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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107580
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】鍵盤ユニット
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20230727BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
G10H1/34
G10B3/12 111
G10B3/12 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008844
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大庭 聡斗
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩継
(72)【発明者】
【氏名】山野 裕之
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BD01
5D478BD05
(57)【要約】
【課題】動作の不具合が生じにくい鍵盤ユニットを提供すること。
【解決手段】鍵盤ユニット1は、フレーム500と、第1方向D1に対する剛性が前記第1方向D1と交差する第2方向D2に対する剛性より弱く、前記フレーム500に接続される第1部材580、590と、前記第1部材580、590の一部を前記第2方向D2から押圧することで前記第1部材580、590の前記第1方向D1への移動を抑制する第1押圧部430と、位置決め手段430’と、を備える被取付部材400と、を有する。前記位置決め手段430’は、前記フレーム500に対する前記被取付部材400の前記第1方向D1への移動を抑制する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
第1方向に対する剛性が前記第1方向と交差する第2方向に対する剛性より弱く、前記フレームに接続される第1部材と、
前記第1部材の一部を前記第2方向から押圧することで前記第1部材の前記第1方向への移動を抑制する第1押圧部と、位置決め手段と、を備える被取付部材と、を有し、
前記位置決め手段は、前記フレームに対する前記被取付部材の前記第1方向への移動を抑制する鍵盤ユニット。
【請求項2】
前記第1押圧部は、一対の押圧部であり、
前記一対の押圧部は、前記第1部材の一部を前記第2方向に挟むことで前記第1部材の前記第1方向への移動を抑制する、請求項1に記載の鍵盤ユニット。
【請求項3】
前記第2方向における前記第1部材の端部が前記フレームに接続される、請求項1又は2に記載の鍵盤ユニット。
【請求項4】
前記第1方向に対する剛性が前記第2方向に対する剛性より弱く、前記第2方向の端部が前記フレームに接続され、前記第1部材と前記第1方向に並ぶ第2部材をさらに有し、
前記位置決め手段は、前記第2部材の一部を前記第2方向から押圧することで、前記第2部材の前記第1方向への移動を抑制する第2押圧部を含み、
前記第1方向における前記第1押圧部と前記第2押圧部との位置関係は固定されている、請求項1乃至3のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項5】
前記第2部材は、前記第1方向において、前記第1部材より前記鍵盤ユニットの中央に近い位置に設けられており、
前記位置決め手段は、前記第2部材の一部に対して前記第1方向に係止する一対のストッパを有する、請求項4に記載の鍵盤ユニット。
【請求項6】
前記第1方向に対する剛性が前記第2方向に対する剛性より弱く、前記第2方向の端部が前記フレームに接続される第2部材と、
前記第1方向に対する剛性が前記第2方向に対する剛性より弱く、前記第2方向の端部が前記フレームに接続される第3部材と、をさらに有し、
前記位置決め手段は、
前記第2部材の一部を前記第2方向から押圧することで、前記第2部材の前記第1方向への移動を抑制する第2押圧部と、
前記第3部材の一部を前記第2方向から押圧することで、前記第3部材の前記第1方向への移動を抑制する第3押圧部と、を含み、
前記第1方向における前記第1押圧部と前記第2押圧部と前記第3押圧部との位置関係は固定されている、請求項1乃至3のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項7】
前記鍵盤ユニットは前記第1方向に長手を有し、
前記第1部材は、リブ及びボスを含み、
前記リブは、前記第2方向に長手を有し、
前記リブの第1端部は、前記フレームに接続され、
前記リブの第2端部は、前記ボスに接続され、
前記ボスは、前記第1押圧部によって前記第2方向に押圧され、直接的又は間接的に前記第1押圧部に接する、請求項1に記載の鍵盤ユニット。
【請求項8】
前記位置決め手段は、前記フレームに接続される構造を含む、請求項1に記載の鍵盤ユニット。
【請求項9】
前記第1部材は、前記鍵盤ユニットを構成する部材と前記第1方向に隣接する、請求項1乃至8のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項10】
前記被取付部材は、前記被取付部材を前記第1部材に固定する締結部材が貫通する貫通孔を備え、
前記貫通孔は、前記締結部材のうち前記貫通孔を貫通する部分よりも前記第1方向における幅が大きい、請求項1乃至9のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項11】
前記第1部材は、前記被取付部材を前記第1部材に固定するネジに対応するネジ穴を備え、一対の前記第1押圧部と接する第1接触部及び第2接触部を含み、
前記第1接触部は、前記ネジ穴の底が見える方向から見て、前記ネジ穴を中心とする円弧において、時計回りの方向に一方の前記第1押圧部と接し、
前記第2接触部は、前記ネジ穴の底が見える方向から見て、前記円弧において、時計回りの方向に他方の前記第1押圧部と接する、請求項1乃至10のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項12】
前記第1部材は、一対の前記第1押圧部と接する第1接触部及び第2接触部を含み、
前記第1接触部は、一方の前記第1押圧部と2点以上で接する、請求項1乃至11のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項13】
前記第2接触部は、他方の前記第1押圧部と2点以上で接する、請求項12に記載の鍵盤ユニット。
【請求項14】
前記第1接触部において、一方の前記第1押圧部は、前記第1部材の形状に対応して凹んでいる、及び/又は
