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特開2023-107836オリビン型化合物:それらの調製のための方法、およびナトリウムイオン電池のためのカソード材料中での使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107836
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】オリビン型化合物:それらの調製のための方法、およびナトリウムイオン電池のためのカソード材料中での使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20230727BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230727BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20230727BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230727BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01M4/58
H01M10/054
H01M4/136
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091767
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2021083973の分割
【原出願日】2016-12-20
(31)【優先権主張番号】62/270,317
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(71)【出願人】
【識別番号】518219631
【氏名又は名称】セイセ エネルヒグネ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モンセ ガルセラン メストレス
(72)【発明者】
【氏名】モンセ カサス-カバナス
(72)【発明者】
【氏名】アブデルバスト ゲルフィ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】テオフィロ ロホ
(72)【発明者】
【氏名】カリム ザグヒブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア パオレラ
(57)【要約】
【課題】オリビン型化合物、それらの調製、ならびにナトリウムイオン電池のためのカソード材料中での使用を提供すること。
【解決手段】
本開示は、オリビン型化合物、それらの調製、ならびにナトリウムイオン電池のためのカソード材料中での使用を提供するところのものである。本発明は、全体として、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料に関する。より具体的には、本発明は、オリビン型化合物、それらの調製およびナトリウムイオン電池のためのカソード材料中での使用に関する。本発明のオリビン型化合物は水熱法を実施して直接合成によって得られる。
【選択図】 図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料に関する。より具体的には、本発明は、オリビン型化合物、それらの調製およびナトリウムイオン電池のためのカソード材料中での使用に関する。本発明のオリビン型化合物は水熱法を実施して直接合成によって得られる。
【背景技術】
【0002】
過去20年の間に、電気エネルギー貯蔵(EES)システムについての需要は、優先的に電池の形態で、携帯用途および静的用途について増加している[1]。電気として回復するためにエネルギーを保管する最も魅力的な経路は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することである。電池は貯蔵された化学エネルギーを提供し、高変換効率でそれを電気エネルギーとしてもたらす能力を備える。現在、リチウムイオン(Liイオン)技術が携帯用途に最も使用され、それは自動車産業へ広がっている[2、3]。
【0003】
現時点で、商業的に入手可能なLiイオン電池のための最も重要なカソード材料は、3.5~4V(Liに対して)のLiCoO(層状)、LiMn(スピネル)、LiFePO(オリビン)およびLiMn1/3Li1/3Co1/3(層状)であり、それらはそれぞれ150、120、155および160mAh/gの容量をもたらす[4、5、6]。トリフィライト(オリビン)リチウム鉄リン酸塩およびリチウムマンガンリン酸塩(LiFePO(LFP)およびLiMnPO(LMnP))は、Liイオン電池のための好適な材料として同定されおり[7、8];特に、LFPは安全な電位窓において最高容量(約170mAh/g)をもたらすので、現在商業的に成功している[9]。LFPはいくつかの特色(低費用、非毒性、高い熱安定性等)を示し、それらは、大スケールの適用(ハイブリッド電気自動車(HEV)等)のための決定要素である[10]。
【0004】
しかしながら、将来の利用可能性およびリチウムの価格から、研究コミュニティーは好適な代替物を見出した[11、12]。リチウムとは対照的に、ナトリウムは地球上で最も多量にある元素の1つであり、その供給源は実質的には無制限である(例えば海洋中)。さらに、ナトリウムは、リチウムイオンの次の、2番目に軽いアルカリ金属である。元素存在度に基づいて、ナトリウムイオン電池(NIB)は、リチウムイオン電池(LIB)の理想的な代替物である。さらに、ナトリウム技術は、Liイオンと同じイオンインターカレーションの基本プロセスに基づく[13、14、15、16、17]。その酸化還元電位は非常に好適であり(標準水素電極に対してEo(Na+/Na)=-2.71V)、それはリチウムの酸化還元電位のわずか0.3V上であり、小さなエネルギーペナルティのみを導く。これらの所見に基づいて、再充電可能なナトリウムイオン電池は電気化学的エネルギー貯蔵(EES)用途に有望なシステムである。
【0005】
ナトリウムイオンがリチウムイオンの代わりに置き換えられるという点を除いて、ナトリウムイオン(Naイオン)電池、構造、構成要素、および蓄電メカニズムは、Liイオン電池に類似する[15]。基本的に、ナトリウムイオン電池は、2つのナトリウム挿入材料(1つの陽極および1つの陰極)によって構成され、それらはイオン伝導体として電解質中に浸漬される。電池の最終的なパフォーマンスは選択された構成要素に依存する。ナトリウムイオン電池の最初の研究は1980年に報告され、そのとき、Newmanらが室温でTiS中への高度に可逆的な電気化学的ナトリウム挿入を示した[18]。Naイオン電池のための好適な材料の多くは、それらのリチウムカウンターパートに類似し
、それらは、リチウムイオン電池のために過去20年間徹底的に研究されてきた(層状遷移金属酸化物、オリビン、およびNASICONフレームワーク等)。さらに、Naイオン電池についての研究は、新しいポリアニオン性フレームワーク(フルオロリン酸塩、ピロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、硫酸塩、およびニトリドリン酸塩等)に加えて、層状酸化物およびポリアニオン構造に対する代替のカソード材料としてのプルシアンブルー類似体を調査している。図1は、Naイオン電池について報告された材料に関する容量に対する電圧を示す。最も高い理論容量の1つをもたらす一例はオリビンNaFePO(154mAh/g)であり、それは同様に低費用および環境適合性の材料である。この理由で、ナトリウムホスホ-オリビンを利用するために、それらの特色およびそれらのLiカウンターパート(LiFePO)の先行研究について、電極材料としてのナトリウムホスホ-オリビンの能力を分析することは重要である[19]。
【0006】
LiFePO(LFP)とは異なり、NaFePO(NFP)は2つの異なる構造;オリビンおよびマリサイトで存在でき[20、21]、その両方は空間群としてPnmaを有する斜方晶系で結晶化する。両方の構造は、リン酸基から構成される類似のフレームワークを示す。差異は、NaイオンおよびFe2+イオンによる2つの八面体サイトの占有に由来する。オリビン構造において、NaイオンおよびFe2+イオンはそれぞれM1およびM2の位置を占有する(図2A)が、マリサイト構造において、占有は反対の部位に対応する(図2B)。それらの両方は、歪んだPO四面体および歪んだFeO八面体でできている。オリビン構造において、FeO八面体は、bc平面に平行な、頂点が共有された二次元層を形成し、それらはPO四面体によって連結され、b方向に沿ったNa拡散のための一次元チャンネルをもたらし、これらのことによって、カソード材料に好適になる。対照的に、マリサイト構造において、辺を共有するFeO八面体はb方向に沿った鎖を形成し、それらはPO四面体によって連結され、三次元結晶構造を築く。NaおよびFe八面体の連結性はNaイオン拡散チャンネルをブロックし、Naイオンの挿入および脱離を限定すると考えられた。
【0007】
オリビンNaFePOは、マリサイト構造のNaFePOに対し準安定であり、それは長い間電気化学的に不活性であるとみなされていた[19、22]。ごく最近に初めて、Kimらは、マリサイトNaFePOが再充電可能なNa電池のための優れたカソード材料として機能できることを示した[23]。彼らは、Naイオンが同時転移によりナノサイズのマリサイトNaFePOから非晶性FePOへと挿入および脱挿入され得ることを報告した。しかしながら、第1の脱ナトリウム化のために達成される高電圧は、電解質安定性に起因して将来の商業的応用に関して不都合であり得る。
【0008】
オリビンNaFePOは、LiFePO(リチウムイオン電池のために最も市販化された好適な材料の1つ)の類似体材料である(上で論じられるように)。それにもかかわらず、電気化学的に活性のあるオリビンNaFePOの直接合成を達成することは大きな難題である。従来の方法(水熱経路または固相経路等)を使用するNaFePOの合成は、熱力学的生成物マリサイトを導く[24、25]。現在、LiFePOからの化学的または電気化学的な陽イオン交換は、オリビン相を備えた電気化学的に活性のあるNaFePOを得るための最も有効な手法である[21、26、27]。しかしながら、オリビン構造は、他の間接法(低温のための前駆体ベースの方法[28]、トポタクティク反応[29]および鋳型法経由の中空非晶性NaFePO[30]等)を使用しても得ることができる。
ナトリウムイオン電池のためのカソード材料における使用のための新規オリビン型化合物が必要とされている。さらに、かかる化合物を調製するための、より効率的で費用効率の高い方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R. A. Huggins. Advanced Batteries: Materials Science Aspects. (Springer, 2009).
