(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107909
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び酸又は銀ベースの化合物を含有する抗菌性混合物、並びにそれを含有する化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20230727BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230727BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230727BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230727BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230727BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230727BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61K8/35
A61K8/41
A61K8/365
A61K8/19
A61K8/36
A61K8/368
A61K8/44
A61Q5/00
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q15/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023097167
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2021531400の分割
【原出願日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】1873727
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ・クフェルマン
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・マナール-シュチェバラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ガルヴァン
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、良好な抗菌有効性を有する、ケトン化合物と他の化合物との組合せを提供することである。
【解決手段】本発明は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び有機若しくは無機酸又は塩基とのその塩、及び水和物などのその溶媒和物;エチレンジアミンジコハク酸の三ナトリウム塩、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸の塩、特に、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸のナトリウム塩、ヒドロキシメチルグリシネートの塩、特に、ヒドロキシメチルグリシンナトリウムの塩又はクエン酸塩、特に、クエン酸銀から選択される酸化合物との組合せに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性混合物であって:
・4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び有機若しくは無機酸又は塩基とのその塩、及び水和物などのその溶媒和物;並びに
・以下のものから選択される少なくとも1つの酸化合物:
i)エチレンジアミンジコハク酸及びその塩;
ii)ジャスモネート化合物(I)及びその塩;
【化1】
(式(I)中、Rは、2~7個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和直鎖状炭化水素系基を示し、特に、Rは、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル又はヘプチル基、好ましくは、ペンチル基であり得る);
iii)式(II)のグリシネート化合物及びその塩:
R
1R
2NCH
2COO
-X
+ (II)
-R
1及びR
2は、水素原子又はHOCH
2-若しくはHOCH
2CH
2-などのヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル基を示し;好ましくは、R
1は、水素原子を表し、R
2は、HOCH
2-基を表し;
-X
+は、好ましくは、ナトリウム、カルシウム及びアルミニウムなどの、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、好ましくは、ナトリウムなどのアルカリ金属から選択されるカチオン性対イオンを示し;
・又は以下のものから選択される少なくとも1つの銀ベースの化合物:
i)Ag
2O及びAgOなどの酸化銀I及びII、
ii)Ag/TiO
2及びAg/SiO
2などの銀粒子;
iii)下式から選択されるAg I又はAg II塩:
a)塩化銀AgClなどのAgHal(ここで、Halは、ハロゲン原子、好ましくは、Clを表す);
b)AgHal
2(ここで、Halは、同一であるか又は異なり、好ましくは、同一であり、Halは、前に定義されるとおりである);及び
c)Ag
xR
3
z及びさらに水和物などのその溶媒和物
を含み、ここで、
-同一又は異なり得るR
3は、以下のものから選択される基を表し:
・スルフェート、例えばAg
2SO
4;
・ニトレート、例えばAgNO
3;
・ヒドロキシ、例えばAgOH;
・(C
1~C
6)アルキルカルボキシレート(ここで、前記(C
1~C
6)アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、1つ以上のヒドロキシル、カルボキシル又はカルボン酸基で任意選択的に置換される)、例えば酢酸Ag、プロピオン酸Ag、乳酸Ag及びクエン酸Ag;
・少なくとも1つのカルボン酸基で置換され、及び1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されるアリール基、例えば安息香酸銀又はサリチル酸銀;
-x及びzは、1≦z≦6、1≦x≦4であるような整数である、抗菌性混合物。
【請求項2】
前記塩が、カリウム、カルシウム、アルミニウム若しくは亜鉛などの、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、モノエタノールアミン若しくはトリエタノールアミンなどの(C1~C4)アルカノールアミンのアンモニウム塩、アンモニウム塩、好ましくは、カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩は、前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/エチレンジアミンジコハク酸又はその塩の質量比が、1.5~15の範囲であり、好ましくは、2.5~15の範囲であり、優先的に、5~15、より優先的に、10~15の範囲であるような質量比で前記混合物中に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
