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特開2023-10781心臓弁ドッキングデバイスおよびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010781
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】心臓弁ドッキングデバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022179734
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2020544517の分割
【原出願日】2018-02-23
(31)【優先権主張番号】15/902,956
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダーシン・エス・パテル
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ・マナッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケン・パールマター
(72)【発明者】
【氏名】エイアル・ライバ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヴ・ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ・エル・シリマンネ
(72)【発明者】
【氏名】トライ・ディー・トラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセリン・チャウ
(72)【発明者】
【氏名】ノア・アクセルロッド
(72)【発明者】
【氏名】ゾーハー・キブリツキ
(57)【要約】
【課題】新規なドッキングデバイスを提供する。
【解決手段】心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするためのドッキングデバイスは、コイル状ドッキングアンカーと回収縫合糸とを含むことができる。ドッキングデバイスと回収縫合糸は、ドッキングデバイスの展開後の保持および回収を向上させるように構成することができる。ドッキングデバイスは、中心軸を含む端部を有することができる。回収縫合糸を端部に接続することができ、それによって、回収縫合糸に張力を加えることによって与えられる力の線が中心軸に実質的に整合される。
【選択図】図27C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然弁の所にドッキングデバイスを移植するためのシステムであって、
デリバリーカテーテルと、
端部を有する細長いコイル状ドッキングデバイスと、
中央ルーメンを有するプッシャーデバイスであって、前記デリバリーカテーテル内に配設されたプッシャーデバイスと、
前記デリバリーカテーテルの前記中央ルーメンを通して延び、前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部に結合された回収線と、
を備え、
前記システムは、前記回収線を引くと、前記プッシャーデバイスに対して前記コイル状アンカーの前記端部が引かれるように構成され、
前記端部および前記回収線は、前記引くことによる張力が、前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部の中心軸に実質的に整合されるように偏らされるように構成され結合されるシステム。
【請求項2】
前記端部は、前記回収線の少なくとも長さ方向部分を前記中心軸に沿って整合するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記回収線は、前記ドッキングデバイスの前記端部の先端の所における中央通路を通って延び、前記中央通路は前記中心軸に整合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ドッキングデバイスは、球形先端をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記球形先端は、前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部の中心軸に整合された通路を通して前記回収線を受ける、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記球形近位先端は、前記球形近位先端の遷移部に環状溝を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プッシャーデバイスの遠位端は、前記コイル状アンカーの前記端部の所で球形表面に係合するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ドッキングデバイスの前記端部は、ループを含む先端を備え、前記回収線は前記ループに接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ドッキングデバイスの前記端部は、溝を含む先端を備え、回収縫合糸は、前記溝内の前記端部に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
第1の厚さを有し、中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、
前記少なくとも1つの中央巻きの近位端から延びる長さを有する伸張部であって、前記第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する伸張部と、
前記伸張部の近位端から延びる近位巻きであって、前記第2の厚さよりも大きい第3の厚さを有する近位巻きと、
を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記コイル状ドッキングデバイスは、前記端部に対して前記コイル状ドッキングデバイスの反対側の端部上に遠位巻きを備え、前記遠位巻きは、前記第1の厚さを有し、前記中央巻き直径よりも大きい直径を画定する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部は、前記近位巻きの近位端の所に位置する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、心臓の心腔内および前記自然弁の弁尖の周りに配置される、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然僧帽弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、左心室内および前記自然僧帽弁の僧帽弁尖の周りに配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然三尖弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、左心室内および前記自然三尖弁の三尖弁尖の周りに配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
生体適合材料を備えるカバー層をさらに備え、前記カバー層は、前記コイル状アンカーの少なくとも一部を囲む、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記カバー層は低摩擦カバー層であり、
前記低摩擦カバー層は、遠位端と近位端とを有し、前記コイル状ドッキングデバイスを囲み、前記コイル状ドッキングデバイスの長さに沿って、前記コイル状ドッキングデバイスの遠位先端を越え、前記コイル状ドッキングデバイスの近位先端を越えて延び、
前記低摩擦カバー層は、その遠位端の所の丸い先端まで先細りする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記カバー層の少なくとも一部を囲みかつ前記少なくとも一部に沿って延びる第2のカバー層を備える摩擦強化要素をさらに備え、前記第2のカバー層は、摩擦係数が少なくとも1である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2のカバー層は編み材料である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、
前記中央巻き直径よりも大きい直径を画定する、前記少なくとも1つの中央巻きから延びる下部巻きと、
前記少なくとも1つの中央巻きに接続された上部巻きであって、第1の軸に沿った第1の直径と第2の軸に沿った第2の直径とを有するように形作られた上部巻きとを備え、
前記第1の軸直径は、前記中央巻き直径よりも大きく、前記第2の軸直径は、前記中央巻き直径よりも大きく、前記下部巻き直径よりも小さい、請求項1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
近位端と遠位端とを有する中空チューブと、
前記中空チューブの各部を貫通する複数の切り込みと、
長さと、近位端と、遠位端とを有するワイヤと、
を備え、
前記ワイヤの前記遠位端は、前記中空チューブの遠位端に固定され、前記ワイヤの前記近位端は、前記中空チューブの近位端に固定され、
前記ワイヤの前記長さは、前記中空チューブを通って延び、前記中空チューブに半径方向内側への張力を加える、請求項1から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記切り込みは、前記中空チューブに歯および溝を形成する縦方向切り込みと横方向切り込みの両方を組み込んだパターンおよび形状を有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記コイル状ドッキングデバイスは、コアを含み、前記コアの遠位端は、矩形断面と遠位巻リング状先端とを有する、請求項1から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記コイル状ドッキングデバイスは、コアを含み、前記コアの少なくとも1つの端部はボール状先端を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするためのドッキングデバイスであって、
中心軸を含む端部を有するコイル状ドッキングデバイスを備え、
前記ドッキングデバイスの前記端部は、前記端部に接続された回収縫合糸が偏らされて、張力によって前記回収縫合糸に加えられる力の線が前記中心軸に整合されるように構成されるドッキングデバイス。
【請求項26】
前記端部は、前記回収縫合糸の少なくとも長さ方向部分を前記中心軸に沿って整合するように構成される、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記回収縫合糸は、前記ドッキングデバイスの前記端部の先端の所における中央通路を通って延び、前記中央通路は前記中心軸に整合される、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
前記コイル状ドッキングデバイスは、前記回収縫合糸を受ける球形先端を前記近位端部上にさらに備える、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
前記球形先端は、前記球形先端の遷移部に環状溝を備える、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記ドッキングデバイスの前記端部は、溝を含む先端を備え、前記回収縫合糸は、前記回収縫合糸の一部が前記溝に結び付けられた前記端部に結合される、請求項25に記載のデバイス。
【請求項31】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
第1の厚さを有し、中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、
前記少なくとも1つの中央巻きの上端部から延びる長さを有する伸張部であって、前記第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する伸張部と、
前記遷移部の上端部から延びる上部巻きであって、前記第2の厚さよりも大きい第3の厚さを有する上部巻きと、
を備える、請求項25から30のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項32】
前記コイル状ドッキングデバイスは、前記端部に対して前記コイル状ドッキングデバイスの反対側の端部上に遠位巻きを備え、前記遠位巻きは、前記第1の厚さを有し、前記中央巻き直径よりも大きい直径を画定する、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、心臓の心腔内および前記自然弁の弁尖の周りに配置される、請求項31に記載のデバイス。
【請求項34】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然僧帽弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、左心室内および前記自然僧帽弁の僧帽弁尖の周りに配置される、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然三尖弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、左心室内および前記自然三尖弁の三尖弁尖の周りに配置される、請求項33に記載のデバイス。
【請求項36】
生体適合材料を備えるカバー層をさらに備え、前記カバー層は、前記コイル状アンカーの少なくとも一部を囲む、請求項25から35のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記カバー層は低摩擦カバー層であり、
前記低摩擦カバー層は、遠位端と近位端とを有し、前記コイル状ドッキングデバイスを囲み、前記コイル状ドッキングデバイスの長さに沿って、前記コイル状ドッキングデバイスの遠位先端を越え、前記コイル状ドッキングデバイスの近位先端を越えて延び、
前記低摩擦カバー層は、その遠位端の所の丸い先端まで先細りする、請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
前記カバー層の少なくとも一部を囲みかつ前記少なくとも一部に沿って延びる第2のカバー層を備える摩擦強化要素をさらに備え、前記第2のカバー層は、摩擦係数が少なくとも1である、請求項36に記載のデバイス。
【請求項39】
前記第2のカバー層は編み材料である、請求項38に記載のデバイス。
【請求項40】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、
前記中央巻き直径よりも大きい直径を画定する、前記少なくとも1つの中央巻きから延びる下部巻きと、
前記少なくとも1つの中央巻きに接続された上部巻きであって、第1の軸に沿った第1の直径と第2の軸に沿った第2の直径とを有するように形作られた上部巻きと、
を備え、
前記第1の軸の直径は、前記中央巻き直径よりも大きく、前記第2の軸の直径は、前記中央巻き直径よりも大きく、前記下部巻き直径よりも小さい、請求項25から39のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項41】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
近位端と遠位端とを有する中空チューブと、
前記中空チューブの各部を貫通する複数の切り込みと、
長さと、近位端と、遠位端とを有するワイヤと、
を備え、
前記ワイヤの前記遠位端は、前記中空チューブの遠位端に固定され、前記ワイヤの前記近位端は、前記中空チューブの近位端に固定され、
前記ワイヤの前記長さは、前記中空チューブを通って延び、前記中空チューブに半径方向内側への張力を加える、請求項25から40のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項42】
前記切り込みは、前記中空チューブに歯および溝を形成する縦方向切り込みと横方向切り込みの両方を組み込んだパターンおよび形状を有する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記コイル状ドッキングデバイスは、コアを含み、前記コアの遠位端は、矩形断面と遠位巻リング状先端とを有する、請求項25から42のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項44】
前記コイル状ドッキングデバイスは、コアを含み、前記コアの少なくとも1つの端部はボール状先端を有する、請求項25から42のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項45】
心臓内からコイル状ドッキングデバイスを回収する方法であって、
回収線を引いてプッシャーデバイスに対してコイル状ドッキングデバイスの端部を引くステップであって、前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部は、前記回収線を偏らせて、前記引くステップによって加えられる張力を前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部の中心軸に整合するように構成される、ステップと、
プッシャーデバイスおよび前記コイル状ドッキングデバイスの前記端部をデリバリーカテーテルに引き込むステップと、
を含む方法。
【請求項46】
前記プッシャーデバイスは、前記コイル状ドッキングデバイスの球形端部に当接する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記端部は、前記回収線の少なくとも一部を前記中心軸に沿って整合する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記回収線は、前記ドッキングデバイスの前記端部の先端における中央通路を通って延び、前記中央通路は前記中心軸に整合される、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年2月22日に出願された米国特許出願第15/902956号の優先権を主張し、米国特許出願第15/902956号は、2017年8月21日に出願された米国特許出願第15/682287号の一部継続出願であり、米国特許出願第15/682287号は、2016年9月16日に出願された米国仮特許出願第62/395940号および2016年8月26日に出願された米国仮特許出願第62/380117号の利益を主張する。これらの出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、概して人工心臓弁に関する医療デバイスおよび処置に関する。より詳細には、本発明は、奇形および/または機能障害を有することがある心臓弁の置換に関する。本発明の実施形態は、たとえば、僧帽弁または三尖弁置換処置用の自然心臓弁の機能を置換するために人工心臓弁の位置を保持し維持することができるアンカーもしくはドッキングデバイス、ならびにそのようなアンカーもしくはドッキングデバイスおよび/またはアンカーもしくはドッキングデバイスおよび人工心臓弁を含むアセンブリの移植に関連する設置処置に関する。
【背景技術】
【0003】
まず図1および図2を参照すると、僧帽弁50は、ヒト心臓の左心房52と左心室54との間の血流を制御する。左心房52が肺静脈を介して肺から酸素を含む血液を受け取った後、僧帽弁50は、酸素を含む血液の左心房52から左心室54内への流れを可能にする。左心室54が収縮すると、左心室54に保持された酸素を含む血液は、大動脈弁56および大動脈58を通って体の残りの部分に送られる。一方、僧帽弁は、心室性収縮時に閉じて血液が左心房に逆流するのを防止する必要がある。
【0004】
左心室が収縮すると、左心室内の血圧が実質的に上昇し、このことは僧帽弁が閉じるのを促す働きをする。この間の左心室と左心房の間の圧力差が大きいので、大きな圧力が僧帽弁にかかり、僧帽弁の弁尖が心房に逸脱または外転する可能性がある。したがって、一連の腱索62が僧帽弁の弁尖を左心室の壁上に位置する乳頭筋に接続しており、左心室が収縮する間、腱索と乳頭筋の両方が張力を受けて弁尖を閉位置に保持し、弁尖が左心房に向かって伸張するのを防止する。このことは、酸素を含む血液が左心房に逆流するのを防止する助けになる。腱索62は、図1の心臓断面および図2の僧帽弁の上面図の両方に概略的に示されている。
【0005】
左心室から見た僧帽弁およびその弁尖の概形が図2に示されている。前尖66と後尖68が集合する僧帽弁50の各端部に交連部64が位置している。僧帽弁の様々な合併症が、場合によっては致命的な心不全を生じさせることがある。心臓弁膜症の一形態は僧帽弁漏れまたは僧帽弁逆流であり、左心室から僧帽弁を通って左心房内に流れ込む血液の異常な漏れを特徴とする。これは、たとえば、左心室の膨張によって自然僧帽弁尖が完全に接合しなくなって漏れが生じるか、自然弁尖が損傷するか、または腱索および/もしくは乳頭筋の弱体化(もしくは損傷)によって生じることがある。このような状況では、僧帽弁を修復するか、または僧帽弁の機能を人工心臓弁の機能で置換することが望ましい場合がある。
【0006】
弁置換に関して、開胸手術オプションはより容易に利用可能であるが、カテーテル移植および/または他の最小侵襲もしくは低侵襲処置によって僧帽弁を置換するための市販の方法に関する進歩はほとんどない。これに対して、経カテーテル大動脈弁置換の分野はずっと発展しており、広く成功を収めている。この不一致は、1つには、たとえば、僧帽弁の非円形物理的構造、僧帽弁の準環状生体構造、および僧帽弁への接近がより困難であることに起因して僧帽弁の置換が多くの点で大動脈弁置換よりもずっと困難であることによる。経カテーテル大動脈弁技術の開発が成功したことに起因して、同じまたは同様の円形弁補綴を僧帽弁置換用に使用すると有利である場合がある。
【0007】
僧帽弁置換に対する最も顕著な障害物のうちの1つは、弁が大きい循環的な負荷を受けることによって弁が事実上僧帽位置に固着または留置されることである。上記で指摘したように、僧帽弁置換に関する別の問題は、図2を見るとわかるように自然僧帽弁ループのサイズおよび形状である。大動脈弁は僧帽弁と比べて形状が円形または円筒形により近い。さらに、僧帽弁と三尖弁はどちらも大動脈弁よりも大きく、かつ形状がより細長く、概ね円形または円筒形の弁フレームを有する置換弁を移植するための部位としてより困難で異例の部位になる。弁の周りに良好なシールが確立されない場合、過度に小さい円形人工弁は、インプラントの周りに漏れが生じることがあり(すなわち、弁傍の漏れ)、一方、過度に大きい円形人工弁は、自然僧帽弁ループのより狭い部分を伸張して損傷を与えることがある。さらに、多くの場合、たとえば、大動脈弁狭窄症に起因して大動脈弁置換が必要になり、この場合、大動脈弁は、自然弁尖の石灰化または他の硬化に起因して狭窄する。したがって、大動脈弁ループは一般に、僧帽弁ループよりも小型で、より剛性が高く、より安定した人工弁のための固着部位を形成し、僧帽弁ループは、大動脈弁ループよりも大きいとともに非円形である。僧帽弁逆流の例では、そのような良好な固着部位が形成される可能性は低い。さらに、僧帽位置に腱索およびその他の生体構造が存在すると、デバイスを僧帽位置に適切に固着するうえでずっと深刻な問題になる障害物を形成することがある。
【0008】
有効な僧帽弁置換に対する他の障害は、僧帽弁が大きい循環荷重を受け、かつ十分に強く安定した固着および保持を確立する必要があることに起因して生じることがある。さらに、弁の位置合わせがわずかにずれた場合でも、心臓の弁もしくは他の部位における血流が妨害されるか、または他の点で悪影響を受けることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この概要は、いくつかの例を提示するためのものであり、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。たとえば、この概要の例に含まれる特別機構において、特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、特許請求の範囲では必要とされない特別機構もある。さらに、説明する特別機構は様々な方法で組み合わせることができる。本明細書の説明は、動物における弁を治療するのに利用されてもよいシステム、アセンブリ、方法、デバイス、装置、組合せなどに関する。本開示の他の箇所で説明する様々な特別機構およびステップは、ここで概要を述べる例に含まれてもよい。
【0010】
既存の円形または円筒形経カテーテル弁技術を非円形弁置換(たとえば、僧帽弁置換、三尖弁置換など)に適用する1つの方法は、自然弁位置においてより円形に近いドッキング部位を形成するかまたはそれ以外で構成してそのような人工弁を保持するアンカー(たとえば、僧帽アンカー)またはドッキングデバイスまたはドッキングステーションを使用する方法である。このように、大動脈位置向けに開発された既存の拡張可能な経カテーテル弁、または僧帽弁機能をより効果的に模倣するようにわずかに修正された同様の弁を、自然弁ループ(たとえば、自然僧帽弁ループ)に位置するそのようなドッキングデバイスにより確実に移植することができる。ドッキングデバイスは、まず自然弁ループの所に配置することができ、その後、弁インプラントまたは経カテーテル心臓弁を折り畳み位置の間にドッキングデバイスを通して前進させ配置することができ、次いで、たとえば、自己拡張(たとえば、NiTiまたは別の形状記憶材料で構成された弁の場合)、バルーン拡張、または機械的拡張を介して拡張することができ、それによって、人工弁のフレームを2つの間でドッキングデバイスおよび/または組織に半径方向に押し付けて、弁を所定の位置に保持する。ドッキングデバイスは、経カテーテル弁心臓弁を送るために使用される経カテーテル手法と同じまたは同様の経カテーテル手法を介して、最小侵襲または低侵襲で送ることもでき、それによって、人工弁を送る前にドッキングデバイスを移植するための完全に別個の手順が必要とされることがなくなることが好ましい。
