(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107900
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】標的治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/55 20170101AFI20230727BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230727BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230727BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230727BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230727BHJP
A61K 31/4196 20060101ALN20230727BHJP
A61K 31/4745 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
A61K47/55
A61P35/00
A61K9/19
A61K9/08
A61K47/26
A61K31/4196
A61K31/4745
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096966
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2019570031の分割
【原出願日】2018-06-19
(31)【優先権主張番号】62/522,316
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/642,154
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522330762
【氏名又は名称】ティーブイエイ (エイビーシー) エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TVA(ABC),LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アランド、レイラ
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シンデ、ラジェシュ アール.
(72)【発明者】
【氏名】スウェリダ-クラウィエック、ベアタ
(72)【発明者】
【氏名】アウ イェン、ツン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ビロドー、マーク ティ.
(72)【発明者】
【氏名】カディヤラ、スダカル
(72)【発明者】
【氏名】ゾーロフ、ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ウースター、リチャード
(57)【要約】
【課題】本発明は、エフェクター部分を目的の生物学的標的に向かわせるための結合部分にエフェクター部分を結合させた薬理学的化合物を提供する。同様に、本発明は、上記化合物を含む組成物、キット、及び方法(例えば、治療、診断、及び画像化)を提供する。
【解決手段】上記化合物は、タンパク質相互作用性結合部分及びエフェクター部分を含む、タンパク質相互作用性結合部分-薬物コンジュゲート(SDC-TRAP)化合物として説明できる。例えば、がんの治療を対象とする特定の実施形態では、SDC-TRAPは、エフェクター部分としての細胞傷害剤に結合したHsp90阻害剤を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんを治療する方法であって、有効量のSDC-TRAP-0063ナトリウム又はその薬学的に許容される塩を対象に少なくとも約0.48mg/kg体重又は18mg/m2体表面積の用量で投与することを含む方法。
【請求項2】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが少なくとも約30mgで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが約800mg未満で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが静脈内(IV)投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが5%マンニトール溶液中ある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが3週間の間、週に1回、1日目、8日目、及び15日目に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが3週間の間、週に1回、1日目、8日目、及び15日目に投与され、続く1週間は治療が行われない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
SDC-TRAP-0063ナトリウムの3週間の投薬、1週間の休薬サイクルが、8週間、12週間、16週間、20週間、24週間、28週間、32週間、36週間、又は40週間繰り返される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが2週間ごとに1回、1日目及び15日目に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
SDC-TRAP-0063ナトリウムが、4週間、8週間、12週間、16週間、20週間、24週間、28週間、32週間、36週間、又は40週間の間、2週間ごとに1回投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
がんが、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫、小細胞肺がん(SCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、膵腺癌、大腸がん(CRC)、及び胃腺癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
SDC-TRAP-0063ナトリウムを製造する方法であって、
1)28~32℃のtert-ブタノールの第1の部分にSDC-TRAP-0063を溶解させる工程;
2)tert-ブタノールの第2の部分を添加する工程;
3)0.3規定の水酸化ナトリウム水溶液及び注射用水を添加し、pHを約9.8以上に調整する工程;
4)工程3)からの混合物を、直列にある少なくとも2つの0.2μmフィルターで濾過する工程;及び
5)無菌バイアル充填及び凍結乾燥を行う工程
を含む方法。
【請求項13】
有効量のSDC-TRAP-0063ナトリウム、その互変異性体、又はその薬学的に許容される塩、及び5%マンニトールを含む医薬組成物。
【請求項14】
pHが約9.4~約10.3の範囲内にある、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
SDC-TRAP-0063ナトリウム、その互変異性体、又はその薬学的に許容される塩の濃度が、約1mg/mL~約20mg/mLの範囲内にある、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
SDC-TRAP-0063ナトリウム、その互変異性体、又はその薬学的に許容される塩の濃度が、約3mg/mL、6mg/mL、又は12mg/mLである、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エフェクター部分を目的の生物学的標的に向かわせるための結合部分にエフェクター部分を結合させた薬理学的化合物に関する。この化合物は、治療、診断、及び画像化を含む幅広い薬理学的用途を有する。例えば、この化合物は、がんなどの状態の標的化学療法的治療のために、治療エフェクター部分を目的の標的細胞又は組織に特異的に向かわせることができる。
【背景技術】
【0002】
化学療法は非常に進歩しているが、現在利用可能な治療剤及び治療法は満足のいくものではなく、化学療法で治療された病気(がんなど)と診断された大多数の患者の予後は依然として不十分である。多くの場合、化学療法の適用可能性及び/又は有効性、ならびに潜在的に毒性のある部分(moieties)を利用する他の療法及び診断は、望ましくない副作用によって制限される。
【0003】
多くの病気や障害は、特定の種類の細胞に特定のタンパク質が高レベルで存在することを特徴としている。場合によっては、これらの高レベルのタンパク質の存在は過剰発現によって引き起こされる。歴史的に、これらのタンパク質のいくつかは、治療用分子の有用な標的であるか、病気の検出のためのバイオマーカーとして使用されてきた。有用な治療標的として認識されている過剰発現細胞内タンパク質の1つの分類は、熱ショックタンパク質として知られている。
【0004】
熱ショックタンパク質(HSP)は、温度上昇ならびに他の環境ストレス、例えば紫外線、栄養欠乏、及び酸素欠乏などに応答して上方制御されるタンパク質の一分類である。HSPには、他の細胞タンパク質(クライアントタンパク質と呼ばれる)に対するシャペロンとして機能し、適切なフォールディング及び修復を促進し、ミスフォールディングされたクライアントタンパク質のリフォールディングを助けるなど、多くの既知の機能がある。HSPにはいくつかの既知のファミリーがあり、それぞれが独自のクライアントタンパク質のセットを持っている。Hsp90は最も豊富なHSPファミリーの1つであり、ストレス下にない細胞のタンパク質の約1~2%を占め、ストレス下の細胞では約4~6%に増加する。
【0005】
Hsp90を阻害すると、ユビキチンプロテアソーム経路を介してそのクライアントタンパク質が分解される。他のシャペロンタンパク質とは異なり、Hsp90のクライアントタンパク質は、主にシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼ又は転写因子であり、そのクライアントタンパク質の多くはがんの進行に関与することが示されている。Hsp90は、正常な真核細胞の生存に必要であることが突然変異解析により示されている。しかし、Hsp90は多くの腫瘍タイプで過剰発現しており、これはがん細胞の生存に重要な役割を果たしている可能性があり、がん細胞は正常細胞よりもHsp90の阻害に対してより感受性が高い可能性があることを示している。例えば、がん細胞は通常、フォールディングがHsp90に依存する多数の変異及び過剰発現腫瘍性タンパク質を有する。さらに、低酸素、栄養欠乏、アシドーシスなどにより、腫瘍の環境は通常過酷であるため、腫瘍細胞は生存のために特にHsp90に依存している可能性がある。さらに、Hsp90の阻害は、多くの腫瘍性タンパク質ならびにホルモン受容体、転写因子の同時阻害を引き起こすため、抗がん剤の魅力的な標的である。上記の点から、Hsp90は、ガネテスピブ、AUY-922、及びIPI-504などのHsp90阻害剤(Hsp90i)化合物を含めて、医薬品開発の魅力的な標的となってきた。同時に、当初期待されていたこれらの化合物のうちのいくつか、例えばゲルダナマイシンなどは、それらの化合物の毒性プロファイルのために進捗が遅れてきた。これまでに開発されたHsp90i化合物は、抗がん剤として大いに期待されていると考えられるが、がん細胞におけるHsp90の遍在性を活用する他の方法は、これまで未開拓のままであった。したがって、特定の疾患又は障害に関連する細胞で過剰発現されるHsp90などのタンパク質を選択的に標的とする治療分子の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、結合部分に結合したエフェクター部分を含む薬理分子(「SDC-TRAP」)を提供し、この結合部分は、標的細胞に分子を捕捉させる態様でエフェクター部分を目的の標的細胞に向かわせる。SDC-TRAPの製造及び使用方法も提供される。
【0007】
本発明を、以下の図及び実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは例示の目的のみに使用され、限定するものではない。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、エフェクター部分を目的の生物学的標的に向かわせる結合部分に結合したエフェクター部分を含む分子を提供する。本発明の分子は、所望の細胞、例えばがん細胞に本発明の分子を捕捉させることにより、エフェクター部分の選択的標的化を可能にする。分子は、高濃度の細胞内タンパク質に選択的に結合するため、細胞内に捕捉される小分子薬物コンジュゲート(Small molecule Drug Conjugates
that are TRAPped intracellularly,SDC-TRAP)として説明できる。本発明の分子が目的の細胞内に捕捉されるようにするために、SDC-TRAP分子の一部である結合部分は、標的細胞で過剰発現しているタンパク質と相互作用する。例示的な実施形態では、過剰発現されるタンパク質は、特定の疾患又は障害に特徴的なものである。したがって、本発明は、本発明の分子を含む組成物、キット、及び方法(例えば、治療、診断、及び画像化)を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態では、SDC-TRAPは、単独での投与では毒性及び/又は望ましくない全身効果があるために適さないエフェクター分子の送達を可能にする。本明細書に記載の標的化送達分子(SDC-TRAP)を使用すると、現在の方法で投与するには毒性が強すぎるエフェクター部分をより低いレベルで投与することができ、それにより毒性エフェクターを毒性を下回るレベルで特定の疾患細胞に標的化することが可能になる。
【0010】
様々な例示的な態様及び実施形態では、本発明は、がんを治療するための化合物を提供する。例えば、SDC-TRAPは、Hsp90結合部分(すなわち、正常細胞と比較してがん細胞で過剰発現されるHsp90を標的とする)及びエフェクター部分を含むことができる(例えば、Hsp90結合部分は、細胞傷害剤に結合したHsp90阻害剤であり得る)。上記のように、本発明は、Hsp90を標的とする結合部分及び細胞傷害剤に関して本明細書に例示されている。本明細書で企図、言及又は説明される他の結合部分は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0011】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAP分子は受動輸送によって細胞に入ることができる。SDC-TRAPが受動輸送によって細胞に入る能力は、SDC-TRAPの1つ又は複数の特有の化学的特性(サイズ、重量、電荷、極性、疎水性など)の結果であり、SDC-TRAPの送達及び/又は作用を促進し得る。SDC-TRAPが受動輸送によって細胞に入る能力は機能的特性であり、その物理化学的特性とともに、SDC-TRAPを抗体薬物コンジュゲートなどの他の標的分子とは異なるものにしている。
【0012】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAP分子は能動輸送により細胞に入ることができる。SDC-TRAPが能動輸送によって細胞に入る能力は、SDC-TRAPの1つ又は複数の特有の化学特性の結果であり、SDC-TRAPの送達及び/又は作用を促進し得る。SDC-TRAPの能動輸送の例には、例えば、エンドサイトーシス、食作用、飲作用、及びエキソサイトーシスが含まれ得る。
【0013】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、約5000ダルトン未満の(例えば、約5000、2500、2000、1600、1550、1500、1450、1400、1350、1300、1250、1200、1150、1100、1050、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200などよりも小さい)分子量を有するSDC-TRAPを提供する。同様に、様々な態様及び実施形態において、本発明は、約2500ダルトン未満の(例えば、約2500、2000、1600、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100などよりも小さい)分子量を有する結合部分及び/又は約2500ダルトン未満の(例えば、約2500、2000、1600、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100などよりも小さい)分子量を有するエフェクター部分を提供する。SDC-TRAPの全体の分子量、及び結合部分、エフェクター部分、及び任意の連結部分の個々の重量は、SDC-TRAPの輸送に影響を与え得る。様々な例において、より小さい分子量がSDC-TRAPの送達及び/又は活性を促進できることが観察されている。
【0014】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、Hsp90結合部分及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、Hsp90結合部分及びエフェクター部分はほぼ同じサイズである(例えば、Hsp90結合部分及びエフェクター部分は、分子量においてダルトンの差が約25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400などよりも小さい)。様々な例において、分子量の差が小さいとSDC-TRAPの送達及び/又は活性が促進されることが観察されている。
【0015】
様々な態様及び実施形態では、本発明は、標的タンパク質と相互作用する結合部分を含むSDC-TRAPを提供する。標的タンパク質と相互作用する結合部分は、標的タンパク質の任意の1つ又は複数のドメインと選択的に相互作用することができる。例えば、標的タンパク質がHsp90である場合、結合部分は、Hsp90のN末端ドメイン、Hsp90のC末端ドメイン、及び/又はHsp90の中間ドメインと相互作用するHsp90結合部分であり得る。標的タンパク質の任意の1つ又は複数のドメインとの選択的相互作用は、標的組織及び/又は細胞内の分子標的の特異性を高め、及び/又は濃度を有利に高めることができる。
【0016】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、分子標的に対して高い親和性(例えば、50、100、150、200、250、300、350、400nM以上のKd)を有する結合部分を含むSDC-TRAPを提供する。例えば、結合部分がHsp90結合部分である場合、Hsp90結合部分は、50、100、150、200、250、300、350、400nM以上のKdを有し得る。分子標的に対して高い親和性を有する結合部分は、標的細胞及び/又は組織におけるSDC-TRAPの標的化を改善及び/又は共鳴時間(resonance time)を有利に増加させることができる。
【0017】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分(例えば、Hsp90結合部分)及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、対象に投与される場合、SDC-TRAPは腫瘍細胞において血漿に対し約2:1の比率で存在する。比率はもっと高くてもよく、例えば約5:1、10:1、25:1、50:1、75:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、又はそれ以上でもよい。様々な態様及び実施形態において、比率は、投与から1、2、3、4、5、6、7、8、12、24、48、72時間又はそれ以上の時点である。標的化の有効性は、プラズマと比較した標的細胞及び/又は組織のSDC-TRAPの比率に反映され得る。
【0018】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分(例えば、Hsp90結合部分)及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAPは、標的(例えば、がん)細胞に少なくとも24時間存在する。SDC-TRAPはより長く、例えば、少なくとも48、72、96、又は120時間がん細胞に存在し得る。所与の用量のSDC-TRAPの治療効果を増大させ、及び/又はSDC-TRAPの投与間隔を長くするために、SDC-TRAPが標的細胞に長期間存在することが有利であり得る。
【0019】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分(例えば、Hsp90結合部分)及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、エフェクター部分は少なくとも6時間放出される。エフェクター部分は、より長い期間、例えば、少なくとも12、24、48、72、96、又は120時間放出され得る。選択的放出を使用して、エフェクター部分の放出期間を制御、遅延、及び/又は延長することができ、したがって、特定の用量のSDC-TRAPの治療効果を高め、特定の用量のSDC-TRAPの望ましくない副作用を低減し、かつ/又はSDC-TRAPの投与間隔を広げることができる。
【0020】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、Hsp90結合部分及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、エフェクター部分は標的(例えば、がん)細胞内で選択的に放出される。選択的放出は、例えば、切断可能なリンカー(例えば、酵素的に切断可能なリンカー)により達成され得る。選択的放出は、望ましくない毒性及び/又は望ましくない副作用を減らすために使用できる。例えば、SDC-TRAPは、そのようなエフェクター部分がコンジュゲート形態では不活性(又は比較的不活性)であるが、標的(例えば、がん)細胞内で選択的に放出された後に活性(又はより活性)であるように設計することができる。
【0021】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分(例えば、Hsp90結合部分)及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAPは、これによらなければ対象への投与には毒性であるか又は不適当であるエフェクター部分の使用を可能にする。エフェクター部分は、望ましくない毒性のために対象への投与に適さないことがある。そのような場合、選択的放出などの戦略を使用して、望ましくない毒性に対処することができる。エフェクター部分は、望ましくない標的化又は標的化の欠如のために、対象への投与に適さないことがある。標的化は、例えば、全身毒性を最小限に抑えながら、標的(腫瘍など)の局所毒性を最大限にすることにより、このような問題に対処できる。