【非特許文献2】J. M. Tarascon and M. Armand, Nature 2001, 414, 359.
【非特許文献3】M. Armand and J. M. Tarascon, Nature 2008, 451, 652.
【非特許文献4】M. S. Whittingham, Chem. Rev. 2004, 104, 4271.
【非特許文献5】J. B. Goodenough, J. Power Sources 2007, 174, 996.
【非特許文献6】J. W. Fergus, J. Power Sources 2010, 195, 939.
【非特許文献7】A. Padhi, K. S. Nanjuindaswamy and J. B. Goodenough, J. Electrochem. Soc. 1997, 144, 1188.
【非特許文献8】B. L. Ellis, K. T. Lee and L. F. Nazar, Chem. Mater. 2010, 22, 691.
【非特許文献9】H. Hyand, S. C. Yin and L. F. Nazar, Electrochem. Solid State Lett. 2001, A, A170-A171.
【非特許文献10】K. Zaghib, A. Guerfi, P. Hovington, A. Vijh, M. Trudeau, A. Mauger, J.B. Goodenough and C. M. Julien, Journal of Power Sources 2013, 232, 357-369.
【非特許文献11】J.-M. Tarascon, Nat. Chem. 2010, 2, 510.
【非特許文献12】C. Wadia, P. Albertus and V. J. Srinivasan, Power Sources 2011, 196,1593.
【非特許文献13】V. Palomares, P. Serras, I. Villaluenga, K. B. Hueso, J. Carretero-Gonzalez and T. Rojo, Energy Environ. Sci. 2012, 5, 5884.
【非特許文献14】M. D. Slater, D. Kim, E. Lee and C. S. Johnson, Adv. Funct. Mater. 2013, 23, 947.
【非特許文献15】S. Komaba, W. Murata, T. Ishikawa, N. Yabuuchi, T. Ozeki, T. Nakayama, A. Ogata, K. Gotoh and K. Fujiwara, Adv. Funct. Mater. 2011, 21, 3859.
【非特許文献16】V. Palomares, M. Casas-Cabanas, E. Castillo-Martinez, M. H. Han and T. Rojo, Energy Environ. Sci. 2013, 6, 2312.
【非特許文献17】S. W. Kim, D. H. Seo, X. H. Ma, G. Ceder and K. Kang, Adv. Energy Mater. 2012, 2, 710.
【非特許文献18】G. H. Newman and L. P. Klemann, J. Electrochem. Soc. 1980, 197, 2097.
【非特許文献19】Shyue Ping Ong, Vincent L. Chevrier, Geoffroy Hautier, Anubhav Jain, Charles Moore, Sangtae Kim, Xiaohua Ma and Gerbrand Ceder, Energy Environ. Sci. 2011, 4, 3680-3688.
【非特許文献20】Y. Le Page and G. Donnay, Can. Miner. 1977, 15, 518-521.
【非特許文献21】P. Moreau, D. Guyomard, J. Gaubicher and F. Boucher, Chemistry of Materials 2010, 22, 4126-4128.
【非特許文献22】A. Sun, F. R. Beck, D. Haynes, J. A. Poston, S. R. Narayanan, P. N. Kumta and A. Manivannan, Mater. Sci. Eng., B 2012, 177, 1729-1733.
【非特許文献23】J. Kim, D.-H. Seo, H. Kim, I. Park, J.-K. Yoo, S.-K. Jung, Y.-U. Park, W. A. Goddard III and K. Kang, Energy Environ. Sci. 2015, 8, 540-545.
【非特許文献24】K. Zaghib, J. Trottier, P. Hovington, F. Brochu, A. Guerfi, A. Mauger, C.M. Julien, J. Power Sources 2011, 196, 9612-9617.
【非特許文献25】Pier Paolo Prosini Cinzia Cento a, Amedeo Masci and Maria Carewska, Solid State Ionics 2014, 263, 1-8.
【非特許文献26】M. Casas-Cabanas, V. V. Roddatis, D. Saurel, P. Kubiak, J. Carretero-Gonzalez, V. Palomares, P. Serras and T. Rojo, J. Mater. Chem. 2012, 22(34), 17421.
【非特許文献27】Montserrat Galceran, Damien Saurel, Begona Acebedo, Vladimir V. Roddatis, Egoitz Martin, Teofilo Rojo and Montse Casas-Cabanas, Phys. Chem. Chem. Phys. 2014, 16, 8837-8842.
【非特許文献28】Violeta Koleva, Tanya Boyadzhieva, Ekaterina Zhecheva, Diana Nihtianova, Svetlana Simova, Georgi Tyuliev and Radostina Stoyanova, CrystEngComm, 2013, 15, 9080-9089.
【非特許文献29】K. T. Lee, T. N. Ramesh, F. Nan, G. Botton and L. F. Nazar, Chem. Mater., 2011, 23, 3593-3600.
