(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107931
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】免疫療法のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230727BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230727BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230727BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230727BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230727BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230727BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230727BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230727BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230727BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20230727BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230727BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230727BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230727BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K16/46
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P37/04
A61K35/17
A61K35/545
A61K35/12
A61K39/395 U
A61K48/00
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023097618
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2022041468の分割
【原出願日】2014-02-26
(31)【優先権主張番号】61/769,543
(32)【優先日】2013-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】レニアー ジェイ. ブレントジェンズ
(72)【発明者】
【氏名】ホリー ジェイ. ジャクソン
(57)【要約】
【課題】新生物を処置するための新規な治療戦略を提供する。
【解決手段】本発明は、一般的に、免疫細胞活性化活性を有する抗原結合受容体(例えば、CARまたはTCR)、および免疫抑制活性を有する抗原(例えば、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンド)に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)を発現し、それによって、抗原の免疫抑制活性を減少または除去する、免疫応答性細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞)を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、2013年2月26日に出願された米国仮出願第61/769,543号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
助成金の情報
この発明は、National Institutes of Healthから助成金番号CA95152、CA138738、CA059350およびCA08748の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
緒言
本発明は、癌および病原体に対する免疫応答を増強するための方法および組成物を提供する。本発明は、免疫調節分子の導入されたリガンドを発現するキメラ抗原受容体(CAR)であり得る抗原受容体を有する免疫応答性細胞に関する。特定の実施形態において、これら操作された免疫応答性細胞は、抗原指向性があり、免疫抑制に耐性があり、および/または増強された免疫活性化特性を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
現在、利用可能な治療法があるにもかかわらず、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含む大多数の成人B細胞悪性腫瘍は、不治である。遺伝子操作された自系T細胞を用いる養子療法は、メラノーマや無痛性のB細胞悪性腫瘍において治療的有効性の証拠を示してきた。そのような抗原に特異的な、キメラ抗原受容体(CAR)と名付けられた、人工的T細胞受容体をコードする遺伝子の導入を通じて、T細胞を、腫瘍関連抗原を標的にするように改変してもよい。免疫療法は、癌の処置を提供する可能性を有する標的治療である。
【0005】
しかしながら、悪性腫瘍細胞は、免疫抑制性の微小環境を作り、自己を免疫認識および除去から保護するように順応する。この「過酷な(hostile)」腫瘍微小環境が、標的T細胞治療などの、免疫応答の刺激に関する処置の方法を困難なものにしている。したがって、新形成を処置するための新規な治療戦略が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般的に、免疫細胞活性化活性を有する抗原結合受容体(例えば、CARまたはTCR)、および免疫抑制活性を有する抗原(例えば、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンド)に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)を発現し、それによって、抗原の免疫抑制活性を減少または除去する、免疫応答性細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞)を提供する。
【0007】
本発明はさらに、免疫細胞活性化活性を有する抗原結合受容体(例えば、CARまたはTCR)、および免疫刺激性または炎症誘発性活性を有する抗原(例えば、CD28、OX-40、4-1BB、CD40およびそのリガンド)に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)を発現し、それによって、抗原の免疫刺激活性を増強する、免疫応答性細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞)を提供する。
【0008】
本発明はさらに、免疫細胞活性化活性を有する抗原結合受容体(例えば、CARまたはTCR)、およびCD40L、例えば、外因性のCD40L(細胞自身から生じる内因性のCD40Lに対して、直接的もしくは(例えば、CD40Lをコードする核酸配列を含むネイキッド核酸のベクターを介して)間接的に細胞に導入されたCD40L)を発現し、それによって、抗原の免疫刺激活性を増強する、免疫応答性細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞)を提供する。
【0009】
したがって、本発明は、そのような免疫応答性細胞を用いる、新形成、感染症、および他の病理的状態を処置するための方法を提供する。
【0010】
ある局面において、本発明は、単離された免疫応答性細胞であって、抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む単離された免疫応答性細胞を提供する。
【0011】
別の局面において、本発明は、被験体において新形成を処置または防止する方法であって、該方法は、第一抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む有効量の免疫応答性細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体において、新形成を処置または防止する方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0012】
別の局面において、本発明は、被験体において腫瘍負荷を減少させる方法であって、該方法は、第一抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む有効量の免疫応答性細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体において腫瘍細胞死を誘導する方法を提供する。さらに別の局面において、本発明は、新形成を有する被験体の生存を延ばす方法であって、該方法は、第一抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む有効量の免疫応答性細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体の生存を延ばす方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0013】
種々の非限定的な実施形態では、本発明は、被験体において、癌細胞に応答して免疫活性化サイトカイン産生を増加させる方法であって、癌細胞の抗原に結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。特定の非限定的な実施形態では、免疫活性化サイトカインは、IL-12である。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0014】
種々の非限定的な実施形態では、本発明は、被験体において、病原体に応答して免疫活性化サイトカイン産生を増加させる方法であって、病原体の抗原に結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。特定の非限定的な実施形態では、免疫活性化サイトカインは、IL-12である。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0015】
種々の非限定的な実施形態では、本発明は、被験体において、癌細胞に対するCD8+細胞傷害性T細胞応答を増大させる方法であって、癌細胞の抗原に結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0016】
種々の非限定的な実施形態では、本発明は、被験体において、病原体に対するCD8+細胞傷害性T細胞応答を増大させる方法であって、病原体の抗原に結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0017】
種々の非限定的な実施形態では、本発明は、癌を有する被験体において、樹状細胞成熟を促進する方法であって、癌の細胞の抗原に結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0018】
種々の非限定的な実施形態では、本発明は、病原体によって引き起こされる疾患を有する被験体において、樹状細胞成熟を促進する方法であって、病原体の抗原に結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0019】
さらに別の局面において、本発明は、被験体において新形成を処置または防止する方法であって、該方法は、第一抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体を有し、外因性のCD40Lを発現する有効量の免疫応答性細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体において新形成を処置または防止する方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0020】
別の局面において、本発明は、被験体において腫瘍負荷を減少させる方法であって、該方法は、第一抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体を有し、外因性のCD40Lを発現する有効量の免疫応答性細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体において腫瘍細胞死を誘導する方法を提供する。さらに別の局面において、本発明は、新形成を有する被験体の生存を伸ばす方法であって、該方法は、第一抗原に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体を有し、外因性のCD40Lを発現する有効量の免疫応答性細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体の生存を延ばす方法を提供する。
【0021】
さらにまた別の局面においては、本発明は、血液の癌の処置を必要とする被験体において、血液の癌を処置する方法であって、該方法は、CD19に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体、ならびにCD47、PD-1、CTLA-4およびそのリガンドの1以上に結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む治療的に有効な量のT細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体において血液の癌を処置する方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0022】
さらにまた別の局面においては、本発明は、血液の癌の処置を必要とする被験体において、血液の癌を処置する方法であって、該方法は、CD19に結合し、その結合が免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体を有し、外因性のCD40Lを発現する治療的に有効な量のT細胞を被験体に投与することを含み、それによって、被験体において血液の癌を処置する方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0023】
ある局面において、本発明は、抗原特異的免疫応答性細胞を産生する方法であって、該方法は、免疫応答性細胞に、免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸配列を導入することを含み、免疫応答性細胞は、抗原に結合する抗原認識受容体を含む、方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0024】
ある局面において、本発明は、抗原特異的免疫応答性細胞を産生する方法であって、該方法は、免疫応答性細胞に、CD40Lをコードする核酸配列を導入することを含み、免疫応答性細胞は、抗原に結合する抗原認識受容体を含む、方法を提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、CD40Lをコードする核酸配列は、操作可能にプロモーターエレメントに構成的に連結しているか、または、ベクター中に任意に含まれる免疫応答性細胞中に誘発可能に発現している。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。非限定的ないくつかの実施形態では、本発明は、CARをコードする配列およびCD40Lをコードする配列を含む核酸であって、それぞれは任意に操作可能にプロモーターエレメントに構成的に連結しているか、または、免疫応答性細胞中に誘発可能に発現している核酸を提供する。前記核酸は、任意にベクター中に含まれていてもよい。ある局面において、本発明は、抗原に結合する抗原認識受容体をコードする核酸配列と、免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。
【0025】
ある局面において、本発明は、抗原に結合する抗原認識受容体をコードする核酸配列と、CD40Lをコードする核酸配列を含むベクターを提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。ある特定の非限定的な実施形態では、本発明は、抗CD19 CAR(1928z)-をコードする核酸およびCD40L-をコードする核酸を含有するレトロウイルスベクターを提供する。
【0026】
関連する局面において、本発明は、有効量の、本明細書に記載の本発明のいずれかの局面に記載の免疫応答性細胞を、薬学的に許容され得る賦形剤中に含む医薬組成物を提供する。別の関連する局面において、本発明は、新形成を処置するための医薬組成物であって、有効量の、本明細書に記載の本発明のいずれかの局面に記載の腫瘍抗原特異的T細胞を、薬学的に許容され得る賦形剤中に含む医薬組成物を提供する。
【0027】
追加的局面において、本発明は、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を処置するためのキットであって、抗原に結合し、免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体と、免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を有する免疫応答性細胞を含むキットを提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。いくつかの特定の実施形態において、キットは、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む。
【0028】
追加的局面において、本発明は、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を処置するためのキットであって、抗原に結合し、免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体を有し、外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を含むキットを提供する。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CARである。いくつかの特定の実施形態において、キットは、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む。
【0029】
追加的局面において、本発明は、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を処置するためのキットであって、処置されるべき新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片の抗原を認識するCARをコードする核酸、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸を含むキットを提供する。任意に一方または双方の核酸は、ベクターに含まれていてもよく、それらは、同じベクター(バイシストロニック)でもよいし別個のベクターでもよい。CARをコードする核酸および/またはscFvをコードする核酸は、それぞれ操作可能にプロモーターに連結していてもよく、そのプロモーターは同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの特定の実施形態において、キットは、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む。
【0030】
追加的局面において、本発明は、癌を処置するためのキットであって、癌の抗原を認識するCARをコードする核酸、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸を含むキットを提供する。任意に一方または双方の核酸は、ベクターに含まれていてもよく、それらは、同じベクター(バイシストロニック)でもよいし別個のベクターでもよい。CARをコードする核酸および/またはscFvをコードする核酸は、それぞれ操作可能にプロモーターに連結していてもよく、そのプロモーターは同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの特定の実施形態において、キットは、癌を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む。
【0031】
追加的局面において、本発明は、癌または病原体が媒介する障害を処置するためのキットであって、癌または病原体の抗原を認識するCARをコードする核酸、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸を含むキットを提供する。任意に一方または双方の核酸は、ベクターに含まれていてもよく、それらは、同じベクター(バイシストロニック)でもよいし別個のベクターでもよい。CARをコードする核酸および/またはscFvをコードする核酸は、それぞれ操作可能にプロモーターに連結していてもよく、そのプロモーターは同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの特定の実施形態において、キットは、癌または障害を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む。追加的局面において、本発明は、癌または病原体が媒介する障害の処置のためのキットであって、癌または病原体の抗原を認識するCARをコードする核酸、およびCD40Lをコードする核酸を含むキットを提供する。任意に一方または双方の核酸は、ベクターに含まれていてもよく、それらは、同じベクター(バイシストロニック)でもよいし別個のベクターでもよい。CARをコードする核酸および/またはCD40Lをコードする核酸は、それぞれ操作可能にプロモーターに連結していてもよく、そのプロモーターは同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの特定の実施形態において、キットは、癌または障害を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む。
【0032】
本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ヒト胚性幹細胞、およびそこからリンパ系細胞が分化され得る多能性幹細胞からなる群より選択される。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、免疫応答性細胞は、自系である。
【0033】
本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、抗原認識受容体は、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)である。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、抗原認識受容体は、外因性または内因性である。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、抗原認識受容体は、組み換え的に発現する。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、抗原認識受容体は、ベクターから発現される。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、抗原認識受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、CDζ鎖、CD3ζ鎖、CD97、CD11a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-IBB、CD28シグナル伝達ドメイン、その一部、またはその組み合わせである。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、CD28、4-IBB、および/またはCD3ζ鎖の少なくとも一部を、抗原結合部分とともに含むCAR(例えば、Zhongら、2010,Molecular Ther.18(2):413-420参照)である。非限定的ないくつかの実施形態では、抗原認識受容体は、Kohnら、2011,Molecular Ther.19(3):432-438)に記載のCARであり、そこでは任意に抗原結合部分は、別の腫瘍抗原または病原体抗原に結合するアミノ酸配列と置換されている。種々の実施形態において、細胞は、組み換えまたは1928zもしくは4H1128zである内因性の抗原受容体を発現する。
【0034】
本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、抗原は、腫瘍抗原または病原体抗原である。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、腫瘍抗原は、CD19、MUC16、MUC1、CAlX、CEA、CDS、CD7、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erb-B2,3,4、FBP、胎児性アセチルコリン受容体、葉酸受容体-α、GD2、GD3、HER-2、hTERT、IL-13R-a2、κ-軽鎖、KDR、LeY、L1細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、腫瘍胎児抗原(h5T4)、PSCA、PSMA、ROR1、TAG-72、VEGF-R2、またはWT-1の1以上である。いくつかの特定の実施形態において、抗原は、CD19またはMUC16である。前記抗原に特異的に結合するアミノ酸配列は、当該技術分野において公知であり、当該技術分野において公知の方法によって、調製し得る。例としては、免疫グロブリン、免疫グロブリンの可変領域(例えば、可変フラグメント(「Fv」)もしくは二価の可変フラグメント(「Fab」))、単鎖抗体などが挙げられる。
【0035】
本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、可溶性scFvは、分泌されるものである。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、scFvは、ベクターから発現される。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、免疫抑制性のポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、免疫刺激性ポリペプチドは、CD28、OX-40、4-1BB、およびそのリガンドのうちの1以上である。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、可溶性scFvは、免疫応答性細胞の免疫応答を増強する。
【0036】
本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、免疫応答性細胞は、サイトカインを分泌する。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、サイトカインは、ベクターから発現される。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、本発明の免疫応答性細胞を含有する医薬組成物は、サイトカインを含有する。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、本発明の免疫応答性細胞は、サイトカインとともに投与される。本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL7、IL12、ILl5、IL21、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、アルファ、ベータ、もしくはガンマインターフェロンおよびエリスロポイエチンのうちの1以上である。
【0037】
本明細書に記載される局面のいずれかの種々の実施形態では、方法は、被験体において腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍の大きさを減少させ、腫瘍を根絶させ、被験体において、腫瘍負荷を減少させる、および/または、被験体において、腫瘍負荷を根絶する。
【0038】