【0022】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、結合部分(例えば、Hsp90結合部分)及びエフェクター部分を含むSDC-TRAPを提供し、ここで、結合部分は、単独で投与した場合は治療薬として無効な阻害剤(例えば、Hsp90阻害剤)である。そのような場合、SDC-TRAPは、結合部分とエフェクター部分との間の相加効果又は相乗効果を促進し、それにより、治療の有効性を改善及び/又は副作用を有利に低減し得る。
【0023】
本発明をより容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。さらに、パラメータの値又は値の範囲が記載されている場合は常に、記載された値の中間の値及び範囲も本発明の一部であることを意図していることに留意されたい。別様に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、使用される用語は特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0024】
定義
冠詞「1つ」、「前記」及び「その」は、本明細書では、対照的に明確に示されない限り、冠詞の文法的対象の1つ又は複数(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素」とは、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0025】
「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」という句を意味するために本明細書で使用され、これと交換可能に使用される。
用語「又は」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、用語「及び/又は」を意味するために本明細書で使用され、これと交換可能に使用される。
【0026】
「など」という用語は、「限定するものではないが~など」という句を意味するために本明細書で使用され、これと交換可能に使用される。
具体的に記載され又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される用語「約」は、当技術分野の通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差内として理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解できる。文脈からそうでないことが明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語によって修正することができる。
【0027】
ここで提供される範囲は、範囲内のすべての値の略記であると理解される。例えば、1~50の範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群の任意の数、数の組合せ、又は下位範囲が含まれると理解される。
【0028】
本明細書の変数の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一の基又はリストされた基の組合せとしてのその変数の定義を含む。本明細書における変数又は態様の実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態又はその一部と組み合わせたその実施形態を含む。
【0029】
本明細書で提供される任意の組成物又は方法は、本明細書で提供される他の組成物及び方法のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる。
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト及び獣医対象を含む非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類などの哺乳動物及び非哺乳動物が含まれる。好ましい実施形態では、対象はヒトであり、患者と呼ばれる場合がある。
【0030】
本明細書で使用する「治療する」又は「治療」という用語は、好ましくは、疾患又は状態の1つ又は複数の徴候又は症状の緩和又は改善、疾患の程度を弱めること、疾患の安定性(すなわち悪化しない)状態、疾患状態の改善又は緩和、進行の速度又は進行時間の遅延、及び寛解(部分的か全体的かを問わない)を含むがこれらに限定されない有益又は望ましい臨床結果を得るための行為を指し、それが検出可能か検出不能かは問わない。「治療」は、治療なしで予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味する。治療は治癒的である必要はない。
【0031】
「治療有効量」は、対象の疾患を治療するのに十分な量である。治療有効量は1回以上で投与することができる。
本明細書で使用する「診断」等は、疾患、障害、又は状態の兆候又は症状などの少なくとも1つの指標の存在に基づいて、その疾患、障害、又は状態を有する対象を識別するための観察、試験、又は状況に基づく対象の状態の臨床的又は他の評価を指す。典型的には、本発明の方法を使用する診断は、本明細書で提供される方法と組み合わせた疾患、障害、又は状態の複数の指標についての対象の観察を含む。診断方法は、疾患が存在するか否かの指標を提供する。通常、単一の診断テストでは、テスト対象の疾患状態に関する明確な結論は得られない。
【0032】
「投与する」又は「投与」という用語は、医薬組成物又は作用剤を対象の身体に、又は対象内又は対象上の特定の領域に送達する任意の方法を含む。本発明の特定の実施形態では、作用剤は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、鼻腔内、経口、経皮、又は粘膜投与される。好ましい実施形態では、作用剤は静脈内投与される。作用剤の投与は、協力して作業する多くの人々が実行できる。作用剤の投与には、例えば、対象に投与される作用剤を処方すること、及び/又は直接又は他者を介して指示を与えて、自己送達、例えば経口送達、皮下送達、中心静脈内送達などのいずれかによって、又は訓練された専門家による送達、例えば、静脈内送達、筋肉内送達、腫瘍内送達などによって、特定の作用剤を服用させることが含まれる。
【0033】
本明細書で使用する「生存」という用語は、疾患又は状態、例えばがんについて治療されている対象の生活の継続を指す。生存時間は任意の時点から決定することができ、例えば、治験に参加した時点、前回の治療計画の完了又は失敗からの時間、又は、診断からの時間などである。
【0034】
本明細書で使用する「再発」という用語は、腫瘍の一次治療が実施された対象における腫瘍又はがん細胞の再成長を指す。腫瘍は元の部位又は身体の別の部位に再発する場合がある。一実施形態では、再発する腫瘍は、対象の治療対象とされた元の腫瘍と同じ種類のものである。例えば、対象に卵巣がん腫瘍があり、治療され、その後別の卵巣がん腫瘍が発生した場合、その腫瘍は再発している。さらに、がんは、最初に発生したものとは異なる器官又は組織に再発するか、転移する場合がある。
【0035】
本明細書で使用する「識別する」又は「選択する」という用語は、別のものよりも優先して選択することを指す。言い換えれば、対象物を識別するか、対象物を選択することは、グループからその特定の対象物を選び出し、名前又は他の際立った特徴によって対象物の同一性を確認する積極的なステップを実行することである。
【0036】
本明細書で使用する「利益」という用語は、有利又は良好なもの、又は利点を指す。同様に、本明細書で使用する「利益を受ける」という用語は、改善又は利点をもたらすものを指す。例えば、対象が疾患又は状態における少なくとも1つの兆候又は症状の減少(例えば、腫瘍縮小、腫瘍負荷の減少、転移の阻害又は減少、生活の質(「QOL」)の改善、無増悪期間(「TTP」)に遅延がある場合、全生存期間(「OS」)の延長がある場合など)を示す場合、又は疾患の進行の減速又は停止(例えば、腫瘍の成長又は転移の停止、又は腫瘍の成長又は転移の速度の低下)がある場合、対象は治療から利益を受ける。利益には、生活の質の改善、又は生存期間や無増悪生存期間の延長も含まれる。
【0037】
「がん」又は「腫瘍」という用語は、当技術分野で周知であり、制御されない増殖、不死、転移能、急速な成長及び増殖率、細胞死/アポトーシスの減少、及び特定の特徴的な形態学的特徴などの、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞の、例えば対象における存在を指す。がん細胞は多くの場合、固形腫瘍の形態にある。しかしながら、がんには、非固形腫瘍、例えば血液腫瘍、例えば白血病も含まれ、これらのがん細胞は骨髄に由来する。本明細書で使用する「がん」という用語は、前がん性がん及び悪性がんを含む。がんには、限定するものではないが、聴神経腫瘍、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(単球性、骨髄芽球性、腺がん、血管肉腫、星状細胞腫、骨髄単球性及び前骨髄球性)、急性T細胞白血病、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、気管支がん、子宮頸がん、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛がん、慢性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、大腸がん、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、増殖異常変化(異形成及び化生)、胎児性がん、子宮内膜がん、内皮肉腫、上衣腫、上皮癌、赤白血病、食道がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、本態性血小板血症、ユーイング肉腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、胚細胞精巣癌、神経膠腫、重鎖疾患、血管芽腫、肝腫、肝細胞がん、ホルモン非感受性前立腺がん、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、膀胱、乳房、結腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、及び子宮の悪性腫瘍及び過剰増殖性疾患、T細胞性又はB細胞性の悪性リンパ腫、白血病、リンパ腫、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽腫、非小細胞肺がん、乏突起膠腫、口腔がん、骨原性肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腺癌、乳頭癌、松果体腫、真性赤血球増加症、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮脂腺癌、セミノーマ、皮膚がん、小細胞肺癌腫、固形腫瘍(癌腫及び肉腫)、小細胞肺がん、胃がん(stomach cancer)、扁平上皮癌、滑膜腫、汗腺癌、甲状腺がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、精巣腫瘍、子宮がん、及びウィルムス腫瘍が含まれる。他のがんには、原発がん、転移がん、中咽頭がん、下咽頭がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、小腸がん、尿路がん、腎臓がん、尿路上皮がん、女性生殖器がん、子宮がん、妊娠性絨毛性疾患、男性生殖器がん、精嚢がん、精巣がん、胚細胞腫瘍、内分泌腺腫瘍、甲状腺がん、副腎がん、下垂体がん、血管腫、骨及び軟部組織から発生した肉腫、カポジ肉腫、神経がん、眼がん、髄膜がん、神経膠芽腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン細胞腫、白血病などの造血器悪性腫瘍から生じる固形腫瘍、転移性黒色腫、再発性又は持続性の上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん、消化管間質腫瘍、大腸がん、胃がん(gastric cancer)、黒色腫、多形性膠芽腫、非扁平上皮非小細胞肺がん、悪性神経膠腫、上皮性卵巣がん、原発性腹膜漿液性がん、転移性肝臓がん、神経内分泌癌、難治性悪性腫瘍、トリプルネガティブ乳がん、HER2増幅乳がん、鼻咽頭がん、口腔がん、胆道、肝細胞がん、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)、非髄様甲状腺がん、再発多形性膠芽腫、神経線維腫症1型、CNS腫瘍、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、唾液腺がん、粘膜黒色腫、末端黒子型黒色腫、傍神経節腫、褐色細胞腫、進行性転移がん、固形腫瘍、トリプルネガティブ乳がん、大腸がん、肉腫、黒色腫、腎細胞がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、横紋筋肉腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、膠芽腫、消化管間質腫瘍、マントル細胞リンパ腫、及び難治性悪性腫瘍が含まれる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「固形腫瘍」は、三次元の異常な成長として触診又は画像化法を使用して検出可能な任意の病原性腫瘍として理解される。固形腫瘍は、白血病などの血液腫瘍と区別される。ただし、血液腫瘍の細胞は骨髄に由来するため、がん細胞を産生する組織は低酸素状態になる可能性のある固形組織である。
【0039】
「腫瘍組織」は、固形腫瘍に関連する細胞、細胞外マトリックス、及び他の自然発生成分として理解される。
本明細書で使用する「単離(された)」という用語は、他のタンパク質、核酸、又は得られる調製物が由来する組織の関連化合物が実質的に存在しない(例えば、重量で50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)調製物を指す。
【0040】
本明細書で使用する「試料」という用語は、対象から単離された類似の体液、細胞、又は組織の採集物を指す。「試料」という用語には、対象者のあらゆる体液(例えば、尿、血清、血液、リンパ液、婦人科関連体液、嚢胞液、腹水液、眼内液、及び気管支洗浄及び/又は腹膜洗浄によって採集された液体)、腹水、組織試料(例えば腫瘍試料)又は細胞が含まれる。他の対象試料には、涙滴、血清、脳脊髄液、糞便、喀痰、及び細胞抽出物が含まれる。一実施形態では、試料は対象から取り出される。特定の実施形態では、試料は尿又は血清である。別の実施形態では、試料は腹水を含まないか、腹水試料ではない。別の実施形態では、試料は腹腔液を含まないか、腹腔液ではない。一実施形態では、試料は細胞を含む。別の実施形態では、試料は細胞を含まない。通常、試料は分析の前に対象から取り出される。しかし、腫瘍試料は、例えば画像化や他の検出方法を用いて、対象の内部で分析できる。
【0041】
本明細書で使用する「対照試料」という用語は、例えば、がんに罹患していない健康な対象からの試料、評価対象よりも重症度が低い又は進行が遅いがんを有する対象からの試料、他の種類のがん又は疾患を有する対象からの試料、治療前の対象からの試料、非罹患組織(例えば、非腫瘍組織)の試料、腫瘍部位の近くの同じ起源からの試料などを含む、任意の臨床的に関連する比較試料を指す。対照試料は、キットとともに提供される精製された試料、タンパク質、及び/又は核酸であり得る。そのような対照試料は、例えば希釈系列で希釈して、試験試料中の分析物の定量的測定を可能にすることができる。対照試料には、1個体以上の対象から得られた試料が含まれる場合がある。対照試料は、評価される対象から、より早い時点で作成された試料であってもよい。例えば、対照試料は、がんの発症前、疾患の初期段階、あるいは治療の実施又は治療の一部の実施前に、評価される対象から採取された試料であり得る。対照試料はまた、がんの動物モデルからの試料、又はその動物モデルに由来する組織又は細胞株からの試料であってもよい。一群の測定値からなる対照試料のレベルは、例えば、平均値、中央値、又は最頻値を含む中心傾向の測定値などの適切な統計学的測定値に基づいて決定することができる。
【0042】
本明細書で使用する「得る」という用語は、本明細書では、製造、購入、又は他の方法で所有することとして理解される。
本明細書で使用する「同一」又は「同一性」という用語は、アミノ酸又は核酸配列に関して本明細書で使用され、既知の遺伝子又はタンパク質配列に対し、比較配列の長さにわたって少なくとも30%の同一性、より好ましくは40%、50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する任意の遺伝子又はタンパク質配列を指す。配列全体で高レベルの同一性を持つタンパク質又は核酸配列は、相同であると言える。「相同」タンパク質はまた、比較タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有し得る。一般に、タンパク質の場合、比較配列の長さは少なくとも10アミノ酸、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、175、200、250、又は少なくとも300アミノ酸以上である。核酸の場合、比較配列の長さは一般に少なくとも25、50、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、又は少なくとも850ヌクレオチド以上である。
【0043】
本明細書で使用する場合、「検出する」、「検出」等は、試料中の特定の分析物の同定のためにアッセイを実施することと理解される。試料で検出される分析物又は活性の量は、ゼロであるか、アッセイ又は方法の検出レベルを下回る場合がある。
【0044】
「調節する」又は「調節」という用語は、レベルの上方制御(すなわち、活性化又は刺激)、下方制御(すなわち、阻害又は抑制)、あるいはこれら2つを組み合わせて又は別個に指す。「調節剤」は、例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、アクチベーター、刺激剤、サプレッサー、又は阻害剤であってもよいし、また、それらを調節する化合物又は分子でもあってもよい。
【0045】
「発現」という用語は、本明細書では、ポリペプチドがDNAから生成されるプロセスを意味するために使用される。このプロセスには、遺伝子のmRNAへの転写と、このmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。使用される文脈に応じて、「発現」はRNA、タンパク質、又はその両方の産生を指す場合がある。
【0046】
「遺伝子の発現レベル」又は「遺伝子発現レベル」という用語は、mRNAのレベルの他に、新生転写産物であるmRNA前駆体、転写産物プロセシング中間体、成熟mRNA及び分解産物のレベル、又は細胞内の遺伝子によってコードされるタンパク質のレベルも指す。
【0047】
本明細書で使用する場合、「活性レベル」は、定量的、半定量的、又は定性的アッセイにより決定されるタンパク質活性の量、典型的には酵素活性の量として理解される。活性は、典型的には、容易に検出可能な生成物、例えば、着色物質、蛍光物質、又は放射性物質を生成する基質を使用するアッセイで生成された生成物の量をモニタリングすることにより決定される。
【0048】
本明細書で使用する場合、「対照と比較して変化した」試料又は対象は、正常、未処理、又は対照の試料とは統計的に異なるレベルで検出される分析物のレベルあるいは診断又は治療指標(例えば、マーカー)のレベルを有することとして理解される。対照試料には、例えば、培養細胞、1又は複数の研究用実験動物、あるいは1又は複数のヒト対象が含まれる。対照試料を選択及び試験する方法は、当業者の能力の範囲内である。分析物は、細胞又は生物によって特徴的に発現又は産生される自然発生物質(例えば、抗体、タンパク質)、あるいはレポーター構築物によって産生される物質(例えば、β-ガラクトシダーゼ又はルシフェラーゼ)であり得る。検出に使用される方法に応じて、変化の量及び測定値は変動し得る。対照参照試料と比較した変化には、疾患、例えばがんに関連する1つ又は複数の徴候又は症状の変化又は疾患の診断における変化も含み得る。統計的有意性の決定は、例えば、陽性の結果を構成する平均からの標準偏差の数など、当業者の能力の範囲内である。
【0049】
「上昇した」又は「低下した」とは、基準値上限(「ULN」)又は基準値下限(「LLN」)に対する患者のマーカーの値を指し、これは従前の正常な対照試料に基づく。対象に存在するマーカーのレベルは治療の結果ではなく疾患の結果であるため、通常、疾患の発症前の患者から対照試料を得られる可能性は低い。研究室ごとに結果の絶対値は異なる場合があるため、値はその研究室の基準値上限(ULN)との比較で提示される。
【0050】
マーカーの「正常な」発現レベルは、がんに罹患していない対象又は患者の細胞におけるマーカーの発現レベルである。一実施形態では、「正常な」発現レベルは、正常酸素条件下でのマーカーの発現レベルを指す。
【0051】
マーカーの「過剰発現」又は「高レベルの発現」とは、発現を評価するために使用されるアッセイの標準誤差よりも大きい、好ましくは対照試料(例えば、マーカー関連疾患、すなわちがんを有しない健康な対象からの試料)におけるマーカーの発現レベルの少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍である試験試料での発現レベルを指す。一実施形態では、マーカーの発現は、いくつかの対照試料におけるマーカーの平均発現レベルと比較される。
【0052】
マーカーの「低レベルの発現」又は「過少発現」とは、対照試料(例えば、マーカー関連疾患、すなわちがんを有しない健康な対象からの試料)におけるマーカーの発現レベルの少なくとも0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1倍未満の試験試料での発現レベルを指す。一実施形態では、マーカーの発現は、いくつかの対照試料におけるマーカーの平均発現レベルと比較される。
【0053】