前記第2接触部において、他方の前記第1押圧部は、前記第1部材の形状に対応して凹んでいる、請求項11乃至13のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項15】
記第1部材と一対の前記第1押圧部との摩擦力によって、前記第1部材の前記第1方向への移動が抑制される、請求項1乃至13のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【請求項16】
一対の前記第1押圧部は、互いに平行するように前記第1方向に長手を有する、請求項1乃至15のいずれか一に記載の鍵盤ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は鍵盤ユニットに関する。特に、本発明の一実施形態は被取付部材がフレームに取り付けられた構成を備えた鍵盤ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子楽器では、フレームに対して被取付部材がネジなどの締結具によって取り付けられている。通常、被取付部材には貫通孔が設けられており、締結具が貫通孔を貫通してフレームに接続されることで、被取付部材がフレームに取り付けられる。例えば、特許文献1では、センサが設けられた板状部材(回路基板)が、ネジによってフレームに固定されている。このような構成において、フレームの形状と被取付部材(回路基板)の形状との間の寸法差を考慮して、特定の方向において、被取付部材に設けられた貫通孔のサイズが、締結具のサイズに比べて大きく設計される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-180527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような場合において、締結具を用いてフレームに被取付部材を取り付けると、締結具を締めつけるときに、フレームに対する被取付部材の相対的な位置関係が適正な位置関係からずれてしまう場合がある。このように、相対的な位置関係が適正な位置からずれてしまうと、フレーム又は被取付部材に歪みが生じた状態で、被締結部材がフレームに固定されてしまう。その結果、歪みが生じた部材と他の部材とが干渉し、鍵盤ユニットの動作に不具合が生じる場合がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的の一つは、動作の不具合が生じにくい鍵盤ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による鍵盤ユニットは、フレームと、第1方向に対する剛性が前記第1方向と交差する第2方向に対する剛性より弱く、前記フレームに接続される第1部材と、前記第1部材の一部を前記第2方向から押圧することで前記第1部材の前記第1方向への移動を抑制する第1押圧部と、位置決め手段と、を備える被取付部材と、を有する。前記位置決め手段は、前記フレームに対する前記被取付部材の前記第1方向への移動を抑制する。
【0007】
前記第1押圧部は、一対の押圧部であり、前記一対の押圧部は、前記第1部材の一部を前記第2方向に挟むことで前記第1部材の前記第1方向への移動を抑制してもよい。
【0008】
前記第2方向における前記第1部材の端部が前記フレームに接続してもよい。
【0009】
前記第1方向に対する剛性が前記第2方向に対する剛性より弱く、前記第2方向の端部が前記フレームに接続され、前記第1部材と前記第1方向に並ぶ第2部材をさらに有し、前記位置決め手段は、前記第2部材の一部を前記第2方向から押圧することで、前記第2部材の前記第1方向への移動を抑制する第2押圧部を含み、前記第1方向における前記第1押圧部と前記第2押圧部との位置関係は固定されてもよい。
【0010】
前記第2部材は、前記第1方向において、前記第1部材より前記鍵盤ユニットの中央に近い位置に設けられており、前記位置決め手段は、前記第2部材の一部に対して前記第1方向に係止する一対のストッパを有してもよい。
【0011】
前記第1方向に対する剛性が前記第2方向に対する剛性より弱く、前記第2方向の端部が前記フレームに接続される第2部材と、前記第1方向に対する剛性が前記第2方向に対する剛性より弱く、前記第2方向の端部が前記フレームに接続される第3部材と、をさらに有し、前記位置決め手段は、前記第2部材の一部を前記第2方向から押圧することで、前記第2部材の前記第1方向への移動を抑制する第2押圧部と、前記第3部材の一部を前記第2方向から押圧することで、前記第3部材の前記第1方向への移動を抑制する第3押圧部と、を含み、前記第1方向における前記第1押圧部と前記第2押圧部と前記第3押圧部との位置関係は固定されてもよい。
【0012】
前記鍵盤ユニットは前記第1方向に長手を有し、前記第1部材は、リブ及びボスを含み、前記リブは、前記第2方向に長手を有し、前記リブの第1端部は、前記フレームに接続され、前記リブの第2端部は、前記ボスに接続され、前記ボスは、前記第1押圧部によって前記第2方向に押圧され、直接的又は間接的に前記第1押圧部に接してもよい。
【0013】
前記位置決め手段は、前記フレームに接続される構造を含んでもよい。
【0014】
前記第1部材は、前記鍵盤ユニットを構成する部材と前記第1方向に隣接してもよい。
【0015】
前記被取付部材は、前記被取付部材を前記第1部材に固定する締結部材が貫通する貫通孔を備え、前記貫通孔は、前記締結部材のうち前記貫通孔を貫通する部分よりも前記第1方向における幅が大きくてもよい。
【0016】
前記第1部材は、前記被取付部材を前記第1部材に固定するネジに対応するネジ穴を備え、一対の前記第1押圧部と接する第1接触部及び第2接触部を含み、前記第1接触部は、前記ネジ穴の底が見える方向から見て、前記ネジ穴を中心とする円弧において、時計回りの方向に一方の前記第1押圧部と接し、前記第2接触部は、前記ネジ穴の底が見える方向から見て、前記円弧において、時計回りの方向に他方の前記第1押圧部と接してもよい。
【0017】
前記第1部材は、一対の前記第1押圧部と接する第1接触部及び第2接触部を含み、前記第1接触部は、一方の前記第1押圧部と2点以上で接してもよい。
【0018】
前記第2接触部は、他方の前記第1押圧部と2点以上で接してもよい。
【0019】
前記第1接触部において、一方の前記第1押圧部は、前記第1部材の形状に対応して凹んでいる、及び/又は前記第2接触部において、他方の前記第1押圧部は、前記第1部材の形状に対応して凹んでいてもよい。
【0020】
記第1部材と一対の前記第1押圧部との摩擦力によって、前記第1部材の前記第1方向への移動が抑制されてもよい。
【0021】
一対の前記第1押圧部は、互いに平行するように前記第1方向に長手を有してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によれば、動作の不具合が生じにくい鍵盤ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態における鍵盤ユニットの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。
