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特開2023-107769樹脂シート、樹脂シートの使用方法、及び硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法
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  • 特開-樹脂シート、樹脂シートの使用方法、及び硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107769
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】樹脂シート、樹脂シートの使用方法、及び硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20230727BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230727BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230727BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230727BHJP
   C09K 3/10 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B7/022
B32B27/00 B
H01L23/30 R
C09K3/10 E
C09K3/10 L
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078775
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2020509302の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018068732
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 高志
(72)【発明者】
【氏名】垣内 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直也
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
(72)【発明者】
【氏名】中山 武人
(57)【要約】
【課題】反りを抑制し平坦な表面を有する硬化樹脂層付き硬化封止体を、生産性を向上させて製造し得る樹脂シートを提供する。
【解決手段】基材と、重合体性成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層と、をこの順で有し、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×10~1.0×1013Paであり、前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とし、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化させて硬化樹脂層とし、前記封止材及び前記熱硬化性樹脂層の熱硬化後に、硬化樹脂層付き硬化封止体を前記基材から取り外す、硬化封止体の製造に用いられる、樹脂シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層と、をこの順で有し、
前記熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×10~1.0×1013Paであり、
前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とし、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化させて硬化樹脂層とし、前記封止材及び前記熱硬化性樹脂層の熱硬化後に、硬化樹脂層付き硬化封止体を前記基材から取り外す、硬化封止体の製造に用いられる、樹脂シート。
【請求項2】
前記封止材を硬化させる際に、前記熱硬化性樹脂層も硬化し、硬化樹脂層を形成可能である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物中の着色剤の含有量が8質量%未満である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂層の厚さが、1~500μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項5】
基材と、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層と、をこの順で有する樹脂シートの使用方法であって、
前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、
前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、
当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とし、
前記熱硬化性樹脂層を熱硬化させて硬化樹脂層とし、
前記封止材及び前記熱硬化性樹脂層の熱硬化後に、硬化樹脂層付き硬化封止体を前記基材から取り外す、樹脂シートの使用方法。
【請求項6】
前記封止材を熱硬化させる際に、前記熱硬化性樹脂層も熱硬化させて、硬化樹脂層を形成させて、熱硬化樹脂層付き硬化封止体とする、請求項5に記載の樹脂シートの使用方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物中の着色剤の含有量が8質量%未満である、請求項5又は6に記載の樹脂シートの使用方法。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×10~1.0×1013Paである、請求項5~7のいずれか一項に記載の樹脂シートの使用方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂層の厚さが、1~500μmである、請求項5~8のいずれか一項に記載の樹脂シートの使用方法。
【請求項10】
基材と、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層と、をこの順で有する樹脂シートを用いて、硬化樹脂層付き硬化封止体を製造する方法であって、下記の各工程を有する、硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法。
・前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置する工程
・前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆する工程
・当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とする工程と、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程とを含む、硬化樹脂層付き硬化封止体を得る工程
・前記硬化樹脂層付き硬化封止体を前記基材から取り外す工程
【請求項11】
前記封止材を硬化させる際に、前記熱硬化性樹脂層も硬化し、硬化樹脂層を形成する、請求項10に記載の硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂組成物中の着色剤の含有量が8質量%未満である、請求項10又は11に記載の硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×10~1.0×1013Paである、請求項10~12のいずれか一項に記載の硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂層の厚さが、1~500μmである、請求項10~13のいずれか一項に記載の硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート、及び、樹脂シートの使用方法、並びに、当該樹脂シートを用いた硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの小型化及び高機能化に伴い、半導体パッケージにも更なる小型化、高機能化、及び信頼性の向上等が要求されている。
このような要求に対応し得る技術の一つである、ウエハレベルパッケージ(WLP)技術は、ダイシングにより個片化する前に、チップ回路形成面に外部電極などを形成し、最終的にはチップを含むパッケージをダイシングして、半導体チップと同程度のスケールに小型化できる表面実装可能なチップスケールパッケージ(CSP)を実現する技術である。
