(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107640
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】眼科情報処理装置及び眼科情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20230727BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20230727BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20230727BHJP
【FI】
A61B3/103
A61B3/10
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008928
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100184550
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 珠美
(72)【発明者】
【氏名】河内山 和則
(72)【発明者】
【氏名】清水 一成
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
【テーマコード(参考)】
4C316
5L099
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA26
4C316FB12
4C316FB16
4C316FZ01
4C316FZ03
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】近視に関する診断の効率を向上することができる眼科情報処理装置及び眼科情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】眼科情報処理装置の制御部は、被検眼の眼科情報として、眼軸長の値及び眼全体の屈性力値を、検査時期を特定して取得する(S5及びS9)。制御部は、S5及びS9の処理において取得された同一の被検眼に対応する各値を、検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表を描画するための描画データを生成する(S11及びS15)。図表において、眼軸長の値を示す第一軸に対して、眼球屈折力の値を示す第二軸が平行に配置される。第一軸は、眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示す。第二軸における眼球屈折力の値のスケールは、眼軸長の値が単位量だけ変化した場合の眼球屈折力の値の変化量に対応して設けられる
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼科情報を処理する眼科情報処理装置であって、
前記眼科情報処理装置の制御部は、
被検眼の前記眼科情報として、眼軸長の値と、眼全体の屈折力を示す眼球屈折力の値とを、検査時期を特定して取得する値取得処理と、
前記値取得処理において取得された同一の被検眼に対応する前記眼軸長の値を第一軸のスケールに応じて、前記値取得処理において取得された同一の被検眼に対応する前記眼球屈折力の値を前記第一軸に平行に配置される第二軸のスケールに応じて、それぞれ検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表に描画するための描画データを生成する描画データ生成処理と
を実行し、
前記第一軸は、前記眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示し、
前記第二軸における前記眼球屈折力の値のスケールは、前記眼軸長の値が前記単位量だけ変化した場合の前記眼球屈折力の値の変化量に一致して設けられる
ことを特徴とする眼科情報処理装置。
【請求項2】
前記眼軸長の値が前記単位量だけ変化した場合の前記眼球屈折力の値の変化量は、前記単位量が1mmである場合に1ディオプターから3ディオプターの範囲内の値であることを特徴とする請求項1に記載の眼科情報処理装置。
【請求項3】
前記描画データ生成処理は、前記一つの図表に表示される時系列の範囲を、最古の検査時期から最新の検査時期までとして、前記描画データを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記一つの図表に表示される時系列の範囲を指定する範囲指定情報を取得する範囲取得処理を実行し、
前記描画データ生成処理は、前記範囲取得処理によって取得された前記範囲指定情報に応じて、前記一つの図表に表示される時系列の範囲を指定した前記描画データを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の眼科情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、被検者が近視の進行に作用する作業を行った第一時間及び被検者が近視の抑制に作用する作業を行った第二時間の少なくともいずれかを示す時間情報を、時期を特定して取得する時間取得処理を実行し、
前記描画データ生成処理は、前記時系列に対応して前記時間情報を反映させた前記描画データを生成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の眼科情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、被検眼に関する処置の内容及び前記処置がなされた時期を示す処置情報を取得する処置情報取得処理を実行し、
前記描画データ生成処理は、前記時系列に対応して前記処置情報を反映させた前記描画データを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の眼科情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、近視に関する被検者の遺伝的因子を示す遺伝的因子情報を取得する因子情報取得処理を実行し、
前記描画データ生成処理は、前記遺伝的因子情報を表示した前記図表に対応する前記描画データを生成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の眼科情報処理装置。
【請求項8】
前記描画データ生成処理は、被検眼が近視であると判定される第一境界値と、前記第一境界値よりも強度の近視であることを示す第二境界値とを、前記第一軸又は前記第二軸に応じて示す前記図表に対応する前記描画データを生成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の眼科情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、被検者の近視が進行する可能性のレベルを、時期を特定して取得するレベル取得処理を実行し、
前記描画データ生成処理は、前記時系列に対応して前記レベルを反映させた前記描画データを生成することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の眼科情報処理装置。
【請求項10】
前記レベルは、被検者が近視の進行に作用する作業を行った第一時間及び被検者が近視の抑制に作用する作業を行った第二時間の少なくともいずれかに基づいて導出されることを特徴とする請求項9に記載の眼科情報処理装置。
【請求項11】
被検眼の眼科情報を処理するための眼科情報処理プログラムであって、
被検眼の前記眼科情報として、眼軸長の値と、眼全体の屈折力を示す眼球屈折力の値とを、検査時期を特定して取得する値取得ステップと、
前記値取得ステップにおいて取得された同一の被検眼に対応する前記眼軸長の値を第一軸のスケールに応じて、前記値取得ステップにおいて取得された同一の被検眼に対応する前記眼球屈折力の値を前記第一軸に平行に配置される第二軸のスケールに応じて、それぞれ検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表に描画するための描画データを生成する描画データ生成ステップと
をコンピュータに実行させ、
前記第一軸は、前記眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示し、
前記第二軸における前記眼球屈折力の値のスケールは、前記眼軸長の値が前記単位量だけ変化した場合の前記眼球屈折力の値の変化量に一致して設けられる
ことを特徴とする眼科情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科情報処理装置及び眼科情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼科情報を提示する眼科情報処理装置が知られている。特許文献1は、被検眼の屈折力と眼内距離とを測定し、測定した被検眼の屈折力及び眼内距離の経時変化を表示部に表示する眼科装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼全体の屈折力を示す眼球屈折力は、被検眼が近視であるかを示す指標となる。近視にはさまざまな種類がある。その一つとして、眼軸長の過伸展によって生ずる軸性近視がある。軸性近視の診断には、眼軸長の変化を観察することが有用となる場合がある。また、近視に関する総合的な診断を行うために、種々の情報を考慮する必要がある。従来の眼科装置は、近視に関する診断の効率を十分に向上することが困難である。
【0005】