本発明が用いられ得る、新生物の例としては、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに固形腫瘍、例えば肉腫および癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭状腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、肝臓癌、ナイル腺管癌腫(nile duct carcinoma)、絨毛癌腫、セミノーマ、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌腫、小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
本明細書において記載される局面のいずれかの種々の非限定的な実施形態では、新形成は、血液の癌、B細胞白血病、多発性骨髄腫、リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、および卵巣癌のうちの1以上である。いくつかのある特定の実施形態では、血液の癌は、B細胞白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫うちの1以上である。いくつかの特定の実施形態において、新形成は、B細胞白血病であり、抗原は、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。いくつかの特定の実施形態において、新形成は、多発性骨髄腫であり、抗原は、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。いくつかの特定の実施形態において、新形成は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、抗原は、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。いくつかの特定の実施形態において、新形成は、慢性リンパ性白血病であり、抗原は、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。いくつかの特定の実施形態において、新形成は、非ホジキンリンパ腫であり、抗原は、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。いくつかの特定の実施形態において、新形成は、卵巣癌であり、抗原は、MUC16であり、かつ、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である。
【0040】
定義
別に定める場合を除き、本明細書で用いる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。以下の参照文献は、本発明に用いられる用語の多くの一般的定義を有するスキルの1つを提供するものである:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);The Glossary of Genetics,第5版、R.Riegerら(編)、Springer Verlag(1991);およびHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書中で用いる場合、別に定める場合を除き、下記の語は、以下に記した意味を有するものとする。
【0041】
「免疫応答性細胞を活性化する」とは、細胞内でのシグナル伝達またはタンパク質発現の変化の誘導により、免疫応答を開始させることを意味する。例えば、CD3鎖がリガンド結合および免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITAMs)に応答して集まると、シグナル伝達カスケードが作られる。いくつかの特定の実施形態において、内因性のTCRまたは外因性のCARが抗原に結合すると、結合された受容体(例えば、CD4またはCD8、CD3γ/δ/ε/ζ等)の近くで、多くの分子の集合を含む、免疫シナプスの形成が起こる。この膜結合シグナル伝達分子の集合によって、CD3鎖内に含有されたITAMモチーフがリン酸化する。このリン酸化は、ひいてはT細胞活性化経路を開始させ、最終的には、NF-κBおよびAP-1などの転写因子を活性化する。これら転写因子は、T細胞の全体的な遺伝子発現を惹起し、T細胞が媒介する免疫応答を開始させるために、主な制御性T細胞タンパク質の増殖および発現のためのIL-2の産生を増加させる。「免疫応答性細胞を刺激する」は、頑強かつ持続性の免疫応答を起こすシグナルを意味する。種々の実施形態において、これは、免疫細胞(例えば、T細胞)活性化後に生じるか、または、受容体で付属的に媒介される。この受容体には、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、CD40、およびICOSが挙げられるが、それらに限定されない。特定の理論にとらわれるわけではないが、複数の刺激性シグナルを受信することは、頑強かつ長期のT細胞が媒介する免疫応答を展開するのに重要である。これらの刺激性シグナルを受信しなければ、T細胞は急速に阻害され、抗原に対して応答しなくなる。これらの共刺激シグナルの効果は変化し、部分的に理解されたままである一方、完全かつ持続的な根絶のための抗原に対して頑強に応答する、長寿命であり、増殖性があり、抗アポトーシス性を有するT細胞を生成するために、それらは概して遺伝子発現を増加させるものである。
【0042】
本明細書中で用いる場合、用語「抗原認識受容体」は、抗原結合に反応して免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化することができる受容体を言う。抗原認識受容体の例としては、天然のT細胞受容体、もしくは内因性のT細胞受容体、または腫瘍抗原結合ドメインが、免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化することができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合しているキメラ抗原受容体が挙げられる。
【0043】
本明細書中で用いる場合、用語「抗体」は、インタクトな抗体分子のみならず、免疫原結合能を保持する抗体分子のフラグメントをも意味する。そのようなフラグメントも当該技術分野において公知であり、インビトロおよびインビボの両方で常時用いられている。したがって、本明細書中で用いる場合、用語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン分子のみならず、公知の活性フラグメントであるF(ab’)2およびFabをも意味する。インタクトな抗体のFeフラグメントを欠くF(ab’)2およびFabフラグメントは、循環からより速く消失し、インタクトな抗体の非特異的組織結合が少なくあり得る(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316-325(1983))。本発明の抗体は、全天然抗体、二重特異的抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’、単鎖V領域フラグメント(scFv)、融合ポリペプチド、および非従来型の抗体を含む。
【0044】
本明細書中で用いる場合、用語「単鎖可変フラグメント」すなわち「scFv」は、VH::VLヘテロダイマーを形成するよう共有結合している免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接的に結合しているか、または、VHのN-末端とVLのC末端、もしくはVHのC末端とVLのN-末端を結合する、ペプチドをコードするリンカーによって結合している(例えば、10、15、20、25アミノ酸)。リンカーは、通常、柔軟性のためのグリシン、ならびに、可溶性のためのセリンもしくはスレオニンに富んでいる。定常領域を除去し、かつリンカーを導入しているにもかかわらず、scFvタンパク質は、オリジナルの免疫グロブリンの特異性を維持する。Hustonら(Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85:5879-5883、1988)により記載されているように、単鎖Fvポリペプチド抗体は、VHコード配列およびVLコード配列を含む核酸から発現され得る。米国特許第5,091,513号、第5,132,405号、および第4,956,778号;ならびに米国特許公開第20050196754号および20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニストscFvが記載されている(例えば、Zhaoら、Hyrbidoma(Larchmt)2008、27(6):455-51;Peterら、J.Cachexia Sarcopenia Muscle、2012 August 12;Shiehら、J.Imunol2009、183(4):2277-85;Giomarelliら、Thromb Haemost、2007、97(6):955-63;Fife eta.、J.Clin Invst、2006、116(8):2252-61;Brocksら、Immunotechnology、1997、3(3):173-84;Moosmayerら、Ther Immunol、1995、2(10:31-40)参照)。刺激性活性を有するアゴニストscFvが記載されている(例えば、Peterら、J.Bioi Chern、2003、25278(38):36740-7;Xieら、Nat Biotech、1997、15(8):768-71;Ledbetterら、Crit Rev Immunol、1997、17(5-6):427-55;Hoら、BioChim Biophys Acta、2003、1638(3):257-66参照)。
【0045】
「親和性」は、結合力の尺度を意味する。理論にとらわれるわけではないが、親和性は、抗体結合部位と抗原決定因子との間の立体化学密着の密接性に、それらの接触面積の大きさに、および帯電した基と疎水基の分布に依存する。親和性はまた、用語「アビディティー(avidity)」を含む。それは、可逆的複合体形成後の抗原-抗体間の結合力を言う。抗原に対する抗体の親和性の計算方法は、当該技術分野において公知であり、それには、結合実験を使用して親和性を計算することを含む。機能的アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)の抗体活性もまた、抗体の親和性を反映している。抗体と親和性は、表現型的に特徴づけることができ、機能的アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)を用いて比較することができる。
【0046】
本明細書中で用いる場合、用語「キメラ抗原受容体」すなわち「CAR」は、免疫細胞を活性化または刺激することができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合される抗原結合ドメインを示す。最も一般的には、CARの細胞外の結合ドメインが、ネズミモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体の可変重鎖および軽鎖領域の融合に由来する単鎖可変フラグメント(scFv)から構成される。あるいは、scFvとして、Fabに由来するものを用いることもできる(抗体から取得するかわりに、例えば、Fabライブラリーから取得する)。種々の実施形態において、このscFvは、膜貫通ドメインに融合し、その後細胞内シグナル伝達ドメインに融合する。「第1世代」のCARには、抗原が結合するとCD3ζシグナルを単独で提供するものがある。「第2世代」のCARには、共刺激(例えば、CD28またはCD137)および活性化(CD3ζ)の両方を提供するものがある。「第3世代」のCARには、複数回の共刺激(例えば、CD28およびCD137)および活性化(CD3ζ)を提供するものがある。種々の実施形態において、CARは、抗原に対して、高い親和性またはアビディティーを有するように選択される。
【0047】
用語「免疫抑制活性」は、細胞(例えば、活性化された免疫応答性細胞)での、シグナル伝達またはタンパク質発現の変化の誘導による、免疫応答の減少を意味する。それらの結合を介して免疫応答を抑制する、または減少させることが知られているポリペプチドとしては、CD47、PD-1、CTLA-4、ならびにSIRPa、PD-L1、PD-L2、B7-1、およびB7-2といった、それらの対応するリガンドがある。そのようなポリペプチドは、腫瘍微小環境に存在し、新生物性細胞に対する免疫応答を阻害する。種々の実施形態において、免疫抑制性のポリペプチドおよび/またはそれらのリガンドの相互作用の、阻害、遮断、または拮抗によって、免疫応答性細胞の免疫応答が高められる。
【0048】
用語「免疫刺激活性」は、細胞(例えば、活性化された免疫応答性細胞)での、シグナル伝達またはタンパク質発現の変化の誘導による、免疫応答の増加を意味する。免疫刺激活性は、炎症誘発活性を含んでもよい。それらの結合を介して免疫応答を刺激する、または増加させることが知られているポリペプチドとしては、CD28、OX-40、4-1BB、ならびに、B7-1、B7-2、OX-40L、および4-1BBLといった、それらの対応するリガンドがある。そのようなポリペプチドは、腫瘍微小環境に存在し、新生物性細胞に対する免疫応答を活性化する。種々の実施形態において、炎症誘発性のポリペプチドおよび/またはそれらのリガンドの、促進、刺激、または作動によって、免疫応答性細胞の免疫応答が高められる。
【0049】
「CD3ζポリペプチド」は、活性化および刺激性の活性を有するNCBI参照番号:NP_932170と、少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質またはそのフラグメントを意味する。CD3ζの例として下記[配列番号:1]が挙げられる。
【0050】
【化1】
「CD3ζ核酸分子」は、CD3ζポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0051】
「CD28ポリペプチド」は、刺激性の活性を有する、NCBI参照番号:NP_006130と、少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質またはそのフラグメントを意味する。CD28の例としては、下記[配列番号:2]がある。
【0052】
【化2】
「CD28核酸分子」は、CD28ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0053】
「CD40Lポリペプチド」は、NCBI参照配列:NP_000065,GenBank参照番号GenBank:AAH74950.1と、少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質、またはそのフラグメントを意味する。該タンパク質は、CD40リガンド、または単離された健康なドナー末梢血単核球(PBMC)から、下記プライマーを用いてPCR増幅された核酸によりコードされたタンパク質である。
プライマー(1)5’-CACGTGCATGATCGAAACATACAACCAAACTTCTCCCCGATCTGC-‘3[配列番号:3]、および
プライマー(2)5’-CTCGAGGGATCCTCAGAGTTTGAGTAAGCCAAAGGA-3’[配列番号:4](
図22A)。
【0054】
「CD40L核酸分子」は、CD40Lポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0055】
「4-1BBポリペプチド」は、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドとして作用する、NCBI参照番号:P41273もしくはNP_001552と少なくとも85、90、95、96、97、98、2599または100%の同一性を有するタンパク質、またはそのフラグメントを意味する。4-1BBの例としては、下記がある[配列番号:5]。
【0056】
【化3】
「4-1BBL核酸分子」は、4-1BBLポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0057】
「OX40Lポリペプチド」は、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドである、NCBI参照番号:BAB18304もしくはNP_003317と少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質、またはそのフラグメントを意味する[配列番号:6]。
【0058】
【化4】
「OX40L核酸分子」は、OX40Lポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0059】
「1928z」は、下記の配列と少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質を意味する。それは、アミノ酸1~18にCDSリーダー配列を含み、かつ、CD19と結合することができる[配列番号:7]。
【0060】
【化5】
CDSリーダー配列を含む、1928zポリペプチドをコードする核酸配列の例としては、下記[配列番号:8]がある。
【0061】
【化6】
「4H1128z」は、下記の配列と少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質を意味する。それは、アミノ酸1~18にCDSリーダー配列を含み、かつ、MUCと結合することができる[配列番号:9]。
【0062】
【化7】
カッパリーダー配列を含む、4Hll28zポリペプチドをコードする核酸配列の例としては、下記[配列番号:10]がある。
【0063】
【化8】
「B6Hl2.2 scFv」は、下記の配列と少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質を意味する。それは、CD47と結合することができる[配列番号:11]。
【0064】
【化9】
「5C4 scFv」は、下記の配列と少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質を意味する。それは、ヒトPD-1と結合することができる[配列番号:12]。
【0065】
【化10】
「J43 scFv」は、下記の配列と少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質を意味する。それは、アミノ酸1~21にカッパリーダー配列を含み、かつ、ヒトPD-1と結合することができる[配列番号:13]。
【0066】
【化11】
カッパリーダー配列を含む、J43 scFvポリペプチドをコードする核酸配列の例としては、下記[配列番号:14]がある。
【0067】
【化12】
本発明の方法において有用な核酸分子には、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするあらゆる核酸分子が含まれる。そのような核酸分子は、内因性の核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には、実質的な同一性を示すであろう。内因性配列に対して「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも一方の鎖とハイブリダイゼーションすることができる。「ハイブリダイゼーションする」とは、二本鎖分子を、様々なストリンジェントな条件のもとで、相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書中に記載される遺伝子)またはその一部分の間で対形成させることを意味する(例えば、Wahl,G.M.およびS.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507参照)。
【0068】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は通常、約750mMのNaClおよび75mMのクエン酸三ナトリウムよりも低く、好ましくは、約500mMのNaClおよび50mMのクエン酸三ナトリウムよりも低く、より好ましくは、約250mMのNaClおよび25mMのクエン酸三ナトリウムよりも低い。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを有機溶媒、例えば、ホルムアミドの非存在下で得ることができ、一方で、高ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミドの存在下で得ることができ、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は通常、少なくとも約30℃の温度を含み、より好ましくは少なくとも約37℃の温度を含み、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含む。様々なさらなるパラメーター、例えば、ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、および、キャリアDNAを含むこと、または、キャリアDNAを除くことなどが、当業者には周知である。様々なレベルのストリンジェンシーが、これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることによって達成される。1つの好ましい実施形態において、ハイブリダイゼーションが、30℃で、750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウムおよび1%のSDSにおいて行われる。1つのより好ましい実施形態において、ハイブリダイゼーションが、37℃で、500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS、35%のホルムアミドおよび100μg/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)において行われる。1つの最も好ましい実施形態において、ハイブリダイゼーションが、42℃で、250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS、50%のホルムアミドおよび200μg/mlのssDNAにおいて行われる。これらの条件に対する有用な変更を、当業者は容易に見出せるだろう。
【0069】
ほとんどの適用について、ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程もまた、ストリンジェンシーが異なるであろう。洗浄のストリンジェントな条件を塩濃度によって、また、温度によって定義することができる。上記のように、洗浄のストリンジェンシーを、塩濃度を低下させることによって、または、温度を上げることによって増大させることができる。例えば、洗浄工程のためのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30mMのNaClおよび3mMのクエン酸三ナトリウムよりも低く、最も好ましくは、約15mMのNaClおよび1.5mMのクエン酸三ナトリウムよりも低い。洗浄工程のためのストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約25℃の温度を含み、より好ましくは少なくとも約42℃の温度を含み、一層より好ましくは少なくとも約68℃の温度を含む。1つの好ましい実施形態において、洗浄工程は、25℃で、30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウムおよび0.1%のSDSにおいて行われる。1つのより好ましい実施形態において、洗浄工程は、42℃で、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウムおよび0.1%のSDSにおいて行われる。1つのより好ましい実施形態において、洗浄工程は、68℃で、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウムおよび0.1%のSDSにおいて行われる。これらの条件に対するさらなる様々なバリエーションを、当業者は容易に見出せるだろう。ハイブリダイゼーション技術が当業者には公知であり、例えば、BentonおよびDavis(Science、196:180,1977);GrunsteinおよびRogness(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72:3961,1975);Ausubelら(Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New York、2001);BergerおよびKimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,New York);ならびにSambrookら,(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)に記載されている。
【0070】
「実質的に同一」とは、ポリペプチドまたは核酸分子が、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書中に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つ)または参照核酸配列(例えば、本明細書中に記載される核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すことを意味する。好ましくは、そのような配列は、比較のために使用される配列に対して、アミノ酸レベルまたは核酸において、少なくとも60%が同一であり、より好ましくは80%または85%が同一であり、より好ましくは、90%、95%または99%までもが同一である。
【0071】
配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis.53705のSequence Analysis Software Package、BLASTプログラム、BESTFITプログラム、GAPプログラムまたはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。そのようなソフトウェアは、相同性の度合いを、様々な置換、欠失および/または他の改変に対して割り当てることによって同一配列または類似配列を一致させる。保存的置換には、典型的には、下記の群の中での置換が含まれる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を求めるための1つの例示的なアプローチにおいて、BLASTプログラムを使用することができ、e-3~e-100の間における確率スコアにより、近い関係にある配列が示される。
【0072】
「アナログ」とは、参照ポリペプチドまたは参照核酸分子の機能を有する構造的に関連するポリペプチドまたは核酸分子を意味する。
【0073】
本明細書中で用いる場合、用語「リガンド」は、受容体に結合する分子を示す。具体的には、リガンドは別の細胞における受容体と結合し、これにより、細胞-細胞の認識および/または相互作用を可能にする。
【0074】
本明細書中で用いる場合、用語「構成的発現」は、すべての生理学的条件のもとでの発現を示す。
【0075】
「疾患」とは、細胞、組織または器官の正常な機能を損なうか、または、妨害する任意の状態または障害を意味する。疾患の例には、新形成、または、細胞の病原体感染が含まれる。
【0076】
「有効量」とは、治療効果を有するために十分な量を意味する。ある実施形態では、「有効量」とは、新形成の継続した増殖、成長または転移(例えば、浸潤または移動)を阻止し、寛解させ、または阻害するために十分な量を意味する。
【0077】
「内因性」とは、細胞または組織内で正常に発現される核酸分子またはポリペプチドを意味する。
【0078】
「実施忍容性(enforcing tolerance)」は、移植器官または組織を標的とする自己反応性細胞または免疫応答性細胞の活性を防止することを意味する。
【0079】
「外因性」とは、細胞に内因的に存在しない核酸分子またはポリペプチド、あるいは、過剰発現したときに得られる機能的影響をもたらすために十分なレベルでは存在しない核酸分子またはポリペプチドを意味する。従って、用語「外因性」は、細胞において発現される任意の組換え核酸分子または組換えポリペプチド、例えば、外来、異種、ならびに、過剰発現された核酸分子およびポリペプチドを包含する。
【0080】
「異種核酸分子またはポリペプチド」は、細胞または細胞から得たサンプル中に正常に存在しない核酸分子(例えば、cDNA、DNA、もしくはRNA分子)またはポリペプチドを意味する。この核酸は、別の生物由来でもよく、または、例えば、細胞またはサンプル中で正常に発現しないmRNA分子であってもよい。
【0081】
