(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107787
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】湿気硬化型ホットメルト接着剤、該接着剤を用いてなる本、および本の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20230727BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20230727BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230727BHJP
B42C 9/00 20060101ALI20230727BHJP
B42C 11/06 20060101ALI20230727BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J175/08
C09J11/08
B42C9/00
B42C11/06
C08G18/40 018
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081944
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2019227214の分割
【原出願日】2019-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】窪田 育夫
(72)【発明者】
【氏名】日暮 元
(57)【要約】
【課題】
塗工性、断裁適性、見開き性、製本強度に加えて、耐変形性に優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供すること。
【解決手段】
ポリオール化合物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、前記ポリオール化合物(A)が、炭素数が8~16の直鎖ポリカルボン酸と直鎖ポリオールとを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を含む、湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、
前記ポリオール化合物(A)が、炭素数が8~16の直鎖ポリカルボン酸と直鎖ポリオールとを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を含む、
湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(A)100質量%中、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を合計で60~100質量%含む、
請求項1記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記ポリオール化合物(A)100質量%中、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1):20~50質量%、ポリプロピレングリコール(a2):30~50質量%、及びポリエチレングリコール(a3):5~30質量%含む、
請求項2記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項4】
120℃における粘度が1000~25000mPa・sである、請求項1~3いずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項5】
ポリエチレングリコール(a3)の数平均分子量が1000~2万である、請求項1~4いずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項6】
粘着付与樹脂をさらに含有する、請求項1~5いずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項7】
ウレタンポリマー:100質量部に対して、粘着付与樹脂を2~50質量部含有する、請求項6記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項8】
粘着付与樹脂が軟化点80℃以上である、請求項6又は7記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項9】
粘着付与樹脂が石油樹脂である、請求項6~8いずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項10】
石油樹脂が芳香族系である、請求項9記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項11】
製本用である、請求項1~10いずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項12】
複数の紙葉を重ねてなる紙束と該紙束の3面を覆うための表紙とを有する本であって、
前記紙束の端部と前記表紙の一部とが、請求項11記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物で接着されてなる、本。
【請求項13】
複数の紙葉を重ねてなる紙束と該紙束の3面を覆うための表紙とを有する本の製造方法であって、
前記紙束の背部分に、請求項11記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤を溶融状態にて付け、
前記紙束の背部分に付けられた固化前の湿気硬化型ホットメルト接着剤に、前記表紙の
背部分の裏側を接触させた状態で、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させた後、
環境中の湿気によって湿気硬化型ホットメルト接着剤中のイソシアネート基を反応させ、
紙束と表紙とを湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物で接着する、
本の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤、それを用いた本および本の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