本開示は、近視に関する診断の効率を向上することができる眼科情報処理装置及び眼科情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科情報処理装置は、被検眼の眼科情報を処理する眼科情報処理装置であって、前記眼科情報処理装置の制御部は、被検眼の前記眼科情報として、眼軸長の値と、眼全体の屈折力を示す眼球屈折力の値とを、検査時期を特定して取得する値取得処理と、前記値取得処理において取得された同一の被検眼に対応する前記眼軸長の値を第一軸のスケールに応じて、前記値取得処理において取得された同一の被検眼に対応する前記眼球屈折力の値を前記第一軸に平行に配置される第二軸のスケールに応じて、それぞれ検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表に描画するための描画データを生成する描画データ生成処理とを実行し、前記第一軸は、前記眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示し、前記第二軸における前記眼球屈折力の値のスケールは、前記眼軸長の値が前記単位量だけ変化した場合の前記眼球屈折力の値の変化量に一致して設けられることを特徴とする。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科情報処理プログラムは、被検眼の眼科情報を処理するための眼科情報処理プログラムであって、被検眼の前記眼科情報として、眼軸長の値と、眼全体の屈折力を示す眼球屈折力の値とを、検査時期を特定して取得する値取得ステップと、前記値取得ステップにおいて取得された同一の被検眼に対応する前記眼軸長の値を第一軸のスケールに応じて、前記値取得ステップにおいて取得された同一の被検眼に対応する前記眼球屈折力の値を前記第一軸に平行に配置される第二軸のスケールに応じて、それぞれ検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表に描画するための描画データを生成する描画データ生成ステップとをコンピュータに実行させ、前記第一軸は、前記眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示し、前記第二軸における前記眼球屈折力の値のスケールは、前記眼軸長の値が前記単位量だけ変化した場合の前記眼球屈折力の値の変化量に一致して設けられることを特徴とする。
【0008】
本開示における眼科情報処理装置及び眼科情報処理プログラムによると、近視に関する診断の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】眼科情報処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】初期描画データに対応する図表50の一例を示す説明図である。
【
図8】描画データに対応する図表60の一例を示す説明図である。
【
図9】描画データに対応する図表70の一例を示す説明図である。
【
図10】描画データに対応する図表80の一例を示す説明図である。
【
図12】第二実施形態における眼科情報処理のフローチャートである。
【
図13】初期描画データに対応する図表90の一例を示す説明図である。
【
図14】描画データに対応する図表100の一例を示す説明図である。
【
図15】描画データに対応する図表110の一例を示す説明図である。
【
図16】描画データに対応する図表120の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示される第一態様の眼科情報処理装置の制御部は、眼軸長の値と、眼球屈折力の値とを取得する。制御部は、取得した同一の被検眼に対応する各値を検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表を描画するための描画データを生成する。生成される描画データに対応する図表は、眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示す第一軸と、第一軸に平行に配置される第二軸とを備える。一つの図表において、眼軸長の値は第一軸のスケールに応じて、眼球屈折力の値は第二軸のスケールに応じて、それぞれ検査時期に応じて時系列に並べて表示される。第一軸のスケールは、眼軸長の値を所定の単位量に応じたスケールで示す。第二軸における眼球屈折力のスケールは、眼軸長の値が単位量だけ変化した場合の眼球屈折力の値の変化量に一致して設けられる。これにより、一つの図表に表示される眼軸長の値の変化量と、眼球屈折力の値の変化量とが同等になりやすくなる。よって、眼科情報処理装置は、図表におけるそれぞれの値の変化量を一覧しやすい一つの図表を、医師等のユーザに提供できる。したがって、眼科情報処理装置は、近視に関する診断の効率を向上することができる。
【0011】
眼軸長の値が前記単位量だけ変化した場合の前記眼球屈折力の値の変化量は、単位量が1mmである場合に1ディオプターから3ディオプターの範囲内の値であってもよい。
【0012】
眼軸長の値が単位量だけ変化した場合の眼球屈折力の値の変化量は、Gullstrand模型眼を用いた検討、眼内レンズ(Intraocular lens、以下、「IOL」という。)の度数決定のための計算式、眼軸長と屈折異常の進行度との相関等の少なくともいずれかから導出され得る。このようにして導出される変化量に一致して、第二軸における眼球屈折力の値のスケールが設けられる場合、ユーザは2つの値を適切に比較し易くなる。したがって、眼科情報処理装置は、眼軸長の値の変化量と、眼球屈折力の値の変化量との相関を把握しやすい一つの図表を、ユーザに提供できる。
【0013】
描画データ生成処理は、一つの図表に表示される時系列の範囲を、最古の検査時期から最新の検査時期までとして、描画データを生成してもよい。
【0014】
制御部は、値取得処理によって取得された各値を、最古の検査時期から最新の検査時期までの全てに亘って一覧できる一つの図表を描画するための描画データを生成できる。したがって、眼科情報処理装置は、被検眼の近視の状態の履歴を一つの図表でユーザに一覧させることができるので、長期に亘る近視の傾向であってもユーザに容易に観察させることができる。
【0015】
制御部は、一つの図表に表示される時系列の範囲を指定する範囲指定情報を取得する範囲取得処理を実行してもよい。描画データ生成処理は、範囲取得処理によって取得された範囲指定情報に応じて、一つの図表に表示される時系列の範囲を指定した描画データを生成してもよい。
【0016】
例えば、一つの図表を一覧することによって被検眼の近視の種類を特定したユーザは、特定した種類の近視の経過を、期間を任意に区切って観察したいこともある。制御部は、範囲取得処理を実行するので、ユーザは一つの図表に表示される時系列の範囲を任意に指定することができる。
【0017】
制御部は、被検者が近視の進行に作用する作業を行った第一時間及び被検者が近視の抑制に作用する作業を行った第二時間の少なくともいずれかを示す時間情報を、時期を特定して取得する時間取得処理を実行してもよい。描画データ生成処理は、時系列に対応して時間情報を反映させた描画データを生成してもよい。
【0018】
近視になる要因の一つとして、環境的な要因がある。勉強、読書、及びテレビ・パソコン・ゲーム機の画面等を見る等、近くを見る近見視力で過ごす時間が長くなるほど、近視が進行しやすくなる傾向がある。また、スポーツ、通勤、通学等、遠くを見る遠見視力で過ごす時間が長くなるほど、近視が抑制される場合がある。制御部は、時間取得処理を実行できるので、近視の進行に作用する作業を行った第一時間及び近視の抑制に作用する作業を行った第二時間の少なくともいずれかを示す時間情報が反映された一つの図表をユーザに提示できる。ユーザは、時間情報が反映された一つの図表を一覧することによって、時間情報に応じて近視の進行の度合いを考察することができる。
【0019】
制御部は、被検眼に関する処置の内容及び処置がなされた時期を示す処置情報を取得する処置情報取得処理を実行してもよい。描画データ生成処理は、時系列に対応して処置情報を反映させた描画データを生成してもよい。
【0020】
例えば、近視の状況に応じた眼鏡、コンタクトレンズ及び薬剤等の処方並びに手術等、被検眼に関する各種の処置が行われる場合がある。制御部は、処置情報取得処理を実行するので、処置情報が反映された一つの図表をユーザに提示できる。ユーザは、処置情報が反映された一つの図表を一覧することによって、被検眼の近視の状況を、各種の処置との関係から考察することができる。
【0021】
制御部は、近視に関する被検者の遺伝的因子を示す遺伝的因子情報を取得する因子情報取得処理を実行してもよい。描画データ生成処理は、遺伝的因子情報を表示した図表に対応する描画データを生成してもよい。
【0022】
近視になる要因の一つとして、遺伝的な要因がある。遺伝的な要因としては、例えば、近親者が近視である、近視になりやすい遺伝子を持っている等が挙げられる。制御部は、因子情報取得処理を実行できるので、遺伝的因子情報が表示された一つの図表をユーザに提示できる。ユーザは、一つの図表を一覧することによって、被検者の近視の状況と、近視に関する被検者の遺伝的因子情報とを一度に把握することができる。
【0023】
描画データ生成処理は、被検眼が近視であると判定される第一境界値と、前記第一境界値よりも強度の近視であることを示す第二境界値とを、第一軸又は第二軸に応じて示す図表に対応する描画データを生成してもよい。
【0024】
第一境界値と第二境界値とが一つの図表に示される場合、ユーザは、値取得処理によって取得され、第一軸又は第二軸に対応して図表に表示される眼軸長の値又は眼球屈折力の値が示す近視の強度の程度を容易に把握できる。
【0025】
制御部は、被検者の近視が進行する可能性のレベルを、時期を特定して取得するレベル取得処理を実行してもよい。描画データ生成処理は、時系列に対応してレベルを反映させた描画データを生成してもよい。
【0026】
近視になる要因として、環境的な要因、遺伝的な要因等がある。医師等が複数の要因を総合的に判断する等によって、被検者の近視が進行する可能性のレベルを判定する場合がある。制御部は、レベル取得処理を実行する場合、被検者の近視のリスクのレベルを取得することができるので、被検者の近視が進行する可能性のレベルが反映された一つの図表をユーザに提示できる。ユーザは、一つの図表を一覧することによって、眼軸長の値及び眼球屈折力の値に対応付けて被検者の近視が進行する可能性のレベルを把握できるので、近視に関する診断等を多角的に行うことができる。
