(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107893
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】中性子生成のためのイオンビーム標的アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H05H 6/00 20060101AFI20230727BHJP
G21K 5/08 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
H05H6/00
G21K5/08 C
G21K5/08 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023096837
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2021518030の分割
【原出願日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】62/681,432
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520478529
【氏名又は名称】フェニックス ニュートロン イメージング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タイ グリッブ
(72)【発明者】
【氏名】ロス ラデル
(57)【要約】
【課題】高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)と、(例えば、イオンビーム標的アセンブリを生成するために)HEIB標的の底面に接触するように構成される標的バッキングとを使用する、中性子を生成するためのシステム、デバイス、製品、および方法を提供すること
【解決手段】特定の実施形態では、HEIB標的は、標的に当たる高エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子の貫通深さよりも小さい厚みを有する。特定の実施形態では、標的バッキングは、高水素拡散金属(例えば、パラジウム)を備え、低減させられた陽子拡散距離のために全体にわたって分散された開放空間を有し、HEIB標的を通過する陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが停止させられるような形状および厚みを有する。本明細書では、イオンビーム加速器システムにおいて標的を変更するためのシステム、デバイス、および方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年6月6日に出願された米国仮特許出願第62/681,432号への優先権を主張し、その出願は、参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
(分野)
本明細書中で提供されるのは、高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)と、(例えば、イオンビーム標的アセンブリを生成するために)HEIB標的の底面に接触するように構成される標的バッキングとを使用する、中性子を生成するためのシステム、デバイス、製品、および方法である。特定の実施形態では、HEIB標的は、標的に当たる高エネルギーイオンビーム中の陽子の貫通深さよりも小さい厚みを有する。特定の実施形態では、標的バッキングは、高水素拡散金属(例えば、パラジウム)を備え、低減させられた陽子または重陽子拡散距離のために、全体にわたって分散された開放空間を有し、HEIB標的を通過する陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが停止させられるような形状および厚みを有する。本明細書中で提供されるのはまた、イオンビーム加速器システム内の標的を変更するためのシステム、デバイス、および方法である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
中性子を生産するための公知の方法は、高エネルギー(>2MeV)陽子をベリリウム(Be)標的に衝突させることである。ベリリウムは、溶融および/または熱変形を防止するために冷却される必要がある。典型的な形状は、水冷却ブロックにロウ付けされたBeディスク、または、ホルダに封止されかつ水もしくは他の流体によって(ビームから離れた)背面で直接冷却されるBeブロックである。この方法に一貫した問題は、陽子が埋め込まれる材料を、埋め込まれた陽子が脆化および膨張させることである。最終的に、これは、標的の直接的な物理的劣化(スポーリング)という結果となる。目に見える標的損傷前の典型的な埋め込まれた線量の限界は、約1018陽子/cm2である。高パワー密度システムでは、目に見える損傷は、数分の曝露で発生し得る。
【0004】
この問題を軽減するための一手法は、比較的少ない陽子がBe内に堆積されるように、Be標的を陽子の停止距離よりも薄くすることによる。陽子が材料を貫通する深さは、陽子エネルギーおよび陽子が堆積される材料に依存する。直接流体冷却されるBe標的の場合、陽子は、冷却流体内へ堆積され、膨張は発生しない。しかし、Be標的は、真空バリアであり、陽子ビームからの損傷を受けやすい。標的寿命は、確率的であり得、破壊は、保守的な交換スケジュールを要求する真空システムの破滅的な氾濫という結果となる。流体冷却された基板に据え付けられるBe標的の場合、陽子は、同一のブリスタ損傷およびスパーリング損傷を受けやすい基板内に堆積される。しかし、比較的大量の水素を吸収し得る基板材料を選択することによって、標的の寿命が増加され得る。例えば、タンタルは、損傷前のBeの約100から1000倍の量の水素を保持し得る。高パワーシステムにおいて、これは、100時間以上測定される標的寿命という結果となり得るが、それでも有限である。