(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010773
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】抽出バッグ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20230113BHJP
A47J 31/18 20060101ALI20230113BHJP
B65D 85/808 20060101ALI20230113BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A47J31/06 105
A47J31/18
B65D85/808
B65D77/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179436
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2022514888の分割
【原出願日】2020-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 充範
(57)【要約】
【課題】袋本体を湯に浸漬させることにより抽出液を得るティーバッグタイプの抽出バッグにおいて、十分な濃さの抽出液を簡便に得られるようにする。
【解決手段】 抽出バッグ1Aが、通水濾過性シートから形成された袋本体3、袋本体3の外表面に設けられた薄板状部材10、袋本体3内に充填された抽出材料Mを有する。袋本体3は対向する2面3x、3y、及び該2面の縁辺となる上辺3aを有し、薄板状部材10は前記2面の片面3xに袋本体上下方向に伸びた把持部11を有する。把持部11の上部が前記片面3xの上部に固定され、把持部11の下部が該片面3xから引き起こし可能である。把持部11には、該把持部11を2つ折り可能とする袋本体上下方向の折れ線L1が、把持部11の幅方向の中央部で該把持部11の上端から下端にかけて形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水濾過性シートから形成された袋本体、袋本体の外表面に設けられた薄板状部材、袋本体内に充填された抽出材料を有する抽出バッグであって、
袋本体は対向する2面、及び該2面の縁辺となる上辺を有し、
薄板状部材は前記2面の片面に袋本体上下方向に伸びた把持部を有し、
把持部の上部が前記片面の上部に固定され、把持部の下部が該片面から引き起こし可能であり、
把持部には、該把持部を2つ折り可能とし、かつ袋本体の上部を2つ折り可能とする袋本体上下方向の折れ線が、該把持部の幅方向の中央部で該把持部の上端から下端にかけて形成されている抽出バッグ。
【請求項2】
把持部に、引き起こしの軸となる袋本体幅方向の折れ線が形成されていない請求項1の抽出バッグ。
【請求項3】
把持部が前記片面の上辺近傍から底辺近傍まで伸びている請求項1又は2記載の抽出バッグ。
【請求項4】
把持部の前記上辺に沿った部分が前記片面と貼着している請求項1~3のいずれかに記載の抽出バッグ。
【請求項5】
把持部が前記片面の上辺に沿った幅広部分を有する請求項1~4のいずれかに記載の抽出バッグ。
【請求項6】
把持部の上辺が袋本体の上辺から前記片面の外に突出している請求項1~5のいずれかに記載の抽出バッグ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の抽出バッグにおいて袋本体に抽出材料が充填されておらず、袋本体に抽出材料充填用の開口部が設けられている手詰め用抽出バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水濾過性シート製の袋本体に充填された抽出材料を湯に浸漬して抽出液を得る抽出バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの飲料を手軽にいれるために、吊し糸付きの通水性の袋本体にこれらの茶葉が充填されたティーバッグが広く用いられている。コーヒーについても、コーヒー粉に注湯するドリップタイプの抽出バッグの他に、コーヒー粉が充填された袋本体を湯に浸漬させるティーバッグタイプのコーヒー抽出バッグが使用されている。しかしながら、ティーバッグタイプのコーヒー抽出バッグを湯に浸漬しようとしても、コーヒー粉に二酸化炭素が含まれるためにコーヒー粉を充填した袋本体が湯中で浮き上がり易く、コーヒーを十分に抽出することが難しい。