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特開2023-107700フロート付着物除去構造、およびフロート掃除機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107700
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】フロート付着物除去構造、およびフロート掃除機
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/60 20170101AFI20230727BHJP
   A01K 61/50 20170101ALI20230727BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A01K61/60 323
A01K61/50
B08B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009015
(22)【出願日】2022-01-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】516043166
【氏名又は名称】有限会社シーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂
【テーマコード(参考)】
2B104
3B116
【Fターム(参考)】
2B104AA22
2B104CG07
2B104DC02
3B116AA42
3B116AB03
3B116AB33
3B116AB44
3B116BA03
3B116BA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】貝類等の垂下養殖に用いられるフロートに付着した付着物の処理において、取扱い・運転をより簡単にでき、作業性をより高めることができ、作業労力負荷をより軽減、安全性が十分であり、処理効率が高く、作業時間も短縮でき、高度に省力化されていて、適用範囲の広い、フロート付着物除去構造、およびフロート掃除機を提供すること。
【解決手段】フロート付着物除去構造10は、フロートF上に対極をなして設けられている二個の耳部L、Rにそれぞれ係止される二個のフロート軸架手段2、2と、フロート軸架手段2を回転させる回転駆動手段3と、フロートF表面に付着物除去用の刃すなわちスクレッパー5を押し当てて付着物を掻き取り除去するためのスクレッパー部4とを備えてなり、スクレッパー部4は、スクレッパー5とスクレッパー5の位置を制御するための制御部6とからなる構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝類等の垂下養殖に用いられる浮き球すなわちフロートに付着した付着物を除去するためのフロート付着物除去構造であって、
フロート上に対極をなして設けられている二個の耳部にそれぞれ係止される二個のフロート軸架手段と、
該フロート軸架手段を回転させる回転駆動手段と、
フロート表面に付着物除去用の刃すなわちスクレッパーを押し当てて付着物を掻き取り除去するためのスクレッパー部とを備えてなり、
該スクレッパー部は、該スクレッパーと、
該スクレッパーの位置を制御するための制御部とからなる
ことを特徴とする、フロート付着物除去構造。
【請求項2】
前記制御部は、フロート表面に対しての前記スクレッパーの進退を調節可能とするよう形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項3】
前記制御部は、前記スクレッパーに連設していてこれを後方から位置制御するための操縦ハンドルと、該操縦ハンドルまたは該スクレッパーを支持する支持アームとからなり、該支持アームはフロートの両耳部間に亘って回動し得るよう前記両フロート軸架手段の中間位置に軸心をもって設けられていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載のフロート付着物除去構造。
【請求項4】
前記操縦ハンドルは前記支持アームの端部に遊びのある状態で貫装されていることを特徴とする、請求項3に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項5】
前記操縦ハンドルが貫装される前記支持アームの端部は、該支持アーム本体に枢設されたガイド部材であることを特徴とする、請求項4に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項6】
前記フロート軸架手段はフロートの耳部係止用のフックを前端に有するフロート軸架杆体であり、該フロート軸架杆体の一方は前記回転駆動手段により回転駆動され、他方はフロート軸架状態を保持するための軸架固定手段を有することを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載のフロート付着物除去構造。
【請求項7】
前記軸架固定手段は、前記フロート軸架杆体に対して後端方向への牽引作用を行う牽引体と、該牽引体の姿勢固定を行う規制ユニットとからなり、
該牽引体は固定された下端を支点として揺動する杆体であり、
該牽引体には後記摺動杆体を挿通せしめて該牽引体―摺動杆体間の相対的な摺動を規制するための規制孔が備えられており、
該規制ユニットは、該規制孔に挿通する一端部が固定された摺動杆体を備えてなることを特徴とする、請求項6に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項8】
前記牽引体を牽引状態とした場合に、前記規制孔とこれに挿通している前記摺動杆体とが相互に係止する相互係止状態となるよう形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項9】
前記摺動杆体が、前記規制孔内において斜めに挿通し、かつ該規制孔の両開口端の縁部に当接する状態により、前記相互係止状態が形成されることを特徴とする、請求項8に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項10】
前記規制ユニットには前記牽引体の姿勢固定を解除する解除手段が設けられていることを特徴とする、請求項7、8、9のいずれかに記載のフロート付着物除去構造。
【請求項11】
前記解除手段は、前記摺動杆体と前記規制孔との間における相互係止状態を解除することを特徴とする、請求項10に記載のフロート付着物除去構造。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11のいずれかに記載のフロート付着物除去構造が、これを取り付けるための支持体に取り付けられてなることを特徴とする、フロート掃除機。