【0003】
WLPは、Fan-In型とFan-Out型とに分けられる。
Fan-Out型のWLPでは、封止対象物である半導体チップを、この半導体チップのサイズよりも大きな領域となるように、封止材で覆って、半導体チップ封止体を形成した後、再配線層や外部電極を、半導体チップの回路面だけでなく、封止材の表面領域においても形成する。
【0004】
例えば、特許文献1には、半導体ウエハから個片化された複数の半導体チップを、その回路形成面を残し、封止樹脂であるモールド部材を用いて周りを囲んで拡張ウエハを形成し、半導体チップ外の領域に再配線パターンを延在させて形成する半導体パッケージの製造方法が記載されている。
なお、特許文献1に記載の製造方法において、シリコンウエハはダイシング用のウエハマウントテープに貼着されてダイシング工程に供される。その後、エキスパンド用のウエハマウントテープに貼り替えられ、ウエハマウントテープ(支持テープ)を展延して複数のシリコンチップの間の距離を拡大させるテープエキスパンド工程に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/058646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されたようなFan-Out型のWLPの製造において、封止対象物である半導体チップを、封止材で被覆し、当該封止材を加熱により熱硬化させて、封止して、硬化封止体を形成させる工程を有することが一般的である。
しかしながら、封止材を熱硬化して得られた硬化封止体は、支持体と固定しているウエハマウントテープ等の粘着テープから分離した際に、分離後の硬化封止体が熱収縮によって反りが生じてしまうことがある。
反りが生じて表面が平坦でない硬化封止体は、例えば、次工程で硬化封止体の研削を行った場合に、割れが発生し易くなる等の弊害が生じ易くなり、また、硬化封止体を装置によって搬送する際に、アームによる硬化封止体の受け渡し時に不具合が発生し易くなる。
【0007】
また、硬化封止体の一方の表面にさらに樹脂膜を設けて樹脂膜付き硬化封止体とする場合もある。
このような樹脂膜付き硬化封止体を製造するには、通常は、形成した硬化封止体の一方の表面に、別途用意した樹脂膜形成用シートを貼付し、樹脂膜形成用シートを硬化させて樹脂膜を形成するという工程を経る必要がある。
加えて、硬化封止体は、上述のとおり、製造時に反りが生じ易いため、この硬化封止体の反りに起因した、樹脂膜形成用シートを貼付する際の作業性の低下や、硬化してなる樹脂膜と硬化封止体との密着性の低下といった点も懸念される。
さらに、得られる樹脂膜付き硬化封止体において、反りがさらに大きくなる場合もあり、次工程で様々な弊害を招く恐れがある。
【0008】
本発明は、反りを抑制して平坦な表面を有する、硬化樹脂膜付きの硬化封止体を、生産性を向上させて製造し得る、硬化封止体の製造に用いられる樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、重合性成分及び熱硬化性成分を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層を有する樹脂シートを、熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、封止材で被覆して硬化させて、封止対象物を含む硬化封止体とする製造に用いることで、上記課題を解決し得ることを見い出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1]重合性成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層を有し、
前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とする、硬化封止体の製造に用いられる、樹脂シート。
[2]前記封止材を硬化させる際に、前記熱硬化性樹脂層も硬化し、硬化樹脂層を形成可能である、上記[1]に記載の樹脂シート。
[3]前記熱硬化性樹脂組成物中の着色剤の含有量が8質量%未満である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4]前記熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×10~1.0×1013Paである、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[5]前記熱硬化性樹脂層の厚さが、1~500μmである、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[6]上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂シートの使用方法であって、
前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、
前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、
当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とする、
樹脂シートの使用方法。
[7]前記封止材を熱硬化させる際に、前記熱硬化性樹脂層も熱硬化させて、硬化樹脂層を形成させて、熱硬化樹脂層付き硬化封止体とする、上記[6]に記載の樹脂シートの使用方法。
[8]上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂シートを用いて、硬化樹脂層付き硬化封止体を製造する方法であって、下記工程(i)~(iii)を有する、硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法。
・工程(i):前記樹脂シートが有する前記熱硬化性樹脂層の表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(ii):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆する工程。
・工程(iii):前記封止材を熱硬化させて、前記封止対象物を含む硬化封止体を形成すると共に、前記熱硬化性樹脂層も熱硬化させ、硬化樹脂層を形成し、硬化樹脂層付き硬化封止体を得る工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂シートは、硬化封止体の製造に用いることで、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を、生産性を向上させて製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様の樹脂シートの構成を示す、当該樹脂シートの断面模式図である。
図2図1(d)に示す樹脂シート1dを用いて硬化樹脂層付き硬化封止体を製造する工程を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、希釈溶媒を除いた成分を指す。
本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
本明細書において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0014】
〔樹脂シートの構成〕
本発明の樹脂シートは、重合性成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層を有する。
本発明の一態様の樹脂シートは、熱硬化性樹脂層のみからなる単層構成のシートであってもよいが、熱硬化性樹脂層と共に、熱硬化性樹脂層以外の層を有する複層構成のシートであってもよい。
【0015】
図1は、本発明の一態様の樹脂シートの構成を示す、当該樹脂シートの断面模式図である。
本発明の一態様の樹脂シートとしては、図1(a)のような、基材20と、熱硬化性樹脂層10とを有する樹脂シート1aが挙げられる。樹脂シート1aのように、基材を有する樹脂シートとすることで、自己支持性を良好とし、取扱性を向上させることができる。
【0016】
また、基材20と熱硬化性樹脂層10との密着性を向上させるために、図1(b)に示す樹脂シート1bのように、基材20、粘着剤層30、及び熱硬化性樹脂層10をこの順で積層した樹脂シートとしてもよい。
なお、樹脂シート1bは、粘着剤層30の粘着表面上に、さらに剥離材を積層した構成としてもよい。
【0017】
