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特開2023-107605待機型ブレーキを具えたエレベーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107605
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】待機型ブレーキを具えたエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
B66B5/02 W
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008882
(22)【出願日】2022-01-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】音羽 駿
(72)【発明者】
【氏名】上野 栄太郎
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA07
3F304CA11
3F304DA43
3F304EC10
(57)【要約】
【課題】ブレーキ機構を作動させることなく、待機型ブレーキの健全性を確認できるエレベーターを提供する。
【解決手段】本発明の待機型ブレーキ30を具えたエレベーター10は、待機型ブレーキ制止用コンタクタを具えるブレーキ回路41と、前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと並列に接続される待機型ブレーキ保持用コンタクタを具えるバイパス回路42と、待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点と、待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点と、を具え、制御ユニットは、前記待機型ブレーキ制止用コンタクタに指令を送信するブレーキ指令手段と、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに指令を送信するバイパス指令手段と、前記ブレーキ指令手段の前記指令と前記待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点の整合性、及び、前記バイパス指令手段の前記指令と前記待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点の整合性を確認する健全性判定手段24等と、を具える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により非制動状態を維持し、通電が遮断されることでかごを制動するブレーキ機構を有する待機型ブレーキを具えたエレベーターであって、
前記ブレーキ機構に直列に接続され、通電により励磁して、前記ブレーキ機構を非制動状態で維持し、消磁により前記ブレーキ機構を制動状態とする待機型ブレーキ制止用コンタクタを具えるブレーキ回路と、
前記ブレーキ回路の前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと並列に接続され、通電により励磁する待機型ブレーキ保持用コンタクタを具えるバイパス回路と、
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに夫々励磁指令を送信する制御ユニットと、
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタの前記励磁・消磁状態に連動してオフ・オンする待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点と、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタの前記励磁・消磁状態に連動してオフ・オンする待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点と、
を具え、
前記制御ユニットは、
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタに消磁又は励磁の指令を送信するブレーキ指令手段と、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに励磁又は消磁の指令を送信するバイパス指令手段と、
前記ブレーキ指令手段の前記指令と前記待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点の前記オフ・オン状態の整合性、及び、前記バイパス指令手段の前記指令と前記待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点の前記オフ・オン状態との整合性を確認する健全性判定手段と、
を具える、待機型ブレーキを具えたエレベーター。
【請求項2】
前記ブレーキ機構は、ブレーキシューと、前記ブレーキシューを開放保持するソレノイドコイルとを有しており、
前記ブレーキ回路に前記ソレノイドコイルが直列接続されている、
請求項1に記載の待機型ブレーキを具えたエレベーター。
【請求項3】
前記健全性判定手段が、前記整合性を確認し、何れかに不整合が生じた場合、前記ブレーキ指令手段は前記待機型ブレーキ制止用コンタクタに消磁指令を送信し、前記バイパス指令手段は、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに消磁指令を送信し、前記ブレーキ機構を制動状態とする、
請求項1又は請求項2に記載の待機型ブレーキを具えたエレベーター。
【請求項4】
前記ブレーキ回路は、前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと直列に接続され、前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと連動して励磁状態・消磁状態を採る待機型ブレーキ遮断用コンタクタを具える、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の待機型ブレーキを具えたエレベーター。