【請求項13】
陸上または船上にて使用されることを特徴とする、請求項12に記載のフロート掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロート付着物除去構造、およびフロート掃除機に係り、特に、貝類等の垂下養殖に用いられる浮き球(フロート)に付着した付着物を簡単・迅速・効率的に除去することのできる、フロート付着物除去構造、およびフロート掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロート(浮き球、ブイ)は、ホタテ貝やアコヤ貝(真珠貝)等の垂下養殖に多く使用されており、形や大きさはさまざまである。ホタテ貝養殖の盛んな青森県の陸奥湾では特に、球体の両サイドにロープ取付け用の穴が付いているフロートが多く使用されている。フロートは、水中の垂下養殖カゴを成長環境に最適な水深に固定できるよう年間を通して使用されているが、貝類、海藻類、フジツボ等といった海洋生物が付着して成長し、次第にフロートの浮力が減衰していくため、随時きれいな物と交換する必要がある。
【0003】
付着物によって浮力が減衰したフロートは、順次、海中から陸上に引き揚げられ、表面の付着物を取り除いてただちに海中へと戻すという作業を進めていく必要がある。フロート一個の清掃作業には数分程度を要するが、陸奥湾沿岸の養殖業者の場合、一事業者あたりの処理数は年間に数百個にも及ぶ。したがって、より迅速に処理できる方式が求められている。一方、この作業を円滑に進めることができない場合には、新たにフロートを購入しなくてはならず、出費およびフロート保管場所の増大を招くため、デメリットが大きい。
【0004】
フロートについては従来、技術的な提案もなされている。たとえば後掲特許文献1には、フロートとほぼ同径のアーチ状本体と、その両端に固定され、内部に軸を回転自在に支持するベアリングを備えたベアリングケースと、これにそれぞれ回転自在に軸支されてフロートの耳部を嵌合支持する押さえ金物と、アーチ状本体の一方端に固定されたベアリングケースに接続された手動ハンドルと、その反対側のベアリングケースに接続され、押さえ金物を進退自在に弾圧するスプリングを内蔵するスプリング押さえと、アーチ状本体のアーチ状中間に両端を溶接固定され、ほぼフロートと同径に湾曲させ、フロートに沿って水平に取り付けされたガイドロッドと、これに沿って滑動自在に支持された掻き取り刃物とからなる構成が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、フロートを水平方向に配置された軸周りに回転させるようセットできる架台の上に載置し、上方からレバーによって横方向に回動させつつ作用できる切削刃物を当てて、付着物を除去できるとする構成が開示されている。
【0006】
また特許文献3には、フロートを支持する円周部を備え、かつ内部に空間を有するフロート支持部材と、その空間内に配置されていてフロートに対向する回転面を有する回転テーブルと、回転面上に配置されフロートの表面から異物を除去するための刃部を有する異物除去部材と、回転テーブルを支持しかつフロート方向に押し付ける支持機構と、回転テーブルを回転させる駆動機構を備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-18934号公報「浮き玉掃除機」
【特許文献2】特開2004-275160号公報「浮子清浄機」
【特許文献3】特開2013-183692号公報「浮玉の異物除去装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記文献1開示技術は、フロートの耳部を両側から押さえつける固定方法とする。しかし、付着物の付いたフロートは相当な重量を有するため、これを装置の下部から片手で持ち上げつつ、もう一方の手で耳部を押さえつけて固定するのには相当の力が必要であり、至難の業である。取り外す際にも相当な力が必要である(文献1の問題点その1)。より簡単で低労力の装着方式が望まれる。また、スプリングの付勢による固定では回転中に外れる危険性が大きく、安全管理上看過できない問題点を孕んでいる(文献1の問題点その2)。フロートの大きさによる固定具合の不安定性も懸念される。
【0009】
文献1開示技術はさらに、フロートに付いているロープを取り外さなければ装着できないという点でも作業性が悪く、迅速で効率的な処理には相当不利である(文献1の問題点その3)。迅速かつ効率的な処理が求められる。また、ガイドロッド(図中の符号6)が固定されているため、大小異なるサイズのフロートの時には、掻き取り刃物(図中の符号7)とフロートの間に空間ができて掻き取り刃物7がフロートに密着できず、付着物の取り残しが多く発生し、処理効率が低い(文献1の問題点その4)。処理効率の高さが求められる。
【0010】
上記文献2開示技術にも複数の要改善点があるが、まずはフロートを装置に装着することが重労働である。角度付き受け台があるため、フロートを装置に装着するためには、相当な重量のある回動腕を上に持ち上げてフロートが入る空間を作らなければならない。そして、付着物除去作業後は再度この重い回動腕を持ち上げなければならない(文献2の問題点その1)。労力負荷を少しでも軽減できる装置が求められる。
【0011】
また、角度付き受け台にフロートを置いた後に耳部と回転主軸の連結器の穴を合わせて耳部にピンを差し込み、さらにこのピンに抜け止め用の小さな松葉ピンを差し込むことを経なければ、装置へのフロート取付け作業を終えることができない。しかし、作業手袋を装着した状態でこの精密な作業は大変な労力を要する(文献2の問題点その2)。簡単な、低労力の装置が求められる。
【0012】
さらに大変なことは、固定用の耳部にも当然付着物が付いており、この付着物が付いている状態でのピンの差し込みが容易ではない、ということである。したがって、当該装置を用いての作業に先立ち、事前に耳部の付着物除去作業を要し、作業過程も作業時間も増大してしまう(文献2の問題点その3)。より省力化でき、作業時間も短縮できる装置が求められる。
【0013】
加えて、フロートに付着している付着物の量・程度によって、処理に供されるフロートの外周寸法は変化するため、記載されているような良好な滑合は不可能であることが明らかであり、そうすると回転時の芯振れも大きく、危険な作業となる(文献2の問題点その4)。安全な装置が求められる。サイズがそもそも異なるフロートには、角度付き受け台が適合せず、装置にセットすることができず、適用範囲が狭い(文献2の問題点その5)。適用範囲の広い装置が求められる。