【0027】
レベルは、被検者が近視の進行に作用する作業を行った第一時間及び被検者が近視の抑制に作用する作業を行った第二時間の少なくともいずれかに基づいて導出されてもよい。
【0028】
第一時間及び第二時間は、被検者の生活習慣等によって変動する環境的な事象である。眼科情報処理は、図表に被検者の近視が進行する可能性のレベルを反映できるので、図表を見たユーザに、被検者の近視に関する環境的な要因を時系列に応じて把握させることができる。
【0029】
本開示で例示される第二態様の眼科情報処理プログラムが実行されることによって、近視に関する診断の効率が向上する。
【0030】
<実施形態>
以下、本開示に係る典型的な実施形態の一つである第一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載される構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0031】
第一実施形態に係る眼科情報処理装置1は、被検眼の撮影、検査及び測定の少なくともいずれかを実行する眼科装置である。眼科装置は、例えば、OCT装置、走査型レーザ検眼鏡(SLO)、眼底カメラ、角膜内皮細胞撮影装置、眼軸長測定装置、眼屈折力測定装置、眼圧測定装置等の各種の眼科装置のいずれかであってよい。眼科情報は、眼科装置による撮影、検査及び測定等によって得られる情報である。第一実施形態において、眼科情報処理装置1は、被検眼を検査することによって、眼科情報として眼軸長及び眼全体の屈折力を取得することができる、光干渉式眼軸長測定装置である。眼全体の屈折力のことを、以下、眼球屈折力という。なお、眼科情報処理装置1は、眼科装置に限定されない。眼科情報処理装置1は、外部の眼科装置、電子カルテ及び眼科情報を記憶するサーバ等の外部の記憶装置等から眼科情報を取得し処理できる、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)又は携帯端末等であってもよい。眼科情報処理装置1による眼科情報の取得は、眼科情報処理装置1のユーザが、後述する操作部12を介して、眼科情報を眼科情報処理装置1に対して手動で入力することによって行われてもよい。
【0032】
図1を参照して、眼科情報処理装置1の電気的構成を説明する。眼科情報処理装置1は、制御部10と、制御部10に電気的に接続された記憶部11、操作部12、表示部13、印刷部15、駆動部16及び外部機器接続部18を備える。制御部10は、眼科情報処理装置1の全体の制御を司るCPUを備える。制御部10は、CPUからの指示に応じて、表示部13、印刷部15、駆動部16に対して駆動信号(例えば、駆動電流)を送信する所定の電気回路等を備える。
【0033】
記憶部11は、制御部10による各種プログラムの実行時に必要な各種パラメータ等を記憶するROM、RAM及びフラッシュメモリ等を含む。記憶部11は、
図5で後述する眼科情報処理を制御部10に実行させるためのプログラムを記憶する。制御部10は、記憶部11に記憶されたプログラムを展開することで、印刷実行処理を実行するプロセッサの一例として機能する。眼科情報処理を実行するためのプログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバから後述する外部機器接続部18を介してダウンロードされ、すなわち、伝送信号として送信されて、記憶部11に記憶されてもよい。この場合、眼科情報処理を実行するためのプログラムは、サーバに備えられたHDDなどの非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【0034】
操作部12は、眼科情報処理装置1に各種指示を入力するためにユーザによって操作されるボタン等である。眼科情報処理装置1がPCである場合、操作部12は、キーボード、マウス、タッチパネル等の操作デバイスであってもよい。表示部13は、例えば、モニタ、プロジェクタ等の、各種画像を表示できるデバイスである。印刷部15は、画像を印刷するプリントヘッドである。印刷部15は、サーマルプリントヘッド、インクジェットヘッド、LEDプリントヘッド等、いずれのプリントヘッドであってもよい。駆動部16は、眼科情報処理装置1が被検眼の撮影、検査及び測定を実行するために必要な各種構成を備える。外部機器接続部18は、他の眼科装置又はPC等の外部の情報機器と電気的に接続するための入出力インタフェースである。外部機器接続部18は、外部情報機器が無線接続できるように構成されていてもよい。
【0035】
図2を参照して、計測値履歴データ20について説明する。第一実施形態において、計測値履歴データ20は、記憶部11に記憶されている。計測値履歴データ20は、眼科情報処理装置1によって取得された眼科情報を複数記憶するデータベースである。「検査日時」は、被検眼の眼科情報が取得された日時を示す。「ID」は、被検者を識別する情報である。「R/L」は、被検眼が被検者の右眼又は左眼のいずれであるかを示す。R/Lの値が「R」の場合は右眼を示し、「L」の場合は左眼を示す。「AL」及び「REF.」は、被検眼の眼科情報である。ALは、被検眼の眼軸長の値を示す。ALの単位は「mm」である。REF.は、被検眼の眼球屈折力を示す。REF.の単位は「D(ディオプター)」である。
【0036】
計測値履歴データ20は、眼科情報処理装置1によって取得された眼科情報の値のそれぞれを、検査日時、ID及びR/Lに対応付けて記憶する。なお、計測値履歴データ20は、眼科情報処理装置1によって取得された眼科情報の値以外に、眼科情報処理装置1のユーザが操作部12を操作することによって眼科情報処理装置1に対して手動で入力した各種の値を記憶してもよい。
【0037】
図3を参照して、処置履歴データ30について説明する。第一実施形態において、処置履歴データ30は、記憶部11に記憶されている。処置履歴データ30は、被検眼に関する処置の履歴を記憶するデータベースである。処置履歴データ30における「ID」及び「R/L」は、
図2で示した計測値履歴データ20と同様である。処置履歴データ30は、IDに対応する被検者の右眼及び左眼のそれぞれについて、被検眼に関する処置についての情報を、処置が実施された日時に対応して記憶している。処置履歴データ30は、ID毎に設けられる。処置履歴データ30は、被検眼に関する処置についての情報を、IDに応じて複数記憶している。
図3に示す処置履歴データ30は、「A101」及び「G034」のIDに応じた処置履歴データ30の例である。
【0038】
被検眼に関する処置には、被検眼に対する眼鏡の処方、コンタクトレンズの処方、薬剤及びサプリメント等の投与、手術の実施等の治療行為等が含まれる。薬剤は、点眼薬の他、内服薬、注射薬等も含む。処置履歴データ30において、「処置内容」は、被検眼に関する処置の内容を示す。第一実施形態において、処置内容は、「点眼薬」、「眼鏡」、「コンタクトレンズ」、「手術」のいずれかである。「点眼薬」は、所定の点眼薬の投与を示す。「点眼薬」の欄は、点眼薬の種類等に応じて複数設けられてもよい。「眼鏡」は、眼鏡の処方を示す。「コンタクトレンズ」は、コンタクトレンズの処方を示す。「手術」は、所定の手術の実施を示す。「手術」の欄は、手術の内容に応じて複数設けられてもよい。処置履歴データ30が、内服薬の投与等の他の処置内容も示すように構成されてもよい。
【0039】
「処置実施日」の欄は、「処置内容」に対応する処置が実施された日を示す。処置実施日に対応する処置内容の詳細を示す情報を、以下、「処置情報」という。「投与開始」及び「投与終了」を示す処置情報は、点眼薬の投与が開始されたこと及び投与が終了されたことを表す。「→」を示す処置情報は、処置内容に対応する処置が継続して行われていることを表す。「処方」を示す処置情報は、処置内容に対応する処方がなされたことを表す。「-」を示す処置情報は、処置内容に対応する処置が行われていないことを表す。
図3では図示しないが、被検眼に所定の手術が行われた場合、処置情報は所定の手術が実施されたことを表す。すなわち、処置情報は、被検眼に関する処置の内容及び被検眼に関する処置がなされた時期を示す。なお、「眼鏡」及び「コンタクトレンズ」に対応する処置情報については、一度行われた処方の内容が、次回の処方まで継続していることとして扱う。
【0040】
処置履歴データ30は、外部機器接続部18を介して外部情報機器からインポートされることによって、記憶部11に記憶されてもよい。また、処置履歴データ30は、眼科情報処理装置1のユーザが操作部12を操作することによって眼科情報処理装置1に対して手動で入力された値を記憶してもよい。
【0041】
図4を参照して、近視関連データ40について説明する。第一実施形態において、近視関連データ40は、記憶部11に記憶されている。近視関連データ40は、ID毎に設けられる。
図4に示す近視関連データ40は、「G034」及び「C425」のIDに応じた近視関連データ40の例である。近視関連データ40は、近視関連情報を記憶するデータベースである。近視関連情報は、被検者に関する情報であって、近視に影響を及ぼす可能性がある情報及び近視に及ぼす影響のレベルを示す情報を含む。第一実施形態において、近視関連情報は、「遺伝的因子情報」、「環境的因子情報」及び「近視リスクレベル」の三種類に大別される。遺伝的因子情報は、近視に関する被検者の遺伝的因子を示す。環境的因子情報は、近視に関する被検者の環境的因子を示す。近視には、遺伝的因子と環境的因子とが複合的に関与すると考えられている。したがって、近視関連情報は、遺伝的因子情報と環境的因子情報とを含むことが好ましい。ただし、遺伝的因子情報と環境的因子情報の一方のみが近視関連情報として用いられてもよい。
【0042】