式(I)の前記化合物が、3-ヒドロキシ-2-[2-ペンテニル]シクロペンタン酢酸又は3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸及び/又はその塩から選択され、好ましくは、化合物(I)が、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸及び/又はその塩、特に、ナトリウム塩であり;優先的に、化合物(I)が、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸のナトリウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びジャスモネート化合物(I)は、質量比が、0.3~1.20、好ましくは、0.45~1.20、優先的に、0.6~1の範囲であるような含量で前記混合物中に存在することを特徴とする、請求項1又は4に記載の混合物。
【請求項6】
前記グリシネート化合物(II)及びその塩が、ヒドロキシメチルグリシネート塩、特に、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、ジヒドロキシエチルグリシネート塩、特に、ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム、グリシネート塩、特に、ナトリウムグリシネート、カルシウムグリシネート又はアルミニウムグリシネート、好ましくは、ヒドロキシメチルグリシンナトリウムから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
請求項1又は6に記載の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び式(II)のグリシネート化合物及びその塩は、前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/式(II)のグリシネート化合物又はその塩の質量比が、10~80、好ましくは、10~60、好ましくは、20~60、より優先的に、40~60の範囲であるような含量で前記混合物中に存在することを特徴とする、請求項1又は6に記載の混合物。
【請求項8】
前記銀ベースの(Ag)化合物が、銀(C1~C6)アルキルカルボキシレート、例えば乳酸Ag及びクエン酸Ag及び銀アリールカルボキシレート、例えば安息香酸銀及びサリチル酸銀、より優先的に、クエン酸銀から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項9】
請求項1又は8に記載の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び銀ベースの化合物は、前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/銀ベースの化合物の質量比が、0.4~4、好ましくは、0.4~3.6、好ましくは、0.7~3.6、好ましくは、1.5~3.6の範囲であるような含量で前記混合物中に存在することを特徴とする、請求項1又は8に記載の混合物。
【請求項10】
生理学的に許容可能な媒体中に、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物を含む組成物。
【請求項11】
水、油、2~10個の炭素原子を含有するポリオール、ゲル化剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、染料、香料、充填剤、紫外線遮断剤、植物抽出物、化粧用及び皮膚用活性薬剤、及び塩から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンが、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%の範囲、好ましくは、0.01質量%~3質量%の範囲、優先的に、0.01質量%~2.5質量%の範囲、より優先的に、0.01質量%~2質量%の範囲、さらに良好には、0.015質量%~0.8質量%の範囲の含量で存在することを特徴とする、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップ及び/又はクレンジングするための非治療的美容的処置方法であって、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物の前記ケラチン物質への適用を含む方法。
【請求項14】
生理学的に許容可能な媒体を含む組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物を保存するための方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物を前記組成物に組み込むことにあることを特徴とする方法。
【請求項15】
保存剤としての、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物の使用。
【請求項16】
請求項10~12のいずれか一項に記載の抗菌性混合物を含む栄養組成物。
【請求項17】
栄養組成物を保存するための方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌性混合物を前記組成物に組み込むことにあることを特徴とする方法。
【請求項18】
水の処理における、請求項1、4~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物の使用であって、前記水が、家庭用水又は工業用水、水性媒体からの水、スイミングプール/温泉水、及び空調システムからの水から選択される、使用。
【請求項19】
連続又は非連続水処理方法であって、処理される水サンプル又は処理される水流を、請求項1、4~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物と接触させる少なくとも1つの工程を含み、前記水が、家庭用水又は工業用水、水性媒体からの水、スイミングプール/温泉水、及び空調システムからの水から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びアルコール化合物を含有する抗菌性混合物、及びさらにこのような混合物を含有する化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(ケトン化合物)は、(特許文献1)に記載されるように、組成物を微生物汚染から保護するための、組成物、特に、化粧用、医薬又は栄養組成物のための保存剤として有益な物質である。
【0003】
しかしながら、良好な抗菌性保存性能を同時に維持しながら、減少した濃度の前記ケトン化合物を、組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物に組み込むことができることが望ましい。したがって、良好な抗菌有効性を有する、ケトン化合物と他の化合物との組合せが、この目的のために求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/039445号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な実施例を伴う以下の説明を読むと、よりよく理解され得る。
【0006】