【0014】
文献2開示技術の問題点としてさらに、フロートに取付けられているロープの問題がある。フロートにはロープ取付け用の耳部が通常2個付いているが、この装置の回転主軸に固定された側の反対側耳部には通常ロープが取り付けられている。この装置でフロートを回転させると、ロープが振り回されて暴れ、大変危険である。またこの装置では上部に付着物除去器が付いているため、振り回されたロープがそれに絡み付く可能性もあり、危険性は随所に存在する(文献2の問題点その6)。安全性の高い装置が求められる。
【0015】
結局、安全に作業を実施するためにはロープを取り外さなければならないが、硬く縛り付いたロープを取り外すことも、再度ロープを取り付けることも大変な労力であり、通常の手作業よりも時間を要し、省力化には全く寄与しない(文献2の問題点その7)。少なくとも従来からの手作業より省力化できる装置が求められる。
【0016】
上記文献3開示技術は、フロートの固定方法が素手による固定・加圧である。付着物の付いていないきれいなフロートであれば特段の問題もないが、付着物の付いているフロートを回転させつつ処理するに際し、これを手で押さえて作業することは非常に危険である(文献3の問題点その1)。安全な装置が求められる。
【0017】
文献3開示技術はまた、回転刃部の形状をフロートの外周形状に合わせる必要があり、フロートのサイズにより刃部の交換が必要になる、交換しなければ刃部の一部分しかフロートと接触する部分がないので、取り残しが多くなり、結局、後で人力により作業を終えなくてはならなくなる(文献3の問題点その2)。装置化する以上、極力手作業を不要とする方式が求められる。
【0018】
フロートにはロープ取付け用の耳部が通常2個あるが、これを回転体に当てるようなことをすると、装置が壊れるか、または作業に当たる人が傷害を負う危険性がある。したがって、耳部がある半面は回転体に乗せての除去作業は不可能なため、球体の半面しか除去作業ができない。これによっても取り残し部分が多く発生するため、後で人力により作業を終えなくてはならなくなる(文献3の問題点その3)。装置化する以上、極力手作業を不要とし、効率性の高い方式が求められる。
【0019】
このように従来技術には、取扱い・運転の簡単さ、作業性の良さ、作業労力負荷の軽減、安全性、処理効率の高さ、作業時間の短縮、省力化の高度さ、適用範囲の広さの各点において、不十分な点があった。そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を解消し、貝類等の垂下養殖に用いられるフロートに付着した付着物の処理において、取扱い・運転をより簡単にでき、作業性をより高めることができ、作業労力負荷をより軽減、安全性が十分であり、処理効率が高く、作業時間も短縮でき、高度に省力化されていて、適用範囲の広い、フロート付着物除去構造、およびフロート掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明者は上記課題について検討した結果、フロートをその二個の耳部で係止して中空に軸架し、回転させ、フロートのサイズや付着物の不着程度に合わせて自在にフロート表面に押し当てることのできる付着物除去用の刃(スクレッパー)をを備える装置構成に想到した。そして、試作と実験を経て上記各課題が解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0021】
〔1〕 貝類等の垂下養殖に用いられる浮き球すなわちフロートに付着した付着物を除去するためのフロート付着物除去構造であって、フロート上に対極をなして設けられている二個の耳部にそれぞれ係止される二個のフロート軸架手段と、該フロート軸架手段を回転させる回転駆動手段と、フロート表面に付着物除去用の刃すなわちスクレッパーを押し当てて付着物を掻き取り除去するためのスクレッパー部とを備えてなり、該スクレッパー部は、該スクレッパーと、該スクレッパーの位置を制御するための制御部とからなることを特徴とする、フロート付着物除去構造。
〔2〕 前記制御部は、フロート表面に対しての前記スクレッパーの進退を調節可能とするよう形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフロート付着物除去構造。
〔3〕 前記制御部は、前記スクレッパーに連設していてこれを後方から位置制御するための操縦ハンドルと、該操縦ハンドルまたは該スクレッパーを支持する支持アームとからなり、該支持アームはフロートの両耳部間に亘って回動し得るよう前記両フロート軸架手段の中間位置に軸心をもって設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載のフロート付着物除去構造。
〔4〕 前記操縦ハンドルは前記支持アームの端部に遊びのある状態で貫装されていることを特徴とする、〔3〕に記載のフロート付着物除去構造。
【0022】
〔5〕 前記操縦ハンドルが貫装される前記支持アームの端部は、該支持アーム本体に枢設されたガイド部材であることを特徴とする、〔4〕に記載のフロート付着物除去構造。
〔6〕 前記フロート軸架手段はフロートの耳部係止用のフックを前端に有するフロート軸架杆体であり、該フロート軸架杆体の一方は前記回転駆動手段により回転駆動され、他方はフロート軸架状態を保持するための軸架固定手段を有することを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載のフロート付着物除去構造。
〔7〕 前記軸架固定手段は、前記フロート軸架杆体に対して後端方向への牽引作用を行う牽引体と、該牽引体の姿勢固定を行う規制ユニットとからなり、該牽引体は固定された下端を支点として揺動する杆体であり、該牽引体には後記摺動杆体を挿通せしめて該牽引体―摺動杆体間の相対的な摺動を規制するための規制孔が備えられており、該規制ユニットは、該規制孔に挿通する一端部が固定された摺動杆体を備えてなることを特徴とする、〔6〕に記載のフロート付着物除去構造。
〔8〕 前記牽引体を牽引状態とした場合に、前記規制孔とこれに挿通している前記摺動杆体とが相互に係止する相互係止状態となるよう形成されていることを特徴とする、〔7〕に記載のフロート付着物除去構造。
【0023】
〔9〕 前記摺動杆体が、前記規制孔内において斜めに挿通し、かつ該規制孔の両開口端の縁部に当接する状態により、前記相互係止状態が形成されることを特徴とする、〔8〕に記載のフロート付着物除去構造。
〔10〕 前記規制ユニットには前記牽引体の姿勢固定を解除する解除手段が設けられていることを特徴とする、〔7〕、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載のフロート付着物除去構造。