本明細書で使用する場合、「結合」は、非特異的結合パートナーと比較して、特異的結合パートナーに対し少なくとも102以上、103以上、好ましくは104以上、好ましくは105以上、好ましくは106以上の選択性を有すること(例えば、同族抗体を含むことが知られている試料に抗原を結合させること)として理解される。
【0054】
本明細書で使用する場合、「決定」は、誰か又は何かの状態、例えば、特定の状態、バイオマーカー、疾患状態、又は生理学的状態の存在、不在、レベル、又は程度を確認するためのアッセイの実施又は診断方法の使用として理解される。
【0055】
本明細書で使用される「処方」は、対象への投与のための特定の1つ又は複数の作用剤を示すものとして理解される。
本明細書で使用する「応答」又は「反応」という用語は、治療剤での治療に対して陽性反応を有することと理解され、陽性反応は、疾患又は状態の少なくとも1つの徴候又は症状が低減すること(例えば、腫瘍縮小、腫瘍負荷の減少、転移の阻害又は減少、生活の質(「QOL」)の改善、無増悪期間(「TTP」)に遅延、全生存期間(「OS」)の延長など)、又は疾患の進行を遅延又は停止させること(例えば、腫瘍の成長又は転移の停止、又は腫瘍の成長又は転移の速度の低下)と理解される。応答には、生活の質の改善、あるいは生存時間又は無増悪生存期間の延長も含まれる。
【0056】
「投与する」又は「投与」という用語は、医薬組成物又は作用剤を対象の身体に、又は対象内又は対象上の特定の領域に送達する任意の方法を含み得る。本発明の特定の実施形態では、Hsp90阻害剤は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、鼻腔内、経口、経皮、又は粘膜投与される。好ましい実施形態では、作用剤は静脈内投与される。投与は、協力して作業する多くの人々が実行できる。作用剤の投与には、例えば、対象に投与される作用剤を処方すること、及び/又は直接又は他者を介して指示を与えて、自己送達、例えば経口送達、皮下送達、中心静脈内送達などのいずれかによって、又は訓練された専門家による送達、例えば、静脈内送達、筋肉内送達、腫瘍内送達などによって、特定の作用剤を服用させることが含まれる。
【0057】
本明細書で使用する「高濃度」という用語は、SDC-TRAPの結合部分の標的タンパク質への選択的結合により、本発明の標的細胞に蓄積するSDC-TRAPの濃度を指す。一実施形態では、濃度は、標的タンパク質を過剰発現しない同様の細胞、例えば、非がん性肺細胞と比較した肺がん細胞におけるものよりも高い。別の実施形態では、濃度は、標的タンパク質を発現しない、又は過剰発現しない細胞と比較して、標的細胞でより高い。例示的な実施形態では、高濃度は、本発明のSDC-TRAP分子によって標的化されない細胞の1.5、2、3、4、5、10、15、20、50、100、1000倍またはそれ以上である。
【0058】
「部分」という用語は一般に、分子の一部を指し、これは、分子の特徴的な化学的特性、生物学的特性、及び/又は薬効特性に関与する分子内の官能基、官能基のセット、及び/又は特定の原子群であり得る。
【0059】
「結合部分」という用語は、生物学的プロセスの治療薬又は調節剤として機能し得る低分子量(例えば、ダルトンで約2500、200、1600、800、700、600、500、400、300、200、又は100未満など)の有機化合物を指す。結合部分には、タンパク質、核酸、又は多糖類などの生体高分子に結合でき、エフェクターとして機能し、生体高分子の活性又は機能を変化させる分子が含まれる。結合部分は、細胞シグナル伝達分子として、分子生物学のツールとして、医学分野の薬物として、農業における殺虫剤として、及び他の多くの役割を果たす様々な生物学的機能を有することができる。これらの化合物は、天然物(二次代謝産物など)又は人工物(抗ウイルス薬など)とすることができる。それらは疾患に対して有益な効果がある(薬物など)か、有害(催奇形物質や発がん性物質など)である可能性がある。核酸、タンパク質、及び多糖類(デンプンやセルロースなど)といった生体高分子は結合部分ではないが、その構成モノマー(それぞれ、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド、アミノ酸、及び単糖類)は結合部分とみなされる場合が多い。ジヌクレオチド、抗酸化剤グルタチオンなどのペプチド、及びスクロースなどの二糖類といった小さなオリゴマーも、通常、結合部分とみなされる。
【0060】
本明細書で使用する場合、「タンパク質相互作用性結合部分」又は「結合部分」とは、所定の標的と相互作用する結合部分又はその一部を指す。相互作用は、標的に対するある程度の特異性及び/又は親和性によって実現される。一般に、特異性及び親和性の両方が望ましいが、特定の場合、より高い特異性がより低い親和性を補い、より高い親和性がより低い特異性を補う場合がある。親和性及び特異性の要件は、限定するものではないが、標的の絶対濃度、標的の相対濃度(例えば、がん細胞内対正常細胞内)、有効性及び毒性、投与経路、及び/又は標的細胞への拡散又は輸送を含む様々な要因に応じて変動する。標的は、目的の分子及び/又は目的の領域に局在化した分子であり得る。例えば、標的は治療標的であり、かつ/又は治療の標的領域に局在化することができる(例えば、正常細胞と比較してがん細胞で過剰発現されるタンパク質)。特定の一例では、標的はHsp90などのシャペロニンタンパク質であり得、結合部分はHsp90結合部分(例えば、治療部分、細胞傷害性部分、又はイメージング部分)であり得る。優先的には、結合部分は、結合部分を含むコンジュゲートの細胞、例えば標的タンパク質を含む細胞への受動輸送を増強するか、その受動輸送と共存するか、又はその受動輸送を実質的に減少させない。
【0061】
「エフェクター部分」という用語は、標的に及び/又は標的の付近に作用する分子又はその一部を指す。様々な好ましい実施形態では、エフェクター部分は結合部分又はその一部である。効果には、治療効果、画像化効果、及び/又は細胞毒性効果が含まれるが、これらに限定されない。分子レベル又は細胞レベルでの効果には、標的の活性の促進又は阻害、標的及び/又は細胞死の標識化が含まれるが、これらに限定されない。優先的には、エフェクター部分は、標的を含む細胞へのエフェクター部分を含むコンジュゲートの受動輸送を増強するか、その受動輸送と共存するか、又はその受動輸送を実質的に減少させない。異なるエフェクター部分を一緒に使用することができ、本発明による治療薬は、2つ以上のエフェクター部分を含んでもよい(例えば、本願発明による単一の治療薬に2つ以上の異なる(又は同じ)エフェクター部分、異なるエフェクター部分を含む本願発明による2つ以上の異なる治療薬)。
【0062】
いくつかの実施形態では、エフェクター部分は、ペプチジル-プロリルイソメラーゼリガンド、ラパマイシン、シクロスポリンA;ステロイドホルモン受容体リガンド、抗有糸分裂剤、アクチン結合剤、カンプトテシン、トポテカン、コンブレタスタチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビンカアルカロイド、白金含有化合物、メトホルミン、HDAC阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤;窒素マスタード;5-フルオロウラシル(5-FU)及びその誘導体、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、エフェクター部分は、FK506;ラパマイシン、シクロスポリンA、エストロゲン、プロゲスチン、テストステロン、タキサン、コルヒチン、コルセミド、ノカドゾール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、サイトカラシン、ラトランクリン、ファロイジン、レナリドミド、ポマリドミド、SN-38、トポテカン、コンブレタスタチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビンカアルカロイド、メトホルミン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ベンダムスチン、メルファラン;5-フルオロウラシル(5-FU)、ベドチン、及びDM1、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0064】
「細胞内に捕捉された小分子薬物コンジュゲート」又は「細胞内に捕捉された結合部分薬物コンジュゲート」又は「SDC-TRAP」という用語は、互いに結合した、又は互いに結合したかのように作用する結合部分及びエフェクター部分を指す。結合部分及びエフェクター部分は、本質的に任意の化学的又は物理的な力によって、直接(例えば、結合部分及びエフェクター部分を同じ分子上の2つの部分、又は両方の機能を有する単一の部分とみなす)又は中間体(例えば、リンカー)を介して連結することができる。例えば、結合部分及びエフェクター部分は、1つ以上の共有結合、イオン結合、水素結合、疎水効果、双極子-双極子力、イオン-双極子力、双極子-誘起双極子力、瞬間双極子-誘起双極子力、及び/又はそれらの組合せによって連結することができる。優先的には、SDC-TRAPは、標的を含む細胞への受動的及び/又は能動的輸送が可能である。さらに、本発明のSDC-TRAP分子は、結合部分に結合した複数のエフェクター分子を含んでもよい。
【0065】
結合部分、エフェクター部分、及び/又はSDC-TRAPの文脈で本明細書において使用する「リンカー」又は「結合部分」という用語は、2つの他の部分(例えば、結合部分及びエフェクター部分)を結合する化学的部分を指す。リンカーは、結合部分及びエフェクター部分を共有結合できる。リンカーは、切断可能なリンカー、例えば酵素的に切断可能なリンカーを含むことができる。リンカーは、ジスルフィド、カルバメート、アミド、エステル、及び/又はエーテルリンカーを含むことができる。
【0066】
本明細書で使用する場合、「リガンド」は、生体分子と複合体を形成できる物質(例えば、結合部分)である。リガンド及び/又はリガンド-生体分子複合体の形成は、治療効果、細胞毒性効果、及び/又は画像化効果などの生物学的又は化学的効果を有し得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」は、不活性形態又は完全な活性に満たない形態で投与され、その後、代謝プロセスを介して活性な薬理作用物質(すなわち、薬物)に変換される薬理学的物質である。プロドラッグは、目的の薬物が吸収、分布、代謝、及び/又は排泄される様式を改善するために使用することができる。プロドラッグを使用して、意図した薬物が意図した標的ではない細胞又はプロセスとどのように選択的に相互作用するかを改善することもできる(例えば、意図した薬物、例えば化学療法薬の悪影響又は意図しない効果を低減させるため)。
【0068】
「Hsp90リガンド又はそのプロドラッグ」という語句は、一般に、Hsp90に結合し、場合によってはHsp90に作用する分子、及びその不活性型(すなわち、プロドラッグ)を指す。Hsp90リガンドは、「Hsp90阻害剤」であり得、これは、Hsp90の少なくとも1つのクライアントタンパク質の発現及び適切なフォールディングが阻害されるように、Hsp90と直接相互作用することにより、又は例えばHsp90/CDC37複合体の形成を抑止することにより、Hsp90の活性を低下させる治療薬として理解される。「Hsp90」には、質量約90キロダルトンの熱ショックタンパク質ファミリーの各メンバーが含まれる。例えばヒトでは、高度に保存されたHsp90ファミリーには、サイトゾルHsp90α及びHsp90βアイソフォーム、ならびに小胞体に見られるGRP94、及びミトコンドリアマトリックスに見られるHSP75/TRAP1が含まれる。本明細書で使用される場合、Hsp90阻害剤には、限定するものではないが、ガネテスピブ、ゲルダナマイシン(タネスピマイシン)、例えば、IPI-493、マクベシン、トリプテリン、タネスピマイシン、例えば、17-AAG(アルベスピマイシン)、KF-55823、ラジシコール、KF-58333、KF-58332、17-DMAG、IPI-504、BIIB-021、BIIB-028、PU-H64、PU-H71、PU-DZ8、PU-HZ151、SNX-2112、SNX-2321、SNX-5422、SNX-7081、SNX-8891、SNX-0723、SAR-567530、ABI-287、ABI-328、AT-13387、NSC-113497、PF-3823863、PF-4470296、EC-102、EC-154、ARQ-250-RP、BC-274、VER-50589、KW-2478、BHI-001、AUY-922、EMD-614684、EMD-683671、XL-888、VER-51047、KOS-2484、KOS-2539、CUDC-305、MPC-3100、CH-5164840、PU-DZ13、PU-HZ151、PU-DZ13、VER-82576、VER-82160、VER-82576、VER-82160、NXD-30001、NVP-HSP990、SST-0201CL1、SST-0115AA1、SST-0221AA1、SST-0223AA1、ノボビオシン(C末端Hsp90i、ヘルビンマイシンA、ラジシコール、CCT018059、PU-H71、又はセラストロールが含まれる。
【0069】
「治療部分(therapeutic moiety)」という用語は、生物の疾患の治療又はウェルビーイングの向上に使用されるか、その他の態様で治癒力を示す分子、化合物、又はそれらのフラグメントを指す(例えば、医薬品、薬物など)。治療部分は、疾患、例えばがんに対するその特異的作用のために使用される天然の又は合成起源の化学物質、又はそのフラグメントであり得る。がんの治療に使用される治療薬は、化学療法薬と呼ばれる場合がある。本明細書に記載されるように、治療部分は小分子であることが優先される。例示的な小分子治療薬には、800ダルトン、700ダルトン、600ダルトン、500ダルトン、400ダルトン、又は300ダルトン未満のものが含まれる。
【0070】
「細胞傷害性部分」という用語は、細胞に対して毒性又は有毒な効果を有するか、細胞を殺す分子、化合物、又はそれらのフラグメントを指す。化学療法及び放射線療法は細胞傷害性療法の一種である。細胞を細胞傷害性成分で処理すると、細胞は壊死を起こしたり、活発な成長及び分裂を停止したり、制御された細胞死(すなわちアポトーシス)の遺伝的プログラムを活性化したりするなど、様々な結果が得られる。細胞傷害性部分の例には、限定するものではないが、SN-38、ベンダムスチン、VDA、ドキソルビシン、ペメトレキセド、ボリノスタット、レナリドミド、イリノテカン、ガネテスピブ、ドセタキセル、17-AAG、5-FU、アビラテロン、クリゾチニブ、KW-2189、BUMB2、DC1、CC-1065、アドゼレシン(adozelesin)、又はそれらのフラグメントが含まれる。
【0071】
「イメージング部分」という用語は、臨床及び/又は研究目的のために、細胞、組織、及び/又は生物(又はその一部又は機能)の画像の作成又は測定を行うために使用される技術及び/又はプロセスを促進する分子、化合物、又はそのフラグメントを指す。イメージング部分は、例えば、電磁エネルギー、核エネルギー、及び/又は機械的(例えば、超音波のような音響)エネルギーとの相互作用及び/又は放射を通じて信号を生成することができる。イメージング部分は、例えば、様々な放射線学、核医学、内視鏡検査、サーモグラフィー、写真撮影術、分光法、及び顕微鏡法で使用することができる。
【0072】
「医薬コンジュゲート」とは、エフェクター部分と結合した結合部分(例えば、Hsp90標的化部分)を含む天然に存在しない分子を指し、これら2つの構成要素は直接的に又は連結基を介して互いに共有結合していてもよい。
【0073】
「薬物」という用語は、任意の生物学的プロセスに影響を与えるあらゆる活性剤を指す。本願の目的において薬物と見なされる活性剤は、薬理学的活性を示す作用剤である。薬物の例には、病状の予防、診断、緩和、治療又は治癒に使用される活性剤が含まれる。
【0074】
「薬理活性」とは、表現型の変化、例えば、細胞死、細胞増殖などをもたらすように生物学的プロセスを調節又は変更する活性を意味する。
「薬物動態特性」とは、生物又は宿主における活性物質の動態を表すパラメータを意味する。
【0075】
「半減期」とは、投与された薬物の半分が生物学的プロセス、例えば代謝、排泄などによって除去される時間を意味する。
「有効性」という用語は、その意図する目的に対する特定の活性剤の有用性、すなわち、所定の活性剤がその所望の薬理効果を引き起こす能力を指す。
【0076】
細胞内に捕捉される結合部分-エフェクター部分薬物コンジュゲート(SDC-TRAP)
本発明は、SDC-TRAP、ならびにSDC-TRAP組成物、キット、及びその使用方法を提供する。SDC-TRAPは、エフェクター部分(例えば、薬物や造影剤などの薬理学的作用剤)に結合した結合部分(例えば、リガンドといった結合部分)を含む。これら2つの部分は、リンカー、例えば共有結合した連結基により結合することができる。SDC-TRAPは、様々な治療、画像化、診断、及び/又は研究用途に有用である。がん治療の例示的な一例では、SDC-TRAPは、治療剤又は細胞傷害剤などのエフェクター部分に結合したHsp90リガンドなどのHsp90結合部分又は阻害剤の医薬コンジュゲートであり得る。
【0077】
様々な実施形態において、SDC-TRAPは、結合部分(例えば、標的化部分)とエフェクター部分が異なるものとしてさらに特徴付けることができ、そのため、医薬コンジュゲートは、2つの異なる部分の結合によって生成されるヘテロ二量体化合物とみなされ得る。機能に関しては、SDC-TRAP分子は標的化機能及びエフェクター機能(治療、画像化、診断など)を有する。これらの機能は、異なる(場合によっては同じ)可能性のある対応する化学的部分によって提供される。SDC-TRAPは、任意の1つ以上のエフェクター部分に結合した任意の1つ以上の結合部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物又は方法は、1つ以上の異なるタイプのSDC-TRAPで具体化される2つ以上の結合部分及び/又は2つ以上のエフェクター部分の組合せ(例えば、併用療法及び/又はマルチターゲット療法)を含むことができる。
【0078】
種々の実施形態では、SDC-TRAPは、目的の標的細胞内に受動的に拡散する能力及び/又は能動的に輸送される能力によってさらに特徴付けられる。SDC-TRAPの拡散及び/又は輸送特性は、少なくとも部分的に、SDC-TRAPのイオン特性、極性特性、及び/又は疎水特性に由来し得る。好ましい実施形態において、SDC-TRAPは、主に受動拡散により細胞に入る。SDC-TRAPの拡散及び/又は輸送特性は、少なくとも部分的に、SDC-TRAPの分子量、結合部分、エフェクター部分、及び/又は結合部分とエフェクター部分との間の重量の類似性に由来し得る。SDC-TRAPは、望ましくは、例えば抗体-薬物コンジュゲート(「ADC」)と比較して小さいことが望ましい。例えば、SDC-TRAPの分子量は、約5000、2500、2000、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、又は400ダルトン未満であり得る。結合部分及びエフェクター部分はそれぞれ、約1000、900、800、700、600、500、400、300、又は200ダルトン未満であり得る。結合部分及びエフェクター部分は、ほぼ等しいサイズでもよい(例えば、重量が400、350、300、250、200、150、100、又は50ダルトン未満だけ異なる)。
【0079】
SDC-TRAPによるエフェクター分子の送達は、例えば、SDC-TRAPが結合部分とその標的との会合を通じて長時間にわたり所望の標的に局在化できるため、同じエフェクター部分を含む非標的薬物の投与と比較して、より大きな効力をもたらす。そのような局在化は、標的細胞及び/又は組織において長期間にわたるエフェクター部分の活性化及び/又は放出をもたらし得る。この共鳴時間(resonance time)は、リンカー部分を意図的に設計することにより選択できる。対照的に、in vivoでの薬物の単独投与は(仮にそれが細胞内に移動したとしても)、細胞内の「アンカー」の欠如のため、所与の標的細胞及び/又は組織で共鳴時間をより短くする傾向がある。
【0080】
SDC-TRAPは、標的化部分を含み、サイズが比較的小さいことに一部起因して、標的細胞に効率的に取り込まれるか、内在化することができる。逆に、ADCでは取り込み又は内在化は比較的非効率的であり、限られた抗原発現及び分子の抗体部分に対する比較的非効率的な内在化メカニズムに対処する必要がある。Hsp90は、SDC-TRAPと従来のADCの違いを示す分かりやすい例である。比較として、患者の腫瘍における放射性標識モノクローナル抗体の局在率は低く、注入された用量/腫瘍gの0.003~0.08%のオーダーである。対照的に、SDC-TRAPでは、マウス腫瘍異種移植片においてはるかに高い蓄積率(注入された用量/腫瘍gの15~20%)が測定されている。
【0081】
本発明によるSDC-TRAP医薬コンジュゲートは、標的薬物の技術水準を大きく上回る進歩を示すことができる。SDC-TRAPは、多くの治療、画像化、及び診断用途の幅広い用途を有する。上述したように、SDC-TRAPはADCと比較して有利に小さく、固形腫瘍へのより良い浸透と正常組織からのより迅速なクリアランスを可能にする(例えば、毒性の低下)。SDC-TRAPの設計(例えば、構造と特性の関係)は、当業者の理解の範囲内の方法及び理論的根拠を用いて確立でき、また、より単純な化学構造が関与する点で、標的治療のコンパニオン画像診断もより容易に提供することができる。
【0082】
本発明のSDC-TRAPは、標的タンパク質を過剰発現する標的細胞へのSDC-TRAPの選択的標的化により特徴付けられる。これにより、非標的細胞と比較して、標的細胞内のSDC-TRAP分子の細胞内濃度が高くなる。同様に、本発明のSDC-TRAPは、非標的細胞におけるSDC-TRAPの濃度が低いことを特徴とする。
【0083】
例示的な一実施形態は、キレート剤(すなわち、コンジュゲートが標的とする細胞/組織のイメージング剤として機能し得るIn又はGdなどの金属に対するエフェクター部分)に連結したHsp90結合部分のコンジュゲートを含む。別の例示的な実施形態は、化学療法剤(すなわち、エフェクター部分、例えばSN-38)に連結したHsp90結合部分のコンジュゲートを含む。あるいは、考えられる例示的なSDC-TRAPにおいて、放射性標識ハロゲン(例えば、ヨウ素同位体など)を担持するHsp90標的化部分は、コンジュゲートによって標的化された細胞/組織を画像化するのに役立ち、エフェクター部分は標的細胞/組織を治療する薬物であり得る。したがって、治療の進行は、治療されている組織を画像化し、標識されたコンジュゲートの有無について画像を検討することにより決定され得る。そのような実施形態は、本質的に任意のがん又は他の化学療法標的に容易に適応可能である。特定の細胞又は組織を標的とするために使用される分子標的(例えば、結合部分と相互作用するもの)は、標的細胞又は組織におけるそれらの存在、及び/又は標的細胞又は組織におけるそれらの相対的存在量(例えば、疾患関連細胞内対正常細胞内)に基づいて選択することができる。
