(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107869
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】バイオポリマー組成物、足場及びデバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 27/26 20060101AFI20230727BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20230727BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230727BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230727BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61L27/26
A61L27/58
A61K38/39
A61P19/04
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023094966
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2020514656の分割
【原出願日】2018-05-15
(31)【優先権主張番号】62/603,026
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519408227
【氏名又は名称】エムボディ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランシス、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー、ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】リッガーズ、ヒラリー
(57)【要約】
【課題】外科的に植え込み可能なデバイスを提供する。
【解決手段】バイオポリマー及び共重合体による組成物並びにブレンドについて、軟組織損傷修復の支持及び促進の際に使用する生体適合性足場及び外科的に植え込み可能なデバイスの調製に当該組成物及びブレンドを使用することと共に記載する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10~50重量%のコラーゲン、好ましくは約15~40%のコラーゲン、より好ましくは約20~35%のコラーゲン、より好ましくは約25~35%のコラーゲン、より好ましくは約27.5~32.5%のコラーゲン、また最も好ましくは約30%のコラーゲンと、約50~90重量%の量の生体分解性の共重合体とを含む、組成物。
【請求項2】
前記コラーゲンは、本来の、加工された、胎盤性の及び組換え型の形態である、ヒト、ウシ、ブタ及び海洋性のテロコラーゲン(telocollagen)、アテロコラーゲン並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記コラーゲンは、I型コラーゲンである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記生体分解性の共重合体は、PLLA、PDLA及びPDLLAからなる群から選択される要素である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
PDLLAである共重合体は、高分子量のPDLLAである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
繊維、フィルム、エアロゾル、液滴、接着剤又は多孔質構造の形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、化学架橋剤で処理されていない、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、化学架橋剤で処理されている、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
複数の前記繊維は、電界紡糸法、溶融エレクトロライティング法(melt electro-writing)、押出成形、スプレー法(spraying)又は三次元造形法により作製される、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
複数の繊維の形態であり、該繊維の平均直径は、約150~4,500nm、好ましくは約400nm~2,000nm、より好ましくは約600nm~1,500nm、また最も好ましくは約750nm~1,200nmである範囲にあり、また前記繊維は電界紡糸法によって作製される、請求項6記載の組成物。
【請求項11】
複数の繊維の形態であり、該繊維の平均直径は、約1~200μm、好ましくは約10~100μm、より好ましくは約15~50μmである範囲にあり、また最も好ましくは約20μmであり、また前記繊維はエレクトロライティング法及び溶融電界紡糸法からなる群から選択される技術によって作製される、請求項6記載の組成物。
【請求項12】
前記繊維はシートの形態に加工される、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
請求項1記載の組成物を含む、哺乳動物における軟組織損傷の修復を支持する、植込み型の医療デバイス。
【請求項14】
軟組織損傷の修復を促進する方法であって、請求項13記載の医療デバイスの植え込みを含む、方法。
【請求項15】
アキレス腱断裂の修復を促進する方法であって、請求項13記載のデバイスを、当該デバイスが当該腱の修復領域に架け渡り、機械的支持を提供するように固定するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2017年5月16日付けで提出の米国仮特許出願第62/603,026号に関連し、その内容は全体として参照によりここに援用する。
【0002】
連邦政府の支援による研究に関する声明
本願で提示したデータは、少なくとも一部が米国DARPA契約番号HR0011-15-9-0006で支援された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、コラーゲン等であるバイオポリマー及び生体分解性共重合体による組成物、繊維及び種々の足場へのそれらの取り込み方法、並びに当該組成物で調製された植込み型の生体適合性デバイスに関する。より詳細には、本発明は、アキレス腱、膝蓋腱及び回旋腱板の腱の断裂等の軟組織損傷の修復を支持し促進するのに有用である生体適合性の移植片並びにデバイスの作製に関する。