〔11〕 前記解除手段は、前記摺動杆体と前記規制孔との間における相互係止状態を解除することを特徴とする、請求項10に記載のフロート付着物除去構造。
〔12〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕のいずれかに記載のフロート付着物除去構造が、これを取り付けるための支持体に取り付けられてなることを特徴とする、フロート掃除機。
〔13〕 陸上または船上にて使用されることを特徴とする、〔12〕に記載のフロート掃除機。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフロート付着物除去構造、およびフロート掃除機は上述のように構成されるため、これらによれば、貝類等の垂下養殖に用いられるフロートに付着した付着物の処理において、取扱い・運転をより簡単にでき、作業性をより高めることができ、作業労力負荷をより軽減し、十分な安全性を担保することができる。さらに、処理効率が高く、作業時間も短縮でき、高度に省力化されていて、適用範囲が広いフロート付着物除去構造およびフロート掃除機を提供することができる。
【0025】
上述の通り、従来フロート一個の清掃作業には数分程度を要していたが、本発明によれば、付着した付着物の多寡に関わらず、一個当たり約15秒で作業を完結することができ、極めて迅速である。これにより、作業時間の短縮、労力軽減・疲労軽減、作業の効率化が大いに図られることになった。
【0026】
本発明のフロート付着物除去構造およびフロート掃除機の使用方法は、2個のフックにフロートのロープ取付け用の穴を引っ掛けてフロートを固定するためのロックレバーを引き、電源スイッチを投入してフロートを回転させ、後は付着物除去用のスクレッパーハンドルを自在に操作して回転するフロートの表面に当接するよう当てるのみであり、極めて簡単であり、高齢者や女性であっても、楽に、安全に作業することができる。
【0027】
付着物除去用スクレッパーハンドルはフックとフックの中間に軸心があり、これを中心にレバーハンドル先端部が円弧を描く状態で左右に動き、さらに付着物除去用スクレッパーは中心点に向かい前後に動く。したがってスクレッパーはフロートのサイズにかかわらず表面への密着状態を常に自在に維持することができ、付着物除去作業を実に容易に行うことができる。たとえば、一尺二寸・一尺三寸・一尺四寸といった種々のサイズに適用可能である。また、作業終了後のフロートの開放は、ロックレバーに付いている解放用レバーを軽く押し込むだけの簡単操作である。
【0028】
また、本発明では、フロートに取り付けられているロープを取り外す必要がなく、海から引き揚げてきたままの状態で処理作業に供することができ、作業性が極めてよい。さらには、本フロート掃除機を船上に積載し、フロートを海から引き揚げてすぐに、船上で付着物除去処理に供し、処理終了後すぐに海中に戻すこと可能であり、非常に効率の良い作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図p1】本発明が適用対象とするフロートを示す説明図である。
図1a】本発明フロート付着物除去構造の基本構成を示す概念的説明図である。
図1b図1aに示すフロート付着物除去構造の作用を示す概念的説明図である。
図2】本発明フロート付着物除去構造の別の基本構成を示す概念的説明図である。
図3】本発明フロート付着物除去構造実施例の概観構成を示す説明図である。
図4図3に示す実施例においてフロートを外して構造全体を示した写真図である。
図5】実施例のスクレッパー部を主とした要部写真図である(フロートへの未接触状態)。
図6】実施例のスクレッパー部を主とした要部写真図である(接触状態)。
図7】実施例のスクレッパー部のみを示す写真図である。
図8】実施例の軸架固定手段を主とした要部写真図である(フロート軸架杆体固定前)。
図9】実施例の軸架固定手段を主とした要部写真図である(フロート軸架杆体固定後)。
図10図8等の軸架固定手段自体の構成を示す写真図である。
図11】相互係止状態形成機構の例を示す模式図である(係止前)。
図12】相互係止状態形成機構の例を示す模式図である(係止後)。
図13】実施例に係る解除手段の作用を示す模式図である(作用開始かつ解除前)。
図14】実施例に係る解除手段の作用を示す模式図である(解除後)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図p1は、本発明が適用対象とするフロートを示す説明図である。また、
図1aは、本発明フロート付着物除去構造の基本構成を示す概念的説明図、図1bは、図1aに示すフロート付着物除去構造の作用を示す概念的説明図である。図1aに示すように本フロート付着物除去構造10は、貝類等の垂下養殖に用いられる浮き球すなわちフロートFに付着した付着物を除去するための構造であって、フロートF上に対極をなして設けられている二個の耳部L、Rにそれぞれ係止される二個のフロート軸架手段2、2と、フロート軸架手段2を回転させる回転駆動手段3と、フロートF表面に付着物除去用の刃すなわちスクレッパー5を押し当てて付着物を掻き取り除去するためのスクレッパー部4とを備えてなり、スクレッパー部4は、スクレッパー5と、スクレッパー5の位置を制御するための制御部6とからなることを、主たる構成とする。
【0031】
なお、図p1に示すように、フロートFにはロープSが取り付けられている。従来技術では、このロープSを一旦取り外してフロートFのみの状態として処理に供し、処理後はまた取付けるという過程を要するものであった。しかし本発明では、ロープSが取付けられたままの状態、つまり海中から引き揚げたままの状態で付着物除去処理に供することができ、また、処理が終わった後もそのまま海中投入過程へと移行することができ、前後の脱着過程を要しない。また、追って詳述するが本発明フロート付着物除去構造10が適用可能なフロートFのサイズは広い。
【0032】
かかる構成の本フロート付着物除去構造10は、次のように使われる。まず、二個のフロート軸架手段2、2にフロートF上の二個の耳部L、Rがそれぞれ係止され、これによってフロートFはその後の回転を受けた場合であってもフロート軸架手段2、2から離脱すること無く中空に安定して保持され、付着物除去処理を受けるための準備が整う。ついで回転駆動手段3が運転され、これによってフロート軸架手段2の回転Gが開始され、フロート軸架手段2に軸架されたフロートFの回転が開始する。なお、フロート軸架手段2、2のうち回転駆動手段3と接続して駆動されるのは一方のみの構成とすることができる。この場合他方のフロート軸架手段2は、フロート軸架手段支持部2Tにより支持され、かつ駆動されるフロート軸架手段2の回転により従動回転する。