そこで、薄板状部材で形成されたフック片を、コーヒー粉を充填する袋本体の片面に取り付けておき、コーヒー粉が充填された袋本体が湯中で浮き上がらないように、フック片をカップの縁に掛止できるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、薄板状部材を折り曲げてパンタグラフのように伸縮する構造とした把持部を、コーヒー粉が充填された袋本体に取り付け、袋本体が浸漬している湯中で該把持部を上下させることによりコーヒーの抽出を促進させることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3140084号公報
【特許文献2】特開2006―273379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コーヒー粉が充填された袋本体を湯に浸漬させる従来のコーヒー抽出バッグでは、薄板状部材で形成されたフック片又は把持部を把持し、浮き上がろうとする袋本体を強制的に湯中に沈めようとしても薄板状部材が折れ曲がったり撓んだりして袋本体を湯中に沈めることは困難である。コーヒーの抽出を促進させるために、フック片又は把持部を上下させても、袋本体は湯中で把持部と同様には上下しない。また、一時的に袋本体が湯中に沈んでも、袋本体に充填されたコーヒー粉全体の表層だけが湯で膨潤し、コーヒー粉全体の内部には湯が浸透しにくい。そのため、袋本体を湯に浸漬させるティーバッグタイプの抽出バッグでは、ドリップタイプと同程度の濃さのコーヒー液をドリップタイプと同程度以下の時間で得ることが難しくなっている。
【0006】
これに対し、本発明は、コーヒー粉等の抽出材料が充填されている袋本体を湯に浸漬させることにより抽出液を得るティーバッグタイプの抽出バッグであって、袋本体を湯中に沈めたり、湯中で上下させたりすることが容易であり、また、抽出バッグから手を離しても袋本体が湯中に浸漬した状態を安定に保持することができ、十分な濃さの抽出液を簡便に得られるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、抽出材料が充填された袋本体に薄板状部材が取り付けられているティーバッグタイプの抽出バッグにおいて、袋本体の一つの面に袋本体上下方向に伸びた薄板状部材を袋本体の上部で固定し、下部は袋本体から引き起こし可能となるように設け、引き起こし時に把持部が袋本体上下方向の折れ線により把持部の上端から下端まで2つ折りされるようにすると、2つ折りにした把持部の長手方向を袋本体上下方向にまで立てることが容易となることを想到した。また、こうして2つ折りにした把持部は袋本体上部から伸びたリジッドな棒状となり、棒状となった把持部を把持することで袋本体を湯中に沈めたり上下させたりすることができること、また、この把持部の2つ折りにより袋本体内部にスペースが形成され、袋本体内部に湯が入り易くなり、袋本体内の抽出材料の表面だけでなく内部にも湯が浸透しやすくなり、抽出が促進されること、さらに把持部から手を離しても把持部はカップの内壁に支持されて湯から突出した状態を維持することができ、これにより抽出後に把持部を把持して抽出バッグをカップから取り出すことも容易になることを想到し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、通水濾過性シートから形成された袋本体、袋本体の外表面に設けられた薄板状部材、袋本体内に充填された抽出材料を有する抽出バッグであって、
袋本体は対向する2面、及び該2面の縁辺となる上辺を有し、
薄板状部材は前記2面の片面に袋本体上下方向に伸びた把持部を有し、
把持部の上部が前記片面の上部に固定され、把持部の下部が該片面から引き起こし可能であり、
把持部には、該把持部を2つ折り可能とする袋本体上下方向の折れ線が、該把持部の幅方向の中央部で該把持部の上端から下端にかけて形成されている抽出バッグを提供する。
【0009】
