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特開2023-107656膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置
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  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図1
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図2
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図3
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107656
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230727BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20230727BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D65/06
B01D61/22
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008950
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥平 里彩
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006JA53Z
4D006JA55Z
4D006KC03
4D006KC16
4D006KD01
4D006KD11
4D006KD12
4D006KD15
4D006KD16
4D006KD17
4D006KD24
4D006KE02P
4D006KE06P
4D006KE15Q
4D006KE30Q
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜の2次側のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な膜ろ過システムを提供する。
【解決手段】メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置10と、サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置12と、メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段として、流量計28、圧力計30と、閉塞検知手段により検知された、サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて所定の出力を行う出力部16と、を備える、膜ろ過システム1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置と、
サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置と、
前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段と、
前記閉塞検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて所定の出力を行う出力手段と、
を備えることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項2】
請求項1に記載の膜ろ過システムであって、
前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで薬品添加逆洗を行うことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜ろ過システムであって、
前記閉塞検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項4】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過工程と、
前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うメイン薬品添加逆洗工程と、
サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うサブ薬品添加逆洗工程と、
前記サブ薬品添加逆洗工程において行われた薬品添加逆洗の後の前記サブろ過膜の閉塞挙動に基づいて所定の出力を行う出力工程と、
を含むことを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項5】
請求項4に記載の膜ろ過方法あって、
前記サブ膜ろ過工程において、前記メイン膜ろ過工程よりも高いフラックスで薬品添加逆洗を行うことを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の膜ろ過方法であって、
前記薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗工程において行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御することを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項7】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置であって、
サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置と、
前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段と、
前記閉塞検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする薬品添加逆洗装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薬品添加逆洗装置であって、
