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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107954
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】挿入性の良いファイバースコープ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20230727BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61B1/005 511
A61B1/00 732
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097974
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2019153903の分割
【原出願日】2019-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018160883
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516096313
【氏名又は名称】株式会社OKファイバーテクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】皆川 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】関 康夫
(57)【要約】
【課題】内視鏡の径が大きくならず、目的部位までの経路に柔軟に対応することができ、かつ、目的部位までの内視鏡の操作時に、内視鏡の先端の位置合わせが容易な内視鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】内視鏡は、長尺の外筒2と、外筒2の内側に設けられた光学素子ユニット3とを備え、外筒2は、軟質樹脂により構成された内層21と、内層21の外側に設けられた補強層22と、補強層22を被覆する軟質樹脂により構成された外層23とを有し、光学素子ユニット3は、画像伝送用の画像伝送部31と、レーザー伝送部32と、内層21の内面21a、画像伝送部31の外面31a、およびレーザー伝送部32の外面32aの間の空間を埋める照明用ファイバーバンドル33とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部および基端部を有し、観察対象の内腔に挿入される長尺の外筒と、前記外筒の内側に設けられた光学素子ユニットとを備えた可撓性長尺部材を有し、
前記可撓性長尺部材は先端部と基端部との間に設けた把持部を有し、前記先端部と前記把持部の間の中間部を有し、
前記把持部に前記可撓性長尺部材の軸周り方向に回転力と押込み力を加えることにより、前記中間部を介して前記先端部に押込み力と回転力が伝達され、前記先端部が方向づけられる内視鏡であって、
前記先端部および前記中間部において、前記外筒は、可撓性を有する樹脂を主として含む外層と、前記外層の内側に設けられた補強層とを有し、
前記先端部および前記中間部において、前記光学素子ユニットは、画像伝送用の画像伝送部と、照明用ファイバーバンドルとを備えており、
前記先端部および前記中間部において、前記可撓性長尺部材は、形状を維持しつつ前記内腔の分岐から目的の分岐を選択し前記先端部を位置合わせできる剛性と、目的の分岐の経路に沿った湾曲ができる可撓性とを有しており、
前記先端部および前記中間部において、前記照明用ファイバーバンドルは、前記外筒の内面、前記画像伝送部の外面の間の空間を密に埋めるように設けられた、複数の光ファイバーにより構成されている、内視鏡。
【請求項2】
前記可撓性長尺部材は、観察対象の内腔に挿入される部位の外径が0.5~2.5mmである請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】
前記可撓性長尺部材の先端部に接続されて湾曲状態とする剛性を有するワイヤと、前記ワイヤに接続して手元側の操作で前記先端部の湾曲状態を変更可能な手元操作部とを有していない、請求項1記載の内視鏡。
【請求項4】
