(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010798
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】大気圧プラズマ殺菌処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20230113BHJP
A23L 3/32 20060101ALI20230113BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61L2/14
A23L3/32
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022181732
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】303034908
【氏名又は名称】村田 正義
(72)【発明者】
【氏名】村田正義
(57)【要約】
【課題】
プラズマを用いた殺菌装置は、カビ菌及びウイルス菌等で汚染された食料あるいは飼料等をプラズマで生成される酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等に曝すことにより、殺菌可能で副作用がないことから、その実用化が期待されている。しかしなら、大量のプラズマ処理対象物を、迅速に、ムラ無く処理することが困難であるという課題がある。この課題を解消可能な装置を提供すること。
【解決手段】
殺菌処理対象物を搬送する開口を備えたシート状搬送手段に近接して配置された第1電極と、該第1電極に対向して配置された第2電極と、該第1及び第2電極の少なくとも一方に形成された誘電体と、高電圧交流電源と、を備えた大気圧プラズマ殺菌装置において、該開口を備えたシート状搬送手段と、該第1電極と、該第2電極とが、この順に配置されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いて食料や飼料等に着生する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌類等を殺菌処理する大気圧プラズマ殺菌処理装置であって、
殺菌対象物を載置して搬送する開口を有するシート状搬送手段と、前記シート状搬送手段を臨む第1電極と、前記第1電極に対向して配置される第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の少なくともいずれか一方に設けられた誘電体と、前記第1電極と前記第2電極の間に交流あるいはパルス状の電圧を印加する電源と、を備え、
前記殺菌対象物シート状搬送手段と、前記第1電極と、前記第2電極がこの順に配置されることを特徴とする大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極の間に発生する電界と直交する方向に磁力線が向くように配置された磁石を備えることを特徴とする請求項1に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項3】
前記第1電極は、断面形状が矩形の複数の非磁性金属棒で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項4】
前記第1電極は、断面形状が台形の複数の非磁性金属棒で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項5】
前記第1電極は、断面形状が半円形の複数の非磁性金属棒で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項6】
前記第1電極は、メッシュ状の非磁性金属で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項7】
前記シート状搬送手段は、メッシュ状のプラスチック又は布又はSUS材で形成されるベルトと、プーリと、駆動軸と、モーターと、を備えたベルトコンベアと、前記ベルトの面に略鉛直に設けられた複数の暖簾を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【請求項8】
前記暖簾は、シート状又は短冊状のプラスチック又は布で形成されることを特徴とする請求項7に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて食料や飼料等に着生する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌類等の殺菌又は滅菌を行う大気圧プラズマ殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、非特許文献1ないし非特許文献5に記載されているように、大気圧プラズマを用いた農産物等の殺菌装置が注目されている。
特に、外食産業や保存食品等の食材原料、例えば、タマネギ、ショウガ、人参、米、小麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、胡椒及び唐辛子等に着生する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌類等の殺菌あるいは滅菌に関し、大気圧条件でプラズマ処理が行える大気圧プラズマ殺菌処理装置が、注目されている。また、カット野菜や乾燥果物等の切れ切れに加工された食品材料に対し、確実にプラズマ殺菌処理が行える大気圧プラズマ殺菌処理装置の実用化が期待されている。
大気圧プラズマ殺菌処理装置の分野では、上記ニーズ等への対応を図るべく、プラズマ発生手段のキー技術である電極構造及び誘電体膜等に関する新しい試みがなされている。しかしながら、大量のプラズマ処理対象物を、迅速に、ムラ無く処理することが困難であり、本格的な実用化には至っていない。
【0003】
大気圧プラズマ殺菌処理装置の要素技術である大気圧バリア放電プラズマ技術に関しては、例えば、特許文献1及び2に記載の技術がある。
特許文献1に次のことが記載されている。即ち、少なくとも放電面を誘電体で被覆する平板状絶縁被覆電極と、接地電極板あるいは裏面に接地電極板を置いた非導電性平板とを対向させ、前記平板状絶縁被覆電極と前記接地電極板あるいは裏面に接地電極板を置いた非導電性平板との間に、パルスあるいは交流高電圧を印加することによりバリア放電を発生させ、前記バリア放電中にて殺菌を行う殺菌装置、ということが記載されている。
特許文献2には次のことが記載されている。即ち、内部電極と、該内部電極を包囲する誘電体層と、該誘電体層の外側表面に配設される外部電極とにより線状誘電体バリア放電電極を構成し、該内部電極と該外部電極との間に交流電圧を印加して、線状放電プラズマを生成するようにしたことを特徴とする大気圧放電プラズマ生成装置、ということが記載されている。
【0004】
実用的なプラズマ殺菌装置に関しては、例えば、特許文献3及び4に記載の技術がある。