本発明者らは、予想外にも、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び有機若しくは無機酸又は塩基とのその塩、及び水和物などのその溶媒和物;エチレンジアミンジコハク酸の三ナトリウム塩、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸の塩、特に、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸のナトリウム塩、ヒドロキシメチルグリシネートの塩、特に、ヒドロキシメチルグリシンナトリウムの塩又はクエン酸塩、特に、クエン酸銀から選択される酸化合物との組合せが、相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にすることを発見した。
【0007】
後述される例の結果は、いくつかの混合物で取られた最小発育阻止濃度(MIC)測定で得られた相乗的抗菌活性を示す。抗菌活性は、抗菌性混合物が、25%以下、或いは20%以下の菌株増殖のパーセンテージを得ることを可能にする場合、相乗的であると見なされる。
【0008】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、エチレンジアミンジコハク酸の塩、特に、三ナトリウム塩との組合せは、特に、グラム陽性菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【0009】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸の塩、特に、ナトリウム塩との組合せは、特に、酵母、特に、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【0010】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、ヒドロキシメチルグリシネート塩、特に、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム塩との組合せは、特に、グラム陽性菌エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【0011】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、銀ベースの化合物、特に、クエン酸銀との組合せは、特に、かび、特に、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
より正確には、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、及びi)エチレンジアミンジコハク酸又はその塩;ii)後述されるジャスモネート化合物(I);iii)後述されるグリシネート化合物(II)又は後述される少なくとも1つの銀ベースの化合物から選択される少なくとも1つの酸化合物を含むか、又はそれらから構成されるか(又はそれらからなる)抗菌性混合物である。
【0013】
本発明の趣旨では、特に示されない限り:
「アニオン性対イオン」が、アンモニウム塩のカチオン電荷を平衡させる有機酸又は鉱酸塩に由来するアニオン又はアニオン性基であり;より特に、アニオン性対イオンは、i)塩化物又は臭化物などのハロゲン化物;ii)ニトレート;iii)メタンスルホネート又はメシレート及びエタンスルホネートなどのC1~C6アルキルスルホネート:Alk-S(O)2O-を含むスルホネート;iv)ベンゼンスルホネート及びトルエンスルホネート又はトシレートなどのアリールスルホネート:Ar-S(O)2O-;v)シトレート;vi)スクシネート;vii)タートレート;viii)ラクテート;ix)硫酸メチル及び硫酸エチルなどの硫酸アルキル:Alk-O-S(O)O-;x)硫酸ベンゼン及び硫酸トルエンなどの硫酸アリール:Ar-O-S(O)O-;xi)硫酸メトキシ及び硫酸エトキシなどの硫酸アルコキシ:Alk-O-S(O)2O-;xii)硫酸アリールオキシ:Ar-O-S(O)2O-、xiii)ホスフェートO=P(OH)2-O-、O=P(O-)2-OH O=P(O-)3、HO-[P(O)(O-)]w-P(O)(O-)2(ここで、wが整数である);xiv)アセテート;xv)トリフレート;及びxvi)テトラフルオロボレートなどのボレート、xvii)ジスルフェート(O=)2S(O-)2又はSO4
2-及びモノスルフェートHSO4
-から選択され;好ましくは、アニオン性対イオンは、Cl-又はBr-などのハロゲン化物であり、
「有機又は無機酸塩」は、より特に、i)塩酸HCl、ii)臭化水素酸HBr、iii)硫酸H2SO4、iv)メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸:Alk-S(O)2OH;v)ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸:Ar-S(O)2OH;vi)クエン酸;vii)コハク酸;viii)酒石酸;ix)乳酸;x)メトキシスルフィン酸及びエトキシスルフィン酸などのアルコキシスルフィン酸:Alk-O-S(O)OH;xi)トルエンオキシスルフィン酸及びフェノキシスルフィン酸などのアリールオキシスルフィン酸;xii)リン酸H3PO4;xiii)酢酸CH3C(O)OH;xiv)トリフルオロメタンスルホン酸CF3SO3H;及びxv)テトラフルオロホウ酸HBF4に由来する塩から選択される塩から選択され;
「有機又は無機塩基塩」は、以下に定義される塩基又はアルカリ性剤、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアルカリ土類金属水酸化カルシウム、アンモニア、アミン又はアルカノールアミンの塩を意味する。
【0014】
「アルキル基」は、飽和した直鎖状又は分枝鎖状ヒドロカルボニル鎖であり;
さらに、本発明に関して、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンとともに使用され得る付加塩は、以下に定義される塩基性化剤、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アミン又はアルカノールアミンなどの化粧用に許容可能な塩基との付加塩から特に選択され;好ましくは、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、式(I’):
【化1】
式(I’)(式中、M
+は、カチオン性対イオン、特に、ナトリウム若しくはカリウムなどのアルカリ金属、又はカルシウム若しくはアンモニウムなどのアルカリ土類金属を表す)などの塩形態であり得る。
【0015】
本発明の主題はまた、前記抗菌性混合物を含む組成物である。
【0016】
組成物は、生理学的に許容可能な媒体を含み得る。組成物は、特に、化粧用又は医薬又は皮膚用組成物である。
【0017】
組成物は、任意選択的に、栄養組成物(食品)であり得る。
【0018】
本発明の主題はまた、生理学的に許容可能な媒体中に、上述される前記混合物を含む組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物である。
【0019】
本発明の主題はまた、上述される組成物、特に、化粧用組成物のケラチン物質への適用を含む、ケラチン物質の非治療的美容的処置のための方法である。この方法は、ケラチン物質をケア又はメイクアップ又はクレンジングするための美容的方法であり得る。