「免疫応答性細胞」は、免疫応答において機能する細胞、またはその祖先もしくは子孫を意味する。
【0082】
「増加する」は、少なくとも5%正に変化することを意味する。変化は、5%、10%、25%、30%、50%、75%、または100%であってもよい。
【0083】
「単離された細胞」は、自然界においてその細胞に付随する分子構成成分および/または細胞構成成分から分離される細胞を意味する。
【0084】
用語「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」は、ある材料について、その天然の状態において認められるようなその材料に通常伴う構成成分を様々な度合いで含まない材料を言う。「単離する」は、オリジナルの供給源または周囲環境からの分離度合いを意味する。「精製する」は、単離より高い分離度合いを意味する。「精製された」、または「生物学的に純粋な」タンパク質は、他の材料を十分には含まないため、不純物は、タンパク質の生物学的性質に著しく影響を及ぼすことはなく、または他の有害な結果を引き起こさない。すなわち、細胞性材料、ウイルス性材料、あるいは、組み換えDNA技術による産生の場合の培養培地、または化学的合成の場合の化学的前駆体もしくは他の化学材料を実質的に含まない場合、本発明の核酸もしくはペプチドは精製されているとする。精製および均質性は、典型的には、分析的化学技術、例えば、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィーを用いて決定される。用語「精製された」は、核酸またはタンパク質が本質的に電気泳動ゲルの1つのバンドに生じることを示すことができる。改変、例えば、リン酸化もしくはグリコシル化が行われ得るタンパク質については、改変が異なれば、単離されるタンパク質が異なり得る。それらは、別個に精製することができる。
【0085】
本明細書中で用いる場合、用語「腫瘍抗原結合ドメイン」は、腫瘍上に存在する特定の抗原決定基または1組の抗原決定基と特異的に結合することができるドメインを示す。
【0086】
「薬剤を得る」におけるような用語「得る」は、薬剤(あるいは示された物質または材料)を購入すること、合成すること、または、そうでない場合には獲得することを含むことを意図する。
【0087】
本明細書において用いられる「リンカー」は、2以上のポリペプチドまたは核酸を互いに結合するように共有結合する官能基(例えば、化学物質もしくはポリペプチド)を意味する。本明細書において用いられる「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質をカップリングさせる(例えば、VHドメインとVLドメインをカップリングさせる)のに使用される、1以上のアミノ酸を意味する。本発明において使用されるリンカー配列の例としては、GGGGSGGGGSGGGGS[配列番号51]がある。
【0088】
「調節する」とは、正または負に変えることを意味している。例示的な調節には、1%、2%、5%、10%、25%、50%、75%または100%の変化が含まれる。
【0089】
「新形成」とは、細胞または組織の病理学的増殖、および、他の組織または器官へのその後続の移動または浸潤によって特徴づけられる疾患を意図している。新形成の成長は典型的には制御されず、進行性であり、また、正常な細胞の分裂増殖を誘発しない条件、または、正常な細胞の分裂増殖の停止を引き起こす条件のもとで生じる。新形成は、様々な細胞タイプ、組織または器官、例えば膀胱、骨、脳、乳房、軟骨、神経膠、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿生殖路、尿管、尿道、子宮および膣からなる群より選択される器官、あるいは、その組織または細胞タイプ(これらに限定されない)を冒し得る。新形成は、肉腫、癌腫または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などの癌を含む。
【0090】
「病原体」とは、疾患を引き起こし得るウイルス、細菌、真菌、寄生虫または原生動物を意味する。
【0091】
ウイルスの例としては、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、HIV-1(これはまた、HDTV-III、LAVEまたはHTLV-III/LAV、あるいは、HIV-IIIとしても示される)、および、HIV-LPのような他の単離体のような、ヒト免疫不全ウイルス);ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビリダエ(Flaviridae)(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);コロナウイルス科(Coronoviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガビリダエ(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブンガ(bunga)ウイルス、フレボウイルスおよびナイロ(Naira)ウイルス);アレナウイルス科(Arena viridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvovirida)(パルボウイルス);パポーバウイルス科(Papovaviridae)(乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(1型および2型の単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(Poxviridae)(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカブタコレラウイルス);ならびに未分類ウイルス(例えば、デルタ型肝炎の媒介因子(これは、B型肝炎ウイルスの欠損サテライトであると考えられる)、非A非B肝炎の媒介因子(クラス1=体内感染型;クラス2=非経口感染型(すなわち、C型肝炎)、ノーウォークウイルスおよび関連ウイルス、ならびに、アストロウイルス)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0092】
細菌の例としては、パスツレラ属(Pasteurella)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、連鎖球菌属(Streptococcus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)菌種およびサルモネラ属(Salmonella)の菌種が含まれる。感染性細菌の具体的な例としては、限定されないが、Helicobacter pyloris、Borelia burgdorferi、Legionella pneumophilia、マイコバクテリウム属(Mycobacteria sps)の菌種(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii、M.gordonae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、連鎖球菌属(ビリダンス群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、連鎖球菌属(嫌気性菌種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター属(Campylobacter sp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus sp.)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)、Erysipelothrix rhusiopathiae、ウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、Enterobacter aerogenes、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、Pasturella multocida、バクテロイデス属(Bacteroides sp.)、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、Treponema pertenue、レプトスピラ属(Leptospira)、リケッチア属(Rickettsia)、およびイスラエル放線菌(Actinomyces israelli)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0093】
「受容体」とは、1以上のリガンドと選択的に結合する細胞膜上に存在するポリペプチドまたはその一部を意味する。
【0094】
「減少する」は、少なくとも5%負に変化することを意味する。変化は、5%、10%、25%、30%、50%、75%、または100%であってもよい。
【0095】
「認識する」とは、標的と選択的に結合することを意味する。ウイルスを認識するT細胞は典型的には、そのウイルスによって発現される抗原に結合する受容体を発現する。
【0096】
「参照」または「対照」は、比較の基準を意味する。例えば、CARおよびscFvを発現する細胞によるscFv-抗原結合のレベルは、対応するCARのみを発現する細胞におけるscFv-抗原結合のレベルと比較され得る。
【0097】
「分泌される」とは、ポリペプチドが、小胞体、ゴルジ装置を通って、また一時的に細胞原形質膜に融合する小胞として、分泌経路を介して細胞から放出され、細胞外へタンパク質を放出することを意味する。
【0098】
「シグナル配列」または「リーダー配列」は、分泌経路への進入を指示する新たに合成されるタンパク質のN-末端に存在するペプチド配列(5、10、15、20、25、30アミノ酸長)を意味する。リーダー配列の例としては、カッパリーダー配列:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD [配列番号:15](ヒト)、
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD [配列番号:16](マウス)、およびCDSリーダー配列:MALPVTALLLPLALLLHAARP [配列番号:17]が含まれる。
【0099】
「可溶性」は、水性環境で自由に拡散し得るポリペプチドを意味する(例えば、非膜結合)。
【0100】
「特異的に結合する」とは、本発明のポリペプチドを自然に含むサンプル、例えば、生物学的サンプルにおいて、目的とする生物分子(例えば、ポリペプチド)を認識し、かつ、これに結合するが、他の分子を実質的に認識し、かつ、これと結合することはないポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0101】
本明細書中で用いる場合、用語「腫瘍抗原」は、正常細胞もしくは非IS新生物性細胞と比較して、独自に、または差次的に、腫瘍細胞上で発現する抗原(例えば、ポリペプチド)を言う。本発明によれば、腫瘍抗原は、抗原認識受容体(例えば、CD19、MUCI)を介して免疫応答を活性化または誘導することができる、または受容体-リガンド結合(例えば、CD47、PD-Ll/L2、B7.1/2)を介して免疫応答を抑制することができる腫瘍によって発現される、あらゆるポリペプチドを含む。
【0102】
「ウイルス抗原」とは、免疫応答を誘導することができるウイルスによって発現されるポリペプチドを意味する。
【0103】
用語「含む」(「comprise」)「含んでいる」(「comprising」)は、米国特許法においてそれらに認められる幅広い意味を有することが意図され、「含む」(「include」、「含んでいる」(「including」)などを意味することができる。
【0104】
本明細書中で用いる場合、「処置」は、処置されている個体または細胞の疾患経過を変化させようとすることにおける臨床的介入をいい、予防のために、または、臨床病理学の経過中において、そのどちらかで行うことができる。処置の治療効果は、疾患の発生または再発を防止すること、兆候の緩和、疾患の何らかの直接的または間接的な病理学的結果の軽減、転移を防止すること、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態の寛解または一時的緩和、および、一時的な軽減または改善された予後が含まれるが、それらに限定されない。疾患または障害の進行を防止することによって、処置は、罹患している被験体または診断された被験体、あるいは、障害を有することが疑われる被験体において障害に起因する悪化を防止することができるが、処置により、障害のリスクがあるまたは障害を有することが疑われる被験体における障害の発症または傷害の兆候の発症が防止されることもあり得る。
【0105】
本明細書中で用いる場合、用語「被験体」は脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを示す。
【0106】
本明細書中で用いる場合、用語「免疫無防備状態」は、免疫不全を有する被験体を示す。そのような被験体は、日和見感染症、すなわち、免疫系が健全である人では通常、疾患を引き起こさないが、免疫系が良好に機能しないか、または、免疫系が抑制された人々を冒し得る生物によって引き起こされる感染症に非常に罹りやすい。
【0107】
本発明の他の局面が下記の開示において記載され、これらは本発明の範囲内である。
【0108】
下記の詳細な説明は、本発明を記載された具体的な実施形態に限定するために意図されるのではなく、例として示されるものであり、添付されている図面と併せて理解することができる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
単離された免疫応答性細胞であって、以下:
1)抗原と結合する抗原認識受容体であって、上記結合は、上記免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体;および
2)免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)、
を含む、単離された免疫応答性細胞。
(項目2)
上記抗原が、腫瘍抗原または病原体抗原である、項目1に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目3)
上記可溶性scFvが分泌されるものである、項目1に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目4)
上記抗原認識受容体が、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)である、項目1~3のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目5)
上記抗原認識受容体が、外因性または内因性である、項目1~4のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目6)
上記抗原認識受容体が、組み換え的に発現される、項目1~5のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目7)
上記抗原認識受容体が、ベクターから発現される、項目1~6のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目8)
上記scFvが、ベクターから発現される、項目1~7のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目9)
上記細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ヒト胚性幹細胞、および多能性幹細胞であって、上記多能性幹細胞からリンパ系細胞が分化され得る、多能性幹細胞からなる群より選択される、項目1~8のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目10)
上記免疫応答性細胞が、自系のものである、項目1~9のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目11)
上記抗原が、CD19、MUC16、MUCl、CAlX、CEA、CDS、CD7、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erb-B2,3,4、FBP、胎児性アセチルコリン受容体、葉酸受容体-a、GD2、GD3、HER-2、hTERT、IL-13R-a2、K-軽鎖、KDR、LeY、L1細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、腫瘍胎児抗原(h5T4)、PSCA、PSMA、ROR1、TAG-72、VEGF-R2、またはWT-1からなる群より選択される腫瘍抗原である、項目1~10のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目12)
上記免疫抑制性ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドからなる群より選択される、項目1~11のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目13)
上記免疫刺激性ポリペプチドが、CD28、OX-40、4-1BB、およびそのリガンドからなる群より選択される、項目1~11のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目14)
上記抗原が、CD19またはMUC16である、項目1~13のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目15)
上記抗原認識受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζ鎖、CD97、CD11a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、CD28シグナル伝達ドメイン、またはその組み合わせである、項目1~14のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目16)
上記細胞が、1928zまたは4H1128zである組み換えまたは内因性の抗原受容体を発現する、項目1~15のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目17)
上記可溶性scFvが、上記免疫応答性細胞の免疫応答を増強する、項目1~16のいずれか1項に記載の単離された免疫応答性細胞。
(項目18)
被験体において腫瘍負荷を減少させる方法であって、上記方法は、第一抗原に結合する抗原認識受容体であって、上記結合は、免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む有効量の免疫応答性細胞を投与することを含み、それによって上記被験体において腫瘍細胞死を誘導する、方法。
(項目19)
上記方法が、腫瘍細胞の数を減少させる、項目18に記載の方法。
(項目20)
上記方法が、腫瘍サイズを小さくする、項目18に記載の方法。
(項目21)
上記方法が、上記被験体において腫瘍を根絶させる、項目18に記載の方法。
(項目22)
新形成を有する被験体の生存を増大させる方法であって、上記方法は、第一抗原に結合する抗原認識受容体であって、上記結合が免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む有効量の免疫応答性細胞を投与することを含み、それによって上記被験体において新形成を処置または防止する、方法。
(項目23)
上記新形成が、血液の癌、B細胞白血病、多発性骨髄腫、リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、および卵巣癌からなる群より選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
上記新形成が、B細胞白血病であり、上記抗原が、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有する上記ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記新形成が、多発性骨髄腫であり、上記抗原が、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有する上記ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である、項目23に記載の方法。
(項目26)
上記新形成が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、上記抗原が、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有する上記ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である、項目23に記載の方法。
(項目27)
上記新形成が、慢性リンパ性白血病であり、上記抗原が、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有する上記ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である、項目23に記載の方法。
(項目28)
上記新形成が、非ホジキンリンパ腫であり、上記抗原が、CD19であり、かつ、免疫抑制活性を有する上記ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である、項目23に記載の方法。
(項目29)
上記新形成が、卵巣のものであり、上記抗原が、MUC16であり、かつ、免疫抑制活性を有する上記ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドのうちの1以上である、項目23に記載の方法。
(項目30)
上記可溶性scFvが分泌されるものである、項目22~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
上記scFvが、ベクターから発現される、項目22~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
上記可溶性scFvが、上記免疫応答性細胞の免疫応答を増強する、項目22~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
上記抗原認識受容体が、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)である、項目22~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
上記抗原認識受容体が、外因性または内因性である、項目22~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
上記抗原認識受容体が、組み換え的に発現される、項目22~34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
上記抗原認識受容体が、ベクターから発現される、項目22~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
上記細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ヒト胚性幹細胞、および多能性幹細胞であって、上記多能性幹細胞からリンパ系細胞が分化され得る、多能性幹細胞からなる群より選択される、項目22~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
上記方法が、上記被験体において腫瘍負荷を減少させる、または根絶させる、項目22~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
抗原特異的免疫応答性細胞を産生するための方法であって、上記方法は、免疫応答性細胞に、免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸配列を導入することを含み、上記免疫応答性細胞が、抗原に結合する抗原認識受容体を含む、方法。
(項目40)
上記可溶性scFvが分泌されるものである、項目39に記載の方法。
(項目41)
上記scFvが、ベクターから発現される、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
上記可溶性scFvが、上記免疫応答性細胞の免疫応答を増強する、項目39~41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
上記免疫抑制性ポリペプチドが、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンドからなる群より選択される、項目39~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
上記免疫刺激性ポリペプチドが、CD28、OX-40、4-1BB、およびそのリガンドからなる群より選択される、項目39~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
上記抗原認識受容体が、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)である、項目39~44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
上記抗原認識受容体が、外因性または内因性である、項目39~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
上記抗原認識受容体が、組み換え的に発現される、項目39~46のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
上記抗原認識受容体が、ベクターから発現される、項目39~47のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
上記細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ヒト胚性幹細胞、および多能性幹細胞であって、上記多能性幹細胞からリンパ系細胞が分化され得る、多能性幹細胞からなる群より選択される、項目39~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
上記抗原認識受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζ鎖、CD97、CD11a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、CD28シグナル伝達ドメイン、またはその組み合わせである、項目39~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
血液の癌の処置を必要とする被験体において、血液の癌を処置する方法であって、上記方法は、CD19に結合する抗原認識受容体であって、上記結合は免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体、ならびにCD47、PD-1、CTLA-4およびそのリガンドの1以上に結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む治療的に有効な量のT細胞を上記被験体に投与することを含み、それによって上記被験体において血液の癌を処置する、方法。
(項目52)
上記血液の癌が、B細胞白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、項目51に記載の方法。
(項目53)
抗原に結合する抗原認識受容体をコードする核酸配列と、免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸配列とを含む、ベクター。
(項目54)
有効量の、項目1~18のいずれか1項に記載の免疫応答性細胞を、薬学的に許容され得る賦形剤中に含む医薬組成物。
(項目55)
新形成を処置するための医薬組成物であって、有効量の、項目1~18のいずれか1項に記載の腫瘍抗原特異的T細胞を、薬学的に許容され得る賦形剤中に含む、医薬組成物。
(項目56)
新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を処置するためのキットであって、上記キットは、抗原に結合し、免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体と、免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)を含む免疫応答性細胞を含む、キット。