特許文献3には次のことが記載されている。即ち、導電性を有する殺菌対象物に対して電圧を印加する電圧印加手段と、 前記電圧印加手段から印加される電圧を前記殺菌対象物に対して誘電体を介して一の電極と他の電極との間で放電状態で印加し、当該一の電極と他の電極の少なくとも一方が、前記誘電体にて導体を被覆して柔軟且つ穏やかに接触するように形成されて殺菌対象物の表面の様々な位置に接触する複数の接触片として形成される一対の電極と、前記一対の電極と前記殺菌対象物との相対位置を変化させる位置変化手段とを備えることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
特許文献4には次のことが記載されている。即ち、 食料や飼料に着生する細菌類やカビ菌類やカビ毒等をプラズマで殺菌処理する大気圧プラズマ殺菌処理装置であって、プラズマ処理対象物を収納する反応容器と、誘電体で被覆された非接地電極と接地電極から成る一対の電極と、前記一対の電極に高電圧の電力を供給してバリア放電プラズマを発生させる交流電源を、具備し、前記一対の電極は前記反応容器の内部に配置され、前記反応容器は、前記プラズマ処理対象物の投入口と取り出し口を備え、かつ、大気の導入口と排出口を備えるとともに、前記反応容器の略中心線を回転軸として回転する回転駆動系を備え、前記反応容器を前記回転駆動系により回転させて前記プラズマ処理対象物を転動撹拌させながらプラズマ殺菌処理を行うことを特徴とする大気圧プラズマ殺菌処理装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-239230
【特許文献2】特開2008-034184
【特許文献3】特許6810938
【特許文献4】特開2019-209170
【0006】
【非特許文献1】永津雅章、プラズマ滅菌、J.Plasma Fusion Res.Vol.83、No.7(2007)、601-606
【非特許文献2】清水一男、内田諭、佐藤岳彦、大嶋孝之、南谷靖史、太田貴之、プラズマによる農作物の鮮度保持・加工、J.Plasma Fusion Res.Vol.90、No.10(2014)、587-594
【非特許文献3】作道章一、ガスプラズマを用いた農産物の殺菌・消毒法の開発(課題番号:26015A、平成23年~平成27年)、農林水産技術開発会議ホームページ
【非特許文献4】高井雄一郎、西岡輝美、三沢達也、柳生義人、作道章 一、大気圧プラズマを用いた農産物の殺菌技術、スマートプロセス学会誌、第9巻、第3号(2020年5月)、103-107
【非特許文献5】堀 勝、伊藤 昌文、低温プラズマを用いたウイルスの不活性化、特別WEBコラム「新型コロナウイルス禍に学ぶ応用物理(2021.1.8)」、応用物理学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の装置において、例えば、特許文献3に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置は、殺菌対象物を搬送手段で移動させながら、該殺菌対象物を一対の電極の間に挟んだ際に発生するプラズマを用いて殺菌することから、該殺菌対象物の導電性に依存したプラズマ殺菌方法と言える。その結果、導電性が低い又は小粒子状の籾(殻付き米)、殻付き小麦、種子類及び乾燥野菜等への応用は困難であるという問題がある。即ち、殺菌対象物の導電性に影響を受けない大気圧プラズマ殺菌処理装置の創出が課題である。
また、例えば、特許文献4に記載の大気圧プラズマ殺菌処理装置は、回転する円筒の内側の壁に設けられた電極でバリア放電プラズマを発生しながら、殺菌対象物を該円筒内部へ投入して殺菌することから、比較的小粒の、例えば、米や小麦等への応用に適合している。しかしながら、ミカンやタマネギ等への応用では該殺菌対象物に損傷を与える恐れがあり、困難であるという問題がある。即ち、殺菌対象物へ損傷を与えない大気圧プラズマ殺菌処理装置の創出が課題である。
更に、一般的な大気圧プラズマ殺菌処理装置は高い電圧条件で大気をプラズマ化することから、窒素酸化物の発生を伴うことが危惧される。即ち、窒素酸化物を発生しない大気圧プラズマ殺菌処理装置の創出が課題である。
上記のような課題を鑑みて、本発明は、プラズマ殺菌処理に際し、大量の処理対象物を、効果的にプラズマ殺菌処理し、かつ、低コスト化を実現することを課題とし、それを解決可能な装置を提供することを目的とする。また、本発明は、籾(殻付き米)、殻付き小麦、種子、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ豆及び唐辛子等の粒状の対象物、あるいは、ミカン、カット野菜や乾燥果物等をプラズマ処理により効果的に殺菌処理可能な大気圧プラズマ殺菌処理装置を提供することを目的とする。また、窒素酸化物を発生しない大気圧プラズマ殺菌処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、プラズマを用いて食料や飼料等に着生する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌類等を殺菌処理する大気圧プラズマ殺菌処理装置であって、殺菌対象物を載置して搬送する開口を有するシート状搬送手段と、前記シート状搬送手段を臨む第1電極と、前記第1電極に対向して配置される第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の少なくともいずれか一方に設けられた誘電体と、前記第1電極と前記第2電極の間に交流あるいはパルス状の電圧を印加する電源と、を備え、前記殺菌対象物シート状搬送手段と、前記第1電極と、前記第2電極がこの順に配置されることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記第1電極と前記第2電極の間に発生する電界と直交する方向に磁力線が向くように配置された磁石を備えることを特徴とする
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記第1電極は、断面形状が矩形の複数の非磁性金属棒で形成されることを特徴とする。
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記第1電極は、断面形状が台形の複数の非磁性金属棒で形成されることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記第1電極は、断面形状が半円形の複数の非磁性金属棒で形成されることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記第1電極は、メッシュ状の非磁性金属で形成されることを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれか一つの発明において、前記シート状搬送手段は、メッシュ状のプラスチック又は布又はSUS材で形成されるベルトと、プーリと、駆動軸と、モーターと、を備えたベルトコンベアと、前記ベルトの面に略鉛直に設けられた複数の暖簾を備えることを特徴とする。
第8の発明は、第7の発明において、前記暖簾は、シート状又は短冊状のプラスチック又は布で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
