IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メレクシス・テクノロジーズ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特開2023-1079磁石の配向を決定するデバイスおよび方法と、ジョイスティック
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001079
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】磁石の配向を決定するデバイスおよび方法と、ジョイスティック
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20221222BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01B7/00 103M
G01D5/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097527
(22)【出願日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】21180417
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516186407
【氏名又は名称】メレクシス・テクノロジーズ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】MELEXIS TECHNOLOGIES SA
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】クローズ,ガエル
(72)【発明者】
【氏名】デュプレ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】デポールテル,ジャン-クロード
(72)【発明者】
【氏名】ビドー,イヴ
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA04
2F063BD15
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA52
2F077CC02
2F077JJ08
2F077JJ23
(57)【要約】
【課題】半導体基板に対して所定の位置を有する基準位置(Pref)を中心に枢動可能な磁石の配向(α,β)を決定する方法を提供する。
【解決手段】前記方法は、a)磁場勾配:i)第1の磁場勾配(dBx/dx)、ii)第2の磁場勾配(dBy/dy)、iii)第3の磁場勾配(dBz/dx)、iv)第4の磁場勾配(dBz/dy)のうちの少なくとも2つを決定することと、b)磁場勾配のうちの少なくとも1つに基づいて第1の角度(α)を決定することと、c)磁場勾配のうちの少なくとも1つに基づいて第2の角度(β)を決定することとを含む。この方法を実行するように構成されているセンサデバイス。このようなセンサデバイスと、磁石と、を備え、任意選択的にジョイスティックに接続されたセンサシステムを提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(A)を有する磁石の配向(α,β)を決定するためのセンサデバイスであって、
半導体基板であって、磁場勾配:
i)前記半導体基板に平行な第1の方向(X)に沿って、前記第1の方向(X)に配向された第1の磁場成分(Bx)の第1の磁場勾配(dBx/dx)、
ii)前記半導体基板に平行で前記第1の方向(X)に垂直な第2の方向(Y)に沿って、前記第2の方向(Y)に配向された第2の磁場成分(By)の第2の磁場勾配(dBy/dy)、
iii)前記第1の方向(X)に沿って、前記半導体基板に垂直な第3の方向(Z)に配向された第3の磁場成分(Bz)の第3の磁場勾配(dBz/dx)、および
iv)前記第2の方向(Y)に沿って、前記第3の方向(Z)に配向された前記第3の磁場成分(Bz)の第4の磁場勾配(dBz/dy)のうちの少なくとも2つを決定するように構成された複数の磁気センサを含む半導体基板と、
前記磁場勾配のうちの少なくともいくつかに基づいて第1の角度(α)および第2の角度(β)を決定するよう構成された処理回路(930)と、を備える、センサデバイス。
【請求項2】
前記複数の磁気センサが、第1のセンサ(S1)、第2のセンサ(S2)、第3のセンサ(S3)、および第4のセンサ(S4)を含み、
第1のセンサ場所に位置する前記第1のセンサ(S1)および第2のセンサ場所に位置する前記第2のセンサ(S2)が、前記第1の方向(X)に配向された第1の仮想線上に位置し、互いに第1の距離だけ離間され、
前記第1のセンサ(S1)が、前記第1の方向(X)に配向された第1の磁場成分(Bx1)および前記第3の方向(Z)に配向された第2の磁場成分(Bz1)を測定するように構成され、
前記第2のセンサ(S2)が、前記第1の方向(X)に配向された第3の磁場成分(Bx2)および前記第3の方向(Z)に配向された第4の磁場成分(Bz2)を測定するように構成され、
第3のセンサ場所に位置する前記第3のセンサ(S3)および第4のセンサ場所に位置する前記第4のセンサ(S4)が前記第2の方向(Y)に配向された第2の仮想線上に位置し、互いに第2の距離だけ離間され、
前記第3のセンサ(S3)が、前記第2の方向(Y)に配向された第5の磁場成分(By1)および前記第3の方向(Z)に配向された第6の磁場成分(Bz3)を測定するように構成され、
前記第4のセンサ(S4)が、前記第1の方向(X)に配向された第7の磁場成分(By2)および前記第3の方向(Z)に配向された第8の磁場成分(Bz4)を測定するように構成されている、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記第1の角度(α)が、式
α=K1*atan2(dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、
式中、αは前記第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは前記第1の磁場勾配であり、dBz/dxは前記第3の磁場勾配であり、K1は第1の所定の定数であり、
前記第2の角度(β)が、式:
β=K2*atan2(dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、
式中、βは前記第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは前記第2の磁場勾配であり、dBz/dyは前記第4の磁場勾配であり、K2は第2の所定の定数である、請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記第1の角度(α)が、式
α=K1*atan2(K3*dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、
式中、αは前記第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは前記第1の磁場勾配であり、dBz/dxは前記第3の磁場勾配であり、K1およびK3は所定の定数であり、
前記第2の角度(β)が、式
β=K2*atan2(K4*dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、
式中、βは前記第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは前記第2の磁場勾配であり、dBz/dyは前記第4の磁場勾配であり、K2およびK4は所定の定数である、請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記磁石が、前記磁石の仮想軸(A)が、前記半導体基板に対して所定の位置を有する基準点(Pref)を中心に枢動可能であるように、移動可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記第1のセンサ場所と前記第2のセンサ場所との間の第1の距離(ΔX)が、前記第3のセンサ場所と前記第4のセンサ場所との間の第2の距離(ΔY)に実質的に等しい、または
前記第1のセンサ場所と前記第2のセンサ場所との間の第1の距離(ΔX)が、前記第3のセンサ場所と前記第4のセンサ場所との間の第2の距離(ΔY)よりも少なくとも5%大きいか、または少なくとも5%小さい、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記4つのセンサ(S1~S4)の各々が、集積磁気集中器(IMC1~IMC4)および2つの水平ホール素子(H1~H8)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記4つのセンサ(S1~S4)の各々が、水平ホール素子および垂直ホール素子を含み、または
前記4つのセンサ(S1~S4)の各々が、水平ホール素子および少なくとも1つの磁気抵抗性センサ素子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記処理回路が、前記半導体基板に一体化されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
位置センサシステム(100;700;800;1100)であって、
先行請求項のいずれか一項に記載のセンサデバイスであって、半導体基板を備える、センサデバイスと、
前記半導体基板に対して所定の位置を有する基準点(Pref)を中心に枢動可能な磁石と、を備える、位置センサシステム。
【請求項11】
前記システムが、前記磁石に接続されたジョイスティックをさらに備える、請求項10に記載の位置センサシステム。
【請求項12】
