、前記第1保護板部に積層された第2保護板部と
を含み、
前記第2保護板部に前記開放孔が設けられている
積層体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載された積層体であって、
前記保護板の前記孔部には、前記孔部に外部配管が挿入された場合、前記外部配管の挿入を前記孔部の途中で止める係止部が設けられている
積層体。
【請求項5】
請求項3または4に記載された積層体であって、
前記孔部は、前記第1保護板部に形成された第1孔部と、前記第2保護板部に形成された第2孔部とを有し、前記第1孔部の内径が前記第2孔部の内径よりも小さい
積層体。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1つに記載された積層体であって、
前記第2保護板部は、複数の板状部材で形成され、
前記複数の板状部材の少なくとも1つに、前記スリット部に連通する排出溝が設けられる
積層体。
【請求項7】
請求項6に記載された積層体であって、
前記複数の板状部材のそれぞれは、
前記積層方向において、少なくとも、前記第1熱交換領域及び前記第2熱交換領域を覆う第1本体板部と、
前記第1本体板部とはスリット部分を隔てて設けられた第1環状部材と、
前記第1環状部と前記第1本体板部とを繋ぐ第1リブ部材と
を有し、
前記第1リブ部材の厚さは、前記第1本体板部の厚さよりも薄く、
前記排出溝は、前記本体板部の一部分を薄くすることによって形成され、
前記第1リブ部材と前記一部分とが繋がっている
積層体。
【請求項8】
請求項7に記載された積層体であって、
前記第1保護板部と、前記複数の前記板状部材のうち前記第1保護板部に接合された板状部材の前記第1保護板部の側に前記排出溝が形成されている
積層体。
【請求項9】
請求項7または8に記載された積層体であって、
前記複数の板状部材のうち、前記積層方向において互いに接合する少なくとも2つの板状部材に前記排出溝が設けられ、
前記少なくとも2つの板状部材に設けられた前記排出溝同士が前記積層方向において互いに対向する
積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載された積層体であって、
前記リブ部が複数設けられた
積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載された積層体と、
前記孔部に挿入された外部配管と、
前記外部配管と前記環状部との間に設けられた接合材と
を備えた
熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に適用することができる積層体、及び、その積層体を備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の1つに、積層型マイクロ流路熱交換器がある。積層型マイクロ流路熱交換器は、例えば、高温流体流路が形成された伝熱板と、低温流体流路が形成された伝熱板とを交互に積層した積層体部をさらに床板と天井板とよって挟んだ積層体により形成される。床板、伝熱板、及び天井板のそれぞれは、拡散接合によって一体化される。例えば、床板、伝熱板、及び天井板のそれぞれが予め積層され、床板、伝熱板、及び天井板のそれぞれが加圧治具を用いて真空中で上下の方向から加圧・加熱されることによって界面が消失し一体化した積層体が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
積層体には、高温流体流路または低温流体流路に連通する外部配管が、例えば、積層体の上面(天井板)に接合される場合がある。拡散接合の工程では、床板、伝熱板、及び天井板のそれぞれが加圧治具を用いて上下方向から加圧されるが、積層体の上面に外部配管が配置されていると、外部配管が邪魔になり床板、伝熱板、及び天井板を加圧治具で均一に押圧することが困難になる。このため、一体化した積層体を形成した後に、外部配管を積層体に接合する。外部配管を積層体に接合する方策としては、例えば、接合する部材をバーナの炎で加熱する、炎ロウ付け(トーチロウ付け)がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-096666号公報
【特許文献2】特開2021-134946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のロウ付けでは、例えば、予め外部配管を挿入するための孔を設けた天井板を床板、伝熱板とともに積層し、拡散接合によって積層体を形成する。これにより、積層体の上面に外部配管を挿入するための孔を備えた積層体が形成される。そして、その孔に外部配管を挿入して、ロウ材を外部配管と孔との継ぎ目に配置した後、この継ぎ目付近の外部配管と積層体とをバーナによって加熱する。これによりロウ材が融けて外部配管と孔の間の隙間に流れ込み、その後、冷却されることで外部配管と積層体が接合される。
【0006】
しかしながら、外部配管の熱容量は、母材である積層体の熱容量に比べて小さい場合がある。例えば、外部配管と積層体を同じ材料のステンレスとすると、同一比熱の部品に同じ熱量を加えたとき質量の大きな積層体の温度上昇は外部配管の温度上昇より遅くなる。従って、バーナによって外部配管と積層体とを加熱すると、外部配管の温度はロウ材の溶融温度までに早く達するものの、積層体の温度はロウ付が可能な温度まで十分に上昇していないことがある。
【0007】