【0084】
本発明のSDC-TRAP分子は、薬物の新しい分類を表す。SDC-TRAPの特定の利点の1つは、細胞における結合部分の分子標的の相対的な過剰発現又は存在により、エフェクター部分(例えば化学療法薬)を標的細胞に選択的に送達するように設計できることである。結合部分が分子標的に結合した後、エフェクター部分はその後(例えば、結合部分とエフェクター部分を結合するリンカー部分の切断により)細胞に作用できるようになる。したがって、SDC-TRAPは、当技術分野で現在使用されている戦略とは異なるメカニズム、例えばHPMAコポリマー-Hsp90iコンジュゲート、Hsp90iプロドラッグ、ナノ粒子-Hsp90iコンジュゲート、又はミセル法を使用してHsp90阻害剤を細胞に送達するメカニズムを採用している。
【0085】
SDC-TRAPは、次の式によっても説明できる:
結合部分-L-E
ここで、「結合部分」は、タンパク質と相互作用する結合部分であり、Lは共役又は連結部分(例えば、結合又は連結基)であり、Eはエフェクター部分である。これらの要素については、以下の追加の例示的な実施例と絡めて説明する。ただし、各要素の特徴については個別に説明するが、SDC-TRAPの設計及び選択には、各要素の機能の相互作用及び/又は累積効果(拡散、結合、効果など)が関与する場合がある。
【0086】
本発明のSDC-TRAP分子が標的細胞に入ると、エフェクター分子はSDC-TRAPから放出される。一実施形態では、エフェクター分子は、SDC-TRAPから放出されるまで活性を持たない。したがって、SDC-TRAP分子が標的細胞に入ると、遊離SDC-TRAP分子と結合SDC-TRAP分子の間で平衡状態になる。一実施形態では、エフェクター部分は、SDC-TRAPが標的タンパク質と会合していない場合にのみSDC-TRAPから放出される。例えば、SDC-TRAP分子が結合していない場合、細胞内酵素はリンカー領域にアクセスでき、それによりエフェクター部分を解放する。あるいは、遊離SDC-TRAP分子が、例えば、結合部分とエフェクター部分とをつなぐ結合又はリンカーの加水分解を通じてエフェクター分子を放出できる場合がある。
【0087】
したがって、エフェクター分子の放出速度及び放出されるエフェクター分子の量は、異なる親和性で標的タンパク質に結合する結合部分を使用することにより制御することができる。例えば、低い親和性で標的タンパク質に結合する結合部分は遊離して、高い濃度の非結合細胞内SDC-TRAPをもたらし、それにより高い濃度の遊離エフェクター分子をもたらす。したがって、少なくとも1つの実施形態では、不可逆的に結合する結合部分は、本発明の特定の態様、例えば、エフェクター分子放出が遊離細胞内SDC-TRAP分子に基づく実施形態には適合しない。
【0088】
一実施形態では、SDC-TRAPは、例えば、結合部分又はエフェクター分子単独と比較した場合、例えば、好ましい安全性プロファイルを有する。安全性プロファイルが向上する理由の1つは、標的細胞に入らないSDC-TRAP分子の迅速なクリアランスである。
【0089】
いくつかの例示的なSDC-TRAP分子が実施例に記載されている。具体的には、SDC-TRAP分子の有効性を実証するために、多くのHsp90特異的SDC-TRAP分子が説明及び使用されている。
【0090】
結合部分
結合部分の主な役割は、標的細胞内又は組織内、あるいは標的細胞上又は組織上の分子標的に結合することにより、SDC-TRAPにそのペイロード(エフェクター部分)を標的に確実に送達させることである。この点で、結合部分も標的に効果をもたらすこと(例えば、Hsp90標的化部分の場合、Hsp90iが行うことが知られている方法でHsp90を阻害すること、すなわち薬理学的活性を示し又はその機能に干渉すること)は必要ない。しかし、いくつかの実施形態では、結合部分は標的に影響を与える。したがって、様々な実施形態において、SDC-TRAPの活性は、標的細胞に薬理学的効果を及ぼすエフェクター部分のみによるものであり、これは、標的細胞を標的とする医薬コンジュゲートにより良好に促進されている。他の実施形態において、SDC-TRAPの活性は、結合部分に一部起因する。すなわち、結合部分は、標的化を超える効果を有し得る。
【0091】
結合部分の分子標的は、複数の生体分子、例えば脂質の複合体又は構造の一部であってもなくてもよく、上記複合体又は構造はリポタンパク質、脂質二重層などを含んでもよい。しかし、多くの実施形態では、結合部分が結合する分子標的は遊離している(例えば、細胞質球状タンパク質、かつ/又は巨大分子集合体又は凝集体の一部ではない)。本発明は、生理学的活性が高い場所における選択的に高い分子標的の存在(例えば、腫瘍の過程におけるHsp90)を活用することができる。例えば、薬物標的が細胞内薬物標的である場合、対応する分子標的(例えば、Hsp90)は細胞内に存在し得る。同様に、薬物標的が細胞外薬物標的である場合、対応する分子標的(例えば、Hsp90)は、標的細胞又は組織の細胞外にあるか、近位にあるか、又は細胞外細胞膜に結合していてもよい。
【0092】
様々な実施形態において、結合部分は、標的細胞又は組織に影響を及ぼし得る(例えば、実際にHsp90を阻害するHsp90標的化部分、例えばHsp90iの場合)。そのような実施形態では、結合部分の薬理学的活性は、エフェクター部分の薬理学的活性に寄与し、それを補完し、又は増強する。そのような実施形態は、併用療法及び標的化の両方の利点を実現する単一のSDC-TRAPの投与により実施可能な治療を提供することにより、併用療法(例えば、Hsp90iとガネテスピブ又はクリゾチニブなどの第2の薬物とのがん併用療法)の利点を超える。そのようなSDC-TRAPの他の例には、Hsp90i(ガネテスピブなど)と、ドセタキセル又はパクリタキセル(例えばNSCLCにおいて);BEZ235(例えば、黒色腫、前立腺、及び/又はNSCLCにおいて);テムシロリムス(例えば、腎細胞がん(RCC)、結腸、乳房、及び/又はNSCLC);PLX4032(例えば黒色腫において);シスプラチン(例えば、結腸、乳がん);AZD8055(例えばNSCLCにおいて);及びクリゾチニブ(例えばALK+NSCLC)などの第2の抗がん剤とのコンジュゲートが含まれる。
【0093】
結合部分及びエフェクター部分を賢明に選択することで、様々な薬学的活性を実現できる。例えば、結腸がんなどの固形腫瘍を治療するために、カペシタビン又はゲムシタビンなどの代謝拮抗薬の高連続投与が、他の薬物と組み合わせて必要とされる傾向がある。例えば、HER2分解アッセイにより決定されるように、Hsp90に対する結合親和性又は阻害活性が低いHsp90標的化部分を有するコンジュゲートを、このニーズを満たすように設計することができる。そのようなコンジュゲートは、高用量で比較的頻繁に投与され得るコンジュゲートを提供するために、5-FUなどの強力に効き目のある代謝拮抗物質であるエフェクター部分を含むことができる。そのようなアプローチは、本発明のSDC-TRAPの血漿安定性、及び、代謝拮抗物質を所望の細胞又は組織に送達するHsp90標的化部分の能力により、腫瘍に高用量の代謝拮抗物質フラグメントを提供するという目的を達成するだけでなく、薬物を投与する毒性も自然に低下させる。
【0094】
SCLC又は大腸がんなどの固形腫瘍をトポテカン又はイリノテカンなどの薬物で治療する実施形態では、低用量の薬物のみを投与してもよい。これらの薬物には非常に高い固有の活性があるため、SDC-TRAPは、低用量のこのような薬物を標的組織で提供するように設計する必要がある。このシナリオでは、例えば、Hsp90に対してより高い結合親和性又は阻害活性を有するHsp90標的化部分(例えば、HER2分解アッセイにより決定される)は、投与量が少ないため、十分な薬物が所望の標的組織に到達して保持されるように、組織内の薬物の存在を非常に高いレベルで十分に維持できる。
【0095】
結合部分の分子標的がHsp90である様々な例示的な実施形態では、結合部分はHsp90標的化部分であってもよく、例えばHsp90に結合するトリアゾール/レゾルシノールベースの化合物、又はHsp90に結合するレゾルシノールアミドベースの化合物、例えばガネテスピブ又はその互変異性体/誘導体/アナログ、AUY-922又はその互変異性体/誘導体/アナログ、あるいはAT-13387又はその互変異性体/誘導体/アナログとすることができる。
【0096】
別の実施形態では、結合部分は、有利には式(I)のHsp90結合化合物である:
【0097】
【0098】
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであり得;R2は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得、R2が6員のアリール又はヘテロアリールである場合、R2は、トリアゾール環の結合点に対して3位及び4位で置換され、これを介してリンカーLが結合し;R3は、SH、OH、-CONHR4、アリール又はヘテロアリールであり得、R3が6員のアリール又はヘテロアリールである場合、R3は、 3位又は4位で置換される。
【0099】
別の実施形態では、結合部分は、有利には式(II)のHsp90結合化合物である:
【0100】
【0101】
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド、スルホンアミドであり得;R2は、任意に置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得る。このような化合物の例には、5-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-N-(2-モルホリノエチル)-4-(4-(モルホリノメチル)フェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド及び5-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-4-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドが含まれる。
【0102】
別の実施形態では、結合部分は、有利には式(III)のHsp90結合化合物であり得る:
【0103】
【0104】
式中、X、Y、及びZは、独立してCH、N、O、又はSであり得(適切な置換基を有し、対応する原子の原子価及び環の芳香族性を満たす);R1は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであり得;R2は、置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得、リンカーLが、これらの環に直接又はこれらの環上の延長された置換基に結合されており;R3は、SH、OH、NR4R5及び-CONHR6であり得、これにエフェクター部分が連結されていてもよく;R4及びR5は、独立して、H、アルキル、アリール、又はヘテロアリールであり得;R6は、エフェクター部分が結合され得る最低1つの官能基を有するアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり得る。そのような化合物の例には、AUY-922が含まれる:
【0105】
【0106】
別の実施形態において、結合部分は、有利には式(IV)のHsp90結合化合物であり得る:
【0107】
【0108】
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド又はスルホンアミドであり得;R2及びR3は、独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、C1~C2アルコキシ、アミノ、モノ-及びジ-C1~C2アルキルアミノ;5~12員のアリール又はヘテロアリール基のうちの1つ又は複数で任意に置換されたC1~C5ヒドロカルビル基であるか;又は、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、4~8員の単環式複素環式基を形成し、その最大5個の環員がO、N及びSから選択される。このような化合物の例には、AT-13387が含まれる:
【0109】
【0110】
特定の実施形態では、医薬コンジュゲートのバイオアベイラビリティ又は送達を増強するために、結合部分はHsp90結合化合物のプロドラッグであり得る。
適切なHsp90標的化部分の具体例には、ゲルダナマイシン、例えばIPI-493
【0111】
【0112】
マクベシン、トリプテリン、タネスピマイシン、例えば17-AAG
【0113】
【0114】
KF-55823
【0115】
【0116】
ラジシコール、KF-58333
【0117】
【0118】
KF-58332
【0119】
【0120】
17-DMAG
【0121】
【0122】
IPI-504
【0123】
【0124】
BIIB-021
【0125】
【0126】
BIIB-028、PU-H64
【0127】
【0128】
PU-H71
【0129】
【0130】
PU-DZ8
【0131】
【0132】
PU-HZ151
【0133】
【0134】
SNX-2112
【0135】
【0136】
SNX-2321
【0137】
【0138】
SNX-5422
【0139】
【0140】
SNX-7081
【0141】
【0142】
SNX-8891、SNX-0723
【0143】
【0144】
SAR-567530、ABI-287、ABI-328、AT-13387
【0145】
【0146】
NSC-113497
【0147】
【0148】
PF-3823863
【0149】
【0150】
PF-4470296
【0151】
【0152】
EC-102、EC-154、ARQ-250-RP、BC-274
【0153】
【0154】
VER-50589
【0155】
【0156】
KW-2478
【0157】
【0158】
BHI-001、AUY-922
【0159】
【0160】
EMD-614684
【0161】
【0162】
EMD-683671、XL-888、VER-51047
【0163】
【0164】
KOS-2484、KOS-2539、CUDC-305
【0165】
【0166】
MPC-3100
【0167】
【0168】
CH-5164840
【0169】
【0170】
PU-DZ13
【0171】
【0172】
PU-HZ151
【0173】
【0174】
PU-DZ13
【0175】
【0176】
VER-82576
【0177】
【0178】
VER-82160
【0179】
【0180】
VER-82576
【0181】
【0182】
VER-82160
【0183】
【0184】
NXD-30001
【0185】
【0186】
NVP-HSP990
【0187】
【0188】
SST-0201CL1
【0189】
【0190】
SST-0115AA1
【0191】
【0192】
SST-0221AA1
【0193】
【0194】
SST-0223AA1
【0195】
【0196】
ノボビオシン(C末端Hsp90i)、又はそれらの互変異性体/誘導体/アナログが含まれる。他のHsp90標的化部分の選択は、当業者の理解の範囲内であろう。同様に、他の分子標的及び/又は他の用途に適した結合部分の選択は、当業者の能力の範囲内であろう。
【0197】
さらに、Hsp90標的化部分を使用して、炎症の治療用のSDC-TRAP分子を構築することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0280032号の表5、6、及び7に示される化合物、又はその中の任意の式の化合物、又はその互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、水和物、多形体又はプロドラッグを含む結合部分、は、Hsp90の活性を阻害し、それによりHsp90クライアントタンパク質の分解を引き起こす。これらの化合物はいずれもエフェクター分子と結合してSDC-TRAPを形成し得る。グルココルチコイド受容体はHsp90のクライアントタンパク質であり、コルチゾールなどのグルココルチコイドリガンドに結合できる立体構造にある場合、Hsp90に結合する。グルココルチコイドがGRに結合すると、受容体はHsp90と解離し、核に移行し、そこで遺伝子発現を調節して炎症性サイトカイン産生などの炎症反応を減少させる。したがって、グルココルチコイドは、免疫抑制を必要とする患者、ならびに炎症性及び自己免疫疾患の患者に投与することができる。グルココルチコイドは炎症の緩和に効果的であるが、残念ながら、骨粗鬆症、筋肉の消耗、高血圧、インスリン抵抗性、体幹部肥満及び脂肪の再分布、ならびに創傷修復の阻害など、多くの重篤な副作用がある。Hsp90の阻害はGR活性の変化を引き起こし、これはグルココルチコイドで見られるのと同様の炎症反応の減少をもたらす。しかし、炎症を軽減するメカニズムはグルココルチコイドのメカニズムとは異なるため、グルココルチコイド治療の副作用の一部又はすべてが軽減又は排除されると予想される。
【0198】
エフェクター部分
エフェクター部分は、結合部分に結合することができ、したがって結合された状態で、結合部分の分子標的に送達され得る任意の治療剤又は造影剤であり得る。エフェクター分子は、場合によっては、結合のための連結部分を必要とすることがある(例えば、結合部分に直接結合することができない場合)。同様に、エフェクター分子は、場合によっては、SDC-TRAPが標的に影響を与えることができる限りにおいて、結合部分及び/又はSDC-TRAPが標的に到達する能力を妨害又は低下させてもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、エフェクター部分は容易にコンジュゲート形成が可能であり、標的への送達及び効果をもたらし得る。
【0199】
様々な実施形態において、エフェクター部分を介したSDC-TRAPは、単純な受動拡散以外の細胞浸透の方法を有し得る。そのような例は、エフェクター部分として葉酸拮抗薬又はそのフラグメント(例えば、テモゾラミド、ミトゾラミド、窒素マスタード、エストラムスチン、又はクロロメチン)を含むSDC-TRAPである。この場合、結合部分(例えばHsp90阻害剤)とペメトレキセド(又はその葉酸認識フラグメント)とのコンジュゲートは、受動拡散ではなく葉酸受容体媒介エンドサイトーシスを受ける可能性がある。標的細胞に入ると、SDC-TRAPはその結合部分(例えばHsp90阻害剤)を介して分子標的(例えばHsp90タンパク質)に結合できる。
【0200】
以下により詳細に説明するように、エフェクター部分は、結合部分がその標的に結合する能力に実質的に悪影響を与えることなく、修飾可能かつ/又は結合部分への共有結合に関与可能な領域を含むことができる。エフェクター部分は、結合部分に結合している間、本質的に活性を保持する医薬分子又はその誘導体であり得る。良好で望ましい活性を有する薬物であっても、従来の投与が困難な場合があることは理解されよう(例えば、バイオアベイラビリティの低さや、標的に到達する前の生体内での望ましくない副作用のため)。そのような薬物は、本発明のSDC-TRAPにおけるエフェクター部分としての使用について「再請求」され得る。
【0201】
エフェクター部分の例には:ペプチジル-プロリルイソメラーゼリガンド、例えば、FK506;ラパマイシン、シクロスポリンAなど;ステロイドホルモン受容体リガンド、例えば、エストロゲン、プロゲスチン、テストステロンなどの天然のステロイドホルモン、ならびにそれらの合成誘導体及びミメティック;細胞骨格タンパク質に結合する結合部分、例えばタキサン、コルヒチン、コルセミド、ノカドゾール(nocadozole)、ビンブラスチン、及びビンクリスチンなどの抗有糸分裂剤、サイトカラシン、ラトランクリン、ファロイジンなどのアクチン結合剤;レナリドミド、ポマリドミド、SN-38
【0202】
【0203】
を含むカンプトテシン、トポテカン、コンブレタスタチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビンカアルカロイド、白金含有化合物、メトホルミン、HDAC阻害剤(例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))、メトトレキサート、ペメトレキセド、及びラルチトレキセドなどのチミジル酸シンターゼ阻害剤;ベンダムスチンやメルファランなどの窒素マスタード;5-フルオロウラシル(5-FU)及びその誘導体;及び、ADC薬物で使用される作用剤、例えばベドチン及びDM1、又はそれらの互変異性体/誘導体/アナログなどが含まれる。
【0204】
エフェクター部分は、コンビナトリアル手段により生成された化合物のライブラリー、すなわち化合物多様性コンビナトリアルライブラリーを含む、天然又は合成分子のライブラリーから得てもよい。そのようなライブラリーから得られた場合、使用されるエフェクター部分は、その活性について適切なスクリーニングアッセイにおいていくつかの望ましい活性を実証したものであろう。他の実施形態では、医薬コンジュゲートは複数のエフェクター部分を含み、創薬化学者により高い柔軟性を提供することが企図される。結合部分(例えば、Hsp90標的化部分)に連結されるエフェクター部分の数は、一般に、結合部分(例えば、Hsp90標的化部分)、及び/又は、エフェクター部分への連結に利用可能な連結部分の部位の数;立体構造上の考慮事項、例えば、実際に結合部分(例えば、Hsp90標的化部分)に連結可能なエフェクター部分の数;及び、分子標的(例えばHsp90タンパク質)に結合する医薬コンジュゲートの能力が保持されること、によってのみ限定される。
【0205】
