(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107627
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】インシュレータ、ステータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20230727BHJP
H02K 3/38 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008912
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八川 伶
(72)【発明者】
【氏名】河合 良
(72)【発明者】
【氏名】杉本 幸彦
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604DB01
5H604PB02
5H604PB03
5H604PC01
5H604QB01
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】コイルを巻回する際に使用されるノズルの経路を確保したインシュレータ、ステータ及びモータを提供すること。
【解決手段】ステータコアと、ステータコアに巻回される3相のコイルとの間に配置されるインシュレータ5であって、ステータコアにおけるコイルが巻回される部分を覆ってステータコアとコイルとを絶縁する本体部61と、本体部61の径方向内側の端部に配置された係止部62と、本体部62の径方向外側に配置された、コイルの渡り線を保持する複数の渡り線保持部63と、を備え、複数の渡り線保持部63のうちの少なくとも1つは、軸方向視において、径方向外側における周方向の長さが径方向内側における周方向の長さより短く形成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、前記ステータコアに巻回される3相のコイルとの間に配置されるインシュレータであって、
前記ステータコアにおける前記コイルが巻回される部分を覆って前記ステータコアと前記コイルとを絶縁する本体部と、
前記本体部の径方向内側の端部に配置された係止部と、
前記本体部の径方向外側に配置された、前記コイルの渡り線を保持する複数の渡り線保持部と、
を備え、
複数の前記渡り線保持部のうちの少なくとも1つは、軸方向視において、径方向外側における周方向の長さが径方向内側における周方向の長さより短く形成されている、
インシュレータ。
【請求項2】
複数の前記渡り線保持部のうちの前記本体部の径方向外側に位置する前記渡り線保持部は、前記渡り線保持部の周方向一方側の端面の延長上に前記係止部の周方向一方側の端部が位置する、
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
複数の前記渡り線保持部のうちの前記本体部の径方向外側に位置する前記渡り線保持部は、前記渡り線保持部の周方向他方側の端面の延長上に前記係止部の周方向他方側の端部が位置する、
請求項1又は2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインシュレータと、
前記インシュレータが装着される前記ステータコアと、
前記インシュレータを介して前記ステータコアに巻回されるコイルと、
を備えるモータのステータ。
【請求項5】
請求項4に記載のステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インシュレータ、ステータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコアとコイルとを含むステータと、ロータと、インシュレータとを備えたモータに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、インシュレータは、ステータコアに巻回されたコイルに対して供給される冷却油による冷却効率を向上させる構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを小型化して出力を向上するため、極数を減少させる必要があった。極数を減少させることにより、1つのティースに巻回されるコイルが多くなる。これにより、コイルが外れることを規制するために設けられるインシュレータの係止部を、従来のインシュレータの係止部よりも大きくする必要がある。しかしながら、コイルを巻回する際に使用されるノズルの経路は、従来とおりでは、インシュレータの係止部に干渉するおそれがある。そこで、インシュレータは、コイルを巻回する際に使用されるノズルの経路を確保する必要がある。
【0005】