また本発明は、上述の抽出バッグにおいて袋本体に抽出材料が充填されておらず、袋本体に抽出材料充填用の開口部が設けられている手詰め用抽出バッグを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抽出材料が充填された袋本体の一つの面に設けられた薄板状部材からなる把持部の下部を袋本体から引き起こし、そこに形成されている袋本体上下方向の折れ線で折ると把持部はその上端から下端までが容易に2つ折りになり、かつ2つ折りになった把持部を袋本体上下方向にまで容易に引き起こすことができる。この2つ折りにした把持部は袋本体の上部に固定されたリジッドな棒状となり、袋本体は上部のみが2つ折りになって袋本体内にスペースが形成される。したがって、棒状にした把持部を把持することで袋本体をカップ内の湯に沈めたり上下させたりすることが可能となる。また、袋本体内にはスペースが形成されていることにより、袋本体をカップ内の湯に沈めたり湯中で上下させたりすると、袋本体内にも容易に湯が通り、袋本体に充填されている抽出材料の表面だけでなく内部にも湯が浸透する。よって、抽出が促進されて抽出速度が速まり、ドリップタイプの抽出方式と同等以上の濃さの抽出液を短時間で簡便に得ることができる。
【0011】
また、カップ内で把持部から手を離しても把持部がカップ内壁で支持され、把持部が湯から突出した状態を維持させることができる。したがって、袋本体を湯に沈めた状態でその場から一旦離れても抽出を進行させることができ、再度把持部を把持して袋本体を湯中で上下させることもでき、抽出後には袋本体を湯から引き上げることも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、実施例の抽出バッグ1Aの把持部を引き起こしている状態の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例の抽出バッグ1Aの把持部を引き起こし、2つ折りにした状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、把持部が引き起こされ、2つ折りにされた実施例の抽出バッグ1Aで抽出をしている状態の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例の抽出バッグ1Aをカップ内に放置して抽出をしている状態の斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例の抽出バッグ1Bの平面図である。
【
図7】
図7は、実施例の抽出バッグ1Cの平面図である。
【
図8】
図8は、抽出バッグ製造用シートの平面図である。
【
図9】
図9は、抽出バッグの製造方法の説明図である。
【
図11】
図11は、実施例の抽出バッグ1Dをカップ内に放置して抽出をしている状態の斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例の抽出バッグ1Dをトールタイプのカップ内に放置して抽出をしている状態の斜視図である。
【
図15】
図15は、実施例の抽出バッグ1Fの把持部を引き起こし、2つ折りにした状態の斜視図である。
【
図16】
図16は、把持部が引き起こされ、2つ折りにされた実施例の抽出バッグ1Fで抽出を行っている状態の斜視図である。
【
図18】
図18は、実施例の抽出バッグ1Gをカップ内に放置して抽出をしている状態の斜視図である。
【
図22】
図22は、実施例の抽出バッグ1Jをカップ内に放置して抽出をしている状態の斜視図である。
【
図23】
図23には、実施例の手詰め用抽出バッグ30の斜視図である。
【
図24】
図24は、実施例の手詰め用抽出バッグ30の開口部を閉じた状態の斜視図である。
【
図26】
図26は、比較例の抽出バッグ1xの把持部を引き起こしている状態の斜視図である。
【
図28】
図28は、比較例の抽出バッグ1yの把持部を引き起こしている状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0014】
(全体構成)
図1Aは、本発明の一実施例の抽出バッグ1Aであって、薄板状部材の把持部を引き起こしていない状態の平面図であり、
図1Bは、その背面図である。
図1Aにおいて、斜め線で塗り潰した領域は薄板状部材10と袋本体3との貼着領域Aを表し、ドットで塗り潰した領域は袋本体3の表面を表している。なお、本発明において貼着領域Aは図示した態様に限られない。
【0015】
この抽出バッグ1Aは、通水濾過性シートで形成された袋本体3、袋本体3に設けられた薄板状部材10、袋本体3内に充填された抽出材料を有する。本発明において、袋本体3は対向する2面3x、3yと該2面3x、3yの縁辺となる上辺3aを有しており、本実施例では袋本体3は平袋となっている。薄板状部材10は、袋本体の対向する2面の片面3xに設けられており(
図1A)、その反対面3yには設けられていない(
図1B)。
【0016】