エフェクター部分が由来し得る具体的な薬物には以下が含まれる:向精神薬、例えば中枢神経系抑制薬、例として全身麻酔薬(バルビツレート、ベンゾジアゼピン、ステロイド、シクロヘキサノン誘導体、及びその他の作用剤)、催眠鎮静薬(ベンゾジアゼピン、バルビツレート、ピペリジンジオン及びトリオン、キナゾリン誘導体、カルバメート、アルデヒド及び誘導体、アミド、非環式ウレイド、ベンズアゼピン及び関連薬、フェノチアジンなど)、中枢随意筋緊張調整薬(抗痙攣薬、例えばヒダントイン、バルビツレート、オキサゾリジンジオン、スクシンイミド、アシルウレイド、グルタルイミド、ベンゾジアゼピン、二級及び三級アルコール、ジベンズアゼピン誘導体、バルプロ酸及び誘導体、GABAアナログなど)、鎮痛薬(モルヒネ及び誘導体、オリパビン誘導体、モルフィナン誘導体、フェニルピペリジン、2,6-メタン-3-ベンズアゾカイン誘導体、ジフェニルプロピルアミン及びアイソスター、サリチル酸塩、p-アミノフェノール誘導体、5-ピラゾロン誘導体、アリール酢酸誘導体、フェナメート及びアイソスターなど)及び制吐薬(抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗ドーパミン薬など);中枢神経刺激薬、例えば、麻酔薬(呼吸刺激薬、痙攣刺激薬、精神運動刺激薬)、麻薬拮抗薬(モルヒネ誘導体、オリパビン誘導体、2,6-メタン-3-ベンゾオキサシン誘導体、モルフィナン誘導体)向知性薬;精神薬理学的/向精神薬、例えば、抗不安鎮静薬(ベンゾジアゼピン、プロパンジオールカルバメート)抗精神病薬(フェノチアジン誘導体、チオキサンチン誘導体、他の三環式化合物、ブチロフェノン誘導体及びアイソスター、ジフェニルブチルアミン誘導体、置換ベンズアミド、アリールピペラジン誘導体、インドール誘導体など)、抗うつ薬(三環式化合物、MAO阻害剤など);気道薬、例えば、中枢鎮咳薬(アヘンアルカロイド及びその誘導体);免疫抑制剤;薬力学的作用剤、例えば末梢神経系薬、例として局所麻酔薬(エステル誘導体、アミド誘導体);シナプス又は神経エフェクター接合部で作用する薬物、例えばコリン作動薬、抗コリン薬、神経筋遮断薬、アドレナリン作動薬、抗アドレナリン作動薬;平滑筋活性薬、例えば、鎮痙薬(抗コリン薬、筋向性鎮痙薬)、血管拡張薬、平滑筋刺激薬;ヒスタミン及び抗ヒスタミン剤、例えば、ヒスタミン及びその誘導体(ベタゾール)、抗ヒスタミン薬(H1拮抗薬、H2拮抗薬)、ヒスタミン代謝薬;心血管薬、例えば、強心薬(植物抽出物、ブテノリド、ペンタジエノリド、エリスロフレウム(Erythrophleum)種のアルカロイド、イオノフォア、アドレナリン受容体刺激薬など)、抗不整脈薬、降圧薬、抗高脂血症薬(クロフィブリン酸誘導体、ニコチン酸誘導体、ホルモン及びアナログ、抗生物質、サリチル酸及び誘導体)、抗静脈瘤薬、止血薬;化学療法剤、例えば、抗感染症薬、例として、外部寄生虫駆除薬(塩素化炭化水素、ピレチン、硫化化合物)、駆虫薬、抗原虫薬、抗マラリア薬、抗アメーバ薬、抗リーシュマニア薬、抗トリコモナス薬、抗トリパノソーマ薬、スルホンアミド、抗マイコバクテリア薬、抗ウイルス化学療法薬など、及び細胞増殖抑制剤、すなわち抗悪性腫瘍剤又は細胞傷害剤、例えばアルキル化剤、例として、塩酸メクロレタミン(窒素マスタード、ムスターゲン、HN2)、シクロホスファミド(サイトバン(Cytovan)、エンドキサナ)、イホスファミド(IFEX)、クロラムブシル(ロイケラン)、メルファラン(フェニルアラニンマスタード、L-サルコリシン、アルケラン、L-PAM)、ブスルファン(ミレラン)、チオテパ(トリエチレンチオホスホラミド)、カルムスチン(BiCNU、BCNU)、ロムスチン(CeeNU、CCNU)、ストレプトゾシン(ザノサール)など;植物アルカロイド、例えば、ビンクリスチン(オンコビン)、ビンブラスチン(ベルバン、ベルベ)、パクリタキセル(タキソール)など;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート(MTX)、メルカプトプリン(プリネトール、6-MP)、チオグアニン(6-TG)、フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン(シトサール-U、アラ-C)、アザシチジン(ミロサール、5-AZA)など;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメゲン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(デュアノマイシン、セルビジン)、イダルビシン(イダマイシン)、ブレオマイシン(ブレノキサン)、ピカマイシン(Picamycin)(ミトラマイシン、ミトラシン)、マイトマイシン(ムタマイシン)など、及び他の抗細胞増殖剤、例えば、ヒドロキシウレア(ハイドレア)、プロカルバジン(ムタラン)、ダカルバジン(DTIC-Dome)、シスプラチン(プラチノール)カルボプラチン(パラプラチン)、アスパラギナーゼ(エルスパー)エトポシド(ベプシド、VP-16-213)、アムサークリン(AMSA、m-AMSA)、ミトタン(リソドレン)、ミトキサントロン(ノバトロン)など;抗炎症剤;抗生物質、例えば、アミノグリコシド、例として、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォルチミシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン;アンフェニコール、例えばアジダンフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、及びテイマフェニコール(theimaphenicol);アンサマイシン、例えば、リファミド、リファンピン、リファマイシン、リファペンチン、リファキシミン;β-ラクタム、例えば、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、セパマイシン、モノバクタム、オキサフェム、ペニシリン;リンコサミド、例えば、クリナマイシン、リンコマイシン;マクロライド、例えば、クラリスロマイシン、ダースロマイシン(dirthromycin)、エリスロマイシンなど;ポリペプチド、例えば、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシンなど;テトラサイクリン、例えば、アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリンなど;合成抗菌剤、例えば2,4-ジアミノピリミジン、ニトロフラン、キノロン及びそのアナログ、スルホンアミド、スルホン;抗真菌剤、例えばポリエン、例として、アムホテリシンB、カンジシジン、デルモスタチン、フィリピン、ファンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペシロシン、ペリマイシン;合成抗真菌剤、例えばアリルアミン、例として、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン;イミダゾール、例えば、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾールなど、チオカルバメート、例えばトルシクラート、トリアゾール、例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾール;駆虫薬、例えば:アレコリン、アスピジン、アスピジノール、ジクロロフェン、エンベリン、コシン(kosin)、ナフタレン、ニクロサミド、ペレチエリン、キナクリン、アラントラクトン、アモカルジン(amocarzine)、アモスカナート、アスカリドール、ベフェニウム、ビトスカナート、四塩化炭素、カルバクロール、シクロベンダゾール、ジエチルカルバマジンなど;抗マラリア薬、例えば:アセダプソン、アモジアキン、アルテエーテル、アルテムエーテル、アルテミシニン、アルテスネート、アトバコン、ベベリン(bebeerine)、ベルベリン、チラータ、クロルグアニド、クロロキン、クロルプロガニル、シンコナ、シンコニジン、シンコニン、シクログアニル、ゲンチオピクリン、ハロファントリン、ヒドロキシクロロキン、塩酸メフロキン、3-メチルアルサセチン、パマキン、プラスモシド、プリマキン、ピリメタミン、キナクリン、キニジン、キニーネ、キノシド、キノリン、二塩基性ヒ酸ナトリウム;及び抗原虫剤、例えば:アクラニル、チニダゾール、イプロニダゾール、エチルスチバミン、ペンタミジン、アセタゾン(acetarsone)、アミニトロゾール、アニソマイシン、ニフラテル、チニダゾール、ベンジダゾール、スラミンなど。
【0206】
コンジュゲート形成及び連結部分
本発明の結合部分及びエフェクター部分は、例えば、リンカー又は連結部分Lを介して結合させることができ、ここで、Lは結合又は連結基のいずれかであり得る。例えば、様々な実施形態では、結合部分及びエフェクター部分は直接結合されるか、単一分子の一部である。あるいは、連結部分は、結合部分とエフェクター部分との間の共有結合を提供することができる。連結部分は、直接結合の場合と同様に、結合部分とエフェクター部分との間、及び/又はSDC-TRAPとその分子標的との間に所望の構造的関係を達成することができる。連結部分は、例えば、結合部分の標的化及びエフェクター部分の生物活性に関して不活性であり得る。
【0207】
本明細書に記載の親和性、特異性、及び/又は選択性アッセイを使用して、適切な連結部分を特定することができる。例えばSDC-TRAPに上述のサイズ特性を提供するように、連結部分をサイズに基づいて選択することができる。様々な実施形態において、連結部分は、既知の化学リンカーから選択又は誘導され得る。連結部分は、薬物又はリガンド部分に共有結合することができる反応性官能基でいずれかの末端が終結するスペーサー基を含むことができる。対象となるスペーサー基には、脂肪族及び不飽和炭化水素鎖、酸素(ポリエチレングリコールなどのエーテル)又は窒素(ポリアミン)などのヘテロ原子を含むスペーサー、ペプチド、炭水化物、ヘテロ原子を含む可能性のある環状又は非環状系が含まれる。スペーサー基は、金属イオンの存在が2つ以上のリガンドに配位して錯体を形成するように、金属に結合するリガンドで構成されてもよい。具体的なスペーサー要素には、1,4-ジアミノヘキサン、キシリレンジアミン、テレフタル酸、3,6-ジオキサオクタン二酸、エチレンジアミン-N,N-二酢酸、1,1-エチレンビス(5-オキソ-3-ピロリジンカルボン酸)、4,4’-エチレンジピペリジンが含まれる。可能な反応性官能基には、求核性官能基(アミン、アルコール、チオール、ヒドラジド)、求電子性官能基(アルデヒド、エステル、ビニルケトン、エポキシド、イソシアネート、マレイミド)、環化付加反応、ジスルフィド結合の形成、又は金属への結合が可能な官能基が含まれる。具体的な例には、一級及び二級アミン、ヒドロキサム酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルカーボネート、オキシカルボニルイミダゾール、ニトロフェニルエステル、トリフルオロエチルエステル、グリシジルエーテル、ビニルスルホン、及びマレイミドが含まれる。SDC-TRAPで使用可能な具体的な連結部分には、ジスルフィド及び安定なチオエーテル部分が含まれる。
【0208】
様々な実施形態では、連結部分は切断可能であり、例えば酵素的に切断可能である。切断可能なリンカーを使用することにより、SDC-TRAPが標的細胞に内在化した後、細胞内でエフェクター部分を放出することができる。エフェクター分子の送達を制御するために、結合部分の切断に対する感受性を使用することができる。例えば、標的細胞におけるエフェクター部分の延長された又は長期化された放出を経時的に提供するように連結部分を選択することができる(例えば、カルバメート連結部分は、カペシタビン又はイリノテカンのような他のカルバメートプロドラッグを切断するために用いられるのと同じ細胞プロセスを介して、カルボキシルエステラーゼによる酵素的切断を受け得る)。これら及び様々な他の実施形態において、連結部分は、良好な標的特異性及び低い全身毒性を確保するのに十分な安定性を示すことができるが、SDC-TRAPの効力及び効力を低下させるほどには安定性は高くない。
【0209】
例示的なリンカーは、米国特許第6,214,345号(Bristol-Myers
Squibb)、米国特許出願公開第2003/0096743号及び米国特許出願公開第2003/0130189(共にSeattle Genetics)、de Grootら、J.Med.Chem.42,5277(1999);de Grootら、J.Org.Chem.43,3093(2000);de Grootら、J.Med.Chem.66,8815,(2001);WO02/083180(Syntarga);Carlら、J.Med.Chem.Lett.24,479,(1981);Dubowchikら、Bioorg&Med.Chem.Lett.8,3347(1998)及びDoroninaら、BioConjug Chem.2006;Doroninaら、Nat Biotech 2003に記載されている。
【0210】
一実施形態において、SDC-TRAPは、結合部分としてガネテスピブ又はその互変異性体、及びエフェクター部分としてSN-38又はそのフラグメント/誘導体/アナログを含む。1つの非限定的な例は、SDC-TRAP-0063である。SDC-TRAP-0063という用語には、次の構造を持つ化合物:
【0211】
【0212】
又はその互変異性体:
【0213】
【0214】
が含まれる。
医薬コンジュゲートの製造方法
本発明の医薬コンジュゲート、すなわちSDC-TRAPは、任意の好都合な方法論を用いて調製することができる。合理的なアプローチでは、医薬コンジュゲートは、個々の構成要素、結合部分、場合によってはリンカー、及びエフェクター部分から構築される。各構成要素は、当技術分野で知られているように、官能基を介して互いに共有結合することができ、そのような官能基は、構成要素に存在するか、又は、酸化反応、還元反応、開裂反応などの1つ以上のステップを使用して構成要素に導入され得る。構成要素を共に共有結合させて医薬コンジュゲートを生成する官能基には、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アミノなどが含まれる。共有結合を提供するように修飾された異なる構成要素の特定の部分は、その構成要素に望まれる結合活性に実質的に不利に干渉しないように、例えば、エフェクター部分であれば、十分な量の所望の薬物活性が維持されるように、標的結合活性に影響しない領域が修飾されるように選択される。必要な場合かつ/又は望ましい場合、構成要素上の特定の部分は、当技術分野で知られているように、保護基を使用して保護することができる。例えば、Green&Wuts、Protective Groups
in Organic Synthesis(John Wiley&Sons)(1991)を参照。
【0215】
あるいは、既知のコンビナトリアル法を使用して医薬コンジュゲートを製造して潜在的な医薬コンジュゲートの大きなライブラリーを製造し、これを薬物動態プロファイルを有する二機能性分子の同定のためにスクリーニングすることができる。あるいは、医薬コンジュゲートは、医薬品化学、ならびに標的化部分及び薬物について既知の構造-活性関係を用いて生成されてもよい。特に、このアプローチは、2つの部分をリンカーに結合する場所に関する洞察を提供する。
【0216】
SDC-TRAP分子を調製するためのいくつかの例示的な方法は、実施例に記載されている。当業者が理解するように、実施例に記載される例示的な方法は、他のSDC-TRAP分子を作製するために改変され得る。
【0217】
使用方法、製剤、及びキット
医薬コンジュゲートは、宿主の状態、例えば疾患状態の治療に用いられる。これらの方法では、有効量の医薬コンジュゲートが宿主に投与され、ここでの「有効量」は、所望の結果、例えば疾患状態又はそれに関連する症状の改善をもたらすのに十分な用量を意味する。多くの実施形態において、有効量であるために宿主に投与される必要がある医薬コンジュゲートの形態の薬物の量は、遊離薬物形態の場合に要する投与量とは異なる。量の違いは様々であり、多くの実施形態では2倍から10倍の範囲であり得る。特定の実施形態において、例えば、結果として生じる調節された薬物動態学的特性が遊離薬物対照と比較して増強された活性をもたらす場合、有効量である薬物の量は、投与すべき対応する遊離薬物の量よりも少なく、その量は、投与される遊離薬物の量の2分の1、通常は約4分の1、より通例では約10分の1であってもよい。
【0218】
医薬コンジュゲートは、所望の結果をもたらすことができる任意の好都合な手段を使用して宿主に投与することができる。したがって、医薬コンジュゲートは、治療的投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、本発明の医薬コンジュゲートは、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることにより医薬組成物に製剤化することができ、固体、半固体、液体又は気体形態の製剤、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、注射剤、吸入剤及びエアロゾルなどに製剤化することができる。そのため、医薬コンジュゲートの投与は、経口投与、頬側投与、直腸投与、非経口投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、気管内投与などを含む様々な方法で実現できる。医薬剤形では、医薬コンジュゲートは単独で、又は他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて投与されてもよい。
【0219】
本発明による医薬組成物は、単一の一回服用量として、及び/又は複数の一回服用量として、大量に調製、包装、及び/又は販売することができる。本明細書で使用される「一回服用量」は、所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別の量である。有効成分の量は、一般に、対象に投与される有効成分の投与量、及び/又は、例えばそのような投与量の半分又は3分の1などの、そのような投与量の好都合な部分量に等しい。
【0220】
本発明による医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療される対象の固有性、大きさ、及び/又は状態、さらには組成物が投与される経路に応じて変動し得る。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の有効成分を含むことができる。
【0221】
本発明のコンジュゲート又は粒子は、以下のために1つ又は複数の賦形剤を使用して製剤化することができる:(1)安定性を向上させる;(2)持続放出又は遅延放出を許容する(例えば、モノマレイミドのデポ製剤から);(3)生体内分布を変更する(例えば、モノマレイミド化合物を特定の組織又は細胞タイプに向ける);(4)in vivoでモノマレイミド化合物の放出プロファイルを変更する。賦形剤の非限定的な例には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、及び防腐剤が含まれる。本発明の賦形剤には、限定するものではないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物及びそれらの組合せも含まれる。したがって、本発明の製剤は、それぞれがモノマレイミド化合物の安定性を一緒に増加させる量の1つ又は複数の賦形剤を含むことができる。
【0222】
賦形剤
医薬製剤は、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に適したありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。RemingtonのThe Scienceand Practice of Pharmacy、第21版、A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)には、医薬組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤及びその調製のための既知の技術が開示されている。望ましくない生物学的効果を生じるか、他の態様で医薬組成物の他の成分と有害な様式で相互作用するなどして、従来の賦形剤媒体が物質又はその誘導体と適合しない場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0223】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトでの使用及び獣医学的使用について承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たす。
【0224】
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤には、限定するものではないが、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/又はオイルが含まれる。そのような賦形剤は、任意選択で医薬組成物に任意に含まれてもよい。
【0225】
例示的な希釈剤には、限定するものではないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖など、及び/又はそれらの組合せが含まれる。
【0226】
例示的な造粒剤及び/又は分散剤には、限定するものではないが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類パルプ、寒天、ベントナイト、セルロース及び木製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500)、微結晶デンプン、水不溶性澱粉、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物など、及び/又はそれらの組合せが含まれる。
【0227】
例示的な界面活性剤及び/又は乳化剤には、限定するものではないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂肪、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びVEEGUM(商標)[ケイ酸マグネシウムアルミニウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、及びプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[TWEEN(商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[TWEEN(商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[TWEEN(商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[SPAN(商標)40]、ソルビタンモノステアレート[SPAN(商標)60]、ソルビタントリステアレート[SPAN(商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、ソルビタンモノオレエート[SPAN(商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[MYRJ(商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、及びSOLUTOL(商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(商標)30])、ポリ(ビニルピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLUORINC(商標)F68、POLOXAMER(商標)188、セトリモニウム臭化物、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど、及び/又はそれらの組合せが含まれる。