前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで薬品添加逆洗を行うことを特徴とする薬品添加逆洗装置。
【請求項9】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置の制御装置であって、前記薬品添加逆洗装置は、サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段と、を備え、
前記閉塞検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段を備えることを特徴とする薬品添加逆洗装置の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の薬品添加逆洗装置の制御装置であって、
前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで薬品添加逆洗を行うことを特徴とする薬品添加逆洗装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除濁膜等のろ過膜を用いて被処理水の膜ろ過処理を行う膜ろ過システム、膜ろ過方法、その膜ろ過システムに用いられる薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の水需要の高まりから排水を回収再利用する要求が増えている。排水を回収再利用する排水回収において、生物処理や凝集および固液分離処理の後に、除濁膜等のろ過膜を用いて懸濁物質等を含む生物処理水や固液分離水の膜ろ過処理を行う方法がある。この方法では、被処理水の性状が変動すること等によって、生物処理や凝集および固液分離処理が不安定となり、膜ろ過処理において膜のファウリング(閉塞)が発生することがある。この場合、例えば、膜の二次側から一次側に逆洗水を通水して逆洗を行い、膜表面または膜内部の付着物を物理的に剥離する物理洗浄が行われる。逆洗では解消しない膜のファウリングを解消するために、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤やアルカリ、酸等の薬品を逆洗水に加えた薬品添加逆洗液により薬品添加逆洗を行う化学的強化逆洗(CEB:Chemical Enhanced Backwash)を行うこともある。
【0003】
被処理水の性状が変動したときに、膜ろ過処理の前段の生物処理や凝集および固液分離処理を安定して行うことは困難である。生物処理が不安定になった場合に膜ろ過処理における薬品添加逆洗による薬品回復効果が不足すると主に有機物によって膜のファウリングが発生する。凝集および固液分離処理が不安定になった場合に膜ろ過処理における薬品添加逆洗による薬品回復効果が不足すると、主に小さな粒子となった金属系凝集剤等によって膜のファウリングが発生する。膜のファウリングの要因が異なる場合、例えば薬品添加逆洗に用いる薬品の種類を変えて対応する。
【0004】
排水回収システムでは、前段の凝集および固液分離処理に必要な金属系凝集剤が多くなり、被処理水の性状変動によって余剰の金属系凝集剤による無機ファウリングが起きやすくなる。特に、被処理水に溶存金属が含まれる場合、溶存金属が膜の二次側へ透過してしまうことがある。この場合に、薬品添加逆洗液として膜処理水である透過水に酸化剤を添加した液を用いて薬品添加逆洗を行うと、膜処理水に存在する溶存金属の一部が酸化されて2次側の膜表面で析出し、膜の2次側にファウリングが発生する原因となる。また、この析出した金属による膜の2次側のファウリングは、検知しにくい。
【0005】
膜の2次側にファウリングが発生すると処理水が得られにくくなり、排水回収システムを停止したり、大規模な膜の薬品洗浄や新しい膜の購入が必要となる。そのため、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜の2次側にファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な方法が求められている。
【0006】
特許文献1には、逆洗のときに膜の処理水に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化性殺菌剤を添加し、ナノろ過膜でろ過してから逆洗を行うことによって、2次側のファウリングを抑制している。しかし、特許文献1の方法は、薬品添加逆洗の条件を決定するものではない。また、ナノろ過膜が閉塞してくると膜交換等のメンテナンスが必要である。
【0007】
特許文献2には、膜のファウリングリスクを蛍光センサを用いて診断する方法が記載されている。しかし、特許文献2の方法は、機器に膨大なコストがかかる方法であり、また、薬品添加逆洗の条件を決定するものではない。また、膜が閉塞してくると膜交換等のメンテナンスのために本装置を停止する必要があり、装置の稼働率が低下する。
【0008】
特許文献3には、有機物を含む被処理水を膜ろ過する膜モジュールを有する膜処理装置において、膜モジュールと同様の膜材質と膜形状を有し、膜面積が1/2~1/100のミニ膜モジュールを少なくとも1系列以上併設し、ミニ膜モジュールに膜モジュールと同様の被処理水を供給可能に構成した膜処理装置が記載されている。
【0009】
しかし、特許文献3に記載の膜処理装置では、薬品添加逆洗ではなく、膜の薬品洗浄の条件を決定することが目的である。ミニ膜モジュールにおける膜間差圧が150kPaを超えてから(すなわち、膜が閉塞してから)膜の薬品洗浄を行っている。また、膜の2次側のファウリングの抑制については、記載がない。
【0010】
特許文献4には、有機物を含む排水を膜ろ過処理する膜ろ過手段と、膜ろ過手段の膜を、酸とアルカリのそれぞれ1種類を含む、少なくとも2種類の薬品を使用した薬品洗浄(薬品添加逆洗)を定期的に行う洗浄手段と、を備え、薬品洗浄を行った際の薬品洗浄前の膜間差圧(ΔP0)と薬品洗浄後の膜間差圧(ΔP1)から算出したΔPa(=ΔP0-ΔP1)に対し、予め設定した基準膜間差圧ΔPxを参照して、次回の薬品洗浄において前回と同じ薬品を使用するか否かを選択する排水回収システムが記載されている。