この結果、ロウ材が外部配管と積層体との間に十分に流れ込まず、外部配管と積層体との接合不良をまねく場合がある。ここで、積層体の温度がロウ付けが可能な十分な温度に達するまで、バーナによって外部配管と積層体を加熱し続ける手法もある。しかし、この手法では、長時間にわたるバーナ加熱が必要となるため、外部配管や積層体が変形したり、過加熱によりロウの酸化や流れすぎが発生しロウ付け不良が発生したりするおそれがある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、良好なロウ付けが可能な積層体、及び、その積層体を備えた熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層体は、保護板と、流路が形成された熱交換領域を含む伝熱板と、を備え、上記保護板と上記伝熱板が拡散接合によって接合された積層体である。
上記保護板は、
上記保護板と上記伝熱板とが積層された積層方向において、少なくとも、上記熱交換領域を覆う本体板部と、
上記本体板部とはスリット部を隔てて設けられた環状部と、
上記環状部と上記本体板部とを繋ぐリブ部と
を有し、
上記環状部は孔部を有し、上記孔部は上記流路と連通する。
【0010】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、良好なロウ付けが可能になる。
【0011】
上記の積層体においては、上記保護板は、上記伝熱板に接合された第1主面と、上記第1主面と反対側の第2主面と、上記第1主面と上記第2主面とに連なる側面とを有し、上記保護板には、上記側面において上記スリット部と上記積層体の外部とを連通させる開放孔が設けられてもよい。
【0012】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0013】
上記の積層体においては、上記保護板は、上記積層方向において、上記伝熱板に積層された第1保護板部と、上記積層方向において、上記第1保護板部に積層された第2保護板部とを含み、上記第2保護板部に上記開放孔が設けられてもよい。
【0014】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0015】
上記の積層体においては、上記保護板の上記孔部には、上記孔部に外部配管が挿入された場合、上記外部配管の挿入を上記孔部の途中で止める係止部が設けられてもよい。
【0016】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0017】
上記の積層体においては、上記孔部は、上記第1保護板部に形成された第1孔部と、上記第2保護板部に形成された第2孔部とを有し、上記第1孔部の内径が上記第2孔部の内径よりも小さくてもよい。
【0018】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0019】
上記の積層体においては、上記第2保護板部は、複数の板状部材で形成され、上記複数の板状部材の少なくとも1つに、上記スリット部に連通する排出溝が設けられてもよい。
【0020】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0021】
上記の積層体においては、上記複数の板状部材のそれぞれは、上記積層方向において、少なくとも、上記第1熱交換領域及び上記第2熱交換領域を覆う第1本体板部と、上記第1本体板部とはスリット部分を隔てて設けられた第1環状部材と、上記第1環状部材と上記第1本体板部とを繋ぐ第1リブ部材とを有し、上記第1リブ部材の厚さは、上記第1本体板部の厚さよりも薄く、上記排出溝は、上記本体板部の一部分を薄くすることによって形成され、上記第1リブ部材と上記一部分とが繋がってもよい。
【0022】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0023】
上記の積層体においては、上記第1保護板部と、上記複数の上記板状部材のうち上記第1保護板部に接合された板状部材の上記第1保護板部の側に上記排出溝が形成されてもよい。
【0024】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0025】
上記の積層体においては、上記複数の板状部材のうち、上記積層方向において互いに接合する少なくとも2つの板状部材に上記排出溝が設けられ、上記少なくとも2つの板状部材に設けられた上記排出溝同士が上記積層方向において互いに対向してもよい。
【0026】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0027】
上記の積層体においては、上記リブ部が複数設けられてもよい。
【0028】
このような積層体であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、さらに良好なロウ付けが可能になる。
【0029】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱交換器は、
上記積層体と、
上記孔部に挿入された外部配管と、
上記外部配管と上記環状部との間に設けられた接合材と
を備える。
【0030】
このような熱交換器であれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、良好なロウ付けが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたように、本発明によれば、母材である積層体と外部配管とをロウ付けにより接合する際、良好なロウ付けが可能な積層体、及び、その積層体を備えた熱交換器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係る積層体の模式的斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る積層体の模式的平面図である。
