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特開2023-107762着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ
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  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図1A
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図1B
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図1C
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図2
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図3
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図4A
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図4B
  • 特開-着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107762
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ
(51)【国際特許分類】
   G04B 5/18 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
G04B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023009061
(22)【出願日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】22153065.2
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522286159
【氏名又は名称】フレクサス メカニズムス アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Flexous Mechanisms IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】メイ,ユップ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率を向上させる、及び/又はエネルギーの浪費を低減若しくは回避することが可能なエネルギーハーベスタを提供する。
【解決手段】着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイス、例えば腕時計又は例えば遠隔リモコン、の為のエネルギーハーベスタ1であって、ハーベスタ1は物体を備えており、物体は、極端位置の間を往復移動するように構成され、且つエネルギー変換器及び/又はエネルギー貯蔵部22に伝達機構を介して接続されている。物体と変換器及び/又は貯蔵部22との間の伝達比が、可変であり、且つ極端位置の少なくとも一方について、物体5がその位置に向かって移動するのに伴って増大する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイスの為のエネルギーハーベスタ(1)であって、該ハーベスタは物体(5)を備えており、該物体は、極端位置の間を往復移動するように構成され、且つエネルギー変換器及び/又はエネルギー貯蔵部(3、22)に、伝達機構(7~12)を介して接続されており、該物体と該変換器及び/又は貯蔵部(22)との間の伝達比が、可変であり、且つ極端位置の少なくとも一方について、該物体が当該位置に向かって移動するのに伴って増大することを特徴とする、前記エネルギーハーベスタ(1)。
【請求項2】
少なくとも2つの極端位置について、該物体(5)がそれらの位置に向かって移動するのに伴って該伝達比が増大する、請求項1に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項3】
該伝達比は、該物体(5)が該極端位置の一方に向かって移動するときに不均衡に増大する、請求項1又は2に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項4】
該物体(5)の後方向への移動及び前方向への移動のうち少なくとも一方が制限されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項5】
該伝達比は、該物体(5)が該極端位置の一方に向かって移動するときに、漸近的に増大する、請求項4に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項6】
該極端位置間の該物体の少なくとも1つの位置において、該伝達機構は、ゼロ又は実質的にゼロの機械的利益を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項7】
該伝達機構は、該極端位置間の或る範囲にわたって、ゼロ又は実質的にゼロの機械的利益を有する、請求項6に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項8】
基部(2)、グラウンド(2;24)、及び該物体(5)を該グラウンド(2;24)から吊り下げている少なくとも1つのリンク(23)を備えている、請求項1~7のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項9】