薄板状部材10は袋本体3の一つの面3xに袋本体上下方向に伸びた短冊形の把持部11を有する。この薄板状部材10は、袋本体3の上辺3a近傍から底辺3b近傍に至る長さを有している。把持部11は、袋本体3の上辺3aに沿った部分が幅広に突出しており、その幅広部分も含めて袋本体の上辺3aに沿った帯状領域が把持部11と袋本体3との貼着領域Aとなり、この貼着領域Aによって把持部11が袋本体の面3xに固定されている。一方、把持部11の下部、より具体的には、貼着領域Aよりも袋本体底辺側の部分は袋本体3と貼着されていない。したがって、
図2に示すように、把持部11は袋本体3から引き起こし可能である。
【0017】
また、把持部11は、その上辺11aが袋本体3の上辺3aから袋本体の面3xの外に突出するように設けられている。
【0018】
なお、本発明において把持部の上辺11aは袋本体の上辺3aと重なっていても良く、
図6に示す抽出バッグ1Bのように、把持部の上辺11aが袋本体の上辺3aよりも袋本体底辺側に位置してもよい。また、袋本体3の上辺3aに沿った把持部11の部分を幅広に形成するにあたり、
図7に示す抽出バッグ1Cのように、把持部の上辺11aが把持部の下辺11bに対してなだらかに幅広になっていてもよい。
【0019】
また、
図1Aに示したように、把持部の上辺11aが袋本体の上辺3aよりも突出している場合に、把持部11の袋本体底辺側の下辺11bは、袋本体の面3x内に収まるように形成されていることが好ましい。これにより、後述するように抽出バッグ1Aを充填包装機にかけて工業的に製造する場合に縦シールをすることが容易となる。
【0020】
把持部11には、該把持部11を2つ折り可能とする袋本体上下方向の折れ線L1が形成されている。この折れ線L1は把持部11の幅方向の中央部で把持部11の上端から下端にかけて形成されている。一方、把持部11には、把持部11の引き起こしの軸となる袋本体幅方向の折れ線は形成されていない。なお、折れ線L1は、ミシン目、ハーフカット、筋押し等により形成することができる。
【0021】
したがって、片手で把持部11を摘まみ、折れ線L1で把持部11を折り曲げつつ把持部11を引き起こしていくと、把持部11全体を容易に片手で2つ折りにすることができる。2つ折りにすることにより把持部11はその上端から下端までがリジッドな棒状となり、
図3に示すように、棒状になった把持部11を袋本体上下方向に立てることができる。このとき、袋本体3の上端部は、平面
図1Aにおける貼着領域Aの袋本体底辺側の縁辺Aaが折り山となって折り畳まれ、袋本体の面3xから突出していた把持部11の上辺11aが袋本体の背面3yに押し付けられることにより、袋本体3の上辺3aも袋本体の背面3yに押し付けられ、上端部の折り畳まれた状態が安定する。また、袋本体3の折り畳まれた部分は、把持部11と共に2つ折りになる。これにより、袋本体3内では抽出材料が充填されている部分の上方にスペースSが形成される。したがって、
図4に示すように、カップ100に袋本体3を入れ、カップ100内に注湯し、把持部11で袋本体3を湯W内に浸漬させ、袋本体3内に湯Wを流入させることができる。また、把持部11を上下させることにより袋本体3を湯W内で容易に上下させることができ、これにより袋本体3内のスペースSに湯Wが入り易くなり、湯Wが抽出材料内に浸透し、抽出材料の抽出が促進される。
【0022】
また、
図5に示すように、2つ折りにした把持部11から手を離してカップ100内で抽出バッグ1Aを放置し、把持部11がカップ100の内壁に寄り掛かり、該内壁で支持されるようにしてもよい。把持部11の袋本体上下方向の長さを袋本体3の上辺3a近傍から底辺3b近傍までとし、一般的なカップの径に対して十分長くすることにより、このようにカップ100の内壁で把持部11を支持することがきる。この場合、把持部11は液面から突出しているが、袋本体3は湯に浸漬されている状態が維持されるので、抽出材料の抽出を進行させることができる。また、再度、把持部11を把持して把持部11を上下させることで袋本体3を湯W中で上下させて抽出を促進させることができ、また、把持部11を引き上げることで袋本体3を湯Wから取り出すことも容易である。なお、本発明の抽出バッグでは、抽出材料が袋本体3内に密封された状態で使用されるので、抽出バッグの使用時に抽出材料が袋本体外に散らばることはない。
【0023】
これに対し、
図25に示す抽出バッグ1xのように、把持部11に袋本体幅方向の折れ線L2が形成されていると、