【0020】
本発明の主題はまた、特に、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物、特に、化粧用又は医薬組成物、又は栄養組成物を保存するための方法であって、上述される抗菌性混合物を前記組成物に組み込むことにあることを特徴とする方法である。
【0021】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、式:
[Chem.1]
【化2】
の化合物及び有機若しくは無機酸又は塩基とのその塩、及び水和物などのその溶媒和物である。
【0022】
第1の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩を含むか、又はそれらから構成されるか(又はそれらからなる)抗菌性混合物である。
【0023】
この塩は、アンモニウム塩、カルシウム、カリウム、アルミニウム若しくは亜鉛などのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、モノエタノールアミン又はトリエタノールアミンなどの(C1~C4)アルカノールアンモニウムの塩、アンモニウム塩、好ましくは、カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩(名称で販売されている製品などから選択され得る。
【0024】
有利には、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/エチレンジアミンジコハク酸又はその塩の質量比が、1.5~15の範囲であり、好ましくは、2.5~15の範囲であり、優先的に、5~15の範囲であり、より優先的に、10~15の範囲であるような含量で前記混合物中に存在する。このような混合物は、グラム陽性菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する良好な抗菌活性を有する。
【0025】
好ましくは、抗菌性混合物を含む組成物は、組成物の総質量に対して、0.35質量%~0.8質量%の範囲、優先的に、0.4質量%~0.6質量%の範囲の含量で4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンを含み得る。
【0026】
第2の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びジャスモネート化合物(I)を含むか、又はそれらから構成されるか(又はそれらからなる)抗菌性混合物である。
【0027】
ジャスモネート化合物は、下式(I):
[Chem.2]
【化3】
で表されるか、並びにその塩、及び水和物などの溶媒和物であり;
式中、Rは、2~7個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和直鎖状炭化水素系基を示す。特に、Rは、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル又はヘプチル基、好ましくは、ペンチル基であり得る。
【0028】
化合物(I)の塩は、ナトリウム又はカリウム及びさらにマグネシウム、ストロンチウム、銅、マンガン又は亜鉛の塩などの、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩から選択され得る。優先的に、ナトリウム塩などのアルカリ金属の塩が使用される。
【0029】
有利には、式(I)の化合物は、3-ヒドロキシ-2-[(2Z)-2-ペンテニル]シクロペンタン酢酸又は3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸及び/又はその塩から選択される。好ましくは、化合物(I)は、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸及び/又はその塩、特に、ナトリウム塩である。優先的に、化合物(I)は、3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸のナトリウム塩である。
【0030】
抗菌性混合物は、0.3~1.20の範囲、好ましくは、0.45~1.20の範囲、優先的に、0.6~1の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/ジャスモネート化合物(I)の質量比を有し得る。
【0031】
このような混合物は、酵母、特に、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する良好な抗菌活性を有する。
【0032】
好ましくは、抗菌性混合物を含む組成物は、組成物の総質量に対して、0.08質量%~0.4質量%の範囲、好ましくは、0.09質量%~0.35質量%の範囲、好ましくは、0.1質量%~0.3質量%の範囲の含量で4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンを含み得る。
【0033】
第3の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び式IIのグリシネート化合物を含むか、又はそれらから構成されるか(又はそれらからなる)抗菌性混合物である。
【0034】
グリシネート化合物は、下式(II):
[Chem.3]R1R2NCH2COO-X+(II)
で表され、式(II)中:
-R1及びR2は、水素原子又はHOCH2-若しくはHOCH2CH2-などのヒドロキシ(C1~C4)アルキル基を示し;好ましくは、R1は、水素原子を表し、R2は、HOCH2-基を表し;
-X+は、好ましくは、ナトリウム、カルシウム及びアルミニウムなどの、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、好ましくは、ナトリウムなどのアルカリ金属から選択されるカチオン性対イオンを示す。
【0035】
有利には、グリシネート化合物(II)は、ヒドロキシメチルグリシネート塩、特に、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、ジヒドロキシエチルグリシネート塩、特に、ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム、グリシネート塩、特に、ナトリウムグリシネート、カルシウムグリシネート又はアルミニウムグリシネート、好ましくは、ISP社によってSuttocide A(50%の溶液)の名称で販売されている製品などのヒドロキシメチルグリシンナトリウムから選択され得る。
【0036】
抗菌性混合物は、10~80の範囲、好ましくは、10~60の範囲、好ましくは、20~60の範囲、より優先的に、40~60の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/グリシネート化合物IIの質量比を有し得る。このような混合物は、グラム陽性菌エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)に対する良好な抗菌活性を有する。
【0037】
好ましくは、抗菌性混合物を含む組成物は、組成物の総質量に対して、0.05質量%~0.45質量%の範囲、好ましくは、0.08質量%~0.45質量%の範囲、好ましくは、0.15質量%~0.45質量%の範囲、好ましくは、0.18質量%~0.4質量%の範囲の含量で4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンを含み得る。