教科書、コミック、雑誌などの書籍の内部紙束と表紙の裏側との接着には熱による溶融・固化という可逆変化を繰り返し得るホットメルト接着剤が用いられており、固化直後の初期接着強度に優れることから樹脂としてはEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)系ホットメルト接着剤が主流となっている。
【0003】
しかし、これまで知られているEVA系ホットメルト接着剤は、満足する接着強度を発現するために塗布膜を厚くする必要があるが、そうすると製本の見開き性が不足してしまい、両者のバランスを取ることが困難であった。
【0004】
そこで開発された接着剤が反応性ホットメルト接着剤である。この反応性ホットメルト接着剤は、固化直後の初期接着強度に優れるというホットメルト接着剤の長所と、強接着・高耐久性に優れるという液状反応性接着剤の長所を組み合わせた接着剤である。
液状反応性接着剤の多くは、熱による硬化反応を利用する主剤と硬化剤とを含み、有機溶剤を含む場合と含まない場合とがある。有機溶剤を含む場合は、接着の対象物の一方に塗工し、有機溶剤を揮発させた後、他の対象物を重ね合わせた状態で、硬化反応を進行させる。有機溶剤を含まない場合は、加熱し低粘度化した接着剤を接着の対象物の一方に塗工し、他の対象物を重ね合わせた状態で、硬化反応を進行させる。液状反応性接着剤は、強接着・高耐久性に優れるという反面、接着の対象物同士を重ね合わせた直後は、硬化反応が十分には進んでいないので、初期接着強度が小さい。
一方、反応性ホットメルト接着剤は、固化により初期接着強度を、硬化により強接着・高耐久性を達成したものである。
反応性ホットメルト接着剤としては、反応性を付与する手段として幾つかの方法がある中で、最も実用化が進んでいる接着剤が分子末端のイソシアネート基と環境中(空気中や接着の対象物中)の水分との反応を硬化に利用する湿気硬化型のウレタン系反応性ホットメルト接着剤(以下、湿気硬化型ホットメルト接着剤)である。
【0005】
ここで湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いる製本工程について説明する。
製本機による製本は、丁合機で揃えた紙束の端部(貼り合わせる予定の背部分)に何箇所か切り込みや孔をあけた後、湿気硬化型ホットメルト接着剤をロールコーターで塗工し、表紙で紙束を包み、表紙の背部分の内側(裏面)に紙束の背部分を押し当て、紙束と表紙とが一体化されるか、あるいは、丁合機で揃えた紙束の端部(貼り合わせる予定の背部分)に何箇所か切り込みや孔をあけて貼付用の紙束を準備し、別途湿気硬化型ホットメルト接着剤を表紙の背部分の内側に塗工し、表紙の背部分の内側に紙束の背部分を押し当て、紙束と表紙とが一体化され、その後、速やかに断裁機により断裁され、本が製造される。
【0006】
製本用の湿気硬化型ホットメルト接着剤には、見開き性、接着強度(製本強度ともいう)という本としての基本的性能や、塗工適性、断裁適性という製本時の性能が求められる。
例えば、特許文献1には、高速塗布適性、断裁適性、見開き性、初期強度及び製本強度に優れる製本用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤として、結晶性ポリエステル
ポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、他のポリエーテルポリオール、アクリルポリオール及びポリカプロラクトンポリオールを含有するポリオールとポリイソシアネートとの反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が開示されている。そして、他のポリエーテルポリオールとして、ポリプロピレングリコールの利用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、雑誌のように表紙が比較的薄い本の場合、断裁機により断裁され、本が製造された後、輸送時の利便性や経済性に優れるポリプロピレン(PP)バンドで数十冊単位に結束される。結束の際、湿気硬化型ホットメルト接着剤のPPバンドで締め付けられた部分、即ち、表紙の面部分と背部分の間(角部)には強い圧力がかかる。
前記特許文献1記載の接着剤は、オープンタイム(貼り合わせ可能時間)が長いという反面、接着剤の固化に時間を要するので、硬化前の接着剤自体の耐変形性が十分ではなかった。従って、製本後、短時間のうちにPPバンドで複数の本を結束すると、各本の表紙の面部分と背部分の間(角部)を変形させてしまう問題があった。特に最も外側に位置する2冊の角部の変形は大きな問題であった。また、平積みされた下部の本には強い圧力がかかるので、下部の本の接着部分(背部分)が変形してしまうという問題もあった。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、塗工性、断裁適性、見開き性、製本強度に加えて、耐変形性に優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の実施態様は、ポリオール化合物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、前記ポリオール化合物(A)が、炭素数が8~16の直鎖ポリカルボン酸と直鎖ポリオールとを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0011】
また、本発明の実施態様は、前記ポリオール化合物(A)100質量%中、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を合計で60~100質量%含む上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0012】
また、本発明の実施態様は、前記ポリオール化合物(A)100質量%中、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1):20~50質量%、ポリプロピレングリコール(a2):30~50質量%、及びポリエチレングリコール(a3):5~30質量%含む上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0013】