従来の装置では、殺菌対象物の導電性に影響を受けるという問題、殺菌対象物へ損傷を与えるという問題及び窒素酸化物を発生する危惧があるという問題を抱えているが、本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置は、その問題を解消可能という効果を奏する。また、本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置は、大量の対象物を、迅速に、ムラ無くプラズマ処理することが可能であるという効果を奏する。
即ち、本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置は、プラズマ殺菌処理に際し、大量の粒状あるいは木片状の処理対象物を、大気圧プラズマ発生手段を備えた開口を有するベルトコンベアあるいは開口を有するシートに載置して、搬送しながら該対象物を回転させながらプラズマ処理するので、迅速に、ムラ無く、かつ、低コストでプラズマ処理することができる、という効果を奏する。
本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置は、ミカン、籾米、麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ豆、胡椒及び唐辛子等、あるいは、カット野菜や乾燥果物等の切れ切れに加工された食品材料等の殺菌のためのプラズマ処理装置として実用に供することが可能である。その産業上の価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成を示す模式的斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第1の大気圧プラズマ発生装置を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第1の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置が備える第1の大気圧プラズマ発生装置の構成部材である一対の電極間の電界Eと磁石が形成する磁界Bの関係を示す概念図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第2の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第3の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第4の大気圧プラズマ発生装置を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第4の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第4の大気圧プラズマ発生装置のメッシュ状の第1電極を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。また、以下に示す図面は、説明の便宜上、各部材の縮尺が、実際と異なる場合がある。また、各図面間においても、縮尺が、実際と異なる場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成について、
図1ないし
図4を参照して説明する。
ここでは、殺菌対象物として、ミカンを例に取り、説明するが、これに限定されることはない。本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置は、以下に説明するように、対象物が粒状あるいはそれに類するものであれば、確実にプラズマ処理が行える。例えば、籾(殻付き米)、大麦、小麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ及び唐辛子等の粒状の対象物に対して、確実にプラズマ殺菌処理が行える。また、カット野菜や乾燥果物等の木片状の、あるいは、切れ切れに加工された食品材料等を対象物にした場合においても、確実にプラズマ処理が行える。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成を示す模式的斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第1の大気圧プラズマ発生装置を示す模式的斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第1の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置が備える第1の大気圧プラズマ発生装置の構成部材である一対の電極間の電界Eと磁石が形成する磁界Bの関係を示す概念図である。
【0013】
符号200aは、第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置である。第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200aは、後述の第1の大気圧プラズマ発生装置100a、後述のメッシュ状のベルト101a、後述の第1及び第2の駆動軸102a、102b、後述の第1及び第2のプーリ103a、103b、及び図示しないモーター及び後述の第1及び第2の暖簾105a、105bで構成される。
符号100aは第1の大気圧プラズマ発生装置である。第1の大気圧プラズマ発生装置100aは、後述するように、殺菌対象物、例えば、ミカン106をプラズマ処理するために必要な大気圧プラズマ13aを発生する。大気圧プラズマ13aが発生すると、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等が発生し、該プラズマ13aの発生領域及びその周辺領域は、プラズマ化学反応及びプラズマ物理反応が促進される状態になる。ここで、プラズマ13aの発生領域及びその周辺領域をプラズマ殺菌領域とよぶ。
即ち、プラズマ殺菌領域は、細菌類、カビ菌類及びウイルス菌類等を、ほぼ確実に死滅、あるいは不活性化させることができる。なお、大気圧プラズマによる細菌類、カビ菌類及びウイルス菌等の死滅や不活性化に要する時間は、数秒~数10秒程度であることが知られている。
第1の大気圧プラズマ発生装置100aは、後述するように、メッシュ状のベルト101aを臨む断面形状が矩形の第1電極10aと、該第1電極10aに対向して配置される第2電極11と、第2電極11に設けられた誘電体12と、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11の間に交流あるいはパルス状の電圧を印加する電源17と、電力供給線18a、18b、絶縁材19及び磁石15を備えている。第1の大気圧プラズマ発生装置100aの主面の面積は、適宜に選べるが、例えば、2mx2mである。なお、該面積は、第1電極10aの長さと幅と個数、そして、第2電極11の面積を選ぶことにより所定のものが形成される。