本開示は、コイルを巻回する際に使用されるノズルの経路を確保したインシュレータ、ステータ及びモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、ステータコアと、前記ステータコアに巻回される3相のコイルとの間に配置されるインシュレータであって、前記ステータコアにおける前記コイルが巻回される部分を覆って前記ステータコアと前記コイルとを絶縁する本体部と、前記本体部の径方向内側の端部に配置された係止部と、前記本体部の径方向外側に配置された、前記コイルの渡り線を保持する複数の渡り線保持部と、を備え、複数の前記渡り線保持部のうちの少なくとも1つは、軸方向視において、径方向外側における周方向の長さが径方向内側における周方向の長さより短く形成されている、インシュレータが提供される。
【0007】
本開示に従えば、上記のインシュレータと、前記インシュレータが装着される前記ステータコアと、前記インシュレータを介して前記ステータコアに巻回されるコイルと、を備えるモータのステータが提供される。
【0008】
本開示に従えば、上記のステータと、前記ステータに対して回転するロータと、を備えるモータが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コイルを巻回する際に使用されるノズルの経路を確保したインシュレータ、ステータ及びモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るインシュレータを有するステータを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すステータにコイルが配置されていない状態を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すインシュレータを有するステータの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材のA-A線断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材のB-B線断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の平面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るインシュレータの第2部材の斜視図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材及び第2部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
[第1実施形態]
<モータ>
図1は、第1実施形態に係るインシュレータを有するステータを模式的に示す図である。
図2は、
図1に示すステータにコイルが配置されていない状態を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図2に示すインシュレータを有するステータの分解斜視図である。各図において、コイル3の形状を模式的に示している。インシュレータを含むステータは、図示しない、3相で24極のセグメント型スイッチトリラクタンスモータに配置される。モータは、円筒形状のステータ1と、ステータ1の内側に配置された図示しないロータとを備える。ステータ1は、円筒形状のステータコア2と、ステータコア2に支持されるコイル3とを有する。ステータ2の内周面とロータの外周面とは間隔を空けて対向する。
【0013】
以下の説明において、モータの回転軸AXと平行な方向を軸方向という。軸方向における一方側を軸方向一方側といい、軸方向一方側の反対側を軸方向他方側という。また、回転軸AXの周囲を周回する方向を周方向という。周方向おける回転方向の一方側を周方向一方側といい、周方向一方側の反対側を周方向他方側という。さらに、回転軸AXの放射方向を径方向という。径方向において中心軸AXから離れる方向側を径方向外側といい、径方向外側の反対側を径方向内側という。
【0014】
<ステータコア>
ステータコア2は、本体部20と、ティース21と、コイル3を収容するスロット22を有する。スロット22は、内周面から径方向外側に凹んだ凹部である。スロット22は、ステータコア2の内周面において周方向に複数設けられる。本実施形態では、ステータコア2には、周方向に24個のスロット22が配置されている。本実施形態では、ステータ2のスロット数は、24スロットである。スロット22は、軸方向に延在する。スロット22は、内周面に配置されている。スロット22は、軸方向一方側及び軸方向他方側と、径方向内側とに向かって開口している。
【0015】