【0033】
フロートFが、フロート軸架手段2-2間を結ぶ軸周りに回転している状態で、スクレッパー部4を構成する制御部6による制御を受けてスクレッパー5の位置が制御され、スクレッパー5の作用部すなわち付着物除去用の刃の刃先が回転するフロートF表面に押し当てられ、それによってフロートF表面上の付着物はスクレッパー5により掻き取り除去される。制御部6は、付着物除去処理作業に当たる作業者の手によって、簡単に、フロートF方向への進退Xや左右への揺動Yが操作できるよう構成されており、作業者は、回転するフロートFにおける付着物付着の状況を見つつ、その掻き取り除去のための位置制御を自在に行うことができる。つまり、フロートFに対するスクレッパー5の位置を適切に保持しているだけでよい、という簡単な操作によって、付着物除去処理を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0034】
本発明フロート付着物除去構造10は、図1a等により説明した上記構成が備わっていることが要件であるが、ここで、各構成要素の全てが一体化されていることが必須条件ではない。つまり、たとえば回転駆動手段3ならびにこれに接続したフロート軸架手段2と、スクレッパー部4とは別体の構成であっても、本発明の範囲内である。一方、図1a等により説明した各要素が一体化されている形態も、もちろん本発明の範囲内であり、以下はその形態を主として説明する。
【0035】
図2は、本発明フロート付着物除去構造の別の基本構成を示す概念的説明図である。図示するように本フロート付着物除去構造10は、貝類等の垂下養殖に用いられる浮き球すなわちフロートFに付着した付着物を除去するための構造であって、フロートF上に対極をなして設けられている二個の耳部L、Rにそれぞれ係止される二個のフロート軸架手段2、2と、フロート軸架手段2を回転させる回転駆動手段3と、フロートF表面に付着物除去用の刃すなわちスクレッパー5を押し当てて付着物を掻き取り除去するためのスクレッパー部4とを備えてなり、スクレッパー部4は、スクレッパー5と、スクレッパー5の位置を制御するための制御部6とからなるが、フロート軸架手段2、2、回転駆動手段3、およびスクレッパー部4が基体1上に据え付けられて一体化している構成とすることができる。
【0036】
基体1によって一体化されている構成の本フロート付着物除去構造10は、図1bを用いて説明した作用・機能を全て備える他、一体化されていることによる取り扱い性・作業性の良さをも備える。すなわち、一体化していることで保管・管理対象物は一つであり、保管等に便利である。また、移動にも便利であり、たとえば使用場所を陸上-船上間で移動する際にも行いやすい。なお、基体1の具体的構造は限定されず、上記各要素を一体化するものである限り、適宜自由に設計することができる。
【0037】
図3は、本発明フロート付着物除去構造実施例の概観構成を示す説明図であり、回転駆動手段33を右にして前方やや上方から俯瞰した図である。また図4は、図3に示す実施例においてフロートを外して構造全体を示した写真図である。これらに示すように本フロート付着物除去構造310は、フロートFに付着した付着物を除去するための構造であって、フロートF上に対極をなして設けられている二個の耳部L、Rにそれぞれ係止される二個のフロート軸架手段32、32と、フロート軸架手段32を回転させる回転駆動手段33と、フロートF表面に付着物除去用の刃すなわちスクレッパー35を押し当てて付着物を掻き取り除去するためのスクレッパー部34とを備えてなり、スクレッパー部34は、スクレッパー35と、スクレッパー35の位置を制御するための制御部36とからなる構成を有する。フロートFにはロープSが取り付けられており、本フロート付着物除去構造310はこのままの状態で付着物除去処理に供することができる。
【0038】
これらに図示するように本実施例フロート付着物除去構造310では、二つのフロート軸架手段32、32はフロートFの耳部L、Rを結ぶ直線が軸となった水平の姿勢で中空に保持されるようフロートFを軸架する。したがって、フロートFはこの軸回りに回転するため、その回転面は鉛直方向である。スクレッパー35は制御部36からの位置・姿勢制御を受けて回転するフロートF表面にあてがわれ、表面の付着物を掻き取る作用を及ぼし、付着物は除去される。本実施例310は、基体31上に二つのフロート軸架手段32、32、回転駆動手段33、スクレッパー部34が取付けられて一体化されている構成である。
【0039】
図5、6は、実施例のスクレッパー部を主とした要部写真図であり、前者はフロートへの未接触状態、後者は接触状態についてそれぞれ別の視角からの図である。また図7は、スクレッパー部のみを示す写真図である。これらに示すように本発明フロート付着物除去構造310の制御部36は、フロートF表面に対してのスクレッパー35の進退を調節可能とするように形成されていることを、特徴的な構成とする。
【0040】
すなわち本フロート付着物除去構造310の制御部36は、フロートF表面に対してのスクレッパー35の進退、つまりフロートF表面とスクレッパー35の作用部との間の距離を自在に調節して、非接触状態(図5)―接触状態(図6)相互間の制御を行うことができる。フロートF表面における付着物の付着状態は一様・均一ではなく、不規則な高低差を有する状態を呈する。制御部36の作用により、かかる高低差に対して常に適切にスクレッパー35の作用部を当てることができ、それにより迅速に処理を行うことができ、高い除去効率を得ることができる。
【0041】
図7を初めとする各図に示されるように、本実施例310の制御部36は、スクレッパー35に連設していてこれを後方から位置制御するための操縦ハンドル36Hと、操縦ハンドル36Hまたはスクレッパー35を支持する支持アーム36Aとからなる構成とすることができる。また支持アーム36Aは、フロートFの両耳部L、R間に亘って回動し得るよう、両フロート軸架手段32、32の中間位置に軸心すなわち回転軸(揺動軸)6Cをもって設けられている構成とすることができる。
【0042】
ここで「中間位置」とは、必ずしも両フロート軸架手段32、32間の中点位置に限定されない。しかしながら、中空に軸架され保持されるフロートFの略直下位置であること、より望ましくは真下位置であることは、支持アーム36AをフロートFの略半周に亘ってこれに対してより偏りなく揺動させ、それによって、スクレッパー35をより無理なくフロートF表面に対して進退させる上で推奨される。本実施例は、真下位置に軸心6Cを設定して支持アーム36Aが基体31に取付けられている構成である。