そのような場合、高中性子噴流の作出によって、材料が活性化される。必要なのは、長寿命放射性同位体の生産を低減するために最適化され得る設計である。これは、標的のより簡易で安全な操作およびメンテナンス、ならびに標的が活用されるデバイスのためのより高い稼動時間を可能とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本明細書中で提供されるのは、高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)および(例えば、イオンビーム標的アセンブリを生成するために)HEIB標的の底面に接触するように構成される標的バッキングを使用する、中性子を生成するためのシステム、デバイス、製品、および方法である。特定の実施形態では、HEIB標的は、標的に当たる高エネルギーイオンビーム中の陽子の貫通深さよりも小さい厚みを有する。いくつかの実施形態では、HEIB標的は、ベリリウム、ウラン、リチウム、リチウム化合物、タングステン、およびタンタルから選択される金属を備える。特定の実施形態では、高エネルギーイオンビームは、陽子および/または重陽子を備える。特定の実施形態では、標的バッキングは、高水素拡散金属(例えばパラジウム)を備え、低減させられた陽子または重陽子拡散距離のために全体にわたって分散された開放空間を有し、HEIB標的を通過する陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが停止させられるような形状および厚みを有する。いくつかの実施形態では、高エネルギーイオンビームは、水素イオンまたは重水素イオンを備える。本明細書中では、イオンビーム加速器システム内で標的を変更するためのシステム、デバイス、および方法が提供される。
【0006】
いくつかの実施形態において、本明細書中で提供されるのは、システムであり、システムは、a)頂面および底面を有する高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)であって、HEIB標的は、高エネルギーイオンビームに曝露されるときに中性子を生成し、HEIB標的は、高エネルギーイオンビーム中の陽子の貫通深さよりも小さい、頂面と底面との間の厚みを有する、高エネルギーイオンビーム標的と、b)高水素拡散金属(HHDM)を備える標的バッキングであって、標的バッキングは、標的バッキングが開放空間のない固体片であった場合に比べて陽子拡散距離または重陽子拡散距離が標的バッキング全体にわたって低減させられるように、全体にわたって分散された開放空間を有し、標的バッキングは、HEIB標的の底面に接触して位置付けられるように構成され、標的バッキングは、HEIB標的に接触して位置付けられるときに、HEIB標的を通過する高位エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが標的バッキングによって停止させられるような形状および厚みを有する、標的バッキングとを備える。特定の実施形態では、イオンビームは、陽子を備える。他の実施形態では、イオンビームは、重陽子を備える。いくつかの実施形態では、HEIB標的は、ベリリウム、ウラン、リチウム、リチウム化合物、タングステン、およびタンタルから選択される金属を備える。
【0007】
特定の実施形態において、本明細書中で提供されるのは、a)イオンビーム標的アセンブリを備える製品であり、イオン標的ビームアセンブリは、i)頂面および底面を有する高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)であって、HEIB標的は、高エネルギーイオンビームに曝露されるときに中性子を生成し、HEIB標的は、高エネルギーイオンビーム中の陽子の貫通深さよりも小さい、頂面と底面との間の厚みを有する、高エネルギーイオンビーム標的と、ii)高水素拡散金属(HHDM)を備える標的バッキングであって、標的バッキングは、標的バッキングが開放空間のない固体片であった場合に比べて、陽子または重陽子拡散距離が標的バッキング全体にわたって低減させられるように、全体にわたって分散された開放空間を有し、標的バッキングは、HEIB標的の底面に取り付けられ、標的バッキングは、HEIB標的を通過する高位エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが標的バッキングによって停止させられるような形状および厚みを有する、標的バッキングとを備える。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、HEIB標的は、ベリリウム、ウラン、リチウム、リチウム化合物、タングステン、およびタンタルから選択される金属を備える。
【0008】
特定の実施形態において、本明細書中で提供されるのは、中性子を生成する方法であり、方法は、a)(相互に接触する)HEIB標的および標的バッキングの両方、またはイオンビーム標的アセンブリを、本明細書中で説明されるように、イオンビーム加速器システムの標的チャンバ内に挿入することと、b)イオン加速器システムを用いて高エネルギーイオンビームを生成することによって、高エネルギーイオンビームがHEIB標的に当たり、それによって中性子を生成することとを備える。特定の実施形態では、方法は、c)中性子のうちの少なくともいくつかを収集することをさらに備える。他の実施形態では、ステップb)は、HEIB標的の破壊なく少なくとも2日(例えば、2...5...20...45...100...1000日)間継続的に実施される。さらなる実施形態では、ステップb)は、HEIB標的の破壊なく少なくとも14日間継続的に実施される。
【0009】