【0011】
しかし、特許文献4に記載の排水回収システムでは、膜の2次側のファウリングの抑制については、記載がない。また、本装置における膜間差圧に基づいて次回の薬品添加逆洗の条件を選択しているため、早期に最適な薬品添加逆洗の条件を決定することができない場合がある。特許文献4のように本装置における薬品洗浄前後の膜間差圧により薬品添加逆洗の薬品条件を決定することは、早期な薬品選定ができないことに加え、洗浄のために本装置を停止する必要がある。さらに、本装置に組み込まれている膜モジュールの容積が大きいため薬品使用量が多くなり排水量が増えるデメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-009972号公報
【特許文献2】特許第5677476号公報
【特許文献3】特許第3656908号公報
【特許文献4】特許第6693804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜の2次側のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な膜ろ過システム、膜ろ過方法、その膜ろ過システムに用いられる薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置と、サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段と、前記閉塞検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて所定の出力を行う出力手段と、を備える、膜ろ過システムである。
【0015】
前記膜ろ過システムにおける前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで逆洗を行うことが好ましい。
【0016】
前記膜ろ過システムにおいて、前記閉塞検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過工程と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うメイン薬品添加逆洗工程と、サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うサブ薬品添加逆洗工程と、前記サブ薬品添加逆洗工程において行われた薬品添加逆洗の後の前記サブろ過膜の閉塞挙動に基づいて所定の出力を行う出力工程と、を含む、膜ろ過方法である。
【0018】
前記膜ろ過方法において、前記薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗工程において行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御することが好ましい。
【0019】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置であって、サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段と、前記閉塞検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段と、を備える、薬品添加逆洗装置である。
【0020】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置の制御装置であって、前記薬品添加逆洗装置は、サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段と、を備え、前記閉塞検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段を備える、薬品添加逆洗装置の制御装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜の2次側のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な膜ろ過システム、膜ろ過方法、その膜ろ過システムに用いられる薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る膜ろ過方法の一例を示すフローチャートである。
図3】実施例1のサブ膜ろ過装置において薬品添加逆洗を実施してからのろ過日数に対する逆洗Flux低下率(%)を示すグラフである。
図4】実施例1のメイン膜ろ過装置において薬品添加逆洗を実施してからのろ過日数に対する膜間差圧(kPa)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0025】
膜ろ過システム1は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置10と、サブろ過膜を有するサブ膜ろ過装置12と、メイン膜ろ過装置10のメインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段としてメイン逆洗配管36と、サブ膜ろ過装置12のサブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段としてサブ逆洗配管42と、サブろ過膜の2次側の閉塞を検知するための閉塞検知手段として、流量計28および圧力計30と、流量計28および圧力計30により検知された、サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて所定の出力を行う出力手段として出力部16と、を備える。膜ろ過システム1は、メイン膜ろ過装置10の処理水(透過水)を貯留するためのメイン処理水槽14を備えてもよい。メイン逆洗配管36は、メイン膜ろ過装置10のメインろ過膜の逆洗を行うためのメイン逆洗手段として、サブ逆洗配管42は、サブ膜ろ過装置12のサブろ過膜の逆洗を行うためのサブ逆洗手段として、機能してもよい。
【0026】