前記剛性と前記可撓性とは、前記補強層と前記光学素子ユニットの少なくともいずれかの前記剛性または前記可撓性に起因することにより有する請求項1記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファイバースコープに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ファイバースコープを内視鏡として用いた癌治療において、レーザー光を患部に照射するレーザー治療が行われている。このレーザー治療においては、内視鏡の先端を、体内の内腔の複数の分岐箇所などを経由して目的部位まで移動させて、レーザー光を照射する。例えば、特許文献1では、内視鏡の基端側に設けられた手元操作部を操作することにより、分岐箇所において内視鏡を湾曲操作して、内視鏡を目的部位まで移動させやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-062532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように手元操作部を有する内視鏡の場合、手元操作部(内視鏡の基端側)から内視鏡の先端まで、ワイヤ等の操作部材の通路を設ける必要がある。その場合、操作部材の通路を設けるスペースの分、内視鏡の径が大きくなってしまう。また、内視鏡をガイドワイヤに沿って案内する構造の場合は、ガイドワイヤ挿通用のチャネルを内視鏡に設ける必要があるため、内視鏡の径が大きくなる。
【0005】
内視鏡の先端を手元操作部やガイドワイヤによって操作できない場合、内視鏡の軸周り方向への回転や、軸方向への押し込みなどの施術者の手技により、内視鏡の先端を目的部位に向かって移動させる。この場合、内視鏡の先端など、内視鏡の内腔への挿入部が柔軟である場合、三次元的に曲がりくねった目的部位までの経路の形状に内視鏡を追従することが容易となる。しかしながら、内視鏡の挿入部が柔軟である場合、目的部位までの分岐箇所において、内視鏡の先端の位置合せが困難となる。
【0006】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、内視鏡の径が大きくならず、形状を維持しつつ内腔の分岐から目的の分岐を選択し先端部を位置合わせでき、目的の分岐の経路に沿った湾曲ができる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先端部および基端部を有し、観察対象の内腔に挿入される長尺の外筒と、前記外筒の内側に設けられた光学素子ユニットとを備えた可撓性長尺部材を有し、前記可撓性長尺部材は先端部と基端部との間に設けた把持部を有し、前記先端部と前記把持部の間に設けた中間部を有し、前記把持部に前記可撓性長尺部材の軸周り方向に回転力と押込み力を加えることにより、前記中間部を介して前記先端部に押込み力と回転力が伝達され、前記先端部が方向づけられる内視鏡であって、前記外筒は、可撓性を有する樹脂を主として含む外層と、前記外層の内側に設けられた補強層とを有し、前記光学素子ユニットは、画像伝送用の画像伝送部と、レーザー伝送部と、照明用ファイバーバンドルとを備えており、前記可撓性長尺部材は、形状を維持しつつ前記内腔の分岐から目的の分岐を選択し前記先端部を位置合わせできる剛性と、目的の分岐の経路に沿った湾曲ができる可撓性とを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡によれば、内視鏡の径が大きくならず、形状を維持しつつ内腔の分岐から目的の分岐を選択し先端部を位置合わせでき、目的の分岐の経路に沿った湾曲ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の内視鏡を含む、内視鏡システムの一例を示す概略図である。
図2図1におけるX-X断面である。
図3図1の外筒の内部構造を示す、図1における領域Eの拡大図である。