【0011】
したがって、そのような弁のドッキングまたは固着を容易にするために利用できるデバイスおよび方法を提供することが望ましい。本発明の実施形態は、人工弁(たとえば、人工僧帽弁)を保持するための安定したドッキングステーションまたはドッキングデバイスを提供する。他の特別機構は、内部に保持されるようになっているそのようなドッキングステーションおよび/または置換補綴の展開、配置、安定性、および/または一体化を改善するために提供される。これらのデバイスおよび方法は、人工弁をより確実に保持し、人工弁の周りの血液の逆流または漏れを防止するかまたは大幅に軽減することができる。そのようなドッキングデバイスおよび方法を様々な弁置換処置、たとえば、僧帽弁置換、三尖弁置換、肺動脈弁置換、または大動脈弁置換に使用して、そのような位置において自然弁ループの所に弁インプラントをより確実にかつ堅固に固着し保持することを可能にする。
【0012】
心臓の自然弁(たとえば、僧帽弁、三尖弁など)の所に人工弁をドッキングするためのドッキングデバイスは、様々な特別機構、構成要素、および特性を含むことができる。たとえば、そのようなドッキングデバイスは、中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻き(たとえば、全回転または部分回転中央巻き)を有するコイル状アンカーを含むことができる。少なくとも1つの中央巻きは1つまたは複数の機能巻き/コイルとすることができる。コイル状アンカーは、中央巻き直径よりも大きい直径を画定する少なくとも1つの中央巻きから延びる下部巻きを含むことができる。下部巻きは誘導巻き/コイルとすることができる。コイル状アンカーは、中央巻きに接続された上部巻きを含むこともできる。上部巻きは、1つもしくは複数の安定化巻き/コイルとすることができる。上部巻きは、第1の軸に沿った第1の直径と第2の軸に沿った第2の直径とを有するように形作ることができる。上部巻きの第1の軸直径は、中央巻き直径よりも大きくすることができ、第2の軸直径は、中央巻き直径よりも大きく下部巻き直径よりも小さくすることができる。本明細書で説明する様々なコイル状アンカーは、コイル状アンカーの少なくとも1つの中央巻きの少なくとも一部を心臓の心腔(たとえば、左心室)内および自然弁の弁尖の周りに配置することによって自然弁(たとえば、自然僧帽弁、三尖弁など)の所に移植されるように構成することができる。
【0013】
本明細書で説明するコイル状アンカーはいずれも、少なくとも1つの中央巻きの上端部から上部巻き/コイルまたは安定化巻き/コイルまで延びる長さを有する伸張部を含むことができる。伸張部は、コイル状アンカーの他の部分、たとえば、少なくとも1つの中央巻き、上部巻き、下部巻きなどと比較してより小さい厚さを有することができる。伸張部は、少なくとも1つの中央巻きに対して60~120度、70~110度、80~100度、90度の角度で垂直に延びることができる。
【0014】
心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするための様々なドッキングデバイスは、近位先端および遠位先端を有するコイル状アンカー(たとえば、本開示で説明する他のコイル状アンカーと同じまたは同様のコイル状アンカーとすることができる)を有することができる。コイル状アンカーは、少なくとも1つの中央巻き(たとえば、全中央巻きまたは部分中央巻きであり、本開示で説明する他の中央巻きまたは機能巻きと同じまたは同様とすることができる)を含むことができる。少なくとも1つの中央巻きは、第1の厚さを有し、中央巻き直径を画定することができる。本明細書で説明するコイル状アンカーはいずれも、少なくとも1つの中央巻きの上端部から延びる長さを有する伸張部を含むこともできる。コイル状アンカーは、伸張部の上端部から延びる上部巻き(たとえば、本開示で説明する他の上部巻きまたは安定化巻き/コイルと同じまたは同様とすることができる)を含むこともできる。伸張部は、第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有することができる。上部巻きは、第2の厚さよりも大きい第3の厚さを有することができる。上述のように、コイル状アンカーは、自然弁(たとえば、自然僧帽弁、三尖弁など)の所に移植するように構成することができ、コイル状アンカーの全中央巻きまたは部分中央巻きのうちの少なくとも一部が心臓の心腔(たとえば、左心室)内および自然心臓弁の弁尖(たとえば、僧帽弁尖)の周りに配置される。
【0015】
心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするための様々なドッキングデバイスはまた、近位先端および遠位先端と、直径を画定する少なくとも1つの中央巻き(たとえば、全中央巻きまたは部分中央巻き、本開示で説明する他の中央巻き/コイルまたは機能巻き/コイルと同じまたは同様とすることができる)とを有するコイル状アンカー(たとえば、本開示で説明する他のコイル状アンカーと同じまたは同様とすることができる)を有することができる。コイル状アンカーはまた、少なくとも1つの中央巻きに接続された上部巻きを有することができる。カバー層が、少なくとも1つの中央巻きのすべてまたは少なくとも一部に沿ってコイル状アンカーを囲むことができる。カバー層はコイル状アンカーに接続することができる。コイル状アンカーおよび/またはカバー層上に少なくとも1つの摩擦強化層を配設することができる。少なくとも1つの摩擦強化層は、少なくとも1つの中央巻きの少なくとも一部上に配設することができる。コイル状アンカーは、上部巻きのどの部分も摩擦強化層によって覆われないように構成することができる。コイル状アンカーはまた、自然弁(たとえば、自然僧帽弁など)の所に移植できるように構成することができ、コイル状アンカーの少なくとも1つの中央巻きの少なくとも一部は、心臓の心腔(たとえば、左心室)内および自然弁の弁尖の周りに配置される。
【0016】
本明細書で説明するドッキングデバイスのうちのいずれのドッキングデバイスのコイル状アンカーのうちのいずれも、コイル状アンカーのすべてもしくは少なくとも一部を囲む1つもしくは複数のカバー層またはコイル状アンカーのコアを含むことができる。たとえば、カバー層は、少なくとも1つの中央巻きのすべてもしくは少なくとも一部(またはコイル状アンカーの中央巻き/コイルもしくは機能巻き/コイルのすべて)および/またはコイル状アンカーの他の部分を囲むことができる。カバー層は様々な方法でコイル状アンカーに接続することができる。カバー層は、高摩擦カバー層もしくは低摩擦カバー層とすることができ、または低摩擦カバー層と高摩擦カバー層の両方を一緒に使用することができる。低摩擦カバー層は、コイル状アンカーコア(たとえば、コイル状アンカーの全長)を囲み、近位先端および/または遠位先端を越えて延びるように構成することができる。低摩擦カバー層は、その遠位端および/または近位端の所に先細り先端または丸形先端を形成することができる。高摩擦カバー層またはより摩擦係数の大きいカバー層(たとえば、低摩擦カバー層よりも摩擦係数の大きいカバー層)が、低摩擦カバー層の一部および/またはコイル状アンカーの一部(少なくとも1つの中央巻きのすべてまたは一部)を囲むことができる。
【0017】
本明細書で説明するコイル状アンカーのうちのいずれも、少なくとも1つの摩擦強化要素または複数の摩擦強化要素を含むことができる。少なくとも1つの摩擦強化要素は、コイル状アンカーのすべてもしくは一部またはコイル状アンカーの被膜/層上に配置することができる。少なくとも1つの摩擦強化要素は、コイル状アンカーの表面上もしくは被膜の表面上の複数の膨出部とすることができ、またはコイル状アンカーの表面上もしくは被膜の表面上に複数の膨出部を含むことができる。膨出部は、PET、ポリマー、布、または別の材料で作ることができる。膨出部は、中央巻き/コイルの少なくとも一部に沿ってコイル状アンカーもしくは被膜のある長さに沿って延びることができる。
【0018】
場合によっては、少なくとも1つの摩擦強化要素は、コイル状アンカーの外面における複数の鍵穴状切欠きおよび鍵状切欠きとすることができ、またはコイル状アンカーの外面における複数の鍵穴状切欠きおよび鍵状切欠きを含むことができる。鍵穴状切欠きは、コイル状アンカーの外面に形成された溝とすることができ、鍵状切欠きは、コイル状アンカーから外側に延びる突起とすることができ、鍵穴状切欠きに嵌るサイズおよび形状を有することができる。
【0019】
心臓の自然弁の所にドッキングデバイスを移植するためのシステムは、ドッキングデバイス(たとえば、上記または本開示内の他の箇所で説明する任意のドッキングデバイス)を含むことができる。ドッキングデバイスは、開口部またはボアを含むことができ、システムは、開口部またはボアに通される縫合糸を含むことができる。システムはまた、デリバリーカテーテルと、デリバリーカテーテル内に配設されたプッシャーデバイスとを含むことができる。プッシャーデバイスは、縫合糸を受け入れるかまたは縫合糸が通過する中央ルーメンを含むことができる。プッシャーデバイスと縫合糸は、縫合糸を引くとコイル状アンカーがプッシャーデバイスに対して引かれ、プッシャーデバイスをデリバリーカテーテル内に引き込むとコイル状アンカーがデリバリーカテーテル内に引き込まれる。縫合糸は、縫合糸および/またはプッシャーデバイスをデリバリーカテーテルに対して近位方向に引くと、コイル状アンカーまたはデリバリーデバイスがデリバリーカテーテル内に引き込まれるように、中央ルーメン内に配設することができる。
【0020】
心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするためのドッキングデバイスは、中空チューブを含むコイル状アンカーを有することができる。中空チューブは、近位ロック特別機構と遠位ロック特別機構とを有することができる。チューブの各部を貫通する複数の切り込みを設けることができる。切り込みは、縦方向切り込みと横方向切り込みの一方または両方を組み込んだパターンおよび形状を有することができる。切り込みが、縦方向切り込みと横方向切り込みの両方を組み込んだパターンおよび形状を有する場合、これらは中空チューブに歯および溝を形成することができる。ドッキングデバイスはまた、ワイヤを有することができ、ワイヤの遠位端を遠位ロック特別機構に固定することができる。ワイヤのある長さ(たとえば、ワイヤの全長または一部)が中空チューブを通って延びることができ、中空チューブに対して半径方向内側に張力を加えることができる。中空チューブは、自然僧帽弁の弁尖を少なくとも部分的に囲み、拡張可能な人工弁用のドッキング表面を形成するように構成される。
【0021】
自然心臓弁の所に人工弁用のドッキングデバイスを移植するために使用される方法は、様々なステップ(たとえば、本開示の全体にわたって説明されるステップのいずれか)を含むことができる。これらの方法によって移植されるドッキングデバイスは、本明細書で説明するドッキングデバイスのうちのいずれのドッキングデバイスとすることもできる。たとえば、これらのステップによって移植可能なドッキングデバイスは、中央直径を画定する少なくとも1つの全巻きまたは部分巻きと、少なくとも1つの中央巻きの上端部から延びる長さを有する伸張部と、伸張部の上端部から延びる上部巻きとを有するコイル状アンカーを有することができる。デリバリーカテーテルの遠位端は、心臓の第1の心腔(たとえば、左心室)内に配置することができる。場合によっては、デリバリーカテーテルを、すでに移植されたガイドシースを通して前進させ配置することができる。デリバリーカテーテルは第1の構成のドッキングデバイスを含むことができる。ドッキングデバイスの遠位端をデリバリーカテーテルから前進させることができ、それによって、ドッキングデバイスは、前進し、ならびに/または移植される際に第2の構成をとる。ドッキングデバイスを、弁ループ(たとえば、自然僧帽弁ループ)を通して心臓の第2の心腔(たとえば、左心室)内に前進させ、それによって、遠位先端は、自然弁(たとえば、僧帽弁)の任意の腱索および自然弁尖を緩く囲む。ドッキングデバイスの伸張部を前進させることができ、それによって、伸張部の上端部が第1心腔(たとえば、左心房)内に配置される。ドッキングデバイスの上部を第1の心腔(たとえば、左心房)内に前進させ解放することができ、それによって、上部は第1の心腔壁(たとえば、左心房壁)に接触する。置換人工弁をドッキングデバイス内に移植することができる。たとえば、第2の構成のドッキングデバイスによって画定される内側空間内に置換弁を挿入することができる。置換弁は、置換弁とドッキングデバイスとの間に保持力が作用して置換弁を安定位置に保持するまで半径方向に拡張することができる。自然弁尖または他の組織をデリバリーデバイスと人工弁との間にクランプ止めすることができる。
【0022】
自然弁部位にコイル状アンカーまたはドッキングデバイスを使用して拡張可能な経カテーテル心臓弁をその中にドッキングすることによって弁置換を実現することができる。コイル状アンカーまたはドッキングデバイスは、人工弁を拡張するためのより安定したベースまたは部位をもたらす。したがって、本発明の実施形態は、弁ループ自体が非円形であるかまたは場合によっては可変形状を有することがある自然僧帽弁ループなどの部位でも置換心臓弁を移植するためのよりロバストな方法を提供する。
【0023】
本明細書におけるシステムのうちの1つもしくは複数は、ドッキングデバイスを自然弁の所に移植し、ならびに/またはドッキングデバイスを回収するためのシステムとすることができる。システムは、デリバリーカテーテル、および端部を有するコイル状ドッキングデバイス(たとえば、細長いコイル状ドッキングデバイス)を含む、本明細書で説明する様々な特別機構および構成要素を備えることができる。システムはまた、中央ルーメンを有するプッシャーデバイスを含むことができ、プッシャーデバイスはデリバリーカテーテル内に配設することができる。回収線(たとえば、回収縫合糸)は、デリバリーカテーテルの中央ルーメンを通って延びて、コイル状ドッキングデバイスの端部に結合することができる。
【0024】
システムは、ドッキングデバイスの端部がプッシャーデバイスおよび/もしくはデリバリーカテーテルの端部上またはプッシャーデバイスおよび/もしくはデリバリーカテーテルの端部の所のT字に巻き込ませずにドッキングデバイスをプッシャーデバイスに対して引きならびに/またはドッキングデバイスをデリバリーカテーテル内に引き込むのを容易にするように構成される。たとえば、システム、たとえば、端部および回収線は、回収線を引くと、コイル状アンカーの端部およびドッキングデバイスをデリバリーカテーテル内に案内するのを助けるようにコイル状アンカーの端部がプッシャーデバイスおよび/またはデリバリーカテーテルに対して引かれるように構成される。端部の最近位部または最近位先端は、回収のために端部をプッシャーチューブおよび/またはデリバリーカテーテルに位置合わせするのを助けるように湾曲させることができる。端部および回収線はまた、引くことによる張力がコイル状ドッキングデバイスの端部の中心軸に実質的に整合されるように偏らされるか、または回収線を引くと張力がコイル状ドッキングデバイスの端部の中心軸に整合されるように構成し結合することができる。張力は、端部の中心軸を偏らせてプッシャーデバイスおよび/またはデリバリーカテーテルの軸をも整合する/またはプッシャーデバイスおよび/またはデリバリーカテーテルの軸に整合され、それによって、たとえば、端部は、デリバリーカテーテル内に引き込まれるように整列することができる。
【0025】
端部は、回収線の少なくとも長さ方向部分を中心軸に沿って整合するように構成することができる。回収線は、ドッキングデバイスの端部の先端の所で中心通路を通って延びるように配置することができる。中心通路は中心軸に整合されるか、または中心軸と同軸とすることができる。
【0026】
ドッキングデバイスは、球状先端(たとえば、ボール形、半球形など)を備えることができる。球状先端は、コイル状ドッキングデバイスの端部の中心軸に整合された通路を通して回収線を受けるように構成することができる。近位先端は、近位先端の遷移部に環状溝を備えることができる。プッシャーデバイスの遠位端は、コイル状アンカーの端部の所の球状表面に係合するように構成することができ、球状先端の一部をプッシャーデバイスのルーメンにいくらか引き込むことができる。
【0027】
ドッキングデバイスの端部は、ループを有する先端を備えることができ、回収線をこのループに接続することができる。
【0028】
ドッキングデバイスの端部は、溝を有する先端を備えることができ、回収縫合糸を溝内の端部に結合することができ、たとえば、溝に結び付けるか、溝内の縫合ループに結合するか、溝内に少なくとも部分的に巻くことなどを行うことができる。
【0029】
システムのコイル状ドッキングデバイスは、第1の厚さを有し中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、少なくとも1つの中央巻きの近位端から延びる長さを有し、第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する伸張部または遷移部と、伸張部の近位端または上端部から延びる近位巻きまたは上部巻きとを含むことができる。近位巻きは、第2の厚さよりも大きい第3の厚さを有することができる。コイル状ドッキングデバイスは、近位巻きまたは上部巻きおよび端部に対してコイル状ドッキングデバイスの反対側の端部上に遠位巻きまたは下部巻きを備えることもできる。遠位巻きまたは下部巻きは、第1の厚さを有することができ、中央巻き直径よりも大きい直径を画定することができる。コイル状ドッキングデバイスの端部は、近位巻きの近位端に位置することができる。
【0030】
コイル状ドッキングデバイスは、自然弁の所に移植されるように構成され、コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部は、心臓の心腔内および自然弁の弁尖の周りに配置される。コイル状ドッキングデバイスは、自然僧帽弁の所に移植されるように構成することができ、コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部は、左心室内および自然僧帽弁の僧帽弁尖の周りに配置される。コイル状ドッキングデバイスは、自然三尖弁の所に移植されるように構成することができ、コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部は、左心室内および自然三尖弁の三尖弁尖の周りに配置される。
【0031】
システムおよび/またはコイル状ドッキングデバイスは、生体適合材料を含むカバー層を含むことができ、カバー層は、コイル状アンカーの少なくとも一部を囲む。カバー層は、遠位端と近位端とを有する低摩擦カバー層とすることができる。カバー層は、コイル状ドッキングデバイスを囲み、コイル状ドッキングデバイスのある長さに沿って、コイル状ドッキングデバイスの遠位先端を越え、コイル状ドッキングデバイスの近位先端を越えて延びることができ、低摩擦カバー層は、その遠位先端の所の丸形先端まで先細りしている。システムおよび/またはコイル状ドッキングデバイスは、摩擦強化要素を含むことができ、摩擦強化要素は、カバー層の少なくとも一部を囲みカバー層の少なくとも一部に沿って延びる第2のカバー層を備えることができ、第2のカバー層は、摩擦係数が少なくとも1である(または本明細書の他の箇所で説明する他の摩擦強化要素のうちの1つ)。第2のカバー層は、編み材料とすることができる。
【0032】
コイル状ドッキングデバイスは、中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、中央巻き直径よりも大きい遠位巻き直径または下部巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きから延びる遠位巻きまたは下部巻きと、少なくとも1つの中央巻きに接続された上部巻きまたは近位巻きとを備えることができ、上部巻きまたは近位巻きは、第1の軸に沿った第1の直径と第2の軸に沿った第2の直径とを有するように形作られる。第1の軸直径は、中央巻き直径よりも大きくすることができ、第2の軸直径は、中央巻き直径よりも大きく、かつ下部巻き直径または遠位巻き直径よりも小さくすることができる。
【0033】
コイル状ドッキングデバイスは、近位端および遠位端ならびにチューブの各部における複数の切り込みを有する中空チューブを備えることができる。コイル状ドッキングデバイスはまた、ある長さ、近位端、および遠位端を有するワイヤを備えることができる。ワイヤの遠位端を中空チューブの遠位端に固定することができ、ワイヤの近位端を中空チューブの近位端に固定することができる。ワイヤの長さは、中空チューブを通って延びることができ、中空チューブに半径方向内側の張力を加えることができる。切り込みは、中空チューブにおける歯および溝を形成する縦方向切り込みと横方向切り込みの両方を組み込んだパターンおよび形状を有することができる。
【0034】
コイル状ドッキングデバイスは、スケルトンまたはコアを含むことができ、スケルトンまたはコアの遠位端は、矩形断面と遠位リング形先端とを有することができる。
【0035】
コイル状ドッキングデバイスは、スケルトンまたはコアを含むことができ、スケルトンまたはコアの少なくとも一方の端部はボール形先端を有することができる。
【0036】
一実施形態では、心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするためのドッキングデバイスであって、上記および本明細書の他の箇所でドッキングデバイスに関して説明する特別機構および構成要素のうちのいずれかを含むことのできるドッキングデバイスが提供される。たとえば、ドッキングデバイスは、中心軸を含む端部を有するコイル状ドッキングデバイスを含むか、またはそのようなコイル状ドッキングデバイスとすることができる。ドッキングデバイスの端部は、端部に接続された回収縫合糸が偏らされて張力によって回収縫合糸に加えられる力の線が中心軸に整合されるように構成することができる。
【0037】
心臓内からコイル状ドッキングデバイスを回収する方法は、回収線を引いてコイル状ドッキングデバイスの端部をプッシャーデバイスに対して引き、ならびに/またはデリバリーカテーテル内に引き込むステップを含むことができる。コイル状ドッキングデバイスの端部は、上記または本明細書の他の箇所で説明する端部のいずれかとして構成することができる。たとえば、端部は、回収線を偏らせて、前記引くことによって加えられる張力をコイル状ドッキングデバイスの端部の中心軸に整合するように構成することができる。この方法は、コイル状ドッキングデバイスのプッシャーデバイスおよび/または端部をデリバリーカテーテル内に引き込むステップを含むことができる。
【0038】
本発明のさらなる特別機構および利点は、添付の図面を使用した実施形態の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ヒト心臓の概略断面図である。
図2】ヒトの僧帽弁ループの概略上面図である。
図3】例示的なアンカー/ドッキングデバイスの斜視図である。
図4図3のアンカーの側面図である。
図5図3および図4のアンカーの上面図である。
図6図3図5のアンカーを自然僧帽弁に送るステップの間の心臓の一部の断面図である。
図7図3図5のアンカーを自然僧帽弁ループに送るさらなるステップの間の心臓の一部の断面図である。
図8図3図5のアンカーが自然僧帽弁ループの所に配置された心臓の一部の断面図である。
図9図3図5のアンカーおよび人工僧帽弁が自然僧帽弁ループの所に移植された心臓の一部の断面図である。
図10】多くの点で図3図5のアンカー/ドッキングデバイスと同様の例示的なアンカー/ドッキングデバイスの斜視図である。
図11】アンカー/ドッキングデバイスとして使用できる例示的なレーザーカットチューブの概略透視図である。
図11A】本発明の一実施形態によるアンカーおよび張力ワイヤとして使用すべきレーザーカットチューブの概略開放図である。
図12】組立て状態の図11のレーザーカットアンカーの上面図である。
図13】組立て状態および作動状態の、その中に人工弁の例示的なフレームを有する図11のレーザーカットアンカーの上面図である。
図14】エンドフックを有する例示的なアンカー/ドッキングデバイスの上面図である。
図15】高摩擦カバー層を有する別の例示的なアンカー/ドッキングデバイスの概略図である。
図16】摩擦要素を有するさらに別の例示的なアンカー/ドッキングデバイスの概略図である。
図16A図16に示す実施形態の断面図である。
図17】高摩擦被膜と摩擦要素の両方を組み込んだ例示的なアンカー/ドッキングデバイスの概略図である。
図18】互いに隣接するコイル間の連動または位置保持を容易にするための表面特別機構を有する例示的なアンカー/ドッキングデバイスを示す図である。
図19図10のアンカーの変形例である例示的なアンカー/ドッキングデバイスを示す図である。
図19A】アンカー/ドッキングデバイスの例示的な実施形態の断面図である。
図20】自然僧帽弁ループの所の潜在的な位置に移植され配置されたアンカー/ドッキングデバイスの実施形態の概略的な上面図である。
図21】例示的なマーカーバンドをさらに含む図19のアンカーを示す図である。
図22図19のアンカーの例示的な近位端の断面図である。