遺伝的因子情報は、「両親の近視の状況」に関する情報及び「その他遺伝的リスク」に関する情報を含む。「両親の近視の状況」は、被検者の両親の一方又は双方が近視であるかである。ユーザは、被検者に聞き取りを行うこと等によって両親の近視の状況を取得することができる。ユーザが取得した内容を眼科情報処理装置1に対して手動で入力することによって、「両親の近視の状況」を示す情報が近視関連データ40に記憶される。遺伝的因子情報は、「両親の近視の状況」に替えて、被検者の兄弟等その他の近親者の近視の状況等を含んでもよい。
【0043】
「その他遺伝的リスク」は、近視の発症・進行に関与する様々な遺伝子を解析することによって得られる、被検者が遺伝的に近視になる可能性の高さを示す。「その他遺伝的リスク」の導出には、被検者の血液検査の結果によるもの等、公知の手法が用いられる。第一実施形態において、「その他遺伝的リスク」は、「低」、「中」、「高」の三段階で示される。ユーザは、公知の手法によって導出された「その他遺伝的リスク」を示す情報を、眼科情報処理装置1に対して手動で入力することによって、「その他遺伝的リスク」を示す情報が近視関連データ40に記憶される。また、被検者の「両親の近視の状況」及び「その他遺伝的リスク」が、外部情報機器に記憶されている被検者の電子カルテに登録されている場合がある。この場合には、外部機器接続部18を介して電子カルテの情報が外部情報機器からインポートされることによって、「両親の近視の状況」及び「その他遺伝的リスク」が近視関連データ40に記憶されてもよい。なお、「その他遺伝的リスク」の導出には、将来に開発される様々な手法が採用されてもよい。
【0044】
第一実施形態は、環境的因子情報として、一日のうち、被検者が近視の進行に作用する作業を行った「第一時間」と、被検者が近視の抑制に作用する作業を行った「第二時間」とを定義している。第一時間は、被検者が近くを見る近見視力で過ごした時間である。勉強、読書及びテレビ・パソコン・ゲーム機の画面等を見る等の生活行動の時間が、第一時間に該当する。第二時間は、被検者が遠くを見る遠見視力で過ごした時間である。スポーツ、通勤、通学等の生活行動の時間が、第二時間に該当する。第一時間が長くなるほど、近視が進行しやすくなると考えられている。第二時間が長くなるほど、近視の進行が抑制されやすくなると考えられている。
【0045】
「環境的因子」は、被検者の生活行動の変化に伴い変化しうる。ユーザは、被検者に聞き取りを行うこと等によって、第一時間及び第二時間を取得することができる。近視関連データ40は、第一時間及び第二時間を、被検者から聞き取った時期に対応付けて記憶できるように構成されている。第一実施形態において、ユーザによる被検者に対する第一時間及び第二時間の聞き取りは、眼科情報処理装置1を用いた検査を行う毎に行われる。被検者から聞き取られた第一時間及び第二時間は、ユーザによって眼科情報処理装置1に対して操作部12を介して入力されることによって、第一時間及び第二時間が近視関連データ40に記憶される。眼科情報処理装置1を用いた検査時に被検者への聞き取りを失念した場合等には、第一時間及び第二時間が空欄になる。なお、第一時間及び第二時間が、外部情報機器に記憶されている被検者の電子カルテに登録されている場合がある。この場合には、外部機器接続部18を介して電子カルテの情報が外部情報機器からインポートされることによって、第一時間及び第二時間が近視関連データ40に記憶されてもよい。また、第一実施形態では、第一時間及び第二時間の双方が眼科情報処理装置1に入力され、近視関連データ40に記憶される。この他、第一時間及び第二時間の少なくともいずれかが眼科情報処理装置1に入力され、近視関連データ40に記憶されてもよい。
【0046】
なお、近年の研究によって、所定の明るさ以上の光を所定時間以上浴びることによって、近視の発症が抑制される可能性があることが判明してきている。また、太陽光に含まれる360~400nmの波長の可視光である「バイオレットライト」に、近視の進行を抑制する可能性があることも判明してきている。人は、屋外活動を行うことによって、所定の明るさ以上の光及び太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びることができる。このため、「第二時間」を、屋外活動を行った時間としてもよい。
【0047】
近視リスクレベルは、ユーザが判断した、被検者の近視が進行する可能性のレベルを示す。第一実施形態において、近視リスクレベルは、VH(Very High)、H(High)、M(Middle)、L(Low)の四段階で示される。医師等のユーザは、被検者の遺伝的因子、環境的因子等を総合的に勘案して、近視リスクレベルを判定することができる。近視リスクレベルの判定には、被検者が点眼薬を処方通りの容量及び頻度で正しく点眼したか、被検者が処方したコンタクトレンズを正しく装着したか等の情報が用いられてもよい。第一実施形態において、近視リスクレベルの判定は、ユーザが眼科情報処理装置1を用いた検査を行う毎に行われる。判定された近視リスクレベルが、ユーザによって眼科情報処理装置1に対して手動で入力されることによって、近視リスクレベルが近視関連データ40に記憶される。なお、近視リスクレベルが、外部情報機器に記憶されている被検者の電子カルテに登録されている場合がある。この場合には、外部機器接続部18を介して電子カルテの情報が外部情報機器からインポートされることによって、近視リスクレベルが近視関連データ40に記憶されてもよい。
【0048】
なお、計測値履歴データ20、処置履歴データ30及び近視関連データ40が記憶されるのは、記憶部11に限定されない。計測値履歴データ20、処置履歴データ30及び近視関連データ40は、外部機器接続部18を介して眼科情報処理装置1に接続できる外部情報機器の記憶部、サーバ等に記憶されてもよい。サーバは、眼科情報処理装置1の提供者のオンプレミスサーバであってもよいし、いわゆるクラウドサーバ等の他のサーバであってもよい。この場合、眼科情報処理装置1の制御部10は、外部機器接続部18を介して計測値履歴データ20、処置履歴データ30及び近視関連データ40を参照し、後述する眼科情報処理を実行してもよい。
【0049】
図5を参照して、第一実施形態における眼科情報処理の一例について説明する。眼科情報処理は、被検眼を検査する指示が制御部10によって検出された場合に実行される。第一実施形態において、被検眼を検査する指示は、操作部12を介してユーザによって眼科情報処理装置1に入力される。以下の説明において、各処理のステップを「S」と略記する。眼科情報処理装置1の眼科情報処理の各ステップは、眼科情報処理装置1の制御部10のCPUによって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC等)、あるいは外部情報機器であるPCのCPU等によって実行されてもよい。眼科情報処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。眼科情報処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略及び追加をすることができる。眼科情報処理装置1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が、制御部10からの指示に基づき眼科情報処理の一部又は全部を行う態様も、本開示の範囲に含まれる。
【0050】
眼科情報処理が開始されると、制御部10は、現在の日時を検査日時として取得する(S1)。制御部10は、取得した検査日時を、計測値履歴データ20に記憶する。制御部10は、IDを取得する(S2)。IDの取得は、ユーザが操作部12を介して眼科情報処理装置1に対して入力するものを取得することによって行われてもよい。眼科情報処理装置1がカードリーダ等の情報読取部を備え、医療機関の診察券等のカードに内蔵されるIDを示す情報が情報読取部によって読み取られることによって、IDが取得されてもよい。制御部10は、取得したIDを、S1の処理で取得した検査日時に対応付けて、計測値履歴データ20に記憶する。制御部10は、R/Lの値を取得する(S3)。R/Lの値の取得は、ユーザが操作部12を介して眼科情報処理装置1に対して入力するものを取得することによって行われてもよい。R/Lの値が、眼科情報処理装置1に対する被検眼の位置等に応じて制御部10に自動判別されることによって取得されてもよい。制御部10は、R/Lの値を、S2の処理で取得したIDに対応付けて、計測値履歴データ20に記憶する。S2及びS3の処理によって、被検眼が特定される。
【0051】
制御部10は、被検眼の眼科情報として、AL及びREF.を取得する(S5)。制御部10は駆動部16を駆動することによって被検眼のAL及びREF.を測定し、測定値を取得する。なお、制御部10は、眼科情報の一部又は全部を、外部機器接続部18を介して眼科情報処理装置1に接続する他の外部情報機器等から取得してもよい。例えば、眼科情報のうちALが第一の眼科装置から取得され、REF.が第二の眼科装置から取得されてもよい。また、前述したように、制御部10は、ユーザが被検者のカルテ等に記載されている眼科情報を見て、操作部12を介して眼科情報処理装置1に手動で入力したものを取得することによって、S5の処理を行ってもよい。
【0052】
制御部10は、S2及びS3の処理で特定した被検眼と同一の被検眼に対応する過去の眼科情報を、計測値履歴データ20から抽出することによって取得する(S6)。制御部10は、S5及びS6の処理で取得した眼科情報の各値を、検査時期に応じて時系列に並べて表示した一つの図表を描画するための描画データを生成する(S11)。第一実施形態において、S11の処理で生成される描画データを、「初期描画データ」という。制御部10は、生成した初期描画データを記憶部11に記憶する。制御部10は、初期描画データを出力する(S12)。第一実施形態において、初期描画データを含む眼科情報処理において生成される描画データの出力は、表示部13への表示によって行われる。