図4】本発明の一実施形態の内視鏡の先端が、肺の細気管支まで導入された状態を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態の内視鏡の先端が、腫瘍細胞の位置まで到達した状態を示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態の内視鏡の先端が、腫瘍細胞の位置まで到達した状態を示す、図5とは別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の内視鏡を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の内視鏡は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の内視鏡を含む、内視鏡システムSの一例を示す概略図である。内視鏡システムSは、内視鏡を用いた患者の検査および/または治療を行う際に用いられ、図1に示されるように、内視鏡と、システム本体Bとを備えている。
【0012】
内視鏡として用いられる可撓性長尺部材1は、患者等の内腔に挿入され、患部や検査部位などの観察部位である目的部位に可撓性長尺部材1の先端Tを到達させることにより、患者の目的部位に対する検査および/または治療を行う。可撓性長尺部材1は、図1および図2に示されるように、先端部Tおよび基端部Pを有し、内腔に挿入される長尺部材本体部Hを有する。可撓性長尺部材1は、長尺の外筒2と、外筒2の内側に設けられた光学素子ユニット3とを備えている。光学素子ユニット3は、画像伝送用の画像伝送部31と、レーザー伝送部32と、照明用ファイバーバンドル33とを備えている。詳細は後述するが、可撓性長尺部材1が内腔に挿入された後、照明用ファイバーバンドル33からの光によって観察対象の目的部位が照らされ、画像伝送部31によって内腔の画像が伝送されて目的部位の状態が確認可能となる。レーザー伝送部32から照射されるレーザー光によってレーザー治療が行われる。内視鏡によるレーザー治療としては、例えば、焼灼治療、光線力学的治療(Photodynamic Therapy:PDT)などのレーザー治療が挙げられる。なお、本明細書における内視鏡は、外筒2が柔軟に変形する樹脂を主として含み、補強層22を有し、外筒2の先端部Tの変形は手元操作で行われずに、内腔の形状に沿った湾曲に変形する。可撓性長尺部材1は、用途が特に限定されないが、本実施形態では、肺末梢部(細気管支、呼吸細気管支など)まで挿入される肺の検査および/または治療用の内視鏡である。また、本発明とは別の実施形態として、レーザー伝送部32を用いず、光学素子ユニット3を、画像伝送部31と照明用ファイバーバンドル33とにより構成してもよい。レーザー伝送部32が内視鏡に構成される場合は、レーザー治療を行うことができる。
【0013】
可撓性長尺部材1の全体形状は後述する作用効果を奏するものであれば特に限定されない。本実施形態では、可撓性長尺部材1は、図1に示されるように、内腔に挿入される。可撓性長尺部材1は、長尺部材本体部Hと、長尺部材本体部Hに接続する分岐部6から分岐する3つの第1~第3チューブ12a、12b、12cと、3つの第1~第3チューブ12a、12b、12cの端部に設けられた可撓性長尺部材1の基端部Pa、Pb、Pcと、基端部Pa、Pb、Pcにそれぞれ設けられ、システム本体Bに接続される第1~第3コネクタ13a、13b、13cと、を備えている。基端部Pa、Pb、Pcについては、総称して、基端部Pと称する。第1~第3チューブ12a、12b、12cと、第1~第3コネクタ13a、13b、13cとについては、第1~第3コネクタ13a、13b、13cを一体とした一体型コネクタを用いてもよく、第1~第3チューブ12a、12b、12cを分けずに一本のチューブとして用いて、そのチューブの端部に単一の一体型コネクタを設けてもよい。長尺部材本体部Hは、外筒2と光学素子ユニット3とを備えている。光学素子ユニット3は、光学素子ユニット3を構成する部材に分離して、第1~第3チューブ12a、12b、12cを通って基端部Pa、Pb、Pcへと延在する。第1チューブ12aおよび第1コネクタ13aは、画像伝送部31をシステム本体Bに接続する。第2チューブ12bおよび第2コネクタ13bは、レーザー伝送部32をシステム本体Bに接続する。第3チューブ12cおよび第3コネクタ13cは、照明用ファイバーバンドル33をシステム本体Bに接続する。可撓性長尺部材1は、単体で内腔に導入してもかまわないが、可撓性長尺部材1を内腔に導入する際、導入補助具Uとして気管支鏡を用いることができる。なお、本実施形態の内視鏡は、可撓性長尺部材1の基端部P側において、可撓性長尺部材1の先端部Tを湾曲動作させる手元操作部を有しておらず、ガイドワイヤなどの他部材を挿通する物理チャネルも有していない。可撓性長尺部材1は、手元操作部と先端部Tとを接続する操作用ワイヤも備えていない。内視鏡の詳細については後述する。