半導体基板に対して所定の位置を有する基準点(Pref)を中心に枢動可能な磁石の配向(α,β)を決定する方法(1000)であって、
a)磁場勾配:
i)前記半導体基板に平行な第1の方向(X)に沿って、前記第1の方向(X)に配向された第1の磁場成分(Bx)の第1の磁場勾配(dBx/dx)を決定すること(1001)、
ii)前記半導体基板に平行で前記第1の方向(X)に垂直な第2の方向(Y)に沿って、前記第2の方向(Y)に配向された第2の磁場成分(By)の第2の磁場勾配(dBy/dy)、
iii)前記第1の方向(X)に沿って、前記半導体基板に垂直な第3の方向(Z)に配向された第3の磁場成分(Bz)の第3の磁場勾配(dBz/dx)、
iv)前記第2の方向(X)に沿って、前記第3の方向(Z)に配向された前記第3の磁場成分(Bz)の第4の磁場勾配(dBz/dy)のうちの少なくとも2つを決定する(1001、1002、1003、1004)ことと、
b)前記磁場勾配のうちの少なくとも1つに基づいて、前記第1の方向(X)に平行な第1の仮想平面(XZ)上の前記磁石の軸(A)の正投影と前記第3の方向(Z)との間に形成された第1の角度(α)を決定する(1005)ことと、
c)前記磁場勾配のうちの少なくとも1つに基づいて、前記第2の方向(Y)に平行な第2の仮想平面(YZ)上の前記磁石の前記軸(A)の正投影と前記第3の方向(Z)との間に形成された第2の角度(β)を決定する(1006)ことと、を含む、方法(1000)。
【請求項13】
前記第1の角度(α)が、
α=K1*atan2(dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、
式中、αは前記第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは前記第1の磁場勾配であり、dBz/dxは前記第3の磁場勾配であり、K1は第1の所定の定数であり、
前記第2の角度(β)が、
β=K2*atan2(dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、
式中、βは前記第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは前記第2の磁場勾配であり、dBz/dyは前記第4の磁場勾配であり、K2は第2の所定の定数である、請求項12に記載の方法(1000)。
【請求項14】
前記第1の角度(α)が、
α=K1*atan2(K3*dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、
式中、αは前記第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは前記第1の磁場勾配であり、dBz/dxは前記第3の磁場勾配であり、K1およびK3は所定の定数であり、
前記第2の角度(β)が、
β=K2*atan2(K4*dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、
式中、βは前記第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは前記第2の磁場勾配であり、dBz/dyは前記第4の磁場勾配であり、K2およびK4は所定の定数である、請求項12に記載の方法(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、磁気位置センサシステム、デバイス、および方法の分野に関し、より具体的には、固定基準点の周りで枢動可能な磁石の配向を測定するための磁気位置センサシステムに関する。本発明はまた、該磁石がジョイスティックに接続される位置センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気位置センサシステム、特に線形または角度位置センサシステムが、当該技術分野において既知である。位置センサシステムの多くの変形例が存在し、次の要件のうちの1つ以上を扱う:単純または安価な磁気構造を使用すること、単純または安価なセンサデバイスを使用すること、比較的大きな範囲で測定することができること、高い精度で測定することができること、単純な算術のみを必要とすること、高速で測定することができること、位置決め誤差に対して非常に堅牢であること、外乱場に対して非常に堅牢であること、冗長性を提供すること、誤差を検出することができること、誤差を検出および修正することができること、良好な信号対雑音比(SNR)を有すること、1つの自由度(並進または回転)のみを有すること、2つの自由度(例えば、1つの並進および1つの回転、または2つの回転)を有することなど。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願第21159804.0号
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0110239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの既知のシステムでは、システムは、例えば、1つの軸を中心に回転する、または1つの軸に沿って並進するなど、1つの運動自由度のみを有する。
【0005】
磁石が少なくとも2つの自由度を有する磁気位置センサシステムはまた、例えば、軸に沿って移動可能であり、該軸を中心に回転可能である磁石を開示する2021年2月28日に出願された特許文献1から、または磁石の位置、姿勢、もしくは配向に関する情報を決定するための少なくとも1つの訓練されたニューラルネットワークを含む回路を開示する特許文献2から当該技術分野で知られている。これらの例は、磁石が少なくとも2つの自由度を有する位置センサシステムが、1つの自由度のみを有するシステムよりもはるかに複雑であることを示す。
【0006】
改善または代替案の余地は常にある。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、センサデバイス、位置センサシステム、および磁石の配向(α,β)を決定する方法を提供することである。
【0008】
本発明の実施形態の目的は、センサデバイス、位置センサシステム、および固定基準点の周りで枢動可能な円筒磁石の配向(α,β)を決定する方法を提供することである。固定基準点は、半導体基板の上または下の所定の高さ(「上」は、磁石と同じ基板の側にあることを意味し、「下」は、磁石と反対側の基板にあることを意味する)に位置し得る。
【0009】
本発明の実施形態の特定の目的は、センサデバイス、位置センサシステム、および半導体基板上に位置する基準位置の周りで枢動可能な、軸方向に磁化された円筒磁石の軸の配向(α,β)を決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
好ましい実施形態では、配向は、外乱場(「迷磁場」としても知られる)に対して非常に堅牢である方法で決定される。
【0011】
本発明の実施形態の特定の目的は、このような磁石を備えるジョイスティックを提供することであり、ジョイスティックの配向は、例えば、外乱場に対して実質的に感応でない方法で、改善された精度で決定される。
【0012】
これらの目的は、本発明の実施形態によって達成される。
【0013】
第1の態様によると、本発明は、軸を有する磁石(例えば、2極磁石)の配向を決定するためのセンサデバイスを提供し、センサデバイスは、磁場勾配:i)第1の方向に沿って半導体基板に平行な第1の方向に配向された第1の磁場成分の第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)、ii)第2の方向に沿って、半導体基板に平行で第1の方向に垂直な第2の方向に配向された第2の磁場成分の第2の磁場勾配(例えば、dBy/dy)、iii)第1の方向に沿って、半導体基板に垂直な第3の方向に配向された第3の磁場成分の第3の磁場勾配(例えば、dBz/dx)、およびiv)第2の方向に沿って、第3の方向に配向された第3の磁場成分の第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)のうちの少なくとも2つを決定するように構成された複数の磁気センサを含む半導体基板を備え、センサデバイスは、磁場勾配のうちの少なくともいくつかに基づいて第1の角度(例えば、α)および第2の角度(例えば、β)を決定するよう構成された処理回路をさらに備える。
【0014】
一実施形態では、センサ素子は、2つの磁場勾配、すなわち、dBz/dxおよびdBz/dyのみを決定するように構成され、処理ユニットは、1つの磁場勾配、すなわち、dBz/dxのみの関数として第1の角度(例えば、α)を決定するように、および1つの磁場勾配、すなわち、dBz/dyのみの関数として第2の角度(例えば、β)を決定するように構成される。
【0015】
第1の角度は、第1の方向Xに平行な第1の仮想平面XZ上の磁石の軸Aの正投影と第3の方向Zの間に形成され得、第2の角度は、第2の方向Yに平行な第2の平面YZ上の磁石の軸Aの正投影と第3の方向Zの間に形成され得る。
【0016】
磁石は、円筒磁石であってもよい。
【0017】
磁石は、2極磁石、例えば、円筒2極磁石、または2極棒磁石、または2極球磁石であってもよい。
【0018】
磁石は、軸方向に磁化されたリング磁石または軸方向に磁化されたディスク磁石であってもよい。
【0019】
円筒磁石は、3.0mm~15.0mmの範囲、または4.0mm~12.0mmの範囲、または4.0mm~10.0mmの範囲の外径を有し得る。
【0020】
円筒磁石は、高さH(軸方向)と、この高さと外径との比(H/D)が、20%~100%の範囲内、20%~80%の範囲内、または25%~75の範囲内、例えば、約50%の値であるような外径Dとを有してよい。
【0021】