また、本発明の別の態様の樹脂シートとしては、図1(c)のような、熱硬化性樹脂層10と、粘着剤層30とを有する樹脂シート1cが挙げられる。
樹脂シート1cのように粘着剤層30を有することで、樹脂シートを支持体等に十分に固定させることができ、封止工程での作業性を良好とすることができる。
【0018】
なお、図1(d)に示す樹脂シート1dにように、第2粘着剤層32、基材20、第1粘着剤層31、及び熱硬化性樹脂層10をこの順で積層した樹脂シートとしてもよい。
樹脂シート1dのような構成とすることで、樹脂シートを支持体等に十分に固定させることができると共に、基材20と熱硬化性樹脂層10との密着性を向上させることができるため、封止工程での作業性をより良好とすることができる。
なお、樹脂シート1dは、第2粘着剤層32の粘着表面上に、さらに剥離材を積層した構成としてもよい。
【0019】
本発明の一態様の樹脂シートは、熱硬化性樹脂層の表面を保護する観点から、熱硬化性樹脂層の表面上に、さらに剥離材を有する構成としてもよい。
例えば、本発明の一態様の樹脂シートは、熱硬化性樹脂層が2つの剥離材によって挟持された構成であってもよく、図1に示す樹脂シート1a、1b、1c、1dが有する熱硬化性樹脂層10の表出している表面上に、さらに剥離材を積層した構成であってもよい。
なお、この剥離材は、熱硬化性樹脂層の表面を保護するために設けられたものであり、樹脂シートの使用時には除去されるものである。
【0020】
〔樹脂シートの用途〕
本発明の樹脂シートは、前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とする、硬化封止体の製造に用いられるものである。
なお、本発明の樹脂シートを用いた硬化封止体の製造に関する具体的な態様については、後述のとおりである。
【0021】
例えば、特許文献1に記載の製造方法で用いられているような、一般的なウエハマウントテープ等の粘着シートの粘着表面に、封止対象物を載置後、封止対象物及びその周辺部の粘着表面を封止材で被覆して、封止材を熱硬化させ、硬化封止体を製造する場合を考える。
封止材を熱硬化させた際、封止材が収縮しようとする応力が働くが、粘着シートが支持体に固定されているため、封止材の応力は抑制されている。
しかしながら、支持体及び粘着シートから分離して得られた硬化封止体は、収縮しようとする応力を抑制し難くなる。分離後の硬化封止体は、封止対象物が存在する側の表面側と、その反対の表面側とで、封止材の存在量が異なるため、収縮応力に差が生じ易い。その収縮応力の差が硬化封止体に生じる反りの原因となる。
また、生産性の観点から、加熱後の硬化封止体は、ある程度の熱を帯びた状態で、支持体及び粘着シートから分離されることが一般的である。そのため、分離後も、封止材の硬化は進行すると共に、自然冷却に伴う収縮も生じるため、硬化封止体に反りがより生じ易い状態となる。
【0022】
一方で、本発明の樹脂シートを用いる場合、以下の理由から、反りを効果的に抑制した硬化封止体を得ることができる。
つまり、本発明の樹脂シートの熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、封止材で被覆して、封止材を熱硬化させると、同時に、熱硬化性樹脂層も熱硬化する。この際、封止材の存在量が少なく、封止材の硬化による収縮応力が小さいと考えられる封止対象物が存在する側の表面側には、熱硬化性樹脂層が設けられているため、熱硬化性樹脂層の熱硬化による収縮応力が働く。
その結果、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差を小さくすることができ、反りが効果的に抑制された硬化封止体を得ることができると考えられる。
【0023】
加えて、硬化封止体の反りの抑制に寄与している熱硬化性樹脂層は、熱硬化することで硬化樹脂層とすることができる。この硬化樹脂層は、保護膜としての機能を有する。
つまり、本発明の樹脂シートを用いて、上述の封止工程を経ることで、同時に、硬化封止体の一方の表面上に硬化樹脂層を形成することができるため、硬化樹脂層を形成するための工程を省略することができ、生産性の向上にも寄与する。
【0024】
以下、本発明の一態様の樹脂シートが有する各層について説明する。
【0025】
<熱硬化性樹脂層>
本発明の樹脂シートは、重合性成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層を有する。
熱硬化性樹脂層は、封止材を熱硬化させる際に、封止材と共に熱硬化して、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差を小さくし、得られる硬化封止体に生じ得る反りの抑制に寄与する。
また、熱硬化性樹脂層は、熱硬化して、硬化樹脂層となる。当該硬化樹脂層は、得られる硬化封止体の一方の表面上に形成され、保護膜としての機能を有するものである。
【0026】
反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能な樹脂シートとする観点から、熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上、より更に好ましくは5.0×10Pa以上であり、また、好ましくは1.0×1013Pa以下、より好ましくは1.0×1012Pa以下、更に好ましくは5.0×1011Pa以下、より更に好ましくは1.0×1011Pa以下である。
なお、本明細書において、貯蔵弾性率E’は、実施例に記載の方法に基づき測定された値を意味する。
【0027】
熱硬化性樹脂層の表面には、封止対象物が載置されるため、封止対象物との密着性を良好とする観点から、熱硬化性樹脂層の表面は粘着性を有することが好ましい。
また、熱硬化性樹脂層の封止対象物が載置される側とは反対側の表面についても、支持体等との密着性、及び、基材を設けた樹脂シートとする場合には基材との密着性を良好とする観点から、粘着性を有することが好ましい。
【0028】
室温(23℃)での、熱硬化性樹脂層の表面における粘着力は、好ましくは0.01~5N/25mm、より好ましくは0.05~4N/25mm、更に好ましくは0.1~3N/25mmである。
なお、本明細書において、熱硬化性樹脂層の表面における粘着力は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0029】
本発明の一態様の樹脂シートにおいて、熱硬化性樹脂層の厚さは、好ましくは1~500μm、より好ましくは5~300μm、更に好ましくは10~200μm、より更に好ましくは15~100μmである。
【0030】
本発明において、熱硬化性樹脂層は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成された層である。
ただし、熱硬化性樹脂組成物は、さらに、着色剤(C)、カップリング剤(D)、及び無機充填材(E)から選ばれる1種以上を含有してもよいが、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能な樹脂シートとする観点から、少なくとも無機充填材(E)を含有することが好ましい。
【0031】
(重合体成分(A))
熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合体成分(A)は、質量平均分子量が2万以上であり、少なくとも1種の繰り返し単位を有する化合物を意味する。
熱硬化性樹脂組成物は、重合性成分(A)を含有することで、形成される熱硬化性樹脂層に可とう性及び造膜性を付与し、シート性状維持性を良好とすることができる。
重合体成分(A)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは2万以上、より好ましくは2万~300万、更に好ましくは5万~200万、より更に好ましくは10万~150万、より更に好ましくは20万~100万である。
【0032】
重合体成分(A)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは8~40質量%、更に好ましくは10~30質量%である。
【0033】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系重合体、ポリエステル、フェノキシ系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等が挙げられる。
これらの重合体成分(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、エポキシ基を有するアクリル系重合体や、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂は、熱硬化性を有しているが、これらの質量平均分子量が2万以上であり、少なくとも1種の繰り返し単位を有する化合物であれば、重合体成分(A)の概念に含まれるものとする。