(項目57)
上記キットが、新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を有する被験体を処置するために上記細胞を使用するための説明書をさらに含む、項目56に記載のキット。
(項目58)
免疫細胞活性化活性を有する抗原結合受容体および外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞。
(項目59)
上記抗原結合受容体が、キメラ抗原受容体である、項目58に記載の免疫応答性細胞。
(項目60)
上記キメラ抗原受容体が、腫瘍抗原を認識する、項目59に記載の免疫応答性細胞。
(項目61)
上記免疫応答性細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性T細胞、および制御性T細胞からなる群より選択される、項目58~60のいずれかに記載の免疫応答性細胞。
(項目62)
被験体において癌細胞または病原体に応答して免疫活性化サイトカイン産生を増加させる方法であって、上記癌細胞または上記病原体の抗原にそれぞれ結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を上記被験体に投与することを含む、方法。
(項目63)
上記抗原結合受容体が、キメラ抗原受容体である、項目62に記載の方法。
(項目64)
上記キメラ抗原受容体が、癌抗原を認識する、項目63に記載の方法。
(項目65)
上記免疫応答性細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性T細胞、および制御性T細胞からなる群より選択される、項目62~64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
上記サイトカインが、IL-12である、項目62~65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
被験体において癌細胞または病原体に対するCD8+細胞傷害性T細胞応答を増大させる方法であって、上記癌細胞または上記病原体の抗原にそれぞれ結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を上記被験体に投与することを含む、方法。
(項目68)
上記抗原結合受容体が、キメラ抗原受容体である、項目67に記載の方法。
(項目69)
上記キメラ抗原受容体が、癌抗原を認識する、項目68に記載の方法。
(項目70)
上記免疫応答性細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性T細胞、および制御性T細胞からなる群より選択される、項目67~69のいずれかに記載の方法。
(項目71)
癌を有するかまたは病原体によって引き起こされる疾患を有する被験体において樹状細胞成熟を増大させる方法であって、上記癌細胞または上記病原体の抗原にそれぞれ結合する抗原認識受容体を有し、さらに外因性のCD40Lを発現する免疫応答性細胞を上記被献体に投与することを含む、方法。
(項目72)
上記抗原結合受容体が、キメラ抗原受容体である、項目71に記載の方法。
(項目73)
上記キメラ抗原受容体が、癌抗原を認識する、項目72に記載の方法。
(項目74)
上記免疫応答性細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性T細胞、および制御性T細胞からなる群より選択される、項目71~73のいずれかに記載の方法。
(項目75)
被験体において腫瘍負荷を減少させる方法であって、第一抗原に結合する抗原認識受容体であって、上記結合は免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体を有し、そして外因性のCD40Lを発現する有効量の免疫応答性細胞を上記被験体に投与することを含み、それによって上記被験体において腫瘍細胞死を誘導する、方法。
(項目76)
新形成を有する被験体の生存を延ばす方法であって、上記方法は、第一抗原に結合する抗原認識受容体であって、上記結合は免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体を有し、そして外因性のCD40Lを発現する有効量の免疫応答性細胞を上記被験体に投与することを含み、それによって上記被験体の生存を延ばす、方法。
(項目77)
被験体において新形成を処置または防止する方法であって、上記方法は、第一抗原に結合する抗原認識受容体であって、上記結合は免疫応答性細胞を活性化する、抗原認識受容体を有し、そして外因性のCD40Lを発現する有効量の免疫応答性細胞を上記被験体に投与することを含み、それによって上記被験体において新形成を処置または防止する、方法。
(項目78)
CARをコードする配列およびCD40Lをコードする配列を含む核酸であって、それぞれ任意に操作可能にプロモーターエレメントに連結している、核酸。
(項目79)
ベクターに含まれる、項目78に記載の核酸。
(項目80)
上記ベクターがウイルスである、項目79に記載の核酸。
(項目81)
新形成、病原体感染、自己免疫障害、または同種異系移植片を処置するためのキットであって、処置されるべき上記新形成、上記病原体、上記自己免疫障害、または上記移植片の抗原を認識するCARをコードする核酸、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸を含む、キット。
(項目82)
癌を処置するためのキットであって、上記癌の抗原を認識するCARをコードする核酸、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸を含む、キット。
(項目83)
癌または病原体が媒介する障害を処置するためのキットであって、上記癌または上記病原体の抗原を認識するCARをコードする核酸、および免疫抑制活性または免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する可溶性単鎖可変フラグメント(scFv)をコードする核酸を含む、キット。
(項目84)
癌または病原体が媒介する障害を処置するためのキットであって、上記癌または上記病原体の抗原を認識するCARをコードする核酸、およびCD40Lをコードする核酸を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図1】
図1は、キメラ抗原受容体(CAR)を単独で、または分泌可能なscFv(例えば、αPD-1、αPD-Ll、αCTLA-4、またはαCD47)とともに発現するように改変されたT細胞を示す図である。キメラ抗原受容体(CAR)を単独で発現するように改変されたT細胞を過酷な腫瘍微小環境内で抑制させる。特定の理論にとらわれるわけではないが、これらの細胞を分泌可能なscFvを発現させて、免疫抑制性シグナル伝達を遮断すべくさらに改変すると、腫瘍微小環境を調節し、抑制因子に抵抗する能力ゆえ、抗腫瘍機能が改善した。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、分泌可能な抗CD-47 scFv構築物の構造を示す図である。
図2Aは、カッパ(κ)リーダー配列を含ませてこのタンパク質の移出をすることができるようにデザインされた分泌可能な抗CD-47 scFvの構造を示す図である。可変重鎖(V
H)と軽鎖(V
L)がセリン-グリシンリンカー(G
4S)によって連結され、scFvを検出するためにmyc-タグペプチドが含まれた。
図2Bは、分泌可能なscFvが、図示されているようなP2Aエレメントを用いて1928z CAR構築物に連結されたことを示す図である。
【
図3】
図3は、カッパリーダー配列[配列番号:18]に操作可能に連結したB6Hl2.2 scFv配列を示す図である。B6Hl2.2ハイブリドーマの可変重鎖(V
H)配列および可変軽鎖(V
L)配列をカッパリーダー配列、c-mycタグでPCR増幅し、セリン-グリシンリンカーで結合した。核酸配列およびアミノ酸の翻訳を示す。
【
図4】
図4は、CDSリーダー配列[配列番号:19]に操作可能に連結したB6Hl2.2 scFv配列を示す図である。B6Hl2.2ハイブリドーマの可変重鎖(V
H)配列および可変軽鎖(V
L)配列をCDSリーダー配列、c-mycタグでPCR増幅し、セリン-グリシンリンカーで結合した。核酸配列およびアミノ酸の翻訳を示す。
【
図5】
図5は、1928z-2A-B6Hl2.2(カッパリーダー)構築物[配列番号:20]の核酸配列を示す図である。B6Hl2.2 scFv配列をCD19標的1928z CARで発現させるため、SFG発現ベクターにクローニングした。図示するように、P2Aエレメントを用いて2つのエレメントを結合した。
【
図6】
図6は、4Hll28z-2A-B6Hl2.2(カッパリーダー)構築物[配列番号:21]の核酸配列を示す図である。B6Hl2.2 scFv配列をMUC-CD標的4Hll28zキメラ抗原受容体(CAR)で発現させるため、SFG発現ベクターにクローニングした。図示するように、P2Aエレメントを用いて2つのエレメントを結合した。
【
図7A】
図7Aおよび7Bは、1928-2A-B6Hl2.2 293Glv9パッケージ細胞の生成を示す図である。ウイルス性パッケージ細胞を、1928z-2A-B6Hl2.2または1928zベクターを用いて生成した。
図7Aは、1928z CARの発現に基づく、2つのクローン、すなわち、クローン5およびクローン6の選択を示す図である。それは対照1928z 293Glv9細胞に匹敵した。CAR発現は、フローサイトメトリーおよび12dll抗体での染色によって判定した。
図7Bは、1928zまたは1928z-2A-B6Hl2.2パッケージ細胞からの上清を、CD47
+腫瘍細胞、Nalm-6およびRajiとともにインキュベートし、その腫瘍細胞を洗浄し、抗CD47で染色した場合の実験を示す図である。1928z-2A-B6Hl2.2上清中でインキュベートした腫瘍細胞(複数の青のライン)は、1928z上清を用いたインキュベーション(黒のライン)と比較して、抗CD47結合を減少させた。B6Hl2.2ハイブリドーマ細胞からの上清を対照(赤のライン)として使用した。
【
図7B】
図7Aおよび7Bは、1928-2A-B6Hl2.2 293Glv9パッケージ細胞の生成を示す図である。ウイルス性パッケージ細胞を、1928z-2A-B6Hl2.2または1928zベクターを用いて生成した。
図7Aは、1928z CARの発現に基づく、2つのクローン、すなわち、クローン5およびクローン6の選択を示す図である。それは対照1928z 293Glv9細胞に匹敵した。CAR発現は、フローサイトメトリーおよび12dll抗体での染色によって判定した。
図7Bは、1928zまたは1928z-2A-B6Hl2.2パッケージ細胞からの上清を、CD47
+腫瘍細胞、Nalm-6およびRajiとともにインキュベートし、その腫瘍細胞を洗浄し、抗CD47で染色した場合の実験を示す図である。1928z-2A-B6Hl2.2上清中でインキュベートした腫瘍細胞(複数の青のライン)は、1928z上清を用いたインキュベーション(黒のライン)と比較して、抗CD47結合を減少させた。B6Hl2.2ハイブリドーマ細胞からの上清を対照(赤のライン)として使用した。
【
図8A】
図8Aおよび8Bは、1928z-2A-B6Hl2.2ヒト末梢血T細胞の生成を示す図である。ヒト末梢血T細胞を1928zまたは1928z-2A-B6Hl2.2パッケージ細胞からの上清を用いて形質導入した。
図6Aは、12d11抗体を用いたCAR発現および蛍光タグを付けた抗c-mycタグ抗体で染色した結合抗CD47 scFvのフローサイトメトリーの解析を示す図である。
図6Bは、抗CD47 scFvがCD47を遮断する能力を示す図である。抗CD47抗体でT細胞を染色することによって判定した。1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞は、1928z T細胞(赤のライン)と比較して、抗CD47結合(青のライン)を減少させた。B6Hl2.2ハイブリドーマ上清中でインキュベートした1928z T細胞を対照(黒のライン)として使用した。
【
図8B】
図8Aおよび8Bは、1928z-2A-B6Hl2.2ヒト末梢血T細胞の生成を示す図である。ヒト末梢血T細胞を1928zまたは1928z-2A-B6Hl2.2パッケージ細胞からの上清を用いて形質導入した。
図6Aは、12d11抗体を用いたCAR発現および蛍光タグを付けた抗c-mycタグ抗体で染色した結合抗CD47 scFvのフローサイトメトリーの解析を示す図である。
図6Bは、抗CD47 scFvがCD47を遮断する能力を示す図である。抗CD47抗体でT細胞を染色することによって判定した。1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞は、1928z T細胞(赤のライン)と比較して、抗CD47結合(青のライン)を減少させた。B6Hl2.2ハイブリドーマ上清中でインキュベートした1928z T細胞を対照(黒のライン)として使用した。
【
図9-1】
図9A~9Cは、1928z-2Aヒト末梢血T細胞を示す図である。フローサイトメトリーを行って、1928zおよび1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞の表現型の特徴を確認した。
図9Aは、1928zおよび1928z-2AT細胞が、同等のCD4:CD8率のT細胞、活性化マーカーCD69およびCD25の同等の発現を有していたことを示す図である。1928z T細胞は、1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞と比較してCD62Lの発現を増加させた。
図9Bは、1928z T細胞および1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞がサイトカインを分泌する能力を示す図である。3T3(CD19
+/B7.1
+)aAPCs細胞とゴルジ輸送阻害剤、ゴルジプラグおよびゴルジストップとともにインキュベートした後、フローサイトメトリーを行って評価した。1928z T細胞および1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞は、3T3(CD19
+/B7.1
+)細胞での刺激後、同等のレベルのIL-2およびIFNgを産生した。
図9Cは、Raji腫瘍細胞を用いた標準的な
51クロム放出アッセイによって評価したところ、1928z T細胞および1928z-2A-B6H12.2 T細胞が同等の細胞溶解性能を有することを示している。
【
図9-2】
図9A~9Cは、1928z-2Aヒト末梢血T細胞を示す図である。フローサイトメトリーを行って、1928zおよび1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞の表現型の特徴を確認した。
図9Aは、1928zおよび1928z-2AT細胞が、同等のCD4:CD8率のT細胞、活性化マーカーCD69およびCD25の同等の発現を有していたことを示す図である。1928z T細胞は、1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞と比較してCD62Lの発現を増加させた。
図9Bは、1928z T細胞および1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞がサイトカインを分泌する能力を示す図である。3T3(CD19
+/B7.1
+)aAPCs細胞とゴルジ輸送阻害剤、ゴルジプラグおよびゴルジストップとともにインキュベートした後、フローサイトメトリーを行って評価した。1928z T細胞および1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞は、3T3(CD19
+/B7.1
+)細胞での刺激後、同等のレベルのIL-2およびIFNgを産生した。
図9Cは、Raji腫瘍細胞を用いた標準的な
51クロム放出アッセイによって評価したところ、1928z T細胞および1928z-2A-B6H12.2 T細胞が同等の細胞溶解性能を有することを示している。
【
図9-3】
図9A~9Cは、1928z-2Aヒト末梢血T細胞を示す図である。フローサイトメトリーを行って、1928zおよび1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞の表現型の特徴を確認した。
図9Aは、1928zおよび1928z-2AT細胞が、同等のCD4:CD8率のT細胞、活性化マーカーCD69およびCD25の同等の発現を有していたことを示す図である。1928z T細胞は、1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞と比較してCD62Lの発現を増加させた。
図9Bは、1928z T細胞および1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞がサイトカインを分泌する能力を示す図である。3T3(CD19
+/B7.1
+)aAPCs細胞とゴルジ輸送阻害剤、ゴルジプラグおよびゴルジストップとともにインキュベートした後、フローサイトメトリーを行って評価した。1928z T細胞および1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞は、3T3(CD19
+/B7.1
+)細胞での刺激後、同等のレベルのIL-2およびIFNgを産生した。
図9Cは、Raji腫瘍細胞を用いた標準的な
51クロム放出アッセイによって評価したところ、1928z T細胞および1928z-2A-B6H12.2 T細胞が同等の細胞溶解性能を有することを示している。
【
図10】
図10Aおよび10Bは、1928z-2A-B6H12.2 T細胞の抗腫瘍有効性を示す図である。1928z-2A-B6H12.2 T細胞のインビボ抗腫瘍有効性を、前臨床SCIDベージュマウスモデルを用いて調べた。マウスに、1×l0
6のNalm-6-ホタルルシフェラーゼ
+腫瘍細胞を静脈から接種させ、次いで、5.7×l0
6 CAR
+1928z、1928z-2A-B6H12.2または対照卵巣癌標的4H1128z-2A-B6H12.2 T細胞を用いて処置した。これも、静脈から接種させることにより行った。
図10Aは、未処置マウス、1928zまたは4H1128z-2A-B6H12.2処置マウスと比較して、1928z-2A-B6H12.2 T細胞で処置したマウスの生存率が高かったことを示している。
図10Bは、生物発光イメージングを用いて腫瘍の進行をモニターしたところ、未処置マウス、1928zまたは4H1128z-2A-B6H12.2 T細胞処置マウスと比較して、1928z-2A-B6H12.2処置マウスは腫瘍負荷を減少させたことを示している。
【
図11】
図11は、カッパリーダー配列[配列番号:22]に操作可能に連結した5C4 scFv配列を示す図である。5C4抗体クローンの可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)配列を、カッパリーダー配列、c-mycタグを用いてデザインし、セリン-グリシンリンカーを用いて接合した。その核酸配列およびアミノ酸翻訳を示す。
【
図12】
図12は、1928z-2A-5C4(カッパリーダー)構築物の核酸配列を示す[配列番号:23]。5C4 scFv配列を、CD19標的1928z CARで発現させるため、SFG発現ベクターにクローニングした。P2Aエレメントを用いて、2つのエレメントを、図示したように結合した。
【
図13】
図13は、4H1128z-2A-5C4(カッパリーダー)構築物の核酸配列を示す[配列番号:24]。5C4 scFvを、MUC-CD-標的4H1128z CARで発現させるため、SFG発現ベクターにクローニングした。P2Aエレメントを用いて、2つのエレメントを、図示したように結合した。
【
図14】
図14は、1928z-2A-5C4(カッパリーダー)293Glv9細胞の生成を示す図である。1928z-2A-5C4を用いてウイルス性パッケージ細胞を生成した。2つのクローン、すなわち、クローンA6およびクローンB6は、1928z CARの発現に基づいて選択した。それは対照1928z 293Glv9細胞に匹敵した。CAR発現は、フローサイトメトリーおよび12dll抗体での染色によって判定した。
【
図15】
図15は、1928z-2A-5C4(カッパリーダー)ヒト末梢血T細胞の生成を示す図である。ヒト末梢血T細胞を1928zまたは1928z-2A-5C4パッケージ細胞からの上清を用いて形質導入した。フローサイトメトリーを用いて、12d11抗体を用いたCAR発現および蛍光タグを付けた抗c-mycタグ抗体での染色を用いた結合抗CD47 scFvの解析を行った。
【
図16A】
図16は、3T3(CD19
+/B7.1
+)、RajiおよびNalm-6細胞でのPD-L1発現を示す図である。フローサイトメトリーを用いて、PD-Llを発現するように形質導入された、3T3(CD19
+/B7.1
+)、RajiおよびNalm-6細胞でのPD-L1発現を判定した。形質導入された細胞は、対照の形質導入されていない細胞と比較して、有意なレベルのPD-L1を発現した。円で示した群を分類して実験に用いた。
【
図16B】
図16は、3T3(CD19
+/B7.1
+)、RajiおよびNalm-6細胞でのPD-L1発現を示す図である。フローサイトメトリーを用いて、PD-Llを発現するように形質導入された、3T3(CD19
+/B7.1
+)、RajiおよびNalm-6細胞でのPD-L1発現を判定した。形質導入された細胞は、対照の形質導入されていない細胞と比較して、有意なレベルのPD-L1を発現した。円で示した群を分類して実験に用いた。
【
図16C】
図16は、3T3(CD19
+/B7.1
+)、RajiおよびNalm-6細胞でのPD-L1発現を示す図である。フローサイトメトリーを用いて、PD-Llを発現するように形質導入された、3T3(CD19
+/B7.1
+)、RajiおよびNalm-6細胞でのPD-L1発現を判定した。形質導入された細胞は、対照の形質導入されていない細胞と比較して、有意なレベルのPD-L1を発現した。円で示した群を分類して実験に用いた。
【
図17】
図17は、1928z細胞および1928z-2A-5C4 T細胞の増殖を示す図である。1928z T細胞および1928z-2A-5C4 T細胞を、3T3(CD19
+/B7.1
+)または3T3(CD19
+/B7.1
+/PD-L1
+)とともにインキュベートし、T細胞の増殖を、トリパンブルーを用いてモニターし、CAR発現をフローサイトメトリーによって判定した。増殖およびCAR発現は、3T3(CD19
+/B7.1
+)細胞上で増殖された細胞のそれと相関を示していた。
【
図18-1】
図18は、マウスカッパリーダー配列に操作可能に連結したJ43 scFv配列[配列番号:25]を示す図である。J43抗体クローンの可変重鎖(VH)配列および可変軽鎖(VL)配列を、マウスカッパリーダー配列、c-mycタグを用いてデザインし、セリン-グリシンリンカーを用いて結合した。配列およびアミノ酸の翻訳を示す。
【
図18-2】
図18は、マウスカッパリーダー配列に操作可能に連結したJ43 scFv配列[配列番号:25]を示す図である。J43抗体クローンの可変重鎖(VH)配列および可変軽鎖(VL)配列を、マウスカッパリーダー配列、c-mycタグを用いてデザインし、セリン-グリシンリンカーを用いて結合した。配列およびアミノ酸の翻訳を示す。
【
図19】
図19は、19m28mziRESJ43(マウスカッパリーダー)構築物の核酸配列[配列番号:26]を示す図である。J43 scFvをCD19標的19m28mz CARで発現させるため、SFG発現ベクターにクローニングした。図示するように、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントを用いて2つのエレメントを結合した。
【
図20】
図20は、4H11m28mziRESJ43(マウスカッパリーダー)構築物の核酸配列[配列番号:27]を示す図である。J43 scFvを、MUC-CD標的4H11m28mzCARで発現させるため、SFG発現ベクターにクローニングした。図示するように、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントを用いて2つのエレメントを結合した。
【
図21】
図21は、CAR T細胞を遺伝子改変して、scFv分子(「武装化(armored)CAR T細胞」)を発現させて、「過酷な」腫瘍微小環境を克服するための戦略を示す図である。免疫制御機能を有するアンタゴニストscFvを分泌するようにCAR
+T細胞を改変してもよい。CARの同族抗原に対する活性化後(1)、武装化CAR改変T細胞を、阻害性PD-1 T細胞受容体に拮抗するscFvを融合されたCAR改変T細胞上および抗腫瘍エフェクター機能を高める内因性の抗腫瘍T細胞上の両方で分泌するよう誘導し(2)、阻害性CTLA-4 T細胞受容体に拮抗するscFvを融合されたCAR改変T細胞上および抗腫瘍エフェクター機能を高める内因性の抗腫瘍T細胞上の両方で分泌するよう誘導し(3)、あるいは、腫瘍細胞上で発現したCD47受容体に拮抗するscFvを分泌するよう誘導し、宿主の生来の抗腫瘍免疫応答による認識に対して腫瘍細胞を覆う状況(cloaking)を逆転し、宿主マクロファージによる腫瘍の認識と根絶を導いてもよい。
【
図22-1】
図22A~22DはヒトT細胞によるCD40Lの構成的発現を示す図である。(A)は、ヒトCD40Lベクターをコードするレトロウイルス構築物の概略図である。LTRは、長末端繰り返し;SDは、スプライスドナー、SAはスプライスアクセプター;Ψは、パッケージエレメントである。(B)は、レトロウイルス遺伝子転送後のCD4+およびCD8+CD40L-改変T細胞のフローサイトメトリーを示す図である。ここで、x軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(C)は、モック形質導入T細胞と比較して、CD40L改変T細胞の増殖が増強されていることを示す図である。(D)は、モック形質導入T細胞と比較して、CD40L改変T細胞の、可溶性CD40L(sCD40L)、IFN-γ、およびGM-CSFの分泌が増強されていることを示す図である。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図22-2】
図22A~22DはヒトT細胞によるCD40Lの構成的発現を示す図である。(A)は、ヒトCD40Lベクターをコードするレトロウイルス構築物の概略図である。LTRは、長末端繰り返し;SDは、スプライスドナー、SAはスプライスアクセプター;Ψは、パッケージエレメントである。(B)は、レトロウイルス遺伝子転送後のCD4+およびCD8+CD40L-改変T細胞のフローサイトメトリーを示す図である。ここで、x軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(C)は、モック形質導入T細胞と比較して、CD40L改変T細胞の増殖が増強されていることを示す図である。(D)は、モック形質導入T細胞と比較して、CD40L改変T細胞の、可溶性CD40L(sCD40L)、IFN-γ、およびGM-CSFの分泌が増強されていることを示す図である。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図22-3】
図22A~22DはヒトT細胞によるCD40Lの構成的発現を示す図である。(A)は、ヒトCD40Lベクターをコードするレトロウイルス構築物の概略図である。LTRは、長末端繰り返し;SDは、スプライスドナー、SAはスプライスアクセプター;Ψは、パッケージエレメントである。(B)は、レトロウイルス遺伝子転送後のCD4+およびCD8+CD40L-改変T細胞のフローサイトメトリーを示す図である。ここで、x軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(C)は、モック形質導入T細胞と比較して、CD40L改変T細胞の増殖が増強されていることを示す図である。(D)は、モック形質導入T細胞と比較して、CD40L改変T細胞の、可溶性CD40L(sCD40L)、IFN-γ、およびGM-CSFの分泌が増強されていることを示す図である。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図23A】