図26に示すように折れ線L2が把持部11の引き起こしの軸となる。この場合に、把持部11を引き起こしつつ折れ線L1で把持部11を2つ折りにしようとしても、折れ線L2の部分では把持部11を2つ折りにすることが困難となる。また、折れ線L2で把持部11を完全に折り曲げた後に、折れ線L1で把持部11を折り曲げることはできるが、この折り曲げ作業は片手でできる作業ではなく、把持部11の折り曲げ作業が煩雑となる。
【0024】
後述するように把持部11がU字形に形成されており、かつ
図27に示すように把持部11に袋本体幅方向の折れ線L2が形成されている場合にも
図28に示すように折れ線L2が引き起こしの軸となる。そして把持部11を引き起こしつつ折れ線L1で把持部11を2つ折りにしようとすると、対向する把持部11の内側端部11c同士がぶつかる。よって、この場合にも容易には2つ折りにすることができない。
【0025】
(抽出材料)
袋本体3内に充填される抽出材料としては、コーヒー粉、紅茶、緑茶等の茶葉、漢方薬などを挙げることができる。一般に、コーヒー粉を袋本体3内に充填し、湯中に浸漬しようとすると、コーヒー粉に含まれる二酸化炭素により袋本体が浮き上がりやすいので、抽出し難い。しかし、本発明によれば、袋本体の一つの面に設けられた薄板状部材の把持部を把持することで、袋本体の反対面から袋本体を湯中に沈めたり、湯中で上下させたりすることが容易となるので、コーヒー粉を含む種々の抽出材料が、本発明の抽出バッグに充填する抽出材料として好適となる。
【0026】
(袋本体)
袋本体3の形状は、本実施例では平袋としている。本発明において袋本体3の形状は平袋に限られず、例えば、底部又は側部にマチを有するガゼット袋としてもよい。袋本体の平面視の形状も矩形に限られず、円形などでもよい。
【0027】
袋本体3の正味の平面寸法は、抽出バッグを用いて抽出液を得る場合に使用するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、袋本体3を市販のコーヒーカップに適合した大きさにすればよい。
【0028】
(通水濾過性シート)
袋本体3を形成する通水濾過性シートとしては、抽出材料の抽出に使用できるように通水性及び濾過性を有するものを種々使用することができ、抽出材料の種類に応じて通水濾過性シートの構成材料も適宜選択することができる。例えば、一般に、飲料を抽出するための通水濾過性シートとしては、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができる。抽出バッグの使用後の廃棄性の点からは、通水濾過性シートに生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等を挙げることができる。また、袋本体内の抽出材料の状態がわかるように、通水濾過性シートに透明性をもたせる点からは、無機系顔料の含有量を低減させること又は無機系顔料が含まれないようにすることが好ましい。
【0029】
また、ドリップタイプの抽出バッグでは抽出材料へ直接的に湯が注がれるのに対し、本発明の抽出バッグでは、必ず通水濾過性シートを通して抽出材料へ湯が供給されるため、抽出材料の粉漏れが生じない限りで、ドリップタイプの抽出バッグで使用される通水濾過性シートよりも目の粗いものを使用することが好ましい。例えば、コーヒー粉を抽出材料とする場合、通水濾過性シートの通気性は130~600cm3/cm2/sec(JIS L1096通気性A法(フラジール形通気性試験機を用いる方法))とすることができる。
【0030】
(薄板状部材)
薄板状部材10は撥水性を有するものが好ましく、表面に樹脂をラミネートした板紙、プラスチックシート等の薄板状材料の打ち抜きにより形成することができる。抽出バッグ1A使用後の廃棄性の点からは、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料から形成したものが好ましい。
【0031】
(使用方法)
抽出バッグ1Aの包装、流通形態としては、
図1Aに示したように、薄板状部材10が袋本体3上で扁平化している状態が好ましい。そこで、この状態の抽出バッグ1Aを出発状態として、抽出バッグ1Aから抽出材料の抽出を行う方法としては、まず、
図2に示すように、袋本体3から薄板状部材10の把持部11を引き起こし、さらに
図3に示すように、把持部11を折れ線L1で2つ折りにし、把持部11がほぼ袋本体上下方向となるように把持部11を引き起こし、
図4に示すように、袋本体3をカップ100等の容器に入れて注湯し、把持部11で袋本体3を湯内に押し込んで袋本体3を浸漬させる。
【0032】