また、本発明の実施態様は、120℃における粘度が1000~25000mPa・s
である上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0014】
また、本発明の実施態様は、ポリエチレングリコール(a3)の数平均分子量が200
0~1万である上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0015】
また、本発明の実施態様は、粘着付与樹脂を含有する上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0016】
また、本発明の実施態様は、ウレタンポリマー100質量部に対して、粘着付与樹脂を2~50質量部含有する上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0017】
また、本発明の実施態様は、粘着付与樹脂が軟化点80℃以上である上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0018】
また、本発明の実施態様は、粘着付与樹脂が石油樹脂である上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0019】
また、本発明の実施態様は、石油樹脂が芳香族系である上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0020】
また、本発明の実施態様は、製本用である上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤である。
【0021】
また、本発明の実施態様は、複数の紙葉を重ねてなる紙束と該紙束の3面を覆うための表紙とを有する本であって、前記紙束の端部と前記表紙の一部とが、上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物で接着されてなる、本である。
【0022】
また、本発明の実施態様は、複数の紙葉を重ねてなる紙束と該紙束の3面を覆うための表紙とを有する本の製造方法であって、
前記紙束の背部分に、上記の湿気硬化型ホットメルト接着剤を溶融状態にて付け、
前記紙束の背部分に付けられた固化前の湿気硬化型ホットメルト接着剤に、前記表紙の背部分の裏側を接触させた状態で、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させた後、
環境中の湿気によって湿気硬化型ホットメルト接着剤中のイソシアネート基を反応させ、
紙束と表紙とを湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物で接着する、
本の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、従来の湿気硬化型ホットメルト接着剤と比較して、耐変形性に優れるものである。本発明により、強い圧力がかかっても変形しない湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。また、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、塗工性、断裁適性、見開き性、製本強度および耐変形性に優れているため、紙束と表紙とを接着する製本用接着剤に適している。さらに、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、比較的低粘度で基材への適度な浸透性を有するため、服飾用途や不織布、布、革の貼り合わせにも好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤について説明する。尚、本明細書において、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。また「分子量」は、特に明記しない限り、数平均分子量(Mn)を意味するものとする。なお、「Mn」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0025】
<イソシアネート基を有するウレタンポリマー>
イソシアネート基を有するウレタンポリマーは、後述する1種以上のポリオール化合物(A)と、1種以上のポリイソシアネート(B)とをウレタン化反応させた反応生成物である。
反応時に、ポリイソシアネートのイソシアネート基(イソシアナト基)は、ポリオール化合物の水酸基よりも多くなるようなモル比(NCO/OH比)で使用する。これにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーが得られる。このイソシアネート基が空気中や接着の対象物中に存在する水分と反応して架橋構造を形成し得るのである。
イソシアネート基を有するウレタンポリマーは、単独または2種以上を併用できる。
【0026】
イソシアネート基を有するウレタンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1万~5万が好ましく、1万~3万がより好ましい。Mwを上記範囲に調整することで、塗工性と初期接着強度を向上できる。
【0027】
<ポリオール化合物(A)>
ポリオール化合物(A)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有するポリオールである。
ポリオール化合物(A)は、炭素数が8~16の直鎖ポリカルボン酸と直鎖ポリオールとを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を含むものである。
【0028】
<結晶性ポリエステルポリオール(a1)>
結晶性ポリエステルポリオール(a1)は、少なくとも単独または二種以上の特定の直鎖ポリカルボン酸と、少なくとも単独または二種以上の直鎖ポリオールの反応生成物を含む。本発明において、結晶性とは示差走査熱量測定(DSC)装置を使用して、降温時に液状から固体への状態変化に伴う発熱ピークを確認できるものである。
【0029】