図1の膜ろ過システム1において、メイン膜ろ過装置10のメイン被処理水入口には、メイン被処理水配管32が接続されている。メイン膜ろ過装置10のメイン処理水出口と、メイン処理水槽14とは、メイン処理水配管34により接続されている。メイン処理水槽14のメイン逆洗液出口と、メイン膜ろ過装置10の2次側のメイン逆洗液入口とは、メイン逆洗配管36により接続されている。メイン膜ろ過装置10の1次側のメイン逆洗排液出口には、メイン逆洗排液配管38が接続されている。
【0027】
サブ膜ろ過装置12の2次側のサブ逆洗液入口と、メイン処理水槽14のサブ逆洗液出口とは、サブ逆洗配管42により接続されている。サブ膜ろ過装置12の1次側のサブ逆洗排液出口には、サブ逆洗排液配管44が接続されている。このように、メイン処理水槽14からメイン膜ろ過装置10の逆洗配管とサブ膜ろ過装置12の逆洗配管とに分岐され、メイン膜ろ過装置10のメインろ過膜とサブ膜ろ過装置12のサブろ過膜がメイン処理水を用いて逆洗される構成となっている。
【0028】
酸タンク20の薬品出口とメイン逆洗配管36とは、メイン酸配管40によってポンプ24を介して接続されている。酸タンク20の薬品出口とサブ逆洗配管42とは、サブ酸配管41によってポンプ25を介して接続されている。酸化剤タンク22の薬品出口とメイン逆洗配管36とは、メイン酸化剤配管45によってポンプ27を介して接続されている。酸化剤タンク22の薬品出口とサブ逆洗配管42とは、サブ酸化剤配管46によってポンプ26を介して接続されている。サブ逆洗配管42におけるサブ酸配管41およびサブ酸化剤配管46の接続点の下流側には、流量計28および圧力計30が設置されている。出力部16は、流量計28および圧力計30のそれぞれと、有線または無線の電気的接続等によって通信可能に接続されている。
【0029】
膜ろ過システム1は、制御手段として制御装置18を備えてもよい。制御装置18は、出力部16、ポンプ24、ポンプ25、ポンプ26、ポンプ27、流量計28、圧力計30等と、有線または無線の電気的接続等によって通信可能に接続されていてもよい。膜ろ過システム1は、さらに通信手段として通信装置を備えてもよい。通信装置は制御装置18に接続されており、例えば、インターネットを経由してサーバに接続される。サーバには少なくとも記録部または演算部が設けられている。記録部には、例えば、閉塞検知手段によって測定されたデータが保管される。演算部では、閉塞検知手段によって測定されたデータを用いた演算が行われ、警報や薬品添加逆洗の実行、薬品洗浄の実行等の出力が行われてもよいし、記録部に保管されたデータが合わせて用いられて、薬品添加逆洗や薬品洗浄の実施履歴、使用薬品量および薬品コスト等が計算され、保管または出力されてもよい。出力は再びインターネットを経由して制御装置18に送られ、出力部16に警報を出したり、薬品添加逆洗や薬品洗浄が実行されたり、洗浄条件の変更がなされてもよい。
【0030】
本実施形態に係る膜ろ過方法および膜ろ過システム1の動作について説明する。
【0031】
処理対象の被処理水は、メイン被処理水配管32を通してメイン膜ろ過装置10に送液され、メイン膜ろ過装置10において、メインろ過膜を用いて被処理水の膜ろ過処理が行われる(メイン膜ろ過工程)。得られたメイン処理水は、メイン処理水配管34を通してメイン処理水槽14に送液され、貯留される。
【0032】
膜ろ過システム1では、メイン膜ろ過装置10を連続運転する際に例えば定期的にメイン膜ろ過装置10の洗浄が行われる。メインろ過膜の洗浄は、例えば、メイン処理水の少なくとも一部がメイン逆洗水としてメイン処理水槽14からメイン逆洗配管36を通してメイン膜ろ過装置10の2次側へ送液され、酸化剤タンク22からポンプ27によりメイン酸化剤配管45を通して酸化剤がメイン逆洗配管36においてメイン逆洗水に供給され、メイン膜ろ過装置10の2次側から1次側に逆流されて行われる(メイン逆洗工程)。メイン逆洗排水は、メイン膜ろ過装置10の1次側からメイン逆洗排液配管38を通して排出される。
【0033】
そしてこのメイン逆洗を行ってもメインろ過膜のファウリングが解消しない場合には、酸等の薬品をメイン逆洗水に加えたメイン薬品添加逆洗液により薬品添加逆洗が行われる(メイン薬品添加逆洗工程)。メイン薬品添加逆洗工程では、例えば、酸タンク20からポンプ24によりメイン酸配管40を通して酸がメイン逆洗配管36においてメイン逆洗水に供給され、薬品洗浄が行われる。メイン薬品添加逆洗排液は、メイン膜ろ過装置10の1次側からメイン逆洗排液配管38を通して排出される。メイン薬品添加逆洗工程において、メインろ過膜をメイン薬品添加逆洗液に所定の時間、浸漬する浸漬工程を行ってもよい。また、メイン薬品添加逆洗工程において、メイン膜ろ過装置10の1次側から排出されたメイン薬品添加逆洗排液をメイン膜ろ過装置10の2次側に循環させてもよい。
【0034】
上記の通り、排水回収等における膜ろ過処理において、例えば被処理水に溶存金属が含まれる場合、溶存金属が膜の二次側へ透過してしまい、逆洗液として膜処理水である透過水に酸化剤を添加した液を用いて逆洗を行うと、膜処理水に存在する溶存金属の一部が析出し、膜の2次側にファウリングが発生する場合がある。
【0035】
膜ろ過システム1では、メイン膜ろ過装置10によるメイン膜ろ過工程とは別に、サブ逆洗手段およびサブ薬品添加逆洗手段を備えたサブ膜ろ過装置12によるサブ薬品添加逆洗工程を設け、閉塞検知手段である流量計28および圧力計30により検知された、サブ薬品添加逆洗工程における薬品添加逆洗の後のサブろ過膜の閉塞挙動に基づいてサブ膜ろ過装置12における薬品添加逆洗の状況に応じた出力、例えば薬品添加逆洗の後のフラックスの差があらかじめ定めた基準値を超えた場合に警報等の出力を出す。これによって、被処理水の性状が変動しても、サブ膜ろ過装置12において早期に最適な洗浄条件を決定して、メイン膜ろ過装置10においてその洗浄条件で薬品添加逆洗を行って膜の2次側のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能となる。
【0036】
メイン膜ろ過装置10とは別にサブ膜ろ過装置12を設けることによって、メイン膜ろ過装置10を停止しなくても薬品添加逆洗の最適な洗浄条件を決定することができ、メイン膜ろ過装置10の稼働時間を最大限にすることができる。サブ膜ろ過装置12にはメイン膜ろ過装置10と同様に被処理水を通水してもよいが、サブ膜ろ過装置12には被処理水を通水しないことによって、検知しにくい、膜の2次側に析出した金属に由来するファウリングを検知することができる。