【請求項5】
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタは2つであって、各待機型ブレーキ制止用コンタクタに前記待機型ブレーキ遮断用コンタクタが接続されており、
各待機型ブレーキ遮断用コンタクタの前記励磁・消磁状態に連動してオフ・オンする待機型ブレーキ遮断用コンタクタb接点を具え、
前記制御ユニットには、両待機型ブレーキ遮断用コンタクタb接点どうしの前記オフ・オン状態との整合性を確認する健全性判定手段を具える、
請求項4に記載の待機型ブレーキを具えたエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープブレーキの如き待機型ブレーキを具えたエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには、戸開状態でかごが上昇、下降運転することを防止するために、待機型ブレーキ式の戸開走行保護装置(UCMP)が搭載されている。待機型ブレーキとして、エレベーターの巻上機や常時作動型ブレーキとは独立したロープブレーキが挙げられる。待機型ブレーキは、固定シューと可動シューとをロープを挟んで対向配置したブレーキ機構を具える。通常時、可動シューは、ソレノイドコイルにより開放保持される。ソレノイドコイルは、ブレーキ回路により常時通電されて励磁しており、待機型ブレーキを作動させる時にはブレーキ回路に配備されたコンタクタを遮断してソレノイドコイルを消磁し、可動シューを固定シューに向けて移動させ、ロープを拘束して、かごの昇降を制動する。
【0003】
特許文献1では、ブレーキ回路のコンタクタが遮断され待機型ブレーキが作動した状態であっても、ソレノイドコイルを復帰可能とするために、ブレーキ回路と並列にバイパス回路を設けている。そして、コンタクタが遮断した状態であっても、バイパス回路を通じてソレノイドコイルに通電を行なうことで、一時的に待機型ブレーキを復帰させ、乗客のかご閉じ込めを防止できる。
【0004】
待機型ブレーキが正しく作動するか、すなわち、待機型ブレーキの健全性は、ブレーキ回路のコンタクタを遮断し、ソレノイドコイルを消磁させ、実際にブレーキ機構を作動させることで確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-144026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
待機型ブレーキ制止用コンタクタは、たとえば24時間~48時間に一度作動させて、その健全性を確認する必要がある。しかしながら、待機型ブレーキ制止用コンタクタを遮断し、待機型ブレーキを作動させると、その後の待機型ブレーキの復帰には時間が掛かり、その間、エレベーターを利用できなくなる。また、ロープブレーキの場合、ブレーキシューがロープを拘束する際の動作音が大きく、建物の利用者に不快感や不信感を与えることもある。とくに、健全性確認は、利用者の少ない深夜や早朝に実施せざるを得ないから、マンション等では動作音の発生は問題になり易い。このため、ブレーキ機構を作動させることなく、待機型ブレーキ制止用コンタクタの健全性を確認する手法の確立が求められている。
【0007】
本発明は、ブレーキ機構を作動させることなく、待機型ブレーキを制御する待機型ブレーキ制止用コンタクタの健全性を確認できるエレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の待機型ブレーキを具えたエレベーターは、
通電により非制動状態を維持し、通電が遮断されることでかごを制動するブレーキ機構を有する待機型ブレーキを具えたエレベーターであって、
前記ブレーキ機構に直列に接続され、通電により励磁して、前記ブレーキ機構を非制動状態で維持し、消磁により前記ブレーキ機構を制動状態とする待機型ブレーキ制止用コンタクタを具えるブレーキ回路と、
前記ブレーキ回路の前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと並列に接続され、通電により励磁する待機型ブレーキ保持用コンタクタを具えるバイパス回路と、
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに夫々励磁指令を送信する制御ユニットと、
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタの前記励磁・消磁状態に連動してオフ・オンする待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点と、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタの前記励磁・消磁状態に連動してオフ・オンする待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点と、
を具え、
前記制御ユニットは、
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタに消磁又は励磁の指令を送信するブレーキ指令手段と、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに励磁又は消磁の指令を送信するバイパス指令手段と、
前記ブレーキ指令手段の前記指令と前記待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点のオフ・オン状態の整合性、及び、前記バイパス指令手段の前記指令と前記待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点のオフ・オン状態との整合性を確認する健全性判定手段と、
を具える。
【0009】
前記ブレーキ機構は、ブレーキシューと、前記ブレーキシューを開放保持するソレノイドコイルとを有しており、
前記ブレーキ回路に前記ソレノイドコイルが直列接続されている。
【0010】