図22A】例示的なアンカー/ドッキングデバイスにループ状に通された縫合糸の例示的な実施形態を示す図である。
図22B】例示的なアンカー/ドッキングデバイスにループ状に通された縫合糸の例示的な実施形態を示す図である。
図22C】例示的なアンカー/ドッキングデバイスにループ状に通された縫合糸の例示的な実施形態を示す図である。
図23】例示的なアンカー/ドッキングデバイスのスケルトンまたはコアの例示的な端部を示す図である。
図24】例示的なアンカー/ドッキングデバイスのスケルトンまたはコアの例示的な端部を示す図である。
図25】例示的なアンカー/ドッキングデバイスのスケルトンまたはコアの例示的な端部を示す図である。
図26】スケルトンまたはコア上にカバー層が取り付けられた図25のドッキングデバイスの例示的な端部を示す図である。
図27A】軸方向に整合された回収線/縫合開口部を含む例示的な球形先端を有する例示的なアンカー/ドッキングデバイスの例示的な実施形態の斜視図である。
図27B】アンカー/ドッキングデバイスに取り付けられた図27Aの球形近位先端の断面を示す図である。
図27C図27Aおよび図27Bの球形先端およびデリバリーデバイスにループ状に通された線/縫合糸を示す図である。
図27D図27Aの球形先端の斜視図である。
図27E図27Aの球形近位先端の断面図である。
図27F図27Aの球形先端の端部面図である。
図27G】先端の遠位領域がコイル状アンカーと同一平面を形成する、図27Aの球形先端の例示的な実施形態の斜視図である。
図28A】軸方向に整合された回収線/縫合開口部を含む例示的な球形先端を有する例示的なアンカー/ドッキングデバイスの例示的な実施形態の斜視図である。
図28B】アンカー/ドッキングデバイスに取り付けられた図28Aの球形近位先端の断面を示す図である。
図28C図28Aおよび図28Bの球形先端および送達デバイスにループ状に通された線/縫合糸を示す図である。
図28D図28Aの球形近位先端の断面図である。
図28E図28Aの球形先端の端部面図である。
図28F】先端の遠位部がコイル状アンカーと同一平面を形成する、図28Aの球形先端の例示的な実施形態の斜視図である。
図29A】例示的なループ状先端を有する例示的なアンカー/ドッキングデバイスの斜視図である。
図29B図29Aの先端にループ状に通された線/縫合糸の側面図である。
図29C】事前に折り畳まれた状態の図29Aの先端を示す図である。
図29D図29Cの事前に折り畳まれた先端の端部面図である。
図29E図29Aのループ状近位先端の上面斜視図である。
図30A】近位端におけるくぼみ状溝と接続線/縫合糸とを含む例示的なアンカー/ドッキングデバイス端部の斜視図である。
図30B図30Aの例示的なアンカー/ドッキングデバイスのくぼみ状溝において接続線/縫合糸に接続された回収線/縫合糸の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書では、様々なアンカーまたはドッキングデバイス(たとえば、コイル状アンカーまたはドッキングデバイス)が開示され、これらを自然弁ループ(たとえば、僧帽弁ループまたは三尖弁ループ)の所で拡張可能な経カテーテル心臓弁(THV)とともに使用して人工弁を移植部位により確実に移植し保持することができる。本発明の実施形態による固着/ドッキングデバイスは、移植部位の所により円形に近くならびに/またはより安定した弁ループを構成または形成し、移植部位において、円形または円筒形の弁フレームまたはステントを有する人工弁を拡張するかまたは他の方法で移植することができる。固着/ドッキングデバイスは、人工弁用の固着部位を構成するだけでなく、自然弁(たとえば、僧帽弁、三尖弁など)生体構造を半径方向内側に締め付けるかまたは引くようなサイズおよび形状を有することができる。このようにして、弁逆流(たとえば、機能的僧帽逆流)の主要な原因の1つ、特に心臓(たとえば、左心室)および/または弁ループの肥大、したがって、自然弁(たとえば、僧帽弁)ループからの伸張を少なくとも部分的に相殺するかまたはそのような原因に対抗することができる。固着またはドッキングデバイスのいくつかの実施形態はたとえば、ドッキングデバイス内の人工弁の拡張時および/または拡張後にドッキングデバイスの位置または形状をよりうまく保持するように形作られならびに/または修正された特別機構をさらに含む。そのような固着またはドッキングデバイスを設けることによって、自然な円形断面を有さない僧帽弁ループの所を含む様々な弁ループの所に置換弁をより確実に移植し保持することができる。
【0041】
例示的なアンカー/ドッキングデバイスが図3図5に示されている。図3は、アンカーまたはドッキングデバイス1の斜視図を示し、図4は、アンカー/ドッキングデバイス1の側面図を示し、図5は、アンカー/ドッキングデバイス1の上面図を示す。アンカー/ドッキングデバイスは、これらの図に示すようにコイル状に巻く(たとえば、コイル状部分を含む)ことができる。
【0042】
ドッキングデバイス1は、ドッキングデバイス1の中心軸に沿って延びる複数の巻きを有するコイルを含む。コイルは、連続することができ、概ね螺旋状に延びることができ、以下により詳細に説明するように、様々な異なるサイズおよび形状の断面を有する。図3図5に示すドッキングデバイス1は、僧帽位置に最もうまく嵌るように構成されるが、他の実施形態では、他の自然弁位置にもよりうまく収容されるように同様にまたは異なるように形作ることができる。
【0043】
ドッキングデバイス1は、実質的に等しい内径を有する約3つの全コイル巻きを有する中央領域10を含む。ドッキングデバイスの中央領域10は、ドッキングデバイス1および弁補綴が患者の体に移植されるときに拡張可能な人工弁またはTHVを保持するための主要装填領域または保持領域として働く。ドッキングデバイス1の他の実施形態は、患者の生体構造、ドッキングデバイス1と弁補綴(たとえば、THV)との間に望まれる垂直接触量、および/または他の要因に応じて、3つよりも多いかまたは少ないコイル巻きを有する中央領域10を有することができる。中央領域10のコイルは「機能コイル」と呼ばれることもある。その理由は、これらのコイルの特性は、弁補綴と、ドッキングデバイス1と、自然僧帽弁尖および/またはその他の解剖学的構造との間に発生する保持力の量に最も寄与するからである。
【0044】
様々な要因は、ドッキングデバイス1とドッキングデバイス内に保持される人工弁との間の全保持力に寄与することができる。主要要因は、機能コイルに含まれる巻きの数であり、一方、他の要因には、たとえば、機能コイルの内径、コイルと人工弁との間の摩擦力、人工弁の強度、および弁がコイル上に加える半径方向の力が含まれる。ドッキングデバイスは様々な数のコイル巻きを有することができる。機能巻きの数は、わずか2分の1巻き余りから5回巻きまで、または完全1回巻きから5回巻きまで、またはそれより多い数とすることができる。完全3回巻きの一実施形態では、ドッキングデバイスの心室部に追加の2分の1巻きが含められる。別の実施形態では、ドッキングデバイス内に合計3回の完全巻きを有することができる。一実施形態では、ドッキングデバイスの心房部分において、2分の1巻きから4分の3巻きまでまたは円の2分の1から4分の3までとすることができる。ある範囲の巻きが設けられるが、ドッキングデバイス内の巻きの数が少なくなるにつれて、適切な保持力を維持するようにコイルおよび/またはコイルを形成するワイヤの寸法および/または材料も変更することができる。たとえば、ワイヤの直径は、より少ないコイルを有するドッキングデバイスにおける機能コイル巻きの直径よりも大きくすることができる。心房および心室内には複数のコイルを設けることができる。
【0045】
機能コイルまたは中央領域10のコイルのサイズは一般に、患者に移植すべき所望のTHVのサイズに基づいて選択される。概して、(たとえば、ドッキングデバイス1の中央領域10のコイル/巻きの)機能コイル/巻きの内径は、拡張可能な心臓弁の外径よりも小さく、それによって、ドッキングデバイスにおいて人工弁が拡張されると、追加の半径方向張力または保持力がドッキングデバイスと人工弁との間に作用して人工弁を所定の位置に保持する。人工弁を適切に移植するのに必要な保持力は、人工弁のサイズおよび約180mmHgの僧帽圧力に対処するアセンブリの能力に基づいて異なる。たとえば、29mmの拡張時外径を有する人工弁を使用した卓上試験に基づいて、人工弁をドッキングデバイス内に確実に保持し、僧帽逆流または漏れに抵抗または僧帽逆流または漏れを防止するには、ドッキングデバイスと人工弁との間に少なくとも18.5Nの保持力が必要である。しかし、この例では、18.5N保持力要件を統計的信頼性を得ながら満たすには、目標平均保持力を実質的に大きくし、たとえば、約30Nにする必要がある。
【0046】
多くの実施形態では、ドッキングデバイスと弁補綴との間の保持力は、人工弁の拡張状態の外径と機能コイルの内径との差が約5mm未満であると大幅に低下する。その理由は、この低減させたサイズ差分は、構成要素間に十分な保持力を発生させするには小さすぎるからである。たとえば、一実施形態のように、29mmの拡張時外径を有する人工弁が24mm内径を有する1組のコイル内で拡張されると、観測される保持力は約30Nであるが、同じ人工弁が25mm内径(たとえば、1mmだけ大きい)を有する1組のコイル内で拡張されると、観測される保持力は20Nまで大幅に低下する。したがって、この種の弁およびドッキングデバイスの場合、ドッキングデバイスと29mm人工弁との間に十分な保持力を発生させるには、機能コイル(たとえば、ドッキングデバイス1の中央領域10のコイル)の内径を24mm以下にする必要がある。概して、機能コイル(たとえば、ドッキングデバイス1の中央領域10)の内径は、移植に関して選択される人工弁よりも少なくとも約5mm小さくなるように選択する必要がある。ただし、様々な要因が保持力に影響を与えることがあるので、他のサイズまたはサイズ範囲が使用される場合、他の特別機構および/または特性(たとえば、摩擦強化特別機構、材料特性など)を使用してよりうまく保持を行うことができる。さらに、機能コイルまたは中央領域10の内径のサイズとしては、たとえば、左心室肥大の結果としての自然弁ループの伸張によって生じる僧帽逆流を少なくとも部分的に相殺し僧帽逆流に少なくとも部分的に対抗するために、僧帽生体構造をより引き付けるようなサイズを選択することができる。
【0047】
上述の所望の保持力が僧帽弁置換についての実施形態に適用可能であることに留意されたい。したがって、他の弁の置換に使用されるドッキングデバイスの他の実施形態は、それぞれの位置における弁置換についての所望の保持力に基づいて異なるサイズ関係を有することができる。さらに、サイズ差分は、たとえば、弁および/もしくはドッキングデバイスに使用される材料、機能コイルの拡張を防止するかもしくは摩擦/ロックを強化するための他の特別機構があるかどうか、ならびに/または様々な他の要因に基づいて異なることがある。
【0048】
ドッキングデバイス1が僧帽位置の所で使用される実施形態では、ドッキングデバイスはまず、前進させ自然僧帽弁ループまで送り、次いで、THVを移植する前に所望の位置に設定することができる。ドッキングデバイス1は、可撓性であり、ならびに/または形状記憶材料で作られ、それによってドッキングデバイス1のコイルを経カテーテル手法でも送れるように真っすぐにすることができることが好ましい。別の実施形態では、コイルはステンレススチールなどの別の生体適合材料で作ることができる。同じカテーテルおよび他のデリバリー器具のうちのいくつかを、別々の準備ステップを実行する必要なしにドッキングデバイス1と人工弁の両方を送るために使用することができ、エンドユーザ向けの移植手順が簡略化される。
【0049】
ドッキングデバイス1は、左心房から、心房中隔を経中隔的に通過させて心房横断的に僧帽位置まで送ることができ、または様々な他の既知のアクセスポイントまたは処置のうちの1つを介して僧帽位置に送ることができる。図6および図7は、ドッキングデバイス1を経中隔手法を使用して僧帽位置まで送る間のいくつかのステップを示し、ガイドシース1000を血管系を通して右心房まで前進させ、心臓の心房中隔を通して左心房まで前進させ、デリバリーカテーテル1010を、血管系、右心房、中隔を通って左心房内に至るガイドシース1000を通して前進させる。図6を見るとわかるように、ドッキングデバイス1を、左心房内に配置された(たとえば、交連の所に配置された)デリバリーカテーテル1010の遠位端を通し、たとえば自然僧帽弁の交連の所で自然僧帽弁ループを通して、左心室内に前進させることができる。ドッキングデバイス1の遠位端は次いで、左心室内に位置する僧帽生体構造(たとえば、自然僧帽弁尖および/または腱索)の周りを回り、それによって、自然弁尖および/または腱索のすべてまたは少なくともいくつかがドッキングデバイス1のコイルによって包囲され集められ、コイル内に保持される(たとえば、コイルによって囲まれる)。
【0050】
しかし、人工弁の保持力を高めるためにドッキングデバイス1の中央領域10の機能コイル/巻きまたはコイル/巻きの直径が比較的小さく維持される(たとえば、一実施形態における中央領域10は、内径を約24mm(たとえば、±2mm)またはTHVおよび/もしくは自然弁ループよりも小さい別の直径とすることができる)ので、ドッキングデバイス1を既存の弁尖および/もしくは腱索の周りで自然僧帽弁ループに対する所望の位置まで前進させることは困難な場合がある。このことは、ドッキングデバイス1全体に中央領域10と同じ小さい直径を有させる場合に特に当てはまる。したがって、再び図3図5を参照すると、ドッキングデバイス1は、ドッキングデバイス1の誘導コイル/巻き(または先端心室コイル/巻き)を構成する遠位領域または下部領域20を有することができ、誘導コイル/巻きは、中央領域10の機能コイル/巻きの直径またはコイル/巻きの直径よりも大きい直径を有する。
【0051】
左心室内の僧帽生体構造の特別機構は、可変寸法を有し、長軸上で約35mm~45mmの最大幅を有することができる。したがって、下部領域20の誘導コイル/巻き(たとえば、心室コイル/巻き)の直径または幅としては、ドッキングデバイス1の遠位先端または誘導先端21をより容易に操作し僧帽生体構造の特別機構(たとえば、弁尖および/または腱索)の周りを回るようにより大きい直径または幅を選択することができる。様々なサイズおよび形状が可能であり、たとえば、一実施形態では、直径は25mmから75mmまでの任意のサイズとすることができる。本開示で使用される「直径」という用語は、コイル/巻きが完全な円形であることを必要とせず、一般に、コイル/巻きの互いに対向する点間の最大幅を指すために使用される。たとえば、誘導コイル/巻きに関して、直径は、遠位下部領域20もしくは誘導コイル/巻きが完全な回転を形成する場合と同様に、遠位先端21から反対側までを測定することができ、または直径は、誘導コイル/巻きの曲率半径の2倍と見なすことができる。一実施形態では、ドッキングデバイス1の下部領域20(たとえば、誘導コイル/巻き)は、直径(たとえば、)が約43mm(たとえば、±2mm)であり、言い換えれば、誘導コイル/巻きにおける曲率半径は、約21.5mmとすることができる。誘導コイル/巻きのサイズを機能コイルよりも大きくすると、コイルを腱索の周りおよび/または内部をより容易に案内する助けとし、最も重要な点として、僧帽弁の両方の自然弁尖の周りを適切に案内する助けとすることができる。遠位先端21が所望の僧帽生体構造の周りを操作された後、ドッキングデバイス1の残りのコイルも同じ特別機構の周りを案内することができ、他のコイルのサイズが小さくされているので、包囲された生体構造特別機構をわずかに半径方向内側に引かせることができる。一方、拡大された下部領域20の長さは一般に、下部領域20による左心室流出管に沿った血流の妨害または干渉を防止または回避するために比較的短く維持される。たとえば、一実施形態では、拡大された下部領域20は、約2分の1ループまたは回転にわたって延びる。下部領域20がこの比較的短い長さを有するので、人工弁がドッキングデバイス1内に拡張され、ドッキングデバイスと人工弁との間のサイズ差分に起因してドッキングデバイス1のコイルがわずかに巻き戻され始め、下部領域20はまた引き込まれ、わずかにずれる。この例では、人工弁の拡張後、下部領域20は、引き続き機能コイルから突き出る代わりに、サイズがドッキングデバイス1の機能コイルと同様になり、機能コイルに実質的に整合されることが可能であり、それによって潜在的な血流障害を低減させる。他のドッキングデバイス実施形態は、特定の用途に応じて、より長いかまたはより短い下部領域を有することができる。
【0052】
図3図5のドッキングデバイス1はまた、ドッキングデバイス1の安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル/巻きとすることができる)を構成する拡大された近位または上部領域30を含む。ドッキングデバイス1が自然僧帽弁ループの所で所望の位置および姿勢に配置されると、ドッキングデバイス1全体がデリバリーカテーテル1010から解放され、その後人工弁(たとえば、THV)がドッキングデバイス1に送られる。移植処置の遷移または中間段階の間、すなわち、ドッキングデバイス1を展開し解放してから人工弁を最終的に送るまでの間、たとえば、通常の心機能によってコイルがその所望の位置または姿勢からずれる、ならびに/または外れる可能性がある。ドッキングデバイス1がずれると、場合によっては、移植が安全でなくなり、位置ずれが生じ、ならびに/または人工弁の他の配置問題が生じる。安定化特別機構またはコイルを使用してドッキングデバイスを所望の位置に安定化するのを助けることができる。たとえば、ドッキングデバイス1は、循環系内(たとえば、左心房内)に配置されるようになっており、それによってドッキングデバイスを安定化することができる拡大された安定化コイル/巻き(たとえば、拡大された心房コイル/巻き)を有する上部領域30を含むことができる。たとえば、近位もしくは上部領域30または安定化コイル/巻きは、人工弁を移植する前にドッキングデバイス1が所望の位置に留まる能力を向上させるために循環系の壁に(たとえば、左心房の壁に)当接するかまたは押し付けられるように構成することができる。
【0053】
図示の実施形態におけるドッキングデバイス1の上部領域30の所の安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル/巻き)は、ほぼ完全な1巻きまたは回転にわたって延び、近位先端31の所で終了する。他の実施形態では、安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は、たとえば、各々の特定の用途に応じてドッキングデバイスと循環系との(たとえば、左心房の壁との)間に所望される接触量に応じて、1回よりも多いかまたは少ない巻きまたは回転にわたって延びることができる。上部領域30の所の安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)の半径方向サイズは、中央領域10における機能コイルのサイズよりも著しく大きくすることができ、それによって安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は十分外側に広がるかまたは延びて、循環系の壁(たとえば、左心房の壁)と接触する。たとえば、一実施形態では、上部領域30の長径32または幅は約50mmである(たとえば、±2mm)か、または中央領域10におけるコイルの約2倍の大きさである。左心房の底部領域は一般に、自然僧帽弁ループに向かって幅が狭くなる。したがって、ドッキングデバイス1が僧帽位置において適切に展開されると、上部領域30の安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は、左心房の壁に接触して押し付けられ、ドッキングデバイス1を比較的高い所望の位置および姿勢に維持または保持する助けになり、THVをドッキングデバイス1まで前進させてドッキングデバイス1において拡張するまで、左心室の方へのドッキングデバイス1のずれが防止されるかまたは低減する。人工弁(たとえば、THV)がドッキングデバイス内で拡張された後、機能コイルと人工弁との間で(たとえば、機能コイルと人工弁との間の組織、弁尖などによって)発生する力は、安定化コイル/巻きを必要とせずにドッキングデバイスおよび人工弁を固定し安定化するのに十分である。
【0054】
場合によっては、上部領域30の安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は非円形であり、図示の実施形態では、偏らされ、楕円形または卵形に配置される。図5に示すように、楕円形または他の非円形安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は長径32と、D1(すなわち、コイル巻きの最大幅)と、短径33と、D2(すなわち、最小端部間幅)とを有することができる。幅/直径は、循環系の一部の生体構造のサイズに基づいて(たとえば、ヒトの左心房のサイズに基づいて)選択することができる。長径(または最大幅)D1は、40mm~100mmの範囲とすることができ、または40mm~80mmもしくは40mm~75mmの範囲とすることができる。短径(または最小幅)D2は、20mm~80mmまたは20mm~75mmの範囲とすることができる。安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)の長径/幅D1は約50mmとすることができ、一方、安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)の短軸に沿った直径/幅D2はずっと小さくすることができ、たとえば、図5におけるドッキングデバイス1の上面図を見ると最もよくわかるように、ドッキングデバイス1の中央領域10の直径よりもわずかに大きくすることができる。他の実施形態では、ドッキングデバイスの上部領域を偏らせることは多くの方法で実施することができる。たとえば、上部領域30の安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は実質的に円形のままにすることができ、ならびに/または安定化コイル/巻きは一方向に偏らせることができ、それによって、上部領域の中心がドッキングデバイスの他の部分の中心からずれる。ドッキングデバイス1の上部領域30の形状をこのように偏らせると、たとえば、上部領域30がドッキングデバイス1の他の部分から最も遠くまで延びる半径方向においてドッキングデバイス1と左心房または他の生体構造の壁との間の接触を増大させることができる。安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は、俯瞰して見たときに(図20)、安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)の中心が機能コイルの中心から機能巻きの直径の約50%~75%だけずれるように、偏らせることができる。コイルの安定化巻き(たとえば、心房巻き)は柔軟にすることができ、内側に曲がることができる。これによって生体構造(たとえば、左心房生体構造)が収容され、安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)は、心房または他の生体構造自体よりも大きい長径または短径を有してもよい。
【0055】
重要なこととして、ドッキングデバイス1は、上部領域30のより狭い部分、または少なくとも半径方向外側に延びる部分が最適な方法で方向を定められるように回転させるかまたは他の方法で姿勢を定めることができる。たとえば、自然僧帽弁内に移植されるときには、左心室流出管に対向するかまたは押し付けられる左心房の壁の方へ向きを定められ、それによって、心房壁のその部分に対してドッキングデバイス1によって加えられる圧力の量が低減される。このようにして、左心室流出管への壁のその部分の変位量も低減され、したがって、拡大された上部領域30は、左心室流出管を通る血流の妨害、干渉、または場合によっては血流に対する影響を回避することができる。
【0056】
拡大された上部領域30によって、ドッキングデバイス1は、THVが移植されドッキングデバイス1内で拡張される前に自然弁ループ(たとえば、自然僧帽弁ループ)の所で適切な位置および姿勢でより確実に保持することができる。ドッキングデバイス1のそのような自己保持は、人工弁が完全に移植される前にドッキングデバイス1の望ましくないずれまたは傾斜をより効果的に防止し、それによってインプラント全体としての性能を向上させる。
【0057】
図6図9は、ドッキングデバイス(たとえば、ドッキングデバイス1または本明細書の他の箇所で説明する他のドッキングデバイス)およびTHVを僧帽位置に送って移植するのに使用することができるステップのうちのいくつかを示す。これらは、僧帽位置を対象としているが、同様なステップを他の弁位置、たとえば、三尖弁位置に使用することができる。ドッキングデバイスは、図3図5に関して上記で説明したドッキングデバイス1または別の同様のドッキングデバイス(たとえば、本明細書における他のドッキングデバイス)とすることができ、THVは一般に、自己拡張可能、機械拡張可能、またはバルーン拡張可能なTHV(またはこれらの組合せ)であり、ドッキングデバイス内に拡張され保持されるようなサイズを有する円形または円筒形の弁フレームまたはステントを有する。
【0058】