一実施形態では、処理回路は、少なくとも第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)および第3の磁場勾配(例えば、dBz/dx)に基づいて第1の角度を決定し、少なくとも第2の磁場勾配(例えば、dBy/dy)および第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)のみに基づいて第2の角度を決定するように構成される。
【0022】
一実施形態では、処理回路は、第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)および第3の磁場勾配(例えば、dBz/dx)のみに基づいて第1の角度を決定するように、ならびに第2の磁場勾配(例えば、dBy/dy)および第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)のみに基づいて第2の角度を決定するように構成される。
【0023】
一実施形態では、複数の磁気センサは、第1のセンサ、第2のセンサ、第3のセンサ、および第4のセンサを含み、第1のセンサ場所に位置する第1のセンサおよび第2のセンサ場所に位置する第2のセンサは、第1の方向に配向された第1の仮想線上に位置し、互いに第1の距離だけ離間され、第1のセンサは、第1の方向に配向された第1の磁場成分および第3の方向に配向された第2の磁場成分を測定するように構成され、第2のセンサは、第1の方向に配向された第3の磁場成分および第3の方向に配向された第4の磁場成分を測定するように構成され、第3のセンサ場所に位置する第3のセンサおよび第4のセンサ場所に位置する第4のセンサは、第2の方向に配向された第2の仮想線上に位置し、互いに第2の距離だけ離間され、第3のセンサは、第2の方向に配向された第5の磁場成分および第3の方向に配向された第6の磁場成分を測定するように構成され、第4のセンサは、第1の方向に配向された第7の磁場成分および第3の方向に配向された第8の磁場成分を測定するように構成される。
【0024】
そのような構成を使用して、第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)は、第1の磁場成分と第3の磁場成分との間の差に基づいてもよく、第2の磁場勾配(例えば、dBz/dx)は、第2の磁場成分と第4の磁場成分との間の差に基づいてもよく、第3の磁場勾配(例えば、dBy/dy)は、第5の磁場成分と第7の磁場成分との間の差に基づいてもよく、第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)は、第6の磁場成分と第8の磁場成分との間の差に基づいてもよい。
【0025】
実施形態では、第1の角度(α)は、式
α=K1*atan2(dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、式中、αは第1の角度であり、atan2()は2つの引数の正接関数であり、dBx/dxは第1の磁場勾配であり、dBz/dxは第3の磁場勾配であり、K1は第1の所定の定数であり、第2の角度(β)は、式
β=K2*atan2(dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、式中、βは第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは第2の磁場勾配であり、dBz/dyは第4の磁場勾配であり、K2は第2の所定の定数である。
【0026】
実施形態では、第1の角度(α)は、式
α=K1*atan2(K3*dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、式中、αは第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは第1の磁場勾配であり、dBz/dxは第3の磁場勾配であり、K1およびK3は所定の定数であり、第2の角度(β)は、式:
β=K2*atan2(K4*dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、式中、βは第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは第2の磁場勾配であり、dBz/dyは第4の磁場勾配であり、K2およびK4は所定の定数である。
【0027】
一実施形態では、磁石の仮想軸が、半導体基板に対して所定の位置を有する基準点(例えば、Pref)を中心に枢動可能であるように、磁石は移動可能である。
【0028】
一実施形態では、基準点(例えば、Pref)は、半導体基板上、したがってセンサと同じ平面内に位置する。
【0029】
一実施形態では、基準点(例えばPref)は、半導体基板に対して垂直な想像軸上に、半導体基板から、例えば、半導体基板の上または下の所定の非ゼロ距離(例えば、dref)に位置する。基準点および磁石は、半導体基板の同じ側に、または反対の側に位置してもよい。基準点は、磁石がその中立位置にあるとき(すなわち、その軸が半導体基板に垂直であるように配向されるとき)、または磁石によって画定される空間内にあるとき(その中立位置にあるとき)基板と磁石との間に位置してもよく、または、磁石(その中立位置にあるとき)は、基準位置と半導体基板との間に位置してもよい。
【0030】
特定の実施形態では、距離「dref」と磁石の(軸方向の)高さHとの比(dref/H)は、50%~200%の範囲内、または50%~150%の範囲内、または75%~125%の範囲内の値であり得る。
【0031】
一実施形態では、第1のセンサ場所と第2のセンサ場所との間の第1の距離(例えば、ΔX)は、第3のセンサ場所と第4のセンサ場所との間の第2の距離(例えば、ΔY)に実質的に等しい。この実施形態では、センサは、仮想円上に位置してもよい。基準点は、この円の中心に位置してもよく、または基板に垂直であり、円の中心を通過する仮想線上に、基板からの所定の非ゼロ距離に位置してもよい。
【0032】
一実施形態では、第1のセンサ場所と第2のセンサ場所との間の第1の距離(例えば、ΔX)は、第3のセンサ場所と第4のセンサ場所との間の第2の距離(例えば、ΔY)よりも少なくとも5%大きいか、または少なくとも5%小さい。この実施形態では、センサは、仮想楕円体上に位置してもよい。基準点は、この楕円の中心に位置してもよく、または基板に垂直であり、楕円の中心を通過する仮想線上に、基板から所定の非ゼロ距離に位置してもよい。
【0033】
一実施形態では、4つのセンサの各々は、集積磁気集中器および2つの水平ホール素子を備える。
【0034】
集積磁気集中器(「集積フラックス集中器」としても知られている)は、直径が150μm~250μmの範囲、例えば、170μm~230μmの範囲、例えば、約200μmに等しいディスク形状を有してもよい。
【0035】
一実施形態では、第1のセンサは、第1の集積磁気集中器および第1の方向に配向された第1の仮想線上の第1のIMCの反対側に位置する第1および第2の水平ホール素子を含み、第2のセンサは、第2の集積磁気集中器および第2のIMCの反対側の第1の仮想線上に位置する第3および第4の水平ホール素子を含み、第3のセンサは、第3の集積磁気集中器および第2の方向に配向された第2の仮想線上の第3のIMCの反対側に位置する第5および第6の水平ホール素子を含み、第4のセンサは、第4の集積磁気集中器および第4のIMCの反対側の第2の仮想線上に位置する第7および第8の水平ホール素子を含む。
【0036】
このような配置の一例を図5に示す。
【0037】
一実施形態では、4つのセンサの各々は、水平ホール素子および垂直ホール素子を含む。この実施形態において、センサデバイスは、好ましくは、磁束集中器(IMC)を含まない。
【0038】
一実施形態では、4つのセンサの各々は、水平ホール素子および少なくとも1つの磁気抵抗センサ素子を含む。また、この実施形態において、センサデバイスは、好ましくは、磁束集中器(IMC)を含まない。
【0039】
一実施形態では、第1のセンサは、第1の水平ホール素子および第1の垂直ホール素子を含み、第2のセンサは、第2の水平ホール素子および第2の垂直ホール素子を含み、第1の垂直ホール素子および第2の垂直ホール素子の各々は、第1の方向に配向された最大感度の軸を有し、第3のセンサは、第3の水平ホール素子および第3の垂直ホール素子を含み、第4のセンサは、第4の水平ホール素子および第4の垂直ホール素子を含み、第3の垂直ホール素子および第4の垂直ホール素子の各々は、第2の方向に配向された最大感度の軸を有する。
【0040】
一実施形態では、処理回路は、半導体基板に一体化される。そのため、この実施形態では、センサ素子および処理回路は単一の基板上に一体化される。
【0041】
第2の態様によると、本発明はまた、第1の態様によるセンサデバイスと、半導体基板に対して所定の位置を有する基準点(例えば、Pref)を中心に枢動可能な磁石とを含む位置センサシステムを提供する。これは、例えば、図1に示されるように、磁石が所定の基準位置を中心に回転するように移動可能であることを意味する。磁石は、円筒形または球形の形状を有し、磁石は、自軸を中心に回転可能であってもよいが、そのような回転は、磁場線を変化させない。
【0042】
磁石は、例えば、円筒形、棒状、または球形の2極磁石であってもよい。
【0043】
一実施形態では、システムは、磁石に接続されたジョイスティックをさらに備える。
【0044】
第3の態様によると、本発明はまた、半導体基板に対して所定の位置を有する基準点(例えばPref)を中心に枢動可能な磁石の配向(例えば、2つの角度α、βを用いて)を決定する方法を提供し、本方法は、