【
図3】本実施形態に係る熱交換器を示す模式的斜視図である。
【
図4】孔部に外部配管が接合された状態の模式的断面図である。
【
図5】図(a)、(b)は、積層体の伝熱部に含まれる伝熱板の模式的斜視図である。
図5(c)は、積層体の床板を形成する保護板部の模式的斜視図である。
【
図6】積層体の天井板を形成する保護板部の模式的斜視図である。
【
図7】図(a)は、比較例の作用を説明する模式図であり、図(b)は、本実施形態の作用を説明する模式図である。
【
図8】スリット部と積層体の外部とを連通させる開放孔が天井板の側面に設けられた例を示す模式的斜視図である。
【
図9】
図8の1点鎖線L1に沿ってZ軸方向に積層体を切断した模式的断面図である。
【
図10】図(a)は、板状部材の模式的斜視図であり、図(b)は、図(a)の1点鎖線L1に沿ってZ軸方向に板状部材を切断し模式的断面図である。
【
図11】開放孔が設けられた積層体の作用を示す模式図である。
【
図12】図(a)は、板状部材において排出溝が積層体の下面となる主面の側に形成された例を示す模式的斜視図である。図(b)は、図(a)に示された破線L2及び破線L3で囲まれた板状部材の領域Aを取り除いた模式的斜視図である
【
図13】排出溝が積層体の上面側に形成された板状部材と、排出溝が積層体の下面側に形成された板状部材とを積層方向において接合させた天井板を示す模式的斜視図である。
【
図14】環状部の周りに複数のリブ部が設けられた例を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0034】
図1は、本実施形態に係る積層体の模式的斜視図である。
図1に示す積層体1は、例えば、積層型マイクロ流路熱交換器に適用される。積層体1は、伝熱部2と、床板3と、天井板4とを備える。伝熱部2は、床板3と天井板4との間に設けられる。積層体1は、略直方体形状をしている。
図1では、天井板4の側を上側、床板3の側を下側とする。床板3及び天井板4を総称して保護板とも言う。以下では、保護板を床板または天井板として説明する。
【0035】
積層体1は、主面1u(上面)と、主面1uとは反対側の主面1d(下面)と、主面1uと主面1dとをつなぐ側面1wとを有する。積層体1は、4つの側面1wを有する。伝熱部2は、流路(後述)が形成された伝熱板21Aと、流路が形成された伝熱板21Bと積層方向(床板3、伝熱板21A、伝熱板21B、及び天井板4が積層された方向)に積層されることよって形成される。
【0036】
積層体1においては、主面1uに孔部2ha~2hdが形成される。孔部2haから孔部2hcに向かう方向と、孔部2hbから孔部2hdに向かう方向は、略直交する。孔部2haと孔部2hcとは、例えば、伝熱板21Bに設けられた流路に連通する(後述)。孔部2hbと孔部2hdとは、例えば、伝熱板21Aに設けられた流路に連通する(後述)。孔部2ha~2hdの詳細については、後述する。
【0037】
積層体1においては、伝熱部2の下側に床板3が設けられ、伝熱部2の上側に天井板4が設けられる。床板3は、積層方向に積層された複数(例えば、2枚以上6枚以下、7枚以上でもよい。
図1では6枚)の保護板部31を含む。天井板4は、積層方向に積層された保護板部41(第1保護板部)と、保護板部42(第2保護板部)とを有する。保護板部42は、さらに複数(例えば、2枚以上5枚以下、6枚以上でもよい。
図1では5枚)の板状部材420を含む。保護板部31、保護板部41、及び保護板部42のそれぞれは、例えば、ステンレス等の金属板で形成される。
【0038】
複数の保護板部31のそれぞれ、交互に積層された、伝熱板21A及び伝熱板21B、保護板部41、及び複数の板状部材420のそれぞれは、積層方向において拡散接合によって接合され一体化される。すなわち、積層体1に含まれる、全ての保護板部と、全ての伝熱板とが積層方向において拡散接合によって接合されている。なお、床板3及び天井板4のそれぞれは、複数の金属板に限らず、1つの金属板で形成されてもよい。また、拡散接合後、積層方向に並ぶ破線(複数の保護板と伝熱板のそれぞれの境界を示す破線)は消滅することがある。
【0039】
積層体1の伝熱部2の内部には、積層方向に延びる4つの空間260、270、280、290が形成される。ここで積層方向をZ軸方向、空間260から空間280に向かう方向をX軸方向、空間270から空間290に向かう方向をY軸方向とした場合、4つの空間260、270、280、290において、Y軸方向に並ぶ2つの空間のうちの一方の空間270は、孔部2hbに繋がり、他方の空間290は、孔部2hdに繋がる。また、4つの空間において、X軸方向に並ぶ2つの空間260、280のうちの一方の空間260は、孔部2haと繋がり、他方の空間280は、孔部2hcと繋がる。
【0040】
図2は、本実施形態に係る積層体の模式的平面図である。
図2では、積層体1をZ軸方向において主面1uから見た平面が示されている。
【0041】
天井板4は、本体板部400と、4つの環状部412、422、432、442と、本体板部400と環状部412とを繋ぐリブ部413と、本体板部400と環状部422とを繋ぐリブ部423と、本体板部400と環状部432とを繋ぐリブ部433と、本体板部400と環状部442とを繋ぐリブ部443とを有する。本体板部400と環状部412との間には、スリット部414が設けられている。本体板部400と環状部422との間には、スリット部424が設けられている。本体板部400と環状部432との間には、スリッ部ト434が設けられている。本体板部400と環状部442との間には、スリット444部が設けられている。