図6および図7は、ドッキングデバイス1を患者の僧帽位置に送るための経中隔的処置を示し、ガイドシース/イントロデューサ1000を心臓の心房中隔を横切って前進させ、デリバリーカテーテル1010の遠位端を、ガイドシース1000を通して前進させ、ドッキングデバイス1を送るためにデリバリーカテーテルの遠位開口部が左心房内に配置されるように配置する。場合によっては、最初にガイドシースを挿入または使用することなく、デリバリーカテーテルを生体構造(たとえば、血管系、心臓の心腔、中隔など)を通して同様に前進させ、同様に配置することができる。例示的な手順では、ガイドシース1000(および/またはデリバリーカテーテル1010)は、たとえば患者の鼠径部における経皮的穿刺または小さい切開によって患者の静脈系に導入され、次いで、図6および図7に示すように、ガイドシース1000(および/またはカテーテル1010)を患者の血管系を通して左心房まで前進させる。図示の経中隔処置が一例に過ぎず、その代わりに様々な代替処置および/またはアクセス部位を使用してドッキングデバイス1および/または適切な人工弁を僧帽位置または心臓の他の位置に送ることができることに留意されたい。しかし、経心房的または経中隔的処置が好ましい場合がある。その理由は、そのような処置が、たとえば、経心尖処置または僧帽弁への接近が左心室を介して行われる他の処置と比較して心臓の左側へのより明確な進入を実現し、それによって、医師が腱索および他の心室障害物への直接的な干渉を回避できるからである。
【0059】
図6に示すように、デリバリーカテーテル1010の遠位端が、自然弁の平面(たとえば、僧帽平面)の真上に位置し、この遠位端を、たとえば自然弁の交連の近くに配置させることができる左心房内の位置まで、デリバリーカテーテル1010を前進させる。デリバリーカテーテルは、より厳密な配置を可能にするように複数の次元(たとえば、2つよりも多くの次元)で操作可能にすることができる。デリバリーカテーテルの遠位開口部の配置は、ドッキングデバイス1を僧帽位置に移植するためのアクセス部位を定める。アクセス部位は通常、自然僧帽弁の2つの交連のうちの1つの近くであり、それによって、ドッキングデバイス1の誘導先端21を自然弁交連を通して左心室内に前進させることができ、下部領域20の誘導コイル/巻き(たとえば、心室コイル)、ならびに機能コイル/巻きの少なくとも一部(たとえば、中央領域10のコイル/巻き)を左心室内に展開させる。一展開方法では、まずドッキングデバイス1の誘導先端21を自然僧帽弁の交連A3P3を通過させ、次いで、ドッキングデバイス1のより多くの部分を交連A3P3を通してデリバリーカテーテルから前進させる。
【0060】
ドッキングデバイス1がデリバリーカテーテル1010内に保持されている間、ドッキングデバイス1をデリバリーカテーテル1010を通してより容易に操作するためにドッキングデバイス1を真っすぐにすることができる。その後、ドッキングデバイス1を回転させ、押し、または場合によってはデリバリーカテーテル1010から前進させると、ドッキングデバイス1は、その元のコイル形状または湾曲形状に戻ることができ、ドッキングデバイス1をデリバリーカテーテルからさらに前進させると、誘導先端21が、ドッキングデバイス1がデリバリーカテーテルから出るときのドッキングデバイス1の湾曲方向に基づいて、僧帽生体構造の様々な特別機構の周りを時計回りまたは反時計回り(すなわち、血液流出方向において弁ループを見る)に前進する(たとえば、周りを回る)。ドッキングデバイス1の下部領域20の所の拡大された誘導コイル/巻き(たとえば、心室コイル/巻き)は、左心室における僧帽生体構造の周りでのドッキングデバイス1の誘導先端21の操作をより容易にする。上記の例では、ドッキングデバイス1の誘導先端21が交連A3P3を通って左心室に進入し、(たとえば、心房から心室への)流出方向において弁ループを見たときの時計回りに前進すると、ドッキングデバイス1はまず自然僧帽弁の後弁尖の周りを回り後弁尖を包囲することができる。代替方法はまた、たとえば、誘導先端21を交連A1P1に挿通し、次いでドッキングデバイスを反時計回りに前進させることによって、最初に後弁尖を包囲するのに利用可能である。
【0061】
状況によっては、最初に自然僧帽弁の後弁尖を包囲することは、最初に前弁尖を包囲することよりも容易になる場合がある。その理由は、後弁尖は、誘導先端21が前進することのできるより限られた空間を構成する心室壁のより近くに配置されているからである。したがって、ドッキングデバイス1の誘導先端21は、後弁尖の周りを前進させるための経路または案内として後弁尖の近くの心室壁を使用することができる。逆に、ドッキングデバイス1の誘導先端21を前進させ、最初に自然僧帽弁の前弁尖を捕捉することを試みるとき、その方向には誘導先端21の前進を容易にするかまたは案内することのできる心室壁は近くにない。したがって、状況によっては、誘導先端21を操作して後弁尖ではなく前弁尖を最初に捕捉することを試みるときに僧帽生体構造の周りを回ることを適切に開始することがより困難になる場合がある。
【0062】
そう言う訳で、処置によっては、依然として前弁尖を最初に包囲することが優先されるかまたは必要である場合がある。さらに、多くの状況では、ドッキングデバイスを送れるように、デリバリーカテーテル1010の遠位端を反時計回り方向に湾曲させることがずっと簡単である場合がある。したがって、それに応じてドッキングデバイスのデリバリー方法に調整することができる。たとえば、ドッキングデバイスは、逆の反時計回り方向(たとえば、以下の図10を参照されたい)に螺旋運動するかまたは回転するコイル/巻きを備えることができ、デリバリーカテーテル1010も反時計回り方向に巻かれる。このように、そのようなドッキングデバイスを、上述の時計回り方向ではなく、流出(たとえば、心房から心室への)方向において弁ループを見たときの反時計回り方向に、たとえば交連A3P3を通して左心室内に前進させることができる。
【0063】
左心室内に前進させるべきドッキングデバイスの量は、特定の用途または処置によって異なる。一実施形態では、下部領域20のコイル/巻きおよび中央領域10のコイル/巻きの(すべてではないにせよ)大部分を前進させ左心室内に配置する。一実施形態では、中央領域10のすべてのコイル/巻きを左心室内に前進させる。一実施形態では、ドッキングデバイス1を、誘導先端21が前内側乳頭筋の後方に位置する位置に前進させる。この位置は、誘導先端21のよりしっかりとした固着、したがって、ドッキングデバイス1の確実な固着を実現する。その理由は、誘導先端21がその領域において腱索と心室壁との間に位置し保持されるからである。一方、僧帽生体構造の任意の部分が誘導先端21によって包囲および/または捕捉された後、ドッキングデバイス1をさらに前進させると捕捉された腱索および/または弁尖をドッキングデバイス1のコイル内に集めるのに役立つ。誘導先端21を確実に配置することとドッキングデバイス1によって自然僧帽生体構造を保持することはどちらも、THVを移植する前に左心室流出管の(たとえば、大動脈弁の)妨害を防止するのに役立ち得る。
【0064】
所望の量のドッキングデバイス1を左心室内に前進させた後、ドッキングデバイス1の残りの部分を左心房内に展開または解放させる。図7は、ドッキングデバイス1の心房部分を左心房内に解放する一方法を示す。図7では、デリバリーカテーテル1010の遠位端を後方に回転させるかまたは引き込み、一方、ドッキングデバイス1は、ドッキングデバイス1全体がデリバリーカテーテル1010から解放されるまで実質的に同じ位置および姿勢に維持される。たとえば、ドッキングデバイス1を交連A3P3を通して時計回りに前進させると、その後デリバリーカテーテル1010の遠位端を反時計回りに回転させるかまたは引き込んでドッキングデバイス1の心房部分を解放することができる。このようにして、ドッキングデバイス1の心房部分をデリバリーカテーテル1010から解放する間またはその後、ドッキングデバイス1の心室位置を調整または再調整する必要はない。ドッキングデバイス1の心房部分を解放する様々な他の方法を使用することもできる。安定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル)をデリバリーカテーテルから解放する前に、安定化コイル/巻きを保持デバイス/アンカーによって(たとえば、デリバリーデバイスにねじ込むことができるバーブ、ベルクロ(登録商標)フック、ラッチ、ロック、アンカーなどによって接続された解放/回収線に留めることによって)所定の位置に保持しならびに/または引き込み/回収することができる。ドッキングデバイスは、解放された後、自然僧帽弁にきつく係合されることはない(すなわち、ドッキングデバイスは自然僧帽弁尖の周りに緩く配置される)。
【0065】
ドッキングデバイス1が完全に展開され所望の位置および姿勢に調整された後、デリバリーカテーテル1010を取り外して、THVを送るための別のデリバリーカテーテル用のスペースを空けることができ、またはいくつかの実施形態では、人工弁を同じカテーテル1010を通して送る場合にデリバリーカテーテル1010を調整しならびに/または再配置することができる。場合によっては、ガイドシース1000を所定の位置に残すことができ、デリバリーカテーテル1010が取り外された後、人工弁またはTHVデリバリーカテーテルを同じガイドシース1000に挿通しガイドシース1000内を前進させることができる。図8は、図3図5のドッキングデバイス1が僧帽位置に配置された、THVを送る前の、患者の心臓の一部の断面図を示す。ここで、ドッキングデバイス1の拡大された上部領域30が心房壁に押し付けられてドッキングデバイス1を所望の姿勢に保持することを助けることができ、上述のように、上部領域30が、場合によっては左心室流出管の妨害につながる壁に押し付けられないように上部領域30を偏らせることができる。
【0066】
さらに、少なくともいくつかの処置では、ドッキングデバイス1が上述のように僧帽位置に送られてから人工弁がドッキングデバイス1内に移植されるまでの間、弁尖がドッキングデバイスによって実質的に拘束されることがないので、自然僧帽弁が引き続き実質的に正常に動作することができ、患者が安定した状態を維持できることに留意されたい。したがって、心肺装置の必要なしに拍動する心臓に対して処置を実行することができる。さらに、これによって、ドッキングデバイス1を移植してから、その後弁を移植するまでの間に過度の時間が経過する場合に、患者が血行動態が悪化する位置にある、または血行動態が悪化する位置に陥る恐れなしに弁補綴を移植するためのより高い時間的融通性が医師にもたらされる。
【0067】
図9は、ドッキングデバイス1と人工弁40(たとえば、THV)の両方が最終的に僧帽位置に移植された心臓の一部の断面図を示す。一般に、人工弁40は、複数の弁尖42を収容する拡張可能なフレーム構造41を有する。人工弁40の拡張可能なフレーム41は、バルーン拡張可能とすることができ、または他の方法で拡張することができ、たとえば、フレームは自己拡張もしくは機械拡張することができ、またはいくつかの方法を組み合わせて拡張可能とすることができる。人工弁40は、ドッキングデバイス1を送るために使用されるのと同じカテーテル1010を通して送ることができ、または一般に、弁40がデリバリーカテーテルを通してより容易に操作できるように半径方向に折り畳まれている間に別個のカテーテルを通して導入することができる。場合によっては、カテーテル1010を取り外すときにガイドシースを所定の位置に残すことができ、ガイドシース1000を通して新しい人工弁またはTHVデリバリーカテーテルを前進させることができる。次いで、人工弁40を、依然として折り畳まれた形態である間にデリバリーカテーテルから前進させドッキングデバイス1を通して配置し、次いで人工弁40をドッキングデバイス1内で拡張することができ、それにより、構成要素間の半径方向の圧力または張力によってアセンブリ全体が僧帽位置において所定の位置に保持される。僧帽弁尖(または僧帽弁尖の一部)をアンカーまたはドッキングコイルの機能巻きと人工弁のフレーム41との間に挟むことができる。ドッキングデバイスと人工弁が確実に展開/移植された後、残りのデリバリー器具を患者から取り外すことができる。
【0068】
図10は、例示的なアンカーまたはドッキングデバイス1の斜視図を示す。図10におけるドッキングデバイス100は、前述のドッキングデバイス1におけるそれぞれの中央領域10、下部領域20、および上部領域30と同じまたは同様であってもよい中央領域110、下部領域120、および上部領域130を有する。ドッキングデバイス100は、ドッキングデバイス1に関して説明した特別機構および特性と同じまたは同様の特別機構および特性を含むことができ、また、同じまたは同様のステップを使用して移植することができる。しかし、ドッキングデバイス100は、実質的に中央領域110と上部領域130との間に配置される追加の伸張部140を含む。いくつかの実施形態では、伸張部140は場合によっては、たとえば、全体的に中央領域110に(たとえば、中央領域110の上部に)配置することができ、または全体的に上部領域130に配置することができる。図10では、伸張部140は、ドッキングデバイス100の中心軸に実質的に平行に延びるコイルの垂直部分で構成されるかまたはこの垂直部分を含む。いくつかの実施形態では、伸張部140は、ドッキングデバイス100の中心軸に対して角度を付けることができるが、概して、ドッキングデバイス100の互いに隣接する接続部分を垂直方向または軸方向において離隔させる垂直または軸方向スペーサとして働き、それによって、伸張部140の各側のコイル部分間に垂直方向または軸方向の隙間が形成される(たとえば、ドッキングデバイス100の上部または心房側と下部または心室側との間に隙間を形成することができる)。
【0069】
ドッキングデバイス100の伸張部140は、自然弁ループを通して(たとえば、横切って)または自然弁ループの近くに配置され、ドッキングデバイス100が移植されるときに自然弁ループを通過するかまたは自然弁ループに押し付けられるかもしくはもたれかかるドッキングデバイス100の量を低減させるようになっている。これによって、場合によっては、ドッキングデバイス100によって自然僧帽弁に加えられる応力または歪みを低減させることができる。一構成では、伸張部140は、自然僧帽弁の交連のうちの1つの所に配置され、この交連を通過するかもしくはこの交連と交差する。このようにして、伸張部140は、上部領域130を自然僧帽弁尖から離隔して、上部領域130が心房側から自然弁尖と相互作用するかまたは自然弁尖に係合するのを妨げることができる。伸張部140はまた、上部領域130の位置を上昇させ、それによって、上部領域130と心房壁との接点を自然弁から上昇させるかまたは遠くに離隔させ、それによって、たとえば、自然弁に対する応力および自然弁の周囲の応力を低減させるとともに、ドッキングデバイス100の位置のより確実な保持を実現する。伸張部140は、長さを5mmから100mmの範囲とすることができ、一実施形態では15mmである。
【0070】
ドッキングデバイス100は、ドッキングデバイス100の近位端および遠位端のうちの一方または両方に、またはその近くに1つまたは複数の通し穴150をさらに含むことができる。通し穴150は、たとえば、ドッキングデバイス100のコイル上にカバー層取り付けるための縫合穴、ならびに/あるいはプッシャー、(たとえば、ドッキングデバイスを保持しならびに/またはデバイスがデリバリーカテーテルから全体的もしくは部分的に展開された後に引き込んで回収するのを可能にするための)保持デバイス/アンカー、またはその他の前進デバイスもしくは保持デバイス用のプルワイヤ/縫合糸などのデリバリー器具用の取り付け部位として働くことができる。いくつかの実施形態では、ドッキングデバイス100のコイルの幅または厚さはドッキングデバイス100の長さに沿って異ならせることもできる。たとえば、いくつかある理由の中で特に、ドッキングデバイス100の中央領域は、ドッキングデバイス100の端部領域(図示せず)よりもわずかに薄くすることができ、それによって、たとえば、中央領域がより柔軟になり、端部領域がより強固もしくは堅固になり、ならびに/または端部領域は、ドッキングデバイス100のコイルにカバー層を縫合するかまたは他の方法で取り付けるための表面積が大きくなる。一実施形態では、伸張部140のすべてまたは一部は、ドッキングデバイスの他の領域における厚さよりも薄い厚さを有することができ、たとえば、伸張部140は、たとえば、誘導コイル/巻きもしくは下部領域120よりも薄くし、機能コイル/巻きもしくは中央領域110よりも薄くし、および/またはたとえば図19に示すように、安定化コイル/巻きもしくは上部領域130よりも薄くすることができる。
【0071】
図10(および同様に図19)では、ドッキングデバイス100のコイルは上述のドッキングデバイス1におけるコイルとは逆の方向に巻かれるように示されている。したがって、ドッキングデバイス100は、図示のように、血液流出方向(たとえば、心房から心室へ)において弁ループを見たときの反時計回り方向に自然弁ループに挿通されるように構成される。この前進は、交連A3P3、交連A1P1、または自然僧帽弁の別の部分を通して行うことができる。ドッキングデバイス100を反時計回り方向に配置すると、デリバリーカテーテルの遠位端を同様に反時計回り方向に曲げることも可能になり、この曲げは多くの例において、デリバリーカテーテルを時計回り方向に曲げることよりも容易である。本明細書で説明する様々なアンカー/ドッキングデバイス実施形態(アンカー/ドッキングデバイス1、100、200、300、400、500、600、および1100を含む)は、様々なアクセスポイントのうちの1つ(たとえば、いずれかの交連)を通した時計回りまたは反時計回りの前進向けに構成することができる。
【0072】
大部分の状況および患者では、ドッキングデバイスを自然僧帽弁に対して高く配置する(たとえば、左心房内でより遠くに)必要がある。僧帽生体構造を考慮すると、最終的に組み合わされるドックと弁の組合せは自然弁の所で高い位置に配置し、場合によってはできるだけ高く配置して、弁を自然僧帽弁尖のクリアゾーンに固着する必要がある。さらに、健康なヒトの心臓では、自然僧帽弁尖は一般に、接合線よりも上(たとえば、僧帽弁が閉じられたときに弁尖が集合する部分よりも上)ではより平滑であり、接合線よりも下ではよりザラザラしている。自然弁尖のより平滑な領域またはゾーンは、ずっとコラーゲン成分が多くより強固であり、それによって、よりザラザラした領域またはゾーンよりも確実な人工弁用の固着表面が得られる。したがって、たいていの場合、ドッキングデバイスは挿入時に自然弁の所でできるだけ高く配置する必要があり、また、人工弁またはTHVを固着するのに十分な保持力を有する必要がある。たとえば、心室内に配置されるドッキングデバイスにおけるコイルの長さは一般に、心室内の巻きの数および使用されるワイヤの厚さによって決まる。一般に、使用されるワイヤが薄くなるにつれて、十分な保持力をもたらすために心室内で必要になる長さが長くなる。たとえば、ドッキングデバイスコイルの長さが370mmである場合、約280mm(たとえば、±2mm)が心室内に配置される。約70mm~90mmが心房内に配置され、約10~15が遷移長または伸張長においてドッキングデバイスコイルをドッキングデバイスの心房側で僧帽弁の平面から離れる方向に移動させるために使用される。
【0073】
ヒトにおける平均僧帽弁は、その長軸に沿って約50mmであり、その短軸に沿って38mmである。自然弁のサイズおよび形状ならびに通常は置換弁のサイズがより小さいことに起因して、ドッキングデバイスのコイル直径に関して、ドッキングデバイスを僧帽位置においてどれだけ高く配置できるかとドッキングデバイスがそれに移植すべきTHVに与えることのできる保持力との間に反比例の関係が形成される。より大きい直径を有するドッキングデバイスはより多くの腱索を捕捉することができ、したがって、自然弁に対してより高く展開される能力を有するが、ドッキングデバイスにドッキングされる弁に対する保持力はより弱くなる。逆に、より小さい直径を有するドッキングデバイスは、ドッキングされる弁に対してより強い保持力を加えることができるが、配置時に周りを回って捕捉することができる腱索がそれほど多くない場合があり、それによって、自然弁ループにおけるドッキングデバイスの位置はより低くなることがある。一方、より大きいドッキングデバイスは、コイル直径もしくは厚さが大きくなるように修正することができ、ならびに/またはより高い弾性係数を有する材料を使用して構成することができる。
【0074】
図11図13は、本発明の別の実施形態によるドッキングデバイスを示す。ドッキングデバイス200(図12および図13参照)は、レーザーカットチューブ210と張力ワイヤ219とを備える。ワイヤ219は、ドッキングデバイス200の湾曲および/またはサイズを調整するために使用することができる。たとえば、ドッキングデバイス200は、自然弁ループの所に配置されるときにより大きいかまたは幅の広い構成をとることができ、したがって、その後、人工弁をドッキングするのに備えてより小さいかまたは幅の狭い構成をとるようにワイヤ219によって調整することができる。
【0075】
図11は、レーザーカットチューブ210の開放シート図を概略的に示し、たとえば、シートの端部同士を接続して管状構造を形成することができ、または同様のチューブをチューブとして、すなわち、継ぎ目なしに形成しチューブとして切断することができる。チューブ210は、形状記憶材料または非形状記憶材料(たとえば、NiTi、ステンレススチール、他の材料、または材料の組合せ)から作ることができる。チューブ210は、図11に示すパターン、または同様のパターンを有するようにレーザーカットすることができ、カッティングパターンは、ドッキングデバイス200を作動させるときのドッキングデバイス200の形状を示す。図11におけるパターン化された切り込みは、チューブ210の縦軸に対して横方向に延び、チューブ210を複数の相互接続されたリンク212に分離する複数の別個の切り込み211を含む。切り込み211の各々は、1つまたは複数の歯213と、隣接するリンク212における1つまたは複数の対応する溝214とをさらに形成することができ、歯213は、チューブ210が屈曲または湾曲されるときを含めて、隣接する溝214内へ延びることができる。各切り込み212によって形成される歯213と溝214は、チューブ210に沿って同じ方向へ延びることができ、またはいくつかを、ドッキングデバイス200の所望の形状に応じて、逆方向へ延びるように構成することができる。切り込み211はまた、全体的にシートまたはチューブ上に含められ、言い換えれば、切り込み211は、シートまたはチューブのいずれの縁部までも延びず、それによって、リンク212は、少なくとも1つの領域において互いに相互接続されたままである。他の実施形態では、必要に応じて、切り込みのいくつかまたはすべてがシートまたはチューブの縁部まで延びることができる。図11の実施形態では、切り込み211の各々は、切り込み211の各端部上に、チューブ210の縦軸に平行に延びる端部領域215をさらに含む。端部領域215は、互いに隣接するリンク212が相互接続されたままで互いに対して旋回するための空間を構成する。
【0076】
ドッキングデバイス200に張力を加えるかまたはドッキングデバイス200を作動させるときにドッキングデバイス200においてそれぞれに異なる形状および湾曲が得られるように、切り込みがそれぞれに異なるサイズ、形状、およびシートまたはチューブ上の位置を有するように、レーザーカットパターニングをチューブ210の長さに沿って修正または変更することもできる。たとえば、図11を見るとわかるように、シートまたはチューブの左端部は、(図示のように)シートまたはチューブの中央および右側の部分に見られる切り込み211よりも大きい他の切り込み216を含む。チューブ210の左端部は、以下により詳細に説明するように、ドッキングデバイス200の遠位先端をより動きやすくまたはより柔軟にするようにそのような拡大されたレーザーカットパターンを有することができる。
【0077】
さらに、レーザーカットシートまたはチューブは、図示のようにシートもしくはチューブの遠位端もしくは左端部の所に1つもしくは複数の遠位ワイヤロック特別機構、たとえば、切り込み217を含み、ならびに/または図示のようにシートもしくはチューブの近位端もしくは右端部の所に1つもしくは複数の近位ワイヤロック特別機構、たとえば、切り込み218を含むことができる。遠位ワイヤロック特別機構217または近位ワイヤロック要素の一方または両方を使用して、図11Aに示すロッキングワイヤ219をチューブ210の遠位端または近位端に取り付けることができ、次いでロッキングワイヤ219にチューブ210を通して張力を加えてチューブ210の反対側の端部にロックしてドッキングデバイス200の所望の作動形状を得ることができる。レーザーカットパターンをチューブ210の大きい部分またはチューブ210の全長に沿って配置することによって、ロッキングワイヤ219をチューブ210の一方の端部に取り付け、次いで作動させてチューブ210の他方の端部にロックするときに、チューブ210が、切り込み211および216の構成によって強制的に所望の最終コイル形態または形状になる。張力ワイヤにおける張力は、ドッキングデバイス200上に加えられる半径方向外側および内側への力ならびにドッキングデバイス200によって他の特別機構、たとえば、ドッキングデバイス200内に保持された置換弁40に加えられる半径方向外側および内側への力を制御する能力を有する。ロッキングワイヤは、ドッキングデバイスによって加えられる力を制御するのを助けることができ、他の実施形態では、ロッキングワイヤは必要とされない。ロッキングワイヤは、レーザーカットハイポチューブに入れることができ、またはロッキングワイヤは、レーザーカットされていないチューブに入れることができる。ロッキングワイヤは、縫合糸、テザー、ワイヤ、ストリップなどとすることができ、ロッキングワイヤ、様々な材料、たとえば、金属、鋼、NiTi、ポリマー、繊維、ダイニーマ、他の生体適合材料などで作ることができる。
【0078】
