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特開2023-107780ジカウイルスタンパク質を発現する組換え麻疹ウイルス及びその適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107780
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ジカウイルスタンパク質を発現する組換え麻疹ウイルス及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20230727BHJP
   C12N 15/45 20060101ALI20230727BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230727BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230727BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230727BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230727BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C12N15/40
C12N15/45
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/15
C12N5/10
C12N7/01
A61K39/12
A61P31/14
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081004
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2019567572の分割
【原出願日】2018-06-06
(31)【優先権主張番号】17305676.3
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508029653
【氏名又は名称】アンスティテュ・パストゥール
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・タンギー
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ・シモン-ロリエール
(57)【要約】
【課題】本発明は、ジカウイルスタンパク質を発現する組換え麻疹ウイルス、及び特に、ジカウイルスに対する予防保護を誘導することにおける、その適用に関する。
【解決手段】本発明は、少なくとも(i)ジカウイルス(ZIKV)の膜前駆体(prM)タンパク質、及びZIKVのエンベロープ(E)タンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え麻疹ウイルス(MV)を対象とし、投与後に宿主において複製することができる前記MV-ZIKVの組換え感染性粒子、及びまた、表面においてこれらのZIKVタンパク質を含有するウイルス様粒子(VLP)に関する。本発明は、これらの組換え感染性粒子及びVLPを生成するための手段、特に、核酸、ベクター、細胞及びレスキュー系を提供する。また、本発明は、ZIKVによる感染の予防のための、又はZIKV感染の臨床結果に対する予防保護のための、特に、組成物の形態下での、特に、ワクチン製剤中でのこれらの組換え感染性粒子及び/又はVLPの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも(i)ジカウイルス(ZIKV)の膜前駆体(prM)タンパク質、及びZIKVのエンベロープ(E)タンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチド;並びに
(2)麻疹ウイルス(MV)の全長感染性アンチゲノム(+)RNA鎖をコードするcDNA分子
を含み、
少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドが、作動可能に連結されている、特に、cDNA分子にクローニングされている、
核酸構築物。
【請求項2】
(1)のポリヌクレオチドと(2)のcDNA分子とが共に、6の倍数のヌクレオチド数からなることを特徴とする、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
5'~3'に、以下のポリヌクレオチド:
(a)MVのNタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(b)MVのPタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチド;
(d)MVのMタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(e)MVのFタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)MVのHタンパク質をコードするポリヌクレオチド;並びに
(g)MVのLタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含み、
前記ポリヌクレオチドが、核酸構築物において、ウイルス複製及び転写調節配列、例として、MVリーダー配列及びトレーラー配列の制御下で、作動可能に連結されている、
請求項1又は2に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記麻疹ウイルスが、Schwarz株、Zagreb株、AIK-C株及びMoraten株からなる群から選択される弱毒ウイルス株である、請求項1から3のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドが、マカク属コドン利用について最適化されているか、又はヒトコドン利用について最適化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項6】
麻疹編集様配列が、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドから欠失されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項7】
前記ZIKVが、アフリカ系統から、特に、アフリカ株ArB1362(GenBank:KF383115)若しくはアフリカ単離物IbH_30656(GenBank:HQ234500)から、又はアジア株から、特に、アジア株BeH818995(GenBank:KU365777)からのZIKVである、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項8】
少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドが、(iii)ZIKVのカプシドからのシグナルペプチド及びZIKVの膜タンパク質からのシグナルペプチドを更にコードするか、又は
少なくとも(ii)ZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドが、(iii)ZIKVのカプシドからのシグナルペプチド又はZIKVの膜タンパク質からのシグナルペプチドを更にコードする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項9】
Eタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、全長Eタンパク質、又は全長Eタンパク質の2つのC末端膜貫通ドメインを欠くその可溶型のいずれかをコードする、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項10】
Eタンパク質の切断型変形体をコードするポリヌクレオチドが、(i)ZIKVの全長Eタンパク質のアミノ酸位置456で切断されたEタンパク質をコードするポリヌクレオチド、(ii)ZIKVの全長Eタンパク質のアミノ酸位置445で切断されたEタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び(iii)ZIKVの全長Eタンパク質のアミノ酸位置404で切断されたEタンパク質をコードするポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項11】
ポリヌクレオチドが、配列が配列番号20であるZIKVのprMタンパク質をコードし、ポリヌクレオチドが、配列が配列番号23、配列番号26、配列番号29及び配列番号32からなる群から選択されるZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする、請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
ZIKVのprMタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号19の配列を有し、ZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドが、配列番号22、配列番号25、配列番号28及び配列番号31からなる群から選択される配列を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項13】
配列番号46、配列番号52、配列番号55、配列番号70、配列番号76、配列番号79、配列番号168及び配列番号170からなる群から選択される配列を含み、好ましくは、配列番号46、配列番号55又は配列番号76の配列を有し、より好ましくは、配列番号46の配列を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項14】
配列番号165の配列における位置83のヌクレオチド~位置18404のヌクレオチドの配列、又は配列番号166の配列における位置83のヌクレオチド~位置18074のヌクレオチドの配列、又は配列番号167の配列における位置83のヌクレオチド~位置17702のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の核酸構築物を含むトランスファーベクタープラスミド。
【請求項16】
配列が、配列番号165、配列番号166又は配列番号167であり、好ましくは、配列番号165である、請求項15に記載のトランスファーベクタープラスミド。
【請求項17】
ゲノムに挿入された請求項1から14のいずれか一項に記載の核酸構築物を含むか、又は請求項15若しくは16に記載のトランスファーベクタープラスミドを含む形質転換した細胞であって、特に、真核細胞、例として、鳥類細胞、特に、CEF細胞、哺乳動物細胞又は酵母細胞である細胞。
【請求項18】
ゲノムとして請求項1から14のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む組換え感染性複製型麻疹ウイルス-ジカウイルス(MV-ZIKV)粒子。
【請求項19】
ヘルパー細胞株によって認識されるRNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、MVの核タンパク質(N)、MVのリンタンパク質(P)及び任意選択で、MVのRNAポリメラーゼラージタンパク質(L)を発現し、かつ請求項15又は16に記載のトランスファーベクタープラスミドを更にトランスフェクトした前記細胞株からレスキューされる、請求項18に記載の組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子。
【請求項20】
ゲノム内に、配列番号46、配列番号52、配列番号55、配列番号70、配列番号76、配列番号79、配列番号168及び配列番号170からなる群から選択される配列を含むポリヌクレオチド配列を含み、好ましくは、配列番号46、配列番号55又は配列番号76の配列を有し、より好ましくは、配列番号46の配列を有する、請求項18又は19に記載の組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか一項に記載の組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子と同じZIKVタンパク質を発現するZIKVウイルス様粒子(VLP)と共在した前記MV-ZIKV粒子及び薬学的に許容される媒体を含む活性成分の組成物又はアセンブリ。
【請求項22】
宿主、特に、それを必要とするヒト宿主における、ZIKVタンパク質に対する抗体の、及び/又は細胞免疫応答の誘発による、前記ZIKVに対する保護免疫応答の誘発における使用のための請求項21に記載の活性成分の組成物又はアセンブリ。
【請求項23】
対象におけるZIKVによる感染の予防における、又は対象における、特に、ヒトにおけるZIKVによる感染の臨床結果の予防における使用のための、同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した、請求項18から20のいずれか一項に記載の組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子、又は請求項21に記載の活性成分の組成物若しくはアセンブリ。
【請求項24】
少なくとも(i)ZIKVの膜前駆体(prM)タンパク質、及びZIKVのエンベロープ(E)タンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え感染性麻疹ウイルス-ジカウイルス(MV-ZIKV)粒子、並びに同じZIKVタンパク質を発現するZIKVウイルス様粒子(VLP)をレスキューする方法であって:
1)T7 RNAポリメラーゼ並びに麻疹N及びPタンパク質を安定に発現するヘルパー細胞、特に、HEK293ヘルパー細胞に、(i)請求項15又は16に記載のトランスファーベクタープラスミド、及び(ii)MV Lポリメラーゼをコードするベクター、とりわけ、プラスミドを共トランスフェクトする工程と、
2)組換えMV-ZIKV粒子の生成を可能にする条件下で前記共トランスフェクトしたヘルパー細胞を培養する工程と、
3)工程2)の前記ヘルパー細胞を、増殖を可能にする細胞、例として、ベロ細胞と共培養することによって、そのようにして生成した組換えMV-ZIKV粒子を増殖させる工程と、
4)少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子、並びに同じZIKVタンパク質を発現するZIKV VLPを回収する工程と
を含む方法。
【請求項25】
トランスファーベクタープラスミドが、配列番号165、配列番号166又は配列番号167の配列を有し、好ましくは、配列番号165の配列を有する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカウイルスタンパク質を発現する組換え麻疹ウイルス、及び特に、ジカウイルスに対する予防保護を誘導することにおける、その適用に関する。本発明は、少なくとも(i)ジカウイルス(ZIKV:Zika virus)の膜前駆体(prM:precursor of membrane)タンパク質、及びZIKVのエンベロープ(E:envelope)タンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え麻疹ウイルス(MV:measles virus)を対象とし、投与後に宿主において複製することができる前記MV-ZIKVの組換え感染性粒子、及びまた、表面においてこれらのZIKVタンパク質を含有するウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)に関する。本発明は、これらの組換え感染性粒子及びVLPを生成するための手段、特に、核酸、ベクター、細胞及びレスキュー系を提供する。また、本発明は、ZIKVによる感染の予防のための、又はZIKV感染の臨床結果に対する予防保護のための、特に、組成物の形態下での、特に、ワクチン製剤中でのこれらの組換え感染性粒子及び/又はVLPの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ZIKVは、広がりつつある蚊媒介性フラビウイルスである。それは、1947年に最初に単離されたが、今日までにZIKV疾患に対して使用可能な特定の治療又は任意のワクチンがなく、そのため、それは本当に放置された広がりつつある疾患になっている。以前は冒されていなかった領域、例として、南太平洋の島々及びラテンアメリカにおけるZIKVの最近の急速な広がりから、このウイルスによる感染が、成人における神経学的合併症と、及び新生児の重度の先天性脳奇形の増大と関連付けられ得るという強い疫学的証拠が提供されている。その結果、世界保健機関(WHO:World Health Organization)は、ZIKVの最近の爆発的流行を公衆衛生上の緊急事態と宣言した。
【0003】
ZIKVは、1974年にウガンダのジカ林でアカゲザルから最初に単離された(Gubler DJら編、Fields Virology、第5版、Philadelphia、PA:Lippincott Williams & Wilkins Publishers、2007:1155~227頁;Dick GWAら、Trans R Soc Trop Med Hyg 1952;46:509~20頁)。最初のヒト感染は、1954年にナイジェリアで報告された(Macnamara FN.、Trans R Soc Trop Med Hyg 1954;48:139~45頁)。デングウイルス及びチクングニアウイルスと同様に、ZIKVは、非ヒト霊長類及びベクターとしての広スペクトルの森林蚊種を含む祖先の伝染サイクルから、リザーバーとしてのヒト及びベクターとしての広く分布するヤブ蚊を含む都市型サイクルに適応した(Musso Dら、Lancet 2015;386:243~44頁)。1950年代以来、ZIKVは、アフリカ及び東南アジアにおいて単発的な伝染が報告されているのみであった。2007年に、ZIKVは、ミクロネシアのヤップ島で、太平洋において最初に単離された(Duffy MRら、N Engl J Med 2009;360:2536~43頁)。2013年10月~2014年4月の間に、フランス領ポリネシアにおいて、その時までに報告された中で最も大きなジカの爆発的流行が起こった(Cao-Lormeau VMら、Emerg Infect Dis 2013;20:1085~86頁)。32,000人を超える患者が、ZIKV感染の疑いを有した。2014~2015年の間、ZIKVは他の太平洋の島々、とりわけ、クック諸島及びイースター島(チリ)に広がった。2015年3月に、ブラジルは、ZIKVの現地性伝染を報告し(Zanluca Cら、Mem Inst Oswaldo Cruz 2015;110:569~72頁)、6カ月後に先例のない爆発的流行を宣言し(Dyer O.、BMJ 2015;351:h6983)、2015年12月の間の感染を440,000~130万事例と仮に見積もった(欧州疾病予防管理センター、2015年12月10日)。2016年3月時点で、ZIKV感染は、世界中で43の国々及び領地から報告されている。
【0004】
現在のジカの流行は、このウイルスについてこれまでに記録された中で最も大きな流行である(Abushoukら、An updated review of Zika virus、J. Clin. Virol. 2016、84、53~58頁)。ZIKVによる感染は通常、軽度の疾患と関連付けられていたが、米州におけるその出現は、ギラン・バレー症候群を発症する患者の急激な増大と同時に起こった。そのうえ、ZIKVによる感染は、神経学的合併症、特に、先天性小頭症を有する乳児の誕生と関連しており(WHO、ギラン・バレー症候群-エルサルバドル、2016年1月21日;ECDC. Rapid risk assessment. Zika virus epidemic in the Americas: potential association with microcephaly and Guillain-Barre syndrome.、2015年12月10日;Soares de Araujo Jら、Microcephaly in northeast Brazil: a review of 16 208 births between 2012 and 2015)、妊娠中の女性が妊娠初期にZIKVに曝露された場合、新生児の小頭症のリスクが2/10000から1/100まで50倍増大することが示された(Cauchemez Sら、Association between Zika virus and microcephaly in French Polynesia, 2013-15: a retrospective study.、The Lancet 2016)。2016年2月に、WHOは、ZIKVと神経学的障害及び新生児奇形との間の関連の疑いを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言した。
【0005】
この関係において、2016年3月に、WHOに召集された専門家らにより、予防ワクチンの開発が将来のジカ流行に応答するための主要な優先事項であることが合意された。安全かつ有効なワクチンの開発を早期に達成するために、実用策が求められた。ZIKV感染と感染した母親から産まれた乳児における先天性小頭症の出現との間の関連が確立されているため、ジカワクチンは、妊娠中の女性における使用に好適でなければならないことが議論され得る。しかしながら、妊娠中の使用に現在推奨されている認可されたワクチンはない。そのうえ、ジカ感染とギラン・バレー症候群との関連が示されていること、性行為感染の可能性が観察されていること、及びおそらく妊娠中非常に早期に出現する発育障害の出現から、ワクチンは、一般集団を対象とするべきである可能性が非常に高い。いずれにせよ、ジカワクチンは、特に、向神経性のリスクに関して、優れた安全性プロファイルを示されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2004/000876
【特許文献2】WO2008/078198
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gubler DJら編、Fields Virology、第5版、Philadelphia、PA:Lippincott Williams & Wilkins Publishers、2007:1155~227頁
【非特許文献2】Dick GWAら、Trans R Soc Trop Med Hyg 1952;46:509~20頁
【非特許文献3】Macnamara FN.、Trans R Soc Trop Med Hyg 1954;48:139~45頁
【非特許文献4】Musso Dら、Lancet 2015;386:243~44頁
【非特許文献5】Duffy MRら、N Engl J Med 2009;360:2536~43頁
【非特許文献6】Cao-Lormeau VMら、Emerg Infect Dis 2013;20:1085~86頁
【非特許文献7】Zanluca Cら、Mem Inst Oswaldo Cruz 2015;110:569~72頁
【非特許文献8】Dyer O.、BMJ 2015;351:h6983
【非特許文献9】Abushoukら、An updated review of Zika virus、J. Clin. Virol. 2016、84、53~58頁
【非特許文献10】Soares de Araujo Jら、Microcephaly in northeast Brazil: a review of 16 208 births between 2012 and 2015
【非特許文献11】Cauchemez Sら、Association between Zika virus and microcephaly in French Polynesia, 2013-15: a retrospective study.、The Lancet 2016
【非特許文献12】Combredet, C.ら、2003、J Virol, 77(21):11546~11554頁
【非特許文献13】Rasmussen SAら、Obstet Gynecol.、2015年7月;126(1):163~70頁
【非特許文献14】Swamy GKら、Obstet Gynecol.、2015年1月;125(1):212~26頁
【非特許文献15】Enders, J. F.及びT. C. Peebles、1954、Propagation in tissue cultures of cytopathogenic agents from patients with measles、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 86:277~286頁
【非特許文献16】Horikami S.M.及びMoyer S.A.(Curr. Top. Microbiol. Immunol.(1995)191、35~50頁
【非特許文献17】Combredet C.ら(Journal of Virology、2003年11月、11546~11554頁)
【非特許文献18】Neumann G.ら(Journal of General Virology(2002)83、2635~2662頁)
【非特許文献19】www.fda.gov/cber/vaccine/vacappr.htm
【非特許文献20】Cattaneo Rら、Cell、1989年3月10日;56(5):759~64頁
【非特許文献21】Barba-Spaethら、Nature 2016、536、48~53頁
【非特許文献22】Ekinsら、Illustrating and homology modeling the proteins of the Zika virus、F1000Research 2016、5:275頁
【非特許文献23】http://sigpep.services.came.sbg.ac.at/signalblast.html
【非特許文献24】http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/
【非特許文献25】http://www.predisi.de/
【非特許文献26】Combredet, C.ら、2003、J Virol, 77(21):11546~11554頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ジカワクチンの早期開発を可能にするために、本発明者らは、新しい流行が起こった時にいつでも予防ワクチンの適時使用可能性を確実にするために、ZIKV保護抗原の送達ベクターとして、使用可能な最も安全かつ最も有効なワクチンのうちの1つである弱毒生麻疹ワクチンを使用した。この送達プラットホーム技術は、ヒトにおける原理の証拠、及び様々な病原体について迅速な適応性及び有効性の前臨床実績を示している。そのうえ、これらの麻疹ベクターベースのワクチンの製造方法は、最適化されており、標準製造麻疹ワクチン方法より高い収率及び純度を与える。それは、標準設備を使用し、したがって、更なるスケールアップ及び低中所得国への技術移転に向いている。
【0009】