a)磁場勾配:i)第1の方向に沿って半導体基板に平行な第1の方向に配向された第1の磁場成分の第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)、ii)第2の方向に沿って、半導体基板に平行で第1の方向に垂直な第2の方向に配向された第2の磁場成分の第2の磁場勾配(例えば、dBy/dy)、iii)第1の方向に沿って、半導体基板に垂直な第3の方向に配向された第3の磁場成分の第3の磁場勾配(例えば、dBz/dx)、およびiv)第2の方向に沿って、第3の方向に配向された第3の磁場成分の第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)のうちの少なくとも2つを決定することと、b)磁場勾配のうちの少なくともいくつかに基づいて、第1の方向(例えば、X)に平行な第1の仮想平面(例えば、XZ)上の磁石の軸の正投影と第3の方向(例えば、Z)の間に形成された第1の角度を決定することと、c)磁場勾配のうちの少なくともいくつかに基づいて、第2の方向に平行な第2の仮想平面(例えば、YZ)上の磁石の軸の正投影と第3の方向との間に形成された第2の角度を決定することと、を含む。
【0045】
一実施形態では、ステップa)は、2つの磁場勾配、すなわち、dBz/dxおよびdBz/dyのみを決定することを含み、ステップb)は、1つの磁場勾配、すなわち、dBz/dxのみの関数としての第1の角度(例えば、α)を決定することを含み、ステップc)は、1つの磁場勾配、すなわち、dBz/dyのみの関数としての第2の角度(例えば、β)を決定することを含む。
【0046】
一実施形態では、第1の角度は、少なくとも第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)および第3の磁場勾配(例えば、dBz/dx)に基づいて決定され、第2の角度は、少なくとも第2の磁場勾配(例えば、dBy/dy)および第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)に基づいて決定される。
【0047】
一実施形態では、第1の角度は、第1の磁場勾配(例えば、dBx/dx)および第3の磁場勾配(例えば、dBz/dx)のみに基づいて決定され、第2の角度は、第2の磁場勾配(例えば、dBy/dy)および第4の磁場勾配(例えば、dBz/dy)のみに基づいて決定される。
【0048】
実施形態では、第1の角度は、式
α=K1*atan2(dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、式中、αは第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは第1の磁場勾配であり、dBz/dxは第3の磁場勾配であり、K1は第1の所定の定数であり、第2の角度は、式
β=K2*atan2(dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、式中、βは第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは第2の磁場勾配であり、dBz/dyは第4の磁場勾配であり、K2は第2の所定の定数である。
【0049】
実施形態では、第1の角度は、式
α=K1*atan2(K3*dBz/dx,dBx/dx)
に従って決定され、式中、αは第1の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBx/dxは第1の磁場勾配であり、dBz/dxは第3の磁場勾配であり、K1およびK3は所定の定数であり、第2の角度は、式
β=K2*atan2(K4*dBz/dy,dBy/dy)
に従って決定され、式中、βが第2の角度であり、atan2()は2つの引数の逆正接関数であり、dBy/dyは第2の磁場勾配であり、dBz/dyは第4の磁場勾配であり、K2およびK4は所定の定数である。
【0050】
本発明の特定のおよび好ましい態様は、添付の独立および従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴は、単に特許請求の範囲に明示的に記載されるものではなく、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と適宜組み合わされてもよい。
【0051】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】少なくとも2つの自由度を有する、センサデバイスに対して移動可能な軸方向に磁化された磁石を含む磁気位置センサシステムの略図である。
図2】線分[CP]のランダムな配向を、どのようにして2つの角度αおよびβによって表すことができるかを示す。
図3】本発明の実施形態で使用されてもよいセンサ構造の概略的なブロック図であり、センサ構造は、第1の場所X1にある第1のセンサと、X軸に沿った第2の場所X2にある第2のセンサとを含み、各センサは、集積磁気集中器(IMC)およびIMCの反対側に配置された2つの水平ホール素子を含み、面内磁場勾配(dBx/dx)および面外磁場勾配(dBz/dx)は、このセンサ構造によって測定することができる。
図4(a)】半導体基板と所定の基準位置で交差する軸を有する円筒磁石の概略図であり、センサまたはセンサ構造は、基準位置に位置する。センサ場所を通過する磁場線は、軸の機械的角度と同じ配向を有し、センサと磁石との間の距離は、軸の配向とは無関係である。
図4(b)】半導体基板と所定の基準位置で交差する軸を有する円筒磁石の概略図であり、センサまたはセンサ構造は、基準位置に位置する。センサ場所を通過する磁場線は、軸の機械的角度と同じ配向を有し、センサと磁石との間の距離は、軸の配向とは無関係である。
図4(c)】半導体基板と所定の基準位置で交差する軸を有する円筒磁石の概略図であり、半導体基板は、基準位置から離間されたセンサ位置に位置する複数のセンサまたはセンサ構造を含む。複数のセンサ場所における磁場線の配向は、軸の配向と同一ではなく、センサ場所の各々と磁石との間の距離は一定ではなく、軸の配向に依存する。
図4(d)】半導体基板と所定の基準位置で交差する軸を有する円筒磁石の概略図であり、半導体基板は、基準位置から離間されたセンサ位置に位置する複数のセンサまたはセンサ構造を含む。複数のセンサ場所における磁場線の配向は、軸の配向と同一ではなく、センサ場所の各々と磁石との間の距離は一定ではなく、軸の配向に依存する。
図5】本発明により提案された第1のセンサデバイスの概略図である。
図6】本発明により提案された別のセンサデバイスの概略図である。
図7(a)】本発明により提案されたシステムのシミュレーション結果を示す。
図7(b)】本発明により提案されたシステムのシミュレーション結果を示す。
図7(c)】本発明により提案されたシステムのシミュレーション結果を示す。
図7(d)】本発明により提案されたシステムのシミュレーション結果を示す。
図7(e)】本発明により提案されたシステムのシミュレーション結果を示す。
図8(a)】本発明により提案された別のシステムのシミュレーション結果を示す。
図8(b)】本発明により提案された別のシステムのシミュレーション結果を示す。
図8(c)】本発明により提案された別のシステムのシミュレーション結果を示す。
図8(d)】本発明により提案された別のシステムのシミュレーション結果を示す。
図8(e)】本発明により提案された別のシステムのシミュレーション結果を示す。
図9】本発明により提案された位置センサデバイスで使用され得る回路の電気ブロック図を示す。
図10】本発明により提案された磁石の軸の配向に対応する2つの角度α、βを決定する方法のフローチャートを示す。
図11図1のセンサシステムの変形例を示し、磁石は、基板より上方の所定の距離「dref」に位置する基準点を中心に枢動可能である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面は、概略のみであり、非限定的である。図面では、いくつかの素子のサイズは誇張されている場合があり、例示目的のためにスケールで描画されていない場合がある。特許請求の範囲内の任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されてはならない。異なる図面では、同じ参照符号は、同じまたは類似の素子を指している。
【0054】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0055】
本説明および特許請求の範囲における第1、第2および同様の用語は、類似の素子を区別するために使用され、必ずしも、時間的、空間的、順位的、または任意の他の方法のいずれかで順序を説明するために使用されるわけではない。このように使用される用語が適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態が、本明細書に記載または図示される以外の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0056】
本説明および特許請求の範囲における上部、下部などの用語は、説明目的のために使用され、必ずしも相対的な位置を説明するために使用されるわけではない。このように使用される用語が適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態が、本明細書に記載または図示される以外の配向で動作可能であることを理解されたい。
【0057】
特許請求の範囲内で使用される「備える」という用語は、その後列挙される手段に制限されるものと解釈されるべきではなく、他の素子またはステップを除外しないことに留意されたい。したがって、それは、言及されるように、記載された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定するものと解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、または構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。したがって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素がAおよびBのみであることを意味する。