符号101aはメッシュ状のベルトである。メッシュ状のベルト101aは、後述の第1及び第2の駆動軸102a、102b、後述の第1及び第2のプーリ103a、103b、及び図示しないモーターと組み合わせて、殺菌対象物、例えば、ミカンを移動、搬送すう。メッシュ状のベルト101aは、殺菌対象物のミカン106を搬送しながら、該ミカン106を前記大気圧プラズマ発生装置100aが生成する大気圧プラズマ13aのプラズマ殺菌領域に接触させる。メッシュ状のベルト101aの開口は、殺菌対象物、例えば、ミカンが搬送中に落下しないように、該殺菌対象物の大きさに対応して選ばれる。例えば、直径7~10cmのミカンを対象とする場合、その開口は、例えば、略2~5cmが選ばれる。直径が2~8mmの籾(殻付き米)の場合は、その開口は、例えば、略0.5mm~1.5mmが選ばれる。メッシュ状のベルト101aの材質は、第1の大気圧プラズマ発生装置100aの構成部材である後述の磁石15が発生する磁力線Bに影響を与えない材質、例えば、機械強度的に強くて、且つ非磁性材料であるプラスチック又は布又はSUS材等が選ばれる。
【0014】
符号102a、102bは第1及び第2の駆動軸である。第1及び第2の駆動軸102a、102bは、メッシュ状のベルト101aと、後述の第1及び第2のプーリ103a、103bと、図示しないモーターと組み合わせて用いられ、殺菌対象物、例えば、ミカン106を搬送するベルトコンベア300aを構成する。
符号103a、103bは第1及び第2のプーリである。第1及び第2のプーリは、前記ベルトコンベア300aを構成する。
符号105a、105bは第1及び第2の暖簾である。第1及び第2の暖簾105a、105bは、シート状又は短冊状のプラススチック又は布又は殺菌対象物に傷を付けない柔らかい材質で形成される。第1及び第2の暖簾105a、105bは、
図1に示されるように、メッシュ状のベルト101aの鉛直方向の面内に配置される。第1及び第2の暖簾105a、105bは、
図1に示されるように、搬送される殺菌対象物、例えば、ミカン106に接触し、該殺菌対象物、例えば、ミカン106に回転を与える。なお、該殺菌対象物、例えば、ミカン106が回転すると、その表面は万遍なく、大気圧プラズマ13aのプラズマ殺菌領域に晒される。
符号106は、殺菌対象物、例えば、ミカンである。殺菌対象物、例えば、ミカン106は、図示しない殺菌対象物の投入手段からメッシュ状のベルト101a上に投入され、メッシュ状のベルト101aに載置されて搬送される。殺菌対象物、例えば、ミカン106は、搬送途中で、第1の大気圧プラズマ発生装置100aが発生する大気圧プラズマ13aのプラズマ殺菌領域に晒され、該大気圧プラズマ13aが生成する紫外光、OHラジカル及びオゾン等に晒される。その結果、殺菌対象物、例えば、ミカン106に着生する青カビ菌等は殺菌される、又は、ほぼ確実に死滅、あるいは不活性化される。
なお、殺菌対象物、例えば、ミカン106は、メッシュ状のベルト101a上で搬送中に、第1及び第2の暖簾105a、105bと接触し、回転させられる。その結果、殺菌対象物、例えば、ミカン106は表面全体に亘って、万遍なく、第1の大気圧プラズマ発生装置100aが発生する大気圧プラズマ13aのプラズマ殺菌領域に晒される。その結果、殺菌対象物、例えば、ミカン106に着生する青カビ菌類は、ほぼ確実に殺菌、又は死滅、あるいは不活性化される。
【0015】
符号10aは断面形状が矩形の、棒状の第1電極である。断面形状が矩形で、棒状の第1電極10aは、メッシュ状のベルト101aを臨み、且つ該ベルト101aに近接して配置される。断面形状が矩形の第1電極10aは、後述の第2電極11、誘電体12、磁石15及び電源17と組み合わせて用いられ、大気圧プラズマ13aを生成する。
断面形状が矩形で、棒状の第1電極10aは、
図2に示されるように、複数個の短冊状の非磁性金属棒で形成される。なお、非磁性金属棒が選ばれる理由は、後述の磁力線Bを遮蔽あるいは遮断させないためである。
なお、第1電極10aの長さ、幅、厚み、及び隣り合う電極の間隔は、それぞれ、例えば、0.3m~3m、2mm~10mm、0.5mm~8mm、及び2mm~10mmである。ここでは、例えば、長さ:2m、幅:5mm、厚み:5mm、隣り合う電極の間隔:8mmである。
符号11は第2電極である。第2電極11は、後述の誘電体12で覆われている。第2電極11は、断面形状が矩形の第1電極10aに対向し、誘電体12を介して近接して配置される。第2電極11は、断面形状が矩形の第1電極10a、誘電体12、磁石15及び電源17と組み合わせて用いられ、大気圧プラズマ13aを生成する。
符号12は誘電体である。誘電体12は、第2電極11の表面に形成される。誘電体12は、ゾルゲル法あるいはセラミック溶射方法等を用いて形成される。
ここでは、例えば、ゾルゲル法で形成される。例えば、原料となる粒子状の誘電体を、可塑剤と溶剤と一緒に混合し、スラリー状にして、第2電極11の上に膜状に塗布する。そして、乾燥し、焼成するという方法で行う。原料となる粒子状の誘電体は、酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化マンガン(MnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化マグネシウム(MgO)等の市販品が用いられる。
なお、誘電体12の形成方法は、特に、限定されない。また、誘電体12の中に気泡が形成されない方法が良い。また、誘電体12は、厚み1っm~3mmのガラス板を用いても良い。
【0016】
符号13aは大気圧プラズマである。大気圧プラズマ13aは、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11の間に、後述の電源17から後述の電力供給線18a、18bを介して交流又はパルス状の高電圧が印加されると、生成される。大気圧プラズマ13aは大気がプラズマ化されたものであり、紫外光を発し、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等を発生し、それらは該大気圧プラズマ13aの発生領域の外側へ拡散する。その結果、大気圧プラズマ13aの発生領域及びその周辺に存在する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌等は、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等により、ほぼ確実に殺菌、又は死滅、あるいは不活性化される。
符号15は磁石である。磁石15はN極とS極を有し、該N極と該S極が発生する磁力線Bの主方向が、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11が発生する電界Eの方向に対して直交するように、配置される。即ち、
図3及び
図4において、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11が発生する電界Eの方向は紙面に平行方向であり、磁力線Bの主方向は紙面に垂直な方向である。
ここで、磁力線Bを形成するために、複数個の磁石15を用いる。複数個の磁石15を用いる場合、それぞれのN極とS極を、直列にN・S、N・Sの順に配置して、全体の磁力線Bの方向は、第1電極と第2電極が発生する電界Eの方向と直交するように配置される。ここでは、例えば、複数個のネオジム磁石を、
図2及び
図4(a)に示されるように配置する。