前記健全性判定手段が、前記整合性を確認し、何れかに不整合が生じた場合、前記ブレーキ指令手段は前記待機型ブレーキ制止用コンタクタに消磁指令を送信し、前記バイパス指令手段は、前記待機型ブレーキ保持用コンタクタに消磁指令を送信し、前記ブレーキ機構を制動状態とすることができる。
【0011】
前記ブレーキ回路は、前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと直列に接続され、前記待機型ブレーキ制止用コンタクタと連動して励磁状態・消磁状態を採る待機型ブレーキ遮断用コンタクタを具える構成とすることができる。
【0012】
前記待機型ブレーキ制止用コンタクタは2つであって、各待機型ブレーキ制止用コンタクタに前記待機型ブレーキ遮断用コンタクタが接続されており、
各待機型ブレーキ遮断用コンタクタの前記励磁・消磁状態に連動してオフ・オン待機型ブレーキ遮断用コンタクタb接点を具え、
前記制御ユニットには、両待機型ブレーキ遮断用コンタクタb接点どうしのオフ・オン状態の整合性を確認する健全性判定手段を具えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエレベーターによれば、待機型ブレーキ制止用コンタクタを消磁状態、待機型ブレーキ保持用コンタクタを励磁状態にすることで、ブレーキ機構のソレノイドコイルは、バイパス回路により通電が維持される。従って、待機型ブレーキ制止用コンタクタの健全性の確認時に、ブレーキ機構は制動状態にならず、ロープは拘束されない。このため、ブレーキ機構の復帰動作は不要であり、エレベーターが利用できない制限もない。また、ブレーキ機構が作動しないから、動作音の発生もない。
【0014】
制御ユニットは、待機型ブレーキ制止用コンタクタと待機型ブレーキ保持用コンタクタへの励磁指令、消磁指令と、待機型ブレーキ制止用コンタクタb接点と待機型ブレーキ保持用コンタクタb接点のオフ・オン状態の整合性を参照することで、ブレーキ回路及びバイパス回路の健全性を確認できる。従って、何れかのコンタクタが励磁状態のまま故障(所謂オン故障)したことも、当該整合性が不整合となることで確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーターの構成を示す説明図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る待機型ブレーキ回路を示している。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るUCMPの制御ユニットのブロック図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る健全性確認のフローチャートである。
図5図5は、コンタクタの励磁指令と消磁指令のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る待機型ブレーキ30を具えたエレベーター10について説明を行なう。
【0017】
図1は、本発明のエレベーター10の一実施形態を示す説明図である。エレベーター10は、利用者が乗車するかご11を建物内で昇降させる装置であって、たとえば、図1のエレベーター10では、巻上機12を建物の機械室13に配置しており、機械室13内には、巻上機12により回転する駆動シーブ14と併設されたそらせ車15にロープ16を巻回している。ロープ16の一端はかご11を吊下げ支持しており、他端には、カウンターウェイト17が装着されている。巻上機12は、常時作動型ブレーキ18を具え、通常の運行の際に、巻上機12によって、かご11を昇降させ、巻上機12の停止と常時作動型ブレーキ18の作動でかご11を所望階床で停止させる。巻上機12及び常時作動型ブレーキ18は、運行制御ユニット19により制御される。
【0018】
また、エレベーター10には、待機型ブレーキ30が配備される。図示の実施形態は、ロープブレーキを採用したものであり、運行制御ユニット19とは独立した戸開走行保護ユニット(UCMP)の制御ユニット20により制御される。
【0019】
待機型ブレーキ30は、一実施形態として、ロープブレーキが用いられる。ロープブレーキは、固定シュー32と可動シュー33からなるブレーキシューをロープ16を挟んで対向して配置したブレーキ機構31を具えた構成とすることができる。可動シュー33は、ソレノイドコイル34などのアクチュエーターに連繋される。
【0020】
そして、本実施形態のブレーキ機構31は、常時通電されるソレノイドコイル34により可動シュー33が固定シュー32から離間した状態で保持し、ロープ16を開放している。待機型ブレーキ30の作動時には、ブレーキ機構31は、ソレノイドコイル34への通電を遮断することで、可動シュー33が固定シュー32に向けて移動し、ロープ16を拘束して、かご11を制動状態とする。なお、ブレーキ機構31の構成や設置位置は、これに限定されるものではない。たとえば、調速機・ガバナーロープを具える構成であれば、ブレーキ機構31は、ガバナーロープに設置することもできる。
【0021】
ブレーキ機構31を開放保持するソレノイドコイル34は、図2に示す待機型ブレーキ回路40に接続されている。待機型ブレーキ回路40は、ソレノイドコイル34と直列に接続されたブレーキ回路41と、ブレーキ回路41に並列に接続されたバイパス回路42を有し、商用電源50(AC100V)に接続されている。
【0022】
ブレーキ回路41には、2対のコンタクタ(電磁接触器:#RBSと#RBH、#RBSAと#RBHA)が直列に接続されている。#RBSと#RBSAは、待機型ブレーキ制止用コンタクタであり、#RBHと#RBHAは、待機型ブレーキ遮断用コンタクタである。待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS及び#RBSAは、UCMPの制御ユニット20により励磁・消磁される。一方、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAは、夫々待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS及び#RBSAが消磁することでコイル電流が遮断され、連動して消磁される。待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAは、エレベーター10の通常走行時は励磁状態にあり、乗場ドア又はかごドアが戸開し、且つ、かご11が走行(所謂戸開走行)した場合に消磁される。これらコンタクタ♯RBHと♯RBHAはたとえば常開接点を採用でき、エレベーター10の通常運転時は、待機型ブレーキ制止用コンタクタ♯RBS及び♯RBSAに連動して閉状態が維持される。なお、電気回路上は、待機型ブレーキ制止用コンタクタ♯RBS及び♯RBSAが消磁、または、戸開走行した場合に、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ♯RBHと♯RBHAは消磁する。