麻疹ワクチン接種は、10億人を超える小児において40年以上使用されており、1回の投与後約93%有効であり、2回の投与後97%有効である。弱毒麻疹ワクチン株は、遺伝的に安定であることが示されている。病原性の復帰又は宿主細胞ゲノムへの組込みは、実質的に不可能であり、一度も観察されていない。これらの特徴を利用して、本発明者らは、以前に弱毒麻疹Schwarzワクチンウイルスをクローニングし、このマイナス鎖RNAウイルスを遺伝子操作して、多用途キメラ又は組換えベクターにする方法を開発した(Combredet, C.ら、2003、J Virol, 77(21):11546~11554頁)。
【0010】
ZIKVに対する予防ワクチンは、任意の他の標的についてと同様に、安全かつ有効でなければならない。加えて、先進国及び途上国の両方に影響を及ぼす迅速に出現するウイルスの特別な疫学、並びに重篤な先天性欠損を引き起こす妊娠中の感染の脅威が理由で、理想的なZIKVワクチンとなるためのいくつかの追加の特徴が求められている。
【0011】
妊娠中のZIKV感染は、先天性欠損を引き起こすことが強く疑われる。生ワクチンは一般的に、妊娠中禁忌であるが、麻疹感染は、先天性欠損に関係しておらず(Rasmussen SAら、Obstet Gynecol.、2015年7月;126(1):163~70頁)、妊娠中のMMRワクチンの偶発的適用は、先天性欠損と関係しなかった(Swamy GKら、Obstet Gynecol.、2015年1月;125(1):212~26頁)。本発明による麻疹ベースのワクチンとは対照的に、弱毒生ジカワクチン手法は、偶発的に妊娠中に適用された場合、非常に顕著な安全性懸念を生じ得る。妊娠中の使用に意図されるジカに対するワクチンが開発され、現在の流行を停止するために任意の許容される時間枠内で認可され得るかどうかについては、深刻な疑念を持たざるを得ない。それよりも、妊娠中の偶発的な使用について安全性への懸念が最小限である青年用ワクチンは、ジカ誘導疾患を除去するのに最も実際的かつ現実的な介入であるように見える。麻疹ベースのワクチンは、その標的プロファイルに正確に適合し得る。
【0012】
本発明の麻疹ベースの手法は、代替の手法と少なくとも同等に、又は代替の手法より優れて、将来のZIKVワクチンの関連基準のすべてを満たし得る。特に、小児、青年及び旅行者用の非アジュバント化麻疹ベースのZIKVワクチンは、短時間枠内で開発される最も有望な候補のうちの1つであり、優れた安全性及び有効性プロファイルを有し、限定的な経済力の国々でもその使用が適合できる生成及び費用特徴を有する。
【0013】
この目標のために、本発明者らにより連続的な開発経路が定義された。第1の段階は、少なくともZIKV prM-E又はEタンパク質を可溶性分泌抗原として発現する組換えMVの構築及び特徴付けであった。特徴付けは、ジカ抗原発現の証明、生成細胞株における増殖特徴の確立、及び遺伝的安定性の分析を含んだ。選択した組換えMV-ジカワクチンの前臨床免疫原性及び保護有効性を、MV感染しやすいCD46-IFNARマウスにおいて評価した。現在の最も優れた選択した候補を、ZIKV感染の非ヒト霊長類モデルにおいて免疫原性及び保護有効性について評価した。
【0014】
本発明者らは、少なくともZIKV prM-E又はE抗原をコードするポリヌクレオチドで組み換えた組換え感染性複製型MVに基づくワクチンの生成を達成し、これらの抗原は、特に、投与後に宿主において組換えウイルスが複製するときに回収する。したがって、本発明は、広く使用されている麻疹、特に、Schwarz株からの麻疹、小児用ワクチンに基づくZIKV生ワクチン活性成分に関する。好ましい実施形態においては、この組換えMV-ZIKV生ワクチンは、感染細胞において複製することによりZIKV VLPを産出する。
【0015】
MVは、パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科のモルビリウイルス(Morbillivirus)属の非セグメント化一本鎖マイナス鎖包膜化RNAウイルスである。このウイルスは、1954年に単離されており(Enders, J. F.及びT. C. Peebles、1954、Propagation in tissue cultures of cytopathogenic agents from patients with measles、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 86:277~286頁)、弱毒生ワクチンは、それ以来このウイルスに由来し、特に、Schwarz株からのワクチン株を提供している。麻疹ワクチンは、ここ30年にわたり何億人もの小児に投与されており、その有効性及び安全性が証明されている。それは、多くの国においてラージスケールで生成され、低コストで配布される。すべてのこれらの理由のために、本発明者らは、弱毒MVを使用して、ZIKVのprM-E又はE抗原を安定に発現し、おそらくVLPも発現することができる組換えMV粒子を産生した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は:
(1)少なくとも(i)ジカウイルス(ZIKV)の膜前駆体(prM)タンパク質、及びZIKVのエンベロープ(E)タンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチド;並びに
(2)麻疹ウイルス(MV)の全長感染性アンチゲノム(+)RNA鎖をコードするcDNA分子
を含み、
少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドが、作動可能に連結されている、特に、cDNA分子にクローニングされている、
核酸構築物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ジカウイルスゲノムの略図。
図2】Eタンパク質(左)の、及びポリメラーゼNS5タンパク質(右)のアミノ酸配列に基づく主なヒト病原性フラビウイルスの系統樹。JEV、日本脳炎ウイルス;MVEV、マレー渓谷脳炎ウイルス;POWV、ポワッサンウイルス;SLEV、セントルイス脳炎ウイルス;TBEV、ダニ媒介脳炎ウイルス;YFV、黄熱病ウイルス;WNV、西ナイルウイルス。
図3A】ジカウイルス抗原の略図。タンパク質ドメインは、正確な縮尺率である。ジカ、ジカウイルス;JEV、日本脳炎ウイルス;MV、麻疹ウイルス。ジカウイルスのカプシドからの(sp)、又は膜タンパク質からの(sp')ネイティブシグナルペプチドを使用するジカ抗原の12個のバリアント。
図3B】ジカウイルス抗原の略図。タンパク質ドメインは、正確な縮尺率である。ジカ、ジカウイルス;JEV、日本脳炎ウイルス;MV、麻疹ウイルス。JEVのカプシドのシグナルペプチドを使用するキメラJEV-ジカ抗原の8個のバリアント。
図3C】ジカウイルス抗原の略図。タンパク質ドメインは、正確な縮尺率である。ジカ、ジカウイルス;JEV、日本脳炎ウイルス;MV、麻疹ウイルス。MVの融合タンパク質のシグナルペプチド(MVsp)を使用するMV-ジカ抗原の10個のバリアント。
図3D】ジカウイルス抗原の略図。タンパク質ドメインは、正確な縮尺率である。ジカ、ジカウイルス;JEV、日本脳炎ウイルス;MV、麻疹ウイルス。MVの融合タンパク質の修飾シグナルペプチド(MVsp')を使用するMVジカ抗原の10個のバリアント。
図4】MVベクターの略図。MV遺伝子を示す:N(核タンパク質)、PVC(リンタンパク質及びV/Cタンパク質)、M(マトリックス)、F(融合)、H(ヘマグルチニン)、L(ポリメラーゼ)、T7(T7 RNAポリメラーゼプロモーター)、hh(ハンマーヘッドリボザイム)、T7t(T7 RNAポリメラーゼターミネーター)、∂(肝炎デルタウイルスリボザイム)、赤矢印(追加の転写ユニット)。
図5A】マウスにおける単回の免疫化。単回免疫化の1カ月後にELISAによりマウス血清において測定したジカ抗体応答。MV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4);MV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)。
図5B】マウスにおける単回の免疫化。ジカウイルスによる負荷後の免疫化マウスの生存。
図5C】マウスにおける単回の免疫化。負荷後の様々な日における(RT-qPCRにより決定した)免疫化マウスの血清中のジカウイルス血症。
図5D】マウスにおける単回の免疫化。MV-ジカ又は対照MVSchwウイルスによる免疫化1週間後のマウスの脾細胞において検出されたIFN-ガンマエリスポット。MV(Schwarz)、ジカウイルス(ジカ)及び対照としてのコンカナバリンAに対して、エリスポットを検出する。
図6A】マウスにおけるプライム-ブースト免疫化。2回の免疫化後の30、45及び55日目にELISAによりマウス血清において測定したジカ抗体応答。
図6B】マウスにおけるプライム-ブースト免疫化。MV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4)、MV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)の2回の注射により免疫化したマウスの血清中のジカウイルス中和抗体の検出。
図6C】マウスにおけるプライム-ブースト免疫化。低用量のジカウイルスによる負荷後の免疫化マウスの生存。
図6D】マウスにおけるプライム-ブースト免疫化。負荷後の様々な日における(RT-qPCRにより決定した)免疫化マウスの血清中のジカウイルス血症。
図7】全長prMEジカ抗原(構築物A1)を発現する組換えMVは、ジカVLPを生成する。ベロ細胞に、rMV-ジカ_A1(1、2、3)の3つの異なるクローンを48時間感染させた。細胞溶解物及び培地を回収した。培地上清を、低速遠心分離(1500rpm)により浄化し、その後、20%ショ糖クッション上での3時間の超遠心分離(36000rpm)により濃縮した。ウェスタンブロットによりすべての材料を分析して、4G2全フラビモノクローナル抗体によりジカEタンパク質(50kD)を検出した。(A)細胞溶解物、(B)濃縮培地、(C)非濃縮培地並びに陽性及び陰性対照。陽性対照は、ジカA1抗原を発現するpcDNA5プラスミドを48時間トランスフェクトしたベロ細胞の溶解物である。超遠心分離後のパネルBにおいて回収した陽性Eタンパク質は、高密度VLPが感染ベロ細胞の上清において生成したことを示す。
図8】ジカウイルス抗原発現アッセイ。HEK293T細胞に、各コドン最適化構築物をトランスフェクトし、細胞溶解物及び培地を48時間後に回収した。培地上清を、低速遠心分離(1500rpm)により浄化し、その後、20%ショ糖クッション上での3時間の超遠心分離(36000rpm)により濃縮した。ウェスタンブロットによりすべての材料を分析して、4G2全フラビウイルス抗体によりジカウイルスEタンパク質(約50kD)を検出した。(L)細胞溶解物、(S)非濃縮培地及び(U)超遠心分離した培地。
図9】麻疹ベクターからのジカウイルス抗原A1の発現、及び組換えMV-ジカ-A1の増殖曲線。(A)免疫蛍光分析は、MV-ジカ-A1に24時間感染させたベロ細胞において大きなシンシチウムを示した(4G2全フラビウイルス抗体によりジカウイルスEタンパク質を検出した)。(B)0.01の感染多重度による感染後の32℃でのベロ細胞上における組換えMV-ジカ-A1ウイルスの複製(限界希釈及びKarber法によりタイターを決定した)。
図10】免疫化CD46-IFNAR-/-マウスにおけるZIKVに対する抗体応答。ZIKV EDIIIに対する抗体タイターを、MV-ZIKV-A1、MV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4)、MV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)、MV-ZIKV-A12又は対照空MV-Schwarzによるプライムブースト後に回収したマウス血清において間接的ELISAを使用して決定した。ZIKV-EDIIIによるウェルから、模倣抗原によりコーティングしたウェルからの読取りを引き、ZIKV特異的IgGタイターを、0.5の吸光度を与える個々の血清の最も高い希釈の逆数として計算した。免疫化マウスにおいて、ZIKVに対する強い抗体応答が誘導され、A1(高再現性)及びA12(より変動性)についてわずかに高い値を有した。
図11】免疫化CD46-IFNAR-/-マウスにおけるZIKV中和抗体タイター。MV-ZIKV-A1、MV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4)、MV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)、MV-ZIKV-A12又は対照空MV-Schwarzによる最後のブースト後、負荷前に回収したマウス血清においてプラーク低減中和試験(PRNT50)を使用することによって、ZIKVに対する中和抗体タイターを決定した。MV-ZIKV-A1構築物により、最も強い中和タイターが観察された。
図12】免疫化CD46-IFNAR-/-マウスの、ZIKV非致死負荷からの保護。MV-ZIKV-A1、MV-ZIKV-A12又は対照空MV-Schwarzにより2回免疫化したマウスに、最後の免疫化の1カ月後に、103ffuのZIKV(アジア-南米系統、2015年12月に単離された)による負荷を与えた。RT-qPCRにより、ウイルスロードを決定した。LODは、RT-qPCRの検出限界を示す。構築物MV-ZIKV-A1により免疫化したマウスはすべてウイルス血症から保護され、一方で、MV-ZIKV-A12又は空MV-Schwarz対照により免疫化したマウスは感染した。