【0038】
第4の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、並びに以下のものから選択される銀ベースの(Ag)化合物:i)Ag2O及びAgOなどの酸化銀I及びII、ii)Ag/TiO2及びAg/SiO2などの銀粒子;iii)下式から選択されるAg I又はAg II塩:a)塩化銀AgClなどのAgHal(ここで、Halは、ハロゲン原子、好ましくは、Clを表す);b)AgHal2(ここで、Halは、同一であるか又は異なり、好ましくは、同一であり、Halは、前に定義されるとおりである);及びc)AgxR3
z及びさらに水和物などのその溶媒和物を含むか、又はそれらから構成されるか(又はそれらからなる)抗菌性混合物であり、ここで、
-同一又は異なり得るR3は、以下のものから選択される基を表し:
・スルフェート、例えばAg2SO4;
・ニトレート、例えばAgNO3;
・ヒドロキシ、例えばAgOH;
・(C1~C6)アルキルカルボキシレート(ここで、(C1~C6)アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、1つ以上のヒドロキシル、カルボキシル又はカルボン酸基で任意選択的に置換され得る)、例えば酢酸Ag、プロピオン酸Ag、乳酸Ag及びクエン酸Ag;及び
・少なくとも1つのカルボン酸基で置換され、及び1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されるアリール基、例えば安息香酸銀又はサリチル酸銀;
-1≦z≦6、1≦x≦4である。
【0039】
優先的に、本発明の銀ベースの化合物は、銀(C1~C6)アルキルカルボキシレート、例えば乳酸Ag及びクエン酸Ag及び銀アリールカルボキシレート、例えば安息香酸銀及びサリチル酸銀、より優先的に、クエン酸銀から選択される。
【0040】
特に、CAS番号95508-00-2を有するクエン酸銀水和物が使用される。
【0041】
有利には、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び銀ベースの化合物は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/銀ベースの化合物の質量比が、0.4~4、好ましくは、0.4~3.6、好ましくは、0.7~3.6、好ましくは、1.5~3.6の範囲であるような含量で前記混合物中に存在する。このような混合物は、かび、特に、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対する良好な抗菌活性を有する。
【0042】
好ましくは、抗菌性混合物を含む組成物は、組成物の総質量に対して、0.015質量%~0.09質量%の範囲、好ましくは、0.015質量%~0.08質量%の範囲、好ましくは、0.02質量%~0.07質量%の範囲、好ましくは、0.02質量%~0.06質量%の範囲の含量で4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンを含み得る。
【0043】
本発明の別の目的は、組成物、好ましくは、化粧用、医薬又は栄養組成物であって、
-少なくとも1つの4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び有機酸又は鉱酸とのその塩、及び水和物などのその溶媒和物;並びに以下のものから選択される少なくとも1つの酸化合物:
i)エチレンジアミンジコハク酸及びその塩;
ii)ジャスモネート化合物(I)及びその塩;
【化4】
(式(I)中、Rは、2~7個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和直鎖状炭化水素系基を示し、特に、Rは、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル又はヘプチル基、好ましくは、ペンチル基であり得る);
iii)式(II)のグリシネート化合物及びその塩:
R
1R
2NCH
2COO
-X
+ (II)
-R
1及びR
2は、水素原子又はHOCH
2-若しくはHOCH
2CH
2-などのヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル基を示し;好ましくは、R
1は、水素原子を表し、R
2は、HOCH
2-基を表し;
-X
+は、好ましくは、ナトリウム、カルシウム及びアルミニウムなどの、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、好ましくは、ナトリウムなどのアルカリ金属から選択されるカチオン性対イオンを示し;
・又は以下のものから選択される少なくとも1つの銀ベースの化合物:
i)Ag
2O及びAgOなどの酸化銀I及びII、
ii)Ag/TiO
2及びAg/SiO
2などの銀粒子;
iii)下式から選択されるAg I又はAg II塩:
a)塩化銀AgClなどのAgHal(ここで、Halは、ハロゲン原子、好ましくは、Clを表す);
b)AgHal
2(ここで、Halは、同一であるか又は異なり、好ましくは、同一であり、Halは、前に定義されるとおりである);及び
c)Ag
xR
3
z及びさらに水和物などのその溶媒和物
を含み、ここで、
-同一又は異なり得るR
3は、以下のものから選択される基を表し:
・スルフェート、例えばAg
2SO
4;
・ニトレート、例えばAgNO
3;
・ヒドロキシ、例えばAgOH;
・(C
1~C
6)アルキルカルボキシレート(ここで、(C
1~C
6)アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、1つ以上のヒドロキシル、カルボキシル又はカルボン酸基で任意選択的に置換される)、例えば酢酸Ag、プロピオン酸Ag、乳酸Ag及びクエン酸Ag;
・少なくとも1つのカルボン酸基で置換され、及び1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されるアリール基、例えば安息香酸銀又はサリチル酸銀;
-x及びzは、1≦z≦6、1≦x≦4であるような整数である、組成物、好ましくは、化粧用、医薬又は栄養組成物である。
【0044】
本発明の主題はまた、生理学的に許容可能な媒体中に、上述される抗菌性混合物を含む組成物である。
【0045】
「生理学的に許容可能な媒体」という用語は、皮膚、頭皮、毛髪及び爪などのヒトケラチン物質と適合する媒体を意味する。前記媒体は、ケトン化合物及び酸化合物又は銀化合物以外の1つ以上のさらなる成分を含み得る。
【0046】
化合物4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%の範囲、好ましくは、0.01質量%~3質量%の範囲、優先的に、0.01質量%~2.5質量%の範囲、より優先的に、0.01質量%~2質量%の範囲、さらに良好には、0.015質量%~0.8質量%の範囲の含量で、或いは上述される含量で本発明に係る組成物中に存在し得る。
【0047】
この組成物は、水、油、2~10個の炭素原子を含有するポリオール、ゲル化剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、染料、香料、充填剤、紫外線遮断剤、植物抽出物、化粧用及び皮膚用活性薬剤、及び塩から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含み得る。