【0042】
本体板部400は、積層方向において、少なくとも、伝熱板21A及び伝熱板21Bのそれぞれの熱交換領域(後述)を覆う。環状部412は、本体板部400とはスリット部414を隔てて設けられる。環状部422は、本体板部400とはスリット部424を隔てて設けられる。環状部432は、本体板部400とはスリット部434を隔てて設けられる。環状部442は、本体板部400とはスリット部444を隔てて設けられる。
【0043】
環状部412は、孔部2haを有する。孔部2haは、空間260を介して伝熱板21Bに設けられた流路と連通する。環状部422は、孔部2hbを有する。孔部2hbは、空間270を介して伝熱板21Aに設けられた流路と連通する。環状部432は、孔部2hcを有する。孔部2hcは、空間280を介して伝熱板21Bに設けられた流路と連通する。環状部442は、孔部2hdを有する。孔部2hdは、空間290を介して伝熱板21Aに設けられた流路と連通する。
【0044】
図1、
図2に示された積層体1は、例えば、
図3に示す熱交換器10(積層型マイクロ流路熱交換器)に適用される。
図3は、本実施形態に係る熱交換器を示す模式的斜視図である。熱交換器10においては、積層体1の主面1uに外部配管101、102、103、104が、例えば、ロウ付けによって接合される。外部配管101、102、103、104のそれぞれは、冷媒回路に直接的に繋がれる冷媒配管に適用されたり、冷媒回路に繋がれた冷媒配管を熱交換器に接続するための継手の一部(配管部分)に適用されたりする。
【0045】
例えば、孔部2haには、外部配管101が挿入され、外部配管101は、ロウ付けによって孔部2haに接合される。孔部2hbには、外部配管102が挿入され、外部配管102は、ロウ付けによって孔部2hbに接合される。孔部2hcには、外部配管103が挿入され、外部配管103は、ロウ付けによって孔部2hcに接合される。孔部2hdには、外部配管104が挿入され、外部配管104は、ロウ付けによって孔部2hdに接合される。
【0046】
例えば、高温流体が積層体1の外部配管102から流入すると、高温流体は、空間270を介して伝熱部2を経由し、空間290を介して外部配管104から流出する。一方、低温流体が外部配管103から流入すると、低温流体は、空間280を介して伝熱部2を経由し、空間260を介して外部配管101から流出する。
【0047】
図4に、孔部に外部配管が接合された状態の模式的断面を示す。
図4は、
図3の一点鎖線L1線に沿ってZ軸方向に積層体を切断した模式的断面図である。
図4には、孔部2ha、2hb、2hc、2hdのうち、孔部2haと、孔部2haの周辺の構造とが示されている。
図4に示す断面構造は、孔部2hb、2hc、2hdと、孔部2hb、2hc、2hdのそれぞれの周辺構造にも適用される。
【0048】
図4に示すように、外部配管101は、孔部2haに挿入される。熱交換器10においては、外部配管101と環状部412との間には、銀ロウ等のロウ材である接合材405が設けられる。外部配管101が孔部2haに挿入されることで、外部配管101は空間260に連通する。
【0049】
図4と
図2とに示されるように、環状部412は、Z軸方向に所定の長さ(高さ)を持ち、例えば、円筒状になっている。環状部412の形状は、環状部422、432、442のそれぞれにも適用される。また、リブ部413は、Z軸方向に所定の長さ(高さ)を持ち、柱状(角棒状)になっている。リブ部413の形状は、リブ部423、433、443のそれぞれにも適用される。また、スリット部414は、後述するスリット部分414a(
図6(a))が積層方向に繋がって形成されたものである。スリット部414は、Z軸方向に所定の長さ(高さ)を持ち、環状部412の外周に沿って形成された空間である。また、スリット部414の形状は、スリット部424、434、444のそれぞれにも適用される。
【0050】
また、孔部2haには、孔部2haに外部配管101が挿入された場合、外部配管101の挿入を孔部2haの途中で止める係止部205が設けられている。例えば、孔部2haは、保護板部41に形成された孔部201a(第1孔部)と、保護板部42に形成された孔部202a(第2孔部)とを有する。ここで、孔部201aの内径R1が孔部202aの内径R2及び外部配管101の外径R3よりも小さく形成される。これにより、保護板部41と、保護板部41に積層された保護板部42とによって段差が生じる。保護板部42から孔部2haの中心側に向かって保護板部41の突き出た部分が外部配管101の孔部2haへの挿入を途中で止める係止部として機能する。なお、このような突き出た部分は、保護板部41に限らず、例えば、保護板部41の上方の保護板部42のいずれかに設けてもよい。
【0051】
図5(a)、(b)は、積層体の伝熱部に含まれる伝熱板の模式的斜視図である。
図5(a)には、伝熱部2に含まれる伝熱板21Aが示され、
図5(b)には、伝熱部2に含まれる伝熱板21Bが示される。
図5(c)は、積層体の床板を形成する保護板部の模式的斜視図である。
【0052】
図5(a)に示す伝熱板21Aは、所定の厚さを有し平面形状が矩形状の金属板で形成される。伝熱板21Aには、その4辺のそれぞれの内側に、その4辺のそれぞれに沿って、貫通孔26と、貫通孔27と、貫通孔28と、貫通孔29とが設けられている。また、伝熱板21Aは、熱交換領域(第1熱交換領域)を含む。例えば、伝熱板21Aにおいては、積層体1の主面1uの側の主面に、高温流体の流路を形成する溝255と、複数の溝250と、溝256とが設けられている。複数の溝250のそれぞれは、溝255と溝256とに連通する。溝255、250、256は、伝熱板21Aの主面に、例えば、ハーフエッチングにより形成される。