【0228】
例示的な結合剤には、限定するものではないが、デンプン(例えば、コーンスターチ及びデンプンペースト);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール、);天然及び合成ガム(アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュコケの抽出物、パンワルガム(panwar gum)、ガティガム、イサポール(isapol)殻の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(商標))、及びカラマツアラボガラクタン(arabogalactan));アルギン酸塩;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコール;など;及びその組合せが含まれる。
【0229】
例示的な防腐剤には、限定するものではないが、抗酸化剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び/又は他の防腐剤が含まれる。例示的な抗酸化剤には、限定するものではないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/又は亜硫酸ナトリウムが含まれる。例示的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/又はエデト酸三ナトリウムが含まれる。例示的な抗菌防腐剤には、限定するものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/又はチメロサールが含まれる。例示的な抗真菌防腐剤には、限定するものではないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/又はソルビン酸が含まれる。例示的なアルコール防腐剤には、限定するものではないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、及び/又はフェニルエチルアルコールが含まれる。例示的な酸性防腐剤には、限定するものではないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/又はフィチン酸が含まれる。他の防腐剤には、限定するものではないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(商標)、PHENONIP(商標)、メチルパラベン、GERMALL(商標)115、GERMABEN(商標)II、NEOLONE(商標)、KATHON(商標)、及び/又はEUXYL(商標)が含まれる。
【0230】
例示的な緩衝剤には、限定するものではないが、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、カリウムリン酸混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコールなど、及び/又はそれらの組合せが含まれる。
【0231】
例示的な滑沢剤には、限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、モルト、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、硫酸マグネシウムラウリル、ラウリル硫酸ナトリウムなど、及びそれらの組合せが含まれる。
【0232】
例示的なオイルには、限定するものではないが、アーモンド、アプリコットカーネル、アボカド、ババス、ベルガモット、ブラックカラントシード、ルリジサ、ネズ、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナウバ、ヒマシ、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ヒョウタン、ブドウの種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンディン、ラベンダー、レモン、リツエアクベバ、マカデミアナッツ、マロウ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パームカーネル、ピーチカーネル、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、菜種、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サザンカ、サボリー、ウミクロウメモドキ、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、及び小麦胚芽の油が含まれる。例示的な油には、限定するものではないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/又はそれらの組合せが含まれる。
【0233】
配合者の判断に従って、カカオバターや坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/又は芳香剤などの賦形剤が組成物中に存在してもよい。
主題の方法は、様々な異なる疾患状態の治療に使用される。特定の実施形態において、特に関心があるのは、これまでに所望の活性を有することが特定されているが、所望の親和性及び/又は特異性でその標的に結合しない活性剤又は薬物の、疾患状態における本方法の使用である。そのような活性剤又は薬物を用いて、本方法を使用して、その標的に対する作用剤の結合親和性及び/又は特異性を高めることができる。
【0234】
本発明の二機能性化合物で治療可能な特定の疾患状態は、医薬コンジュゲートに存在し得る薬物部分の種類と同じく多様である。したがって、疾患状態には、細胞増殖性疾患、例えば、腫瘍性疾患、自己免疫疾患、中枢神経系又は神経変性疾患、心血管疾患、ホルモン異常疾患、感染症などが含まれる。
【0235】
治療とは、少なくとも宿主を苦しめる病状に関連する症状の改善を意味し、ここで、改善は、治療中の病状、例えば炎症やそれに伴う痛みに関連するパラメータ、例えば、症状の程度の少なくとも減少を指すために広義に使用される。そのようなものとして、治療はまた、宿主が病的状態、又は少なくともその病的状態を特徴付ける症状にもはや苦しむことがないように、病的状態又は少なくともそれに関連する症状が完全に抑制される、例えば、発生が抑止される、又は停止する、例えば終了する状況を含む。
【0236】
本発明の使用方法は、疾患の厳密な治療の域を超える。例えば、本発明は、対象を診断し、治療対象を選択し、治験に参加する対象を選択し、疾患の進行を監視し、治療の効果を監視し、対象の治療を中止又は継続するかを判断し、対象が臨床的エンドポイントに到達したかどうかを判断し、及び疾患の再発を判断するための臨床現場又は研究現場における使用を含む。本発明はまた、効果的な相互作用部分及び/又はエフェクター部分及び/又はそれらの組合せを特定し、効果的な投与及び用量スケジュールを特定し、効果的な投与経路を特定し、及び適切な標的(例えば、特定の治療が効きやすい疾患)を特定するための調査における使用を含む。
【0237】
様々な宿主が本方法に従って治療可能である。一般にそのような宿主は「哺乳動物」又は「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食目(イヌやネコなど)、げっ歯目(マウス、モルモット、ラットなど)、霊長目(ヒト、チンパンジー、サルなど)を含む哺乳綱に属する生物を表すために広義に使用される。多くの実施形態では、宿主はヒトである。
【0238】
本発明は、少なくとも1つのSDC-TRAPと、その少なくとも1つのSDC-TRAPの治療有効量を対象に投与することによって対象を治療するための説明書とを含む、それを必要とする対象を治療するキットを提供する。本発明はまた、少なくとも1つのSDC-TRAPと、有効量の少なくとも1つのSDC-TRAPを対象に投与することにより、対象の画像化、診断、及び/又は選択を行うための説明書とを含む対象を画像化、診断、及び/又は選択するキットを提供する。
【0239】
通常は経口又は注射可能な用量で、多くの場合は貯蔵安定性製剤である、医薬コンジュゲートの単位用量を含むキットが提供される。そのようなキットには、単位用量を含む容器に加えて、目的の病的状態の治療における薬物の使用及び付随する利点を説明する情報を記した添付文書が含まれる。好ましい化合物及び単位用量は、本明細書で上述したものである。
【0240】
本発明はまた、特定のタンパク質の存在又は過剰発現に基づいて治療対象が選択されるような疾患又は障害の治療方法を提供する。例えば、標準よりも高いレベルのHsp90の存在に基づいて、がんの治療のために対象を選択してもよい。この場合、対象には、Hsp90に選択的に結合する結合部分を含むSDC-TRAPが投与される。
【0241】
本発明は、式(I)から(LXXII)のいずれか1つにより表される化合物、又はその任意の実施形態、又は米国特許出願公開2010/0280032号に開示されている表5、6、又は7に示される化合物の有効量を対象に投与することを含む、対象における炎症性疾患を治療又は予防する方法を提供する。一実施形態では、炎症性疾患を治療又は予防するために、化合物又は結合部分又はSDC-TRAPをヒトに投与することができる。別の実施形態では、炎症性疾患は、移植拒絶、皮膚移植拒絶、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、及び骨吸収の増加に関連する骨疾患;炎症性腸疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、クローン病;喘息、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性気道疾患;角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ぶどう膜炎、交感性眼炎、眼内炎;歯肉炎、歯周炎;結核;ハンセン病;尿毒症合併症、糸球体腎炎、ネフローゼ;強皮症、乾癬、湿疹;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、エイズ関連神経変性、アルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症
ウイルス性又は自己免疫性脳炎;自己免疫障害、免疫複合体性血管炎、全身性狼瘡及びエリテマトーデス;全身性エリテマトーデス(SLE);心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、子癇前症;慢性肝不全、脳及び脊髄の外傷からなる群から選択される。別の実施形態では、SDC-TRAP、又は米国特許出願公開2010/0280032号に開示されている表5、6又は7に示されている化合物は、追加の治療薬とともに投与される。別の実施形態では、追加の治療薬は抗炎症薬であってもよい。
【0242】
一実施形態では、対象に投与されるが標的細胞に入らないSDC-TRAPは、身体から迅速に除去される。この実施形態では、標的細胞に入らないSDC-TRAPは、SDC-TRAPの成分、SDC-TRAPの分解産物、又はSDC-TRAP分子に起因して、毒性を低減するために迅速に除去される。クリアランス率は、SDC-TRAP分子の血漿濃度を時間の関数として測定することにより決定できる。
【0243】
同様に、受動拡散により非標的細胞に入るSDC-TRAP分子は、非標的細胞又は組織から急速に出て、対象から排除されるか、標的細胞又は組織に入って保持される。例えば、腫瘍細胞を治療することを目的とし、例えばHsp90を過剰発現する腫瘍細胞を標的とするSDC-TRAPは、Hsp90を過剰発現する腫瘍細胞に選択的に蓄積する。したがって、この例示的なSDC-TRAPは、正常な肺組織、心臓、腎臓などの非腫瘍組織には非常に低いレベルで存在するであろう。一実施形態では、本発明のSDC-TRAP分子の安全性は、非標的組織における蓄積の欠如によって決定することができる。逆に、本発明のSDC-TRAP分子の安全性は、標的細胞及び/又は組織における選択的蓄積によって決定することができる。
【0244】
一例では、有効量のSDC-TRAP-0063ナトリウム、その互変異性体、又は薬学的に許容されるその塩、及び5%マンニトールを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、約9.4~約10.3の範囲のpHを有する。SDC-TRAP-0063ナトリウム、その互変異性体、又はその薬学的に許容される塩の濃度は、約1mg/mL~約20mg/mLの範囲であり、例えば約3mg/mL、6mg/mL、又は12mg/mLである。
【0245】
実施例
以下の実施例では、まず簡潔に要約をし、次に順番に説明しているが、これらは限定ではなく例示を目的としている。
【0246】
実施例1:SDC-TRAP-0063の合成
SDC-TRAP-0063
【0247】
【0248】
((S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)又はその互変異性体。
【0249】
SDC-TRAP-0063の合成の合成スキームは、PCT出願番号PCT/US2013/036783の実施例6に提供されている。当業者は、過度の実験をすることなく、本発明の範囲内で他の標的分子コンジュゲートを作製するために、この合成スキームを適合させることができるであろう。
【0250】
実施例2:HSP90結合薬物コンジュゲートの塩形態及び製剤
溶液中、SDC-TRAP-0063は、pH依存平衡にあるラクトン環を、対応する開鎖カルボン酸型と共に含む。高pH(9.3を超えるpH、pKa値)では、平衡は開環カルボン酸型にシフトし、低pHでは、以下に示す閉環ラクトン型にシフトする:
【0251】
【0252】
開環カルボン酸型は、陽イオンと塩を形成し得、陽イオンには、限定するものではないが、リチウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、バリウム、ビスマス、ベネタミン、ジエチルアミン、トロメタミン、ベンザチド(benzathid)、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、又はプロカインが含まれる。
【0253】
SDC-TRAP-0063のナトリウム塩誘導体
カルボン酸誘導体のナトリウム塩(SDC-TRAP-0063ナトリウム又はSDC-TRAP-0063Na)は、次の構造を有する。
【0254】
【0255】
(ナトリウム(S)-2-(2-((4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボニル)オキシ)-12-エチル-8-(ヒドロキシメチル)-9-オキソ-9,11-ジヒドロインドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシブタノエート)又はその互変異性体:
【0256】
【0257】
ラクトン及びナトリウム塩の両方の形態のSDC-TRAP-0063の構造:
【0258】
【0259】
SDC-TRAP-0063製剤原料は単離されてラクトン型で保存され、SDC-TRAP-0063ナトリウム製剤は変換されてカルボン酸ナトリウム塩型で保存される。
SDC-TRAP-0063は、次のプロセスで調製することができる:tert-ブタノールの一部を28~32℃で融解し、28~32℃のジャケット付き8リットルガラス混合容器に分注した。SDC-TRAP-0063粉末を撹拌中のtert-ブタノールにゆっくりと加え、少なくとも20分間混合した。添加されたSDC-TRAP-0063の量を重量測定により決定し、標的製剤のバッチサイズを計算した。次いで、tert-ブタノールの第2の部分を十分な重量量(Q.S.又はQS)で添加し、約6インチ(約15cm)の磁気撹拌棒で少なくとも15分間混合して、適切に湿潤及び懸濁させた。その後、0.3規定の水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと加え、少なくともさらに1時間混合させた。SDC-TRAP-0063粉末の完全な溶解を、混合中及びミキサー停止中の両方で目視観察により確認した。次に、注射用水(WFI)を目標の総バッチ量の最大約95%まで分注し、20分間混合した。試料を採取して測定し、pHが9.8以上であることを確認した。任意選択で、0.3規定の水酸化ナトリウム水溶液の5グラムずつのアリコートを追加し、必要に応じて少なくとも15分間混合して調整した。注射用水を再び重量QSに加え、15分間混合してバルク薬物溶液の配合を完了した。次に、8リットルのガラス混合容器のジャケット温度を20~25℃以内に低下させた。製品の滅菌は、直列にある少なくとも2つのミリポアオプティキャップXL3 0.2μmフィルターを通して濾過することで達成し、微生物計数試験のために、フィルターの直前で試料を採取した。次いで、発熱物質を除去した10ミリリットルの公称サイズのホウケイ酸ガラスバイアルに、バイアル当たり1.1ミリリットルのバルク薬物溶液を無菌的に充填した。バイアルを凍結乾燥位置に栓をして、凍結乾燥機に載置した。バイアルを表1のやり方に従って凍結乾燥し、完全に栓をした。バイアルを凍結乾燥機から無菌的に取り出し、キャップを圧着してバイアルを密封した。バイアル外側の洗浄及び目視検査を実施し、最初の封入形態の製剤の生産を完了した。
【0260】
【0261】
製造工程中に、SDC-TRAP-0063はSDC-TRAP-0063ナトリウムに変換された。これは9.3を超えるpHでの優性形態である。SDC-TRAP-0063ナトリウム製剤は、凍結乾燥された滅菌濾液として無菌的に製造された。凍結乾燥製剤の組成を以下に示す:
【0262】
【0263】
この溶液は、USPタイプ1透明ガラスバイアル、栓、及びオーバーシールで構成される容器閉鎖システムに105mg/バイアルを送達するために充填される。製剤は2℃~8℃で、光を避けて保管される。投与前に、凍結乾燥粉末を注射用水で再構成し、使用前に5%マンニトール、USPで目標濃度にさらに希釈する。SDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度は、約20~約25mg/mL、約25~約50mg/mL、約50~約100mg/mL、約100~約150mg/mL、又は約150~200mg/mLの間であり得る。製剤は、点滴による静脈内投与を目的としている。
【0264】
SDC-TRAP-0063ナトリウムの再構成溶液のpHは約10.0である。この溶液は、5%マンニトール、USPで目標用量に希釈される。注入液のpHは、希釈注入液中のSDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度に依存する。臨床研究プロトコルで使用される用量範囲全体で、投与される希釈注入液の量は50~500mLの範囲であり、pHは8.1~9.6の範囲である。静脈内投与中の注射部位の痛み及び/又は静脈内皮の損傷の潜在的リスクを減らすために、希釈されたSDC-TRAP-0063ナトリウムの投与に中心静脈アクセスラインが使用される。
【0265】
実施例3:変更された投与溶液及び投与方法
新しく、より確実で、患者に優しい投与溶液製剤が開発された。この開発中、投与溶液のpHはSDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度によって決まり、SDC-TRAP-0063ナトリウム濃度を上げると投与溶液の溶解度及びpHをよりよく制御できることが確認された。
【0266】
【0267】
SDC-TRAP-0063ナトリウムのpH制御及び溶解度は、0.9%の塩化ナトリウムと比較して、5%のマンニトールにおける沈殿のリスクを軽減するようであることが分かった。一般的なイオン効果は、0.9%塩化ナトリウム溶液中のSDC-TRAP-0063ナトリウムの溶解度を低下させると考えられる。0.9%塩化ナトリウムの投与溶液で観察された8.6~8.7から、5%マンニトールのSDC-TRAP-0063ナトリウム投与溶液で観察された9.4~10.2のpH範囲へのpHの変化は、臨床使用に十分な溶解性及び安定性を提供する。
【0268】
以下に説明する試験では、希釈剤として5%マンニトールを使用し、0.9%塩化ナトリウムで使用されるよりも高い濃度のSDC-TRAP-0063ナトリウムを使用すると、臨床投与に適した安定した溶液が提供されることが分かった。沈殿防止における溶液pH及びマンニトールの役割は、複数の実験を通じて評価されている。データは、薬物の溶解性を高めるために、希釈剤としてマンニトールを使用し、SDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度を高めることが正しいことを示している。
【0269】
試験計画及び結果
上述のように、SDC-TRAP-0063ナトリウムの溶解度は主にpHによって決まる。SDC-TRAP-0063ナトリウムは、水への溶解度が非常に高く、>52.5mg/mLである。pHを下げると、平衡がよりラクトン型にシフトし、溶解度に悪影響を及ぼす。SDC-TRAP-0063ナトリウムの希釈溶液は、pHを低下させ、沈殿のリスクを高める。SDC-TRAP-0063ナトリウムの溶解度は、0.9%塩化ナトリウムを希釈剤として使用すると悪影響を受けることも分かっている。一般的なイオン効果が、この観察結果の原因である可能性が高い。マンニトールなどの非イオン性希釈剤は、より高い溶解性を提供することが示されており、SDC-TRAP-0063ナトリウムの臨床投与により適している。
【0270】