【0048】
本発明に係る組成物は、水性相を含み得る。
【0049】
この組成物は、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール又はジグリセロールなどの、特に2~10個の炭素原子を含有する、好ましくは、2~6個の炭素原子を含有するポリオールから選択される、室温(25℃)で水混和性のポリオールも含み得る。有利には、本発明に係る組成物は、特に、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%の範囲、好ましくは、0.1質量%~10質量%の範囲、優先的に、0.5質量%~5質量%の範囲の含量で1,3-プロパンジオールを含む。
【0050】
本発明に係る組成物は、水中油型(O/W)エマルション、油中水型(W/O)エマルション又は多重エマルション(トリプル:W/O/W又はO/W/O)、油性溶液、油性ゲル、水溶液、水性ゲル、又は固体組成物の形態であり得る。これらの組成物は、通常の方法にしたがって調製される。
【0051】
本発明に係る組成物は、程度の差はあるが流体であり得、白色若しくは有色のクリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト又はフォームの外観を有し得る。それらは、任意選択的に、エアロゾル形態で皮膚に適用され得る。それらはまた、固体形態、例えば、スティック又はコンパクトパウダーの形態であり得る。
【0052】
本発明に係る組成物は、特に以下の形態であり得る:
-特に、顔、身体の皮膚、又は唇若しくはまつげをメイクアップするためのメイクアップ製品;
-アフターシェーブジェル又はローション;シェービング製品;
-デオドラント(スティック、ロールオン又はエアロゾル);
-脱毛クリーム;
-シャワージェル又はシャンプーなどの身体衛生組成物;
-医薬組成物;
-石鹸又はクレンジングバーなどの固体組成物;
-加圧噴射剤も含むエアロゾル組成物;
-ヘアセット用ローション、ヘアスタイリング用クリーム若しくはジェル、染料組成物、パーマネントウェーブ用組成物、抜け毛を防ぐためのローション若しくはジェル、又はヘアコンディショナー;
-皮膚をケア又はクレンジングするための組成物。
【0053】
本発明の主題はまた、組成物、特に、医薬又は栄養組成物を調製するための方法であって、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、酸化合物又は銀化合物及び1つ以上のさらなる成分、特に、上述されるものなどの化粧用又は医薬又は栄養成分を混合する工程を含む方法である。
【0054】
上述される第1、第2及び第4の実施形態の抗菌性混合物は、食料品(食品)を保存するのに使用され得る。
【0055】
本発明の主題はまた、上述される第4、第5及び第6の実施形態のものから選択される抗菌性混合物を含む栄養組成物である。
【0056】
栄養組成物(食品)は、食肉、魚、甲殻類、野菜、果物、穀物、卵、バター、ミルク、酢、水、植物油、砂糖、塩、香辛料、乳化剤、アルコール、増粘剤及び蜂蜜から選択される少なくとも1つの食料品を含み得る。
【0057】
好ましくは、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、食品に添加される前に、食品グレードの溶媒に予め溶解される。使用され得る溶媒としては、任意選択的に水と組み合わせて、エタノール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
本発明に係る食品は、例えば、パン、ケーキ、ソース、キャンディ、料理、菓子類、ゼリー、デザート、ヌガー、飲料、ジュース、シロップ、ワイン、ビール、ラビオリ、ムース、コンポート、マヨネーズ、マスタード、ビネグレットソース、ポテトチップス、ソーセージ、ニョッキ、ポレンタ、パンケーキ、パテ、チーズ、小麦粉、デリカテッセンの肉又はスープの形態であり得る。
【0059】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、上述される濃度で食品組成物中に存在し得る。
【0060】
グラム陰性菌、特に、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種の細菌に対する本発明に係る抗菌性混合物の相乗活性はまた、水処理の際に興味深い。この種は、特に、水サンプルの微生物分析が行われるときに一般的に対象とされる微生物の1つである。
【0061】
真菌、特に、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)種に対する本発明に係る抗菌性混合物の相乗活性はまた、水処理の際に興味深い。具体的には、真菌は、“Fungal Contaminants in drinking water regulation? A tale of ecology,exposure,purification and clinical relevance” Int.J.Environ.Res.Public Health 2017,14,636の論文に記載されるような水の汚染源の1つを表す。
【0062】
グラム陽性菌、特に、エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)種の細菌に対する本発明に係る抗菌性混合物の相乗活性はまた、水処理の際に興味深い。具体的には、エンテロコッカス属(Enterococcus)の細菌は、“Enterococci,from commensals to leading causes of drug resistant infection” Michael S.Gilmore et al.,2014,Massachusetts Eye and Ear Infirmary,Bostonの論文に記載されるような水の汚染源の1つを表す。
【0063】
上述される第2、第3及び第4の実施形態の抗菌性混合物は、水処理に使用され得る。
【0064】
本発明はまた、水処理における、上述される第3、第4、第5及び第6の実施形態のものから選択される抗菌性混合物の使用に関し、ここで、前記水は、家庭用水又は工業用水、水性媒体からの水、スイミングプール/温泉水、及び空調システムからの水から選択される。
【0065】
「水処理」という用語は、汚染物質による水の汚染を防止するため又は前記処理される水から前記汚染物質を部分的に若しくは完全に除去するために、物質を、処理される水サンプル又は処理される水流に添加することにある、連続又は非連続(バッチ式)処理を指す。
【0066】
好ましくは、本発明に関して行われる水処理は、前記処理される水から汚染物質を部分的に若しくは完全に除去するために、物質を、処理される水のサンプル又は処理される水流に連続的に又は非連続的に添加することにある。
【0067】
汚染物質は、微生物、特に、細菌及び/又は真菌であり得る。
【0068】
さらにより優先的に、前記水処理は、1種以上の微生物、好ましくは、グラム陽性菌若しくはグラム陰性菌、又はエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)若しくは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種の真菌で汚染された水の処理である。