【0053】
図7を参照して、S11の処理で生成された初期描画データに対応する図表50が、S12の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。図表50は、「G034」のIDの被検者の左眼が被検眼である場合の図表の一例を示す。図表50は、横軸として時間軸51を備える。時間軸51は、所定のスケールで時間経過を示す。
【0054】
図表50は、一つの時間軸51に対して直交する、AL軸521及びREF.軸522の二つの縦軸を備える。AL軸521は、ALの値を示す縦軸である。REF.軸522は、REF.の値を示す縦軸である。
【0055】
図表50は、ALグラフ56及びREF.グラフ57を備える。ALグラフ56は、ALの値をAL軸521のスケールに対応させつつ、検査日時を時間軸51のスケールに対応させて時系列に並べたグラフである。ALグラフ56において、検査日時に応じてALの値を並べるマーカーは「■」である。REF.グラフ57は、REF.の値をREF.軸522に対応させつつ、検査日時に応じて時系列に並べたグラフである。REF.グラフ57において、検査日時に応じてREF.の値を並べるマーカーは「●」である。この他、図表50は、ID欄551、左右欄552、最新値欄553等を備える。ID欄551は、図表50にID等を表示するため欄である。左右欄552は、被検眼が右眼又は左眼のいずれであるかを図表50に表示するための欄である。最新値欄553は、ALグラフ56及びREF.グラフ57のそれぞれのマーカーの種類と、最新の眼科情報の値とを図表50に表示するための欄である。
【0056】
ヒトの眼球の光学定数を模型化した模型眼であるGullstrand模型眼において、眼軸長を1mm変化させた場合の眼球屈折力の変化量は、2.57Dと算出されている。また、IOLの度数決定のための計算式の一つであるSRK式では、眼軸長を1mm変化させた場合、IOLの度数が2.5D変化すると定義されている。眼軸長の値が単位量だけ変化した場合の眼球屈折力の値の変化量は、人種、年齢等によっても左右され得ることが、種々の調査によって明らかになっている。したがって、眼の平均的特性に合致するように配慮した上で軸性近視によって眼軸長が変化した場合を想定して、AL軸521のスケールの変化量が1mmである場合のREF.軸522のスケールの変化量は1Dから3Dの範囲内の値に一致するように設けられることが好ましい。AL軸521のスケールの変化量が1mmである場合のREF.軸522のスケールの変化量は2Dから3Dの範囲内の値に一致することが、より好ましい。これらに基づいて、第一実施形態においては、AL軸521のスケールの変化量が1mmである場合のREF.軸522のスケールの変化量は2.5Dに一致して設けられている。
【0057】
ユーザは、図表50においてALグラフ56及びREF.グラフ57を参照することによって、被検眼の軸性近視の進行度合いを判断できる。図表50は、被検眼の近視の種類が、軸性近視である可能性が高い場合の例を示す。AL軸521のスケールとREF.軸522のスケールとは、上記のような対応関係にある。このため、被検眼の近視の種類が軸性近視であり、被検眼のALの値が長くなる方向に変化した場合、ALグラフ56の傾きとREF.グラフ57の傾きとが平行になりやすい。このため、図表50は、ALの値の変化に応じたREF.の値の変化をユーザ等が予測することを容易にできる。一方、被検眼の近視の種類が軸性近視ではなく他の種類の場合には、ALグラフ56の傾きとREF.グラフ57の傾きとが平行になりにくくなる。このため、ユーザは、眼科情報処理装置1が提供する図表を一覧することによって、被検眼の近視の種類が軸性近視であるか否かを容易に判断できる。よって、ユーザは、被検眼の近視の種類及び近視の進行の度合いを多角的に判断することができる。したがって、図表50をユーザに提供する眼科情報処理装置1は、ユーザによる近視に関する診断の効率を向上させることができる。
【0058】
制御部10は、S11の処理で初期描画データを生成する場合、S6の処理で取得した過去の眼科情報のそれぞれに関連付けられる検査日時のうち最古のものを時間軸51の左端部に配置し、S1の処理で取得した今回の検査日時を時間軸51の右端部に配置する。第一実施形態において、最古の検査時期が2018年11月30日であり、最新の検査時期が2021年10月12日であるとする。制御部10は、S11の処理で、時間軸51の時系列の範囲を最古の検査時期から最新の検査時期までとした図表50を表示するための、初期描画データを生成する。このため、図表50は、最古の検査時期から最新の検査時期までにわたる眼科情報を一覧できる図表として表示部13に表示される。したがって、ユーザは、図表50を一覧することによって、長期に亘る近視の傾向についても観察することができる。
【0059】
図5の説明に戻る。制御部10は、S12の処理で出力した図表の内容を変更させる指示が操作部12を介して入力されたかを判断する(S13)。出力した図表の内容を変更させる指示が操作部12を介して入力されていない場合(S13:NO)、制御部10は、処理をS18の判断へ移行する。出力した図表の内容を変更させる指示が操作部12を介して入力されている場合(S13:YES)、制御部10は、出力内容変更処理を実行する(S15)。
【0060】
図6を参照して、出力内容変更処理(S15、
図5参照)の詳細について説明する。出力内容変更処理が開始されると、制御部10は、S13の処理で入力された指示が、図表における時間軸51の時系列の範囲を指定する範囲指定情報であるかを判断する(S21)。入力された指示が、範囲指定情報でない場合(S21:NO)、制御部10は、処理をS23の判断へ移行する。入力された指示が範囲指定情報である場合(S21:YES)、制御部10は、範囲指定情報を取得し、取得した範囲指定情報が指定する時系列の範囲に対応した図表を描画するための描画データを生成する(S22)。制御部10は、処理をS23の判断へ移行する。
【0061】
制御部10は、S13の処理で入力された指示が、被検眼が近視であると判定される第一境界値と、第一境界値よりも強度の近視である、いわゆる強度近視であることを示す第二境界値とを、図表に表示することを指定するものであるかを判断する(S23)。第一実施形態において、第一境界値及び第二境界値は、REF.軸522に対応して設けられる。第一境界値は「-0.5D」である。第二境界値は「-6D」である。第一境界値及び第二境界値は一例であるので、「-0.5D」及び「-6D」とは異なる値であってもよい。入力された指示が、第一境界値及び第二境界値を図表に表示することを指定するものでない場合(S23:NO)、制御部10は、処理をS26の判断へ移行する。入力された指示が、第一境界値及び第二境界値を図表に表示することを指定するものである場合(S23:YES)、制御部10は、第一境界値及び第二境界値が表示された図表を描画するための描画データを生成する(S25)。制御部10は、処理をS26の判断へ移行する。
【0062】
制御部10は、S13の処理で入力された指示が、図表に処置情報を反映させることを指示するものであるかを判断する(S26)。入力された指示が図表に処置情報を反映させることを指示するものでない場合(S26:NO)、制御部10は、処理をS31の処理へ移行する。指示の内容が、図表に処置情報を反映させることを指示するものである場合(S26:YES)、制御部10は、記憶部11に記憶される処置履歴データ30のうちから、S2の処理で取得したIDに対応する処置履歴データ30を特定する。制御部10は、特定した処置履歴データ30から被検眼の処置情報を取得する(S28)。第一実施形態において、図表に処置情報を反映させる指示は、処置内容毎に選択的に入力されるものとする。S28の処理において、制御部10は、S13の処理において操作部12を介して入力されている指示の示す処置内容に対応する処置情報を、処置履歴データ30から取得する。制御部10は、取得した処置情報を反映させた図表を描画するための描画データを生成する(S29)。制御部10は、処理をS31の処理へ移行する。
【0063】
制御部10は、S13の処理で入力された指示が、図表に遺伝的因子情報を表示することを指示するものであるかを判断する(S31)。入力された指示が、図表に遺伝的因子情報を表示することを指示するものである場合(S31:YES)、制御部10は、記憶部11に記憶される複数の近視関連データ40のうちから、S2の処理で取得したIDに対応する近視関連データ40を特定する。制御部10は、特定した近視関連データ40から被検者の遺伝的因子情報を取得する(S32)。制御部10は、取得した遺伝的因子情報を表示した図表を描画するための描画データを生成する(S33)。
【0064】
一方、制御部10は、S13の処理で入力された指示が、図表に遺伝的因子情報を表示することを指示するものでない場合(S31:NO)、入力された指示が、図表に環境的因子情報を表示することを指示するものであるかを判断する(S35)。入力された指示が、図表に環境的因子情報を表示することを指示するものである場合(S35:YES)、制御部10は、記憶部11に記憶される複数の近視関連データ40のうちから、S2の処理で取得したIDに対応する近視関連データ40を特定する。制御部10は、特定した近視関連データ40から被検者の環境的因子情報、すなわち第一時間及び第二時間を取得する(S36)。制御部10は、取得した第一時間及び第二時間を時系列に対応して反映させた図表を描画するための描画データを生成する(S38)。
【0065】
一方、制御部10は、S13の処理で入力された指示が、図表に環境的因子情報を表示することを指示するものでない場合(S35:NO)、入力された指示が、図表に近視リスクレベルを表示することを指示するものであるかを判断する(S41)。入力された指示が、図表に近視リスクレベルを表示することを指示するものである場合(S41:YES)、制御部10は、記憶部11に記憶される複数の近視関連データ40のうちから、S2の処理で取得したIDに対応する近視関連データ40を特定する。制御部10は、特定した近視関連データ40から被検者の近視リスクレベルを取得する(S42)。制御部10は、取得した近視リスクレベルを時系列に対応して反映させた図表を描画するための描画データを生成する(S43)。