【背景技術】
【0004】
腱及び靱帯等、損傷した軟組織の修復を促進する又は当該軟組織と置き換わる足場として有用な、植込み型のデバイスのための構成要素を開発するために、種々のアプローチがなされてきた。こうした産物は、困難な様々な生体力学的環境であって、複数の機能パラメータ、例えば適合性、強度、柔軟性及び生体分解性がそうした中で対処される必要があるような当該環境において機能する必要がある。
【0005】
足及び足首の靭帯及び腱(例えば、アキレス腱)、肩の靭帯及び腱(例えば、回旋腱板)並びに膝の靭帯及び腱(例えば、前十字靱帯)に関して、外科的修復術は米国内だけで年間800,000件程度に達するが、それにもかかわらず置換及び支持要素の植え込みを伴う現在の標準的治療は、一般に、医師によれば最善ではないものと考えられている。
【0006】
生体適合性の軟組織支持足場の提供を目的とした靭帯及び腱の有力な移植片産物は、場合によっては死体組織や侵襲性の自己移植術に依存するものであるこの20年の古い技術をしばしば必要とする。同種移植は、供給が限られており、瘢痕形成を促進し、免疫応答を惹起し得、また代謝回転率が明確にされていないものであって、これらすべてにより治癒が抑制される。自己移植術はまた、手術時間を長引かせ、関連の外傷におよび、そして自己組織を回復させるために費用を要する2度目の手術が加わることも多い。
【0007】
例えば、GRAFTJACKET(登録商標) 再生組織マトリックス(Regenerative Tissue Matrix) http://www.wright.com/footandankleproducts/graftjacketは、無菌での細胞除去処理後に凍結乾燥した、同種移植の提供されたヒト真皮より形成されたシート様の製品である。ArthroFLEX(登録商標) 脱細胞化真皮同種移植片(Decellularized Dermal Allograft) https://www.arthrex.com/orthobiologics/arthroflexは、同様の無細胞の真皮細胞外マトリックスである。
【0008】
これらアプローチ及び製品の中には、Ratcliffeらの「軟組織修復用の合成構造(Synthetic structure for soft tissue repair)と題された米国特許第9,597,430号(2017年)によって開示されたものがある。この特許には、例えば織物状メッシュの単層又は多重層の平面フィブリル形態である、種々の合成フィブリル構造が記載されている。Ratcliffeによれば、これら構造は、生体吸収性である又はそうではない好適な機械的性質を提供することができる任意の生体適合性ポリマー材料より作製可能である。コラーゲン及びラクチド(lactide)が好適であるとして言及している。Synthasome社の医療デバイス「X-Repair」が関連しているようであるが、これは米国食品医薬品局(FDA)によりFDA510(k)クリアランスが付与されている(http://www.synthasome.com/xRepair.php)。
【0009】
別のアプローチが、Qiaoらの"Compositional and in Vitro Evaluation of Nonwoven Type I Collagen/Poly-dl-lactic Acid Scaffolds for Bone Regeneration," Journal of Functional Biomaterials 2015, 6, 667-686; doi:10.3390/jfb6030667に記載されている。この論文には、I型コラーゲンとポリDL-乳酸(Poly-d,l-lactic acid)(PDLLA)との電界紡糸されたブレンドが記載されている。種々のブレンドが、重量比40/60、60/40及び80/20のポリマー:コラーゲンブレンドで記載されている。Qiaoは共溶媒系を記載しており、細胞培養液中でこの材料の長期安定性を確保するのに化学架橋が不可欠であると報告した。Qiaoによれば、重量比60:40のPDLLA/コラーゲンによる足場が、5週間の培養期間に亘って最大の安定性をもたらした。
【0010】
Leeらの米国特許第9,421,305号(2016)「骨格筋再生用の整列足場システム(Aligned Scaffolding System for Skeletal Muscle Regeneration)」に、筋移植片用構成体の使用が記載されている。この特許では、足場を形成するために、電界紡糸された繊維を長手方向軸に沿って配向させて架橋することで作製した異方性の筋移植片が論じられている。当該繊維上に細胞を播種して、筋管が形成される。この繊維は、天然高分子及び/又は合成高分子より形成され得る。天然高分子の例としては、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン及びヒアルロン酸が挙げられる。合成高分子の例としては、ポリカプロラクトン(PCL)、DL-乳酸-グリコール酸共重合体(poly(d,l-lactide-co-glycolide))(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、及び乳酸-カプトロラクトン共重合体(poly(lactide-co-captrolactone))(PLCL)が挙げられる。この繊維はまた、ハイドロゲル、微小粒子、リポソーム又は小疱を含んでいてもよい。ブレンドする場合、天然高分子の合成高分子に対する重量比は2:1~1:2である。
【0011】
軟組織産生用の電界紡糸された足場が、Sensiniらの"Biofabrication of bundles of poly(lactic acid)-collagen blends mimicking the fascicles of the human Achilles tendon," Biofabrication 9 (2017) 015025に記載されている。PLLA及びコラーゲンによる2種の異なるブレンドが、純粋なコラーゲンの束と比較された。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、生体適合性、生理活性、生体分解性及び吸収性である、バイオポリマー及び共重合体の組成物に関し、また当該組成物及びそれらのブレンドより作製される、足場及び植込み型のデバイスに関する。当該組成物及びデバイスは、軟組織損傷修復の支持及び促進に有用である。