図4】本発明の一実施形態におけるハンマアセンブリの一例を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態における筐体内部の構成を底面から見た場合の説明図である。
図6】本発明の一実施形態におけるストッパレールを示す図である。
図7】本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。
図8図7のA-A’断面図である。
図9】本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。
図10】本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。
図11】本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。
図12図11のB-B’断面図である。
図13】本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態における鍵盤ユニットについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施する形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されない。本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)が付されており、それらの繰り返しの説明は省略する場合がある。図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なる場合、及び、構成の一部が図面から省略される場合がある。以下の説明において、各図面における上下方向に基づいて、「上」、「上方」、「上端」、「下」、「下方」、「下端」と表現する場合があるが、これらの上下方向は相対的な方向の関係を説明しているに過ぎず、上下方向が逆転してもよい。
【0025】
[1.第1実施形態]
[1-1.鍵盤ユニットの構成]
図1は、第1実施形態における鍵盤ユニットの構成を示す図である。鍵盤ユニット1は、ユーザ(演奏者)の押鍵に応じて発音する、例えば電子ピアノなどの電子鍵盤楽器である。鍵盤ユニット1は、外部の音源装置を制御するための制御データ(例えば、MIDI)を、押鍵に応じて出力する鍵盤型のコントローラであってもよい。この場合には、鍵盤ユニット1は、音源装置を有していなくてもよい。
【0026】
鍵盤ユニット1は、鍵盤アセンブリ10を備える。鍵盤アセンブリ10は、白鍵100w及び黒鍵100bを含む。白鍵100w及び黒鍵100bを区別する必要がない場合は、単に鍵100という。複数の白鍵100w及び黒鍵100bは並んで配列されている。鍵100の数は、N個であり、この例では88個である。これらの鍵100が配列された方向をスケール方向(D1方向)という。鍵盤ユニット1はD1方向に長手を有する。以下の説明において、符号(数字)の後に「w」が付された構成は、白鍵に対応する構成であることを意味している。符号(数字)の後に「b」が付された構成は、黒鍵に対応する構成であることを意味している。
【0027】
鍵盤アセンブリ10の一部は、筐体90の内部に存在している。鍵盤ユニット1を上方から見た場合において、鍵盤アセンブリ10のうち筐体90に覆われている部分を非外観部NVといい、筐体90から露出してユーザから視認できる部分を外観部PVという。すなわち、外観部PVは、鍵100の一部であって、ユーザによって演奏操作が可能な領域を示す。以下、鍵100のうち外観部PVによって露出されている部分を鍵本体部という場合がある。
【0028】
筐体90内部には、音源装置70及びスピーカ80が配置されている。音源装置70は、鍵100の押下に伴って音波形信号を生成する。スピーカ80は、音源装置70において生成された音波形信号を外部の空間に出力する。鍵盤ユニット1は、音量をコントロールするためのスライダ、音色を切り替えるためのスイッチ、様々な情報を表示するディスプレイなどを備えていてもよい。
【0029】
本明細書における説明において、上、下、左、右、手前及び奥などの方向は、演奏するときの演奏者から鍵盤ユニット1を見た場合の方向を示している。例えば、非外観部NVは、外観部PVよりも奥側に位置している、と表現することができる。鍵前端側(鍵前方側)、鍵後端側(鍵後方側)のように、鍵100を基準とした方向を示す場合もある。この場合、鍵前端側は鍵100に対して演奏者から見た手前側を示す。鍵後端側は鍵100に対して演奏者から見た奥側を示す。この定義によれば、黒鍵100bのうち、黒鍵100bの鍵本体部の前端から後端までが、白鍵100wよりも上方に突出した部分である、と表現することができる。
【0030】
図2は、第1実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。音源装置70は、信号変換部710、音源部730及び出力部750を備える。センサ300は、各鍵100に対応して設けられ、鍵の操作を検出し、検出した内容に応じた信号を出力する。この例では、センサ300は、3段階の押鍵量に応じて信号を出力する。この信号の間隔に応じて押鍵速度が検出可能である。
【0031】
信号変換部710は、センサ300(88個の鍵100に対応したセンサ300-1、300-2、・・・、300-88)の出力信号を取得し、各鍵100における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。押鍵操作に応じて、信号変換部710はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵100のいずれが操作されたかを示すキーナンバ及び押鍵速度に対応するベロシティが、ノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作に応じて、信号変換部710はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部710には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。
【0032】
音源部730は、信号変換部710から出力された操作信号に基づいて、音波形信号を生成する。出力部750は、音源部730によって生成された音波形信号を出力する。この音波形信号は、例えば、スピーカ80又は音波形信号出力端子などに出力される。
【0033】
[1-2.鍵盤アセンブリの構成]