いくつかの実施形態では、標的バッキング内の開放空間は、細孔、溝、孔、波形、チャネル、オープンセル、ハニカムセル、ディンプル、不規則開口部、またはこれらの任意の組み合わせから選択される。特定の実施形態では、標的バッキングは、ろう付け、溶接、拡散ボンディング、または低い温度抵抗性という結果となる任意の他の方法によって、HEIB標的の底面に取り付けられ、または取り付けられるように構成される。
【0010】
特定の実施形態では、システムおよび製品は、冷却された基板をさらに備える。いくつかの実施形態では、標的バッキングは、冷却された基板に取り付けられ、または取り付けられるように構成される。さらなる実施形態では、冷却された基板は、水冷された基板またはグリコール冷却基板を備える。他の実施形態では、冷却された基板は、銅および/またはアルミニウムを備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、HEIB標的は、i)金属(例えば、ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステン、およびタンタル)を備える第1の層と、ii)ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステン、およびタンタルから成る群から選択される、第1の層で用いられる金属と異なる金属を備える第2の層とを備える。特定の実施形態では、HEIB標的は、ベリリウムで構成される第1の層と、ウランで構成される第2の層とを備える。特定の実施形態では、イオンビームが標的を横切るときにイオンビームを減速させるために、標的内の複数の層を用いることが採用され、これは、(大抵は電子相互作用に起因して)イオンビームをそのもともとのエネルギーからより低いエネルギーへと減速させる。いくつかの実施形態では、ビーム通路に沿って異なる長さ(エネルギー)で異なる材料を用いることは、中性子産出、エネルギー、および角度分布のよりよい最適化を可能とする。
【0012】
いくつかの実施形態では、HEIB標的は、1mmと15mmとの間(例えば、1mm...3mm...10mm...12mm...および15mm)の厚み、および20mmと100mmとの間(例えば、20mm...45mm...65mm...および100mm)の径を有する。特定の実施形態では、標的バッキングの厚みは、2mmと10mmとの間(例えば、2mm...5mm...7.5mm...および10mm)である。いくつかの実施形態では、HEIB標的および標的バッキングは、概して、ディスク形、正方形、八角形、楕円形、長方形であり、同一の径を有する。HEIB標的は、高エネルギーイオンビームが90度の入射角または90度ではない入射角(例えば45度...60度...30度等)で標的に当たるように設計され、このことは、ビームが標的に当たる範囲を増加させ、従って幾何学的な量によってビームのパワー密度を低減させる効果を有する。いくつかの実施形態では、そのような標的は、標的の傾きの方向において、楕円形、長方形、または他の細長形状を有する。
【0013】
特定の実施形態では、HEIB標的の少なくとも94%(例えば、95%...98%...99%...または100%)は、ベリリウム、ウラン、リチウム、リチウム化合物、タングステン、およびタンタルから選択される金属である。さらなる実施形態では、高水素拡散金属(HHDM)は、おパラジウムを備える。他の実施形態では、高水素拡散金属(HHDM)は、パラジウム、チタン、バナジウム、ニオブ、ジルコニウム、およびこれらの任意の組み合わせ(例えば、バナジウムおよびパラジウムの組み合わせ)から成る群から選択される。特定の実施形態では、HHDMは、これらの要素の組み合わせ、特に、優れた水素表面拡散特性を有することが公知であるより高価な材料(例えば、パラジウム)の薄い層で被覆されたより安価な材料(例えば、バナジウム)で構成される。いくつかの実施形態では、標的バッキングの少なくとも94%(例えば、95%...97.5%...99%...または100%)は、高水素拡散金属(HHDM)である。特定の実施形態では、標的バッキングは、パラジウムの薄膜で被覆される固体バナジウムコアで構成される。
【0014】
追加的な実施形態では、システムおよび製品は、標的チャンバをさらに備える。特定の実施形態では、標的バッキングは、HEIB標的の底面に位置付けられ(例えば、取り付けられ)、それによってイオンビーム標的アセンブリを生成し、イオンビーム標的アセンブリは、標的チャンバ内に位置する。他の実施形態では、システムおよび製品は、イオンビーム(例えば、陽子ビームまたは重陽子ビーム)を生み出すように構成されるイオン源と、イオン源に動作可能に結合され、イオンビームを受け取ってイオンビームを加速させて、高エネルギーイオンビームを生成するように構成される加速器とをさらに備える。さらなる実施形態では、標的バッキングは、HEIB標的の底面に取り付けられ、これによって、イオンビーム標的アセンブリを生成し、システムは、イオンビーム標的アセンブリを含む標的チャンバをさらに備える。さらなる実施形態では、イオンビーム標的アセンブリは、HEIB標的の破壊が加速器における真空の裂け目という結果にならないように、サイズ設定され、標的チャンバの内側に位置付けられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、高エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子は、2MeVより大きい陽子または重陽子である。さらなる実施形態では、HEIB標的は、バッキング構成要素がHEIB標的の底面に接触して位置付けられるとき、HEIB標的が前記バッキング構成要素に接触して位置付けられないときと比較して破壊前に少なくとも合計24時間長く(例えば、24...50...100...または1000時間より長く)高エネルギーイオンビームに当てられ得る。さらなる実施形態では、HEIB標的は、バッキング構成要素がHEIB標的の底面に接触して位置付けられるとき、HEIB標的が前記バッキング構成要素に接触して位置付けられないときと比較して破壊前に少なくとも合計7日間長く(例えば、7...25...100...または1000日長く)高エネルギーイオンビームに当てられ得る。