図23Aおよび23Bは、CD40L-改変T細胞によるCD40+腫瘍細胞の強化された免疫原性を示す図である。(A)は、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)、HLA分子(HLAクラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体(CD95)のDOHH2腫瘍細胞株上でのアップレギュレーションを示すフローサイトメトリーを示す図である。同じドナーからのモック形質導入T細胞を用いた培養(グレー線)と比較してCD40L改変T細胞を用いて共培養した後のもの(実線)を示している。(B)CD40L改変T細胞を用いて共培養後、CD40-腫瘍(NALM6が示されている)は、表現型の変化を示していない。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である。
【
図23B】
図23Aおよび23Bは、CD40L-改変T細胞によるCD40+腫瘍細胞の強化された免疫原性を示す図である。(A)は、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)、HLA分子(HLAクラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体(CD95)のDOHH2腫瘍細胞株上でのアップレギュレーションを示すフローサイトメトリーを示す図である。同じドナーからのモック形質導入T細胞を用いた培養(グレー線)と比較してCD40L改変T細胞を用いて共培養した後のもの(実線)を示している。(B)CD40L改変T細胞を用いて共培養後、CD40-腫瘍(NALM6が示されている)は、表現型の変化を示していない。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である。
【
図24A】
図24Aおよび24Bは、自系CD40L改変T細胞によるCLL細胞の強化された免疫原性を示す図である。(A)レトロウイルスベクターを含有するCD40Lを用いた、レトロウイルス遺伝子輸送後の、患者由来CD40L-改変T細胞のフローサイトメトリーを示す図である。x軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(B)は、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)HLA(HLAクラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体(CD95)のCLL細胞上でのアップレギュレーションを示すフローサイトメトリーを示す図である。同じドナーからのモック形質導入T細胞を用いた培養(グレー線)と比較して、自系CD40L-改変T細胞を用いて共培養した後のもの(実線)を示している。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である。
【
図24B】
図24Aおよび24Bは、自系CD40L改変T細胞によるCLL細胞の強化された免疫原性を示す図である。(A)レトロウイルスベクターを含有するCD40Lを用いた、レトロウイルス遺伝子輸送後の、患者由来CD40L-改変T細胞のフローサイトメトリーを示す図である。x軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(B)は、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)HLA(HLAクラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体(CD95)のCLL細胞上でのアップレギュレーションを示すフローサイトメトリーを示す図である。同じドナーからのモック形質導入T細胞を用いた培養(グレー線)と比較して、自系CD40L-改変T細胞を用いて共培養した後のもの(実線)を示している。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である。
【
図25A】
図25Aおよび25BはCD40L改変T細胞によるIL-12の分泌および単球由来樹状細胞(moDC)の成熟を示す図である。(A)は、IL-12p70分泌の上昇を示す別個の3ドナーからのmoDCとCD40L改変T細胞間の共培養(24時間)のための培養培地のサイトカイン分析を示す。(B)は、CD40L改変T細胞との共培養後の成熟を示すmoDCのフローサイトメトリーを示す。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である。
【
図25B】
図25Aおよび25BはCD40L改変T細胞によるIL-12の分泌および単球由来樹状細胞(moDC)の成熟を示す図である。(A)は、IL-12p70分泌の上昇を示す別個の3ドナーからのmoDCとCD40L改変T細胞間の共培養(24時間)のための培養培地のサイトカイン分析を示す。(B)は、CD40L改変T細胞との共培養後の成熟を示すmoDCのフローサイトメトリーを示す。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である。
【
図26A】
図26A~26Cは、CAR/CD40Lベクターを用いた、ヒトT細胞の効率的な形質導入が、細胞傷害性を高めたことを示す図である。(A)は、1928z-IRES-CD40LおよびPz1-IRES-CD40L遺伝子を含有するレトロウイルス構築物の概略図である。LTRは、長末端繰り返し;SDは、スプライスドナー、SAはスプライスアクセプター;Ψは、パッケージエレメントである。CD8は、CD8リーダー配列を示す。scFvは、単鎖可変フラグメント、VHおよびVLは、可変重鎖および軽鎖、TMは、膜貫通ドメインを示す。(B)は、19-28z/CD40Lベクターを発現するように形質導入されたヒトT細胞のFACS分析(刺激前)で、引き続きインビボ実験に用いられるAAPC(CD19およびCD80を発現するNIH 3T3線維芽細胞;1928/CD40L T細胞が示されている)上での共培養後、CAR/CD40Lの発現が増強されている。x軸は、PEコンジュゲート1928z CAR特異性抗体(19e3);y軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(C)は、標準的な51Cr放出アッセイによって判定されたように、19-28z T細胞と比較したとき、19-28z/40L T細胞では、DOHH2腫瘍細胞を溶解する能力が有意に増加していた。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図26B】
図26A~26Cは、CAR/CD40Lベクターを用いた、ヒトT細胞の効率的な形質導入が、細胞傷害性を高めたことを示す図である。(A)は、1928z-IRES-CD40LおよびPz1-IRES-CD40L遺伝子を含有するレトロウイルス構築物の概略図である。LTRは、長末端繰り返し;SDは、スプライスドナー、SAはスプライスアクセプター;Ψは、パッケージエレメントである。CD8は、CD8リーダー配列を示す。scFvは、単鎖可変フラグメント、VHおよびVLは、可変重鎖および軽鎖、TMは、膜貫通ドメインを示す。(B)は、19-28z/CD40Lベクターを発現するように形質導入されたヒトT細胞のFACS分析(刺激前)で、引き続きインビボ実験に用いられるAAPC(CD19およびCD80を発現するNIH 3T3線維芽細胞;1928/CD40L T細胞が示されている)上での共培養後、CAR/CD40Lの発現が増強されている。x軸は、PEコンジュゲート1928z CAR特異性抗体(19e3);y軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(C)は、標準的な51Cr放出アッセイによって判定されたように、19-28z T細胞と比較したとき、19-28z/40L T細胞では、DOHH2腫瘍細胞を溶解する能力が有意に増加していた。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図26C】
図26A~26Cは、CAR/CD40Lベクターを用いた、ヒトT細胞の効率的な形質導入が、細胞傷害性を高めたことを示す図である。(A)は、1928z-IRES-CD40LおよびPz1-IRES-CD40L遺伝子を含有するレトロウイルス構築物の概略図である。LTRは、長末端繰り返し;SDは、スプライスドナー、SAはスプライスアクセプター;Ψは、パッケージエレメントである。CD8は、CD8リーダー配列を示す。scFvは、単鎖可変フラグメント、VHおよびVLは、可変重鎖および軽鎖、TMは、膜貫通ドメインを示す。(B)は、19-28z/CD40Lベクターを発現するように形質導入されたヒトT細胞のFACS分析(刺激前)で、引き続きインビボ実験に用いられるAAPC(CD19およびCD80を発現するNIH 3T3線維芽細胞;1928/CD40L T細胞が示されている)上での共培養後、CAR/CD40Lの発現が増強されている。x軸は、PEコンジュゲート1928z CAR特異性抗体(19e3);y軸は、APCコンジュゲート抗ヒトCD40L(CD154)を示す。(C)は、標準的な51Cr放出アッセイによって判定されたように、19-28z T細胞と比較したとき、19-28z/40L T細胞では、DOHH2腫瘍細胞を溶解する能力が有意に増加していた。すべての結果は、少なくとも3つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図27】
図27は、1928z/CD40L T細胞注入後の腫瘍の根絶および長期生存を示す図である。CAR改変T細胞を単回静脈内投与する2日前に、DOHH2腫瘍細胞を静脈内(i.v.)注射で接種したSCIDベージュマウスの生存率曲線である。対照T細胞のパネルと比較して(1928z群、n=8;Pz1およびPz1/40L群、n=5)、1928z/CD40L T細胞(n=10)で処置したマウスにおいて、長期生存性が高められたことが確認された。すべての結果は、少なくとも2つの別個の実験の代表である(*は、統計学的有意性を示す)。
【
図28】
図28は、sCD40LによるCD40+腫瘍細胞の強化された免疫原性を示す図である。(A)は、共刺激分子(CD80)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)、HLA(HLAクラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体の、DOHH2腫瘍細胞株上で、高いレベルのsCD40Lを含有する条件培地(CD40L改変T細胞培地)を用いた共培養後のアップレギュレーションを示すフローサイトメトリーを示す図である(実線)。高いレベルのsCD40Lを含有しない培地(モック形質導入T細胞培地)を用いた場合(グレー線)と比較して示している。
【
図29】
図29は、1928z/CD40L T細胞が、細胞傷害性の増加を実証したことを示す図である。標準的な51Cr放出アッセイによって確認されたように、19-28z T細胞と比較したとき、19-28z/40L-T細胞では、Raji腫瘍細胞の溶解能が有意に増加することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0110】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、少なくとも、抗原認識受容体(例えば、TCRまたはCAR)および、(i)免疫抑制性の抗原(例えば、αPD-1、αPD-Ll、αCTLA-4、もしくはαCD47)に結合するscFv;(ii)免疫刺激性の抗原(例えば、αCD28、αOX-40、αCD40、もしくはα4-1BB)に結合するscFv、または(iii)CD40Lのいずれかとの組み合わせを発現する、遺伝子的に改変された免疫応答性細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)細胞)、ならびにそのような細胞を、抗原特異的免疫応答の増加が望ましい、新形成および他の病理的状態を処置するために使用する方法を提供する。本発明は、免疫抑制性の抗原(例えば、本明細書中に示すように、CD47およびPD-L1)に結合するscFvが、免疫反応性細胞を活性化および刺激するのに有用であるという発見に少なくとも部分的に基づいている。特に、本発明のscFvは、腫瘍微小環境における活性化された免疫反応性細胞の免疫応答の抑制を減少または防止する。悪性腫瘍細胞は、それ自身を免疫認識および除去から保護するための一連のメカニズムを作り出している。本アプローチは、腫瘍根絶のための、腫瘍微小環境内での免疫原性を提供し、従来の養子T細胞治療に対する有意な進歩を示している。
【0111】
腫瘍微小環境
腫瘍は、宿主の免疫応答に過酷な微小環境を有する。そしてそれは、悪性腫瘍細胞のそれ自身を免疫認識および除去から保護するための一連のメカニズムに関与する。この「過酷な腫瘍微小環境」は、浸潤性制御CD4+T細胞(Treg)、骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、IL-10およびTGF-βなどの免疫抑制性サイトカイン、および活性化されたT細胞により発現される免疫抑制性受容体(CTLA-4およびPD-1)を標的とするリガンドの発現を含めた種々の免疫抑制因子を含む。これらの免疫抑制のメカニズムは、忍容性の維持および不適切な免疫応答の抑制において役割を果たす。しかしながら、腫瘍微小環境内で、これらのメカニズムは、有効な抗腫瘍免疫応答を防止する。まとめて、これらの免疫抑制因子は、標的とされた腫瘍細胞に出会うとすぐ、養子移入されたCAR改変T細胞の著しいアネルギーまたはアポトーシスのいずれかを惹起することができる。
【0112】
細胞傷害性T-リンパ球抗原4(CTLA-4)
CTLA-4は、活性化されたT細胞により発現される阻害性受容体である。それは、対応するリガンド(それぞれ、CD80およびCD86;B7-1およびB7-2)によって連結されると、活性化されたT細胞の阻害またはアネルギーを媒介する。前臨床研究においても臨床研究においても、抗体の全身注入によるCTLA-4遮断は、内因性の抗腫瘍応答を高めた。とはいえ、臨床の設定では、有意な予期できない毒性がある。特定の理論にとらわれるわけではないが、腫瘍を標的とするCAR改変T細胞による、アンタゴニストscFvの送達により標的化されたCTLA-4の遮断により、毒性を減少させることができ、かつ免疫抑制から保護される腫瘍を標的とするT細胞の「内因性」の群(CAR T細胞群)の代用薬を提供する。前臨床研究(例えば、B細胞悪性腫瘍および卵巣癌腫のヒト異種移植腫瘍モデルおよびネズミ腫瘍モデル)を用いて、CAR改変T細胞群ならびに内因性の抗腫瘍免疫応答の両方に対するscFv分泌の効果を評価することができる。抗CTLA-4 scFvは、マウス抗マウスCTLA-4モノクローナル抗体を分泌する9D9ハイブリドーマ、またはハムスター抗マウスCTLA-4モノクローナル抗体を分泌する9Hl0ハイブリドーマから生成することができる。
【0113】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)
PD-1は、内因性のマクロファージおよび樹状細胞で発現した対応するリガンドPD-L1およびPD-L2に結合して活性化されたT細胞の負の免疫レギュレータである。PD-L1のアップレギュレーションは1つのメカニズムであり、腫瘍細胞は宿主免疫系を回避し得る。また、前臨床の治験においても、最近公表された臨床治験においても、アンタゴニスト抗体によるPD-1遮断は、内因性の宿主免疫系に媒介される抗腫瘍応答を誘導した。異種移植および同系ネズミ腫瘍モデルを用いることができる。そしてそれは、腫瘍を標的とするCAR改変T細胞により分泌されたアンタゴニスト抗PD-1 scFvが、これらのscFv分泌性CAR改変T細胞の抗腫瘍有効性を高めることを示している。
【0114】
CD47
CD47は、広範な組織分布を有する膜タンパク質であり、その1つは最近の前臨床モデル(imodels)において広範な腫瘍細胞をマクロファージ認識から保護することが示されている。これらのモデルでは、抗CD47モノクローナル抗体を注入した結果、確立した腫瘍進行が減少した。換言すれば、腫瘍細胞上でのCD47遮断により、これらの腫瘍細胞を宿主マクロファージによる認識およびファゴサイトーシスにさらした。この抗原の発現が幾分ユビキタスであると仮定すれば、遮断抗体の全身注入により、毒性の標的が外れるかもしれない。また、標的送達のパラダイムを維持することで、CAR改変T細胞によって、直接的に腫瘍微小環境に送達された同様に遮断する抗CD47 scFvの分泌が、所望の抗腫瘍効果を惹起/増強する。この場合、適応宿主免疫系ではなく、むしろ先天的免疫系により媒介される。さらに、このアプローチは、新形成処置に限定されず、抗原特異性免疫応答の増加が望ましい広範囲の適用に受け入れられる。そのような適用としては、新形成の処置のみならず、免疫応答の病原体感染もしくは感染症に対する増強、および自己免疫もしくは同種異系移植片の背景における制御性T細胞の免疫忍容性の強化がある。
【0115】
CD40L
CD40リガンド(CD40L、CD154)、すなわち腫瘍壊死因子(TNF)遺伝子スーパーファミリーに属するII型膜貫通タンパク質は、腫瘍特異的T細胞の機能を増強する可能性を有している。活性化されたCD4+ T細胞上で最初に同定され、広大な範囲の免疫、造血性の細胞、上皮細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞において、CD40Lの発現が誘導され得る。活性化されたT細胞において、CD40Lは、すぐに発現し、6時間以内にピークに達し、その後、続く12~24時間にわたって減少する。CD40Lは、B細胞、マクロファージ、および樹状細胞(DC)を含めた種々の免疫細胞および非免疫細胞上で構成的に発現する同族受容体CD40に結合する。重要なことに、CD40はまた、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、鼻咽頭癌腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、メラノーマ、乳癌腫、卵巣癌腫、および子宮頸癌腫を含む、いくつかの血液学的および非血液学的悪性腫瘍において発現する。CAR/CD40L T細胞が広範な悪性腫瘍において適用できることを示している。実施例6の後に記載した参考文献8~17を参照されたい。
【0116】
造血系細胞系譜
哺乳動物の造血(血液)細胞は、様々な生理学的活性を提供する。造血細胞は、リンパ系系譜、骨髄系系譜および赤血球系系譜に分けられる。リンパ系系譜は、B細胞、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を含み、抗体の産生、細胞免疫系の調節、血液における外来性病原体の検出、宿主にとって異物である細胞の検出などに備える。本明細書中で用いる場合、用語「T細胞」は、胸腺において成熟し、細胞媒介性免疫を主に担うリンパ球を示す。T細胞は適応免疫系に関与する。本明細書中で用いる場合、用語「ナチュラルキラー(NK)細胞」は、細胞媒介性免疫の一部であり、かつ、先天性免疫応答の期間中に作用するリンパ球を示す。これは、標的細胞に対するその細胞傷害性効果を発揮するために事前の活性化を必要としない。細胞傷害性T細胞(CTL細胞またはキラーT細胞)は、感染を受けた体細胞または腫瘍細胞の死を誘導することができるTリンパ球のサブセットである。
【0117】
本発明の方法において使用される細胞
本発明は、免疫応答性細胞を活性化する抗原認識受容体(例えば、TCR、CAR)と免疫抑制性の抗原(例えば、αPD-1、αPD-Ll、αCTLA-4、またはαCD47)に結合するscFvの組み合わせを発現する細胞、および免疫応答の増強が必要である、疾患を処置するためにかかる細胞を使用する方法を提供する。あるアプローチにおいては、新形成の処置または防止のために、腫瘍抗原特異的T細胞、NK細胞、CTL細胞、またはその他の免疫応答性細胞を用いて、免疫抑制性の抗原と結合するscFvを発現させる。例えば、CD19を認識するキメラ抗原受容体1928zを発現するT細胞を、CD47と結合するscFvを発現するT細胞内で共発現させる。そのような細胞を、血液の癌(例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫)を処置または防止するために、それを必要とするヒト被験体に投与する。別のアプローチにおいて、ウイルス抗原特異的なT細胞、NK細胞、CTL細胞を、ウイルス疾患を処置するために使用することができる。例えば、第1CMV抗原を認識するキメラ共刺激抗原受容体およびPD-1に結合するscFvを、CMVを処置するために、細胞傷害性Tリンパ球において共発現させる。
【0118】
患者自身のT細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)と名付けられた、人工的T細胞受容体をコードする遺伝子の導入を通じて、腫瘍を標的とするように遺伝子改変してもよい。第1世代のCARは、典型的に、抗体由来抗原認識ドメイン、単一フラグメント長抗体(scFv)からなり、可変膜貫通ドメインに融合され、T細胞受容体鎖の細胞質シグナル伝達ドメインに融合される。C鎖の近位のCD28、4-1BB、およびOX-40を含む、1または2の共刺激受容体シグナル伝達ドメインをさらに含ませて、CARシグナル伝達を増強させることにより、第2および第3世代のCARがそれぞれもたらされる。
【0119】
腫瘍抗原特異的Tリンパ球(およびNK細胞)
本発明の方法において使用することができるタイプの腫瘍抗原特異的ヒトリンパ球には、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するために遺伝子改変された末梢ドナーリンパ球(Sadelain,M.ら、2003、Nat Rev Cancer 3:35-45)、αおよびβヘテロダイマーを含む全長の腫瘍抗原認識T細胞受容体複合体を発現するために遺伝子改変された末梢ドナーリンパ球(Morgan,R.A.ら、2006、Science,314:126-129)、腫瘍生検物における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に由来するリンパ球培養物(Panelli,M.C.ら、2000、J.Immunol 164:495-504;Panelli,M.C.ら、2000、J.Immunol 164:4382-4392)、および人工抗原提示細胞(AAPC)またはパルス処理された樹状細胞を用いて選択的にインビトロで増殖された抗原特異的な末梢血白血球(Dupont,J.ら、2005、Cancer Res 65:5417-5427;Papanicolaou,G.A.ら、2003、Blood 102:2498-2505)が挙げられるが、それらに限定されない。T細胞は自系、あるいは同種であるか、またはインビトロでの遺伝子組み換え前駆細胞または幹細胞由来であってよい。好適な腫瘍抗原(抗原性ペプチド)はいずれも、本明細書中に記載される腫瘍関連の実施形態における使用に好適である。抗原の供給源には、様々な癌タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。抗原を、ペプチドとして、あるいは、無傷のタンパク質またはその一部として発現させることができる。無傷のタンパク質またはその一部は野生型であってもよく、または、変異させることもできる。
【0120】
好適な抗原の例として、前立腺特異的膜抗原(PSMA)および前立腺幹細胞抗原(PCSA)がある。
【0121】
ウイルス抗原特異的Tリンパ球(およびNK細胞)
例えば、免疫無防備状態の被験体における病原体感染または他の感染性疾患の処置において使用される好適な抗原には、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびインフルエンザウイルスに存在するウイルス抗原が挙げられるが、それらに限定されない。
【0122】
CTLの非精製供給源は、骨髄、胎児、新生児もしくは成人または他の造血系細胞供給源、例えば、胎児肝臓、末梢血または臍帯血のような、当該技術分野で公知の任意のものであってよい。様々な技術を、この細胞を分離するために用いることができる。例えば、負の選択方法により、非CTLを最初に除くことができる。mAbは、正および負の選択の両方のための特定の細胞系譜および/または分化段階に関連するマーカーを同定するために特に有用である。
【0123】
最終分化した細胞の大きな集団を比較的粗い分離によって最初に除くことができる。例えば、磁石ビーズ分離を、非常に多数の無関係な細胞を除くために最初に使用することができる。好ましくは、全造血系細胞の少なくとも約80%、通常少なくとも70%が細胞単離の前に除かれる。
【0124】
分離のための手法には、密度勾配遠心分離;リセッティング;細胞密度を変える粒子へのカップリング;抗体被覆された磁石ビーズによる磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;mAbに連結されるか、または、mAbとの併用で使用される細胞毒性剤(これには、補体および細胞毒素が含まれるが、これらに限定されない);および、固体マトリックス、例えば、プレート、チップに結合された抗体によるパンニング、水簸法、または、任意の他の好都合な技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
分離および分析のための技術には、フローサイトメトリーが含まれるが、これに限定されない。この場合、フローサイトメトリーは様々な程度の精巧さを有することができ、例えば、複数のカラーチャンネル、低角度光散乱検出チャンネルおよび鈍角光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネルを有することができる。
【0126】
細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)のような、死細胞と会合する色素を用いることによって、死細胞に対する選択をすることができる。好ましくは、細胞が、2%ウシ胎児血清(FCS)または0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む培地において、あるいは、任意の他の好適な、好ましくは無菌の等張性培地において回収される。
【0127】
従って、本発明は一般には、例えば、ウイルス特異的、または腫瘍特異的T細胞などの、第一抗原に結合して免疫応答性細胞を活性化する受容体、ならびに第二抗原に結合して、免疫応答性細胞を刺激する受容体を含む免疫応答性細胞を提供する。
【0128】
ベクター
免疫応答性細胞(例えば、T細胞、CTL細胞、NK細胞)の遺伝子改変は、実質的に均質な細胞組成物に組換えDNA構築物を形質導入することによって達成できる。好ましくは、レトロウイルスベクター(ガンマ-レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターのどちらか)が、DNA構築物を細胞に導入するために用いられる。例えば、抗原(例えば、腫瘍抗原もしくは変異体、またはそのフラグメント)に結合する受容体をコードするポリヌクレオチドを、レトロウイルスベクターにクローニングすることができ、発現を、その内因性プロモーターから、または、レトロウイルスの長末端反復から、または、目的とする標的細胞タイプに対して特異的なプロモーターから行わせることができる。非ウイルスベクターを同様に使用することもできる。
【0129】
腫瘍抗原特異的またはウイルス抗原特異的な細胞を提供するための細胞の最初の遺伝子改変のために、レトロウイルスベクターが一般には形質導入のために用いられるが、他の任意の好適なウイルスベクターまたは非ウイルス性送達系を使用することができる。少なくとも2つの共刺激リガンドを含む抗原提示複合体を含む細胞を提供するための細胞のその後の遺伝子改変のために、レトロウイルスによる遺伝子移入(形質導入)が同様に効果的であることが判明している。レトロウイルスベクターおよび適切なパッケージング系統の組合せもまた好適であり、この場合、カプシドタンパク質が、ヒト細胞に感染するために機能的である。様々な両種指向性のウイルス産生細胞株が知られており、これらには、PA12(Millerら、(1985)Mol.Cell.Biol.5:431-437);PA317(Millerら、(1986)Mol.Cell.Biol.6:2895-2902);およびCRIP(Danosら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464)が含まれるが、これらに限定されない。両種指向性でない粒子もまた好適である(例えば、VSVGエンベロープ、RD114エンベロープまたはGALVエンベロープによる偽型粒子、および当該技術分野で公知の任意のもの)。
【0130】
形質導入の可能な方法には、細胞を、例えば、Bregniら、(1992)Blood 80:1418-1422の方法によって、産生細胞と直接に共培養すること、あるいは、例えば、Xuら、(1994)Exp.Hemat.22:223-230の方法、および、Hughesら、(1992)J.Clin.Invest.89:1817の方法によって、適切な成長因子およびポリカチオンを用いて、または、それらを用いることなく、ウイルス上清単独または濃縮されたベクターストックと培養することも含まれる。