図3は、第1実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。以下の説明では、白鍵100wに関連する構成を例示して説明するが、本実施形態に係るハンマアセンブリ200は黒鍵100bに関連する構成に適用することもできる。図3に示すように、筐体90の内部において、鍵盤アセンブリ10及びスピーカ80が配置されている。スピーカ80は、鍵盤アセンブリ10の奥側に配置されている。このスピーカ80は、押鍵に応じた音を筐体90の上方及び下方に向けて出力するように配置されている。下方に出力される音は、筐体90の下面側から外部に進む。一方、上方に出力される音は筐体90の内部から鍵盤アセンブリ10の内部の空間を通過して、外観部PVにおける白鍵100wの隣接間の隙間又は白鍵100wと筐体90との隙間から外部に進む。
【0034】
鍵盤アセンブリ10の構成について、図3を用いて説明する。鍵盤アセンブリ10は、上述した白鍵100w及びセンサ300の他にも、ハンマアセンブリ200、ストッパレール400、フレーム500、接続部800、及び取付部900を含む。鍵盤アセンブリ10は、ほとんどの構成が射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。フレーム500は筐体90に固定されている。ストッパレール400及び取付部900はフレーム500に固定されている。接続部800は、取付部900に取り付けられ、白鍵100wをフレーム500に対して回動可能に接続する。白鍵100wは鍵本体部110w及び鍵支持部120wを含む。鍵本体部110wは鍵支持部120wを介して接続部800に接続されている。鍵支持部120wは板状の部材である。鍵支持部120wの一部は、他の部分に比べて板厚方向に薄く、可撓性を有している。当該可撓性によって鍵支持部120wの一部が曲がることで、白鍵100wがフレーム500に対して回動する。
【0035】
白鍵100wは、前端鍵ガイド150wを備える。前端鍵ガイド150wは、フレーム500の前端フレームガイド510を覆った状態で摺動可能に接触している。前端鍵ガイド150wは、その上部と下部のD1方向の両側において、前端フレームガイド510と接触している。一方、黒鍵100bには、前端鍵ガイド150wに相当する部材は設けられていない。
【0036】
ハンマアセンブリ200は、フレーム500に設けられた軸部に対して回動可能に取り付けられている。詳細は後述するが、ハンマアセンブリ200に備えられた軸受け部材220が軸部に回動可能に取り付けられている。ハンマアセンブリ200の前端部材210は、白鍵100wにおけるハンマ支持部130wの内部空間において、概ね前後方向に摺動可能にハンマ支持部130wと接触する。この摺動部分、すなわち前端部材210とハンマ支持部130wとが接触する部分は、外観部PV(鍵本体部110wの後端よりも前方)における白鍵100wの下方に位置する。
【0037】
ハンマアセンブリ200は、ハンマアセンブリ200の回動軸よりも奥側に金属製のウェイト部材230を備えている。離鍵時(押鍵していないとき)には、ウェイト部材230が下側ストッパ410に載置された状態であり、ハンマアセンブリ200の前端部材210が、白鍵100wを上方に押し挙げている。押鍵されると、ウェイト部材230が上方に移動し、上側ストッパ(図示せず)に衝突する。つまり、ハンマアセンブリ200は白鍵100wの動きに応じて回動する。このウェイト部材230によって、ハンマアセンブリ200は押鍵に対する加重を与える。下側ストッパ410及び上側ストッパは、緩衝材等(不織布、弾性体等)で形成されている。
【0038】
ウェイト部材230の上方には、フレーム500にセンサ300が取り付けられている。押鍵によりウェイト部材230の上面側でセンサ300が押しつぶされると、センサ300は検出信号を出力する。センサ300は、上述したように、各鍵100に対応して設けられている。
【0039】
フレーム500にはボス580が接続されている。ボス580はフレーム500から下方に向かって延びている。詳細は後述するが、締結具600(図5参照)によってボス580の下端にストッパレール400が接続されている。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態におけるハンマアセンブリの一例を示す側面図である。図4に示すように、ハンマアセンブリ200は、前端部材210、軸受け部材220、ウェイト部材230、及び本体部材240を備える。
【0041】
本体部材240は、ハンマアセンブリ200のうちウェイト部材230を除く主要部分を構成し、ハンマアセンブリ200のフレームとして機能する部材である。本体部材240は、リブ241及び凹部242を備えている。リブ241によって本体部材240の剛性が確保されつつ、凹部242によって本体部材240の軽量化が実現されている。
【0042】
前端部材210は、上記のように、ハンマ支持部130wに対して摺動可能に取り付けられる。前端部材210は、軸受け部材220から離れる方向に向かって本体部材240から突出している。前端部材210は上下に二股状の突出部を有しており、2つの突出部の間の溝の部分において、ハンマ支持部130wが摺動する。
【0043】
軸受け部材220は、軸部に取付け可能な形状を有している。具体的には、軸受け部材220は、円弧状の内壁によって構成されており、軸部に取り付けるための開口243が設けられている。ハンマアセンブリ200を軸部に取り付ける場合、軸部が開口243を通って軸受け部材220に到達するようにハンマアセンブリ200が移動する。軸受け部材220は、軸部に対してスナップフィット方式で取り付けられている。ハンマアセンブリ200は、回動中心222を中心として回動する。
【0044】
ウェイト部材230は、本体部材240に固定されており、前端部材210とは反対方向に延びている。つまり、ウェイト部材230は棒状である。図4のハンマアセンブリ200の下に本体部材240から取り外された状態のウェイト部材230が示されている。ウェイト部材230は、第1部分231及び第2部分232を備えている。第1部分231は円柱状である。第2部分232は、第1部分231が潰れた形状である。第2部分232は本体部材240に覆われている。
【0045】
上記のように、ハンマアセンブリ200は、ウェイト部材230の重みによって、回動中心222を中心として回動し、ストッパレール400に設けられた下側ストッパ410によって支持されている。ストッパレール400は、D1方向に延びており、鍵盤ユニット1に設けられた複数のウェイト部材230を支持している。
【0046】
[1-3.ストッパレール400及びフレーム500の構成]