【0016】
追加的な実施形態において、本明細書中で提供されるのは、システムであり、システムは、a)イオンビームを生み出すように構成されるイオン源と、b)イオン源に動作可能に結合され、イオンビームを受け取ってイオンビームを加速させて、加速されたイオンビームを生成するように構成される加速器と、c)標的保持機構を備える標的チャンバであって、標的保持機構は、i)加速されたイオンビームに当てられたときに中性子を生成して時間経過により放射性標的になる標的を保持することと、ii)放射性標的が少なくとも1つの長柄ツールを用いて標的チャンバから取り除かれることを可能とすることであって、長柄ツールは、長柄ツールのユーザが照射されることを防ぐ、こととを行うように構成される。
【0017】
特定の実施形態において、本明細書中で提供されるのは、方法であり、方法は、a)少なくとも2つの標的のセットのうちの第1の標的をイオンビーム加速器内に挿入することと、b)イオンビーム加速器をある長さの時間の間作動させることによって、イオンビームが前記第1の標的に当たり、それによって中性子を生成して第1の標的を第1の放射性標的にすることと、c)イオンビーム加速器から第1の放射性標的を取り除くことと、d)少なくとも2つの標的のセットのうちの第2の標的をイオンビーム加速器内に挿入することと、e)イオンビーム加速器をある長さの時間の間作動させることによって、イオンビームが第2の標的に当たり、それによって中性子を生成して第2の標的を第2の放射性標的にすることと、f)冷却された第1の標的を生成するように、第1の放射性標的が時間経過によって冷却されて実質的または完全に非放射性となったことを識別することと、冷却された第1の標的をイオンビーム加速器内に挿入することと、g)イオンビーム加速器をある長さの時間の間作動させることによって、イオンビームが冷却された第1の標的に当たり、それによって中性子を生成して第1の冷却された標的を再び放射性の第1の標的とすることとを含む。
【0018】
特定の実施形態では、少なくとも2つの標的は、第1の標的および第2の標的、ならびに、第3の標的、第4の標的および第5の標的を含む少なくとも5つの標的であり、ステップa)およびステップb)は、第3の標的、その後第4の標的、その後前記第5の標的を用いて繰り返される。他の実施形態では、ステップf)およびステップg)は、第2の標的、第3の標的、第4の標的、および第5の標的を用いて、各々が冷却された後に繰り返される。追加的な実施形態では、少なくとも2つの標的は、少なくとも10個の標的である。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書中で提供されるのは、システムであり、システムは、a)イオンビームを生み出すように構成されるイオン源と、b)イオン源に動作可能に結合され、イオンビームを受け取ってイオンビームを加速させて、加速されたイオンビームを生成するように構成される加速器と、c)加速されたイオンビームを受け取るように構成される標的チャンバと、d)標的変更機構であって、標的変更機構は、i)複数の標的を保持することであって、各標的は、標的チャンバ内で、加速されたイオンビームに当てられたときに中性子を生成する、ことと、ii)標的チャンバの内側にあり加速されたイオンビームの通路内にある第1の位置に、複数の標的のうちの1つを保持し、標的チャンバの外側に残りの標的を保持することと、iii)第1の位置にある標的を標的チャンバの外側の位置に移動させ、残りの標的のうちの1つを標的チャンバの内側の第1の位置に移動させることとを行うように構成される、標的変更機構とを備える。さらなる実施形態では、複数の標的のうちの少なくとも1つは、第1の位置にないときに、任意の蓄積された放射が実質的または完全に放散することを可能とするチャンバの外側の位置にある。他の実施形態では、複数の標的のうちの少なくとも1つは、第1の位置にないときに、加速されたイオンビームの動作を停止または妨害することなくシステムから取り除かれ得る。特定の実施形態では、標的変更機構は、(人間の干渉なく、または標的変更機構を作動させること以外の人間の干渉なく、標的が移動させられることを可能とする)カルーセル、タレットまたはマガジンを備える。特定の実施形態では、複数の標的のうちの少なくとも1つは、第1の位置にないときに、自動的に放射容器内に堆積させられる。追加的な実施形態では、標的変更機構は、1または複数の追加の標的が、加速されたイオンビームの動作を停止または妨害することなく標的変更機構によって追加および保持されることを可能とするようにさらに構成される。
【0020】
特定の実施形態において、本明細書中で提供されるのは、標的チャンバを有するイオンビーム加速器における標的変更機構を備えるデバイスであり、標的変更機構は、a)複数の標的を保持することであって、各標的は、標的チャンバ内で、加速されたイオンビームに当てられたときに、中性子を生成する、ことと、b)標的チャンバの内側にあり加速されたイオンビームの通路内にある第1の位置に、複数の標的のうちの1つを保持し、標的チャンバの外側に残りの標的を保持することと、c)第1の位置にある標的を標的チャンバの外側の位置に移動させ、残りの標的のうちの1つを標的チャンバの内側の第1の位置に移動させることとを行うように構成される。
【0021】
特定の実施形態では、標的、標的保持機構、標的チャンバ、ろう付けおよび/または溶接材料、固定具、ならびに全ての他の構成要素は、中性子捕捉および他の中性子反応から生じる長寿命(例えば、120日の半減期)の放射性同位体の生産を最小化するように選択される。これらの材料の活用は、より簡単でより安全な標的の操作およびメンテナンス、ならびにこれらの材料が活用されるデバイスのためのより高い稼動時間を可能とする。さらに、標的の活動の低減は、より簡単な認可および処分を可能とする。例示的な材料は、アルミニウム、バナジウム、アルミニウム青銅、およびアルミニウムベースのろう付け(例えば、1100および4043)を含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