【0013】
かかるブレンドの好ましい実施形態は、約10~50重量%のバイオポリマー、好ましくは約15~40%のバイオポリマー、より好ましくは約20~35%のバイオポリマー、より好ましくは約27.5~32.5%のバイオポリマー、また最も好ましくは約30%のバイオポリマーを含む。これもまた生体適合性、生理活性、生体分解性及び吸収性である共重合体は、約50~90重量%の範囲で存在する。
【0014】
好ましい種類のバイオポリマーには、コラーゲン、細胞外マトリックスタンパク質、フィブリン、フィブリノーゲン、ゼラチン及びラミニン並びにこれらの組み合わせが含まれる。好ましい種類のコラーゲンには、本来の、加工された、胎盤性の及び組換え型の形態である、ヒト、ウシ、ブタ及び海洋性のテロコラーゲン(telocollagen)、アテロコラーゲン並びにこれらの種類のコラーゲンの混合物が含まれる。好ましいコラーゲンは、ウシ由来のものである。別の好ましいコラーゲンは、I型コラーゲンである。概してヒトコラーゲンが好ましく、例えば胎盤組織からのもの又は組換え型のヒトコラーゲン及びこれらの混合物である。テロコラーゲン及びアテロコラーゲン両方の使用が考えられる。海洋性コラーゲン(marine collagen)の源には、クラゲ、ナマコ及びコウイカが含まれる。
【0015】
本発明の一実施形態においては、組成物は、約10~50重量%のコラーゲン、好ましくは約15~40%のコラーゲン、より好ましくは約20~35%のコラーゲン、より好ましくは約25~35%のコラーゲン、より好ましくは約27.5~32.5%のコラーゲン、また最も好ましくは約30%のコラーゲンと、約50~90重量%の量の生体分解性の共重合体とを含む。
【0016】
種々の共重合体が、上記足場及び他の産物、並びに本明細書に記載の方法にふさわしい。好ましい共重合体は、生体分解性又は吸収性であり、例えばPLLA、PDLA及びPDLLA並びにこれらの混合物である。好ましい共重合体は、PDLA、低分子量のPDLLA、中分子量のPDLLA、高分子量のPDLLA及びこれらの組み合わせである。
【0017】
本発明の組成物において、例えばコラーゲンであるバイオポリマーと共重合体とのブレンドは、繊維状に形成され得る。任意に、組成物、繊維及び他の形態の植込み型の足場は、化学架橋剤で処理されてもよく、又はそうした処理がされなくてもよい。本発明の特定の実施形態においては、特に電界紡糸法(electrospinning)等の技術により、繊維径は約150~4,500nm、好ましくは約400nm~2,000nm、より好ましくは約600nm~1,500nm、また最も好ましくは約750nm~1,200nmの範囲である。他の実施形態においては、特に溶融電界紡糸法又はエレクトロライティング法等により、繊維の平均直径は概ね、約1~200μm、好ましくは約10~100μm、より好ましくは約15~50μmである範囲にあり、また最も好ましくは約20μmである。
【0018】
本発明はまた、本明細書に記載したとおり調製され、単層又は多重層のシート様足場の形態に加工される繊維に関する。一実施形態においては、当該足場は、それぞれが約0.2mmの厚さである実質的に整列したテロコラーゲン及びPDLLAの繊維による約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10以上の層から、縫合糸保持のための二軸の強度を支持するために縁の周囲の横断面に繊維の小部分が置かれている状態で、構成される。別の実施形態においては、この多重層足場は、約4cm×7cm×1mmの大きさである。代替的な実施形態としては、ほぼ同様の寸法の単層足場がある。
【0019】
本発明の他の態様においては、本発明に係る組成物を製造して、フィルム、エアロゾル、液滴、接着剤又は多孔質構造の形態の足場を製造するために使用し得る。
【0020】
繊維及び種々の足場を作製するために考えられる技術には、電界紡糸法、溶融電界紡糸法、エレクトロライティング法(electrowriting)、押出成形(extrusion)、スプレー法(spraying)及び三次元造形法が含まれる。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、請求項1記載の組成物を含む、哺乳動物における軟組織損傷の修復を支持する、植込み型の医療デバイスに関する。また他の態様においては、本発明は、本明細書に記載の足場及び医療デバイスの外科的植込み術を経て軟組織損傷の修復及び治癒を促進する方法に関する。これら方法、足場及び開示の医療デバイスは、哺乳動物である対象、特にヒトにおける使用を意図している。一実施形態においては、本発明は、ヒト対象のアキレス腱断裂の修復をするものであって、デバイスが当該腱の修復領域に架け渡り、機械的支持を提供するように当該デバイスを外科的に植え込んで固定することによって、当該修復を行う方法に関する。
【0022】
表の簡単な説明
表1は、PDLLA及びコラーゲンによるいくつかのブレンドについてのピーク応力(MPa)及び弾性率(MPa)の比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で用いる場合、用語は以下のとおりである:
「バイオポリマー」は、結合組織及び他の軟組織中並びに細胞外マトリックス中で本来見られる、天然のタンパク質由来の高分子を意味し、例えばコラーゲン、フィブリン、フィブリノーゲン、ゼラチン及びラミニンである。
【0024】
「共重合体」は、害のない溶媒系に溶解し且つバイオポリマーと混合又はブレンドされて、例えばバイオポリマー単独によるのとは別様でもたらされることとなるような強度又は剛性である多様な所望の性質を付加することが可能である合成高分子を意味する。
【0025】
「高分子量のPDLLA」は、約0.55dL/g~4.5dL/g又はそれより高い平均インヘレント粘度(IV)を有するPDLLA産物を意味する。
【0026】
「足場」は、バイオポリマー及び共重合体より形成される構成体を意味する。こうした構成体は、層状、マット状、シート状及び筒状に形成された実質的に整列した繊維であることが好ましい。
【0027】
「実質的に整列した繊維」は、足場内にある基準の15~20度の範囲内にある繊維のうち少なくとも約半分が、ある共通の軸に沿って配向していることを意味する。これは、ランダムに配向させた繊維とは対照的であると解釈される。
【0028】
本発明の目的