図5は、本発明の一実施形態における筐体内部の構成を底面から見た場合の説明図である。図5に示す図は、図3に示す鍵盤ユニット1を下方から見た図である。図5では、説明の便宜上、ストッパレール400の一部が省略され、ストッパレール400の上方に設けられたウェイト部材230が視認される状態で図示されている。リブ590は、フレーム500に接続されており、フレーム500からD2方向に延びている。リブ590は、複数のハンマアセンブリ200のうち一部の隣接するウェイト部材230の間において、D2方向に延びている。図5の場合、リブ590は、黒鍵100bを挟まずに隣接する白鍵100wの間に設けられている。つまり、リブ590を介して隣接するウェイト部材230のD2方向における後端の位置は同じである。黒鍵100bを挟まずに隣接する白鍵100wの間は、黒鍵100bと白鍵100wとの間に比べて大きいため、十分な強度が確保できる大きさのボス580及びリブ590を設けることができる。
【0047】
ボス580は、リブ590に接続され、当該隣接するウェイト部材230の間に設けられている。ボス580の詳細な構成は後述する。ストッパレール400には後述するように貫通孔420が設けられており、締結具600が当該貫通孔420を貫通してボス580に接続されることによって、ストッパレール400がフレーム500に接続される。ストッパレール400の底面には、リブ441及び凹部442が設けられている。リブ441はD1方向及びD2方向に延びる格子状であり、凹部442を囲んでいる。リブ441によってストッパレール400の剛性が確保されつつ、凹部442によってストッパレール400の軽量化が実現されている。
【0048】
図3に示すように、離鍵時において、ストッパレール400は、下側ストッパ410を介して複数のウェイト部材230を支持する。したがって、ウェイト部材230の荷重を安定して支持するために、ストッパレール400は、ウェイト部材230がストッパレール400(下側ストッパ410)に接する位置付近でフレーム500に対して接続される構成が好ましい。一方、ハンマアセンブリ200(主にウェイト部材230)はD2方向に延びているため、上記の構成を実現するために、D2方向に延びるリブ590によってフレーム500とボス580とが接続されている。つまり、リブ590の第1端部はフレーム500に接続されており、リブ590の第2端部はボス580に接続されている。換言すると、ボス580は、ハンマアセンブリ200をD2方向から挟む形状のフレーム500の間において、リブ590によって架け渡されている。
【0049】
[1-4.ストッパレール400をフレーム500に接続するときの問題点]
上記のように、リブ590がD2方向に長手を有し、特に本実施形態の場合、リブ590がフレーム500のうちD2方向に対向する部分の間に架け渡されているため、リブ590は、D2方向に対する剛性は強いが、D1方向に対する剛性が弱い。したがって、ボス580又はリブ590に対してD1方向の外力がかかった場合に、リブ590がD1方向に歪み、ボス580の位置がD1方向において適正な位置からずれてしまう。その結果、ボス580の移動量が大きい場合、ボス580又はリブ590がウェイト部材230と干渉してしまう。
【0050】
例えば、締結具600としてネジが用いられた場合、ネジをボス580にねじ込み、締めつける際の外力によって、リブ590が歪み、ボス580のD1方向の位置が適正な位置からずれた状態でストッパレール400がボス580に固定されてしまう場合がある。例えば、第1の締結具600が、適正な位置にある第1のボス580に接続され、第2の締結具600が、適正な位置からずれた状態の第2のボス580に接続された場合、第1のボス580と第2のボス580との間の距離が適正ではない距離になる。その結果、上記のように、ボス580がウェイト部材230と干渉してしまう場合がある。
【0051】
本実施形態に係る鍵盤ユニット1に記載された構成は、以下に説明するように、上記の問題を抑制するための構成である。なお、ストッパレール400を「被締結部材」という場合がある。ボス580及びリブ590を併せて「第1部材」という場合がある。この場合、当該第1部材はD1方向(第1方向)に対する剛性がD2方向(第2方向)に対する剛性より弱い、ということができる。本実施形態では、D1方向(第1方向)と鍵100のD2方向(第2方向)とが直交する構成を例示したが、これらの方向は交差した構成であればよく、これらの方向が直交した構成に限定されない。さらに、上記の構成を換言すると、上記第2方向において、上記第1部材は、その端部においてフレーム500に接続されている。換言すると、当該第2方向において、当該第1部材は、フレーム500の対向する部分の間に架け渡されている。さらに換言すると、当該第2方向における当該第1部材の端部がフレーム500に接続される。
【0052】
図5に示すように、ボス580及びリブ590(第1部材)は、鍵盤ユニット1を構成する部材であるウェイト部材230とD1方向に隣接している。具体的には、当該第1部材はD1方向に隣接するウェイト部材230の間に設けられている。
【0053】
[1-5.ストッパレール400の構成]
図6は、本発明の一実施形態におけるストッパレールを示す図である。図6に示すように、ストッパレール400には貫通孔420及び押圧部430が設けられている。押圧部430を「第1押圧部」という場合がある。
【0054】
貫通孔420は、ボス580の位置に対応して設けられている。締結具600が貫通孔420を貫通してボス580に接続されることで、ストッパレール400がボス580(又は、第1部材)に固定される。貫通孔420の形状は、ストッパレール400のD1方向に長手を有する形状である。D1方向は、ストッパレール400をフレーム500に取り付けたときのスケール方向に相当する。詳細は後述するが、D1方向において、貫通孔420の幅は、締結具600のうち貫通孔420を貫通する部分の幅より大きい。
【0055】
ストッパレール400は、D1方向に並んだ複数のボス580を連結する。したがって、D1方向におけるストッパレール400の寸法ばらつきが生じると、D1方向における両端付近のボス580と貫通孔420との位置ずれが大きくなる。したがって、貫通孔420がD1方向に長手を有することで、上記のようにストッパレール400の寸法ばらつきが生じても、締結具600をボス580に接続させることができる。
【0056】
押圧部430は、貫通孔420を挟むように対で設けられている。一対の押圧部430は、D2方向に離隔して設けられており、ともにD1方向に延びている。一対の押圧部430は、互いに平行であり、D1方向に長手を有する。一対の押圧部430の間のD2方向における距離d1は、図5におけるD2方向におけるボス580の幅より僅かに小さい。押圧部430は、ストッパレール400の上面401から上方に突出している。押圧部430は、貫通孔420に対応して設けられている。隣接する貫通孔420同士が近接している場合は、押圧部430が隣接する貫通孔420に共通して設けられている。隣接する貫通孔420同士が離れている場合は、押圧部430は貫通孔420に対応して個別に設けられている。D1方向において、押圧部430の幅は貫通孔420の幅より大きい。本実施形態では、押圧部430は、ストッパレール400の上面401から上方に突出する構成が例示されているが、この構成に限定されない。例えば、押圧部430が上面401からストッパレール400の内側に向かって凹んだ凹形状であってもよい。