【0058】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態において」または「実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同一の実施形態を指すわけではないが、同一の実施形態を指してもよい。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0059】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、開示を合理化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を補助する目的で、単一の実施形態、図面、またはその説明にグループ化されることがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求される発明が、各特許請求の範囲に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が示すように、本発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴にあるわけではない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各特許請求の範囲は、本発明の別個の実施形態として単独で存在する。
【0060】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの他の特徴を含み、それ以外の特徴は含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求の範囲に記載の実施形態のいずれかを任意の組み合わせで使用することができる。
【0061】
本明細書に提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明の実施形態が、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが理解される。他の場合では、周知の方法、構造、および技術は、この説明の理解を曖昧にしないために詳細には示されていない。
【0062】
本文書では、別途明確に言及されない限り、「磁気センサデバイス」または「センサデバイス」という用語は、好ましくは半導体基板に一体化された少なくとも1つの「磁気センサ」または少なくとも1つの磁気「センサ素子」を含むデバイスを指す。センサデバイスは、「チップ」とも呼ばれるパッケージに含まれてもよいが、それは絶対に必要ではない。
【0063】
本文書では、「センサ素子」または「磁気センサ素子」または「磁気センサ」という用語は、例えば、磁気抵抗素子、GMR素子、XMR素子、水平ホールプレート、垂直ホールプレート、少なくとも1つ(好ましくは4つ)の磁気抵抗素子を含むホイートストンブリッジなど、またはその組み合わせなどの磁気量を測定することができる構成要素もしくは構成要素の群、またはサブ回路、または構造を指すことができる。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、「磁気センサ」または「磁気センサ構造」という用語は、集積フラックス集中器としても知られる1つ以上の集積磁気集中器(IMC)と、IMC、例えば、2つの水平ホール素子が互いに180°間隔で配置されている、または4つの水平ホール素子が互いに90°間隔で配置されているディスク形状IMCの周囲の近くに配置された1つ以上の水平ホール素子とを含む配置を指してもよい。
【0065】
本文書では、「磁場ベクトルの面内成分」および「センサ面における磁場ベクトルの投影」という表現は同じことを意味する。センサデバイスが半導体基板である場合、または半導体基板を含む場合、これはまた、「半導体平面に平行な磁場成分」を意味する。これらの構成要素は、Bx、Byとラベル付けされてもよい。
【0066】
本文書において、「ベクトルの面外成分」および「ベクトルのZ成分」および「センサ面に垂直な軸上のベクトルの投影」という表現は同じことを意味する。この構成要素は、Bzとラベル付けされてもよい。
【0067】
本発明の実施形態は、典型的には、センサデバイスに固定され、3つの軸X、Y、Zを有する直交座標系を使用して説明され、X軸およびY軸が基板に対して平行であり、Z軸が基板に対して垂直である。
【0068】
本文書では、「空間微分」もしくは「微分」または「空間勾配」もしくは「勾配」という表現が同意語として使用される。本発明の文脈では、勾配は、典型的には、特定の方向に沿って離間した2つの場所で測定された2つの値の差として決定される。理論的には、勾配は、典型的には、2つの値の間の差を、センサ場所間の距離で割ったものとして計算されるが、実際には、測定された信号がやはりスケーリングされる必要があるため、距離による分割は、しばしば省略される。
【0069】
本出願では、水平ホールプレートは、典型的には、H1、H2などによって参照され、これらの水平ホールプレートからの信号は、典型的には、h1、h2などによって参照され、垂直ホールプレートは、典型的には、V1、V2などによって参照され、これらの垂直ホールプレートからの信号は、典型的には、v1、v2などによって参照される。
【0070】
本発明の文脈において、式arctan(x,y)、atan2(x,y)、arccot(y/x)は同等であると考えられる。
【0071】
本発明は、固定基準点「Pref」を中心に枢動可能な磁石の配向を測定するための磁気位置センサシステム、方法、およびデバイスに関する。この固定基準点は、半導体基板上に位置してもよく、または半導体基板の上または下の所定の距離「dref」に位置してもよい。磁石は、ジョイスティック(図示せず)に接続されてもよい。
【0072】
好ましい実施形態では、システムは、例えば、外乱場に対して感度が低いため、改善された精度を有する。
【0073】
図面を参照する。
【0074】
図1は、円筒磁石101およびセンサデバイス102を含む磁気位置センサシステム100の略図である。
【0075】
センサデバイス102は、半導体基板(図1には示されていない)を含む。3つの直交軸X、Y、Zを有する座標系は、軸XおよびYが半導体基板に対して平行であり、軸Zが半導体基板に対して直交するように、半導体基板に接続される。
【0076】
図1に示す磁石101は、円筒磁石であり、より具体的には、軸方向に磁化された磁石101である。磁石は、半導体基板と固定基準点「Pref」で交差する仮想軸「A」を有し、様々な方向に回転することができる。磁石101と基準点「Pref」との間の距離は一定であるため、システムは2つの自由度を有する。センサデバイス102のタスクは、磁石の配向を決定することである。
【0077】
配向は、例えば、2つの角度φおよびψによって一意に定義することができ、φは、YZ平面内の軸Aの正投影のZ軸に対する負または正の角度であり、ψは、XZ平面内の軸Aの正投影のZ軸に対する負または正の角度である。示されている例では、磁石の軸Aが半導体基板に対して垂直に配向されている場合、軸Aと半導体基板との交点における磁場ベクトルBは、負のZ方向に配向され、φ=0°およびψ=0°である。磁石は、少なくとも-30°~+30°の範囲のφ、および30°~+30°の範囲のψで移動可能であることが好ましいが、もちろん、より大きな範囲、例えば、±40°、または±50°、または±60°も想定される。しかしながら、角度φ、ψにより磁石101の配向を特定することは唯一の可能な方法ではない。
【0078】
図2は、基準点「C」から始まり、想像球上の点「P」で終わる一定の長さ[CP]のベクトルの配向を定義する別の方法を示している。ベクトル[CP]は示されていないが、ベクトル[CP]の平面XZへの第1の正投影[CA]が示され、ベクトル[CP]の平面YZへの第2の正投影[CB]が示される。点CおよびPを通過する軸Aの配向は、正X軸とベクトル[CA]との間の第1の角度α、および正Y軸とベクトル[CB]との間の第2の角度βによっても定義することができる。一例として、磁石軸が平面XYに対して垂直(すなわち、半導体基板に対して垂直)に配向されている場合、「中立位置」とも称され、α=90°、β=90°である。これは、上述したφ=0°、ψ=0°の配向に対応する。
【0079】
次の数式が適用される。
Bx=B*cos(α)*sin(β) [1]
By=B*cos(β)*sin(α) [2]
Bz=B*sin(β)*sin(α) [3]
【0080】
[3]および[1]の分割により、以下が得られる。
(Bz/Bx)=tan(α) [4]
(Bz/By)=tan(β) [5]
【0081】
式中、BxはX方向に配向された磁場成分であり、ByはY方向に配向された磁場成分であり、BzはZ方向に配向された磁場成分であり、Bは磁場ベクトルの大きさである。
【0082】
好ましい実施形態では、角度αおよびβは、90°±30°の範囲内の値、または90°±40°の範囲内の値、または90°±50°の範囲内の値、または90°±60°の範囲内の値である。
【0083】
図3は、X軸上の第1のセンサ場所X1に位置する第1のセンサ(またはセンサ構造)S1と、X1から離間された、X軸上の第2のセンサ場所X2に位置する第2のセンサ(またはセンサ構造)S2と、を含む半導体基板を示す。第1および第2のセンサS1、S2の各々は、ディスク形状の集積磁気集中器(IMC)およびIMCの反対側のX軸上に配置された2つの水平ホール素子を含む。第1のセンサS1は、第1の信号h1を提供するように構成された第1の水平ホール素子H1と、第2の信号h2を提供するように構成された第2の水平ホール素子H2とを含む。第2のセンサS2は、第3の信号h3を提供するように構成された第3の水平ホール素子H3と、第4の信号h4を提供するように構成された第4の水平ホール素子H4とを備える。