【0069】
「水性媒体の水」という用語は、湖、河川支流、プール、河川本流、海又は海洋浴場の水、井戸水及び地下水(groundwater)などの地下水(underground water)、並びに水槽の水を意味する。
【0070】
本発明の趣旨では、「家庭用水又は工業用水」は、浄水場で処理される前の使用済みの水、浄水場で処理を受けている水、飲料水処理施設で処理される前の水、飲料水処理施設で処理を受けている水、及びさらに飲料水又は非飲料水都市網中で循環する水、例えば配管中で循環する水を含む。
【0071】
本発明はまた、連続又は非連続水処理方法であって、処理される水サンプル又は処理される水流を、本発明に係る抗菌性混合物と接触させる少なくとも1つの工程を含み、処理される水が、家庭用水又は工業用水、水性媒体からの水、スイミングプール/温泉水、及び空調システムからの水から選択される、方法に関する。
【0072】
好ましくは、処理される水を、本発明に係る抗菌性混合物と接触させる前記工程は、特に、前記化合物の液体形態への注入によって、前記化合物を含むフィルタ若しくはろ過カートリッジへの通過によって、又は特に、顆粒、ロゼンジ又はペレットの形態の前記化合物の固体形態への投与によって行われ得る。
【0073】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、処理される水の総質量に対して、少なくとも0.06質量%、好ましくは、少なくとも0.1質量%、さらに良好には、少なくとも0.5質量%の割合で使用され得る。好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、処理される水の総質量に対して、少なくとも1質量%の割合で使用され得る。
【0074】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、処理される水の総質量に対して、0.06質量%~10質量%、好ましくは、0.06質量%~10質量%、さらに良好には、0.06質量%~5質量%の範囲の濃度で使用され得る。好ましい実施形態において、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、処理される水の総質量に対して、0.1質量%~1質量%の範囲の濃度で使用され得る。
【0075】
好ましい実施形態において、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、エタノール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、PEG-8(8つのエチレングリコール単位を含有するポリエチレングリコール)、炭酸プロピレン、ジプロピレングリコール、1,2-ヘキシレングリコール、PEG-4から選択され得る少なくとも1つの有機溶媒の有効量と組み合わせて使用される。
【0076】
好ましくは、有機溶媒は、エタノール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、PEG-8及び炭酸プロピレンから選択される。
【0077】
溶媒は、処理される水の総質量に対して、0.05質量%~10質量%の範囲、好ましくは、0.1質量%~5質量%の範囲、優先的に、処理される水の総質量に対して、0.1質量%~2.5質量%の範囲の含量で使用され得る。
【0078】
本発明は、以下に続く実施例においてより詳細に例示される。成分の量は、質量パーセンテージとして表される。
【実施例0079】
実施例1:MICとしての相乗的抗菌活性の決定
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)と酸化合物(物質Bと呼ばれる)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証は、下式にしたがって相乗効果指数(又はFIC指数)を計算することによって行われる:
[Math.1]
FIC指数=(Bと合わせたAのMIC/AのMIC)+(Aと合わせたBのMIC/BのMIC)
ここで:
-Bと合わせたAのMIC:阻害効果を得ることを可能にする組合せA+Bにおける生成物Aの最小濃度;
-Aと合わせたBのMIC:阻害効果を得ることを可能にする組合せA+Bにおける生成物Bの最小濃度;
-AのMIC:生成物A単独の最小発育阻止濃度;
-BのMIC:生成物B単独の最小発育阻止濃度。
【0080】
この式は、F.C.Kull、P.C.Eisman、H.D.Sylwestrowka、及びR.L.Mayerによる論文、Applied Microbiology 9:538-541,1961において初めて記載された。
【0081】
試験される各化合物単独では、MICは、25%以下の微生物増殖パーセンテージを得ることを可能にする最初の濃度と見なされる。
【0082】
試験される組合せに関しては、Bと合わせたAのMIC及びAと合わせたBのMICは、25%以下の微生物増殖パーセンテージを得ることを可能にする組合せにおけるA及びBのそれぞれの濃度である。
【0083】
FIC指数の解釈:
FIC指数値が、1以下である場合、試験化合物の組合せが相乗効果を有するものと見なされる。
【0084】
得られた結果の要約が、以下の表に示されている。
【0085】
化合物A及びBの組合せを、以下の菌株又はその部分:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)について試験した。
【0086】
微生物菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275、並びにポリオキシエチレン化(20 OE)ソルビタンモノパルミテート(Croda製のTween 40)及びPhytagel(著作権)BioReagentを補充した2倍濃度サブローブロス液体培養培地を使用した(すなわち、5gのPhytagel+0.6gのTween 40+60gのサブローブロスの混合物)。
【0087】
微生物菌株黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6538及び2倍濃度栄養ブロス液体培養培地を使用した。
【0088】
微生物菌株緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC 9027及び2倍濃度栄養ブロス液体培養培地を使用した。
【0089】
微生物菌株エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)ATCC 33186及び2倍濃度BHI(ブレインハートインフュージョン)ブロス液体培養培地を使用した。
【0090】
微生物菌株カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231、及び2倍濃度サブローブロス液体培養培地を使用した(すなわち、5gのPhytagel+0.6gのTween 40+60gのサブローブロスの混合物)。
【0091】
32.5℃のインキュベーション温度における96ウェルマイクロプレートを使用する。
【0092】
マイクロプレートのインキュベーション時間は、以下のとおりである:
-微生物アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275については好気条件下で24~30時間;
-カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC 9027及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6538については好気条件下で18~24時間;
-エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)ATCC 33186については好気条件下で24~48時間。
【0093】
試験
各化合物について:
A=4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン化合物
B=酸化合物
10%(質量/体積)のストック溶液を、1gの化合物を9mlの水性1‰寒天溶液中で混合することによって調製した。連続希釈を、1‰寒天溶液を用いて行った。
【0094】
化合物A及びB単独の試験
化合物A又はBを含有する得られた娘溶液のそれぞれ50μlを、マイクロプレートウェルに加える。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)菌株を2倍濃度で接種した100μlのサブロー液体栄養ブロス及び50μlの水性1‰寒天溶液もそれに加える。
【0095】
混合物としての化合物A及びBの試験
化合物Aを含有する得られた娘溶液のそれぞれ50μl及び化合物Bを含有する得られた娘溶液のそれぞれ50μlを、マイクロプレートウェルに加える。菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を2倍濃度で播種した100μlのサブロー液体栄養ブロスもそれに加える。
【0096】
微生物増殖対照
陽性微生物増殖対照も調製した。陽性微生物増殖対照は、化合物A及びBの非存在下での、100μlの水性1‰寒天溶液と、菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を2倍濃度で播種した100μlのサブロー液体栄養ブロスとの混合物に相当する。
【0097】
化合物A及びB単独についての吸光度対照
吸光度対照を、化合物A及びB単独について並行して行った。この対照は、100μlの2倍濃度滅菌サブロー液体栄養ブロス+100μlの2倍濃度化合物A又はBに相当する。
【0098】
3つの場合(吸光度対照、増殖対照及び試験)において、マイクロプレートウェルのそれぞれに存在する最終体積は、200μlである。
【0099】
2つの場合(試験及び対照)において、接種材料は、ウェルの最終体積(200μl)で存在するアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)菌株の濃度を表し、2~6×105cfu/mlのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。
【0100】
各化合物A及びB単独並びに組合せの最小発育阻止濃度(MIC)を、620nmの波長での光学密度測定によって、公知の方法で決定した。
【0101】
上述される試験(試験、吸光度対照及び増殖対照)を、必要に応じて、以下の菌株エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)について組合せA+Bを試験するために再度行った。
【0102】
化合物B1=Innospec Active Chemicals社によってNatrlquest E30の名称で販売されているエチレンジアミンジコハク酸の三ナトリウム塩(30質量%の水溶液として)について以下の結果が得られた。
【0103】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
【0104】
【0105】
【0106】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.5%のA及び0.3%のB1、すなわち、A/B1比率=1.66
ii)0.5%のA及び0.15%のB1、すなわち、A/B1比率=3.33
iii)0.5%のA及び0.075%のB1、すなわち、A/B1比率=6.66
iv)0.5%のA及び0.0375%のB1、すなわち、A/B1比率=13.33
【0107】
実施例2:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対するMICとしての相乗的抗菌活性の決定
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)と3-ヒドロキシ-2-ペンチルシクロペンタン酢酸のナトリウム塩(物質B2と呼ばれる)(45/21 w/wの水/ジプロピレングリコール混合物中34質量%の溶液として;Chimex社によってMexoryl SBOの名称で販売されている)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証を、実施例1に記載される条件にしたがって行った。
【0108】
以下の結果が得られた:
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
【0109】
【0110】
【0111】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.25%のA及び0.34%のB2、すなわち、A/B2比率=0.73
ii)0.125%のA及び0.34%のB2、すなわち、A/B2比率=0.37
【0112】
実施例3:
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)とクエン酸銀水和物(物質B3と呼ばれる)(Sigma-Aldrich製の参照番号361259-10G)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証を、実施例1に記載される条件にしたがって行った。
【0113】
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
【0114】
【0115】
【0116】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.05%のA及び0.05%のB3、すなわち、A/B3比率=1
ii)0.025%のA及び0.05%のB3、すなわち、A/B3比率=0.5
iii)0.05%のA及び0.025%のB3、すなわち、A/B3比率=2
【0117】
実施例4:
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)とヒドロキシメチルグリシンナトリウム(50質量%で水中)(物質B4と呼ばれる)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証を、実施例1に記載される条件にしたがって行った。
【0118】
エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)
【0119】
【0120】
【0121】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.25%のA及び0.005%のB3、すなわち、A/B4比率=50
ii)0.125%のA及び0.005%のB3、すなわち、A/B4比率=25
iii)0.0625%のA及び0.005%のB3、すなわち、A/B4比率=12.5