【0131】
他の形質導入用ウイルスベクターを、本発明の共刺激リガンドを免疫応答性細胞において発現させるために使用することができる。好ましくは、選択したベクターは、高い感染効率、ならびに安定な組込みおよび発現を示す(例えば、Cayouetteら、Human Gene Therapy 8:423-430,1997;Kidoら、Current Eye Research 15:833-844,1996;Bloomerら、Journal of Virology 71:6641-6649,1997;Naldiniら、Science 272:263-267,1996;およびMiyoshiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:10319,1997参照)。使用可能な他のウイルスベクターには、例えば、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、または、ヘルペスウイルス(例えば、エプスタイン・バールウイルスなど)が含まれる(同様にまた、例えば、下記文献のベクターを参照:Miller,Human Gene Therapy 15-14,1990;Friedman,Science 244:1275-1281,1989;Eglitisら、BioTechniques 6:608-614,1988;Tolstoshevら、Current Opinion in Biotechnology 1:55-61,1990;Sharp,The Lancet,337:1277-1278,1991;Cornettaら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322,1987;Anderson,Science 226:401-409,1984;Moen,Blood Cells 17:407-416,1991;Millerら、Biotechnology 7:980-990,1989;LeGal La Salleら、Science 259:988-990、1993;およびJohnson,Chest 107:77S-83S,1995)。レトロウイルスベクターが特によく開発され、臨床環境で使用されている(Rosenbergら、N.Engl.J.Med.323:370,1990;Andersonら、米国特許第5,399,346号)。
【0132】
非ウイルス法もまた、細胞におけるタンパク質の発現のために用いることができる。例えば、核酸分子は、核酸をリポフェクションの存在下で投与することによって(Feignerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413,1987;Onoら、Neuroscience Letters 17:259,1990;Brighamら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;Staubingerら、Methods in Enzymology 101:512、1983)、核酸をアシアロオロソムコイド-ポリリシンコンジュゲート化の存在下で投与することによって(Wuら、Journal of Biological Chemistry 263:14621,1988;Wuら、Journal of Biological Chemistry 264:16985,1989)、または、外科的条件下での顕微注入によって(Wolffら、Science 247:1465、1990)、細胞内に導入することができる。遺伝子移入のための他の非ウイルス的手段には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーションおよびプロトプラス融合を使用するインビボでのトランスフェクションが含まれる。リポソームもまた、DNAを細胞内に送達するために潜在的に有益であり得る。正常な遺伝子を被験体の患部組織に移植することもまた、正常な核酸をエクスビボでの培養可能な細胞タイプ(例えば、自系または異種の初代細胞またはその子孫)に移入することによって達成することができ、その後、その細胞(またはその後代)が、標的化組織に注入されるか、または、全身に注入される。トランスポゼースまたは標的ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはTALEヌクレアーゼ)を用いて、組み換え受容体も誘導させることができ、または取得することができる。RNAエレクトロポレーションによって、一過性発現を取得することもできる。
【0133】
ポリヌクレオチド療法において使用されるcDNA発現を、任意の好適なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーターまたはメタロチオネインプロモーター)から指令することができて、また、いずれかの好適な哺乳動物制御性エレメントまたはイントロン(例、延長因子1aエンハンサー/プロモーター/イントロン構造)によって調節することができる。例えば、所望により、特異的な細胞型における遺伝子発現を優先的に指令することが知られているエンハンサーを、核酸の発現を指令するために使用することができる。使用するエンハンサーには、組織特異的または細胞特異的なエンハンサーとして特徴づけられるエンハンサーが挙げられるが、それらに限定されない。あるいは、ゲノムクローンが治療構築物として使用される場合には、制御は同族の制御性配列によって媒介されてもよく、または、所望により、上記プロモーターまたは制御性エレメントのいずれかを含む、異種の供給源に由来する調節配列によって媒介されてもよい。
【0134】
得られる細胞は、その後、非改変細胞のための条件と類似する条件のもとで成長させることができ、それにより、改変細胞を様々な目的のために増殖し、使用することができる。
【0135】
ポリペプチドおよびアナログ
本発明はまた、CD19、αCD19、CD28、CD3ζ、4H1128z、B6H12.2 scFv、5C4 scFv、およびJ43 scFvのポリペプチドまたはそれらのフラグメントを含み、免疫応答性細胞で発現されるとき、それらの抗新生物活性を増強する様式で改変される(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)。本発明は、アミノ酸配列または核酸配列を、配列の変化を起こすことによって最適化する方法を提供する。そのような修飾には、いくつかの変異、欠失、挿入または翻訳後改変が含まれてよい。本発明はさらに、本発明の任意の天然に存在するポリペプチドのアナログを含んでいる。アナログは、本発明の天然に存在するポリペプチドと、アミノ酸配列の違いによって、または、翻訳後改変によって、または、その両方によって異なる場合がある。本発明のアナログは一般には、本発明の天然に存在するアミノ酸配列のすべてまたは一部と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える同一性を示す。配列比較の長さは、少なくとも5、10、15または20のアミノ酸残基であり、好ましくは少なくとも25、50または75のアミノ酸残基であり、より好ましくは100超のアミノ酸残基である。ここでも、同一性の程度を確認する1つの例示的な方法では、BLASTプログラムを使用することができ、e-3~e-100の確率スコアにより、関連性の高い配列が示される。改変には、ポリペプチドのインビボおよびインビトロでの化学的誘導体化が含まれ、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化またはグリコシル化が含まれる;そのような改変を、ポリペプチドの合成またはプロセシング、あるいは、その後に続く、単離された改変酵素による処理の期間中に生じさせることができる。アナログはまた、本発明の天然に存在するポリペプチドとは、一次配列における様々な修飾によって異なる場合がある。これらには、遺伝子変異体(天然型および誘導型の両方)(例えば、放射線照射または硫酸エタンメチルへの暴露によって、あるいは、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)、CSH Press、1989、またはAusubelら、前掲に記載されるような部位特異的変異誘発によるランダム変異から生じる変異体)が含まれる。L-アミノ酸以外の残基、例えば、D-アミノ酸または天然に存在しないアミノ酸または合成アミノ酸、例えば、ベータ(β)-アミノ酸またはガンマ(γ)-アミノ酸、を含有する環化されたペプチド、分子およびアナログもまた含まれる。
【0136】
全長のポリペプチドに加えて、本発明はまた、本発明のポリペプチドまたはペプチドドメインのいずれか1つのフラグメントを提供する。本明細書中で用いる場合、用語「フラグメント」は、少なくとも5個、10個、13個または15個のアミノ酸を意味する。他のいくつかの実施形態において、フラグメントは、少なくとも20個の連続するアミノ酸、少なくとも30個の連続するアミノ酸、または少なくとも50個の連続するアミノ酸であり、また、他の実施形態では、少なくとも60個~80個、100個、200個、300個またはそれを超える連続するアミノ酸である。本発明のフラグメントは、当業者に公知の方法によって産生することができ、または通常のタンパク質処理(例えば、生物学的活性のために必要としないアミノ酸の新生ポリペプチドからのアミノ酸の除去、あるいは選択的mRNAスプライシング事象または選択的タンパク質処理事象によるアミノ酸の除去)からもたらされてもよい。
【0137】
非タンパク質アナログは、本発明のタンパク質の機能的活性を模倣するためにデザインされた化学構造を有する。そのようなアナログは本発明の方法に従って投与される。そのようなアナログは、元のポリペプチドの生理学的活性を超える場合がある。アナログデザインの方法は当該技術分野で周知であり、アナログの合成は、得られるアナログが免疫応答性細胞で発現されたとき、元のポリペプチドの抗新生物活性を増大するように化学構造を改変することによるかかる方法に従って実施できる。これらの化学的改変には、代替となるR基を置換すること、および基準ポリペプチドの特定の炭素原子における飽和度を変化させることが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、タンパク質アナログはインビボでの分解に対して比較的耐性であり、これにより、投与時により長期に及ぶ治療効果がもたらされる。機能的活性を測定するためのアッセイには、下記の実施例において記載されるものが含まれるが、それらに限定されない。
【0138】
共刺激リガンド
少なくとも1つの共刺激リガンドとの相互作用により、免疫細胞(例えば、T細胞)の完全な活性化のために重要な抗原非特異的なシグナルがもたらされる。共刺激リガンドには、腫瘍壊死因子(TNF)リガンド、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15またはIL21)、および、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドが挙げられるが、それらに限定されない。腫瘍壊死因子(TNF)は、全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。その主要な役割は免疫細胞の調節にある。腫瘍壊死因子(TNF)リガンドは数多くの共通する特徴を共有している。これらのリガンドの大部分が、短い細胞質セグメントおよび比較的長い細胞外領域を含有するII型膜貫通タンパク質(細胞外C末端)として合成される。TNFリガンドには、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CD154、CD137L/4-1BBL、腫瘍壊死因子α(TNFα)、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子ベータ(TNFβ)/リンホトキシン-アルファ(LTα)、リンホトキシン-ベータ(LTβ)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Tall-1、グルココルチコイド誘導TNF受容体リガンド(GITRL)、およびTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が挙げられるが、それらに限定されない。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識プロセス、結合プロセスまたは接着プロセスに関与する細胞表面タンパク質および可溶性タンパク質の大きな一群である。これらのタンパク質は構造的特徴を免疫グロブリンと共有する。それらは免疫グロブリンドメイン(fold)を有する。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドには、ともにCD28に対するリガンドである、CD80およびCD86が挙げられるが、それらに限定されない。
【0139】
投与
本発明の遺伝子改変免疫応答性細胞(例えば、T細胞、NK細胞、CTL細胞またはそれらの祖先)を含む組成物を、新形成、病原体感染、または感染性疾患を処置するために被験体に全身的または直接的に提供することができる。1つの実施形態において、本発明の細胞が、目的とする器官(例えば、新形成に冒された器官)に直接に注入される。あるいは、遺伝子改変免疫応答性細胞を含む組成物が、例えば、循環系(例えば、腫瘍血管系)への投与によって、目的とする器官に間接的に提供される。増殖剤および分化剤を、T細胞、NK細胞、CTL細胞の産生をインビトロまたはインビボで増加させるために、細胞の投与前、投与中または投与後に提供することができる。
【0140】
改変細胞を、任意の生理学的に許容され得るビヒクル中で、通常の場合には血管内に投与することができるが、改変細胞を、骨、または、細胞が再生および分化のための適切な部位を見出し得る他の好都合な部位(例えば、胸腺)に導入してもよい。通常、少なくとも1×105個の細胞が投与され、これは最終的には1×1010個またはそれを超える個数に達する。本発明の遺伝子改変免疫応答性細胞は、精製された細胞集団を含むことができる。当業者は、蛍光活性化細胞分取(FACS)のような、様々な周知の方法を使用して、集団における遺伝子改変免疫応答性細胞の割合を容易に決定することができる。遺伝子改変免疫応答性細胞を含む集団における純度の好ましい範囲は、約50%~約55%、約55%~約60%、および約65%~約70%である。より好ましくは、純度は約70%~約75%、約75%~約80%、約80%~約85%である;さらにより好ましくは、純度は、約85%~約90%、約90%~約95%、および約95%~約100%である。投与量を、当業者は容易に調節することができる(例えば、純度の低下が、投与量の増大を必要とする場合がある)。細胞を注射、カテーテルなどによって導入することができる。所望により、様々な因子も含めることができ、これらには、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL7、IL12、ILlS、IL21、ならびに、それ以外のインターロイキン)、コロニー刺激因子(例えば、G-CSF、M-CSFおよびGM-CSFなど)、インターフェロン(例えば、ガンマ-インターフェロンなど)、および、エリスロポエチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明の組成物には、遺伝子改変免疫応答性細胞またはその祖先と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が含まれる。投与は自系または異種であることが可能である。例えば、免疫応答性細胞または前駆体を一被験体から得て、同じ被験体に、または異なる適合し得る被験体に投与することができる。本発明の末梢血由来の免疫応答性細胞またはその子孫(例えば、インビボ、エクスビボまたはインビトロ由来)を、局所注入(カテーテル投与を含む)、全身注入、局所注入、静脈内注入または非経口投与によって投与することができる。本発明の治療用組成物(例えば、遺伝子改変免疫応答性細胞を含有する医薬組成物)を投与するとき、治療用組成物は一般には、単位投与量の注入可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)に製剤化される。
【0142】
製剤化
遺伝子改変免疫応答性細胞を含む本発明の組成物は、都合良くは、選択されたpHに緩衝化されてよい無菌の液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散物または粘性組成物として与えることができる。液体調製物は通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物より、調製することが容易である。加えて、液体組成物は、特に注射によって投与することが幾分より便利である。他方で、粘性組成物を、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘度範囲内において配合することができる。液体組成物または粘性組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸塩緩衝化生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散用媒体であり得る担体を含むことができる。
【0143】
無菌の注射可能溶液を、本発明を実施する際に利用される遺伝子改変免疫応答性細胞を、所望の通り、その他の成分の様々な量とともに、適切な溶媒の必要とする量に配合することによって調製することができる。そのような組成物は、好適な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合であってよい。組成物はまた、凍結乾燥することができる。組成物は、所望の投与経路および調製物に依存して、様々な補助物質を含有できて、例えば、湿潤剤、分散剤または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝化剤、ゲル化剤または粘度増強添加剤、保存剤、矯味矯臭剤、着色剤などを含有できる。標準的な教科書、例えば、“REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE”,17版、1985(これは参照により本明細書中に組み込まれる)などを、好適な調製物を、過度な実験を伴うことなく調製するために参考にすることができる。
【0144】
抗菌性保存剤、酸化防止剤、キレート剤、および緩衝剤を包含する、組成物の安定性および無菌性を高める様々な添加剤を加えることができる。微生物の作用を防止することを、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって保証することができる。注射可能医薬品形態の長期に及ぶ吸収を、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、の使用によってもたらすことができる。しかしながら、本発明により、使用する任意のビヒクル、希釈剤または添加剤は、遺伝子改変免疫応答性細胞またはその祖先との適合性を有していなければならない。
【0145】
組成物は等張性にしてもよい。すなわち、組成物は、血液および涙液と同じ浸透圧を有することができる。本発明の組成物の所望の等張性を、塩化ナトリウム、または他の薬学的に許容され得る作用物質(例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、あるいは、他の無機溶質または有機溶質など)を使用して達成することができる。塩化ナトリウムが、特にナトリウムイオンを含有する緩衝液については好ましい。
【0146】
所望により、組成物の粘度を、薬学的に許容され得る増粘剤を使用して、選択されたレベルで維持することができる。容易かつ経済的に入手可能であり、また、共同して機能することが容易であるので、メチルセルロースが好ましい。他の好適な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の好ましい濃度は、選択された作用物質に依存する。重要な点は、選択した粘度を達成するであろう量を使用することである。明白ではあるが、好適な担体および他の添加剤の選択は、正確な投与経路および具体的な投与形態、例えば、液体投与形態の性質(例えば、組成物が、溶液、懸濁液、ゲルまたは徐放性形態または液体充填形態のような、別の液体形態に配合されることになるかどうか)に依存する。
【0147】
組成物の構成成分が、化学的に不活性であるように選択されるべきであること、また本発明に記載されるような遺伝子改変免疫応答性細胞の生存性または効力に影響を及ぼさないことを、当業者は認識するだろう。このことは、化学および薬学の原理に熟知した当業者には何ら問題とならず、あるいは、様々な問題を、標準的な教科書を参照することによって、または、本開示、および、本明細書中に引用される文書から、(過度な実験を伴わない)簡単な実験によって容易に避けることができる。
【0148】
本発明の遺伝子改変免疫応答性細胞の治療的使用に関する1つの検討事項は、最適な効果を達成するために必要な細胞の量である。投与されるべき細胞の量は、治療されている被験体に対して変化する。1つの実施形態において、104個~1010個の、105個~109個の、または106個~108個の本発明の遺伝子改変免疫応答性細胞がヒト被験体に投与される。より有効な細胞は、より小さな数でも投与され得る。一部の実施形態において、少なくとも約1×108個の、2×108個の、3×108個の、4×108個の、および5×108個の本発明の遺伝子改変免疫応答性細胞がヒト被験体に投与される。どのくらいが効果的な用量であると見なされるかを正確に決めることは、具体的な被験体のサイズ、年齢、性別、体重および状態を含めて、それぞれの被験体に対する個別的な要因に基づいてもよい。当業者は、投与量を本発明の開示および当該技術分野における知識から容易に確認することができる。
【0149】
当業者は、本発明の組成物における細胞、ならびに、所望による添加剤、ビヒクルおよび/または担体の量、また、本発明の方法において投与されるべき細胞、ならびに、所望による添加剤、賦形剤および/または担体の量を容易に決定することができる。典型的には、(活性な細胞(複数個の活性な細胞)および/または薬剤(複数の薬剤)に加えて)任意の添加剤が、0.001~50%(重量)溶液の量でリン酸塩緩衝生理食塩水中に存在して、その有効成分が、約0.0001wt%~約5wt%、好ましくは約0.0001wt%~約1wt%、さらにより好ましくは、約0.0001~約0.05wt%または約0.001~約20wt%、好ましくは約0.01~約10wt%、さらにより好ましくは、約0.05~約5wt%のように、マイクログラムからミリグラムの程度で存在する。当然のことではあるが、したがって、動物またはヒトに投与される任意の組成物について、および任意の特定の投与方法について、例えば好適な動物モデル(例えば、齧歯類、例えば、マウスなど)における致死量(LD)およびLD50を決定することによって、毒性を、並びに、好適な応答を誘発する、組成物(または複数の組成物)の投薬量、それにおける構成成分の濃度、および組成物(または複数の組成物)の投与時期を決定することが好ましい。そのような決定には、当業者の知識、本発明の開示および本明細書中に引用される文書からの過度な実験を必要としない。また、連続投与のための期間を、過度な実験を伴うことなく確認することができる。
【0150】
処置の方法
本明細書には、被験体における新形成を処置する方法が提供される。本明細書には、免疫無防備状態のヒト被験体のような被験体における病原体感染または他の感染性疾患を処置する方法も包含される。これらの方法は、所望の効果が現状の緩和または再発の防止であるならば、本発明のT細胞、NK細胞またはCTL細胞を、所望の効果に到達するための有効量で投与することを含む。処置のために、投与される量は、所望の効果を生じるための有効な量である。有効量を単回で、または一連の投与で提供できる。有効量をボーラス剤で、または連続灌流によって提供できる。
【0151】
「有効量」(または「治療的有効量」)は、処置において有益なまたは所望の臨床結果をもたらすために十分な量である。有効量を単回またはそれ以上の投与量で被験体に投与できる。処置に関して、有効量は、疾患の進行を緩和する、改善する、安定化する、反転する、または遅延するために、あるいは、疾患の病理的帰結を減少させるために十分な量である。有効量は、一般にケース・バイ・ケースで医師によって決定され、そしてそれは、当業者の技能の範囲内である。有効量に到達するための適切な用量を決定する際に、典型的にはいくつかの因子を考慮に入れる。これらの因子は、被験体の年齢、性別および体重、処置されている状態、状態の重篤度、ならびに、投与する抗原結合フラグメントの形態および有効濃度を含む。
【0152】
抗原特異的T細胞を使用する養子免疫療法について、典型的には106~1010個(例えば、109個)の範囲の細胞用量を注入する。遺伝子改変細胞を宿主に投与してその後分化が生じることにより、T細胞は特異的な抗原に対して特異的に指向するよう誘導される。T細胞の「誘導」には、抗原特異的T細胞を、例えば、欠失またはアネルギーによって不活性化することが含まれてもよい。不活性化は、例えば自己免疫障害において、耐性を確立または再確立するために特に有用である。改変細胞は、当該技術分野で公知の任意の方法によって投与でき、静脈内、皮下、鼻腔内、腫瘍内、クモ膜下、胸膜内、腹腔内、および、胸腺への直接投与が挙げられるが、それらに限定されない。
【0153】
治療方法
本発明は、免疫応答の増大の必要のある被験体において、免疫応答を増大させるための方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、被験体において、新形成を処置または防止する方法を提供する。本発明は、従来の治療的介入になじまない、血液の癌(例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫)、または卵巣癌を有する被験体を処置するために特に有用な治療法を提供する。治療に対する好適なヒト被験体は、典型的には臨床基準により区別され得る2つの処置群を含む。「進行した疾患」または「高い腫瘍負荷」を有する被験体が、臨床的に測定可能な腫瘍を有する被験体である。臨床的に測定可能な腫瘍は、(例えば、触診、CATスキャン、ソノグラム、マンモグラムまたはX線;それら自身ではこの集団を同定するには十分ではない、陽性の生化学的または組織病理学的マーカーによる)腫瘍の質量に基づいて検出可能な腫瘍である。本発明において具体的に例示される医薬組成物が、被験体の状態を緩和するという目的で、抗腫瘍応答を誘発するためにこれらの被験体に投与される。理想的には、結果として腫瘍質量の減少がもたらされるが、何らかの臨床的改善は利益となる。臨床的改善には、腫瘍のリスクまたは進行速度の低下、あるいは、病理的帰結の減少が含まれる。
【0154】
好適な被験体の第2群は、「アジュバント群」として当該技術分野で公知である。これは、新形成の病歴を有したことがあるが、別の治療法に対して応答性であった個体である。先の治療法には、限定されないが、外科的切除、放射線療法および従来の化学療法を含むことができた。結果的に、これらの個体は、臨床的に測定可能な腫瘍を何ら有していない。しかしながら、これらの個体は、最初の腫瘍部位の近くであるか、または、転移によるかのどちらかで、疾患進行のリスクがあることが疑われる。この群はさらに、高リスク個体および低リスク個体に細分化することができる。この細分化は、最初の処置の前または後で観測される特徴に基づいて行われる。これらの特徴は臨床技術分野で公知であり、それぞれの異なる新形成について適切に定義される。高リスクのサブグループの典型的な特徴は、腫瘍が隣接組織に浸潤しているか、またはリンパ節の関与を示す個体である。
【0155】
別の一群は、新形成に対する遺伝的素因を有しているが新形成の臨床的徴候を未だ明白に示していない群である。例えば、乳癌に関連する遺伝子突然変異について検査で陽性であるが未だ出産可能な年齢である女性は、防止的手術の実施に該当する程度にまで新形成が発生するのを防止するための処置において、本明細書中に記載される1つまたはそれ以上の抗原結合フラグメントの予防的受容を望むことができる。
【0156】