【0034】
これらの中でも、重合体成分(A)は、アクリル系重合体(A1)を含むことが好ましい。
重合体成分(A)中のアクリル系重合体(A1)の含有割合は、熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合体成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0035】
(アクリル系重合体(A1))
アクリル系重合体(A1)の質量平均分子量(Mw)は、形成される熱硬化性樹脂層に可とう性及び造膜性を付与する観点から、好ましくは2万~300万、より好ましくは10万~150万、更に好ましくは15万~120万、より更に好ましくは25万~100万である。
【0036】
アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、形成される熱硬化性樹脂層の表面に良好な粘着性を付与する観点、及び、樹脂シートを用いて製造される、硬化樹脂層付き硬化封止体の信頼性を向上させる観点から、好ましくは-60~50℃、より好ましくは-50~30℃、更に好ましくは-40~10℃、より更に好ましくは-35~5℃である。
【0037】
アクリル系重合体(A1)としては、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合体が挙げられ、具体的には、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)を含むアクリル系重合体が好ましく、構成単位(a1)と共に官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を含むアクリル系共重合体がより好ましい。
アクリル系重合体(A1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、アクリル系重合体(A1)が共重合体である場合、当該共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0038】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数は、形成される熱硬化性樹脂層に可とう性及び造膜性を付与する観点から、好ましくは1~18であり、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~8である。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
樹脂シートを用いて製造される、硬化樹脂層付き硬化封止体の信頼性を向上させる観点から、モノマー(a1’)が、炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
上記観点から、炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a11)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~80質量%、更に好ましくは10~80質量%である。
【0040】
また、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化させてなる硬化樹脂層のグロス値を上昇させ、レーザーマーキング適性を向上させる観点から、モノマー(a1’)が、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、炭素数4~6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレートを含むことが更に好ましい。
上記観点から、炭素数4以上(好ましくは4~6、更に好ましくは4)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a12)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~65質量%、更に好ましくは10~60質量%である。
【0041】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50~99質量%、更に好ましくは55~90質量%、更に好ましくは60~90質量%である。
【0042】
モノマー(a2’)は、ヒドロキシ基含有モノマー及びエポキシ基含有モノマーから選ばれる1種以上であることが好ましい。
なお、モノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0044】
エポキシ含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ含有モノマーは、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0045】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~45質量%、更に好ましくは10~40質量%、より更に好ましくは10~30質量%である。
【0046】
なお、アクリル系重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の構成単位(a1)及び(a2)以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、α-オレフィン等が挙げられる。
【0047】
<熱硬化性成分(B)>
熱硬化性成分(B)は、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化させて、硬質の硬化樹脂層とする役割を担うものであり、質量平均分子量が2万未満の化合物である。
硬化性成分(B)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以下、より好ましくは100~10,000である。
【0048】
熱硬化性成分(B)は、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である樹脂シートとする観点から、エポキシ基を有する化合物であるエポキシ化合物(B1)及び熱硬化剤(B2)を含むことが好ましく、エポキシ化合物(B1)及び熱硬化剤(B2)と共に、さらに硬化促進剤(B3)を含むことがより好ましい。
【0049】
エポキシ化合物(B1)としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等の分子中に2官能以上有し、質量平均分子量が2万未満であるエポキシ化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
エポキシ化合物(B1)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である樹脂シートとする観点から、熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合体成分(A)100質量部に対して、好ましくは1~500質量部、より好ましくは3~300質量部、更に好ましくは10~150質量部、より更に好ましくは20~120質量部である。
【0051】
熱硬化剤(B2)は、エポキシ化合物(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)は、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物であることが好ましい。
当該官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、及び酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化樹脂膜付きの硬化封止体を製造可能な粘着性積層体とする観点から、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸無水物が好ましく、フェノール性水酸基、又はアミノ基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
【0052】
フェノール基を有するフェノール系熱硬化剤としては、例えば、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
アミノ基を有するアミン系熱硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤(B2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