【0084】
本発明を理解するためには、第1のセンサS1の信号h1およびh2を組み合わせて、面内磁場成分Bx1(半導体基板に平行)および面外磁場成分Bz1(半導体基板に垂直)の両方を決定することができることを知っていれば十分である。より具体的には、面内磁場成分Bx1はX軸に平行であり、信号h1およびh2の減算により計算することができ、面外磁場成分Bz1はZ軸に平行であり、信号h1およびh2の和により計算することができる。これは次のように数学的に表すことができる。
【0085】
Bx1=(h2-h1) [6]
Bz1=(h2+h1) [7]
【0086】
同様に、第2のセンサ場所X2における面内磁場成分Bx2、および面外磁場成分Bz2は、例えば、以下の式に従って決定され得る。
【0087】
Bx2=(h4-h3) [8]
Bz2=(h4+h3) [9]
【0088】
これらの値から、面内磁場勾配dBx/dxおよび面外磁場勾配dBz/dxは、例えば、以下の式に従って決定され得る。
【0089】
ΔBx/Δx=Bx2-Bx1 [10]
ΔBz/Δx=Bz2-Bz1 [11]
【0090】
なお、「Δx」での除算は、距離が一定であり、ホール素子から得られた値がやはりスケーリングされる必要があるため、省略されるのが一般的であるが、ΔBz/Δx(またはdBz/dx)という記法は、2つのBz値の差が取られることを示すだけでなく、Δxの場合はX方向であるように、どの方向に沿っているかも示すため、本出願では有用である。当技術分野で知られているように、勾配信号は、外乱場に対して非常に感度が低い。
【0091】
なお、距離ΔXで離間された2つのセンサS1、S2を有するセンサデバイス(図3には示されていないが、例えば、図6を参照されたい)であって、第1のセンサS1は、X方向に最大感度の軸が配向された1つの水平ホール素子H1および1つの垂直ホール素子V1を含み、第2のセンサS2は、X方向に最大感度の軸が配向された1つの水平ホール素子H2および1つの垂直ホール素子V2を含み、それぞれBx1、Bz1およびBx2、Bz2を測定することができ、2つの磁場勾配dBx/dxおよびdBz/dxを決定することができる。v1がV1から得られた信号、v2がV2から得られた信号、h1がH1から得られた信号、h2がH2から得られた信号の場合、dBx/dxは(v2-v1)として計算され得、dBz/dxは(h2-h1)として計算され得る。
【0092】
図4(a)~図4(d)は、所定の位置「Pref」で半導体基板(点線で概略的に示される)と交差する仮想軸「A」を有する円筒磁石の概略図である。軸“A”は基準点「Pref」を中心に枢動可能である。図面に負担をかけ過ぎないように、XZ平面に平行な動きのみが示される。
【0093】
図4(a)および図4(b)において、センサ(黒い正方形で概略的に示される)は、基準位置「Pref」に位置する。見てわかるように、センサ場所を通過する磁場線は、磁石の軸「A」の機械的な配向と同じ配向を有し、センサと磁石との間の距離「g」は、軸の配向とは無関係である。
【0094】
図4(c)および図4(d)において、半導体基板は、距離ΔXだけ離間された複数のセンサを含み、基準位置「Pref」は、好ましくは、センサ場所間の中央にある。見てわかるように、複数のセンサ場所における磁場線の配向は、もはや軸Aの配向と同一ではなく、センサ場所の各々と磁石との間の距離は、もはや一定ではなく、軸「A」の配向に依存する。
【0095】
本発明者らに知られている限り、軸Aの機械的傾斜角と、2つのセンサ場所における磁場成分(Bx、By、Bz)との間には、一般的な分析式または関係は知られておらず、ましてや基準点からΔx/2の距離に位置する2つのセンサから得られる信号から得られるような、機械的傾斜角と磁場勾配dBx/dxとの間の関係は、知られていない。発明家たちはその関係を調べる研究プロジェクトを始めた。この関係は非常に非線形であり、数学的には非常に説明が困難であると予想された。
【0096】
図5は、本発明により提案された第1のセンサデバイス500の概略図である。
【0097】
センサデバイス500は、
i)第1の方向Xに沿って、半導体基板に平行な第1の方向Xに配向された第1の磁場成分Bxの第1の磁場勾配dBx/dxと、
ii)第2の方向Yに沿って、半導体基板に平行で第1の方向Xに垂直な第2の方向Yに配向された第2の磁場成分の第2の磁場勾配dBy/dyと、
iii)第1の方向Xに沿って半導体基板に垂直な第3の方向Zに配向された第3の磁場成分Bzの第3の磁場勾配dBz/dxと、
iv)第2の方向Yに沿って第3の方向Zに配向された第3の磁場成分Bzの第4の磁場勾配dBz/dy、を決定するように構成された複数の磁気センサS1、S2、S3、S4を含む半導体基板を備える。
【0098】
センサデバイス500は、これらの磁場勾配dBx/dx、dBy/dy、dBz/dx、dBz/dyに基づいて、磁石、例えば、固定基準点を中心に枢動可能な磁石の軸Aの配向を画定する、図1に示すような2つの角度、例えば、φ、ψ、または図2に示すような2つの角度、例えば、α、βを決定するように構成された処理回路(図5には示されていないが、例えば、図9を参照されたい)をさらに備える。
【0099】
さらに、外乱場の存在下であっても、分析的な方法で、かつ、比較的良好な近似で、例えば、±10°よりも小さい絶対誤差で、かかる4つの磁場勾配に基づいて、そのような角度を定義および計算することが可能であることを、発明者らは驚くべきことに見出した。これは予想されていなかったことである。
【0100】
発明者らはまた、後処理によって、例えば、各角度に1つずつの2つの区分線形近似関数を使用して計算された角度を再マッピングすることによって、この精度をさらに向上させる(すなわち、絶対誤差を±5°より小さいまたは±3°より小さい値に減少させる)ことが可能であることを見出した。
【0101】
処理回路は、第1の磁場勾配dBx/dxに基づく第1の仮想平面XZ上の磁石の軸Aの正投影と第3の磁場勾配dBz/dx間に形成された第1の角度αを決定するように構成され得、仮想平面XZは、第1の方向Xおよび第3の方向Zに平行であり、第2の磁場勾配dBy/dyに基づく第2の仮想平面YZ上の磁石の軸Aの正投影と第4の磁場勾配dBz/dy間に形成された第2の角度βを決定するように構成され得、仮想平面YZは、第2の方向Yおよび第3の方向Zに平行である。
【0102】
これらの角度α、β(図2に示す)を用いて磁石の軸Aの配向を特定することにより、比較的単純な数学的式を用いて角度を計算することができることを見出した。
【0103】
複数の磁気センサは、第1のセンサS1、第2のセンサS2、第3のセンサS3、および第4のセンサS4を含み得る。
【0104】
第1のセンサS1は、第1のセンサ場所に位置してもよく、第2のセンサS2は、第2のセンサ場所に位置してもよく、両方とも、第1の方向Xに配向された第1の仮想線上に位置し、第1の非ゼロ距離ΔXだけ互いから離間されている。第1のセンサS1は、第1の方向Xに配向された第1の磁場成分Bx1と、第3の方向Zに配向された第2の磁場成分Bz1とを測定するように構成されてもよい。第2のセンサS2は、第1の方向Xに配向された第3の磁場成分Bx2と、第3の方向Zに配向された第4の磁場成分Bz2とを測定するように構成されてもよい。
【0105】
第3のセンサS3は、第3のセンサ場所に位置してもよく、第4のセンサS4は、第4のセンサ場所に位置してもよく、両方とも、第2の方向Yに配向された第2の仮想線上に位置し、第2の非ゼロ距離ΔYだけ互いから離間されている。第3のセンサS3は、第2の方向Yに配向された第5の磁場成分By1と、第3の方向Zに配向された第6の磁場成分Bz3とを測定するように構成されてもよい。第4のセンサS4は、第1の方向Xに配向された第7の磁場成分By2と、第3の方向Zに配向された第8の磁場成分Bz4とを測定するように構成されてもよい。
【0106】
センサデバイスは、第1のBx1と第3のBx2の磁場成分との間の差に基づいて第1の磁場勾配dBx/dxを決定するため、第2のBz1と第4のBz2の磁場成分との間の差に基づいて第2の磁場勾配dBz/dxを決定するため、第5のBy1と第7のBy2の磁場成分との間の差に基づいて第3の磁場勾配dBy/dyを決定するため、および第6のBz3と第8のBz4の磁場成分との間の差に基づいて第4の磁場勾配dBz/dyを決定するために、さらに構成され得る。
【0107】
一実施形態では、距離ΔYは距離ΔXに等しく、この場合、4つのセンサ場所は好ましくは円上に位置し、基準点「Pref」は好ましくはこの円の中心に位置する。
【0108】
別の実施形態では、距離ΔYは、ΔXとは異なり、例えば、ΔYより少なくとも5%大きいか、または小さく、この場合、4つのセンサ場所は、好ましくは楕円上に位置し、基準点「Pref」は、好ましくは、この楕円の中心に位置する。そのような実施形態を使用して、半導体基板のサイズを小さくすることができ、したがって、コンパクト性を高めることができ、コストを低減することができる。これは、「ハンドル」が(例えば、少なくとも3つまたは4つの位置を有する)、XZ平面に平行な範囲(例えば、2つの位置のみを有する)と比較して、(例えば、少なくとも3つまたは4つの位置を有する)YZ平面に平行なより大きな範囲にわたって移動可能であるジョイスティック用途に特に好適であり得る。
【0109】
図5の例では、4つのセンサS1~S4の各々は、集積磁気集中器(IMC)と、IMCの周囲の近くに、180°間隔で配置された2つの水平ホール素子とを備える。
【0110】