図13】免疫化CD46-IFNAR-/-マウスの、ZIKV致死負荷からの保護。MV-ZIKV-A1又は対照空MV-Schwarzにより2回免疫化したマウスに、最後の免疫化の1カ月後に、103ffuのZIKV(アフリカ系統のマウス適合株)による負荷を与えた。動物を、罹患率及び死亡率について15日間モニターした。MV-ZIKV-A1で免疫化したすべての動物は、疾患の徴候を示すことなく生存し、一方で、すべての対照マウスは、8日目までに死亡した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による核酸構築物は、特に、共に作動可能に連結された、様々な起源の様々なポリヌクレオチドの組換えによって得たか、又は得ることができる、精製DNA分子である。
【0019】
「作動可能に連結され」という表現は、本発明の核酸構築物の様々なポリヌクレオチド間に存在する機能的連結を指し、その機能的連結とは、前記様々なポリヌクレオチド及び核酸構築物が、特に、細胞若しくは細胞株において、とりわけ、本発明のキメラ感染性MV粒子の生成のためのレスキュー系の部分として使用される細胞若しくは細胞株において、又は宿主細胞において、とりわけ、ヒト細胞において、有効に転写され、該当する場合翻訳されるようなものである。
【0020】
本発明の特定の実施形態においては、構築物は、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドを、MVの全長感染性アンチゲノム(+)RNA鎖をコードするcDNAにクローニングすることによって調製される。或いは、本発明の核酸構築物は、核酸断片の合成又はPCRによる重合を含む鋳型からの重合の工程を使用して調製することができる。
【0021】
本発明の特定の実施形態においては、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、MVのcDNAに挿入されたATU(Additional Transcription Unit)にクローニングされる。ATU配列は、当業者に公知であり、MVのcDNAへのクローニングの工程における使用のために、MV cDNAにおける導入遺伝子のMV依存的発現に必要なシス作用配列、例として、前述の遺伝子のプロモーター、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドにより表されるインサート、並びに前記ポリヌクレオチドの挿入のためのマルチクローニング部位カセットを含む。
【0022】
本発明を行うために使用するとき、ATUは、MVのアンチゲノムの全長(+)RNA鎖をコードするcDNA分子のN末端配列に有利に位置し、とりわけ、このウイルスのP及びM遺伝子間、又はH及びL遺伝子間に位置する。MVのウイルスRNAの転写は、5'~3'末端への勾配に従うことが観察されている。このことは、cDNAのコード配列の5'末端に挿入された場合、ATUは、それが含有する異種DNA配列(例えば、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチド)のより効率的な発現を可能にすることを説明する。
【0023】
したがって、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、MVのcDNA分子の任意の遺伝子間領域に、特に、ATUに挿入され得る。本発明の特定の構築物は、実施例で例示する構築物である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態においては、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、MV cDNA分子のP及びM遺伝子の遺伝子間領域に、特に、ATUに挿入される。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「コードする」という表現は、核酸分子が転写され、該当する場合翻訳されて、選択された細胞又は細胞株へ生成物を発現する能力を定義する。したがって、核酸構築物は、コード配列の転写を制御する調節エレメント、特に、転写のためのプロモーター及び停止配列、並びに可能性としてエンハンサー及び他のシス作用エレメントを含み得る。これらの調節エレメントは、ZIKVポリヌクレオチド配列について異種であってもよい。
【0026】
「タンパク質」という用語は、「抗原」又は「ポリペプチド」という用語と互換的に使用され、アミノ酸残基の連結から得られる分子を定義する。特に、本出願において開示するタンパク質は、ZIKVに由来し、ネイティブタンパク質と同一であり得る構造タンパク質、又は或いは(特に、保存的アミノ酸残基による)置換によるもの若しくはアミノ酸残基の付加によるもの若しくは翻訳後の二次修飾によるもの若しくは参照ネイティブタンパク質について短くなったサイズを有する断片をもたらすネイティブタンパク質の部分の欠失によるものを含む、変異によってネイティブタンパク質から派生させ得る構造タンパク質である。断片は、それらが宿主における、特に、ヒト宿主における免疫応答、好ましくは、ZIKV感染に対する、又はZIKV関連疾患に対する保護を可能にする応答の誘発に好適なネイティブタンパク質のエピトープを有する限り、本発明に包含される。エピトープは、特に、タンパク質が投与された、又はタンパク質が本発明の感染性複製型粒子の投与後に発現する宿主において、抗体生成の活性化を通して体液性免疫応答の誘発に関与するBエピトープの種類のエピトープである。エピトープは或いは、細胞媒介免疫応答(CMI応答:Cell Mediated Immune response)の誘発に関与するTエピトープの種類のエピトープであり得る。断片は、ZIKVのネイティブタンパク質のアミノ酸配列サイズの50%を超える、好ましくは、少なくとも90%又は95%であるサイズを有し得る。或いは、断片は、ネイティブタンパク質のエピトープを含む、少なくとも10個のアミノ酸残基の短いポリペプチドであってもよい。また、この点における断片は、本明細書で定義するポリエピトープを含む。
【0027】
本発明の特定の実施形態においては、前記核酸構築物は、MVゲノムの6の規則を満たす、すなわち、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、MVの全長感染性アンチゲノム(+)RNA鎖をコードするcDNA分子と共に、6の倍数のヌクレオチド数からなる。
【0028】
MVゲノムの組織化並びにそれらの複製及び転写プロセスは、先行技術において完全に特定されており、とりわけ、Horikami S.M.及びMoyer S.A.(Curr. Top. Microbiol. Immunol.(1995)191、35~50頁)において、又はウイルスのSchwarzワクチン接種株についてCombredet C.ら(Journal of Virology、2003年11月、11546~11554頁)において、又は広く考えられるマイナスセンスRNAウイルスについてNeumann G.ら(Journal of General Virology(2002)83、2635~2662頁)において開示されている。
【0029】
「6の規則」は、MV(+)鎖RNAゲノムを表す核酸において、又はそれを含む核酸構築物において存在するヌクレオチドの総数が、6の倍数であるという事実において表される。「6の規則」は、MVゲノムにおけるヌクレオチドの総数についての必要条件として当技術水準において認められており、それは、MVゲノムRNAの効率的な、又は最適化された複製を可能にする。6の規則を満たす核酸構築物を定義する本発明の実施形態においては、前記規則は、個々に、又は集合的に解釈される場合、全長MV(+)鎖RNAゲノム及びすべての挿入配列をコードするcDNAを特定する核酸構築物に適用される。この点において、6の規則は、MVの全長感染性アンチゲノム(+)RNA鎖をコードするcDNAに、及び可能性として、前記cDNAにクローニングされた、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドに適用される。
【0030】
本発明の特定の実施形態においては、核酸構築物は、5'~3'に、以下のポリヌクレオチド:
(a)MVのNタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(b)MVのPタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチド;
(d)MVのMタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(e)MVのFタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)MVのHタンパク質をコードするポリヌクレオチド;並びに
(g)MVのLタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含み、
前記ポリヌクレオチドは、核酸構築物において、ウイルス複製及び転写調節配列、例として、MVリーダー配列及びトレーラー配列の制御下に作動可能に連結されている。
【0031】
「Nタンパク質」、「Pタンパク質」、「Mタンパク質」、「Fタンパク質」、「Hタンパク質」及び「Lタンパク質」という表現は、それぞれ、MVの核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、融合タンパク質(F)、ヘマグルチニンタンパク質(H)及びRNAポリメラーゼラージタンパク質(L)を指す。これらの成分は、先行技術において特定されており、とりわけ、ウイルス学の分野(Knipe及びHowley、2001)において開示されている。
【0032】
本発明の好ましい実施形態においては、麻疹ウイルスは、弱毒ウイルス株である。
【0033】
麻疹ウイルスの「弱毒株」は、無毒性又は同じ宿主において親株より毒性でない一方で、宿主に投与された場合免疫原性及びおそらく免疫賦活作用を維持する、すなわち、免疫優性T及びB細胞エピトープ並びにおそらく免疫賦活作用、例として、T細胞共刺激性タンパク質又はサイトカインIL-12の誘導を保持する株として定義される。
【0034】
したがって、MVの弱毒株は、選択した細胞において連続継代し、可能性としてワクチン株の調製に好適なシード株を生成するための他の細胞に適合させた株であって、病原性の復帰及び宿主染色体への組込みを許容しない安定なゲノムを含む株を指す。特定の「弱毒株」として、ワクチンに承認されている株は、それが米国食品医薬品局(FDA:US Food and Drug Administration)により定義される基準を満たす場合、すなわち、それが検査室データ及び臨床データの厳密な再検討後に安全性、有効性、質及び再現性基準を満たす場合、本発明に好適な弱毒株である(www.fda.gov/cber/vaccine/vacappr.htm)。
【0035】
本発明を実施するため及びとりわけ、核酸構築物のMV cDNAを派生させるために使用され得る特定の弱毒株は、Schwarz株、Zagreb株、AIK-C株及びMoraten株である。すべてのこれらの株は、先行技術において説明されており、それらの利用は、特に、市販のワクチンとして提供されている。
【0036】
本発明の特定の実施形態においては、cDNA分子は、異種の発現制御配列の制御下に置かれる。cDNA発現のそのような制御の挿入は、このcDNAの発現が、細胞のネイティブ制御配列ではcDNAの全転写を可能にしない細胞種において求められる場合、好ましい。
【0037】
本発明の特定の実施形態においては、異種の発現制御配列は、T7プロモーター及びT7ターミネーター配列を含む。これらの配列は、それぞれ、MVの全長アンチゲノム(+)RNA鎖のコード配列の5'及び3'に、このコード配列の周囲の隣接配列から位置する。
【0038】
本発明の特定の実施形態においては、本明細書上記に定義するcDNA分子は、改変される、すなわち、追加のヌクレオチド配列又はモチーフを含む。
【0039】
好ましい実施形態においては、本発明のcDNA分子は、その5'末端に、MV承認ワクチン株の全長アンチゲノム(+)RNA鎖をコードするヌクレオチド配列の最初のヌクレオチドに隣接して、GGGモチーフ及び続いてハンマーヘッドリボザイム配列を更に含み、その3'末端に、全長アンチゲノム(+)RNA鎖をコードする前記ヌクレオチド配列の最後のヌクレオチドに隣接して、リボザイム配列を含む。肝炎デルタウイルスリボザイム(δ)は、本発明を行うのに適する。
【0040】
上記のコード配列の最初のヌクレオチドに隣接して、5'末端に置かれたGGGモチーフは、前記cDNAコード配列の転写効率を改善する。麻疹ウイルス粒子の適切なアセンブリの必要条件は、本発明の核酸構築物のアンチゲノム(+)RNAをコードするcDNAが6の規則に従うことであるので、GGGモチーフが付加された場合、MVの全長アンチゲノム(+)RNA鎖の最初のコードヌクレオチドにおける転写産物の切断を可能にするために、リボザイムもまた、GGGモチーフの3'であるcDNAのコード配列の5'末端に付加される。
【0041】
本発明の特定の実施形態においては、本発明の核酸構築物を調製するために、先行技術において開示されているMVの全長アンチゲノム(+)RNAをコードするcDNA分子の調製は、公知の方法によって達成される。前記cDNAは、とりわけ、それがベクター、例として、プラスミドに挿入された場合、ゲノムベクターを提供する。
【0042】