ステータコア2は、周方向において隣接するスロット22の間に配置された、複数のティース21を有する。本実施形態では、ステータコア2には、周方向に24個のティース21が配置されている。ティース21は、ステータコア2におけるコイル3が巻回される部分である。ティース21は、コイル3を支持する。ティース21は、コイル3の開口に挿入される。
【0016】
コイル3は、ティース21の周囲に配置される。コイル3は、ティース21に支持される。コイル3は、開口を有する。コイル3の開口に、ティース21が挿入される。コイル3は、インシュレータ5を介してステータコア2に装着される。モータの極数を減少させたため、1つのティース21に巻回されるコイル3は、従来の36極のモータに比べて多くなっている。
【0017】
コイル3は、図示しないコイル本体部とコイルエンド部とを含む。コイル3のうちスロット22に収容される部分がコイル本体部である。コイル3のうちステータコア2から軸方向に突出する部分がコイルエンド部である。
【0018】
コイル3は、例えば、平角線、丸線、又は、板状のセグメント導体等の線状又は帯状の導体により構成される。コイル3は、螺旋状に配置された導体により構成される。コイル3は、1本の導体を螺旋状に巻き付けて構成されてもよいし、複数の導体を螺旋状に接続して構成されてもよい。コイル3の巻付け方法及び接続方法は限定されない。
【0019】
コイル3は、A相コイル(第1相コイル)3Aと、B相コイル(第2相コイル)3Bと、C相コイル(第3相コイル)3Cとを含む。A相コイル3AとB相コイル3BとC相コイル3Cとの区別を特に要しない場合、コイル3として記載する。
【0020】
周方向において、A相コイル3AとB相コイル3Bとは隣接する。周方向において、B相コイル3BとC相コイル3Cとは隣接する。周方向において、C相コイル3CとA相コイル3Aとは隣接する。A相コイル3Aの周方向一方側の隣にB相コイル3Bが配置される。B相コイル3Bの周方向一方側の隣にC相コイル3Cが配置される。C相コイル3Cの周方向一方側の隣にA相コイル3Aが配置される。
【0021】
<インシュレータ>
インシュレータ5は、樹脂製の部材で形成されている。インシュレータ5は、コイル3とステータコア2との間に介在する。インシュレータ5は、周方向において、複数分割されている。本実施形態では、インシュレータ5は、12分割されている。また、インシュレータ5は、軸方向において、2つに分割されている。言い換えると、インシュレータ5は、軸方向において、一方側の第1部材6と、他方側の第2部材7とに分割されている。
【0022】
周方向に分割された1つのインシュレータ5は、2連構造である。周方向に分割された1つのインシュレータ5は、2連構造であるため、A相、B相及びC相を固定することができない。そこで、周方向に分割された1つのインシュレータ5は、SN巻きを固定し、A相、B相及びC相を共通にする。
【0023】
図4ないし
図6を用いて、周方向に分割された1つのインシュレータ5の第1部材6について説明する。
図4は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の斜視図である。
図5は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の斜視図である。
図6は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の模式図である。
図6は、説明のために、周方向を直線状にした模式図である。第1部材6は、壁部60と、本体部61と、係止部62と、渡り線保持部63とを有する。
【0024】
壁部60は、円板を周方向において複数に分割した形状である。周方向に分割された、インシュレータ5の第1部材6の壁部60がすべて接続されると円板状に形成される。
【0025】
本体部61は、壁部60の径方向内側の端部から、径方向内側に突設されている。本体部61は、コイル3が巻回される部分である。本体部61は、第2部材7の本体部71の軸方向一方側の端部と接続される。本体部61は、第2部材7の本体部71と組み付けられた状態で、コイル3が巻回されたステータコア2のティース21を覆って配置される。本体部61は、ティース21の軸方向一方側を覆って配置される。
【0026】
係止部62は、コイル3が本体部61から抜けることを規制する。係止部62は、本体部61より、軸方向一方側に長く、周方向に広がっている。係止部62は、従来のインシュレータの係止部よりも軸方向の高さが高く形成されている。係止部62は、本体部61の径方向内側に配置される。係止部62は、第2部材7の係止部72の軸方向一方側の端部と接続される。
【0027】
渡り線保持部63は、コイル3の各相の渡り線を保持する。渡り線保持部63は、渡り線3AT、渡り線3BT及び渡り線3CTを保持する。渡り線保持部63は、壁部60より軸方向一方側に配置されている。渡り線保持部63は、本体部61より径方向外側に配置されている。