大気圧プラズマ13aの領域に磁力線Bが形成されると、大気圧プラズマ13aは有磁場プラズマとなり、ExBドリフトが発生する。周知のとおり、半導体製造装置分野における有磁場プラズマの応用には、マグネトロンプラズマ発生装置及び電子サイクロトロン共鳴プラズマ装置等があり、いずれもExBドリフトによる高密度プラズマの生成が可能という特徴が活用されている。大気圧プラズマ13aにおいても、ExBドリフトによる高密度プラズマの生成が可能という特徴は充分に発揮できる。
ExBドリフトによる高密度プラズマの生成では、プラズマの密度が高いという特徴のみならず、プラズマ発生電圧の低減化が可能という特徴がある。即ち、ExBドリフトによる高密度プラズマの生成の場合における一対の電極間に印可される電圧は、一般的な大気圧プラズマ生成装置での一対の電極間に印可される電圧に比べて、20%~50%も低くなる。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生が抑制される。なお、一般的な大気圧プラズマ生成装置では、一対の電極間に印可される電圧が高いので、大気圧プラズマ生成過程において過剰分解が起こり、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)が発生する、ということが知られている。
即ち、磁石15を、
図2ないし
図4に示されるように配置した状態で、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11により大気圧プラズマ13aを生成すると、ExBドリフト効果により、低い印加電圧で、高密度プラズマを生成することが可能である。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生が抑制され、強い紫外光の発生、高濃度の酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等の発生が可能である。
符号16は筐体である。筐体16は、
図3に示されるように、断面形状が矩形の第1電極10a、誘電体12で覆われている第2電極11及び磁石15を組み入れ、それらを保持する。なお、筐体16は、図示しない台座を介して、地面あるいは床面に設置される。
【0017】
符号17は、交流電源である。交流電源17は、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11の間に交流又はパルス状の高電圧を印加する。交流電源17は交流の電源又はパルス電源であれば良い。例えば、商用周波数(50Hzあるいは60Hz)、数KHz~20KHz程度の高周波数等の正弦波あるいはパルス状の電圧を印加可能な電源から選ばれる。ここでは、例えば、周波数10kHzの電源とする。前記電源の最大電力は大気圧プラズマ13aの規模に依存するが、ここでは、例えば、電圧最大30KV、出力最大5KWを供給可能な電源を用いる。
符号18a、18bは、第1及び第2の電力供給線である。第1の電力供給線18aは交流電源7の非接地の出力端子と断面形状が矩形の第1電極10aを接続する。第2の電力供給線18bは、交流電源7の接地の出力端子と第2電極11を接続する。ここでは、断面形状が矩形の第1電極10aを非接地とし、第2電極を接地としたが、これを逆にして、断面形状が矩形の第1電極10aを接地とし、第2電極を非接地としても良い。
符号19は絶縁材である。絶縁材19は、第1電極及び第2電極と、筐体16の間を電気的に絶縁する。又、絶縁材19は第1電極及び第2電極と、磁石15の間を絶縁する。絶縁材19には、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、セラミック、ポリエステルフイルム、ポリマーフイルム、ポリエチレン、ビニール、シリコンゴム、ふっ素樹脂、ポリイミド及びマイカ等の絶縁材料から選ばれる。ここでは、例えば、ポリエステルフイルムを用いる。
【0018】
次に、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200aの動作について、説明する。
先ず、図示しないモーターを稼働し、メッシュ状のベルト101aを備えるベルトコンベア300aを稼働させる。なお、メッシュ状のベルト101aの移動速度や第1の大気圧プラズマ発生装置100aの稼働条件は、予め試験を行ってデータを取得し、そのデータを基に設定される。
次に、第1の大気圧プラズマ発生装置100aを稼働させる。第1の大気圧プラズマ発生装置100aが稼働すると、大気圧プラズマ13aが発生する。
図3において、第1電極10aと第2電極12に電源17から周波数10kHzの高い電圧、例えば0.8kV~3kVが印加えされると、大気圧プラズマ13aが発生する、大気圧プラズマ13aが発生すると、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等が発生し、該プラズマ13aの領域及びその周辺領域は、プラズマ化学反応及びプラズマ物理反応が促進される状態になる。
次に、殺菌対象物、例えば、ミカン106をメッシュ状のベルト101aの上に投入する。投入された殺菌対象物、例えば、ミカン106は、移動するメッシュ状のベルト101aと一緒に、大気圧プラズマ13aの近傍を通る。殺菌対象物、例えば、ミカン106が大気圧プラズマ13aの近傍を通ると、大気圧プラズマ13aで生成された、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等に晒される。その結果、殺菌対象物、例えば、ミカン106の表面は殺菌あるいは滅菌される。
即ち、殺菌対象物、例えば、ミカン106が、第1及び第2の暖簾105a、105bに接触すると、
図1に示されるように、回転を与えられる。殺菌対象物、例えば、ミカン106が回転しながら、大気圧プラズマ13aの近傍を通る際に、大気圧プラズマ13aで生成された、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等により、殺菌あるいは滅菌される。殺菌対象物、例えば、ミカン106は回転しながら移動するので、その表面は、万遍なく、殺菌あるいは滅菌される。
なお、大気圧プラズマ13aによる細菌類やカビ菌類等の死滅や不活性化に要する時間は、数秒~数10秒程度である。
第1の大気圧プラズマ発生装置100aは、断面形状が矩形の第1電極10aと第2電極11の電界E方向に直交する磁界Bを発生する磁石15を備えているので、ExBドリフト効果による低電圧の、かつ高密度のプラズマの生成が可能である。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生は抑制される。即ち、大気を汚染することなく、殺菌対象物、例えば、ミカン106の殺菌あるいは滅菌を行うことが可能である。
【0019】
以上の説明で示されたように、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200aは、プラズマ殺菌処理に際し、大量の粒状あるいは木片状の処理対象物を、第1の大気圧プラズマ発生装置100aを備えたベルトコンベア300aに載置して、搬送しながら該対象物を回転させながらプラズマ処理するので、迅速に、ムラ無く、かつ、低コストでプラズマ処理することができる。