【0057】
[1-6.ストッパレール400のフレーム500への取付構造]
図7は、本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。図8は、図7のA-A’断面図である。図7は、ストッパレール400がフレーム500に取り付けられた状態において、ストッパレール400を上方から見た図であり、ボス580と押圧部430との位置関係が示された間略図である。図7において、説明の便宜上、ボス580の形状は簡略化されて図示されている。詳細は後述するが、図7において、「’(ダッシュ)」が付いていない符号が示す構成は、締結具600によって取り付けられる対象の構成である。一方、「’(ダッシュ)」が付いている符号が示す構成は、まだ締結具600によって取り付けられていない構成である。
【0058】
図7に示すように、ボス580が一対の押圧部430の間に配置される。本実施形態では、D2方向において、一対の押圧部430の間の距離d1はボス580の幅d2より小さいため、上面視においてボス580は押圧部430の一部と重なっている。図8に示すように、押圧部430の側壁はテーパ形状である。つまり、押圧部430の側壁と上面401とのなす角θが90°未満である。この場合、上記の距離d1は、テーパ形状の側壁における下端同士の距離(又は、対向する側壁の最短距離)である。
【0059】
ボス580の先端(図8の状態におけるボス580の下端)のD2方向における幅d2が上記の距離d1より大きいため、ボス580の先端は、押圧部430の傾斜した側壁に接している。つまり、ストッパレール400がフレーム500に押しつけられると、ボス580が押圧部430の傾斜面に押しつけられるため、ボス580は押圧部430によってD2方向に押圧される。押圧部430による押圧によって生じるボス580と押圧部430との摩擦力によって、ボス580のD1方向への移動(図7参照)が抑制される。上記の構成を換言すると、一対の押圧部430はボス580の一部をD2方向に挟むことで、当該ボス580のD1方向への移動を抑制する。
【0060】
図8では、ボス580が押圧部430に直接的に接する構成が例示されているが、この構成に限定されない。例えば、ボス580と押圧部430との間に他の部材が設けられ、ボス580と押圧部430とが直接的に接していなくてもよい。そのような場合でも、ボス580は押圧部430に接続された他の部材によってD2方向に押圧されるため、上記のようにボス580のD1方向への移動が抑制される。ボス580と押圧部430との間に他の部材が設けられる構成を、ボス580と押圧部430とが間接的に接している、ということができる。
【0061】
ストッパレール400は、D1方向に並んだ複数のボス580を連結するため、ストッパレール400が締結具600によってフレーム500に固定される前の状態であっても、複数のボス580がそれぞれに対応する押圧部430によって押圧されることで、ストッパレール400のD1方向への移動が抑制される。つまり、取り付け対象のボス580について締結具600を接続する処理を行う場合、当該対象のボス580以外のボス580’が、それぞれに対応する押圧部430’によって押圧されることで、当該対象のボス580のD1方向における位置が固定される。この場合、当該対象のボス580以外のボス580’を、当該対象のボス580に対する「位置決め手段」という場合がある。図7に表示された位置決め手段は、一組の押圧部430’、ボス580’、及びリブ590’であるが、本実施形態の鍵盤ユニット1は88個の鍵100を備えており、ボス580、580’は1オクターブに2箇所設けられているので、鍵盤ユニット1全体における位置決め手段は17組の押圧部430’、ボス580’、及びリブ590’である。
【0062】
上記の場合、ボス580’及びリブ590’を併せて「第2部材」という場合がある。この場合、当該第2部材はD1方向(第1方向)に対する剛性がD2方向(第2方向)に対する剛性より弱い、ということができる。ボス580’に対応する押圧部430’を「第2押圧部」という場合がある。押圧部430’(第2押圧部)は、押圧部430(第1押圧部)と同様の構成を有する。したがって、ストッパレール400がフレーム500に押しつけられると、ボス580’(第2部材の一部)は押圧部430’(第2押圧部)によってD2方向から押圧される。この構成によって、押圧部430’は、ボス580’のD1方向への移動を抑制する。押圧部430(第1押圧部)及び押圧部430’(第2押圧部)は、いずれも上面401上に設けられているため、D1方向におけるこれらの位置関係は固定されている。
【0063】
図9は、本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。図9に示すように、ストッパレール400は、さらに貫通孔425、押圧部435、及びストッパ439を備えている。同様に、フレーム500からD2方向にリブ595が延びており、貫通孔425に対応する位置にボス585が設けられている。ボス585及びリブ595を併せて「第2部材」という場合がある。当該第2部材(ボス585及びリブ595)は、D1方向において、上記第1部材(ボス580及びリブ590)よりも鍵盤ユニット1の中央に近い位置に設けられている。
【0064】
貫通孔425は略円形である。押圧部435を「第2押圧部」という場合がある。ストッパ439は、貫通孔425を挟むように対で設けられている。一対のストッパ439は、D1方向に離隔して設けられており、ともにD2方向に延びている。一対のストッパ439は、互いに平行であり、D2方向に長手を有する。一対のストッパ439の間のD1方向における距離は、一対の押圧部430の間の距離d1と同じである。押圧部435及びストッパ439の断面形状は押圧部430の断面形状と同じである。つまり、ボス585は、ストッパ439の傾斜した側壁に接することによって係止され、ボス585のD1方向の移動が制限される。したがって、ストッパ439を「位置決め手段」という場合がある。なお、押圧部430、435と同様に、ストッパレール400がフレーム500に押しつけられることによって、ストッパ439がボス585をD1方向に押圧してもよい。
【0065】
図10は、本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。図10では、図7及び図9とは異なり、図5に示すボス580の形状を簡略化せずに示している。図10に示すように、ボス580は、円筒部581及び突出部582を備えている。図10では、4つの突出部582が円筒部581の周囲に設けられている。4つの突出部582を区別する必要がある場合、突出部582-1、582-2、582-3、582-4という。同様に、一対の押圧部430をそれぞれ区別する必要がある場合、押圧部430-1、430-2という。図10の場合、D2方向における両端部に位置する突出部582の端部間の距離がボス580の幅d2に相当する。つまり、図10の場合、突出部582が押圧部430の側壁に接している。