【0043】
かかる構成の本実施例310の制御部36では、支持アーム36Aによって、操縦ハンドル36Hまたはスクレッパー35が支持された状態で、操縦ハンドル36Hによって、これが連設しているスクレッパー35に対する後方からの位置制御がなされる。操縦ハンドル36Hは、付着物除去処理に当たる作業者によって把持され、操縦される。
【0044】
また、両フロート軸架手段32、32の中間位置に軸心6Cをもって設けられている支持アーム36Aは、中空に軸架、保持されたフロートFの両耳部L、R間に亘って回動(揺動)することができ、したがって支持アーム36Aに支持されている操縦ハンドル36Hまたはスクレッパー35は、フロートFの両耳部L、R間に亘って回動(揺動)できる。これによりスクレッパー35は、フロートFの略半周、略180°範囲に亘ってフロートF表面のいずれの角度位置にでもあてがうことができ、操縦ハンドル36Hを把持して作業に当たる作業者は、自由自在に、思い通りにスクレッパー35の水平位置を制御することができる。
【0045】
また、図7に示すように操縦ハンドル36Hは、支持アーム36Aの端部に遊びのある状態で貫装されている構成とすることができる。この「遊びのある状態」は適宜に設計可能であるが、上下方向、さらには左右方向のいずれにも遊びがあってガタのある状態として形成されていることが望ましい。中空に保持されているフロートFは水平の軸回りをいわば経線方向に回転するため、スクレッパー35は一定の高さに保持されることでフロートFの経線方向全周に亘る当接が可能であり、したがって、スクレッパー35の位置を後方から調節・制御する操縦ハンドル36Hは、敢えて上下方向(保持されたフロートFの経線方向)に遊びがなくてもよい。つまり、敢えて俯角や仰角をもってフロートF表面にスクレッパー35の作用部があてがわれるようにすることのできる構成でなくてもよい。
【0046】
しかしながら、上下方向、つまり俯角や仰角をもってフロートF表面にスクレッパー35の作用部をあてがうことのできる遊びがあることは、操縦ハンドル36Hを把持してこれを操作する作業者にとっては、上下方向において動作可能な範囲を広げることができるため、自由自在・思い通りにスクレッパー35の位置・姿勢制御を行う上で、非常に使い勝手がよい。
【0047】
また、左右方向すなわち中空に保持されたフロートFの緯線方向は、略180°範囲で動作可能な支持アーム36Aによって担保される範囲であるため、操縦ハンドル36Hは、敢えて支持アーム36Aの端部に左右方向の遊びのある状態で貫装されている構成としなくてもよい。しかしかかる方向の遊びも、上下方向に遊びのあることが有意義であることと同様、有意義である。つまり、操縦ハンドル36Hを把持してこれを操作する作業者にとっては、左右方向において動作可能な範囲を広げることができ、自由自在・思い通りにスクレッパー35の位置・姿勢制御を行う上で、非常に使い勝手がよい。
【0048】
本実施例310の操縦ハンドル36Hは、この遊び=ガタを、上下方向および左右方向のいずれにも備えた状態で支持アーム36A端部に貫装されている。さらに、上述の通りフロートF表面への進退つまり前後のスライドも可能に形成されているため、操縦ハンドル36Hを把持して操作する作業者は、フロートF表面における付着物付着状況や掻き取り除去状況、回転状況を見ながら、それに合わせて柔らかく、上下・左右・前後どの方向にでも、把持している手を微小に動かすだけで、意図する掻き取り除去処理を進めることができる。
【0049】
なお、操縦ハンドル36Hが貫装される支持アーム36Aの端部は、支持アーム36A本体に枢設されたガイド部材とすることができる。このガイド部材の各内側寸法を、操縦ハンドル36Hの各外側寸法よりも適宜寸法分大きく設計することにより、遊びをもって操縦ハンドル36Hが貫装される状態を形成することができる。
【0050】
前出図3、4に示した通り本実施例310のフロート軸架手段32、32は、フロートFの耳部L、R係止用のフック32K、32Kを前端に有するフロート軸架杆体32B、32Bであり、そして、フロート軸架杆体32B、32Bの一方は回転駆動手段33により回転駆動され、他方はフロート軸架状態を安定的に保持するための軸架固定手段37を有する構成とすることができる。
【0051】
かかる構成により一方のフロート軸架手段32は、そのフロート軸架杆体32Bが接続する回転駆動手段33により回転駆動され、その前端にあるフック32K、他方のフロート軸架手段32の前端にある32Kによって耳部L、Rを係止されて水平に保持されたフロートFを回転させる。
【0052】
他方のフロート軸架手段32は、前端のフック32KによりフロートFの他方の耳部Rを係止し、これによりフロートFを中空に軸架、保持するとともに、フロート軸架杆体32は回転駆動手段33によって生じた回転に従動回転することで、フロートFの回転を担保する。それとともにこの他方のフロート軸架手段32は、そのフロート軸架杆体32Bに備えられた軸架固定手段37により、フロートFが軸架されて安定的に中空に保持されている状態を、フロートF回転中すなわち付着物除去処理中において継続して維持される。このことにつき、別図を用いてさらに説明する。
【0053】
図8、9は、実施例の軸架固定手段を主とした要部写真図であり、前者はフロート軸架杆体固定前、後者は固定後を示す。また図10は、図8等の軸架固定手段自体の構成を示す写真図である。これらに示すように軸架固定手段37は、フロート軸架杆体32Bに対して後端方向への牽引作用を行う牽引体38と、牽引体38の姿勢固定を行う規制ユニット39とからなり、該牽引体38は、固定された下端を支点として揺動する杆体であって、かつ該牽引体38には摺動杆体39Bを挿通せしめて牽引体38―摺動杆体39B間の相対的な摺動を規制するための規制孔38Hが備えられており、規制ユニット39は、規制孔38Hに挿通する一端部が固定された摺動杆体39Bを備えて構成されているものとすることができる。図示する実施例では、摺動杆体39Bの一端部の固定は、止着部材39Sが基体31に固設されることによりなされている。
【0054】
なお図10を初めとする各図に示すように、フロート軸架杆体32は、上記規制孔38Hとは別の孔である軸架杆体貫通孔38Tでもって牽引体38に摺動(スライド)可能に貫装され、かつ牽引体38を挟んで自身の後端側(フック32Kの反対側)に備えられたストッパー32Dによって牽引体38の稼働範囲を規制するように構成されている。ストッパー32Dにはバネなどの弾性手段を用いることとして、牽引体38の稼働範囲、つまりフロートFを係止するフック32Kとの距離範囲をある程度広く確保できる構造であることが望ましい。
【0055】