本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置200aは、ミカン、籾米、麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ豆、胡椒及び唐辛子等、あるいは、カット野菜や乾燥果物等の切れ切れに加工された食品材料等の殺菌のためのプラズマ処理装置として実用に供することが可能である。
【0020】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置について、
図1及び
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第2の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
なお、本発明の第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成の特徴は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200aの構成部材である第1の大気圧プラズマ発生装置100aに代えて、
図5に示される第2の大気圧プラズマ発生装置100bを用いることである。
【0021】
先ず、第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成について、説明する。第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置は、後述の第2の大気圧プラズマ発生装置100b、メッシュ状のベルト101a、第1及び第2の駆動軸102a、102b、第1及び第2のプーリ103a、103b、及び図示しないモーター及び第1及び第2の暖簾105a、105bで構成される。
符号100bは第2の大気圧プラズマ発生装置である。第2の大気圧プラズマ発生装置100bは、
図1に示される本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第1の大気圧プラズマ殺菌処理装置100aと入れ替えて用いられる。
第2の大気圧プラズマ発生装置100bは、
図5に示されるように、断面形状が台形で、メッシュ状のベルト101aを臨む第1電極10bと、該第1電極10bに対向して配置される第2電極11と、第2電極11に設けられた誘電体12と、断面形状が台形の第1電極10bと第2電極11の間に交流あるいはパルス状の電圧を印加する電源17と、電力供給線18a、18b、絶縁材19と、磁石15を備えている。第2の大気圧プラズマ発生装置100bは、
図5に示される大気圧プラズマ13bを生成する。第2の大気圧プラズマ発生装置100bの主面の面積は、適宜選べるが、例えば、2mx2mである。なお、該面積は、第1電極10bの長さと幅と間隔と個数、そして、第2電極11の面積を選ぶことにより所定のものが形成される。
符号10bは、断面形状が台形の、棒状の第1電極である。該第1電極10bの断面形状が台形であることにより、該第1電極10bの側面と第2電極11との間に集中電界が発生する。即ち、該第1電極10bと第2電極11との間に発生する大気プラズマ13bの発生領域が、断面形状が矩形である第1電極10aと第2電極11の間に発生する大気プラズマ13aに比べて、広い領域になる。即ち、プラズマ殺菌領域が広くなり、効果的にプラズマ生成が可能である。
なお、第1電極10bの長さ、幅、厚み、隣り合う電極の間隔は、それぞれ、例えば、0.3m~3m、2mm~10mm、0.5mm~8mm、2mm~10mmである。ここでは、例えば、長さ:2m、幅:5mm、厚み:5mm、隣り合う電極の間隔:8mmである。
符号13bは大気圧プラズマである。大気圧プラズマ13bは、断面形状が台形の、棒状の第1電極10bと第2電極11の間に電源17から電力供給線18a、18bを介して印加される高電圧により発生する。大気圧プラズマ13bは、大気がプラズマ化されたものであり、紫外光を発し、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等を発生し、それらは該大気圧プラズマ13bの発生領域の外側へ拡散する。その結果、大気圧プラズマ13bの発生領域及びその周辺に存在する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌等は、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等により、ほぼ確実に殺菌、又は死滅、あるいは不活性化される。
第2の大気圧プラズマ発生装置100bには、第1の大気圧プラズマ発生装置100aの場合と同様に、磁石15が配置されているので、大気圧プラズマ13bは有磁場プラズマとなり、ExBドリフトが発生する。該ExBドリフト効果により、第2の大気圧プラズマ発生装置100bは、第1の大気圧プラズマ発生装置100aと同様に、低い印加電圧で、高密度プラズマを生成することが可能である。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生が抑制され、強い紫外光の発生、高濃度の酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等の発生が可能である。
【0022】
次に、本発明の第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200bの動作について、説明する。
先ず、図示しないモーターを稼働し、メッシュ状のベルト101aを備えるベルトコンベア300aを稼働させる。なお、メッシュ状のベルト101aの移動速度や第2の大気圧プラズマ発生装置100bの稼働条件は、予め試験を行ってデータを取得し、そのデータを基に設定される。
次に、第2の大気圧プラズマ発生装置100bを稼働させる。第2の大気圧プラズマ発生装置100bが稼働すると、大気圧プラズマ13bが発生する。大気圧プラズマ13bが発生すると、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等が発生し、該プラズマ13の領域及びその周辺領域は、プラズマ化学反応及びプラズマ物理反応が促進される状態になる。
次に、殺菌対象物、例えば、ミカン106をメッシュ状のベルト101aの上に投入する。投入された殺菌対象物、例えば、ミカン106は、移動するメッシュ状のベルト101aと一緒に、大気圧プラズマ13bの近傍を通る。殺菌対象物、例えば、ミカン106が大気圧プラズマ13bの近傍を通ると、大気圧プラズマ13bで生成された、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等に晒される。その結果、殺菌対象物、例えば、ミカン106の表面は殺菌あるいは滅菌される。
即ち、殺菌対象物、例えば、ミカン106が、第1及び第2の暖簾105a、105bに接触すると、
図1に示されるように、回転を与えられる。殺菌対象物、例えば、ミカン106が回転しながら、大気圧プラズマ13bの近傍を通る際に、大気圧プラズマ13bで生成された、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等により、殺菌あるいは滅菌される。殺菌対象物、例えば、ミカン106は回転しながら移動するので、その表面は、万遍なく、殺菌あるいは滅菌される。