【0023】
バイパス回路42にも、1対のコンタクタ(#RBK1と#RBK2)がそれぞれ直列に接続されている。#RBK1と#RBK2は、待機型ブレーキ保持用コンタクタである。待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2は、UCMPの制御ユニット20により励磁・消磁される。これらコンタクタはたとえば常開接点を採用できる。
【0024】
また、上記した待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSA、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHA、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2のa接点に対し、これらa接点と連動するb接点21,21a,22,22a,23,23aを具える。b接点は、コンタクタが励磁状態(a接点がオン状態)のときオフ状態、コンタクタが消磁状態(a接点がオフ状態)のときオン状態となる。
【0025】
UCMPの制御ユニット20は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピューターと、揮発性メモリ及び非揮発性メモリ等の記憶装置と、クロック回路等を含んで構成することができる。不揮発性メモリは例えばフラッシュROM(Read Only Memory)である。不揮発性メモリには、本発明の制御方法を制御ユニット20に実行させるプログラムが予め格納されている。揮発性メモリは例えばRAM(Random Access Memory)である。揮発性メモリは上記プログラムを実行する際のワークエリアとしてCPUによって利用される。
【0026】
より詳細には、制御ユニット20は、図3に示すように、上記した待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS及び#RBSAに消磁指令・励磁指令を送信するブレーキ指令手段27と、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に励磁指令・消磁指令を送信するバイパス指令手段28とを具える。
【0027】
制御ユニット20には、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSA、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2、各b接点21,21a,23,23aの状態を監視すると共に、ブレーキ指令手段27、バイパス指令手段28から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS及び#RBSA、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に送信された指令の内容との整合性を確認する健全性判定手段24,24a,26,26aを具える。健全性判定手段24,24a,26,26aは、b接点がオン状態のときにコンタクタが消磁状態(a接点がオフ状態)、或いは、b接点がオフ状態のときにコンタクタが励磁状態(a接点がオン状態)であれば、整合性があり、健全にコンタクタが作動していると判定する。逆に、b接点がオン状態のときにコンタクタも励磁状態(a接点がオン状態)、或いは、b接点がオフ状態のときにコンタクタが消磁状態(a接点がオフ状態)であれば、不整合であり、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS及び#RBSA、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2の何れかが故障していると判定する。
【0028】
同様に、制御ユニット20には、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAのb接点22,22aの状態を監視する健全性判定手段25を具える。待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAは、上記のとおり、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに連動して励磁、消磁する。待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSA自体は、ブレーキ指令手段27からの指令により同時に励磁、消磁するから、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAも、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAと同期して同時に励磁、消磁する。従って、健全性判定手段25は、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAのb接点22,22aが同じ状態、すなわち、両方がオン、両方がオフとなっていることを監視する。これにより、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが健全であると判定される。一方、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAのb接点22,22aの状態が異なる場合、すなわち、一方がオンで他方がオフの場合には、不整合であり、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBH又は#RBHAが故障していると判定する。