【非特許文献30】Chun Li, Xue Miao, Wei Chu, Ping Wu and Dong Ge Tong, J. Mater. Chem. A 2015, 00, 1-6.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料における使用のための新規オリビン型化合物をデザインし調製した。本発明の化合物はナトリウムホスホ-オリビンである。それらは水熱法を実施する直接合成によって調製される。本発明の調製方法は効率的であり且つ費用効率が高い。
【0011】
本発明は、したがって、その態様に従って以下のものを提供する。
(1)0<h≦1、0≦i≦1、0≦j≦1および0≦k≦1であり、かつM、M’およびM”が各々独立して金属である、一般式NaM’M”POの化合物。
(2)0≦x<1であり、好ましくはx≒0またはx≒0.1であり;かつMおよびM’が各々独立して金属である、一般式Na1-xM’POの化合物。
(3)0≦x<1および0≦y≦1であり、好ましくはx≒0またはx≒0.1および0≦y≦0.25であり;かつM、M’およびM”が各々独立して金属である、一般式Na1-xM’1-yM”POの化合物。
(4)0≦x≦1であり、かつMおよびM’が各々独立して金属である、一般式NaM1-xM’POの化合物。
(5)0≦x<1および0≦y<1およびx+y<1であり;かつM、M’およびM”が各々独立して金属である、一般式NaM1-x-yM’M”POの化合物。
(6)前記金属が、Li、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択される、上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の化合物。
(7)前記金属が、Li、Mg、Ca、MnおよびFeからなる群から選択される、上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の化合物。
(8)前記金属が、Li、MnおよびFeからなる群から選択される、上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の化合物。
(9)前記金属が、LiおよびMnからなる群から選択される、上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の化合物。
(10)ナトリウムホスホ-オリビン化合物である、上記の(1)~(9)のいずれか1つに記載の化合物。
(11)0≦x<1であり;好ましくはx≒0またはx≒0.1である、一般式Na1-xLiMnPOの化合物。
(12)式Na0.966Li0.34MnPOを有する化合物。
(13)0≦x<1および0≦y≦1であり、好ましくはx≒0および0≦y≦0.25である、一般式Na1-xLiFe1-yMnPOまたはNa1-xLiFeMn1-yPOの化合物。
(14)式Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POまたはNa0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POを有する化合物。
(15)0≦x≦1である、一般式NaMn1-xMgPOの化合物。
(16)0≦x≦1である、一般式Na1-xMgMnPOの化合物。
(17)0≦x<1および0≦y<1およびx+y<1である、一般式NaFe1-x-yMnLiPOの化合物。
(18)ナトリウムホスホ-オリビン化合物を調製する方法であって、前記方法が水熱法を含む、方法。
(19)一般式NaM’M”POの化合物を調製する方法であって、
0<h≦1、0≦i≦1、0≦j≦1および0≦k≦1であり、かつ、M、M’およびM”が各々独立して金属であり、前記方法が、
(a)M含有化合物、M’含有化合物およびM”含有化合物を含む水性混合物を調製してM-M’-M”混合物を得るステップと;
(b)前記混合物M-M’-M”混合物へP-含有化合物を添加してM-M’-M”-P混合物を得るステップと;
(c)前記M-M’-M”-P混合物へNa含有化合物を添加してNa-M-M’-M”-P混合物を得るステップと;
(d)オートクレーブの中へ前記Na-M-M’-M”-P混合物を導入して結晶の成長を遂行し、一般式NaM’M”POの化合物を得るステップと
を含む、方法。
(20)
(e)前記結晶を迅速に冷却するステップ;および
(f)前記冷却された結晶を乾燥するステップ
をさらに含む、上述の(19)の方法。
(21)ステップ(f)が、約50~85℃、好ましくは60~75℃の温度で;約6~12時間、好ましくは約8~10時間の期間で遂行される、上記の(20)の方法。
(22)ステップ(a)が、前記M含有化合物、前記M’含有化合物および前記M”含有化合物の別個の水溶液を調製すること、前記3つの溶液のうちの2つを最初に混合することおよび次いで第3の溶液を添加して前記M-M’-M”混合物を得ることを含む、上記の(19)の方法。
(23)ステップ(a)~(c)の各々が撹拌下で遂行される、上記の(19)の方法。
(24)ステップ(b)が、前記Na含有化合物の水溶液を調製することと、前記溶液を前記M-M’-M”-P混合物へ添加することとを含む、上記の(19)の方法。
(25)ステップ(d)がO、Nまたはその組み合わせの雰囲気下で遂行される、上記の(19)の方法。
(26)ステップ(d)が、約150~250℃、好ましくは約200℃の温度で;約2~6時間、好ましくは約4時間の期間で;約1.5~2.5MPa、好ましくは約2MPaの圧力下で遂行される、上記の(19)の方法。
(27)使用される水がN下でバブリングされた脱イオン水である、上記の(19)の方法。
(28)前記M含有化合物、前記M’含有化合物および前記M”含有化合物が各々独立して、MnSO、LiOH、FeSOおよびMgSOからなる群から選択され;好ましくは、前記化合物が各々独立して含水化合物である、上記の(19)の方法。
(29)前記P含有化合物がHPOである、上記の(19)の方法。
(30)前記Na含有化合物がNaOHである、上記の(19)の方法。
(31)前記Na含有化合物が過剰量で使用される、上記の(19)の方法。
(32)前記一般式NaM’M”PO中で、h=1および0≦i≦0.2および0≦j≦0.8および0.85≦i+j+k≦1である、上記の(19)の方法。
(33)上記の(1)~(18)のいずれか1つにおいて定義されるような化合物を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(34)上記の(1)~(18)のいずれか1つにおいて定義されるような化合物および炭素材料を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(35)上記の(19)~(32)のいずれか1つにおいて定義されるような方法によって調製された化合物を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(36)上記の(19)~(32)のいずれか1つにおいて定義されるような方法によって調製された化合物、および炭素材料を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(37)上記の(33)~(36)のいずれか1つにおいて定義されるようなカソード材料を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード。
(38)上記の(37)において定義されるようなカソードを含む、ナトリウムイオン電池。
【0012】
本発明の他の目的、利点および特色は、添付の図面を参照して単なる例として与えられる、その具体的な実施形態の下記非限定的な記載の読了に際してより明らかになるだろう。
【0013】
本特許または出願ファイルは、カラーで作り上げられた少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面(複数可)を伴う本特許公報または本特許出願公報のコピーは、要請および必要な料金の支払いに応じて庁によって提供されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ナトリウムイオン電池のためのインターカレーション材料の容量に対する電圧の概略図のイラストであり、そこで理論容量および達成された容量はそれぞれ青色棒および緑色楕円形により示される。
図2A】オリビンNaFePOの概略図。
図2B】マリサイトNaFePOの概略図。
図3】Yobs(赤色線)、Ycalc(黒色線)、Yobs-Ycalc(青色線)およびBragg位置(垂直の青色線)によるNa0.9Li0.1MnPOのXRDのRietveld精密化。
図4A】Na0.9Li0.1MnPOのSEM画像。
図4B】Na0.9Li0.1MnPOのSEM画像。
図5】Na0.966Li0.034MnPOの中性子粉末回折のRietveld精密化。Yobs(赤色線)、Ycalc(黒色線)、Yobs-Ycalc(青色線)およびBragg位置(垂直の青色線)、そこでλ=1.544402である。
図6A図6Aおよび図6Bは、[010]および[001]の方向に沿ったNa0.966Li0.034POについての結晶構造のスキームであり、そこでナトリウムおよびリチウムは同じ位置(青色-橙色の球)に所在する。
図6B図6Aおよび図6Bは、[010]および[001]の方向に沿ったNa0.966Li0.034POについての結晶構造のスキームであり、そこでナトリウムおよびリチウムは同じ位置(青色-橙色の球)に所在する。