なお、大気圧プラズマ13bによる細菌類やカビ菌類等の死滅や不活性化に要する時間は、数秒~数10秒程度である。
第2の大気圧プラズマ発生装置100bは、断面形状が台形の、棒状の第1電極10bと第2電極11の電界E方向に直交する磁界Bを発生する磁石15を備えているので、ExBドリフト効果による低電圧の、かつ高密度のプラズマの生成が可能である。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生は抑制される。即ち、大気を汚染することなく、殺菌対象物、例えば、ミカン106の殺菌あるいは滅菌を行うことが可能である。
【0023】
以上の説明で示されたように、本発明の第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200bは、プラズマ殺菌処理に際し、大量の粒状あるいは木片状の処理対象物を、第2の大気圧プラズマ発生装置100bを備えたベルトコンベアに載置して、搬送し、該対象物を回転させながらプラズマ処理するので、迅速に、ムラ無く、かつ、低コストでプラズマ処理することができる。
本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置200bは、ミカン、籾米、麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ豆、胡椒及び唐辛子等、あるいは、カット野菜や乾燥果物等の切れ切れに加工された食品材料等の殺菌のためのプラズマ処理装置として実用に供することが可能である。
【0024】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置について、
図1及び
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第3の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
なお、本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成の特徴は、本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200aの構成部材である第1の大気圧プラズマ発生装置100aに代えて、
図6に示される第3の大気圧プラズマ発生装置100cを用いることである。
符号100cは第3の大気圧プラズマ発生装置である。第3の大気圧プラズマ発生装置100cは、
図1に示される本発明の第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第1の大気圧プラズマ殺菌処理装置100aと入れ替えて用いられる。
【0025】
第3の大気圧プラズマ殺菌処理装置100cは、
図6に示されるように、断面形状が半円形で、メッシュ状のベルト101aを臨む棒状の第1電極10cと、該第1電極10cに対向して配置される第2電極11と、第2電極11に設けられた誘電体12と、断面形状が半円形の第1電極10cと第2電極11の間に交流あるいはパルス状の電圧を印加する電源17と、電力供給線18a、18b、絶縁材19と、磁石15を備えている。第3の大気圧プラズマ発生装置100cは、
図6に示される大気圧プラズマ13cを生成する。
第3の大気圧プラズマ発生装置100cの主面の面積は、任意に選べるが、例えば、2mx2mである。なお、該面積は、第1電極10cの長さと幅と間隔と個数、そして、第2電極11の面積を選ぶことにより所定のものが形成される。
符号10cは、断面形状が半円形の、棒状の第1電極である。該第1電極10cの断面形状が半円形であることにより、該第1電極10cの側面と第2電極11との間に集中電界が発生する。即ち、該第1電極10cと第2電極11との間に発生する大気プラズマ13cの発生領域が、断面形状が矩形である第1電極10aと第2電極11の間に発生する大気プラズマ13aに比べて、広い領域になる。即ち、プラズマ殺菌領域が広くなり、効果的にプラズマ生成が可能である。
なお、第1電極10cの長さ、幅、厚み、隣り合う電極の間隔は、それぞれ、例えば、0.3m~3m、2mm~10mm、0.5mm~8mm、2mm~10mmである。ここでは、例えば、長さ:2m、幅:5mm、厚み:5mm、隣り合う電極の間隔:8mmである。
第3の大気圧プラズマ発生装置100cには、大気圧プラズマ13cは、断面形状が半円形の第1電極10cと第2電極11の間に電源17から電力供給線18a、18bを介して印加される高電圧により発生する。大気圧プラズマ13cは、大気がプラズマ化されたものであり、紫外光を発し、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等を発生し、それらは該大気圧プラズマ13cの発生領域の外側へ拡散する。その結果、大気圧プラズマ13cの発生領域及びその周辺に存在する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌等は、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等により、ほぼ確実に殺菌、又は死滅、あるいは不活性化される。
大気圧プラズマ13cには、第1の大気圧プラズマ発生装置100aの場合と同様に、磁石15が配置されているので、大気圧プラズマ13cは有磁場プラズマとなり、ExBドリフトが発生する。該ExBドリフト効果により、第3の大気圧プラズマ発生装置100cは、第1の大気圧プラズマ発生装置100aと同様に、低い印加電圧で、高密度プラズマを生成することが可能である。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生が抑制され、強い紫外光の発生、高濃度の酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等の発生が可能である。
【0026】
次に、本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200cの動作について、説明する。
本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200cの動作であるが、本発明の第1及び第2の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200a、200bと同様である。
【0027】
以上の説明で示されたように、本発明の第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200cは、プラズマ殺菌処理に際し、大量の粒状あるいは木片状の処理対象物を、第3の大気圧プラズマ発生装置100cを備えたベルトコンベアに載置して、搬送しながら該対象物を回転させながらプラズマ処理するので、迅速に、ムラ無く、かつ、低コストでプラズマ処理することができる。