本発明の目的は、特に損傷した腱及び靭帯の修復に有用である軟組織の支持体として、組織工学のための、合成繊維と関連のシート様且つ束ねた繊維の産物とを提供することである。例えば本発明によれば、コラーゲン及び生体分解性ポリマーで形成された、組織工学的に作製された靭帯及び腱の足場は、損傷したアキレス腱の修復に用いることができる。さらに本発明の目的は、一部断裂した若しくは完全に断裂したアキレス腱等の特定の組織又は欠陥に合った適切な繊維配向をもつ足場を作製することから、同様の大きさをもつ本来のヒトの腱及び靭帯を支えている引張強度、柔軟性、弾性率及び他の生体力学的特性を有する合成材料を提供することである。本発明は、宿主細胞に組み込まれて時間経過と共に新しい腱様の結合組織を形成した時点で、例えばその断裂端同士が一緒に縫合される再結合する腱等の癒合を、組織損傷より前に降伏又は破断することなく、強化することとなるような引張強度及び係数を備えた、シート様且つ束ねた繊維の足場産物を提供する。
【0029】
バイオポリマー:
本発明にかかるバイオポリマーは、特にバイオポリマー繊維より調製した足場の形態において、安定した抽出産物を形成可能である生体分子であり、好ましくは本来の生物学的構造及び細胞外マトリックスからのタンパク質である。これらの例としては、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノーゲン及びゼラチンが挙げられる。当業者に公知である他のタンパク質を、本発明の方法で利用してもよい。
【0030】
コラーゲン:
好ましいバイオポリマーはコラーゲンである。本発明にかかる生体適合性足場で用いられるI型コラーゲンは、今日の臨床での製品用も同様に、組換え型のコラーゲンも用いられ得るが、概して哺乳動物組織、特にウシ及びブタの腱から抽出される。ヒト胎盤もまた、そうした目的で用いられることがある。I型コラーゲンは、2種類の一般的な形態で研究グレード及び臨床グレードの産物の両方において利用及び上市されている。より一般的なコラーゲン変異体は、組織をペプシンで酸及び酵素消化して産生したものであり、コラーゲンタンパク質の末端領域が欠損(pQLSYGYDEKSTGISVPに対して"DEKSTGISVPの末端ペプチド配列が)した産物であって、それによってテロペプチドが切断されて親組織からのコラーゲンの回収に役立つので、「アテロコラーゲン」と称されるコラーゲンの一形態である。一般的ではないが、コラーゲンは弱酸で可溶化されて、コラーゲンの単量体内の両テロペプチドを保持したままの「テロコラーゲン(telocollagen)」として知られるコラーゲンが溶液中に集まる。
【0031】
テロコラーゲンは、組織工学的に作製された電界紡糸ナノファイバーとして生成した場合のそれらの相対強度はよく調査されていないものの、アテロコラーゲンより作製したゲルと比較して強いハイドロゲルを形成することが報告されている。テロコラーゲンとアテロコラーゲンとを40%酢酸により溶解させ、電界紡糸して足場を調製するという実験を行った。
【0032】
本発明者らは、かかる足場の強度は、概して本来のコラーゲンのものと同様であるが、当該足場の他の性質は表1に示すとおり最適でないということを発見した。したがって、コラーゲンと種々のポリマーとのブレンドについて評価を行ったので、実験結果を以下に記載する。より大きい分子量のPDLLAを選択することで、構成体のピーク応力及び弾性率の増加が招来された。したがって、高分子量(HMW)のPDLLAが好ましい。
【0033】
【0034】
酸可溶性(テロコラーゲン)及びペプシン可溶性(アテロコラーゲン)凍結乾燥コラーゲンが、適切な出発物質である。ウシ真皮からの好ましいGMPグレードのI型コラーゲンが、その本来の形態で、Collagen Solutions社http://www.collagensolutions.com/products/medical-grade-collagenより入手可能である。Collagen Solutions社のウェブサイトhttp://collagensolutions.com/resource-library#technical-servicesでは、コラーゲンの使用及び調製についての全般的な情報を提供している。コラーゲンはまた、他のメーカーから、多様な種のものが入手可能であり、例えばシグマアルドリッチ社http://www.sigmaaldrich.com/life-science/metabolomics/enzyme-explorer/learning-center/structural-proteins/collagen.htmlがある。
【0035】
共重合体:
生体分解性且つ生理活性である多種多様の共重合体が、単独で又は他のポリマーとのブレンドで、また場合によっては例えばコラーゲン、フィブリン及びエラスチンである本来の組織成分を含めて、軟組織修復に用いることが検討されてきた。これらのうち、本発明者らは、コラーゲンと、L体及びD体である両イソ型をはじめとするポリ乳酸、特にポリDL乳酸又はPDLLAと称されるその非晶質混合物とをブレンドした組み合わせから、生体力学的且つ生体分解性の驚くべき結果を発見した。
【0036】
特定の産物若しくはデバイスにとって有用又はポリ乳酸及びコラーゲンのブレンドに添加したときに有用であり得る他の共重合体に、1,3-プロパンジオール(PDO)、ポリカプロラクトン(PCL)、乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))(PLGA)が含まれる。当業者にとっては、他の有用なポリマー及び共重合体、例えばポリグリコール酸、ポリエステル類、炭酸トリメチレン(trimethylene carbonate)、ポリジオキサノン、カプロラクトン、アルキレンオキシド類、オルトエステル類、ヒアルロン酸類、アルギン酸類、天然脂肪及び油脂からの合成ポリマー類、並びにこれらの組み合わせが公知である。
【0037】
ポリ乳酸類に関しては、PLLAイソ型単独が比較的強度があるが、弾性ではなく脆性である。in vivoで約36~48ヶ月持続する。好ましいPLLAは、シグマアルドリッチ社http://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/articles/material-matters/pdf/resomer-biodegradeable-polymers.pdfより入手可能である。
【0038】
PDLAイソ型は、より弾性であって脆性ではなく、in vivoで通常12~18ヶ月持続する。好ましいPDLAは、シグマアルドリッチ社http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/SIGMA/67122?lang=en®ion=USより入手可能である。
【0039】