システムであって、前記システムは、
a)金属を備え、頂面および底面を有する、高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)であって、
前記金属は、ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステンおよびタンタルから成る群から選択され、
前記高エネルギーイオンビームは、陽子および/または重陽子を備え、
前記HEIB標的は、高エネルギーイオンビームに曝露されたときに中性子を生成し、
前記HEIB標的は、前記高エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子の貫通深さよりも小さい、前記頂面と底面との間の厚みを有する、高エネルギーイオンビーム標的と、
b)高水素拡散金属(HHDM)を備える標的バッキングであって、
前記標的バッキングは、全体にわたって分散された開放空間を有し、これにより、陽子または重陽子拡散距離が、前記標的バッキングが前記開放空間のない固体片であった場合に比べて、前記標的バッキング全体にわたって低減させられ、
前記標的バッキングは、前記HEIB標的の前記底面に接触して位置付けられるように構成され、
前記標的バッキングは、前記標的バッキングが前記HEIB標的に接触して位置付けられるときに、前記HEIB標的を通過する前記高エネルギーイオンビーム中の前記陽子および/または重陽子の全てまたは事実上全てが、前記標的バッキングによって停止させられるような形状および厚みを有する、標的バッキングと
を備える、システム。
(項目2)
前記開放空間は、細孔、溝、孔、波形、チャネル、オープンセル、ハニカムセル、不規則開口部、またはこれらの任意の組み合わせから選択される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記標的バッキングは、ろう付け、溶接、はんだ付け、拡散、またはボンディングによって、前記HEIB標的の前記底面に取り付けられ、または取り付けられるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目4)
c)冷却された基板をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記標的バッキングは、前記冷却された基板に取り付けられ、または取り付けられるように構成される、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記HEIB標的は、i)前記金属を備える第1の層と、ii)ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステン、およびタンタルから成る群から選択される、前記第1の層において用いられるものと異なる金属を備える第2の層とを備える、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記冷却された基板は、銅および/またはアルミニウムを備える、項目4に記載のシステム。
(項目8)
前記HEIB標的は、2mmと25mmとの間の厚み、および25mmと150mmとの間の径を有する、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記標的バッキングの前記厚みは、2mmと10mmとの間である、項目1に記載のシステム。
(項目10)
標的バッキングは、パラジウムの薄膜で被覆される固体バナジウムの核を備える、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記HEIB標的の少なくとも94%は、前記金属である、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記高水素拡散金属(HHDM)は、パラジウムを備える、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記高水素拡散金属(HHDM)は、パラジウム、チタン、バナジウム、ニオブ、ジルコニウム、およびこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記標的バッキングの少なくとも94%は、前記高水素拡散金属(HHDM)である、項目1に記載のシステム。
(項目15)
c)標的チャンバをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記標的バッキングは、前記HEIB標的の前記底面に位置付けられるか、また前記底面に取り付けられ、それによってイオンビーム標的アセンブリを生成し、前記イオンビーム標的アセンブリは、前記標的チャンバ内に位置する、項目15に記載のシステム。
(項目17)
c)イオンビームを生み出すように構成されるイオン源と、d)前記イオン源に動作可能に結合され、前記イオンビームを受け取って前記イオンビームを加速させて、前記高エネルギーイオンビームを生成するように構成される加速器とをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目18)
前記標的バッキングは、前記HEIB標的の前記底面に取り付けられ、それによってイオンビーム標的アセンブリを生成し、前記システムは、e)前記イオンビーム標的アセンブリを含む標的チャンバをさらに備える、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記イオンビーム標的アセンブリは、前記HEIB標的の破壊が前記加速器における真空の裂け目という結果とならないように、サイズ設定され、前記標的チャンバの内側に位置付けられる、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記高エネルギーイオンビーム中の前記陽子または前記重陽子は、2MeVより大きい陽子または重陽子である、項目1に記載のシステム。