【0029】
そして、健全性判定手段24,24a,25,26,26aが、何れかが不整合、すなわち故障であると判定した場合には、ブレーキ指令手段27及びバイパス指令手段28は、すべてのコンタクタ#RBSと#RBSA、#RBK1と#RBK2を消磁するよう指令し、ブレーキ回路41及びバイパス回路42を遮断して、ソレノイドコイル34を作動させることでロープ16を拘束する。
【0030】
上記構成の待機型ブレーキ30を具えたエレベーター10は、以下のとおり動作する。なお、通常のエレベーター10の制御については、説明を省略する。
【0031】
通常時、待機型ブレーキ30は、ソレノイドコイル34がブレーキ回路41により商用電源50に接続され、非制動の状態である。具体的には、UCMPの制御ユニット20は、ブレーキ指令手段27により、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに励磁指令を送信し、バイパス指令手段28により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に消磁指令を送信した状態にある。結果、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAは励磁(a接点がオン状態)、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAも連動して励磁(a接点がオン状態)となっている。一方、バイパス回路42は、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2は消磁(a接点がオフ状態)である。故に、待機型ブレーキ30のソレノイドコイル34は、ブレーキ回路41が導通することにより商用電源50に接続され、開放状態で保持される。
【0032】
通常時、何らかの異常事態が発生し、戸開走行が発生した場合には、制御ユニット20は、待機型ブレーキ30を作動させて、かご11を非常停止させる。この場合、制御ユニット20は、ブレーキ回路41が待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAを消磁させ、待機型ブレーキ30を作動させる。なお、この場合、待機型ブレーキ30の復帰は、メンテナンス員により実行される。
【0033】
<健全性確認>
待機型ブレーキ30の健全性を担保するために、定期的に待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS、#RBSAの健全性確認が実行される。健全性確認は、所定時間毎、たとえば、24時間~48時間に一度、巻上機12が作動していない時間(たとえば深夜や早朝)に待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAが消磁(a接点がオフ)となるかどうかを確認する。
【0034】
このとき、ソレノイドコイル34を消磁し、実際にブレーキ機構31を作動させると、復帰動作が必要となる。そして、その間、エレベーター10が利用できず、また、待機型ブレーキ30の動作音が発生するなどの不具合がある。このため、本発明では、ブレーキ回路41の待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSA、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAを消磁(a接点がオフ)させてブレーキ回路41による通電を遮断する間、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2を励磁(a接点がオン)することで、バイパス回路42によってソレノイドコイル34の励磁状態を維持し、待機型ブレーキ30を作動させないようにしている。
【0035】
待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBS、#RBSAの健全性確認に関する具体的実施形態について、図4のフローチャート、図5のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0036】
健全性確認開始時は、上記したとおり、待機型ブレーキ30は非制動の状態であって、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAが励磁(a接点がオン状態)、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAも励磁(a接点がオン状態)、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2は非励磁(a接点がオフ状態)である。ソレノイドコイル34はブレーキ回路41により通電され、励磁状態にある。
【0037】
この状態から、まず、バイパス回路42を通電させる。具体的には、UCMPの制御ユニット20は、バイパス指令手段28により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に励磁指令を送信する(ステップS1)。この励磁指令により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2は励磁し、ソレノイドコイル34は、ブレーキ回路41とバイパス回路42の両方によって商用電源50と接続される。同時に待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2のa接点がオンになる。
【0038】