いくつかの実施形態、たとえば、NiTiなどの形状記憶材料を使用してドッキングデバイス200を組み立てる実施形態では、製造時の所望のコイル直径およびその特定の直径における形状設定を画定する丸心金の周りにチューブ210を配置することができる。形状設定直径は、いくつかの実施形態では、ドッキングデバイス200の所望の最終直径よりも大きくすることができ、それによって、チューブ210は、デリバリーカテーテルから押し出されるとき、およびロッキングワイヤまたは張力ワイヤを作動させる前にこのより大きい形状設定直径をとる。この間に、ドッキングデバイス200のより大きい直径は、ドッキングデバイス200を自然弁の生体構造形状の周りでより容易に操作し回すのを助けることができる。
【0079】
さらに、いくつかの実施形態では、チューブ210の遠位先端222を異なるように形状設定することができ、それによって、ドッキングデバイス200の残りの部分と同じコイル形状に従う代わりに、遠位先端222は、たとえば、図12を見るとわかるように、ドッキングデバイス200の他の部分と比較してわずかに半径方向外側にたわむかまたは関節運動し、僧帽生体構造または他の弁生体構造の周りを回るのをさらに助ける。上述のような異なる形状設定に加えてまたはその代わりに、チューブ210の遠位端222は、遠位端222をより柔軟にするかまたはより動きやすくするように異なる切り込み216を含むことができ、切り込み216は、ドッキングデバイス200の遠位端222を生体構造形状の周りで操作するのを助けることができる。
【0080】
ドッキングデバイス200が僧帽生体構造または他の生体構造形状の周りで操作され、自然弁に対して所望の位置に達した後、ロッキングワイヤに張力を加えるかまたは他の方法で作動させ、人工置換弁40のよりしっかりしたまたはより確実なドッキングができるようにドッキングデバイスのサイズを小さくする(たとえば、コイルの巻きの直径を小さくする)ことができる。一方、ドッキングデバイス200の遠位先端222が外側にたわむように形状設定されるいくつかの実施形態では、ロッキングワイヤの張力は場合によっては、遠位先端222をさらに内側に引くまたは引き込むことができ、それによって、遠位先端222はドッキングデバイス200の残りの部分に形状がよりぴったりと一致し、置換弁40のドッキングにより効果的に寄与する。
【0081】
その後、置換弁40をドッキングデバイス200内に配置し拡張することができる。図13は、ロッキングワイヤによって作動させた後、および置換弁40をドッキングデバイス200内で拡張させた後のドッキングデバイス200の一例である。ロッキングワイヤにおける張力は、ドッキングデバイス200の所望の形状およびサイズをより効果的に保持し、ドッキングデバイス200と弁40との間により強い保持力を維持するのを助ける。弁40によってドッキングデバイス200に加えられる半径方向外側への圧力は、張力ワイヤまたはロッキングワイヤおよびドッキングデバイス200によって弁40上に加えられる半径方向内側への圧力によって対抗され、これらの部材間により強力でより確実な保持が実現される。図13をさらに見るとわかるように、ドッキングデバイス200は、その形状およびサイズをより効果的に保持することができるので、ドッキングデバイス200から弁40への半径方向内側への圧力によって、弁40のフレームの端部においてフレアリング効果を生じさせることができ、それによって、ドッキングデバイス200と弁40の間にずっと確実な保持が実現される。
【0082】
ドッキングデバイス200は、他の実施形態では様々な点で修正することができる。たとえば、ドッキングデバイスは、NiTi以外の形状記憶材料から作るかまたはNiTi以外の形状記憶材料を含むことができ、またはいくつかの実施形態では、ステンレススチールなどの非形状記憶材料、他の生体適合材料、および/またはこれらの組合せから作ることができる。さらに、ドッキングデバイス200について、上記では僧帽弁の所で使用するものとして説明したが、他の用途では、同様のドッキングデバイスまたはわずかに修正されたドッキングデバイスを使用して他の自然弁部位、たとえば、三尖弁、肺動脈弁、または大動脈弁の所に置換弁をドッキングすることもできる。
【0083】
上述のドッキングデバイス200、および張力ワイヤまたはロッキングワイヤを使用した同様のデバイスは、ロッキングワイヤが使用されないデバイスなどの他のドッキングデバイスに勝るいくつかの利点をもたらすことができる。たとえば、ロッキングワイヤは、ドッキングデバイス上でまたはドッキングデバイスによって、ドッキングデバイスの所望のプロファイルを損なわずに、ロッキングワイヤにおいて張力を発生させ調整することにより、加えられる半径方向外側への力および内側への力の量を制御する能力、またはカテーテルもしくは最小侵襲技術を介してドッキングデバイスを送る能力をユーザにもたらす。図11Aは、歯218の下方に保持されるかまたは歯218の周りにループ状に配置され、次いで開口部217を通して引かれ、開口部217の所に圧着されてドッキングデバイスの形状を設定する張力ワイヤ219を示す。さらに、チューブにレーザーによって切り込みが設けられるのでドッキングデバイスがより柔軟になり、いくつかの位置において曲げ半径が比較的小さい場合があるカテーテルを通してドッキングデバイスを導入することが可能になる。
【0084】
形状記憶材料が使用される実施形態では、ドッキングデバイスは、ドッキングデバイスを送る間およびロッキングワイヤに張力を加える前にコイルが生体構造特別機構の周りをより容易に回るのを可能にするためにより大きい直径を有するコイル/巻きを含むように形状設定することができる。さらに、ドッキングデバイスの遠位先端を、外側にわずかにたわむかまたは偏って、ドッキングデバイスを前進させ配置する間生体構造形状のずっと多くの部分の周りを回るのを助けるようにさらに形状設定することができる。さらに、いくつかの実施形態では、たとえば、より大きい切り込みを形成するようにより多くの材料が除去され、ドッキングデバイスの遠位部がずっと柔軟になり、それによって、先端をより容易に作動させ操作してそれぞれに異なる心臓血管生体構造の周りでより効果的に操作して心臓血管生体構造の周りを回すことができるようにドッキングデバイスの遠位端をさらに修正することができる。ある領域における力を別の領域における力よりも弱くするようにパターンをレーザーカットすることができる。チューブは、卵形にすることができ、すなわち、チューブの断面領域を卵形にすることができ、それによって、力を加えてチューブを所望の方向に湾曲させることができる。張力ワイヤをチューブの近位端と遠位端の両方に留めて張力を生じさせることもできる。例示的なカットパターンが図示されているが、他のカットパターンも可能である。
【0085】
本明細書で説明するドッキングデバイス(たとえば、本明細書のドッキングデバイス1、100、200、300、400、500、600、および1100)のうちの1つもしくは複数に様々な機構をさらに組み込むかまたは追加して、ドッキングデバイスとドッキングデバイス内で拡張される置換弁との間の保持力を強くすることができる。概して、コイル状ドッキングデバイスまたはコイル形状ドッキングデバイスは、移植後に2つの開放端または自由端を有する。コイル内でTHVまたは他の置換弁が拡張されると、コイルが部分的に巻き戻されることがあり、コイル上で拡張する弁によって外側への圧力が加えられることに起因してコイルの直径が大きくなり、コイルによって弁に加えられる保持力が低減する。したがって、コイル内で置換弁が拡張されるときにコイルの巻き戻しを防止または低減させるための機構またはその他の特別機構をドッキングデバイスに組み込むことができ、それによってドッキングデバイスと弁との間の半径方向の力および保持力が強くなる。そのような機構は、ドッキングデバイスのサイズおよび形状を修正する代わりに、たとえば、どちらもドッキングデバイスの性能またはドッキングデバイスを送ることの容易さに悪影響を及ぼす、コイルの厚さの増大、またはコイルによって形成される内側空間の直径の減少を行わずに、組み込むことができる。たとえば、ドッキングデバイス自体のコイルをより厚くすると、厚さが増すことによってコイルの剛性が高くなり、ドッキングデバイスをデリバリーカテーテルを通過させることがより困難になる。一方、コイルによって形成される内側空間の直径を過度に小さくすると、空間が狭くなることによって拡張可能な弁が完全に拡張することが妨げられることがある。
【0086】
ドッキングデバイスとドッキングデバイス内で拡張される弁との間に十分な保持力を確保するための第1の代替修正を図14に示す。図14におけるドッキングデバイス300は、(上述のドッキングデバイスのうちの1つとサイズおよび形状を同様であってもよい)メインコイル310と、コイル310の2つの自由端から延びるアンカー320とを含む。アンカー320は、たとえば、ドッキングデバイス300内で置換弁が拡張されるときにアンカー自体を周囲の組織に(たとえば、心房壁および/または心室壁に)埋め込むようなサイズもしくは形状を有するように構成されるか、または他の方法で構成される。アンカー320は、アンカー320が心臓壁または他の組織に埋め込まれた後の内部成長を推進するようにバーブを設けることができる。アンカーは、多数の異なる形状およびサイズのうちのいずれかとすることができる。アンカーは、端部または端部の近くの任意の領域から延びることができる。場合によっては、アンカーまたはバーブは、ドッキングデバイスの長さおよび外面に沿って様々な位置に配置することもできる。
【0087】
動作時には、ドッキングデバイス300が僧帽生体構造において展開されるとき、ドッキングデバイス300が僧帽弁を通して配置された後、ドッキングデバイス300の一方の端部が左心房内に配置され、一方、ドッキングデバイス300の他方の端部が左心室内に配置される。ドッキングデバイス300のコイル310の形状およびサイズは、ドッキングデバイス300を所望の位置まで前進させたときにコイル310の端部がそれぞれ、心房壁および心室壁に確実に当接するように選択し最適化することができる。したがって、コイル310の端部におけるアンカー320は、それ自体がそれぞれの心臓壁内に固着することができる。コイル310内で置換弁が拡張されると、コイル310の自由端は、心臓壁内に格納されるアンカー320によって所定の位置に保持される。ドッキングデバイス300内で置換弁が拡張されるときにコイル310の自由端が動けないので、コイル310が巻き戻されるのが防止され、それによって、ドッキングデバイス300と拡張された弁との間に加えられる半径方向の力が強くなり、これらの構成要素間の保持力が向上する。
【0088】
図15は、ドッキングデバイスと置換弁との間の保持力を向上させるための別の修正されたドッキングデバイスの一部の概略図を示す。ドッキングデバイス400の3つの巻きの一部が図15に示されている。ドッキングデバイス400は、メインコイルまたはコア410を含み、メインコイルまたはコア410はたとえば、NiTiコイル/コア、または様々な他の生体適合材料のうちの1つまたは複数で作られるかまたは様々な他の生体適合材料のうちの1つまたは複数を含むコイル/コアとすることができる。ドッキングデバイス400は、コイル/コア410を覆う被膜420をさらに含む。被膜420は、高摩擦材料で作るかまたは高摩擦材料を含むことができ、それによって、ドッキングデバイス400内で拡張可能な弁が拡張されたときに、弁と被膜420との間で発生する摩擦量が増大して、ドッキングデバイス400の形状が保持され、ドッキングデバイス400の巻き戻しが防止または抑制され/抵抗を受ける。このことに加えてまたはこのことの代わりに、被膜は、ドッキングデバイスと自然弁尖および/もしくは人工弁との間の摩擦量を増大させ、ドッキングデバイス、弁尖、および/または人工弁の相対位置を保持するのを助けることができる。
【0089】
被膜420は、コイルワイヤ410上に配置される1つまたは複数の高摩擦材料から作られる。一実施形態では、被膜420は、ePTFEチューブ上に編まれたPETで作られるかまたはePTFEチューブ上に編まれたPETを含み、ePTFEチューブは被膜420用のコアとして働く。ePTFEチューブコアは多孔性であり、拡張可能な弁のフレームの支柱または他の部分用のクッション性のある、詰め物をした層を構成し、弁とドッキングデバイス400との間の係合を改善する。一方、PET層は、人工弁が拡張されるときに自然弁尖に対する追加の摩擦を発生させ、弁フレームの支柱または他の部分がドッキングデバイス400に外側への圧力を加える。これらの特別機構はともに働いてドッキングデバイス400と自然弁尖および/または人工弁との間の半径方向の力を強くし、それによって保持力も強め、ドッキングデバイス400が巻き戻されるのを防止する。
【0090】
他の実施形態では、被膜420は、コイル410を同様に覆う1つまたは複数の他の高摩擦材料から作ることができる。被膜420を作る材料として選択される材料は組織の急速な内部成長を推進することもできる。さらに、いくつかの実施形態では、置換弁のフレームの外面を布材料または他の高摩擦材料で覆って、ドッキングデバイスと弁との間の摩擦力をさらに強くすることもでき、それによってドッキングデバイスが巻き戻されるのがさらに防止または低減される。被膜によって生じる摩擦では、摩擦係数を1よりも大きくすることができる。被膜は、ePTFEで作ることができ、コイルを覆うチューブとすることができ、組織の内部成長を促すように平滑にするかまたは多孔性とする(または編むか、もしくは細孔と同様にアクセス可能な表面積をより広くする他の構造特別機構を有する)ことができる。被膜は、ePTFEチューブが平滑であるときにePTFEチューブ上に編まれたPETを有することもできる。被膜の最外表面または被膜上に編まれた最外表面は、生体適合金属、シリコーンチュービング、またはPETなどの、摩擦を生じさせる任意の生体適合材料とすることができる。被膜における細孔径は、30ミクロンから100ミクロンの範囲とすることができる。ePTFE上にPET被膜がある実施形態では、PET層は、ドッキングデバイスのコイルに直接取り付けられるのではなく、ePTFE被膜に取り付けられるに過ぎない。ePTFEチューブ被膜は、被膜近位端および遠位端の所でドッキングデバイスコイルに取り付けることができる。ePTFEチューブ被膜は、コイル上にレーザー溶接することができ、またはX線不透過性マーカーをePTFEチューブ被膜もしくはPETブレードの外側に配置し、材料に対してかしめて材料をコイルに対して所定の位置に保持することができる。
【0091】
一方、いくつかの実施形態では、ドッキングデバイス400は、保持力をさらに強めるために上述のアンカー320と同様のアンカーを含むこともできるが、ドッキングデバイスの他の実施形態は、任意のそのような追加の端部アンカーをさらに含むことなしに被膜420を組み込んでもよい。ドッキングデバイス400内で置換弁が拡張され、得られたアセンブリが複合機能ユニットとして機能を開始した後、任意の組織内部成長が複合弁とドックアセンブリに対する荷重を低減させるように働くこともできる。
【0092】
被膜420は、本明細書で説明するドッキングデバイス(たとえば、ドッキングデバイス1、100、200、300、400、500、600、および1100)のうちのいずれに追加することもでき、ドッキングデバイスのすべてまたは一部を覆うことができる。たとえば、被膜は、単に機能コイル、誘導コイル、安定化コイル、またはこれらのうちの1つもしくは複数のうちの一部のみ(たとえば、機能コイルの一部のみ)を覆うように構成することができる。
【0093】
図16および図16Aは、ドッキングデバイスと置換弁との間の保持力を改善する別の修正されたドッキングデバイスの一部を概略的に示す。図16Aの断面図に示すように、弁尖組織42は、摩擦要素520を含むコイル510の領域と摩擦要素を含まないコイル510の領域との間の可変断面に一致するように波形になっている。弁尖組織42がこのように波形であると、ドッキングデバイス1と弁フレーム41との間に組織42がより確実に閉じ込められる。図16におけるドッキングデバイス500は、メインコイル510と、コイル510の長さに沿って離隔された1つまたは複数の離散摩擦要素520とを含む。摩擦要素520は、布材料またはPETなどの他の高摩擦材料から作ることができ、コイル510の表面上またはコイル510上に配置された別の層上の小さい膨出部として形成することができる。いくつかの実施形態では、被膜420自体を摩擦要素と見なすか、または摩擦要素520のうちの1つまたは複数を形成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、摩擦要素520は、上述の被膜420と同様の高摩擦被膜530を追加することに加えて追加される。高摩擦被膜530と摩擦要素520の両方がメインコイル510上に塗布されたドッキングデバイス500の一例が図17に概略的に示されている。
【0094】
ドッキングデバイス500内で拡張可能な弁が拡張されると、弁のフレームと摩擦要素520との間および/または弁のフレームと自然弁尖とドッキングデバイスとの間に、ドッキングデバイス500のコイル510の巻き戻しを防止または抑制し/巻き戻しに抵抗する摩擦が生じる。たとえば、摩擦要素520は、拡張可能な弁のフレームによって画定される細胞に係合するかもしくは他の方法で細胞内に延び、ならびに/または弁尖組織を拡張可能な弁の細胞に押し込む。さらに、ドッキングデバイス500内で弁が拡張されると、摩擦要素520の各々が、摩擦要素520の上方および/もしくは下方でドッキングデバイス500の互いに隣接する巻きに係合し、ならびに/またはドッキングデバイス500の互いに隣接する巻き上の1つもしくは複数の他の摩擦要素520に係合することができる。これらのそのような係合のいずれかまたはすべてによって、ドッキングデバイス500は、巻き戻しを抑制するかまたは巻き戻しに抵抗し、それによってドッキングデバイス500と拡張された弁との間の保持力が強くなる。
【0095】
図18は、ドッキングデバイスと置換弁との間の保持力を改善するのを助けるさらに別の修正されたドッキングデバイス600の3つの巻きの一部を概略的に示す。ドッキングデバイス600は、コイル610の長さに沿って離隔された1つもしくは複数の連動する鍵穴と鍵パターンによって修正されたコイル610を含む。鍵穴と鍵パターンは、単純であってもよく、たとえば、図18に概略的に示すように、矩形の溝もしくは切欠き618および相補的な矩形の突起622とすることができ、あるいは他の実施形態において異なる形状および/もしくはより複雑なパターンで作るかまたは異なる形状および/もしくはより複雑なパターンを含むことができる。さらに、様々な実施形態において、溝618および突起622はすべて、同じ軸方向に配置するかまたは異なる軸方向に配置することができる。鍵穴と鍵パターンまたは他の摩擦要素をドッキングデバイスの機能巻き上に配置することができる。
【0096】
ドッキングデバイス600内で拡張可能な弁が拡張されると、鍵穴と鍵機構は、互いに当接するコイル610の互いに隣接する巻き、および突起622のうちの1つまたは複数が対応する溝618に係合するときに各巻きの上方および/または下方に位置するコイル610の互いに隣接する巻きと連動する各巻きに依存する。溝618および突起622の連動によって、それぞれの特別機構間の相対運動が防止され、したがって、また、ドッキングデバイス600のコイル610が物理的に巻き戻されるのが防止される。したがって、この構成はまた、ドッキングデバイス600とドッキングデバイス600内で拡張される置換弁との間の半径方向の力および最終的な保持力を強くする働きをする。
【0097】
図19は、例示的なアンカーまたはドッキングデバイスの斜視図を示す。図19におけるドッキングデバイス1100は、上述の図10におけるドッキングデバイス100と同じまたは同様の構造とすることができ、ドッキングデバイス100に関して説明した特別機構および特性のいずれかを含むことができる。ドッキングデバイス1100は、中央領域1110と、下部領域1120と、上部領域1130と、伸張領域1140とを含むことができる。下部領域1120および上部領域1130は、中央領域1110よりも大きいコイル直径を形成することができ、伸張領域1140は、同じく前述のように、垂直方向において上部領域1130を中央領域1110から離隔することができる。ドッキングデバイス1100はまた、ドッキングデバイス1100の左心室内への前進が、流出方向(たとえば、心房から心室へ)において弁ループを見たときに反時計回りに実行できるように配置されまたは巻かれる。他の実施形態はその代わりに、ドッキングデバイスの時計回りの前進および配置を容易にすることができる。
【0098】
図19における実施形態では、ドッキングデバイス1100の中央コイル/巻き1110はまた、機能コイル/巻きとして働き、ドッキングデバイス内で拡張される人工弁またはTHV用の主ドッキング部位を構成する。中央巻き1110は一般に、左心室内に配置され、一方、以下に詳細に説明するように、小さい遠位部がもしあれば、この遠位部は自然弁ループを通って左心房内へ延びる。THVが29mmの拡張時外径を有する実施形態では、中央巻き1110は、内径を20mmから30mmの範囲とすることができ、例示的な実施形態では、僧帽圧力が厳しいときでも、ドッキングデバイス1100内に拡張されたTHVを安定的に保持し、かつTHVがドッキングデバイス1100からずれるのを防止するのに十分な約16Nの保持力を部品間にもたらすために内径を約23mm(たとえば、±2mm)とすることができる。
【0099】
一方、ドッキングデバイス1100の下部領域1120は誘導コイル/巻き(たとえば、心室包囲巻き)として働く。下部領域1120は、ドッキングデバイス1100の遠位先端を含み、ドッキングデバイス1100を左心房内に前進させたときに、自然弁尖および腱索および/もしくは他の僧帽弁生体構造のうちのいくつかまたはすべてを捕捉するために中央巻き1110から半径方向外側に広がる。僧帽逆流を示す自然僧帽弁は一般に、A2P2距離が35mmであり、交連から交連までの距離が45mmである。したがって、29mmのTHVを使用すると、THVの小さいサイズ、したがって中央巻き1110のサイズは、僧帽生体構造の長軸よりも小さい。したがって、下部領域1120は、最初にドッキングデバイス1100を両方の自然弁尖の周りでより容易に案内するように、中央巻き1110と比較して大きくされたサイズまたはプロファイルを有するように形成される。一例では、下部領域1120の直径は、自然弁の交連間で測定される距離(たとえば、45mm)とほぼ同じになるように構成することができ、それによって、遠位先端は、ドッキングデバイス1100が送られる間デリバリーカテーテルの出口から概ねその距離だけ離れるように延びる。
【0100】
ドッキングデバイス1100の上部領域1130は、ドッキングデバイス1100が自然弁の所で展開されてからTHVが送られるまでの遷移相の間ドッキングデバイス1100に自己保持機構をもたらす定化コイル/巻き(たとえば、心房コイル/巻き)として働く。左心房は概して、僧帽弁ループから外側に広がり、弁ループから離れる方向に広がる漏斗形状を形成する。上部領域1130の直径としては、上部領域1130が左心房内で概ね所望の高さで嵌るのを可能にし、上部領域1130が、所望の位置が実現された後でさらに自然僧帽弁ループの方へ滑るかまたは落下するのを防止するような直径が選択される。一例では、上部領域1130は、直径が約53mmなど、直径が40~60mmになるように形成される。
【0101】
さらに、上部領域1130の形状および位置としては、ドッキングデバイス1100内でTHVが展開された後、上部領域1130が大動脈壁に隣接する心房壁の部分に加える圧力が最小限になるかまたはなくなるような形状および位置が選択される。図20は、左心房1800を近似的に示すとともに、その中央領域の所に配置された僧帽弁1810を示す、心臓の一部の概略上面図である。さらに、大動脈1840の近似位置も概略的に示されている。一方、ドッキングデバイス1100は、交連A3P3 1820の所で自然僧帽弁1810に送られている。ここで、ドッキングデバイス1100の上部領域1130が、大動脈1840に隣接する左心房1800の壁1830から離れた位置に配置されることに留意されたい。さらに、ドッキングデバイス内でTHVが拡張されると、ドッキングデバイス1100の中央領域1110はわずかに拡張し巻き戻される傾向があり、それによって、上部領域1130が心房壁1830から離れるように(図20に示すように反時計回り下向きに)さらに引かれることがある。僧帽弁1810に対するドッキングデバイス1100の配置についてのさらなる詳細は、以下に、図20をさらに参照して説明する。
【0102】
伸張領域1140は、ドッキングデバイス1100の中央領域1110と上部領域1130の間に垂直方向の伸張および離隔をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、ドッキングデバイス1100の伸張領域1140(およびドッキングデバイス100の伸張領域140)は上昇巻きと呼ばれることがある。ドッキングデバイス1100が僧帽平面と交差する位置は、THVの最終的な移植に適切なドッキング部位として働くための自然弁生体構造、具体的には弁尖および交連の完全性を維持するうえで重要である。そのような伸張または上昇領域1140のないドッキングデバイスでは、ドッキングデバイスのより多くの部分が僧帽平面上にまたは僧帽平面に接触して位置し、自然弁尖を挟み、ドッキングデバイスが自然弁尖に対して相対運動するかまたはドッキングデバイスが自然弁尖をこすることにより、場合によっては、自然弁尖が心房側から損傷を受ける恐れがある。伸張領域1140を有すると、左心房内に配置されたドッキングデバイス1100の部分が僧帽平面から上昇し離隔することができる。
【0103】