【0028】
渡り線保持部63は、周方向に複数に分かれている。本実施形態では、渡り線保持部63は、渡り線保持部631と、渡り線保持部632と、渡り線保持部633と、渡り線保持部634と、渡り線保持部635とに分かれている。渡り線保持部631と渡り線保持部632と渡り線保持部633と渡り線保持部634と渡り線保持部635とは、異なる形状に形成されている。渡り線保持部631と渡り線保持部632と渡り線保持部633と渡り線保持部634と渡り線保持部635の平面形状については後述する。渡り線保持部631と渡り線保持部632と渡り線保持部633と渡り線保持部634と渡り線保持部635との区別を特に要しない場合、渡り線保持部63として説明する。
【0029】
渡り線保持部63には、第1溝64Aと第2溝64Bと第3溝64Cとが形成されている。第1溝64Aと第2溝64Bと第3溝64Cとは、軸方向に離間して配置されている。第1溝64Aと第2溝64Bと第3溝64Cとは、異なる形状に形成されている。第1溝64Aと第2溝64Bと第3溝64Cとは、例えば、径方向の深さが異なる形状である。第1溝64Aと第2溝64Bと第3溝64Cとは、例えば、軸方向の幅が異なる形状である。
【0030】
第1溝64Aは、A相コイル3Aの渡り線3ATを保持する溝である。第1溝64Aは、渡り線保持部63の外周部に形成されている。第1溝64Aは、径方向外側に向かって開口している。第1溝64Aは、渡り線保持部63の軸方向一方側に位置する。第1溝64Aに収容された渡り線3ATは、ステータコア2のスロット22までの経路上において、他相の渡り線3BT及び渡り線3CTと交差しない。
【0031】
第2溝64Bは、B相コイル3Bの渡り線3BTを保持する溝である。第2溝64Bは、渡り線保持部63の外周部に形成されている。第2溝64Bは、径方向外側に向かって開口している。第2溝64Bは、渡り線保持部63の第1溝64Aより軸方向他方側に位置する。第2溝64Bに収容された渡り線3BTは、ステータコア2のスロット22までの経路上において、他相の渡り線3AT及び渡り線3CTと交差しない。
【0032】
第3溝64Cは、C相コイル3Cの渡り線3CTを保持する溝である。第3溝64Cは、渡り線保持部63の外周部に形成されている。第3溝64Cは、径方向外側に向かって開口している。第3溝64Cは、渡り線保持部63の第2溝64Bより軸方向他方側に位置する。第3溝64Cに収容された渡り線3CTは、ステータコア2のスロット22までの経路上において、他相の渡り線3AT及び渡り線3BTと交差しない。
【0033】
このように構成された第1溝64Aと第2溝64Bと第3溝64Cとを有する渡り線保持部63において、第1溝64AにおけるA相コイル3Aの渡り線3ATの第1コイルエンド部と、第2溝64BにおけるB相コイル3Bの渡り線3BTの第2コイルエンド部と、第3溝64CにおけるC相コイル3Cの渡り線3CTの第3コイルエンド部とは、径方向に異なる位置にある。
【0034】
図7を用いて、渡り線保持部63について説明する。
図7は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材のA-A線断面図である。
図6に示すA-A線の位置においては、
図7に示すように、第1溝64Aに収容されたA相コイル3Aの渡り線3ATの径方向の高さは、第2溝64Bに収容されたB相コイル3Bの渡り線3BTの径方向の高さより低い。第2溝64Bに収容されたB相コイル3Bの渡り線3BTの径方向の高さは、第3溝64Cに収容されたC相コイル3Cの渡り線3CTの径方向の高さより低い。
図6に示すA-A線の位置においては、
図7に示すように、第2溝64Bに収容されたB相コイル3Bの渡り線3BTのみが、ステータコア2のスロット22へ延びている。これにより、
図6に示すA-A線の位置においては、
図7に示すように、第2溝64Bに収容された渡り線3BTは、ステータコア2のスロット22までの経路上において、他相の渡り線3AT及び渡り線3CTと交差しない。
【0035】
第1溝64Aに収容されたA相コイル3Aの渡り線3ATの径方向の高さとは、言い換えると、第1溝64Aの深さ方向の高さである。第2溝64Bに収容されたB相コイル3Bの渡り線3BTの径方向の高さとは、言い換えると、第2溝64Bの深さ方向の高さである。第3溝64Cに収容されたC相コイル3Cの渡り線3CTの径方向の高さとは、言い換えると、第3溝64Cの深さ方向の高さである。
【0036】
図8を用いて、渡り線保持部63について説明する。
図8は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材のB-B線断面図である。