ポリエステルの形成に用いられるポリカルボン酸のうち脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸等があげられる。これらの中で、本発明では炭素数が8~16の直鎖ポリカルボン酸を用いることにより、結晶化温度を高め、断裁適性をより一層向上できる。即ち、本発明ではスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸を用い、好ましくはセバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸を用いるものである。
【0030】
ポリエステルの形成に用いられるポリオールのうち脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等があげられる。これらの中で、本発明では直鎖ポリオールを用いることにより、結晶化温度を高め、断裁適性をより一層向上できる。即ち、本発明ではエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールを用いることが好ましく、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールを用いることがより好ましい。
【0031】
結晶性ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量を500以上とすると、湿気硬化型ホットメルト接着剤に凝集力を付与し、製本強度を向上できる。一方、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量を10000以下とすると、溶融粘度を下げることができ、塗工性を向上できる。前記結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~10000であり、より好ましくは1000~5000である。
【0032】
結晶性ポリエステルポリオール(a1)の結晶化温度を30℃以上とすると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の断裁適性、耐変形性を向上できる。一方、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の結晶化温度を100℃以下とすると、適度なオープンタイムに設計することができ、塗工性を向上できる。前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の結晶化温度は、好ましくは30~100℃であり、より好ましくは40~70℃である。
結晶性ポリエステルポリオール(a1)単独または2種以上を併用できる。
【0033】
結晶性ポリエステルポリオール(a1)は、その効果に限定されるものではないが、主に湿気硬化型ホットメルト接着剤の固化を速めるために用いられる。ポリオール化合物(A)100質量%中、結晶性ポリエステルポリオール(a1)を20質量%以上とすることにより固化を速め断裁適性を向上でき、結晶性ポリエステルポリオール(a1)を50質量%以下とすることにより見開き性がより良好となる。ポリオール化合物(A)100質量%中、結晶性ポリエステルポリオール(a1)の含有量は好ましくは25~50質量%であり、より好ましくは、35~50質量%である。
【0034】
<ポリプロピレングリコール(a2)>
ポリプロピレングリコール(a2)は、オキシプロピレンを繰り返し単位とし、両末端に水酸基を有する化合物である。プロピレンオキサイドを出発原料とし、ウレタン樹脂等の原料として一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、三洋化成社のサンニックスシリーズや日油社のユニオールシリーズが挙げられる。
【0035】
ポリプロピレングリコール(a2)の数平均分子量を200以上とすると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の柔軟性を向上でき、見開き性及びオープンタイムを向上できる。一方、前記ポリプロピレングリコールの数平均分子量を10000以下とすると、適度な固化速度に設計することができ、断裁適性がより良好となる。前記ポリプロピレングリコールの数平均分子量は、好ましくは200~10000であり、より好ましくは500~5000である。ポリプロピレングリコール(a2)は、単独または2種以上を併用できる。
【0036】
ポリプロピレングリコール(a2)は、その効果に限定されるものではないが、主に湿気硬化型ホットメルト接着剤に柔軟性を付与するために用いられる。前記ポリオール化合物(A)100質量%中、ポリプロピレングリコール(a2)を30質量%以上とすることにより見開き性を向上でき、ポリプロピレングリコール(a2)を50質量%以下とすることにより耐変形性が良好となる。前記ポリオール化合物(A)100質量%中、ポリプロピレングリコール(a2)の含有量は好ましくは35~45質量%であり、より好ましくは、40~45質量%である。
【0037】
<ポリエチレングリコール(a3)>
ポリエチレングリコール(a3)は、オキシエチレンを繰り返し単位とし、両末端に水酸基を有する化合物である。エチレンオキサイドを出発原料とし、ウレタン樹脂等の原料として一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、三洋化成社のPEGシリーズや日油社のPEGシリーズが挙げられる。
【0038】
ポリエチレングリコール(a3)の数平均分子量を1000以上とすると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の固化時の硬度が上がり、断裁適性、耐変形性を向上できる。一方、前記ポリエチレングリコールの数平均分子量を20000以下とすると、溶融粘度を下げることができ、塗工性を向上できる。ポリプロピレングリコール(a3)の数平均分子量は、好ましくは1000~20000であり、より好ましくは2000~10000である。ポリプロピレングリコール(a3)は、単独または2種以上を併用できる。
【0039】
ポリエチレングリコール(a3)は、その効果に限定されるものではないが、主に湿気硬化型ホットメルト接着剤に耐変形性を付与するために用いられる。また、溶融粘度を下げる役割もあり塗工性をより一層向上できる。前記ポリオール化合物(A)100質量%中、ポリエチレングリコール(a3)を5質量%以上とすることにより耐変形性に優れ、ポリエチレングリコール(a3)を30質量%以下とすることにより見開き性が良好となる。前記ポリオール化合物(A)100質量%中、ポリエチレングリコール(a3)の含有量は好ましくは10~30質量%であり、より好ましくは、10~25質量%である。