図7A】Na0.966Li0.034MnPOのSEM画像。
図7B】Na0.966Li0.034MnPOのSEM画像。
図8A】Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POのXRDのRietveld精密化。マリサイトに対応するピークを示す。
図8B】Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POのXRDのRietveld精密化。Yobs(赤色線)、Ycalc(黒色線)、Yobs-Ycalc(青色線)およびBragg位置(垂直青色線)による、オリビン構造およびマリサイト構造の両方の精密化を示す。
図9A】Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POのSEM画像。
図9B】Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POのSEM画像。
図10】Na0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POのRietveld精密化。
図11A図11Aおよび図11Bは、[010]および[001]の方向に沿ったNa0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POについての結晶構造のスキームであり、そこでナトリウムおよびリチウムは同じ位置(青色-橙色の球)に所在し、MnおよびFeは同じ位置(緑色-赤色)を共有する。
図11B図11Aおよび図11Bは、[010]および[001]の方向に沿ったNa0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POについての結晶構造のスキームであり、そこでナトリウムおよびリチウムは同じ位置(青色-橙色の球)に所在し、MnおよびFeは同じ位置(緑色-赤色)を共有する。
図12】Na0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POのSEM画像。
図13】NaMnPOオリビン相のLebailプロファイルマッチング。
図14】NaMnPOマリサイト相のRietveld精密化マッチング。
図15】Na1-xMgMnPOのXRD回折パターンマッチング。
図16】Yobs(赤色線)、Ycalc(黒色線)、Yobs-Ycalc(青色線)およびBragg位置(垂直青色線マリサイトおよび垂直赤色線オリビン)による、Na1-xLiFeMn1-yPO(x≒0.1、y≒0.5)についてのLeBailプロファイルマッチング。
図17】Yobs(赤色線)、Ycalc(黒色線)、Yobs-Ycalc(青色線)およびBragg位置(垂直青色線マリサイトおよび垂直赤色線オリビン)による、Na1-xLiFeMn1-yPO(x≒0.1、y≒0.75)についてのLeBailプロファイルマッチング。
図18】Yobs(赤色線)、Ycalc(黒色線)、Yobs-Ycalc(青色線)およびBragg位置(垂直青色線)によるマリサイトNa1-xLiFePOについての中性子回折のRietveld精密化であり、そこでλ=1.544402である。
図19】Na1-xLiFePOのサンプルのSEM画像。
図20】O雰囲気中で水熱法後に得られたNaFe0.5Mn0.5POおよびNaFe0.75Mn0.25POのX線回折パターン。
図21】ボールミル粉砕後の混合物活性材料:炭素(80:20)のSEM画像。
図22A】Na1-xLiMnPOの定電流の充電および放電の曲線。
図22B】Na1-xLiMnPOの容量保持(実施例1から)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、カソード材料中でナトリウムイオン電池のために使用され得る新規オリビン型化合物に関する。本発明の化合物はナトリウムホスホ-オリビンである。それらは水熱法を実施する直接合成によって調製される。本発明は、以下に略述される非限定例によってさらに詳細に例証される。
【実施例0016】
全体として、オリビンNa1-xLiFe1-yMnPOの直接合成は水熱法によって実行された。水酸化ナトリウム(NaOH、Sigma Aldrich、97%)、硫酸鉄(FeSO・7HO、Sigma Aldrich、99%)、硫酸マンガン(MnSO・HO、Sigma Aldrich、99%)、水酸化リチウム(LiOH・HO、Sigma Aldrich、98%)およびオルトリン酸(HPO、Alfa Aesar、85%)は、以下の反応:
3・NaOH+(1-×)・FeSO・7HO+x・MnSO・HO+y・LiOH・HO+HPO→Na1-xLiFe1-yMnPO
に従って前駆体として使用された。
【0017】
以下の表1は、遂行されたいくつかの詳細な実施例を略述する。
【表1】
【0018】
実施例1:Na1-xLiMnPOの調製(x≒0.1、表1を参照)
過剰のNaOH(0.36モル)を100mLの脱イオン水中に溶解した。0.108モルのMnSO・HOおよび0.012モルのLiOH・HOを次いで、それぞれ90mLおよび10mLの脱イオン水中に溶解した。LiOH溶液をMnSO溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。0.12モルのHPO溶液をメスシリンダー中に添加し、これを次いで脱イオン水で100mLまで満たした。この最後の溶液をMn-Liへ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をMn-Li-Pへ添加し、これも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積300mL)のpHは10であった。ガラスライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。オリビン構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ(P≒2MPa)中で200℃で4時間成長させた。
【0019】
脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングしたことが注目されるべきである。溶解、混合およびオートクレーブシーリングもN雰囲気下のグローブボックス中で実行した。得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。続いて、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0020】
X線回折測定を構造の特徴評価のために使用した。図3は得られた化合物についてのR
ietveld精密化を示し、そこで不純物(マリサイト相または未知のもの)は強調表示される()。精密化後に、得られた単位格子パラメーターは、a=10.5391(6)Å、b=6.3307(4)Åおよびc=4.9906(3)Åであり、それらはPnma空間群でオリビンNaMnPOについて報告されたものよりもわずかに低い(以下の表2を参照)。このわずかな差は構造中の少量のLiに起因する可能性がある。電子顕微鏡検査法を使用して、均一性の程度および粒子サイズを同様に研究した。図4Aおよび図4Bから理解できるように、2つの異なる形態を観察することができ、そのうちの1つはオリビン鉄マンガンリン酸塩(大きな結晶)に起因し、もう一方は不純物(小さな結晶)に起因する。最終生成物の組成の研究をEDAX分析によって実行した。これらの測定は、Na:Mn:Pについての比が1:1:1に近かったことを実証した(LiイオンはEDAX測定によって検出できない、以下の表3)。
【0021】
この例において、オリビンNa1-xLiMnPOの直接合成が実証され、マリサイト相に起因するいくつかの未知不純物および不純物の存在をともなった。
【表2】

【表3】
【0022】
実施例2:Na1-xLiMnPOの調製(x≒0.1、表1を参照)
この事例において、実施例1に対しより低量のMnSO・HOを使用した(表1を参照)。過剰のNaOH(0.36モル)を100mLの脱イオン水中に溶解した。次いで0.089モルのMnSO・HOおよび0.012モルのLiOH・HOを、それぞれ90mLおよび10mLの脱イオン水中に溶解した。LiOH溶液をMnSO溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。0.12モルのHPOの溶液をメスシリンダー中に添加し、これを次いで脱イオン水で100mLまで満たした。この最後の溶液をMn-Li溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をMn-Li-P溶液へ添加し、これも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積300mL)のpHは10であった。ガラスライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。オリビン構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ(P≒2MPa)中で200℃で4時間成長させた。
【0023】
脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングしたこと、ならび溶解、混合およびオートクレーブシーリングをN雰囲気下のグローブボックス中で実行したことが注目されるべきである。しかしながら、試験はバブリングした水を使用せず、空気下でオートクレーブをシールして行い、それはオリビン相ももたらした。