図6に示すB-B線の位置においては、
図8に示すように、第1溝64Aに収容されたA相コイル3Aの渡り線3ATの径方向の高さは、第2溝64Bに収容されたB相コイル3Bの渡り線3BTの径方向の高さより低い。第2溝64Bに収容されたB相コイル3Bの渡り線3BTの径方向の高さは、第3溝64Cに収容されたC相コイル3Cの渡り線3CTの径方向の高さより低い。
図6に示すB-B線の位置においては、第1溝64Aに収容されたA相コイル3Aの渡り線3ATのみが、ステータコア2のスロット22へ延びている。これにより、
図6に示すB-B線の位置においては、
図8に示すように、第1溝64Aに収容された渡り線3ATは、ステータコア2のスロット22までの経路上において、他相の渡り線3BT及び渡り線3CTと交差しない。
【0037】
図9を用いて、インシュレータの第1部材の平面形状について説明する。
図9は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材の平面図である。
図9に示す形状は、第1部材6が周方向において分割された複数のうちの1つの部材である。言い換えると、
図9に示す部材が、周方向に連結されて、平面形状が円環状の第1部材6が形成される。
【0038】
渡り線保持部631は、周方向一方側において隣に位置する他の部材の渡り線保持部635と連結される。渡り線保持部635は、周方向一方側において隣に位置する他の部材の渡り線保持部631と連結される。
【0039】
渡り線保持部632は、本体部612の径方向外側に位置する。渡り線保持部632は、本体部612の周方向の中心を通る軸線上に位置する。渡り線保持部634は、本体部614の径方向外側に位置する。渡り線保持部634は、本体部614の周方向の中心を通る軸線上に位置する。渡り線保持部631と渡り線保持部633と渡り線保持部635とは、本体部612の周方向の中心を通る軸線上、及び、本体部614の周方向の中心を通る軸線上から周方向に外れて位置する。渡り線保持部632と、周方向他方側に位置する渡り線保持部634との間には、渡り線保持部633が位置する。渡り線保持部634と、周方向他方側に位置する渡り線保持部631との間には、連結された渡り線保持部635及び渡り線保持部631が位置する。
【0040】
渡り線保持部631と渡り線保持部632と渡り線保持部633と渡り線保持部634と渡り線保持部635とのうちの少なくとも1つは、軸方向視において、径方向外側における周方向の長さが径方向内側における周方向の長さより短く形成されている。本実施形態では、渡り線保持部632と渡り線保持部634とは、径方向外側における周方向の長さが径方向内側における周方向の長さより短く形成されている。これにより、周方向において隣接する渡り線保持部63は、径方向外側における距離が径方向内側における距離より広くなる。また、周方向において隣接する渡り線保持部63の間に、径方向に対して傾いた方向に延びる隙間が生じる。この隙間は、コイル3をステータコア2に巻回する際に使用されるノズル100の通路Qになる。
【0041】
ノズル100の通路Qは、周方向において隣接する渡り線保持部63の間に、径方向に対して傾いた方向に延びる隙間と、周方向において隣接する係止部62の周方向の隙間とによって規定される。ノズル100の通路Qは、
図9において、破線で示している。実施形態では、通路Qは、中心線が径方向と交差する方向に配置される。
【0042】
通路Qは、通路Q1と通路Q2と通路Q3と通路Q4とを含む。通路Q1と通路Q2と通路Q3と通路Q4との区別を特に要しない場合、通路Qとして記載する。
【0043】
通路Q1は、渡り線保持部631と渡り線保持部632との間を通過する。通路Q1は、直線L11と直線L12との間に形成される。直線L11は、渡り線保持部631の周方向他方側で径方向内側の端部と、渡り線保持部631と連結された渡り線保持部635の周方向一方側において隣に位置する渡り線保持部634の径方向内側に位置する本体部614の係止部624の周方向他方側の端部とを結ぶ直線である。直線L12は、渡り線保持部632の周方向一方側の端面の延長上の直線である。
【0044】
通路Q2は、渡り線保持部632と渡り線保持部633との間を通過する。通路Q2は、直線L21と直線L22との間に形成される。直線L21は、渡り線保持部632の周方向他方側の端面の延長上の直線である。直線L22は、渡り線保持部633の周方向一方側で径方向内側の端部と、渡り線保持部633の周方向他方側において隣に位置する渡り線保持部634の径方向内側に位置する本体部614の係止部624の周方向一方側の端部とを結ぶ直線である。
【0045】