把持部11を2つ折りにしたことで袋本体3の上辺も2つ折りになり、袋本体3の内部にスペースが形成されるので、湯は袋本体3の表面を流れるだけでなく、袋本体内に流入しやすくなっている。そこで、把持部11を上下させることにより湯中の袋本体3を上下させると、湯の袋本体3内への流入と袋本体3からの排出が繰り返されるので抽出が促進される。
【0033】
あるいは、湯の入ったカップ100に抽出バッグを入れ、同様に抽出バッグ1Aを上下させて抽出する。
【0034】
また、
図5に示すように、袋本体3が湯に浸漬した状態で把持部11から手を離し、把持部11をカップ100の内壁で支持させて、抽出バッグ1Aを放置してもよい。放置している間に抽出を進めることができる。また、再度把持部11を把持し、把持部11を上下させることで袋本体3を湯中で上下させ、抽出を促進させてもよい。
上述した抽出方法は冷水で行ってもよい。
【0035】
抽出後は、把持部11を把持してカップ100内から容易に抽出バッグ1Aを取り出すことができる。
【0036】
こうしてこの抽出バッグ1Aによれば、簡便に迅速に所望の濃さの抽出液を得ることができる。
【0037】
(製造方法)
抽出バッグ1Aの製造方法としては、例えば、
図8に示すように、長尺の通水濾過性シート21の短尺方向に薄板状部材10の折れ線L1を合わせた向きで、通水濾過性シート21に薄板状部材10を所定間隔で並べて貼着した抽出バッグ製造用シート20を用意する。図中、二点鎖線で挟まれた領域が抽出バッグ1個分の製造に使用されることとなる。
【0038】
この抽出バッグ製造用シート20を包装充填機で用いることにより抽出バッグ1Aを連続的に製造することができる。この場合、まず
図9に示すように、抽出バッグ製造用シート20の長手方向の両側辺を重ね合わせるように2つ折りにし、その長手方向の側辺同士を溶着して縦シール22を形成することにより筒状体24を形成する。次に、筒状体24を短手方向に溶着する横シール23の形成と袋本体3内への抽出材料Mの充填とを交互に繰り返すことにより抽出バッグ1Aの袋本体3の側辺で抽出バッグ1Aが上下に繋がった抽出バッグ連続体を製造し、これを個々の抽出バッグに切り離して抽出バッグ1Aを得る。あるいは、筒状体の短手方向の横シール23の形成時に溶断も同時に行い、個々に切り離された抽出バッグ1Aを連続的に製造する。
【0039】
(変形態様)
本発明の抽出バッグは種々の変更点をもつことができる。例えば、
図10に示した平面図の抽出バッグ1Dは、
図1Aに示した平面図の抽出バッグ1Aに対して、薄板状部材10が袋本体上下方向に伸びた補強部12を有する点が異なっている。より具体的には、補強部12は把持部11の外周部に形成され、補強部12の上端が把持部11と袋本体幅方向の折れ線L3を介して繋がっており、補強部12の略全面が袋本体3に貼着している。なお、折れ線L3を介して補強部12を把持部11と連続させず、補強部12と把持部11とを離間させて補強部12を設けても良いが、把持部11と補強部12を一枚の薄板状材料の打ち抜きにより形成し、これらを袋本体3の片面に貼着するにあたり、これらの貼着位置のずれをなくす点から補強部12は把持部11に折れ線L3を介して連続させることが好ましい。
【0040】
補強部12を有する抽出バッグ1Dでは、把持部11を引き起こし、袋本体3をカップ等のカップ100内で上下させた場合の袋本体3の潰れ方を少なくすることができ、袋本体3に充填されている抽出材料の上に常時スペースを確保しておくことができる。よって、袋本体3内に流れ込む湯量の変化を低減し、抽出速度を安定させることができる。また、
図11に示すように、カップ100内で把持部11から手を離した場合にカップ内壁で支持される把持部11の液面に対する位置や傾きを安定化させることができる。特に、
図12に示すように、トールタイプのカップ100で抽出を行う場合に、把持部11から手を離しても把持部11がカップ内に過度に沈み込むことがなく、再度把持部11を把持することが容易になる。
【0041】
把持部11の外周部に補強部12を設ける場合に、
図13に示す抽出バッグ1Eのように、補強部12は袋本体3に貼着するが、把持部11の袋本体3への貼着を省略することができる。この場合にも把持部11の上部が袋本体3の一つの面3xの上部に固定され、把持部の下部がその面3xから引き起こし可能となるので、本発明の効果を得ることができる。
【0042】
図14に示す抽出バッグ1Fのように、把持部11をU字形に形成してもよい。この把持部11は、U字形の把持部の上端部が袋本体3の上辺3aに沿って屈曲しており、この上辺3aに沿った部分が袋本体の面3xと貼着している。また、該把持部11を袋本体上下方向に折る折れ線L1がU字形の把持部11の下方で該把持部11を二等分するように形成されている。