該少なくとも1つのリンク(23)がしなやかである、請求項8に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項10】
該物体(5)が、0超~5ヘルツ、好ましくは0.2~4.5ヘルツ、の固有振動数を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項11】
前記物体及び少なくとも1つの屈曲部が一体構造及び/又は平面状、好ましくはまた、該エネルギー変換器及び/又は該エネルギー貯蔵部に接続されたラチェットホイールを有する平面状、である、請求項1~10のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスタ(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスタ(1)を備えている自動巻き上げシステムを備えている時計ムーブメント(21)。
【請求項13】
前記物体(5)がラチェットホイール(3)に接続されており、該ラチェットホイールは、該エネルギー変換器及び/又は該エネルギー貯蔵部(22)に接続されている、請求項12に記載の時計ムーブメント(21)。
【請求項14】
該エネルギー貯蔵部(1)が渦巻ばねを備えている(22)、請求項13に記載の時計ムーブメント(21)。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載のムーブメント(21)を備えている腕時計(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用可能な及び/又は持ち運び可能なデバイス、例えば腕時計又は例えば(テレビ)画面の為のリモコン、の為のエネルギーハーベスタに関し、該ハーベスタは物体(a mass)を備えており、該物体は、極端位置の間を往復移動する、例えば揺動する、ように構成され、例えば吊り下げられ、エネルギー変換器、例えば運動エネルギーを電力に変換する発電器、及び/又はエネルギー貯蔵部、例えば時計の主ばね若しくは電池、に、伝達機構を介して接続されている。
【背景技術】
【0002】
英国特許第766,295号明細書において、「時計自動巻き上げ機構の揺動おもりは、時計ムーブメントに取り付けられた少なくとも1つの柔軟な要素によって担持されている。図1のおもり1は、3においてムーブメント4に接続された板ばね2によって担持されている。押し爪及び引き爪8、7が、該おもり1の延長部6によって担持されており、ばね9によって付勢されて主ばね巻き上げ列内のラチェット5と係合する。該爪8は、該おもり1が時計回り方向に揺動するときに該ラチェット5を駆動し、該おもりが反時計回り方向に揺動するときに該爪7を駆動する。戻り止め11が、該ラチェット5を中立の中心位置に付勢することにより、該ラチェット5の逆回転を防止する。
【0003】
米国特許出願公開第2019/332061号明細書は、計時器、特に機械式計時器、の為の一体構造部品に関し、少なくとも1つの硬質部分と、弾性的に柔軟な部分とを備え、該計時器のアクチュエータの動きを、該計時器の被駆動部に伝達するように設計されている。該一体構造部品は、硬質フレームと、第1の硬質駆動部材と、上記フレームを上記第1の駆動部材に接続する第1の弾性的に柔軟な構造とを備えている。該第1の弾性的に柔軟な構造は、少なくとも2自由度の上記第1の駆動部材の変位を与えるように構成されており、上記変位は、該アクチュエータが上記第1の駆動部材と接触する結果、引き起こされる。
【0004】
国際公開第2019/160404号パンフレットは、エネルギーハーベスタに関し、該エネルギーハーベスタは、物体を移動物体の状態にする為に環境力を受ける該物体と、該移動物体で具現化されたエネルギーを変換及び貯蔵する為の、該物体に接続された手段と、を備え、該手段は、上記エネルギーをその後放出するように構成され、該物体はフレーム内に備えられ、少なくとも1つの弾性梁が、該物体が静的に釣り合うようにする為に該物体を該フレームに接続し、該少なくとも1つの弾性梁は、該弾性梁が座屈しない、該フレームを基準とした中立位置を該移動物体が離れたときに座屈する座屈梁であり、該弾性梁は、その座屈した状態において、上記移動物体を該フレーム内で実質的に静的に釣り合わせるように、該移動物体に作用する重力を打ち消す。
【0005】
国際公開第2021/002745号パンフレットは、ホイールと、該ホイールを駆動する物体とを備えた、時計又は計時器に関し、該物体は、それを移動物体の状態にする為に環境力を受けることが可能であり、該物体は、フレームと、該物体を該フレームから吊り下げている少なくとも第1の弾性梁とを備えているシステムの一部である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改良されたエネルギーハーベスタを提供すること、特にその効率を向上させること、及び/又はエネルギーの浪費を低減若しくは回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の為に、物体と変換器及び/又は貯蔵部との間の伝達比が可変であり、極端位置の少なくとも一方について、好ましくは少なくとも2つの、例えば両方の、極端位置について、該物体が当該位置に向かって移動するのに伴って該伝達比が増大する。
【0008】
一つの実施態様において、該伝達比は、該物体が該極端位置の一方に向かって移動するときに不均衡に増大する。すなわち、該伝達比の一次導関数及び二次導関数の両方が正である。例は、指数関数的増大、双曲型増大、及び正弦的増大を包含する。