【0037】
また、例えば、サブろ過膜の逆洗のときのフラックスが低下することを利用し、サブ膜ろ過装置12の二次側の膜閉塞の挙動、例えばサブ膜ろ過装置12における逆洗のときのフラックスの低下率からメイン膜ろ過装置10の膜閉塞の挙動を予測し、メイン膜ろ過装置10における薬品添加逆洗のタイミングを決定することができる。
【0038】
サブ膜ろ過装置12を用いた薬品添加逆洗の最適な洗浄条件を決定する方法の例を以下に説明する。
【0039】
膜ろ過システム1では、メイン膜ろ過装置10を連続運転する際に、サブ膜ろ過装置12においても例えば定期的にサブろ過膜の洗浄が行われる。サブろ過膜の洗浄は、メインろ過膜と同様に、例えばメイン処理水の少なくとも一部がサブ逆洗水としてメイン処理水槽14からサブ逆洗配管42を通してサブ膜ろ過装置12の2次側へ送液され、酸化剤タンク22からポンプ26によりサブ酸化剤配管46を通して酸化剤がサブ逆洗配管42においてサブ逆洗水に供給され、サブ膜ろ過装置12の2次側から1次側に逆流されて行われる(サブ逆洗工程)。サブ逆洗排水は、サブ膜ろ過装置12の1次側からサブ逆洗排液配管44を通して排出される。
【0040】
そしてこのサブ逆洗を行ってもサブろ過膜のファウリングが解消しない場合には、酸等の薬品をサブ逆洗水に加えたサブ薬品添加逆洗液により洗浄条件(CEB)で薬品添加逆洗が行われる(サブ薬品添加逆洗工程)。サブ薬品添加逆洗工程では、例えば、酸タンク20からポンプ25によりサブ酸配管41を通して酸がサブ逆洗配管42においてサブ逆洗水に供給され、薬品添加逆洗が行われる。サブ薬品添加逆洗排液は、サブ膜ろ過装置12の1次側からサブ逆洗排液配管44を通して排出される。サブ薬品添加逆洗工程において、サブろ過膜をサブ薬品添加逆洗液に所定の時間、浸漬する浸漬工程を行ってもよい。また、サブ薬品添加逆洗工程において、サブ膜ろ過装置12の1次側から排出されたサブ薬品添加逆洗排液をサブ膜ろ過装置12の2次側に循環させてもよい。
【0041】
なお、メイン逆洗工程において、メイン処理水槽14、メイン逆洗配管36、酸化剤タンク22、ポンプ27、メイン酸化剤配管45等がメイン逆洗手段として機能し、サブ逆洗工程において、メイン処理水槽14、サブ逆洗配管42、酸化剤タンク22、ポンプ26、サブ酸化剤配管46等がサブ逆洗手段として機能することになる。メイン薬品添加逆洗工程において、メイン処理水槽14、酸タンク20、ポンプ24、メイン酸配管40、メイン逆洗配管36等がメイン薬品添加逆洗手段として機能することになる。サブ薬品添加逆洗工程において、メイン処理水槽14、酸タンク20、ポンプ25、サブ酸配管41、サブ逆洗配管42等がサブ薬品添加逆洗手段として機能することになる。
【0042】
ここで、閉塞検知手段である流量計28および圧力計30によってサブ薬品添加逆洗工程の終了後の流量および圧力からフラックスが測定される。流量計28および圧力計30により検知された流量および圧力から算出された洗浄条件(CEB)でのサブ薬品添加逆洗後の逆洗のときのフラックス(逆洗FluxCEB0)が例えばあらかじめ定めた基準値であるCEB基準値(逆洗FluxCEB)を下回った場合(逆洗FluxCEB0<逆洗FluxCEB)に警報等の所定の出力が行われる(出力工程)。サブ薬品添加逆洗液の水温が変動し、フラックスの温度依存性を排除したい場合には、さらにサブ逆洗配管42に温度計を設置し、測定したサブ薬品添加逆洗液の水温に基づく粘性等を考慮してサブろ過膜の逆洗のときのフラックスを算出することが望ましい。
【0043】
これによって、サブ膜ろ過装置12におけるサブろ過膜の2次側のファウリングの発生を早期に検知することができる。サブろ過膜の2次側のファウリングの発生を検知した場合にサブ膜ろ過装置12において最適な薬品添加逆洗の条件を決定し、メイン膜ろ過装置10においてサブ膜ろ過装置12で決定した最適な洗浄条件で薬品添加逆洗を行えば、被処理水の性状が変動しても膜の2次側のファウリングを抑制することができ、メイン膜ろ過装置10の安定運転が可能となる。あらかじめサブ膜ろ過装置12において最適な薬品添加逆洗の条件を決定することによって、メイン膜ろ過装置10を運転を停止しなくてもよく、メイン膜ろ過工程を継続してもよい。これによって、メイン膜ろ過装置10の稼働時間を最大限にすることができる。
【0044】
サブ膜ろ過装置12において薬品添加逆洗を例えば自動で実施し、膜閉塞を解消することができるため、特にメンテナンスは行わなくてもよい。本実施形態に係る膜ろ過方法および膜ろ過システムでは、サブ膜ろ過装置12において膜閉塞時期を予測し、メイン膜ろ過装置10の薬品添加逆洗を行うことができるため、メイン膜ろ過装置10の稼働を停止して薬品添加逆洗を行わずに長期運転を可能とし、装置稼働率の低下と水回収率の低下を抑制することができる。
【0045】
サブ膜ろ過装置12におけるサブろ過膜は、例えば、メイン膜ろ過装置10におけるメインろ過膜と同様の膜材質と膜形状と膜孔径とを有し、メインろ過膜よりも膜面積が小さい膜が用いられる。メイン膜ろ過装置10よりも小型のサブ膜ろ過装置12で薬品添加逆洗の最適な洗浄条件を決定すれば、最適な薬品添加逆洗の条件の決定に要する薬液消費量を最小限に抑制することができる。
【0046】
サブ膜ろ過装置12のサブ逆洗工程において、メイン膜ろ過装置10のメイン逆洗工程よりも高いフラックスで逆洗することが好ましい。これによって、サブ膜ろ過装置12におけるサブろ過膜の2次側のファウリングの発生をより早期に検知することができる。サブろ過膜の2次側のファウリングの発生を検知した場合にサブ膜ろ過装置12において早期に最適な薬品添加逆洗の条件を決定し、メイン膜ろ過装置10においてサブ膜ろ過装置12で決定した最適な洗浄条件で薬品添加逆洗を行えば、被処理水の性状が変動しても膜の2次側のファウリングを抑制することができ、メイン膜ろ過装置10の安定運転が可能となる。
【0047】