熱硬化剤(B2)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化樹脂膜付きの硬化封止体を製造可能な粘着性積層体とする観点から、エポキシ化合物(B1)100質量部に対して、好ましくは0.1~500質量部、より好ましくは1~200質量部である。
【0054】
硬化促進剤(B3)は、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化させる際に、熱硬化の速度を高める機能を有する化合物である。
硬化促進剤(B3)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの硬化促進剤(B3)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
硬化促進剤(B3)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である樹脂シートとする観点から、エポキシ化合物(B1)及び熱硬化剤(B2)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~6質量部、更に好ましくは0.3~4質量部である。
【0056】
<着色剤(C)>
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、さらに着色剤(C)を含有してもよい。
着色剤(C)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成した熱硬化性樹脂層は、熱硬化して硬化樹脂層とした際に、当該硬化樹脂層が、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽して、封止対象物(半導体チップ等)の誤作動を防止することができる。
【0057】
着色剤(C)として、有機又は無機の顔料及び染料を用いることができる。
染料として、例えば、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの染料でも用いることが可能である。
また、顔料に、特に制限はなく、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、電磁波や赤外線の遮蔽性が良好で、且つレーザーマーキング法による識別性をより向上させる観点から、黒色顔料が好ましい。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が挙げられるが、半導体チップの信頼性を高める観点から、カーボンブラックが好ましい。
なお、これらの着色剤(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ただし、本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物において、着色剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、8質量%未満であることが好ましい。
着色剤(C)の含有量が8質量%未満であれば、チップの表面のクラックの有無や、チッピングを目視でも確認可能となる樹脂シートとすることができる。
上記観点から、本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物において、着色剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5質量%未満、より好ましくは2質量%未満、更に好ましくは1質量%未満、より更に好ましくは0.5質量%未満である。
【0059】
また、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層に赤外線等の遮蔽効果を発現させる観点から、着色剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.15質量%以上である。
【0060】
<カップリング剤(D)>
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、さらにカップリング剤(D)を含有してもよい。
カップリング剤(D)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成した熱硬化性樹脂層は、封止対象物を載置する際の、封止対象物との接着性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂層を熱硬化させてなる硬化樹脂層は、耐熱性を損なうことなく、耐水性を向上させることもできる。
【0061】
カップリング剤(D)は、重合性成分(A)や熱硬化性成分(B)が有する官能基と反応する化合物が好ましく、具体的には、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-6-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-6-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
これらのカップリング剤(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
カップリング剤(D)の分子量は、好ましくは100~15,000、より好ましくは125~10,000、より好ましくは150~5,000、更に好ましくは175~3,000、より更に好ましくは200~2,000である。
【0063】
カップリング剤(D)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~7質量%、更に好ましくは0.10~4質量%、より更に好ましくは0.15~2質量%である。
【0064】
<無機充填材(E)>
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である樹脂シートとする観点から、さらに無機充填材(E)を含有することが好ましい。
無機充填材(E)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成した熱硬化性樹脂層とすることで、封止材を熱硬化させる際に、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差が小さくなるように、当該熱硬化性樹脂層の熱硬化の程度を調整することができる。その結果、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造することが可能となる。
また、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の熱膨張係数を適度な範囲に調整することでき、封止対象物の信頼性を向上させることができる。また、当該硬化樹脂層の吸湿率を低減させることもできる。
【0065】
無機充填材(E)としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維及びガラス繊維等の非熱膨張性粒子が挙げられる。
これらの無機充填材(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である樹脂シートとする観点から、シリカ、又はアルミナが好ましい。
【0066】
無機充填材(E)の平均粒子径は、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂膜のグロス値を向上させる観点から、好ましくは0.3~50μm、より好ましくは0.5~30μm、更に好ましくは0.7~10μmである。
【0067】
無機充填材(E)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である樹脂シートとする観点から、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは25~80質量%、より好ましくは30~70質量%、更に好ましくは40~65質量%、より更に好ましくは45~60質量%である。
【0068】
<その他の添加剤>
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、上述の重合性成分(A)、熱硬化性成分(B)、着色剤(C)、カップリング剤(D)及び無機充填材(E)(以下、成分(A)~(E)という)以外の、他の添加剤を含有してもよい。
成分(A)~(E)以外の、他の添加剤としては、例えば、架橋剤、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