さらに、ドッキングデバイス1100の伸張領域1140は、より小さい直径の断面を有することもできる。図示の実施形態では、ドッキングデバイス1100の他の領域のワイヤコアは、直径をたとえば0.825mmとすることができ、一方、伸張領域1140のコアは、直径を0.6mmとすることができる。別の実施形態では、ドッキングデバイスの他の領域のワイヤコアは、断面直径が0.85mmであり、伸張領域は、断面直径が0.6mmである。ドッキングデバイスコイルの他の領域の断面直径が0.825mm以上であるか、または断面直径が0.85mm以上であるとき、伸張領域1140は、断面直径が0.4~0.8mmである。厚さも互いの比に基づいて選択することができる。伸張領域は、ワイヤの残りの部分の断面直径の50%~75%の断面直径を有することができる。より小さい断面を有する伸張領域1140は、伸張領域1140が僧帽平面から上昇する角度をより鋭角にすることができる。伸張領域1140の曲率半径およびワイヤ断面はさらに、たとえば、ドッキングデバイス1100の中央領域1110と上部領域1130との間に十分な接続点が設けられ、ならびに/またはドッキングデバイスを送る間、伸張領域1140をより弱い力でより容易に展開し回収するのを可能にするように選択することができる。その理由は、より薄いワイヤコアは真っすぐにしたり曲げたりするのがより容易であるからである。さらに、NiTiなどの形状記憶がワイヤコアに使用される実施形態では、伸張領域1140とドッキングデバイス1100の残りの部分の両方の厚さを、選択される材料の材料特性に基づいて歪み限界を超えないように選択する必要がある。
【0104】
上記で指摘したように、ドッキングデバイス100のワイヤコアはNiTi、別の形状記憶材料、もしくは別の生体適合金属または他の材料で作ることができるが、ワイヤコアは1つまたは複数の追加の材料によって覆うことができる。これらのカバーまたは層材料は、たとえば、コアの周りでの付着、溶融、成形など、または他の方法でのカバー/層のワイヤコアへの縫合、結び付け、もしくは結合を含む様々な方法で取り付けることができる。簡単に図22を参照すると、ドッキングデバイス1100の遠位部の断面はワイヤコア1160とカバー層1170とを含む。ワイヤコア1160は、たとえばドッキングデバイス1100に強度をもたらすことができる。一方、ワイヤコア1160を覆うカバー層1170のベース材料は、たとえばePTFEまたは別のポリマーとすることができる。カバー層1170は、ワイヤコア1160よりも容易に圧縮することができ、それによって、ドッキングデバイス1100内でTHVが拡張されたときに、THVのワイヤフレームおよび/または支柱を部分的にカバー層1170に埋め込むかまたは他の方法で固着することができ、追加の安定性がもたらされる。より圧縮しやすい材料はまた、ドッキングデバイス1100とTHVとの間の自然弁尖および他の生体構造を挟むことまたは圧縮することの外傷性を低くするのを可能にし、自然生体構造の摩耗および/または損傷が軽減される。ePTFEの場合、材料は、透水性でも血液透過性でもないが、酸化エチレンガスを通過または貫通させ、それによって下方のワイヤコア1160をより容易に滅菌することができる層を構成する。一方、ePTFEカバー層1170は、血液透過性ではないが、たとえば、移植後の組織の内部成長を推進するように、カバー層1170の外面内および外面上の血液細胞の固着を容易にするように、たとえば、細孔径30ミクロンで形成することができる。さらに、ePTFEはまた、摩擦の非常に少ない材料である。ePTFEカバー層1170を有するドッキングデバイス1100は、安定性を実現し内部成長を推進する。
【0105】
低摩擦ePTFEカバー層1170はドッキングデバイス1100の端部と自然心臓生体構造との間の相互作用を助けることができるが、THVをドッキングするためのドッキングデバイス1100の機能コイルを形成する中央領域1110において摩擦を付加することがより望ましい場合がある。したがって、図19を見るとわかるように、ドッキングデバイス1100の中央領域1110に、ePTFE層1170に加えて(場合によっては、被膜420および/または摩擦要素520と同じまたは同様であってもよい。)追加の被膜1180を付加することができる。図19Aは各層の断面図を示す。被膜1180(編み層として示されている)または他の高摩擦層は、ドッキングデバイス1100内でTHVが拡張されるときに互いに隣接するコイル間および自然弁尖および/もしくはTHVに対して追加の摩擦を生じさせる。コイル同士の間ならびにドッキングデバイス1100の中央領域1110の内面、自然僧帽弁尖、および/またはTHVの外面の間の界面に生じる摩擦は、THVおよびドッキングデバイス1100を自然弁により強力に固着するためのより確実なロック機構を形成する。ドッキングデバイス1100の機能コイル/巻きまたは中央領域1110、すなわち、THVと相互作用するドッキングデバイスの領域は一般に、高摩擦被膜/層が望まれる領域のみであり、図19に見られるように、編み層または高摩擦被膜/層1180は、下部領域1120内にも伸張領域1140内にも延びておらず、それによって、ドッキングデバイス1100のそれらの領域は、上部領域1130とともに、低摩擦のままであり、したがって、自然弁および他の心臓生体構造との外傷性の低い相互作用が推進される。高摩擦被膜/層1180と高摩擦要素または本明細書で説明し図15図18に示す他の特別機構との任意の組合せによって、追加の摩擦要素、したがってドッキングデバイスと置換弁との間の保持力の改善をデバイスに付加することもできる。
【0106】
図20は、ドッキングデバイス1100内でTHVを拡張する前の、自然僧帽弁1810におけるドッキングデバイス1100の可能な配置の上面図である。この実施形態では、ドッキングデバイス1100を僧帽弁1810の交連A3P3 1820を通して左心室内に反時計回りに前進させる。所望の量のドッキングデバイス1100(たとえば、下部領域1120および中央領域1110の大部分)を左心室内に前進させると、ドッキングデバイス1100の残りの巻き、たとえば、中央領域1110の任意の残りの部分(もしあれば)、伸張領域1140(またはその一部)、および上部領域1130が次いで、たとえば、デリバリーカテーテルの時計回りの回転または逆回転によって、デリバリーカテーテルから解放され、それによって、ドッキングデバイス1100のこれらの部分を抜き、または他の方法で解放することができ、一方、ドッキングデバイス1100の中央領域1110および下部領域1120の位置は固定されたままであるか、または周囲の生体構造に対して実質的に所定の位置に留まる。図20では、自然弁の下方のデバイス1100の各部が点線で示されている。
【0107】
ドッキングデバイス1100を正しく配置することが非常に重要である場合がある。一実施形態では、ドッキングデバイス1100は、ドッキングデバイス1100の所望の部分が交連A3P3の所または交連A3P3の近くで自然弁1810を通って延び、自然弁尖の心房側に接触するように自然弁1810に対して配置する必要がある。たとえば、図19を見るとわかるように、ドッキングデバイス1100の中央領域1110の近位部は、被膜または編み層1180の近位端と伸張領域1140との間を延び、ePTFEまたは低摩擦層1170は露出されたままである。このePTFEまたは低摩擦領域は、僧帽平面と交差し自然弁尖の心房側に接触するドッキングデバイス1100の部分であることが好ましい。一方、僧帽弁を通過するドッキングデバイス1100の部分は、たとえば、被膜もしくは編み層1180の端部のすぐ近くの露出された中央領域1110の部分とすることができ、または被膜もしくは編み層1180の近位端のうちのいくらかを含むこともできる。
【0108】
ドッキングデバイス1100の下部コイルまたは心室コイルの左心室内への前進は厳密である必要がある。このことを容易にするために、1つもしくは複数のマーカーバンドまたは他の視覚化特別機構を本明細書で説明するドッキングデバイスのうちのいずれかに含めることができる。図21は、ドッキングデバイス1100の修正実施形態の上面図であり、2つのマーカーバンド1182、1184がドッキングデバイス1100に付加されている。マーカーバンド1182、1184は並べて配置される。マーカーバンドおよび/または視覚化特別機構は、様々な位置に配置することができるが、図20では、第1のマーカーバンド1182は高摩擦層1180の近位端に配置され、一方、第2のマーカーバンド1184は、高摩擦層1180の近位端からわずかに離れた位置に配置される。容易に区別できるように一方のマーカーバンド1182を他方のマーカーバンド1184よりも厚くすることができる。マーカーバンド1182、1184または他の視覚化特別機構は、デリバリーカテーテルと自然僧帽生体構造の両方に対して高摩擦層1180の近位端の位置を容易に特定するためのランドマークを構成する。したがって、医師は、マーカーバンド1182、1184または他の視覚化特別機構を使用してドッキングデバイス1100の左心室内への前進をいつ停止するか(たとえば、マーカーバンドがいつ交連A3P3に近接する望ましい姿勢になるか)、およびドッキングデバイス1100の残りの近位部の左心房内への解放または抜き出しをいつ開始するかを判定することができる。一実施形態では、マーカーバンド1182、1184は、蛍光透視法または他の2D画像診断法の下で視覚化されるが、本発明はそれに限定されない。いくつかの実施形態では、上記の代わりに、1つまたは複数のマーカーバンドが、ユーザの好みに基づいて、編み層1180の端部に近接する低摩擦層1170上に配置されるかまたはドッキングデバイス1100の他の部分に配置される。他の実施形態では、これよりも少ないかまたは多いマーカーバンドを使用することができる。編み層1180は、置換心臓弁に係合するドッキングデバイスコイルの部分を横切って延びることができる。
【0109】
本明細書のドッキングデバイスはいずれも、たとえば、ドッキングデバイスを自然弁に対して適切な位置に前進させるのを容易にするかまたは助けるようにさらに修正することができる。たとえば、自然弁および他の自然心臓組織がドッキングデバイスの移植および配置時にドッキングデバイスによって損傷を受けるのを防止するのを助けるように修正することもできる。僧帽用途では、前述のようなコイル形状ドッキングデバイスの誘導先端または遠位先端を左心室内の所定の位置に導入するかまたは回転させるとき、遠位先端を腱索の周りでより容易に操作しかつ腱索の周りを回すようなサイズ、形状にすることができ、および/またはそのように他の方法で構成することができる。一方、遠位先端は非外傷性にする必要があり、それによって、遠位先端を僧帽弁生体構造または他の弁生体構造の周りを前進させ、ならびに/またはそれらの生体構造を通して前進させるときに生体構造が損傷を受けないようになる。
【0110】
一方、いくつかの実施形態では、ドッキングデバイスの近位端が、ドッキングデバイスをカテーテルの遠位開口部から押し出すデリバリーカテーテル内のプッシャーに取り付けられる。プッシャー、プッシャーデバイス、およびプッシュロッドという用語は、本明細書内で交換可能に使用され、互いに置き換えることができる。プッシャーは、ドッキングデバイスに取り付けられている間、ドッキングデバイスをデリバリーカテーテルに対して押したり引いたりすることまたは回収することを助け、デリバリープロセス全体にわたる任意の段階においてドッキングデバイスの再配置を可能にすることができる。本明細書で説明する方法は、ドッキングデバイスの回収および再配置に関する様々なステップ、たとえば、プッシュロッド/縫合糸/テザーまたは他の特別機構を引き込むかまたは引いてドッキングデバイスをデリバリーカテーテル内へ引き戻すか/引き込み、次いでドッキングデバイスを異なる位置/姿勢または部位に再配置し再移植するステップを含むことができる。ドッキングデバイスのスケルトンまたはコイルスケルトンを覆う布層などのカバー層を有するドッキングデバイスでは、プッシャーによってドッキングデバイスを調整することにより、たとえば、心臓生体構造および/もしくはプッシャー/プッシュロッド、プッシャーデバイス自体によって、カバー層に対して、特にドッキングデバイスの近位端および遠位端に位置する部分に、摩擦力が加えられることがある。したがって、ドッキングデバイスのコイルの端部における構造と、布層をコイルに接続するための接続技法(たとえば、付着または縫合技術)とはどちらも、そのような摩擦力に対処し、布層がコイルまたはコイルの端部から裂けるのを防止するうえで重要である場合がある。
【0111】
上記のことを考慮して、ドッキングデバイス1100は、非外傷性遠位端および近位端を含むことができる。図22は、ドッキングデバイス1100の近位端の断面を示し、たとえばNiTiで作ることのできるワイヤコア1160、およびたとえばePTFEまたは別のポリマーで作ることのできる低摩擦カバー層1170のそれぞれの形状を示す。低摩擦カバー層1170は、ワイヤコア1160の端部をわずかに越えて延び、丸い先端まで先細りすることができる。丸い伸張領域は、低摩擦カバー層1170がワイヤコア1160に、およびワイヤコア1160の周りに固着し、また、非外傷性先端を形成するための空間を構成する。本明細書のドッキングデバイス(たとえば、ドッキングデバイス1100)の遠位先端を同様の構造を有するように組み立てるかまたは構成することができる。
【0112】
図19および図22を参照すると、ドッキングデバイス1100は場合によっては、近位先端および遠位先端の各々の近くに固定穴1164をさらに含むことができる。固定穴1164を使用して、カバー層1170をたとえば縫合糸または他のタイダウンを介してワイヤコア1160にさらに固定することができる。この固定手段および/または同様の固定手段は、ドッキングデバイス1100の展開および/または回収時のコア1160とカバー層1170との間の滑りまたは動きをさらに防止することができる。場合によっては、カバー層1170については、縫合なしでコアの周りでの付着、溶融、成形などを施すことができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、ドッキングデバイス1100の遠位先端を半径方向内側に、たとえば、中央領域1110のコイルによって形成される円形の接線方向に、わずかに先細りさせることができる。同様に、ドッキングデバイス1100の安定化コイル/巻きまたは上部領域1130を半径方向内側に、たとえば、中央領域1110のコイルによって形成される円形の接線方向に(または接線方向の部分を有するように)、わずかに先細りさせることができ、また、たとえば、わずかに上向きに心房天井の方へドッキングデバイス1100の他のコイルから離れるように向けることができる。ドッキングデバイス1100の上部領域1130は、たとえば、ドッキングデバイス1100が上述の所望の位置に配置されず左心室の方へ滑り、上部領域1130が、場合によっては僧帽平面と接触することがある場合、またはドッキングデバイス1100が異常な生体構造を有する心臓に移植される場合に、予防策として上記のように構成することができる。
【0114】
デリバリーカテーテルにおけるプッシャー/プッシャーロッドまたは他の前進もしくは回収機構へのドッキングデバイス1100の取り付けを容易にすることに関して、ドッキングデバイス1100の近位端は第2の穴またはボア1162をさらに含むことができる。図22Aに示すように、穴またはボア1162は、長い解放/回収線または縫合糸1163などの保持デバイスを、ドッキングデバイス1100をデリバリーカテーテルのプッシャーまたは他の特別機構の遠位端に接続するかまたは取り付けるためにループ状にすることができる。穴1162は、線/縫合糸の意図しない切断を防止するために丸く平滑にすることができる。線/縫合糸は、ドッキングデバイス1100をデリバリーカテーテルにより確実に取り付けるのを可能にし、ドッキングデバイス1100の位置の引き込み、部分的な回収、または完全な回収が望まれるときにドッキングデバイス1100を引いて回収することを可能にすることもできる。図22Cは、ドッキングデバイス1100のボア1162にループ状に通された解放線/縫合糸1163の詳細図を示し、ここでは、デリバリーカテーテル1010の外部は切り離されている。プッシャーデバイス1165は、その中に管腔が、たとえば端から端まで延びているプッシャーチューブとして構成される。この実施形態における線/縫合糸は、デリバリーカテーテル1010内に保持されたプッシャーデバイス/チューブ1165を貫通する縦穴を通って延びている。一方、ドッキングデバイス1100の所望の配置が達成された後、医師または他のユーザは、単に線/縫合糸の近位部を切断し、線/縫合糸を近位方向に引いて線/縫合糸の切断された端部を穴1162に通過させ、それによって、ドッキングデバイス1100をデリバリーカテーテルから解放することができる。一実施形態では、線/縫合糸は、ボア1162からプッシャーデバイス/チューブ1165を通って患者の外部のハンドルまたはハブまで延びるようにループ状に延ばすことができる(ループは、2つの端部をハンドルまたはハブに固定することによって開閉することができる)。切断時には、線/縫合糸の一部をハンドルまたはハブに取り付けたままにする(または場合によっては医療従事者によって保持される)ことができ、それによって、切断された端部がボア1162から出てデリバリーデバイスを解放するまで線/縫合糸を近位方向に引くことができる。図22Bは、線/縫合糸1163をコイルの近位端においてボア1162にループ状に通す別の実施形態を示す。
【0115】
本明細書で説明するドッキングデバイスのうちの任意のドッキングデバイスの遠位先端または近位先端のいずれか、または両方の先端に様々な他の修正を施すことができ、それによってドッキングデバイスをより頑丈にすることができる。図23は、デバイスの遠位端および/または近位端に使用することができる本発明の別の実施形態によるドッキングデバイスのコアのスケルトンまたはコイルスケルトンの例示的な端部を示す。コイル/コア710の端部は、ニチノール、別の形状記憶金属もしくは材料、および/または非形状記憶材料で作るかあるいはそれらの材料を含むことができる。コイル/コア710の図示された端部は、実質的に平坦であるかまたは矩形の断面を有し、先端712(たとえば、リング形先端または他の形状の先端)を含む。図示の矩形断面は、コイル710の端部のみをそのように形作るか、またはコイル710の長さにわたって延びることができ、一方、他の実施形態では、遠位端領域および/または近位端領域を含むコイル710全体が、より丸い断面または他の形状の断面を有することができる。リング状先端712は、コイル/コア710の他の部分と比較して拡大または拡張された幅を有し、1本または複数の線/縫合糸が通過するのを容易にするための通し穴714を画定する。リング状先端712の自由端716は、円形または他の円弧として構成することができ、一方、先端712の反対側の端部718は、先端712とコイル710の先端712と隣接する領域との間の丸くされるかまたは先細りした遷移部として形成することができる。コイル710は、先端712の近くに、1つまたは複数のカバー固着穴720を含み、コイル710上に配置されコイル710に取り付けられたカバー層を固着するのをさらに助けることができる。
【0116】
ドッキングデバイスのスケルトン/コア710を覆うカバー層は、たとえば、前述の被膜または層(たとえば、低摩擦および/または高摩擦被膜)のうちの1つもしくは複数とすることができる。カバー層は、織られたPET布で覆われたePTFEコアチューブで作るかもしくはそのようなePTFEコアチューブを含むことができ、または任意の他の布もしくは他の生体適合材料で作るかもしくはそのような材料を含むことができる。そのようなカバー層は、ドッキングデバイスの大部分、たとえば、コイルスケルトン/コア710の本体から先端712の端部718まで、または端部718のわずかに上方までを覆うために使用することができる。その場合、たとえば、通し穴714を通過し、弓形自由端領域716の上に進み弓形自由端領域716を覆う縫合糸を介して、カバー層をリング状先端712に接続することができる。縫合糸は、カバー層をスケルトン/コア710に固着する働きをし、また、リング状先端712の縁部を柔らかくする働きをする。追加の縫合糸を先端712の近くの1つまたは複数のカバー固着穴720を通過させ、カバー層のスケルトン/コア710へのさらなる固着を行うことができる。
【0117】
図24は、本明細書で説明するドッキングデバイスのうちのいずれかに、その近位端および/または遠位端の所で使用することができるドッキングデバイスのスケルトンまたはコアの端部を示す。コイル/コア810の端部は、ニチノール、別の形状記憶金属もしくは材料、および/または非形状記憶材料で作るかあるいはそれらの材料を含むことができる。コイル/コア810の端部は遠位ボール状先端812を有する。ボール状先端812は、スケルトン/コア810の残りの部分とともに予備成形することができ、またはコイル/コア810の端部に溶接されるかもしくは他の方法で取り付けられた丸い端部を有する別個のボール状または短いこん棒状の付加物とすることができる。一方、ボール状先端812とコイル/コア810の残りの部分との間に小さい隙間814が形成されるかまたは残される。隙間814は、約0.6mm、またはカバー層をコイル/コア810の端部に固着するかもしくは他の方法で接続するために1つもしくは複数の縫合糸の通過および/もしくは交差を容易にするのに十分な任意の他のサイズとすることができる。
【0118】
ドッキングデバイスのコイルスケルトン/コア810を覆う1つまたは複数のカバー層または被膜は、上述のカバー層または被膜と同様であってもよい。カバー層/被膜は、たとえば、織られたPET布で覆われたePTFEコアチューブで作るかもしくはそのようなePTFEコアチューブを含むことができ、または任意の他の布もしくは他の生体適合材料で作るかもしくはそのような材料を含むことができる。一取り付け方法では、そのようなカバー層/被膜は、コイルスケルトン810の本体を覆い、隙間814を覆い、ボール状先端812までもしくはわずかにボール状先端812上まで覆い、一方、ボール状先端812の自由端を露出させる。次いで、たとえば、隙間814を通過する縫合糸を介して、カバー層/被膜をコイル810の端部に接続する。第2の取り付け方法では、ボール状先端812全体をカバー層で包んで完全に覆い、次いで縫合糸を隙間814に通過させおよび/または隙間814と交差させて、カバー層全体をボール状先端812の端部上に固着する。
【0119】
図23および図24に関して図示し説明したような先端712、812は、それぞれのドッキングデバイスに左心室内でそれぞれのドッキングデバイスをより容易にかつより好都合に操作するのを可能にするのを助けることができる小型のノーズで丸くされた端部を備える。さらに、先端712、812の各々が湾曲されるかまたは丸められるので、先端712、812は柔らかい縁部を有する端部を形成する。それぞれのコイルスケルトン710、810の端部における形状および構造、カバー層の種類、構造、および構成、カバー層をスケルトン710、810に取り付けるための縫合技術はまた、にかわまたはその他の接着剤を使用せずに先端712、812およびそれぞれのカバー層間の密な接続を可能にする。さらに、この先端構成は、尖った縁部が露出するのを妨げ、また、ドッキングデバイスを送る間または送った後にドッキングデバイスのカバー層に加えられるあらゆる摩擦力の結果として、スケルトン710、810の表面がカバー層を切断するならびに/またはカバー層から突き出すのを妨げる。
【0120】
上述のように、いくつかの実施形態では、ドッキングデバイスは、ドッキングデバイスを送り、再調整するために押したり引いたりすることをより容易に促進することができるプッシャーに取り付けることができる。図25は、遠位端および/または近位端の所に使用することができる(本明細書で説明する他のドッキングデバイスと同じまたは同様であってもよい)ドッキングデバイス900のコイルスケルトン/コア910の例示的な端部を示し、図26は、コイルスケルトン/コア910上のカバー層920と、カバー層920をコイルスケルトン/コア910に取り付ける縫合糸930とを含む、ドッキングデバイス900の端部を示す。
【0121】
まず図25を参照すると、上述のコイル/コア710の遠位端の断面と同様に、ドッキングデバイス900のコイルスケルトン/コア910は、実質的に平坦であるかまたは矩形の断面を有する端部領域を有する。図示の矩形断面は、コイル/コア910の端部領域のみをそのように形作るか、またはコイル/コア910の長さにわたって延びることができ、一方、他の実施形態では、端部領域を含むコイル/コア910全体が、より丸い断面または他の形状の断面を有することができる。卵形のスリット穴または細長いスリット穴912は、コイル/コア910の端部領域を貫通して延びており、コイル/コア910の2つの側部914、916が、スリット穴912の各側に沿って延びてコイル/コア910の近位自由端918をコイル/コア910の残りの部分に接続している。スリット穴912は、針および/または1本もしくは複数の縫合糸930が通過または交差するのに十分な幅を有する。
【0122】