【0053】
複数の溝250は、X軸方向に沿って形成される。溝255、256は、Y軸方向に沿って形成される。溝255の一端は、貫通孔27と連通する。溝256は、その一端が貫通孔29と連通する。すなわち、Y軸方向の両端部に設けられる貫通孔27と貫通孔29との間には、貫通孔27と貫通孔29との間を連通する、複数の溝250と、溝255と、溝256とが形成されている。溝255と、複数の溝250と、溝256とによって、伝熱板21Aの熱交換領域が形成される。
【0054】
図5(b)に示す伝熱板21Bは、所定の厚さを有し平面形状が伝熱板21Aと同じ矩形状の金属板で形成される。伝熱板21Bには、その4辺のそれぞれの内側に、その4辺のそれぞれに沿って、貫通孔26と、貫通孔27と、貫通孔28と、貫通孔29とが設けられている。また、伝熱板21Bは、熱交換領域(第2熱交換領域)を含む。例えば、伝熱板21Bにおいては、積層体1の主面1uの側の主面に、熱交換領域であって低温流体の流路を形成する溝251が設けられている。溝251は、伝熱板21Bの主面に、例えば、ハーフエッチングにより形成される。複数の溝251は、X軸方向に沿って形成される。溝251は、その一端が貫通孔26と連通し、他端は、貫通孔28と連通する。
【0055】
すなわち、X軸方向の両端部に設けられる貫通孔26と貫通孔28との間には、貫通孔26と貫通孔28との間を連通する複数の溝251が形成されている。複数の溝251によって、伝熱板21Bの熱交換領域が形成される。
【0056】
積層体1の伝熱部2においては、伝熱板21Aと伝熱板21Bとが積層方向において交互に接合されることから、伝熱板21Aの貫通孔26と伝熱板21Bの貫通孔26とが積層方向に交互に繋がる。これにより、空間260が形成される。伝熱板21Aの貫通孔27と伝熱板21Bの貫通孔27とが積層方向に交互に繋がる。これにより、空間270が形成される。伝熱板21Aの貫通孔28と伝熱板21Bの貫通孔28とが積層方向に交互に繋がる。これにより、空間280が形成される。伝熱板21Aの貫通孔29と伝熱板21Bの貫通孔29とが積層方向に交互に繋がる。これにより、空間290が形成される。
【0057】
図5(c)に示す保護板部31は、床板3を形成する。保護板部31は、所定の厚さを有し平面形状が伝熱板21Aと同じ矩形状の金属板で形成される。保護板部31の厚さは、伝熱板21A、21Bの厚さと同じでもよく、同じでなくてもい。
【0058】
図6(a)(b)は、積層体の天井板を形成する保護板部の模式的斜視図である。
図6(a)には、天井板4のうち、保護板部42を形成する複数の板状部材420のうち、1枚の板状部材420が示される。板状部材420は、所定の厚さを有し平面形状が伝熱板21Aと同じ矩形状の金属板で形成される。板状部材420の厚さは、伝熱板21A、21Bの厚さと同じでもよく、同じでなくてもい。
【0059】
板状部材420は、本体板部400bと、4つの環状部材412a、422b、432c、442dと、本体板部400bと環状部材412aとを繋ぐ板状のリブ部材413aと、本体板部400bと環状部材422bとを繋ぐ板状のリブ部材423bと、本体板部400bと環状部材432cとを繋ぐ板状のリブ部材433cと、本体板部400bと環状部材442dとを繋ぐ板状のリブ部材443dとを有する。板状部材420において、本体板部400bは、積層方向において、少なくとも、伝熱板21Aの熱交換領域及び伝熱板21Bの熱交換領域を覆う。本実施形態では、本体板部400bは、第1本体板部とし、4つの環状部材412a、422b、432c、442dのそれぞれは、第1環状部材とし、リブ部材413a、423b、433c、443dのそれぞれは、第1リブ部材とする。
【0060】
また、本体板部400bと環状部材412aとの間には、スリット部分414aが設けられている。環状部材412aは、本体板部400bとはスリット部分414aを隔てて設けられる。本体板部400bと環状部材422bとの間には、スリット部分424bが設けられている。環状部材422bは、本体板部400bとはスリット部分424bを隔てて設けられる。本体板部400bと環状部材432cとの間には、スリット部分434cが設けられている。環状部材432cは、本体板部400bとはスリット部分434cを隔てて設けられる。本体板部400bと環状部材442dとの間には、スリット部分444dが設けられている。環状部材442dは、本体板部400bとはスリット部分444dを隔てて設けられる。環状部材412aは、孔部202aを有する。環状部材422bは、孔部202bを有する。環状部材432cは、孔部202cを有する。環状部材442dは、孔部202dを有する。
【0061】
図6(b)には、天井板4のうち、保護板部41が示される。保護板部41は、所定の厚さを有し平面形状が伝熱板21Aと同じ矩形状の金属板で形成される。保護板部41の厚さは、伝熱板21A、21Bの厚さと同じでもよく、同じでなくてもい。保護板部41は、本体板部400aと、4つの孔部201a、201b、201c、201dとを有する。本体板部400aは、積層方向において、少なくとも、伝熱板21Aの熱交換領域及び伝熱板21Bの熱交換領域を覆う。保護板部41には、環状部が設けられてなく、スリットも設けられていない。また、孔部201aの内径は、孔部202aの内径よりも小さく、孔部201bの内径は、孔部202bの内径よりも小さく、孔部201cの内径は、孔部202cの内径よりも小さく、孔部201dの内径は、孔部202dの内径よりも小さい。