【0066】
なお、近視リスクレベルは、第一時間及び第二時間の少なくともいずれかに基づいて導出されてもよい。この場合、制御部10は、S42の処理において近視リスクレベルを所定の導出手法に基づいて第一時間及び第二時間の少なくともいずれかから導出することによって、近視リスクレベルを取得する。第一時間及び第二時間の少なくともいずれかを用いた近視リスクレベルの導出手法は、さまざまに構成されてよい。例えば、第一時間と第二時間との比率に応じて近視リスクレベルが導出されてもよい。第一時間の長さが所定の時間以下である場合に、所定レベル以下の近視リスクレベルが導出される導出手法が採用されてもよい。第二時間の長さが所定の時間以上である場合に、所定レベル以上の近視リスクレベルが導出されてもよい。
【0067】
制御部10は、S22、S25及びS29の各処理を重畳的に実行することができる。また、制御部10は、S32、S38及びS43の処理を択一的に実行することができる。S32、S38及びS43の処理のそれぞれは、S22、S25及びS29の各処理と重畳的に実行することができる。制御部10は、処理を眼科情報処理へ戻す。
【0068】
図5の説明に戻る。制御部10は、出力内容変更処理で生成した描画データを出力する(S16)。第一実施形態において、初期描画データを含む眼科情報処理において生成される描画データの出力は、表示部13への表示によって行われる。制御部10は、眼科情報処理を終了させる指示が操作部12を介して入力されたかを判断する(S18)。眼科情報処理を終了させる指示が操作部12を介して入力されていない場合(S18:NO)、制御部10は、処理をS12へ戻し、以降の処理を続行する。眼科情報処理を終了させる指示が操作部12を介して入力されている場合(S18:YES)制御部10は、眼科情報処理を終了する。
【0069】
図8を参照して、S22及びS33の処理で生成された描画データに対応する図表60が、S16の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。S21において、時間軸51の時系列の範囲を2021年1月6日から2021年10月12日までとする指示があったと判断されたとする。この場合、制御部10は、時間軸51の左端部に2021年1月6日を、右端部に2021年10月12日を配置して描画データを生成する。また、制御部10は、遺伝的因子情報を表示するための遺伝的因子情報欄61を設けた描画データを生成する。遺伝的因子情報欄61には、被検者の「両親の近視の状況」及び「その他遺伝的リスク」が表示される。
【0070】
この場合、ユーザは、時系列の範囲を任意に区切った図表60を視認することができるので、区切った期間に亘るALグラフ56及びREF.グラフ57を、より注視することができる。また、図表60を視認するユーザは、ALグラフ56及びREF.グラフ57で示される眼科情報とともに、被検者の遺伝的因子情報を一覧できる。したがって、眼科情報処理装置1は、被検者の近視の状況と遺伝的因子情報とをユーザに一度に把握させて、近視に関する診断の効率を向上することができる。
【0071】
図9を参照して、S25及びS38の処理で生成された描画データに対応する図表70が、S16の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。この場合、制御部10は、第一境界軸71及び第二境界軸72を設けた描画データを生成する。図表70に示すように、第一境界軸71は、REF.軸522が第一境界値である-0.5Dを示す位置において、REF.軸522に対して直交する横軸である。第一境界軸71の左部には、第一境界軸71が示すラインが近視か否かの境界であることを示すための「近視」の文字が添えられている。第二境界軸72は、REF.軸522が第二境界値である-6Dを示す位置において、REF.軸522に対して直交する横軸である。第二境界軸72の左部には、第二境界軸72が示すラインが強度近視か否かの境界であることを示すための「強度近視」の文字が添えられている。
【0072】
図表70を視認するユーザは、第一境界軸71及び第二境界軸72と、REF.グラフ57とを対比することによって、被検眼の近視の程度を容易に把握することができる。なお、第一境界値が「25mm」、第二境界値が「27mm」等として、ALの値で定義されてもよい。すなわち、第一境界軸71及び第二境界軸72は、AL軸521に対応して設けられてもよい。この場合、ユーザは、第一境界軸71及び第二境界軸72と、ALグラフ56とを対比することによって、被検眼の近視の程度を容易に把握することができる。
【0073】
また、制御部10は、図表70に示すように、時間軸51の示す時期に対応させて、第一時間及び第二時間を示す時間表示部73を備える描画データを生成する。時間表示部73は、時間軸51に平行に延びる横軸である基準軸74を基準として、基準軸74から下方に延びて第一時間を示す第一時間部731と、基準軸74から上方に延びて第二時間を示す第二時間部732とを備える棒グラフである。時間表示部73の態様は一例である。第一時間部731が基準軸74から上方に、第二時間部732が基準軸74から下方に、それぞれ延びるように構成されていてもよい。時間表示部73は、棒グラフに限られず、円グラフ等であってもよい。時間表示部73は、第一時間及び第二時間をグラフ状で表す他、数値、アイコンの個数等を用いて第一時間及び第二時間を示すように構成されてもよい。また、時間表示部73が、第一時間部731及び第二時間部732のいずれかのみを有して構成されてもよい。
【0074】
図表70を視認するユーザは、ALグラフ56及びREF.グラフ57の推移と、時間表示部73によって示される第一時間及び第二時間の変遷とを対比することによって、被検者の環境的因子が被検者の近視の程度に及ぼす影響を考察することができる。被検者の生活行動の変化は、第一時間及び第二時間の変化に影響を与えやすい。例えば、図表70において、第二時間が増加することに応じて近視の進行が抑制される傾向が示される場合には、ユーザは、日々の生活において第二時間を確保するように被検者にアドバイスすることができる。
【0075】
近視関連データ40は、環境的因子情報として第一時間及び第二時間に加えて、第一時間及び第二時間の変化に影響を与え得る生活行動の変化を示す情報を、生活行動が変化した時期に対応付けて記憶してもよい。第一時間及び第二時間の変化に影響を与え得る生活行動の変化を示す情報は、例えば、パソコン、スマートフォン、ゲーム機等の近見視力で取り扱う物を取得した、クラブ活動等でスポーツをする習慣がついた、通学・通勤経路が変更した等である。制御部10は、S38の処理において、第一時間及び第二時間の変化に影響を与え得る生活行動の変化を示す情報を、生活行動が変化した時期に対応付けて表示する図表に対応する描画データを生成してもよい。この場合、眼科情報処理装置1は、第一時間及び第二時間の変化に影響を与え得る生活行動の変化を示す情報を、図表においてユーザに視認させることができる。したがって、ユーザは、第一時間及び第二時間に変化が生じた理由を把握しやすくなる。
【0076】
図10を参照して、S29及びS43の処理で生成された描画データに対応する図表80が、S16の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。この場合、制御部10は、処置情報軸82,83を設けた描画データを生成する。処置情報軸82,83は、図表において時系列に対応して処置情報を反映させるための横軸である。図表80に示すように、処置情報軸82は、処置履歴データ30の「G034」のIDに対応する被検眼に関する処置に関する情報のうち、「点眼薬」の処置内容の実施状況を、時系列に対応して反映させたものである。処置情報軸82の左部には、処置情報軸82に対応する処置内容を表す「点眼薬」の文字が付されている。処置情報軸83は、処置履歴データ30の「G034」のIDに対応する被検眼に関する処置に関する情報のうち、「コンタクトレンズ」の処置内容の実施状況を、時系列に対応して反映させたものである。処置情報軸83の左部には、処置情報軸83に対応する処置内容を表す「コンタクトレンズ」の文字が付されている。処置情報軸82,83の左端は、時間軸51に対して、処置情報軸82,83のそれぞれに対応する処置内容の開始時期の位置に配置される。処置情報軸82,83の右端は、時間軸51に対して、処置情報軸82,83のそれぞれに対応する処置内容の終了時期の位置に配置される。図表80においては、処置情報軸82,83のそれぞれに対応する処置内容が現時点も継続中であるので、処置情報軸82,83の右端は図表80の右端部に配置される。
【0077】
図表80を視認するユーザは、処置情報軸82,83に基づいて、被検眼の処置情報を、処置が施された時期とともに把握することができる。したがって、ユーザは、被検眼の近視の状況を、被検眼に対して行われた処置内容及び処置の時期に応じて考察することができる。
【0078】
また、制御部10は、時間軸51の示す時期に対応して近視リスクレベルを示す、近視リスクレベル表示81を備える描画データを生成する。近視リスクレベル表示81は、近視関連データ40のうち「G034」のIDに対応する近視リスクレベルを、時系列に対応してグラフ状に反映させたものである。図表80に示すように、近視リスクレベル表示81は、L、M、H、VHの四段階のレベルを縦軸において下方から上方に順に配置し、時間軸51の示す時期に対応する近視リスクレベルを示す。
【0079】