【0024】
その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0025】
この合成において、高純度が達成された。この理由で、構造の特徴評価は中性子粉末回折を使用して実行された。中性子回折の使用の目的はリチウムイオンの占有率および部位の位置を精密化することであった。Rietveld精密化のために、オリビンNaMnPO構造を開始構造モデルとして使用した。図5は、化合物が特徴的な斜方晶系オリビン相(Pnma)で結晶化したことを明らかにする。決定された単位格子パラメーターは、a=10.555(1)Å、b=6.3383(7)Åおよびc=4.9965(7)Åであった(表2)。中性子回折のおかげで、占有率を精密化でき、ならびにリチウムがどの部位に所在したかおよび化合物の最終的な組成も決定できた。以下の表4は、構造中の各々の原子についての原子位置および占有率を要約する。Rietveld精密化において得られた結果を考慮し、Na0.966Li0.034MnPOの最終的な組成でナトリウム部位中にLiが所在することが見出された。[010]および[001]の方向に沿った最終的な結晶構造の多面体表示が、図6Aおよび図6B中で示される。
【表4】
【0026】
さらに、走査電子顕微鏡画像(図7Aおよび図7B)から高度の均一性を見ることができ、そこでは粒子が5μm~20μmの長さの菱面体の形状を有することを示す。
【0027】
この例において、オリビンNa0.966Li0.034MnPOの直接合成が実証された。加えて、MnSO・HOの非化学量論的な量の添加は、MnSO・HOの化学量論的な量の使用よりもより純粋な化合物を導く。最終的に、中性子回折は、リチウムイオンについての結晶構造中の占有率および部位の決定を可能にした。LiおよびNaは同じ結晶学的な位置に所在し、かつLiOH・HOは過剰に使用されることが確認される。しかしながら、アニティサイト(anitisite)の存在の可能性を除外できなかった。
【0028】
実施例3:Na1-xLiFeMn1-yPOの調製(x≒0.1、y≒0.22、表1を参照)
過剰のNaOH(0.36モル)を100mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.03モルのFeSO・7HO、0.78モルのMnSO・HO、および0.012モルのLiOH・HOを、それぞれ25mL、65mL、および10mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、FeSO溶液をMnSOへ添加し、均一溶液が得られる
まで撹拌した。次いで、LiOH溶液をFe-Mn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。0.12モルのHPO溶液をメスシリンダー中に添加し、それを脱イオン水で100mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Mn-Li溶液へ添加し、それを均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Mn-Li-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積300mL)のpHは10であった。ガラスライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。オリビン構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ(P≒2MPa)中で200℃で4時間成長させた。
【0029】
脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングしたことが注目されるべきである。加えて、溶解、混合およびオートクレーブシーリングをN雰囲気下のグローブボックス中で実行した。その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0030】
構造の特徴評価をX線回折を使用して実行した。Rietveld精密化は、化合物が斜方晶系オリビン相(Pnma)で結晶化するが、不純物としてのマリサイト相に対応するいくつかのピーク()があることを明らかにした(図8A)。第2のRietveld精密化をオリビン構造およびマリサイト構造の両方を使用して実行し、それにより、オリビン相についての単位格子パラメーターがa=10.516(1)Å、b=6.3060(7)Åおよびc=4.9795(7)Åであると決定された(図8Bおよび表2)。さらに、Rietveld精密化は相定量化を行うことを可能にし、それにより75%がオリビンにおよび25%がマリサイトに対応すると決定された。
【0031】
走査電子顕微鏡画像(scanning electronic image)は、2つの異なる形態学の存在
を示し、それらのうちの1つはオリビン化合物(矩形形状)に対応し、もう一方は不純物としてのマリサイトに対応する(図9Aおよび図9B)。さらに、EDAX測定は、Na:Fe:Mn:Pについての比が1:0.25:0.75:1に近いことを決定した。先の実施例中でのように、リチウムイオンはEDAX検出器によって検出できない。
【0032】
中性子回折を実行して、原子座標、原子占有率を決定でき、そしてリチウムの量ならびに、結晶構造中でのその部位を解明できた。不純物の存在に起因して、最終的な組成の決定のために安定的な精密化を得ることはいくつかの難題を提示した。それにもかかわらず、それを使用して、Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POの構造はオリビン相に対応することを確認した。
【0033】
この例において、オリビンNa0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POの直接合成が実証され、不純物としてのマリサイト相の存在をともなった。
【0034】
実施例4:Na1-xLiFeMn1-yPOの調製(x≒0.1、y≒0.25、表1を参照)
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。0.003モルのFeSO・7HO、0.0078モルのMnSO・HO、および0.0012モルのLiOH・HOを次いで、それぞれ2.5mL、6.5mL、および10mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、FeSO溶液をMnSOへ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。次いで、LiOH溶液をFe-Mn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。その後に、0.012モルのHPO溶液をメスシリンダー中に添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Mn-Li溶液へ添加し、それを均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Mn-Li-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積30mL)のpHは10以上であった。オリビン構造
で結晶化した粉末を、オートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。オリビンからマリサイトへの任意の転移を避けるために、オートクレーブの迅速な冷却(クエンチング)を実行した。
【0035】
その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。バブリングされた脱イオン水またはバブリングされなかった脱イオン水の使用は最終的な生成物に影響しないことが注目されるべきである。両方の事例において、オリビン相が得られた。さらにこの例において、溶解、混合およびオートクレーブシーリングをO雰囲気下で実行した。
【0036】
非O雰囲気下に(グローブボックス中のN下の1時間を超えるパージ)維持された場合に、反応が成功しないことが観察された。Oはオリビン相を得るのに必要であるように思われる。加えて、オリビンからマリサイトへの相転移を避けるために迅速な冷却(クエンチング)を使用した。
【0037】
この方法論を実施例1および実施例2においても用い、それは、両方の事例において、純粋なオリビン相をもたらす(本開示中で示さず)。
【0038】
構造の特徴評価をX線回折を使用して実行し、Rietveld精密化により化合物が斜方晶系オリビン相(Pnma)で結晶化したことを確認した。冷却プロセス中のクエンチングの使用は、マリサイト不純物の存在を避けることを支援する。しかしながら、未知の不純物に起因する小さなピーク()がある(図10)。Rietveld精密化において、Na:Fe:Mn:Pの占有率はICP測定に従って定められる(1:0.25:0.75:1);単位格子パラメーターはa=10.5249(9)Å、b=6.3067(5)Åおよびc=4.9745(5)Åであると決定された(表2)。[010]および[001]の方向に沿った最終的な結晶構造の多面体表示は、図11Aおよび図11B中で示される。走査電子顕微鏡画像(scanning electronic image)は、1.5~2
μmの幅および6~12μmの長さを備えた矩形形状の単一粒子の存在を示す(図12)。
【0039】