本発明の核酸構築物の調製に好適な特定のcDNA分子は、MVのSchwarz株を使用して得られるcDNA分子である。したがって、本発明において使用されるcDNAは、WO2004/000876において開示されている通りに得てもよく、又は2002年6月12日に番号I-2889の下にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes、28 rue du Dr Roux, 75724 Paris Cedex 15、France)のパスツール研究所に寄託されるプラスミドpTM-MVSchwから得てもよく、その配列は、参照により本明細書に組み込むWO2004/000876において開示されている。プラスミドpTM-MVSchwは、Bluescriptプラスミドから得られており、T7 RNAポリメラーゼのプロモーターの制御下に置かれたSchwarz株の全長麻疹ウイルス(+)RNA鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。それは、18967個のヌクレオチド及び配列番号1として表される配列を有する。他のMV株からのcDNA分子(麻疹ウイルスのcDNA又は便利のためにMV cDNAとも呼ばれる)は、弱毒MV、例として、本明細書で説明する弱毒MVのウイルス粒子から精製した核酸から開始して同様に得ることができる。
【0043】
また、本発明において使用されるcDNAは、2002年6月12日に番号I-2890の下にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes、28 rue du Dr Roux, 75724 Paris Cedex 15、France)のパスツール研究所に寄託されるプラスミドpTM2-MVSchw-gfpから得てもよい。それは、19795個のヌクレオチド及び配列番号2として表される配列を有する。このプラスミドは、欠失され得るeGFPマーカーをコードする配列を含有する。
【0044】
本発明の核酸構築物は、組換え感染性複製型麻疹-ジカウイルス(MV-ZIKV)の調製に好適であり、かつそれに意図され、したがって、前記核酸構築物は、結果として麻疹ウイルスの、とりわけ、Schwarz株のcDNA分子を含むトランスファーゲノムベクターへの挿入に、前記MV-ZIKVの生成、並びに少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、特に、ZIKV VLPの産出に意図される。pTM-MVSchwプラスミド又はpTM2-MVSchwプラスミドは、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体の発現に必要なZIKVポリヌクレオチドの挿入によって、トランスファーベクターを調製するのに好適である。組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子は、レスキューヘルパー細胞から、又は生成細胞において回収してもよく、任意選択で、本発明により開示するZIKV抗原を発現するVLPにより回収してもよい。
【0045】
したがって、本発明は、ヘルパー細胞からレスキューされた場合、組換えMV-ZIKV粒子の調製に使用されるトランスファーベクターに関連する。有利に、本発明のトランスファーベクターは、本発明の核酸構築物を含む、前記ヘルパー細胞の、又は生成細胞のトランスフェクションに好適なトランスファーベクタープラスミドであり、特に、Bluescriptプラスミドから得られるプラスミド、例として、pMV-ZIKVである。
【0046】
本発明の特定の実施形態においては、トランスファーベクタープラスミドは、配列番号165、配列番号166又は配列番号167の配列を有し、好ましくは、配列番号165の配列を有する。
【0047】
また、本発明は、ウイルスMV-ZIKV粒子のレスキューに好適な細胞を形質転換するための、特に、本発明の核酸構築物を含むプラスミドを、又はウイルスベクターを、それぞれ、トラスフェクトするため又は形質導入するための、前記トランスファーベクターの使用であって、前記細胞が、組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子における本発明の核酸構築物に対応するウイルスの組換えゲノムの適切な複製、転写及びカプシド形成に必要なMVタンパク質を発現するそれらの能力について選択される、使用に関する。
【0048】
好ましい実施形態においては、本発明は、ゲノムに挿入された本発明による核酸構築物を含むか、又は本発明によるトランスファーベクタープラスミドを含む、形質転換した細胞であって、特に、真核細胞、例として、鳥類細胞、特に、CEF細胞、哺乳動物細胞、例として、HEK293細胞又は酵母細胞である細胞に関する。
【0049】
したがって、好ましくは、少なくとも、組換えウイルスMV-ZIKV粒子の転写及び複製において機能的なN及びPタンパク質については安定に発現するタンパク質として、特に、MVのN、P及びLタンパク質(すなわち、ネイティブMVタンパク質、又はリボ核タンパク質(RNP:ribonucleoprotein)複合体を形成することができるその機能性バリアント)を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、前記細胞中に存在する。N及びPタンパク質は、それらのコード配列を含むプラスミドから細胞において発現してもよく、又は細胞のゲノムに挿入されたDNA分子から発現してもよい。Lタンパク質は、異なるプラスミドから発現してもよい。それは、一過的に発現してもよい。また、ヘルパー細胞は、本発明の核酸構築物に由来する組換えRNAの合成を可能にするのに好適なRNAポリメラーゼを、おそらく安定に発現するRNAポリメラーゼとして、発現することができる。RNAポリメラーゼは、T7ファージポリメラーゼ又はその核形態(nlsT7)であってもよい。
【0050】
本発明の実施形態においては、MVのcDNAクローンは、Nタンパク質及び/又はPタンパク質及び/又はLタンパク質と同じMV株からのcDNAクローンである。本発明の別の実施形態においては、MVのcDNAクローンは、Nタンパク質及び/又はPタンパク質及び/又はLタンパク質とは異なる株のウイルスからのcDNAクローンである。
【0051】
また、本発明は:
1)本発明の核酸構築物又はそのような核酸構築物を含有するトランスファーベクターを、そのcDNAからのMVのアンチゲノム(+)RNA配列の転写、複製及びカプシド形成に必要なタンパク質も発現するヘルパー細胞株に、ウイルス粒子のアセンブリを可能にする条件下でトランスファーする、特に、トランスフェクトする工程と、
2)少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え感染性MV-ZIKV粒子を回収する工程と
を含む組換え感染性麻疹ウイルス(MV)粒子の調製のための方法に関する。
【0052】
本発明の特定の実施形態においては、この方法は:
1)ヘルパー細胞に本発明による核酸構築物、及びトランスファーベクターをトランスフェクトする工程であって、前記ヘルパー細胞が、RNAポリメラーゼを発現する、及びMVウイルスのN、P及びLタンパク質を発現するヘルパー機能を発現することができる、工程と、
2)工程1)の前記トランスフェクトしたヘルパー細胞を、cDNAが由来するMV弱毒株の継代に好適な継代細胞と共培養する工程と、
3)少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え感染性MV-ZIKV粒子を回収する工程と
を含む。
【0053】
本発明の別の特定の実施形態においては、組換え感染性MV-ZIKV粒子の生成のための方法は:
1)RNAポリメラーゼ、MVのNタンパク質及びMVのPタンパク質を安定に生成する細胞又は細胞培養物を、本発明の核酸構築物で、及びMVのLタンパク質をコードする核酸を含むベクターで組み換える工程と、
2)前記組換え細胞又は組換え細胞培養物から組換え感染性MV-ZIKV粒子を回収する工程と
を含む。
【0054】
前記方法の特定の実施形態においては、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換えMV、特に、そのようなZIKVタンパク質を発現するZIKV VLPが生成する。
【0055】
好ましくは、本発明は、少なくとも(i)ZIKVの膜前駆体(prM)タンパク質、及びZIKVのエンベロープ(E)タンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え感染性麻疹ウイルス-ジカウイルス(MV-ZIKV)粒子、並びに同じZIKVタンパク質を発現するZIKV VLPをレスキューする方法であって:
1)T7 RNAポリメラーゼ並びに麻疹N及びPタンパク質を安定に発現するヘルパー細胞、特に、HEK293ヘルパー細胞に、(i)本発明によるトランスファーベクタープラスミド、及び(ii)MV Lポリメラーゼをコードするベクター、とりわけ、プラスミドを共トランスフェクトする工程と、
2)組換えMV-ZIKV粒子の生成を可能にする条件下で前記共トランスフェクトしたヘルパー細胞を培養する工程と、
3)工程2)の前記ヘルパー細胞を、増殖を可能にする細胞、例として、ベロ細胞と共培養することによって、そのようにして生成した組換えMV-ZIKV粒子を増殖させる工程と、
4)少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する複製型感染性複製型MV-ZIKV粒子、並びに同じZIKVタンパク質を発現するZIKV VLPを回収する工程と
を含む方法に関する。
【0056】
前記方法の特定の実施形態により、トランスファーベクタープラスミドは、配列番号165、配列番号166又は配列番号167の配列を有し、好ましくは、配列番号165の配列を有する。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「組み換える」という用語は、例えば、ベクターの形態下で、少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞に導入することであって、前記ポリヌクレオチドが(上記に定義するような)細胞ゲノムに(全体的に又は部分的に)組み込まれるか、又は組み込まれない、導入することを意味する。
【0058】
特定の実施形態により、組換えは、本発明の核酸構築物である第1のポリヌクレオチドにより得ることができる。また、又は或いは、組換えは、定義、性質及び発現の安定性を本明細書で説明しているMVのRNAポリメラーゼラージタンパク質(L)をコードするベクターであるポリヌクレオチドを導入することを包含し得る。
【0059】
本発明により、RNAポリメラーゼ、麻疹ウイルスの核タンパク質(N)及び麻疹ウイルスのポリメラーゼ補助因子リンタンパク質(P)を安定に生成する細胞若しくは細胞株又は細胞培養物は、本明細書で定義する細胞若しくは細胞株、又は本明細書で定義する細胞培養物であり、すなわち、また、それらが上記に定義する1つ又は複数のポリヌクレオチドの導入により改変されている限り、組換え細胞である。本発明の特定の実施形態においては、RNAポリメラーゼ、N及びPタンパク質を安定に生成する細胞若しくは細胞株又は細胞培養物は、麻疹ウイルスのLタンパク質を生成しないか、又は麻疹ウイルスのLタンパク質を安定に生成せず、例えば、その一過的な発現又は生成を可能にする。
【0060】
本発明の組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子の生成は、本明細書で説明する通りに形質転換した細胞のトランスファーを含み得る。「トランスファー」という用語は、本明細書で使用されるとき、組換え細胞の様々な種類の細胞上への、特に、様々な種類の細胞単層上への播種を指す。これらの後者の細胞は、感染性MV-ZIKV粒子の複製及び生成の両方、すなわち、それぞれ、細胞内での感染性ウイルスの形成、及びおそらくこれらの感染性ウイルスの細胞外への放出を維持する能力がある。このトランスファーは、本発明の組換え細胞の、前の文で定義する、能力がある細胞との共培養をもたらす。上記トランスファーは、組換え細胞が効率的なウイルス生成培養物でない場合、すなわち、感染性MV-ZIKV粒子がこれらの組換え細胞から効率的に回収することができない場合の、追加的な、すなわち、任意選択の工程であり得る。この工程は、本発明の組換え細胞の、本発明の核酸構築物及び任意選択で、麻疹ウイルスのRNAポリメラーゼラージタンパク質(L)をコードする核酸を含むベクターによる更なる組換え後に導入される。
【0061】
本発明の特定の実施形態においては、通常、容易に組み換えられる能力のために選択された組換え細胞は、組換え感染性MV-ZIKV粒子の維持及び生成に十分に効率的でないので、トランスファー工程が必要とされる。前記実施形態においては、上記に定義する方法の工程1)の細胞若しくは細胞株又は細胞培養物は、本発明による組換え細胞若しくは細胞株又は組換え細胞培養物である。
【0062】
本発明の組換え細胞の調製に好適な細胞は、原核細胞又は真核細胞、特に、動物若しくは植物細胞、特に、哺乳動物細胞、例として、ヒト細胞若しくは非ヒト哺乳動物細胞若しくは鳥類細胞若しくは酵母細胞である。特定の実施形態においては、細胞は、そのゲノムの組換え前に、初代培養物又は細胞株のいずれかから単離される。本発明の細胞は、分裂細胞であっても、非分裂細胞であってもよい。
【0063】
好ましい実施形態により、ヘルパー細胞は、ヒト胚腎臓細胞株293に由来し、この細胞株293は、番号CRL-1573の下にATCCに寄託されている。特定の細胞株293は、国際出願WO2008/078198において開示されており、以下の実施例において参照される細胞株である。
【0064】
この方法の別の態様により、継代に好適な細胞は、CEF細胞である。CEF細胞は、EARL Morizeau社(8 rue Moulin, 28190 Dangers、France)から、又はニワトリ受精卵の任意の他の生産者から得られるニワトリ受精卵から調製することができる。