PDLLAは、強度と安定性の点及びin vivoでの寿命の点でPLLAとPDLAとの間に位置し、当該寿命は約18~36ヶ月の範囲であり、これは再吸収されるには十分な長さであり、カプセル化を防止するには十分な短さである。PDLLAは、L-乳酸及びD-乳酸のラセミ混合物の重合で形成される非晶質ポリマーである。当該ポリマーの詳細な組成が、その機械的性質と加水分解特性を決める。
【0040】
PDLLAは概して、より好適な分解性を示すが、これは非晶質内での水の接近レベルとポリマーのエステル結合の加水分解とに起因する。本発明者らは、PDLLAが、本明細書に記載の用途に関して、I型コラーゲンとブレンドした場合に、繊維及び植込み型の支持デバイスの作製に驚くほど有効であることを見出だした。
【0041】
PDLLAの供給元は、Polysciences社、エボニック社及びシグマアルドリッチ社が好ましい。例えばインヘレント粘度が1.6~2.4dL/gであるPDLLAが、Polysciences社http://www.polysciences.com/default/polydl-lactic-acid-iv-20-28dlgより入手可能であり、約300,000~600,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する。より低いインヘレント粘度をもつPDLLA(IVが1.3~1.7dL/g)が、エボニック社http://healthcare.evonik.com/product/health-care/en/products/biomaterials/resomer/pages/medical-devices.aspxより入手可能である。さらに低いインヘレント粘度0.55~0.75dL/gをもつPDLLAが、シグマアルドリッチ社http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/sigma/p1691?lang=en®ion=USより入手可能であり、約75,000~125,000ダルトンの範囲の分子量を有する。コービオン社より入手可能な、GMPレベルの純度の別の好ましいPDLLA("PURASORB PDL 45") http://www.corbion.com/static/downloads/datasheets/31d/PURASORB%20PDL%2045.pdfは、比較的高いインヘレント粘度4.5dL/gを有する。
【0042】
共重合体の官能化:
共重合体は、1又は複数の官能化試薬で前処理して、電界紡糸法等の作製技術によりバイオポリマー-共重合体混合物を抽出した後で架橋結合する共重合体を調製することができる。例えばPDLLAはアミノ分解により官能化してアミノ基を付加させることができる。例えばhttp://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adem.200980031/abstractにあるMin et al., "Functionalized Poly(D,L-lactide) for Pulmonary Epithelial Cell Culture," Advanced Engineering Materials 12(4):B101-B112 (2010)を参照されたい。あるいはPDLLAは、プラズマ処理で官能化し、マトリックス内にカルボキシ基及びアミノ基を導入することができる。
【0043】
一般的方法として、例として、電界紡糸の前にPDLLAをOH基で官能化することができる。PDLLAペレットを、10~20%エタノールのミリQ水溶液中に10mM~1Mの水酸化ナトリウムを溶解させた混合水溶液に浸漬させる。当該ペレットは、室温又は37℃のいずれかで10~60分間浸漬させる。インキュベーション後、ペレットをミリQ(超精製)水中ですすぎ、生物安全キャビネット(biosafety hood)内で風乾する。次いで官能化PDLLAのチップを、本明細書に記載するとおり適切な電界紡糸用溶液中に溶解させる。
【0044】
コラーゲン-共重合体ブレンド:
本発明の好ましい実施形態においては、例えばテロコラーゲンであるコラーゲンと例えばPDLLAであるポリマーとから生成した足場の引張強度が、生体力学特性において、例えばウシ尾部靭帯のものに匹敵するか又は超えるものである。しかしながら当業者にとって明らかであるように、異なる源のアテロコラーゲンで作製した同様のブレンドは、より低い引張強度を示す可能性がある。例えば、電界紡糸したテロコラーゲンと乳酸ポリマーとによる1ロットでは、同様の方法で調製したアテロコラーゲンよりも50%近く強度が高く、約4MPaに対して約5.5MPaであった。さらに相対的に大きい分子量のPDLLA(75,000~120,000に対して450,000)では、構成体の強度は約13.1MPaに2倍以上になった。
【0045】
PDLLAとブレンドしたテロコラーゲン及びPDLLAとブレンドしたアテロコラーゲンの両者について、長期細胞培養試験での安定性を確実にするため、組織培地中での長期安定性を評価した。コラーゲン-PDLLA足場は、28日間のインキュベーションに亘って組織培地中で許容できる安定性を示す。引張強度試験のドライ試験結果と同様に、PDLLAとテロコラーゲンとのブレンドはまた、PDLLAとアテロコラーゲンとのブレンドと比較して力学的に驚くほど高い強度(ウェット試験で)であった。
【0046】
本発明によれば、好ましい組成物は約10~50%のコラーゲン、好ましくは約15~40%のコラーゲン、より好ましくは約20~35%のコラーゲン、より好ましくは約25~35%のコラーゲン、より好ましくは約27.5~32.5%のコラーゲン、また最も好ましくは約30重量%のコラーゲンを、約50~90重量%の乳酸共重合体と共に含む。
【0047】
ウシ由来のI型コラーゲンがバイオポリマーとして好ましく、また乳酸ポリマー、特に高分子量のPDLLAが共重合体として好ましい。アテロコラーゲンよりもテロコラーゲンが好ましい。こうした組成物が、その濡れ性等である所望の生体力学的性能及び生体安定性パラメータを呈する。
【0048】
コラーゲン-ポリマーブレンドの調製及び加工:
コラーゲンと乳酸ポリマーとのブレンドの調製を、以下に続く実施例で詳細に説明する。概して、いずれの成分もヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFP)に溶解させる。好ましくは、繊維に加工する前の試薬のブレンドに、架橋剤を何も添加しない。任意に、従来の種々の架橋結合用化合物をコラーゲン及びポリマーにブレンドしてもよく、すなわち得られた材料を、電界紡糸後に架橋してもよい。