【0040】
ポリオール化合物(A)は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を含むものであり、必要に応じてその他のポリオールを含有してもよい。
【0041】
前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンを用いることができる。
その他のポリオールは単独または2種以上を併用できる。
【0042】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、前記ポリオール化合物(A)100質量%中、(a1)~(a3)を合計で60~100質量%、好ましくは、70~100質量%含むことが好ましい。(a1)~(a3)以外のポリオール化合物の量を減らし、(a1)~(a3)の合計を60質量%以上とすると、塗工性、断裁適性、見開き性、製本強度、耐変形性がより優れる。
【0043】
<ポリイソシアネート(B)>
ポリイソシアネート(B)は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートである。ポリイソシアネート(B)は、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート(ジイソシアネートともいう)であることが好ましい。
ポリイソシアネート(B)は、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、p-フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-オクチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加させたMDI(水添MDI)、水素添加させたXDI(水添XDI)、ポリメリックMDI等が挙げられる。これらの中で、反応性の観点から芳香族ポリイソシアネートを用いることが好適である。MDI、p-フェニレンジイソシアネート、TDI、NDI、XDI、ポリメリックMDIが好ましく、MDI、ポリメリックMDIがより好ましく、MDIとしては、4,4’-MDIが好ましい。ポリイソシアネート(B)は単独または2種以上を併用できる。
【0044】
ウレタンプレポリマーの製造方法を説明する。しかし、本発明は以下の製造方法に限定
されるものではない。例えば、(a1)~(a3)を反応容器に入れる。このとき、必要に応じてその他の添加剤を入れてもよい。(a1)~(a3)を加熱溶融し、均一な温度分布で制御し得る加熱器にて100~140℃に加熱しながら攪拌し、減圧脱水を十分に行う。次に、所定量のポリイソシアネート(B)を添加し、反応容器内にドライ窒素を吹き込み、水分が入らないようにして90~140℃で反応を行うことによって製造される。本反応は溶剤を必要としないが溶剤を用いてもよい。この場合、反応温度はその溶剤の沸点以下で行う必要がある。
【0045】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール化合物(A)が有する水酸基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、塗工性及び安全性の観点から、好ましくは1.1~2.0、より好ましくは、1.2~1.6である。
【0046】
得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)は、加熱保管時あるいは塗工時の粘度上昇を抑えるという観点から、好ましくは0.5~3.5、より好ましくは、1.0~2.0である。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603-1に準拠し、電位差滴定法により測定し、以下の式基づき求める。
NCO%=4.202×(V1ーV2)×c/m
V1:空試験に要した塩酸の使用量(mL)
V2:試料の滴定に要した測定した塩酸の使用量(mL)
c:塩酸の濃度(mol/L)
m:試料の質量(g)
4.202:NCO基の当量(42.02mg/ミリ当量)。
【0047】
前記ウレタンプレポリマーそのものを本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤とすることもできるし、あるいは前記ウレタンプレポリマーに粘着付与樹脂を加え、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤とすることもできる。
湿気硬化型ホットメルト接着剤が粘着付与樹脂を含む場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤のNCO%は、ウレタンプレポリマーと粘着付与樹脂との合計量を前記式における「m:試料の質量(g)」とする。湿気硬化型ホットメルト接着剤のNCO%は、加熱保管時あるいは塗工時の粘度上昇を抑えるという観点から、好ましくは0.5~3.5、より好ましくは、1.0~2.0である。
【0048】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂は、例えば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、キシレン樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系の石油樹脂、水素添加された脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系の石油樹脂、フェノール-変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、変性ロジンエステル樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂、水素添加されたテルペン樹脂などが挙げられる。これらは単独または2種以上併用できる。これらの中で、好ましくはテルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、マレイン酸変性ロジンエステル樹脂、芳香族系石油樹脂を用い、より好ましくはロジンエステル樹脂、芳香族系石油樹脂を用いるものである。ロジンエステル樹脂は一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、荒川化学社のスーパーエステルシリーズやハリマ化成社のハリタックシリーズが挙げられる。また、芳香族系石油樹脂は一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、イーストマンケミカル社のクリスタレックスシリーズや三井化学社のFTRシリーズが挙げられる。