サブ膜ろ過装置12のサブ逆洗工程におけるフラックスは、メイン膜ろ過装置10のメイン逆洗工程におけるフラックスの例えば1.3倍~10倍であり、1.3倍~5倍であることが好ましく、1.5倍~2倍であることがより好ましい。サブ膜ろ過装置12のサブ逆洗工程におけるフラックスがメイン膜ろ過装置10のメイン逆洗工程におけるフラックスの1.3倍未満であると、サブろ過膜の2次側のファウリングの発生をより早期に検知することできない場合があり、10倍を超えると、2次側のファウリング発生の評価を過剰にしてしまい、予測精度が下がるおそれがある。
【0048】
また、例えば、流量計28および圧力計30により検知された、サブ膜ろ過装置12におけるサブ逆洗中の逆洗フラックスやサブ薬品添加逆洗の後の逆洗フラックスに基づいて、メイン膜ろ過装置10において行われるメインろ過膜のメイン逆洗の条件やメイン薬品添加逆洗の条件を制御してもよい。例えば、サブ膜ろ過装置12における逆洗直後のフラックス低下や薬品添加逆洗直後のフラックス低下の傾向から、メイン膜ろ過工程の逆洗の条件、例えば、メイン逆洗の頻度や、薬品添加逆洗の条件、例えば、メイン薬品添加逆洗の頻度、メイン薬品添加逆洗で用いるメイン薬品添加逆洗液の薬品濃度、メイン薬品添加逆洗で用いる薬品の種類等を制御すればよい。これらの制御は手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。
【0049】
より具体的な薬品添加逆洗の条件を決定する方法の一例について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0050】
サブ膜ろ過装置12において、例えば定期的にサブ逆洗が行われる。メイン膜ろ過装置10で膜ろ過されたメイン処理水を用いてサブ膜ろ過装置12のサブ膜ろ過の逆洗が行われた後の、圧力計30により検知された圧力Pと流量計28により検知された流量Fとから逆洗フラックス(逆洗Flux)が算出される(S10)。所定量の次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤が添加されたメイン処理水を用いてサブ膜ろ過装置12のサブ膜ろ過の逆洗が行われ、逆洗が行われた後の、圧力計30により検知された圧力Pと流量計28により検知された流量Fとから逆洗フラックス(逆洗Flux)が算出される(S12)。算出された逆洗Fluxに対し、基準逆洗フラックス(逆洗Flux:あらかじめ設定した逆洗後の単位膜面積当たりの基準ろ過速度、例えば逆洗Fluxの80~90%程度)を参照して、逆洗Flux≧逆洗Fluxとなった場合には、フラックスは十分に維持されていると判断されるので、サブ膜ろ過装置12とメイン膜ろ過装置10ともに薬品添加逆洗は実施されなくてもよい。所定の時間後に再度、サブ膜ろ過装置12において、サブ逆洗が行われればよい。
【0051】
逆洗Flux<逆洗Fluxとなった場合には、薬品添加逆洗が必要と判断され、サブ膜ろ過装置12において、あらかじめ設定しておいた洗浄条件(CEB条件:CEB)においてサブ薬品添加逆洗が実施され、圧力計30により検知された圧力PCEB0と流量計28により検知された流量FCEB0とからサブ薬品添加逆洗実施後の逆洗フラックス(逆洗FluxCEB0)が算出される(S14)。算出された逆洗FluxCEB0に対し、薬品添加逆洗後の基準逆洗フラックス(逆洗FluxCEB:あらかじめ設定した薬品添加逆洗後の単位膜面積当たりの基準ろ過速度)を参照して、逆洗FluxCEB0≧逆洗FluxCEBとなった場合には、CEB条件(CEB)によってフラックスが十分に回復した(すなわち、CEB条件(CEB)は十分効果がある)と判断されるため、実機のメイン膜ろ過装置10においてもCEB条件(CEB)でメイン薬品添加逆洗が実施される(S16)。この場合、サブ膜ろ過装置12における次の洗浄条件による薬品添加逆洗は行われずに、終了してもよい。
【0052】
逆洗FluxCEB0<逆洗FluxCEBとなった場合には、サブ膜ろ過装置12で実施されたCEB条件(CEB)では不十分と判断されるため、CEB条件(CEB)とは異なるCEB条件(CEB)でサブ薬品添加逆洗が実施され、圧力計30により検知された圧力PCEB1と流量計28により検知された流量FCEB1とからサブ薬品添加逆洗実施後の逆洗フラックス(逆洗FluxCEB1)が算出される(S18)。逆洗FluxCEB0<逆洗FluxCEBとなった場合に、出力部16に警報等の出力が出されてもよい。算出された逆洗FluxCEB1に対し、逆洗FluxCEB1≧逆洗FluxCEBとなった場合には、CEB条件(CEB)によってフラックスが十分に回復した(すなわち、CEB条件(CEB)は十分効果がある)と判断されるため、実機のメイン膜ろ過装置10においてもCEB条件(CEB)でメイン薬品添加逆洗が実施される(S20)。この場合、サブ膜ろ過装置12における次の洗浄条件による薬品添加逆洗は行われずに、終了してもよい。
【0053】
逆洗FluxCEB1<逆洗FluxCEBとなった場合には、サブ膜ろ過装置12で実施されたCEB条件(CEB)では不十分と判断されるため、さらに異なるCEB条件(CEB)でサブ薬品添加逆洗が実施され、圧力計30により検知された圧力PCEBnと流量計28により検知された流量FCEBnとからサブ薬品添加逆洗実施後の逆洗フラックス(逆洗FluxCEBn)が算出され(S22)、逆洗FluxCEBn≧逆洗FluxCEBとなるまで、すなわち、CEB条件(CEB)によってフラックスが十分に回復した(すなわち、CEB条件(CEB)は十分効果がある)と判断されるまで、CEB条件を変えてサブ薬品添加逆洗が実施されればよい(nは、1以上の整数)。逆洗FluxCEB(n-1)<逆洗FluxCEBとなった場合には、出力部16に警報等の出力が出されてもよい。警報が出されるのは、CEBの条件を2回以上評価しているCEB以降が好ましい。逆洗FluxCEBn≧逆洗FluxCEBとなった場合には、CEB条件(CEB)によってフラックスが十分に回復した(すなわち、CEB条件(CEB)は十分効果がある)と判断されるため、実機のメイン膜ろ過装置10においてもCEB条件(CEB)でメイン薬品添加逆洗が実施される(S24)。この場合、サブ膜ろ過装置12における次の洗浄条件による薬品添加逆洗は行われずに、終了してもよい。
【0054】
メイン膜ろ過装置10においてサブ薬品添加逆洗が実施されるタイミングは、測定されるサブ膜ろ過装置12における逆洗フラックス低下率(逆洗Flux/逆洗Flux)から算出されてもよい。