【0062】
複数の保護板部31が積層方向に積層され、この上に、伝熱板21Aと伝熱板21Bとが交互に積層され、さらに、この上に保護板部41と複数の板状部材420とが積層されて、それぞれが拡散接合により接合されて、
図1に示す積層体1が形成される。
【0063】
天井板4においては、複数の板状部材420のそれぞれに形成された環状の環状部材412aが積層方向において接合されて円筒状の環状部412が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成された環状の環状部材422bが積層方向において接合されて円筒状の環状部422が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成された環状の環状部材432cが積層方向において接合されて円筒状の環状部432が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成された環状の環状部材442dが積層方向において接合されて円筒状の環状部442が形成される。
【0064】
また、天井板4においては、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたリブ部材413aが積層方向において接合されてリブ部413が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたリブ部材423bが積層方向において接合されてリブ部423が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたリブ部材433cが積層方向において接合されてリブ部433が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたリブ部材443dが積層方向において接合されてリブ部443が形成される。
【0065】
また、天井板4においては、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたスリット部分414aが積層方向において接合されてスリット部414が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたスリット部分424bが積層方向において接合されてスリット部424が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたスリット部分434cが積層方向において接合されてスリット部434が形成され、複数の板状部材420のそれぞれに形成されたスリット部分444dが積層方向において接合されてスリット部444が形成される。
【0066】
本実施形態の作用について説明する。
図7(a)は、比較例の作用を説明する模式図であり、
図7(b)は、本実施形態の作用を説明する模式図である。
図7(a)、(b)では、孔部2haに外部配管101が挿入され、孔部2haと外部配管101がバーナの炎を熱源とする炎ロウ付け(トーチロウ付け、以下、単にロウ付けとする)により接合材405によって接合されるときの状態が示されている。本実施形態での外部配管101が孔部2haにロウ付けされるときの作用は、外部配管102が孔部2hbにロウ付けされるときの作用、外部配管103が孔部2hcにロウ付けされるときの作用、及び外部配管104が孔部2hdにロウ付けされるときの作用にも適用される。
【0067】
図7(a)に示す比較例では、環状部412とスリット部414とが設けられていない。このため、ロウ付を行う際、バーナ500で外部配管101と積層体1とを加熱すると、外部配管101の温度は接合材405の溶融温度までに早く達するものの、積層体1の温度は、接合材405の溶融温度まで早く達しないことがある。これは、外部配管101の母材である積層体1の熱容量が外部配管101の熱容量よりも大きいためである。
【0068】
このような状態でロウ付けを試みると、接合材405が外部配管101と孔部2haとの間に十分に流れ込まず、外部配管101と積層体1との接合不良をまねく虞がある。この対策として、積層体1の温度が接合材405の溶融温度まで達するまで積層体1を加熱し続ける手法がある。しかし、この手法では徒に加熱時間が長くなるほか、過加熱によって、外部配管101または積層体1が変形する可能性がある。また、接合材405が酸化したり、接合材405が流れすぎたりすることによるロウ付け不良が発生する虞がある。
【0069】
これに対し、
図7(b)に示す本実施形態では、孔部2haが設けられた環状部412を形成する。さらに、環状部412は、スリット部414を隔てて本体板部400と離れている。このため、バーナ500で外部配管101と環状部412とを加熱すると、スリット部414が設けられていない場合と比べて外部配管101の温度が接合材405の溶融温度まで早く達するととともに、環状部412の温度も接合材405の溶融温度まで早く達する。これは、環状部412がスリット部414を隔てて本体板部400から離されているため、スリット部414により外部配管101と環状部412とを加熱した熱が熱容量の大きい本体板部400側へ逃げることが抑制されるためである。
【0070】
従って、バーナ500で外部配管101と環状部412とを加熱すると、外部配管101と環状部412とが共にスリット部414が設けられていない場合と比べて早く接合材405の溶融温度までに達する。この結果、接合材405は、外部配管101と孔部2haとの間に十分に流れ込む。これにより、外部配管101と環状部412とが接合材405によってより確実に接合される。また、環状部412の温度が接合材405の溶融温度までに早く達するため、徒に加熱時間が長くなることもない。この結果、過加熱による、外部配管101または積層体1の変形も起きにくくなる。また、接合材405が酸化や、接合材405の流れすぎによるロウ付け不良も起きにくくなる。