下記の新形成:神経膠芽細胞腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、腺癌腫、神経膠腫、軟組織肉腫および様々な癌腫(前立腺癌および小細胞肺癌を含む)のいずれかを有するヒト新形成被験体が、特に適切な被験体である。好適な癌腫にはさらに、腫瘍学の分野で公知の任意のものが含まれ、これらには、星状膠細胞腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、髄芽細胞腫、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)、軟骨肉腫、骨肉腫、膵管腺癌腫、小細胞肺腺癌腫および大細胞肺腺癌腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、扁平上皮癌腫、気管支肺胞癌腫、上皮腺癌、ならびに、それらの肝臓転移物、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、ヘパトーム、胆管癌腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、横紋筋肉腫、結腸癌腫、基底細胞癌腫、汗腺癌腫、乳頭癌腫、脂腺癌腫、乳頭状腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、胆管癌腫、絨毛癌腫、セミノーマ、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、多発性骨髄腫、ヴァルデンシュトレームマクログロブリン血症、ならびに、重鎖病、乳腫瘍(例えば、導管腺癌および小葉腺癌など)、子宮頸部の扁平上皮腺腫(squamous and adenocarcinoma)、子宮および卵巣の上皮癌腫、前立腺腺癌腫、膀胱の移行扁平上皮癌腫、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫(結節性およびびまん性)、形質細胞腫、急性白血病および慢性白血病、悪性メラノーマ、軟組織肉腫および平滑筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
被験体は疾患の進行した形態を有し得、その場合、治療の目的には、疾患進行の緩和または逆行、および/あるいは、副作用の改善が含まれ得る。被験体は既に治療を受けている状態の病歴を有し得、その場合、治療の目的には典型的には、再発のリスクの低下または遅延が含まれる。
【0158】
したがって、本発明は、被験体において新形成を処置または防止する方法であって、該方法は、腫瘍抗原に結合し、かつ免疫応答性細胞を活性化する受容体(例えば、TCR、CAR)、および免疫抑制活性を有する抗原(例えば、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンド)に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)をコードするベクターを含む有効量の免疫応答性細胞を投与することを含む方法を提供する。ある実施形態では、新形成は、血液の癌(例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫)、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、脳の癌、結腸癌、腸の癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、神経膠芽細胞腫、および咽喉癌からなる群より選択される。別の実施形態において、腫瘍抗原は、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、癌胎児抗原(CEA)、CDS、CD7、CDIO、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138,サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮グリコプロテイン-2(EGP-2)、上皮グリコプロテイン-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、受容体チロシン-プロテインキナーゼerb-B2,3,4、葉酸塩結合タンパク質(FBP)、胎児性アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-α、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ・インサート・ドメイン受容体(KDR)、ルイス(Lewis)Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1CAM)、メラノーマ抗原ファミリーA、1(MAGE-A1)、ムチン16(MUC16)、ムチン1(MUC1)、メソテリン(MSLN)、NKG2Dリガンド、癌精巣抗原NY-ES0-1、腫瘍胎児抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、腫瘍関連グリコプロテイン72(TAG-72)、血管内皮成長因子R2(VEGF-R2)、またはウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)のうちの1以上である。
【0159】
腫瘍抗原に結合し、かつ免疫応答性細胞を活性化する受容体(例えば、TCR、CAR)、および免疫抑制活性を有する抗原(例えば、CD47、PD-1、CTLA-4、およびそのリガンド)に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)をコードするベクターの表面発現の結果として、養子移入されたヒトT細胞またはヒトNK細胞には、腫瘍部位における増強された、選択的な細胞溶解活性が付与される。さらに、腫瘍またはウイルス感染へのそれらの局在化、および、それらの増殖の後、共刺激リガンドを発現するT細胞は、腫瘍部位またはウイルス感染部位を、生理学的な抗腫瘍応答または抗ウイルス応答に関与する広範囲の免疫細胞(腫瘍浸潤性のリンパ球、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞およびマクロファージ)のための伝導性の高い環境に変える。
【0160】
他のいくつかの実施形態において、本発明は、病原体感染(例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染または原生動物感染)を有する被験体を処置するための方法を提供する。本発明は、免疫無防備状態の被験体において免疫応答を増強するために特に有用である。本発明の方法を使用する処置の影響を受けやすい例示的なウイルス感染には、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびインフルエンザウイルスの感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
従って、本発明は、被験体において病原体感染を処置または防止する方法であって、該方法は、本明細書中に記載されるような有効量の免疫応答性細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0162】
キット
本発明は、新形成、病原体感染、免疫障害または同種異系移植片を処置または防止するためのキットを提供する。ある実施形態では、キットは、活性化抗原受容体および免疫抑制活性を有する抗原に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)を含む有効量の免疫応答性細胞を単位用量形態で含有する治療用または予防用組成物を含む。いくつかの特定の実施形態において、細胞はさらに、共刺激リガンドを含む。一部の実施形態において、キットは、治療用または予防用ワクチンを含有する減菌容器を含み、そのような容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパックまたは当該技術分野で公知の他の好適な容器形態が可能である。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属ホイルまたは医薬を保持するために好適な他の材料で製造することができる。
【0163】
所望により、免疫応答性細胞は、新形成、病原体感染、免疫障害または同種異系移植片を有する、あるいはこれらを発症する危険性がある被験体に上記細胞を投与するための説明書と一緒に提供される。説明書は一般には、新形成、病原体感染、免疫障害または同種異系移植片の処置または防止のために組成物を使用することについての情報を含む。他のいくつかの実施形態において、説明書は下記のうちの少なくとも1つを含む:治療剤の説明;新形成、病原体感染、免疫障害または同種異系移植片、あるいは、それらの兆候を処置するまたは防止するための用量計画および投与;注意;警告;適応症;使用禁忌;過用量情報;有害反応;動物薬理学;臨床研究;および/または参考文献。説明書は、(存在するときには)容器に直接に印刷されるか、または容器に適用されるラベルとして、あるいは、容器内または容器とともに供給される別紙、パンフレット、カードまたはフォルダーとしてであってよい。
【実施例0164】
本発明の実施では、別途示されない限り、当業者の範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術が用いられる。そのような技術は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,第2版(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984);“Animal Cell Culture”(Freshney,1987);“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996);”Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(MillerおよびCalos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)といった文献において十分に説明されている。これらの技術は本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生に適用することができ、また、そのようなものとして、本発明を組み立てる際に、また、本発明を実施する際に考慮することができる。特定の実施形態について特に有用な技術が下記の項において検討される。
【0165】
下記の実施例は、当業者に対して、本発明のアッセイ、スクリーニング、および治療方法をどのように組み立て、使用するかについての完全な開示および説明を提供するために記載されているものであり、これらの例示により本発明がこれに限定されるものではない。
【0166】
実施例1.キメラ抗原受容体(CAR)および抗SCD47 scFvを共発現するT細胞が腫瘍を根絶した
ヒトCD47と特異的に結合するscFvを生成し、このscFvおよび腫瘍抗原(CD19)を認識するCARで改変されたヒト末梢血T細胞は、インビトロでの抗腫瘍有効性、ならびに前臨床モデルでの抗腫瘍有効性の上昇を示した。
【0167】
CAR配列およびscFv配列を配列決定することによって確認しながら、1928z-2A-B6H12.2を含む構築物(
図1~5)を生成した。さらに、卵巣癌抗原MUC-CDに特異的なCARを用いて対照構築物を生成し、4H1128zとした(
図6)。カッパリーダー配列を用いた構築物のために、安定な産生細胞株を生成し、フローサイトメトリー(
図7A)で確認した。フローサイトメトリーに基づくアッセイにおいて、分泌された抗CD47 scFvを含有するパッケージ細胞株からの上清は、CD47抗体がNalm-6腫瘍細胞およびRaji腫瘍細胞に結合するのを妨げることができた。またパッケージ細胞からの上清とともにインキュベートした腫瘍細胞を、抗c-mycタグ抗体で染色し、scFvの結合を確認した(
図7B)。
【0168】
パッケージ細胞を用いてヒト末梢血T細胞の形質導入を行った。形質導入効率は、CAR発現のフローサイトメトリー分析によって確認した(
図8A)。分泌されたscFvは、自己分泌機能が可能であった。抗CD47抗体は、1928z T細胞と比較して、1928z-2A-B6H12.2 T細胞への結合が減少した。抗c-mycタグ抗体での陽性染色は、結合されたscFvを示した(
図8B)。形質導入されたT細胞の表現型をフローサイトメトリーで調べたところ、1928z-2A-B6H12.2細胞と1928z T細胞は、CD62Lを除き、類似していることが示され、1928z-2A-B6H12.2 T細胞上で減少していることがわかった(
図9A)。抗CD47 scFvを産生するT細胞の機能を、マルチパラメータ・フローサイトメトリーおよび標準的な51Cr放出アッセイを用いて調べた。1928z T細胞と比較したとき、1928z-2A-B6H12.2 T細胞は、同等のサイトカイン産生と細胞傷害性機能を有することがわかった(
図9Bおよび9C)。
【0169】
1928z-2A-B6H12.2 T細胞がインビボで腫瘍に反応する能力を、前臨床SCIDベージュマウスモデルを用いて調べた。SCIDベージュマウスに、1×l0
6の、ホタルルシフェラーゼを発現するように改変されたNalm-6腫瘍細胞を静脈注射し、3日後、マウスを5.7×10
6のCAR
+1928zまたは1928z-2A-B6Hl2.2または対照4Hll28z-2A-B6Hl2.2 T細胞で同じく静脈注射により処置した。腫瘍の進行を臨床的に生物発光イメージングでモニターした。腫瘍を有するマウスの1928z-2A-B6Hl2.2 T細胞での処置は、1928z T細胞での処置に比べて、腫瘍の負荷を軽減し、腫瘍を有するマウスの生存率を高めた(
図10Aおよび10B)。
【0170】
実施例2.キメラ抗原受容体(CAR)および抗ヒトPD-1 scFvを共発現するT細胞がCARの増殖を増加させ、発現を維持した
抗PD-1抗体からのV
H鎖およびV
L鎖に基づいて、抗ヒトPD-1 scFvを生成した(クローン5C4)(米国特許第8,008,449号)。5C4 scFvは、カッパリーダー配列、セリン-グリシンリンカー、およびc-mycタグを含むようにデザインされた(
図11)。このscFv構築物をSFGレトロウイルスバックボーンにクローニングし、1928z-2A-5C4および4H1128z-2A-5C4を生成させた(
図12および
図13)。ヒトPD-1に結合する高親和性scFvを開発するために(例えば、1928z/4H1128z CAR T細胞内で発現させるために)、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングして、ヒトPD-1(および潜在的にマウスPD-1)に特異的に結合するscFvを決定した。
【0171】
安定な293Glv9パッケージ細胞株を産生させ、その1928z CARおよび4H1128z CARの発現をフローサイトメトリーで評価した(
図14)。これらのパッケージ細胞株からの上清を用いて、ヒト末梢血T細胞の形質導入を行った。形質導入効率は、フローサイトメトリー分析によって確認し、CAR発現を検出した(
図15)。
【0172】
この抗ヒトPD-1 scFvが、人工的抗原提示細胞(aAPC)に応答してT細胞の増殖を増加させる能力を調べた。PD-L1陽性腫瘍細胞および3T3 aAPCを研究のために生成した(
図16)。形質導入されたT細胞と3T3 aAPC発現ヒトCD19、ヒトB7.1、およびヒトPD-L1の共培養の後、1928z-2A-C4 T細胞は、1928z T細胞と比べて、CARの増殖を増加させ、発現を維持した(
図17)。1928z CARと抗PD1 scFvを共発現させるT細胞の表現型および抗腫瘍機能を、フローサイトメトリー、ルミネッツ(luminez)サイトカイン分析研究、
51クロム放出アッセイ、およびSCIDベージュ前臨床モデルを用いて決定し、インビボで抗腫瘍機能を決定することができる。
【0173】
実施例3.キメラ抗原受容体(CAR)および抗マウスPD-1 scFvの共発現は、マウスT細胞を刺激する
抗PD-1抗体クローンJ43からのVHおよびVLに基づいて、抗マウスPD-1 scFvを生成した(米国特許第7,858,746号、Honjoら)。J43 scFvは、マウスカッパ鎖リーダー配列、セリン-グリシンリンカー、およびc-mycタグを含むようにデザインした(
図18)。このscFv構築物を、ヒトCD19、またはマウスC28およびマウスCD3zetaを介してシグナル伝達を行うヒトMUC-CDを標的とするCARを発現する、SFGレトロウイルスバックボーンにクローニングし、マウスT細胞を刺激した。前述したように、これらの構築物19m28mz-IRES-J43(
図19)および4H11m28mz-IRES-J43(
図20)を使用して、安定したPhoenixパッケージ細胞株を生成し、一次ネズミ細胞を遺伝子的に改変する(Leeら、Cancer Res 2011,71(8):2871)。マウス19m28mz T細胞および19m28mz-IRES-J43 T細胞を、ヒトCD19およびマウスPD-L1を発現するように改変されたEL4胸線腫瘍細胞と共に培養し、生存性可能細胞の数およびCFSE標識をモニターするために、マウスT細胞を増殖させる。
【0174】
MUC-CD抗原を標的とする4H11m28mz CARを発現するネズミT細胞について、MUC-CDおよびマウスPD-L1を発現するように改変されたIDS腫瘍細胞に対する反応における機能を評価することができる(Chekmasovaら、Clin Cancer Res,2010,16:3594)。前述したように、ネズミPD-1に結合するヒトscFvを、SFG-19m28mzベクター構築物および4H11m28mzベクター構築物にクローニングし、ネズミT細胞を改変するために用いる。ネズミPD-1に結合するヒトscFvを発現するように改変されたT細胞のインビボ抗腫瘍効果を評価するための同系モデルが入手可能である:C57BL/6マウスの腹腔内に接種されるID8-MUC-CD腫瘍細胞を用いた卵巣癌腫瘍モデル、およびマウスCD19のかわりにヒトCD19を発現する、ヒトCD19を発現するように改変されたEL4胸線腫瘍細胞とともに接種されるトランスジェニックマウス(Pegramら,Blood 2012,119(18):4133)。したがって、その抗腫瘍効果は、免疫適格モデル中で評価でき、したがって、抗PD-1 scFvが腫瘍微小環境に及ぼす影響を評価することができる。
【0175】
実施例4.免疫細胞中でのキメラ抗原受容体(CAR)およびアゴニストscFvの共発現
ある実施形態では、本発明は、抗原結合受容体(例えば、CARまたはTCR)、およびアゴニスト免疫刺激活性を有する抗原(例えば、CD28、OX-40、4-1BB、およびそのリガンド)に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)を発現する免疫細胞を提供する。共刺激性分子4-1BBを標的とするアゴニストscFvを生成するため、3H3ハイブリドーマ細胞株を取得した(Shufordら、J.Exp.Med、1997、186:47-55;Professor Mick Croft((La Jolla Institute for Allergy and Immunology)から提供を受けた)。共刺激性分子OX-40を標的とするアゴニストscFvを生成するため、OX-86ハイブリドーマ細胞株を取得した(al-Shamkhaniら、Eur.J.Immunol1996、26(8):1695-9;European Collection of Cell Cultures(カタログ番号:96110601))。ハイブリドーマmRNAは、QIAgen RNAeasyキットを用いて、製造元(QIAgen、CA、USA)の指示にしたがって、細胞から単離し、その後、New England Biolabs Protoscript AMV First strand cDNA合成キットを用い、製造元(New England Biolabs、MA、USA)の指示にしたがって、cDNAを調製した。その後、以下の縮重プライマーを用いて、可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)をPCR増幅した。
【0176】
【化13】
VHとVLをscFvに組み立てるために、VH鎖およびVL鎖、ならびにc-mycタグおよびネズミIgカッパ鎖またはCDSリーダー配列のPCR中に、セリン-グリシンリンカーを添加する。得られたポリヌクレオチドを、1928zキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、既存のレトロウイルス発現ベクター(SFGバックボーン)にクローニングし、SFG-1928z-2A-3H3または1928z-2A-OX86を生成する。
【0177】
抗マウスPD-1 J43 scFvについて説明したように、安定したパッケージ細胞株を生成し、同様の養子T細胞移入ネズミモデルにおいて試験する。
【0178】
本明細書に示した結果は、scFv分子を発現する遺伝子改変CAR T細胞(「武装化CAR T細胞」)が免疫応答性であること、「過酷な」腫瘍微小環境を克服することができること、したがって、新形成の処置において有効であることを示している。CAR
+T細胞を、免疫制御機能を有するアンタゴニストscFvを分泌するように改変する(
図21)。CARの同族抗原に対する活性化後(1)、「武装化」CAR改変T細胞を、阻害性PD-1 T細胞受容体に拮抗するscFvを注入されたCAR改変T細胞上および抗腫瘍エフェクター機能を増強する内因性の抗腫瘍T細胞上で分泌するよう誘導してもよく(2)、阻害性CTLA-4 T細胞受容体に拮抗するscFvを、注入されたCAR改変T細胞上および抗腫瘍エフェクター機能を増強する内因性の抗腫瘍T細胞上で、分泌するよう誘導してもよく(3)、あるいは、腫瘍細胞上に発現したCD47受容体に拮抗するscFvを分泌するよう誘導し、宿主の先天的抗腫瘍免疫応答による認識に対する腫瘍細胞の覆いを逆転し、宿主マクロファージによる腫瘍の認識と根絶を導いてもよい。
【0179】
他に記載しない限り、本明細書に報告された結果は、下記の方法および材料を用いて取得した。
【0180】
抗CD47 B6H12.2 scFvの生成
B6H12.2ハイブリドーマ細胞株は、American Tissue Culture Collection(ATCC,VA,USA;カタログ番号:HB-9771)から取得した。B6H12.2 mRNAは、QIAgen RNAeasyキットを用いて、製造元(QIAgen、CA、USA)の指示にしたがって、ハイブリドーマ細胞から単離し、cDNAは、New England Biolabs Protoscript AMV First strand cDNA合成キットを用い、製造元(New England Biolabs、MA、USA)の指示にしたがって調製した。可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、カッパリーダー配列、セリン-グリシンリンカー、およびc-mycタグを組み込むようにデザインしたプライマーを用いて(
図1参照)、以下のようにPCR増幅した。
【0181】
【化14】
上記デザインに加え、CD8L配列を有するscFvを生成し、scFvのT細胞からの移出のために効率的なリーダー配列を、以下の選択的なフォワードプライマーを用いて決定した。
【0182】
【化15】
VHおよびVL PCR生成物を、製造元(Invitrogen、NY,USA)の指示にしたがって、pCR2.1TOPOにクローニングした。M13F2およびM13R2プライマー(Invitrogen)を用いた配列決定は、MSKCC DNAシーケンシングコア施設により行われ、VHおよびVL生成物双方の配列を確認した。VHおよびVL PCR生成物、およびプライマー1または5および4を用いて、オーバーラッピングPCRを行い、抗CD47 scFvを生成した(
図1参照)。
【0183】
抗CD47 scFv構築物を、1928zキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、既存のレトロウイルス発現ベクター(SFGバックボーン)にクローニングし、SFG-1928z-2A-B6Hl2.2を生成した。SFG-1928z-2A-B6Hl2.2DNAを配列決定し、配列を確認した。
【0184】
ヒトT細胞のための安定したパッケージ細胞株の生成
安定したパッケージ細胞株を生成するため、リン酸カルシウム・トランスフェクション・キットを用いて、製造元(Promega)の指示にしたがって、H29細胞を、10μgのSFG-1928z-2A-B6Hl2.2 DNAとともに、一時的にトランスフェクトした。H29上清からの上清を用いて、293Glv9細胞を形質導入した。次いでそれをサブクローニングして、安定したパッケージ細胞を生成した。2つのサブクローン(クローン5およびクローン6)の選択は、1928z CARの発現と293Glv9上清がヒト末梢血T細胞を形質導入する能力に基づいて行った(12dll抗体での染色後のフローサイトメトリーによって判定した)。ヒト末梢血T細胞の形質導入は、前述のように行った(Brentjensら、Clin Cancer Res 2007,13(18Ptl):5426)。
【0185】
抗CD47 scFvの産生/機能の評価
抗CD47 scFvの1928z-2A-B6Hl2.2 293Glv9および形質導入されたヒト末梢血T細胞からの産生を、これらの細胞の上清中で、CD47+腫瘍細胞(RajiおよびNalm-6)をインキュベートすることによって判定した。続いて腫瘍細胞を洗浄し、蛍光コンジュゲート抗c-mycタグ抗体(Cell Signaling,MA,USA)で染色し、腫瘍細胞に結合した上清由来のタンパク質を検出した。腫瘍細胞も蛍光コンジュゲート抗CD47(クローンB6Hl2.2,eBioscience)で染色し、B6Hl2-scFvがCD47遮断する能力を検出した。
【0186】
インビボ養子移入モデル
マウスに、ホタルルシフェラーゼを発現するように改変したl×106のNalm-6を静脈注射した(0日目)。3日目、マウスを5.7×106のCAR+T細胞を同じく静脈から接種し、処置した。腫瘍の進行を、生物発光イメージングを用いて、前述のように臨床的にモニターした(Santosら、Nature Medicine 2009,15(3):338)。
【0187】
5C4抗ヒトPD-1 scFvの生成
ヒトPD-1に特異的に結合する抗体、クローン5C4の配列を上記のように取得した。この配列をカッパリーダー配列、セリン-グリシンリンカー、およびc-mycタグを含むように改変した。GeneArt(Invitrogen,
図9)から購入した。このscFvのSFGレトロウイルスバックボーンへのクローニング、安定したパッケージ細胞の生成、ヒト末梢血T細胞の形質導入、および形質導入効率の評価は、上記のように達成した。
【0188】
抗ヒトPD-1機能の評価
PD-1リガンドであるPD-L1を、200ng/ml組み換えヒトインターフェロン-ガンマ(RnD systems、MN、USA)中でインキュベートしたSKOV3(ATCC)腫瘍細胞からPCR増幅した。ヒトPD-L1の増殖に使用されたプライマーを以下に示す。
【0189】
【化16】
ヒトPD-L1配列を、SFGレトロウイルスバックボーンにクローニングし、3T3細胞株、Raji細胞株、およびNalm-6細胞株に、前述のように形質導入した(Brentjensら、Clin Cancer Res、2007,13(18Pt1):5426)。細胞を抗PD-L1(クローンMIH1、BD Pharmingen、CA、USA)で染色し、FACSソーティングしてPD-L1を発現した細胞群の合計を確認した(
図14)。
【0190】
ヒト1928z-2A-5C4-および1928z T細胞を3T3(CD19/B7.1/PD-L1)aAPCと培養し、生存可能な細胞の計数を、トリパンブルー色素排除試験法によって行った。そしてフローサイトメトリーを行い、CARの発現を判定した。これは、3T3(CD19/B7.1)aAPCを用いて培養した場合のT細胞の増殖と相関していた。
【0191】
抗マウスPD-1-scFvの生成
ネズミPD-1に特異的に結合する抗体、クローン名J43、の配列を上記のように取得した。この配列をカッパ鎖リーダー配列およびc-mycタグをセリン-グリシンリンカーと共に含むように改変し、scFvを形成させた。GeneArt(Invitrogen、
図16)から購入した。これを、ネズミCARをコードする既存のレトロウイルス発現ベクター(SFG)にクローニングした。ここでは、シグナル伝達はマウスCD28およびCD3ゼータ分子によって媒介される。それぞれB細胞および卵巣腫瘍を標的とするように19m28mz-IRES-J43および4H11m28mz-IRES-J43を生成した(
図17および18)。
【0192】
抗マウスPD-1機能の評価
PD-1リガンドであるPD-L1を、Renca腫瘍細胞(ATCC)からPCR増幅した。マウスPD-L1の増幅に使用されたプライマーを以下に示す。
【0193】
【化17】
抗マウスPD-1-scFvを、SFGレトロウイルスバックボーンにクローニングし、3T3 aAPC細胞株、IDS細胞株およびEL4細胞株に形質導入した。抗PD-L1(クローンMIH1、BD Pharmingen)で染色した細胞をFACSソーティングしてPD-L1を発現した細胞群の合計を確認した。