より具体的には、第1のセンサS1は、第1の集積磁気集中器IMC1と、第1の方向Xに配向された第1の仮想線上の第1のIMCの反対側に位置する第1および第2の水平ホール素子H1およびH2とを含む。第2のセンサS2は、第2の集積磁気集中器IMC2と、第2のIMCの反対側に第1の仮想線上に位置する第3および第4の水平ホール素子H3およびH4とを含む。第3のセンサS3は、第3の集積磁気集中器IMC3と、第2の方向Yに配向された第2の仮想線上の第3のIMCの反対側に位置する第5および第6の水平ホール素子H5およびH6とを含む。第4のセンサS4は、第4の集積磁気集中器IMC4と、第4のIMCの反対側に第2の仮想線上に位置する第7および第8の水平ホール素子H7およびH8とを含む。
【0111】
集積磁気集中器(「集積フラックス集中器」としても知られている)は、直径が150μm~250μmの範囲、例えば、170μm~230μmの範囲、例えば、約200μmに等しいディスク形状を有してもよい。
【0112】
h1~h8が、水平ホール素子H1~H8それぞれによって提供される信号である場合、以下の式に従って、4つの勾配値が計算されてもよい。
【0113】
gr1=(dBx/dx)=Bx2-Bx1=(h4-h3)-(h2-h1) [11]
gr2=(dBz/dx)=Bz2-Bz1=(h4+h3)-(h2+h1) [12]
gr3=(dBy/dy)=By4-By3=(h8-h7)-(h6-h5) [13]
gr4=(dBz/dy)=Bz4-Bz3=(h8+h7)-(h6+h5) [14]
【0114】
本発明者らは、驚くべきことに、第1の角度αは、以下の極めて単純な式によって非常によく近似することができることを見出した。
【0115】
α=K1*atan2(gr2,gr1) [15a]
【0116】
さらに、第2の角度βは、以下の極めて単純な式によって非常によく近似することができる。
【0117】
β=K2*atan2(gr4,gr3) [16a]
【0118】
両方の角度α、βは磁気勾配の関数として計算されるため、これらの角度は外乱場に対して非常に感度が低い。さらに、角度は2つの勾配の比に基づいて計算されるため、これらの角度もまた、磁石の温度変化および/または消磁などの老化効果に対して非常に感度が低い。
【0119】
K1およびK2の値は、シミュレーションによってまたは較正によって決定されてもよく、センサデバイスの不揮発性メモリに記憶されてもよい。K1、K2の値は、磁石のサイズ(直径、高さ)、センサ間の距離Δx、Δy、および磁石と基準点「Pref」との間の距離「g」に依存し得る。
【0120】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、以下の式が用いてられてもよい。
【0121】
α=K1*atan2(K3*gr2,gr1) [15b]
β=K2*atan2(K4*gr4,gr3) [16b]
【0122】
式中、K3およびK4は、図7(c)および図8(c)でさらに説明する所定の定数である。式〔15b〕および〔16b〕は、ΔxがΔyと異なる場合、より正確な結果を提供し得る。当然のことながら、式の多くの変形例が可能であり、例えば、
【0123】
α=K1*atan2(gr2/K5,gr1) [15c]、または
α=K1*atan2(gr2,K6*gr1) [15d]、または
α=K1*atan2(gr2,gr1/K7) [15e]でもよく、
【0124】
式中、K5、K6、K7は所定の定数である。同様の変形例が、式[16b]に対しても可能である。
【0125】
図6は、図5のセンサデバイスの変形例として見られ得る、本発明により提案される別のセンサデバイス600の概略図である。主な違いは、各センサが1つの水平ホール素子と1つの垂直ホール素子とを備えていることである。上記以外のものについても、必要に応じて、ここで適用可能である。
【0126】
より具体的には、図6の例では、第1のセンサS1は、第1の水平ホール素子H1および第1の垂直ホール素子V1を含み、第2のセンサS2は、第2の水平ホール素子H2および第2の垂直ホール素子V2を含み、第1および第2の垂直ホール素子V1およびV2の各々は、第1の方向Xに配向された最大感度の軸を有する。同様に、第3のセンサS3は、第3の水平ホール素子H3および第3の垂直ホール素子V3を含み、第4のセンサS4は、第4の水平ホール素子H4および第4の垂直ホール素子V4を含み、第3および第4の垂直ホール素子V3およびV4の各々は、第2の方向Yに配向された最大感度の軸を有する。
【0127】
h1~h4が水平ホール素子H1~H4によって提供される信号であり、v1~v4が垂直ホール素子V1~V4によって提供される信号である場合、第1および第2の角度α、βは、以下の一連の式に従って計算されてもよい。
【0128】
gr1=(dBx/dx)=Bx2-Bx1=(v2-v1) [17]
gr2=(dBz/dx)=Bz2-Bz1=(h2-h1) [18]
gr3=(dBy/dy)=By4-By3=(v4-v3) [19]
gr4=(dBz/dy)=Bz4-Bz3=(h4-h3) [20]
α=K1*atan2(gr2,gr1) [21a]
β=K2*atan2(gr4,gr3) [22a]
【0129】
または、次の式が使用される。
【0130】
α=K1*atan2(K3*gr2,gr1) [21b]
β=K2*atan2(K4*gr4,gr3) [22b]
【0131】
これは、ΔxがΔyと異なる場合に、より正確な結果をもたらし得る。
【0132】
図6の変形例では、センサデバイスは、垂直ホール素子を含まないが、代わりに磁気抵抗素子を含む。
【0133】
別の変形例では、図6の垂直ホール素子は省略されるため、図6のセンサデバイスは、4つの水平ホール素子のみを含む。
【0134】
図7(a)は、それぞれが約190μmの直径を有するIMCおよび2つの水平ホール素子(例えば、図3または図5に例示される)を備える、約1.7mm離間された2つのセンサの間に、半導体基板上に位置する基準点から距離g=3mmに取り付けられた、直径D=4mm、および高さH=4mmを有する円筒磁石を備える、例示的なセンサシステム700を示す。
【0135】
図7(b)~図7(e)は、このセンサシステムのシミュレーション結果を示す。
【0136】
図7(b)は、図4(a)および図4(b)に示すように、基準位置「Pref」に位置するセンサによって測定される機械的角度α(図2に示すように)の関数としての磁場成分Bx、Bzの波形のプロットを示す。このプロットはまた、これらの成分sqr(Bx)+sqr(Bz)の平方和として計算された磁場の大きさ|B|の波形を示す。見てわかるように、この値は実質的に一定である。
【0137】
図7(c)は、図4(c)および図4(d)に示すように、基準位置「Pref」の反対側に位置する2つのセンサによって測定された信号から導出され得るように、そのため、例えば図5または図6に示すように、センサデバイスによって決定され得るように、機械的角度αの関数としての磁場勾配gr2=dBz/dxおよびgr1=dBx/dxの波形のプロットを示す。図7(b)のプロットはまた、これらの勾配sqr(dBx/dx)+sqr(dBz/dx)の平方和として計算された|dB|の波形を示す。見てわかるように、この値はむしろ一定であるが、完全に一定ではなく、つまり、勾配信号gr1およびgr2は完全な直交信号ではない。式〔15b〕、〔16b〕、〔21b〕、および〔22b〕は、例えば、0.80~0.98の範囲内、または1.02~1.20の範囲内で、1.00とは異なるK3およびK4の値を選択することによって、この相違を考慮に入れることができる。
【0138】
しかし、上述のように、驚くべきことに、これらの信号は、K因子なしでも、直交信号に非常によく似ていることを見出した。
【0139】
実際に、図7(d)は、式atan2(gr2,gr1)により得られた曲線を示す。見てわかるように、この曲線はほぼ線形であり、約2.5に等しい傾きを有する。このような高い線形性はまったく予想外のものであった。
【0140】
図7(e)は、機械的角度αと、すなわち、K1=0.4で式[15a]を適用することによって、(0.4)*atan2(gr2,gr1)として計算された値との差(または誤差)を示す。誤差は、約60°~約120°で変化する機械的角度αについて±4°未満である。このような単純な式に対するこのような小さな誤差は予測できない。
【0141】
図7(a)~図7(e)は角度αのシミュレーションのみを示しているが、これらのシミュレーションは第2の角度βも表している、しかし、この場合、曲線のラベルは図7(b)において「Bx」の代わりに「By」とし、図7(c)において「dBz/dx」の代わりに「dBz/dy」、「dBx/dx」の代わりに「dBy/dy」とする。
【0142】
上述のように、発明者らはまた、この誤差は、例えば、パラメータが、較正ステップ中に決定されてもよく、センサデバイスの不揮発性メモリに記憶されてもよい、区分線形近似を使用して図7(d)の曲線を再マッピングすることに基づいて、既知の「後処理技術」によって、±5°未満、または±3°未満、または±1.0°未満、または±0.5°未満、またはさらには±0.2°未満、または±0.1°未満の値にさらに低減することができることを見出した。
【0143】
図7(c)から、信号dBz/dx単独では、第1の角度の目安として使用され得、同様に、信号dBz/dy単独では、第2の角度の目安として使用され得ることが理解され得る。用途(ゲームコンソール、掘削機など)によっては、目安で十分な場合もあれば、十分ではない場合もある。目安は、ルックアップテーブルまたは区分線形補正を使用することによってさらに改善されてもよい。
【0144】
図8(a)は、それぞれが約190μmの直径を有するIMCおよび2つの水平ホール素子(例えば、図3または図5に例示される)を備える、約1.7mm離間された2つのセンサとの間に位置する基準点「Pref」からの距離g=3mmに取り付けられた、直径D=8mm、および高さH=4mmを有する円筒磁石を備える、例示的なセンサシステム800を示す。