【0009】
よって、入力加速度が、より効率的に出力パワーに変換される。例えば、着用可能な又は持ち運び可能なデバイスにおいて、該デバイスを着用している又は手に持っている者によって与えられる運動エネルギーのより多くが収穫されて、例えば収穫されるエネルギーの量、従って該デバイスの自律性を増大させ、及び/又は、該ハーベスタ及び潜在的に該着用可能及び/又は持ち運び可能デバイスのより小さい寸法を可能にする。
【0010】
本発明の文脈において、該伝達比は、該変換器又は貯蔵部内の並進及び/又は回転(の量)と、該物体の並進及び/又は回転(の量)との間の比である。例えば、回転的に吊り下げられた慣性物体と、エネルギー貯蔵部としての渦巻主ばねとを有する腕時計の自動巻き上げシステムにおいて、より高い伝達比は、該物体の同じ回転変位に対して該主ばねがより多く(より多くの度数にわたって)回転されることを意味する。更に、該物体の該極端位置は、該物体が方向を変えて、戻る方へ揺動する位置と定められる。該極端位置の場所は、該物体の加速度に依存し、従って変動する。
【0011】
一つの実施態様において、該物体の後方向への移動及び前方向への移動のうち少なくとも一方が、例えば該物体の振りと共に増大する剛性により、制限されている。別の実施態様において、該伝達比は、該物体が該極端位置の一方に向かって移動するときに、漸近的に、すなわち理論上無限に、実際には、例えば20まで、又は30まで、又は更に高く、増大する。
【0012】
よって、原則的に、該物体及び伝達機構は、少なくとも通常の又は予想される使用のとき、該物体がエンドストップに当たらないように構成され、そのことは、エネルギーの非常に効率的な取出しを可能にし、及び/又は、エンドストップに当たることから不可避的に生じるエネルギーの無駄を回避する。
【0013】
別の実施態様において、該極端位置間の該物体の少なくとも1つの位置において、例えば、該極端位置間の中間において、該伝達機構は、ゼロ又は実質的にゼロの、すなわち0.5より小さい、好ましくは0.2より小さい、機械的利益を有する。
【0014】
別の実施態様において、該伝達機構は、該極端位置間の或る範囲にわたって、ゼロ又は実質的にゼロの機械的利益を有する。
【0015】
よって、該ハーベスタは、より低い加速度により敏感になり、また、該デバイスを着用している又は携行している者のより小さな動き及び/又はより段階的な動きにおいてエネルギーを収穫するようになる。
【0016】
別の実施態様において、該エネルギーハーベスタは、基部、例えばフレーム又は基板、と、例えば該フレーム又は基部の一部であるか又はそれに取り付けられているグラウンドと、該物体を該グラウンドから吊り下げている少なくとも1つのリンク、例えば2つ又は3つのリンク、とを備えている。2つ以上のリンクは、サスペンションの剛性を微調整する為のより多くの選択肢を提供し、微細製造を容易にしうる。
【0017】
改良形態において、該少なくとも1つのリンクは、しなやかであり、すなわち弾性的に柔軟である。一つの実施態様において、該物体及び該少なくとも1つのリンク、並びに任意的に該グラウンドは、平面状であり、すなわち同じ面内に延び、好ましくは一体構造であり、すなわち、単一の材料から作られる。好適な材料の例は、シリコン、ベリリウム銅、及び鋼を包含した。該物体の重量を増す為に、高密度金属、例えば金、タングステンの白金からなる要素、例えばインサート、が、該物体を画定する部分に取り付けられることができる。
【0018】
該物体、特に該物体とその弾性サスペンションとの組み合わせ、は、0超~5ヘルツ、好ましくは0.1~4.5ヘルツ、の固有振動数を有しうる。よって、該固有振動数(natural frequency、又は「eigen frequency」)は、一般的な人間の活動、特に、典型的に3~4.5ヘルツの主振動数を有する走行、及び典型的に0.5~1.5ヘルツの主振動数を有する歩行、の入力振動数に対応する。
【0019】
本発明はまた、上記で説明された該エネルギーハーベスタを備えた自動巻き上げシステムを備えている時計ムーブメントに関する。一つの実施態様において、該物体は、ラチェットホイールに接続されており、該ラチェットホイールは、該エネルギー変換器及び/又は該エネルギー貯蔵部に接続されている。別の実施態様において、該エネルギー貯蔵部は、時計学において主ばねとして知られている渦巻ばねを備えている。
【0020】
本発明はまた、上記で説明されたようなムーブメントを備えている腕時計に関する。
【0021】
一つの実施態様において、該物体は、該時計の文字盤上の1時及び5時の位置によって定められる限界間、又は該時計上の7時及び11時によって定められる限界間、を揺動するように吊り下げられている。
【0022】
以下で、本発明の実施態様が示されている添付図面を参照して、本発明が更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A図1Aは、本発明に従うエネルギーハーベスタの第1の実施態様の上部平面図であり、その慣性物体が中立位置にある。
図1B図1Bは、本発明に従うエネルギーハーベスタの第1の実施態様の上部平面図であり、その慣性物体が2つの極端位置の1つにある。
図1C図1Cは、本発明に従うエネルギーハーベスタの第1の実施態様の上部平面図であり、その慣性物体が2つの極端位置の1つにある。
図2図2は、本発明に従う自動巻き上げシステムを備えたムーブメントを備えている腕時計の分解背面図である。
図3図3は、図2に示された該自動巻き上げシステムの上部平面図である。
図4A図4Aは、図2及び図3に示された該自動巻き上げシステム内の該伝達機構の拡大図である。