【0049】
粘着付与樹脂の軟化点としては、80℃以上とすると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の耐変形性、耐熱性を向上できる。一方、粘着付与樹脂の軟化点を130℃以下とすると、前記ウレタンプレポリマーとの相溶性が良好で好適に使用できる。なお、本発明で軟化点は、環球法によるものであり、JIS K5601-2-2に準拠して測定した値を示す。
【0050】
粘着付与樹脂は、その効果に限定されるものではないが、前記ウレタンプレポリマーと併用することにより製本強度と耐変形性をより一層向上できる。前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、粘着付与樹脂を2~50質量部以上とすることにより、塗工性及び見開き性を著しく低下することなく、製本強度および耐変形性を一層向上できる。前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、粘着付与樹脂の含有量は好ましくは5~40質量部、より好ましくは、10~30質量部である。
【0051】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、前記ウレタンプレポリマーを含むものであり、さらに必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0052】
前記その他の添加剤としては、例えば、鎖延長剤、硬化触媒、水分除去剤、酸化防止剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、塗工性の観点から好ましくは1000~25000mPa・s、より好ましくは、3000~10000mPa・sである。なお、前記溶融粘度の測定方法は、後述する実施例にて詳細に記載する。
【0054】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、複数の紙葉を重ねてなる紙束と該紙束の3面を覆うための表紙とを接着するための製本用接着剤として用いることができる。
【0055】
用いられる紙束に使用される紙としては、書籍用紙、上質紙、再生上質紙、古紙などが挙げられ、適宜印刷などが施されたものであってもよい。印刷は、活版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷など、従来知られた印刷法の何れの方法により行われたものでもよい。
【0056】
本の製造方法としては、例えば、紙束の背部分または表紙の背部分の内側に100~140℃、好ましくは110℃~130℃の温度で溶融された本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗工し、紙束と表紙を接触させた状態で、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させた後、環境(空気や紙)中の湿気によって湿気硬化型ホットメルト接着剤中のイソシアネート基を反応させ、紙束と表紙とを湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物で接着することによって製造される。
【0057】
紙束と表紙を接触させた状態で、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させた後は、25℃、50%RHで1日以上養生を行うことが好ましい。
【0058】
前記湿気硬化型ホットメルト接着剤を前記紙束の背部分または表紙の背部分の内側に塗工する方法としては、ロールコーター方式、スロットダイ方式、ノズル方式、スプレー方式等があげられる。
【実施例0059】
以下、製造例および実施例を挙げてさらに具体的に説明する。しかし、本発明は以下の
実施例に限定されるものではない。
【0060】
[分子量の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
【0061】
測定装置:昭光サイエンス社製GPC装置 「SHODEX GPC-101」
カラム:KF-G 4A/KF-805/KF-803/KF-802
温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
検出器:RI(示差屈折計)
【0062】
製造例1
(結晶性ポリエステルポリオールa1-1の合成)
ヘキサデカン二酸280g(1.0mol)と1,6-ヘキサンジオール130g(1.1mol)とを反応させて、水酸基価38.7、数平均分子量2900、融点82.1℃、結晶化温度64.5℃の結晶性ポリエステルポリオールa1-1を得た。
【0063】
(水酸基価および数平均分子量の評価方法)
得られたポリエステルポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1に準拠して測定した。また、数平均分子量は上記のGPC法により測定した値を示す。
【0064】
(融点および結晶化温度の評価方法)
得られたポリエステルポリオールの融点および結晶化温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量測定(DSC)装置「DSC220C」を使用して、最大吸熱および発熱ピーク温度から求めた。DSC測定は、加熱速度10℃/分および冷却速度-10℃/分で行った。
【0065】
(製造例2~6)
表1に示すような組成で、製造例1と同様に反応させ、結晶性ポリエステルポリオールa1-2~5、a´1を得た。水酸基価、数平均分子量、融点、結晶化温度の結果は表1に示した。
【0066】
【0067】
(実施例1)
(湿気硬化型ホットメルト接着剤)