【0071】
さらに、本実施形態によれば、積層体1を拡散接合によって形成する前に予め天井板4に外部配管101を接合する必要がない。このため、積層方向に積層させた金属板を加圧治具によって上下から確実に加圧することができ、拡散接合を利用して安定して積層体1を形成することができる。
【0072】
ここで、外部配管101を孔部2haにロウ付する際、良好な接合を得るために接合材405のほか、フラックスを使用する場合がある。但し、外部配管101を孔部2haにロウ付した後、接合部分にフラックスが付着していると、フラックスが付着している部分がフラックスによって腐食する虞がある。このため、ロウ付け後は残留しているフラックスを積層体1から除去することが望ましい。
【0073】
例えば、フラックスを外部配管101または環状部412に塗布すると、フラックスが外部配管101近傍のスリット部414に流入する場合がある。フラックスがスリット部414に流入したまま放置しておくと、スリット部414の内壁がフラックスによって腐食する可能性がある。このため、スリット部414からは残留フラックスを除去することが望ましい。但し、フラックスがスリット部414の奥にまで入り込んでしまうと、洗浄や、エアブローを試みてもフラックスをスリット部414から除去することが難しい状況に陥る。
【0074】
これに対し、本実施形態では、積層体1の天井板4の側面にスリット部414と積層体1の外部とを連通させる開放孔を設ける。この開放孔を介してスリット部414内に残留するフラックスを取り除くことを可能とする。
【0075】
図8は、スリット部と積層体の外部とを連通させる開放孔が天井板の側面に設けられた例を示す模式的斜視図である。
図8では、仮に天井板4が積層方向に伝熱部2から離された場合の模式図が示されている。
図8では、環状部412~442のうち、環状部412と、環状部412近傍の側面4wとが示されているが、この構造は、環状部422、432、442と、環状部422、432、442のそれぞれの近傍の側面にも適用される。また、
図9は、
図8の一点鎖線L1に沿ってZ軸方向に積層体を切断した模式的断面図である。
図9では、積層体1のほか、外部配管101が併せて示されている。
【0076】
図8に示すように、天井板4は、伝熱板に接合された主面4d(第1主面)と、主面4dと反対側であって積層体1の主面1uとなる主面4uとを有する。また、天井板4は、側面1wの一部であって主面4dと主面4uとに連なる側面4wを有する。
【0077】
天井板4は、積層方向において、伝熱板21Bに積層された保護板部41と、保護板部41に積層された保護板部42とを含む。保護板部42は、複数の板状部材420によって形成される。
【0078】
保護板部42には、少なくとも1つの開放孔4hが設けられている。開放孔4hは、積層方向に拡散接合された一対の板状部材420によって形成される。それぞれの開放孔4hは、側面4wにおいて開放され、スリット部414に連通する。
【0079】
図10(a)、(b)に、
図8、9に示す複数の板状部材420のうちから、いずれか1枚を抜き出した板状部材420を示す。ここで、
図10(a)には、板状部材420の模式的斜視図が示され、
図10(b)には、
図10(a)の一点鎖線L1に沿ってZ軸方向に板状部材を切断した模式的断面図が示される。
【0080】
例えば、板状部材420において、リブ部材413aの厚さd2は、本体板部400bの厚さd1よりも薄く形成される。例えば、厚さd2は、厚さd1の半分とする。また、板状部材420には、スリット部分414aに連通する排出溝420tが形成される。このスリット部分414aは、積層方向に繋がって、
図8、9に示すスリット部414が形成されることから、排出溝420tは、スリット部414に連通する。
【0081】
排出溝420tは、本体板部400bの一部分を薄くすることによって形成される。排出溝420tは、板状部材420において、積層体1の上面となる主面1uの側に形成される。本体板部400bの一部分を薄くさせた部分は、排出溝420tの底部420pとなって、底部420pは、リブ部材413aと繋がる。排出溝420tの底部420pの厚さd3は、リブ部材413aの厚さd2と同じまたは略同じに形成される。リブ部材413aと、底部420pとは、例えば、ハーフエッチングにより形成される。
【0082】
排出溝420tは、積層方向に積層される複数の板状部材420の少なくとも1つに設けられる。そして、拡散接合後、排出溝420tは排出溝420tの直上の板状部材420によって覆われ、開放孔4hが形成される。すなわち、保護板部42の側面42wに少なくとも1つの開放孔4hが形成される。なお、
図8及び
図9では、複数の板状部材420のそれぞれに排出溝420tが設けられた例が示されているが、この例には限られない。
【0083】
図11は、開放孔が設けられた積層体の作用を示す模式図である。
図11には、拡散接合後の積層体1の保護板部42に含まれる、いずれかの板状部材420が示される。
【0084】
例えば、外部配管101を接合材405で孔部2haにロウ付けする際、フラックスが併せて使用される。この際、スリット部414に入り込んだフラックスは、ロウ付け後、除去作業として、温水で洗浄されたり、スリット部414の上からエアブロー処理がなされたりする。このとき、スリット部414の内部に残留しているフラックスは、スリット部414に連通した開放孔4hを介して積層体1の外部に流れ出る(矢印)。この結果、積層体1においては、フラックスがスリット部414内に残留することなく、フラックスによるの腐食が確実に回避される。