【0065】
本発明により開示する方法は、免疫化組成物としての使用に適切なZIKV抗原を発現する感染性複製型MV-ZIKV粒子及び任意選択で、VLPの生成に有利に使用される。
【0066】
したがって、本発明は、有効成分が、本発明の核酸構築物からレスキューされた、特に、開示する方法により得られた感染性複製型MV-ZIKV粒子を含む、免疫原性組成物に関する。
【0067】
本発明の核酸構築物及び本発明のMV-CHIKVは、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコード又は発現する。
【0068】
「ZIKVのタンパク質」とは、配列がZIKVの株における対応物と同一である、本明細書で定義する「タンパク質」を意味し、ZIKVのタンパク質のネイティブ成熟体若しくは前駆体であるか、又は本明細書で定義するその断片若しくはその変異体であるポリペプチドを含む。本発明においては、「ZIKVのタンパク質」は、特に、ZIKVのコンセンサス配列を使用して設計された抗原(prM若しくはE又は本明細書で開示するそれらの誘導体)である。特に、前記抗原は、2015年以降に伝染していることが観察されているジカウイルスのコンセンサスアミノ酸配列を使用して設計され、特に、アフリカ系統にはなかったprMにおける新規Nグリコシル化部位の可能性を産生したS139N変化、及びEにおけるV763Mを含めた。したがって、本発明者らは、すべてのアジア系統配列に存在したこのS139N変異を含めたが、特定の単離物における一塩基変異は含めなかった。本発明者らは、アジア株BeH818995(GenBank:KU365777)のアミノ酸配列は、2015年以降に伝染していることが観察されているジカウイルスのコンセンサスアミノ酸配列に対応することを観察した。
【0069】
特に、断片又は変異体は、天然ZIKVカプシド又はエンベロープタンパク質に少なくとも50%、少なくとも80%、特に、有利に少なくとも90%又は好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。アミノ酸配列同一性は、手動による整列を使用して、又は利用可能な多くの整列プログラムを使用して当業者による整列によって決定することができる。本発明のZIKVタンパク質の断片又は変異体は、本明細書で例示する特定のアミノ酸配列について定義され得る。
【0070】
好ましい実施形態により、また、本発明は、宿主、特に、ヒト宿主においてMV-ZIKVのキメラ感染性粒子の表面における、少なくとも(i)ZIKVのprM、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体の効率的な発現を可能にするためのポリヌクレオチドの改変及び最適化に関する。
【0071】
この実施形態により、ポリヌクレオチド配列の最適化は、核酸分子のシス作用ドメイン:内部TATAボックス、カイ部位及びリボソーム進入部位;AT-リッチ又はGC-リッチ配列範囲;ARE、INS、CRS配列エレメント;反復配列及びRNA二次構造;潜在性スプライスドナー及びアクセプター部位、ブランチポイントを避けて操作することができる。
【0072】
また、最適化ポリヌクレオチドは、特定の細胞種における発現のためにコドン最適化され得る。この最適化により、発現するタンパク質に影響を及ぼすことなく、細胞におけるキメラ感染性粒子生成の効率が増大する。
【0073】
本発明の特定の実施形態においては、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、マカク属コドン利用について最適化されているか、又はヒトコドン利用について最適化されている。
【0074】
少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドの最適化は、コドンから翻訳されるアミノ酸残基の、元のアミノ酸残基との同一性に影響を及ぼすことなく、前記コドンにおけるゆらぎ位置の改変によって行われ得る。
【0075】
また、最適化は、麻疹ウイルスからの編集様配列を避けるために行われる。麻疹ウイルスの転写産物の編集は、特に、麻疹ウイルスのP遺伝子によってコードされる転写産物において起こるプロセスである。この編集は、P転写産物内の特定の部位における余分のG残基の挿入によって、Pタンパク質と比較して切断された新しいタンパク質を生ずる。単一のG残基のみの付加は、ユニークなカルボキシル末端を含有するVタンパク質の発現をもたらす(Cattaneo Rら、Cell、1989年3月10日;56(5):759~64頁)。
【0076】
本発明の特定の実施形態においては、麻疹編集様配列(measles editing-like sequence)は、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドから欠失されている。以下の麻疹編集様配列:AAAGGG、AAAAGG、GGGAAA、GGGGAA、TTAAA、AAAA及びそれらの相補配列:TTCCCC、TTTCCC、CCTTTT、CCCCTT、TTTAA、TTTTは、変異誘発することができる。例えば、AAAGGGはAAAGGCに変異誘発することができ、AAAAGGはAGAAGGに、又はTAAAGGに、又はGAAAGGに変異誘発することができ、GGGAAAはGCGAAAに変異誘発することができる。
【0077】
本発明の特定の実施形態においては、特定のペプチド/タンパク質/抗原をコードするポリヌクレオチドのネイティブ及びコドン最適化ヌクレオチド配列、並びに本発明のこれらのペプチド/タンパク質/抗原のアミノ酸配列は、配列番号3~164として開示し、以下のTable 1(表1)で挙げる配列である。また、これらの配列を、図3A図3Dで示す。
【0078】
本発明の特定の実施形態においては、以下のTable 1(表1)において挙げる通り、トランスファーベクタープラスミドpTM2-MVSchw_A1_Zikasp_ZikaprMEは、配列番号165の最適化配列を有し、トランスファーベクタープラスミドpTM2-MVSchw_insert 4は、配列番号166のネイティブ配列を有し、トランスファーベクタープラスミドpTM2-MVSchw_insert 5は、配列番号167のネイティブ配列を有する。
【0079】
本発明の別の特定の実施形態においては、本発明のインサート4又はインサート5をコードするポリヌクレオチドのネイティブヌクレオチド配列、及び前記インサート4又はインサート5のアミノ酸配列は、配列番号168~171として開示し、以下のTable 1(表1)で挙げる配列である。インサート4(配列番号169)は、Zikasp_Zika_prMEd404(配列番号54)と類似するが、5'においてより短いspを有する。インサート5(配列番号171)は、Zikasp'_ZikaEd445(配列番号75)と類似するが、5'において2つの軽微な相違を有する。
【0080】
【表1A】
【0081】
【表1B】
【0082】
本発明の特定の実施形態においては、前記ZIKVは、アフリカ系統から、特に、アフリカ株ArB1362(GenBank:KF383115)若しくはアフリカ単離物IbH_30656(GenBank:HQ234500)から、又はアジア系統から、特に、アジア株BeH818995(GenBank:KU365777)からのZIKVであり、好ましくは2013年以来太平洋及び米州において伝染したZIKV株からのZIKVである。
【0083】
本発明の別の特定の実施形態においては、前記ZIKVは、2013年以来太平洋及び米州において伝染した株を含むZIKウイルスの様々な系統に対応する。
【0084】
本発明の好ましい実施形態においては、ZIKVのprMタンパク質は、アジア系統からのZIKVを含むZIKVの様々な株の選択のprM配列の代表的なコンセンサスアミノ酸配列であるアミノ酸配列を有し、特に、ZIKV株BeH818995からのアミノ酸配列である。ZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体は、アジア系統からのZIKVを含むZIKVの様々な株の選択のE配列の代表的なコンセンサスアミノ酸配列であるアミノ酸配列を有し、特に、ZIKV株BeH818995からのアミノ酸配列である。
【0085】
本発明の特定の実施形態においては、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドは、(iii)ZIKVのカプシドからのシグナルペプチド(sp)又はJEVのカプシドからのシグナルペプチド(JEVsp)又はMVの融合タンパク質からのシグナルペプチド(MVsp)又はMVの融合タンパク質からの修飾シグナルペプチド(MVsp')及びZIKVの膜タンパク質からのシグナルペプチド(sp')を更にコードするか、又は少なくとも(ii)ZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドは、(iii)ZIKVのカプシドからのシグナルペプチド(sp)又はZIKVの膜タンパク質からのシグナルペプチド(sp')若しくはJEVのカプシドからのシグナルペプチド(JEVsp)若しくはMVの融合タンパク質からのシグナルペプチド(MVsp)若しくはMVの融合タンパク質からの修飾シグナルペプチド(MVsp')を更にコードする。
【0086】
本発明の好ましい実施形態においては、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドは、(iii)ZIKVのカプシドからのシグナルペプチド及びZIKVの膜タンパク質からのシグナルペプチドを更にコードするか、又は少なくとも(ii)ZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする前記ポリヌクレオチドは、(iii)ZIKVのカプシドからのシグナルペプチド又はZIKVの膜タンパク質からのシグナルペプチドを更にコードする。
【0087】
本発明の特定の実施形態においては、Eタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、全長Eタンパク質、又は全長Eタンパク質の2つのC末端膜貫通ドメインを欠くその可溶型のいずれかをコードする。
【0088】
本発明の好ましい実施形態においては、Eタンパク質の切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、(i)ZIKVの全長Eタンパク質のアミノ酸位置456において切断されたEタンパク質をコードするポリヌクレオチド、すなわち、アンカー領域及びステムとアンカー領域との間の中間ドメインを欠くEタンパク質、(ii)ZIKVの全長Eタンパク質の位置445において切断されたEタンパク質をコードするポリヌクレオチド、すなわち、アンカー領域、ステムとアンカー領域との間の中間ドメイン、及びステム領域を構成する第2ヘリックスの断片を欠くEタンパク質、並びに(iii)ZIKVの全長Eタンパク質の位置404において切断されたEタンパク質をコードするポリヌクレオチド、すなわち、ステム領域、ステムとアンカー領域との間の中間ドメイン及びアンカー領域を欠くEタンパク質からなる群から選択される。
【0089】
本発明の好ましい実施形態においては、ポリヌクレオチドは、配列が配列番号20であるZIKVのprMタンパク質をコードし、ポリヌクレオチドは、配列が配列番号23、配列番号26、配列番号29及び配列番号32からなる群から選択されるZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードする。
【0090】
本発明の好ましい実施形態においては、ZIKVのprMタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号19の配列を有し、ZIKVのEタンパク質又はその切断型変形体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号22、配列番号25、配列番号28及び配列番号31からなる群から選択される配列を有する。
【0091】
本発明の特定の実施形態においては、前記核酸構築物は、配列番号45~164及び168~171からなる群から選択される配列を含む。
【0092】
本発明の好ましい実施形態においては、前記核酸構築物は、配列番号46、配列番号52、配列番号55、配列番号70、配列番号76、配列番号79、配列番号168及び配列番号170からなる群から選択される配列を含み、好ましくは、配列番号46、配列番号55又は配列番号76の配列を有し、より好ましくは、配列番号46の配列を有する。
【0093】
本発明の好ましい実施形態においては、核酸構築物は、配列番号165の配列における位置83のヌクレオチド~位置18404のヌクレオチドの配列、又は配列番号166の配列における位置83のヌクレオチド~位置18074のヌクレオチドの配列、又は配列番号167の配列における位置83のヌクレオチド~位置17702のヌクレオチドの配列を含む。
【0094】
また、本発明は、ゲノムとして本発明による核酸構築物を含む組換え感染性複製型麻疹ウイルス-ジカウイルス(MV-ZIKV)粒子に関する。
【0095】
本発明の特定の実施形態においては、前記組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子は、ヘルパー細胞株によって認識されるRNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、MVの核タンパク質(N)、MVのリンタンパク質(P)及び任意選択で、MVのRNAポリメラーゼラージタンパク質(L)を発現し、かつ本発明によるトランスファーベクタープラスミドを更にトランスフェクトした前記細胞株からレスキューされる。