【0194】
CTLクロム放出殺傷アッセイ
望ましい抗原を発現する標的T細胞を、51Crで標識し、エフェクター:標的比を減少させて、T細胞と共培養した。4時間培養した後、上清を除去し、クロムから放出される放射能の測定に用いた。25T細胞と培養したものでない標的細胞の背景放射能を差し引き、0.2%TritonX-100を用いて完全に溶解された標的細胞から測定した放射能で割ることによって、特異的溶解を判定した。
【0195】
実施例5.遮断CD47によるCAR T細胞治療の向上
T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)の発現を介して腫瘍抗原を標的とするように遺伝子的に改変することができる。CD19特異的CAR T細胞の養子移入は、血液学的悪性腫瘍を有する患者の一部において臨床的有効性を示してきた。しかしながら、リンパ節腫脹の大きな慢性リンパ球性白血病患者は、CAR T細胞治療に対する反応は最適以下である。さらに、CAR T細胞治療は、臨床治験において、固形腫瘍に対する有効性を実証できていない。この実施例では、CAR T細胞の臨床的有効性を、CAR T細胞からのCD47遮断単鎖可変フラグメント(scFv)の分泌を介した先天的な抗腫瘍免疫応答を取り入れることにより増強した。従前の研究では、腫瘍細胞上のCD47とマクロファージ上のSIRPa間の相互作用の遮断が、腫瘍細胞のファゴサイトーシスを引き起こすことを示している。この効果を利用するために、CD19特異的CAR(1928z)を発現させ、ヒトCD47に特異的なscFvを分泌させるべくT細胞を改変した。そして、B6H12.2ハイブリドーマからクローニングした(1928z/B6H12.2 T細胞)。1928z/B6H12.2 T細胞は、ヒトCD47に特異的な機能的scFvを分泌することが示された。それは、CAR媒介性のサイトカイン分泌、または細胞傷害性に、インビトロで影響を及ぼさなかった。1928z T細胞ではない、1928z/B6H12.2 T細胞からの上清は、マクロファージを刺激して、腫瘍細胞をインビトロで貪食させた。1928z/B6H12.2 T細胞の養子移入は、前臨床ネズミモデルにおいて、高い抗腫瘍効果を媒介し、Nalm6腫瘍を根絶させた。この新規な戦略は、CAR T細胞媒介効果、および腫瘍細胞の先天的な免疫細胞媒介性の破壊を組み合わせている。それは、CAR T細胞治療の抗腫瘍有効性を高めるものである。
【0196】
実施例6.構成的なCD40L発現を介したキメラ抗原受容体で改変されたT細胞の抗腫瘍有効性の増強
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する、遺伝子的に改変されたT細胞を用いた養子細胞治療は、B-ALLを有する患者にとって将来有望な治療である。しかしながら、大半の臨床治験において、CAR-改変T細胞は、特に、B細胞低悪性腫瘍および固形腫瘍においては、有意な治療有益性を示せなかった。この実施例の章に示した実験において、我々は、T細胞を遺伝子操作して構成的にCD40リガンド(CD40L、CD154)を発現させることによって、CAR改変T細胞の抗腫瘍有効性をさらに増強させる。構成的にCD40リガンドを発現させるように改変されたT細胞(CD40L-改変T細胞)は、炎症誘発TH1サイトカインの増殖および分泌を増加させた。さらに、CD40L-改変T細胞は、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)、HLA分子(クラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体(CD95)の、腫瘍細胞表面上でのアップレギュレーションによって、CD40+腫瘍細胞の免疫原性を強化した。さらに、CD40L改変T細胞は、成熟を誘導し、炎症誘発サイトカインIL-12の単球由来樹状細胞による分泌を刺激した。最終的に、全身性リンパ腫の異種間移植モデルにおいて、腫瘍を標的とするCAR/CD40L T細胞は、CD40+腫瘍に対する細胞傷害性を増加させ、腫瘍を有するマウスの生存を延ばした。これらの前臨床データは、CD40Lを構成的に発現するようにさらに改変されたCAR T細胞の臨床適用が期待される抗腫瘍有効性の増強と、臨床結果の改善を有することを裏付けるものである。
【0197】
材料と方法
細胞培養
DoHH2、Raji、およびNALM-6(American Type Culture Collection)腫瘍細胞株を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)緩衝剤、および2-メルカプトエタノール(Invitrogen)を添加したRPMI 1640培地(Gibco)中に保持した。293GP-GLV9レトロウイルス産生細胞株は、以前に記載されており、10%FBSを添加したDMEM(Invitrogen)中で培養した29。NIH-3T3人工抗原提示細胞(AAPC)を、前述のように10%熱不活化ドナーウシ血清(DCS)を添加したDMEM中で培養した30。ヒトT細胞を、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)IRB承認プロトコル95-054のもと、製造元の指示に従ってBD Vacutainer CPTチューブ(Becton Dickinson)を用いて、健康なドナーの末梢血から単離した。患者T細胞とCLL細胞を、MSKCC IRB-承認プロトコル06-138のもと処置を受けている患者から取得した。Dynabeads ClinExVivo CD3/CD28ビーズ(Invitrogen)を用いて単離した。T細胞を、10%FBSおよび20IU/mLのIL-2(R&D Systems)が添加されたRPMI 1640中で培養した。単球由来樹状細胞(moDC)は、健康なドナーの組織培養の塑性的付着末梢血単核細胞(PBMC)から取得し、1%プールヒトA/B血清、HEPES緩衝剤、2-メルカプトエタノール(Invitrogen)、インターロイキン-4(IL-4;500IU/ml-R&D Systems)、および顆粒球-単球コロニー刺激因子(GM-CSF;1000IU/ml、R&D Systems)が添加されたRPMI 1640中で、前述のように培養した31。すべての培地には、2mmol/LのL-グルタミン(Invitrogen)、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)が添加されていた。
【0198】
レトロウイルス構築物の構築
ヒトCD40L cDNAを、単離された健康なドナーPBMCから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。
プライマー(1)5’-CACGTGCATGATCGAAACATACAACCAAACTTCTCCCCGATCTGC-‘3 [配列番号:3]、および
(2)5’-CTCGAGGGATCCTCAGAGTTTGAGTAAGCCAAAGGA-3’[配列番号:4](
図22A)。
ヒトCD40Lをコードするガンマ-レトロウイルスベクターを、SFGベクターバックボーンを用いて構築した
32。1928zおよびPz1(抗前立腺特異的膜抗原CAR;抗PSMA)SFG-ベクターの構築は、以前に記載されている
33,34。1928z-IRES-40LおよびPz1-IRES-40Lガンマ-レトロウイルスベクターの構築は、オーバーラッピングPCRを用いて行った(
図26A)
35。
【0199】
ヒトT-リンパ球のレトロウイルス形質導入
安定した293GP-GLV9レトロウイルス産生細胞株の生成およびヒトT細胞の遺伝子的改変は以前に記載されている29,36。T細胞形質導入については、単離された、健康なドナーのPBMCをフィトヘマグルチニン(PHA)(2μg/mL)(Sigma)で活性化した。一方、患者由来T細胞は、製造元の推奨に従って、Dynabeads ClinExVivo CD3/CD28ビーズを用いて単離、活性化、および増殖した。以前に記載されているように、活性化されたT細胞を、レトロネクチンがコーティングされた非組織培養で処理したプレート上でレトロウイルス形質導入した36。遺伝子移入は、7日目にフローサイトメトリーによって評価した。対照モック形質導入T細胞を、上清を空293GP-GLV9細胞培養から誘導した以外は同様に、生成した。CD40L改変T細胞の増殖は、guava(登録商標)ViaCount試薬(EMD Millipore)を有するguava(登録商標)easyCyte(登録商標)細胞カウンターを製造元の指示に従って用いて評価した。インビボ実験のための改変T細胞の増殖は、以前に記載されているように共刺激(CD80)とともに標的抗原(CD19またはPSMA)を発現するように遺伝子操作されたNIH-3T3ネズミ線維芽細胞由来の繊維芽細胞AAPCを用いて行った30。
【0200】
[共培養アッセイ]
腫瘍細胞(DOHH2、Raji、Ph+ALL3.1、NALM-6)を、CD40L改変T細胞およびモック形質導入T細胞と、5:1の比率で共培養した。3日後にフローサイトメトリーを行い、腫瘍細胞の表現型を判定した。moDCs(2.5×105)を、自系CD40L改変T細胞またはモック形質導入T細胞と1:5の比率で共培養し、24時間後、組織培養上清を、IL-12p70について、Luminex IS100システム(下記参照)上で分析した。moDCも、CD40L改変T細胞およびモック形質導入T細胞と5:1の比率で共培養し、24時間後、フローサイトメトリーによって、moDCの表現型を分析した。
【0201】
[細胞傷害性アッセイ]
形質導入されたT細胞の細胞溶解能を、以前に記載のように、標準的な51Cr放出アッセイを用いて判定した34。
【0202】
[サイトカイン検出アッセイ]
組織培養上清におけるサイトカイン検出は、MILLIPLEXヒトサイトカイン検出システム(Millipore Corp.)をLuminex IS100システムおよびIS 2.3ソフトウェア(Luminex Corp.)と併せて製造元の指示にしたがって使用して、評価した。
【0203】
[フローサイトメトリー]
フローサイトメトリーは、FACScanサイトメータを用いて行い、FlowJoバージョン9.2ソフトウェア(Tree Star)を用いてデータ解析を行った。CAR発現は、CAR特異的アメリカンハムスター・モノクローナル抗体19E3(1928z)ならびに12D11(1928zおよびPz1、MSKCCモノクローナル抗体施設)を用いて検出した。CD40Lの発現は、マウス抗ヒトCD154(BD Biosciences)を用いて検出した。ヒトT細胞を、マウス抗ヒトCD3(BD Biosciences)、CD4、およびCD8(Invitrogen)を用いて染色した。moDCsは、マウス抗ヒトCD11b、HLA-DR、CD83、およびCD86(Invitrogen)を用いて染色した。DOHH2、Raji、およびNALM6腫瘍細胞表現型は、マウス抗ヒトCD19、CD40、CD54、CD80、CD86、HLA-クラスIおよびHLA-DR(Invitrogen)、CD58、CD70、ならびにCD95(BD Biosciences)を用いて検出した。
【0204】
[CAR T細胞インビボ研究]
8~12週齢のSCID/Beige(CB17.Cg-PrkdcscidLystbg-J/Crl)マウス(Charles River Laboratories)に、DOHH2腫瘍細胞(5x105個の細胞)を静脈内注射により接種した。2日後、マウスに静脈から、形質導入T細胞(1x107個のCAR T細胞)を注入した。腫瘍の進行を臨床的にモニターし、疾患が臨床的に明らかになったとき(後肢の麻痺の発症または刺激に対する反応の低下)、マウスを安楽死させた。すべてのネズミ研究は、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Institutional Animal Care and Use Committee承認プロトコル(00-05-065)にしたがって行った。
【0205】
[統計学的分析]
すべての解析は、Graphpad Prism5.0ソフトウェアを用いて計算し、生存性データは、ログ-ランク分析を用いて評価し、他のすべての解析は、マン・ウィットニーの検定(片側)を用いて行った。
【0206】
結果
ヒトT細胞によるCD40Lの構成的発現
まず、健康なドナーからのT細胞を、CD40Lレトロウイルスベクターを用いて形質導入した(
図22A)。T細胞のCD40L遺伝子によるレトロウイルス形質導入は、いつも≧40%の遺伝子移入をもたらし、CD4+細胞およびCD8+細胞の双方のサブセットにおいて、CD40Lの安定した発現を伴う結果となった(
図22B)。CD40L改変T細胞の増殖は、同じ3ドナーから発生したモック形質導入T細胞と比較して、有意に増加した(
図22C)。CD40L改変T細胞からの組織培養培地を分析したところ、可溶性CD40L(sCD40L)が予測通り有意に増加し、かつモック形質導入T細胞と比較したとき、炎症誘発サイトカインIFN-γおよびGM-CSFの分泌が有意に増加することが示された(
図22D)。
【0207】
CD40L改変T細胞は、CD40+腫瘍細胞株および患者由来のCLL細胞の双方の表現型を変える
CD40L/CD40経路が腫瘍細胞の表現型を改変する能力を調べるために、CD40+B細胞腫瘍細胞とCD40L改変T細胞もしくはモック形質導入T細胞の共培養を行った。CD40L改変T細胞を用いる培養は、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)、HLA分子(HLAクラスIおよびHLA-DR)、ならびにFas死受容体(CD95)のDOHH2腫瘍細胞表面上でのアップレギュレーションを導いた(
図23A)が、モック形質導入T細胞の培養ではそれはなかった。表現型の変化はまた、DOHH2腫瘍細胞を高いレベルのsCD40Lを含有するCD40L-改変T細胞からの条件培地で培養する場合にも認められた(
図28)。腫瘍細胞上でのCD40発現が腫瘍細胞表現型を変えるのに必要であるかどうかを判定するために、CD40-腫瘍細胞株(NALM6)とCD40L-改変T細胞およびモック形質導入T細胞との共培養を行った。これらの研究は、腫瘍細胞表現型においてCD40L媒介性の変化を誘導するために腫瘍によるCD40発現の必要性を立証する表現型の変化をもたらさなかった(
図23B)。
【0208】
この効果を、臨床的に関連する設定においてさらに確認するために、我々は、CLLを有する患者由来のCD40L改変T細胞と、自系CLL腫瘍細胞とを共培養した。CLL患者由来T細胞のレトロウイルス形質導入は、いつも≧40%の遺伝子移入をもたらし、CD40L遺伝子の安定した発現を伴う結果となった(
図24A)。この設定において、モック形質導入T細胞ではなく、この患者由来CD40L改変T細胞は、自系CLL細胞の表面上で、共刺激分子、接着分子、HLA分子、ならびにFas死受容体のアップレギュレーションを行うことができることを示した(
図24B)。
【0209】
CD40L改変T細胞は、IL-12p70分泌を誘導し、moDCの成熟を媒介する。
【0210】
DC成熟および炎症誘発サイトカインIL-12の分泌におけるCD40Lの役割を仮定し、次に我々は、自系moDCと共培養した場合にCD40L改変T細胞が同じ効果を誘導し得るか否かを調べた。重要なことに、我々は、CD40L改変T細胞が、別々の3ドナーからのmoDCおよび自系CD40L改変T細胞を含有する共培養において、IL-12p70の分泌を誘導することを見出した(
図25A)。表面共刺激分子(HLA-DR、CD86、およびCD83)のアップレギュレーションによって判定されるように、moDCの成熟は、CD40L改変T細胞との共培養後においても見出すことができたが、モック形質導入T細胞との共培養後においては認められなかった(
図25B)。
【0211】
T細胞による、CARおよびCD40Lの双方の発現は、インビトロおよびインビボでの細胞傷害性を高める結果となる
次に我々は、T細胞が抗CD19 CAR(1928z)およびCD40Lの両方を発現する能力を評価した。バイシストロニック・レトロウイルスベクターを用いた(1928z/CD40L;
図26A)。T細胞の形質導入は、いつも≧40%の1928zおよびCD40L(1928z/CD40L T細胞;
図26B)双方の発現をもたらした。対照レトロウイルスベクターもまた、抗CD19 CAR(1928z)および抗PSMA CAR(Pz1およびPz1/CD40L;
図26B)を含むように生成した。1928z/CD40L T細胞のインビトロ抗腫瘍活性を評価するために、標準的な4時間の
51クロム放出アッセイを行った。CD40Lの構成的発現は、1928z CARのみを発現するように改変されたT細胞を含む対照T細胞のパネルと比較して、CD19+腫瘍細胞に対する1928zT細胞の溶解能を統計学的に高めた(
図26C)。他のCD19+/CD40+腫瘍細胞株に対しても細胞傷害性が高められていた(
図29)。
【0212】
1928z/CD40L T細胞のインビボでの抗腫瘍活性を調べるために、本発明者らは、全身性DOHH2リンパ腫の異種間移植モデルを使用した。全身性DOHH2腫瘍細胞は、SCID/ベージュマウスにおけるCD19標的CAR T細胞治療に対して著明な難治性を示すことを、本発明者らは以前に観察している。CAR-T細胞をCD40Lでさらに改変することで、このモデルにおける抗腫瘍有効性を高め得るか否かを評価するために、本発明者らは、全身性DOHH2腫瘍を有するSCID/ベージュマウスにCAR/CD40L T細胞を接種し、処置した。重要なことに、1928z-T細胞での処置または対照T細胞(Pz1およびPz1/CD40L T細胞)での処置と比較して、1928z/CD40L T細胞での処置によって、生存率が高められ、1928z/40L T細胞で処置したマウスの30%において長期の生存率が認められた(
図27)。
【0213】
考察
CAR T細胞を用いる養子治療は、B細胞悪性腫瘍を有する患者にとって将来有望な臨床応答を示した2-4。これらの研究は、唯一の抗腫瘍エフェクター細胞としてのCAR T細胞の効力を証明していた。しかしながら、このアプローチは、頑強な免疫抑制性腫瘍微小環境を有する腫瘍に対しては限定的にしか成功していなかった5。さらに、それらの現行形態では、CAR T細胞は、標的抗原の消失後の腫瘍回避に応答することができることを実証されていなかった6。これらの限界を克服する1つの可能な方法は、T細胞の細胞溶解能/増殖を向上させ、腫瘍免疫原性を強化し、DC抗原提示/機能を向上させるべく努力する上で、CD40Lの構成的発現を通してCAR T細胞をさらに遺伝子操作することである。CAR T細胞の、CD40Lの構成的発現を介した改変はまた、さらに内因性の免疫応答を活性化し、それによって抗腫瘍有効性を高め得る。
【0214】
T細胞によるCD40Lの構成的発現の役割を評価するため、本発明者らは、CD40L遺伝子のみを含有するレトロウイルスベクターを最初に開発した。T細胞に形質導入したとき、CD4
+T細胞とCD8
+T細胞のサブセットの両構成的発現が示されている(
図22B)。CD4
+T細胞との関連づけはより一般的であり、メモリーCD8
+T細胞におけるCD40L発現およびヘルパー機能は最近になって報告されたものである
37。CD40L発現も炎症誘発TH1サイトカイン(IFN-γおよびGM-CSF)のT細胞増殖および分泌を増加させることが知られている
21,22。CD40L改変T細胞は、炎症誘発サイトカインを分泌する能力を示しており、また同様に活性化されるが同じドナーからモック形質導入されたT細胞の場合と比較して、増殖を高めていた(
図22Cおよび22D)。CD40Lの構成的発現を通じたT細胞の武装化は、抗腫瘍機能/活性化を高める可能性を有する。
【0215】
HLAクラスI、共刺激分子および/または接着分子を含む細胞表面タンパク質のダウンレギュレーションは、免疫認識を避けるために、腫瘍によって採用されることが多い
5,38,39。悪性腫瘍細胞表面上でのFas死受容体の消失により、アポトーシス耐性が生じることもある
40。これとは対照的に、CD40Lは、悪性腫瘍細胞上で、CD40と相互作用して、共刺激分子(CD80およびCD86)、接着分子(CD54、CD58、およびCD70)、HLA分子(HLAクラスIおよびHLA-DR)のアップレギュレーションを媒介し、悪性B細胞腫瘍上で、Fas/FasL経路を介して、アポトーシスを促進することができる
41,42。CD40L改変T細胞は、CD40+腫瘍細胞の表現型を改変し、これらの臨界表面タンパク質のアップレギュレーションを生じさせ、それによって、腫瘍細胞の免疫回避能を抑止する(
図2)。CD40-腫瘍細胞をCD40L改変T細胞を用いて共培養した場合、表現型の変化がなかったので、この作用は、腫瘍細胞によるCD40の発現に依存していた(
図23A-B)。また、この作用は、CLL患者由来の共培養されたCD40L改変T細胞が自系CLL細胞の免疫原性を強化するより臨床的に関連性のある設定においても認められた(
図24A-B)。この所見は、構成的なCD40L発現を介して自系悪性腫瘍細胞の免疫原性を強化するT細胞の保持された能力を示すものである。重要なことに、高レベルのsCD40Lを含有する培地が類似の表現型の変化を導いたので、細胞間の接触は、腫瘍細胞表現型を改変するために必要なことではない(
図28)。CD40L/CD40経路を介しての、癌細胞の免疫原性の強化は、内因性の抗腫瘍応答を誘導することが、CD40Lをコードするアデノウイルスベクターを用いて形質導入された自系CLL腫瘍細胞(Ad-CD40L、CLL細胞)の注入を用いた、既に公表されているワクチンの研究において示されている
27,28。CD40Lを構成的に発現するようにさらに改変された腫瘍特異的T細胞の注入は、内因性の抗腫瘍反応を誘導する類似の能力を有し得る。この結果、内因性の抗腫瘍T細胞またはNK細胞の動員を介してエピトープが広がり、それによって、単一標的抗原のダウンレギュレーションを介しての腫瘍回避の可能性を制限することになる。
【0216】
腫瘍微小環境内では、樹状細胞(DC)機能が妨げられる。通常、DCは、成熟し、移動し、リンパ節内で抗原を提示する。それによって、悪性疾患または病原体の存在に対し免疫系の適応可能なアームを刺激する
5。しかしながら、抑制的腫瘍微小環境にさらされたDCは、T
regsを誘導し、腫瘍特異的T細胞に耐性を示すという逆説的な機能を有する
43。これとは対照的に、CD40L/CD40経路は、DC抗原の提示、炎症誘発サイトカインIL-12の産生を増大させて、CD8
+T細胞の細胞傷害性機能を促進し得る
19,20。アゴニストCD40抗体は、DCを活性化し、CD8
+T細胞の応答を増大させ、それによってCD4
+T細胞の助けを必要としないことが既に示されている
26。さらに、CD40L-改変腫瘍特異的CD8
+T細胞は、DCの成熟を刺激し、養子移入されたCD8
+T細胞の、腫瘍を有するマウスでの抗腫瘍反応を強化することが示されている
44。CD40L改変T細胞がヒトDCの機能を強化する能力を試験するために、自系moDCを用いたインビトロ共培養実験を用いた。重要なことに、CD40L改変T細胞は、moDCからのIL-12p70の分泌を刺激した(
図25A-B)。本発明者らおよび他者が既に示しているようにIL-12は、T細胞増殖を高める能力、細胞傷害能を含めた、いくつかの免疫刺激機能を有する多面発現サイトカインであり、Treg抑制に対する耐性を媒介する
7,45。CAR/40L T細胞がDCからのIL-12の産生を刺激する能力は、養子移入されたCAR-T細胞の改善された抗腫瘍効果への翻訳、ならびに、内因性の腫瘍特異的T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の動員および活性化への翻訳を行い得る。IL-12産生を、腫瘍の近隣で促進させることによって、本発明者らは、IL-12の全身への投与後に重大な毒性を示している従来の研究とは対照的に、最小のIL-12関連毒性を予測している。IL-12産生の刺激に加えて、CD40L改変T細胞は、DCの成熟を促進する。これが、CAR T細胞の細胞傷害性の状況で、当然DC腫瘍抗原取り込みと、提示をさらに高める結果、内因性の抗腫瘍応答のエフェクターT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞による動員/活性化が行われる(
図25A-B)。合わせて考えると、高められたDC機能は、内因性の抗腫瘍免疫応答の動員を介して、当然遺伝子改変された腫瘍特異的T細胞の抗腫瘍有効性を高めるよう翻訳が行われることになる。
【0217】
CAR T細胞がT細胞の特異性の向きを変える能力は、多くの前臨床および臨床報告において実証されている
1。本発明者らは、抗CD19 CAR(1928z)およびCD40L遺伝子を含有するレトロウイルスベクターを開発した(
図28A)。1928zおよびCD40Lの双方のT細胞による構成的発現は容易に達成できる(
図28B)。重要なことに、CD19+標的のパネルに対する1928z/40L T細胞の細胞傷害性能力を試験したとき、本発明者らは、1928z CARのみで改変したT細胞と比較して、細胞傷害性が増加していることに注目した(
図28C)。近年、Laurinおよび同僚が、表面接着分子のCD40/IL-4依存性アップレギュレーション後、CAR T細胞による腫瘍細胞株に対する細胞傷害性が増加したことを報告している。それは、本発明者らの実験において認められた細胞傷害性の増加を説明することができる
46。インビボでのCAR/CD40L T細胞の能力を試験するために、攻撃的に変えられた濾胞性リンパ腫細胞株DOHH2を用いる異種間移植モデルを使用した。このモデルは、歴史的に、1928z T細胞による根絶に耐性を有する(
図27)。しかしながら、CD40Lに加えられた改変により、本発明者らの1928z/CD40L T細胞は、1928z T細胞のみで処置したマウスに比べて、腫瘍を有するマウスの生存を延ばし、1928z/CD40L T細胞処置群において、30%の長期生存という結果となっている(
図27)。このモデルは生存率の違いを証明する一方、SCID/ベージュマウスによる免疫適格系の欠如により、このモデルは、CAR T細胞による構成的なCD40L発現が、確立した腫瘍の根絶において有し得る十分な有利性を調べるのに好適ではないものとなっている。本発明者らは、本発明者らのモデルにおいて高い抗腫瘍有効性を認めている一方、これが、CD40L-改変CAR T細胞による内因性の免疫応答の動員/活性化を介してではなく、自己分泌/パラ分泌CD40/CD40L経路によるCAR T細胞の細胞傷害性の増強に関連すると思われる。腫瘍微小環境でのCAR T細胞によるCD40Lの構成的発現、および内因性の抗腫瘍免疫応答の動員の完全な効果を調べるために、免疫適格同系腫瘍モデルを用いてもよい。ヒトCD19+B細胞悪性腫瘍の免疫適格同系モデルが最近開発され、免疫適格系との関連で1928z/CD40L T細胞を評価するために使用されている。
【0218】
CD40Lの骨髄または胸腺細胞上での構成的発現が、CD40L欠乏マウスに注入後、T-リンパ増殖性障害を引き起こすことが示されている47。胸腺細胞の絶え間ないCD40L刺激後に胸腺内に生じたクローン群は、(CD40L-改変細胞の挿入性の腫瘍形成ではなく)悪性変換に至ったかもしれない。本発明者らは、CAR/CD40L T細胞の注入後、毒性が最小で、悪性の形質転換がないことに注目しており、悪性のT細胞変換に関する懸念を考慮すると、iCasp9などの有効な自殺遺伝子が、望ましくはレトロウイルスベクター中に含まれ得る48。
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【化22】
本発明の実施形態
前記の説明から、本発明を様々な用法および条件に合わせるために、変法および改変が、本明細書中に記載の本発明に対して行われてもよいことは明らかである。そのような実施形態もまた、以下の請求の範囲の範囲内である。
【0224】
本明細書中の変数の何らかの定義における構成要素の列挙の詳述では、その変数の定義が、列挙された構成要素のいずれか1つの構成要素として、または、列挙された構成要素の組合せ(または部分的組合せ)として含まれる。本明細書中に記載の実施形態は、その実施形態がいずれか1つの実施形態として、あるいは、いずれかの他の実施形態またはその一部分との組合せなどを包含している。
【0225】
本願のいくつかの主題は、米国特許出願第12/593,751号に関し得る。これは2010年3月8日に出願された国際特許出願第PCT/US2008/004251号明細書の、米国特許法第371条に基づく米国国内段階移行の出願である。それは、2007年3月30日出願の米国仮特許出願第60/921,144号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0226】
本明細書に記載のすべての特許および出版物は、あたかも独立した各特許および出版物が具体的かつ個別的に示されているものと同じくらいに、参照により本明細書に組み込まれる。