通路Q3は、渡り線保持部633と渡り線保持部634との間を通過する。通路Q3は、直線L31と直線L32との間に形成される。直線L31は、渡り線保持部633の周方向他方側で径方向内側の端部と、渡り線保持部633の周方向一方側において隣に位置する渡り線保持部632の径方向内側に位置する本体部612の係止部622の周方向他方側の端部とを結ぶ直線である。直線L32は、渡り線保持部634の周方向一方側の端面の延長上の直線である。
【0046】
通路Q4は、渡り線保持部634と渡り線保持部635との間を通過する。通路Q4は、直線L41と直線L42との間に形成される。直線L41は、渡り線保持部634の周方向他方側の端面の延長上の直線である。直線L42は、渡り線保持部635の周方向一方側で径方向内側の端部と、渡り線保持部635と連結された渡り線保持部631の周方向他方側において隣に位置する渡り線保持部632の径方向内側に位置する本体部612の係止部622の周方向一方側の端部とを結ぶ直線である。
【0047】
通路Q1と通路Q4とは、渡り線保持部634の径方向内側に位置する本体部614の係止部624と、係止部624と周方向他方側の隣に位置する係止部622との間において交差する。通路Q2と通路Q3とは、渡り線保持部632の径方向内側に位置する本体部612の係止部622と、係止部622と周方向他方側の隣に位置する係止部624との間において交差する。
【0048】
渡り線保持部632の周方向一方側の端面の延長上に係止部622の周方向一方側の端部が位置する。渡り線保持部634の周方向一方側の端面の延長上に係止部624の周方向一方側の端部が位置する。渡り線保持部632の周方向他方側の端面の延長上に係止部622の周方向他方側の端部が位置する。渡り線保持部634の周方向他方側の端面の延長上に係止部624の周方向他方側の端部が位置する。
【0049】
渡り線保持部631と渡り線保持部632との間、渡り線保持部632と渡り線保持部633との間、渡り線保持部633と渡り線保持部634との間、及び、渡り線保持部634と渡り線保持部635との間は、径方向内側において最も狭くなっている。渡り線保持部631と渡り線保持部632との間が最も狭くなっている部分の距離d、渡り線保持部632と渡り線保持部633との間が最も狭くなっている部分の距離d、渡り線保持部633と渡り線保持部634との間が最も狭くなっている部分の距離d、渡り線保持部634と渡り線保持部635との間が最も狭くなっている部分の距離dは、コイル3をステータコア2に巻回する際に使用されるノズル100が通過可能な距離になっている。距離dは、例えば、6.3mmである。
【0050】
本実施形態では、軸方向視において、周方向に隣り合う係止部62の間隔は、最も狭い部分において例えば、7.2mmである。本実施形態では、軸方向視において、周方向に隣り合う渡り線保持部63の間隔は、最も狭い部分において例えば、6.3mm以上6.6mm以下である。
【0051】
渡り線保持部632の周方向他方側の端部と渡り線保持部633の周方向一方側の端部との間の角度θ1は、例えば、16.4°である。渡り線保持部633の周方向他方側の端部と渡り線保持部634の周方向一方側の端部の間の角度θ2は、例えば、9.5°である。渡り線保持部632の周方向一方側の端部と渡り線保持部633の周方向一方側の端部との間の角度θ3は、例えば、3°である。渡り線保持部633の周方向他方側の端部と渡り線保持部634の周方向他方側の端部との間の角度θ4は、例えば、5°である。渡り線保持部631の周方向他方側の端部と渡り線保持部633の周方向一方側の端部との間の角度θ5は、例えば、11.5°である。渡り線保持部633の周方向他方側の端部と渡り線保持部635の周方向一方側の端部との間の角度θ6は、例えば、10.5°である。
【0052】
本実施形態では、軸方向視において、周方向に隣り合う渡り線保持63部の向かい合う端部がなす角度は、例えば、9°以上17°以下である。
【0053】
図10、
図11を用いて、周方向に分割された1つのインシュレータ5の第2部材7について説明する。
図10は、第1実施形態に係るインシュレータの第2部材の斜視図である。
図11は、第1実施形態に係るインシュレータの第1部材及び第2部材の斜視図である。第2部材7は、壁部70と、本体部71と、係止部72とを有する。
図10、
図11に示す形状は、第2部材7が周方向において分割された複数のうちの1つの部材である。言い換えると、
図10に示す部材が、周方向に連結されて、平面形状が円環状の第2部材7が形成される。
【0054】
壁部70は、円筒を周方向において複数に分割した形状である。周方向に分割された、インシュレータ5の第2部材7の壁部70がすべて接続されると円筒状に形成される。
【0055】