【0055】
サブ薬品添加逆洗におけるCEB、CEB、CEB、・・・、CEBと続く洗浄条件(CEB条件)は、被処理水の性状等に基づいて予め任意に決めることができ、2回目の洗浄条件(CEB)以降では、前回と異なる洗浄条件を用いればよい。例えば、(CEB、CEB、・・・)=(薬品濃度0.1重量%、薬品0.2重量%、・・・)のように同じ薬品を使用して薬品の濃度を変更してもよいし、(CEB、CEB、・・・)=(薬品1、薬品2、・・・)のように薬品の種類を変更してもよいし、(CEB、CEB、・・・)=(時間1、時間2、・・・)のように洗浄時間を変更してもよい。例えば、無機酸→有機酸と変えてもよい。例えば、マンガンや鉄等の金属粒子のファウリング解消には有機酸が好適であり、被処理水が金属粒子を含む水へと性状変動がある場合には、有機酸を用いる洗浄条件で評価することによって、膜の安定運転を行うことができる。
【0056】
評価する洗浄条件(CEB条件)は、2条件でもよいし、3条件以上あってもよいが、評価のためにかかる時間を考慮すると、2条件~3条件であることが好ましい。
【0057】
事前評価で算出された逆洗フラックス低下率を上回り、想定よりも早く膜の閉塞が進行している場合には、出力部16に警報等の出力が出されてもよい。警報の内容は、例えば、「被処理水中の無機物増加」であり、運転条件の改善提案は、例えば、「前段の有機物処理(生物処理や凝集)の最適化、例えば、pH調整や凝集剤添加量の確認」等が挙げられる。警報の確認後、薬品添加逆洗の実施について提案してもよい。
【0058】
制御装置18は、サブ膜ろ過装置12においてメイン処理水を用いて逆洗した際の圧力と流量等を測定したデータを記憶し、逆洗直後の逆洗フラックス低下や薬品添加逆洗直後の逆洗フラックス低下のデータを算出し、これに基づいてメイン膜ろ過装置10やサブ膜ろ過装置12の薬品添加逆洗の条件(例えば、薬品添加逆洗の頻度、薬品の種類、薬品の濃度、薬品添加逆洗の時間等)を自動で制御してもよい。
【0059】
例えば、逆洗FluxCEBn≧逆洗FluxCEBとなった場合には、制御装置18によってメイン膜ろ過装置10の薬品添加逆洗の洗浄条件が制御されてもよい。例えば、制御装置18によってポンプ24が制御されてもよい。逆洗FluxCEBn<逆洗FluxCEBとなった場合には、制御装置18によってサブ膜ろ過装置12の薬品添加逆洗の洗浄条件が制御されてもよい。例えば、制御装置18によってポンプ25が制御されてもよい。
【0060】
メイン膜ろ過装置10のメイン被処理水配管32に圧力計を設置し、逆洗の前後、薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値を測定し、膜間差圧上昇をクロスチェックとして確認してもよい。
【0061】
出力部16における出力としては、サブ膜ろ過装置12における薬品添加逆洗の状況を示す表示や音等の視聴覚的に認知可能な警報の他に、薬品添加逆洗の状況に対応するための対応方法、改善提案等が表示されてもよい。出力部16は、例えば、情報を表示、出力することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示手段である表示装置や、スピーカ等の音声出力手段である音声出力装置等が挙げられる。例えば、警報の方法としては、制御盤のタッチパネル上に表示する、インターネット通信を介して運転員に通知する、監視室等に通知する等が挙げられる。
【0062】
出力部16は、薬品添加逆洗の後の逆洗フラックス低下が例えばあらかじめ定めた基準値を超えた場合に警報等の出力を出してもよい。警報の基準値は、1つに予め決めてもよいし、段階的、比例的に変化させてもよい。
【0063】
制御装置18は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。制御装置18は、閉塞検知手段により検知された、サブ膜ろ過装置12により行われた薬品添加逆洗の後の閉塞挙動に基づいて、メイン膜ろ過装置10により行われるメインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する機能を有する。制御装置18は、例えば、ポンプ24およびポンプ25のオン/オフや流量等を調整して、メイン処理水への薬品の添加量を制御する機能を有する。
【0064】
処理対象となる被処理水は、例えば懸濁物、有機物、金属粒子等の無機物等を含む水であり、特に制限はないが、例えば、半導体製造工場、食品工場等から排出される有機物を含む排水が生物処理された(生物処理工程)生物処理水、凝集および固液分離処理(凝集/固液分離処理工程)された固液分離処理水、生物処理された後、その生物処理水について凝集および固液分離処理された固液分離処理水等が挙げられる。生物処理工程、凝集/固液分離処理工程の前後段に他の工程が入って処理された水であってもよい。
【0065】
生物処理は、微生物を用いて、被処理水の処理を行うものであればよく、特に制限はない。凝集および固液分離処理は、ポリ塩化アルミニウム等の無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤を用いて、被処理水の凝集処理および固液分離処置を行うものであればよく、特に制限はない。
【0066】
被処理水の性状が、ICP分析法で示される鉄、アルミニウム、マンガン等の金属粒子および溶存金属等の無機物の含有量がそれぞれ0.01~20mg/Lの範囲で変動する水である場合に、本実施形態に係る膜ろ過システムおよび膜ろ過方法が好適に適用される。被処理水は、無機物の含有量の他に、さらにTOCで示される有機物の含有量が1~50mg/Lの範囲で変動する水であってもよい。
【0067】
メインろ過膜、サブろ過膜は、例えば、限外ろ過膜(UF膜)または精密ろ過膜(MF膜)等の除濁膜である。膜の形状は、例えば、中空糸膜等である。
【0068】
薬品添加逆洗に用いる薬品としては、酸、酸化剤、アルカリ等が挙げられる。特に、被処理水に溶存金属が含まれる場合に、溶存金属が膜の二次側へ透過した溶存金属に起因する膜の2次側のファウリングを抑制するために、無機ファウリングに有効な酸を用いてサブ薬品添加逆洗における洗浄条件(CEB条件)を検討することが好ましい。