【0014】
システム本体Bは、可撓性長尺部材1が接続される装置であり、内視鏡の照明光源およびレーザー光源となる。システム本体Bは、内視鏡により撮像された画像を処理する。本実施形態では、システム本体Bは、図1に示されるように、表示装置Dと、撮像装置IMと、光源装置LSとを備えている。また、システム本体Bは、制御装置Cを有し、可撓性長尺部材1による内視鏡としての照明、撮像、レーザー治療などに必要な各種制御を行う。
【0015】
長尺部材本体部Hは第1コネクタ13aを介して撮像装置IMに接続されている。可撓性長尺部材1の画像伝送部31を介して先端部Tから撮像装置IMに伝送された光は、撮像装置IMによって処理される。撮像装置IMによって処理された画像は、表示装置Dに表示される。表示装置Dは公知のディスプレイ装置とすることができる。
【0016】
本実施形態では、光源装置LSは、照明光源LS1とレーザー光源LS2とを有している。長尺部材本体部Hは第3コネクタ13cを介して照明光源LS1に接続されている。LED等の照明光源LS1から照射された光は、照明用ファイバーバンドル33を介して先端部Tへと伝送される。照明用ファイバーバンドル33に伝送された光は照明用ファイバーバンドル33の先端から放射され、観察対象の目的部位や内腔を照らすことができる。
【0017】
長尺部材本体部Hは第2コネクタ13bを介してレーザー光源LS2に接続されている。レーザー光源LS2から出力されたレーザー光は、レーザー伝送部32を介して先端部Tへと伝送される。これにより、レーザー伝送部32の先端から治療用のレーザー光が放射され、患部をレーザー治療することができる。なお、レーザー光源LS2から出力されるレーザー光の出力および波長は治療目的、治療方法に応じて適宜変更が可能である。例えば、光線力学的治療(PDT)の場合、レーザー光の出力は、一般的には100~500mWもしくは1000mW程度、レーザー光の波長は、紫外線領域(400~450nm近傍)または近赤外領域(600nm~850nm)など光感受性薬剤を励起することができる波長とすることができる。レーザー光源から出力されるレーザーとしては、例えば、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザー、ダイレーザー、ダイオードレーザー、エキシマレーザー、Yb(イッテルビウム)などのファイバーレーザー等とすることができる。
【0018】
画像伝送部31は、画像伝送部31の先端から入射した光を撮像装置IMに伝送する。画像伝送部31は、本実施形態では、可撓性長尺部材1の基端部Pa(第1コネクタ13a側)から先端部Tまで延びる光ファイバーである。画像伝送部31は、屈曲半径10mm以下、さらに好ましくは、屈曲半径6~7mmにするため、約9,000本の光ファイバーにて構成されている。画像伝送部31は、照明用ファイバーバンドル33の先端から照射され、観察対象から反射した光を撮像装置IMに伝送する。これにより、表示装置Dに内腔の画像を表示させることができる。第1チューブ12aは、樹脂等で被覆されており、光ファイバーはむき出しではない。
【0019】
レーザー伝送部32は、レーザー光源LS2から出力されたレーザー光を伝送し、レーザー伝送部32の先端からレーザー光を照射する。レーザー伝送部32は、本実施形態では、可撓性長尺部材1の基端部Pb(第2コネクタ13b側)から先端部Tに延びる光ファイバーである。レーザー伝送部32は、1本もしくは複数本の光ファイバーで構成され、レーザー伝送部32の直径は約200μmであるが、さらに好ましくは150μm以下である。レーザー伝送部32は、可撓性長尺部材1の先端部Tが目的部位に到達したときに、レーザー光を照射する。レーザー伝送部32からのレーザー光によって、PDTの場合には、腫瘍細胞等の患部に集積した光感受性物質が光化学反応を生じて患部が治療され、焼灼治療の場合には、腫瘍細胞等の患部が焼灼される。第2チューブ12bは、樹脂等で被覆されており、光ファイバーはむき出しではない。