待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2の励磁指令は、健全性判定手段26,26aにも送信される(ステップS1)。バイパス指令手段28の励磁指令により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2が健全に励磁した場合には、a接点がオン状態となり、対応するb接点23,23aは連動してオフ状態となる。b接点23,23aの状態は健全性判定手段26,26aに送信されるから、健全性判定手段26、26aは、バイパス指令手段28の励磁指令と、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2のb接点23,23aの状態が整合していれば、健全と判定し、次のステップS3に移行する(ステップS2のYes、図5の「#RBK1、#RBK2励磁」)。一方、バイパス指令手段28の励磁指令に対し、b接点23,23aの状態が整合しない場合、たとえばb接点23,23aの一方がオン状態にある場合には(ステップS2のNo)、健全性判定手段26又は26aは不整合(故障)と判定する(ステップS12)。この場合、待機型ブレーキ30の動作を保証できないため、制御ユニット20は、待機型ブレーキ30を作動させるべく、ブレーキ指令手段27から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに消磁指令、バイパス指令手段28から待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に消磁指令を送信し、これらコンタクタを消磁させる。これにより、ブレーキ回路41とバイパス回路42を遮断し、ソレノイドコイル34への通電を止めて、ブレーキ機構31を作動させる(ステップS13)。なお、コンタクタの復帰には、メンテナンス員の確認が必要になる。
【0039】
ステップS2のYesの後、所定時間(たとえば0.3秒)が経過してから(ステップS3)、ブレーキ回路41を遮断する。ブレーキ回路41の遮断まで所定時間空けているのは、バイパス回路42による通電を確実に担保するためである。
【0040】
具体的には、ブレーキ指令手段27から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに消磁指令を送信する(ステップS4、図5の「#RBS、#RBSA消磁」)。これにより、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAが消磁すると共に、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが連動して消磁する。
【0041】
待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAの消磁指令は、健全性判定手段24,24aにも送信される(ステップS4)。ブレーキ指令手段27の消磁指令により、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAと、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが健全に消磁した場合には、a接点がオフ状態となり、対応するb接点21,21a、22,22aは連動してオン状態となる。b接点21,21aの状態は健全性判定手段24,24aに送信されるから、健全性判定手段24,24aにより、ブレーキ指令手段27の消磁指令と、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAのb接点21,21aの状態が整合していると判定され、且つ、健全性判定手段25により、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAのb接点22,22aどうしの状態が整合(一致)していると判定されると、健全と判定し、次のステップS6に移行する(ステップS5のYes)。一方、ブレーキ指令手段27の消磁指令に対し、b接点21,21aの状態が整合しない場合、又は、b接点22,22aどうしの状態が整合しない場合には(ステップS5のNo)、健全性判定手段24,24a又は25は不整合(故障)と判定する(ステップS12)。この場合、待機型ブレーキ30の動作を保証できないため、制御ユニット20は、待機型ブレーキ30を作動させるべく、ブレーキ指令手段27から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに消磁指令、バイパス指令手段28から待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に消磁指令を送信し、これらコンタクタを消磁させる。これにより、ブレーキ回路41とバイパス回路42を遮断し、ソレノイドコイル34への通電を止めて、ブレーキ機構31を作動させる(ステップS13)。なお、コンタクタの復帰には、メンテナンス員の確認が必要になる。
【0042】
ステップS4及びS5により、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSA、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが消磁しない不良はもちろん、オン故障、すなわち、コンタクタが焼き付き等により励磁状態のまま消磁状態に移行できない故障も発見できる。
【0043】
ステップS5のYesの後、所定時間(たとえば0.3秒)が経過してから(ステップS6)、ブレーキ回路41を再び通電させる。
【0044】
具体的には、ブレーキ指令手段27から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに励磁指令を送信する(ステップS7、図5の「#RBS、#RBSA励磁」)。これにより、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAが励磁すると共に、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが連動して励磁する。
【0045】