【0066】
図10に示すように、突出部582-1、582-2がそれぞれ押圧部430-1に接しており、突出部582-3、582-4がそれぞれ押圧部430-2に接している。突出部582-1、582-2を「第1接触部」という場合がある。突出部582-3、582-4を「第2接触部」という場合がある。この場合、第1接触部は押圧部430-1と2点以上で接する、又は、第2接触部は押圧部430-2と2点以上で接する、ということができる。第1接触部が押圧部430-1と3点以上で接してもよく、第2接触部が押圧部430-2と3点以上で接してもよい。
【0067】
例えば、図10に示す状態で、締結具600としてネジが用いられる場合、ボス580の内壁にはネジ穴583(又は、ネジ山)が形成されており、ネジを締める際にボス580がネジから矢印の方向の作用を受ける。この作用によって、ボス580が回転しようとするが、当該回転方向において突出部582-2が押圧部430-1に係止するため、当該回転が制限される。同様に、円筒部581を基準として突出部582-2の反対側に設けられた突出部582-4が押圧部430-2に係止するため、上記のようにボス580の回転が制限される。つまり、突出部582及び押圧部430によってボス580の捻れが抑制される。
【0068】
本実施形態では、ボス580に4つの突出部582-1~4が備えられているが、締結具600からの作用を受ける方向が予め決まっていれば、当該作用の方向に応じて一部の突出部582を省略することができる。例えば、上記のように締結具600としてネジが用いられる場合、ネジを締める回転方向(図10の矢印の回転方向)が決まっているので、円筒部581の周囲に突出部582-2、582-4だけ(又は、突出部582-2又は突出部582-4だけ)が設けられていてもよい。上記の構成を換言すると、突出部582-2は、ボス580を上方から(ネジ穴583の底が見える方向に)見た場合に、ネジ穴583を中心とする円弧において、時計回りの方向に一対の押圧部430のうち一方の押圧部430-1と接する。突出部582-4は、ボス580を上方から見た場合に、ネジ穴583を中心とする円弧において、時計回りの方向に一対の押圧部430のうち他方の押圧部430-2と接する。上記のように、突出部582-2、582-4がそれぞれ押圧部430-1、430-2に係止することで、ボス580がネジ穴583の中心を軸として回転することを抑制することができる。
【0069】
突出部582のうち押圧部430と接する部分は、円筒部581の外周に比べて鋭利な形状である。つまり、突出部582の押圧部430と接する部分の曲率半径は円筒部581の外周の曲率半径よりも小さい。つまり、突出部582は強い圧力で押圧部430に接している。この場合において、突出部582が押圧部430の側壁にくい込んでいてもよい。この場合、突出部582-2(第1接触部)において、一方の押圧部430-1は、突出部582-2(又は、第1部材)の形状に対応して凹んでいる。同様に、突出部582-4(第2接触部)において、他方の押圧部430-2は、突出部582-4(又は、第1部材)の形状に対応して凹んでいる。
【0070】
本実施形態では、D2方向において、ボス580の両側から押圧部430がボス580を押圧する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、ボス580に対して、D2方向の一方から押圧部430がボス580を押圧する構成であってもよい。このような場合であっても、ボス580と押圧部430との摩擦力によって、ボス580のD1方向への移動が抑制される。
【0071】
また、本実施形態では、押圧部430の側壁がテーパ形状であることで、押圧部430がボス580をD2方向に押圧する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、押圧部430の側壁が垂直(当該側壁と上面401とのなす角が略90°)であり、ボス580の側壁がテーパ形状であってもよい。押圧部430及びボス580の両方の側壁が垂直(両者の側壁と上面401とのなす角が90°)である場合、押圧部430又はボス580が弾性変形した状態で、ボス580が押圧部430の間に配置され、弾性変形した押圧部430又はボス580の復元力によって押圧部430がボス580をD2方向に押圧してもよい。押圧部430又はボス580が弾性変形する代わりに、押圧部430又はボス580がバネなどの弾性部材によって付勢されることで、押圧部430がボス580をD2方向に押圧してもよい。
【0072】
また、本実施形態では、ボス580及びリブ590(第1部材)がフレーム500の対向する部分の間に架け渡された構成、つまり、当該第1部材の端部がフレーム500に接続された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、フレーム500の平板状の底部の上に、当該底部から上方に突出したボス580及びリブ590が設けられた構成であってもよい。円筒部581は、円筒以外の形状であってもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤ユニット1によると、例えば、締結具600を用いてストッパレール400のような被取付部材をフレーム500に取り付ける際に、例えば締結具600を締めつける際に当該ストッパレール400が適正な位置からずれてしまうことを抑制することができる。その結果、例えば、締結具600を取り付けるボス580又はリブ590が、これらに隣接する部材(例えば、ハンマアセンブリ200のウェイト部材230など)と干渉し、鍵盤ユニット1の動作に不具合が生じることを抑制することができる。
【0074】
[2.第2実施形態]
[2-1.ストッパレール400Aのフレーム500Aへの取付構造]
図11及び図12を用いて、第2実施形態に係る鍵盤ユニット1Aについて説明する。図11は、本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。図12は、図11のB-B’断面図である。図11及び図12に示すストッパレール400A及びフレーム500Aは、図7に示すストッパレール400及びフレーム500と類似しているが、ボス580Aに対する位置決め手段がフレーム500Aに接続されている点において、図7に示す構成と相違する。以下の説明において、図7に示す構成と同様の構成については説明を省略し、主に図7に示す構成と相違する点について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成について説明をする場合、図1図7を参照し、これらの図に示された符号の後にアルファベット“A”を付して説明する。