かかる構成により、軸架固定手段37は次のように作用する。すなわち図9に示すように、牽引体38は、後方(フロートFから遠い方)へ揺動されることによりフロート軸架杆体32Bに対して後端方向への牽引作用を行い、それによって反対側のフロート軸架杆体32との間に軸架されているフロートFを両端方向へ引っ張って、フロートFが弛んで垂下する姿勢を防止し、両フロート軸架手段32、32間を結ぶ軸線上に位置させる。そして規制ユニット39は、フロートFを支持して適切な高さに位置させている牽引体38の姿勢を一時的に固定し、フロートF回転中つまり付着物除去処理がなされている間、フロートFがその中心ならびに回転軸に変動を来すことなく、およびその回転状態に変動を来すことなく、安定した、安全な回転を継続できるようにする。
【0056】
牽引体38の規制孔38Hは、これに挿通されている摺動杆体39Bに対する牽引体38の摺動を、所定の場合には規制するように作用する。一方、規制ユニット39を構成する摺動杆体39Bは、止着部材39Sでの固定など適宜の方法によって端部を固定されていることにより、規制孔38Hへの挿通によって繋がっている牽引体38が揺動する際には、牽引体38を摺動させる(主導杆体39Bの方は動かない)。
【0057】
揺動により後方に引かれて牽引状態となった牽引体38は、規制ユニット39による相互係止状態の形成によって一時的に固定され、これによってフロートFの保持が完了する。すなわち、牽引体38を牽引状態にすると、規制孔38Hとこれに挿通している摺動杆体39Bとが相互に係止して「相互係止状態」が形成され、フロートが安定的に保持される。いわば、サイドブレーキを引くことによって機械的に自動車の位置固定をなさしめるように、牽引体38を引く動作によってフロート軸架杆体32の位置を機械的に固定させることができる。
【0058】
なお、以上説明した軸架固定手段37の特に規制孔38H、および軸架杆体貫通孔38Tについては、それぞれに挿通される摺動杆体39B、および軸架杆体32が所定の遊び=ガタをもって挿通される構成とする。それによって動作できる範囲(稼働範囲)を広げ、上述した各作用をより円滑になさしめることができる。規制孔38H、軸架杆体貫通孔38Tともに牽引体38に設けられており、牽引体38の所定角度範囲での揺動を可能ならしめるためには、いずれの孔構造も摺動杆体39Bや軸架杆体32との間に間隙のある状態が形成されている必要がある。
【0059】
上述した、牽引体38を固定するための「相互係止状態」形成例について述べる。
図11、12は、相互係止状態形成機構の例を示す模式図であり、前者は係止前、後者は係止後を示す。これらに示すように本実施例における上記相互係止状態は、摺動杆体39Bが、前記規制孔38H内において斜めに挿通し、かつ該規制孔38Hの両開口端の縁部38Ha、38Hbに当接することによって形成される。図11に示すように牽引体38の後方への揺動前は、牽引体38の規制孔38Hに対して摺動杆体39Bは接触しておらず、したがって牽引体38による作用は摺動杆体39Bに及ばず、したがってフロート軸架杆体にも及ばないため、フロート軸架杆体に対する固定作用は生じていない。
【0060】
図12に示すように牽引体38が後方へといっぱいに揺動すると(引き切ると)、規制孔38Hに対する摺動杆体39Bの接触が生じる。すなわち、規制孔38Hの両開口端の縁部38Ha、38Hbに摺動杆体39Bが当接する。この時、各縁部38Ha、38Hbは摺動杆体39Bをその対向する側方から押圧する。図では、上下方向の各矢印によりその押圧を示す。この反対方向から摺動杆体39Bを挟み込む作用により、摺動杆体39Bの前方(フロート方向)への運動は規制され、摺動杆体39Bはこの位置で固定させられ、それによりフロート軸架杆体の位置も固定される。
【0061】
規制孔38Hは前後の両縁部38Ha、38Hbにより摺動杆体39Bを斜めに挟み込むようにこれに当接することによって、摺動杆体39B上を牽引体38がそれ以上後方に摺動(揺動)することを規制、固定し、それによって同じく牽引体38に挿通しているフロート軸架杆体32Bの前方(フロート方向)への移動を規制する構造である。この機構は、日本の伝統家屋が有する囲炉裏に設けられる自在鉤において、それを構成する横木が、鈎棒の昇降摺動を規制したり解除したりできる構造と原理的に共通する点がある。
【0062】
なお、「摺動杆体」と称しているが、それ自体が摺動(スライド)するのではなく、これを挿通せしめている牽引体の方が動く。この動きは揺動であり、厳密には摺動ではないが、動作においてはあたかも規制孔を通して摺動杆体と牽引体の間において摺動が生じているかのような外観を呈するため、本願明細書では「摺動杆体」、「摺動」と称していることを付記する。
【0063】
前出図8等に示すように本実施例310は、規制ユニット39に牽引体38の姿勢固定を解除するための解除手段39Fが備えられている構成とすることができる。解除手段39Fは、摺動杆体39Bと規制孔38Hとの間における相互係止状態を解除する作用を有するものであればよい。解除手段39Fは、フロートFの付着物除去処理が終了してこれを取り外す際に用いられる。また、フロートFをフロート軸架手段32、32に取付ける際にも用いられる。
【0064】
図8~10に示した実施例310では、規制ユニット39を構成する一部として解除手段39Fが備えられている。解除手段39Fは、摺動杆体39B上を摺動可能に取付けられた解除レバー39Lと、解除レバー39Lの揺動の支点となる支点部39Pとから構成され、支点部39Pは牽引体38上に固定されている。解除レバー39Lは、摺動杆体取付け部位とこれに続く操作部位とからなり、両部位が一体となった鉤状の形態である。また、摺動杆体取付け部位が取付けられる摺動杆体39B上には、牽引体38との間に弾性手段によるストッパーを設けて、解除レバー39Lの動作を規制する構成とすることができる。
【0065】
図13、14は、実施例に係る解除手段の作用を示す模式図であり、前者は作用開始かつ解除前、後者は解除時(解除後)を示す。上述構成により解除手段39Fは次のように作用する。解除レバー39Lが下方に押圧されると(図13)、解除レバー39Lの操作部位は支点部39Pが支点となって下方へ揺動し、これにより解除レバー39Lの摺動杆体取付け部位は逆に上方へと揺動する。これに伴って、解除レバー39Lが取付けられている摺動杆体39Bも上方へと揺動する(図14)。そうすると、図12にて示した摺動杆体39Bと牽引体38の規制孔38Hとの間の相互係止状態が解除され、牽引体38は後方へ引っ張られての固定状態が解除されるため、フロート軸架杆体32もその位置固定を解除される。
【0066】