【0085】
また、複数の板状部材420のいずれかにおいて、排出溝420tは、積層体1の上面となる主面1uの側に形成されるに限らず、積層体1の下面となる主面1dの側に形成されてもよい。
【0086】
図12(a)は、板状部材において排出溝が積層体の下面となる主面の側に形成された例を示す模式的斜視図である。
図12(b)は、
図12(a)に示された板状部材420を破線L2及び破線L3の位置で切断して、板状部材420の一部(矢印Aで示された部分)を取り除いた模式的斜視図である。
【0087】
図12(a)に示すように、排出溝420tは、保護板部41と、保護板部41に接合された板状部材420とに形成されている。ここで、板状部材420においては、排出溝420tが保護板部41の側に形成されている。ここで、
図8~
図11に示す実施形態では、保護板部41と、保護板部41の上方の開放孔4hとの間に、
図10で例示された底部420pが位置している。このため、保護板部41と排出溝420tとによって段差が形成される。これに対し、
図12(a)に示す構造であれば、保護板部41と、板状部材420のリブ部材413aとによって
図8~
図11に示す実施形態のような段差が形成されないことになり、フラックスが段差を乗りこえることなく、
図12(b)に示すように、より円滑に開放孔4hを介して積層体1の外部に放出される(矢印)。
【0088】
また、板状部材420に設けられた排出溝420tは、積層方向において、互いに対向させてもよい。例えば、排出溝420tが積層体1の上面となる主面1uの側に形成された板状部材420と、排出溝420tが積層体1の下面となる主面1dの側に形成された板状部材420とを積層方向において接合させる。
【0089】
図13は、排出溝が積層体の上面側に形成された板状部材と、排出溝が積層体の下面側に形成された板状部材とを積層方向において接合させた天井板を示す模式的斜視図である。
【0090】
図13に示すように、複数の板状部材420のうち、積層方向において互いに接合する少なくとも2つの板状部材420に排出溝420tが設けられる。この2つの板状部材420に設けられた排出溝420t同士が積層方向において互いに対向する。これにより、開放孔4hの積層方向における高さが排出溝420t同士を互いに対向させない場合に比べて2倍の高さとなる。
【0091】
これにより、フラックスに対する開放孔4hの流路抵抗が低減し、フラックスがより円滑に開放孔4hを介して積層体1の外部に放出される。
【0092】
また、環状部の周りには、リブ部が複数(例えば、4つ)設けられてもよい。例えば、
図14は、環状部412の周りに複数のリブ部413が設けられた例を示す模式的平面図である。
図14に示す平面構造は、環状部422~442のそれぞれにも適用される。
【0093】
このような構造であれば、環状部412が複数のリブ部413によって本体板部400と繋がる。これより、環状部412がより強固に本体板部400に支持される。また、複数のリブ部413のそれぞれを形成するリブ部材413aは、ハーフエッチングの手法によって、その厚さを薄く形成する。これにより、積層方向に隣接するリブ部材413a間には、隙間が生じる。これにより、フラックスは、この隙間を経由して、さらに開放孔4hを介して積層体1の外部に放出される。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。外部配管101~104を積層体1に接合する構造について、天井板4に外部配管101~104を接合する構造に限って説明した。外部配管101~104のいずれかは、天井板4に限らず、床板3の側から積層体1に接合されてもよい。例えば、環状部412、リブ部413、及びスリット部414の組、環状部422、リブ部423、及びスリット部424の組、環状部432、リブ部433、及びスリット部434の組、及び環状部442、リブ部443、及びスリット部444の組のいずれかが床板3に設けられてよい。また、リブ部材413aと排出溝420tとは同じ位置でなくても、環状部412aと本体板部400bが繋がっていて、且つ、スリット部414aと排出溝420tとが連通していればよい。また、外部配管101~104と、積層体1とは、異種材料であってもよく、例えば、外部配管101~104が銅配管で、積層体1がステンレス製積層体であってもよい。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…積層体
1u、1d、4u、4d…主面
1w、4w…側面
2…伝熱部
2ha、2hb、2hc、2hd…孔部
3…床板
4…天井板
4h…開放孔
10…熱交換器
21B、21A…伝熱板
26、27、28、29…貫通孔
31、41、42…保護板部
42w…側面
101、102、103、104…外部配管
201a、201b、201c、201d、202a、202b、202c、202d…孔部
205…係止部
250、251、255、256…溝
260、270、280、290…空間
400、400a、400b…本体板部
405…接合材
412、422、432、442…環状部
412a、422b、432c、442d…環状部材
413、423、433、443…リブ部
413a、423b、433c、443d…リブ部材
414、424、434、444…スリット部、
414a、424b、434c、444d…スリット部分
420…板状部材
420p…底部
420t…排出溝
500…バーナ