この例において、オリビンNa0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POの直接合成が実証され、迅速な冷却(クエンチング)のおかげでマリサイト相は不純物として存在しなかった。この反応はO中で実行され、バブリングされなかった脱イオン水を使用していた。
【0040】
実施例5aおよび5b:NaMnPOの調製(x≒0.1、表1を参照)
実施例5a:O雰囲気下での反応
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.012モルのMnSO・HOを10mLの脱イオン水中に溶解した。0.012モルのHPOの溶液をメスシリンダー中に添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をMn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をMn-P溶液へ添加し、これも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した(合計体積30mL)。テフロン(登録商標)ライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをO雰囲気中でシールした。オリビン構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。
【0041】
本発明のこの実施形態において、脱イオン水を事前にバブリングしなかった。さらに、溶解、混合、およびオートクレーブシーリングを空気雰囲気中で実行した。その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0042】
X線回折を相同定および構造の特徴評価のために使用した。図13はLeBailプロファイルマッチングに対応し、それは化合物が特徴的な斜方晶系オリビン相(Pnma)で結晶化したことを明らかにする。単位格子パラメーターはa=10.5446(5)Å、b=6.3294(3)Åおよびc=4.9920(2)Åであると決定された(表2)。この事例において、不純物はマリサイト相に起因しない。
【0043】
実施例5b:N雰囲気下での反応
過剰のNaOH(0.36モル)を100mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.108モルのMnSO・HOを100mL中に溶解した。次いで、0.12モルのHPO溶液をメスシリンダー中に添加し、それを次いで脱イオン水で100mLまで満たした。この最後の溶液をMn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をMn-Pへ添加し、これも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した(合計体積300mL)。ガラスライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。マリサイト構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ(P≒2MPa)中で200℃で4時間成長させた。
【0044】
本発明のこの実施形態において、脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングした。加えて、溶解、混合、およびオートクレーブシーリングをN雰囲気下のグローブボックス中で実行した。その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0045】
X線回折を相同定および構造の特徴評価のために使用した。図14はRietveldプロファイルマッチングに対応し、それは化合物が特徴的な斜方晶系マリサイト相(Pnma)で結晶化したことを明らかにする。しかしながら、不純物としてのオリビン相に対応するいくつかのピーク()がある。決定された単位格子パラメーターは、マリサイト相についてa=9.0990(4)Å、b=6.9010(2)Åおよびc=5.1176(2)Åであり、オリビン相についてa=10.540(1)Å、b=6.3314(6)Åおよびc=4.9926(6)Åであった。さらに、Rietveld精密化は相定量化を可能にし、90%がマリサイトに、そして10%がオリビンに対応することが決定された。
【0046】
反応が空気雰囲気下で保たれるならば、オリビン相が得られるが、マリサイト相はN下でバブリングされた脱イオン水を使用して得られる。
【0047】
実施例6:NaMn1-xMgPOの調製(x≒0.1、表1を参照)
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。0.0108モルのMnSO・HOおよび0.0012モルのMgSOを次いで、それぞれ9mLおよび1mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、MgSO溶液をMnSOへ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。0.012モルのHPO溶液をメスシリンダーへ続いて添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をMn-Mg溶液へ添加し、それを均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をMn-Mg-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積30mL)のpHは10を超えた。オリビン構造で結晶化した粉末を、オートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。オリビンからマリサイトへの任意の転移を避けるために、オートクレーブの迅速な冷却(クエンチング)を実行した。
【0048】
図15は、水熱法によって得られた化合物のX線回折パターンを示す。このパターンを実施例2(Na1-xLiMnPO)において報告されたものと比較した。XRDは、化合物が特徴的な斜方晶系オリビン相(Pnma)で結晶化したことを明らかにする。
それにもかかわらず、未知の不純物に起因するいくつかのピーク()がある。単位格子パラメーターを決定するためにLebailプロファイルマッチングが進行中である。しかしながら、両方の組成物を比較した場合に、Na1-xMgMnPOのピークはより高い2θにシフトし、単位格子パラメーターの減少を導く。LiよりもMgの高いイオン半径を考慮して、より低い2θにシフトしたピークが予想された。
【0049】
この例において、方法はO雰囲気下で遂行された。
【0050】
実施例7:Na1-xLiFeMn1-yPOの調製(x≒0.1、y≒0.5、表1を参照)
【0051】
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.0054モルのFeSO・7HO、0.0054モルのMnSO・HO、および0.012モルのLiOH・HOを、それぞれ4.5mL、4.5mLおよび1mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、Mn溶液をFeSO溶液へ添加し混合した。次いで、LiOH溶液をFe-Mn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。その後に、0.012モルのHPOの溶液をメスシリンダー中に添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Mn-Li溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Mn-Li-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積30mL)のpHは10を超えた。テフロン(登録商標)ライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。マリサイト構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。
【0052】
本発明のこの実施形態において、脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングした。溶解、混合、およびオートクレーブシーリングをN雰囲気下のグローブボックス中で実行した。得られた溶液を次いで濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0053】
X線回折を構造の特徴評価および相同定のために使用した。図16は、水熱合成後に得られた化合物のXRD LeBailプロファイルマッチングに対応し、それは特徴的な斜方晶系マリサイト相で化合物が結晶化したことを明らかにする(垂直青色線)。しかしながら、不純物としてのオリビン相に対応するいくつかのピークがある(図16、垂直赤色線)。決定された単位格子パラメーターは、マリサイト相についてa=9.0563(5)Å、b=6.8781(5)Åおよびc=5.0861(3)Åであり、オリビン相についてa=10.522(2)Å、b=6.321(2)Åおよびc=4.9827(8)Åであった(推測された組成はNaFe0.25Mn0.75PO)。オリビン相の低量(5%以下)に起因して、相定量化は非常に難しく、十分に正確であり得ない。
【0054】