【0075】
図11に示すように、フレーム500Aに対して1つのボス580Aがリブ590Aを介して接続されている。ストッパレール400Aには貫通孔440Aが設けられている。フレーム500Aには挿通ピン570Aが設けられている。貫通孔440Aは、D2方向に長手を有する。図12に示すように、挿通ピン570Aは貫通孔440Aを貫通している。
【0076】
挿通ピン570Aが貫通孔440Aを貫通していることで、ボス580AにD1方向の外力が供給され、ボス580Aがリブ590AとともにD1方向に移動しようとしたときに、ストッパレール400AのD1方向への移動が抑制される。この場合、挿通ピン570A及び貫通孔440Aを、ボス580Aに対する「位置決め手段」という場合がある。つまり、当該位置決め手段(挿通ピン570A)はフレーム500Aに接続されている。
【0077】
図11では、貫通孔440A及び挿通ピン570Aは、D1方向においてボス580Aと異なる位置に設けられた構成を例示したが、貫通孔440A及び挿通ピン570AがD1方向においてボス580Aと同じ位置に設けられていてもよい。貫通孔440Aの代わりに凹部が設けられていてもよく、挿通ピン570Aは貫通孔440Aを貫通していなくてもよい。
【0078】
[3.第3実施形態]
[3-1.ストッパレール400Bのフレーム500Bへの取付構造]
図13を用いて、第3実施形態に係る鍵盤ユニット1Bについて説明する。図13は、本発明の一実施形態において、ストッパレールがフレームに取り付けられた状態を示す図である。図13に示すストッパレール400B及びフレーム500Bは、図7に示すストッパレール400及びフレーム500と類似しているが、複数のボス580BがD2方向に並んでいる点において、図7に示す構成と相違する。以下の説明において、図7に示す構成と同様の構成については説明を省略し、主に図7に示す構成と相違する点について説明する。なお、以下の説明において、他の実施形態と同様の構成について説明をする場合、図1図7を参照し、これらの図に示された符号の後にアルファベット“B”を付して説明する。
【0079】
図13に示すように、鍵盤ユニット1Bは、フレーム500B-1、500B-2、500B-3、500B-4、ボス580B-1、580B-2、580B-3、及びリブ590B-1、590B-2、590B-3を備えている。ボス580B-1、580B-2、580B-3はD2方向に並んでいる。ボス580B-1は、フレーム500B-1、500B-2の間において、フレーム500B-1、500B-2に対してリブ590B-1を介して接続されている。ボス580B-2は、フレーム500B-2、500B-3の間において、フレーム500B-2、500B-3に対してリブ590B-2を介して接続されている。ボス580B-3は、フレーム500B-3、500B-4の間において、フレーム500B-3、500B-4に対してリブ590B-3を介して接続されている。
【0080】
フレーム500B-1、500B-2、500B-3、500B-4を特に区別する必要がない場合、これらを単にフレーム500Bという。ボス580B-1、580B-2、580B-3を特に区別する必要がない場合、これらを単にボス580Bという。リブ590B-1、590B-2、590B-3を特に区別する必要がない場合、これらを単にリブ590Bという。フレーム500B、ボス580B、及びリブ590Bの構成は、図7に示すフレーム500、ボス580、及びリブ590の構成と同じなので、説明を省略する。
【0081】
ボス580B-1及びリブ590B-1を併せて「第1部材」という場合がある。ボス580B-2及びリブ590B-2を併せて「第2部材」という場合がある。ボス580B-3及びリブ590B-3を併せて「第3部材」という場合がある。押圧部430B-1を「第1押圧部」という場合がある。押圧部430B-2を「第2押圧部」という場合がある。押圧部430B-3を「第3押圧部」という場合がある。押圧部430B-1(第1押圧部)、押圧部430B-2(第2押圧部)、及び押圧部430B-3(第3押圧部)の位置関係は固定されている。上記の第1~第3部材及び第1~第3押圧部の構成は、図7に示す構成と同様なので、説明を省略する。
【0082】
本実施形態に係る鍵盤ユニット1Bでは、ストッパレール400B及びフレーム500Bにおいて、3つ以上のボス580Bが設けられている。3つのボス580Bが設けられていることで、例えばボス580B-1に対して締結具600Bを接続させようとしたときに、その他のボス580B-2、580B-3がそれぞれ押圧部430B-2、430B-3によって押圧されているため、ストッパレール400BのD1方向への移動、及び、D1方向及びD2方向に広がる平面上におけるストッパレール400Bの回転を抑制することができる。つまり、図7に示すように、ボス580が必ずしもD1方向に並んでいる必要はない。図13では、ボス580BがD1方向に同じ位置でD2方向に並んでいる構成を例示したが、ボス580BはD1方向に異なる位置でD2方向に並んでいてもよい。また、ボス580Bが4つ以上設けられていてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、ハンマアセンブリが適用された鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。また、当該ハンマアセンブリが鍵に対して設けられている構成を例示した。しかし、上述した実施形態のハンマアセンブリは、電子ピアノ以外の装置又は電子ピアノの鍵以外の部材に適用されてもよい。
【0084】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:鍵盤ユニット、 10:鍵盤アセンブリ、 70:音源装置、 80:スピーカ、 90:筐体、 100:鍵、 100b:黒鍵、 100w:白鍵、 110w:鍵本体部、 120w:鍵支持部、 130w:ハンマ支持部、 150w:前端鍵ガイド、 200:ハンマアセンブリ、 210:前端部材、 220:軸受け部材、 222:回動中心、 230:ウェイト部材、 231:第1部分、 232:第2部分、 240:本体部材、 241:リブ、 242:凹部、 243:開口、 300:センサ、 400:ストッパレール、 401:上面、 410:下側ストッパ、 420、425、440A:貫通孔、 430、435:押圧部、 439:ストッパ、 441:リブ、 442:凹部、 500:フレーム、 510:前端フレームガイド、 570A:挿通ピン、 580、585:ボス、 581:円筒部、 582:突出部、 583:ネジ穴、 590、595:リブ、 600:締結具、 600B:締結具、 710:信号変換部、 730:音源部、 750:出力部、 800:接続部、 900:取付部
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図13