(項目21)
前記HEIB標的は、前記バッキング構成要素が前記HEIB標的の前記底面に接触して位置付けられるとき、前記HEIB標的が前記バッキング構成要素に接触して位置づけられないときと比較して、破壊前に少なくとも合計24時間長く前記高エネルギーイオンビームに当てられ得る、項目1に記載のシステム。
(項目22)
前記HEIB標的は、前記バッキング構成要素が前記HEIB標的の前記底面に接触して位置付けられるとき、前記HEIB標的が前記バッキング構成要素に接触して位置づけられないときと比較して、破壊前に少なくとも合計7日間長く前記高エネルギーイオンビームに当てられ得る、項目1に記載のシステム。
(項目23)
製品であって、前記製品は、a)イオンビーム標的アセンブリを備え、前記イオン標的ビームアセンブリは、
i)金属を備えかつ頂面および底面を有する高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)であって、
前記金属は、ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステン、およびタンタルから成る群から選択され、
前記高エネルギーイオンビームは、陽子および/または重陽子を備え、
前記HEIB標的は、高エネルギーイオンビームに曝露されるときに中性子を生成し、
前記HEIB標的は、前記頂面と前記底面との間の厚みを有し、前記頂面と前記底面との間の厚みは、前記高エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子の貫通深さよりも小さい、高エネルギーイオンビーム標的と、
ii)高水素拡散金属(HHDM)を備える標的バッキングであって、
前記標的バッキングは、全体にわたって分散された開放空間を有し、これにより、前記標的バッキングが前記開放空間のない固体片であった場合と比べて、前記陽子または重陽子拡散距離が前記標的バッキング全体にわたって低減させられ、
前記標的バッキングは、前記HEIB標的の前記底面に取り付けられ、
前記標的バッキングは、前記HEIB標的を通過する前記高位エネルギーイオンビーム中の前記陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが前記標的バッキングによって停止させられるような形状および厚みを有する、標的バッキングと
を備える、製品。
(項目24)
前記開放空間は、細孔、溝、孔、波形、チャネル、オープンセル、ハニカムセル、不規則開口部、またはこれらの任意の組み合わせから選択される、項目23に記載のシステム。
(項目25)
前記標的バッキングは、ろう付け、はんだ付け、溶接、または拡散ボンディングによって前記HEIB標的の前記底面に取り付けられる、項目23に記載のシステム。
(項目26)
b)冷却された基板をさらに備える、項目23に記載のシステム。
(項目27)
前記HEIB標的は、i)前記金属を備える第1の層と、ii)ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステン、およびタンタルから成る群から選択される、前記第1の層において用いられるものと異なる金属を備える第2の層とを備える、項目23に記載のシステム。
(項目28)
前記冷却された基板は、銅および/またはアルミニウムを備える、項目26に記載のシステム。
(項目29)
前記HEIB標的は、2mmと25mmとの間の厚み、および25mmと150mmとの間の径を有する、項目23に記載のシステム。
(項目30)
前記標的バッキングの前記厚みは、2mmと10mmとの間である、項目23に記載のシステム。
(項目31)
前記標的バッキングは、パラジウムの薄膜で被覆される固体バナジウムの核を備える、項目23に記載のシステム。
(項目32)
前記HEIB標的の少なくとも95%は、前記金属である、項目23に記載のシステム。
(項目33)
前記高水素拡散金属(HHDM)は、パラジウムを備える、項目23に記載のシステム。
(項目34)
前記高水素拡散金属(HHDM)は、パラジウム、チタン、バナジウム、ニオブ、ジルコニウム、およびこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、項目23に記載のシステム。
(項目35)
前記標的バッキングの少なくとも95%は、前記高水素拡散金属(HHDM)である、項目23に記載のシステム。
(項目36)
b)標的チャンバをさらに備える、項目23に記載のシステム。
(項目37)
前記イオンビーム標的アセンブリは、前記標的チャンバ内に位置する、項目36に記載のシステム。
(項目38)
b)イオンビームを生み出すように構成されるイオン源と、c)前記イオン源に動作可能に結合され、前記イオンビームを受け取って前記イオンビームを加速させて、前記高エネルギーイオンビームを生成するように構成される加速器とをさらに備える、項目23に記載のシステム。
(項目39)
e)前記イオンビーム標的アセンブリを含む標的チャンバをさらに備える、項目38に記載のシステム。
(項目40)
前記イオンビーム標的アセンブリは、前記HEIB標的の破壊が前記加速器における真空の裂け目という結果にならないように、サイズ設定され、前記標的チャンバの内側に位置付けられる、項目39に記載のシステム。
(項目41)
前記高エネルギーイオンビーム中の陽子または重陽子は、2MeVより大きい陽子または重陽子である、項目23に記載のシステム。
(項目42)
前記HEIB標的は、前記バッキング構成要素が前記HEIB標的の前記底面に取り付けられるとき、前記HEIB標的が前記バッキング構成要素に取り付けられないときと比較して、破壊前に少なくとも合計24時間長く前記高エネルギーイオンビームに当てられ得る、項目23に記載のシステム。