【0043】
図15に示すように、この抽出バッグ1Fの把持部11を袋本体上下方向の折れ線L1で2つ折りにするにあたり、折れ線L1の長さが
図1Aに示した抽出バッグ1Aよりも短いので、
図1Aに示した抽出バッグ1Aよりも僅かな力で把持部11を2つ折りにすることができる。
【0044】
また、把持部11を2つ折りにした以降は、
図1Aに示した抽出バッグ1Aと同様に袋本体3内の抽出材料の抽出を行うことができ、
図16に示すように、カップ100内においた抽出バッグ1Fの把持部11から手を離すこともできる。
【0045】
把持部11をU字形に形成するにあたり、
図17に示す抽出バッグ1Gのように、U字形の把持部11の内周部分に切り欠き13を形成してもよい。これにより、
図18に示すように、2つ折りにした把持部11の切り欠き13をカップ100の開口部壁に掛けることが可能となる。
【0046】
また、
図19に示す抽出バッグ1Hのように、U字形の把持部11の外周部に補強部12を形成してもよい。この場合もU字形の把持部11の袋本体の上辺3aに沿った部分と補強部2の上端とを折れ線L3を介して連続させることが好ましい。
【0047】
図20に示す抽出バッグ1Iのように、把持部11をO字形(即ち、環状)に形成してもよい。また、把持部11をO字形に形成する場合、
図21に示す抽出バッグ1Jのように、把持部11の内側に、袋本体3の面3xと貼着した補強部12を設けても良い。この場合、補強部12の上端と、把持部11の環状内の上端との間には間隙25があくように薄板状部材に開口部を設けることが好ましい。これにより、
図22に示すように、把持部11を袋本体から引き上げ、2つ折りにすることができ、また、袋本体3の形状が過度に潰れないようにすることができる。これに対し、O字形の把持部11の内部の間隙25を無くし、把持部11の内部の全面を補強部12として袋本体の面3xに貼着すると、袋本体3から引き上げた把持部11を折れ線L1で2つ折りにすることができなくなる。
【0048】
(手詰め用抽出バッグ)
上述した各抽出バッグ1A~1Jにおいて、袋本体3に抽出材料を充填せずに袋本体3を空袋としておき、袋本体3に抽出材料充填用の開口部を設け、手詰め用抽出バッグとしてもよい。手詰め用抽出バッグによれば、個々の抽出バッグユーザーがそれぞれの好みに応じて抽出材料を空袋に充填し、抽出液を得ることができる。
【0049】
手詰め用抽出バッグの開口部には、抽出材料を充填後、その開口部を閉じる手段を設けておくことが好ましい。例えば、前述の抽出バッグ1Aに対応する手詰め用空袋としては、
図23に示した手詰め用抽出バッグ30のように、袋本体3の対向する2面のうち、薄板状部材10が設けられていない方の面3yを形成する通水濾過性シートを該面3y上に折り返し、その場合に袋本体の下辺3bが折り山となるようにして折り返し部5を袋本体3に設け、その下辺3bの位置に開口部6を形成する。抽出バッグユーザーは、空袋となっている袋本体3の開口部6から抽出材料Mを手詰めした後、折り返し部5の表裏面を引っ繰り返すことで
図24に示すように開口部6を閉じることができる。
【0050】
空袋の開口部6を閉じる手段としては、袋本体3の下部に折り返し部5を設けることに限られず、例えば、特許第4289363号に記載のチャックを開口部6に設けてもよく、食品包装用の両面テープを使用してもよい。
【0051】
以上、本発明の種々の態様について説明したが、本発明において種々態様における変更点は適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0052】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、1x、1y 抽出バッグ
3 袋本体
3a 袋本体の上辺
3b 袋本体の底辺
3x 袋本体の面
3y 袋本体の面
5 折り返し部
6 開口部
10 薄板状部材
11 把持部
11a 把持部の上辺
11b 把持部の下辺
11c 把持部の内側端部
12 補強部
13 切り欠き
20 抽出バッグ製造用シート
21 通水濾過性シート
22 縦シール
23 横シール
24 筒状体
25 間隙
30 手詰め用抽出バッグ
100 カップ
L1 袋本体上下方向の折れ線
L2 袋本体幅方向の折れ線
L3 袋本体幅方向の折れ線
A 貼着領域
Aa 貼着領域の袋本体底辺側の縁辺
M 抽出材料
S スペース
W 湯