【0096】
したがって、前記組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子は、宿主細胞において、前記宿主細胞によって認識されるRNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、MVの核タンパク質(N)、MVのリンタンパク質(P)及び任意選択で、MVのRNAポリメラーゼラージタンパク質(L)を含む本発明による核酸構築物を発現する工程を含む方法によって生成される。
【0097】
本発明の特定の実施形態により、前記粒子は、それらのゲノム内に、配列番号46、配列番号52、配列番号55、配列番号70、配列番号76、配列番号79、配列番号168及び配列番号170からなる群から選択される配列を含むポリヌクレオチド配列を含み、好ましくは、配列番号46、配列番号55又は配列番号76の配列を有し、より好ましくは、配列番号46の配列を有する。
【0098】
また、得られた少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体は、MV-ZIKV粒子により、ZIKウイルス様粒子(VLP)に自己アセンブルすることができる。
【0099】
本明細書で使用されるとき、「ウイルス様粒子」(VLP)という用語は、少なくとも1つの属性がウイルスに似ているが、そのような感染性であることが示されていない構造を指す。本発明によるVLPは、VLPのタンパク質をコードする遺伝情報を有さず、一般的に、VLPは、ウイルスゲノムを欠き、それゆえ、非感染性かつ非複製型である。本発明により、VLPを、大量に生成し、組換え感染性MV-ZIKV粒子と共に発現させることができる。前記VLPは、ZIKVのVLPである。
【0100】
別の態様により、本発明は、特に、核酸及びポリペプチド配列を参照して、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を発現する組換え感染性MV-ZIKV粒子に関する。組換え感染性MV-ZIKVは、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体をVLPとして有利に発現する。
【0101】
また、本発明は、本発明による組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子を含む活性成分及び薬学的に許容される媒体の組成物又はアセンブリに関する。
【0102】
また、本発明は、少なくとも(i)ZIKVのprMタンパク質、及びZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体、又は(ii)ZIKVのEタンパク質若しくはその切断型変形体を含むVLPと、組換え感染性複製型MV-ZIKV-MV粒子との、組成物における共在(association)に関する。
【0103】
本発明の好ましい実施形態により、組換えMVベクターは、そのような方法で設計され、生成方法は、ワクチン接種に適合させたMV株に由来する、前記ベクターをトランスフェクトした、又は前記ベクターで形質転換したヘルパー細胞において生成されるウイルス粒子が、免疫原性組成物、好ましくは、保護組成物又は更にはワクチン組成物における使用のための組換え感染性複製型MVの生成及びZIKV-VLPの生成を可能にするような細胞を含む。
【0104】
有利に、本発明の組換え感染性MV-ZIKV粒子のゲノムは、複製する能力がある。「複製する能力がある」とは、MVのN、P及びLタンパク質を発現するヘルパー細胞株に形質導入された場合、新しいウイルス粒子を生成するために転写され、発現することができる核酸を意味する。
【0105】
また、MV-ZIKVの組換えゲノムの調製のために、MV cDNAを使用して得られる本発明の組換えウイルスの複製は、ホスト細胞、特に、組換えMV-ZIKVが投与されたヒト宿主においてin vivoで達成することができる。
【0106】
また、本発明は、本発明による組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子と同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した前記MV-ZIKV粒子を含む活性成分の組成物又はアセンブリに関する。
【0107】
本発明の好ましい実施形態により、活性成分の前記組成物又はアセンブリは、宿主、特に、それを必要とするヒト宿主における、ZIKVタンパク質に対する抗体の、及び/又は細胞免疫応答の誘発による、前記ZIKVに対する免疫応答、特に保護免疫応答の誘発において使用される。
【0108】
したがって、活性成分の前記組成物又はアセンブリは、宿主、とりわけ、ヒト宿主への投与に好適な媒体、例えば、薬学的に許容される媒体を含んでもよく、宿主における免疫応答を向上させるためのアジュバントを更に含んでもよいが、必ずしも含まなくてもよい。本発明者らは実際に、本発明の活性成分の投与が、アジュバント化の必要なく、免疫応答を誘発し得ることを示している。
【0109】
本発明の特定の実施形態により、活性成分の前記組成物又はアセンブリは、薬学的に許容される媒体を含む。
【0110】
本発明は、特に、組成物、特に、免疫原性組成物、好ましくは、小児、青年又は旅行者への投与のためのワクチン組成物に関する。
【0111】
特定の実施形態においては、前記組成物又はワクチンは、ZIKVのアフリカ株及びアジア株に対する予防保護のために使用される。
【0112】
前記組成物又はワクチンは、予防処置において、ZIKV感染に対する、又はZIKVによる感染の臨床結果に対する保護(ZIKV疾患に対する保護)のために使用される。そのようなワクチン組成物は有利に、任意選択で、同じZIKVタンパク質を含むVLPと共在した、本明細書で定義するベクターからレスキューした組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子を含む有効成分(活性成分)を有する。
【0113】
本発明と関連して、「共在した(associated)」又は「共在した(in association)」という用語は、ユニークな組成物における、組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子及び特に、VLPとしての、上記に言及するZIKVタンパク質の両方の、通常、物理的に別々の実体としての存在を指す。
【0114】
また、本発明は、対象におけるZIKVによる感染の予防における、又は対象における、特に、ヒトにおけるZIKVによる感染の臨床結果の予防における使用のための、上記に言及するZIKVタンパク質と共在した、特に、同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した、本発明による組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子、又は本発明による活性成分の組成物若しくはアセンブリに関する。
【0115】
また、本発明は、特に、ヒト宿主における、ZIKV感染又は誘導された疾患に対する免疫応答、有利に、保護免疫応答を誘発する投与スキームにおける、及び投与レジメンによる使用のための、上記に言及するZIKVタンパク質と共在した、特に、同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した、本発明による組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子に関する。
【0116】
投与スキーム及び投与レジメンは、上記に言及するZIKVタンパク質と共在した、特に、同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した、本発明による組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子の選択された用量のユニークな投与を必要とし得る。
【0117】
或いは、それは、プライム-ブーストレジメンにおける多数の投与用量を必要とし得る。プライミング及びブースティングは、上記に言及するZIKVタンパク質と共在した、特に、同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した前記組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子からなる同一の活性成分で達成され得る。
【0118】
或いは、プライミング及びブースティング投与は、投与工程のうちの少なくとも1つにおける、上記に言及するZIKVタンパク質と共在した、特に、同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した前記組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子、及び他の投与工程における、ZIKVの他の活性免疫原、例として、上記に言及するZIKVタンパク質又は同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPを含む、様々な活性成分で達成され得る。
【0119】
同じZIKVタンパク質を発現するZIKV-VLPと共在した、本発明による組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子の投与は、免疫応答を誘発し、とりわけ、様々なZIKV株について交差反応性である抗体を誘発する。したがって、本発明による活性成分の投与は、特定のZIKV株のコード配列により調製した場合、一群のZIKV株に対する免疫応答を誘発し得ることが示された。
【0120】
VLPの投与を伴う、他の病原体(例として、HBV又はHPV)に好適なワクチンの用量について、及びまた、公知のヒトMVワクチンについての利用可能な知識を考慮して、組換えMV-ZIKVによるZIKV-VLPの回収が、有効な低用量の活性成分の投与の提唱を可能にすると本発明者らは結論した。実際に、組換えMV-ZIKVが、1個の組換え感染性複製型MV-ZIKV粒子当たり約104個のZIKV-VLPの生成を可能することを考慮し、ヒトMVワクチンについて現在公知の用量が、103~105TCID50の範囲内であることを考慮すると、投与すべき組換えMV-ZIKVの好適な用量は、0.1~10ng、特に、0.2~6ng、おそらく、0.2~2ngほどの低い範囲内であり得る。比較のために、HBV又はHPVワクチンの場合において投与されるVLPの用量は、10μgの範囲内であり、これは、組換えMV-ZIKVワクチンの1用量が、約2000又は最大で5000~10000倍少ないVLPを含み得ることを意味する。
【0121】
本発明の特定の実施形態により、また、本明細書で定義する免疫原性又はワクチン組成物は、麻疹ウイルスによる感染に対する保護に使用してもよい。
【0122】
本発明の他の特色及び利点は、以下の実施例から明らかであり、また、図面において例示される。
【実施例0123】
ワクチン候補の産生
様々なフラビウイルス(デング、西ナイル、日本脳炎、ダニ媒介脳炎)による以前の経験から、フラビウイルス表面エンベロープ(E)タンパク質は、ウイルス感染性の低減を可能にする保護中和抗体を誘発することができることが広く示されている。ZIKVゲノムは、2つの隣接非コード領域(5'及び3' NCR)と、3つの構造タンパク質(カプシド(C)、膜前駆体(prM)、エンベロープ(E))及び7つの非構造タンパク質(NS:non-structural protein)に切断されるポリタンパク質をコードする単一の長いオープンリーディングフレームとを有する、約10800kbの長さの一本鎖陽性センスRNA分子からなる(図1)。Eタンパク質(53kDa)は、標的細胞への結合及び膜融合を媒介する、ウイルスサイクルの様々な態様に関連する主要なビリオン表面タンパク質である。
【0124】
それゆえ、本発明者らは、ジカウイルスEタンパク質を発現することを選択した。VLPの表面上に可溶性分泌タンパク質又はアンカー型タンパク質のいずれかを発現するために、Eタンパク質のいくつかの形態を選択した。以下のジカウイルス抗原:ステム又はアンカー領域を伴うか、又は伴わないprM-E及びEの様々な形態をクローニングし、ヒト細胞において哺乳動物発現プラスミドから発現した。これらのタンパク質は、ジカウイルスEの元のシグナルペプチド配列、又はJEV若しくはMV融合タンパク質からの異種のシグナルペプチド配列のいずれかを含有する。これらのタンパク質は、prM配列とE配列との間に位置するシグナルペプチダーゼ切断部位を含有する(図3A図3B図3C図3D)。
【0125】
抗原選択及び設計