図表80を視認するユーザは、近視リスクレベル表示81に基づいて、被検眼の「近視リスクレベル」を、時期に即して把握することができる。したがって、ユーザは、被検眼の近視の状況を、被検眼の近視リスクレベルに応じて考察することができる。第一実施形態において、近視リスクレベル表示81は近視リスクレベルをグラフ状に示す他、近視リスクレベルを数値、アイコンの個数等を用いて示すものであってもよい。
【0080】
図11から
図16を参照して、本開示に係る典型的な実施形態の一つである第二実施形態について説明する。第二実施形態の眼科情報処理装置1は、
図2に示す第一実施形態の計測値履歴データ20に替えて、
図11に示す計測値履歴データ21を、記憶部11に記憶する。また、第二実施形態の眼科情報処理装置1の制御部10は、
図5に示す第一実施形態の眼科情報処理に替えて、
図12に示す眼科情報処理を実行する。
【0081】
第二実施形態に係る眼科情報処理装置1は、眼科情報として眼軸長及び眼球屈折力に加えて、角膜屈折力を取得することができる、光干渉式眼軸長測定装置である。眼科情報処理装置1は、外部の眼科装置、電子カルテ及び眼科情報を記憶するサーバ等の外部の記憶装置等から角膜屈折力を取得し処理できるPCであってもよい。眼科情報処理装置1による角膜屈折力の取得は、眼科情報処理装置1のユーザが、後述する操作部12を介して、角膜屈折力を眼科情報処理装置1に対して手動で入力することによって行われてもよい。第二実施形態の眼科情報処理装置1のその他の構成は、第一実施形態と同様である。第二実施形態において第一実施形態と同様の構成については、説明を適宜省略する。
【0082】
図11を参照して、計測値履歴データ21について説明する。計測値履歴データ21は、第一実施形態の計測値履歴データ20と同様に、眼科情報処理装置1によって取得された眼科情報を複数記憶するデータベースである。「Steep K」、「Flat K」、「KM」、「KKI」のそれぞれは、被検眼の眼科情報である。Steep K、Flat K、KM及びKKIは、角膜屈折力に関する値である。このうち、Steep K、Flat K、KMは、角膜の曲率半径を示す値である。Steep Kは、被検眼の強主経線における角膜の曲率半径の値を示す。Flat Kは被検眼の弱主経線における角膜の曲率半径の値を示す。KMは、Steep KとFlat Kとの平均値を示す。Steep K、Flat K及びKMの単位は「mm」である。第二実施形態において、眼科情報処理装置1は、Steep K及びFlat Kを測定し、Steep KとFlat Kとの平均値を算出することによってKMの値を取得する。角膜屈折力の値は、所定の定数を角膜の曲率半径の値で除することによって算出される場合もある。第一実施形態では、Steep K、Flat K及びKMを、角膜屈折力を示す値として扱う。一方、角膜屈折力を示す値として、Steep K、Flat K及びKMの各値から算出された角膜屈折力の値が用いられてもよい。
【0083】
KKIは、円錐角膜であることの確度を示す値であって角膜屈折力に基づいて算出される値である。KKIは、「円錐角膜スクリーニング指標」等とも呼ばれる。KKIは、特許第6707239号公報等で示される回帰式によって、Steep K及びFlat Kの各値から算出される。KKIの値が所定のカットオフ値を超えることは、被検眼に円錐角膜のリスクが高まっていることに対応する。第一実施形態において、カットオフ値は、「0.461」である。計測値履歴データ21は、眼科情報処理装置1によって取得及び算出された値のそれぞれを、検査日時、ID及びR/Lに対応付けて記憶する。
【0084】
図12を参照して、第二実施形態の眼科情報処理について説明する。
図12に示す眼科情報処理は、
図5に示す眼科情報処理と同様の処理を含む。
図12に示す眼科情報処理において、
図5に示す眼科情報処理と同様の処理については、
図5に示す眼科情報処理と同じステップ番号を付して、説明を適宜省略する。
【0085】
図12に示すように、眼科情報処理が開始されると、制御部10は、S1からS3の処理を順に実行する。制御部10は、被検眼の眼科情報として、AL、REF.、Steep K及びFlat Kを取得する(S51)。制御部10は駆動部16を駆動することによって被検眼のAL及びREF.、Steep K及びFlat Kを測定し、測定値を取得する。制御部10は、取得したSteep K及びFlat Kの各値に基づいて、KMの値を算出する(S52)。制御部10は、算出したKMの値を、計測値履歴データ21に記憶する。制御部10は、取得したSteep K及びFlat Kの各値と、前述の回帰式とに基づいて、KKIの値を算出する(S53)。制御部10は、S51、S52及びS53で取得した眼科情報を、S3の処理で取得したR/Lの値に対応付けて、計測値履歴データ21に記憶する。
【0086】
なお、制御部10は、眼科情報の一部又は全部を、外部機器接続部18を介して眼科情報処理装置1に接続する他の外部情報機器等から取得してもよい。例えば、眼科情報のうちAL及びREF.が第一の眼科装置から取得され、Steep K及びFlat Kが第二の眼科装置から取得されてもよい。KM、KKIの各値の取得は、制御部10によって算出される態様に限られない。例えば、制御部10は、S52及びS53の処理に替えて、眼科情報処理装置1に接続する他の外部情報機器等において取得されたKM、KKIの各値を、外部機器接続部18を介して取得する処理を行ってもよい。
【0087】
制御部10は、S6、S11、S12及びS13の各処理を実行する。S13において「NO」と判断された場合、制御部10は、S13の処理で入力された指示が、図表にいずれの眼科情報の値を表示するかを選択することを示す選択情報であるかを判断する(S61)。第二実施形態において、選択情報は、図表にALグラフ56、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59のうち、図表に表示させるグラフをいずれとするかを選択する情報に対応する。入力された指示が選択情報でない場合(S61:NO)、制御部10は、処理をS15へ移行する。入力された指示が、選択情報である場合(S61:YES)、制御部10は、選択情報を取得し、取得した選択情報に応じた眼科情報の値が表示された図表を描画するための描画データを生成する(S62)。制御部10は、処理をS15へ移行する。以降は、制御部10は、S15、S16及びS18の各処理を実行する。
【0088】
図13を参照して、第二実施形態の眼科情報処理のS11の処理で生成された初期描画データに対応する図表90が、S12の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。図表90は、「A101」のIDの被検者の右眼が被検眼である場合の図表の一例を示す。S11の処理において、制御部10は、時間軸51の時系列の範囲が最古の被検日から最新の被検日となるように、初期描画データを生成する。
【0089】
図表90は、時間軸51に対して直交する、AL軸521、REF.軸522、KM軸523及びKKI軸524の四つの縦軸を備える。KM軸523は、KMの値を示す縦軸である。KKI軸524は、KKIの値を示す縦軸である。また、図表90は、KKI軸524がカットオフ値である0.461を示す位置においてKKI軸524に直交する横軸である、カットオフ軸53を備える。なお、第二実施形態においては、REF.軸522のスケールは、AL軸521のスケールが1mm変化した場合に1.5D変化するように設けられている。
【0090】
図表90は、ALグラフ56及びREF.グラフ57に加えて、KMグラフ58及びKKIグラフ59を備える。KMグラフ58は、KMの値をKM軸523のスケールに対応させつつ、検査日時に応じて時系列に並べたグラフである。KMグラフ58において、検査時期に応じてKMの値を並べるマーカーは「□」である。KKIグラフ59は、KKIの値をKKI軸524のスケールに対応させつつ、検査日時に応じて時系列に並べたグラフである。KKIグラフ59において、検査時期に応じてKKIの値を並べるマーカーは「〇」である。最新値欄553は、ALグラフ56及びREF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59のそれぞれのマーカーの種類と、最新の眼科情報の値とを図表90に表示する。
【0091】
ユーザは、図表90においてKMグラフ58及びREF.グラフ57を参照することによって、被検眼の屈折性近視の進行度合いを判断できる。ユーザは、図表90においてKKIグラフ59及びREF.グラフ57を参照することによって、被検眼に円錐角膜が疑われるかを判断できる。図表90にはカットオフ軸53が設けられるので、ユーザは、KKIグラフ59の値がカットオフ軸53を超えるか否かを観察することによって、被検眼に円錐角膜が疑われるかを容易に判断できる。図表90は、ALグラフ56、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59をユーザに一覧させることができる。したがって、眼科情報処理装置1は、被検眼の近視の種類及び近視の進行の度合いを、ユーザに多角的に判断させることができる。
【0092】
図14を参照して、S22、S33及びS62の処理で生成された描画データに対応する図表100が、S16の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。S21において、時間軸51の時系列の範囲を2020年12月14日から2021年10月12日までとする指示があったと判断されたとする。また、S62においてALグラフ56を表示せず、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59を表示する指示があったと判断されたとする。
【0093】