成分(A)~(E)以外の、他の添加剤の合計含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%、更に好ましくは0~5質量%である。
【0069】
<基材>
本発明の一態様の樹脂シートは、熱硬化性樹脂層と共に、基材を有していてもよい。
本発明の一態様で用いる基材の厚さは、好ましくは10~500μm、より好ましくは15~300μm、更に好ましくは20~200μmである。
【0070】
本発明の一態様で用いる基材としては、例えば、紙材、樹脂、金属等から選ばれる1種以上から構成されたシート状物が挙げられるが、樹脂を含む樹脂基材が好ましい。
紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等が挙げられる。
【0071】
なお、樹脂基材は、上述の樹脂と共に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の基材用添加剤を含有してもよい。
【0072】
本発明で用いる基材は、1種からなる材料から形成されたものであってもよく、2種以上の材料から形成されたものであってもよい。
2種以上の材料から形成された基材としては、例えば、紙材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたものや、樹脂を含む樹脂基材の表面に金属膜を形成したもの等が挙げられる。
なお、金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
【0073】
また、図1(a)に示す樹脂シート1aのように、基材上に熱硬化性樹脂層を積層した構成とする場合、基材と熱硬化性樹脂層との密着性を良好とする観点から、基材の表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
【0074】
<粘着剤層>
本発明の一態様の樹脂シートは、さらに粘着剤層を有してもよい。
本発明の一態様において、粘着剤層の粘着力は、好ましくは0.10~10.0N/25mm、より好ましくは0.15~8.0N/25mm、更に好ましくは0.20~6.0N/25mm、より更に好ましくは0.25~4.0N/25mmである。
なお、本明細書において、粘着力は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
また、例えば、図1(d)に示す樹脂シート1dのように、第1粘着剤層及び第2粘着剤層を有する場合、第1粘着剤層及び第2粘着剤層のそれぞれの粘着力が上記範囲内であることが好ましい。
【0075】
本発明の一態様において、粘着剤層の厚さは、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~50μm、更に好ましくは5~25μmである。
【0076】
粘着剤層は、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物から形成することができる。
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂は、当該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体であればよい。粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、粘着力の向上の観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、更に好ましくは3万~100万である。
【0078】
また、粘着剤組成物は、使用する粘着性樹脂の種類に応じて、さらに粘着剤用添加剤を含有してもよい。
そのような粘着剤用添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0079】
粘着性樹脂の含有量は、粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは35質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上である。
【0080】
なお、図1の樹脂シート1b、1c、1dのような構成の樹脂シートが有する粘着剤層は、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂及び光重合開始剤を含有するエネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された層であってもよい。
このようなエネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層とすることで、硬化樹脂層及び硬化封止体を形成した後、エネルギー線を照射することで、粘着力を低下させて、粘着剤層と硬化樹脂層との間で容易に分離することができる。
なお、エネルギー線としては、紫外線や電子線が挙げられるが、紫外線が好ましい。
【0081】
エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、上記の粘着性樹脂の側鎖に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性官能基を導入したエネルギー線硬化型の粘着性樹脂を含有する組成物であってもよく、重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを含有する組成物であってもよい。
なお、これらの組成物には、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0082】
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシル-フェニル-ケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型粘着性樹脂100質量部もしくは重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~5質量部、更に好ましくは0.05~2質量部である。
【0083】
〔粘着性積層体の使用方法〕
本発明の樹脂シートは、硬化封止体の製造に用いることで、反りを抑制して平坦な表面を有する、硬化封止体を生産性を向上させて製造し得る。
そのため、本発明は、下記〔I〕に示す樹脂シートの使用方法も提供し得る。
〔I〕上述の本発明の樹脂シートの使用方法であって、
前記熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物を載置し、
前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆し、
当該封止材を熱硬化させ、前記封止対象物を含む硬化封止体とする、樹脂シートの使用方法。
【0084】
なお、上記〔I〕に記載の使用方法において、前記封止材を熱硬化させる際に、前記熱硬化性樹脂層も熱硬化させて、硬化樹脂層を形成させて、熱硬化樹脂層付き硬化封止体とすることが好ましい。
上述の本発明の樹脂シートを用いることで、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体(硬化樹脂膜付きの硬化封止体)を生産性を向上させて製造することができる。
なお、上記〔I〕に記載の使用方法において、樹脂シートの好適な構成は上述のとおりであり、封止材の種類や、封止材の被覆方法、熱硬化の諸条件等については、以下に示す、「硬化樹脂層付き硬化封止体の製造方法」の項に記載のとおりである。
【0085】
〔硬化樹脂膜付き硬化封止体の製造方法〕
本発明の樹脂シートを用いて、硬化樹脂膜付き硬化封止体を製造する方法としては、下記工程(i)~(iii)を有する方法が挙げられる。
・工程(i):前記樹脂シートが有する熱硬化性樹脂層の表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(ii):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆する工程。
・工程(iii):前記封止材を熱硬化させて、前記封止対象物を含む硬化封止体を形成すると共に、前記熱硬化性樹脂層も熱硬化させ、硬化樹脂層を形成し、硬化樹脂層付き硬化封止体を得る工程。
図2は、図1(d)に示す樹脂シート1dを用いて硬化樹脂層付き硬化封止体を製造する工程を示した断面模式図である。以下、図2を適宜参照しながら、上記各工程について説明する。
【0086】
<工程(i)>
工程(i)は、前記樹脂シートが有する熱硬化性樹脂層の表面の一部に、封止対象物を載置する工程である。