【0049】
当業者には他のアプローチも知られているであろうが、電界紡糸法が、本発明の組成物から繊維を作製するための好適な加工技術である。とはいえ、ブレンドを溶媒系と分離する他のアプローチが当業者に公知であり、例えば空気紡績法(pneumatospinning)、押出成形、冷延伸(cold drawing)又は注型である。電界紡糸法は、帯電した高分子溶液又は溶融高分子の糸を延伸して多様な直径及び長さの繊維にする繊維製造技術である。コラーゲンの電界紡糸法は、本来の組織構造を模倣する繊維材料を形成するワンステップの加工として広く説明されている。電界紡糸用の機器は、従来のものであり、Nanospinner、Elmarco及びSprayBase等の製品ブランドより容易に入手可能である。電界紡糸法は、繊維のエレクトロスプレー法、従来の溶液乾式紡糸(solution dry spinning)、押出成形又は引抜成形の両方の特性をもつ。
【0050】
本発明の組成物で作製した繊維の特性:
上記及び以下の実施例で説明する好ましい実施形態のポリマーブレンドを用いて、電界紡糸した繊維を作製した。好ましい繊維径は、約150~4,500nm、好ましくは約400nm~2,000nm、より好ましくは約600nm~1,500nm、また最も好ましくは約750nm~1,200nmの範囲である。繊維の強度の範囲は、約4~16MPaが好ましい。好ましい弾性率は、好ましくはヒトの靭帯のもの、特にアキレス腱のものと実質的に同様であり、約35~750MPaである。その範囲内において、繊維として約35~200MPaが好ましい。また、水和状態で1mm/sで試験した張力として、50~200%(0.5~2.0mm/mm)の破断ひずみ(strain to failure)であることが好ましい。
【0051】
足場の調製:
好ましいバイオポリマー構造は、軟組織の損傷の修復に役立つ支持として又は例えば腱若しくは靭帯であるような当該組織の置換としての移植片に適した足場である。移植片に適した足場は、種々の技術によって作製され得る。例えばシート形態の足場は、コラーゲン及び共重合体のブレンドを高速ドラム(表面速度が1~20m/s程度であり、例えば約18m/sである)上に電界紡糸することによって作製され得る。繊維状シートは、電界紡糸装置のドラムから1枚ずつ容易に剥がれ、そうでなければ従来の技術によって回収される。
【0052】
足場は、電界紡糸後に減圧乾燥して、残留溶媒を除去することができる。例えば当該シートは、好ましくは、減圧下、約30~37℃で約1~3日間保存して残留した加工用溶媒を除去する。次いでシートを二次構造及び三次構造を生成するために切っても又はそのような向きにしてもよく、そして任意に、溶着又は縫合/縫い付け(sewing)により積層させてもよい。
【0053】
かかるシートは、溶着又は縫合又は縫い付けにより積層させてもよい。概して、電界紡糸した材料のシートを積み重ねる。概して、電界紡糸した材料のシートを積み重ねる。次いで局所的に熱(30~100℃、例えば約60℃)を加え、それらシートを接合する。溶着部に追加の材料を加えて、縫合糸保持に役立つように材料を補強してもよい。任意に、外因性の細胞浸潤を防止する純粋なポリマーの裏打ち(腱から逸れる方に向けて)から構成されることとなる接着バリアが含まれてもよい。当該ポリマー層は、電界紡糸、注型、発泡成形(foamed)、押出成形又は他の従来の技術によって作製され得る。
【0054】
繊維から調製する足場に関して、この足場の濡れ性が、5%CO2中、湿度100%、37℃での約28日に亘るインキュベーションで、組織培地中で安定性を示すことが好ましい。概して、実施例に記載するように、播種した細胞が頑健な細胞接着性を示す必要があり、半数以上の細胞が足場に付着する状態であることが好ましい。増殖因子の初期滞留(initial retention)が、ヒトの腱、特にアキレス腱のものと実質的に同様であることが好ましい。
【0055】
当業者は、本発明のこの組成物及び方法にかかる三次元の足場の組立、製造及び構築に適した技術を認識しているだろう。かかる技術は、例えば米国特許出願公開公報第2005/0008675号として公開されたBhatiaらによる「微細加工バイオポリマーの足場及びその作製方法(Microfabricated biopolymer scaffolds and method of making same)」;Hoque et al., "Extrusion based rapid prototyping technique: An advanced platform for tissue engineering scaffold fabrication," Biopolymers 97: 83-93, 2012, https://doi.org/10.1002/bip.21701;Lu et al, "Techniques for fabrication and construction of three-dimensional scaffolds for tissue engineering," Int. J Nanomedicine. 2013; 8: 337-350;Li et al, "3D-Printed Biopolymers for Tissue Engineering Application," International Journal of Polymer Science, Volume 2014, Article ID 829145, http://dx.doi.org/10.1155/2014/829145;及びMa, "Scaffolds for tissue fabrication," Materials TodayVolume 7, Issue 5, May 2004, Pages 30-40に記載されている。
【0056】
足場の追加的処理:
概して、溶媒系に溶解する前に共重合体を官能化してアミノ基を導入する場合、バイオポリマー及び共重合体は、足場内にそれを抽出した後でグリオキサール又はアルデヒド架橋剤で架橋結合させてもよい。共重合体をカルボキシ基で官能化する場合には、架橋結合のためにEDC及び他のカルボジイミドが用いられ得る。イソシアン酸塩は、OH基及びアミンの両方と反応する。そのため、イソシアン酸塩系の架橋剤は、例えば官能化したPDLLA内においてOH基を互いに架橋結合させて(OH基がもうひとつのOH基に結合する)、培地安定性及び/又は強度を向上するために用いられ得る。またイソシアン酸塩を、コラーゲンのNH2基(すなわちアミン基)を介してコラーゲンを官能化PDLLA内のOH基に結合させるために用いてもよい。さらに、光架橋剤を用いることもできる。