【0020】
照明用ファイバーバンドル33は、照明光源LS1から放射された光を照明用ファイバーバンドル33の先端から照射する。照明用ファイバーバンドル33は、本実施形態では、可撓性長尺部材1の基端部Pc側(第3コネクタ13c)から先端部Tに延びる複数の光ファイバーによって構成されている。照明用ファイバーバンドル33は、直径約30~約50μmの光ファイバーを約150~約300本、もしくは約400本以下にて構成されている。照明光源LS1から放射された光は、照明用ファイバーバンドル33を介して照射され、検査や治療の目的部位や、目的部位までの分岐箇所において内腔を照らして視認可能にする。第3チューブ12cは樹脂等で被覆されおり、複数の光ファイバーはむき出しではない。
【0021】
照明用ファイバーバンドル33は、図2に示されるように、後述する外筒2の内層21の内面21a、画像伝送部31の外面31a、レーザー伝送部32の外面32aの間の空間を埋めるように設けられている。したがって、外筒2の内側には、画像伝送部31、レーザー伝送部32および照明用ファイバーバンドル33が充填されている。すなわち、内視鏡である可撓性長尺部材1は、先端部Tの湾曲状態を手元側(基端部P側)で変更可能な手元操作部を有しておらず、可撓性長尺部材1の先端部Tを、可撓性長尺部材1の手元側での軸周り方向の回転操作によって先端部Tの湾曲方向を変更させる。そのために、先端部Tの湾曲状態を変更するための、可撓性長尺部材1の基端部P側から先端部Tまで延びるワイヤ等の操作部材は設けられていない。また、内視鏡には、ガイドワイヤ等の他部材を挿通するための物理チャネルも設けられていない。可撓性長尺部材1は、先端部Tを予め湾曲させておいて、可撓性長尺部材1の軸周りの回転によって先端Tが延びる方向を変更することによって、進行方向を変更する。
【0022】
外筒2は、光学素子ユニット3の外周に設けられ、可撓性長尺部材1の外側に位置する筒状の部位である。本実施形態において、外筒2は、図3に示されるように、可撓性を有する樹脂を主として含む外層23と、外層23の内側に設けられた補強層22と、補強層22の内側を被覆する可撓性を有する樹脂により構成された内層21とを有している。外筒2は内層21、補強層22、外層23で構成されているが、3層構造に限られず、補強層22と外層23のみで構成されてもよい。例えば、外層23にコーティングなどの処理がほどこされていてもよいし、内層21を設けずに、光学素子ユニット3に補強層22を直接巻き付けても良い。
【0023】
内層21は、可撓性を有する樹脂により構成された管状の層である。内層21を構成する樹脂としては、例えば、ペバックス、ポリアミド系エラストマー、ウレタン、ナイロン、等が挙げられる。なお、内層21は形成しなくても良い。内層21の内面21aの内側には光学素子ユニット3が設けられている。補強層22は、内層21の外側に、金属製のワイヤ等の補強体が網目状に巻き付けられることによって形成されている。補強層22は、網目状に形成されていることにより、可撓性長尺部材1に所定の剛性を持たせることができる。補強層22を構成するものとしては、例えば、金属線を網状に構成した金属ブレード層やコイル層があげられるが、例に限定されない。外層23は、可撓性を有する樹脂により構成され、補強層22を被覆する管状の被覆層である。外層23を構成する樹脂としては、例えば、ペバックス、ポリアミド系エラストマー、ウレタン、ナイロン、等が挙げられる。なお、外層23には、親水性コーティングなどのコーティング処理が施されていてもよい。
【0024】
外筒2の外径は、可撓性長尺部材1の用途に応じて適宜変更が可能であるが、例えば内視鏡が肺の気管支における分岐箇所において、肺末梢部(細気管支、呼吸細気管支)に向かって挿入される肺の検査および/または治療用の内視鏡である場合には、外筒2の外径は0.5~2.5mmとすることが好ましく、0.8~1.5mmとすることがより好ましい。
【0025】