待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAの励磁指令は、健全性判定手段24,24aにも送信される(ステップS7)。ブレーキ指令手段27の励磁指令により、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAと、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが健全に励磁した場合には、a接点がオン状態となり、対応するb接点21,21a,22,22aも連動してオフ状態となる。b接点21,21a,22,22aの状態は健全性判定手段24,24a,25に送信されるから、健全性判定手段24,24aにより、ブレーキ指令手段27の励磁指令と、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAのb接点21,21aの状態が整合していると判定され、且つ、健全性判定手段25により待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAのb接点22,22aどうしの状態が整合(一致)していると判定されれば、健全と判定し、次のステップS9に移行する(ステップS8のYes)。一方、ブレーキ指令手段27の励磁指令に対し、b接点21,21aの状態が整合しない場合、又は、b接点22,22aどうしの状態が整合しない場合には(ステップS8のNo)、健全性判定手段24,24a又は25は不整合(故障)と判定する(ステップS12)。この場合、待機型ブレーキ30の動作を保証できないため、制御ユニット20は、待機型ブレーキ30を作動させるべく、ブレーキ指令手段27から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに消磁指令、バイパス指令手段28から待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に消磁指令を送信し、これらコンタクタを消磁させる。これにより、ブレーキ回路41とバイパス回路42を遮断し、ソレノイドコイル34への通電を止めて、ブレーキ機構31を作動させる(ステップS13)。なお、コンタクタの復帰には、メンテナンス員の確認が必要になる。
【0046】
上記ステップS4~S8(Yes)により、待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAと、待機型ブレーキ遮断用コンタクタ#RBHと#RBHAが健全であることが判定できる。
【0047】
ステップS8のYesの後、所定時間(たとえば0.3秒)が経過してから(ステップS9)、再びバイパス回路42を遮断する。バイパス回路42の遮断まで所定時間空けているのは、ブレーキ回路41による通電を確実に担保するためである。
【0048】
具体的には、バイパス指令手段28から待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に消磁指令を送信する(ステップS10、図5の「#RBK1、#RBK2消磁」)。これにより、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2が消磁する。
【0049】
待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2の消磁指令は、健全性判定手段26,26aにも送信される(ステップS10)。バイパス指令手段28の消磁指令により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2が健全に消磁した場合には、a接点がオフ状態となり、対応するb接点23,23aも連動してオン状態となる。b接点23,23aの状態は健全性判定手段26,26aに送信されるから、健全性判定手段26,26aは、バイパス指令手段28の消磁指令と、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2のb接点23,23aの状態が整合していれば、健全と判定し、健全性確認を終了する(ステップS11のYes)。一方、バイパス指令手段28の消磁指令に対し、b接点23,23aの状態が整合しない場合には(ステップS11のNo)、健全性判定手段26,26aは不整合(故障)と判定する(ステップS12)。この場合、待機型ブレーキ30の動作を保証できないため、制御ユニット20は、待機型ブレーキ30を作動させるべく、ブレーキ指令手段27から待機型ブレーキ制止用コンタクタ#RBSと#RBSAに消磁指令、バイパス指令手段28から待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2に消磁指令を送信し、これらコンタクタを消磁させる。これにより、ブレーキ回路41とバイパス回路42を遮断し、ソレノイドコイル34への通電を止めて、ブレーキ機構31を作動させる(ステップS13)。なお、コンタクタの復帰には、メンテナンス員の確認が必要になる。
【0050】
ステップS10及びS11により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2が消磁しない不良だけでなく、オン故障も発見できる。
【0051】
上記ステップS1、S2(Yes)、S10、S11(Yes)により、待機型ブレーキ保持用コンタクタ#RBK1と#RBK2が健全であることが判定できる。
【0052】
そして、上記のとおり、バイパス回路42を採用することで、ブレーキ回路41の健全性を確認することができる。ブレーキ機構31を作動させることなく、健全性確認を行なうことで、動作音の発生もないから、建物の利用者に不快感や不信感を与えることはない。また、健全性確認は、短時間、上記実施形態の場合約1秒で完了させることができるから、エレベーター10を利用できない時間も短くできる。
【0053】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 エレベーター
11 かご
20 UCMPの制御ユニット
21~23a b接点
24~26a 健全性判定手段
27 ブレーキ指令手段
28 バイパス指令手段
30 待機型ブレーキ
31 ブレーキ機構
34 ソレノイドコイル
41 ブレーキ回路
42 バイパス回路
図1
図2
図3
図4
図5