図2(a)には、樹脂シート1dの第2粘着剤層32の粘着表面を支持体100に貼付し、熱硬化性樹脂層10の表面の一部に、封止対象物60を載置した状態を示している。
なお、図2(a)においては、図1(d)に示す樹脂シート1dを用いた例を示しているが、他の構成を有する本発明の樹脂シートを用いる場合においても、図2(a)に示すとおり、支持体、樹脂シート、及び封止対象物をこの順で積層又は載置する。
【0087】
なお、工程(i)は、熱硬化性樹脂層が熱硬化しない温度で行われることが好ましく、工程(i)の具体的な温度条件は、通常10~80℃である。
【0088】
なお、図1(d)の樹脂シート1dのように、支持体側に第2粘着剤層を有する樹脂シートを用いる場合、当該樹脂シートの第2粘着剤層の粘着表面の全面と支持体とが貼付されることが好ましい。
したがって、支持体は、板状であることが好ましい。
また、この場合、第2粘着剤層の粘着表面と貼付される側の支持体の表面の面積は、図2に示すように、第2粘着剤層の粘着表面の面積以上であることが好ましい。
【0089】
前記支持体を構成する材質は、封止対象物の種類や、工程(ii)で使用する封止材の種類等に応じて、機械強度や耐熱性等の要求される特性を考慮の上、適宜選択される。
具体的な支持体を構成する材質としては、例えば、SUS等の金属材料;ガラス、シリコンウエハ等の非金属無機材料;エポキシ樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の樹脂材料;ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等が挙げられ、これらの中でも、SUS、ガラス、及びシリコンウエハ等が好ましい。
なお、エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0090】
前記支持体の厚さは、封止対象物の種類や、工程(ii)で使用する封止材の種類等に応じて適宜選択されるが、好ましくは20μm以上50mm以下であり、より好ましくは60μm以上20mm以下である。
【0091】
一方で、熱硬化性樹脂層の表面の一部に載置される封止対象物としては、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、化合物半導体、半導体パッケージ、電子部品、サファイア基板、ディスプレイ、パネル用基板等が挙げられる。
【0092】
例えば、封止対象物が半導体チップである場合、本発明の樹脂シートを用いることで、硬化樹脂層付き半導体チップを製造することができる。
半導体チップは、従来公知のものを使用することができ、その回路面には、トランジスタ、抵抗、コンデンサー等の回路素子から構成される集積回路が形成されている。
そして、半導体チップは、回路面とは反対側の裏面が、熱硬化性樹脂層の表面で覆われるように載置されることが好ましい。この場合、載置後、半導体チップの回路面が表出した状態となる。
半導体チップの載置には、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の公知の装置を用いることができる。
半導体チップの配置のレイアウト、配置数等は、目的とするパッケージの形態、生産数等に応じて適宜決定すればよい。
【0093】
ここで、FOWLP、FOPLP等のように、半導体チップをチップサイズよりも大きな領域を封止材で覆って、半導体チップの回路面だけではなく、封止材の表面領域においても再配線層を形成するパッケージに適用されることが好ましい。
そのため、半導体チップは、熱硬化性樹脂層の表面の一部に載置されるものであり、複数の半導体チップが、一定の間隔を空けて整列された状態で、当該表面に載置されることが好ましく、複数の半導体チップが、一定の間隔を空けて、複数行且つ複数列のマトリックス状に整列された状態で当該表面に載置されることがより好ましい。
半導体チップ同士の間隔は、目的とするパッケージの形態等に応じて適宜決定すればよい。
【0094】
<工程(ii)>
工程(ii)は、前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の前記熱硬化性樹脂層の表面とを封止材で被覆する工程である。
封止材は、封止対象物の表出している面全体を覆いつつ、複数の半導体チップ同士の間隙にも充填される。
図2(b)には、封止対象物60と、熱硬化性樹脂層10の表面をすべて覆うように、封止材70で被覆した状態を示している。
本工程においては、図2(b)に示すように、熱硬化性樹脂層10の表面をすべて覆うように、封止材70で被覆してもよく、封止対象物60の周辺部となる熱硬化性樹脂層10の表面の一部を封止材70で被覆してもよい。
【0095】
封止材は、封止対象物及びそれに付随する要素を外部環境から保護する機能を有するものである。
本発明の製造方法で用いる封止材は、熱硬化性樹脂を含む、熱硬化性の封止材である。
また、封止材は、室温で、顆粒状、ペレット状、フィルム状等の固形であってもよく、組成物の形態となった液状であってもよいが、作業性の観点から、フィルム状の封止材である封止樹脂フィルムが好ましい。
【0096】
被覆方法として、従来の封止工程に適用されている方法の中から、封止材の種類に応じて適宜選択して適用することができ、例えば、ロールラミネート法、真空プレス法、真空ラミネート法、スピンコート法、ダイコート法、トランスファーモールディング法、圧縮成形モールド法等を適用することができる。
【0097】
<工程(iii)>
工程(iii)は、封止材を熱硬化させて、封止対象物を含む硬化封止体を形成すると共に、熱硬化性樹脂層も熱硬化させ、硬化樹脂層を形成し、硬化樹脂層付き硬化封止体を得る工程である。
なお、工程(iii)は、前工程(ii)と、別々に実施してもよく、同時に実施してもよい。
例えば、前工程(ii)において、封止材を加熱する場合には、当該加熱によって、本工程も行い、そのまま封止材を熱硬化させてもよい。
【0098】
図2(c)に示すように、本工程では、封止材を熱硬化させて、封止対象物60を含む硬化封止体71を形成すると共に、熱硬化性樹脂層も熱硬化させ、硬化樹脂層11を形成する。
本工程では、封止材と共に熱硬化性樹脂層も熱硬化するため、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差を小さくすることができ、硬化封止体に生じる反りが効果的に抑制できると考えられる。
【0099】
なお、工程(iii)における温度条件は、封止材及び熱硬化性樹脂層が熱硬化する温度以上であればよく、封止材の種類や、熱硬化性樹脂層を構成する成分の種類によって、適宜設定されるが、通常120~220℃である。
【0100】
この後、図2(d)に示すように、熱硬化性樹脂層が熱硬化してなる硬化樹脂層と、第1粘着剤層31との界面で分離することで、硬化樹脂層11と、封止対象物60を含む硬化封止体71とを有する、硬化樹脂層付き硬化封止体80を得ることができる。
ここで、第1粘着剤層31が、エネルギー線硬化型の粘着剤組成物から形成された層である場合には、エネルギー線を照射することで、容易に分離することができる。
【0101】
なお、支持体から分離後、一般的な粘着シートを用いた場合には、硬化封止体に反りが生じる場合がある。しかし、本発明の樹脂シートを用いて得られた硬化樹脂層付き硬化封止体は、硬化樹脂層を有するため、硬化封止体に生じ得る反りを効果的に抑制することができる。
【0102】
このようにして得られた、硬化樹脂層付き硬化封止体は、この後、硬化封止体を半導体チップの回路面が露出するまで研削して、回路面に対して再配線を行う工程や、外部電極パッドを形成し、外部電極パッドと外部端子電極とを接続させる工程等を経てもよい。
また、硬化封止体に外部端子電極が接続された後、硬化封止体を個片化して、半導体装置を製造することもできる。
【実施例0103】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0104】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0105】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0106】
<熱硬化性樹脂層の熱硬化後の硬化樹脂層の貯蔵弾性率E’>
熱硬化性樹脂層を厚さ200μmになるように積層した後、大気雰囲気下でオーブン内に入れ、130℃で、2時間加熱して、厚さ200μmの熱硬化性樹脂層を熱硬化させ、硬化樹脂層とした。
動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製,製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数11Hz、振幅20μmの条件で、23℃における、形成した硬化樹脂層の貯蔵弾性率E’を測定した。
【0107】