本実施形態では、可撓性長尺部材1は、先端部Tと基端部Pの間に設けた把持部4に対して可撓性長尺部材1の軸周り方向に回転力を加えることにより、中間部5を介して可撓性長尺部材1の先端部Tに回転力が伝達されて、可撓性長尺部材1の先端部Tが方向付けられる。たとえば、観察対象である患部等の目的部位に至るまでの内腔において、可撓性長尺部材1の先端部Tの向きが目的部位へと至る経路の方向に向いていない場合は、手技によって可撓性長尺部材1の把持部4を可撓性長尺部材1の軸周り方向に捩じるように回転力を加える。これにより、可撓性長尺部材1の把持部4に加わった回転力が、中間部5を介して、可撓性長尺部材1の先端部Tに伝達されて先端部Tを軸周りに回転させ、先端部Tが目的部位へと至る経路の方向に向いたときに、可撓性長尺部材1の把持部4を手技によって押し込んで、可撓性長尺部材1の先端部Tを内腔内で進行させる。また、可撓性長尺部材1を内腔に導入する際、挿入補助具Uとして気管支鏡を用いることができる。その際、気管支鏡を肺の主気管支まで挿入し、可撓性長尺部材1を気管支鏡のシースに挿入する。可撓性長尺部材1の先端部Tが内腔に挿入した気管支鏡の先端まで到達したのち、可撓性長尺部材1をさらに進行させることで、気管支鏡から延在するように先端部Tを葉気管支より先の目的位置TSまで到達させることができる。
【0026】
本実施形態では、補強層22および光学素子ユニット3が、可撓性長尺部材1の軸周り方向への回転力と、可撓性長尺部材1の軸方向への押込力の伝達を可能にする所定の剛性を有している。外筒2の内側に設けられた補強層22と、補強層22の内側において外筒2の軸方向に沿って設けられた光学素子ユニット3とが所定の剛性を有することによって、可撓性長尺部材1の把持部4において加えられた回転力を中間部5を介して可撓性長尺部材1の先端部Tに伝えることができ、可撓性長尺部材1の先端部Tが外筒2の軸周りに容易に回転する。したがって、可撓性長尺部材1の先端部Tを所望の方向へ操作することが容易となり、内腔の分岐箇所において、可撓性長尺部材1を目的部位に向かって進行させることが容易となる。また、補強層22および光学素子ユニット3とが所定の剛性を有することによって、可撓性長尺部材1の把持部4に加わった押込力が中間部5を介して可撓性長尺部材1の先端部Tに伝達され、可撓性長尺部材1の先端部Tを容易に前進させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、補強層22および光学素子ユニット3が、可撓性長尺部材1の先端部Tの形状を保持しつつ、内腔の分岐の経路に沿った湾曲可能な可撓性を有している。補強層22および光学素子ユニット3は、上述したように所定の剛性を有しているため、可撓性長尺部材1の先端部Tに外力が加わっていない場合に所定の形状を保持することができ、先端部Tの形状が安定して、可撓性長尺部材1の先端部Tを内腔の分岐箇所において目的部位に向かう方向に位置合せしやすい。さらに、補強層22および光学素子ユニット3が所定の可撓性を有しているため、可撓性長尺部材1の先端部Tから基端部Pまでの間の部分は、内腔の分岐の経路に沿って湾曲して変形することが可能となる。体内においては、体腔が分岐しているのが通常であり、可撓性長尺部材1の剛性が高すぎる場合には、進行時において可撓性長尺部材1が分岐前後における内腔の壁部に押圧されることがある。しかし、可撓性長尺部材1は、内腔の分岐の経路に沿った湾曲に変更することができる可撓性を有するために、内腔の壁部に押し付けられることがないために、内腔での摺動性が向上している。したがって、内腔の湾曲が大きい場合であっても、可撓性長尺部材1の挿入が可能であり、内腔への負担も軽減する。たとえば、本実施形態では、補強層22および光学素子ユニット3が、肺の気管支における分岐箇所から肺末梢部に向かって挿入された際に、分岐箇所の湾曲に沿った湾曲が可能な可撓性を有している。これにより、可撓性長尺部材1が肺の検査および/または治療用の内視鏡である場合に、肺の気管支から肺末梢部における複雑に分岐する経路に沿って可撓性長尺部材1を前進させ、肺末梢部における検査および/または治療が可能となる。また、内視鏡が気管支鏡などに挿入される場合には、可撓性長尺部材1の可撓性によって、気管支鏡の先端をたとえば湾曲操作する場合に、気管支鏡の湾曲操作を阻害することがない。