【0145】
図8(b)~図8(e)は、このセンサシステムのシミュレーション結果を示す。
【0146】
図8(b)~図8(e)の曲線は、図7(b)~図7(e)の曲線と非常に類似しているが、図8(d)に示す曲線の固有の線形性は改善され、図8(e)に示す固有の誤差は、±3°の範囲内の値まで減少している(「固有の線形性」とは、「後処理」なしの曲線の線形性を意味する)。上述のように、固有の線形性は、1.00とは異なるK3、K4で、式[15b]、[16b]、[21b]、および[22b]のいずれかを使用して改善されてもよい。
【0147】
しかし、当然のことながら、本発明は、図7(a)および図8(a)の例に示される特定の寸法を有するセンサシステムに限定されず、例えば、以下のパラメータの組み合わせを有するシステムに対しても機能する。
【0148】
【表1】
【0149】
本開示の恩恵を有する当業者は、例えば、シミュレーションおよび/または較正試験を実行することによって、K1、K2、および任意選択的にK3、K4の最適値を容易に見つけることができる。K1~K4の値は、センサデバイスの不揮発性メモリ931に記憶され得る(例えば、図9を参照)。
【0150】
図9は、上述の位置センサデバイスにおいて使用され得る回路910の電気ブロック図を示す。回路910は、複数の磁気センサ素子M1~M8(例えば、水平ホール素子、垂直ホール素子、MR素子など)と、処理ユニット930(例えば、アナログ構成要素および/もしくはデジタル構成要素を含む)と、不揮発性メモリ931(例えば、EEPROMもしくはフラッシュ)と、を備える。ホールセンサ、またはMR素子を含む回路のバイアスおよび読み出しは、当技術分野で周知であり、したがって、ここでさらに詳細に説明する必要はない。
【0151】
このブロック図は、例えば、図5または図6に図示されるセンサ構造を有するセンサデバイスまたはその変形例で使用され得る。
【0152】
センサデバイスは、第1のセンサ場所で磁場成分Bx1およびBz1、第2のセンサ場所でBx2およびBz2、第3のセンサ場所でBy1およびBz3、第4のセンサ場所でBy2およびBz4を測定するように構成され得、第1のセンサ場所および第2のセンサ場所は、X軸上に位置し、第3のセンサ場所および第4のセンサ場所は、X軸に垂直なY軸上に位置し、センサデバイスは、これらの磁場勾配に基づいて、X方向に沿った面内勾配dBx/dxおよび面外勾配dBz/dxを決定するように、Y方向に沿った面内勾配dBy/dyおよび面外勾配dBz/dyを決定するように、および2つの角度値α、βを決定するように構成される。
【0153】
第1の角度αおよび第2の角度βは、例えば、上述の数式[15a]および[15b]、もしくは[21a]および[21b]を使用することによって、ならびに/または任意選択的には補間を有するルックアップテーブルを使用することによって、上述の方法で決定されてもよい。任意選択的には、例えば、αに対して区分線形補正を使用し、βに対して区分線形補正を使用して、補正後ステップも適用される。αの区分線形補正は、βの区分線形補正とは独立していてもよい。
【0154】
磁場成分を決定するための(例えば、図5のh2-h1)および/または磁場勾配を決定するための(例えば、図5のBx2-Bx1、または図6のv4-v3)信号の減算は、増幅の前もしくは後のアナログドメインで、またはデジタルドメインで実施されてもよい。
【0155】
処理ユニット930は、任意選択的には不揮発性メモリ931(例えば、NVRAMまたはEEPROMまたはフラッシュ)を含むか、またはそれに接続されてもよいデジタルプロセッサを含んでもよい。このメモリは、1つ以上の定数、例えば、K1、K2を記憶するように構成されてもよく、また、使用される場合、K3、K4も、および任意選択的に、適用される場合、補正後ステップの値または係数も記憶するように構成されてもよい。デジタルプロセッサ930は、例えば、8ビットプロセッサであってもよく、または16ビットプロセッサであってもよい。
【0156】
明示的には示されていないが、センサデバイス910は、増幅器、差動増幅器、アナログ-デジタル変換器(ADC)、マルチプレクサなどからなる群から選択さる1つ以上の構成要素またはサブ回路をさらに備え得る。ADCは、少なくとも8ビット、または少なくとも10ビット、または少なくとも12ビット、または少なくとも14ビット、または少なくとも16ビットの分解能を有し得る。
【0157】
処理回路が高速フーリエ変換(FFT)を実行する必要がないこと、または数百のノードを有するニューラルネットワークを実装する必要がないことは大きな利点である。
【0158】
図10は、半導体基板上に位置する基準点「Pref」に対する軸(A)を有する円筒磁石の配向(α,β)を決定する方法1000のフローチャートを示し、方法は、上記の磁場勾配のうちの少なくとも2つに基づいて、
a)第1の方向Xに沿って、半導体基板に平行な第1の方向Xに配向された第1の磁場成分Bxの第1の磁場勾配dBx/dxを決定すること1001と、
b)第2の方向Yに沿って、半導体基板に平行であり、第1の方向Xに垂直な第2の方向Yに配向された第2の磁場成分Byの第2の磁場勾配dBy/dyを決定すること1002と、
c)第1の方向Xに沿って、半導体基板に垂直な第3の方向Zに配向された第3の磁場成分Bzの第3の磁場勾配dBz/dxを決定すること1003と、
d)第2の方向Yに沿って、第3の方向Zに配向された第3の磁場成分Bzの第4の磁場勾配dBz/dyを決定すること1004と、
e)上記磁場勾配のうちの少なくとも2つに基づいて、第1の方向Xに平行な第1の仮想平面XZ上の磁石の軸「A」の正投影と第3の方向Zの間に形成された第1の角度αを決定すること1005と、
f)上記磁場勾配のうちの少なくとも2つに基づいて、第2の方向Yに平行な第2の仮想平面YZ上の磁石の前記軸「A」の正投影と第3の方向Zの間に形成された第2の角度βを決定すること1006と、
を含む。
【0159】
ステップe)は、第1の磁場勾配dBx/dxおよび第3の磁場勾配dBz/dxにのみ基づいて、第1の角度αを決定することを含んでもよい。
【0160】
ステップf)は、第2の磁場勾配dBy/dyおよび第4の磁場勾配dBz/dyにのみ基づいて、第2の角度βを決定することを含んでもよい。
【0161】
ステップe)は、式[15a]または[15b]に従って第1の角度αを決定することを含んでもよい。
【0162】
ステップf)は、式[21a]または[21b]に従って第2の角度βを決定することを含んでもよい。
【0163】
本方法は、精度を改善するため、例えば、図7(e)および図8(e)に示される非線形誤差を低減または実質的に排除するために補正後ステップをさらに含んでもよい。
【0164】
この方法の変形例では、(明示的に示されていない)ステップa)およびステップb)は省略され、ステップe)は、1つの磁場勾配、すなわち、dBz/dxのみに基づいて第1の角度を決定することを含み、ステップf)は、1つの磁場勾配、すなわち、dBz/dyのみに基づいて第2の角度を決定することを含む。
【0165】
上記では、磁石が半導体表面上に位置する基準点「Pref」を中心に枢動可能な円筒磁石であるシステムが説明されるが、本発明はこれに限定されず、磁石が別の形状(例えば、球形または棒状)の2極磁石である場合、および/または基準点「Pref」が半導体基板に固定されているが、半導体基板から非ゼロ距離「dref」に位置する場合にも機能する。
【0166】
図11は、半導体基板(明示的に示されていないが、XY平面によっても定義される)の上の所定の非ゼロ距離「dref」に位置する基準点「Pref」を中心に磁石1101が枢動可能な、図1のセンサシステムの変形例を示す。この例では、基準点「Pref」は、正Z軸上に位置し、つまり、磁石および基準点が基板の同じ側に位置することを意味している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、基準点は、負Z軸、すなわち、磁石とは反対側の基板上に位置してもよい。
【0167】
図1および図11に示すシステムの基準点「Pref」は、円筒磁石のサイズによって画定される空間の外側に位置し、磁石が中立位置(つまり、α=0°、β=0°の場合)にあるとき、半導体基板と磁石の間に位置する。
【0168】
しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明は、磁石の軸が枢動可能となる(実在または想像上の)基準点「Pref」が、磁石によって画定される空間内または磁石によって画定される空間の上に位置する場合にも機能する。
【0169】
これらの場合には、αおよびβを計算するために上記と同じ式を用いてもよいことが見出された。代替的に、第1の角度αおよび第2の角度βは、「atan2」関数(2つの引数の逆正接関数)として計算され得、第1の引数および第2の引数の各々は、dBx/dx、dBz/dx、dBy/dyおよびdBz/dyからなる群から選択される2つ以上の磁場勾配の線形組み合わせである。
【0170】
任意選択的に、センサデバイスは、例えば、予め定義された係数の第1のセットを使用して、角度αについて第1の区分線形補正を適用することによって、および予め定義された係数の第2のセットを使用して、角度βについて第2の区分線形補正を適用することによって、当技術分野で既知の方法で、これらの角度に後処理を適用するようさらに適合されてもよい。これらの係数は、較正ステップ中に決定されてもよく、センサデバイスの不揮発性メモリに記憶されてもよい。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図7(e)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図8(d)】
図8(e)】
図9
図10
図11
【外国語明細書】