<粘着力の測定>
剥離フィルム上に形成した粘着剤層又は熱硬化性樹脂層の表面に、厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」)を積層した。
そして、剥離フィルムを除去し、表出した粘着剤層又は熱硬化性樹脂層の表面を、被着体であるステンレス鋼板(SUS304 360番研磨)に貼付し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、24時間静置した後、同じ環境下で、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、23℃における粘着力を測定した。
【0108】
なお、以下の製造例で使用した剥離材は以下のとおりである。
<剥離材>
・重剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET382150」、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
・軽剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、PETフィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
【0109】
製造例1
(1)熱硬化性樹脂組成物の調製
下記に示す種類及び配合量(いずれも「有効成分比」)の各成分を配合し、さらにメチルエチルケトンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)61質量%の熱硬化性樹脂組成物の溶液を調製した。
・アクリル系重合体:配合量=26.07質量部
n-ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(質量平均分子量:40万、ガラス転移温度:-1℃)、上記成分(A1)に相当。
・エポキシ化合物(1):配合量=10.4質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER828」、エポキシ当量=184~194g/eq)、上記成分(B1)に相当。
・エポキシ化合物(2):配合量=5.2質量部
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、製品名「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量=255~260g/eq)、上記成分(B1)に相当。
・エポキシ化合物(3):配合量=1.7質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER1055」、エポキシ当量=800~900g/eq)、上記成分(B1)に相当。
・熱硬化剤:配合量=0.42質量部
ジシアンジアミド(ADEKA社製、製品名「アデカハードナーEH-3636AS」、活性水素量=21g/eq)、上記成分(B2)に相当。
・硬化促進剤:配合量=0.42質量部
2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、製品名「キュアゾール2PHZ」)、上記成分(B3)に相当。
・着色剤:配合量=0.20質量部
カーボンブラック(三菱化学株式会社製、製品名「#MA650」、平均粒子径=28nm)、上記成分(C)に相当。
・シランカップリング剤:配合量=0.09質量部
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名「KBM403」)、分子量=236.64、上記成分(D)に相当。
・無機充填材:配合量=55.5質量部
シリカフィラー(アドマテックス社製、製品名「SC2050MA」、平均粒子径=0.5μm)、上記成分(E)に相当。
【0110】
(2)熱硬化性樹脂層の形成
上記軽剥離フィルムの剥離処理面上に、上記(1)で調製した熱硬化性樹脂組成物の溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を120℃で2分間乾燥させて、厚さ25μmの熱硬化性樹脂層を形成した。
なお、形成した熱硬化性樹脂層の粘着力は0.5N/25mmであった。
また、熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の23℃における貯蔵弾性率E’は6.5×10Paであった。
【0111】
製造例2
(1)粘着剤組成物の調製
粘着性樹脂である、下記アクリル系共重合体(i)の固形分100質量部に、下記イソシアネート系架橋剤(i)5.0質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の粘着剤組成物を調製した。
・アクリル系共重合体(i):2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=80.0/20.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、質量平均分子量60万のアクリル系共重合体。
・イソシアネート架橋剤(i):東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%。
【0112】
(2)粘着剤層の形成
上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面に、上記(1)で調製した粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ5μmの第1粘着剤層を形成した。
また、上記重剥離フィルムの剥離剤層の表面に、同様にして、厚さ5μmの第2粘着剤層を形成した。
なお、上記方法に基づき測定した、第1粘着剤層及び第2粘着剤層の粘着力は、いずれも0.3N/25mmであった。
【0113】
実施例1
基材である、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」)の両面に、製造例2で形成した第1粘着剤層及び第2粘着剤層をそれぞれ貼付した。
そして、第1粘着剤層上に積層している軽剥離フィルムを除去し、表出した第1粘着剤層の粘着表面と、製造例1で形成した熱硬化性樹脂層の表面とを貼り合せ、重剥離フィルム/第2粘着剤層/基材/第1粘着剤層/熱硬化性樹脂層/軽剥離フィルムをこの順で積層した樹脂シートを得た。
【0114】
実施例2
以下の手順により、硬化樹脂層付き硬化封止体を作製した。
(1)半導体チップの載置
実施例1で作製した樹脂シートの重剥離フィルムを除去し、表出した第2粘着剤層の粘着表面を支持体(ガラス)と貼付した。
そして、当該樹脂シートの軽剥離フィルムも除去し、表出した熱硬化性樹脂層の表面上に、9個の半導体チップ(それぞれのチップサイズは6.4mm×6.4mm、チップ厚さは200μm(♯2000))を、各半導体チップの回路面とは反対側の裏面が当該表面と接するように、必要な間隔を空けて載置した。
【0115】
(2)硬化封止体及び硬化樹脂層の形成
9個の前記半導体チップと、当該半導体チップの少なくとも周辺部の熱硬化性樹脂層の表面とを、封止材である、熱硬化性の封止樹脂フィルムによって被覆し、真空加熱加圧ラミネーター(ROHM and HAAS社製の「7024HP5」)を用いて、封止樹脂フィルムを熱硬化させ、硬化封止体を作製した。
なお、封止条件は、下記のとおりである。
・予熱温度:テーブル及びダイアフラム共に100℃
・真空引き:60秒間
・ダイナミックプレスモード:30秒間
・スタティックプレスモード:10秒間
・封止温度:180℃
・封止時間:60分間
なお、この封止樹脂フィルムの熱硬化と共に、熱硬化性樹脂層も、上記の環境下で硬化させて、硬化樹脂層とした。
【0116】
(3)硬化樹脂層と第1粘着剤層との分離
上記(2)の後、熱硬化性樹脂層が熱硬化してなる硬化樹脂層と、第1粘着剤層との界面で分離し、硬化樹脂層付き硬化封止体を得た。
得られた硬化樹脂層付き硬化封止体を、室温(25℃)まで冷却したが、反りは見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の樹脂シートは、熱硬化性樹脂層の表面に、半導体チップ等の封止対象物を載置し、封止材で被覆して硬化させて、封止対象物を含む硬化封止体とする製造に用いることができる。そして、反りを抑制して平坦な表面を有する、硬化樹脂膜付きの硬化封止体を、生産性を向上させて製造することができる。
【符号の説明】
【0118】
1a、1b、1c、1d 樹脂シート
10 熱硬化性樹脂層
11 硬化樹脂層
20 基材
30、31、32 粘着剤層
60 封止対象物
70 封止材
71 硬化封止体
80 硬化樹脂層付き硬化封止体
100 支持体
図1
図2