実施例8:Na1-xLiFeMn1-yPOの調製(x≒0.1、y≒0.75、表1を参照)
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。0.0078モルのFeSO・7HO、0.003モルのMnSO・HO、および0.012モルのLiOH・HOを次いで、それぞれ6.5mL、2.5mL、および1mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、Mn溶液をFeSO溶液へ添加し混合した。LiOH溶液をFe-Mn溶液へ次いで添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。その後に、0.012モルのHPOの溶液をメスシリンダー中に添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Mn-Li溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Mn-Li-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積30
mL)のpHは10を超えた。テフロン(登録商標)ライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。マリサイト構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。
【0055】
本発明のこの実施形態において、脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングした。加えて、溶解、混合、およびオートクレーブシーリングをN雰囲気下のグローブボックス中で実行した。その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)により洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0056】
X線回折を構造の特徴評価および相同定のために使用した。図17は、水熱合成後に得られた化合物のXRD LeBailプロファイルマッチングに対応し、それは特徴的な斜方晶系マリサイト相で化合物が結晶化したことを明らかにする(図17、垂直青色線)。しかしながら、不純物としてのオリビン相に対応するいくつかのピークがある(図17、垂直赤色線)。決定された単位格子パラメーターは、マリサイト相についてa=9.0267(5)Å、b=6.8692(5)Åおよびc=5.0678(3)Åであり、オリビン相についてa=10.518(1)Å、b=6.309(1)Åおよびc=4.9838(6)Åであった(推測された組成はNaFe0.25Mn0.75PO)。オリビン相の低量(5%以下)に起因して、相定量化はいくつかの難題を提示した。
【0057】
実施例9(比較):Na1-xLiFePOの調製(x≒0.1、表1を参照)
過剰のNaOH(0.36モル)を100mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.108モルのFeSO・7HOおよび0.012モルのLiOH・HOを、それぞれ90mLおよび10mLの脱イオン水中に溶解した。LiOH溶液をFeSO溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌下で混合した。0.12モルのHPOの溶液をメスシリンダー中に添加し、それを次いで脱イオン水で100mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Li溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Li-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積300mL)のpHは9~10であった。ガラスライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをN雰囲気下でシールした。マリサイト構造で結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ(P≒2MPa)中で200℃で4時間成長させた。
【0058】
この例において、脱イオン水を事前に4~5時間N下でバブリングした。加えて、溶解、混合、およびオートクレーブシーリングをN雰囲気下のグローブボックス中で実行した。その後に、得られた溶液を濾過し、生成物を水(3~4回)およびエタノール(1回)で洗浄した。次いで、それを60~75℃で一晩乾燥した。
【0059】
サンプルの高い純度のため、中性子回折を構造の特徴評価のために使用した。図18は、得られた化合物についてのRietveld精密化を示す。この事例において、化合物はマリサイトPnma構造で結晶化し、単位格子パラメーターとしてa=8.9953(9)Å、b=6.8610(7)Åおよびc=5.0455(5)Åを有し、それらはマリサイトNaFePOについて報告される値である[24]。異なる3つの構造モデル[(1)LiはNa部位に所在する、(2)LiはFe部位に所在する、(3)LiはNa部位およびFe部位の両方に所在する]をRietveld精密化において使用した。構造中のLiの低量に起因して、構造モデル間の識別はいくつかの難題を提示した。飛行時間型二次イオン質量分析をIREQ施設で実行し、それは、この構造中のLiの量が0.2%であったと示した。さらに、走査電子顕微鏡像は高度の均一性を示し、そこで粒子は凝集物を作る小板形状を有していた(図19)。
【0060】
中性子回折の良好なRietveld精密化にもかかわらず、構造中でのそのより低い
量に起因して、Li部位を決定することは難しい(先行する実施例でのようにNa部位にリチウムイオンが所在すると推測する)。
【0061】
この比較例において、マリサイトNa1-xLiFePOが代わりに得られたので、オリビンNa1-xLiFePOの直接合成は実証されなかった。
【0062】
実施例10aおよび10b(比較):NaFeMn1-yPOの調製(y≒0.5またはy≒0.75、表1を参照)
実施例10a:NaFe0.5Mn0.5PO
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.006モルのFeSO・7HO、0.006モルのMnSO・HOを、それぞれ5mLおよび5mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、Mn溶液をFeSO溶液へ添加し、それを均一溶液が得られるまで混合した。その後に、0.012モルのHPOの溶液をメスシリンダーへ添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Mn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Mn-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積30mL)のpHは10を超えた。テフロン(登録商標)ライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをO雰囲気下でシールした。結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。その後に、オートクレーブの迅速な冷却(クエンチング)を実行した。
【0063】
実施例10b:NaFe0.75Mn0.25PO
過剰のNaOH(0.036モル)を10mLの脱イオン水中に溶解した。次いで、0.009モルのFeSO・7HOおよび0.003モルのMnSO・HOを、それぞれ7.5mLおよび2.5mLの脱イオン水中に溶解した。最初に、Mn溶液をFeSO溶液へ添加し、それを均一溶液が得られるまで混合した。その後に、0.012モルのHPOの溶液をメスシリンダーへ添加し、それを次いで脱イオン水で10mLまで満たした。この最後の溶液をFe-Mn溶液へ添加し、均一溶液が得られるまで撹拌した。最終的に、NaOH溶液をFe-Mn-P溶液へ添加し、それも均一な濃厚溶液が得られるまで撹拌した。最終的な溶液(合計体積30mL)のpHは10を超えた。テフロン(登録商標)ライナーを最終的な溶液/混合物で満たし、オートクレーブをO雰囲気下でシールした。結晶化した粉末を、撹拌下にてオートクレーブ中で200℃で4時間成長させた。その後に、オートクレーブの迅速な冷却(クエンチング)を実行した。
【0064】
X線回折を構造の特徴評価および相同定のために使用した。図20は、化合物NaFe0.5Mn0.5PO(実施例10a、赤色パターン)およびNaFe0.75Mn0.25PO(実施例10b、緑色パターン)についてのX線回折パターンを示す。さらに、パターンを特徴的なマリサイトおよびオリビンのNaFePOデータベースと比較した。上記のように、この合成を使用して、Fe含有量が0.25を超える場合のLi非存在およびO雰囲気の効果を調査した。両方の化合物は特徴的なオリビン構造で結晶化しない。主として、NaFe0.75Mn0.25POはマリサイト相で結晶化するが、未知の不純物に起因するいくつかのピーク()がある。NaFe0.5Mn0.25PO(実施例10b、緑色パターン)はより複雑であるが、この化合物はマリサイト相でもオリビン相でも結晶化しない。
【0065】
この比較例は、非LiドーピングおよびO雰囲気の効果を調査した。オリビンNaFeMn1-xPO(x≒0.5およびx≒0.75)の直接合成は達成されなかった。むしろ、より多くの量のFeが恐らくマリサイト相を誘導するので、マリサイトNaFe0.75Mn0.5POが代わりに得られた。