可撓性長尺部材1は、肺等の複雑な分岐に沿った湾曲ができ、曲げ半径10mm以下、例えば、6~7mmを維持して180°などの90°以上の湾曲ができる。可撓性長尺部材1は、内腔の分岐において所望の分岐先へと進行可能なように、曲げ半径を小さくすることができる。可撓性長尺部材1は、気管支の形状に沿った湾曲ができる可撓性と、湾曲の形状を保持しつつ目的の分岐を選択し、先端部Tを位置合わせできる剛性とを有している。可撓性長尺部材1は、分岐において、目的部位へと到達するために分岐先の内腔へと移動するために、分岐先の内腔の開口へと先端部Tを位置させて、分岐先の内腔へ先端部Tを進行させる。可撓性長尺部材1の剛性が低い場合には、可撓性によって先端部Tを分岐における分岐先の内腔の開口へと位置付けることができない。しかし、可撓性長尺部材1は、可撓性に加えて剛性を有しているために、先端部Tを分岐における分岐先の内腔の開口へと位置付けることができ、分岐先へと先端部Tを進行させることができる。
【0028】
また、可撓性長尺部材1の内層21の内面21a、画像伝送部31の外面31a、レーザー伝送部32の外面32aの間の空間は照明用ファイバーバンドル33によって埋められている。さらに、上述したように、可撓性長尺部材1には、ガイドワイヤ等の他部材を挿通するための物理チャネルや、可撓性長尺部材1の先端部Tを、手元操作部などによって手元側で操作するために、可撓性長尺部材1の基端部Pから先端部Tまで延びるワイヤ等の操作部材は設けられていない。したがって、内視鏡の外径が大きくならず、内視鏡を細径化することができる。そのため、内視鏡は、肺末梢部(細気管支、呼吸細気管支など)など、挿入が困難な狭隘部を有する内腔への挿入が容易となる。
【0029】
つぎに、本実施形態の内視鏡の操作方法について、細気管支または呼吸細気管支に生じた肺癌の治療方法(PDT)を例にあげて説明する。
【0030】
まず、肺癌の患者に、腫瘍親和性および光感受性を有する物質、例えば、レザフィリン(登録商標)、フォトフリン(登録商標)などの、光感受性物質を投与する。光感受性物質が肺癌の腫瘍細胞に集積した後、内視鏡である可撓性長尺部材1を、図4に示されるように、気管支BR1を経由して細気管支BR2に移動させる。肺の細気管支BR2の分岐箇所において、施術者は画像伝送部31から伝送され表示装置D(図1参照)に表示された画像を確認しながら、目的部位TSに向かって可撓性長尺部材1の先端部Tを移動させる。なお、可撓性長尺部材1の先端部Tは、患者の内腔に挿入する前にわずかに湾曲するようにシェイピングしてもよい。上述したように、内視鏡は、補強層22および光学素子ユニット3によって所定の剛性を有しているので、細気管支BR2の分岐箇所において内視鏡の可撓性長尺部材1の先端部Tの位置合せが容易となり、図5に示されるように、可撓性長尺部材1を目的部位TSまで容易に到達させることができる。
【0031】
内視鏡のレーザー伝送部32から所定の波長のレーザー光が照射されると、照射された部位が腫瘍細胞である場合には、腫瘍細胞に集積した光感受性物質が蛍光を発する。これにより、光力学的診断(PDD)による、腫瘍細胞の部位の特定が完了する。腫瘍細胞が特定された後、光源装置LSによりレーザー光の波長を変更し、蛍光を発する腫瘍細胞にレーザー光を照射することにより、光線力学的反応が生じて、腫瘍細胞が強い酸化作用によって壊死する。これにより、肺の細気管支BR2または細気管支BR2からさらに分岐した呼吸細気管支に生じた腫瘍を治療することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 可撓性長尺部材
12a 第1チューブ
12b 第2チューブ
12c 第3チューブ
13a 第1コネクタ
13b 第2コネクタ
13c 第3コネクタ
2 外筒
21 内層
21a 内層の内面
22 補強層
23 外層
3 光学素子ユニット
31 画像伝送部
31a 画像伝送部の外面
32 レーザー伝送部
32a レーザー伝送部の外面
33 照明用ファイバーバンドル
4 把持部
5 中間部
6 分岐部
B システム本体
BR1 気管支
BR2 細気管支
C 制御装置
D 表示装置
H 長尺部材本体部
IM 撮像装置
LS 光源装置
LS1 照明光源
LS2 レーザー光源
P 可撓性長尺部材の基端部
Pa 第1チューブ側の可撓性長尺部材の基端部
Pb 第2チューブ側の可撓性長尺部材の基端部
Pc 第3チューブ側の可撓性長尺部材の基端部
S 内視鏡システム
T 可撓性長尺部材の先端部
TS 目的部位
U 導入補助具
図1
図2
図3
図4
図5
図6