【0069】
酸としては、特に制限はないが、塩酸、硫酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸が挙げられ、薬品添加逆洗のときの回復性等の点から、シュウ酸、クエン酸等の有機酸を用いることが好ましい。
【0070】
酸洗浄において、酸を添加した薬品添加逆洗液のpHが1~3の範囲になるように酸を添加することが好ましく、費用対効果等の観点からは、pH2~3の範囲になるように酸を添加することがより好ましい。
【0071】
逆洗に用いる酸化剤としては、特に制限はないが、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤等が挙げられる。S12で用いられる酸化剤としては、メイン処理水中の溶存金属の析出を引き起こすような酸化剤であればよく、特に制限はないが、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤等が挙げられる。サブろ過膜の逆洗のときに添加する次亜塩素酸ナトリウムの濃度としては、50~100ppmの範囲であることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウムの濃度が50ppm未満であると、水中の有機物によって有効塩素濃度が下がることにより精度が低くなる恐れがあり、100ppmより高濃度であると、薬品消費量が増えてコストが高くなることや、次亜塩素酸ナトリウムによる膜劣化が起こりやすくなる懸念がある。
【0072】
逆洗に用いるアルカリとしては、特に制限はないが、比較的安価な水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等を用いることが好ましい。
【0073】
酸化剤+アルカリを用いる洗浄において、アルカリを添加した逆洗液のpHが10~13の範囲になるようにアルカリを添加することが好ましく、費用対効果等の観点からは、pH11~12の範囲になるようにアルカリを添加することがより好ましい。
【0074】
逆洗および薬品添加逆洗において、必要に応じて酸、アルカリ、酸化剤以外の他の薬品、例えば、界面活性剤等の膜洗浄剤等を使用してもよい。膜洗浄剤としては、例えば、ECOLABO社製のULTRASILシリーズ等が挙げられる。
【実施例0075】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
<実施例1>
図1に示す膜ろ過システム1を用い、被処理水として溶存Mnを0.5mg/L含む模擬水を表1に示す条件でメイン膜ろ過装置に通水してろ過、次亜塩素酸ナトリウムを添加した逆洗水による逆洗を行い、サブ膜ろ過装置で次亜塩素酸ナトリウムを添加した逆洗水による逆洗および薬品添加逆洗(CEB)を行った。メイン膜ろ過装置では、逆洗フラックス:1.5(m/d)で逆洗を行い、サブ膜ろ過装置では、逆洗フラックス:2(m/d)で逆洗およびCEBを行った(メイン膜ろ過装置の逆洗フラックスの1.3倍)。
【0077】
【表1】
【0078】
サブ膜ろ過装置では、逆洗と1日1回のCEBを行った。被処理水の水質を考慮すると、基本のCEB条件としては、シュウ酸0.2質量%水溶液が考えられる。サブ膜ろ過装置では、逆洗は30分を5回実施する。サブ膜ろ過装置へかかる負荷を「ろ過時間29分+逆洗1分」の実機で置き換えた場合の負荷として計算する。実機は1日に48分逆洗を行うので(24時間÷30分)、サブ膜ろ過装置への負荷を実機で置き換えると、150÷48≒3日となる。
【0079】
実施例では、メイン膜ろ過装置のCEBを実施するタイミングの基準を「新品のときの逆洗フラックスから50%低下したとき」、すなわち「逆洗フラックス低下率が50%に達したとき」と設定する。この基準をもとにCEBを実施するタイミングをサブ膜ろ過装置の逆洗フラックス低下挙動から算出する。図3に、実施例1のサブ膜ろ過装置において薬品添加逆洗を実施したときのろ過日数に対する逆洗Flux低下率(%)を示す。
【0080】
サブ膜ろ過装置において逆洗を行った結果、負荷日数が3日で逆洗フラックス低下率が19%であった。これより、逆洗フラックス低下率が50%に達するまでの日数は、50÷19×3≒8日となる。この結果を表2にまとめる。
【0081】
【表2】
【0082】
以上より、メイン膜ろ過装置のCEBを実施するタイミング(逆洗フラックス低下率50%)は通水開始から8日後と推定された。
【0083】
次に、逆洗フラックスの通水結果を図4に示す。
【0084】
メイン膜ろ過装置の初期差圧は33kPaであったことから、逆洗フラックス低下率が50%になるときの差圧は、66kPaである。図4より、通水開始4日後から徐々に差圧上昇が急になり、通水開始から9日後に66kPaに達した。表2のサブ膜ろ過装置の結果と図4のメイン膜ろ過装置の結果について、表3にまとめる。
【0085】
【表3】
【0086】
表3より、逆洗フラックス低下率が50%に達するまでの日数を比較すると、サブ膜ろ過装置の計算値と、メイン膜ろ過装置の実測値が2割以下の精度で一致していることが確認できた。
【0087】
以上より、メイン膜ろ過装置の逆洗フラックス低下率がサブ膜ろ過装置を用いて推定できることが確認できたため、CEBの実施タイミングをサブ膜ろ過装置の逆洗フラックス低下に応じて決定することが可能と考えられる。
【0088】
このように、ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜の2次側のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能となることがわかった。
【符号の説明】
【0089】
1 膜ろ過システム、10 メイン膜ろ過装置、12 サブ膜ろ過装置、14 メイン処理水槽、16 出力部、18 制御装置、20 酸タンク、22 酸化剤タンク、24,25,26,27 ポンプ、28 流量計、30 圧力計、32 メイン被処理水配管、34 メイン処理水配管、36 メイン逆洗配管、38 メイン逆洗排液配管、40 メイン酸配管、41 サブ酸配管、42 サブ逆洗配管、44 サブ逆洗排液配管、45 メイン酸化剤配管、46 サブ酸化剤配管。
図1
図2
図3
図4