陽性対照として0.9%塩化ナトリウム、及び潜在的な新しい希釈剤として5%デキストロース及び5%マンニトール(表2)の3種の希釈剤のうちの1つを使用して、SDC-TRAP-0063ナトリウムの0.6mg/mL及び2.4mg/mL溶液で試験を実施した。各希釈剤を、溶解性の最悪のシナリオをテストするためにUSPの下限pHで調製した(開始時のpHは、0.9%塩化ナトリウム及び5%マンニトールで4.5、5%デキストロースで3.2)。SDC-TRAP-0063ナトリウム投与溶液をガラスバイアルに調製し、揺動装置上に置いた。投与溶液中のSDC-TRAP-0063ナトリウムの外観、pH及び濃度を、6時間及び24時間でHPLCにより分析した。
【0271】
3種の希釈剤はすべて、0.6mg/mLのSDC-TRAP-0063ナトリウム濃度で沈殿を示し、回収率は6時間の5%マンニトールで最も高い。3種の希釈剤において高濃度(2.4mg/mL)のSDC-TRAP-0063ナトリウムで溶液を調製すると、すべての希釈剤でpH及び溶解度が増加するように見えるが、0.9%塩化ナトリウム及び5%のデキストロース溶液では沈殿がまだ認められ、一方、5%のマンニトールでは沈殿も完全な回収も見られなかった。
【0272】
【0273】
この試験の結論は、SDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度がpHの上昇に伴って増加すると、SDC-TRAP-0063ナトリウム投与溶液における沈殿が減少することである。マンニトールは、0.9%塩化ナトリウム又は5%デキストロースと比較して優れた安定性プロファイルを示したため、さらなる調査のための希釈剤として選択された。さらに、使用時の試験を含むその後の試験におけるマンニトール中のSDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度は、沈殿の潜在的なリスクをさらに軽減するために、最低3mg/mLに増加させた。
【0274】
様々なpHの関数としてSDC-TRAP-0063ナトリウムの溶解度を評価するための実験を行った。5%マンニトール及び0.9%塩化ナトリウム中の23.6mg/mLの濃度の開始溶液を、HClの添加後約24時間平衡化し、残りのSDC-TRAP-0063ナトリウム溶液の濃度を、混合物を0.2μmフィルターを通して濾過してから確認した。
【0275】
結果を表3及び表4に示す。投与溶液の溶解度及びpHの制御は、マンニトール溶液では許容可能であり、塩化ナトリウムでは著しく悪いことが分かった。
【0276】
【0277】
【0278】
SDC-TRAP-0063投与溶液のpHは、SDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度によって制御され、5%マンニトール中のすべての投与溶液について観測されたpHは、3~12mg/mLのSDC-TRAP-0063ナトリウム濃度を用いて試験した場合、9.4を下回ることはなかった。表3に示す結果から、SDC-TRAP-0063ナトリウムの最大濃度12mg/mLは、5%マンニトールにおいて沈殿をもたらさないことが確認された。
【0279】
1対1使用試験
SDC-TRAP-0063ナトリウム 0.9%塩化ナトリウム及び5%マンニトール投与溶液の1対1使用試験を実施した。この試験は、各希釈剤の特定の臨床使用法に基づいて2つを直接比較することを目的としている。この試験では、それぞれのIVバッグ、シリンジ、及びIVラインを、投与溶液の撹拌の最悪のシナリオを模倣するために、保持期間中に揺動運動させた。
【0280】
0.9%塩化ナトリウム投与溶液を、IVバッグ及びIVライン内で、製品の苦情があった間に臨床で使用されたように、0.6mg/mLのSDC-TRAP-0063ナトリウムで、4時間の設定保持期間に続いて蠕動ポンプを使用した2時間の模擬注入により試験した(表5)。保持期間中にIVバッグ及びIVラインの両方で沈殿が観察され、ポンプアラームが繰り返されることで示されるように、インラインフィルターの閉塞により、開始から1時間以内に模擬注入の終了をもたらした。この試験からのSDC-TRAP-0063回収データを表5に示す。沈殿の観察と一致して、注入の開始時及び注入が終了する前に収集されたバルク溶液から、IVラインで低い回収率が見られた。
【0281】
【0282】
5%マンニトール投与溶液を、臨床で使用するために設計されたシリンジ及びIVラインで試験し、連続揺動を追加して、試料の撹拌の最悪のケースを模倣した(表6)。この投与溶液を、SDC-TRAP-0063ナトリウムの意図する濃度である3mg/mL及び12mg/mLに制限し、IVバッグで2時間の保持期間、シリンジ及びIVラインで6時間の保持期間、及び、計画された臨床時間枠を超えるように2時間の模擬注入で試験した。5%マンニトールでは、どの時点でも沈殿は観察されず、SDC-TRAP-0063の完全な回収が観察された。
【0283】
【0284】
これらの結果は、対応する臨床期間を超える時間枠での臨床使用の条件下で、5%マンニトール中のSDC-TRAP-0063ナトリウム投与溶液の安定性を明確に示している。対照的に、この投与溶液の臨床使用を模倣した条件下での0.9%塩化ナトリウム中のSDC-TRAP-0063ナトリウムは、沈殿及びIVラインフィルターの閉塞をもたらした。
【0285】
5%マンニトール中のSDC-TRAP-0063投与溶液と塩化ナトリウムとの潜在的な接触を避けるため、塩化ナトリウム溶液は希釈剤としての使用、及びIVラインのフラッシングから除外される。投与中のSDC-TRAP-0063投与溶液と塩化ナトリウム溶液との接触を避けるため、注入前及び注入後に5%のマンニトールで中心静脈ラインをフラッシングする。
【0286】
実施例4:マンニトール中のSDC-TRAP-0063の安定性試験
この試験では、SDC-TRAP-0063ナトリウムを3~12mg/mLの濃度範囲で5%マンニトールに溶解した。SDC-TRAP-0063/マンニトール溶液の注入容器内及びシリンジポンプによる投与中の安定性を調査した。
【0287】
材料及び方法
この試験では、以下の材料及び用品のリストを使用した:SDC-TRAP-0063Na;注射用滅菌水、USP(WFI);イントラビア(intravia)容器(Baxter);5%オスミトロール注射液、USP(マンニトール)(Baxter);60mLシリンジ(BD);10mLシリンジ(BD);2mLシリンジ(Norm-Ject);1mLシリンジ(BD);18g針(BD);シリンジポンプ(Smiths Medical);IV投与セット(0.2ミクロンフィルター付き60インチ拡張セット)(Smiths Medical);20mLシンチレーションバイアル(Kimble);及び40mLシンチレーションバイアル(Chemglass)。
【0288】
計画と手順
3、6、及び12mg/mLのSDC-TRAP-0063Naの投与溶液を、250mLのイントラビア混合容器に調製した。SDC-TRAP-0063Naの所定の数のバイアルをWFIで再構成し、SDC-TRAP-0063Naを5%マンニトールを含む混合容器に移した。各成分の正確な量を表7に記載する。各調製は2つの複製で行った。
【0289】
【0290】
臨床注入プロセスを模倣するために使用時試験を実施した。新たに調製された投与溶液を、イントラビア容器から、指定されたシリンジサイズ及び容量に加え、投与セットのフラッシング用に2mLを足して抜き出した。IV投与セットの容量は0.7mLであり、標準的な薬局の慣行に従って、2mLのフラッシング容量を選択した。投与セットをフラッシングした後、シリンジをシリンジポンプに設置し、室温で4時間保持した後、2時間の注入プロセスを行った。15mgの用量レベルでは、模擬注入は1時間であった。これは、臨床で指定された最低注入速度が5mL/時間以上であったためである。表8にまとめたように、T0及びT2時間で混合容器から、及びT0で投与セットから、及び注入終了時にバルク容器から、15mg試料の場合はT5時間、他のすべての試料の場合はT6時間に試料を収集した。
【0291】
【0292】
10~60mLの公称シリンジ容量の可能なシリンジ容量、公称シリンジ容量の10~75%のシリンジ充填容量の可能なバリエーション、及び3~12mg/の投与溶液の濃度範囲をカバーすることを目的とした柔軟な一括設計を、この試験で行った。各シリンジの最大充填量は、公称容量の75%に制限される。
【0293】
【0294】
結果
すべての試験試料は、見た目では本質的に粒子を含まない透明な溶液であった。SDC-TRAP-0063Na投与溶液のpHは、約9.4~約10.3の予想範囲内であった。この試験中に収集されたSDC-TRAP-0063Na試料のHPLCアッセイ値は、何も傾向を示さず、予想範囲内であった。混合容器内での2時間の保存期間と、合計6時間の模擬保持及び注入時間(15mgの用量では合計5時間)にわたって収集されたSDC-TRAP-0063Na試料の合計不純物は、SDC-TRAP-0063Na濃縮物中の不純物の許容範囲内であり、顕著な傾向は見られなかった。HPLCアッセイ分析では、5又は40mLの5%マンニトール注射液、USPだけを使用したブランク注入で、積分閾値を超えるピークは観察されなかった。
【0295】
したがって、5%マンニトール中のSDC-TRAP-0063Na投与溶液のこの使用時安定性試験により、SDC-TRAP-0063Naの3~12mg/mLの濃度範囲、ならびにIV投与セット及び注入シリンジとの十分な適合性の許容できる安定性プロファイルが確認された。
【0296】
実施例5:進行性固形悪性腫瘍患者におけるSDC-TRAP-0063の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学、及び予備的抗腫瘍活性を評価するためのフェーズ1/2a、非盲検、多施設共同試験
治験薬
保管
注入用のSDC-TRAP-0063ナトリウム、滅菌粉末は、2℃~8℃で冷蔵保存し、光が当たらないようにする。
【0297】
注入用のSDC-TRAP-0063ナトリウム、滅菌粉末は、凍結乾燥したSDC-TRAP-0063のカルボン酸ナトリウム型であり、分子式はC49H50N70O10Na、分子量は919.95g/molである。生理的条件下では、SDC-TRAP-0063ナトリウムは、SDC-TRAP-0063の活性ラクトン型と平衡にある。製剤は、保管中に光から保護するためにカートン内に配置された10mLタイプIガラスバイアルで供給される。投与前に、凍結乾燥粉末を注射用水で再構成し、次いで5%マンニトール、USPで目標濃度に希釈し、中心静脈アクセスラインからIV注入する。
【0298】
調製及び投与
注入のための溶液用のSDC-TRAP-0063ナトリウム、滅菌粉末を、注射用水(WFI)で希釈し、さらに5%マンニトールで希釈し、中心静脈アクセスラインから注入する。
【0299】
注入のための溶液用のSDC-TRAP-0063ナトリウム、滅菌粉末は、10mLタイプIガラスバイアルで提供される。
SDC-TRAP-0063ナトリウムの再構成溶液のpHは約10.0である。この溶液を、5%マンニトール、USPで目標用量に希釈する。注入溶液のpHは、希釈注入溶液中のSDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度に依存する。臨床研究プロトコルで使用される用量範囲全体で、投与される希釈注入溶液の量は50~500mLの範囲であり、pHは8.1~9.6の範囲である。IV投与中の注射部位の痛み及び/又は静脈内皮の損傷の潜在的リスクを減らすために、希釈SDC-TRAP-0063ナトリウムの投与に中心静脈アクセスラインが使用される。
【0300】
5%マンニトール中のSDC-TRAP-0063投与溶液と塩化ナトリウムとの接触の可能性を避けるために、現在の治験薬概要書では、希釈液としての、及びIVラインのフラッシングにおける塩化ナトリウム溶液の排除について説明している。注入前及び注入後に5%マンニトールで中心静脈ラインをフラッシングすることにより、投与中にSDC-TRAP-0063投与溶液を塩化ナトリウム溶液と接触させないように、特別な注意書きが治験薬管理手順書及び治験実施計画書に追加された。
【0301】
以下、SDC-TRAP-0063は、投与された製剤及びヒトでの使用のために投与される用量への言及がある場合はいつでも、SDC-TRAP-0063ナトリウムを指す。
【0302】
患者は、SDC-TRAP-0063を120分かけてIV投与される。患者は、注入に関連した反応を経験している場合、施設の方針に従って、H1拮抗薬及び/又はIVコルチコステロイドを事前に投与されることがある。患者には、示されているように予防的制吐薬を投与することもできる。
【0303】
希釈溶液を、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)を含まず、0.2ミクロンのフィルターを含む注入セットに取り付ける。SDC-TRAP-0063注入は、希釈の約2時間以内に開始され、注入投与は開始から2時間以内(かつ4時間を超えない)に完了し、希釈溶液の調製から投与完了までの合計時間が6時間を超えないようにする。希釈溶液は、6時間にわたって光の影響を受けず、再構成、希釈、及び投与中に光から保護する必要はない。
【0304】
全体的な試験計画
この試験は、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫、小細胞肺がん(SCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、膵腺癌、大腸がん(CRC)、又は胃腺癌の患者におけるSDC-TRAP-0063の安全性、PK、PDc、及び抗腫瘍活性を評価する、ファースト・イン・ヒューマンの非盲検フェーズ1/2a試験である。この試験は、フェーズ1(用量漸増)及びフェーズ2a(疾患特異的コホート拡大)の2段階で実施される。
【0305】
全体の試験計画を下の表に示す。
【0306】
【0307】
スクリーニング
患者は、最初の治験薬投与前14日以内に[及びコンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI)による腫瘍評価では28日以内に]治験適格性についてスクリーニングされる。
【0308】
試験
スクリーニング評価に基づいて適格であると判断され、試験について書面によるインフォームドコンセントを提供した患者は、サイクル1第1日(ClD1、ベースライン)に試験の治療を開始する。治療サイクルの長さは4週間である。すべての患者は、各サイクルのD1、D8、及びD15にSDC-TRAP-0063をIV投与される。SDC-TRAP-0063の投与量は、患者が登録されているコホート/フェーズに依存する。治療中、患者は試験センターを訪れ、各治療サイクルのD1、D8、及びD15で試験評価が実施される。(C1D1を除き、治療サイクル中の来院には1日の期間がある。)すべての試験来院は外来患者ベースで行われるが、施設の方針に従って入院患者ベースで行われる場合がある。
【0309】
安全性は、有害事象(AE)、臨床検査、身体検査、神経学的検査、バイタルサイン測定、心電図(ECG)、及び東部共同腫瘍学グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス(PS)の文書化によって試験中に評価される。
【0310】
薬物動態(PK)のための一連の血液試料は、すべての患者から収集される。
スクリーニング中、疾患のすべての部位はCTによって評価される。CTで解剖学的領域を十分に画像化できない場合は、代わりにMRIを使用してもよい。腫瘍測定は、1サイクルおきに最初の試験薬物投与前7日以内、及び治療終了(EOT)来院時に繰り返される。繰り返しの評価では、ベースラインで使用したものと同じX線撮影法を使用する必要がある。疾患反応は、RECISTガイドライン、バージョン1.1(Eisenhauerら、European Journal of Cancer、45(2009)、228-247、以下Eisenhauer2009という)を使用して評価される。RECISTにより部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)を達成した患者は、反応を確認するために、約6週間後に(かつ、前回の評価から4週間で直ちに)再評価を実施する必要がある。確認評価に続いて、応答評価スケジュールが1サイクルおきに再開される。治療終了後、安定した疾患又は反応を有する患者については、疾患の進行が記録されるまでRECIST測定が継続される。
【0311】
眼の検査は、スクリーニング中、最初のサイクルの後、その後3サイクルごと(又は症状がある場合はより早くに)、及び治療終了(EOT)来院時に、眼科医によって実施される。検査には、視力、視野、及び検眼鏡検査を含める必要がある。網膜電図(ERG)又は暗順応検査は、患者ごとに、評価を行う眼科医が決定したとおりに実行される。試験中に患者が視覚障害を報告した場合、眼科医が眼の検査を行うまで試験治療は中断される。治療期中の眼の検査は、次の治療サイクルの投与前1週間以内に実施される。EOTでの眼の検査は、±4週間以内に実施され得る。
【0312】
開始用量
SDC-TRAP-0063の選択された開始用量は、各28日サイクルのD1、D8、及びD15で30mgIVである。ICH S9は、ファースト・イン・ヒューマン試験の開始臨床用量は、げっ歯類毒性試験におけるSTD10の1/10か、非げっ歯類毒性試験におけるHNSTDの1/6のいずれかにすべきであることを推奨している。SDC-TRAP-0063GLP毒性試験では、より敏感な種であるラットで、影響が用量依存的であり、概して可逆的であり、容易にモニタリングできることが実証された。
【0313】
ラットでの反復投与GLP毒性試験の所見に基づいて、ラットSTD10の10分の1の用量から、ヒト等価用量(HED)は0.48mg/kgとなり、SDC-TRAP-0063のファースト・イン・ヒューマン開始用量が分かる(表10)。イヌの反復投与GLP毒性試験で決定された20mg/kgのイヌ最高非重度毒性用量(HNSTD)に基づく計算を表11に示し、より高い1.9mg/kgのHEDにおける結果は、ラットがより敏感な種であることを実証している。0.48mg/kgのヒト開始用量は18mg/m2に相当する。人間の平均体重を60kgとすると、開始用量は29mgに換算され、あるいは、平均体表面積1.7m2を用いると、開始用量は30mgである。よって、30mgの開始用量レベルを選択した。
【0314】
【0315】
mg/kg単位のHEDを、ラットSTD10用量(mg/kg単位)の1/10を6.2(60kgのヒトを想定)で割ることによって算出した。ヒトBSA用量(mg/m2)は、mg/kgヒト用量に37=mg/m2を掛けて算出した。
【0316】
【0317】
mg/kg単位のHEDを、doHNSTD用量(mg/kg単位)の1/6を1.8(60kgのヒトを想定)で割ることによって算出した。ヒトBSA用量(mg/m2)は、mg/kgヒト用量に37=mg/m2を掛けて算出した。
【0318】
これらの毒性試験で達成された曝露は、マウスで決定された抗腫瘍効果に基づいて、抗腫瘍活性を示すと予想されたレベルを超えている。マウス異種移植片における抗腫瘍効果の最少用量は、週1回の投与で20mg/kgであると決定された。マウスに20mg/kgを投与すると、112μg・h/mLのAUCtがもたらされた。この曝露は、GLP毒性試験のSTD10でのラットの曝露に類似しており、測定されたAUCt値は、雄及び雌のラットでそれぞれ107及び68μg・h/mLであった。マウスの曝露は、イヌのHNSTD(雄及び雌のイヌでそれぞれ181及び183μg・h/mL)での曝露よりも低い。体表面積を使用すると、SDC-TRAP-0063のイヌHNSTDは、マウスでの有効性の最少用量よりも6.6倍高いく、ラットSTD10は3倍高い。
【0319】
スクリーニング期
書面によるインフォームドコンセントの提供後、スクリーニング評価には、患者の病歴の慎重な検討、東部共同腫瘍学グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス(PS)の評価、身体検査、神経学的検査、心電図(ECG)及び臨床検査評価、及びすべての疾患部位のコンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI)が含まれる。
【0320】
スクリーニング評価は、最初の治験薬投与前28日以内に実施され得るCT又はMRI検査を除き、最初の治験薬投与前14日以内に実施される。
スクリーニング評価に基づいて適格と判断された患者は、サイクル1第1日(C1D1、ベースライン)に試験に登録される。
【0321】
治療期(フェーズ1及びフェーズ2a)
SDC-TRAP-0063の安全性、薬物動態(PK)、及び抗腫瘍活性は、すべての患者で評価される。
【0322】
安全性は、バイタルサイン測定、身体検査、神経学的検査、ECOG PS、有害事象(AE)の記録、臨床検査、及びECGによって試験中に評価される。
PK評価用の一連の血液試料は、すべての患者から収集される。
【0323】
腫瘍反応評価は、約8週間ごとに(すなわち、各サイクルが4週間の長さである治療サイクル1つおきに)、固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)バージョン1.1(Eisenhauer 2009)を使用して実施される。腫瘍反応(完全又は部分的RECIST)を有する患者の場合、反応を確認するための繰り返し評価が、最初の反応の約4週間後、つまり追加の1治療サイクル後に行われる。
【0324】
フェーズ1の期間のみ、患者はSDC-TRAP-0063の効果のの薬力学的(PDc)評価のために、任意で腫瘍生検及び毛包採取をセットで行うことがある。
患者は、臨床的利益を示すと考えられる限り、及び中止基準を満たさなければ、SDC-TRAP-0063の投与を受け続けることができる。
【0325】
フェーズ1(用量漸増)
目的:
第1目的
フェーズ1の第1の目的は次のとおりである:進行した固形悪性腫瘍患者において、MTDを決定し、RP2Dを選択し、4週間の治療サイクルの1日目(D1)、8日目(D8)、及び15日目(D15)にIV投与した場合のSDC-TRAP-0063の安全性及び忍容性の概要を調査する。
【0326】
第2目的
フェーズ1の第2の目的は次のとおりである:SDC-TRAP-0063の急性毒性及び慢性毒性の両方を含む安全性及び忍容性を特徴付けること;進行した固形悪性腫瘍患者にIV投与した際のSDC-TRAP-0063及びその成分(HSP90標的化リガンド及びSN-38)のPKを特徴付けること;RECIST1.1で定義されている腫瘍反応基準及び反応期間を用いて、進行した固形悪性腫瘍患者のSDC-TRAP-0063の予備的な抗腫瘍活性を評価すること。
【0327】
予備