【0057】
さらに、バイオポリマーは、例えば機械的延伸を伴う若しくは機械的延伸を伴わない熱的アニーリングによって又はアニーリング、延伸及び緩和のサイクルを合わせたものによって、物理的に後処理することができる。これら物理的な後処理ステップを加えて、例えば得られる足場の繊維径、繊維整列及び空隙率又は間隙率を変化させることによって、得られる足場の材料特性を調節又はそうでなければ変更することができる。
【0058】
植込み型デバイス:
上記で説明したように、本発明は、組織工学に関する、特に損傷した腱及び靭帯の修復に有用である軟組織の支持体としての、合成繊維及び関連するシート様且つ束ねた繊維の産物の作製及び使用に向けられたものである。例えば本発明によれば、コラーゲン及び生体分解性共重合体の伸長した繊維により形成された組織工学的に作製された靭帯及び腱の足場を、損傷したアキレス腱の修復に用いることができる。本発明にかかる足場は、マット状、筒状、単層シート状及び多重層シート状の形態であり得る。
【0059】
好ましい実施形態においては、本発明は、上記のとおり調製され、単層又は多重層のシート様足場の形態に加工される繊維に関する。一実施形態においては、当該足場は、それぞれが約0.4mmの厚さである整列したテロコラーゲン及びPDLLAの繊維ブレンドによる約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10以上の層から、縫合糸保持のための二軸の強度を支持するために縁の周辺の横断面に繊維の小部分が置かれている状態で、構成される。別の実施形態においては、この多重層足場は、約4cm×7cm×1mmの大きさである。代替的な実施形態としては、ほぼ同様の寸法の単層足場がある。
【0060】
概して、本発明にかかる足場は、手術室や他の救急治療環境で取り扱いが容易であり、且つ、適合して所与の軟組織部位を支持するように容易に切られ形づけられる。足場は、断裂して修復される組織の近位に又は当該組織に接触させて、例えば縫合糸、縫合アンカー又は外科用接着剤により据え付けられ得る。足場は、例えばアキレス腱、回旋腱板、膝蓋腱、二頭筋腱及び四頭筋腱をはじめとする腱及び靭帯である、軟組織の支持及び補強を提供する。足場は、修復した組織と、機械的ストレス及び荷重の一部を共有する。
【0061】
繊維状で、任意にシート様構造である足場が、宿主細胞及び組織を内殖させ、足場の血管新生も可能にする。足場は、時間経過と共に吸収されて再構築過程により患者自身の組織で置換される、又はそうでなければ溶解し、分解して、最終的に除去される。足場は、個々に又はペアで又は大量で無菌容器内に包装され得る。
【0062】
A.シート材 シート材は、1×2、2×2、3×3、2×4、4×6、6×9cm等の様々な標準サイズで用意し、切って大きさ及び形状を誂えることができる。
B.メッシュ材 ランダムに整列した材料を、等方性繊維及び等方性繊維強度を備えた1×2、2×2、3×3、2×4、4×6、6×9cm等の標準サイズの不織メッシュとして製造し、切って大きさ及び形状を誂えることができる。
C.ラップ材 シート材又はメッシュ材を、アンレーとして用いる又は組織欠損部位に巻きつけることができる。
D.縫合糸 材料を、縫合糸として用いるための糸、ヤーン又は他の単一繊維及び多繊維の糸として合成し、手術部位を保持、位置決め、支持又は補強してもよい。
E.内部装具(Internal brace) 材料を、縫合糸として用いる糸、ヤーン又は他の単一繊維及び多繊維の糸として合成し、手術部位を緊張、支持、又は補強して、接合部の過伸展を防止して再破裂の危険性を軽減してもよい。
【実施例0063】
実施例1:10%アテロコラーゲン-90%PDLLAの調製及び繊維の電界紡糸
5mLのガラス製vバイアル(Wheaton社)中で、36.2mgの凍結乾燥アテロコラーゲン及び324.5mgのポリ(DL-乳酸)(PDLLA)を3mLヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFP)に溶解させた。コラーゲンはCollagen Solutions社(カリフォルニア州サンノゼ)より入手し、PDLLAはPolysciences,Inc.社より入手した。このバイアルを、試薬が溶解するまで例えばVWR社よりの揺動プラットフォーム振とう機に載置した。次いでこの溶液を、電動機を備えた50mm/2インチのドラムディスク、ガラスルアーが付いた直径11.7mmの5mLガラス製シリンジ、2インチ、18ゲージの総ステンレス鋼製の針で、針先100mmで、電界紡糸した。流量は1.5mL/hrとし、また針に+17.8kVを印加した。21℃、及び検出下限25%を下回る相対湿度で、紡糸時間90分を用いた。得られた繊維をドラムから掻き取り、デシケーター内に移した。
【0064】
実施例2:30%アテロコラーゲン-70%PDLLAの調製及び繊維の電界紡糸
5mLのvバイアル中で、72.3mgのアテロコラーゲン及び168mgのPDLLAを2mLのHFP中に溶かし、次いで概して実施例1に従って溶解させた。次いでこの溶液を、電動機を備えた25mm/1インチのドラムディスク、ガラスルアーが付いた直径8.9mmの2mLガラス製シリンジ、2インチ、18ゲージの総ステンレス鋼製の針で、針先100mmで、電界紡糸した。流量は1.5mL/hrとし、また針に+17.0~17.1kVを印加した。22.2℃、及び25%未満の相対湿度で、紡糸時間60分を用いた。
【0065】
実施例3:15%テロコラーゲン-85%PDLLAの調製及び繊維の電界紡糸
5mLのvバイアル中で、36.0mgのテロコラーゲン及び204mgのPDLLAを2mLのHFP中に溶かし、次いで概して実施例1に従って溶解させた。次いでこの溶液を、電動機を備えた25mm/1インチのドラムディスク、ガラスルアーが付いた直径8.9mmの2mLガラス製シリンジ、2インチ、18ゲージの総ステンレス鋼製の針で、針先100mmで、電界紡糸した。流量は1.5mL/hrとし、また針に+17.8を印加した。22.1℃、及び25%未満の相対湿度で、紡糸時間60分を用いた。
【0066】
実施例4:35%テロコラーゲン-65%PDLLAの調製及び繊維の電界紡糸
5mLのvバイアル中で、84.0mgのテロコラーゲン及び156mgのPDLLAを2mLのHFP中に溶解させた後、概して実施例1に従って溶解させた。次いでこの溶液を、電動機を備えた25mm/1インチのドラムディスク、ガラスルアーが付いた直径8.9mmの2mLガラス製シリンジ、2インチ、18ゲージの総ニッケル含有ステンレス鋼製の針で、針先100mmで、電界紡糸した。流量は1.5mL/hrとし、また針に+18.0を印加した。22.1℃、及び25%未満の相対湿度で、紡糸時間55分を用いた。