本体部71は、壁部70の径方向内側に向いた面から、径方向内側に突設されている。本体部71は、コイル3が巻回される部分である。本体部71は、第1部材6の本体部61の軸方向他方側の端部と接続される。本体部71は、第1部材6の本体部61と組み付けられた状態で、コイル3が巻回されたステータコア2のティース21を覆って配置される。本体部71は、ティース21の軸方向他方側を覆って配置される。
【0056】
係止部72は、コイル3が本体部71から抜けることを規制する。係止部72は、本体部71より、軸方向他方側に長く、周方向に広がっている。係止部72は、本体部71の径方向内側に配置される。係止部72は、第1部材6の係止部62の軸方向他方側の端部と接続される。
【0057】
<コイルの巻回時の経路>
図12、
図13を用いて、コイル3をステータコア2に巻回する際に使用されるノズル100の経路について説明する。
図12は、ノズルの経路を説明する概略図である。
図13は、ノズルの経路を説明する概略図である。
図12、
図13は、説明のために、周方向を直線状にした模式図である。一体として組み付けられたステータコア2に、ノズル100を使用してコイル3が巻回される。
【0058】
図12(a)、
図13(a)においては、ノズル100が径方向に沿って位置している。
図12(a)、
図13(a)に示すように、係止部62が従来に比べて大きく張り出している。このため、このままノズル100がインシュレータ6の本体部61側へ進入すると、係止部62が干渉する。
【0059】
そこで、
図12(b)、
図13(b)に示すように、ノズル100を径方向に対して斜めに傾けた状態にして、インシュレータ6の本体部61側へ進入させる。
図9に示したように、隣接する渡り線保持部63間の最も狭い部分は、ノズル100が通過可能な距離d、離間している。このため、この隙間からノズル100が進入可能である。
【0060】
そして、
図12(c)、
図13(c)に示すように、ノズル100を斜めに傾けた状態のまま、インシュレータ6の係止部62側へ進入させる。ノズル100は、隣接する渡り線保持部63間を通過して、隣接する係止部62の間までで到達する。
【0061】
そして、
図12(d)、
図13(d)に示すように、ノズル100を径方向に沿った向きに戻す。そして、本体部61へのコイル3の巻回を開始するために、ノズル100の位置を移動させる。
【0062】
そして、
図12(e)、
図13(e)に示すように、ノズル100の傾きを変えて、本体部61へコイル3を巻回する。
【0063】
このようにして、コイル3がステータコア2に巻回される。
【0064】
<効果>
本実施形態では、渡り線保持部63のうちの少なくとも1つは、軸方向視において、径方向外側における周方向の長さが径方向内側における周方向の長さより短く形成されている。これにより、周方向において隣接する渡り線保持部63は、径方向外側における距離が径方向内側における距離より広くなる。また、周方向において隣接する渡り線保持部63の間に、径方向に対して傾いた方向に延びる隙間が生じる。この隙間は、コイル3をステータコア2に巻回する際に使用されるノズル100の通路Qになる。これらにより、本実施形態によれば、係止部62の径方向内径側の高さによらず、係止部62を避けるためにノズル100を軸方向に動かす動作が不要になる。また、本実施形態によれば、ノズル100の動きの簡素化と、渡り線の外れ防止とを実現できる。
【0065】
本実施形態では、渡り線保持部632の周方向一方側の端面の延長上に係止部622の周方向一方側の端部が位置する。また、渡り線保持部632の周方向他方側の端面の延長上に係止部622の周方向他方側の端部が位置する。本実施形態では、渡り線保持部634の周方向一方側の端面の延長上に係止部624の周方向一方側の端部が位置する。また、渡り線保持部634の周方向他方側の端面の延長上に係止部624の周方向他方側の端部が位置する。これらにより、ノズル100の通路Qを確保できる。
【0066】
このように、本実施形態は、周方向において隣接する渡り線保持部63の間に、径方向に対して傾いた方向に延びる隙間と、周方向において隣接する係止部62の周方向の隙間と、ノズル100の通路Qを確保することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…ステータ、2…ステータコア、21…ティース、22…スロット、3…コイル、3A…A相コイル(第1相コイル)、3AT…渡り線、3B…B相コイル(第2相コイル)、3BT…渡り線、3C…C相コイル(第3相コイル)、3CT…渡り線、5…インシュレータ、6…第1部材、60…壁部、61…本体部、62…係止部、63…渡り線保持部、64A…第1溝、64B…第2溝、64C…第3溝、7…第2部材、70…壁部、71…本体部、72…係止部、100…ノズル、AX…回転軸、d…距離、Q…通路。