図4B図4Bは、図2及び図3に示された該自動巻き上げシステム内の該伝達機構の拡大図である。
図4C図4Cは、図2及び図3に示された該自動巻き上げシステム内の該伝達機構の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同様である若しくは同一である、又は同様である若しくは同一の機能を行う、異なる実施態様における要素は、同じ参照符号によって参照される。
【0025】
図1A図1Cは、基部、例えば基板2、を備えている、本発明に従うエネルギーハーベスタ1の第1の実施態様を示す。ラチェットホイール3が、軸4によって該基板に回転可能に装着されており、該軸4は、該基板を貫通して延び、該基板の反対側でエネルギー変換器及び/又は貯蔵部に接続されている。慣性物体5が、第1の枢軸6によって該基板に装着されており、該第1の枢軸6は、該慣性物体が、図1B及び図1Cに示されている両極端位置の間を往復して揺動することを可能にする。更に、アーム7が、第2の枢軸8によって該基板に装着されている。該アームは、該ラチェットホイールの周りに延びており、該アームには、該アームがばね付きのラチェットホイールを、例えば時計回り方向(CW:clockwise direction)に、引いて回転させることを可能にする為の1以上の歯9が設けられている。該ラチェットホイールが逆方向、例えば反時計回り方向(CCW:counter-clockwise)、に回転するのを防止する為に、爪(図示せず)が設けられる。
【0026】
該慣性物体は、リンク10によって該アームに接続されている。示されている例において、該リンクは、第3の枢軸11によって該慣性物体に接続され、第4の枢軸12によって該アームに接続された、硬質の棒体である。別の例において、該リンクは、しなやかであり、任意的に、該物体及び/又は該アームと一体構造である。
【0027】
図1Aは、該慣性物体の該中立位置を示している。この位置において、該慣性物体の該枢軸6及び該リンクの両枢軸11、12は、該アームの該枢軸8と該ラチェットホイール3の回転軸4との間に延びる直線の上にある。その結果、該中立位置では、該物体と該ラチェットホイールとの間の伝達比が実質的にゼロであり、すなわち、機械的利益を事実上有さず、該エネルギーハーベスタを収容しているデバイスのごくわずかな加速度で移動し始める。該リンクの構成、特にその寸法及び該枢軸の場所、に起因して、該アームは、該慣性物体の方向、すなわちCW又はCCW、に関係なく、同じ方向、図示されている例においてはCW、に回転し、該ラチェットホイールを引っ張ってその同じ方向、CW、に回転させる。また、該慣性物体が、図1B及び図1Cに示されている該極端位置の1つに向かって揺動する時、該慣性物体と該ラチェットホイールとの間の該伝達比は、不均衡に増大し、すなわち、該ラチェットホイールの回転度数は、該慣性物体の各回転度と共に増大し、この例においては、25度未満、例えば20度、の振り又は揺動の後に該慣性物体が減速されて完全に停止し、エンドストップが必要とされない程度まで、増大する。
【0028】
図2は、慣用的な主ばね22と、本発明に従う自動巻き上げシステム1とを含むムーブメント21を備えた腕時計20を、分解背面図で示す。
【0029】
図3にまた示されているように、該ムーブメント1は、基板2と、軸4によって該基板に回転可能に装着されたラチェットホイール3とを備えており、該軸4は、該基板を貫通して延び、該基板の反対側でバレルに収容されているか又は該基板の開口に収容されている該主ばね22に接続されている。慣性物体5が、屈曲部23及びグラウンド24によって該基板に装着されており、該グラウンドは、該基板に固定、例えばねじ留め、されている。好適な物体及びサスペンションの例が、国際公開第2019/160404号パンフレットに記載されている。
【0030】
更に、図4A図4Cにより詳細に示されているように、アーム7が、枢軸8によって該基板に装着されており、該枢軸8は、この例において該軸4によって形成されており、すなわち、該アーム7は該ラチェットホイール3と同軸である。該アームには、該アームがばね付きの該ラチェットホイールを一方の回転方向、例えば時計回り方向(CW)、に引っ張ることを可能にする為の1以上の歯9が設けられている。該ラチェットが逆方向、例えば反時計回り方向(CCW)、に回転するのを防止する為に、爪機構25が設けられている。
【0031】
該慣性物体は、リンク10によって該アームに接続されている。図示された例において、該リンクは、硬質であり、実質的にS字形である。該リンク10は、第1のヒンジ11によって該慣性物体に接続され、第2のヒンジ12によって該アームに接続されている。別の例において、該リンク又は少なくとも該ヒンジは、しなやかであり、任意的に、該物体及び/又は該アームと一体構造である。
【0032】
図4Aは、該慣性物体の該中立位置を示している。この位置において、該ヒンジはまっすぐである。該慣性物体が、図4B及び図4Cに示されている該極端位置の一方に向かって揺動すると、該ヒンジ11及び12のうちの少なくとも1つが屈がり、該慣性物体と該ラチェットホイールとの間の伝達比が不均衡に増大する。
【0033】
よって、入力加速度が、より効率的に出力パワーに変換され、すなわち、該時計を着用している者によって与えられた運動エネルギーのより多くが収穫される。これが用いられて、該時計の自律性を増大させる、及び/又はより小さい若しくはより薄い時計を設計することができる。
【0034】
本発明は、記載された実施態様に制限されず、特許請求の範囲内で変形されることができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
【外国語明細書】