フラビウイルスのエンベロープ抗原は、中和抗体及びT細胞応答を誘発することができる場合があるという示唆に一致する以前の研究に基づいて、ジカ抗原を選択した。しかしながら、好適な抗原の選択は、経時的なウイルス進化及び現存のウイルス株の多様性を考慮するべきである。この目標のために、本発明者らは、エンベロープ(E)遺伝子に対応するフラビウイルスポリタンパク質のアミノ酸領域のみを使用して、ジカウイルスを含むフラビウイルスファミリーの代表的なメンバーの系統を再構築した。ジカウイルスの最も近い近縁種がセントルイス脳炎ウイルス等の向神経性ウイルスである、フラビウイルスの全ゲノム又はポリメラーゼ(NS5)に基づく系統発生分析とは異なり、本発明者らは、ジカEは、DENV Eにより近いように見えることに気付いた(図2)(Barba-Spaethら、Nature 2016、536、48~53頁)。その後、本発明者らは、DENVについての利用可能なデータに基づく構造ホモロジーモデリングを通して、ジカ膜(M)、その前駆体(prM)及びEタンパク質の様々なドメインの特定に進んだ(Ekinsら、Illustrating and homology modeling the proteins of the Zika virus、F1000Research 2016、5:275頁)。また、本発明者らは、ここでもまたデングウイルスを参照とするホモロジーモデリング及びシグナルペプチド配列を予測するための公に利用可能なアルゴリズム(http://sigpep.services.came.sbg.ac.at/signalblast.html;http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/;http://www.predisi.de/)を使用して、prMのすぐ上流の、カプシド(C)遺伝子の末端のシグナルペプチドを特定した。本発明者らは、細胞外への、全長prM-E又はEのみいずれかの、候補抗原の輸送及び分泌を誘導するためのシグナルペプチド配列を含めることを選択した。E抗原について、また、本発明者らは、Eのすぐ上流の、Mの末端のシグナルペプチドを予測し、このネイティブシグナルを使用して変形抗原を設計した(図3A)。加えて、また、本発明者らは、JEV Cの末端に存在するシグナルペプチド(図3B)、又はMVの融合タンパク質(F)のN末端に存在するシグナルペプチド(図3C)が候補抗原の輸送を向上させ得ることを仮定して、ジカウイルスのネイティブシグナルペプチドをこれらの配列で置換したキメラ抗原を設計した。本発明者らは、MVのFのシグナルペプチドを含み、Fのシグナルペプチドの末端と、F自体の始まりとの間の連結に対応する2つのアミノ酸を除去した、追加の変形キメラ抗原を設計した(図3D)。
【0126】
第2に、また、本発明者らは、(DENVとの比較によって予測される)ステムとアンカーとの間の中間領域を含む、予測されるステム及び/又はアンカードメインに対応するEタンパク質のC末端断片を除去することによって、より短い変形抗原を設計した。抗原サイズを低減するこれらの改変の目的は、VLPを形成することができる抗原を産生することであった。第3のバリアントについて、本発明者らは、今度はWNVによるホモロジーモデリングにおいて、アンカー、アンカーとステムとの間の中間ドメイン、及びステムを構成する第2ヘリックスの断片を除去した(バリアントEd445)。
【0127】
最後に、本発明者らは、MV Fタンパク質のシグナルペプチドを使用して、かつジカEアンカーをMV Fタンパク質の膜貫通(TM)及び細胞質内テールによって置換して、キメラprM-E及びE抗原を設計した(図3C及び図3D)。
【0128】
抗原それ自体の選択配列について、本発明者らは、ジカウイルス(アジア及びアフリカ系統両方)のすべての公に利用可能な配列、並びに南米及び太平洋における流行から本発明者らが産生した非公開配列を分析した。先天性症候群及び成人における神経病と、アジア系統のみとの関連を報告する疫学的データに基づいて、本発明者らは、2015年以降に伝染していることが観察されているジカウイルスのコンセンサスアミノ酸配列を使用して抗原を設計し、特に、アフリカ系統にはないprMにおける新規潜在的Nグリコシル化部位を産生するS139N変化、及びEにおけるV763Mを含めた。
【0129】
配列を、ヒト発現のためにコドン最適化し、麻疹ベクタークローニングに、及び「6の規則」(6で割り切れるヌクレオチド総数)に適合させた。RNA安定性を増大させるために、GCに非常に富む(>80%)領域又は非常に乏しい(<30%)領域は避け、翻訳効率を増大させるために、高CAI値(0.97)を得、以下のCIS作用配列:内部TATAボックス、カイ部位、リボソーム進入部位、AT-リッチ又はGC-リッチ配列範囲、ARE、INS、CRSエレメント、反復配列、RNA二次構造、潜在性スプライスドナー及びアクセプター部位、ブランチポイントは避けた。以下の麻疹ウイルス編集配列:AAAGGG、AAAAGG、GGGAAA、GGGGAA、TTAAA、AAAA及びまた同じ鎖上のそれらの相補配列:TTCCCC、TTTCCC、CCTTTT、CCCTT、TTTAA、TTTTは、可能な場合避けた。制限酵素部位BssHII、BsiWIは内部には避け、クローニング目的のために両方の末端に挿入した。
【0130】
哺乳動物細胞における抗原発現
最適化抗原配列をpcDNA5哺乳動物発現プラスミドにクローニングし、HEK293細胞にトランスフェクトした。検出のための適切な抗体を使用するウェスタンブロッティング後に各抗原のサイズ及び発現レベルを特徴付けた。
【0131】
麻疹ベクターにおける抗原発現
最適化ジカ抗原配列を、所望の発現レベルにより、様々な追加の転写ユニットにおいてMVベクターに挿入した。様々なジカ抗原を発現する麻疹ベクタープラスミドのシークエンシング後、以前に開発された細胞ベースの系(Combredet, C.ら、2003、J Virol, 77(21):11546~11554頁)を使用する逆遺伝学により、複製型組換えベクターを産生し、レスキューしたウイルスを増幅し、ベロ細胞上に滴定した。組換えウイルスをベロ細胞上で増殖させて、適切な抗体によるウェスタンブロット及び間接的免疫蛍光染色を使用することによって、上清中及び細胞中の両方で検出されるジカタンパク質の発現を実証した。培養培地の超遠心分離及びウェスタンブロット後に、(prM/E発現ベクターにおける)ジカウイルスVLPの存在を特定した(図7)。ウェスタンブロットによって、感染細胞における抗原の正確なプロセシングをチェックした。最も良いジカ抗原発現能を有するベクターを、連続希釈及びシングルプラーククローニングによって単離し、その後、ベロ細胞において増幅した。
【0132】
組換えワクチンウイルスの増殖能
選択したワクチンウイルスの増殖能を、標準MV Schwarzと比較した。様々な感染多重度及びその後、滴定を使用することによって、ベロ細胞培養物において増殖曲線分析を行った。
【0133】
組換えワクチンウイルスの安定性
選択した最も優れたワクチンベクターを、それらの遺伝的安定性について、ベロ細胞培養物上での10回の細胞培養継代にわたる連続継代、並びに続いて抗原発現についてのウェスタンブロット及び全シークエンシング分析によって試験した。
【0134】
1回免疫化マウスにおける第1のMV-ジカ組換え体の前臨床評価
麻疹感染しやすいCD46/IFNARマウスにおいて、2つの組換えベクターMV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4)及びMV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)を評価した。マウスを、規定の感染性ワクチンウイルスユニットによる1又は2回の腹腔内注射により免疫化し、標準及び特別に開発したアッセイの両方を使用して、機能的抗体及び細胞媒介免疫応答を分析した。ELISAによりジカウイルスへの結合抗体を、及び特定のプラーク低減中和試験(PRINT:plaque reduction neutralization test)により中和抗体を決定した。ジカウイルス特異的ペプチドを使用するエリスポットアッセイによって、脾細胞のex vivo刺激についてT細胞応答を分析した。その後、ワクチンベクターを保護有効性について試験した:免疫化マウスに致死用量のジカウイルスによる負荷を与えた。用量応答負荷は、以前にCD46/IFNARマウスにおいて確立され、102~106フォーカス形成ユニット(ffu:focus forming unit)用量のジカウイルスアフリカ株HD78788(マウスに適合させた)が、これらのマウスを効率的に死亡させることを示した。
【0135】
第1の実験において、1群当たり6匹のマウスを、106TCID50のMV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4)、MV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)又は対照としての空MVSchwの単回の腹腔内注射により免疫化した。免疫化前及び免疫化後30日目に血液を採取し、ジカウイルスELISAタイターを決定した(図5A)。
【0136】
その後、免疫化マウスに、30日目に、106ffuのジカウイルスアフリカ株HD78788(マウスに適合させた)の腹腔内注射による負荷を与えた。罹患率及び死亡率を12日間管理し(図5B)、ジカウイルス血症をqRT-PCRによって血清において決定した(図5C)。
【0137】
ワクチンに対するT細胞応答を決定するために、CD46/IFNARマウスの別の群を、MV-prMEd404(インサート4)又は空MVSchwにより免疫化し、免疫化後8日目に脾臓を回収した。新しく抽出した脾細胞について、T細胞を再刺激するためにMVSchw若しくはジカウイルス又は対照としてのコンカナバリンAを使用して、エリスポットアッセイを行った(図5D)。
【0138】
プライム-ブースト免疫化
第2の組の実験において、CD46/IFNARマウスの群を、106TCID50のMV-prMEd404(ネイティブ配列、インサート4)、MV-ssEd445(ネイティブ配列、インサート5)又は対照としての空MVSchwの2回の連続腹腔内注射により免疫化した。免疫化前並びに免疫化後30、45及び55日目に血液を採取し、ジカウイルスELISAタイターを決定した(図6A)。ジカウイルスの特定の中和試験を使用して、50日目に回収した血清において中和抗体を決定した(図6B)。その後、免疫化マウスに、60日目に、106ffuのジカウイルスアフリカ株HD78788(マウスに適合した)の腹腔内注射による負荷を与えた。罹患率及び死亡率を12日間管理し(図6C)、ジカウイルス血症を、感染後2、4及び6日目にqRT-PCRによって血清において決定した(図6D)。
【0139】
非ヒト霊長類(NHP:non-human primate)における前臨床評価
NHP負荷研究において使用したZIKV株の確証
マカク属・カニクイザル(Macaca fascicularis)におけるZIKVの生理病理学についてはほとんど公知でないので、予備アッセイにおいて3つの用量のジカ野生型ウイルス(104、105及び106pfu)を2匹の動物に接種して、ウイルスストック及びマカク属における関連臨床を査定した。これらの2匹の動物を、ワクチン接種し負荷を与えた動物と同じフォローアップに6カ月間のみ供した。以下の点に取り組んだ:ウイルス学(qRT-PCR);臨床(発疹、熱);血液細胞カウント(白血球、単球、顆粒球、血小板);生化学(ASAT、ALAT、CRP);非特異的(先天性及び炎症性)及び特異的免疫応答:luminexによるサイトカイン/ケモカイン、NK、B及びT細胞プロファイル(14色フローサイトメトリー)、連続血清試料についての抗体(中和、結合)、T細胞機能応答及び記憶細胞(エリスポット、ICS)。生体液(唾液、涙、生殖器液)中のウイルスの排出を、様々な時点においてqRT-PCR及び/又は単離法によって査定した。
【0140】
NHPにおけるワクチン免疫原性研究
マカク属を、3カ月間隔で、規定の感染性ワクチンウイルスユニットの1又は2回の皮下注射によって免疫化した。免疫化後の様々な時点において、体液性及び細胞媒介免疫応答を決定した。その後、マカク属に、感染用量のZIKVによる負荷を与えた。感染性ウイルス血症及び臨床徴候を決定した。このタスクについて、抗フラビウイルス及び抗麻疹抗体について陰性である21匹の成体マカク属・カニクイザルを選択した;7匹の動物の2つの群に、選択した最も優れたMV-ZIKV組換えウイルス(MV-prMEd404ネイティブ)での単回用量又はプライムブーストレジメンによりワクチン接種した。ワクチン接種後最長1カ月、免疫性(体液性及び細胞関連)を探索し、ウイルス学をフォローした。プライムブーストスケジュール後に、対照空MVSchw株によりワクチン接種した7匹の動物の第3の群と並行して、臨床及び生物学的パラメーターを査定した。抗体中和タイターを決定した。
【0141】
NHPにおけるワクチン有効性研究
免疫化NHPに、免疫化の2カ月後にZIKVによる負荷を与えた。血液、唾液及び涙におけるZIKVウイルス血症レベル(qRT-PCR)を分析した。血漿において炎症及び免疫応答を査定した(中和Ab、サイトカイン)。
【0142】
発現アッセイ
産生したすべての構築物について行った発現アッセイ(図8)は、それらのいくつかについて強い発現を示した。超遠心分離画分において、いくつかの候補抗原、特に、A1及びA12についての様々な量のウイルス様粒子の産生に対応するシグナルが検出された。したがって、これらの2つの抗原を麻疹ベクターに更にクローニングし、免疫蛍光によって示す通り(図9A)高レベル発現を示した。組換えMV-ZIKV-A1ベクターは、標準のMV Schwarzウイルスと同様に複製したが、最終タイターはより低かった(図9B)。
【0143】
MV-ZIKV-A1及びMV-ZIKV-A12ベクターは、CD46/IFNARマウスにおいてそれらの免疫原性について試験したところ、ELISAにより検出すると(図10)、1カ月間隔でのプライムブーストレジメン後に、MV-prMEd404及びMV-ssEd445ベクターに匹敵する強い免疫応答を誘発した。しかしながら、様々な量の中和抗体が誘導された(図11)。候補MV-ZIKV-A1のみが、強い中和応答を誘導した(2ログ強い)。このことは、ウイルス血症に対してMV-ZIKV-A1による免疫化によってマウスに与えられた完全な保護(図12)、及び致死的負荷からの保護(図13)と相関した。
【0144】
結論として、本研究は、MVベクターにおいて発現したA1全長ジカ抗原は、強い中和抗体誘導と相関する、免疫化動物の感染性負荷及び致死的負荷からの無菌保護を提供することができることを示した。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】