(項目43)
前記HEIB標的は、前記バッキング構成要素が前記HEIB標的の前記底面に取り付けられるとき、前記HEIB標的が前記バッキング構成要素に取り付けられないときと比較して、破壊前に少なくとも合計7日間長く前記高エネルギーイオンビームに当てられ得る、項目23に記載のシステム。
(項目44)
中性子を生成する方法であって、前記方法は、
a)項目1~22のうちのいずれか一項に記載のHEIB標的および標的バッキングの両方、または項目23~43のうちのいずれか一項に記載のイオンビーム標的アセンブリを、イオンビーム加速器システムの標的チャンバ内に挿入することと、
b)前記イオン加速器システムを用いて高エネルギーイオンビームを生成することによって、前記高エネルギーイオンビームが前記HEIB標的に当たり、それによって中性子を生成することと
を備える、方法。
(項目45)
c)前記中性子の少なくともいくつかを収集することをさらに備える、項目44に記載の方法。
(項目46)
ステップb)は、前記HEIB標的の破壊なく少なくとも2日間継続的に実施される、項目44に記載の方法。
(項目47)
ステップb)は、前記HEIB標的の破壊なく少なくとも14日間継続的に実施される、項目44に記載の方法。
(項目48)
a)イオンビームを生み出すように構成されるイオン源と、
b)前記イオン源に動作可能に結合され、前記イオンビームを受け取って前記イオンビームを加速させて、加速されたイオンビームを生成するように構成される加速器と、
c)標的保持機構を備える標的チャンバであって、前記標的保持機構は、
i)前記加速されたイオンビームに当てられたときに中性子を生成して時間経過により放射性標的となる標的を保持することと、
ii)前記放射性標的が長柄ツールを用いて前記標的チャンバから取り除かれることを可能とすることであって、前記長柄ツールは、前記長柄ツールのユーザが照射されることを防ぐ、ことと
を行うように構成される、標的チャンバと
を備える、システム。
(項目49)
a)少なくとも2つの標的のセットのうちの第1の標的をイオンビーム加速器内に挿入することと、
b)前記イオンビーム加速器をある長さの時間の間作動させることによって、イオンビームが前記第1の標的に当たり、それによって中性子を生成して、前記第1の標的を第1の放射性標的にすることと、
c)前記イオンビーム加速器から前記第1の放射性標的を取り除くことと、
d)前記少なくとも2つの標的のセットのうちの第2の標的を前記イオンビーム加速器内に挿入することと、
e)前記イオンビーム加速器をある長さの時間の間作動させることによって、イオンビームが前記第2の標的に当たり、それによって中性子を生成して、前記第2の標的を第2の放射性標的にすることと、
f)冷却された第1の標的を生成するように、前記第1の放射性標的が時間経過によって冷却されて実質的または完全に非放射性となったことを識別し、前記冷却された第1の標的を前記イオンビーム加速器内に挿入することと、
g)前記イオンビーム加速器をある長さの時間の間作動させることによって、イオンビームが前記冷却された第1の標的に当たり、それによって中性子を生成して、前記第1の冷却された標的を再び放射性の第1の標的とすることと
を含む、方法。
(項目50)
前記少なくとも2つの標的は、前記第1の標的および前記第2の標的、ならびに、第3の標的、第4の標的および第5の標的を含む少なくとも5つの標的であり、ステップa)およびステップb)は、前記第3の標的、その後前記第4の標的、その後前記第5の標的を用いて繰り返される、項目49に記載の方法。
(項目51)
ステップf)およびステップg)は、前記第2の標的、第3の標的、第4の標的、および第5の標的を用いて、各々が冷却された後に繰り返される、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記少なくとも2つの標的は、少なくとも10個の標的である、項目49に記載の方法。
(項目53)
a)イオンビームを生み出すように構成されるイオン源と、
b)前記イオン源に動作可能に結合され、前記イオンビームを受け取って前記イオンビームを加速させて、加速されたイオンビームを生成するように構成される加速器と、
c)前記加速されたイオンビームを受け取るように構成される標的チャンバと、
d)標的変更機構であって、前記標的変更機構は、
i)複数の標的を保持することであって、各標的は、前記標的チャンバ内で、前記加速されたイオンビームに当てられたときに中性子を生成する、ことと、
ii)前記標的チャンバの内側にあり前記加速されたイオンビームの通路内にある第1の位置に、前記複数の標的のうちの1つを保持すると共に、前記標的チャンバの外側に残りの標的を保持することと、
iii)前記第1の位置にある前記標的を前記標的チャンバの外側の位置に移動させ、前記残りの標的のうちの1つを前記標的チャンバの内側の前記第1の位置に移動させることと
を行うように構成される、標的変更機構と
を備える、システム。
(項目54)
前記複数の標的のうちの少なくとも1つは、前記第1の位置にないときに、任意の蓄積された放射が実質的または完全に放散することを可能とする前記チャンバの外側の位置にある、項目53に記載のシステム。
(項目55)
前記複数の標的のうちの少なくとも1つは、前記第1の位置にないときに、前記加速されたイオンビームの動作を停止または妨害することなく前記システムから取り除かれ得る、項目53に記載のシステム。
(項目56)
前記標的変更機構は、カルーセル、タレットまたはマガジンを備える、項目53に記載のシステム。
(項目57)
前記複数の標的のうちの少なくとも1つは、前記第1の位置にないときに、自動的に放射容器内に堆積させられる、項目53に記載のシステム。
(項目58)
標的変更機構は、1または複数の追加の標的が、前記加速されたイオンビームの動作を停止または妨害することなく前記標的変更機構によって追加および保持されることを可能とするようにさらに構成される、項目53に記載のシステム。