撹拌機、温度計、窒素導入管、減圧装置を備えた反応容器に、結晶性ポリエステルポリオール(a1)として前記a1-1を35部、ポリプロピレングリコール(a2)としてサンニックスPP-1000(三洋化成社、数平均分子量1000)を40部、及びポリエチレングリコール(a3)としてPEG4000(三洋化成社、数平均分子量3400)を25部仕込み加熱溶融し、120℃で2時間減圧加熱した。反応容器内を110℃に冷却した後、窒素雰囲気下、70℃で加熱溶融した4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’-MDIという)を21部加え、110℃で4時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンポリマーを得、該ウレタンポリマーを湿気硬化型ホットメルト接着剤とした。
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤を製本用接着剤とし、後述する方法に従って、120℃における粘度によって塗工性を、固化性によって断裁適性を、固化後、硬化前の耐変形性を、硬化後の破断伸度によって見開き性を、硬化後の破断強度によって本としての強度(製本強度)を評価した。
【0068】
(実施例2~5)
結晶性ポリエステルポリオールとして前記a1-1の代わりに、製造例2~5で得たa1-2~a1-5を用いた以外は実施例1と同様にして湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、同様に評価した。
【0069】
(実施例6~7)
結晶性ポリエステルポリオールとして前記a1-3を、ポリプロピレングリコール(a2)としてサンニックスPP-1000を、ポリエチレングリコール(a3)としてPEG4000の代わりに、三洋化成社の数平均分子量2000のPEG2000、数平均分子量1000のPEG1000をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、同様に評価した。
【0070】
(実施例8~18)
結晶性ポリエステルポリオールである前記a1-3、ポリプロピレングリコール(a2)であるサンニックスPP-1000、及びポリエチレングリコール(a3)であるPEG4000の量を表2に示すように変更した以外は実施例3と同様にして湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、同様に評価した。
【0071】
(実施例19~21)
表3に示すように、結晶性ポリエステルポリオールである前記a1-3、ポリプロピレングリコール(a2)であるサンニックスPP-1000、及びポリエチレングリコール(a3)であるPEG4000、及び他のポリオールとして三菱ケミカル社製の数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール「PTMG2000」を、実施例3と同様にして4,4’-MDIと反応させ、イソシアネート基を有するウレタンポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を得、以下同様に評価した。
【0072】
(実施例22~29)
実施例8で得たウレタンポリマー125部に対し、表3に示す粘着付与樹脂を110℃で加え溶融し湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、以下同様に評価した。
【0073】
(比較例1)
炭素数12の直鎖ポリカルボン酸を原料とする製造例3で得た結晶性ポリエステルポリオールa1-3の代わりに、炭素数6の直鎖ポリカルボン酸を原料とする製造例6で得た結晶性ポリエステルポリオールa’を用い、イソシアネート基を有するウレタンポリマーを得た以外は、実施例3と同様にして、湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、以下同様に評価した。
【0074】
(比較例2)
表3に示すようにポリエチレングリコール(a3)の代わりに他のポリオール成分を用い、イソシアネート基を有するウレタンポリマーを得た以外は、各実施例と同様にして、湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、以下同様に評価した。
【0075】
(比較例3)
表3に示すようにポリプロピレングリコール(a2)を用いずに、結晶性ポリエステルポリオールa1-3とポリエチレングリコール(a3)とを用い、イソシアネート基を有
するウレタンポリマーを得た以外は、各実施例と同様にして、湿気硬化型ホットメルト接着剤を作製し、以下同様に評価した。
【0076】
表2、3における略号は以下の通り。
ポリプロピレングリコール(a2)
・サンニックスPP-1000(三洋化成社、数平均分子量1000)
【0077】
ポリエチレングリコール(a3)
・PEG4000(三洋化成社、数平均分子量3400)
・PEG2000(三洋化成社、数平均分子量2000)
・PEG1000(三洋化成社、数平均分子量1000)
【0078】
ポリイソシアネート(B)
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「4,4’-MDI」)
【0079】
粘着付与樹脂
・クリスタレックスF-100(イーストマンケミカル社、芳香族系石油樹脂、軟化点100℃)
・スーパーエステルA-100(荒川化学社、ロジンエステル、酸価3.1mgKOH/g、軟化点:100℃)
・エステルガムH(荒川化学社、水添ロジンエステル、軟化点68℃)
【0080】
他のポリオール成分
・ニューポール80-4000 (三洋化成社、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量4000)
・PTMG2000(三菱ケミカル社、ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量2000)
・アクリルポリオールAcPOH(メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートを重合させたもの、数平均分子量20000)・Capa6400(パーストープ社、カプロラクトンポリオール、数平均分子量37000)
【0081】
(120℃における粘度:塗工性)