【0067】
実施例5:25%テロコラーゲン-75%PDLLAの調製及び繊維の電界紡糸
12%テロコラーゲンのHFP溶液を12%PDLLAのHFP溶液と合わせた。それぞれは、別個のバイアル中で溶解させた。コラーゲンは、5mLバイアル中で0.5mLのHFPに60.6mgのテロコラーゲン粉末(Collagen Solutions社)を溶解させて調製した。PDLLAは、5mLバイアル中で2mLのHFPに239.1mgのPDLLAを溶解させて調製した。いずれの溶液も、揺動振とう機のプラットフォーム上に最大の速度及び傾斜で2時間半載置した。12%(w/v)コラーゲン溶液250uLを、12%(w/v)PDLLA溶液750uLと混合し、2つをプラットフォーム振とう機上で20分間混合させた。その後溶液を、電動機を備えた25mm/1インチのドラムディスク、ガラスルアーが付いた直径8.9mmの1mLガラス製シリンジ、2インチ、18ゲージの針で、針先100mmで、電界紡糸した。流量は1.0mL/hrとし、また針に+20.0~20.1KVを印加した。23.2℃、及び相対湿度48%で、紡糸時間55分を用いた。
【0068】
実施例6:コラーゲン-ポリマー足場の調製
それぞれ約0.2mmの厚さのシート5枚を、約100℃での半田ごてにより又はインパルス式シーラーからの短パルスの熱により溶着することで積層する。直交する向きにした追加の繊維で溶着部を塞ぎ、縫合糸保持のための補強を提供した。溶着部を介して1本の縫合糸が引っ張られる平均荷重は約28.3Nであり、ピーク応力は4.1MPaである。
【0069】
実施例7:電界紡糸した繊維の足場へのヒト腱細胞の播種
ヒト腱細胞(5×104細胞/ウェル)を、無血清培地に懸濁させ、次いで上記実施例6に従って調製した足場上に播種した。培養液中で15分後、30分後及び60分後に、プレートを穏やかに振とうし、付着していない細胞を除去した。各ウェル中で懸濁した付着していない細胞の数を計数し、播種した細胞の総数に基づいて各足場ディスクに付着した細胞の割合を求めた。50%以上の細胞が付着したままであった。
【0070】
上記において特定の例示的な実施形態を詳細に説明したが、こうした実施形態は広い発明のうちの単なる例示であって、それを限定するものではないということを理解されたい。本発明の教示は、多種多様な組成物並びに記載の調合及び組成物から作製したデバイスに応用されることを認識されたい。当業者は、上記で説明した発明の実施形態に対して、その広い発明の範囲から逸脱することなく種々の変形がなされ得るということを認識するだろう。そのため、本発明は、開示の実施形態又は配置に限定されることなく、むしろ添付の特許請求の範囲により規定されるような発明の範囲及び趣旨の範囲内にあるあらゆる変更、適応又は変形を網羅することを意図しているということが理解されよう。
【0071】
参考文献
以下の論文を含めて、本明細書において特定されるすべての文書を、全体として参照により援用する。
上記において特定の例示的な実施形態を詳細に説明したが、こうした実施形態は広い発明のうちの単なる例示であって、それを限定するものではないということを理解されたい。本発明の教示は、多種多様な組成物並びに記載の調合及び組成物から作製したデバイスに応用されることを認識されたい。当業者は、上記で説明した発明の実施形態に対して、その広い発明の範囲から逸脱することなく種々の変形がなされ得るということを認識するだろう。そのため、本発明は、開示の実施形態又は配置に限定されることなく、むしろ添付の特許請求の範囲により規定されるような発明の範囲及び趣旨の範囲内にあるあらゆる変更、適応又は変形を網羅することを意図しているということが理解されよう。
なお、本発明には、以下の諸態様または諸実施形態が包含され得る。
[1].
約10~50重量%のコラーゲン、好ましくは約15~40%のコラーゲン、より好ましくは約20~35%のコラーゲン、より好ましくは約25~35%のコラーゲン、より好ましくは約27.5~32.5%のコラーゲン、また最も好ましくは約30%のコラーゲンと、約50~90重量%の量の生体分解性の共重合体とを含む、組成物。
[2].
前記コラーゲンは、本来の、加工された、胎盤性の及び組換え型の形態である、ヒト、ウシ、ブタ及び海洋性のテロコラーゲン(telocollagen)、アテロコラーゲン並びにこれらの混合物からなる群から選択される、上記項目1記載の組成物。
[3].
前記コラーゲンは、I型コラーゲンである、上記項目1記載の組成物。
[4].
前記生体分解性の共重合体は、PLLA、PDLA及びPDLLAからなる群から選択される要素である、上記項目1記載の組成物。
[5].
PDLLAである共重合体は、高分子量のPDLLAである、上記項目4記載の組成物。
[6].
繊維、フィルム、エアロゾル、液滴、接着剤又は多孔質構造の形態である、上記項目1記載の組成物。
[7].
前記組成物は、化学架橋剤で処理されていない、上記項目6記載の組成物。
[8].
前記組成物は、化学架橋剤で処理されている、上記項目6記載の組成物。
[9].
複数の前記繊維は、電界紡糸法、溶融エレクトロライティング法(melt electro-writing)、押出成形、スプレー法(spraying)又は三次元造形法により作製される、上記項目6記載の組成物。
[10].
複数の繊維の形態であり、該繊維の平均直径は、約150~4,500nm、好ましくは約400nm~2,000nm、より好ましくは約600nm~1,500nm、また最も好ましくは約750nm~1,200nmである範囲にあり、また前記繊維は電界紡糸法によって作製される、上記項目6記載の組成物。
[11].
複数の繊維の形態であり、該繊維の平均直径は、約1~200μm、好ましくは約10~100μm、より好ましくは約15~50μmである範囲にあり、また最も好ましくは約20μmであり、また前記繊維はエレクトロライティング法及び溶融電界紡糸法からなる群から選択される技術によって作製される、上記項目6記載の組成物。
[12].
前記繊維はシートの形態に加工される、上記項目10記載の組成物。
[13].
上記項目1記載の組成物を含む、哺乳動物における軟組織損傷の修復を支持する、植込み型の医療デバイス。
[14].
軟組織損傷の修復を促進する方法であって、上記項目13記載の医療デバイスの植え込みを含む、方法。
[15].
アキレス腱断裂の修復を促進する方法であって、上記項目13記載のデバイスを、当該デバイスが当該腱の修復領域に架け渡り、機械的支持を提供するように固定するステップを含む、方法。