この場合、制御部10は、時間軸51の左端部に2020年12月14日を、右端部に2021年10月12日を配置して描画データを生成する。また、制御部10は、ALグラフ56を表示せず、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59を表示する態様で描画データを生成する。ALグラフ56が表示されない図表100を視認するユーザは、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59及びこれらのグラフによって表される近視の傾向を、より注視することができる。例えば、ユーザは、近視の種類が軸性近視ではなく、屈折性近視又は円錐角膜によるものであると推定した場合、軸性近視の傾向を示すALグラフ56を図表から削除することができる。これにより、ユーザは、図表に表示されるREF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59に注目して、屈折性近視の進行度合い又は被検眼に円錐角膜が疑われるかについて詳細に検討することができる。また、ユーザは時系列の範囲を任意に区切った図表60を視認することができるので、区切った期間に亘る眼科情報の経過を、より注視することができる。さらに、図表90には遺伝的因子情報欄61も設けられるので、ユーザはALグラフ56、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59で示される眼科情報とともに、被検者の遺伝的因子情報を一覧できる。
【0094】
図15を参照して、S29の処理で生成された描画データに対応する図表110が、S16の処理によって眼科情報処理装置1の表示部13に表示された例について説明する。図表110は、S26において、「点眼薬」の投与及び「コンタクトレンズ」の処方に関する処置情報を図表に反映させる指示があったと判断された場合に表示されたものとする。
【0095】
この場合、制御部10は、点眼薬が投与された期間を示すハッチング111及びコンタクトレンズが処方された期間を示すハッチング113を付した描画データを生成する。制御部10は、生成した描画データに対応する図表110を表示部13に表示する。第一実施形態において、ハッチング111が点眼薬の投与に関する処置情報を反映させたものであることを明示するための表示112が、図表110に設けられる。ハッチング113がコンタクトレンズの処方に関する処置情報を反映させたものであることを明示するための表示114も、図表110に設けられる。図表110を視認するユーザは、ALグラフ56、REF.グラフ57、KMグラフ58及びKKIグラフ59のそれぞれの推移を、被検眼に関する処置の履歴と関連付けて観察することができる。
【0096】
第一実施形態では、処置情報を図表に反映させるために、処置情報軸82,83が用いられた。処置情報を図表に反映させるため、第二実施形態で例示したハッチング111,113を用いる手法が採用されてもよい。また、第二実施形態の眼科情報処理装置1の表示部13に表示される図表が、環境的因子情報及び近視リスクレベルを時系列に対応して反映させてもよい。第二実施形態の眼科情報処理装置1の表示部13に表示される図表に、第一境界値及び第二境界値が表示されてもよい。環境的因子情報、近視リスクレベル、第一境界値及び第二境界値の表示態様は、第一実施形態の例に対して種々に変更されてもよい。
【0097】
第二実施形態では、横軸である一つの時間軸51に対してAL軸521、REF.軸522、KM軸523及びKKI軸524の四つの縦軸が直交するように描画データが生成され、生成された描画データが図表90,100,110として出力される。この他、描画データは、一つの時間軸51に対して一つの縦軸が直交したグラフを、一つの図表に複数並べて表示するように生成されてもよい。具体例を
図16に示す。
【0098】
図16に示すように、図表120は、四つの時間軸51のそれぞれが設けられ、それぞれの時間軸51に対してAL軸521、REF.軸522、KM軸523及びKKI軸524のそれぞれが直交している。AL軸521に対応してALグラフ56が表示される。REF.軸522に対応してREF.グラフ57が表示される。KM軸523に対応してKMグラフ58が表示される。KKI軸524に対応してKKIグラフ59が表示される。一つの図表120がこのように構成される場合であっても、ユーザは図表120によって各グラフを一覧できるので、被検眼の近視の種類及び近視の進行の度合いを多角的に判断することができる。
【0099】
第二実施形態において、制御部10は、角膜屈折力に関する値としてKM及びKKIの各値を採用し、KM及びKKIの値を時系列に並べたKMグラフ58及びKKIグラフ59を表示する図表の描画データを生成する。制御部10は、角膜屈折力に関する値として、KMの値又はKKIの値のいずれか一方のみを採用して、描画データを生成してもよい。制御部10は、角膜屈折力を示す値として、KMの値に加えて、また、KMの値に替えて、Steep K、Flat K等の値を採用して描画データを生成してもよい。
【0100】
上記第一実施形態及び第二実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。したがって、第一実施形態及び第二実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、第一実施形態及び第二実施形態で例示された技術の一部のみを実行することも可能である。具体的には、第一実施形態では、S5の処理で被検眼の最新の眼科情報が取得されたことに応じて、S11、S22、S25、S29、S33、S38及びS43の処理において描画データが生成される。しかし、S5の処理が実行されず、被検眼の眼科情報は、S6の処理において最新のものも含めて取得される態様であってもよい。また、制御部10は、S5の処理で被検眼の最新の眼科情報を取得することなく、S6の処理において過去の眼科情報を取得し、取得した過去の眼科情報に基づいて描画データを生成してもよい。
【0101】
第一実施形態及び第二実施形態においてS12及びS16における描画データの出力は表示部13への図表の表示として実行される。描画データの出力は、外部機器接続部18を介して眼科情報処理装置1に有線接続又は無線接続する外部の表示装置等に図表が表示されることによって実行されてもよい。また、描画データの出力は、眼科情報処理装置1の印刷部15によって図表が紙等に印刷されることによって実行されてもよい。描画データに対応する図表の印刷による出力は、外部機器接続部18を介して眼科情報処理装置1に有線接続又は無線接続する外部の印刷装置等によって実行されてもよい。
【0102】
S21の処理で取得される範囲指定情報は、第一実施形態及び第二実施形態のように時系列の範囲を任意に指定するものであってもよい。また、範囲指定情報は、最新の被検日から1年、最新の被検日から2年、最新の被検日から3年等、指定できる時系列の範囲を予め定めており、ユーザがいずれかを選択できるように構成されていてもよい。
【0103】
図表におけるREF.軸522のスケールは、眼の平均的特性を考慮せず、AL軸521のスケールに対して任意に設けられてもよい。この場合であっても、眼科情報処理装置1は、複数の眼科情報を一覧できる一つの図表を提示することによって、近視に関する診断の効率を向上することができる。
【0104】
出力内容変更処理において、制御部10は、S32、S38及びS43の処理を重畳的に実行してもよい。したがって、制御部10は、遺伝的因子情報欄61、時間表示部73及びのうち二つ以上が一つの図表に表示される描画データを生成してもよい。
【0105】
描画データを生成する際に、AL軸521のスケールの変化量に一致するREF.軸522のスケールの変化量をユーザが任意に設定できるように、眼科情報処理装置1が構成されていてもよい。例えば、眼科情報処理において、S11の処理が行われるより前に、AL軸521のスケールの変化量が1mmである場合のREF.軸522のスケールの変化量を、例えば2Dから3Dの範囲内の値でユーザに入力させる処理が行われてもよい。この場合、眼科情報処理装置1は、AL軸521のスケールの変化量に一致するREF.軸522のスケールの変化量を、被検者等に応じて調整できるので、ALの値及びREF.の値のそれぞれの変化をより一覧しやすい図表を提供することができる。
【0106】
図表において、ALグラフ56とREF.グラフ57との間隔を調節したい場合がある。具体的には、例えば
図7に示す図表50において、REF.軸522が-3Dを示す位置には、AL軸521の27.5mmが配置されているが、ALグラフ56とREF.グラフ57との上下方向における間隔を変更した図表をユーザが観察したい場合がある。このような場合に対応するため、図表においてREF.軸522が所定の値(例えば-3D)を示す位置に配置されるAL軸521の値を変更できるように、眼科情報処理装置1が構成されていてもよい。このため、例えば出力内容変更処理において、REF.軸522が所定の値を示す位置に配置されるAL軸521の値を、ユーザに入力させる処理が行われてもよい。図表におけるALグラフ56とREF.グラフ57との間隔を調節できるので、眼科情報処理装置1は、ALの値及びREF.の値のそれぞれの変化をより一覧しやすい図表を提供することができる。
【0107】
第一実施形態におけるS5及びS6の各処理が、「値取得処理」及び「値取得ステップ」の一例である。S11、S22、S25、S29、S33、S38及びS43の各処理が、「描画データ生成処理」及び「描画データ生成ステップ」の一例である。S21で範囲指定情報を取得する処理が、「範囲取得処理」の一例である。S36で第一時間及び第二時間を取得する処理が、「時間取得処理」の一例である。S28で処置情報を取得する処理が、「処置情報取得処理」の一例である。S32で遺伝子情報を取得する処理が、「因子情報取得処理」の一例である。S42で近視リスクレベルを取得する処理が、「レベル取得処理」の一例である。
【符号の説明】
【0108】
1 眼科情報処理装置
10 制御部
11 記憶部
13 表示部
15 印刷部
50,60,70,80 図表