(項目59)
標的チャンバを有するイオンビーム加速器のための標的変更機構を備えるデバイスであって、前記標的変更機構は、
a)複数の標的を保持することであって、各標的は、前記標的チャンバ内で、加速されたイオンビームに当てられたときに中性子を生成する、ことと、
b)前記標的チャンバの内側にあり前記加速されたイオンビームの通路内にある第1の位置に、前記複数の標的のうちの1つを保持すると共に、前記標的チャンバの外側に残りの標的を保持することと、
c)前記第1の位置にある前記標的を前記標的チャンバの外側の位置に移動させ、前記残りの標的のうちの1つを前記標的チャンバの内側の前記第1の位置に移動させることと
を行うように構成される、デバイス。
(項目60)
前記標的のうちの少なくとも1つは、i)第1の金属を備える第1の層と、ii)前記第1の層で用いられる金属と異なる第2の金属を備える第2の層とを備え、前記第1の層および前記第2の層のための前記金属は、ベリリウム、ウラン、リチウム、タングステン、およびタンタルから成る群から選択される、項目59に記載のデバイス。
(項目61)
前記標的、標的保持機構、または標的チャンバのいずれかは、アルミニウム、バナジウム、アルミニウム青銅、アルミニウムベースのろう付け、またはこれらの任意の組み合わせを備えるかまたはさらに備える、項目1~59のうちのいずれか一項に記載のデバイス、システム、または方法。
(項目62)
アルミニウム、バナジウム、アルミニウム青銅、アルミニウムベースのろう付け、またはこれらの任意の組み合わせから構成されるろう付け材料、溶接材料、および/または少なくとも1つの固定具をさらに備える、項目1~60のうちのいずれか一項に記載のデバイス、システム、または方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】
図1Aは、開放空間を有する(例えば、パラジウムから構成される)高水素拡散金属標的バッキングに取り付けられる(例えば、ベリリウムから構成される)高エネルギーイオンビーム標的から構成されるイオンビーム標的アセンブリの断面の例示的な概略図を示す。イオンビーム標的アセンブリは、(例えば、銅またはアルミニウムから構成される)冷却された基板に取り付けられて示される。
【
図1B】
図1Bは、標的バッキング中の開放空間の詳細をクローズアップして示す、
図1Aの例示的イオンビーム標的アセンブリのクローズアップ断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
本明細書で提供されるのは、中性子を生成するためのシステム、デバイス、製品、および方法であり、そのシステム、デバイス、製品、および方法は、高エネルギーイオンビーム標的(HEIB標的)と、(例えば、イオンビーム標的アセンブリを生成するために)HEIB標的の底面に接触するように構成される標的バッキングとを使用する。特定の実施形態では、HEIB標的は、標的に当てる高エネルギーイオンビーム中の陽子の貫通深さよりも小さい厚みを有する。いくつかの実施形態では、HEIB標的は、ベリリウム、ウラン、リチウム、リチウム化合物、タングステン、およびタンタルから選択される金属を備える。特定の実施形態では、イオンビームは、陽子を備える。他の実施形態では、イオンビームは、重陽子を備える。特定の実施形態では、標的バッキングは、高水素拡散金属(例えば、パラジウム)を備え、低減させられた陽子または重陽子拡散距離のために全体にわたって分散された開放空間を有し、HEIB標的を通過する陽子または重陽子の全てまたは事実上全てが停止させられるような形状および厚みを有する。本明細書中で提供されるのはまた、イオンビーム加速器システムにおいて標的を変更するためのシステム、デバイス、および方法である。個々または集合的なイオンビーム標的アセンブリ(およびその構成要素)は、例えば、高エネルギー中性子の任意の非反応源に適用され得る。本テクノロジーの実施形態は、米国特許公報第2011/0096887号、2012/0300890号、米国特許出願第15/873,664号、および2016/0163495号、ならびに、米国特許第8,837,662号および9,024,261号(これらの全ては、参照によって全体が本明細書中に援用される)で説明されるもの等の高エネルギーイオンビーム生成器システムにおいて採用され得る。
【0024】
物品、デバイス、およびシステムの非限定的な実施形態は、以下を含む。ベリリウム(またはウラン、リチウム、リチウム化合物、タングステン、またはタンタル)標的は、水冷された基板(例えば、銅またはアルミニウム)に接合させられる薄い波形のパラジウム標的バッキング(例えば、シート)に接合させられる。ベリリウムの厚みは、入射陽子の貫通深さよりも小さい。標的バッキングの厚みは、陽子または重陽子の全てが標的バッキングによって停止させられるために十分である。標的バッキングは、例えば、パラジウム金属のほとんどが表面から比較的短い距離になるような任意のパターンで溝を付けられる。パラジウム内の水素の拡散および溶解性は非常に高い。パラジウムに植え込まれた過剰な水素(陽子)は、近傍の溝に拡散し、損傷がパラジウムに発生する前に、システムから離れることが可能である。寿命は非常に長く、Beへの小さな損傷出来事によってのみ制限される。パラジウムの厚みおよび溝付けの相対的な量は、拡散速度を増加させるように、照射の下でのパラジウムの温度を調整するように用いられる。標的の破壊は、真空の裂け目という結果とならないことがある。比較的高い水素拡散性を有する任意の材料が、パラジウムの代わりに用いられ得る。好適な性能は、チタン、バナジウム、ニオブ、ジルコニウム等の著しく安い材料を用いて取得され得る。溝付けの他にも、水素の拡散距離を低減する任意の機構も使用され得る。例えば、粉末冶金または他の技術から作り出される陽子オープンセル型パラジウム(または他の材料)も用いられ得る。
【外国語明細書】