フェーズ1の予備的な目的は次のとおりである:無増悪生存期間、全生存期間、及び、SDC-TRAP-0063の投与後約1週間の患者の腫瘍のγ-H2AXレベルによって測定される腫瘍PDcバイオマーカーの変化を評価することにより、進行した固形悪性腫瘍患者におけるSDC-TRAP-0063の予備的な抗腫瘍活性を評価すること;PK、有効性、安全性、及び、SDC-TRAP-0063投与後の患者の腫瘍のγ-H2AXレベルで測定される腫瘍PDcバイオマーカーの変化の間の関係を調べること;治療前の患者の腫瘍で特定された既知の腫瘍のゲノム変化又はプロテオーム変化と、SDC-TRAP-0063の抗腫瘍活性との関係を調べること;治療前の患者の腫瘍におけるHSP90レベルとSDC-TRAP-0063の抗腫瘍活性との関係を調べること。
【0328】
フェーズ1では、過量投与制御を伴う用量漸増(EWOC)原則から導かれる2つのパラメータを用いた適応的ベイズ流ロジスティック回帰モデル(BLRM)を使用して、用量の推奨を行い、最大耐量(MTD)を推定する。
【0329】
患者は、3週間の投薬/1週間の休薬スケジュール、つまり各28日間の治療サイクルの1、8、及び15日目に治療する漸増用量コホートにおいて、2時間にわたりSDC-TRAP-0063を静脈内(IV)投与される。
【0330】
SDC-TRAP-0063の開始用量は、最初の用量コホートで30mgである。潜在的に治療量以下の用量レベルで治療される患者の数を最小限に抑えるため、最初の2つの用量コホートには最低1人、多くとも2人の患者を登録し、その後のコホートには最低3人の患者を登録する。
【0331】
スクリーニング中にUGT1A1*28/*28遺伝子型が同定された患者は、フェーズ1に参加する資格がない。
最初の2つの漸増コホートでは、少なくとも1人の患者がサイクル1(C1)を完了し、次のコホートの登録を開始する前に少なくとも4週間の安全性及びDLTについて評価を受けている必要がある(C2D1投与前評価を含む)。2番目のコホートに続く各用量漸増コホートでは、コホート内の最低3人の患者がC1を完了し、次のコホートの登録を開始する前に少なくとも4週間の安全性及びDLTについて評価を受けている必要がある(C2D1投与前評価を含む)。
【0332】
統計的BLRMモデリングは、すべての安全性データを使用して実施され、試験する用量レベルの選択の指針となる。さらに、PK及びPDデータを使用して用量選択に情報を足してもよい。MTDが決定されるまで、用量の漸増は続く。
【0333】
用量漸増中に、SDC-TRAP-0063の投与後にSDC-TRAP-0063関連毒性が生じ、8日目のSDC-TRAP-0063の投与が遅れた場合、8日目の投与を取りやめ、2週間ごとの投与スケジュールで、すなわち、28日間の各治療サイクルの1日目と15日目での用量漸増を、この代替スケジュールのMTDに達するまで続けることができる。
【0334】
フェーズ1の間、患者が病気の進行の顕著な証拠を示さずSDC-TRAP-0063に忍容である場合、患者はC3又はそれ以降のサイクルから始めて、忍容性であることが既に確立されている用量まで用量を増やすことができる。用量は、患者ごとに1回だけ増やしてもよい。
【0335】
SDC-TRAP-0063の開始用量は30mgである。計画された用量レベルを表12に要約する。
【0336】
【0337】
実際の用量増分は変化する可能性があるが、前の用量レベルからの用量の2倍は超えない。割り当てられた用量は、BLRMの更新された結果によって導かれる。
用量コホートの各患者は、C1でSDC-TRAP-0063を投与され、用量制限毒性(DLT)評価が受けられるように、C2D1を通じてフォローアップ安全性評価を完了している必要がある。C1を完了する前にDLT以外の理由で試験を中止した患者は交代させる。
【0338】
DLTにより追加の患者をコホートに登録することが必要になった場合、すべての患者がC1でSDC-TRAP-0063を投与され、C1の終了を通じてフォローアップ安全性評価を完了した後、そのコホートのすべての安全性データが検討される。以前の用量レベルの安全性及び忍容性データの中間評価に基づいて、中間用量レベルで増加の発生が決定される場合もある。
【0339】
毒性は、アメリカ国立がん研究所(NCI)のがん有害事象共通用語(CTCAE)、バージョン4.03を用いて評価される。
用量漸増に関する決定はC1からのデータの検討に基づいて行われるが、安全性データは治療を継続するすべての患者からも収集され、これは定期的に検討される。累積毒性が検出された場合は、後に用量削減や、推奨されるフェーズ2用量(RP2D)のさらなる微調整を含めた他の処置が適宜必要になる場合がある。
【0340】
フェーズ2a(拡張)
目的
第1目的
フェーズ2aの第1の目的は次のとおりである:RECIST1.1によって定義された腫瘍反応基準と、1つ以上の以前の選択的抗がん療法での治療中又は治療後に疾患が進行した固形悪性腫瘍患者の以下の腫瘍特異的コホートにおける反応期間を使用して、IV投与時の単剤としてのSDC-TRAP-0063の有効性を評価すること:oユーイング肉腫又は横紋筋肉腫患者(n=20);小細胞肺がん(SCLC)患者(n=20);トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者(n=20);膵腺癌患者(n=20);大腸がん(CRC)患者(n=20);胃腺癌患者(n=20)。
【0341】
第2目的
フェーズ2aの第2の目的は次のとおりである:上記の患者の腫瘍特異的コホートにおける無増悪生存期間及び全生存期間を評価すること;上記の患者の腫瘍特異的コホートにおけるSDC-TRAP-0063投与の安全性及び忍容性を評価すること;上記の患者の腫瘍特異的コホートにおけるSDC-TRAP-0063及びその成分(HSP90標的化リガンド及びSN-38)のPKを特徴付けること。
【0342】
予備
フェーズ2aの予備的な目的は次のとおりである:上記の患者の腫瘍特異的コホートにおけるPK、有効性、及び安全性の間の関係を調査すること。
【0343】
フェーズ1が終了してフェーズ2aが開始し、フェーズ1で治療されたすべての患者の安全性がC2D1を含めて評価され、すべての安全性データが検討される。
SDC-TRAP-0063は、フェーズ1の終了時に特定された推奨フェーズ2用量(RP2D)を使用して評価される。RP2Dは、フェーズ1におけるSDC-TRAP-0063の安全性、忍容性、PK、及びPDcプロファイルの調査結果に基づいている。RP2DはMTDと同じであるか、MTD未満であり得る。
【0344】
スクリーニング中に同定されたUGT1A1*28/*28遺伝子型の患者は、フェーズ2aに参加する資格がある。これらの患者には、最初のサイクルでRP2Dの75%が投与される。その後のサイクルでの用量調整は、個々の患者の安全性及び忍容性に基づいている。
【0345】
合計で最大120人の患者を最大6つの拡張コホートで治療し、それぞれが進行した固形悪性腫瘍の個別のサブセット(各n=20)の患者で構成され、これらの個別の集団においてSDC-TRAP-0063の初期の有効性、安全性、及びPKを評価する。
【0346】
患者の数
フェーズ1
約30人の患者が登録されている。1~2人の患者が最初の2つの用量レベルで治療される。その後のすべてのコホートは、各用量レベルで3~6人の患者を治療する。EWOC原則から導かれた適応的BLRMを使用して、用量の推奨を行い、MTDを推定する。約4~6回の用量漸増コホートが予想される。登録された患者の総数は、観察された安全性プロファイル、及び、MTDを達成し、SDC-TRAP-0063のRP2Dを確立するために必要な用量漸増コホートの数に依存する。
【0347】
各患者は、開始用量コホートとして定義されている1つの用量コホートにのみ参加する。
フェーズ2a
合計120人までの患者が次のように登録される:コホート1(n=20)、コホート2(n=20)、コホート3(n=20)、コホート4(n=20)、コホート5(n=20)、コホート6(n=20)。これらのコホート試料サイズは、個別の腫瘍タイプの進行がん患者におけるSDC-TRAP-0063の有効性の早期評価を得るのに十分であると考えられる。
【0348】
診断及び受け入れの主な基準:
すべての患者(フェーズ1及びフェーズ2aの両方)は、参加資格を得るために次の基準をすべて満たしている必要がある:
1.試験特有の強制的な処置、サンプリング、又は分析の前に、署名及び日付を記した書面によるインフォームドコンセントを提供し理解すること。
【0349】
2.18歳以上の男性又は女性であること。
3.ECOG PSが0~1であること。
4.次の定義に従い、C1D1の前14日以内に十分な臓器機能を有すること:
骨髄:絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L、血小板数≧100×109/L、及びヘモグロビン≧9g/dl。
【0350】
肝臓:総ビリルビン≦1.5×基準値上限(ULN)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦2.5×ULN。
【0351】
腎臓:血清クレアチニン濃度≧1.5×ULNの場合、推定クレアチニンクリアランスは≧50mL/分であることが必要(Cockroft-Gault式)。
また、患者はC1D1前3日以内に評価される場合、適格であり続けるためにこれらの基準を満たすことが必要である。
【0352】
5.血清カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリンが基準値以内であること。最初のスクリーニング評価で値が低い場合は、サプリメントを提供し、基準値以内であることを確認するために値を繰り返し得てもよい。
【0353】
6.妊娠の可能性がある女性の場合、C1D1の前3日以内に血清妊娠検査が陰性であること。妊娠の可能性がある女性は、C1D1の14日前から最後の治験薬投与の3ヵ月後まで、真の禁欲又は医師承認の信頼性の高い避妊の使用に同意する必要がある。信頼性の高い避妊とは、次の2つを意味する:(1)経口、注射、又は埋め込み型のホルモン避妊法の確立された使用、(2)子宮内器具の配置、(3)コンドーム又は閉塞キャップ(殺精子ジェル、泡、フィルム、クリーム、又は膣座薬を備えたダイヤフラム又は子宮頸部のボールトキャップ)、(4)精管切除後の精子の不存在の確認を含めた男性の不妊手術。
【0354】
7.男性の場合、外科的に不妊であるか、C1D1から最後の治験薬投与の3ヵ月後までコンドームを使用することに同意する。
フェーズ1の患者は、次の追加の基準を満たす必要がある:
8.組織学的又は細胞学的に確認された進行した固形悪性腫瘍が、以前の1つ以上の選択的抗がん療法の後に進行したこと。さらに、患者は自身の悪性腫瘍の治療に適切とみなされる他の標準治療療法を受けてはならない。
【0355】
スクリーニング期及びSDC-TRAP-0063治療中に再度、任意の腫瘍生検を受けるための書面によるインフォームドコンセントを提供するフェーズ1の患者の場合、そのような患者は生検処置を受ける前に以下の追加基準を満たさなければならない:
9.患者は、生検にアクセス可能な腫瘍部位であって、治験責任医師によって、2つの別々の機会に生検処置を受けるのに低リスクかつ十分な大きさであると見なされる腫瘍部位を少なくとも1つ有する必要がある。
【0356】
フェーズ2aの患者は、次の追加の基準を満たす必要がある:
10.RECIST1.1に基づく測定可能な疾患(すなわち、従来の手法で20mm以上、あるいはスパイラルCTスキャン又はMRIで10mm以上の少なくとも1つの測定可能な病変)があり、C1D1の前28日以内に最後の画像化が行われていること。
【0357】
11.患者は、その疾患に特有の以下の病歴を有する必要がある:
ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫:患者は局所再発又は転移性のユーイング肉腫、又は以前に2回以上の選択的化学療法を受けた後に進行した横紋筋肉腫を有する;
SCLC:患者は以前に1回以上の選択的化学療法を受けた後に進行した進展型SCLCを有する。イリノテカン又はトポテカンを単剤療法又は直近の選択的療法の一部として投与されている期間内又はその3ヵ月以内に疾患が進行した場合、その患者は不適格である;
TNBC:患者は、アントラサイクリン及びタキサンの両方を含む少なくとも2回の以前の化学療法レジメンを受け、以前に1回以上の局所再発又は転移性疾患に対する選択的化学療法を受けた後に進行した局所再発又は転移性のTNBCを有する;
膵腺癌:患者は、以前に1回以上の選択的化学療法を受けた後に進行した局所再発又は転移性の膵臓がんを有し、術後補助化学療法の6ヵ月以内に疾患が進行した患者も含む。イリノテカンを単剤療法又は直近の選択的療法の一部として投与されている期間内又はその3ヵ月以内に疾患が進行した場合、その患者は不適格である;
CRC:患者は、以前に転移性疾患の選択的化学療法を2回以上受けた後に進行した転移性大腸がんを有する。イリノテカンを単剤療法又は直近の選択的療法の一部として投与されている期間内又はその3ヵ月以内に疾患が進行した場合、その患者は不適格である;
胃腺癌:患者は、以前に1回以上の選択的化学療法を受けた後に進行した局所再発又は転移性の胃腺癌を有する。イリノテカンを単剤療法又は直近の選択的療法の一部として投与されている期間内又はその3ヵ月以内に疾患が進行した場合、その患者は不適格である。
【0358】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験への参加資格がない:
1.C1D1の前2週間(マイトマイシンC及びニトロソウレアの場合は6週間)以内、又は半減期が分かっており、半減期が短い場合はその作用剤の5半減期以内に、抗がん療法又は治験薬で治療されたこと。抗がん療法には、細胞傷害性化学療法、標的阻害剤、免疫療法、及び放射線療法が含まれるが、ホルモン療法は含まれない。加えて、脱毛症及び末梢神経障害を除いて、薬物関連毒性はすべてグレード1以下(NCI CTCAEバージョン4.03)に回復している必要がある。
【0359】
2.治療された子宮頸部上皮内腫瘍及び非黒色腫皮膚がんを除いて、活性であることが知られているその他の悪性腫瘍があること。
3.次の心臓基準の1つ以上を有すること:不安定狭心症;スクリーニング前6ヵ月以内の心筋梗塞;ニューヨーク心臓協会クラスII~IV心不全;Fredericiaの公式を用いて、3つの連続した安静時ECGから平均として得られた>470ミリ秒の補正QT間隔(QTc);安静時心電図のリズム、伝導、又は形態における臨床的に重要な異常(例:完全左脚ブロック、第3度心ブロック);先天性QT延長症候群;スクリーニング前6ヵ月以内の症候性起立性低血圧;コントロール不良の高血圧。
【0360】
4.スクリーニング前6ヵ月以内の脳卒中又は一過性脳虚血発作。
5.グレード2を超える末梢神経障害。
6.患者が、UGT1A1の阻害剤、CYP1A2の基質又はP糖タンパク質(P-gp)の基質、乳がん耐性タンパク質(BCRP)、有機アニオン取り込みトランスポーターポリペプチド1B1及び1B3(OATP1B1又はOATP1B3)、又は有機カチオントランスポーター1(OCT1)トランスポーターのいずれかによる投薬を必要とすること。これらの薬を投与された患者は、C1D1の前に2週間のウォッシュアウトを受けなければならない。
【0361】
7.軟髄膜疾患又は脊髄圧迫の既往歴。
8.無症候性で、試験治療開始前の少なくとも4週間はステロイドを必要としない場合を除き、脳転移があること。
【0362】
9.C1D1の28日前までに大手術を受けたこと。
10.女性の場合、妊娠中又は授乳中であること。
11.治験責任医師が判断して、重度の又は放置されている全身性疾患、活動性出血傾向、腎移植又は肝移植、又は既知のB型肝炎、C型肝炎、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む活動性感染の証拠があること。
【0363】
12.ガネテスピブ又は他のHSP90阻害剤に対するアナフィラキシー反応の過敏症又は病歴があること。
13.イリノテカン、SN-38、又はイリノテカン、SN-38又はその誘導体を含む他の作用剤に対するアナフィラキシー反応の過敏症又は病歴があること。
【0364】
14.患者の試験への参加を妨げる医学的、心理的、社会的条件があること。
次の追加基準を満たすフェーズ1の患者は、参加資格がない:15.UGTlA1*28/*28の遺伝子型。
【0365】
抗腫瘍活性:
疾患の反応は、RECIST1.1を使用して評価される。フェーズ1の間のみ、SDC-TRAP-0063での治療前及び治療中に任意の腫瘍生検及び毛包採取を受けた患者について、腫瘍組織及び毛包におけるDNA損傷のマーカーであるγ-H2AXのレベルを測定することにより、腫瘍PDc活性が評価される。すべての患者は、無増悪生存期間及び全生存期間について追跡される。
【0366】
薬物動態:
PKプロファイルは、SDC-TRAP-0063及びSDC-TRAP-0063に由来するその成分(HSP90標的化リガンド及びSN-38)の血漿レベルを、試験期間を通して周期的に決定することにより評価される。
【0367】
統計的手法とデータ分析:
データは、人口統計及びベースライン特性、有効性測定、安全性測定、及び関連するすべてのPK及びPDc測定について、記述統計(連続データ)及び/又は分割表(カテゴリデータ)を使用してまとめられる。
【0368】
分析集団
完全分析セットには、任意の量のSDC-TRAP-0063を投与されるすべての患者が含まれる。安全性分析セットは、任意の量の治験薬が投与され、ベースライン後の安全性評価を少なくとも1回有するすべての患者を含む。用量決定セットは、任意の量の治験薬を投与され、DLTを経験したか、DLT評価期間全体について追跡されたすべての患者を含む。PK分析セットは、任意の量の治験薬を投与され、十分なPK試料を提供するすべての患者を含む。重大なプロトコル違反のある患者は、PK分析セットに含めるかについて患者ごとに評価される。
【0369】
バイオマーカー及び薬力学的評価
細胞株パネルでは、Schlafen-11の高発現は、トポイソメラーゼI阻害剤及び他のDNA損傷剤に対する反応と高い正の相関関係を示している。また、ファンコニ貧血責任遺伝子FANCP(SLX4/BTBD12)の変異は、カンプトテシン及び他のいくつかの作用剤に対する感受性との相関を示している。したがって、SDC-TRAP-0063による治療前に収集された患者の腫瘍は、ヒトのがんに関連する既知の分子ゲノム及び/又はプロテオミクス変化のパネル全体で遡及的に分析され、また、FANCPの変異及びSchlafen-11のタンパク質レベルを含み、これらの変化とSDC-TRAP-0063に対する患者の反応との間に関連性があるか否かについて遡及的に調査される。
【0370】
さらに、HSP90α及びΗSΡ90βは、正常細胞と比較して腫瘍においてより高いレベルで特異的に発現する。患者の腫瘍のHSP90レベルがSDC-TRAP-0063に対する反応に関連するかどうかを調べるために、SDC-TRAP-0063治療前の患者の腫瘍試料のSDC-TRAP-0063、HSP90α及びΗSP90βを測定する。
【0371】
ヒストンH2AバリアントであるH2AX(γ-Η2ΑΧ)は、DNA二本鎖切断の指標であり、DNA損傷応答に反応するマーカーである。DNA損傷反応中に、二本鎖切断(DSB)が生じ、これはγ-Η2ΑΧの急速なリン酸化をもたらす。腫瘍細胞のSDC-TRAP-0063治療は、SDC-TRAP-0063ペイロードのSN-38などのトポイソメラーゼI阻害剤に特徴的なDNA DSBを誘導する。これらのDSBは、γ-Η2ΑΧレベルを測定することで定量化できる。in vivo薬理試験では、SDC-TRAP-0063に対するPDc応答は、γ-Η2ΑΧの免疫染色によって評価され、SDC-TRAP-0063の抗腫瘍活性と関連していた。γ-Η2ΑΧは、治験において、トポイソメラーゼI阻害、電離放射線、又はWeel阻害によって誘発されるDNA損傷を監視するために使用されている。フェーズ1の間のみ、任意の腫瘍生検及び毛包採取の提供に署名した患者について、SDC-TRAP-0063誘発DNA損傷反応の証拠を確認するために、腫瘍生検及び毛包のセットでγ-Η2ΑΧのレベルが評価される。SDC-TRAP-0063の作用メカニズムに基づいて、γ-Η2AX及び/又はDNA損傷の他のマーカーで測定されるDNA損傷の証拠は、毛包と比較して腫瘍組織でより多くなることが予想される。SDC-TRAP-0063治療とDNA損傷反応との関係を十分に調査するには、腫瘍生検及び毛包の10組の高品質ペアが必要であると推定される。
【0372】
本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されたものである。
特許請求の範囲において、「1つ」、「その」などの冠詞は、反対の指示がない限り、又は文脈から明白でない限り、1つ又は複数を意味する場合がある。グループのうちの1つ又は複数のメンバー間に「又は」を含む請求項又は説明は、提示された製品又は方法にそのグループメンバーの1つ、2つ以上、又はすべてが存在し、採用され、又は他の態様で関係する場合、反対の指示がない限り、又は文脈から明白でない限り、充足すると見なされる。本発明は、提示された製品又は方法に、グループの厳密に1つのメンバーが存在し、採用され、又は他の態様で関係する実施形態を含む。本発明は、提示された製品又は方法に、グループメンバーのうちの2つ以上又はすべてが存在し、採用され、又は他の態様で関係する実施形態を含む。
【0373】
さらに留意点として、「含む」という用語はオープンであることを意図しており、追加の要素又はステップを含めることを許容するが必須とはしない。「含む」という用語が本明細書で使用される場合、「からなる」という用語も結果として包含され、開示される。
【0374】
範囲が提示されている場合、端点が含まれる。さらに、別様に指定されているか、文脈上及び当業者の理解からそうでないことが明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が別段の定めをしない限り、本明細書の異なる実施形態において述べられた範囲内の、その範囲の下限の単位の10分の1までの任意の特定の値又は下位範囲をとることができることを理解されたい。
【0375】
加えて、先行技術に含まれる本発明の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、本明細書で明示的に除外が示されていなくても、除外することができる。本発明の組成物の特定の実施形態は、先行技術の存在に関係するか否かにかかわらず、任意の理由で、1つ以上の請求項から除外することができる。
【0376】
引用に明示的に記載されていない場合でも、引用されたすべての情報源、例えば、参考文献、出版物、データベース、データベースエントリ、及びここに引用された技術は、参照により本願に組み込まれる。引用された情報源と本願の記述が矛盾する場合、本願の記述が優先するものとする。
【0377】
セクション及び表の見出しは、限定することを意図したものではない。