本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置200cは、ミカン、籾米、麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ豆、胡椒及び唐辛子等、あるいは、カット野菜や乾燥果物等の切れ切れに加工された食品材料等の殺菌のためのプラズマ処理装置として実用に供することが可能である。
【0028】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成について、
図1及び
図7ないし
図9を参照して説明する。
図7は、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第4の大気圧プラズマ発生装置を示す模式的斜視図である。
図8は、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置の構成部材である第4の大気圧プラズマ発生装置を示す断面図である。
図9は、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置が備える第4の大気圧プラズマ発生装置で生成される大気圧プラズマを示す概念図である。
【0029】
符号100dは第4の大気圧プラズマ発生装置である。第4の大気圧プラズマ発生装置100dは、メッシュ状のシート101aを臨むメッシュ状の第1電極10dと、該第1電極10dに対向して配置される第2電極11と、第2電極11に設けられた誘電体12と、メッシュ状の第1電極10dと第2電極11の間に交流あるいはパルス状の電圧を印加する電源17と、電力供給線18a、18bと、磁石15と、絶縁材19と、筐体16を備えている。第4の大気圧プラズマ発生装置100dの主面の面積は、任意に選べるが、例えば、2mx2mである。なお、該面積は、第1電極10dの面積と、第2電極11の面積を選ぶことにより所定のものが形成される。
なお、メッシュ状の第1電極10dと第2電極11は、誘電体12を介して密接して配置される。
【0030】
符号10dはメッシュ状の第1電極である。メッシュ状の第1電極10dは、非磁性体金属製のメッシュで形成される。メッシュ状の第1電極10dは、メッシュ状のシート101bを臨み、平行に近接して配置される。メッシュ状の第1電極10dは、第2電極11、誘電体12及び電源17と組み合わせて用いられ、
図10に示される大気圧プラズマ13dを生成する。
メッシュ状の第1電極10dは、例えば、線径:0.5mm~4mm、開口率:40%~80%の範囲で選ばれる。線径が小さい場合は生成される大気圧プラズマの容積が小さくなり、線径が大きい場合は、大気圧プラズマの生成に高電圧が必要となるので、適当な線径を選ぶのが良い。また、開口率が大き過ぎる場合も、小さ過ぎる場合も、大気圧プラズマの容積が小さくなるので、適当な開口率を選ぶのが良い。ここでは線径:1.1mm、開口率:61.4%とする。
メッシュ状の第1電極10dの面積は、適宜選ぶことができる。ここでは、例えば、2mx2mとする。なお、第2電極11の面積は、メッシュ状の第1電極10dの面積より一回り大きい面積を選ぶのが良い。
符号13dは大気圧プラズマである。大気圧プラズマ13dは、メッシュ状の第1電極10dと第2電極11の間に、電源17から電力供給線18a、18bを介して交流又はパルス状の高電圧が印加されると、生成される。大気圧プラズマ13dは、
図9に示されるように、メッシュ状の電極10dと誘電体12の面で挟まれた領域に生成される。大気圧プラズマ13dは大気がプラズマ化されたものであり、紫外光を発し、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等を発生し、それらは該大気圧プラズマ13aの発生領域の外側へ拡散する。その結果、大気圧プラズマ13dの発生領域及びその周辺に存在する細菌類、カビ菌類及びウイルス菌等は、紫外光、酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等により、ほぼ確実に殺菌、又は死滅、あるいは不活性化される。
第4の大気圧プラズマ発生装置100dには、第1の大気圧プラズマ発生装置100aの場合と同様に、磁石15が配置されているので、大気圧プラズマ13dは有磁場プラズマとなり、ExBドリフトが発生する。該ExBドリフト効果により、第4の大気圧プラズマ発生装置100dは、第1の大気圧プラズマ発生装置100aと同様に、低い印加電圧で、高密度プラズマを生成することが可能である。その結果、窒化酸化物(NO、NO
2,N
2O、N
2O
5)の発生が抑制され、強い紫外光の発生、高濃度の酸素ラジカル、OHラジカル及びオゾン等の発生が可能である。
【0031】
次に、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200dの動作について、説明する。
本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200dの動作であるが、本発明の第1、第2及び第3の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200a、200b、200cと同様である。
【0032】
以上の説明で示されたように、本発明の第4の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置200dは、プラズマ殺菌処理に際し、大量の粒状あるいは木片状の処理対象物を、第4の大気圧プラズマ発生装置100dを備えたベルトコンベアに載置して、搬送しながら該対象物を回転させながらプラズマ処理するので、迅速に、ムラ無く、かつ、低コストでプラズマ処理することができる。
本発明による大気圧プラズマ殺菌処理装置200dは、ミカン、籾米、麦、トウモロコシ、コーヒー豆、落花生、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、カカオ豆、胡椒及び唐辛子等、あるいは、カット野菜や乾燥果物等の切れ切れに加工された食品材料等の殺菌のためのプラズマ処理装置として実用に供することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
200a・・・第1の実施形態に係わる大気圧プラズマ殺菌処理装置、
100a・・・第1の大気圧プラズマ発生装置、
100b・・・第2の大気圧プラズマ発生装置、
100c・・・第3の大気圧プラズマ発生装置、
100d・・・第4の大気圧プラズマ発生装置、
101a・・・メッシュ状のベルト、
102a、102b・・・第1及び第2の駆動軸、
103a、103b・・・第1及び第2のプーリ、
105a、105b・・・第1及び第2の暖簾、
106・・・殺菌対象物、例えば、ミカン、
10a・・・断面形状が矩形の、棒状の第1電極、
10b・・・断面形状が台形の、棒状の第1電極、
10c・・・断面形状が半円形の、棒状の第1電極、
10d・・・メッシュ状の第1電極、
11・・・第2電極、
12・・・誘電体、
13a,13b、13c、13d・・・大気圧プラズマ、
15・・・磁石、
16・・・筐体、
17・・・交流電源、
19・・・絶縁材、
E・・・電界、
B・・・磁界。