図26に示すように、被膜/カバー層920はたとえば、被膜、布層、またはドッキングデバイスの以前の実施形態に関して上記で説明したのと同じまたは同様の構成を有する他の層とすることができる。被膜/カバー層920は、コイル/コア910を包み、スリット穴912に沿って延びスリット穴912を通過する縫合糸930によってコイル/コア910に固着されるかまたは他の方法でコイル/コア910に固定される。縫合糸930は、図26に示すようにスリット穴912と「8」字形に交差することができ、縫合糸930は、スリット穴912を少なくとも2回通過し、スリット穴912に隣接するコイル/コア910の互いに対向する側部914、916をそれぞれ少なくとも1回包む。図示の実施形態では、縫合糸930はスリット穴912を少なくとも4回通過し、スリット穴912の各側における側部914、916をそれぞれ少なくとも2回包む。縫合糸930は、コイルスケルトン/コア910の自由端918の近くの、スリット穴912の近位部に配置されるかまたは近位部の方へ移動させられ、それによって、スリット穴912の遠位端は露出されたままで、ユーザからアクセス可能になり、デリバリーカテーテルのプッシャーのプルワイヤ940(たとえば、解放/回収縫合糸)が通過または交差し、それによってドッキングデバイス900とプッシャーとの間に確実な接続を確立するのに十分な大きさに開いたままになる。プルワイヤ940は縫合糸とすることができる。
【0123】
ドッキングデバイス900がプルワイヤ940を介してプッシャーに接続されると、プッシャー(図示せず)の遠位端がドッキングデバイス900の近位自由端に当接するか、またはプルワイヤ940がスリット穴912の端部に当接して、ドッキングデバイス900をデリバリーカテーテルから前進させる。一方、たとえば、移植部位におけるドッキングデバイス900の位置を再調整するためにドッキングデバイス900を引き戻すか引き込むことが望ましいとき、プルワイヤ940を近位方向に引いてドッキングデバイス900も近位方向に引き込むことができる。同様のステップを本明細書における他のドッキングデバイスに使用することができる。プルワイヤ940を引き戻すと、プルワイヤは、スリット穴912を通って延びる縫合糸930に当接し、スリット穴912は、「8」字形縫合によって、プルワイヤ940が当接することができる緩衝装填領域を構成する働きをする交差縫合領域を形成する。したがって、縫合糸930は、カバー層920をコイルスケルトン/コア910に固着し取り付ける働きをし、また、スリット穴912の鋭い縁部を隠すかまたは覆って、ドッキングデバイス900を回収する間または他の目的で引く間に、プルワイヤ940がドッキングデバイス900によって損傷を受けるかまたは破断されるのを防止し、逆に、ドッキングデバイス900がプルワイヤ940によって損傷を受けるのを防止する。
【0124】
図23および図24に関して説明した端部構成と同様に、コイルスケルトン/コア910の端部における形状および構造、被膜/カバー層920の種類、構造、および構成、ならびに被膜/カバー層920をコイルスケルトン/コア910に取り付けるための接続技法(たとえば、縫合技法)の各々は、コイル910の端部と被膜/カバー層920とを密に接続することに寄与し、にかわまたはその他の接着剤を使用するかしないかにかかわらず(たとえば、縫合技法はこれらを必要としない)実現することができる。さらに、この先端構造および構成は、尖った縁部が露出するのを妨げ、また、ドッキングデバイスを送る間または送った後にドッキングデバイス900の被膜/カバー層920に加えられるあらゆる摩擦力の結果として、コイルスケルトン/コア910の表面が被膜/カバー層920を切断するならびに/または被膜/カバー層920から突き出すのを妨げる。
【0125】
様々な他の実施形態では、各々の個々の患者の要件に基づいて、上述の様々な実施形態とは異なる特別機構のうちのいずれかまたはすべてを組み合わせるかまたは修正することができる。たとえば、特定の患者の特定の特性または要件に基づいて、様々な異なる問題(たとえば、可撓性、摩擦の増大、保護)に関連するそれぞれに異なる特別機構を各々の個々の用途の必要に応じてドッキングデバイスに組み込むことができる。
【0126】
本明細書におけるドッキングデバイスの実施形態について、上記では、僧帽位置において置換弁を固着するのを助けることに関して概略的に説明した。しかし、上述のように、上述のドッキングデバイスまたはそのわずかに修正された実施形態を、他の弁部位、たとえば、三尖弁位置、肺動脈位置、または大動脈位置における弁置換に同様に適用することもできる。いずれかの位置における機能不全が診断された患者は、弁ループが肥大し、自然弁が適切に接合するのを妨げるとともに、弁ループが過度に大きくなるか、過度に柔らかくなるか、またはその他の疾患が顕著になって拡張可能な弁をしっかり保持することができなくなる場合がある。したがって、剛性または半剛性を有するドッキングデバイスを使用することは、たとえば、置換弁が正常な心機能の間にずれるのを防止するために、それらの弁部位に置換弁を固着するうえでも有利である。
【0127】
本明細書におけるドッキングデバイスは、上述と同様に、1つまたは複数の被膜またはカバー層でさらに覆うことができる。さらに、これらの用途のいずれについてのカバー層も、組織のより急速な内部成長を促進する材料で作るかまたはそのような材料を含むことができる。カバー層は、組織の内部成長をさらに強化するために、たとえば、ベロア膜、多孔性表面、編み表面などによって、より大きい表面積を有するようにさらに構成することができる。
【0128】
上述のドッキングデバイスと同様のドッキングデバイスは、僧帽弁以外の弁に適用したときに、それらの部位でもより確実な装填ゾーンを構成することができる。ドッキングデバイスおよび関連する置換弁は、僧帽弁における移植に関して説明したのと同様に適用することができる。三尖弁置換用の可能なアクセスポイントは、たとえば、経中隔アクセスとすることができ、一方、大動脈置換用の可能なアクセスポイントは、経大腿アクセスとすることができる。ただし、それぞれの弁部位へのアクセスはこれらに限定されない。前述のようなコイル状ドッキングデバイスを他の弁部位に使用すると、たとえば、弁尖および他の組織がドッキングデバイスのコイル同士の間に挟まれ、ドッキングデバイスのばね力によって所定の位置に保持されることにより、自然弁ループの所で置換弁を展開した後に自然弁尖を周方向に締め付けるかまたは留めることが可能になり、さらにドッキングデバイスの滑りまたはその他の動きおよびドッキングデバイスに対する挟まれた組織の滑りまたはその他の動きがさらに妨げられ、経時的な自然弁ループの不要な成長または拡張が防止される。
【0129】
アンカー/ドッキングデバイスと解放または回収線/縫合糸との間のいくつかの可能な取り付け構成ならびに各構成要素の運動および/もしくは滑りによって、場合によっては、アンカー/ドッキングデバイスがプッシャーチューブおよび/またはデリバリーカテーテルに対してT字状になるかまたは「T字状化し」、たとえば、それによって、プッシャーチューブおよび/またはデリバリーカテーテルの軸がアンカー/ドッキングデバイスの近位端の軸に整合されなくなる(垂直になることがある)。たとえば、回収線/縫合糸を引くと、ドッキングデバイスの端部2700とプッシャーデバイス/チューブ1165および/またはデリバリーカテーテルが、整合姿勢ではなく、直交する相対姿勢または実質的に直交する相対姿勢になり、たとえば、相対的に「T」字を形成する姿勢になることがある。このことが起こると、アンカー/ドッキングデバイスをデリバリーカテーテル内に回収するか引き出すことが困難になる場合がある。
【0130】
本明細書で説明するアンカー/ドッキングデバイスはいずれも、有利なことに、このようにT字状になることまたは「T字状化すること」を抑制もしくは防止するかまたはT字状になることまたは「T字状化すること」に抵抗するように構成し設計することができる。たとえば、本明細書で説明するアンカー/ドッキングデバイスはいずれも、カテーテルの縁部に挟まることも、ならびに/またはプッシャーチューブおよびカテーテルからずれるかもしくはプッシャーチューブおよびカテーテルに対して垂直になることもなく、より容易に引っ張りデリバリーカテーテル内に案内することのできる湾曲した近位端を有するように構成することができる。追加または代替として、本明細書で説明するアンカー/ドッキングデバイスはいずれも、回収縫合糸/線1163によって加えられる力Fの線をドッキングデバイスの端部2700の中心軸または領域に関する慣性モーメントAに整合されるかまたは実質的に整合されるように偏らせる(または整合する方向に偏らせる)ことができるように構成することができる(図27参照)。この整合は、回収縫合糸がプッシャーデバイスに対してドッキングデバイスの端部2700を引くときおよび/またはドッキングデバイスがデリバリーカテーテル内に引き込まれるときに、ドッキングデバイスの端部2700がプッシャーデバイスまたはチューブ1165の一方の側に相対的に滑るかまたは移動するのを抑制しならびに/または防止するのを助けることができる。このことはドッキングデバイスの端部2700とプッシャーチューブ1165および/またはデリバリーカテーテルとの間のT字状になる効果または「T字状化」効果を抑制しならびに/または防止するのを助けることができる。ドッキングデバイスの端部2700がT字状になり、プッシャーデバイスもしくはチューブ1165に対してずれ、ならびに/またはプッシャーデバイスもしくはチューブ1165の一方の側に滑るのを抑制しならびに/または防止する1つまたは複数の特別機構を含む後述の実施形態/設計について主としてドッキングデバイス1100を参照して説明するが、本明細書で開示するすべてのドッキングデバイス実施形態がこれらの特別機構のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有することができることが諒解されよう。
【0131】
ドッキングデバイス1100の回収を試みるときなどに解放/回収縫合糸1163に張力が加えられると、ドッキングデバイス1100は一般に、プッシャーチューブ1165および/またはデリバリーカテーテルの方へ移動する際に張力の線に従う。いくつかの構成では、場合によっては、端部2700が上述の「T字」姿勢に移動するかまたは滑ることがある。たとえば、いくつかの潜在的な構成では、縫合糸解放穴1162がドッキングデバイス1100上で半径方向外側を向いている場合、解放縫合糸1165から端部2700への張力Fの線は、アンカー/ドッキングデバイスの端部2700の軸または領域に関する慣性モーメントAに整合されないことがある。張力Fの線とドッキングデバイス1100の端部の軸Aとの間の角度が大きすぎる場合、ドッキングデバイス1100の回収を試みると、ドッキングデバイス1100の端部2700がプッシャーチューブ1165の遠位先端を越えて滑り、整合当接状態からずれ、ドッキングデバイス1100をプッシャーチューブ1165に対する「T字」姿勢に移動させ、それによって、デリバリーカテーテル1010内への回収がより困難になる場合がある。
【0132】
図27A図30Bを参照すると、ドッキングデバイス1100の例示的な実施形態は、回収縫合糸/線1163によって加えられる力Fの線とドッキングデバイスの端部2700の中心軸または領域に関する慣性モーメントAとの間の整合または実質的な整合を維持するために近位接続端部または先端を備える。図27A図27Fによって示される例では、ドッキングデバイス1100は、ドッキングデバイス1100のコイル/コア1160の端部と一体化するか、この端部上に成形または機械加工することができる接続端部/先端または球形端部/先端1200、または縫合糸、溶接、接着剤、または当技術分野で知られている他の方法によってコイル/コア1160の近位端に取り付けられたキャップとを備えてもよい。
【0133】
球形端部または先端(たとえば、ボール状端部または先端)は、様々な異なる形態をとることができる。図27D図27Fによって示される例では、球形先端/端部1200は、球形部1202と、遷移部1204と、ネック部1206とを有する。球形部1202は、球形近位先端/端部1200の近位端に位置する。ネック部1206は、球形部1202に対して遠位位置にあり、ドッキングデバイス900のコイル/コア1110に接続される。遷移部1204は、球形部1202をネック部1206に接続する。球形部1202は、実質的に球またはボールの形状を有し、ネック部1206は、ドッキングデバイス1100のコイル/コア1160の連続部分となるか、またはコイル/コア1160の近位端上にキャップとして嵌るような形状およびサイズを有することができる。遷移部1204は、球形部1202のより大きい直径とネック部1206のより小さい直径との間に緩やかで滑らかな遷移を形成する。しかし、球形近位先端1200は、様々な異なる形状およびサイズを有することができる。
【0134】
球形近位先端/端部1200は、球形部1202の中心/端部から軸または領域に関する慣性モーメントAに整合された先端軸ATに沿って延びる中央通路1210を含む(図27A)。中央通路は、球形近位先端1200を通って球形部1202の中心まで延びている。図示の例では、2つの斜め側部通路1212が中央通路1210まで延びている。図示の通路1212は、球形部1202の中心に対して遠位である球形部1202の外面上の位置から始まる。側部通路1212は、球形近位先端1200の外部に一対の開口部を画定する。図示の例では、側部通路開口部は、実質的に球形部1202と遷移部1204が収束する点に配置される。しかし、側部通路開口部は、様々な異なる位置に設けることができる。図示の実施形態では、側部通路1212は、実質的に球形部1202の中心における中央通路1210で合流し開放する。中央通路1210と側部通路1212は平滑な二股通路を画定することができる。例示的な一実施形態では、通路1210、1212の開口部の縁部および/または通路1212と通路1210の交差部は平滑にするかまたは丸くすることができる。中央通路は、それを通過する縫合糸を先端1200の中心軸または縦軸およびドッキングデバイスの端部に整合されるように(整合する方向に)偏らせる。先端/端部1200はそれを覆う被膜を含むことができる。
【0135】
球形先端1200を中央通路1210と2つの側部通路1212とを有するものとして説明したが、他の設計が考えられることが諒解されよう。たとえば、先端1200は、先端1200の近位端の所に中央開口部を含むことができ、中央開口部から2つの斜め通路が直接延びることができる。2つの斜め通路は、中央開口部に開放するとともに中央開口部から遠位方向および半径方向外側に延びることができる。
【0136】
図27Cを参照すると、使用時には、回収または解放縫合糸/線1163の一方の端部を中央通路1210および側部通路1212の一方に通し、先端1200の外面の周りに配置し、他方の側部通路1212に通し、中央通路1210から出す。縫合糸/線1163の両端部は、そのように通されると、球形接続先端1200の中央部の近位端から延び、それによって、縫合糸/線1163によって先端1200に加えられる張力または力Fの線が端部2700の縦軸Aおよび先端1200の中央通路の軸ATと整列する。
【0137】
例示的な一実施形態では、球形部1202の球形状によって、先端1200がプッシャーチューブの端部からずれることも、ならびに/またはカテーテル1010に対してT字状になることもなく、プッシャーチューブ1165の遠位端および/またはデリバリーカテーテル1010がドッキングデバイス1100の近位部分の周りを相対的に回転または旋回することができる。張力Fの線と軸A、ATおよび/または先端1200の球形近位端部が整合すると、ドッキングデバイス1100とプッシャーチューブ1165および/またはデリバリーカテーテル1010が互いにずれてT字状になるのが防止される。
【0138】
図27Eを参照すると、球形近位先端/端部1200は、場合によっては先端1200の遠位端にボア1230を含み、ドッキングデバイス1100のコイル/コア1160の近位端を収容することができる。ボア1230はボアベース1232の所で終端する。ボアベース1232は、挿入されたコイル/コア1160の近位端に当接することができる。ボアベース1232は、円筒状、円錐状、または別の形状を有することができる。さらに、球形近位先端1200は場合によっては、先端/端部1200を貫通して延びるアイレット1240またはスロットをネック部1206に含むことができる。縫合糸をアイレット1240に通し、コイル/コア1160の穴1162(図22参照)を通過させて球形先端1200をコイル/コア1160に接続することができる。コイル/コアおよび/またはネック部1206などの、先端1200の一部上に任意の被膜/カバー層を設けることができる。アイレットまたはスロット1240および穴1162を使用して任意の被膜層を取り付けることもできる。
【0139】
球形接続先端/端部1200は、ドッキングデバイス1100と一体化することができ、ドッキングデバイス1100の近位端上に機械加工することができ、または縫合糸、溶接、もしくは他の取り付け手段によってドッキングデバイスの近位端に取り付けられたキャップとすることができる。中央通路1210と側部通路1212の位置によってより厚い壁が使用可能になり、それによって球形先端/端部1200はより頑丈になる。
【0140】
球形先端1200は、遠位部が、ドッキングデバイス1100の端部2700よりも直径が大きくなる(図27A)か、または遠位部が端部2700と同一平面を形成する(図27G)ように構成し設計することができる。先端/端部1200を、ボア1230またはボアベース1232を必要としないようにドッキングデバイスと一体化することができ、または先端1200の遠位部がドッキングデバイスの端部2700と同一平面を形成するときに、端部2700の近位端を、球形近位先端1200のボア1230に収容できるように、機械加工などによって直径を小さくすることができる。球形近位先端1200をドッキングデバイス1100の端部2700と同一平面を形成するように取り付ける他の方法も考えられる。
【0141】
球形接続先端/端部は様々な異なる方法で作ることができる。例示的な一実施形態では、球形先端/端部1200は、先端/端部1200の近位端をザッピング(たとえば、放電加工)して球形を形成することによって作ることができる。中央通路1210および側部通路1212は、レーザー加工またはマイクロマシニングによって形成することができる。電気めっきを使用して縁部上に半径を形成することができる。例示的な一実施形態では、球形先端/端部1200をニチノールに作ることができる。先端/端部1200は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ウルテムもしくはその他のポリエーテルイミド、ステンレススチール、ニチノール以外の形状記憶金属もしくは材料、および/または他の非形状記憶材料もしくは当技術分野で知られている任意の他の材料などの他の材料から作ることができる。例示的な一実施形態では、球形先端/端部は、縫合糸によって加えられる130ニュートンの力Fに曲げまたは破断を生じることなく耐えるように構成することができる。
【0142】
例示的な一実施形態では、球形部1202は、2.0mmから2.50mmの間の直径、たとえば、約2.10mmから2.30mmの間の直径、たとえば、2.20mmの直径などの小さい直径を有することができる。例示的な一実施形態では、ネック部1206は、1.10mmから1.50mmの間の外径、たとえば、約1.20mmから1.40mmの間の外径、たとえば約1.3mmの外径などの小さい外径を有することができる。例示的な一実施形態では、遷移部1204は、0.8mmから1.20mmの間の半径、たとえば、約0.90mmから1.10mmの間の半径、たとえば、約1.0mmの半径などの小さい半径を有することができる。中央通路1210は、様々な異なる形状を有することができる。たとえば、中央通路1210は、円形の開口部、卵形の開口部、円錐形の開口部、方形の開口部などを有することができる。図示の例では、中央通路1210は、先端1200の近位部への卵形の開口部を有する。卵形の開口部は、0.95mmから1.30mmの間の幅、たとえば、約1.03mmから1.23mmの間の幅、たとえば、約1.13mmの幅と、たとえば、0.50mmから0.85mmの間の高さ、たとえば、約0.55mmから0.77mmの間の高さ、たとえば、約0.65mmの高さとを有する開口部などの小さいサイズを有することができる。側部通路は様々な異なる形状を有することができる。図示の実施形態では、側部通路1212は、0.50mmから0.85mmの間の直径、たとえば、約0.55mmから0.75mmの間の直径、たとえば、0.65mmの直径を有する丸い開口部を有する。各側部通路1212を通って延びる軸は、中央通路1210を通って延びる縦軸から、115°から135°の間の角度、たとえば、約120°から130°の間の角度、たとえば、約126°の角度に位置することができる。
【0143】
さらに、ボア1230とボアベース1232との間の縁部を丸くすることができる。丸い縁部は、約0.20mmなどの約0.1mmから0.4mmの間の半径を有することができる。ボア1230は、遠位端から先端1200まで近位方向に1.9mmから2.35mmの間、たとえば、約2.01mmから2.21mmの間、たとえば、約2.11mmだけ延びることができる。
【0144】
さらに、図示の実施形態では、アイレット1240は矩形部分の両側に2つの半円を有するように形作られる。アイレット1240の矩形部分は、長さを0.40mmから0.47mmの間、たとえば、約0.46mmから0.66mmの間、たとえば、約0.56mmとすることができる。アイレット1240の半円部は、半径を0.125mmから0.25mmの間、たとえば、約0.15mmから0.20mmの間、たとえば、約0.17mmとすることができる。アイレット1240の矩形部分の遠位端から球形近位先端1200の遠位端までの距離は、0.7mmから1.1mmの間、たとえば、約0.8mmから1.0mmの間、たとえば、約0.9mmなどとすることができる。
【0145】
図28A図28Fに示すように、例示的な実施形態では、球形接続先端/端部1200は、図27A図27Fの球形近位先端/端部と同様であってよい(かつ上述の特別機構、寸法などのうちのいずれかを含む)が、解放縫合糸1163の一部を保持するように構成することができる凹状カラー、環状くぼみ、またはチャネル1220を有することができる。前述のように、球形先端1200は、球形部1202と、遷移部1204と、ネック部1206と、中央通路1210と、2つの側部通路1212とを有することができる。図28A図28Eによって示される例では、厚さが球形部1202とネック部1204との間で徐々に小さくなる遷移部1204の代わりに、遷移部1204は、球形部1202およびネック部1206よりも小さい直径を有する図示の環状くぼみまたはチャネル1220を含むことができる。環状くぼみ1220は、部分的なトロイドの形状を有することができ、球形先端1200の円周に沿って延びることができる。側部通路1212の遠位端は、少なくとも部分的に環状くぼみ1220内に開放し、環状くぼみ1220の表面および側部通路1212が環状くぼみ内に解放する縁部は、平滑であってもよく、または場合によっては丸くてもよい。
【0146】
図28Cを参照すると、解放縫合糸1163の一方の端部を中央通路1210および側部通路1212の一方に通し、環状くぼみ1220の一部を周り、他方の側部通路1212に通し、中央通路1210から出す。解放縫合糸1163の両端部は、そのように通されると、先端1200の近位部および中央部から延び、それによって、解放縫合糸1163によって先端1200に加えられる張力または力Fの線が端部2700の縦軸Aおよび先端1200の中央通路の軸ATと整列する。ドッキングデバイス1100を押すか、回収するか、またはそれ以外で再配置するとき、解放縫合糸1163の一部が環状くぼみ1220内に残ることができる。プッシャーチューブ1165およびカテーテル1010は球形近位先端1200と比較して比較的短く示されているが、プッシャーチューブ1165はおよびカテーテル1010は、所望の任意の長さに延ばすことができる。球形部1202の球形によって、先端1200がプッシャーチューブの端部からずれることなく、プッシャーチューブ1165の遠位端がドッキングデバイス1100の近位部の周りを相対的に回転または旋回するのが可能になる。張力Fの線と軸A、ATおよび/または先端1200の球形近位端部が整合すると、ドッキングデバイス1100とプッシャーチューブ1165が互いにずれてT字状になるのが防止される。
【0147】
球形接続先端は、デリバリーデバイスおよび/またはそのコアと一体化するか、または先端1200の遠位端にボア1230およびボアベース1232を含み、ドッキングデバイス1100のコイル/コア1160の近位端を収容することができる。図28Dの図示の実施形態では、ボアベース1232は円錐状であるが、円筒状または別の形状とすることもできる。コイル/コアおよび/またはネック部1206などの、先端1200の一部上に任意の被膜/カバー層を設けることができる。上述のように、球形近位先端1200は、デリバリーデバイスおよび/またはコアと一体化することができ、ドッキングデバイス1100の近位端上に機械加工することができ、または縫合糸、溶接、接着剤、もしくは他の取り付け手段によってドッキングデバイスの近位端に取り付けられたキャップとすることができる。上述のように、球形近位先端1200は、遠位部が、ドッキングデバイス1100の端部2700よりも直径が大きくなる(図28A)か、または遠位部が端部2700と同一平面を形成する(図28F)ように設計することができる。
【0148】