以上説明したいずれかの構成を有するyフロート付着物除去構造が、これを取り付けるための支持体(基体)に取り付けられてなるフロート掃除機もまた、本発明の範囲内である。フロート掃除機は、陸上または船上にて、あるいはその双方にて使用することができる。特に船上で使用可能なフロート掃除機の場合、海中から引き揚げたフロートを、即その場で付着物除去処理に供し、勝利終了後はまたすぐに海中へ戻すという使用方法も可能であり、極めて高い作業効率を提供することができる。
【0067】
なお、これまで述べた作用効果と重複する点もあるが、上述した各先行技術に対する本実施例310の優位性について、以下の通り付記する。
文献1の問題点その1との比較における優位性
フロートの装着作業においては、本フロート掃除機(以下、「装置」)中央部に乗せて固定用フックに耳部の穴を差し込むだけであり、さほどの力を必要としない。、女性など非力な者であっても、フロートを持ち上げることができれば問題ない。また、取り外しも解除手段=レバーのワンプッシュ動作で、実に簡単に行える。
【0068】
文献1の問題点その2との比較における優位性
フロート装着の際のフロート位置固定は、両フックによって両サイドに引っ張る方式であり、一方のフロート軸架手段に備えられている牽引体=ハンドルバーを軽く引くだけで、任意の位置で自動固定が可能である。フロートサイズの大小に関わらず、対応可能である。
【0069】
文献1の問題点その3との比較における優位性
フロートにロープが付いたままでも、安全な作業が可能である。フロートが本装置に装着されて回転が始まると、ロープは瞬時にフックに巻き付き、フロート・ロープ・フックが同一の回転を行う。いわばロープがコンパクトに収納されたような状態で回転するため、ロープが付着物除去用スクレッパーに絡みついたり、装置周囲で振り回されるようなことがない。
【0070】
文献1の問題点その4との比較における優位性
フロート表面に軽く押し当てられている付着物除去用スクレッパーが、前後方向に自由自在に動き、フロートの大小に関係なく刃部を密着させることができるため、効率よく付着物を除去することができる。
【0071】
文献2の問題点その1との比較における優位性
本装置では、付着物除去処理作業を行うに際して、相当な重量を有するものはおろか、如何なる装置構成部品(要素)であっても、これを人力によって上下動させるような過程を全く要しない。ただフロートをフックに掛けて保持し、牽引体=ハンドルバーを軽く引き、回転駆動のスイッチを投入するのみであり、極めて簡単な操作・作業である。
【0072】
文献2の問題点その2、その3との比較における優位性
どれほど大量に付着物が付いているフロートであっても、フロートの耳部をフックに軽く押し込むことで装着でき、小さなピンを扱うような細かな作業は一切必要が無い。もちろん、耳部の付着物を事前に除去しておくという、機械化の目的にそぐわないような過程も全く必要無い。
【0073】
文献2の問題点その4、その5との比較における優位性
2個の耳部の双方を同一軸線上で両サイドに強く引いてフロートを保持するため、角度付き受け台や滑合部を備える必要が無い。そして、フロートの大きさが変わっても、また付着物の付着によって外周寸法が変わっていても、回転により芯振れを起こすことがなく、作業しやすいとともに、安全である。
【0074】
文献2の問題点その6、7との比較における優位性
フロートのロープはフックに巻き付いて、フック・フロート・ロープが一体となって回転するため、ロープが振り回されたり暴れることが一切生じない。したがって、安全な作業が担保される。
【0075】
文献3の問題点その1との比較における優位性
両サイドの耳部をフックに掛けて引っ張って固定しているため、作業中にフロートに触れることがなく、安全に作業することができる。実施例で用いたスクレッパー(刃部)は幅20mmであるが、付着物が多い場合にスクレッパーをフロート表面に押し当てる力が強過ぎると、回転駆動手段(モーター)が停止する。つまり、力の入れ具合によってはわずか20mmのスクレッパー一枚であっても停止するほどの力がかかるのであり、文献3開示技術のような複数枚の刃部を押し当てる構成は、安全性の点でも実用上の課題があると考えられる。
【0076】
文献3の問題点その2との比較における優位性
スクレッパー(刃部)がフロートの外周と同じく円弧を描く方向に回転することと、スクレッパーが前後方向にスライドすることで、サイズの違うフロートでも何らの調整や部品の交換を必要とせずに、全ての作業を完了することができる。
【0077】
文献3の問題点その3との比較における優位性
フロートには多種多様の形状やサイズがあるが、本装置では、形状・サイズの如何に関わらず、耳部以外の全ての付着物の除去が可能である。フロートが回転して付着物除去作業中に誤って耳部にスクレッパーが当たった場合には、回転駆動手段(モーター)の回転が瞬時に逆回転をし、スクレッパーにかかっていた力が開放される。このようにして、余分な力がかからないように設計されており、機械の損傷と人的被害が発生しない安全な装置である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のフロート付着物除去構造、およびフロート掃除機によれば、貝類等の垂下養殖に用いられるフロートに付着した付着物の処理において、取扱い・運転をより簡単にでき、作業性をより高めることができ、作業労力負荷をより軽減し、十分な安全性を担保することができる。さらに、処理効率が高く、作業時間も短縮でき、高度に省力化されていて、適用範囲が広いフロート付着物除去構造およびフロート掃除機を提供することができる。したがって、貝類養殖分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0079】
1、31…基体(支持体)
2、32…フロート軸架手段
2T、32T…フロート軸架手段支持部
3、33…回転駆動手段
4、34…スクレッパー部
5、35…スクレッパー
6、36…制御部
10、310…フロート付着物除去構造
32B…フロート軸架杆体
32D…ストッパー
32K…フロート耳部係止用のフック
36A…支持アーム
36C…軸心(支持アームの回転軸(揺動軸))
36H…操縦ハンドル
37…軸架固定手段
38…牽引体
38H…規制孔
38Ha、38Hb…規制孔の縁部
38T…軸架杆体貫通孔
39…規制ユニット
39B…摺動杆体
39D…ストッパー(摺動杆体の)
39F…解除手段
39L…解除レバー
39P…支点部
39S…止着部材
F…フロート
L、R…耳部
S…ロープ
G…回転運動
X…進退運動
Y…揺動
図p1
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14