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度を、B型粘度計(ローター♯3、回転数12rpmまたは3rpm)にて測定し、塗工性を下記のように評価した。
〇(優良) :1000mPa・s以上、10000mPa・s以下。
〇△(良) :10000mPa・s以上、25000mPa・s以下。
△(可) :25000mPa・s以上、50000mPa・s以下。
×(不可) :1000mPa・s未満、又は50000mPa・s超え。
【0082】
(固化性:断裁適性)
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤を複数の浅型金属容器に10gづつ秤量し、120℃のオーブンにて溶融し、前記容器を全部オーブンから25℃、50%RH恒温室内に取り出した。取り出し後1分ごとに順番に、1kgの重りを先端が溶融している接着剤表面に付くように乗せ、0.6MPaの圧力で5秒間荷重をかけ、接着剤表面に突起の穴の痕跡が残らなくなる取り出し後の経過時間を固化速度とした。固化速度が速ければ塗布後、速やかに断裁工程に入ることができ生産性の観点で優れている。
〇(優良):8分未満。
〇△(良):8分以上、10分未満。
△(可) :10分以上、12分未満。
×(不可):12分以上。
【0083】
(固化後、硬化前の耐変形性)
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤を浅型金属容器に10g秤量し、120℃のオーブンにて溶融し、前記容器をオーブンから25℃、50%RH恒温室内に取り出し、10分後に湿気硬化型ホットメルト接着剤表面のJISA硬度をJISK7312に準拠して測定した。
なお、「固化性:断裁適性」の評価が「△」、「×」の場合には、「固化後、硬化前の耐変形性」は評価できなかった。
〇(優良):40°以上。
〇△(良):35°以上、40°未満。
△(可) :25°以上、35°未満。
×(不可):25°未満。
【0084】
(硬化後の破断伸度:見開き性)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、アプリケーターを使用して離形処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、離形PETフィルムという)上に厚さ250μmとなるように塗工した。25℃、50%RHで24時間放置し、イソシアネート基の消失をIRにて確認し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させた。
離形PETフィルムから厚さ250μmの硬化被膜を単離し、所定の形状の測定用試料を切り出し、JISK7311に準拠し、測定試料幅:10mm、チャック間距離(測定試料の長さ):24mm、100mm/分の引っ張り速度にて試料を引っ張り、破断伸度を求めた。
本を開いて静置させた時、開いた状態を保つ性能が求められ、すぐに本が閉じてしまうのは好ましくない。伸び率が高ければ本を開いた状態を維持できるため製本用として好適である。
なお、24mm長の試料が48mmに伸びた場合を100%とする。また、用いた装置の測定限界は900%である。
〇(優良):500%以上。
〇△(良):300%以上、500%未満。
△(可) :150%以上、300%未満。
×(不可):150%未満。
【0085】
(硬化後の破断強度:製本強度)
硬化後の破断伸度と合わせて破断強度を求めた。硬化被膜の断面積は2.5mm2で測定を行い、引張強度は単位面積あたりで換算した値を示した。
〇(優良):4.0MPa以上。
〇△(良):3.0MPa以上、4.0MPa未満。
△(可):1.5MPa以上、3.0MPa未満。
×(不可):1.5MPa未満。
【0086】
【0087】
【0088】
表2、3の実施例1~29に示す本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、塗工性、断裁適性、見開き性、製本強度に加えて耐変形性に優れていた。
【0089】
一方、表3の比較例1に示す湿気硬化型ホットメルト接着剤は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)を含まない様態であり、断裁適性が不可であった。
【0090】
また、表3の比較例2に示す湿気硬化型ホットメルト接着剤は、前記ポリエチレングリコール(a3)を含まない様態であり、耐変形性が不可であった。
【0091】
また、表3の比較例3に示す湿気硬化型ホットメルト接着剤は、前記ポリプロピレングリコール(a2)を含まない様態であり、見開き性が不可であった。
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、比較的低粘度で基材への適度な浸透性を有するため、製本用以外に、服飾用途や不織布、布、革の貼り合わせにも好適に使用できる。
ポリオール化合物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンポリマーを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、
前記ポリオール化合物(A)が、炭素数が8~16の直鎖ポリカルボン酸と直鎖ポリオールとを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及び数平均分子量が4000~2万であるポリエチレングリコール(a3)を含む、
湿気硬化型ホットメルト接着剤。
前記ポリオール化合物(A)100質量%中、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)、ポリプロピレングリコール(a2)、及びポリエチレングリコール(a3)を合計で60~100質量%含む、
請求項1記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
前記ポリオール化合物(A)100質量%中、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1):20~50質量%、ポリプロピレングリコール(a2):30~50質量%、及びポリエチレングリコール(a3):5~30質量%含む、
請求項2記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。