図28A図28Eによって示される例示的な実施形態では、球形近位先端1200は、長さを約4.4mmから4.8mmの間、たとえば、約4.6mmとすることができる。球形部1202は、長さを0.9mmから1.3mmの間、たとえば、約1.0mmから1.2mmの間、たとえば、約1.1mmとすることができ、直径を2.0mmから2.4mmの間、たとえば、2.10mmから2.30mmの間、たとえば、約2.20mmとすることができる。ネック部1206は、長さを1.8mmから2.2mm、たとえば、約1.9mmから2.1mmの間、たとえば、約2.00mmとすることができ、外径を1.65mmから2.05mm、たとえば、約1.75mmから1.95mmの間、たとえば、約1.85mmとすることができる。遷移部1204は全長を約1.5mmとすることができる。遷移部1204は、球形部1202およびネック部1206と合流する場合、湾曲して直径が小さくなることができる。環状くぼみ1220は、様々な異なる形態をとることができる。環状くぼみ1220は、(断面で見たときに)単一の直径を有することができ、または2つ以上の異なる直径を有することができる。例示的な一実施形態では、環状くぼみの直径は、0.5mmから1.5mmの間、たとえば、0.6mmから1.2mmの間、たとえば、0.7mmから1.1mmの間、たとえば、0.8mmから1.0mmの間である。しかし、遷移部1204と環状くぼみ1220は任意のサイズおよび形状を有することができる。
【0149】
図28A図28Eでは、中央通路1210の開口部はスタジアム形であり、長さを0.95mmから1.30mmの間、たとえば、約1.03mmから1.23mmの間、たとえば、約1.13mmとすることができ、高さを0.40mmから0.80mmの間、たとえば、約0.50mmから0.70mmの間、たとえば、約0.60mmとすることができる。中央通路1210の縦軸と側部通路1212の縦軸との間に形成される角度は、130°から160°、たとえば、約140°から150°、たとえば、146°であってもよい。側部通路1212は、直径を0.40mmから0.80mmの間、たとえば、約0.50mmから0.70mmの間、約0.60mmとすることができる。
【0150】
さらに、ボア1230は、円形とすることができ、直径を0.7mmから1.05mmの間、たとえば、0.77mmから0.97mmの間、たとえば、約0.87mmとすることができ、遠位端から先端1200まで近位方向に1.9mmから2.35mmの間、たとえば、約2.01mmから2.21mmの間、たとえば、約2.11mm延びている。アイレット1240は、矩形部分の両側に2つの半円を有するように形作ることができる。アイレット1240の矩形部分は、長さを0.40mmから0.47mmの間、たとえば、約0.46mmから0.66mmの間、たとえば、約0.56mmとすることができる。アイレット1240の半円部分は、半径を0.125mmから0.25mmの間、たとえば、約0.15mmから0.20mmの間、たとえば、約0.17mmとすることができる。アイレット1240の矩形部分の遠位端から球形近位先端1200の遠位端までの距離は、0.7mmから1.1mmの間、たとえば、約0.8mmから1.0mmの間、たとえば、約0.9mmである。
【0151】
図29A図29Eはドッキングデバイス1100の例示的な実施形態を示す。図29A図29Eによって示される例では、ドッキングデバイス1100は、ループ状の近位先端または端部1300を含む(たとえば、近位先端/端部の所にループを含む)。ループ状近位先端1300は、機械加工または同様のプロセスによって形成することができる。ループ状近位先端1300は様々な異なる方法で形成することができる。図29Cを参照すると、例示的な実施形態では、コイル/コア1160の近位端をコイル/コア1160の遠位点に曲げるかまたは折り畳んで取り付けて内側ループ表面1310と、外側ループ表面1312と、縫合糸受け領域Hとを画定する。次いで、解放縫合糸1163を縫合糸受け領域Hにループ状に通し、解放縫合糸1163を使用して前述のようにドッキングデバイス1100を回収する。プッシャーチューブ1165を使用してドッキングデバイス1100を押したときに、プッシャーチューブ1165の遠位端が外側ループ表面1312に当接してもよく、外側ループ表面1312に沿って回転または旋回してもよい。解放縫合糸1163のループ状部分は、内側ループ表面1310に沿って回転することができ、それによって、解放縫合糸1163によって加えられる張力Fの線が、ドッキングデバイスの端部の軸または領域に関する慣性モーメントAに実質的に整列するかまたは整列するようになる。張力Fの線と端部2700の軸Aとの整合および/または外側ループ表面1312がプッシャーチューブ1165および/またはデリバリーカテーテル1010に対して回転する能力は、ドッキングデバイス1100およびプッシャーチューブ1165および/またはカテーテル1010が互いにずれるのを防止する。プッシャーチューブ1165とカテーテル1010は図29Bでは、ループ状近位先端1300と比較して比較的短く示されているが、プッシャーチューブ1165とカテーテル1010を任意の所望の長さまで延ばすことができる。
【0152】
図29Cおよび図29Dを参照すると、例示的な実施形態では、ループ状近位先端1400は、コイル/コア1160の近位部を切断するかまたは削り、ドッキングデバイス1100の近位先端を曲げるかまたは折り畳み、ドッキングデバイス1100の近位先端をドッキングデバイス1100の遠位点に接続することによって作ることができる。図29C図29Eに示すように、先端1400の近位部を削って、コイル/コア1160の長さに沿って遠位点1304に至る平坦な縦表面1302を画定する。さらなる例示的な実施形態では、コイル/コア1160にワイヤ研削またはレーザーカットによって切り込みを作る。平坦な縦表面1302の縁部を丸めることができる。図示の実施形態では、平坦な縦表面1302を遠位点1304の近くで丸くするかまたは先細りさせる。次いで、平坦な縦表面1302を遠位点1304の方へ折り畳んで内側ループ表面1310を画定し、遠位点1304の近くの接続点1306の所でコイル/コア1160の残りの部分に接続する。例示的な実施形態では、平坦な縦表面1302の近位端を接続点1306の所で溶接する。しかし、熱処理、接着剤の使用など、平坦な縦表面1302を接続点1306に接続する他の方法が考えられ、または表面1302が直接接続なしで点1306に当接してもよい。
【0153】
ループ状近位先端1300は、デリバリーカテーテルを通って円滑に滑るように設計され構成される。平坦な縦表面1302の横縁部を丸くすることができる。外側ループ表面1312を丸くしてコイル/コア1160の残りの部分への円滑な遷移部を構成することができる。例示的な実施形態では、ループ状近位先端1300は、ニチノールで作られ、曲げることも破断することもなく、溶接部を破断することなく、またはループを崩すことなく、130ニュートンの力に耐えることができる。しかし、先端1300は、PEEK、ウルテム、ステンレススチール、ニチノール以外の形状記憶金属もしくは材料、および/または他の非形状記憶材料などの他の材料から作ることができる。
【0154】
カバーの取り付けに関して、図29Eに示すように、ループ状近位先端1300は、接続点1306に対して遠位の点の所でコイル/コア1160を貫通して延びるボア1340を含むことができる。縫合糸または他の取り付けデバイスが、ボア1340を通って延びてコイル/コア1160をカバーに接続する。ボア1340は、縫合糸または他の取り付けデバイスをボア1340に嵌めることができ、かつボア1340を丸めて平滑にすることができるようなサイズを有することができる。被膜は、たとえば、ボア1340と接続点1306との間の点まで延びることができる。
【0155】
図29A図29Eに示す例示された実施形態では、コイル/コア1160は様々な異なる形状およびサイズを有することができる。たとえば、コイル/コア1160は、厚さまたは直径を0.75mmから0.95mmの間、たとえば、約0.85mmとすることができる。平坦な縦表面1302の所のコイル/コア1160の近位部は、厚さを少なくとも0.4mm、たとえば約0.5mmとすることができる。外側ループ表面1312の高さは、2.0mm未満、たとえば、約1.9mmとすることができる。内側ループ表面1310の高さは少なくとも0.4mm、たとえば、約0.5mmとすることができる。内側ループ表面の長さは少なくとも1mm、たとえば、1.20mmとすることができる。ボア1340は、外側ループ表面の近位点から3.0mm以下、たとえば、約2.8mmとすることができる。
【0156】
図30Aおよび図30Bは、回収縫合糸1163によって加えられる力Fの線をドッキングデバイスの端部2700の中心軸または領域に関する質量の中心Aに整合するように構成されたドッキングデバイス900またはドッキングデバイスのコアの例示的な実施形態を示す。図示の例では、ドッキングデバイス900の近位端は、凹状チャネルまたは溝950を含むことができる。ドッキングデバイス900の図示の近位端は、図25および図26に示す近位端と同様であり、同様の特別機構および参照符号を有するものとして説明する。しかし、後述のように、溝950が異なる形状または構成を有する他の設計の近位端に含められる場合があることが諒解されよう。
【0157】
溝950は、コイル/コア910の近位自由端に設けることができ、それによって、溝950を貫通して延びる中心軸が穴912を貫通して延びる軸に整合される。すなわち、溝950の中心は穴の中心に整合される。図示の例では、溝950と穴912の両方が端部の軸A上に心合わせされる(図30B参照)。溝950は、溝950の両側に2つの近位自由端918aおよび918bを画定する。近位凹状端部919aが、近位自由端918aおよび918bから凹状にかつ近位自由端918aおよび918bに平行に形成される。溝壁919bは、垂直に延び、近位凹状端部919aと近位自由端918aおよび918bを接続する。近位突起915aおよび915bが、溝950とコイル/コア910の側部との間に位置する。溝950と結果として得られる近位突起915aおよび915bは、縫合糸をループ状にして溝950と穴912との間の所定の位置に維持することができる任意のサイズとすることができる。例示的な実施形態では、突起915aおよび915bは、ドッキングデバイス1100を押すか、回収するか、または配置する際にカテーテル1010に引っかかるのを避けるのに十分なほど短くかつ近くなるように構成される。
【0158】
場合によっては、近位突起915aおよび915bは、整列することができ、それぞれ側部914、916と実質的に同じ厚さを有することができる。好ましい実施形態では、溝950はコイル/コア910にレーザーカットされる。しかし、溝を様々な異なる方法で形成することができ、たとえば、溝を機械加工できることが諒解されよう。コイル/コア910の縁部を丸くすることができる。
【0159】
縫合糸941および/または回収縫合糸/線1163をスリット穴912に挿入し、溝950の周りにループ状に配置し、閉ループとして結び付けるかまたはそれ以外で固定する。縫合糸941および/または回収縫合糸/線1163は、溝950内に留まり、いずれの近位突起915a、915bからずれることも半径方向外側に移動することもないほどしっかりと、溝950にループ状に通される。場合によっては、溝は他の形状とすることができ、たとえば、十字型にすることができ、縫合糸941および/もしくは回収縫合糸/線1163を十字型溝に結び付けるかまたはそれ以外で固定して縫合糸941および/または回収縫合糸/線1163のずれまたは移動をさらに防止することができる。
【0160】
図30Bに示すように、回収縫合糸/線1163の遠位端を縫合糸941に取り付けることができる(または上述のように、回収縫合糸/線1163を溝950内のドッキングデバイスに直接取り付けることができ、別個の縫合糸941は必要とされず、また使用されない)。一実施形態では、縫合糸/線1163は、縫合糸941の周りにループ状に配置するかまたは縫合糸941に結び付けることができる。解放縫合糸1163が引かれるかまたは他の方法で引き込まれると、縫合糸941に張力が加わり、縫合糸941は次いで、ドッキングデバイス900をプッシャーチューブ1165の方へ引く。縫合糸941がスリット穴912および溝の周りでループ状にされたままであるので、解放縫合糸1163によってコイル/コア910に加えられる張力Fの線は、近位凹状端部919aを貫通して延び、コイル/コア910またはその端部の中心軸または縦軸Aに実質的に整合されるかまたは整合されるように偏らされる(または整合する方向に偏らされる)。この整合によって、デリバリーデバイス900の近位端がプッシャーチューブ1165からずれるのが防止される。プッシャーチューブ1165およびカテーテル1010はドッキングデバイスの近位端と比較して比較的短く示されているが、プッシャーチューブ1165およびカテーテル1010は任意の長さに延びることができる。
【0161】
一実施形態では、回収縫合糸/線1163は、ドッキングデバイスの周りにループ状に配置するかまたはドッキングデバイスに直接結び付けることができる。解放縫合糸/線1163が引かれるかまたは他の方法で引き込まれると、ドッキングデバイスに張力が加わり、それによって、ドッキングデバイス900はプッシャーチューブ1165の方へ引かれる。回収縫合糸/線1164がスリット穴912および溝950の周りに結び付けられたままであるので、解放縫合糸1163によってコイル/コア910に加えられる張力Fの線は、近位凹状端部919aを貫通して延び、コイル/コア910の軸Aに実質的に整合される。この整合によって、デリバリーデバイス900の端部がプッシャーチューブ1165からずれるのが防止される。
【0162】
再び図30Aおよび図30Bに戻ると、図示の方形の縁部および角部または溝950およびスリット穴912を丸くすることなどが可能である。図示の実施形態はドッキングデバイス900を図25のドッキングデバイスと同様であり、実質的に平坦であるかまたは矩形の断面を有するものとして示しているが、近位端は、デリバリーカテーテルに嵌る任意の形状を有することができる。たとえば、近位端は円形または卵形とすることができ、U字形の溝またはそれ以外で丸くされた溝を有することができる。さらに、図29A図29Eのループ状近位端1300に溝またはチャネルを含めることができる。
【0163】
図30Aおよび図30Bの実施形態には任意の数のスリットおよび溝を含めることができる。たとえば、コイル/コア910の近位端は、互いに垂直な2つの溝(または任意の数)および2つのスリット穴(または任意の数)を有することができる。縫合糸が各スリット穴および溝のそれぞれにループ状に通され固定される。次いで、2つの溝の中心にある2本の縫合糸に解放縫合糸を取り付けることができ、それによって、加えられる張力は、コイル/コア910とプッシャーチューブ1165との間に整合されたままになる。
【0164】
この説明においては、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規の特別機構について本明細書で説明した。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる点でも限定的なものとは解釈されない。その代わり、本開示は、様々な開示された実施形態のすべての新規の非自明な特別機構および態様を、単独で対象とするとともに、互いの様々な組合せおよび部分組合せにおいて対象とする。方法、装置、およびシステムは任意の特定の態様または特別機構またはそれらの組合せに限定されず、組み合わせることができ、開示された実施形態は任意の1つまたは複数の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。
【0165】
開示された実施形態のうちのいくつかの実施形態の動作は、提示の都合上特定の順序で説明しているが、この説明方法は、記載された特定の言語によって特定の順序が必要とされない限りこのような説明は再構成を包含することが理解されよう。たとえば、順次説明した動作またはステップは場合によっては、再構成するかまたは同時に実行することができる。さらに、説明を簡単にするために、添付の図は、開示された方法を他の方法とともに使用するための様々な方法を示していない場合がある。さらに、説明では、開示された方法について説明するために「提供する」または「実現する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作を高次抽象化するものである。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なる場合があり、当業者には識別することができる。
【0166】
本開示の原則を適用することができる多数の可能な実施形態を考慮して、図示の実施形態が好ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものと見なすべきではないことを認識されたい。むしろ、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0167】
1、100、200、300、400、500、600、1100 ドッキングデバイス
10、110、1110 中央領域
20、120、1120 下部領域
21 遠位先端
21 遠位または誘導先端
30、130、1130 上部領域
31 近位先端
32 長径
33 短径
40 人工弁
41 拡張可能なフレーム構造
42 弁尖
50 僧帽弁
52 左心房
54 左心室
56 大動脈弁
58 大動脈
62 腱索
64 交連部
66 前尖
68 後尖
140、1140 伸張領域
150 穴
210 レーザーカットチューブ
211、216、217、218 切り込み
212 リンク
213、218 歯
214、618 溝
215 端部領域
217 開口部
219 ロッキングワイヤ
219 張力ワイヤ
222 遠位端
310、510 メインコイル
320 アンカー
410、610、710、810、910 コイル/コア
420 被膜
520 摩擦要素
530 高摩擦被膜
622 突起
712 先端
714 通し穴
716、918 自由端
718 反対側の端部
720 固着穴
812 ボール状先端
814 隙間
912 スリット穴
914、916 側部
915a、915b 近位突起
919a、919b 近位凹状溝
920 カバー層
930 縫合糸
940 プルワイヤ
941 縫合糸
950 溝
1000 ガイドシース、イントロデューサ
1010 デリバリーカテーテル
1160 ワイヤコア
1162 穴
1163 縫合糸
1164 固定穴
1165 プッシャーチューブ
1170 カバー層、低摩擦層
1180 高摩擦層、編み層
1182、1184 マーカーバンド
1200 球形近位先端/端部
1202 球形部
1204 遷移部
1206 ネック部
1210 中央通路
1212 側部通路
1220 チャネル、環状くぼみ
1230 ボア
1232 ボアベース
1240 アイレット
1300 ループ状近位先端
1302 平坦な縦表面
1304 遠位端
1306 接続点
1310 内側ループ表面
1312 外側ループ表面
1340 ボア
1800 左心房
1810 僧帽弁
1830 大動脈壁
1840 大動脈
2700 端部
A1P1、A3P3 交連
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図11A
図12
図13
図14
図15
図16
図16A
図17
図18
図19
図19A
図20
図21
図22
図22A
図22B
図22C
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E
図27F
図27G
図28A
図28B
図28C
図28D
図28E
図28F
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
図30A
図30B
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の自然弁の所に人工弁をドッキングするためのドッキングデバイスであって、
中心軸を含む端部を有するコイル状ドッキングデバイスを備え、
前記ドッキングデバイスの前記端部は、前記端部に接続された回収縫合糸が偏らされて、張力によって前記回収縫合糸に加えられる力の線が前記中心軸に整合されるように構成されるドッキングデバイス。
【請求項2】
前記端部は、前記回収縫合糸の少なくとも長さ方向部分を前記中心軸に沿って整合するように構成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記回収縫合糸は、前記ドッキングデバイスの前記端部の先端の所における中央通路を通って延び、前記中央通路は前記中心軸に整合される、請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コイル状ドッキングデバイスは、前記回収縫合糸を受ける球形先端を前記近位端部上にさらに備える、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記球形先端は、前記球形先端の遷移部に環状溝を備える、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ドッキングデバイスの前記端部は、溝を含む先端を備え、前記回収縫合糸は、前記回収縫合糸の一部が前記溝に結び付けられた前記端部に結合される、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
第1の厚さを有し、中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、
前記少なくとも1つの中央巻きの上端部から延びる長さを有する伸張部であって、前記第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する伸張部と、
前記遷移部の上端部から延びる上部巻きであって、前記第2の厚さよりも大きい第3の厚さを有する上部巻きと、
を備える、請求項からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記コイル状ドッキングデバイスは、前記端部に対して前記コイル状ドッキングデバイスの反対側の端部上に遠位巻きを備え、前記遠位巻きは、前記第1の厚さを有し、前記中央巻き直径よりも大きい直径を画定する、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、心臓の心腔内および前記自然弁の弁尖の周りに配置される、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然僧帽弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、左心室内および前記自然僧帽弁の僧帽弁尖の周りに配置される、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コイル状ドッキングデバイスは、自然三尖弁の所に移植されるように構成され、前記コイル状ドッキングデバイスの少なくとも一部が、左心室内および前記自然三尖弁の三尖弁尖の周りに配置される、請求項に記載のデバイス。
【請求項12】
生体適合材料を備えるカバー層をさらに備え、前記カバー層は、前記コイル状アンカーの少なくとも一部を囲む、請求項から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記カバー層は低摩擦カバー層であり、
前記低摩擦カバー層は、遠位端と近位端とを有し、前記コイル状ドッキングデバイスを囲み、前記コイル状ドッキングデバイスの長さに沿って、前記コイル状ドッキングデバイスの遠位先端を越え、前記コイル状ドッキングデバイスの近位先端を越えて延び、
前記低摩擦カバー層は、その遠位端の所の丸い先端まで先細りする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記カバー層の少なくとも一部を囲みかつ前記少なくとも一部に沿って延びる第2のカバー層を備える摩擦強化要素をさらに備え、前記第2のカバー層は、摩擦係数が少なくとも1である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2のカバー層は編み材料である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
中央巻き直径を画定する少なくとも1つの中央巻きと、
前記中央巻き直径よりも大きい直径を画定する、前記少なくとも1つの中央巻きから延びる下部巻きと、
前記少なくとも1つの中央巻きに接続された上部巻きであって、第1の軸に沿った第1の直径と第2の軸に沿った第2の直径とを有するように形作られた上部巻きと、
を備え、
前記第1の軸の直径は、前記中央巻き直径よりも大きく、前記第2の軸の直径は、前記中央巻き直径よりも大きく、前記下部巻き直径よりも小さい、請求項から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記コイル状ドッキングデバイスは、
近位端と遠位端とを有する中空チューブと、
前記中空チューブの各部を貫通する複数の切り込みと、
長さと、近位端と、遠位端とを有するワイヤと、
を備え、
前記ワイヤの前記遠位端は、前記中空チューブの遠位端に固定され、前記ワイヤの前記近位端は、前記中空チューブの近位端に固定され、
前記ワイヤの前記長さは、前記中空チューブを通って延び、前記中空チューブに半径方向内側への張力を加える、請求項から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記切り込みは、前記中空チューブに歯および溝を形成する縦方向切り込みと横方向切り込みの両方を組み込んだパターンおよび形状を有する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記コイル状ドッキングデバイスは、コアを含み、前記コアの遠位端は、矩形断面と遠位巻リング状先端とを有する、請求項から18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記コイル状ドッキングデバイスは、コアを含み、前記コアの少なくとも1つの端部はボール状先端を有する、請求項から18のいずれか一項に記載のデバイス。
【外国語明細書】