【0066】
電気化学的試験
第1の試験:予備試験を、ボールミル粉砕を使用して80:20(活性材料:炭素)の比でDenkaカーボンと混合された活性材料倍率(実施例1)を使用して行った。ボールミル粉砕を使用して、調製された材料の粒子サイズを減少させ、混合物の良好な均一性も確実にした。図21はボールミル粉砕処理後のSEM画像を示し、サンプルの良好な均一性が観察できるが、小さな粒子(主として500nm未満)の凝集物の存在も観察できる。
【0067】
コイン型電池を、アノードとしてナトリウム金属、セパレーターとしてWatman GF/Dホウケイ酸ガラス繊維、および電解質として1MのNaPFエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート(EC:DMC)を使用して、ならびにMACCORバッテリー試験システムを使用して、アセンブルした。
【0068】
Na1-xLiMnPO(145mA・h/gの理論容量)を、C/20で定電流充電および放電曲線を使用して、リチウム金属およびナトリウム金属に対して試験した(図22Aおよび図22B)。材料は両方のイオンについて電気化学的活性があるが、両方の曲線は低容量を示し、それは理論容量から離れ、ならびに乏しいサイクル性および高い分極を示した。
【0069】
第2の試験:これらの新しいオリビン化合物による課題は、炭素コーティングプロセスのための方法論を見出すことである。オリビンからマリサイトへの相転移が起こり得るので、400℃を上回る温度は恐らく避けるべきである。複合物は、ボールミル粉砕を使用して、Na0.966Li0.034MnPO(実施例2)をC65と混合することによって調製され得る。次いで、混合物は400℃で3時間アルゴン下で熱処理され得る。得られた化合物は金属ナトリウムに対して試験され、第1の試験において得られた結果と比較され得る。
【0070】
特許請求の範囲は実施例において説明される好ましい実施形態によって限定されるべきでないが、全体として記載と整合性のある最も広義の解釈が与えられるべきである。
【0071】
本記載は多くの文書を参照し、それらの内容はそれらの全体を参照することにより本明細書に援用される。
【0072】
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【0073】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
0<h≦1、0≦i≦1、0≦j≦1および0≦k≦1であり、かつM、M’およびM”が各々独立して金属である、一般式NaM’M”POの化合物。
(項2)
0≦x<1であり、好ましくはx≒0またはx≒0.1であり;かつMおよびM’が各々独立して金属である、一般式Na1-xM’POの化合物。
(項3)
0≦x<1および0≦y≦1であり、好ましくはx≒0またはx≒0.1および0≦y≦0.25であり;かつM、M’およびM”が各々独立して金属である、一般式Na1-xM’1-yM”POの化合物。
(項4)
0≦x≦1であり、かつMおよびM’が各々独立して金属である、一般式NaM1-xM’POの化合物。
(項5)
0≦x<1および0≦y<1およびx+y<1であり;かつM、M’およびM”が各々独立して金属である、一般式NaM1-x-yM’M”POの化合物。
(項6)
前記金属が、Li、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択される、上記項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
(項7)
前記金属が、Li、Mg、Ca、MnおよびFeからなる群から選択される、上記項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
(項8)
前記金属が、Li、MnおよびFeからなる群から選択される、上記項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
(項9)
前記金属が、LiおよびMnからなる群から選択される、上記項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
(項10)
ナトリウムホスホ-オリビン化合物である、上記項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
(項11)
0≦x<1であり;好ましくはx≒0またはx≒0.1である、一般式Na1-xLiMnPOの化合物。
(項12)
式Na0.966Li0.34MnPOを有する化合物。
(項13)
0≦x<1および0≦y≦1であり、好ましくはx≒0および0≦y≦0.25である、一般式Na1-xLiFe1-yMnPOまたはNa1-xLiFeMn1-yPOの化合物。
(項14)
式Na0.9Li0.1Fe0.22Mn0.78POまたはNa0.9Li0.1Fe0.25Mn0.75POを有する化合物。
(項15)
0≦x≦1である、一般式NaMn1-xMgPOの化合物。
(項16)
0≦x≦1である、一般式Na1-xMgMnPOの化合物。
(項17)
0≦x<1および0≦y<1およびx+y<1である、一般式NaFe1-x-yMnLiPOの化合物。
(項18)
ナトリウムホスホ-オリビン化合物を調製する方法であって、前記方法が水熱法を含む、方法。
(項19)
一般式NaM’M”POの化合物を調製する方法であって、
0<h≦1、0≦i≦1、0≦j≦1および0≦k≦1であり、かつ、M、M’およびM”が各々独立して金属であり、前記方法が、
(a)M含有化合物、M’含有化合物およびM”含有化合物を含む水性混合物を調製してM-M’-M”混合物を得るステップと;
(b)前記混合物M-M’-M”混合物へP-含有化合物を添加してM-M’-M”-P混合物を得るステップと;
(c)前記M-M’-M”-P混合物へNa含有化合物を添加してNa-M-M’-M”-P混合物を得るステップと;
(d)オートクレーブの中へ前記Na-M-M’-M”-P混合物を導入して結晶の成長を遂行し、一般式NaM’M”POの化合物を得るステップと
を含む、方法。
(項20)
(e)前記結晶を迅速に冷却するステップ;および
(f)前記冷却された結晶を乾燥するステップ
をさらに含む、上記項19に記載の方法。
(項21)
ステップ(f)が、約50~85℃、好ましくは60~75℃の温度で;約6~12時間、好ましくは約8~10時間の期間で遂行される、上記項20に記載の方法。
(項22)
ステップ(a)が、前記M含有化合物、前記M’含有化合物および前記M”含有化合物の別個の水溶液を調製すること、前記3つの溶液のうちの2つを最初に混合することおよび次いで第3の溶液を添加して前記M-M’-M”混合物を得ることを含む、上記項19に記載の方法。
(項23)
ステップ(a)~(c)の各々が撹拌下で遂行される、上記項19に記載の方法。
(項24)
ステップ(b)が、前記Na含有化合物の水溶液を調製することと、前記溶液を前記M-M’-M”-P混合物へ添加することとを含む、上記項19に記載の方法。
(項25)
ステップ(d)がO、Nまたはその組み合わせの雰囲気下で遂行される、上記項19に記載の方法。
(項26)
ステップ(d)が、約150~250℃、好ましくは約200℃の温度で;約2~6時間、好ましくは約4時間の期間で;約1.5~2.5MPa、好ましくは約2MPaの圧力下で遂行される、上記項19に記載の方法。
(項27)
使用される水がN下でバブリングされた脱イオン水である、上記項19に記載の方法。
(項28)
前記M含有化合物、前記M’含有化合物および前記M”含有化合物が各々独立して、MnSO、LiOH、FeSOおよびMgSOからなる群から選択され;好ましくは、前記化合物が各々独立して含水化合物である、上記項19に記載の方法。
(項29)
前記P含有化合物がHPOである、上記項19に記載の方法。
(項30)
前記Na含有化合物がNaOHである、上記項19に記載の方法。
(項31)
前記Na含有化合物が過剰量で使用される、上記項19に記載の方法。
(項32)
前記一般式NaM’M”PO中で、h=1および0≦i≦0.2および0≦j≦0.8および0.85≦i+j+k≦1である、上記項19に記載の方法。
(項33)
上記項1~18のいずれか一項において定義されるような化合物を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(項34)
上記項1~18のいずれか一項において定義されるような化合物および炭素材料を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(項35)
上記項19~32のいずれか一項において定義されるような方法によって調製された化合物を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(項36)
上記項19~32のいずれか一項において定義されるような方法によって調製された化合物および炭素材料を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード材料。
(項37)
上記項33~36のいずれか一項において定義されるようなカソード材料を含む、ナトリウムイオン電池のためのカソード。
(項38)
上記項37において定義されるようなカソードを含む、ナトリウムイオン電池。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
【外国語明細書】